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特許7208116処理室内装置の排気システムおよびケーブルカバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】処理室内装置の排気システムおよびケーブルカバー
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
H01L21/304 648G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019140344
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021022716
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】平木 哲
(72)【発明者】
【氏名】塩見 元信
(72)【発明者】
【氏名】福本 知也
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191895(JP,A)
【文献】特開2018-54429(JP,A)
【文献】特開平11-94651(JP,A)
【文献】特開2010-276506(JP,A)
【文献】特開2003-177060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0014629(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
G01F 1/00
G01K 1/08
G01K 7/25
B08B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室内で使用する装置と、
前記処理室外に設置され、前記装置に接続される電源または制御器と、
前記装置と前記電源または前記制御器とを接続するケーブルと、
前記ケーブルの少なくとも前記処理室内にある部分を保護するケーブルカバーとを備え、
前記ケーブルカバーは、前記装置内の気体を前記処理室外へ排気する排気路である、
処理室内装置の排気システム。
【請求項2】
前記ケーブルカバーは耐薬品性である、
請求項1に記載の処理室内装置の排気システム。
【請求項3】
前記装置がサーモカメラである、
請求項1または2に記載の処理室内装置の排気システム。
【請求項4】
前記ケーブルカバーがフッ素樹脂からなる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の処理室内装置の排気システム。
【請求項5】
基板を処理する処理室内で使用される装置に接続するケーブルを保護するケーブルカバーであって、
前記装置内の気体を前記処理室外へ排気する排気路を兼ねることを特徴とする、
ケーブルカバー。
【請求項6】
前記ケーブルカバーは耐薬品性である、
請求項5に記載のケーブルカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の枚葉式処理において、基板の処理室内に設置される装置からの排気に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉式の基板処理装置が知られている。かかる装置では、処理室内で基板を水平に保持して、基板の中心を軸にして水平面内で回転させ、基板上に処理液を供給することによって、基板表面のエッチング、洗浄、リンスなどの処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-183498号公報
【文献】特開2018-054429号公報
【文献】国際公開第WO2012/081586号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理液は温度が調整されて基板上に供給されるが、処理室内に測定器を入れるのが難しいため、基板上の処理液の温度が想定通りであるかを確認することは難しかった。
【0005】
枚葉式処理装置の処理室内にカメラを設置することに関して、特許文献1には回転するウェハの周縁部を撮像するために、周縁部の真上に設けたミラーによる反射画像を側方に設置した撮像装置で撮像することが記載されている。しかし、特許文献1には、カメラからの排気や、カメラに接続されるケーブル等についての記載はない。
【0006】
特許文献2には、液体供給ノズルから基板上に落下する液体の有無を検出することを目的として、基板全体を視野に入れてカメラで撮像することが記載されている。しかし、カメラはチャンバ内に設けてもよいとするものの、処理液がカメラに付着するのを防止するという観点からカメラはチャンバ外に設けられることが望ましいとし、また、カメラをチャンバ内に設ける場合の排気やケーブルの処理等については説明されていない。
【0007】
本発明は上記を考慮してなされたものであり、基板の枚葉式処理において、処理室内に設置される装置の排気システム、およびかかる排気システムにおいて使用可能なケーブルカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の処理室内装置の排気システムは、基板を処理する処理室内で使用する装置と、前記処理室外に設置され、前記装置に接続される電源または制御器と、前記装置と前記電源または前記制御器とを接続するケーブルと、前記ケーブルの少なくとも前記処理室内にある部分をカバーする耐薬品性のケーブルカバーとを備え、前記ケーブルカバーは、前記装置内の気体を前記処理室外へ排気する排気路である。
【0009】
本発明のケーブルカバーは、基板を処理する処理室内で使用される装置に接続するケーブルを保護する耐薬品性のケーブルカバーであって、前記装置内の気体を前記処理室外へ排気する排気路を兼ねることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の処理室内装置の排気システムによれば、耐薬品性を有するケーブルカバーによってケーブルを保護するとともに、ケーブルカバー自体が処理室内装置からの排気路となっているので、当該装置からの排気および当該装置内で発生するパーティクルを、効率的に処理室外へ排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態のサーモカメラの構成を示す図である。
図2】一実施形態のサーモカメラの断面図である。
図3】一実施形態のサーモカメラのシャッター機構の構成を示す図であり、図1の部分拡大図である。
図4】一実施形態のシャッターの開閉動作を説明するための図である。A:開動作、B:閉動作。
図5】一実施形態のA:保護部、およびB:筐体の一部の構成を示す断面図である。
図6】一実施形態の筐体内の気流を説明するための図である。
図7】一実施形態のケーブル、気体供給管、ケーブルカバーの配置を示す図である。
図8】実施例のサーモカメラにより撮影した熱画像である。
図9】一実施形態のサーモカメラを基板処理室内に設置することを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の処理室内装置の排気システム、およびケーブルカバーの一実施形態として、円盤状の半導体基板を枚葉式処理装置の処理室内にサーモカメラを設置する場合を、図に基づいて説明する。なお、以下においてサーモカメラが撮影する方を「前方」といい、その反対方向を「後方」という。また、図を参照する場合に図中の位置関係に対応して「前方」または「後方」に代えて「上方」または「下方」ということがある。
【0013】
図9を参照して、半導体基板(以下、単に「基板」という)Wは、処理室10内で、保持台11上に保持される。基板Wは保持台11とともに、図示しないモーターによって回転軸12を中心として水平面内で回転する。処理液Lはノズル13から基板W上に吐出され、基板Wの回転によって基板Wの表面上に拡がる。処理液Lの飛沫を遮るカバー部材14が基板Wおよび保持台11の側方から下方にかけてを覆っている。なお、ノズル13は異なる種類の処理液用に複数設置されることが多い。また、乾燥用のガスを噴き付けるためのガスノズルが設置されることもある。
【0014】
本実施形態のサーモカメラ20は処理室10上方で、基板Wの直上から外れたところに設置されて、基板W上面の全体を斜め上方から撮影する。サーモカメラ20は、処理室10外にある電源61および制御器60とケーブル71、71で、気体供給源62と気体供給管72、73で接続されている。一般に、枚葉式の基板処理装置は複数の処理室10を備え、各種電源や制御機器類は処理室10とは離れた制御ブロックにまとめられている。処理室10と制御ブロックとの距離は、典型的には4~5mである。ケーブル71、71および気体供給管72、73は、少なくとも処理室10内にある部分がケーブルカバー70内に収容され、処理液Lによって腐食しないように保護されている。
【0015】
基板の種類は特に限定されない。基板はシリコンその他の各種半導体のウェハであってよい。また、本実施形態では半導体基板を例に説明するが、基板は各種ディスプレイ用、光磁気ディスク用、フォトマスク用等のガラス基板であってもよい。また、基板は表面に加工が施されていたり、成膜されていてもよい。
【0016】
処理液Lの種類は特に限定されず、各種エッチング液、洗浄液、リンス用の純水、フォトレジスト、現像液等であってよい。
【0017】
図1にサーモカメラ20の構成を示す。筐体23の内部には、熱画像センサ21と熱画像センサの制御回路を収めた容器22が収容される。筐体23の熱画像センサ21の受光面側(前方)には、シャッター機構40が設けられている。シャッター機構40のさらに前方で、筐体23の前方端部には、筐体23の開口を塞ぐように保護部50が装着される。
【0018】
また、図2を参照して、筐体23には、壁内部を後方から前方にかけて貫通する気体の供給路が2本形成されている。図2には、その中の1本(28)を示した。気体供給路の詳細は後述する。
【0019】
筐体23は処理液Lの飛沫や蒸気に晒されるため、耐熱性および耐薬品性を有する材質を用いて作製する。筐体23は、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂または芳香族ポリエーテルケトン(PAEK)からなる。いずれも半導体の処理室内に設置可能な耐熱性および耐薬品性を備えるからである。筐体23は、より好ましくはPAEKからなる。フッ素樹脂よりPAEKの方が切削加工性に優れるからである。ここで、PAEKは実質的にPAEKからなる樹脂であればよく、所要の耐熱性および耐薬品性を維持できる範囲で、他の樹脂や各種添加剤を含有していてもよい。全樹脂成分に占めるPAEKの割合は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%である。各種添加剤の配合割合は、好ましくは樹脂成分100質量部に対して10質量部以下である。
【0020】
筐体23は、特に好ましくは実質的にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる。PEEKはPAEKの中でも、耐熱性、耐薬品性、強度をバランス良く備えるからである。PEEKに配合される他の樹脂および添加剤の割合の好ましい範囲は、上記PAEKの場合と同じである。
【0021】
熱画像センサ21は、赤外線放射エネルギーを検知する素子が面状に配列されたセンサで、基板Wの処理液Lの熱画像を撮影する。熱画像センサ21としては各種公知のものを用いることができ、多くの種類が市販されている。計測される赤外線の波長はセンサによって異なるが、およそ8~14μm程度の波長範囲にわたる赤外線放射エネルギーを計測するものが多い。熱画像センサの制御回路は、制御器60から受信する信号に応じて、熱画像の撮影、転送、後述するフラットフィールド補正等を実施する。
【0022】
図3図1の部分拡大図である。シャッター機構40は、熱画像センサ21に近い方から、シャッター駆動子41、駆動子カバー43、2枚の羽根46A、46Bからなるシャッター46がこの順に装着される。シャッター46は気体によって開閉する。
【0023】
シャッター駆動子41は平面視C字状の形状を有し、筐体23の前方端面24に開口24Aを囲むように形成された、同じくC字状の溝(以下「C字溝」という)25に嵌装される。駆動子カバー43はシャッター駆動子41がC字溝25から脱離しないように、シャッター駆動子41を図1の上方(前方)から押さえる。羽根46A、46Bはそれぞれ、下方に突出した支点ピン47A、47Bを駆動子カバー43の支点孔44A、44Bに挿入して、駆動子カバー43の上面に配置される。シャッター駆動子41の上面に突出する駆動ピン42A、42Bは、駆動子カバー43の長穴45A、45Bを貫通して、シャッター46の駆動ピン受け48A、48Bに挿入される。
【0024】
C字溝25の両端26、27には、筐体23の壁内部に形成された気体供給路の開口が設けられている。2本の気体供給路はそれぞれ、シャッター46を開くための開駆動用気体を供給する第1供給路28と、シャッター46を閉じるための閉駆動用気体を供給する第2供給路29である。以下において、開駆動用気体と閉駆動用気体を合わせて駆動用気体という。
【0025】
シャッター46の開閉動作を図4に基づいて説明する。図4はシャッター46を前方(図3の上方)から見た平面図である。図4では、筐体23の前方端面24、シャッター駆動子41、シャッター46のみを描き、シャッター駆動子41とシャッター46の間に介在する駆動子カバー43は省略した。
【0026】
図4Aを参照して、第1供給路28からC字溝25の一端26に開駆動用気体が供給されている状態では、シャッター駆動子41にC字溝25内を時計回りに回転させる力が作用する。その結果、駆動ピン42Aが駆動ピン受け48Aを図の下向きに押すことによって、羽根46Aには支点ピン47Aを中心に反時計回りに回転させる力が作用する。同様に、駆動ピン42Bが駆動ピン受け48Bを図の上向きに押すことによって、羽根46Bには支点ピン47Bを中心に反時計回りに回転させる力が作用する。これによりシャッター46が開く、または開いた状態が維持される。
【0027】
図4Bを参照して、第2供給路29からC字溝25の他端27に閉駆動用気体が供給されている状態では、シャッター駆動子41にC字溝25内を反時計回りに回転させる力が作用する。これにより、駆動ピン42Aが駆動ピン受け48Aを図の上向きに押すことによって、羽根46Aには支点ピン47Aを中心に時計回りに回転させる力が作用する。同様に、駆動ピン42Bが駆動ピン受け48Bを図の下向きに押すことによって、羽根46Bには支点ピン47Bを中心に時計回りに回転させる力が作用する。これによりシャッター46が閉じる、または閉じた状態が維持される。
【0028】
2枚の羽根46A、46Bが接触する辺は、羽根46Aの図3上方の角、羽根46Bの図3下方の角が面取りされて、いずれも楔状に形成されている。これにより、2枚の羽根46A、46Bは、楔状の傾斜面で接触する(図4B)。
【0029】
開駆動用気体と閉駆動用気体は同時には供給されない。また、開駆動用気体と閉駆動用気体は、常時どちらかが供給されるようにする。駆動用気体は一定の温度に調節されていることが好ましい。
【0030】
駆動用気体としては、腐食性のない気体を用いる。駆動用気体には空気を用いることもできるが、好ましくは不活性ガスを用いる。また、半導体基板を処理する処理室内は窒素雰囲気に制御されていることが多いので、その場合は、駆動用気体としても窒素ガスを用いることが好ましい。
【0031】
シャッター機構40の各部材は、筐体23と同じ材料で作製することができる。シャッター機構40の各部材には特に高い加工精度が求められるので、好ましくは切削性に優れるPEEKを用いる。また、より好ましくは、PEEKにカーボンブラックを配合した樹脂を用いる。摩擦係数が小さく、滑らかに摺動できるからである。また、シャッター機構40の各部材(特にシャッター羽根46A、46B)は、黒色であることが好ましい。放射率が0.9以上と高く、温度測定に悪影響を与えないからである。
【0032】
シャッター46を気体で駆動することの効果は、開閉による温度変化を抑えることである。熱画像センサ21による温度測定において、熱画像センサ21は、測定対象物から放射される熱だけでなく、筐体23内の各所から放射される熱を受ける。そのため、測定対象物以外から受ける熱量分を補正するために、頻繁にフラットフィールド補正(FFC)が行われる。FFCは、例えば本実施形態では、1枚の基板Wを処理する毎に行われる。具体的には、シャッター46を閉じて測定を行い、その結果に基づいて実際の温度測定時の結果を補正する。このとき、FFC時にシャッター機構40に微小な温度変化があっても、その後の温度測定の精度が大きく損なわれることになる。
【0033】
一般的な熱画像センサでは、センサの直前にシャッター機構が設けられ、シャッターがソレノイド等により電磁的に駆動される。しかし、発明者らは実験により、シャッターを電磁的に駆動すると開閉時にシャッター機構の温度が上昇し、FFCを行っても適正な補正ができないことを見出した。実験によればシャッター動作時にシャッターの温度は環境温度より20℃近く上昇し、これにより熱画像センサの温度は約0.3℃、筐体の温度は約0.8℃それぞれ上昇した。温度を一定に保持した標準試料の測定値は、FFCの前後で約1.3℃変化した。半導体基板の薬液処理では、測定される処理液の温度が多くの場合室温から約180℃の範囲であり、かつ高い測温精度が求められることを考慮すると、この影響は無視できない。シャッターを気体で駆動した場合にはシャッターの開閉による温度影響がなく、標準試料の測定値の相対誤差は0.4℃以内に収まる。
【0034】
本実施形態では、シャッター46の開閉を気体で駆動するため、シャッター機構40の温度上昇がなく、より高い精度での温度測定が可能となる。本実施形態では、シャッター46が熱画像センサ21と離間して設けられるため、シャッター46から熱画像センサ21に熱が伝わりにくい。熱画像センサ21をシャッター46の距離は、好ましくは2~9mmである。
【0035】
また、駆動用気体がC字溝25からシャッター機構40を抜けて前方へ流れるため、シャッター機構40が冷却される。さらに、駆動用気体の温度が一定に調整されている場合は、シャッター機構40を含めて、筐体23内の温度が安定する。
【0036】
図5Aを参照して、保護部50は、キャップ51、赤外線透過部材56および固定枠59を有する。キャップ51には、熱画像センサ21の前方に位置する中央部に窓55が形成されている。窓55は赤外線透過部材56を備える。キャップ51の前方端の内面には、赤外線透過部材56を当接するための当接面52が形成されている。赤外線透過部材56は、周縁部の両面に図示しないパッキンを当てて、外周がねじ加工された固定枠59をキャップ51内面の第1雌ねじ部53に必要十分なトルクで螺合することにより、窓55を塞ぐように固定される。これにより、保護部50を構成するキャップ51、赤外線透過部材56および固定枠59は一体化される。
【0037】
図5Bを参照して、筐体23の前方端面24に近い外周には雄ねじ部31が形成され、雄ねじ部31の後方にOリング溝32にOリング33が装着されている。そして、図5Aに示したキャップ51内面の第2ねじ部54を筐体23の雄ねじ部31に螺合することにより、サーモカメラ20の組み立てが完成する。キャップ51と筐体23の接合面にOリング33が介在することにより、保護部50は筐体23の前方端面24の開口24Aを気密に塞ぐ。筐体23の前方端面24と固定枠59の間には、シャッター機構40の駆動子カバー43およびシャッター46が収容される。
【0038】
キャップ51および固定枠59は、耐熱性および耐薬品性を有する素材からなり、好ましくはPTFE等のフッ素樹脂またはPAEKからなり、より好ましくはPAEKからなり、特に好ましくは実質的にPEEKからなる。その理由は、筐体23の場合と同じである。パッキンにはPTFE等のフッ素樹脂製のものを用いることができる。
【0039】
赤外線透過部材56は、熱画像センサ21が利用する波長の赤外線を透過することを要する。熱画像センサは波長8~14μmの赤外線を利用するものが多い。このことから、赤外線透過部材56は波長8~14μmの範囲における平均赤外線透過率が、好ましくは20%以上であり、より好ましくは40%以上である。
【0040】
赤外線透過部材56の形態は特に限定されず、例えば、赤外線透過率の高い組成を有するガラス板、シリコン、ゲルマニウム等の半導体板などを用いることができる。
【0041】
赤外線透過部材56としては、好ましくは、赤外線を透過する樹脂フィルムやシートを用いる(以下、フィルムとシートを合わせて「フィルム等」という)。赤外線透過部材56として用いるフィルム等の材質は、好ましくはポリオレフィン樹脂である。高い赤外線透過率と十分な耐薬品性を有するからである。ポリオレフィン樹脂としては、特許文献3に記載されたものを用いることができる。フィルム等の材質は、より好ましくは、ポリエチレン樹脂(PE)である。PEは赤外線を吸収する官能基が少ないため、赤外線の透過量が大きいからである。フィルム等の厚さは10μm~800μm、好ましくは100μm~700μm、より好ましくは150~600μmである。フィルム等が薄すぎると保護部50を組み立てる際のハンドリングが難しくなるためである。一方、フィルム等が厚すぎると赤外線の透過率が下がるからである。
【0042】
赤外線透過部材56が窓55を塞ぐことにより、筐体23の前方端面24の開口24Aが塞がれる。これによって、サーモカメラ20を基板Wの処理室10内に設置したときに、処理液Lの飛沫がサーモカメラ内部に進入することがなく、熱画像センサ21やその制御回路を保護できる。また、シャッター46の摺動等によって筐体23内でパーティクルが発生したとしても、パーティクルがサーモカメラ20外に漏れて処理室10を汚染することがない。
【0043】
好ましくは、保護部50は筐体23の前方端面24の開口24Aを気密に塞ぐ。具体的には、例えば、図5に示したように、キャップ51と筐体23の接合面にOリング33が介在することにより、保護部50が筐体23の前方端面24の開口24Aを気密に塞ぐことができる。これにより、サーモカメラ20を基板Wの処理室10内に設置した場合でも、処理液Lの蒸気がサーモカメラ内部に進入して、熱画像センサ21やその制御回路を腐食することがない。
【0044】
図6を参照して、保護部50が筐体23の前方端面24の開口24Aを塞ぐことにより、シャッター46の駆動用気体は、第1供給路28または第2供給路29からC字溝25、シャッター46周辺を経由し、赤外線透過部材56の内面に当たって、筐体23の前方端面24の開口24Aから筐体23内を後方へと流れる(図6中の矢印)。この気流により、高温に晒されることがある保護部50、特に赤外線透過部材56が冷却される。また、筐体23の前方端面24の開口24Aから筐体23後方への気流によって熱画像センサ21が冷却される。駆動用気体が一定の温度に調節されている場合は、駆動用気体が筐体23内を流通することによって、筐体23内の温度を安定させる。
【0045】
図5Aに戻って、保護部50は構成部材が一体となって単一の部品を形成しており、ねじ等の別箇の固定用部品を用いることなく、筐体23に固定されている。これにより、保護部50の筐体23への脱着に容易である。保護部50の中、赤外線透過部材56は処理液Lによって汚染することや、長期の使用に伴って劣化することが避けられないが、この構造により、赤外線透過部材56等が処理液により汚染された場合に、保護部50を容易に交換できる。
【0046】
図7を参照して、サーモカメラ20の後端からは、第1供給路28に開駆動用気体を供給する第1供給管72、第2供給路29に閉駆動用気体を供給する第2供給管73、およびケーブル71が、ケーブルカバー70内に収容されて導出される。第1供給管72および第2供給管73は図9に示した気体供給源62に接続される。ケーブル71は複数本あり、図1に示した制御器60および電源61に接続される。制御器60は入力端末を備え、入力された各種設定がケーブル71を通じてサーモカメラ20に送信される。サーモカメラ20が撮影した熱画像は、ケーブル71を通じて制御器60に送信され、制御器60が備える出力端末に表示される。サーモカメラ20の作動に必要な電力はケーブル71を通じて電源61から供給される。
【0047】
ケーブルカバー70は、サーモカメラ20後端と気密に接続される。ケーブルカバー70は、ケーブル71および気体供給管72、73の、少なくとも処理室10内にある部分を収容して、処理液Lの飛沫や蒸気から保護する。
【0048】
サーモカメラ20からの排気と、筐体23内で発生するパーティクルは、ケーブルカバー70内を通って排出される。第1供給管72や第2供給管73と比べて格段に断面積が大きいケーブルカバー70を排気路として用いることで、筐体23からの排気およびパーティクルの排出をより効率的に行うことができる。また、排気路の断面積が大きいことにより、筐体23の内圧が高まることがないので、筐体23から処理室10内への気体等の漏れを防ぐことができる。また、ケーブルカバー70が排気路を兼ねることで、断面積の大きい排気路を別途設ける場合と比べて、サーモカメラ20と制御器60等との接続構造のサイズをコンパクトにできる。ケーブルカバー70内の駆動用気体および排気の流れを図7中に矢印で示した。
【0049】
ケーブルカバー70は好ましくは引き回しが容易な蛇腹管である。ケーブルカバー70は処理室10内で処理液Lの飛沫や蒸気に晒されるため、好ましくは処理液Lに対する耐薬品性を有する。ケーブルカバー70は、好ましくは、PTFE等のフッ素樹脂からなる。
【0050】
本実施形態のケーブルカバー70は、外部から気体を供給して用いられる各種装置を基板の処理室内に設置する場合に、当該装置に接続するケーブルの保護および当該装置からの排気のために用いることができる。
【0051】
上記実施形態の実施例としてサーモカメラを作製した。サーモカメラの保護部50の赤外線透過部材56には、厚さ500μmのPEフィルムを用いた。当該フィルムの波長8~14μmの範囲における平均赤外線透過率は約50%であった。図8に、実施例のサーモカメラで撮影した熱画像を示す。図8は、シリコン基板を回転させながら、中央部に約50度の薬液を供給して撮影されたものである。
【0052】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 処理室
11 保持台
12 回転軸
13 ノズル
14 カバー部材
W 基板
L 処理液
20 サーモカメラ
21 熱画像センサ
22 熱画像センサ制御回路の容器
23 筐体
24 筐体の前方端面
24A 筐体の前方端面の開口
25 C字状の溝
26 C字状の溝の一端
27 C字状の溝の他端
28 第1供給路
29 第2供給路
31 雄ねじ部
32 Oリング溝
33 Oリング
40 シャッター機構
41 シャッター駆動子
42A、42B 駆動ピン
43 シャッター駆動子カバー
44A、44B 支点孔
45A、45B 長穴
46A、46B シャッター
47A、47B 支点ピン
48A、48B 駆動ピン受け
50 保護部
51 キャップ
52 当接面
53 第1雌ねじ部
54 第2雌ねじ部
55 窓
56 赤外線透過部材
59 固定枠
60 制御器
61 電源
62 気体供給源
70 ケーブルカバー
71 ケーブル
72 第1供給管
73 第2供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9