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特許7208125流動接触分解触媒用添加剤および流動接触分解触媒用添加剤の製造方法、ならびに触媒組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】流動接触分解触媒用添加剤および流動接触分解触媒用添加剤の製造方法、ならびに触媒組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/08 20060101AFI20230111BHJP
   C10G 11/18 20060101ALI20230111BHJP
   B01J 23/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
B01J29/08 M
C10G11/18
B01J23/02 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019179764
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053587
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】水野 隆喜
(72)【発明者】
【氏名】三津井 知宏
(72)【発明者】
【氏名】山崎 弘史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-506548(JP,A)
【文献】特表平08-504397(JP,A)
【文献】特開2018-103120(JP,A)
【文献】米国特許第05260240(US,A)
【文献】特表2008-512553(JP,A)
【文献】国際公開第2018/027173(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪素酸化物バインダーと、第2族元素化合物粒子とを含み、
前記珪素酸化物バインダーが、平均粒子径が100nm以下の珪素酸化物粒子を含み、
前記第2族元素化合物粒子がマグネシウム化合物粒子およびカルシウム化合物粒子を含み、
マグネシウムの含有量が酸化マグネシウムに換算して15~60質量%であり、
カルシウムの含有量が酸化カルシウムに換算して5~20質量%であり、
アルカリ金属の含有量が前記アルカリ金属の酸化物に換算して1.5質量%以下であり、
嵩密度が0.80g/ml以下である
流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項2】
前記バインダーの含有量が10~40質量%である請求項1に記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項3】
さらに充填材を含む請求項1または2に記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項4】
さらに希土類元素を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項5】
平均粒子径が40~100μmであり、比表面積が30~210m2/gであり、かつ細孔容積が0.05~0.50ml/gである請求項1~4のいずれか一項に記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項6】
耐摩耗性指数(CAI)が0.5~10である請求項1~5のいずれか一項に記載の流動接触分解触媒用添加剤。
【請求項7】
請求項1に記載の流動接触分解触媒用添加剤の製造方法であって、
平均粒子径が100nm以下の珪素酸化物粒子を含むスラリーを準備する第1工程と、
前記スラリーと、第2族元素化合物粒子および/またはその前駆物質とを混合して、混合スラリーを得る第2工程と、
前記混合スラリーの固形分を熱処理して流動接触分解触媒用添加剤を得る第3工程と
を含み、
前記第2族元素化合物粒子および/またはその前駆物質が、マグネシウム化合物粒子および/またはその前駆物質、ならびにカルシウム化合物粒子および/またはその前駆物質を含む
流動接触分解触媒用添加剤の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程が、前記混合スラリーの固形分を乾燥させ、次いで洗浄し、次いで熱処理する工程である、請求項7に記載の流動接触分解触媒用添加剤の製造方法。
【請求項9】
流動接触分解触媒と、請求項1~6のいずれか一項に記載の流動接触分解触媒用添加剤とを含有する触媒組成物。
【請求項10】
前記流動接触分解触媒用添加剤の含有量が0.5~10質量%である請求項9に記載の触媒組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動接触分解装置(FCC装置)において、流動接触分解触媒(FCC触媒)に添加して使用され、特に、原料油中の重質油留分(ボトム)を分解して軽質留分(特に、ガソリン)を得るために使用される添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動接触分解触媒を用いて原料油を分解して軽質油を得ているが、原油の価格高騰等の理由により、より重質な原料油(重質油留分)の分解も行われている。
FCC触媒によって重質油留分(例えば、残油)を効率よく分解するための手段としては、FCC触媒に含まれるゼオライトまたはアルミナに代表される活性成分を増量することが挙げられる。しなしながら、FCC触媒中の活性成分の割合が増加すると、触媒の強度が低下するなどして物性が悪化するという問題があった。また、流動接触分解装置において、原料油中の重質油留分を分解して軽質留分を得るにあたり、重質油留分の分解が進むとコークが増加し、更に生成したコークが燃焼する際に、温度上昇及び水蒸気発生が起こり、FCC触媒の品質が劣化するという問題があった。
【0003】
このような問題を解決するための手段として、FCC触媒に補助触媒(FCCアディティブ:FCC Additive)を添加することも検討されており、補助触媒としての様々な添加剤が開発されている。例えば特許文献1には、バインダー及びアルミナ-シリカを含む混合スラリーを噴霧乾燥することで得られる、比表面積が100~400m2/gであり、かつ、全固体酸量が0.10mmol/g以上、0.50mmol/g未満である流動接触分解触媒用添加剤が開示され、この添加剤を使用することにより重質油留分の分解効率を上げ、かつコーク収率の増加を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-147933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の添加剤には、ボトム選択性の改善、すなわち、重質油留分の分解効率の向上という観点から、さらなる改良の余地があった。
そこで本発明は、ボトム選択性の改善効果に優れた、すなわち重質油留分の分解効率の向上した流動接触分解触媒用添加剤およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば以下の[1]~[10]に関する。
[1]
珪素酸化物バインダーと、第2族元素化合物粒子とを含み、
前記珪素酸化物バインダーが、平均粒子径が100nm以下の珪素酸化物粒子を含み、
前記第2族元素化合物粒子がマグネシウム化合物粒子およびカルシウム化合物粒子を含み、
マグネシウムの含有量が酸化マグネシウムに換算して15~60質量%であり、
カルシウムの含有量が酸化カルシウムに換算して5~20質量%であり、
アルカリ金属の含有量が前記アルカリ金属の酸化物に換算して1.5質量%以下であり、
嵩密度が0.80g/ml以下である
流動接触分解触媒用添加剤。
【0007】
[2]
前記バインダーの含有量が10~40質量%である前記[1]の流動接触分解触媒用添加剤。
[3]
さらに充填材を含む前記[1]または[2]の流動接触分解触媒用添加剤。
[4]
さらに希土類元素を含有する前記[1]~[3]のいずれかの流動接触分解触媒用添加剤。
【0008】
[5]
平均粒子径が40~100μmであり、比表面積が30~210m2/gであり、かつ細孔容積が0.05~0.50ml/gである前記[1]~[4]のいずれかの流動接触分解触媒用添加剤。
[6]
耐摩耗性指数(CAI)が0.5~10である前記[1]~[5]のいずれかの流動接触分解触媒用添加剤。
【0009】
[7]
前記[1]の流動接触分解触媒用添加剤の製造方法であって、
平均粒子径が100nm以下の珪素酸化物粒子を含むスラリーを準備する第1工程と、
前記スラリーと、第2族元素化合物粒子および/またはその前駆物質とを混合して、混合スラリーを得る第2工程と、
前記混合スラリーの固形分を熱処理して流動接触分解触媒用添加剤を得る第3工程とを含み、
前記第2族元素化合物粒子および/またはその前駆物質が、マグネシウム化合物粒子および/またはその前駆物質、ならびにカルシウム化合物粒子および/またはその前駆物質を含む
流動接触分解触媒用添加剤の製造方法。
【0010】
[8]
前記第3工程が、前記混合スラリーの固形分を乾燥させ、次いで洗浄し、次いで熱処理する工程である、前記[7]の流動接触分解触媒用添加剤の製造方法。
[9]
流動接触分解触媒と、前記[1]~[6]のいずれかの流動接触分解触媒用添加剤とを含有する触媒組成物。
[10]
前記流動接触分解触媒用添加剤の含有量が0.5~10質量%である前記[9]の触媒組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流動接触分解触媒用添加剤を流動接触分解触媒に添加して使用すると、ボトム選択性を改善する、すなわち重質油留分の分解効率を向上させることができる。また、本発明の流動接触分解触媒用添加剤は耐摩耗性に優れる。
【0012】
さらに、本発明の製造方法によれば、上記の効果を奏する流動接触分解触媒用添加剤を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[流動接触分解触媒用添加剤]
本発明の流動接触分解触媒用添加剤(以下「FCC触媒用添加剤」とも記載する。)は、珪素酸化物バインダーと、第2族元素化合物粒子とを含み、前記珪素酸化物バインダーが、平均粒子径が100nm以下の珪素酸化物粒子を含み、前記第2族元素化合物粒子がマグネシウム化合物粒子およびカルシウム化合物粒子を含み、マグネシウムの含有量が酸化マグネシウムに換算して15~60質量%であり、カルシウムの含有量が酸化カルシウムに換算して5~20質量%であり、アルカリ金属の含有量が前記アルカリ金属の酸化物に換算して1.5質量%以下であり、嵩密度が0.80g/ml以下であることを特徴としている。
【0014】
本発明のFCC触媒用添加剤は、たとえば、後述する本発明の流動接触分解触媒用添加剤の製造方法により製造することができる。
【0015】
<バインダー>
本発明のFCC触媒用添加剤は、珪素酸化物バインダー、すなわち珪素酸化物からなるバインダーを含む。
【0016】
前記バインダーは、アルミニウム(Al)および/またはチタン(Ti)の酸化物を含んでいてもよく、Alおよび/またはTiの酸化物を含む場合、バインダー中のその含有量は、好ましくは1~20質量%である。
【0017】
本発明のFCC触媒用添加剤は、バインダーとして珪素酸化物からなるバインダーを含むため、チタン酸化物等をバインダーとするFCC触媒用添加剤よりも熱的に安定であり、相転移が起こりにくく、さらに耐摩耗性にも優れる。
【0018】
珪素酸化物の平均粒子径は100nm以下であり、好ましくは4~80nmであり、さらに好ましくは4~60nmである。平均粒子径が100nmを超えると、FCC触媒用添加剤としての強度が保持されないおそれがある。
【0019】
この平均粒子径の値は、画像解析により求められる値であり、具体的にはFCC触媒用添加剤のSEM写真(倍率:20万倍)を撮影し、その写真の中で珪素酸化物粒子を無作為に100個選び、それらの直径(円形でない場合には長径)を測定し、算術平均値を求めることにより決定される。
【0020】
本発明のFCC触媒用添加剤中の前記バインダーの含有量は、好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~30質量%である。含有量が前記下限値以上であると、FCC触媒用添加剤としての強度を保持でき、前記上限値以下であると、本発明の添加剤によるボトム選択性の改善効果に優れる。
【0021】
<第2族元素化合物粒子>
本発明のFCC触媒用添加剤は、第2族元素化合物粒子を含む。
前記第2族元素化合物粒子は前記バインダー中に分散している。
【0022】
前記第2族元素化合物としては、例えば、酸化物および炭酸塩が挙げられ、前記酸化物の例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウムが挙げられ、前記炭酸塩の例としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0023】
本発明の添加剤は、前記第2族元素として、好ましくはマグネシウムおよびカルシウムの両方を含む。
本発明のFCC触媒用添加剤中の前記第2族元素化合物粒子の含有量は、20~80質量%、好ましくは30~80質量%である。
【0024】
含有量が前記下限値以上であると、本発明の添加剤によるボトム選択性の改善効果に優れ、含有量が前記上限値以下であると、前記バインダー中での前記第2族元素化合物粒子の分散性が良好である。
【0025】
本発明のFCC触媒用添加剤は、マグネシウムを酸化物換算で15~60質量%、およびカルシウムを酸化物換算で5~20質量%含む。
【0026】
<希土類>
本発明のFCC触媒用添加剤は、さらに希土類元素を含んでいてもよい。
【0027】
前記希土類元素としては、例えば、ランタンおよびセリウムが挙げられる。
本発明のFCC触媒用添加剤が希土類元素を含む場合、FCC触媒用添加剤中の希土類元素の含有量は、希土類元素の酸化物の含有量に換算して、好ましくは20質量%以下である。希土類元素は、前記第2族元素化合物粒子に対して共触媒として働き、好ましくは、酸化物換算で(希土類元素の質量)/(第2族元素の質量)=0.01~0.20である。この値が0.01以上であると共触媒としての効果が大きく、一方、この値が0.20以下であると、希土類元素を含む成分の凝集が抑えられ、本発明のFCC触媒用添加剤の効果が良好に発揮される。
【0028】
<充填材>
本発明のFCC触媒用添加剤は、さらに充填材を含んでいてもよい。
前記充填材の例としては、粘土鉱物およびアルミナが挙げられる。
【0029】
前記粘土鉱物の例としては、カオリン、ハロイサイト、ケイソウ土、酸性白土、および活性白土が挙げられ、好ましくはカオリンが挙げられる。
前記アルミナの例としては、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムが挙げられる。
【0030】
本発明のFCC触媒用添加剤中の前記充填材の含有量は、好ましくは0質量%超え40質量%以下であり、さらに好ましくは5~35質量%である。
【0031】
(アルカリ金属)
本発明のFCC触媒用添加剤は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属(M)を含まないか、含むとしてもそのもの含有量は、酸化物(M2O)の量に換算して1.5質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以下である。本発明のFCC触媒用添加剤が添加されるFCC触媒には一般にゼオライトが含まれており、本発明のFCC触媒用添加剤中のアルカリ金属の含有量を抑えることで、ゼオライトに対するアルカリ金属の影響(ゼオライトの被毒等)を緩和することが可能となると共に、ボトム選択性の改善効果が高められる。
【0032】
(FCC触媒用添加剤の物性)
本発明のFCC触媒用添加剤の耐摩耗性(Attrition Resistance)は、触媒化成技法 Vol.13、No.1、P65、1996に記載された方法により測定される耐摩耗性指数(CCIC Attirition Index、CAI)により表すことができる。
【0033】
耐摩耗性指数は、具体的には、小孔(φ=0.38mm)3個を備えたプレートが下部に取り付けられた筒状容器(径:127mm、高さ:475mm)内に所定量(約45g)のFCC触媒用添加剤を充填した後、下部プレートの小孔から空気を250m/sの速度で送り、空気を送り始めてから12~42時間の30時間の間に摩耗して容器上部から飛散したFCC触媒用添加剤を円筒濾紙に回収して質量を測定し、この質量を充填されたFCC触媒用添加剤の質量で割り100を掛けることにより求められる。
【0034】
CAIの値は、好ましくは0.5~10の範囲にある。CAIが0.5以上であると、本発明のFCC触媒用添加剤は、FCC触媒用触媒に添加した際のボトム選択性の改善効果に優れ、一方、CAIが10以下であると、流動接触分解時の本発明のFCC触媒用添加剤の粉化を抑制できる。
【0035】
CAIの値は、たとえば後述するFCC触媒用添加剤の製造方法において乾燥条件を調整することにより増減させることができる。
本発明のFCC触媒用添加剤の、後述する実施例で採用した方法で測定される平均粒子径は、好ましくは40~100μm、より好ましくは50~90μmである。平均粒子径が前記下限値以上であると本発明の添加剤によるボトム選択性の改善効果が優れ、前記上限値以下であると本発明の添加剤は、耐摩耗性、強度等に優れる。
【0036】
平均粒子径の値は、たとえば後述するFCC触媒用添加剤の製造方法において噴霧乾燥条件を調整することにより増減させることができる。
本発明のFCC触媒用添加剤の、BET法で測定した比表面積(SA)は、好ましくは30~210m2/g、より好ましくは40~200m2/gである。比表面積が前記下限値以上であると本発明の添加剤によるボトム選択性の改善効果が優れ、前記上限値以下であると、本発明の添加剤は強度に優れ、添加剤としての形状保持の観点から好ましい。
【0037】
比表面積の値は、たとえば後述するFCC触媒用添加剤の製造方法において焼成条件を調整することにより増減させることができる。
本発明のFCC触媒用添加剤の、水のポアフィリング法により測定される細孔容積は、好ましくは0.05~0.50ml/g、より好ましくは0.05~0.45ml/g、さらに好ましくは0.05~0.40ml/gである。細孔容積が前記下限値以上であると本発明の添加剤によるボトム選択性の改善効果が優れ、細孔容積が前記上限値以下であると本発明の添加剤は強度に優れる。なお、細孔容積とは、41Å(4.1nm)以上の細孔直径を有する細孔の容積である。
【0038】
細孔容積の値は、たとえば後述するFCC触媒用添加剤の製造方法において調合温度や噴霧乾燥条件を調整することにより増減させることができる。
本発明のFCC触媒用添加剤の、後述する実施例で採用した方法で測定される嵩密度(ABD)は、0.80g/ml以下であり、好ましくは0.70g/ml以上である。嵩密度が前記範囲にあると、本発明の添加剤は耐摩耗性に優れ、使用中に容易に粉化することが抑制される。一方、嵩密度が前記範囲よりも大きい場合には、FCC触媒用添加剤の流動性および拡散性が不十分となり、ボトム分解性能が低下することがある。なお、嵩密度の上限は、たとえばFCC触媒用添加剤の組成から定まる。
【0039】
嵩密度の値は、たとえば後述するFCC触媒用添加剤の製造方法において粒度分布を調整することにより増減させることができる。
【0040】
[FCC触媒用添加剤の製造方法]
本発明のFCC触媒用添加剤の製造方法は、
平均粒子径が100nm以下の珪素酸化物粒子を含むスラリーを準備する第1工程と、
前記スラリーと、第2族元素化合物粒子および/またはその前駆物質とを混合して、混合スラリーを得る第2工程と、
前記混合スラリーの固形分を熱処理してFCC触媒用添加剤を得る第3工程と
を含むことを特徴としている。
【0041】
以下、各工程について説明する。
<第1工程>
第1工程では、珪素酸化物粒子を含むスラリーを準備する。
【0042】
珪素酸化物粒子を含むスラリーとしては、たとえばシリカゾルが挙げられる。珪素酸化物粒子を含むスラリーは、ケイ酸塩の水溶液をイオン交換樹脂に通して陽イオンを除去して調製してもよい。
【0043】
前記珪素酸化物粒子の、下記の方法で算出される平均粒子径の下限は、好ましくは4nm以上であり、上限は100nm以下であり、より好ましくは80nm以下であり、さらに好ましくは60nm以下である。
【0044】
(平均粒子径の測定方法)
BET法により、珪素酸化物粒子の比表面積(m2/g)を測定し、次式により平均粒子径を算出する。
平均粒子径(nm)=6000/{比表面積(m2/g)×密度(2.2g/cm3)}
平均粒子径が前記下限値以上であるとスラリー中での珪素酸化物の分散性が優れ、前記上限値以下であると強度に優れたFCC触媒用添加剤を製造することができる。
【0045】
珪素酸化物粒子を含むスラリーは、アルミニウムおよび/またはチタンの酸化物の前駆体を含んでいてもよく、その量は、前記珪素酸化物とアルミニウムおよび/またはチタンの酸化物との合計100質量%に対して好ましくは1~20質量%となる量である。
【0046】
前記珪素酸化物粒子を含むスラリー(以下「珪素酸化物粒子スラリー」とも記載する。)は、珪素酸化物ゾルであってもよく、珪素酸化物ゾルに前記充填材を添加して調製してもよい。この段階で充填材を添加すると、珪素酸化物粒子と、第2族元素化合物および/またはその前駆物質との反応を抑制することができる。前記充填材を添加する場合、前記充填材は、好ましくはスラリーの状態で添加される。
【0047】
<第2工程>
第2工程では、第1工程で準備した前記珪素酸化物粒子スラリーと第2族元素化合物粒子および/またはその前駆物質とを混合して、混合スラリーを得る工程である。
【0048】
前記混合は、好ましくは、第1工程で準備した前記珪素酸化物粒子スラリーに、第2族元素化合物粒子および/またはその前駆物質(以下「第2族元素化合物粒子類」とも記載する。)を添加することにより実施される。より具体的には、前記珪素酸化物粒子スラリーを好ましくは20~90℃、より好ましくは25~80℃に保持し、この温度の±5℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃の範囲内の温度に調整した、前記第2族元素化合物粒子類を含むスラリーまたは水溶液を、pHが3.0~12.5、好ましくは3.5~12.0、より好ましくは4.0~11.5になるように、通常5~20分、好ましくは7~15分かけて連続添加し沈殿を生成させ、混合スラリーを得ることが好ましい。
【0049】
第2族元素化合物の詳細は上述のとおりである。前記第2族元素化合物の前駆物質の具体例としては、例えば第2族元素のシュウ酸塩および水酸化物も挙げられる。
前記第2族元素化合物粒子類の平均粒子径は、好ましくは100μm以下である。この平均粒子径の値は、乾式マイクロメッシュシーブ法により測定される、50質量%値(D50)である。
【0050】
前記第2族元素化合物粒子のうち、酸化マグネシウムの比表面積は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは20m2/g以上である。比表面積がこの範囲にあると、ボトム選択性の改善効果に優れたFCC触媒用添加剤を製造することができる。また、比表面積の上限値は、たとえば80m2/g以下である。
【0051】
前記混合の際には、さらに、希土類元素化合物を混合してもよい。これらは、好ましくはスラリーまたは水溶液の形態で供給される。前記希土類元素としては、例えば、ランタンおよびセリウムが挙げられ、これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。希土類元素化合物としては、例えば希土類元素のシュウ酸塩、水酸化物、炭酸塩、および酸化物が挙げられる。希土類元素を2種以上併用する場合には、同種化合物を組み合わせる(たとえば、炭酸ランタンと炭酸セリウムとを組み合わせる。)ことが好ましい。
【0052】
希土類元素化合物は、添加する場合であれば、好ましくは、酸化物換算で(希土類元素の質量)/(第2族元素の質量)=0.01~0.20となる割合で添加される。
前記希土類元素化合物を粒子の状態(例えば、粒子単独、またはスラリー)で前記混合に供する場合、その平均粒子径は、好ましくは100μm以下である。この平均粒子径の値は、乾式マイクロメッシュシーブ法により測定される、50質量%値(D50)である。
【0053】
前記混合の際には、併せて前記充填材を混合してもよい。この段階で充填材を添加すると、珪素酸化物粒子と、第2族元素化合物および/またはその前駆物質との反応を抑制することができる。前記充填材を混合する場合、前記充填材は、好ましくはスラリーの状態で添加される。
【0054】
<第3工程>
第3工程では、第2工程で得られた前記混合スラリーの固形分(以下「FCC触媒用添加剤前駆体」とも記載する。)を熱処理してFCC触媒用添加剤を得る。
【0055】
前記熱処理は、たとえば100~700℃、好ましくは110~700℃、さらに好ましくは400~700℃の温度で、たとえば0.5~10時間、好ましくは1~8時間行われる。
【0056】
前記第3工程の好ましい態様としては、前記混合スラリーの固形分を乾燥させた後に熱処理するという態様が挙げられる。
前記混合スラリーの固形分の乾燥は、乾燥機による乾燥であってもよく、または噴霧乾燥であってもよい。噴霧乾燥の方がより実用的である。噴霧乾燥は、好ましくは下記条件で行われる。
【0057】
<噴霧乾燥条件>
前記混合スラリーを噴霧乾燥機のスラリー貯槽に充填し、例えば120~450℃の範囲に調整された気流(例えば空気流)が流れる乾燥チャンバー内に混合スラリーを噴霧することにより、粒子(以下「噴霧乾燥粒子」とも記載する。)が得られる。スラリーの噴霧乾燥によって上記気流の温度は低下するが、乾燥チャンバーの出口の温度は、ヒーターなどを用いて例えば50~300℃の範囲に維持される。
【0058】
噴霧乾燥粒子は、下記洗浄処理に供する前に一次焼成してもよい。一次焼成は、たとえば200~500℃程度の温度範囲で、0.5~5時間行われる。一次焼成を行うことで、下記洗浄処理による構成成分の溶出やFCC触媒用添加剤の崩壊を防止することができる。
【0059】
噴霧乾燥粒子は、好ましくは、副生成物を除去するために洗浄処理に供される。例えば、噴霧乾燥粒子を、その3~50倍の質量の温水(40~80℃)で、撹拌しながら3~30分程度洗浄することで、本発明のFCC触媒用添加剤に含まれるアルカリ金属の含有量を低下させることができる。
【0060】
さらに焼成(二次焼成)を行う場合は、詳細には、300~700℃の範囲の例えば600℃に調整された空気雰囲気下で上記噴霧乾燥粒子の焼成を行う。焼成温度が300℃より過度に低いと、残存水分による操作性が悪くなり、また金属成分の分散状態が均一になりにくいおそれがあり、700℃を過度に超えると、金属成分が凝集を起こしたり、金属成分の珪酸塩が生成したりしやすくなるおそれがあるので好ましくない。
【0061】
第3工程で製造された本発明のFCC触媒用添加剤を、粒度調整のために、適度に粉砕処理してもよい。
【0062】
[FCC触媒用添加剤の使用方法、およびFCC触媒組成物]
本発明のFCC触媒用添加剤は、FCC装置での炭化水素油、特に原料油中の重質油留分(本発明において「ボトム」とも記載する。)の流動接触分解において、流動接触分解触媒(以下「FCC触媒」とも記載する。)に混合して使用される。
【0063】
本発明の流動接触分解触媒組成物(以下「触媒組成物」ともいう。)は、FCC触媒(以下「母体触媒」とも記載する。)および本発明に係るFCC触媒用添加剤を含む。
前記母体触媒は、ゼオライト、バインダーおよび粘土鉱物を含み、従来公知のFCC触媒であってもよい。前記母体触媒を使用した接触分解処理は、固定床反応装置に前記母体触媒を充填して水素雰囲気下、高温高圧条件で行なわれる。
【0064】
本発明のFCC触媒用添加剤は、FCC触媒用添加剤とFCC触媒との合計量(100質量%)に対し、好ましくは0.5~10質量%となる量で使用される。換言すると、本発明の触媒組成物には、本発明に係るFCC触媒用添加剤が、好ましくは0.5~10質量%含まれる。
【0065】
FCC触媒用添加剤の使用量ないし含有量が0.5質量%以上であると、添加剤によるボトム選択性改善の効果が優れる。一方、FCC触媒用添加剤の使用量ないし含有量が10質量以下であると、触媒組成物中のゼオライト比率が高く、FCC触媒用添加剤中の活性金属成分によるゼオライトの被毒等が抑制され、触媒活性が良好である。
【0066】
(FCC触媒)
<ゼオライト>
前記母体触媒は、ゼオライト(結晶性アルミナシリケート)を含む。ゼオライトは、流動接触分解プロセスにて炭化水素供給原料油に対する接触分解活性を持つゼオライトであれば、特段の限定はない。前記ゼオライトとしては、例えば、フォージャサイトゼオライト、ZSMゼオライト、βゼオライト、モルデナイトゼオライト、天然ゼオライトが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。前記ゼオライトは、好ましくは合成フォージャサイトゼオライトであるUSY型(Ultra-Stable Y-Type)ゼオライトを含む。
【0067】
前記FCC触媒中の前記ゼオライトの含有量は、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~45質量%、さらに好ましくは20~40質量%である(ただし、前記FCC触媒組成物の量を100質量%とする。)。含有量が前記下限値以上であると、前記FCC触媒は十分な活性を示す。一方、含有量が前記上限値以下であると、活性が高過ぎることによる過分解、選択性の低下を抑制できる。
【0068】
<バインダー>
前記母体触媒は、バインダーを含む。
前記FCC触媒中の前記バインダーの含有量は、好ましくは5~30質量%、より好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは10~25質量%である(ただし、前記FCC触媒組成物の量を100質量%とする。)。バインダー成分の含有量が前記下限値以上であると、前記母体触媒は耐摩耗性に優れる。バインダー成分の含有量が前記上限値以下であると、前記母体触媒は良好な触媒活性を示す。
【0069】
前記バインダーとしては、シリカまたはアルミナを主成分(バインダー成分中50質量%以上含有を意味する)とするものを用いることができる。バインダー成分として、シリカゾルなどを原料とするシリカ系バインダーや、塩基性塩化アルミニウム等を原料とするアルミニウム化合物バインダーを用いることができる。
【0070】
前記シリカ系バインダーとしては、シリカゾルの他に、ナトリウム型、リチウム型、酸型等のコロイダルシリカを原料とするものも使用することができる。
アルミニウム化合物バインダーとしては、塩基性塩化アルミニウムの他に、重リン酸アルミニウム溶液、ジブサイト、バイアライト、ベーマイト、ベントナイト、結晶性アルミナなどを酸溶液中に溶解させた粒子や、ベーマイトゲル、無定形のアルミナゲルを水溶液中に分散させた粒子、あるいはアルミナゾルを原料とするものも使用することができる。
これらは1種単独で、または2種以上を混合もしくは複合化して用いることができる。
【0071】
<アルミニウム化合物バインダー>
アルミニウム化合物バインダーの原料としては、例えば塩基性塩化アルミニウム([Al2(OH)nCl6-nm(但し、0<n<6、m≦10))を用いることができる。塩基性塩化アルミニウムは、ゼオライトなどに含まれるアルミニウム、およびナトリウム、カリウム等のカチオンの存在下で、200~450℃程度の比較的低温で分解する。この結果、塩基性塩化アルミニウムの一部が分解して、水酸化アルミニウムなどの分解物が存在するサイトがゼオライトの近傍に形成されるものと考えられる。さらに分解した塩基性塩化アルミニウムを300~600℃の範囲の温度で焼成することにより、アルミニウム化合物バインダー(アルミナ)が形成される。このとき、ゼオライト近傍の分解物が焼成されてアルミニウム化合物バインダーになる際に、細孔径が4nm以上、50nm以下の範囲のメソ孔が比較的多く形成され、前記母体触媒の比表面積を増大させることができると推定される。併せて、耐摩耗性を低下させる要因となる、細孔径が50nmより大きく、1000nm以下の範囲のマクロ孔の形成が抑えられる。
【0072】
アルミニウム化合物バインダーは、前記母体触媒におけるマトリックス成分の一部を構成すると共に、ゼオライトとマトリックス成分を結合する目的で添加される。
【0073】
<粘土鉱物>
粘土鉱物としては、カオリン、ハロイサイト、ケイソウ土、酸性白土、活性白土などが挙げられ、好ましくはカオリンが挙げられる。
【0074】
前記FCC中の前記粘土鉱物の含有量は、好ましくは10~40質量%、より好ましくは15~40質量%、さらに好ましくは20~35質量%である。粘土鉱物の含有量が前記下限値以上であることは、前記母体触媒の細孔構造の維持、触媒形状の維持、耐摩耗性、流動性の観点から好ましい。一方、粘土鉱物の含有量が前記上限値以下であると、触媒組成物中のゼオライト比率が高く、触媒活性が良好である。
【0075】
<添加物>
前記母体触媒は、ゼオライト、バインダー、粘土鉱物に加え、添加物を含んでいてもよい。添加物としては、活性マトリックス成分、オクタン価向上や低級オレフィン成分を増加させる成分等を例示することができる。
【0076】
活性マトリックス成分としては、活性アルミナやシリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア-アルミナなどの固体酸を有する物質が挙げられる。
【0077】
前記母体触媒には、活性マトリックス成分が1~30質量%、好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%の範囲で含んでもよい。活性マトリックス成分の含有量が1質量%よりも少ないと、マトリックスでの粗分解能が十分得られず、活性面で悪影響を与えるとともに、嵩密度の低下や耐摩耗性や流動性の悪化を引き起こすことが懸念される。一方、活性マトリックス成分の含有量が30質量%よりも多いと、主要な活性成分であるゼオライトの含有量が低くなり、分解活性が不十分となる場合がある。
【0078】
(FCC触媒(母体触媒)の物性)
<比表面積(SA)>
前記母体触媒の、BET法で測定した比表面積(SA)は、好ましくは30~300m2/gである。比表面積が30m2/g以上であると、流動接触分解プロセスにおいて短い接触時間で接触分解反応を十分に進行させることができる。比表面積が300m2/g以下であると、前記母体触媒は十分な強度を有する。
前記母体触媒の、後述する実施例で採用した方法で測定される平均粒子径は、好ましくは40~100μmであり、より好ましくは50~90μmである。
【0079】
<細孔容積(PV)>
前記母体触媒の、水のポアフィリング法により測定した全細孔径範囲の細孔容積(PV)は、好ましくは0.05~0.50ml/g、より好ましくは0.10~0.45ml/gである。細孔容積が前記下限値以上であると十分な接触分解活性が得られ、細孔容積が前記上限値以下であると前記母体触媒は強度に優れる。
【0080】
<嵩密度(ABD)>
前記母体触媒の、後述する実施例で採用した方法で測定される嵩密度(ABD)は、好ましくは0.70g/ml以上である。嵩密度が前記範囲にあると、前記母体触媒は耐摩耗性に優れ、使用中に容易に粉化することが抑制される。
【実施例
【0081】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
なお、以下に記載のスラリーとは、水を分散媒とするスラリーである。
また、シリカゾル中の珪素酸化物粒子の平均粒子径は、BET法により、珪素酸化物粒子の比表面積(m2/g)を測定し、次式により算出した。
平均粒子径(nm)=6000/{比表面積(m2/g)×密度(2.2g/cm3)}
【0082】
[実施例1]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(MgO:45%、CaCO3:15%(CaOとして)))
アルミニウムをAl23濃度に換算して83.4質量%含む擬ベーマイト(製品名:Catapal-200、Sasol社製)179.9gを純水にて希釈し、擬ベーマイトスラリー600g(アルミニウムをAl23量に換算して25質量%(150g)含む。)を調製した。このスラリーを、ケイ素をSiO2濃度として20.49質量%含むシリカ粒子の水分散ゾル(製品名:カタロイド(登録商標)SI-550、日揮触媒化成(株)製、シリカ粒子の平均粒子径:5nm、20℃)1220.1g(SiO2として250g)に添加し、撹拌した。
【0083】
次いで、得られた混合溶液に、酸化マグネシウム(製品名:スターマグL、神島化学社製、比表面積:43m2/g)のスラリー2250g(MgOを20質量%(450g)含む。25℃)、炭酸カルシウム(製品名:タンカル325M、宇部マテリアルズ社製)のスラリー761.4g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(150g)含む。25℃)を添加し、原料スラリーを得た。原料スラリーのpHは11.3(温度24℃)であった。
【0084】
原料スラリーを液滴として入口温度が180℃、出口温度が90℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が80μmの球状粒子を得た。
得られた球状粒子200gを60℃の純水2000gに添加し、これらを10分間撹拌し、次いで吸引濾過した後、濾過残渣を60℃の純水2000gで洗浄した。洗浄後の粒子を120℃で8時間乾燥して、次いで600℃で2時間焼成することでFCC触媒用添加剤(以下「BCR-1」とも記載する。)を得た。
FCC触媒用添加剤(BCR-1)の諸物性を表1に示す。
【0085】
[実施例2]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(MgO:50%、CaCO3:10%(CaOとして))
酸化マグネシウムスラリーの量を2500g(MgOを20質量%(500g)含む。)に、炭酸カルシウムスラリーの量を507.6g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(100g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-2」とも記載する。)を得た。
【0086】
[実施例3]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(Al23:35 %、MgO:30%、CaCO3:10%(CaOとして))
擬ベーマイトスラリーの量を1400g(アルミニウムをAl23量に換算して25質量%(350g)含む。)に、酸化マグネシウムスラリーの量を1500g(MgOを20質量%(300g)含む。)に、炭酸カルシウムスラリーの量を507.6g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(100g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-3」とも記載する。)を得た。
【0087】
[実施例4]
(平均粒子径が30nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(SiO2:30 %、Al23:20%、MgO:40%、CaCO3:10%(CaOとして))
シリカゾルをシリカゾル(日揮触媒化成(株)、SI-50)621.1g(ケイ素をSiO2量に換算して300g含む。)に変更し、擬ベーマイトスラリーの量を800g(アルミニウムをAl23量に換算して25質量%(200g)含む。)、酸化マグネシウムスラリーの量を2000g(MgOを20質量%(400g)含む。)、炭酸カルシウムスラリーの量を507.6g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(100g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-4」とも記載する。)を得た。
【0088】
[実施例5]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(MgO:45%、CaCO3:10%(CaOとして)、La23:5%)
炭酸カルシウムスラリーの量を507.6g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(100g)含む。)に変更し、さらに酸化ランタン51.2g(La23として50g)を加えた以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-5」とも記載する。)を得た。
【0089】
[比較例1]
(バインダーとしてシリカゾルではなく、水ガラスを用いたFCC触媒用添加剤(MgO:50%、CaCO3:10%(CaOとして))
ナトリウムをNa2O量に換算して0.28質量%含む希釈水酸化ナトリウム水溶液に、カオリン(酸化物濃度:82.31質量%)182.2gを添加した。得られたスラリーを、ケイ素をSiO2として24質量%含む水ガラス1042gに添加した。次いでこの撹拌混合溶液(25℃)に、酸化マグネシウム(製品名:スターマグL、神島化学社製)のスラリー2000g(MgOを25質量%(500g)含む。25℃)、炭酸カルシウム(製品名:タンカル325M、宇部マテリアルズ社製)のスラリー400g(カルシウムをCaO量に換算して25質量%(100g)含む。25℃)を添加し、沈殿を生成させ、原料スラリーを得た(第2工程)。その後、ホモジナイザーを用いて分散処理を行った。
【0090】
分散処理後の原料スラリーを液滴として入口温度が210℃、出口温度が130℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が65μmの球状粒子を得た。この噴霧乾燥粒子を電気炉にて空気雰囲気下、250℃にて1時間焼成し、焼成粒子とした。
【0091】
60℃の純水2000gに、得られた焼成粒子200gを添加し、10分間撹拌し、次いで吸引濾過した後、濾過残渣を60℃の純水2000gで洗浄した。洗浄後の粒子を120℃で8時間乾燥して、次いで600℃で2時間焼成することで分解促進剤BCR-aを得た。
FCC触媒用添加剤BCR-aの諸物性を表1に示す。
【0092】
[比較例2]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(Al23:0%、MgO:70%、CaCO3:10%(CaOとして))
シリカゾルの量を976.1g(ケイ素をSiO2量に換算して20.49質量%(200g)含む。)に、酸化マグネシウムスラリーの量を3500g(MgOを20質量%(700g)含む。)に、炭酸カルシウムスラリーの量を507.6g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(100g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-b」とも記載する。)を得た。
【0093】
[比較例3]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(Al23:10%、MgO:70%、CaCO3:10%(CaOとして))
シリカゾルの量を976.1g(ケイ素をSiO2量に換算して20.49質量%(200g)含む。)に、擬ベーマイトスラリーの量を400g(アルミニウムをAl23量に換算して25質量%(100g)含む。)に、酸化マグネシウムスラリーの量を2000g(MgOを20質量%(400g)含む。)に、炭酸カルシウムスラリーの量を1522.8g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(300g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-c」とも記載する。)を得た。
【0094】
[比較例4]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(Al23:10%、MgO:30%、CaCO3:10%(CaOとして))
シリカゾルの量を2440.2g(ケイ素をSiO2量に換算して20.49質量%(500g)含む。)に、擬ベーマイトスラリーの量を400g(アルミニウムをAl23量に換算して25質量%(100g)含む。)に、酸化マグネシウムスラリーの量を1500g(MgOを20質量%(300g)含む。)に、炭酸カルシウムスラリーの量を507.6g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(100g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-d」とも記載する。)を得た。
【0095】
[比較例5]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(Al23:45%、MgO:10%、CaCO3:20%(CaOとして))
擬ベーマイトスラリーの量を1800g(アルミニウムをAl23量に換算して25質量%(400g)含む。)に、酸化マグネシウムスラリーの量を500g(MgOを20質量%(100g)含む。)に、炭酸カルシウムスラリーの量を1015.2g(カルシウムをCaO量に換算して19.7質量%(200g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-e」とも記載する。)を得た。
【0096】
[比較例6]
(平均粒子径が4-5nmのシリカゾルを用いたFCC触媒用添加剤(Al23:25%、MgO:50%、CaCO3:0%(CaOとして))
炭酸カルシウムスラリーを添加せず、擬ベーマイトスラリーの量を1000g(アルミニウムをAl23量に換算して25質量%(250g)含む。)に、酸化マグネシウムスラリーの量を2500g(MgOを20質量%(500g)含む。)に変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-f」とも記載する。)を得た。
【0097】
[比較例7]
(平均粒子径が160nm程度のシリカゾルを使用したFCC触媒用添加剤(MgO:50%、CaCO3:10%(CaOとして))
シリカゾルをシリカゾル(SPHERICA SLURRY 160)1082.7g(ケイ素をSiO2量に換算して250g含む。)に変更した以外は、BCR-2と同様にしてFCC触媒用添加剤(以下「BCR-g」とも記載する。)を得た。
【0098】
[比較例8]
(比表面積が6m2/gの酸化マグネシウムを使用したFCC触媒用添加剤(MgO:45%,CaCO3(15%(CaOとして))
酸化マグネシウムをスターマグLからスターマグP(神島化学社製)へと変更した以外は実施例1と同様にして、FCC触媒用添加剤(以下「BCR-h」とも記載する。)を得た。
【0099】
[FCC触媒用添加剤の諸物性]
下記の方法で、実施例等で製造されたFCC触媒用添加剤の諸物性を評価した。結果を表1に示す。
【0100】
《アルカリ金属(ナトリウム)量(酸化物換算)》
試料に硫酸およびフッ化水素酸を加えて加熱し、乾固させ、乾固物を濃塩酸に溶解し、水で濃度10~100質量ppmに希釈した溶液に調製し、(株)日立ハイテクサイエンス製の原子吸光光度計(Z-2310)により分析した。波長は、Na:589.6nmである。
【0101】
《平均粒子径》
堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-950V2)により、試料の粒度分布を測定した。具体的には、光線透過率が70~95%の範囲となるように試料を溶媒(水)に投入し、循環速度:2.8L/分、超音波照射:1分間、反復回数:30の条件で測定し、メディアン径(D50)を平均粒子径として採用した。
【0102】
《比表面積》
マイクロトラック・ベル(株)製のBELSORP-mini Ver2.5.6により試料の比表面積を測定した。具体的には、試料を500℃で1時間前処理した後、吸着ガスに窒素ガスを用いて測定を行い、BET法により比表面積を算出した。
【0103】
《細孔容積》
水のポアフィリング法により試料の細孔容積を算出した。
【0104】
《嵩密度》
内容積25mlの円筒型シリンダーに、シリンダーの上端から高さ10cmの位置から試料を落下、充填し、上面を平坦化した時の試料の質量(Wg)を測定し、W/25(g/ml)を嵩密度とした。
【0105】
《CAI》
触媒化成技法 Vol.13、No.1、P65、1996に記載された方法により耐摩耗性指数(CCIC Attirition Index、CAI)を測定した。
【0106】
CAIの値が大き過ぎて適切に表せないものについては、「測定不可」とした。
また、FCC触媒用添加剤中の珪素酸化物粒子の平均粒子径は、FCC触媒用添加剤のSEM写真(倍率:20万倍)を撮影し、その写真の中で珪素酸化物粒子を無作為に100個選び、それらの直径(円形でない場合には長径)を測定し、算術平均値を求めることにより決定され、原料のシリカゾル中の珪素酸化物粒子の平均粒子径と略同一であることを確認できる。
【0107】
【表1】
【0108】
[触媒の活性評価]
<FCC平衡触媒の製造>
<FCC触媒の調製>
濃度がアルミナ換算で22.83質量%の塩基性塩化アルミニウム水溶液547.5gと純水593.2gとを混合し撹拌した。次いでこの混合溶液に、濃度30質量%ゼオライトスラリーを833.3g添加するとともに、粘土鉱物成分であるカオリン(固形分(水を除いた成分)81質量%)222.5g、活性マトリックス成分である活性アルミナ(固形分(水を除いた成分)77質量%)453.9g、ランタンをLa23濃度に換算して21.74質量%含む塩化ランタン水溶液207.0gを順次添加し、ホモジナイザーを用いて分散処理を行った。得られた原料スラリーは、固形分濃度が35質量%、pHが4.9であった。
【0109】
原料スラリーを液滴として入口温度が250℃、出口温度が150℃の噴霧乾燥機で噴霧乾燥を行い、平均粒子径が65μmの球状粒子を得た。この噴霧乾燥粒子を電気炉にて空気雰囲気下で450℃にて1時間焼成し、焼成粒子を得た。
【0110】
60℃の純水1500gに、得られた焼成粒子300gを添加し、5分間撹拌した。このスラリーのpHは3.6であった。吸引濾過した後、濾過残渣を60℃の純水1500gで洗浄し、洗浄粒子ケーキ(1)を得た。
【0111】
60℃の純水1500gと洗浄粒子ケーキ(1)を混合し、再懸濁した後、硫酸アンモニウム30.5gを添加し、20分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣を60℃の純水1500gで洗浄し、洗浄粒子ケーキ(1´)を得た。
【0112】
60℃の純水1500gと洗浄粒子ケーキ(1´)を混合し、再懸濁した後、ゼオライトのイオン交換用の多価のカチオン源である22質量%の塩化ランタン水溶液29gを添加し、20分間撹拌した。吸引濾過した後、濾過残渣粒子を60℃の純水1500gで洗浄した。この操作を2回行った後、濾過残渣粒子を135℃で2時間乾燥して、FCC触媒を得た。FCC触媒は、アルミニウム化合物バインダーを12.5質量部、ゼオライトを25質量部、活性アルミナを35質量部、カオリンを18質量部、ランタンをLa23として4.5質量部を含むものであり、比表面積は276m2/g、細孔容積は0.36ml/gであった。
【0113】
<活性評価>
添加剤の活性評価は、ARCO社製パイロット反応装置を用いて行った。この装置は触媒が装置内を循環しながら反応と触媒再生を交互に繰返す循環式流動床であり、商業規模で使用されるFCCユニットを模したものである。FCC触媒と実施例1または比較例1で製造された添加剤とを、触媒の質量:添加剤の質量=95:5となるように混合し、原料油として脱硫常圧残油(DSAR)を用い、反応塔の温度を520℃に、再生塔の温度を670℃に設定し、装置中で原料油1gに対して触媒が3.75gとなるように調整して、接触分解反応を行い、反応後の生成物及び残留物(生成液)を分析した。ここで、反応塔にて生成したガスを株式会社島津製作所製ガスクロマトグラフィー〔Micro GC 3000A〕で分析し、水素及びC1~C4までの収率を測定すると共に、再生塔にて生成したCO及びCO2を島津製作所製赤外線吸収式ガス分析装置〔CGT-7000〕で分析してコーク収率を計算した。更に、生成液をHewlett Packard社製蒸留ガスクロマトグラフィー〔GC System HP6890〕によりガソリン留分、軽油留分(LCO)、重油留分(HCOおよびCLO)の生成量を測定した。添加剤は、反応前に100%スチーム条件下において、810℃で12時間それぞれ処理した。
【0114】
性能評価試験における運転条件は以下の通りである。
原料油:原油の脱硫常圧残渣油(DSAR)
触媒/油質量比(C/O):3.75
反応温度:520℃
転化率(Conversion)=100-(LCOおよび(HCO+CLO)の収率) (質量%)
Dry Gas:メタン、エタンおよびエチレン
LPG:(液化石油ガス)
生成油のカット温度
ガソリン(Gasoline):C5~沸点216℃未満
ライトサイクルオイル(LCO):沸点範囲216~343℃未満
ヘビーサイクルオイル(HCO)およびクラリファイドオイル(CLO):沸点範囲343℃以上
表2に評価結果を示す。
【0115】
【表2】
【0116】
触媒の活性評価結果によれば、実施例にて調製したFCC触媒用添加剤を5質量%含む触媒での性能評価結果(触媒/通油量の質量比(C/O)=3.75)は、FCC触媒用添加剤を含まない母体触媒(Base)に比べて、転化率(Conversion)、特にガソリンの転化率の上昇と、(HCO+CLO)収率の低下が確認できた。また、このような効果は、比較例にて調製したFCC触媒用添加剤を添加した場合には確認されなかった。