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特許7208133酸性αグルコシダーゼ変異体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】酸性αグルコシダーゼ変異体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230111BHJP
   C12N 9/26 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/56 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230111BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 38/47 20060101ALI20230111BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230111BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230111BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20230111BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N9/26 Z
C12N15/56
C12N15/12
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61K38/47
A61K48/00
A61P1/16
A61P3/08
A61P9/00
A61P21/00
C07K14/47
C07K19/00
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2019513434
(86)(22)【出願日】2017-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2017072942
(87)【国際公開番号】W WO2018046772
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】16306148.4
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(73)【特許権者】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(73)【特許権者】
【識別番号】514280282
【氏名又は名称】デユーク・ユニバーシテイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ミンゴッツィ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ロンジッティ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】コーベル,ドゥワイト・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ハン,サン-オ
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】Sun et al.,Enhanced Efficacy of an AAV Vector Encoding Chimeric, Highly Secreted Acid α-Glucosidase in Glycogen Storage Disease Type II,Molecular Therapy, Volume 14, Issue 6,2006年09月20日,Pages 822-830
【文献】Corti M et al.,Evaluation of Readministration of a Recombinant Adeno-Associated Virus Vector Expressing Acid Alpha-Glucosidase in Pompe Disease: Preclinical to Clinical Planning,Hum Gene Ther Clin Dev.,26(3),2015年09月,p.185-93
【文献】Doerfler PA et al,Copackaged AAV9 Vectors Promote Simultaneous Immune Tolerance and Phenotypic Correction of Pompe Disease,Hum Gene Ther.,27(1),2016年01月,p.43-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
C12N 9/26
C12N 15/56
C12N 15/12
C12N 15/867
C12N 15/864
C12N 5/10
C07K 14/47
C07K 19/00
A61K 38/47
A61K 48/00
A61K 47/64
A61P 1/16
A61P 3/08
A61P 9/00
A61P 21/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
機能的GAAポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列が、配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
ヒトα-1-アンチトリプシンタンパク質のシグナルペプチドが、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1又は2記載の核酸分子。
【請求項4】
プロモーターに作動可能に連結された核酸分子を含む発現カセットである、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子を含む核酸構築物。
【請求項5】
該核酸構築物が、さらにイントロンを含む、請求項4記載の核酸構築物。
【請求項6】
プロモーターが、α-1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターからなる群より選択される、請求項4又は5記載の核酸構築物。
【請求項7】
イントロンが、ヒトβグロビンb2(又はHBB2)イントロン、FIXイントロン、ニワトリβ-グロビンイントロン、又は配列番号8の改変されたHBB2イントロン、配列番号10の改変されたFIXイントロン、又は配列番号12の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンから選択される改変されたイントロンからなる群より選択されるイントロンである、請求項4~6のいずれか一項記載の核酸構築物。
【請求項8】
エンハンサー;イントロン;プロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸分子;及びポリアデニル化シグナルをこの順序で含む、請求項~6のいずれか一項記載の核酸構築物。
【請求項9】
プロモーターが、肝特異的プロモーターである、請求項8記載の核酸構築物。
【請求項10】
ApoE制御領域;HBB2イントロン;hAATプロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸分子;及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルをこの順序で含む、請求項8又は9記載の核酸構築物。
【請求項11】
配列番号13又は配列番号14の核酸配列を含む、請求項10記載の核酸構築物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項記載の核酸分子又は核酸構築物を含むベクター。
【請求項13】
AAVベクター又はレトロウイルスベクターである、請求項12記載のベクター。
【請求項14】
レトロウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項12記載のベクター。
【請求項15】
一本鎖又は二本鎖の自己相補性AAVベクターである、請求項12又は13記載のベクター。
【請求項16】
AAV1、AAV2、変異AAV2、AAV3、変異AAV3、AAV3B、変異AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、変異AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh74、AAVdi、AAV-Anc80、AAV-LK03、AAV2i8から選択されるAAVに由来のキャプシド、及びブタAAVキャプシド、又はキメラキャプシドを有するAAVベクターである、請求項12記載のベクター。
【請求項17】
AAV10キャプシドが、AAVcy10及びAAVrh10キャプシドである、請求項16記載のベクター。
【請求項18】
ブタAAVキャプシドが、AAVpo4及びAAVpo6キャプシドである、請求項16記載のベクター。
【請求項19】
AAVベクターが、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシドを有する、請求項15記載のベクター。
【請求項20】
AAVベクターが、AAV8、AAV9又はAAVrh74キャプシドを有する、請求項19記載のベクター。
【請求項21】
AAVベクターが、AAV8キャプシドを有する、請求項20記載のベクター。
【請求項22】
請求項1~3のいずれか一項の核酸分子、請求項4~11のいずれか一項の核酸構築物、又は請求項12~21のいずれか一項のベクターを用いて形質転換された細胞。
【請求項23】
細胞が、肝細胞又は筋肉細胞である、請求項22記載の形質転換された細胞。
【請求項24】
薬学的に許容される担体に、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子、請求項4~11のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項12~21のいずれか一項記載のベクター、又は請求項22又は23記載の細胞を含む、医薬組成物。
【請求項25】
医薬品としての使用のための、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子、請求項4~11のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項12~21のいずれか一項記載のベクター、又は請求項22又は23記載の細胞。
【請求項26】
糖原病I型(GSDI)(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(GSDII)(ポンペ病)、糖原病III型(GSDIII)(コーリ病)、糖原病IV型(GSDIV)、糖原病V型(GSDV)、糖原病VI型(GSDVI)、糖原病VII型(GSDVII)、糖原病VIII型(GSDVIII)、及び心臓の致死性先天性糖原病から選択される糖原病を処置するための方法に使用するための、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子、請求項4~11のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項12~21のいずれか一項記載のベクター、又は請求項22又は23記載の細胞。
【請求項27】
GSDI、GSDII又はGSDIIIから選択される糖原病を処置するための方法に使用するための、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子、請求項4~11のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項12~21のいずれか一項記載のベクター、又は請求項22又は23記載の細胞。
【請求項28】
GSDII又はGSDIIIから選択される糖原病を処置するための方法に使用するための、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子、請求項4~11のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項12~21のいずれか一項記載のベクター、又は請求項22又は23記載の細胞。
【請求項29】
GSDIIから選択される糖原病を処置するための方法に使用するための、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子、請求項4~11のいずれか一項記載の核酸構築物、請求項12~21のいずれか一項記載のベクター、又は請求項22又は23記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性αグルコシダーゼ変異体及びその使用に関する。該変異体は、配列が最適化されている及び/又は異種シグナルペプチドに連結されている。
【0002】
糖原病(GSD)II型及び酸性マルターゼ欠損症としても知られるポンペ病は、リソソーム酵素の酸性αグルコシダーゼ(GAA)の欠損症によって引き起こされる常染色体劣性代謝性筋疾患である。GAAは、リソソーム内でグリコーゲンをグルコースに加水分解するエキソ-1,4及び1,6-α-グルコシダーゼである。GAAの欠損によりリソソーム内にグリコーゲンが蓄積され、呼吸筋、心筋及び骨格筋への進行的な傷害が引き起こされる。該疾患は、通常は1~2歳までに致命的となる急速に進行する乳児型の経過から、小児及び成人におけるかなりの罹患率及び早期死亡率を引き起こす、より緩徐に進行する異質な経過まで多岐にわたる。Hirschhorn RR, The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 3: 3389-3420 (2001, McGraw-Hill); Van der Ploeg and Reuser, Lancet 372: 1342-1351 (2008)。
【0003】
ポンペ病を処置するためのヒトにおける現在の治療法は、別名酵素補充療法(ERT)と呼ばれる組換えヒトGAAの投与を含む。ERTは、重度の乳児型糖原病II型に対して有効性を実証した。しかしながら、酵素療法の利点は、頻繁な注入の必要性及び組換えhGAAに対する阻害抗体の発生によって制限される(Amalfitano, A., et al. (2001) Genet. In Med. 3:132-138)。さらに、ERTは全身を効果的に修復しない。これはおそらく、末梢静脈から送達後のタンパク質の不十分な体内分布、いくつかの組織からの取り込みがなされないこと、及び高い免疫原性の組合せのためである。
【0004】
ERTの代わりの又は補助としての、糖原病II型を処置するための遺伝子療法アプローチの実現可能性が研究されている(Amalfitano, A., et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:8861-8866, Ding, E., et al. (2002) Mol. Ther. 5:436-446, Fraites, T. J., et al. (2002) Mol. Ther. 5:571-578, Tsujino, S., et al. (1998) Hum. Gene Ther. 9:1609-1616)。しかしながら、遺伝子異常を修復するための筋肉に指向された遺伝子導入は、疾患が全身性であることの限界、及び、導入遺伝子の筋肉における発現が他の組織と比べてより免疫原性が高くなる傾向があるという事実に直面しなければならない。
【0005】
Doerfler et al., 2016は、ヒトコドン最適化GAAをコードしている2つの構築物(一方は、肝特異的プロモーターの制御下にあり、他方は筋肉特異的プロモーターの制御下にある)の組合せ投与を記載している。肝臓特異的プロモーターにより駆動されるGAAの発現が、Gaa-/-マウスモデルにおいてGAAに対する免疫寛容を促進するために使用され、一方、筋肉特異的プロモーターにより駆動されるGAAの発現が、療法のために標的化された組織の部分における治療用タンパク質の発現を提供する。しかしながら、この戦略は、複数の構築物の使用を必要とし、これによりGAAが全身に発現されるわけではないという点で、完全に満足のいくものではない。
【0006】
リソソーム蓄積症の処置を改善するために、過去に、改変されたGAAタンパク質が提案されている。特に、国際公開公報第2004064750号の出願及びSun et al. 2006は、分泌経路へのタンパク質の標的化を増強するための方法として、GAAに作動可能に連結させたシグナルペプチドを含む、キメラGAAポリペプチドを開示している。
【0007】
しかしながら、患者に利用可能な治療法は全く申し分がないわけではなく、改善されたGAAポリペプチド及びGAAの生成は依然として当技術分野において必要である。特に、GAAによる長期の処置効力、高いレベルのGAA生成、生成されたGAAポリペプチドに対する改善された免疫寛容、並びにそれを必要とする細胞及び組織によるGAAの取り込みの改善の必要性が依然としてある。さらに、国際公開公報第2004064750号及びSun et al. 2006では、そこに開示されたキメラGAAポリペプチドの組織分布は全く申し分がないわけではない。それ故、関心対象の全ての組織ではなくても大半の組織におけるグリコーゲン蓄積の修復を可能とすることによって、完全に治療するであろうGAAポリペプチドが依然として必要である。
【0008】
発明の要約
本発明は、野生型GAAタンパク質と比較して高いレベルで発現及び分泌され、全身におけるグリコーゲンの病的蓄積の改善された修復を惹起し、これによりGAAに対する免疫寛容を誘導する、GAA変異体に関する。
【0009】
1つの態様によると、本発明は、配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一率を有するヌクレオチド配列を含み、機能的GAAポリペプチドをコードしている、核酸分子に関する。この態様の特定の実施態様では、核酸分子は、配列番号1又は配列番号2に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0010】
別の態様によると、本発明は、キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸分子を提供し、ここでのGAAタンパク質の内因性シグナルペプチドは、ヒトα-1-アンチトリプシン(hAAT)タンパク質のシグナルペプチドにより置換されている。それ故、該核酸分子は、機能的GAAポリペプチドに融合したhAATシグナルペプチドを含むキメラGAAポリペプチドをコードしている。コードされたキメラポリペプチドは、機能的GAAタンパク質であり、ここでのGAAの天然シグナルペプチドに対応するアミノ酸配列は、hAATシグナルペプチドのアミノ酸配列によって置換されている。特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、天然GAAシグナルペプチドとは異なるシグナルペプチド、すなわちhAATシグナルペプチドを含み、そのN末端に融合している、機能的形態のGAAポリペプチドであるキメラポリペプチドをコードしている。特定の実施態様によると、本発明の核酸分子は、配列番号4のhAATシグナルペプチドのアミノ酸配列をコードしているヌクレオチド配列を含む。さらなる実施態様では、GAAコード配列は、インビボにおける導入遺伝子の発現のために配列が最適化されている。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子を含む核酸構築物を提供する。本発明の核酸構築物は発現カセットであり得る。発現カセットは、プロモーター、イントロン、ポリアデニル化シグナル及び/又はエンハンサー(例えばシス調節モチーフ、すなわちCRM)などの1つ以上の調節配列に作動可能に連結させた本発明の核酸分子を含み得る。例示的なプロモーターとしては、肝特異的プロモーター、例えばα-1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターからなる群より選択されたプロモーターが挙げられる。別の特定の実施態様では、該プロモーターは筋肉特異的プロモーター、例えばSpc5-12、MCK及びデスミンプロモーターである。別の実施態様では、該プロモーターは、偏在性プロモーター、例えばCMV、CAG及びPGKプロモーターである。本発明の核酸構築物はさらに、イントロン、特にヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、ニワトリβ-グロビンイントロン、及びSV40イントロンからなる群より選択されたイントロンを含み得る。さらに、該イントロンは、改変されたイントロン、例えば配列番号8の改変されたHBB2イントロン、配列番号10の改変されたFIXイントロン、又は配列番号12の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンであり得る。本発明の具体的な実施態様では、本発明の核酸構築物は、エンハンサー;イントロン;プロモーター、特に肝特異的プロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸配列;及びポリアデニル化シグナルを好ましくはこの順序で含む。具体的な実施態様では、本発明の核酸構築物は、ApoE制御領域;HBB2イントロン、特に改変されたHBB2イントロン;hAATプロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸分子;及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを特にこの順序で含む。特定の実施態様では、核酸構築物は、配列番号13又は配列番号14のヌクレオチド配列を含む。
【0012】
さらなる態様では、本発明はまた、上記に定義されているような核酸分子又は核酸構築物を含むベクターも提供する。特定の実施態様では、該ベクターは、ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又はAAVベクターである。特に、該ウイルスベクターはAAVベクターである。本発明において装備され得る例示的なAAVベクターとしては、AAV1、AAV2、変異AAV2、AAV3、変異AAV3、AAV3B、変異AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、変異AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、例えばAAVcy10及びAAVrh10、AAVrh74、AAVdj、AAV-Anc80、AAV-LK03、AAV2i8、及びブタAAV、例えばAAVpo4及びAAVpo6の血清型に由来するキャプシドを有するAAVベクターが挙げられる。より具体的には、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを有する。
【0013】
さらに、本発明は、上記のような核酸分子、核酸構築物、又はベクターを含む細胞を提供する。該細胞は、例えば、肝細胞又は筋肉細胞であり得る。
【0014】
別の態様によると、本発明はまた、本明細書に記載のような核酸分子によってコードされるキメラGAAポリペプチドも提供する。
【0015】
本発明のさらなる目的は、薬学的に許容される担体に、本発明の核酸分子、本発明の核酸構築物、本発明のベクター、本発明の細胞、又は本発明のキメラGAAポリペプチドを含む、医薬組成物である。
【0016】
本発明はまた、医薬品としての使用のための、上記のような核酸分子、核酸構築物、ベクター、細胞又はキメラGAAポリペプチドを提供する。
【0017】
本発明はまた、糖原病を処置するための方法に使用するための、上記のような核酸分子、核酸構築物、ベクター、細胞又はキメラGAAポリペプチドも提供する。特定の実施態様では、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型、糖原病III型、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、又は心臓の致死性先天性糖原病である。より特定の実施態様では、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型、糖原病III型からなる群より、より特定すると糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択される。さらなるより特定の実施態様では、糖原病は糖原病II型である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】配列最適化と効果的なシグナルペプチドの組合せは、インビトロにおけるhGAAの分泌を増加させる。ヒト肝癌細胞(Huh7)を、対照プラスミド(GFP)、肝特異的プロモーターの転写制御下にある野生型hGAAを発現しているプラスミドを用いてリポフェクタミン(商標)によってトランスフェクトした。hGAA導入遺伝子は、天然シグナルペプチド(pAAV-LSP-sp1-hGAA)又はα-1アンチトリプシンのシグナルペプチド(pAAV-LSP-sp2-hGAA)のいずれかを有していた。sp1-hGAA及びsp2-hGAAをコードしている同cDNAも、配列を最適化した(それぞれ、pAAV-hAAT-sp1-hGAAco1及びpAAV-hAAT-sp2-hGAAco1)。トランスフェクションから48時間後、培養培地中のhGAAの活性を、蛍光発生酵素アッセイによって測定し、組換えhGAAの標準曲線に対するGAA活性を評価した。ヒストグラムプロットは、sp1シグナルペプチドと融合させたhGAA又はhGAAco1において測定されたレベルに対して標準化された分泌hGAAレベルの増加倍数の平均値±標準偏差を示す。3回の異なる実験から導かれたデータ。統計分析は対応のあるt検定によって実施された(示されているように=p<0.05)。
図2】hGAA配列の様々な配列最適化アルゴリズムと効果的なシグナルペプチドの組合せは、インビトロにおける分泌を有意に増加させる。ヒト肝癌細胞(Huh7)を、対照プラスミド(GFP)、sp1シグナルペプチドに融合させた肝特異的プロモーターの転写制御下にある野生型hGAA(wt)、又はsp2に融合させた2つの異なるアルゴリズムに従って最適化させたhGAA配列(それぞれco1及びco2)を発現しているプラスミドを用いてリポフェクタミン(商標)によってトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、培養培地中のhGAAの活性を、蛍光発生酵素アッセイによって測定した。ヒストグラムプロットは、3回の異なる実験から導かれた分泌されたhGAAのレベルの平均値±標準誤差を示す。統計分析は分散分析によって実施された(sp1wtに対して=p<0.05)。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の態様は、配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%の同一率を有し、機能的GAAポリペプチドをコードしている、ヌクレオチド配列を含む核酸分子に関する。配列番号1及び配列番号2は、その前駆体型の天然で野生型のhGAAポリペプチドをコードしている最適化された核酸配列である(すなわち、それはそのシグナルペプチドを含まないhGAAをコードしている)。
【0020】
リソソームの酸性αグルコシダーゼすなわち「GAA」(E.C.3.2.1.20)(1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼ)は、オリゴ糖のα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解することによりグルコースを遊離する、エキソ-1,4-α-D-グルコシダーゼである。GAAの欠損症により、ポンペ病とも呼ばれる糖原病II型(GSDII)が起こる(この用語は正式には乳児期発症型の疾患を指す)。それはグリコーゲンの完全分解を触媒し、分岐点では緩徐である。第17番染色体上の28kbのヒト酸性αグルコシダーゼ遺伝子は3.6kbのmRNAをコードし、これは951アミノ酸ポリペプチドを生成する(Hoefsloot et al., (1988) EMBO J. 7: 1697; Martiniuk et al., (1990) DNA and Cell Biology 9: 85)。該酵素は、小胞体において同時翻訳的なN結合グリコシル化を受ける。それは110kDaの前駆体型として合成され、十分なグリコシル化修飾、リン酸化によって、及びタンパク質分解プロセシングによって約90kDaのエンドソーム内の中間体を通して最終的なリソソーム内の76及び67kDa型へと成熟する(Hoefsloot, (1988) EMBO J. 7: 1697; Hoefsloot et al., (1990) Biochem. J. 272: 485; Wisselaar et al., (1993) J. Biol. Chem. 268: 2223; Hermans et al., (1993) Biochem. J. 289: 681)。
【0021】
糖原病II型患者における酸性αグルコシダーゼ欠損症は、リソソーム内のグリコーゲンの大量の蓄積を引き起こし、細胞機能を破壊する(Hirschhorn, R. and Reuser, A. J. (2001), in The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease, (eds, Scriver, C. R. et al.) pages 3389-3419 (McGraw-Hill, New York)。最も頻度の高い乳児型では、患者は、進行的な筋肉の変性及び心筋症を示し、2歳になる前に死亡する。若年発症型及び成人発症型においては重度な衰弱が存在する。
【0022】
さらに、他の糖原病を有する患者は、最適化された形態のGAAの投与から恩恵を受け得る。例えば、GAAの投与が、糖原病III型(GSD III)患者由来の初代筋芽細胞におけるグリコーゲンを減少させることが示されている(Sun et al. (2013) Mol Genet Metab 108(2): 145;国際公開公報第2010/005565号)。
【0023】
本明細書において使用する「GAA」又は「GAAポリペプチド」という用語は、成熟した(約76又は約67kDa)及び前駆体の(例えば約110kDa)GAA、特に前駆体型のGAA、並びに、GAAの機能的誘導体である、すなわち、GAAの生物学的機能を保持している(すなわち、天然GAAタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有する、例えば、上記に定義されているようにグリコーゲンを加水分解することができる)改変された又は突然変異した(挿入(群)、欠失(群)及び/又は置換(群)によって)GAAタンパク質又はその断片及びGAA変異体(例えば、Kunita et al., (1997) Biochemica et Biophysica Acta 1362: 269によって記載されているようなGAA II;GAA多型及びSNPは、Hirschhorn, R. and Reuser, A. J. (2001) In The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease (Scriver, C. R. , Beaudet, A. L., Sly, W. S. & Valle, D. Eds. ), pp. 3389- 3419. McGraw-Hill, New York, see pages 3403-3405によって記載されている)を包含する。当技術分野において公知である任意のGAAコード配列を使用し得、例えば、配列番号3;GenBankアクセッション番号NM_00152及びHoefsloot et al., (1988) EMBO J. 7: 1697及びVan Hove et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 65(ヒト)、GenBankアクセッション番号NM_008064(マウス)、並びにKunita et al., (1997) Biochemica et Biophysica Acta 1362: 269(ウズラ)を参照されたい。
【0024】
GAAポリペプチドのコード配列は、トリ及び哺乳動物種をはじめとする任意の入手源から得ることができる。本明細書において使用する「トリ」という用語は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、及びキジを含むがこれらに限定されない。本明細書において使用する「哺乳動物」という用語は、ヒト、サル、及び他の非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ類などを含むがこれらに限定されない。本発明の実施態様では、本発明の核酸は、ヒト、マウス、又はウズラ、特にヒトのGAAポリペプチドをコードする。さらなる特定の実施態様では、本発明の核酸分子によってコードされるGAAポリペプチドは、配列番号15又は19に示されるアミノ酸配列を含み、これはそのシグナルペプチドを含まない2つのhGAA変異体に相当する(注目すべきは、hGAAの天然シグナルペプチドは、配列番号16又は配列番号18におけるアミノ酸1~27に相当し、これはその天然シグナルペプチドを含む以外は配列番号15及び19の2つのhGAA変異体に相当する)。したがって、本発明の特定の実施態様では、本発明の核酸によってコードされるGAAポリペプチドは、配列番号19又は配列番号15のアミノ酸配列に融合した配列番号4に示されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
本発明の核酸分子は好ましくは、配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも92%の同一率、特に少なくとも95%の同一率、例えば少なくとも98、99、又は100%の同一率を有する。
【0026】
本発明の別の実施態様では、本発明の核酸分子は、野生型hGAAコード配列の配列である、配列番号3に示される配列のヌクレオチド82~2859に対して少なくとも75%(例えば少なくとも77%)、少なくとも80%又は少なくとも82%(例えば少なくとも83%)の同一率を有する(ヌクレオチド1~81は、hGAAの天然シグナルペプチドをコードしている部分である)。
【0027】
「同一な」という用語及びその派生語は、2つの核酸分子間の配列同一性を指す。2つの比較される両方の配列における位置が、同じ塩基によって占められている場合、例えば、2つのそれぞれのDNA分子における位置がアデニンによって占められている場合、該分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一率は、2つの配列によって共有される一致している位置の数を、比較される位置の数で割り、これに100を乗じた関数である。例えば、2つの配列における10中6個の位置が一致する場合、2つの配列は60%同一である。一般的に、最大同一率が得られるように2つの配列をアラインさせて比較される。BLAST又はFASTAなどの、当業者には公知である様々なバイオインフォマティクスツールを使用して、核酸配列をアラインさせることができる。
【0028】
特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号1又は配列番号2に示される核酸配列を含むか、実質的にからなるか、又はからなる、機能的GAAをコードしている核酸配列を含む。
【0029】
さらに、本発明の核酸分子は、機能的GAAタンパク質をコードし、すなわち、それは発現されると野生型GAAタンパク質の機能を有する、ヒトGAAタンパク質をコードしている。上記に定義されているように、野生型GAAの機能は、オリゴ糖及び多糖、より特定するとグリコーゲンのα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解することによりグルコースを遊離することである。本発明の核酸によってコードされる機能的GAAタンパク質は、配列番号1~3の核酸配列によってコードされる野生型GAAタンパク質と比較して、グリコーゲンに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は少なくとも100%の加水分解活性を有し得る。本発明の核酸によってコードされるGAAタンパク質の活性は、配列番号1~3の核酸配列によってコードされる野生型GAAタンパク質の活性に対して、100%を超えることさえあり得、例えば110%、120%、130%、140%を超え、又はさらには150%を超えることさえあり得る。
【0030】
当業者は、本発明に記載の核酸が機能的GAAタンパク質を発現するかどうかを容易に決定することができる。適切な方法は、当業者には明らかであろう。例えば、1つの適切なインビトロでの方法は、プラスミド又はウイルスベクターなどのベクターに核酸を挿入する工程、293T細胞又はHeLa細胞などの宿主細胞又はHuh7などの他の細胞をベクターを用いてトランスフェクト又は形質導入する工程、及びGAA活性についてアッセイする工程を含む。あるいは、適切なインビボでの方法は、核酸を含有しているベクターをポンペ病又は別の糖原病のマウスモデルに形質導入する工程、並びにマウスの血漿中の機能的GAA及び組織中のGAAの存在についてアッセイする工程を含む。適切な方法は、以下の実験部においてより詳細に記載されている。
【0031】
本発明者らは、上記の核酸分子が、野生型GAA cDNAと比較して驚くべき程に高いレベルの機能的GAAタンパク質の発現を引き起こすことを発見した。このことは、この核酸分子を使用することにより高いレベルのGAAタンパク質を生成し得、GAAの発現及び/又は活性が欠損している状況、あるいは高い発現レベルのGAAが糖原病などの疾患を寛解することができる状況において、特に関心が持たれることを意味する。特に、糖原病は、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、又は心臓の致死性先天性糖原病であり得る。より特定すると、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択され、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択される。さらにより特定した実施態様では、糖原病は糖原病II型である。特に、本発明の核酸分子は、GAA欠損容態、又はグリコーゲンの蓄積を伴う他の容態、例えば糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型を処置するための遺伝子療法において有用であり得る。さらにより特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、糖原病II型を処置するための遺伝子療法において有用であり得る。
【0032】
機能的GAAをコードしている本発明の核酸分子の配列は、インビボにおけるGAAポリペプチドの発現のために最適化されている。配列の最適化は、コドン最適化、GC含量の増加、CpGアイランドの数の低減、代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数の低減、並びにスプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位の数の低減をはじめとする、核酸配列における多くの変化を含み得る。遺伝子コードの縮重のために、異なる核酸分子が同じタンパク質をコードし得る。また、様々な生物の遺伝子コードは、他のアミノ酸よりも同じアミノ酸をコードするいくつかのコドンの1つを使用することに偏ることが多いことも周知である。コドンの最適化を通して、所与の細胞状況に存在するコドンバイアスを利用した変化をヌクレオチド配列に導入し、これにより、結果として得られたコドンの最適化されたヌクレオチド配列は、このような所与の細胞状況において、コドンの最適化されていない配列と比較して比較的高いレベルで発現される可能性がより高くなる。本発明の好ましい実施態様では、機能的GAAをコードしているこのような配列の最適化されたヌクレオチド配列は、例えばヒトに特異的なコドン使用頻度バイアスを利用することによってコドンが最適化されることにより、同じGAAタンパク質をコードしているコドンの最適化されていないヌクレオチド配列と比較して、ヒト細胞におけるその発現が改善されている。
【0033】
特定の実施態様では、最適化されたGAAコード配列は、配列番号3の野生型hGAAコード配列のヌクレオチド82~2859と比較して、コドンが最適化されている、並びに/あるいは、増加したGC含量を有する、並びに/あるいは代替オープンリーディングフレームの数が減少している、並びに/あるいはスプライスドナー部位及び/又はスプライスアクセプター部位の数が減少している。例えば、本発明の核酸配列では、野生型GAA配列の配列と比較して、GAA配列内のGC含量が少なくとも2、3、4、5、又は10%増加している。特定の実施態様では、本発明の核酸配列では、野生型GAAヌクレオチド配列の配列と比較して、GAA配列内のGC含量は2、3、4、又はより特定すると5%若しくは10%(特に5%)増加している。特定の実施態様では、機能的GAAポリペプチドをコードしている本発明の核酸配列は、配列番号3に示される配列のヌクレオチド82~2859に対して「実質的に同一」である、すなわち、約70%同一、より好ましくは約80%同一、さらにより好ましくは約90%同一、さらにより好ましくは約95%同一、さらにより好ましくは約97%、98%、又はさらには99%同一である。上記のように、GC含量及び/又はARFの数に加えて、配列の最適化はまた、配列内のCpGアイランドの数の低減並びに/あるいはスプライスドナー部位及びアクセプター部位の数の低減も含み得る。勿論、当業者には周知であるように、配列の最適化は、これら全てのパラメーター間のバランスであり、このことは、上記の少なくとも1つのパラメーターが改善されていれば、他のパラメーターの1つ以上が改善されていなくても、最適化された配列により、インビボにおける導入遺伝子の改善、例えば改善された発現及び/又は導入遺伝子に対する免疫応答の低減などがもたらされる限り、配列は最適化されたと考えられ得ることを意味する。
【0034】
さらに、ヒト細胞のコドン使用頻度に対する、機能的GAAをコードしているヌクレオチド配列の適応性は、コドン適応指標(codon adaptation index)(CAI)として表現され得る。コドン適応指標は本明細書において、高度に発現されているヒト遺伝子のコドン使用頻度に対する、遺伝子のコドン使用頻度の相対的適応性の尺度として定義される。各コドンの相対的適応性(w)は、同じアミノ酸に対する最も豊富なコドンの使用頻度に対する、各コドンの使用頻度の比である。CAIは、これらの相対的な適応値の幾何学的平均値として定義される。非同義コドン及び終止コドン(遺伝子コードに依存)は除外される。CAI値の範囲は0~1であり、より高い数値は、最も豊富なコドンの比率がより高いことを示す(Sharp and Li, 1987, Nucleic Acids Research 15: 1281-1295参照; Kim et al, Gene. 1997, 199:293-301; zur Megede et al, Journal of Virology, 2000, 74: 2628-2635も参照)。好ましくは、GAAをコードしている核酸分子は、少なくとも0.75(特に0.77)、0.8、0.85、0.90、0.92、又は0.94のCAIを有する。
【0035】
1つの実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号1又は配列番号2のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に対して、0~50、0~30、0~20、0~15、0~10、又は0~5個のアミノ酸変化を有するタンパク質をコードしている。さらに、本発明の核酸によってコードされるGAAタンパク質は、当技術分野において公知であるGAA変異体であり得、ここでの本発明の核酸分子は、当技術分野において公知であるGAAタンパク質に対して0~50、0~30、0~20、0~15、0~10、又は0~5個のアミノ酸変化を有するタンパク質をコードしている。GAAタンパク質の機能的変異体を設計するための基盤としての役目を果たし得る、当技術分野において公知であるこのようなGAAタンパク質は特に、UniprotへのGAAの登録に見られ得る(アクセッション番号P10253;GenBank CAA68763.1に対応;配列番号16)。さらなる特定の実施態様では、本発明の核酸配列のGAA部分は、変異GAAポリペプチド、又は本明細書において定義されているようなこのようなペプチドの機能的変異体、例えば、Genbankアクセッション番号AAA52506.1(配列番号20)、EAW89583.1(配列番号21)及びABI53718.1(配列番号22)として同定されたポリペプチドからなる群より選択されたものをコードしている。他の変異GAAポリペプチドとしては、国際公開公報第2012/145644号、国際公開公報第00/34451号及び米国特許第6,858,425号に記載のものが挙げられる。特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号16又は配列番号18に示されるアミノ酸配列から誘導された親GAAポリペプチドをコードしている。
【0036】
特定の実施態様では、本発明の核酸分子によってコードされるGAAポリペプチドは機能的GAAであり、配列番号16又は配列番号18に示されるhGAAタンパク質のアミノ酸残基28~952に対して、少なくとも80%、特に少なくとも85%、90%、95%、より特定すると少なくとも96%、97%、98%、又は99%の配列同一率を有する。特定の実施態様では、本発明の核酸分子によってコードされるGAAタンパク質は、配列番号16又は配列番号18のアミノ酸残基28~952の配列を有する。
【0037】
「核酸配列」(又は核酸分子)という用語は、本発明に記載のGAAポリペプチドをコードしている、一本鎖又は二本鎖の形態のDNA分子又はRNA分子、特にDNAを指す。
【0038】
本発明はまた、GAAポリペプチドに連結されたhAATシグナルペプチドを含む、キメラの機能的GAAポリペプチドをコードしている核酸分子にも関する。
【0039】
特に、本発明者らはさらに驚くべきことに、配列最適化とシグナルペプチドの置換の組合せにより、機能的タンパク質のより高い発現レベルの生成及びより高い分泌が生じることを示した。それ故、本発明の核酸分子は、キメラGAAポリペプチドをコードし得、ここでの該核酸分子は、2つの部分を含む:
-シグナルペプチドをコードしている部分(別名「シグナルペプチド部分」とも呼ばれる)、及び
-上記に定義されているような機能的GAAポリペプチドをコードしている部分。
【0040】
本発明の核酸分子によってコードされるキメラGAAポリペプチドでは、シグナルペプチド部分は、hAATタンパク質のシグナルペプチドをコードしている。特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、GAAポリペプチドに作動可能に連結させたhAATのシグナルペプチドを含む、キメラGAAポリペプチドをコードしている最適化された配列であり得る。
【0041】
野生型GAAポリペプチドと比較して、野生型GAAの内因性シグナルペプチドは、外因性シグナルペプチド、すなわち、hAATのシグナルペプチドであるGAAとは異なるタンパク質に由来するシグナルペプチドを用いて置換されている。GAAタンパク質の残りに融合させた外因性シグナルペプチドは、その天然シグナルペプチドを含む対応するGAAポリペプチドと比較して、結果として得られたキメラGAAポリペプチドの分泌を増加させる。さらに、本発明の特定の実施態様によると、hAATタンパク質のシグナルペプチドに対応するヌクレオチド配列は、上記に提供されているような最適化された配列であり得る。
【0042】
細胞から分泌される新規に合成されたGAAの相対的比率は、当技術分野において公知であり実施例に記載されているような方法によって慣用的に決定され得る。分泌されたタンパク質は、細胞培養培地、血清、ミルクなどの中の、タンパク質それ自体を直接測定することによって(例えばウェスタンブロットによって)又はタンパク質活性アッセイ(例えば酵素アッセイ)によって検出され得る。
【0043】
当業者はさらに、例えば、制限酵素部位の付加などの核酸構築物の操作の結果として、これらの追加のアミノ酸によりシグナルペプチド又はGAAポリペプチドが非機能的とならない限り、キメラGAAポリペプチドは追加のアミノ酸を含有することができることを理解するだろう。追加のアミノ酸は切断されても、又は、保持することで非機能的なポリペプチドとならない限り、成熟ポリペプチドによって保持されていてもよい。
【0044】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む核酸構築物にも関する。核酸構築物は、1つ以上の発現制御配列、及び/又は導入遺伝子の発現を改善する他の配列、及び/又はコードされているタンパク質の分泌を増強する配列、及び/又はコードされているタンパク質の取り込みを増強する配列に作動可能に連結させた、本発明の核酸配列を含む、発現カセットに対応し得る。本明細書において使用する「作動可能に連結された」という用語は、機能的な関係でのポリヌクレオチド配列の連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に配置されている場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーター、又は別の転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合にコード配列に作動可能に連結されている。このような発現制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー(例えばシス調節モジュール(CRM))、イントロン、ポリAシグナルなどは当技術分野において公知である。
【0045】
特に、発現カセットは、プロモーターを含み得る。該プロモーターは、遍在的又は組織特異的プロモーター、特にGAAの発現が望ましい細胞又は組織、例えばGAA欠損患者においてGAAの発現が望ましい細胞又は組織において発現を促進することのできるプロモーターであり得る。特定の実施態様では、該プロモーターは、肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)(配列番号5)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、チロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーター、LSPプロモーター(甲状腺ホルモン結合性グロブリンプロモーター配列、2コピーのα1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー配列、及びリーダー配列を含む、34.Ill, C. R., et al. (1997). Optimization of the human factor VIII complementary DNA expression plasmid for gene therapy of hemophilia A. Blood Coag. Fibrinol. 8: S23-S30)などである。他の有用な肝特異的プロモーターも当技術分野において公知であり、例えば、コールドスプリングハーバーラボラトリーの編纂した肝特異的遺伝子プロモーターデータベース(http://rulai.cshl.edu/LSPD/)に列挙されているものなどである。本発明の脈絡における好ましいプロモーターは、hAATプロモーターである。別の実施態様では、該プロモーターは、関心対象のある組織又は細胞(例えば筋肉細胞)及び肝細胞における発現を指令するプロモーターである。例えば、ある程度までは、デスミン、Spc5-12、及びMCKプロモーターなどの筋肉細胞に特異的なプロモーターは、肝細胞への幾分の発現の漏出を呈し得、これは、本発明の核酸から発現されるGAAタンパク質に対する被験者の免疫寛容を誘導するのに有益であり得る。
【0046】
他の組織特異的なプロモーター又は組織特異的ではないプロモーターも本発明の実施に有用であり得る。例えば、発現カセットは、肝特異的プロモーターとは異なるプロモーターである組織特異的プロモーターを含み得る。例えば、該プロモーターは、筋肉特異的プロモーター、例えばデスミンプロモーター(及びデスミンプロモーター変異体、例えば天然又は人工のエンハンサーを含むデスミンプロモーター)、SPc5-12又はMCKプロモーターであり得る。別の実施態様では、該プロモーターは、他の細胞系統に特異的なプロモーター、例えば赤血球系統の細胞に由来するGAAポリペプチドの発現のためのエリスロポエチンプロモーターである。
【0047】
別の実施態様では、該プロモーターは偏在性プロモーターである。代表的な偏在性プロモーターとしては、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、SV40初期プロモーターなどが挙げられる。
【0048】
さらに、該プロモーターはまた、内因性プロモーター、例えばアルブミンプロモーター又はGAAプロモーターであり得る。
【0049】
特定の実施態様では、該プロモーターは、エンハンサー配列、例えばシス調節モジュール(CRM)又は人工エンハンサー配列に結合している。例えば、該プロモーターは、エンハンサー配列、例えばヒトApoE制御領域(又はヒトアポリポタンパク質E/C-I遺伝子座、肝制御領域HCR-1-Genbankアクセッション番号U32510、配列番号6に示される)に結合していてもよい。特定の実施態様では、ApoE配列などのエンハンサー配列は、肝特異的プロモーター、例えば上記に列挙されているプロモーター、特に例えばhAATプロモーターに結合している。本発明の実施に有用な他のCRMとしては、Rincon et al., Mol Ther. 2015 Jan;23(1):43-52, Chuah et al., Mol Ther. 2014 Sep;22(9):1605-13又はNair et al., Blood. 2014 May 15;123(20):3195-9に記載のものが挙げられる。
【0050】
別の特定の実施態様では、核酸構築物は、イントロン、特にプロモーターとGAAコード配列の間に配置されたイントロンを含む。イントロンは、mRNAの安定性及びタンパク質の生成を増加させるために導入され得る。さらなる実施態様では、核酸構築物は、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、凝固因子IX(FIX)イントロン、SV40イントロン、又はニワトリβ-グロビンイントロンを含む。別のさらなる実施態様では、本発明の核酸構築物は、該イントロンに見られる代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるために又はさらには完全に除去するために設計された改変されたイントロン(特に改変されたHBB2又はFIXイントロン)を含有している。好ましくは、その長さが50bpにわたり、開始コドンを有する読み枠内に終始コドンを有するARFが除去される。ARFは、イントロンの配列を改変することによって除去されてもよい。例えば、ヌクレオチドの置換、挿入、又は欠失を用いて、好ましくはヌクレオチドの置換によって改変が行なわれ得る。一例として、関心対象のイントロン配列に存在するATG又はGTG開始コドンにおける1つ以上のヌクレオチド、特に1つのヌクレオチドを置換することにより、非開始コドンがもたらされ得る。例えば、ATG又はGTGを、関心対象のイントロンの配列内の、開始コドンではない、CTGによって置換し得る。
【0051】
核酸構築物に使用される古典的なHBB2イントロンを配列番号7に示す。例えば、このHBB2イントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、構築物に含まれる改変されたHBB2イントロンは、配列番号8に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なFIXイントロンは、ヒトFIXの第一イントロンから得られ、配列番号9に示されている。FIXイントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたFIXイントロンは、配列番号10に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なニワトリ-βグロビンイントロンは、配列番号11に示される。ニワトリ-βグロビンイントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたニワトリ-βグロビンイントロンは、配列番号12に示される配列を有する。
【0052】
本発明者らは以前に、国際公開公報第2015/162302号において、このような改変されたイントロン、特に改変されたHBB2イントロン又はFIXイントロンが有益な特性を有し、導入遺伝子の発現を有意に改善させることができることを示した。
【0053】
特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、場合によりエンハンサーが前に存在するプロモーター、本発明のコード配列(すなわち、最適化された本発明のGAAコード配列、本発明のキメラGAAコード配列、または本発明のキメラかつ最適化されたGAAコード配列)、及びポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、又は別の天然に存在するか若しくは人工のポリアデニル化シグナル)を含む、発現カセットである。特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、場合によりエンハンサー(例えばApoE制御領域)が前に存在するプロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。さらなる特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、ApoE制御領域などのエンハンサー、プロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。本発明のさらなる特定の実施態様では、発現カセットは、5’から3’の方向に、ApoE制御領域、hAAT肝特異的プロモーター、HBB2イントロン(特に上記に定義されているような改変されたHBB2イントロン)、本発明のコード配列、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、例えばそれぞれ配列番号1及び配列番号2の配列の最適化されたGAA核酸分子を含む配列番号13及び配列番号14に示される核酸構築物を含む。
【0054】
特定の実施態様では、発現カセットは、ApoE制御領域、hAAT肝特異的プロモーター、コドン最適化HBB2イントロン、本発明のコード配列、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。
【0055】
本発明の核酸構築物の設計の際に、当業者は、該構築物を細胞又は器官に送達するために使用されるベクターのサイズ限界を配慮することに気を付けるだろう。特に、当業者は、AAVベクターの主な限界はその積載能であり、これはAAV血清型によって異なり得るが、ほぼ親ウイルスゲノムのサイズが限界であると考えられている。例えば、5kbが、AAV8キャプシドにパッケージングされると通常考えられている最大のサイズである。(Wu Z. et al., Mol Ther., 2010, 18(1): 80-86; Lai Y. et al., Mol Ther., 2010, 18(1): 75-79; Wang Y. et al., Hum Gene Ther Methods, 2012, 23(4): 225-33)。したがって、当業者は、本発明の実施の際に、AAV5’-及び3’-ITRをコードしている配列を含む、結果として得られる核酸配列が、装備されるAAVベクターの積載能の好ましくは110%を超えないように、特に好ましくは5.5kbを超えないように、本発明の核酸構築物の成分を選択するように気を付けるだろう。
【0056】
本発明はまた、本明細書に開示されているような核酸分子又は構築物を含むベクターにも関する。特に、本発明のベクターは、タンパク質の発現に、好ましくは遺伝子療法に使用するのに適したベクターである。1つの実施態様では、該ベクターはプラスミドベクターである。別の実施態様では、該ベクターは、本発明の核酸分子、特に本発明のGAAポリペプチドをコードしているメッセンジャーRNAを含有している、ナノ粒子である。別の実施態様では、該ベクターは、活動亢進スリーピングビューティ(SB100X)トランスポゾン系(Mates et al. 2009)などの、標的細胞のゲノム内への本発明の核酸分子又は構築物の組み込みを可能とする、トランスポゾンに基づいた系である。別の実施態様では、該ベクターは、肝組織又は肝細胞、筋肉細胞、CNS細胞(例えば脳細胞)、又は造血幹細胞、例えば赤血球系統の細胞(例えば赤血球)などの関心対象の任意の細胞を標的化する、遺伝子療法に適したウイルスベクターである。この場合、本発明の核酸構築物は、当技術分野において周知であるような、効果的なウイルスベクターを生成するのに適した配列も含有している。特定の実施態様では、該ウイルスベクターは、組込み用ウイルスから得られる。特に、該ウイルスベクターは、レトロウイルス又はレンチウイルスから誘導され得る。さらなる特定の実施態様では、該ウイルスベクターはAAVベクター、例えば肝組織又は肝細胞を形質導入するのに適したAAVベクター、より特定するとAAV-1、-2及びAAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する工学操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する工学操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V型を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清型、例えばAAVpo4及びAAVpo6などのベクター又はレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター及びα-レトロウイルスである。当技術分野において公知であるように、使用するのに考えられる具体的なウイルスベクターに応じて、追加の適切な配列が、機能的なウイルスベクターを得るために本発明の核酸構築物に挿入されるだろう。適切な配列としては、AAVベクター用のAAV ITR、又はレンチウイルスベクター用のLTRが挙げられる。したがって、本発明はまた、それぞれの側においてITR又はLTRによってフランキングされた、上記のような発現カセットにも関する。
【0057】
ウイルスベクターの利点は、この開示の以下の部分において考察されている。ウイルスベクターが、本発明の核酸分子又は構築物を送達するのに好ましく、例えば、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又は非病原性パルボウイルス、より好ましくはAAVベクターがある。ヒトパルボウイルスアデノ随伴ウイルス(AAV)は、感染した細胞のゲノムに組み込むことにより潜伏感染を確立することのできる、天然では複製欠損であるディペンドウイルスである。最後の特性は、哺乳動物ウイルスの中では独特なようである。なぜなら、組込みが、第19番染色体(19q13.3-qter)上に位置するAAVS1と呼ばれるヒトゲノム内の特定の部位で起こるからである。
【0058】
それ故、AAVベクターは、ヒト遺伝子療法のためのベクター候補としてかなりの関心を集めた。ウイルスの好ましい特性には、あらゆるヒト疾患を伴わないこと、分裂中の細胞及び分裂していない細胞の両方に感染することができること、及び様々な組織に由来する多種多様な細胞株に感染することができることがある。
【0059】
ヒト又は非ヒト霊長類(NHP)から単離され十分に特徴付けられたAAVの血清型の中で、ヒト血清型2は、遺伝子導入用ベクターとして開発された最初のAAVである。他の現在使用されているAAV血清型としては、AAV-1、AAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する工学操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する工学操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V型を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清型、例えばAAVpo4及びAAVpo6、並びにチロシン、リジン、及びセリンキャプシド突然変異体のAAV血清型などが挙げられる。さらに、他の非天然の工学操作された変異体及びキメラAAVも有用であり得る。
【0060】
AAVウイルスを慣用的な分子生物学技術を使用して工学操作し得、これにより、核酸配列を細胞特異的に送達するために、免疫原性を最小限とするために、安定性及び粒子の寿命を調整するために、効果的な分解のために、核への正確な送達のために、これらの粒子を最適化することが可能となる。
【0061】
ベクターへの構築のための望ましいAAV断片は、キャップタンパク質(vp1、vp2、vp3を含む)及び超可変領域、repタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40を含む)及びこれらのタンパク質をコードしている配列を含む。これらの断片は、様々なベクター系及び宿主細胞において容易に利用され得る。
【0062】
Repタンパク質を欠失しているAAV系組換えベクターは、低い効率で宿主のゲノムに組み込み、標的細胞内で数年間におよび持続し得る安定な環状エピソームとして主に存在する。AAV天然血清型を使用する代わりに、天然に存在しないキャプシドタンパク質を有するAAVを含むがこれに限定されない、人工的なAAV血清型を本発明の脈絡において使用し得る。このような人工的なキャプシドは、選択された異なるAAV血清型から、同じAAV血清型の非連続的部分から、AAVではないウイルス入手源から、又はウイルスではない入手源から得ることのできる異種配列と組み合わせた、選択されたAAV配列(例えばvp1キャプシドタンパク質の断片)を使用して、任意の適切な技術によって作製され得る。人工的なAAV血清型は、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシド、又は「ヒト化」AAVキャプシドであり得るがこれらに限定されない。
【0063】
したがって、本発明は、本発明の核酸分子又は構築物を含むAAVベクターに関する。本発明の脈絡において、AAVベクターは、関心対象の標的細胞、特に肝癌細胞に形質導入することのできるAAVキャプシドを含む。特定の実施態様によると、AAVベクターは、AAV-1、-2、AAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する工学操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する工学操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V型を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV、例えばAAVpo4及びAAVpo6、並びにチロシン、リジン、及びセリンキャプシド突然変異体のAAV血清型などのものである。特定の実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型のものである(すなわち、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型のキャプシドを有する)。さらなる特定の実施態様では、AAVベクターは偽型ベクターであり、すなわち、そのゲノム及びキャプシドは、異なる血清型のAAVに由来する。例えば、偽型AAVベクターは、そのゲノムが上記の1つのAAV血清型に由来し、そのキャプシドが別の血清型に由来する、ベクターであり得る。例えば、偽型ベクターのゲノムは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型に由来するキャプシドを有し得、そのゲノムは異なる血清型に由来し得る。特定の実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、又はAAVrh74血清型、特にAAV8又はAAV9血清型、より特定するとAAV8血清型のキャプシドを有する。
【0064】
ベクターは、導入遺伝子を筋肉細胞に送達するのに使用するためのものである具体的な実施態様では、AAVベクターは、とりわけ、AAV8、AAV9、及びAAVrh74からなる群より選択され得る。ベクターは、導入遺伝子を肝細胞に送達するのに使用するためのものである別の具体的な実施態様では、AAVベクターは、とりわけ、AAV5、AAV8、AAV9、AAV-LK03、AAV-Anc80及びAAV3Bからなる群より選択され得る。
【0065】
別の実施態様では、キャプシドは改変されたキャプシドである。本発明の脈絡において、「改変されたキャプシド」は、キメラキャプシド、又は1つ以上の野生型AAV VPキャプシドタンパク質に由来する1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質を含むキャプシドであり得る。
【0066】
特定の実施態様では、AAVベクターはキメラベクターであり、すなわち、そのキャプシドは、少なくとも2つの異なるAAV血清型に由来するVPキャプシドタンパク質を含むか、又は、少なくとも2つのAAV血清型に由来するVPタンパク質領域若しくはドメインと組み合わせた少なくとも1つのキメラVPタンパク質を含む。肝細胞を形質導入するのに有用なこのようなキメラAAVベクターの例は、Shen et al., Molecular Therapy, 2007及びTenney et al., Virology, 2014に記載されている。例えば、キメラAAVベクターは、AAV8キャプシド配列と、AAV8血清型とは異なるAAV血清型の配列、例えば上記に具体的に記載されているもののいずれかとの組合せから得ることができる。別の実施態様では、AAVベクターのキャプシドは、国際公開公報第2015013313号に記載のものなどの1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質、特に、高い肝指向性を示す、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4及びRHM15-6キャプシド変異体を含む。
【0067】
別の実施態様では、改変されたキャプシドはまた、エラープローンPCR及び/又はペプチド挿入(例えばBartel et al., 2011に記載のような)によって挿入されたキャプシド改変に由来し得る。さらに、キャプシド変異体は、チロシン突然変異体などの単一アミノ酸変化を含み得る(例えば、Zhong et al., 2008に記載のような)。
【0068】
さらに、AAVベクターのゲノムは、一本鎖又は自己相補的二本鎖ゲノムのいずれかであり得る(McCarty et al., Gene Therapy, 2003)。自己相補性二本鎖AAVベクターは、AAV末端反復配列の1つから末端解離部位(trs)を欠失させることによって作製される。これらの改変されたベクター(その複製ゲノムは、野生型AAVゲノムの半分の長さである)は、DNA二量体をパッケージングする傾向を有する。好ましい実施態様では、本発明の実施に装備されるAAVベクターは一本鎖ゲノムを有し、さらに好ましくはAAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含む。
【0069】
特に好ましい実施態様では、本発明は、一本鎖又は二本鎖の自己相補性ゲノム(例えば一本鎖ゲノム)に、本発明の核酸構築物を含む、AAVベクターに関する。1つの実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含む。さらなる特定の実施態様では、該核酸は、プロモーター、特に偏在性プロモーター又は肝特異的プロモーターに作動可能に連結されている。特定の変異体の実施態様によると、該プロモーターは、遍在性プロモーター、例えばサイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、及びSV40初期プロモーターである。特定の変異体では、該偏在性プロモーターはCAGプロモーターである。別の変異体によると、該プロモーターは肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターである。特定の変異体では、肝特異的プロモーターは、配列番号5のhAAT肝特異的プロモーターである。さらなる特定の実施態様では、本発明のAAVベクターのゲノムに含まれる核酸構築物はさらに、上記のようなイントロン、例えばプロモーターと、GAAコード配列をコードしている核酸配列(すなわち、本発明の最適化されたGAAコード配列、本発明のキメラGAAコード配列、または本発明のキメラかつ最適化されたGAAコード配列)との間に配置されたイントロンを含む。AAVベクターゲノム内に導入された核酸構築物内に含まれ得る代表的なイントロンとしては、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、及びニワトリβ-グロビンイントロンが挙げられるがこれらに限定されない。AAVベクターのゲノム内の該イントロンは、古典的な(すなわち改変されていない)イントロンであっても、又は、該イントロン内の代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるために若しくはさらには完全に除去するために設計された改変されたイントロンであってもよい。本発明の核酸がAAVベクター内に導入されている、この実施態様の実施に使用され得る、改変されたイントロン及び改変されていないイントロンは、上記に徹底的に記載されている。特定の実施態様では、本発明のAAVベクター、特にAAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含むAAVベクターは、そのゲノム内に、改変された(すなわち最適化された)イントロン、例えば配列番号8の改変されたHBB2イントロン、配列番号10の改変されたFIXイントロン、及び配列番号12の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンを含む。さらなる特定の実施態様では、本発明のベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含み、5’から3’の方向に、AAV 5’-ITR(例えばAAV2 5’-ITR);ApoE制御領域;hAAT肝特異的プロモーター;HBB2イントロン(特に上記に定義されているような改変されたHBB2イントロン);本発明のGAAコード配列;ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル;及びAAV 3’-ITR(例えばAAV2 3’-ITR)を含有しているゲノム、例えばAAV 5’-ITR(例えばAAV2 5’-ITR)及びAAV 3’-ITR(例えばAAV2 3’-ITR)によってフランキングされている配列番号13に示される核酸構築物を含むゲノムを含む、AAVベクターである。
【0070】
本発明の特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、上記のような肝特異的プロモーターを含み、該ベクターは、上記のような肝組織又は肝細胞を形質導入することのできるウイルスベクターである。この実施態様のお蔭で、肝癌細胞において分泌可能な形態のGAAを発現させ、かつタンパク質に対する免疫寛容を誘発するための高度に効果的かつ最適化されたベクターを開発する際に、肝臓の免疫寛容誘発特性及び代謝特性が有利には装備される。
【0071】
さらに、さらなる特定の実施態様では、本発明は、関心対象の細胞における遺伝子送達及び処置効力を改善するための、2つのベクター、例えば2つのウイルスベクター、特に2つのAAVベクターの組合せを提供する。例えば、2つのベクターは、これらの2つのそれぞれのベクター内に、1つの異なるプロモーターの制御下にある、本発明のGAAタンパク質をコードしている本発明の核酸分子を有し得る。特定の実施態様では、一方のベクターは、肝特異的プロモーターであるプロモーター(例えば上記のようなものの1つ)を含み、他方のベクターは、糖原病の処置のための関心対象の別の組織に特異的であるプロモーター、例えば筋肉特異的プロモーター、例えばデスミンプロモーターを含む。この実施態様の特定の変異体では、このベクターの組合せは、国際公開公報第2015196179号に記載のように作製された、複数の共パッケージングされたAAVベクターに相当する。
【0072】
別の態様では、本発明はキメラGAAポリペプチドを提供し、ここでの天然に存在するGAAシグナルペプチドは、hAATタンパク質のシグナルペプチドで置換されている。特定の実施態様では、キメラGAAポリペプチドは、配列番号17に示された配列を有するか、又は、配列番号17に示された配列に対して少なくとも90%の同一率、特に少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一率を有するその機能的誘導体である。
【0073】
本発明はまた、エクスビボにおける遺伝子療法の場合と同様に、本発明の核酸分子又は構築物を用いて形質転換された細胞、例えば肝細胞に関する。本発明の細胞は、それを必要とする被験者、例えばGAA欠損患者に、任意の適切な投与経路によって、例えば該被験者の肝臓又は血流への注射を介して送達され得る。特定の実施態様では、本発明は、本発明の核酸を、肝細胞、特に処置される予定の被験者の肝細胞に導入する工程、及び該核酸が導入されている形質転換された該肝細胞を被験者に投与する工程を含む。有利には、この実施態様は、該細胞からGAAを分泌するのに有用である。特定の実施態様では、肝細胞は、処置される予定の患者に由来する肝細胞であるか、又は、患者へのその後の投与のために、さらに形質転換されそしてインビトロにおいて肝細胞へと分化させた肝幹細胞である。
【0074】
本発明はさらに、そのゲノム内に、本発明に記載のGAAタンパク質をコードしている核酸分子又は構築物を含む、トランスジェニック非ヒト動物に関する。特定の実施態様では、動物はマウスである。
【0075】
以下の実施例において具現化された具体的な送達システムとは別に、様々な送達システムが知られており、これを使用して本発明の核酸分子又は構築物を投与することができ、例えば、本発明のコード配列を発現することのできる組換え細胞をリポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル内に封入、受容体媒介エンドサイトーシス、レトロウイルス若しくは他のベクターの一部としての治療用核酸の構築などがある。
【0076】
1つの実施態様によると、本発明のキメラGAAポリペプチド、核酸分子、核酸構築物、又は細胞を被験者の肝臓に任意の適切な経路によって導入することが望ましくあり得る。さらに、ミニサークル及びトランスポゾンなどの裸DNAを、送達又はレンチウイルスベクターのために使用することができる。さらに、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEN、及びCRISPRなどの遺伝子編集技術を使用して、本発明のコード配列を送達することもできる。
【0077】
本発明はまた、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞を含む、医薬組成物を提供する。このような組成物は、治療有効量の治療薬(本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞)及び薬学的に許容される担体を含む。具体的な実施態様では、「薬学的に許容される」という用語は、動物及びヒトへの使用について、米国政府若しくは州政府の規制当局によって認可されているか、又は米国薬局方若しくは欧州薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指し、これと共に治療薬が投与される。このような薬学的担体は、無菌液体、例えば水及び油、例えば石油、動物油、植物油、又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合には水が好ましい担体である。食塩水溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射液用に使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0078】
所望であれば、該組成物はまた、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝化剤も含有し得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの剤形をとり得る。経口用製剤は、標準的な担体、例えば製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、治療有効量の治療薬、好ましくは精製形の治療薬を、適切な量の担体と一緒に含有することにより、被験者への適切な投与のための剤形を提供するだろう。特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター又は細胞は、リン酸緩衝食塩水を含みかつ0.25%のヒト血清アルブミンの補充された組成物に製剤化される。別の特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター、又は細胞は、乳酸リンゲル液及び非イオン性界面活性剤、例えばプルロニックF68を、全組成物の重量に対して、0.01~0.0001%の最終濃度で、例えば0.001%の濃度で含む組成物に製剤化される。該製剤はさらに、血清アルブミン、特にヒト血清アルブミン、例えば0.25%のヒト血清アルブミンを含み得る。保存又は投与のいずれかのための他の適切な製剤は当技術分野において、特に国際公開公報第2005/118792号又はAllay et al., 2011から公知である。
【0079】
好ましい実施態様では、前記組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として慣用的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張緩衝水溶液中の溶液である。必要であれば、該組成物はまた、可溶化剤、及び注射部位における疼痛を和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。
【0080】
1つの実施態様では、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞は、小胞で、特にリポソームで送達され得る。さらに別の実施態様では、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞は、放出制御システムで送達され得る。
【0081】
本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞の投与法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様では、投与は、静脈内又は筋肉内経路を介する。本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞(ベクター化されていようがいまいが)は、任意の簡便な経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜裏打ち(例えば口腔粘膜、直腸粘膜、及び腸管粘膜など)を通した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与されてもよい。投与は全身性であっても、局所的であってもよい。
【0082】
具体的な実施態様では、本発明の医薬組成物を処置の必要な領域、例えば肝臓に局所的に投与することが望ましくあり得る。これは、例えば、埋込剤を用いることによって成し遂げられ得、該埋込剤は、多孔性、無孔性、又はゲル状材料、例えば膜、例えばシリコンゴム膜、又は繊維である。
【0083】
糖原病の処置に有効であろう本発明の治療薬(すなわち、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞)の量は、標準的な臨床的技術によって決定され得る。さらに、インビボ及び/又はインビトロアッセイを場合により使用することにより、至適用量範囲を予測するのを補助し得る。製剤中に使用される予定の正確な用量はまた、投与経路及び疾患の深刻度にも依存し、医師の判断及び各患者の環境に従って決断されるべきである。それを必要とする被験者に投与される、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞の用量は、投与経路、処置される具体的な疾患、被験者の年齢、又は治療効果を得るために必要とされる発現レベルを含むがこれらに限定されない、いくつかの因子に基づいて変更されるだろう。当業者は、この分野におけるその知識に基づいて、これらの因子及びその他の因子に基づいて必要とされる用量範囲を容易に決定することができる。被験者にAAVベクターなどのウイルスベクターを投与する工程を含む処置の場合、ベクターの典型的な用量は、体重1kgあたり少なくとも1×10個のベクターゲノム(vg/kg)、例えば少なくとも1×10vg/kg、少なくとも1×1010vg/kg、少なくとも1×1011vg/kg、少なくとも1×1012vg/kg、少なくとも1×1013vg/kg、又は少なくとも1×1014vg/kgである。
【0084】
本発明はまた、治療有効量の本発明の核酸、ベクター、キメラポリペプチド、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む、糖原病を処置するための方法にも関する。
【0085】
本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、導入遺伝子に対して(すなわち本発明のキメラGAAポリペプチドに対して)全く免疫応答を誘発しないか、又は、導入遺伝子に対して低減された免疫応答を誘発し、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む。本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞の、それを必要とする被験者への反復投与を含む。この態様では、本発明の核酸分子又は核酸構築物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含み、これにより、それから生成された発現されたキメラGAAポリペプチドに対する免疫寛容が可能となる。同様に、この態様では、この態様において使用される医薬組成物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含む核酸分子又は核酸構築物を含む。肝細胞の送達の場合、該細胞は、処置を必要とする被験者から事前に回収され、その中に本発明の核酸分子又は核酸構築物を導入することによって、それらが本発明のキメラGAAポリペプチドを生成することを可能とするように工学操作された細胞であり得る。反復投与を含む態様における1つの実施態様によると、該投与は、少なくとも1回以上繰り返され得、さらには週1回、月1回、又は年1回などの周期的計画に従って実施されることが考えられ得る。周期的計画はまた、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10年間毎に1回、又は10年間以上毎に1回の投与も含み得る。別の特定の実施態様では、本発明のウイルスベクターの各投与の投与は、それぞれの連続した投与について異なるウイルスを使用して実施され、これにより、以前に投与されたウイルスベクターに対する起こり得る免疫応答による効力の減少は回避される。例えば、AAV8キャプシドを含むウイルスベクターの1回目の投与に続いて、AAV9キャプシドを含むベクターの投与が行なわれ得、又はさらにはレトロウイルスベクター若しくはレンチウイルスベクターなどのAAVに関連性のないウイルスの投与が行なわれ得る。
【0086】
本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、導入遺伝子に対して(すなわち本発明のキメラGAAポリペプチドに対して)全く免疫応答を誘発しないか、又は、導入遺伝子に対して低減された免疫応答を誘発し、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む。導入遺伝子を使用して高いレベルのGAAタンパク質を生成し得、免疫抑制剤による処置に頼ることを回避する、低用量の免疫抑制剤による処置を可能とする、及びそれを必要とする被験者への本発明の核酸分子の反復投与を可能とするなどの治療利点を提供する。それ故、本発明の核酸分子は、GAAタンパク質が免疫応答を誘発するか又はGAAの発現及び/若しくは活性が欠損している状況、あるいは、GAAの高い発現レベルが糖原病などの疾患を寛解することができる状況において特に関心が持たれる。本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞の、それを必要とする被験者への反復投与を含む。この態様では、本発明の核酸分子又は核酸構築物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含み、これにより、それから生成された発現されたキメラGAAポリペプチドに対する免疫寛容が可能となる。同様に、この態様では、この態様において使用される医薬組成物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含む核酸分子又は核酸構築物を含む。肝細胞の送達の場合、該細胞は、処置を必要とする被験者から事前に回収され、その中に本発明の核酸分子又は核酸構築物を導入することによって、それらが本発明のキメラGAAポリペプチドを生成することを可能とするように工学操作された細胞であり得る。反復投与を含む態様における1つの実施態様によると、該投与は、少なくとも1回以上繰り返され得、さらには週1回、月1回、又は年1回などの周期的計画に従って実施されることが考えられ得る。周期的計画はまた、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10年間毎に1回、又は10年間以上毎に1回の投与も含み得る。別の特定の実施態様では、本発明のウイルスベクターの各投与の投与は、それぞれの連続した投与について異なるウイルスを使用して実施され、これにより、以前に投与されたウイルスベクターに対する起こり得る免疫応答による効力の減少は回避される。例えば、AAV8キャプシドを含むウイルスベクターの1回目の投与に続いて、AAV9キャプシドを含むベクターの投与が行なわれ得、又はさらにはレトロウイルスベクター若しくはレンチウイルスベクターなどのAAVに関連性のないウイルスの投与が行なわれ得る。
【0087】
本発明によると、処置は、治癒効果、寛解効果、又は予防効果を含み得る。したがって、治療処置及び予防処置は、特定の糖原病の症状の寛解、又は特定の糖原病を発症するリスクの予防若しくはさもなくば低減を含む。「予防」という用語は、特定の容態の重症度又は発症を低減させることと考えられ得る。「予防」はまた、容態を有すると事前に診断された患者における特定の容態の再発を予防することも含む。「治療」はまた、既存の容態の重症度を低減させ得る。「処置」という用語は本明細書において、動物、特に哺乳動物、より特定するとヒト被験者に恩恵をもたらし得る任意の処方計画を指すために使用される。
【0088】
本発明はまた、本発明の核酸分子又は核酸構築物を、それを必要とする患者の単離された細胞、例えば単離された造血幹細胞に導入する工程、及び該細胞をそれを必要とする該患者に導入する工程を含む、糖原病の処置のためのエクスビボにおける遺伝子療法に関する。この態様の特定の実施態様では、核酸分子又は構築物は、上記に定義されているようなベクターを用いて細胞に導入される。特定の実施態様では、ベクターは組込み用ウイルスベクターである。さらなる特定の実施態様では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターである。例えば、van Til et al., 2010, Blood, 115(26), p. 5329に開示されているようなレンチウイルスベクターを、本発明の方法における実施に使用し得る。
【0089】
本発明はまた、医薬品としての使用のための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞にも関する。
【0090】
本発明はまた、GAA遺伝子の突然変異によって引き起こされる疾患を処置するための方法において、特にポンペ病を処置するための方法において使用するための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞にも関する。本発明はさらに、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型などの糖原病を処置するための方法に使用するための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞に関する。本発明のキメラGAAポリペプチドは、それを必要とする患者に、酵素補充療法(ERT)に使用するために、例えば、糖原病の1つ、例えば糖原病III型(コーリ病)であるが、しかしまた糖原病IV型、VI型、IX型、XI型、及びAMP活性化型プロテインキナーゼγサブユニット2欠損症に起因する心臓糖原病の酵素補充療法にも使用するために投与され得る。
【0091】
本発明はさらに、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型などの糖原病の処置に有用な医薬品の製造における、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞の使用にも関する。
【0092】
実施例
本発明は、以下の実験実施例及び添付の図面を参照することによりさらに詳述されている。これらの実施例は、説明のためだけに提供され、制限する意図はない。
【0093】
材料及び方法
GAA活性
凍結した組織試料を蒸留水中でホモジナイズした後にGAA活性を測定した。50~100mgの組織を秤量し、ホモジナイズし、次いで、10000×gで20分間遠心分離にかけた。反応を、96ウェルプレートにおいて10μlの上清及び20μlの基質(4MUα-D-グルコシド)を用いて組み立てた。反応混合物を37℃で1時間インキュベートし、次いで、150μlの炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.5)の添加によって停止した。標準曲線(0~2500pmol/μlの4MU)を使用して、個々の反応混合物から放出された蛍光4MUを、449nm(発光)及び360nm(励起)でEnSpireアルファプレートリーダー(パーキンエルマー社)を使用して測定した。清澄化した上清のタンパク質濃度をBCA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)によって定量した。GAA活性を計算するために、放出された4MU濃度を試料のタンパク質濃度で割り、活性をnmol/時間/mg(タンパク質)として報告した。
【0094】
結果
ヒトGAA(hGAA)の分泌を増加させるために、本発明者らは、肝臓に高度に分泌されているタンパク質に由来するシグナルペプチドと、導入遺伝子の配列の最適化を組み合わせた。本発明者らは、5つの異なる構築物を比較した:
1.pAAV-LSP-sp1-hGAA:α1-ミクログロブリンエンハンサー及びチロキシン結合性グロブリンプロモーターによって構成される肝特異的プロモーター(LSP)の転写制御下にある野生型シグナルペプチド(sp1)を有するヒトGAAを発現しているプラスミド。
2.pAAV-LSP-sp2-hGAA:LSPの転写制御下にあるヒトα-1-アンチトリプシンシグナルペプチド(sp2)を有するヒトGAAを発現しているプラスミド。
3.pAAV-hAAT-sp1-hGAAco1:ヒトα-1-アンチトリプシンアポリポタンパク質E肝癌細胞制御領域エンハンサー(hAAT)プロモーターの転写制御下にある天然シグナルペプチドsp1を有する配列最適化形のhGAA(hGAAco1)を発現しているプラスミド。
4.pAAV-hAAT-sp2-hGAAco1:hAATプロモーターの転写制御下にあるα-1-アンチトリプシンシグナルペプチドsp2を有する配列最適化形のhGAA(hGAAco1)を発現しているプラスミド。
5.pAAV-hAAT-sp2-hGAAco2:hAATプロモーターの転写制御下にあるα-1-アンチトリプシンシグナルペプチドsp2を有する異なる配列最適化形のhGAA(hGAAco2)を発現しているプラスミド。
【0095】
野生型hGAA配列のアミノ酸1~27(ここではsp1として定義される)を、ヒトα-1-アンチトリプシン配列(NP_000286.3)のアミノ酸1~24(ここではsp2として定義される)によって置換した。hGAA配列を、2つの異なるアルゴリズムに従って最適化した(それぞれ配列co1及びco2を生じる)。本発明者らはまず、インビトロにおいて上記の最初の4つの構築物のhGAA分泌効率を評価した。プラスミドを、肝癌細胞由来の細胞株であるHuh-7細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、本発明者らは、培地中のhGAA活性を測定した。データは、野生型hGAA配列へのsp2シグナルペプチドの付加が、その分泌プロファイルを変化させないことを示す。驚くべきことに、同じ戦略が、最適化されたhGAA配列に適用された場合、本発明者らは統計学的に有意な分泌増加を観察した(図1)。これらのデータは、効果的なシグナルペプチドと配列最適化の組合せが、hGAAの分泌を増加させることを示す。
【0096】
次いで、本発明者らは、2つの最適化されたhGAA配列を用いて得られたhGAAの分泌レベルをインビトロで比較した。本発明者らは、野生型hGAA、又はsp2シグナルペプチドと融合させた2つの明確に異なるアルゴリズムに従って最適化されたhGAA配列(それぞれco1及びco2)を発現しているプラスミドを用いてHuh-7細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、本発明者らは、培養培地中のhGAAのレベルを測定した。本発明者らは、hGAAを発現しているプラスミドを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中に上昇したレベルのhGAAを観察した。驚くべきことに、sp2と融合させた最適化されたhGAAを有する両方の構築物が、培地中で有意に増加したhGAAの分泌を示した。この2つの構築物間には有意差は全く観察されなかった(p=0.187)。これらのデータは、効果的なシグナルペプチドと2つの異なる最適化配列の組合せが、hGAAの分泌を改善させることを示す。注目すべきは、2つの最適化配列は、GC含量、代替オープンリーディングフレーム、選択的スプライシング部位、及びCAIの点で異なる特徴を有するが、それらはインビトロにおいて類似した効力を示すことである(表1)。
【0097】
【表1】
【0098】
さらに、本発明者らのベクターを用いての肝臓への形質導入が、導入遺伝子に対する体液性応答を誘発するかどうかを試験する。マウスに、肝特異的プロモーターの転写制御下にあるsp2と融合させたhGAAco1又はhGAAco2を発現しているAAV8ベクターを静脈内注射する。構成性プロモーター(CAG、ニワトリβアクチンプロモーター及びサイトメガロウイルスエンハンサー)の転写制御下にあるhGAAcoを発現しているAAV9を筋肉内注射されたマウスは、hGAA導入遺伝子に対して特異的な非常に高いレベルの全IgGを示し、一方、肝臓において同じタンパク質を発現しているベクターは、hGAA導入遺伝子に対する低いレベルの体液性応答を示す。これらのデータは、肝臓における導入遺伝子の発現が、末梢性免疫寛容の誘発に必要であることを示す。それらは、高度に分泌可能なhGAA導入遺伝子が、それらの野生型対応物よりも免疫原性が低いという見通しを提供する。
図1
図2
【配列表】
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