(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/342 20210101AFI20230111BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20230111BHJP
H01M 50/213 20210101ALI20230111BHJP
H01M 50/238 20210101ALI20230111BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20230111BHJP
H01M 50/227 20210101ALI20230111BHJP
H01M 50/231 20210101ALI20230111BHJP
H01M 50/222 20210101ALI20230111BHJP
H01M 50/233 20210101ALI20230111BHJP
【FI】
H01M50/342 201
H01M50/209
H01M50/213
H01M50/238
H01M50/204 101
H01M50/204 401H
H01M50/227
H01M50/231
H01M50/222
H01M50/233
(21)【出願番号】P 2019544516
(86)(22)【出願日】2018-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2018033336
(87)【国際公開番号】W WO2019065169
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2017190043
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】米田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】拝野 真己
(72)【発明者】
【氏名】岸田 裕司
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/014449(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121368(WO,A1)
【文献】特開2012-119138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定圧力で開弁する排出弁の開口部を端面に配置してなる複数の電池セルを平行姿勢であって両端を同一平面に配置してなる電池ユニットが、絶縁スペースを介して前記電池セルの端面を対向して配置して、前記絶縁スペースに排出弁の排出口を配置してなる電池集合体を備え、
前記絶縁スペースの中間に、前記排出弁の排出口から排出される噴出ガスで溶融されない耐熱シートが前記電池セルの端面と平行な姿勢で配置され、
さらに、前記耐熱シートの両面に噴出ガスの排気チャンバーを設けて
なり、
前記耐熱シートが、排出される噴出ガスで変形する可撓性シートとしてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記耐熱シートの両側に、前記絶縁スペースの外周部に沿う枠形状の閉塞カバーを配置して、該耐熱シートと前記電池ユニットとの間に前記排気チャンバーを形成してなる電源装置。
【請求項3】
請求項
2に記載される電源装置であって、
前記閉塞カバーが、前記絶縁スペースの外周部を閉塞する外周枠部を有し、前記外周枠部の内側に排気チャンバーが設けられ、前記排気チャンバーに前記排出弁の排出口が開口されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
設定圧力で開弁する排出弁の開口部を端面に配置してなる複数の電池セルを平行姿勢であって両端を同一平面に配置してなる電池ユニットが、絶縁スペースを介して前記電池セルの端面を対向して配置して、前記絶縁スペースに排出弁の排出口を配置してなる電池集合体を備え、
前記絶縁スペースの中間に、前記排出弁の排出口から排出される噴出ガスで溶融されない耐熱シートが前記電池セルの端面と平行な姿勢で配置され、
さらに、前記耐熱シートの両面に噴出ガスの排気チャンバーを設けてなり、
前記電池集合体に密着してなるポッティング樹脂を備えると共に、
前記絶縁スペースに電池セルの排出弁の排出口を塞ぐ閉塞カバーが配置され、
前記閉塞カバーが前記電池セルの排出弁から排出される噴出ガスで溶融する独立気泡を有する絶縁材の発泡体で、
前記閉塞カバーが、前記ポッティング樹脂の前記排出弁の開口部への流入を阻止し、かつ前記排出弁からの噴出ガスで溶融して噴出ガスを通過させるようにしてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項
4に記載される電源装置であって、
前記閉塞カバーが、前記絶縁スペースの外周部を閉塞する外周枠部を有し、前記ポッティング樹脂が前記外周枠部の外側に充填されると共に、前記外周枠部の内側に排気チャンバーが設けられ、前記排気チャンバーに前記排出弁の排出口が開口されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項
2ないし5のいずれかに記載される電源装置であって、
前記閉塞カバーがゴム状弾性体の絶縁材としてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項
2ないし6のいずれかに記載される電源装置であって、
前記閉塞カバーが、前記耐熱シートと前記電池ユニットとの間に挟まれて配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項
2ないし7のいずれかに記載される電源装置であって、
前記閉塞カバーが、合成ゴムと軟質プラスチックの何れかの発泡体であることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項
2ないし8のいずれかに記載される電源装置であって、
前記耐熱シートの表面に絶縁シートが積層され、前記絶縁シートが前記耐熱シートと、前記耐熱シートの両面に配置している閉塞カバーとを一体構造に連結してなることを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項
1ないし9のいずれかに記載される電源装置であって、
前記耐熱シートが耐熱紙であることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
請求項
1ないし10のいずれかに記載される電源装置であって、
前記耐熱シートの耐熱温度が500℃以上であることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵する電池の熱暴走を防止して高い安全性を確保する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大出力で大容量の電源装置は、多数の電池を多段多列に配列して、直列や並列に接続している。この電源装置は、複数の電池を直列に接続して出力電圧を高く、並列に接続して出力電流を大きくしている。この種の電源装置は、電池の熱暴走が安全性を低下させるので、確実に熱暴走を阻止する構造が要求される。多数の電池を内蔵する電源装置として、複数の電池ユニットに分割して組み立てる構造が採用される。この電源装置は、同じ電池ユニットを多量生産してコストダウンでき、さらに、連結する電池ユニットの個数を増加して出力や充放電容量を大きくできる特徴がある。複数の電池ユニットを並べて配置する電源装置は、何れかの電池が熱暴走して、熱暴走が隣の電池に誘発されるのを阻止するために、電池ユニットの間に区画壁を設けている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
区画壁で熱暴走の誘発を防止する電源装置の断面図を
図6に示している。この電源装置は、中空部133のある区画壁132で断熱して、熱暴走の誘発を阻止するが、区画壁132が電池セル101から噴射される高温・高圧の噴出ガスで溶融されると、熱暴走の誘発を確実に阻止できない。とくに、
図6に示す電源装置は、区画壁132との対向面に、電池セル101の排出弁の排出口が配置されるので、開弁する排出弁から高温・高圧の噴出ガスが区画壁132に向かって直接に噴射される。噴出ガスは、例えば400℃以上と極めて高温となることがある。したがって、高い安全性を確保するには、区画壁132に極めて高い耐熱特性の高価な材料を使用する必要があって、製造コストが高くなる。さらに、
図6の電源装置は、電池セル101の端面と区画壁132との間にポッティング樹脂107を充填しているので、開弁する排出弁からスムーズに噴出ガスを排出できない。ポッティング樹脂107と区画壁132が、排出弁の排出口を塞いで噴出ガスの排出を阻止しているからである。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の目的の一は、複数の電池ユニットを対向して配置しながら、電池ユニットに内蔵する電池セル端面の排出弁の排出口から噴出ガスをスムーズに排出し、排出される噴出ガスによる隣の電池の熱暴走の誘発を確実に阻止して、高い安全性を実現する電源装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、安価な耐熱シートを使用して安価に多量生産しながら、電池の熱暴走の誘発を確実に防止できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の第1の側面に係る電源装置は、設定圧力で開弁する排出弁の開口部を端面に配置してなる複数の電池セルを平行姿勢であって両端を同一平面に配置してなる電池ユニットが、絶縁スペースを介して前記電池セルの端面を対向して配置して、前記絶縁スペースに排出弁の排出口を配置してなる電池集合体を備え、前記絶縁スペースの中間に、前記排出弁の排出口から排出される噴出ガスで溶融されない耐熱シートが前記電池セルの端面と平行な姿勢で配置され、さらに、前記耐熱シートの両面に噴出ガスの排気チャンバーを設けている。
【0007】
以上の電源装置は、複数の電池ユニットを対向して配置しながら、電池ユニットに内蔵する電池セル端面の排出弁の排出口から噴出ガスをスムーズに排出し、さらに排出される噴出ガスによる隣の電池セルの熱暴走の誘発を確実に阻止して、高い安全性を実現する特徴がある。それは、以上の電源装置が、両側に電池ユニットを配置している絶縁スペースの中間に、排出弁の排出口から排出される噴出ガスで溶融されない耐熱シートを電池セルの端面と平行な姿勢で配置して、耐熱シートの両面に噴出ガスの排気チャンバーを設けているからである。
【0008】
また、以上の電源装置は、安価な耐熱シートを使用して安価に多量生産できる構造としながら、電池セルの熱暴走の誘発を確実に防止できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、電池ユニット間の絶縁スペースの中間に耐熱シートを配置して、その両面に排気チャンバーを設けて、排出弁の排出口から噴射される噴出ガスを排気チャンバーに排出するからである。
【0009】
また、第2の側面に係る電源装置によれば、上記構成に加えて、前記耐熱シートを耐熱紙とすることができる。
【0010】
さらに、第3の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記耐熱シートの耐熱温度を500℃以上とすることができる。
【0011】
さらに、第4の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記耐熱シートを、排出される噴出ガスで変形する可撓性シートとすることができる。
【0012】
さらに、第5の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記耐熱シートの両側に、前記絶縁スペースの外周部に沿う形状の閉塞カバーを配置して、該耐熱シートと前記電池ユニットとの間に前記排気チャンバーを形成することができる。
【0013】
さらに、第6の側面に係る電源装置によれば、上記構成に加えて、前記閉塞カバーが、前記絶縁スペースの外周部を閉塞する外周枠部を有し、前記外周枠部の内側に排気チャンバーを設けて、前記排気チャンバーに前記排出弁の排出口を開口することができる。
【0014】
さらに、第7の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、さらに、前記電池集合体に密着してなるポッティング樹脂を備えると共に、前記絶縁スペースに電池セルの排出弁の排出口を塞ぐ閉塞カバーを配置することができる。前記閉塞カバーは、前記電池セルの排出弁から排出される噴出ガスで溶融する独立気泡を有する絶縁材の発泡体とし、前記閉塞カバーで前記ポッティング樹脂の前記排出弁の開口部への流入を阻止し、かつ前記排出弁からの噴出ガスで溶融されて噴出ガスを通過させることができる。
【0015】
さらに、第8の側面に係る電源装置によれば、上記構成に加えて、前記閉塞カバーが、前記絶縁スペースの外周部を閉塞する外周枠部を有し、前記ポッティング樹脂を前記外周枠部の外側に充填すると共に、前記外周枠部の内側に排気チャンバーを設けて、前記排気チャンバーに前記排出弁の排出口が開口することができる。
【0016】
さらに、第9の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記閉塞カバーをゴム状弾性体の絶縁材とすることができる。
【0017】
さらに、第10の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記閉塞カバーを、前記耐熱シートと前記電池ユニットとの間に挟んで配置することができる。
【0018】
さらに、第11の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記閉塞カバーを、合成ゴムと軟質プラスチックの何れかの発泡体とすることができる。
【0019】
さらに、第12の側面に係る電源装置によれば、上記何れかの構成に加えて、前記耐熱シートの表面に絶縁シートを積層し、前記耐熱シートと、前記耐熱シートの両面に配置している閉塞カバーとを前記絶縁シートで一体構造に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置を示す垂直断面図である。
【
図3】
図1の電源装置のIII-III線断面図である。
【
図4】
図1の電源装置の電池集合体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明は以下のものに特定されない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0022】
以下に示す電源装置は、主として、モータのみで走行する電気自動車や電動カートなどの電動車両の駆動用電源に適用する例を説明する。なお本発明の電源装置を、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に使用したり、電動車両以外の大出力が要求される用途、例えば家庭用、工場用の蓄電装置等に使用してもよい。
(実施形態1)
【0023】
図1~
図3に示す電源装置100は、外装ケース9に電池集合体40を内蔵している。電池集合体40は、一対の電池ユニット40Aを備えており、一対の電池ユニット40Aを対向位置(
図1において左右)に配置して連結している。
(電池ユニット40A)
【0024】
電池ユニット40Aは、
図1及び
図4に示すように、複数の二次電池セル1を平行姿勢に並べて、両端を同一平面に配置して、両端の端部電極13にリード板45を接続している。電池集合体40は、対向位置に配置する一対の電池ユニット40Aを二次電池セル1の軸方向に並べて配置すると共に、一対の電池ユニット40Aの間に絶縁スペース6を設けている。各々の電池ユニット40Aは、
図2の拡大断面図に示すように、絶縁スペース6の対向位置に端部電極13を配置している。
(二次電池セル1)
【0025】
二次電池セル1は、設定圧力で開弁する排出弁の排出口(図示せず)を端面に設けている。二次電池セル1は両端に端部電極13を設けている。この二次電池セル1は、アルミニウム等の金属製外装缶の開口部を封口板で気密に密閉して、封口板に凸部電極を設けて第1の端部電極13Aとし、外装缶の底面を第2の端部電極13Bとしている。排出弁の排出口は、凸部電極側に設けられ、あるいは外装缶の底面に設けられる。
【0026】
二次電池セル1は、円筒形電池のリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池は、大きさや重量に対する容量が大きく、電源装置100のトータル容量を大きくできる。ただし、本発明の電源装置は、二次電池セルをリチウムイオン電池には特定しない。二次電池セルには、充電できる他の二次電池が使用できる。また、
図1の電源装置100は、二次電池セル1を円筒形電池とするが、二次電池セルには角形電池も使用できる。各々の二次電池セル1は、その両端の端部電極13にリード板45を溶接して、隣接する二次電池セル1を直列又は並列に接続している。
(電池ホルダ44)
【0027】
二次電池セル1は、
図4に示すように、電池ホルダ44で定位置に配置している。電池ホルダ44はプラスチック等の絶縁材を成形して制作される。図の電池ホルダ44は、すべての二次電池セル1を平行な姿勢で定位置に配置している。電池ホルダ44で定位置に配置される二次電池セル1は、その両端にリード板45を溶接するので、各々の端部に溶接されるリード板45を同一面に位置するように、各々の二次電池セル1をその両端部がほぼ同一面に位置するように、電池ホルダ44に配置している。
【0028】
電池ホルダ44は、二次電池セル1を挿入して定位置に配置する挿入部44Aを設けている。図の電源装置100は、二次電池セル1を円筒形電池とするので、挿入部44Aを円柱状としている。電池ホルダ44は、プラスチックを筒状に成形して内側に挿入部44Aを設けている。挿入部44Aは、電池端部を露出させる開口部44Bを両端に設けている。開口部44Bは、挿入部44Aに挿入される二次電池セル1の端部を挿入部44Aから外部に露出させる。開口部44Bに露出される二次電池セル1の端面は、端部電極13となってここにリード板45が溶接して固定される。
【0029】
図1に示すように、一対の電池ユニット40Aの間に絶縁スペース6を設けて、絶縁スペース6の両側に二次電池セル1の端面を配置する電池集合体40は、排出弁の排出口が絶縁スペース6に配置される。排出弁が開弁すると、排出口から排出される高温の噴出ガスが対向する電池ユニット40Aの端面に向かって噴射される。対向位置にある二次電池セル1の対向面に噴射される高温の噴出ガスは、二次電池セル1の熱暴走を誘発する原因となる。
図1の電源装置100は、絶縁スペース6の中間に耐熱シート64を配置している。
(耐熱シート64)
【0030】
耐熱シート64は、排出弁から排出される噴出ガスで溶融されない耐熱温度の絶縁シートで、たとえば難燃処理した耐熱紙である。ただ、耐熱シート64には、耐熱紙に代わって噴出ガスで溶融されない無機繊維をシート状に集合した紙や不織布、あるいは、無機材を薄いシート状に結合した無機シート等も使用できる。これ等の耐熱シート64は薄くできるので、耐熱シート64が絶縁スペース6の実質容積を減少することなく絶縁スペース6を広くして噴出ガスをスムーズに排出できる特徴がある。絶縁性の耐熱シート64は、両面に配置される二次電池セル1の端面やリード板45を絶縁状態に配置できる。ただ、耐熱シートは必ずしも絶縁材とする必要はない。それは、耐熱シートの表面に絶縁シートを積層して表面を絶縁できるからである。ただし、耐熱シートを絶縁材としてその表面に絶縁材を積層する構造は、耐熱シートによる絶縁性をさらに向上できる。
【0031】
耐熱シート64は、二次電池セル1の端面と平行な姿勢で配置される。図の電源装置100は、絶縁スペース6の中間に耐熱シート64を配置して、耐熱シート64の両面には噴出ガスの排気チャンバー63を設けている。絶縁スペース6の中間に耐熱シート63を配置するために、
図1~
図5の電源装置100は、耐熱シート64の両側に絶縁スペースの外周部に沿う形状の閉塞カバー61を配置し、この閉塞カバー61を耐熱シート64と電池ユニット40Aとの間に介在させている。図の閉塞カバー61は、絶縁スペース6の外周部に沿う形状の外周枠部62を有している。電源装置100は、この形状の閉塞カバー61を電池ユニット40の対向面40aと耐熱シート64との間に配置することで、耐熱シート64を電池ユニット40の対向面40aから離間する状態で配置して、耐熱シート64と電池ユニット40の対向面40aとの間であって外周枠部62の内側に排気チャンバー63を設けている。
【0032】
このように、耐熱シート64の両面に排気チャンバー63を設けている絶縁スペース6は、噴出ガスをスムーズに抵抗なく排気チャンバー63に排出できる。また、この構造の絶縁スペース6は、噴出ガスを排気チャンバー63で拡散して耐熱シート64に吹き付けるので、噴出ガスによる耐熱シート64の熱損傷を少なくして、対向位置にある二次電池セル1の熱暴走の誘発をより効果的に阻止できる。さらに耐熱シート64に要求される強度と耐熱特性を低下して、耐熱シート64のコストを低減できる。さらにまた、耐熱シート64の表面に吹き付けられる噴出ガスを排気チャンバー63で両側に分散させるので、噴出ガスを少ない排気抵抗でスムーズに絶縁スペース6に排出できる特徴も実現する。このことは、内圧が異常に上昇した二次電池セル1の圧力を速やかに低下して、内圧上昇による外装缶の破裂などの弊害を有効に防止できる。
【0033】
さらに、耐熱シート64は、排出される噴出ガスで変形する可撓性シートとしている。この耐熱シート64は、噴射される噴出ガスの圧力で変形して、噴出ガスが排出される一方の排気チャンバー63の容積を増加できるので、排出弁の排出口から排気チャンバー63により少ない抵抗で噴出ガスをスムーズに排出して、二次電池セル1の内圧上昇による破壊を効果的に防止してより高い安全性を確保できる特徴がある。
(ポッティング樹脂7)
【0034】
電源装置100は、二次電池セル1の表面や電池ホルダ44にポッティング樹脂7を密着させ、二次電池セル1の放熱特性を向上している。電池集合体40は、ポッティング樹脂7に密着されて、二次電池セル1の熱エネルギーをポッティング樹脂7に伝導して放熱する。ポッティング樹脂7は、電池表面に直接に密着し、あるいは電池ホルダ44やリード板45を介して二次電池セル1に密着されて二次電池セル1の熱を放熱する。ポッティング樹脂7は、たとえば、電池集合体40を防水袋75に入れ、防水袋75に未硬化で液状のポッティング樹脂7を充填し、ポッティング樹脂7を硬化させて電池集合体40に密着状態となる。ただし、本発明は、ポッティング樹脂7を電池集合体40の二次電池セル1や電池ホルダ44等に密着する構造や方法を特定するものでないので、電池集合体を外装ケースに入れてポッティング樹脂を外装ケースに充填して密着することができ、また、ポッティング樹脂を充填するスペースを電池ホルダに設け、あるいは又ポッティング樹脂を充填する筐体に電池集合体を入れて充填することもできる。ポッティング樹脂7は、電池集合体40の電池表面などに密着する熱伝導面積を広くして、二次電池セル1を効果的に放熱できる。未硬化のポッティング樹脂7は液状で、充填されて狭い隙間にも浸入するので、二次電池セル1の端面に溶接しているリード板45の開口部や二次電池セル1との隙間から浸入して二次電池セル1の表面に密着される。
【0035】
この電源装置100は、未硬化で液状のポッティング樹脂7を充填する工程で、絶縁スペース6にポッティング樹脂7が流入すると、排出弁の排出口をポッティング樹脂7が塞いで噴出ガスの排出を阻害する。ポッティング樹脂7が排出口から電池内部に浸入すると、排出弁の正常な動作が阻害される。二次電池セル1は、内圧が異常に高くなると排出弁を開いて二次電池セル1の破裂を防止するので、噴出ガスをスムーズに排出できない構造は、高い安全性は確保できない。
(閉塞カバー61)
【0036】
電源装置100は、ポッティング樹脂7が排出弁の排出口を閉塞しないように、絶縁スペース6に閉塞カバー61を配置している。電源装置100の閉塞カバー61は、
図1~
図5に示すように、絶縁スペース6の外周部を閉塞する外周枠部62を有し、この外周枠部62でポッティング樹脂7の絶縁スペース6への注入を阻止して、ポッティング樹脂7を外周枠部62の外側に充填して、外周枠部62の内側に排気チャンバー63を設けて、排気チャンバー63に排出弁の排出口を露出させている。外周枠部62は、絶縁スペース6の外周縁部に沿って伸びる形状で、電池ユニット40Aの端面に隙間なく密着して、絶縁スペース6にポッティング樹脂7が流入するのを阻止している。この構造の閉塞カバー61は、外周枠部62の内側に大容積の排気チャンバー63を設けて、ここに噴出ガスを噴射できるので、噴出ガスをスムーズに排出できる特徴がある。それは、大容積の排気チャンバー63は、排出弁の排出口から噴射される噴出ガスによる内圧上昇が緩慢で排気抵抗の上昇勾配を緩やかにできるからである。
【0037】
閉塞カバー61は、排出弁から排出される噴出ガスで溶融する独立気泡を有する絶縁材の発泡体で成形される。噴出ガスで溶融される閉塞カバー61の溶融温度は、たとえば100℃以上であって500℃以下、好ましくは200℃以上であって400℃以下とする。溶融温度の低い閉塞カバー61は、噴出ガスで速やかに溶融して噴出ガスを絶縁スペース6の外部に排出し、溶融温度の高い閉塞カバー61は、使用状態において確実に絶縁スペース6を閉塞できる。閉塞カバー61の溶融温度が低すぎると、電池温度で溶融し、あるいは変形し、また高すぎると噴出ガスで速やかに溶融できなくなる。したがって、閉塞カバー61の溶融温度は、噴出ガスでは速やかに溶融し、かつ噴出ガスが噴射されない状態では変形したり溶融しない温度特性を考慮して、先述の範囲に設定される。
【0038】
噴出ガスで溶融する閉塞カバー61は、液状のポッティング樹脂7を充填する工程では溶融されずにポッティング樹脂7の絶縁スペース6への流入を阻止し、開弁した排出弁から噴射される高温の噴出ガスで溶融される。溶融された閉塞カバー61は絶縁スペース6を外部に開放して、流入される噴出ガスを
図2及び
図3の矢印で示すように、絶縁スペース6から排出する。絶縁材の閉塞カバー61は、電池ユニット40Aの端部電極13側に密着して、絶縁スペース6を閉塞できる。とくに、端部電極13側には金属板のリード板45を配置しているので、絶縁材の閉塞カバー61はリード板45に密着して、リード板45を短絡することなく絶縁スペース6を閉塞できる。さらに、独立気泡を有する発泡体の閉塞カバー61は、単位体積に対する重量が小さく、密度が低くできるので、高温の噴出ガスで速やかに溶融されて、噴出ガスを絶縁スペース6から速やかに外部に排出できる特徴がある。さらに発泡体の閉塞カバー61は、成形時の発泡倍率をコントロールしてより低比重化できるので、噴出ガスによる溶融時間を極めて短縮することができる。
【0039】
閉塞カバー61は、ゴム状弾性体の発泡体で成形している。ゴム状弾性体の閉塞カバー61は、たとえば合成ゴム発泡体や軟質のプラスチック発泡体で成形される。合成ゴム発泡体はプロピレンゴムが使用できる。軟質のプラスチック発泡体には、たとえば軟質ウレタン発泡体が使用できる。ゴム状弾性体の閉塞カバー61は、一対の電池ユニット40Aの間に配置し、両側の電池ユニット40Aで押圧し、圧縮される状態に弾性変形させることで、電池ユニット40Aの対向面40aに密着する。電池ユニット40Aの対向面40aに密着する閉塞カバー61は、絶縁スペース6に注入される液状のポッティング樹脂7が絶縁スペース6に浸入するのを確実に阻止できる特徴がある。とくに、絶縁スペース6との対向面40aにリード板45を固定している電池ユニット40Aは、リード板45によって対向面40aに凹凸や隙間ができるが、弾性変形して密着する閉塞カバー61は、凹凸を吸収し、隙間を閉塞してポッティング樹脂7の絶縁スペース6への浸入を確実に阻止できる特徴がある。さらに、独立気泡を有する発泡体からなるゴム状弾性体の閉塞カバー61は、無数の気泡でより柔軟化されて変形できる自由度が大きくなり、凹凸のある電池ユニット40Aの対向面40aに隙間なく密着し、また隙間を閉塞して絶縁スペース6へのポッティング樹脂7の流入をより確実に阻止できる特徴がある。さらに、ゴム状弾性体の発泡体からなる閉塞カバー61は、弾性変形して電池ユニット40Aの対向面40aに密着する状態で、電池ユニット40Aの対向面40aの押圧力を小さくできる。したがって、電池ユニット40Aの対向面40aに密着しながら、電池ユニット40Aに無理な応力を作用させることなく、絶縁スペース6を確実に閉塞できる特徴がある。
【0040】
ただ、本発明の電源装置は、閉塞カバー61を必ずしもゴム状弾性体で成形する必要はない。それは、閉塞カバー61と電池ユニット40Aの対向面40aとの間に弾性変形するパッキンを配置し、あるいはシール材を塗布して、閉塞カバー61を電池ユニット40Aの対向面40aに隙間なく密着することができるからである。
【0041】
図2、
図4、及び
図5の電源装置100は、閉塞カバー61の外周枠部62の表面と耐熱シート64の表面とに絶縁シート65を積層している。絶縁シート65はプラスチック製で、耐熱シート64の両面に閉塞カバー61を配置して、耐熱シート64と両側の閉塞カバー61とを一体構造に連結して、絶縁スペース6に配設される板状の絶縁スペーサ60としている。絶縁スペーサ60は、一対の電池ユニット40Aに間に挟む状態で配置されて、閉塞カバー61と耐熱シート64とを絶縁スペース6の定位置に配置する。したがって、この構造は組み立て工程を簡単にして能率よく多量生産して、耐熱シート64と閉塞カバー61とを正確な位置に配置できる特徴がある。
【0042】
図1~
図3の電源装置100は、閉塞カバー61に外周枠部62を設けて、外周枠部62の内側に排気チャンバー63を設けているが、閉塞カバー61はこの形状に特定するものでない。たとえば、図示しないが、閉塞カバーは、二次電池セルの排出弁の排出口との対向面に凹部を設けた板状の発泡体に成形し、あるいは、絶縁スペースに隙間なく配設されて、排気チャンバーを設けない板状に成形して排出弁の排出口を塞ぐこともできる。これ等の形状の閉塞カバー61は、発泡体の発泡倍率を高くして閉塞カバー内部の空隙率を高くし、また溶融温度を低くして高温の噴出ガスによる溶融時間を短縮して、絶縁スペースに噴射される噴出ガスを速やかに外部に排出する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の電源装置は、内蔵する二次電池セルの熱暴走の誘発を防止して高い安全性が要求される用途に便利に使用される。
【符号の説明】
【0044】
100…電源装置
1…二次電池セル
6…絶縁スペース
7…ポッティング樹脂
9…外装ケース
13…端部電極
13A…第1の端部電極
13B…第2の端部電極
40…電池集合体
40A…電池ユニット
40a…対向面
44…電池ホルダ
44A…挿入部
44B…開口部
45…リード板
60…絶縁スペーサ
61…閉塞カバー
62…外周枠部
63…排気チャンバー
64…耐熱シート
65…絶縁シート
75…防水袋
101…電池セル
132…区画壁
133…中空部
107…ポッティング樹脂