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特許7208170電源装置及び電源装置を備える車両並びに蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電源装置及び電源装置を備える車両並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20230111BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230111BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20230111BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230111BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20230111BHJP
【FI】
H01M10/613
H01M10/651
H01M10/6554
H01M10/653
H01M10/647
H01M10/625
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/262 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019567876
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2018043384
(87)【国際公開番号】W WO2019146238
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2018010948
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】寺内 忍
(72)【発明者】
【氏名】小村 哲司
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174855(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/133708(WO,A1)
【文献】特表2015-520924(JP,A)
【文献】特開2012-181972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、
両端部を一対の前記エンドプレートに連結して、複数の前記電池セルを積層方向に固定してなるバインドバーと、
前記電池積層体の表面に熱結合状態に配置してなる前記バインドバーと異種金属の冷却プレートとを備え、
前記電池積層体の長手方向に配置してなる複数のボルトを介して前記冷却プレートが前記電池積層体に固定されてなる電源装置であって、
前記バインドバーが、前記冷却プレートの表面に固定される折り曲げ部を有し、前記折り曲げ部を貫通する前記ボルトを介して前記バインドバーが前記冷却プレートに固定されてなり、
複数の前記ボルトが前記バインドバーを前記冷却プレートに固定してなる固定領域の長さ(L)が、前記バインドバーの全長の70%以下で、前記バインドバーの前記折り曲げ部の両端部に、前記ボルトを介して前記冷却プレートに固定されない非固定領域を設けてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記バインドバーが鉄又は鉄合金で、
前記冷却プレートがアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載される電源装置であって、
前記冷却プレートの全長が30cm以上であることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置であって、
前記折り曲げ部が前記冷却プレートの外側表面に配置され、前記折り曲げ部が前記冷却プレートの外側表面に固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載される電源装置であって、
前記折り曲げ部が前記冷却プレートと前記電池積層体との間に配置され、前記折り曲げ部が前記冷却プレートの電池積層体との対向面に固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載される電源装置であって、
前記固定領域に3個以上の前記ボルトが配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載される電源装置であって、
前記ボルトが前記冷却プレートに設けた雌ねじ孔にねじ込んで固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載される電源装置であって、
前記ボルトにナットがねじ込まれて、前記ボルトとナットとで前記冷却プレートを挟着して前記バインドバーが前記冷却プレートに固定されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載される電源装置であって、
前記冷却プレートが、長手方向に沿って伸びるフランジ部を両側に有し、前記フランジ部の内側に前記電池積層体が嵌合されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれかに記載される電源装置であって、
前記電池積層体と前記冷却プレートとの間に熱伝導シートを配置してなることを特徴とする電源装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えることを特徴とする電源装置を備える電動車両。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを積層して電池積層体とし、この電池積層体の両端に配置してなるエンドプレートを介して熱伝導プレートを電池積層体に熱結合状態に配置してなる電源装置及び電源装置を備える車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電源装置は、複数の角形電池セルからなる電池積層体と、電池積層体の両端面に配置される一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートを連結するバインドバーとを備えている。この電源装置は、電池積層体をエンドプレートとバインドバーにより拘束することで、複数の角形電池セルからなる電池積層体を集合化できるようになっている。さらに、電池積層体を構成する複数の電池セルを効率よく冷却するために、電池積層体の表面に冷却プレートを熱結合状態で配置して強制的に冷却する構造の電源装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-220117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷却プレートで電池セルを冷却する電源装置は、例えば、複数のボルトを介して冷却プレートが電池積層体に固定される。ただ、この構造の電源装置は、冷却プレートを固定するボルトが経時的に緩むことがある。このボルトが緩むと、冷却プレートと電池積層体との熱結合状態が悪化して電池セルの冷却効率が低下する虞がある。また、ボルトの緩みは、振動による騒音の原因となり、また脱落するとさらに種々の故障の原因となるため決して好ましくなく、これを極減することが切望されている。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の重要な目的は、ボルトを介して冷却プレートを電池積層体に固定する構造としながら、長期間にわたってボルトの緩みを防止して、冷却プレートと電池積層体とを理想的な熱結合状態に維持できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の電源装置は、複数の電池セルを積層してなる電池積層体と、前記電池積層体の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレートと、両端部を一対の前記エンドプレートに連結して、複数の前記電池セルを積層方向に拘束するバインドバーと、前記電池積層体の表面に熱結合状態に配置してなる前記バインドバーと異種金属の冷却プレートとを備え、前記電池積層体の長手方向に配置してなる複数のボルトを介して前記冷却プレートを前記電池積層体に固定している。電源装置は、複数の前記ボルトが前記バインドバーを前記冷却プレートに固定してなる固定領域の長さ(L)を、前記バインドバーの全長(T)の70%以下として、前記バインドバーの端部に、前記ボルトを介して前記冷却プレートに固定されない非固定領域を設けている。
【0007】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える電動車両は、前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、該電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、該モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備えている。
【0008】
さらに、以上の態様の構成要素を備えた電源装置を備える蓄電装置は、前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラを備え、前記電源コントローラが外部からの電力による前記電池セルへの充電を可能とすると共に、該電池セルに対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、電源装置を簡単な構造としながら、複数のボルトを介して冷却プレートを電池積層体に理想的な状態で固定でき、さらに、長期間にわたってボルトの緩みを防止して、冷却プレートと電池積層体とを理想的な熱結合状態に維持できる特徴がある。それは、以上の電源装置が、電池積層体を積層方向に拘束する一対のエンドプレートに両端を連結しているバインドバーを、複数のボルトで冷却プレートに固定して、冷却プレートを電池積層体の表面に配置すると共に、複数のボルトがバインドバーを冷却プレートに固定してなる固定領域の長さ(L)を、バインドバーの全長(T)の70%以下として、バインドバーの端部に、ボルトを介して冷却プレートに固定されない非固定領域を設けているからである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置の斜視図である。
図2図1に示す電源装置の分解斜視図である。
図3図1に示す電源装置の概略横断面図である。
図4図1に示す電源装置の底面図である。
図5】本発明の他の実施形態にかかる電源装置の概略横断面図である。
図6図5に示す電源装置の底面図である。
図7】本発明の他の実施形態にかかる電源装置の概略横断面図である。
図8】本発明の他の実施形態にかかる電源装置の概略横断面図である。
図9】エンジンとモータで走行するハイブリッドカーに電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図10】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図11】蓄電装置に電源装置を使用する例を示すブロック図である。
図12】冷却プレートとバインドバーとの連結部を示す模式底面図である。
図13】従来の電源装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の一つの着目点について説明する。ハイブリッドカーや電気自動車等の車両に搭載される大電力の電源装置は、充放電の電流が大きく、また種々の外的条件で使用されることから電池温度が大幅に変動する。とくに、電池の温度上昇は、充放電できる電流範囲を制限し、寿命を短くして安全性を阻害する原因となるので、冷却プレートで電池を強制的に冷却する構造の電源装置が開発されている。
【0012】
従来の電源装置は、図13に示すように、複数の電池セル101を積層している電池積層体102の底面に冷却プレート109を配置して、冷却プレート109で電池セル101を冷却している。図の電源装置は、バインドバー104の下縁に折り曲げ部104bを設けて、この折り曲げ部104bを冷却プレート109に固定して、冷却プレート109を電池積層体102の底面に配置している。バインドバー104は、電池積層体102の両端に配置するエンドプレート103に両端を固定して、電池積層体102を拘束している。この図に示すように、折り曲げ部104bを冷却プレート109に固定して、冷却プレート109を電池積層体102の底面に配置する電源装置は、冷却プレート109を電池積層体102の底面に密着して好ましい熱結合状態に固定できる。電池積層体102の積層方向に伸びるバインドバー104は、細長い折り曲げ部104bを複数のボルトで冷却プレート109に固定して、冷却プレート109を好ましい状態で電池セル101の底面に熱結合状態に配置できる。
【0013】
ボルトは、折り曲げ部の長手方向に並べて配置されて、細長い折り曲げ部を冷却プレートに固定できる。この固定構造は、複数のボルトで冷却プレートを電池積層体の底面に、好ましい熱結合状態に配置できる。ただ、この構造の電源装置は、大幅に変動する温度環境で長期間使用されると、バインドバーと冷却プレートとが相対的に移動してボルトが緩む弊害が発生する。ボルトが緩むと、冷却プレートと電池積層体との熱結合状態が悪化して、冷却プレートによる各々の電池セルの冷却効率が低下し、さらにボルトの緩みは振動による騒音の原因となり、また脱落するとさらに種々の故障の原因となる。特に、冷却プレートとバインドバーが異種金属で製作される場合、それぞれの材料の熱膨張率の差に起因してボルト緩みの原因となるバインドバーと冷却プレートとの相対移動が生じる。例えば、バインドバーは極めて強い引張強度が要求されることから、バインドバーには高張力鋼やステンレス鋼板が使用される。一方、冷却プレートには優れた熱伝導特性が要求されることから、冷却プレートにはアルミニウムやアルミニウム合金が使用される。バインドバーと冷却プレートは異なる特性が要求され、各々の用途に最適な金属が選択されて異種金属で製作される。電動車両に搭載される電源装置は、極めて広い温度範囲で使用されるので、温度変化によってバインドバーと冷却プレートは互いに伸縮する。異種金属のバインドバーと冷却プレートは、温度に対する伸縮量が異なるので、温度変化による伸縮が起こる毎にバインドバーと冷却プレートとが相対的にずれて、ボルトを緩ませる原因となる。このため、ボルトで冷却プレートをバインドバーに固定する電源装置は、製造直後にあっては、冷却プレートと電池積層体とを理想的な熱結合状態にできても、長期間使用されるとボルトの緩みが原因で、冷却プレートと電池積層体との熱結合状態が低下するなど種々の弊害が発生する。
【0014】
したがって、電池積層体に冷却プレートを熱結合させて冷却する構造の電源装置にあっては、冷却プレートを電池積層体に固定するボルトの緩みを長期間にわたって防止して、冷却プレートと電池積層体とを理想的な熱結合状態に維持できる構造を検討することが重要である。
【0015】
本発明のある態様の電源装置は、以下の構成により特定されてもよい。電源装置は、複数の電池セル1を積層してなる電池積層体2と、電池積層体2の積層方向の両端部に配置してなる一対のエンドプレート3と、両端部を一対のエンドプレート3に連結して、複数の電池セル1を積層方向に拘束するバインドバー4と、電池積層体2の表面に熱結合状態に配置してなる、バインドバー4と異種金属の冷却プレート9とを備え、電池積層体2の長手方向に配置してなる複数のボルト5を介して冷却プレート9を電池積層体2に固定している。電源装置は、複数のボルト5がバインドバー4を冷却プレート9に固定してなる固定領域21の長さ(L)を、バインドバー4の全長(T)の70%以下として、バインドバー4の端部に、ボルト5を介して冷却プレート9に固定されない非固定領域22を設けている。
【0016】
以上の電源装置は、複数のボルトを介してバインドバーを冷却プレートに固定するが、ボルトが冷却プレートに固定される固定領域の長さ(L)を狭く制限することで、ボルトの固定部においては、温度変化でバインドバーと冷却プレートとの相対的な伸縮量を小さくできる。図12は、冷却プレート9の中央部(A点)と、両端部(C点)と、中央部と両端との間(B点)の5カ所に配置するボルト5が、バインドバー4を冷却プレート9に固定している電源装置の底面図である。この図の電源装置は、温度変化でバインドバー4と冷却プレート9とが、A点を中心として両側に伸縮すると仮定すると、B点の温度変化による伸縮量の差異(Δ1)は、C点の伸縮量の差異(Δ2)の1/2となる。したがって、B点のボルト5は、バインドバー4と冷却プレート9との温度変化による伸縮量の差異(Δ1)が少なく、バインドバー4と冷却プレート9との相対的に位置ずれによる緩みが防止される。したがって、A点の両側に配置するB点間をバインドバー4と冷却プレート9との固定領域21とする電源装置は、両端(C点)までボルトでバインドバーと冷却プレートとを固定している電源装置に比較し、ボルトの緩みを防止できる特徴がある。
【0017】
ところで、バインドバーを冷却プレートに固定するボルトの個数を少なくして、たとえば、バインドバーと冷却プレートとの中央部のみを1個のボルトで固定すると、充分な連結強度を実現するために太くて強靭なボルトを使用する必要がある。太いボルトでバインドバーを冷却プレートに固定する電源装置は、ボルトが嵩張って外形が大きくなり、また太いボルトが冷却プレートにねじ込まれ、あるいは貫通されるので、冷却プレート内に設けられる冷媒通路が狭くなって、冷却プレート全体を均一に冷却できなくなる。
【0018】
これに対して以上の電源装置は、固定領域に配置される複数のボルトを介してバインドバーを冷却プレートに固定するので、個々のボルトを細くしても充分な連結強度を実現できる。このように、細いボルトでバインドバーを冷却プレートに固定する電源装置は、ボルトが嵩張るのを防止して外形を小さくでき、またボルトを細くすることで冷却プレート内に設けられる冷媒通路が狭くなるのを防止して、冷却プレート全体を均一に冷却できる特徴が実現できる。
【0019】
電源装置は、バインドバー4を鉄又は鉄合金とし、冷却プレート9をアルミニウム又はアルミニウム合金とすることが好ましい。また、冷却プレート9は、全長(R)を30cm以上とすることが好ましい。
【0020】
また、電源装置は、バインドバー4が、冷却プレート9の表面に固定される折り曲げ部4bを有して、折り曲げ部4bを貫通するボルト5を介してバインドバー4を冷却プレート9に固定する構成としてもよい。
【0021】
さらに、電源装置は、折り曲げ部4bを冷却プレート9の外側表面に配置して、折り曲げ部4bを冷却プレート9の外側表面に固定する構成としてもよい。
【0022】
さらに、電源装置は、折り曲げ部4bを冷却プレート9と電池積層体2との間に配置して、折り曲げ部4bを冷却プレート9の電池積層体2との対向面に固定する構成としてもよい。
【0023】
さらに、電源装置は、固定領域21に3個以上のボルト5が配置することが好ましい。ボルト5は、冷却プレート9に設けた雌ねじ孔9aにねじ込んで固定する構成としてもよい。また、ボルト5にナット6をねじ込んで、ボルト5とナット6とで冷却プレート9を挟着してバインドバー4を冷却プレート9に固定する構成としてもよい。
【0024】
さらに、電源装置は、冷却プレート9が、長手方向に沿って伸びるフランジ部9Yを両側に有して、フランジ部9Yの内側に電池積層体2を嵌合させる構成としてもよい。
【0025】
さらにまた、電源装置は、電池積層体2と冷却プレート9との間に熱伝導シート32を配置する構成としてもよい。
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0027】
(実施形態1)
図1図4に示す電源装置100は、複数の電池セル1を積層している電池積層体2と、この電池積層体2の積層方向の両端部に配置している一対のエンドプレート3と、両端部をエンドプレート3に連結して、複数の電池セル1を積層方向に拘束しているバインドバー4と、電池積層体2の表面に熱結合状態に配置している冷却プレート9とを備える。
【0028】
(電池セル1)
電池セル1は、図2に示すように、厚さに比べて幅が広い、言い換えると幅よりも薄い角形の電池で、厚さ方向に積層されて電池積層体2としている。電池セル1は、電池ケース10を金属ケースとする非水系電解液電池である。非水系電解液電池である電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。ただし、電池セルは、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等の二次電池とすることもできる。図の電池セル1は、幅の広い両表面を四角形とする電池で、両表面を対向するように積層して電池積層体2としている。
【0029】
電池セル1は、外形を角形とする金属製の電池ケース10に、電極体(図示せず)を収納して電解液を充填している。金属ケースからなる電池ケース10は、アルミニウムやアルミニウム合金で製造することができる。電池ケース10は、底を閉塞する筒状に金属板をプレス加工している外装缶10Aと、この外装缶10Aの開口部を気密に閉塞している封口板10Bとを備えている。封口板10Bは平面状の金属板で、その外形を外装缶10Aの開口部の形状としている。この封口板10Bはレーザー溶接して外装缶10Aの外周縁に固定されて外装缶10Aの開口部を気密に閉塞している。外装缶10Aに固定される封口板10Bは、その両端部に正負の電極端子13を固定しており、さらに正負の電極端子13の中間にはガス排出口12を設けている。ガス排出口12の内側には、所定の内圧で開弁する排出弁11を設けている。図1図2に示す電池積層体2は、複数の電池セル1を、排出弁11を設けた面が略同一面に位置する姿勢で積層して、各電池セル1の排出弁11を同一平面上に配置している。図の電池積層体2は、排出弁11を設けている封口板10Bを上面とする姿勢で、複数の電池セル1を積層している。
【0030】
互いに積層される複数の電池セル1は、正負の電極端子13を接続して互いに直列及び/又は並列に接続される。電源装置100は、隣接する電池セル1の正負の電極端子13を、バスバー(図示せず)を介して互いに直列及び/又は並列に接続する。隣接する電池セルを互いに直列に接続する電源装置は、出力電圧を高くして出力を大きくでき、隣接する電池セルを並列に接続して、充放電の電流を大きくできる。
【0031】
(電池積層体2)
図2に示す電池積層体2は、複数の電池セル1を、スペーサ7を介して互いに積層しており、これらの電池セル1を直列に接続している。図1の電池積層体2は、互いに隣接する電池セル1同士を逆向きに並べており、その両側において隣接する電極端子13同士をバスバーで連結して、隣り合う2個の電池セル1を直列に接続して、すべての電池セル1を直列に接続するようにしている。ただ、本発明は、電池積層体を構成する電池セルの個数とその接続状態を特定しない。
【0032】
電池積層体2は、図2に示すように、積層している電池セル1の間にスペーサ7を挟着して、隣接する電池セル1を絶縁状態に積層している。スペーサ7は、プラスチックを板状に成形した絶縁プレートである。とくに、熱伝導率の小さい材質のプラスチックで成形されるスペーサ7は、隣接する電池セル1の熱暴走を効果的に防止できる効果もある。このスペーサ7は、電池セル1を嵌着して定位置に配置する形状として、隣接する電池セル1を位置ずれしないように積層できる。
【0033】
以上のように、スペーサ7で絶縁して積層される電池セル1は、外装缶をアルミニウムなどの金属製にできる。ただ、電池積層体は、必ずしも電池セルの間にスペーサを介在させる必要はない。例えば、電池セルの外装缶を絶縁材で成形し、あるいは電池セルの外装缶の外周を絶縁シートや絶縁塗料等で被覆する等の方法で、互いに隣接する電池セル同士を絶縁することによって、スペーサを不要とできるからである。さらに、電池セルの間にスペーサを介在させない電池積層体は、電池セルの間に冷却風を強制送風して電池セルを冷却する空冷式を採用することなく、冷媒等を用いて直接冷却する方式を採用して電池セルを冷却できる。
【0034】
(エンドプレート3)
エンドプレート3は、バインドバー4に連結されて、電池積層体2を両端面に配置して、電池セル1を積層方向に保持する。エンドプレート3は、バインドバー4に固定されて、電池積層体2の各電池セル1を固定する。エンドプレート3の外形は、電池セル1の外形にほぼ等しく、あるいはこれよりもわずかに大きく、両側の外周面にバインドバー4を固定して、電池積層体2を振動・衝撃時もセルの移動を抑制する強度をもつ四角形の板材である。このエンドプレート3は、全体をアルミニウムやアルミニウム合金等の金属製としている。ただし、エンドプレートは、図示しないが、プラスチックに金属板を積層する構造とし、あるいはまた、全体を補強繊維を埋設している繊維強化樹脂成形板とすることもできる。
【0035】
エンドプレート3は、電池セル1の表面に、直接にあるいはスペーサを介して面接触状態に密着して、電池セル1を固定する。電源装置100は、組み立て工程において、電池積層体2の両端部にエンドプレート3を配置し、両端のエンドプレート3をプレス機(図示せず)で加圧して、バインドバー4を挿入する。エンドプレート3がバインドバー4に固定された後、プレス機の加圧状態は解除される。
【0036】
(冷却プレート9)
冷却プレート9は、内部を循環する冷却液で電池セル1を冷却する。電池セル1の熱エネルギーを効率よく冷却液に伝導するために、冷却プレート9は熱伝導特性に優れたアルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。冷却プレート9は、内部に冷却液の循環路31を設けている。循環路31は冷却機構30に連結されて冷却プレート9を冷却する。図1図2の電源装置100は、電池積層体2の底面に熱結合状態に冷却プレート9を配置している。ただ、冷却プレート9は、電池積層体2の側面に配置することもできる。図の電源装置100は、冷却プレート9の外形を、電池積層体2の底面形状に等しく、あるいはこれよりも僅かに大きい長方形の金属板として、全ての電池セル1を冷却する構造としている。冷却プレート9は、金属板の内部に金属パイプを挿入して空洞を設け、あるいは内部に空洞を設けて内部に冷却液の循環路31を設けている。
【0037】
図3図5は、電源装置100、200の概略横断面図である。これらの図の電源装置100、200は、電池積層体2と冷却プレート9との間に熱伝導シート32を挟着している。熱伝導シート32は、可撓性とクッション性があって熱伝導特性の優れたシートである。熱伝導シート32は、電池積層体2と冷却プレート9との間に挟着されて、片面を電池積層体2の表面に、他の面を冷却プレート9の表面に広い面積で密着して、電池積層体2と冷却プレート9とを理想的な熱結合状態に配置する。
【0038】
(バインドバー4)
冷却プレート9は、バインドバー4を介して電池積層体2の表面に密着状態に固定される。図1図2の電源装置100は、バインドバー4の両端部を内側に折曲して固定片4aを設けて、この固定片4aを固定ネジ8を介してエンドプレート3の表面に固定している。ただし、本発明は、バインドバー4をエンドプレート3に固定する構造を特定するものでないので、バインドバー4の両端部をエンドプレート3に強固に固定できる他の全ての固定構造とすることができる。さらに、図に示すバインドバー4は、上端に、内側に折曲された上側折曲片4cを設けている。この上側折曲片4cは、電池積層体2の両側の上面に配置されて、積層された複数の電池セル1の上面である端子面を同一平面上に配置している。
【0039】
冷却プレート9は、バインドバー4に固定されて、電池積層体2に熱結合状態に固定される。図3図5の概略横断面図に示すバインドバー4は、冷却プレート9の表面に固定される折り曲げ部4bを設けている。折り曲げ部4bは、バインドバー4の下縁を内側に折曲加工して設けられる。バインドバー4は、折り曲げ部4bを貫通するボルト5を介して冷却プレート9に固定される。
【0040】
図3の電源装置100は、バインドバー4の折り曲げ部4bを冷却プレート9の外側表面に配置して、折り曲げ部4bを冷却プレート9の外側表面に固定している。この電源装置100は、折り曲げ部4bを貫通するボルト5を冷却プレート9の底面に設けた雌ねじ孔9aにねじ込んでバインドバー4を冷却プレート9に固定している。
【0041】
図5の電源装置200は、バインドバー4の折り曲げ部4bを電池積層体2と冷却プレート9との間に配置して、折り曲げ部4bを冷却プレート9の電池積層体2との対向面に固定している。この電源装置200は、折り曲げ部4bと冷却プレート9とを貫通するボルト5にナット6をねじ込んで、折り曲げ部4bと冷却プレート9とをボルト5とナット6とで挟着してバインドバー4を冷却プレート9に固定している。この冷却プレート9は、ボルト5を挿通する貫通孔9bを設けている。ボルト5は、バインドバー4にカシメ固定、または溶接固定されていても良い。
【0042】
バインドバー4は、両端をエンドプレート3に固定して電池積層体2の電池セル1を積層方向に拘束している。バインドバー4は振動・衝撃時には、電池積層体2からの荷重で強い引張力が作用する。電池積層体2の荷重に耐えるように、バインドバー4は高張力鋼やステンレス鋼板が使用される。冷却プレート9は優れた熱伝導特性が要求され、バインドバー4には強い引張力に耐える特性が要求されるので、冷却プレート9とバインドバー4と異種金属で製作される。異種金属の冷却プレート9とバインドバー4は、温度変化に対する伸縮量が異なり、たとえば、アルミニウムの熱膨張率は鋼の約2倍もある。したがって、アルミニウム製の冷却プレート9は、高張力鋼のバインドバー4に比較して、温度変化に対する伸縮量が2倍も大きい。温度に対する伸縮量が異なる異種金属が連結されると、温度変化によって異種金属間で相対的なずれが発生する。温度変化に対する異種金属間のずれは、バインドバー4と冷却プレート9との連結部で発生する。異種金属のバインドバー4と冷却プレート9とをボルト5で固定する構造において、バインドバー4と冷却プレート9とは温度変化によって相対的に移動して、ボルト5を緩ませる原因となる。とくに、電源装置は極めて広い押圧範囲で使用されることから、温度変化に対する相対的な移動が大きく、ボルト5を緩ませる原因となる。
【0043】
図4図6は、温度変化によるボルト5の緩みを防止する電源装置100、200の底面図である。ただし、図4図3の電源装置100の底面図、図6図5の電源装置200の底面図である。これ等の図に示す電源装置100、200は、バインドバー4の折り曲げ部4bの端部をボルトで冷却プレート9に固定しない。折り曲げ部4bは、強固に冷却プレート9に固定するために複数のボルト5を介して冷却プレート9に固定される。複数のボルト5でバインドバー4を冷却プレート9に固定する構造は、細いボルト5でバインドバー4を強固に冷却プレート9に固定できる。バインドバー4は太くて強い1本のボルト5で冷却プレート9に固定することもできるが、太いボルト5は大きく嵩張るので電源装置の外形が大きくなる。また、冷却プレート9に太いボルト5がねじ込まれ、あるいは貫通されると、冷却プレート9の内部に設ける循環路31の容積が制限されて、効率よく全体を冷却できなくなる弊害が発生する。この弊害を防止するために、バインドバー4は複数のボルト5で冷却プレート9に固定される。
【0044】
複数のボルト5でバインドバー4を冷却プレート9に固定して、ボルト5の緩みを防止するために、ボルト5がバインドバー4を冷却プレート9に固定する固定領域21の長さ
(L)は、バインドバー4の全長(T)の70%以下として、バインドバー4の端部には、ボルト5でバインドバー4を固定しない非固定領域22を設けている。図4図6の電源装置100、200は、折り曲げ部4bの中央部に固定領域21を設けて、両端部には同じ長さの非固定領域22を設けている。この電源装置100、200は、バインドバー4を確実に理想的な状態で冷却プレート9に固定できる特徴がある。ただ、固定領域は必ずしも折り曲げ部の中央部に配置する必要はない。
【0045】
バインドバー4の全長(T)に対する固定領域21は長さ(L)を小さくして温度変化によるボルト5の緩みを少なくできる。また、固定領域21は長くして、バインドバー4をより確実に冷却プレート9に固定できる。さらに、温度変化によるボルト5の緩みは、冷却プレート9の全長(R)、すなわちバインドバー4の全長(T)によっても変化するので、バインドバー4の全長(T)に対する固定領域21の長さ(L)は、バインドバー4の全長(T)も考慮して最適値に設定される。電源装置100、200は、固定領域21の長さ(L)をバインドバー4の全長(T)又は冷却プレート9の全長(R)の70%以下とするが、冷却プレート9やバインドバー4の全長を30cm以上とする電源装置においては、バインドバー4の全長(T)に対する固定領域21の長さ(L)を、温度変化によるボルト5の緩みと、バインドバー4を冷却プレート9に固定する強度とを考慮して、たとえば60%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下に制限する。
【0046】
図4図6の電源装置100、200は、バインドバー4の折り曲げ部4bの中央部に設けた固定領域21に3個のボルト5を並べて配置して、ボルト5を固定している固定領域21の長さ(L)を、バインドバー4の折り曲げ部4bの全長(M)の20%として、両端部には折り曲げ部4bの全長(M)の80%の非固定領域22を設けている。この電源装置100、200は、固定領域21の長さ(L)を短くしているので、大幅な温度変化のある環境で長期間使用されても、ボルト5の緩みを確実に阻止できる特徴がある。以上の電源装置は固定領域21に3個のボルト5を配置してバインドバー4を冷却プレート9に固定しているが、固定領域21には2個又は4個以上のボルト5を配置してバインドバー4を冷却プレート9に固定することもできる。
【0047】
図7図8の概略横断面図に示す電源装置300、400は、冷却プレート9の両側に長手方向に沿って伸びるフランジ部9Yを設けて、両側のフランジ部9Yの内側に電池積層体2が嵌合される状態に配置している。図7の冷却プレート9は、本体部9Xを電池積層体2の底面に熱結合状態に密着し、フランジ部9Yの内面を電池積層体2の両側面に熱結合状態に密着している。図8の冷却プレート9は、本体部9Xを電池積層体2の底面に熱結合状態に密着し、フランジ部9Yの内側をバインドバー4に密着させて、バインドバー4を介して電池積層体2の幅方向の位置ずれを阻止する。これ等の冷却プレート9は、両側のフランジ部9Yの内側に電池積層体2を配置して、冷却プレート9と電池積層体2との幅方向(図4及び図6におけるX軸方向)の位置ずれを阻止する。したがって、X軸方向において両者の連結剛性を高めることができる。この電源装置300、400は、ボルト5で電池積層体2と冷却プレート9の長手方向(図4及び図6においてY軸方向)の位置ずれを阻止し、フランジ部9YでX軸方向の位置ずれを阻止する。この電源装置300、400は、フランジ部9YでX軸方向の位置ずれを阻止するので、ボルト5でY軸方向の位置ずれのみを阻止して、電池積層体2と冷却プレート9とを確実に位置ずれしないように固定できる。したがって、この構造の電源装置300、400は、固定領域21の長さ(L)を短くして、ボルト5の座面における緩みを有効に防止しながら、冷却プレート9と電池積層体2とを位置ずれすることなく理想的な状態で強固に連結できる特徴がある。
【0048】
以上の冷却プレート9は、アルミニウムをダイキャスト成形又は、押し出し成形してフランジ部9Yを一体構造に設けることができる。ただ、フランジ部9Yを別部材としてこれを本体部9Xに固定して設けることもできる。なお、上述の実施形態の電源装置は、内部を循環する冷却液で電池セル1を冷却する冷却プレート9を備える構成となっているが、本発明において、冷却プレートは、必ずしもプレートの内部を冷却液が循環する構成でなくてもよい。具体的には、冷却プレートは、アルミニウムなどの熱伝導性の高い材料を成形して形成される熱伝導プレートであってもよい。この構成の場合、プレートの熱伝導性を利用して電池セルを冷却することができ、かつ、冷却液などを循環させる必要がないので、簡単な構成とすることができる。これらは要求される冷却性能に応じて選択してもよい。
【0049】
図1図4、及び図7の電源装置100、300は、以下の工程で組み立てられる。
(1)所定の個数の電池セル1を、間にスペーサ7を介在させる状態で、電池セル1の厚さ方向に積層して電池積層体2とする。
(2)電池積層体2の両端にエンドプレート3を配置し、一対のエンドプレート3を両側からプレス機(図示せず)で押圧して、保持する。さらに、電池積層体2の底面に、熱伝導シート32を介して冷却プレート9を配置する。図7の電源装置300においては、冷却プレート9の両側に設けたフランジ部9Yの間に電池積層体2を嵌合させる。
(3)電池積層体2をエンドプレート3で押圧状態で一対のエンドプレート3にバインドバー4を連結して固定すると共に、バインドバー4を冷却プレート9に固定する。バインドバー4は、両端に設けた固定片4aが固定ネジ8を介してエンドプレート3の外側表面に固定される。さらに、バインドバー4は、下端に設けた折り曲げ部4bを貫通するボルト5が冷却プレート9の雌ねじ孔9aにねじ込まれて、冷却プレート9の外側表面に固定される。
この状態で、電池積層体2は、バインドバー4で所定の間隔に保持される一対のエンドプレート3を介して保持されると共に、ボルト5を介して冷却プレート9に固定される。
(4)電池積層体2の両側部において、互いに隣接する電池セル1の対向する電極端子13同士をバスバー(図示せず)で連結する。バスバーは、電極端子13に固定されて、電池セル1を直列に接続し、あるいは直列と並列に接続する。バスバーは、電極端子13に溶接され、あるいはネジ止めされて電極端子13に固定される。
【0050】
また、図5図6、及び図8の電源装置200、400は、以下の工程で組み立てられる。
(1)所定の個数の電池セル1を、間にスペーサ7を介在させる状態で、電池セル1の厚さ方向に積層して電池積層体2とする。
(2)電池積層体2の両端にエンドプレート3を配置し、一対のエンドプレート3を両側からプレス機(図示せず)で押圧して、エンドプレート3でもって、電池積層体2を所定の圧力で加圧し、電池セル1を圧縮状態に保持する。
(3)電池積層体2をエンドプレート3で圧縮状態で一対のエンドプレート3にバインドバー4を連結して固定する。バインドバー4は、両端に設けた固定片4aが固定ネジ8を介してエンドプレート3の外側表面に固定される。
この状態で、電池積層体2は、バインドバー4で所定の間隔に保持される一対のエンドプレート3を介して保持される。
(4)バインドバー4の折り曲げ部4bを冷却プレート9に固定する。折り曲げ部4bは、冷却プレート9と電池積層体2との間に配置されて、冷却プレート9の電池積層体2との対向面に固定される。バインドバー4は、折り曲げ部4bを貫通するボルト5が冷却プレート9の貫通孔9bに挿通されると共に、ボルト5にナット6がねじ込まれて、ボルト5とナット6で冷却プレート9を挟着して固定される。このとき、電池積層体2と冷却プレート9の間に熱伝導シート32を介在させる。図8の電源装置400においては、冷却プレート9の両側に設けたフランジ部9Yの間に電池積層体2を嵌合させて、バインドバー4の外側表面にフランジ部9Yを配置する。
(5)電池積層体2の両側部において、互いに隣接する電池セル1の対向する電極端子13同士をバスバー(図示せず)で連結する。バスバーは、電極端子13に固定されて、電池セル1を直列に接続し、あるいは直列と並列に接続する。バスバーは、電極端子13に溶接され、あるいはネジ止めされて電極端子13に固定される。
【0051】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源装置に最適である。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの電動車両の電源として使用される。
【0052】
(ハイブリッド車用電源装置)
図9に、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体90と、車両本体90を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94と、モータ93とエンジン96で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0053】
(電気自動車用電源装置)
また、図10に、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体90と、車両本体90を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。
【0054】
(蓄電用電源装置)
さらに、本発明は電源装置の用途を電動車両に搭載する電源装置には特定せず、たとえば、太陽光発電、風力発電などの自然エネルギーを蓄電する蓄電装置用の電源装置として使用でき、また深夜電力を蓄電する蓄電装置用の電源装置のように、大電力を蓄電する全ての用途に使用できる。例えば家庭用、工場用の電源として、太陽光や深夜電力等で充電し、必要時に放電する電源システム、あるいは日中の太陽光を充電して夜間に放電する街路灯用の電源や、停電時に駆動する信号機用のバックアップ電源等にも利用できる。このような例を図11に示す。なお、図11に示す蓄電装置としての使用例では、所望の電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の蓄電装置80を構築した例として説明する。
【0055】
図11に示す蓄電装置80は、複数の電源装置100をユニット状に接続して電源ユニット82を構成している。各電源装置100は、複数の電池セルが直列及び/又は並列に接続されている。各電源装置100は、電源コントローラ84により制御される。この蓄電装置80は、電源ユニット82を充電用電源CPで充電した後、負荷LDを駆動する。
このため蓄電装置80は、充電モードと放電モードを備える。負荷LDと充電用電源CPはそれぞれ、放電スイッチDS及び充電スイッチCSを介して蓄電装置80と接続されている。放電スイッチDS及び充電スイッチCSのON/OFFは、蓄電装置80の電源コントローラ84によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ84は充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをOFFに切り替えて、充電用電源CPから蓄電装置80への充電を許可する。また充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で負荷LDからの要求に応じて、電源コントローラ84は充電スイッチCSをOFFに、放電スイッチDSをONにして放電モードに切り替え、蓄電装置80から負荷LDへの放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチCSをONに、放電スイッチDSをONにして、負荷LDの電力供給と、蓄電装置80への充電を同時に行うこともできる。
【0056】
蓄電装置80で駆動される負荷LDは、放電スイッチDSを介して蓄電装置80と接続されている。蓄電装置80の放電モードにおいては、電源コントローラ84が放電スイッチDSをONに切り替えて、負荷LDに接続し、蓄電装置80からの電力で負荷LDを駆動する。放電スイッチDSはFET等のスイッチング素子が利用できる。放電スイッチDSのON/OFFは、蓄電装置80の電源コントローラ84によって制御される。また電源コントローラ84は、外部機器と通信するための通信インターフェースを備えている。
図11の例では、UARTやRS-232C等の既存の通信プロトコルに従い、ホスト機器HTと接続されている。また必要に応じて、電源システムに対してユーザが操作を行うためのユーザインターフェースを設けることもできる。
【0057】
各電源装置100は、信号端子と電源端子を備える。信号端子は、入出力端子DIと、異常出力端子DAと、接続端子DOとを含む。入出力端子DIは、他の電源装置100や電源コントローラ84からの信号を入出力するための端子であり、接続端子DOは他の電源装置100に対して信号を入出力するための端子である。また異常出力端子DAは、電源装置100の異常を外部に出力するための端子である。さらに電源端子は、電源装置100同士を直列、並列に接続するための端子である。また電源ユニット82は、並列接続スイッチ85を介して出力ラインOLに接続されて互いに並列に接続されている。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両並びに蓄電装置は、EV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0059】
100、200、300、400…電源装置、1…電池セル、2…電池積層体、3…エンドプレート、4…バインドバー、4a…固定片、4b…折り曲げ部、4c…折曲片、5…ボルト、6…ナット、7…スペーサ、8…固定ネジ、9…冷却プレート、9X…本体部、9Y…フランジ部、9a…雌ねじ孔、9b…貫通孔、10…電池ケース、10A…外装缶、10B…封口板、11…排出弁、12…ガス排出口、13…電極端子、21…固定領域、22…非固定領域、30…冷却機構、31…循環路、32…熱伝導シート、80…蓄電装置、82…電源ユニット、84…電源コントローラ、85…並列接続スイッチ、90…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、101…電池セル、102…電池積層体、103…エンドプレート、104…バインドバー、104b…折り曲げ部、109…冷却プレート、EV…車両、HV…車両、LD…負荷、CP…充電用電源、DS…放電スイッチ、CS…充電スイッチ、OL…出力ライン、HT…ホスト機器、DI…入出力端子、DA…異常出力端子、DO…接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13