IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フタバ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-キャニスタ 図1
  • 特許-キャニスタ 図2
  • 特許-キャニスタ 図3
  • 特許-キャニスタ 図4
  • 特許-キャニスタ 図5
  • 特許-キャニスタ 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
F02M25/08 311E
F02M25/08 311A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020145693
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040807
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 光司
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-280435(JP,A)
【文献】特開平06-307300(JP,A)
【文献】特開2010-138789(JP,A)
【文献】特開2012-193662(JP,A)
【文献】特表2012-503135(JP,A)
【文献】特開2013-029060(JP,A)
【文献】特開2013-231380(JP,A)
【文献】特開2016-070183(JP,A)
【文献】特開2018-155103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0110440(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0111177(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着する吸着材が内部に配置されるケーシングを備えるキャニスタであって、
前記ケーシングの内部に設けられ、前記吸着材が配置される第1室及び第2室と、
前記ケーシングの一部として構成され、前記第1室及び前記第2室に隣接し、前記第1室と前記第2室とを仕切る内部壁と、
前記蒸発燃料を前記ケーシングの内部に流入させるよう構成されており、前記第1室に設けられたチャージポートと、
前記吸着材に吸着された前記蒸発燃料を前記ケーシングの外部に排出するよう構成されており、前記第1室に設けられたパージポートと、
大気を前記ケーシングの内部に流入させるよう構成されており、前記第2室に設けられた大気ポートと、
前記第1室及び前記第2室のうちの少なくとも一方に設けられた隔離部と、を備え、
前記隔離部は、当該隔離部が設けられた前記第1室又は前記第2室に配置された前記吸着材を前記内部壁から隔離するよう、該吸着材と前記内部壁との間に配置され、
前記第1室と前記第2室とは、第1方向に延び、
前記チャージポート及び前記パージポートは、前記第1室における前記第1方向の一端に設けられ、
前記大気ポートは、前記第2室における前記第1方向の前記一端に設けられ、
前記ケーシングは、対面する第1壁部と第2壁部とを有し、前記第1及び第2壁部は、それぞれ、前記第1及び第2室に面しており、
前記内部壁は、前記第1壁部から前記第2壁部にかけて広がり、
前記内部壁の少なくとも一部は、前記第1壁部と前記第2壁部とが対面する方向に対し傾斜するか、又は、前記第1方向に直交する断面において湾曲している
キャニスタ。
【請求項2】
請求項1に記載されたキャニスタにおいて、
前記隔離部は、前記内部壁と、当該隔離部が設けられた前記第1室又は前記第2室に配置された前記吸着材との間に、空間を形成する
キャニスタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたキャニスタにおいて、
前記隔離部は、筒状の部材として構成されており、当該隔離部の内側に前記吸着材が配置されるよう構成されている
キャニスタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載されたキャニスタにおいて、
前記隔離部は、前記第2室に設けられる
キャニスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キャニスタに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料タンクにて生じた蒸発燃料が大気に放出されるのを抑制するキャニスタが知られている。キャニスタは、蒸発燃料の吸着材(例えば、活性炭)が内部に配置されており、チャージポートを介して燃料タンクからキャニスタの内部に流入した蒸発燃料は、吸着材に吸着する。また、キャニスタでは、吸着材に吸着した蒸発燃料をエンジンに向けて排出するパージが行われる。具体的には、エンジンの吸気負圧により大気ポートからキャニスタの内部に大気を流入させることで、吸着材に吸着した蒸発燃料を脱離させ、パージポートを介して脱離した蒸発燃料をエンジンに供給する。
【0003】
また、特許文献1に記載されているように、チャージポート及びパージポートが設けられた第1室と、大気ポートが設けられた第2室とを備えるキャニスタが知られている。第2室を設けることで、蒸発燃料の吸着性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4589422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、蒸発燃料が吸着材に吸着する際には発熱反応が生じ、発熱反応により吸着材の温度が上昇すると、吸着材の蒸発燃料の吸着性能が低下する。また、蒸発燃料を吸着材から脱離する際には吸熱反応が生じ、吸熱反応により吸着材の温度が低下すると、吸着材に吸着している蒸発燃料の脱離性能が低下する。
【0006】
そこで、特許文献1のキャニスタでは、第1室を囲む壁部と第2室を囲む壁部との間に隙間が形成されている。これにより、チャージポートから流入した蒸発燃料が第1室の吸着材に吸着する際の発熱反応により、第2室の吸着材の温度が上昇するのを抑制でき、第2室の吸着材の吸着性能の低下を抑制できる。また、これにより、パージポートから流入した大気により第2室の吸着材から蒸発燃料が脱離する際の吸熱反応により、第1室の吸着材の温度が低下するのを抑制でき、第1室の吸着材の脱離性能の低下を抑制できる。
【0007】
しかしながら、第1室の壁部と第2室の壁部との間に隙間を設けた結果、キャニスタの配置スペースが大きくなり、キャニスタの車両への搭載が困難になる恐れがある。
本開示の一態様においては、蒸発燃料の吸着性能及び脱離性能の低下を抑制しつつ、キャニスタの車両への搭載を容易にするのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着する吸着材が内部に配置されるケーシングを備えるキャニスタであって、第1室及び第2室と、内部壁と、チャージポートと、パージポートと、大気ポートと、隔離部とを備える。第1室及び第2室は、ケーシングの内部に設けられ、吸着材が配置される。内部壁は、ケーシングの一部として構成され、第1室及び第2室に隣接し、第1室と第2室とを仕切る。チャージポートは、蒸発燃料をケーシングの内部に流入させるよう構成されており、第1室に設けられる。パージポートは、吸着材に吸着された蒸発燃料をケーシングの外部に排出するよう構成されており、第1室に設けられる。大気ポートは、大気をケーシングの内部に流入させるよう構成されており第2室に設けられる。隔離部は、第1室及び第2室のうちの少なくとも一方に設けられる。そして、隔離部は、当該隔離部が設けられた第1室又は第2室に配置された吸着材を内部壁から隔離するよう、該吸着材と内部壁との間に配置される。
【0009】
上記構成によれば、第1及び第2室が内部壁に隣接しており、これらの室の間に隙間が形成されていないため、キャニスタの配置スペースが低減され得る。このため、キャニスタの車両への搭載が容易になる。
【0010】
また、内部壁の付近にチャージポート、パージポート、又は大気ポート(以後、まとめてポートと記載)を配置することで、第1室と第2室との間に隙間が設けられたキャニスタでは配置できない位置にポートを配置し得る。このため、より柔軟にポートの位置を定めることができ、キャニスタの車両への搭載が容易になる。
【0011】
さらに、第1及び第2室との間に隙間を設ける場合、第1及び第2室の壁部における該隙間に隣接する部分の形状が制限される場合があり、その結果、ポートの位置が制限され得る。これに対し、上記構成よれば、このような隙間が無く、内部壁の形状をより柔軟に定めることができる。このため、より柔軟にポートの位置を定めることができ、キャニスタの車両への搭載が容易になる。
【0012】
また、第1及び第2室の少なくとも一方では、隔離部により吸着材が内部壁から隔離されるため、第1室の吸着材と第2室の吸着材との間での熱の伝達を抑制できる。このため、第1及び第2室の一方にて蒸発燃料が吸着材に吸着して発熱反応が生じた場合に、他方の室の温度が上昇し、他方の室の吸着材の吸着性能が低下するのを抑制できる。また、第1及び第2室の一方にて蒸発燃料が吸着材から脱離して吸熱反応が生じた場合に、他方の室の温度が低下し、他方の室の吸着材の脱離性能が低下するのを抑制できる。
【0013】
したがって、蒸発燃料の吸着性能及び脱離性能の低下を抑制しつつ、キャニスタの車両への搭載が容易になる。
なお、隔離部は、内部壁と、当該隔離部が設けられた第1室又は第2室に配置された吸着材との間に、空間を形成しても良い。
【0014】
上記構成によれば、第1室の吸着材と第2室の吸着材との間での熱の伝達を、より効果的に抑制できる。
また、隔離部は、筒状の部材として構成されており、当該隔離部の内側に吸着材が配置されるよう構成されていても良い。
【0015】
上記構成によれば、隔離部のサイズを変更することで、隔離部の内側における吸着材の量及びL/Dを容易に調整できる。なお、Lとは、吸着材の配置領域における蒸発燃料の流れ方向の長さを意味する。また、Dとは、該配置領域における該流れ方向に直交する断面における相当直径を意味する。このため、同一のケーシングを用いつつ、隔離部のサイズを変更することで、隔離部が設けられた室の吸着材の量及びL/Dを車両の種類に応じて調整できる。したがって、複数の種類の車両に搭載されるキャニスタのケーシングの全部又は一部を共通化でき、キャニスタの製造コストを低減できる。
【0016】
また、隔離部は、第2室に設けられていても良い。
上記構成によれば、第1室にてチャージポートから流入した蒸発燃料が吸着材に吸着し、発熱反応が生じた場合に、第2室に熱が伝達し、第2室の吸着材の吸着性能が低下するのを抑制できる。また、第2室にて大気ポートから流入した大気により蒸発燃料が吸着材から脱離し、吸熱反応が生じた場合に、第1室の吸着材の温度が低下し、該吸着材の脱離性能が低下するのを抑制できる。したがって、蒸発燃料の吸着性能及び脱離性能の低下を抑制できる。
【0017】
また、第1室と第2室とは、第1方向に延び、チャージポート及びパージポートは、第1室における第1方向の一端に設けられ、大気ポートは、第2室における第1方向の一端に設けられていても良い。また、ケーシングは、対面する第1壁部と第2壁部とを有し、第1及び第2壁部は、それぞれ、第1及び第2室に面しており、内部壁は、第1壁部から第2壁部にかけて広がっていても良い。そして、内部壁の少なくとも一部は、第1壁部と第2壁部とが対面する方向に対し傾斜するか、又は、第1方向に直交する断面において湾曲していても良い。
【0018】
上記構成によれば、内部壁の少なくとも一部が、第1及び第2壁部が対面する方向に対し傾斜するか、又は、第1方向に直交する断面において湾曲している。このため、内部壁が該対面する方向に平行である場合とは異なる位置にポートを配置できる。したがって、ポートの位置をより柔軟に定めることができ、キャニスタの車両への搭載が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】キャニスタの第3方向に直交する断面図である。
図2】キャニスタのケーシングの外部壁及び内部壁の、第1方向に直交する断面図である。
図3】変形例のキャニスタのケーシングの外部壁及び内部壁の、第1方向に直交する断面図である。
図4】変形例のキャニスタのケーシングの外部壁及び内部壁の、第1方向に直交する断面図である。
図5】キャニスタのケーシングの製造工程の説明図である。
図6】第1室と第2室との間に隙間が設けられたキャニスタのケーシングの製造工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0021】
[1.キャニスタの概要]
本実施形態のキャニスタ1は、車両に搭載され、車両の燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着することで、蒸発燃料が車両の外部に流出するのを抑制する(図1参照)。また、キャニスタ1は、大気を取り込んでパージを行うことで、吸着した蒸発燃料を車両のエンジンへと流出させる。
【0022】
キャニスタ1は、第1室10と、第2室11と、接続通路12と、パージポート13と、チャージポート14と、大気ポート15と、活性炭16とを備える(図1、2参照)。
第1及び第2室10、11には、蒸発燃料の吸着材として活性炭16が配置される。なお、第1及び第2室10、11には、活性炭16以外の吸着材が配置されても良い。また、第1及び第2室10、11は、第1方向に延びる。また、第1及び第2室10、11は、第1方向に直交する第2方向に並ぶ。また、以後、第1及び第2方向に直交する方向を、第3方向とする。また、以後、第1方向に対面する一方の側を第1側、他方の側の第2側とする。
【0023】
第1室10の第1側、第2側には、それぞれ、フィルタ10A、10Bが配置されており、第1室10の活性炭16はフィルタ10A、10Bの間に収容される。また、フィルタ10Bの第2側に隣接して、流体を通過させる多数の孔を有するグリッド10Cが配置される。
【0024】
一方、第2室11には、活性炭16を収容している内側ケース3(詳細は後述する)が配置される。
接続通路12は、第1及び第2室10、11を連通する。接続通路12は、第1及び第2室10、11の各々における第2側の端部に接続されており、接続通路12を介して、第1室10と第2室11との間を流体が移動可能となっている。
【0025】
チャージポート14は、第1室10の第1側の端部に設けられ、車両の燃料タンクに対し弁を介して接続されている。燃料タンクに蓄積された燃料から生じた蒸発燃料は、チャージポート14を介してキャニスタ1の内部に流入し、第1及び第2室10、11の活性炭16に吸着する。これにより、キャニスタ1の内部に蒸発燃料が蓄積される。
【0026】
パージポート13は、第1室10の第1側の端部に設けられ、弁を介して車両のエンジンの吸気管に接続される。
大気ポート15は、第2室11の第1側の端部に設けられ、車両の外部に繋がる。
【0027】
そして、エンジンの吸気負圧により、大気ポート15を介して大気(以後、パージエア)をキャニスタ1の内部に流入させることで、上述したパージが行われる。第1及び第2室10、11では、流入したパージエアにより活性炭16に吸着した蒸発燃料が脱離し、パージポート13を介して吸気管に向けて流出される。これにより、活性炭16に吸着していた蒸発燃料が除去され、活性炭16が再生される。
【0028】
また、キャニスタ1は、ケーシング2と蓋部4とを備え、これらの部位により、第1室10、第2室11、及び接続通路12が形成される。以下では、ケーシング2及び蓋部4と、上述した内側ケース3とについて説明する。
【0029】
[2.ケーシング]
ケーシング2は、一例として樹脂により形成された略直方体形状の部位であり、内部に第1及び第2室10、11が設けられる。ケーシング2は、外部壁20と、内部壁21と、第1~第3底部22~24とを備える(図1、2参照)。
【0030】
外部壁20は、第1及び第2室10、11を囲む壁状の部位である。外部壁20は、第1及び第2室10、11に面する第1及び第2壁部20A、20Bを有する。第1壁部20Aと第2壁部20Bとは、第3方向に対面する。本実施形態では、一例として、第1及び第2壁部20A、20Bは、第2方向に沿って略平面状に広がる。しかし、第1及び第2壁部20A、20Bは、第2方向に対し傾斜していても良いし、湾曲していても良い。また、外部壁20は、第1室10に面する第3壁部20Cと、第2室11に面する第4壁部20Dとを有する。第3壁部20Cと第4壁部20Dとは、第2方向に対面する。本実施形態では、一例として、第3及び第4壁部20C、20Dは、第3方向に沿って略平面状に広がる。しかし、第3及び第4壁部20C、20Dは、第3方向に対し傾斜していても良いし、湾曲していても良い。
【0031】
内部壁21は、外部壁20の内側に配置され、外部壁20の内側の空間を、第1室10と第2室11とに仕切る。内部壁21は、第1壁部20Aの内周面から第2壁部20Bの内周面にわたって広がり、第1及び第2室10、11に隣接する。また、内部壁21は、第3方向に対し傾斜して平面状に広がる。
【0032】
なお、内部壁21は、例えば、第3方向に沿って平面状に広がっていても良い(図3参照)。また、内部壁21は、第1方向に直交する断面において湾曲した形状であっても良い(図4参照)。また、内部壁21の一部が、第3方向に対し傾斜した形状であっても良いし、第1方向に直交する断面において湾曲した形状であっても良い。
【0033】
第1及び第2底部22、23は、第1室10の第1側の端部を覆うように設けられる。第1底部22にはパージポート13が設けられ、第2底部23にはチャージポート14が設けられる。
【0034】
第3底部24は、第2室11の第1側の端部を覆うように設けられる。第3底部24には大気ポート15が設けられる。
なお、パージポート13、チャージポート14、及び大気ポート15の位置は適宜定められ得るが、これらのポートは、内部壁21の付近に配置されても良い。内部壁21の付近にポートを配置するとは、第1方向に沿ってポートを第2側に移動すると、該ポートが内部壁21に当接又は近接する位置にポートを配置するという意味を含む。具体的には、図2~4における位置10A~10Cにパージポート13又はチャージポート14が配置されても良いし、位置11A~11Cに大気ポート15が配置されても良い。
【0035】
[3.内側ケース]
内側ケース3は、活性炭16を収容するよう構成され、第2室11に配置される(図1参照)。内側ケース3は、本体部30と、シール部材31と、フィルタ32、33と、グリッド34と、隔壁板35とを備える。
【0036】
本体部30は、円筒状の部位であり、第1方向に延びるように第2室11に配置される。なお、本体部30は、円筒状に限らず、様々な形状の筒状部材として形成され得る。具体的には、例えば、本体部30の第1方向に直交する断面は、多角形状であっても良い。
【0037】
本体部30の内側には活性炭16が配置され、本体部30の一部は、該活性炭16と内部壁21との間に位置する。また、該活性炭16の第1側、第2側には、それぞれ、フィルタ32、33が配置される。また、フィルタ32の第1側に隣接して、流体が通過する多数の孔が形成された隔壁板35が配置される。また、フィルタ33の第2側に隣接して、流体が通過する多数の孔が形成されたグリッド34が配置される。なお、隔壁板35は、本体部30の第1側の開口から所定の距離を隔てて配置され、グリッド34もまた、本体部30の第2側の開口から所定の距離を隔てて配置される。
【0038】
本体部30の第1側の端部には、当接部30Aが設けられていると共に、第2側の端部には、開口部30B及びフランジ部30Cが設けられる。
当接部30Aは、本体部30における第1側の開口を囲む縁部を形成し、外側に突出すると共に、当接部30Aの外縁は第1側に突出する。また、当接部30Aは、本体部30の第1側の端部にてケーシング2に当接する。すなわち、当接部30Aは、ケーシング2における第2室11の第1側の端部に設けられた段差に当接する。
【0039】
また、開口部30Bは、本体部30の第2側の端部を含む部位であり、第2側に向かうに従い径が広がる。また、フランジ部30Cは、本体部30の第2側の開口を囲み、外側に突出する。そして、フランジ部30Cの外周面には、本体部30の第2側の開口を囲む溝部が形成されており、該溝部には、シール部材31(一例として、Oリング)が配置される。
【0040】
第2室11に配置された内側ケース3は、当接部30A、フランジ部30C、及びシール部材31がケーシング2に当接し、本体部30における当接部30A及びフランジ部30C以外の部分と、外部壁20及び内部壁21との間には、空間36が形成される。空間36は、本体部30を囲み、活性炭16の配置領域の全域にわたって広がる。このため、空間36は、活性炭16の配置領域の全域と内部壁28との間に位置し、第2室11の活性炭16は、ケーシング2の内部壁28の全域から隔離される。なお、空間36には、例えば、グラスウール等の断熱材が配置されても良い。また、本体部30を、断熱性を有する材料により構成しても良い。
【0041】
そして、空間36の第1側の端部は、当接部30Aに当接し、空間36の第2側の端部は、フランジ部30Cに設けられたシール部材31により封止される。これにより、キャニスタ1内部の蒸発燃料が空間36に流入するのが抑制される。
【0042】
[4.蓋部]
蓋部4は、外部壁20により形成される第1及び第2室10、11の第2側の端部を覆うように設けられる(図1参照)。蓋部4と第1及び第2室10、11の第2側の端部との間には、上述した接続通路12が形成される。また、蓋部4は、第1及び第2スプリング40、41を備える。
【0043】
第1スプリング40は、蓋部4の内周面と第1室10の第2側に設けられたグリッド10Cとの間に設けられ、グリッド10Cを第1側に付勢する。
第2スプリング41は、蓋部4の内周面と第2室10の内側ケース3のグリッド34との間に設けられ、グリッド34を第1側に付勢する。
【0044】
[5.ケーシングの製造工程]
キャニスタ1のケーシング2における外部壁20の製造工程は、以下の第1、第2工程を含んでいる。
【0045】
第1工程では、ケーシング2の外部壁20の外周面を成形するための第1及び第2金型50、51が対面した状態で配置される(図5参照)。
続く第2工程では、第1及び第2金型50、51の間に溶融状態の樹脂を注入し、該樹脂を硬化させる。そして、該樹脂の硬化が完了すると、第1及び第2金型50、51を引き離す。これにより、外部壁20の外周面が成形される。なお、第2工程において第1及び第2金型50、51を引き離す際に第1及び第2金型50、51が変位する方向52は、該第1及び第2金型50、51に位置するケーシング2の外部壁20における第3方向と平行である。
【0046】
また、第1~第3底部22~24、パージポート13、チャージポート14、及び大気ポート15の外周面についても、第1、第2工程にて、第1及び第2金型50、51を用いて成形されても良い。また、外部壁20の内周面及び内部壁21については、第1及び第2金型50、51の間に配置される別の金型を用いて成形されても良い。
【0047】
[5.効果]
(1)上記実施形態によれば、第1及び第2室10、11が内部壁21に隣接しており、これらの室の間に隙間が形成されていないため、キャニスタ1の配置スペースが低減され得る。このため、キャニスタ1の車両への搭載が容易になる。
【0048】
また、内部壁21の付近にポートを配置することで、第1室と第2室との間に隙間が設けられたキャニスタでは配置できない位置にポートを配置し得る。このため、より柔軟にポートの位置を定めることができ、キャニスタの車両への搭載が容易になる。
【0049】
さらに、第1及び第2室との間に隙間を設ける場合、第1及び第2室の壁部における該隙間に隣接する部分の形状が制限され得る。すなわち、図6に示すように、ケーシング6における第1室60の壁部61と第2室62の壁部63との間に隙間を設ける場合、ケーシング6の外周面を成形する金型70、71に、壁部61、63の外周面を成形するための突出部73、74を設ける必要がある。このため、例えば、図6のように壁部61、63が引き離し方向72に対し傾斜していたり、壁部61、63が湾曲していたりすると、金型70、71を引き離し方向72に変位させることができなくなる。なお、引き離し方向72とは、ケーシング6の成形のため、金型70、71の内部に注入された樹脂の硬化後に金型70、71を引き離す方向を意味する。このため、第1室60の壁部61と第2室62の壁部63とは、引き離し方向72に平行にする必要があり、その結果、第1及び第2室60、62のポートの位置に制限が生じる可能性がある。
【0050】
これに対し、上記実施形態によれば、第1室10と第2室11との間に隙間が無いため、内部壁21の形状を柔軟に定めることができる。このため、より柔軟にポートの位置を定めることができ、キャニスタ1の車両への搭載が容易になる。
【0051】
また、第2室11では、内側ケース3により活性炭16が内部壁21の全域から隔離されるため、第1室10の活性炭16と第2室11の活性炭16との間での熱の伝達を抑制できる。このため、第1室10にてチャージポート14から流入した蒸発燃料が活性炭16に吸着し、発熱反応が生じた場合に、第2室11に熱が伝達し、第2室11の活性炭16の吸着性能が低下するのを抑制できる。また、第2室11にて大気ポート15から流入した大気により蒸発燃料が活性炭16から脱離し、吸熱反応が生じた場合に、第1室10の活性炭16の温度が低下し、該活性炭16の脱離性能が低下するのを抑制できる。
【0052】
したがって、蒸発燃料の吸着性能及び脱離性能の低下を抑制しつつ、キャニスタ1の車両への搭載が容易になる。
(2)また、第2室11では、内側ケース3により活性炭16と内部壁21との間に空間36が設けられる。このため、第1室10の活性炭16と第2室11の活性炭16との間での熱の伝達を、より効果的に抑制できる。
【0053】
(3)また、第2室11では、内側ケース3の本体部30に活性炭16が収容される。このため、本体部30のサイズを変更することで、第2室11における活性炭16の量及びL/Dを容易に調整できる。また、同一のケーシングを用いつつ、本体部30のサイズを変更することで、第2室11の活性炭16の量及びL/Dを、車両の種類に応じて調整できる。したがって、複数の種類の車両に搭載されるキャニスタ1のケーシング2の全部又は一部を共通化でき、キャニスタ1の製造コストを低減できる。
【0054】
(4)また、内部壁21は、第1及び第2壁部20A、20Bが対面する第3方向に対し傾斜している。このため、内部壁21が第3方向に平行である場合とは異なる位置にポートを配置できる。したがって、ポートの位置をより柔軟に定めることができ、キャニスタ1の車両への搭載が容易になる。
【0055】
[6.他の実施形態]
(1)上記実施形態では、第2室11では、内側ケース3の本体部30に活性炭16を収容することで、活性炭16と、内部壁21及び外部壁20との間に空間36が形成される。しかし、例えば、本体部30と内部壁21及び外部壁20とが当接するように内側ケース3を構成し、活性炭16と第2室11の内壁との間に空間が形成されないようにしても良い。なお、この場合には、本体部30を、断熱性を有する材料により構成するのが好適である。このような構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
【0056】
(2)また、内側ケース3に替えて、第2室11の活性炭16と内部壁21との間に板状の隔離部を配置し、活性炭16を外部壁20と隔離部との間に収容すると共に、活性炭16と内部壁21の全域とを隔離しても良い。この時、隔離部と内部壁21との間に空間が形成されていても良く、さらに、該空間には、例えば、グラスウール等の断熱材が配置されても良い。また、この時、隔離部と内部壁21とが当接するようにしても良く、この場合には、隔離部を、断熱性を有する材料により構成するのが好適である。このような構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
【0057】
(3)また、上記実施形態の内側ケースを第1室10に応じた形状に構成しても良い。そして、上記実施形態、又は他の実施形態(1)と同様にして、活性炭を収容している該内側ケースを第1室10に配置しても良い。この他にも、他の実施形態(2)における隔離部を第1室10に適した形状に構成しても良い。そして、該隔離部を第1室10に配置することで、該隔離部と外部壁20との間で活性炭16を収容しつつ、第1室10の活性炭16と内部壁21の全域とが隔離されるようにしても良い。
【0058】
この場合において、第2室11にも内側ケース3又は隔離部が設けられていても良いし、第2室11には、内側ケース3又は隔離部を用いること無く活性炭16が配置されるようにしても良い。
【0059】
このような構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
(4)また、上記実施形態において、第2室11は、第1方向に並ぶ複数の室により構成されていても良い。そして、各室において、上記実施形態、又は他の実施形態(1)或いは(2)と同様にして、内部壁21の全域から活性炭が隔離されるようにしても良い。このような構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
【0060】
(5)また、上記実施形態において、本体部30の第1側の端部に設けられた当接部30Aは、外側に突出するフランジ状の部位として構成されていても良い。このような構成を有する場合であっても、同様の効果が得られる。
【0061】
(6)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0062】
[7.文言の対応関係]
上記実施形態の内側ケース3の本体部30が、隔離部の一例に相当する。
【符号の説明】
【0063】
1…キャニスタ、10…第1室、11…第2室、12…接続通路、13…パージポート、14…チャージポート、15…大気ポート、16…活性炭、2…ケーシング、20…外部壁、20A…第1壁部、20B…第2壁部、21…内部壁、3…内側ケース、30…本体部、31…シール部材、36…空間、4…蓋部、50…第1金型、51…第2金型。
図1
図2
図3
図4
図5
図6