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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】投薬ユニットの再充填スケジューリング
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20230111BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/142 520
A61M5/168 500
A61M5/168 506
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020506755
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071474
(87)【国際公開番号】W WO2019030265
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】17185472.2
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フリードリ、カート
(72)【発明者】
【氏名】ファルツ、ステファン
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0039392(US,A1)
【文献】国際公開第2016/089701(WO,A1)
【文献】米国特許第6928338(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/168
G16H 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液剤を保存する一次リザーバ(300)からの、携帯型注入システムの二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングする方法であって、前記方法は、充填量の評価ルーチンを繰り返し、自動的に実行することを含み、前記充填量の評価ルーチンは、現時点において、前記現時点の後の推定時間間隔である将来の推定時点における前記二次リザーバ(110)の推定充填量を判定することと、前記二次リザーバ(110)が前記現時点で再充填されるべきか否かを、前記推定充填量に応じて判定することとを含み、
前記方法は、前記推定充填量が充填量閾値未満である場合に前記二次リザーバ(110)が再充填されるべきであると判定することを含み、
前記方法は、前記推定充填量が前記充填量閾値未満であるが、必要に応じたボーラスの次に続く投与までの予期される継続時間が、ボーラスのタイムアウト閾値を超える場合に、前記二次リザーバ(110)が再充填されるべきではないと判定することを含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、前記推定充填量が前記充填量閾値未満であり、必要に応じたボーラスの次に続く投与までの予期される継続時間がボーラスのタイムアウト閾値を超えないが、次に続く必要に応じたボーラスの予期されるボーラス量がボーラス量閾値を超えない場合に、前記二次リザーバ(110)が再充填されるべきではないと判定することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記充填量の評価ルーチンは、前記現時点での前記二次リザーバの充填量から、前記推定時間間隔で注入されることが予期される薬剤の量についての推定量である注入推定量を減算することによって、前記推定充填量を判定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、一連の標準の注入推定量を計算することと、前記一連の標準の注入推定量をメモリに保存することとを含み、標準の注入推定量のそれぞれは、1日のうち関連する予め決められた時間に開始する推定時間間隔で注入されることが予期される薬剤の量についての推定量であり、
前記充填量の評価ルーチンが、前記現時点に対応する1日の時間に関連する前記標準の注入推定量を前記メモリから取り出すことを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記推定充填量を判定することは、少なくとも部分的に、予め決められた基礎注入スケジュールに基づいている、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記推定充填量を判定することは、前記現時点と前記推定時点との間の時間間隔における前記予め決められた基礎注入スケジュールの一時的な修正を考慮に入れることを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記推定充填量を判定することは、少なくとも部分的に、前記現時点と前記推定時点との間の時間間隔における必要に応じたボーラス注入の予期される量に基づいている、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記推定充填量を判定することは、少なくとも部分的に、実際の過去の注入の履歴に基づいている、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記推定充填量を判定するために、測定された及び/又は予測された血糖値を考慮に入れることを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、前記推定時間間隔より短い継続時間の複数の時間間隔で、前記充填量の評価ルーチンを実行することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている、再充填スケジューリングユニット(251)。
【請求項12】
携帯型注入装置(200)の動作を制御するように構成されている、携帯型注入装置制御ユニット(250)であって、前記携帯型注入装置制御ユニット(250)は、
バルブユニットを充填状態と代替的な投薬状態との間で切り替えるようにバルブアクチュエータ(227)の動作を制御するように構成されている、バルブ制御ユニットと、
充填モードで動作して、前記充填モードにおいて二次リザーバ(110)の流体容積を増大させ、代替的に投薬モードで動作して、計量によって長時間にわたる複数の増大するステップで、前記投薬モードにおいて前記二次リザーバ(110)の前記流体容積を減少させるように二次リザーバアクチュエータ(217)の動作を制御するように構成されている、二次リザーバアクチュエータ制御ユニットと、
請求項11に記載の再充填スケジューリングユニット(251)とを含み、
前記再充填スケジューリングユニット(251)は、前記投薬モードの前記二次リザーバアクチュエータ制御ユニットと並行して動作するように構成され、
前記携帯型注入装置制御ユニット(250)はさらに、前記二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングする方法が、前記二次リザーバ(110)が再充填されるべきであると判定した場合に、前記二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成され、前記二次リザーバの再充填手順は、一連の(i)前記バルブユニットを前記投薬状態から前記充填状態に切り替えるように前記バルブアクチュエータ(227)を制御することと、(ii)所定の充填量まで前記流体容積を増大させるように前記二次リザーバアクチュエータ(217)を制御することと、(iii)前記バルブユニットを前記充填状態から前記投薬状態に切り替えるように前記バルブアクチュエータ(227)を制御することとを含む、携帯型注入装置制御ユニット(250)。
【請求項13】
前記携帯型注入装置制御ユニット(250)は、ピストン固着防止方法を実行するように構成され、前記ピストン固着防止方法は、前記投薬状態において、前記二次リザーバの最も最近の再充填から経過した時間を予め決められたバック投薬の時間間隔と比較することと、前記バック投薬の時間間隔が経過したと判定された場合に、前記バルブユニットを前記投薬状態から前記充填状態に切り換えるように前記バルブアクチュエータを制御し、その後、前記二次リザーバの前記流体容積を予め決められたバック投薬量だけ減少させるように前記二次リザーバアクチュエータを制御し、その後、前記バルブユニットを前記充填状態から前記投薬状態に切り替えて戻すように前記バルブアクチュエータを制御することとを含む、請求項12に記載の携帯型注入装置制御ユニット(250)。
【請求項14】
二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように、並びに/又は請求項11に記載の再充填スケジューリングユニット(251)及び/又は請求項12又は13に記載の携帯型注入装置制御ユニット(250)として作動するようにプロセッサを指示するように構成されたコンピュータプログラムコードを中に保存している非一時的なコンピュータ可読媒体を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項15】
液剤を保存する一次リザーバ(300)からの、携帯型注入システムの二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングする方法であって、前記方法は、充填量の評価ルーチンを繰り返し、自動的に実行することを含み、前記充填量の評価ルーチンは、現時点において、前記現時点の後の推定時間間隔である将来の推定時点における前記二次リザーバ(110)の推定充填量を判定することと、前記二次リザーバ(110)が前記現時点で再充填されるべきか否かを、前記推定充填量に応じて判定することとを含み、
前記方法は、前記推定充填量が充填量閾値未満である場合に前記二次リザーバ(110)が再充填されるべきであると判定することを含み、
前記方法は、前記推定充填量が前記充填量閾値未満であり、必要に応じたボーラスの次に続く投与までの予期される継続時間がボーラスのタイムアウト閾値を超えないが、次に続く必要に応じたボーラスの予期されるボーラス量がボーラス量閾値を超えない場合に、前記二次リザーバ(110)が再充填されるべきではないと判定することを含む、方法。
【請求項16】
液剤を保存する一次リザーバ(300)からの、携帯型注入システムの二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングする方法であって、前記方法は、充填量の評価ルーチンを繰り返し、自動的に実行することを含み、前記充填量の評価ルーチンは、現時点において、前記現時点の後の推定時間間隔である将来の推定時点における前記二次リザーバ(110)の推定充填量を判定することと、前記二次リザーバ(110)が前記現時点で再充填されるべきか否かを、前記推定充填量に応じて判定することとを含み、
前記推定充填量を判定することは、少なくとも部分的に、予め決められた基礎注入スケジュールに基づいており、
前記推定充填量を判定することは、前記現時点と前記推定時点との間の時間間隔における前記予め決められた基礎注入スケジュールの一時的な修正を考慮に入れることを含む、方法。
【請求項17】
液剤を保存する一次リザーバ(300)からの、携帯型注入システムの二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングする方法であって、前記方法は、充填量の評価ルーチンを繰り返し、自動的に実行することを含み、前記充填量の評価ルーチンは、現時点において、前記現時点の後の推定時間間隔である将来の推定時点における前記二次リザーバ(110)の推定充填量を判定することと、前記二次リザーバ(110)が前記現時点で再充填されるべきか否かを、前記推定充填量に応じて判定することとを含み、
前記推定充填量を判定することは、少なくとも部分的に、前記現時点と前記推定時点との間の時間間隔における必要に応じたボーラス注入の予期される量に基づいている、方法。
【請求項18】
液剤を保存する一次リザーバ(300)からの、携帯型注入システムの二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングする方法であって、前記方法は、充填量の評価ルーチンを繰り返し、自動的に実行することを含み、前記充填量の評価ルーチンは、現時点において、前記現時点の後の推定時間間隔である将来の推定時点における前記二次リザーバ(110)の推定充填量を判定することと、前記二次リザーバ(110)が前記現時点で再充填されるべきか否かを、前記推定充填量に応じて判定することとを含み、
前記方法は、前記推定充填量を判定するために、測定された及び/又は予測された血糖値を考慮に入れることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液剤用の注入装置及び注入システムの分野に関する。本発明は、特に、長期間にわたる二次リザーバからの後続する注入のための、一次リザーバからの二次リザーバの充填スケジューリングに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型注入装置は、例えば、持続皮下インスリン注入療法(CSII)による糖尿病の治療に加えて、疼痛治療又は癌治療の技術分野で周知であり、多くのサプライヤから入手可能である。本明細書全体を通して、CSIIに特に適した設計が、一般に例示目的で想定される。
【0003】
CSIIに使用される携帯型注入装置は、一般に昼も夜も、「ユーザ」とも称される糖尿病患者(PwD)によって携行されるように設計されている。携帯型注入装置は、視界から隠れるように、例えば、ベルトクリップを用いて又はズボンのポケットに入れて携行されるように設計され、及び/又は代替的に、粘着パッドを介して身体に直接取り付けられるように設計され得る。携帯型注入装置は、液剤、特にインスリンを少なくとも2つの方法で注入するように設計されている。1つ目の方法では、携帯型注入装置は、典型的に予めプログラムされ且つ時間変化の基礎注入スケジュールに自律的にしたがって、すなわち、特定のユーザのインタラクション又は操作を必要とせずに、液剤を実質的に連続的に注入するように設計されている。2つ目の方法では、携帯型注入装置は、例えば、炭水化物の摂取を補うために、また望ましくない高い血糖値を補正するために、必要に応じてより大きな薬剤をボーラス注入するように設計されている。これら及び随意のさらなる機能を制御するために、携帯型注入装置は、典型的に1つ以上のマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラに基づく、電子制御ユニットを含む。本明細書全体を通して、「携帯型注入装置」又は「携帯型注入システム」という表現は、少なくとも上述の基本的機能を備える装置又はシステムを指す。
【0004】
典型的な十分に確立された設計によれば、携帯型注入装置又はシステムは、カートリッジピストンの、制御され増分的な変位によって液剤が液剤カートリッジから注入されるシリンジドライバ型の典型的なものである。カートリッジピストンを変位させるために、電動モータを備えたスピンドルドライブが提供されている。典型的なカートリッジ容積は、例えば1ml~3mlの範囲であり、数日間から1週間までの分又はそれ以上の液剤、特にインスリンを保存する。このような装置の多くの欠点が当該技術分野において知られている。特に、これらの装置では、ミリリットル範囲の全薬剤量を有する薬剤カートリッジから、典型的にナノリットル範囲の非常に少量の薬剤を送ることが含まれるため、精度が制限される。したがって、薬剤リザーバから下流に専用の投薬ユニットを使用する追加の概念及び構造が提案されてきた。投薬ユニットは、例えば、マイクロメンブレンポンプ又はマイクロピストンポンプを含み、薬剤リザーバに連結するように構成されている。投薬ユニットは、少量の正確な計量のために特別に設計されている。このような投薬ユニット用のいくつかの設計は、当該技術分野で知られているが、かなり複雑であり、そのほとんどは大規模製造に関しては高価でありリスクが伴う。
【0005】
欧州特許出願公開第1970677号明細書は、投薬シリンダを有する小型の計量ピストンポンプを備えたシステムを開示し、投薬シリンダは、より大きなリザーバに繰り返し流体結合されて充填され、その後、投薬シリンダを注入部位に流体結合し、段階的に長時間にわたって液剤を投薬シリンダから注入している。投薬シリンダをリザーバ及び注入部位に代替的に結合するために、バルブシステム又はバルブユニットが提案されている。注入は、容積制御又は容積増加がある定量注入である。
【0006】
明細書全体を通して、欧州特許出願公開第1970677号明細書の原理に従った構造が想定される。より大きなリザーバは、「一次リザーバ」とも称され、前に説明したように、数日間から1週間までの分又はそれ以上の液剤を保存する。投薬シリンダは「二次リザーバ」と称される。投薬シリンダからは、上述の典型的なシリンジドライバ設計の場合と実質的に同じ方法で液剤が注入される。投薬シリンダ又は二次リザーバにおけるバルブの切り替えとピストンの変位の両方、及びバルブの切り替えは、電子制御ユニットによって制御される。
【0007】
典型的なシリンジドライバとは対照的に、二次リザーバの充填容積は比較的小さく、一例として、標準濃度U100の液体インスリン製剤の7I.U.(国際単位)に相当する70μlであり得る。
【0008】
二次リザーバが空であるか、又は空に近づくたびに、注入を継続するために、一次リザーバからの充填が必要となる。二次リザーバの充填状態をモニタリングして、必要に応じて再充填することは、ユーザの関与を必要とせずに、自律的に携帯型注入装置によって制御されて実行されるバックグラウンドプロセスであることが好ましい。装置設計及びエネルギー消費に関連する多くの理由及び制約のために、二次リザーバの充填又は再充填は、好ましくは比較的ゆっくりと行われ、例えば1分またはそれ以上の範囲の時間を必要とし得る。
【0009】
国際公開第2012/140063号は、携帯型注入装置及びそのような装置を操作する方法を開示しており、該方法は、(a)与えられた外部パラメータに基づいて、二次リザーバについての最大充填レベルを判定するステップであって、最大充填レベルが二次リザーバの最大容量を超えないステップと、(b)一次リザーバからの液状製剤を最大充填レベルまで二次リザーバに充填するステップと、(c)液状製剤の大多数を計量して下流導管に搬送するステップと、(d)二次リザーバが空になった場合に、ステップ(b)のように二次リザーバを再充填し、ステップ(c)を継続するステップ、とを含む。
【発明の概要】
【0010】
前に説明したような一次リザーバ及び二次リザーバを備えた携帯型注入装置及び携帯型注入システムに関連して、各再充填が、かなりのエネルギー消費と、バルブの切り替え及びピストン運動の方向変化が原因の潜在的ないくつかの投薬エラーの誘発とに関連付けられるため、不必要な再充填ステップは一般に回避されるべきである。さらに、可能な限り、合間に二次リザーバを再充填する必要なしに、薬剤をボーラスで注入することが望ましい。即ち、ボーラス注入中の二次リザーバの再充填は回避されるべきである。
【0011】
本発明の全体的な目的は、再充填が特に適切な時点で行われるように、二次リザーバの再充填を管理又はスケジューリングすることである。特に適切な時点は、携帯型注入装置の治療上関連する動作、特に基礎及びボーラス注入が影響を受けないか、又はその効果が少なくとも小さいような時点である。不必要な再充填手順は回避されることが好ましい。
【0012】
全体的な目的は独立請求項の主題によって達成される。さらなる好ましい及び例示的な実施形態は、従属請求項の主題に加えて、本明細書の全体的な開示によって定義される。一般的な方法で、全体的な目的は、近い将来注入されることが予期される液剤の量を予想又は予測し、前記予測に基づいて再充填の時点を判定することによって達成される。
【0013】
一態様では、全体的な目的は、一次リザーバからの携帯型注入システムの二次リザーバの再充填をスケジューリングする方法によって達成される。一次リザーバは液剤を保存する。前記方法は、充填量の評価ルーチンを繰り返し、自動的に実行するステップを含む。充填量の評価ルーチンは、現時点で、将来の推定時点における二次リザーバの推定充填量を判定し、推定充填量に応じて、二次リザーバが現時点で再充填されるべきか否かを判定するステップを含む。将来の時点は現時点後の推定時間間隔である。即ち、推定時間間隔は将来の時点と現時点との間の時間差である。
【0014】
推定充填量は、予測充填量であり、二次リザーバが再充填されることなく現時点から推定時点まで薬剤が二次リザーバから注入された場合の推定時点で予期される二次リザーバの充填量である。
【0015】
前記方法によって、二次リザーバを、適切でない可能性のある将来の時点、特に、薬剤投与が行われるべきであり、二次リザーバの残りの充填量が十分でない可能性がある時点で再充填する必要性を回避するために、二次リザーバをすぐに又は現時点で再充填するべきか否かが判定される。
【0016】
再充填をスケジューリングする方法は、典型的に、コンピュータで実施される方法として実施され、対応するソフトウェア又はファームウェアコードを実行する1つ以上のマイクロコンピュータ及び/又はマイクロコントローラによって実行される。
【0017】
推定充填量は、推定時点における二次リザーバの充填量についての推定量である。いくつかの実施形態では、充填量の評価ルーチンは、現時点における二次リザーバの充填量から注入推定量を減算することによって推定充填レベル又は推定充填量を判定するステップを含み、注入推定量は、推定時間間隔で注入されることが予期される薬剤量についての推定量である。注入推定量は、以下にさらに説明するように、基礎注入とボーラス注入の組み合わせのために専用の基礎注入推定量及び専用のボーラス注入推定量を含み得る。代替的に、注入推定量は、全注入、即ち、ボーラスと基礎注入の両方を反映する注入推定量の組み合わせであってもよい。
【0018】
推定時間間隔は、より詳細に以下にさらに説明するように、二次リザーバからの薬剤投与を十分な確実性で予測又は推定することができる時間間隔である。しかしながら、必要に応じて、いつでも二次リザーバが一次リザーバから再充填され得るため、正確な予測が必ずしも必要とされないことに留意されたい。CSIIに関連して、推定時間間隔は、例えば、2時間であり得る。1時間又は4時間などの、より短い又はより長い時間間隔が使用されてもよい。典型的には、推定時間間隔は、予め決められており、一定である。しかし、さらなる実施形態では、推定時間間隔は、予め決められておらず、適応可能である。一般的な規則として、推定時間間隔は、予測可能性が高い場合に、即ち、1日の時間に応じた基礎及び/又はボーラス注入のプロファイルが、例えば、数日間又は数週間という長期間にわたって一定であるか又は類似している場合に、長くなり得る。これとは対照的に、予測可能性が低い場合には、より短い推定時間間隔が好ましくなり得る。一実施形態では、前記方法は、統計的分析によって過去の基礎及び/又はボーラス注入のプロファイルの変動性を繰り返し判定し、判定された変動性に応じて推定時間間隔を修正するステップを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記方法は、推定時間間隔より短い継続時間の複数の時間間隔で充填量の評価ルーチンを実行するステップを含む。充填量の評価ルーチンは、例えば10分の一定の時間間隔で実行され得る。5分、30分、又は60分などのより短い又はより長い時間間隔が使用されてもよい。典型的な実施形態では、ステップは、1日の予め決められた特定の時間に実施される。代替的な実施形態では、充填量の評価ルーチンが実行される1日の時間は、少なくとも部分的に、予め決められていないが、さまざまな1日の時間に応じて異なる。一般的な規則として、充填量の評価ルーチンは、基礎及び/又はボーラス注入の予測可能性が高い1日の時間により少ない頻度で実行され、予測可能性が低い1日の時間により頻繁に実行され得る。一例として、充填量の評価ルーチンは、日中はより頻繁に実行され、夜間は少ない頻度で実行され得る。さらに、充填量の評価ルーチンは、随意に、基礎注入と同時に行われ得る。以下にさらに説明するような漸増用量における実質的に連続的な基礎注入を伴う携帯型注入装置では、充填量の評価ルーチンは、例えば、漸増基礎注入に実質的に続いて実行されてもよく、それによって、二次リザーバの再充填についての最大の利用可能な時間間隔を確実なものにし、その結果、次に続く漸増注入による干渉を回避する。
【0020】
代替的に、又は好ましくは、スケジュールに従って充填量の評価ルーチンを実行するステップに加えて、前記方法は、トリガーイベントの発生で充填量の評価ルーチンを実行するステップを含んでもよい。このようなトリガーイベントは、例えば、予め決められた基礎注入スケジュールの一時的なユーザ命令の修正又はそのような修正の取り消し、及び/又は、より詳細に以下にさらに説明されるような、低血糖の状況などの、注入に影響を及ぼす治療関連イベントの発生であり得る。さらに、必要に応じたボーラス注入のプログラムは、トリガーイベントとして機能し得る。
【0021】
充填量の評価ルーチンは、基礎及び/又はボーラス注入が行われる、携帯型注入システムの通常の動作中に前に述べたような時間間隔で実行されるバックグラウンドルーチンである。充填量の評価ルーチンが実行される時点は、現在の時点である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記方法は、充填量の評価ルーチンの一部として、推定充填量が充填量閾値未満である場合に二次リザーバが再充填されるべきであると判定するステップを含む。典型的には、充填量閾値は予め決められている。このタイプのいくつかの実施形態では、充填量閾値は0である。即ち、推定充填量が負である場合に二次リザーバが現時点で再充填されるべきであることが判定される。これに関連して、負の物理的充填量が技術的な理由で不可能であることが理解されるべきである。代替的に、充填量閾値は、0ではないが、正であり、例えば、いくらかの安全マージンを考慮する。このような実施形態では、充填量閾値は、CSIIの場合には、例えば、10μl~50μlの範囲、又は標準濃度U100の液体インスリン製剤の1IU-5IU(国際単位)の範囲であり得る。正の充填量閾値は、特に、以下でさらに説明されるような少なくともバック投薬(back‐dosing)量に対応し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記方法は、充填量の評価ルーチンの一部として、推定充填量が充填量閾値未満であるが、必要に応じたボーラスの次に続く投与までの予期される継続時間がボーラスのタイムアウト閾値を超える場合に、二次リザーバが再充填されるべきではないと判定するステップを含む。このタイプの実施形態に関して、二次リザーバは、前に説明されたような推定に基づいて原則的に再充填されるべきであっても、現時点では再充填されなくてもよい。特に、次の必要に応じたボーラスについての現時点から予測又は予期される時点までの時間間隔が、ボーラスのタイムアウト閾値を超える場合には、二次リザーバはこのタイプの実施形態に関して再充填されない。ボーラスのタイムアウト閾値は、典型的に予め決められており、例えば、特定の例に従って20分であり得る。このタイプの実施形態は、実際に薬剤注入の典型的な変動が要因で不必要であり得る再充填を回避する。特に、ボーラスのタイムアウト閾値は、二次リザーバの推定充填量が、推定充填量から実質的に逸脱して特に推定充填量を上回る可能性が大きい時間間隔に対応している。このような逸脱の典型的な理由は、スポーツ活動(sportive activity)又は低血糖が原因で基礎注入が一時的に減少又は中断されるかもしれないからである。さらに、次のボーラスまでに長い時間がかかると予期される場合、ボーラスが実際に予期された通りに注入されない可能性がある。
【0024】
上述のタイプのいくつかの実施形態では、前記方法は、充填量の評価ルーチンの一部として、推定充填量が充填量閾値未満であり、必要に応じたボーラスの次に続く投与の予期される継続時間がボーラスのタイムアウト閾値を超えないが、次に続く必要に応じたボーラスの予期されるボーラス量がボーラス量閾値を超えない場合に、二次リザーバが再充填されるべきではないと判定するステップを含む。推定充填量が充填量閾値未満であり、必要に応じたボーラスの次に続く投与までの予期される継続時間がボーラスのタイムアウト閾値を超えない状況では、二次リザーバは一般に前に説明したように再充填されるべきである。しかし、ここで説明されるタイプの実施形態に関して、次に続く必要に応じたボーラスの予期されるボーラス量がボーラス量閾値を超えない場合には、これらの条件下で二次リザーバは再充填されない。典型的な実施形態では、ボーラス量閾値は、随意に安全マージンを含む、現時点での二次リザーバの充填レベルに対応している。安全マージンは、バック投薬量に少なくとも対応し得る。このタイプの実施形態に関して、事前の再充填がない充填量が、次に続く必要に応じたボーラスの投与に十分であることが予期され得る場合には、現時点で二次リザーバは再充填されない。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記方法は、一連の標準の注入推定量を計算するステップと、一連の標準の注入推定量をメモリに保存するステップとを含み、標準の注入推定量のそれぞれは、1日のうち関連する予め決められた時間に開始する推定時間間隔で注入されることが予期される薬剤の量についての推定量である。このような実施形態に関して、充填量の評価ルーチンは、現時点に対応する1日の時間に関連する標準の注入推定量をメモリから取り出すステップを含む。引き出された標準の注入推定量は、予測についての注入推定量として使用される。例として、標準の注入推定量は、10分の時間間隔、例えば、0:00(深夜)、0:10、0:20、0:30、0:40、0:50、1:00(午前1時)などの時間間隔で計算され得る。充填量の評価ルーチンが実行される1日の時間は、以下で1日の評価時間とも称される。
【0026】
標準の注入推定量は、好ましくは予め計算され、繰り返し実行される充填量の評価ルーチンの一部として実行される必要はなく、注入推定ルーチンを形成する一連の標準の注入推定量を判定して保存する。しかし、注入推定ルーチンが時折又は定期的に実行され得ることで、一連の標準の注入推定量が更新又は再計算される。典型的に、標準の注入推定量は、基礎注入とボーラス注入の両方を考慮する。一連の標準の注入推定量からの標準の注入推定量の各々は、より詳細に以下にさらに説明するように、標準の基礎注入推定量及び/又は標準のボーラス注入推定量を含み得る。
【0027】
しかし、代替的に、注入量評価ルーチンが実行される度に、注入推定量が注入量評価ルーチンの一部として明示的に計算されてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、二次リザーバの推定充填量を判定するステップは、少なくとも部分的に、予め決められた基礎注入スケジュールに基づいている。CSIIなどの、実質的に連続的な薬剤注入を含む治療において、基礎薬剤注入は、通常、基礎注入スケジュールに従って行われる。基礎注入スケジュールは、一般に予め決められ、時間的に変化するものである。即ち、基礎注入の速度は時間に応じて変化する。必ずしもではないが典型的に、基礎注入スケジュールは、CSIIにおいて、24時間の期間を有する周期のスケジュールである。別途明記されていない例示目的のために以下で想定されるそのような場合において、基礎注入の速度は、1日の時間に応じて適切に定義される。典型的には、基礎注入スケジュールは、時間間隔、例えば、1日の1時間毎又は30分毎の時間間隔についての基礎注入速度を含むルックアップテーブルによって、携帯型注入システム、特に携帯型注入装置制御ユニットのメモリに保存される。さらに、実用的な実施において、基礎注入は、多くの場合、例えば、継続する用量間で3分又は6分の一定の時間間隔を置いて、厳密な意味で連続的ではなく、漸増用量で行われることにさらに留意されたい。代替的に、漸増用量は、例えば、0.05IU、0.1IU又は0.2IUに固定され、連続する用量間の時間間隔は、基礎注入スケジュールに従って変更される。さらなる変形では、上記の両方のアプローチの混合又は組み合わせが使用される。さらに、基礎注入スケジュールは、ルックアップテーブルの形式で保存されなくてもよいが、数学関数又はそのような関数のパラメータの形式で保存され得る。基礎注入スケジュールは、以下にさらに説明されるように、典型的にはユーザによって一時的に中止又は修正され得るが、一般に、ユーザインタラクションを必要とすることなく携帯型注入装置制御ユニットの制御下で自律的に携帯型注入システムによって、基礎投与が実行される。
【0029】
少なくとも部分的に予め決められた基礎注入スケジュールに基づいて推定充填量を判定するステップは、推定時間間隔についての基礎注入の総量(容量)を判定すること及びこの値を現時点での二次リザーバの充填量から減算することを含む。予め決められた基礎注入スケジュールに従って判定される基礎注入の総量は、基礎注入として機能する。
【0030】
基礎注入スケジュールは一般に予め決められているため、基礎注入推定量は、前に述べたように、注入推定ルーチンにおいて予め計算され得る。特に、与えられた1日の開始時間及び与えられた1日の終了時間に関して、1日の開始時間と1日の終了時間との間の時間間隔についての基礎注入スケジュールに従って基礎注入の量を合計又は統合することによって、標準の基礎注入推定量が計算され得る。ここで、充填量の評価ルーチンの一部として推定充填量を計算することは、単に、現時点に従う標準の基礎注入推定量をメモリから引き出し、この値を現時点での二次リザーバの充填量から減算することを含む。標準の基礎注入推定量を計算することは、例えば、基礎注入スケジュールが再プログラムされるたびに又は二次リザーバが交換されるたびに実行され得る。これは特に、以下にさらに説明されるようにボーラス注入推定量の計算と共に実行され得る。
【0031】
基礎注入スケジュールが予め決められていることは、前に説明したように、基礎注入スケジュールが一般に保存され、そのため事前に知られていることを意味している。典型的に、基礎注入スケジュールは、必要に応じて医療専門家又はいくつかの場合では患者自身によって患者又はユーザの個々のニーズに従ってプログラムされ、必要に応じて再プログラムされてもよい。基礎注入スケジュールが一般に予め決められているため、二次リザーバの充填量の予測は正しいが、但し、これは基礎注入が基礎注入スケジュールに従って実際に行われることを前提としている。より詳細に以下にさらに説明するように、これは必ずしもそうである必要はない。
【0032】
いくつかの実施形態では、推定充填量を判定するステップは、現時点と推定時点との間の時間間隔における予め決められた基礎注入スケジュールの一時的な修正を考慮に入れることを含む。基礎注入スケジュールの一時的な修正は、典型的に、自発的に及び任意の時点で行われ得る。先行技術の携帯型注入システムは、ユーザが、スポーツ活動又は病気などの特別な又は例外的な状況に対処するために、最大で例えば12時間又は24時間までの典型的に多くの時間の時間間隔についての基礎注入を一時的に修正する、及び/又は基礎注入を一時的に中止することを可能にする。このような修正から結果として生じる一時的に適用される基礎注入スケジュールは、修正された基礎注入スケジュールと称される。携帯型注入システムに応じて、修正された基礎注入スケジュールは、予め決められたスケジュールに従って、(基礎注入の増加のために)1よりも大きい又は(基礎注入の減少のために)1よりも小さい倍率での予め決められたスケジュールに従う基礎注入の比例スケーリングによって判定され得る。さらなる変形において、修正された基礎注入スケジュールは、一定の基礎速度注入スケジュールとして判定され、予め決められた基礎注入スケジュールは、一定の基礎速度注入スケジュールに一時的に置き換えられる。予め決められた基礎注入スケジュールの一時的な修正を考慮に入れることは、予め決められた基礎注入スケジュールを修正する又は修正が有効である推定時間間隔又は推定時間間隔の一部についての修正された基礎注入スケジュールに置き換えることによって達成される。前述したように、一時的な修正のプログラミング又は終了は、典型的に一般のスケジュールとは非同期に、充填量の評価ルーチンを直ちに実行させるトリガーイベントとして機能し得る。以下に説明されるように測定された及び/又は予測された血糖値に基づく一時的な修正についても同じことが言える。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記方法は、推定充填量を予測するために測定された及び/又は予測された血糖値を考慮に入れるステップを含む。携帯型注入システムは、実質的に連続的な方法で体液又は身体組織内のグルコース濃度を測定するように設計された連続的なグルコース測定ユニットを含み得るか又は連続的なグルコース測定ユニットと動作可能に連結するように設計され得る。携帯型注入システムはさらに、測定された血糖値に従って基礎注入スケジュールを一時的に修正するように設計されてもよい。携帯型注入システムは特に、低血糖値の場合には予め決められた閾値に従って基礎注入を一時的に停止させるか又は基礎注入を減少させるように設計されてもよい。このような基礎注入スケジュールの修正は、ユーザ命令の修正に関連して前に説明されたような基礎注入スケジュールの修正に結果としてつながり、アナログ的な方法で考慮することができる。
【0034】
基礎注入スケジュールの一時的な修正は、例えば、計画されたスポーツ活動に従って選択された、典型的にユーザがプログラムした及び予め決められた継続時間を有し得ることが理解されるべきである。基礎注入推定量が上述のように一般的に予め計算されている実施形態では、一時的な修正を考慮に入れる対応して修正された基礎注入推定量が、プログラムされた通りに修正による影響を受ける来たる推定時点をカバーするすべての期間についての修正の開始時に計算され得る。その後、充填量の評価は、影響を受けた期間についての修正された基礎注入推定量を使用し得る。
【0035】
しかし、代替的には、一時的な修正の継続時間は事前に知られていなくてもよい。これは、前に説明したように一時的な修正が連続的なグルコース測定ユニットによって制御される場合には特にそうである。ここでは、予め決められた基礎注入スケジュールの一時的な修正を考慮に入れることが、充填量の評価ルーチンにおいて、現時点で修正が有効であるか否かを判定し、肯定的な場合において、それに対応して修正された基礎注入推定量を使用することによって達成され得る。したがって、このタイプの実施形態に関して、修正された基礎注入推定量は、修正時間間隔の開始時ではなく、むしろ現時点で計算される。なお、この種の実施形態が、修正の継続時間が知られている場合でも使用されてもよいことに留意されたい。さらに、典型的には、有効である修正がユーザによってキャンセルされてもよいことにも留意されたい。この場合、動作は、好ましくは、予め決められた基礎注入スケジュールに基づいて進行する。
【0036】
いくつかの実施形態では、推定充填量を判定するステップは、少なくとも部分的に、現時点と推定時点との間の時間間隔における必要に応じたボーラス注入の予期される量又は容量に基づいている。CSIIに関連して、食物、特に炭水化物の摂取を補うために、及びさらに望ましくない高血糖値を是正するために、必要に応じたボーラスが注入される。基礎注入とは対照的に、必要に応じたボーラスは、一般に、任意の時点で専用のユーザ命令を介して開始又は引き起こされ、様々な量を有し得る。必要に応じたボーラスは、典型的に、秒又は秒の小数点以下から数分までの典型的な範囲で比較的短い時間間隔内で注入される。一種の食料品の摂取などの特別な状況に対処するために、必要に応じたボーラスは、例えば1時間又は数時間までのより長い時間にわたって注入されてもよく、及び/又は実質的に即時に注入される部分とより長い時間にわたって注入されるさらなる部分との組み合わせであってもよい。例えばCSIIにおいて使用される典型的な先行技術の注入装置は、典型的に、特定の状況で必要に応じてユーザが選択し得る多数の予め定義されたボーラスプロファイル(例えば、マルチウェーブボーラス(Multi Wave Bolus)、長時間型ボーラス(Extended Bolus)など)を提供している。
【0037】
量及び注入時間の典型的な変動が原因で、必要に応じたボーラスの予測は、基礎注入の予測と比較してそれほど簡単なものではない。しかしながら、実用的な適用のシナリオでは、例えばCSIIにおいて、ある予測可能性が典型的に与えられる。食事は、しばしば、異なる日の類似した時点で摂取される傾向があり、さらにしばしば、サイズ及び/又は組成が類似する傾向があるため、必要に応じたボーラスも類似する傾向がある。
【0038】
少なくとも部分的に、必要に応じたボーラス注入の予期される量又は容量に基づいて、推定充填量を判定するステップは、開始時間から終了時間までの予期される総ボーラス量を判定すること、及びこの量を現時点での二次リザーバの充填量から減算することを含み得る。基礎注入に関連して前に説明したように、終了時間と開始時間との間の時間差は、推定時間間隔に対応しており、終了時間は、開始時間に推定時間間隔を加えることによって定義される。必要に応じたボーラス注入の予期される量は、開始時間と終了時間との間のボーラス注入についてのボーラス注入推定量として機能する。
【0039】
基礎注入推定量と同様に、ボーラス注入推定量は、現時点でオンラインで判定され得るか、又は予め判定され得る。後者の場合、現時点で及び充填量の評価ルーチンの一部として実行されるステップは、ボーラス注入推定量に対応する値を引き出し、それを現時点での二次リザーバの充填量から減算するようにされる。
【0040】
いくつかの実施形態では、推定充填量を予測することは、少なくとも部分的に、実際の過去の注入の履歴に基づいている。実際の過去の注入の履歴は、典型的に、携帯型注入システム、特に携帯型注入装置制御ユニットの履歴メモリによって保存される。さらに、実際の過去の注入の履歴は、リモートコントローラ又は糖尿病管理装置などの、構造的に別個の遠隔装置に保存されてもよい。遠隔装置及び携帯型注入装置制御ユニットは、典型的に、対応する通信インターフェースを介してデータを通信及び交換するように構成されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、実際の過去の注入の履歴は、サーバ又はクラウドなどの、1つ以上の遠隔位置の1つ以上の外部装置によって保存され、インターネット通信を介して必要に応じて、携帯型注入装置及び/又はリモートコントローラ又は糖尿病管理装置に直接送信される。さらに、注入推定量、特に標準の注入推定量が、そのような外部装置によって予め計算され保存され得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、履歴は、タイムスタンプ(タイムスタンプは1日の時間に関する情報及び好ましくは日付も提供する)と一緒に、基礎注入スケジュールに応じた必要に応じたボーラスの注入又は漸増基礎注入である、液剤注入の各々の時間及び量を保存する。しかし、基礎投与は、一般に予め決められた基礎注入スケジュールに従って及び予め決められた時点(0:00から始まって3分毎など)で行われるため、過去の基礎注入の履歴は、基礎注入スケジュールから判定することができるが、但し、これは基礎注入に一時的に影響を及ぼすイベントが生じていないことを前提としている。
【0043】
必要に応じたボーラスの履歴は、タイムスタンプ及びボーラス量(ti、Bi)のリストを介して保存され、iはインデックス値であり、tiは過去のボーラス注入のタイムスタンプであり、及びBiは対応するボーラス量である。携帯型注入装置が、前述したように、異なるタイプの必要に応じたボーラスを提供する場合、ボーラスタイプの識別子、直ちに及びより長い時間にわたって注入される量の他に、注入が行われる期間などの、さらなる関連データが保存される。
【0044】
実際の過去の注入の履歴は、前に説明したようなボーラス注入推定量を判定するのに特に好ましい。開始時間で開始して開始時間に推定時間を加えた終了時間として終了する間隔についての実際の過去のボーラス注入の統計的評価によって、1日の時間としての与えられた開始時間についてのボーラス注入推定量が得られ得る。統計的評価は、1日又は好ましくは数日を含み得る。ボーラス注入推定量の判定は、最も最近の日、好ましくは、7日、14日、又は30日前などの多くの日数前を考慮し得る。この判定は、毎回過去のボーラス注入の量から直接計算されてもよいし、又は前に計算された推定量をそれぞれ修正することによって計算されてもよい。いくつかの実施形態では、計算に使用される過去のすべての日が均等に重み付けされる。しかし、代替的な実施形態では、異なる日が別々に重み付けされる。特に、最近の日は、より長い過去の日と比較したより高い重み付けで考慮され得る。
【0045】
ボーラス注入推定量として、80%パーセンタイル又は90%パーセンタイル又は100%パーセンタイルなどの、考慮された過去の日についてのボーラス注入量の予め決められたパーセンタイルが使用されてもよく、100%パーセンタイルは、考慮された過去の日及び開始時間から終了時間までの時間間隔についての最大ボーラス注入量である。例えば平均及び分散に基づく当該技術分野で知られている他の統計的測定が使用されてもよいことに留意されたい。
【0046】
いくつかの実施形態では、過去の数日についての実際の過去の注入の履歴に基づいてボーラス注入推定量を判定することは、連続的な一連の過去の数日を考慮している。しかし、代替的に、選択された日のみが考慮され得る。例えば、ボーラス注入推定量は、すべての日又は週に対して別々に、又は稼働日及び週末に対して別々に計算されてもよい。このような実施形態は、典型的なボーラス注入パターンが異なる日に対して実質的に異なる場合に有利であり得る。さらなる実施形態では、病気、旅行、又は一般的な例外的状況の日などの特定の日を計算から除外するために、ユーザ入力が提供されてもよい。このタイプの実施形態は、計算にわずかの日数しか使用されない場合に特に好ましく、結果として各日の注入履歴は計算に重大な影響を与える。
【0047】
ボーラス注入推定量は、充填量の評価ルーチンが実行されるたびに、即ち現時点でオンラインで計算されない場合に、例えば、1日に1回、1週間に1回、又は二次リザーバを交換するのと同時に計算され得る。
【0048】
異なる日に別々にボーラス注入推定量を計算することと同様に、異なる日に別々に基礎注入推定量が計算されてもよいことに留意されたい。典型的な先行技術の携帯型注入システムは、ユーザがスイッチを切り替えるか又はシステムが自動的にスイッチを切り替えるかという異なる基礎注入スケジュールの定義によって、例えば、日中シフトと夜間シフトとの間の差、及び/又は稼働日と週末との間の差に対処することができる。基礎注入推定量は、異なる基礎注入スケジュールで別々に判定され得る。
【0049】
前に説明したように実際の過去の注入の履歴に基づいてボーラス注入推定量を判定することに代えて、ボーラス注入推定量は、例えば糖尿病の栄養摂取スケジュールに基づいて予め計算されてもよく、例えば、測定が行われる1日の単一時間についてのルックアップテーブルを介して、携帯型注入システムのメモリに保存されてもよく、1日の単一時間は開始時間として機能する。
【0050】
さらなる変形では、携帯型注入装置がユーザへの供給後にセットアップ又は初期化されたときに、又は栄養摂取シュールが根本的に変更された場合に、上述のアプローチの両方は組み合わされ、ボーラス注入推定量は、例えば栄養摂取スケジュールに基づいて予め定義される。続いて、ボーラス注入推定量は、実際の過去の注入の履歴に基づいて補正又は修正される。
【0051】
予め決められた1日の評価時間についての一連の標準の基礎注入推定量を計算することを含む実施形態では、一連の標準の基礎注入推定量は、例えば0:00、0:10、0:20などの、1日の各評価時間についての基礎注入推定量を含み得る。
【0052】
前に説明したように予め決められた1日の評価時間についての一連の標準のボーラス注入推定量を計算することを含む実施形態では、ボーラス注入推定量は、基礎注入のように、例えば0:00、0:10、0.20などの1日の評価時間の各々に対して計算され得る。
【0053】
したがって、一連の予め計算された注入推定量は、3組の表又はリストによって表されてもよく、3組は各々、1日の評価時間Tj、対応する予め計算された基礎注入推定量b* j、及び対応する予め計算されたボーラス注入推定量B* jを含み、jは指数である。
【0054】
しかしながら、必要に応じたボーラス注入が、典型的に、(食事時間と相関した)1日の類似した時間に実行されるがいくらかの変動性を有して実行されるため、前記方法は、実際の過去のボーラス注入の履歴から、典型的な1日のボーラス投与時間及び関連付けられた典型的なボーラス量を判定するステップを含み得る。典型的な1日のボーラス投与時間tj及び典型的なボーラス量B* jは、当該技術分野で公知の統計的又はパターン認識アルゴリズムを使用して実際の過去のボーラス注入の履歴から判定され得る。一連の典型的な1日のボーラス投与時間及び関連付けられた典型的なボーラス量は、例えば典型的な日についての(食事/スナックの数に対応する)3~5個のエントリを有し得る組(tj、B* j)のリストに保存され得る。現時点での充填量の評価ルーチンを実行するときに、対応する典型的な1日のボーラス投与時間によって示されるように、現時点と将来の推定時点との間の時間間隔にあるこれらの典型的なボーラス量B* jのみが考慮され得る。
【0055】
少なくとも部分的に、必要に応じたボーラス注入の予期される量又は容量に基づいて、推定充填量を判定するステップを含むいくつかの実施形態では、前記方法は、選択された過去のボーラスを無視するステップを含み得る。このようにして、上昇した血糖値を低下させる目的で投与される必要に応じたボーラスは、散発的にのみ必要とされ、定義されたスケジュールに典型的に従わないため、推定の目的で除外されてもよい。この目的のために、対応するマーカーが、前に説明したようにボーラス量及びタイムスタンプと共に履歴に保存され得る。同様に、ボーラスが、随意に他の理由のために例外として示されてもよく、計算のために無視又は除外されてもよい。
【0056】
典型的な実施形態では、予期される基礎注入と予期されるボーラス注入の両方が、現時点での充填量から対応する量を減算することによって考慮される。ここでは、現時点で、将来の推定時点での二次リザーバの推定充填量を判定するステップは、現時点での現在の充填量から基礎注入推定量及びボーラス注入推定量を減算することを含む。
【0057】
さらなる態様では、全体的な目的は、再充填スケジューリングユニットによって達成される。再充填スケジューリングユニットは、前に記載された及び/又はさらに後に記載されるようにいずれかの実施形態に従って、二次リザーバの再充填をスケジューリングする方法を実行するように構成されている。再充填スケジューリングユニットは、マイクロコンピュータ及び/又はマイクロコントローラによって実装され得るか又はそれらに基づき得る。コンピュータで実施される実施形態は、例示目的で以下にさらに想定されるが、必須ではない。本開示に従った方法を実行するように構成された再充填スケジューリングユニットも、全体的又は部分的に、他のタイプの回路によって及び例えばASICに基づいて実装され得る。
【0058】
さらなる態様では、全体的な目的は、携帯型注入装置制御ユニットによって達成される。携帯型注入装置制御ユニットは、携帯型注入装置の動作を制御するように構成されている。携帯型注入装置制御ユニットは、バルブ制御ユニットを含み、バルブ制御ユニットは、バルブユニットを充填状態と代替的な投薬状態との間で切り替えるようにバルブアクチュエータの作動を制御するように構成されている。携帯型注入装置制御ユニットはさらに、二次リザーバアクチュエータ制御ユニットを含み、二次リザーバアクチュエータ制御ユニットは、充填モードで動作して、充填モードで二次リザーバの流体容積を増大させ、代替的に投薬モードで動作して、計量によって長時間にわたる複数の増大するステップで、投薬モードにおいて二次リザーバの流体容積を減少させるように構成されるように二次リザーバアクチュエータの動作を制御するように構成されている。
【0059】
携帯型注入装置制御ユニットはさらに、前に説明された及び/又はさらに後に説明されるようないずれかの実施形態による再充填スケジューリングユニットを含む。再充填スケジューリングユニットは、投薬モードで二次リザーバアクチュエータ制御ユニットと並行して動作するように構成されている。
【0060】
携帯型注入装置制御ユニットはさらに、二次リザーバの再充填をスケジューリングする方法が、二次リザーバが再充填されるべきであると判定した場合に、二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成され、二次リザーバの再充填手順は、一連の(i)バルブユニットを投薬状態から充填状態に切り替えるようにバルブアクチュエータを制御するステップと、(ii)与えられた充填量まで流体容積を増大させるように二次リザーバアクチュエータを制御するステップと、(iii)バルブユニットを充填状態から投薬状態に切り替えるようにバルブアクチュエータを制御するステップとを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、一次リザーバは、必ずしもではないが典型的に、円筒状カートリッジ、典型的にはガラスカートリッジであり、一次リザーバを空にするときにカートリッジ本体内に変位される密封用の変位可能なカートリッジピストンを備えている。このような液剤カートリッジのカートリッジピストン、典型的にはゴムピストンは、より長い時間にわたって移動されない又は変位されない場合に固着する傾向があり、その後かなりの解放力を必要とすることが知られている。一次リザーバ及び二次リザーバを有するここで想定される構造に関連して、カートリッジピストンは、二次リザーバの再充填のためにのみ移動する。ユーザの個々のインスリンの必要性に応じて、連続する再充填動作間のこの時間は、比較的長くなり得、典型的には1日までの数時間又はそれ以上になり得る。さらに、二次リザーバを充填するときに、液剤が一次リザーバから吸引され、カートリッジピストンが、その液体が接触する前面に液剤によって加えられる吸引圧力の結果として、引っ張り力を介してのみ移動することも理解されるべきである。カートリッジピストンには追加の押圧力が加えられないか又はわずかしか加えられないことが好ましい。さらに、固着を解消するために必要とされる解放力が、吸引圧力によって加えられ得る最大の力と同じ範囲内にあり得るか又はそれよりも大きくなり得ることが理解されるべきである。結果として、固着は懸念される問題である。
【0062】
さらなる態様では、全体的な目的は、前に説明した固着するカートリッジピストンの問題を軽減する及び好ましくは回避することである。一態様では、この目的は、ピストン固着防止方法によって達成される。ピストン固着防止方法は、投薬状態において、二次リザーバの再充填から経過した時間を予め決められたバック投薬の時間間隔と比較するステップを含む。ピストン固着防止方法はさらに、バック投薬の時間間隔が経過したと判定された場合に、バルブユニットを投薬状態から充填状態に切り換えるようにバルブアクチュエータを制御し、その後、二次リザーバの流体容積をバック投薬量だけ減少させるように二次リザーバアクチュエータを制御し、その後、バルブユニットを充填状態から投薬状態に切り替えて戻すようにバルブアクチュエータを制御するステップを含む。さらなる態様によれば、カートリッジピストンの固着を防止する問題は、ピストン固着防止方法を実行するように構成された携帯型注入装置制御ユニットによって解決される。
【0063】
二次リザーバの流体容積を減少させることによって、バック投薬量に相当する液剤の量が、二次リザーバから一次リザーバに押し入れられる。このプロセスでは、それに応じて液剤によってカートリッジピストン上に押圧力が加えられ、これにより、固着摩擦及び解放力が解消される。バック投薬の間、患者の体内に液剤が注入されないことに留意されたい。バック投薬量は比較的少なく、例えば、1IU-5IUの範囲であり得る。バック投薬の時間間隔は、固着が生じることを予期することができる時間間隔よりも幾分短いことが好ましく、例えば、例示的な実施形態では12時間であり得る。
【0064】
ピストンの固着防止方法は、再充填をスケジューリングする方法と並行して及びそれとは独立して繰り返し又は連続的に実行され得る。しかしながら、代替的な実施形態では、それは、再充填をスケジューリングする方法と協調的な方法で実行されてもよい。それは特に、二次リザーバが現時点で再充填されるべきではないと判定された場合に実行され得る。
【0065】
開示された固着摩擦防止方法は、原則的に独立しており、再充填スケジューリング方法とは別個であり、随意に、他の方法のステップをいずれも使用することなく実施及び実行されてもよいことに留意されたい。同様に、携帯型注入装置制御ユニットも固着摩擦防止方法を実行するように構成されてもよく、必ずしも二次リザーバの再充填をスケジューリングする方法のステップのすべて又は一部を実行するように構成される必要はない。
【0066】
さらなる態様では、全体的な目的は、非一時的なコンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品によって達成される。非一時的なコンピュータ可読媒体は、その中に、上述される及び/又は以下にさらに記載されるようないずれかの実施形態に従って、携帯型注入システムの二次リザーバの再充填をスケジューリングする方法を実行するように及び/又は再充填スケジューリングユニット及び/又は携帯型注入装置制御ユニットとして作動するようにプロセッサを指示するように構成されたコンピュータプログラムコードを保存している。プロセッサは特に、1つ以上のマイクロプロセッサ及び/又はマイクロコントローラによって実装されるか又は形成され得る。
【0067】
さらなる態様では、全体的な目的は携帯型注入装置によって達成される。携帯型注入装置は、上述したように携帯型注入装置制御ユニットを含む。携帯型注入装置はさらに、バルブ制御ユニットと動作的に連結しているバルブアクチュエータ及び二次リザーバアクチュエータ制御ユニットと動作的に連結している二次リザーバアクチュエータを含む。バルブアクチュエータ及び二次リザーバアクチュエータは、典型的に、回転アクチュエータなどの電気アクチュエータ、特にDCモータ、ブラシレスDCモータ又はステッパモータである。他のタイプの電気アクチュエータ、特にバルブアクチュエータとしての形状記憶合金アクチュエータが使用されてもよい。バルブアクチュエータは、バルブユニットを取り外し可能且つ動作可能に連結し係合するように設計されている。二次リザーバアクチュエータは、以下に説明するように、投薬シリンダ内に収容されるピストンと取り外し可能且つ動作可能に連結し係合するように設計され、ピストン及び投薬シリンダは計量ポンプユニットを形成する。計量ポンプユニット及びバルブユニットは、組み合わさって、投薬ユニットを形成し、一般的な一体型ユニットとして実装される。投薬シリンダ及びピストンはさらに、可変容積が制御された二次リザーバを形成する。
【0068】
一般に、任意の開示された実施形態による方法は、再充填スケジューリングユニット、携帯型注入装置、携帯型注入装置制御ユニット、及び/又はコンピュータプログラム製品の対応する実施形態によって実行され得、これらは適切に開示もされている。同様に、開示された実施形態による再充填スケジューリングユニット、携帯型注入装置制御ユニット、携帯型注入装置及びコンピュータプログラム製品は、対応する方法の実施形態を実行するために使用されてもよく、これらは適切に開示もされている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、簡略化された機能図における携帯型注入システムの主要構成要素を示す図である。
図2図2は、本開示による動作フローを示す図である。
図3図3は、本開示による再充填スケジューリング方法のさらなる動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下では、最初に図1が参照される。図1は、投薬ユニット100、携帯型注入装置200、及び液剤リザーバ300を示している。本開示の関連で特に関連性のある構造ユニット及び機能ユニットのみが示されていることに留意されたい。
【0071】
投薬ユニット100は、一般的な説明において上述したように、空洞を有する投薬シリンダ及びピストン(別途参照されていない要素)を含む、計量ポンプユニット110を含む。投薬シリンダの近位の前壁には、ポンプポート127aに連結する流体ポートとしての空洞が配されている。投薬ユニットはさらに、代替的に充填状態102b又は投薬状態120aであり得るバルブユニット120を含む。動作中、バルブユニット120はこれらの状態の間で繰り返し切り替えられる。液剤リザーバ300は、充填ポート127bを介してバルブユニット120に流体結合されている。患者900は、投薬ポート127c及び注入部位インターフェース890を介してバルブユニットに流体結合されている。注入部位インターフェース890が、例示的に、注入ライン、例えばカテーテルと一体的に示されていることに留意されたい。投薬ユニット100はさらに、バルブユニット120を充填状態120bと投薬状態120aとの間で切り替えるためのバルブドライバカプラ125を含む。同様に、投薬ユニット100は、ポンプユニット110のピストンを投薬シリンダ内で直線的に移動させるためのポンプドライバカプラ115を含む。例示的な実施形態では、投薬シリンダの最大充填容積は、濃度U100を有する液体インスリン製剤の7IU(国際単位)、又は70μlである。
【0072】
バルブユニット120に関して、図1は、充填ポート127b又は投薬ポート127cのいずれかがポンプポート127aに連結されている状態120a、120bを示しているだけであることにさらに留意されたい。しかし、さらなる中間状態では、3つすべてのポート、127a、127b、127cが閉じられ、その結果、流体が遮断される。
【0073】
携帯型注入装置は、ポンプドライバカプラ215に連結されたポンプドライブ217及びバルブドライバカプラ225に連結されたバルブドライブ227を含む。ポンプドライブ217及びバルブドライブ227は、典型的に1つ以上のマイクロコントローラ及び/又はマイクロプロセッサに基づく電子携帯型注入装置制御ユニット250によって電力供給され制御される。
【0074】
投薬シリンダ及びピストンは、組み合わさって二次リザーバを形成し、一方で液剤リザーバ300は、一次リザーバを形成し、密封用の変位可能なカートリッジピストンを有する円筒状カートリッジによって実現され得るか、又はパウチなどの完全に又は部分的に可撓性のリザーバであり得る。一次リザーバは、製造業者によって容易に充填されるよう又はユーザによって充填されるように設けられ得る。携帯型注入装置制御ユニット250はさらに、二次リザーバアクチュエータとしてポンプドライブ217の動作を制御する二次リザーバアクチュエータ制御ユニット(別途参照されていない)を含む。さらに、携帯型注入装置制御ユニット250は、バルブアクチュエータとしてバルブドライブ227の動作を制御するバルブアクチュエータ制御ユニット(別途参照されていない)を含む。携帯型注入装置制御ユニット250はさらに、本開示による再充填スケジューリングユニット251を含み、その動作は以下でより詳細にさらに説明される。
【0075】
液剤リザーバ300及び投薬ユニット100が、携帯型注入装置200とは別個のものとして示されていることに留意されたい。しかしながら、これらは、動作可能な構成で、一般的でコンパクトなユニットを形成するために携帯型注入装置200に機械的に連結されてもよく、また典型的にもそうであり、及び/又はこれらは、携帯型注入装置のハウジングの対応する区画に挿入されてもよい。さらに、投薬ユニット100及び液剤リザーバ300は、一部の実施形態では共通ユニットとして実現されてもよい。
【0076】
以下には、本開示による例示的な方法を例示する図2がさらに参照される。例示的な方法は、新しい携帯型注入装置がユーザ、例えば、糖尿病患者(PwD)に提供される、ステップS1において開始される。携帯型注入装置は、前に説明したように一次リザーバ及び二次リザーバと組み合わせて使用されるように設計されている。図2図3に例示されている方法が、携帯型注入装置200と投薬ユニット100及び前に説明されたようなその構成要素とのセットアップに基づいていることに留意されたい。
【0077】
続くパラメータ設定ステップS2では、携帯型注入装置は、ユーザによる使用のために準備され初期化される。これは特に、前に説明したように、例えば稼働日及び週末のための基礎投与スケジュール又は多くの基礎投与スケジュールのプログラミングを含む。多くの先行技術のシステムでは、携帯型注入装置は、ボーラス推薦システムを含むか又はそれに動作可能に連結するように構成されている。ボーラス推薦システムは、食物摂取量、特に炭水化物摂取量をカバーするのに適した、及び/又は望ましくない上昇した血糖値を低下させるのに適した、ボーラスでの薬剤、特にボーラスでのインスリンのボーラス量を計算し、ユーザに提案するように設計されている。この計算は、ステップS2でも設定又はプログラムされる多数の患者特異的なボーラス計算パラメータを使用して、食物の量及び場合によっては食物のタイプ、及び/又は、血糖値に応じて行われる。ステップS1で提供された携帯型注入装置が、前に使用された装置と交換された装置である場合、ステップS2は、1つ以上の基礎投与スケジュール及びボーラス計算パラメータを、前に使用された装置から又はそのようなパラメータを保存するデータファイルから取り出すことを含み得るか又はそれから成り得る。
【0078】
次の維持ステップS3では、二次リザーバに加えて一次リザーバをも備える投薬ユニットが、携帯型注入装置内に挿入され、直接又は注入管を介して注入カニューレと連結される。さらに、投薬ユニット及び/又は二次リザーバを交換する関連で必要とされる、プライミングなどの追加のステップが実行される。ここで、一次リザーバ及び二次リザーバを有する投薬ユニットは、一般に、ユーザの個々の要求に応じて、例えば数日毎から数週間毎に交互に交換されると想定される。投薬ユニット及び一次リザーバはまた、一般的な一体型ユニットとして形成されてもよい。しかしながら、代替的に、それらは構造的に別個であり得、互いとは別々に交換されてもよい。
【0079】
続くステップS4では、通常の動作中に使用するために標準の注入推定量が計算される。標準の注入推定量は、一連の標準の基礎注入推定量及び一連の標準のボーラス注入推定量を含む。例として、推定時間間隔は2時間と予め決定されており、標準のボーラス推定量及び標準の基礎推定量の両方は、10分の間隔での1日の特定の時間に対して、即ち、0:00(深夜)、0:10、0:20、0:30、0:40、0:50、1:00(午前1時)などに対して計算される。一連の標準の基礎注入推定量は基礎注入スケジュールに基づいて計算される。プログラムされた基礎注入スケジュールに基づく計算に代わって、基礎注入推定量は、履歴メモリに保存された実際の過去の基礎注入に基づいて計算され得る。このアプローチは、過去に生じた典型的な一時的な修正も考慮に入れられるという利点を有している。一連の標準のボーラス注入推定量は、携帯型注入装置自体、及び/又はリモートコントローラ又は糖尿病管理装置などの外部装置の履歴メモリに保存される実際の過去のボーラス注入の履歴に基づいて計算される。計算のために、履歴メモリからデータが引き出される(ステップS4’)。計算が行われる開始時間としての1日の各時間に対して、対応するボーラス注入推定量が、一般的な説明で前に説明されたように、例えば、80%パーセンタイルとして計算される。この計算は、例えば過去3日間又は7日間という日数に基づいて実行される。
【0080】
ステップS4、S4’に続いて、通常の液剤注入が行われる。バックグラウンドプロセスとして、充填量評価手順が繰り返し、自動的に行われ(ステップS5、S5’)、これはより詳細に以下にさらに説明される。
【0081】
通常動作中に一次リザーバが空になる場合、動作フローはステップS6に進み、ここで注入が停止され、対応するメッセージが提供される。ステップS6から、動作フローは維持ルーチンS3に戻る。好ましくは、一次リザーバが実際に空になるずっと前に、1以上の警告が提供され、それによってユーザは維持ステップS3に進み、好適な時点で投薬ユニット及び一次リザーバを交換することができる。
【0082】
以下では、再充填のスケジューリングに関連するステップの他に、携帯型注入装置の通常の動作中のさらなる関連するステップの動作フローを示す図3がさらに参照される。
【0083】
ステップS10では、携帯型注入装置の通常の動作が開始される。すなわち、携帯型注入装置は、基礎投与スケジュールに従って液剤を自律的に注入するように操作され、必要に応じて追加のボーラスも注入するように操作される。
【0084】
続くステップS11では、現時点は、充填レベル評価を行うための時間として設定される。続くステップS12では、二次リザーバの推定充填量が判定される。
【0085】
一連の標準のボーラス注入推定量と標準の基礎注入推定量が前もって計算されている実施形態では、ステップS12は、現時点に関連付けられた標準の基礎注入推定量及び標準のボーラス推定量を取り出し、二次リザーバの現在の充填量から標準の基礎推定量及び標準のボーラス推定量を減算することによって推定充填量を判定するステップを含む。標準の注入推定量が前もって計算されていない代替的な実施形態では、二次リザーバの推定充填量は、開始時点として現時点を使用し、終了時点として現時点に推定時間間隔を加えたものを使用して、一般的な説明で説明されるようにステップS12で計算され得る。
【0086】
続くステップS13では、注入の一時的な修正が有効であるか否かが判定される。このような一時的な修正に関するデータは、連続的なグルコース測定装置又は連続的なグルコース測定ユニットから、及び/又は一時的な修正に関する情報を保存する携帯型注入装置のメモリから取り出され得る(ステップS5’)。このような修正が有効である場合、ステップS13はさらに、それに応じて二次リザーバの推定充填量を修正又は更新することを含む。
【0087】
続くステップS14では、動作フローが推定充填量に応じて分岐する。
【0088】
将来の推定時点での推定充填量が正である場合、動作フローはステップS15に進む。ここでは、それに応じて二次リザーバが推定時間間隔内で空にならないことが想定される。この場合、随意のステップS15、S16、S17が実行される。
【0089】
ステップS15では、二次リザーバの最後の再充填から経過した時間が、例えば12時間の予め決められたバック投薬の時間間隔との比較によって評価され、その結果に応じて動作フローは分岐する。再充填がバック投薬の時間間隔内で実行された場合、動作フローはステップS16に進み、ここでは行動が必要とされない。そうでない場合には、ステップS17で一連のバック投薬が実行される。
【0090】
一連のバック投薬では、バルブアクチュエータは、投薬状態から充填状態に切り替えるように制御される。続いて、二次リザーバアクチュエータは、投薬モードの中で、二次リザーバの流体容積を少量のバック投薬量だけ減少させるように制御される。続いて、バルブアクチュエータは、充填状態から投薬状態に切り替えて戻すように制御される。二次リザーバの流体容積を減少させることによって、バック投薬量に相当する液剤の量が、二次リザーバから一次リザーバに押し入れられる。ガラスカートリッジ本体内で密封し、移動可能に配されているカートリッジピストンを有するガラス又はプラスチックのカートリッジである一次リザーバに関して、これは、カートリッジを空にするための、カートリッジ本体内のカートリッジピストンの通常の移動方向とは反対向きの強制移動に関連しており、カートリッジピストンの強制移動は、液剤によってカートリッジに加えられる押圧力に関連する。このようにして、カートリッジピストンがしばらくの間移動されない場合に典型的に増大するカートリッジピストンとカートリッジ本体との間の離脱力を克服する。このような離脱力は、かなり大きく、カートリッジから液体を引き出すことによってピストンに流体的に加えられ得る引っ張り力を優に超え得る。バック投薬に関連する方法のステップが、ピストン固着防止方法として独立して実施されてもよいことに留意されたい。
【0091】
ステップS16又はステップS17のいずれかの後に、動作フローは以下にさらに説明されるようなステップS22に進む。
【0092】
離脱力が特に低い代替的な実施形態、又はパウチなどの別のタイプの一次リザーバが使用される実施形態では、ステップS15、S16、及びS17は必要とされないことがある。
【0093】
終了時間での推定充填量が負である場合、動作フローは、ステップS14に続いてステップS18に進む。ステップS18では、次に続くボーラス注入が、現時点からのボーラスのタイムアウト閾値によって定義される時間間隔の後にのみ行われると予測されるか否かが判定される。ボーラスのタイムアウト閾値は、特定の例では20分であり得るが、より長い又はより短い値が使用されてもよい。肯定的な場合には、動作フローはステップS19に進み、ここでは、行動が現在必要とされていないと判定される。肯定的でない場合、動作フローはステップS20に進み、ここでは、次に続くボーラスの予期される量がボーラス量閾値を超えるか否かが判定される。好ましくは、ボーラス量閾値は、二次リザーバの現在の充填量に動的に設定される。負の場合には、動作フローはまたステップS19に進む。正の場合、動作フローはステップS21に進み、ここでは、二次リザーバの再充填が開始される。
【0094】
ステップS19又はステップS21のいずれかを実行した後、動作フローはステップS22に進む。ステップS22では、現時点が充填量の評価ルーチンの次に続く実行についての時間に対応するまで、動作フローは休止する。続くステップS23では、一次リザーバが空であるか否かが判定される。肯定的な場合には、動作フローはステップS6に進み、ここでは、アルゴリズムは終了し、一次リザーバ及び随意に二次リザーバを有する投薬ユニットについての交換ルーチンが開始される。負の場合では、動作フローは、充填量の評価ルーチンの次の実行のためにステップS11に戻る。
【0095】
ステップS15、S16、S17のように、ステップS18、S19、S20は任意であることに留意されたい。ステップS18、S19を介して、一般的な説明で説明したように、薬剤注入の典型的な変動に起因して実際には不必要であり得る状況では、他の方法で開始される再充填は回避される。追加のステップS20を介して、次の予期される必要に応じたボーラスが以前の再充填を行わずに依然として注入され得る状況では、現時点での再充填は回避される。
図1
図2
図3