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▶ エム スクエアード レーザーズ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】レーザシステム
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/136 20060101AFI20230111BHJP
   H01S 3/11 20230101ALI20230111BHJP
   H01S 3/16 20060101ALI20230111BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20230111BHJP
   H01S 1/06 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
H01S3/136
H01S3/098
H01S3/16
G02F1/01 B
H01S1/06
【請求項の数】 54
(21)【出願番号】P 2020520551
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 GB2018052811
(87)【国際公開番号】W WO2019073202
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】1716780.0
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514010047
【氏名又は名称】エム スクエアード レーザーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M SQUARED LASERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーカー,ガレス トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター,スティーヴン
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146786(JP,A)
【文献】特開平03-120774(JP,A)
【文献】特開平02-151122(JP,A)
【文献】特開平08-056120(JP,A)
【文献】特開2006-245179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0303111(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107104354(CN,A)
【文献】SCHMIDT Malte et al.,A portable laser system for high precision atom interferometry experiments, Applied Physics B,vol.102,2010年09月27日,p.1-8
【文献】KWON Taeg Yong et al.,Development of an intensity stabilized laser system with frequency offset of 9.2GHz,Japanese Journal of Applied Physics,vol.42, no.8A L924,2003年08月01日,L924-926
【文献】COURDE C et al.,Elimination of systematic errors in two-mode laser telemetry,Measurement science and technology,vol.20, no.12,2009年12月01日
【文献】TULCHINSKY David A et al.,Characteristics and performance of offset phase locked single frequency heterodyned laser systems,Review of scientific instruments,87 ,2016年05月04日,053107-1-053107-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 1/00 - 3/30
H01S 5/00 - 5/50
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G01B 9/00 - 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の動作周波数(f)で第1の光学場(6)を提供する固体レーザである第1の連続波レーザ源(2)と、前記第1の動作周波数から第1の所定のオフセット周波数(Δf)でオフセットされた第2の動作周波数(f)で第2の光学場(7)を提供する固体レーザである第2の連続波レーザ源(3)と、位相ロックフィードバックループ(30)とを含むレーザシステム(1)であって、
前記第1の光学場(6)と第2の光学場(7)は、結合されて結合連続波光学場(25、26)を生成し、前記位相ロックフィードバックループ(30)は、前記結合連続波光学場(25、26)の少なくとも第1の成分によって生成された第1の光ビート信号(25)から、第2の動作周波数(f)を前記第1の動作周波数(f)に位相ロックする手段を提供し、
前記位相ロックフィードバックループ(30)は、前記第1の光ビート信号(25)を第1の電気ビート信号(47)に変換する手段を提供する第1の光ビート検出器(29)と、前記第1の動作周波数(f)からの第2の所定のオフセット周波数(Δf)で第1の基準信号(52)を生成する手段を提供する第1の基準信号生成器(54)と、前記第2の所定のオフセット周波数(Δf)より低い周波数で第2の基準信号(53)を生成する手段を提供する第2の基準信号生成器(60)と、前記第1の電気ビート信号(47)、前記第1の基準信号(52)および前記第2の基準信号(53)から、第1のエラー信号(65)を生成する手段を提供する位相ロックフィードバックループ電気回路(49)とを備え、前記第1のエラー信号(65)が、前記第2の連続波レーザ源(3)のためのフィードバック信号(66)を制御するために使用され、
前記位相ロックフィードバックループ(30)がさらに、前記第1の光ビート検出器(29)と前記位相ロックフィードバックループ電気回路(49)との間に配置された第1のアナログ位相シフタ(50)と、アナログ制御信号(95)を前記アナログ位相シフタに提供して前記第1の電気ビート信号(47)に所定の位相オフセットを導入するように構成されたアナログ出力源(94)と、を備えることを特徴とするレーザシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザシステム(1)において、
前記第2の所定のオフセット周波数(Δf)が、前記第1の所定のオフセット周波数(Δf)と同じ桁の大きさであることを特徴とするレーザシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザシステム(1)において、
前記第2の基準信号の周波数(53)が、前記第1の基準信号の周波数(52)よりも1桁以上低いことを特徴とするレーザシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第2の所定のオフセット周波数(Δf)が、前記第1の所定のオフセット周波数(Δf)に前記第2の基準信号の周波数(53)を加算または減算したものに等しいことを特徴とするレーザシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1の基準信号生成器(54)が、周波数シンセサイザ(56)に接続された恒温槽付水晶発振器(OCXO)(55)を含むことを特徴とするレーザシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第2の基準信号生成器(60)が、第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)を含むことを特徴とするレーザシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記位相ロックフィードバックループ電気回路(49)が、第1の周波数ミキサ(61)および第2の周波数ミキサ(63)をさらに備えることを特徴とするレーザシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1の周波数ミキサ(61)が、前記第1の電気ビート信号(47)および前記第1の基準信号(52)から、第1のミックスダウン出力信号(62)を生成することを特徴とするレーザシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザシステム(1)において、
前記第2の周波数ミキサ(63)が、前記第1のミックスダウン出力信号(62)と前記第2の基準信号(53)とをミックスダウンすることによって前記第1のエラー信号(65)を生成することを特徴とするレーザシステム。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1の電気ビート信号(47)が、前記第1の周波数ミキサ(61)によって前記第1の基準信号(52)と混合される前に、第1の電気ディバイダ(51)を通過することを特徴とするレーザシステム。
【請求項11】
請求項7乃至10の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1の基準信号(52)が、前記第1の周波数ミキサ(61)によって前記第1の電気ビート信号(47)と混合される前に、第2の電気ディバイダ(57)を通過することを特徴とするレーザシステム。
【請求項12】
請求項8乃至11の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1のミックスダウン出力信号(62)が、前記第2の周波数ミキサ(63)によって前記第2の基準信号(53)と混合される前に、ローパスフィルタ(64)を通過することを特徴とするレーザシステム。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1および第2の光学場(6、7)が共通の経路に沿って伝播しないことに起因して第1の光学場(6)と第2の光学場(7)との間に導入される任意の相対位相ノイズを補償する手段を提供する位相ノイズモニタ(108)をさらに含むことを特徴とするレーザシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のレーザシステム(1)において、
前記位相ノイズモニタ(108)が、第2の結合連続波光学場(26、117)によって生成された第2の光ビート信号を受信するように構成されていることを特徴とするレーザシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のレーザシステム(1)において、
前記位相ノイズモニタ(108)が、前記第2の光ビート信号を第2の電気ビート信号(116)に変換する手段を提供する第2の光ビート検出器(115)を備えることを特徴とするレーザシステム。
【請求項16】
請求項13乃至15の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記位相ノイズモニタ(108)が、前記第1の動作周波数(f)からの第3の所定のオフセット周波数(Δf)で第3の基準信号(119)を生成する手段を提供する第3の基準信号生成器(121)をさらに備えることを特徴とするレーザシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のレーザシステム(1)において、
前記位相ロックフィードバックループ電気回路(49)が第3の周波数ミキサ(122)を含み、当該第3の周波数ミキサ(122)が、第2の電気ビート信号(116)および前記第3の基準信号(119)をミックスダウンすることによって第2のエラー信号(123)を生成する手段を提供することを特徴とするレーザシステム。
【請求項18】
請求項17に記載のレーザシステム(1)において、
前記第2のエラー信号(123)が、前記第1の基準信号生成器(54)によって生成された前記第1の基準信号(52)の位相を調整するためのフィードバック信号(124)を制御するために使用されることを特徴とするレーザシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のレーザシステムにおいて、
前記第1の基準信号(52)の位相の調整が、前記フィードバック信号(124)を使用して前記恒温槽付水晶発振器(OCXO)(55)を制御することによって達成されることを特徴とするレーザシステム。
【請求項20】
請求項18に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1の基準信号(52)の位相の調整が、OCXO(55)または周波数シンセサイザ(56)の後に位置する第2のアナログ位相シフタを制御することによって達成されることを特徴とするレーザシステム。
【請求項21】
請求項16乃至20の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第3の所定のオフセット周波数(Δf)が、前記第1の所定のオフセット周波数に等しいことを特徴とするレーザシステム。
【請求項22】
請求項1乃至21の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記第1の光学場(6)の一成分(38)を用いて前記第1の動作周波数(f)を維持する手段を提供する周波数ロックフィードバックループ(36)をさらに備えることを特徴とするレーザシステム。
【請求項23】
請求項22に記載のレーザシステム(1)において、
前記周波数ロックフィードバックループ(36)が、前記第1の光学場(6)の前記一成分(38)を使用して、前記第1の動作周波数(f)を原子遷移(E)からの所定のオフセット周波数に維持する手段を提供することを特徴とするレーザシステム。
【請求項24】
請求項1乃至23の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
第1の出力場(6)から前記第1の連続波レーザ源(2)の励起光源(4)にフィードバックを提供するように配置された光検出器(16)を含む第1のパワーフィードバックループ(14)をさらに備えることを特徴とするレーザシステム。
【請求項25】
請求項1乃至24の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
第2の出力場(7)から前記第2の連続波レーザ源(3)の励起光源(5)にフィードバックを提供するように配置された光検出器(19)を含む第2のパワーフィードバックループ(17)をさらに含むことを特徴とするレーザシステム。
【請求項26】
請求項1乃至25の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
前記結合連続波光学場(25、26)における第2の成分(26)を形成する一連の光パルス(35)を生成するために使用されるパルス発生器をさらに備えることを特徴とするレーザシステム。
【請求項27】
請求項1乃至26の何れか一項に記載のレーザシステム(1)において、
第3のデジタル出力(93)が、前記第2の基準信号生成器(60)をトリガーして所定の周波数チャープを有する第2の基準信号(53)を生成するように構成されることを特徴とするレーザシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のレーザシステム(1)において、
前記第3のデジタル出力(93)が、分散制御システム(DCS)(74)によって生成されることを特徴とするレーザシステム。
【請求項29】
請求項1に記載のレーザシステム(1)において、
前記アナログ出力源(94)が、分散制御システム(DCS)(74)に配置されることを特徴とするレーザシステム。
【請求項30】
固体レーザである第1の連続波レーザ源(2)から提供される第1の動作周波数(f)を有する第1の連続波光学場(6)と、固体レーザである第2の連続波レーザ源(3)から提供される第2の動作周波数(f)を有する第2の連続波光学場(7)とを含むレーザシステム(1)を構成する方法であって、
-前記第2の動作周波数(f)を、前記第1の動作周波数(f)からの第1の所定のオフセット周波数(Δf)に設定するステップと、
-第1の光学場(6)と第2の光学場(7)を結合させて、結合連続波光学場(25、26)を生成するステップと、
-結合光学場(25、26)の少なくとも第1の成分から第1の光ビート信号(25)を生成するステップと、
-前記第1の光ビート信号(25)を第1の電気ビート信号(47)に変換するステップと、
-前記第1の動作周波数(f)からの第2の所定のオフセット周波数(Δf)で第1の基準信号(52)を生成するステップと、
-前記第2の所定のオフセット周波数(Δf)よりも低い周波数で第2の基準信号(53)を生成するステップと、
-前記第1の電気ビート信号(47)、第1の基準信号(52)および第2の基準信号(53)から第1のエラー信号(65)を生成するステップと、
-前記第1のエラー信号(65)を使用して、前記第2の連続波光学場(7)のためのフィードバック信号(66)を制御し、前記第2の動作周波数(f)を前記第1の動作周波数(f)に位相ロックするステップと、
-アナログ制御信号(95)を使用して、前記第1の電気ビート信号(47)に所定の位相オフセットを導入するステップと、を含むことを特徴とする、レーザシステムを構成する方法。
【請求項31】
請求項30に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第2の所定のオフセット周波数(Δf)が、前記第1の所定のオフセット周波数(Δf)と同じ桁の大きさであることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項32】
請求項30または31に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第2の基準信号(53)の周波数が、前記第1の基準信号(52)の周波数よりも1桁以上低いことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項33】
請求項30乃至32の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第2の所定のオフセット周波数(Δf)が、前記第1の所定のオフセット周波数(Δf)に前記第2の基準信号(53)の周波数を加算または減算したものに等しいことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項34】
請求項30乃至33の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1のエラー信号(65)を生成することには、前記第1の電気ビート信号(47)および前記第1の基準信号(52)から第1のミックスダウン出力信号(62)を生成することが含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項35】
請求項34に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1のエラー信号(65)が、前記第1のミックスダウン出力信号(62)および前記第2の基準信号(53)から第2のミックスダウン出力信号を生成することをさらに含むことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項36】
請求項34または35に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1の電気ビート信号(47)が、前記第1の基準信号(52)と混合される前に分割されることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項37】
請求項34または35に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1の基準信号(52)が、前記第1の電気ビート信号(47)と混合される前に分割されることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項38】
請求項35乃至37の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1のミックスダウン出力信号(62)が、前記第2の基準信号(53)と混合される前にローパスフィルタリングされることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項39】
請求項30乃至38の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1の光学場(6)および第2の光学場(7)が共通の経路に沿って伝播しないことに起因して前記第1の光学場(6)と第2の光学場(7)との間に導入される相対位相ノイズを補償するステップをさらに含むことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項40】
請求項39に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
相対位相ノイズを補償することには、第2の結合連続波光学場(26、117)から第2の光ビート信号を生成することが含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項41】
請求項40に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1の連続波光学場(6)および第2の連続波光学場(7)は、結合されて前記第2の結合連続波光学場(117)を形成する前に、周波数が2倍にされることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項42】
請求項40または41に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
相対位相ノイズを補償することには、第2の光ビート信号を第2の電気ビート信号(116)に変換することがさらに含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項43】
請求項39乃至42の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
相対位相ノイズを補償することには、前記第1の動作周波数(f)からの第3の所定のオフセット周波数(Δf)で第3の基準信号(119)を生成することがさらに含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項44】
請求項43に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
相対位相ノイズを補償することには、前記第2の電気ビート信号(116)および前記第3の基準信号(119)から第2のエラー信号(123)を生成することがさらに含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項45】
請求項44に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第2のエラー信号(123)を生成することには、前記第2の電気ビート信号(116)および前記第3の基準信号(119)をミックスダウンすることが含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項46】
請求項44または45に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
相対位相ノイズを補償することには、前記第2のエラー信号(123)を使用して前記第1の基準信号(52)に対するフィードバック信号(124)を制御することがさらに含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項47】
請求項30乃至46の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1の光学場(6)の一成分(38)を使用して、前記第1の動作周波数(f)を原子遷移(E)からの所定のオフセット周波数に維持するステップをさらに含むことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項48】
請求項47に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1の動作周波数(f)を維持することには、前記第1の光学場(6)の一成分(38)を前記原子遷移(E)からの所定のオフセット周波数で光学的に変調して、前記原子遷移と共鳴する、前記第1の光学場(6)の変調された成分(38)の周波数側波帯を提供することが含まれることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項49】
請求項30乃至48の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記第1の連続波光学場(6)および/または前記第2の連続波光学場(7)のパワーをモニタリングするステップをさらに含むことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項50】
請求項49に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
モニタリングしたパワーが、前記第1の連続波光学場(6)の励起光源(4)にフィードバック信号を提供するために使用されることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項51】
請求項50に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記フィードバック信号が、前記第1の連続波光学場(6)および/または前記第2の連続波光学場(7)の励起光源(4、5)のパワーを調整するために使用されることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項52】
請求項50または51に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記フィードバック信号が、前記第1の連続波光学場(6)の励起光源(4)のアライメント、および/または前記第2の連続波光学場(7)の励起光源(5)のアライメントを調整するために使用されることを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項53】
請求項30乃至52何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
前記結合連続波光学場(25、26)の第2の成分(26)を音響光学変調器システム(31)に通すことによって一連の光パルス(35)を生成するステップをさらに含むことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【請求項54】
請求項30乃至53の何れか一項に記載のレーザシステム(1)を構成する方法において、
デジタル制御信号(93)を使用して、前記第2の基準信号(53)に対して所定の周波数チャープをトリガーするステップをさらに含むことを特徴とするレーザシステムを構成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザの分野に関し、特に、2つの位相ロックされるレーザ源を含むレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
二状態量子システムのコヒーレント制御は、近年、理論的および実験的研究の対象となっている。応用には、高感度の加速度計、ジャイロスコープ、精密重力計、重力勾配計を提供するために使用される原子干渉法が含まれる。
【0003】
原子干渉法には、慣性(加速および/または回転)センシングが含まれる。これは、正確なタイミングと組み合わせて、「デッドレコニング」のナビゲーション方法に使用することができる。測定した加速度を時間で2回積分することにより、最初の出発点からの変位が導き出される。その後の位置精度は、加速度測定の精度とタイミングに依存する。原子干渉法に基づく慣性センシングは、従来の(機械的)方法と比較して、加速度測定の精度を1桁以上向上させる。さらに、原子サンプルを使用することで、絶対的な意味で加速度を測定でき、アーチファクト(機械的なオブジェクト、例えば、落下するコーナーキューブオプティックなど)に基づくデバイスに存在する固有のドリフトの影響を受けない。
【0004】
重力測定は、重力加速度の小さな変動または重力加速度の勾配の検出に関連している。精密な機器は、重力場の非常に小さな変化を感知する。これは、隠れたオブジェクトやボイドのリモートセンシングに使用することができ、石油およびガスの探査、鉱業、考古学、原子力安全、土木工学およびユーティリティの分野における応用がある。
【0005】
ラマン励起は、原子の内部励起と外部運動状態を操作するために使用される。通常は、3つのパルスのシーケンスが使用される。そのシーケンスは、原子サンプルの2つの部分が別々の軌道を辿るように、原子サンプルを分割および反射した後、再結合する。原子が内部遷移すると、光の位相が原子にインプリントされる。光/原子システムの位相は、測定のメトリックである。シーケンスの過程での光パルスとの短い相互作用が位相を設定し、原子サンプルの一部分の進行のマーカとして機能し、すなわち、それらは位相の「ストップウォッチ」または「物差し」として機能する。2つの異なる軌道をたどる原子サンプルのそれぞれの部分は、異なる加速度を受け、異なる量で変位する。さらに進む部分は、それよりも遠くまで進まない部分と相互作用する光よりも、多くの位相を蓄積した光とさらに相互作用する。再結合時に、この変位の違いに起因する位相差が測定量であり、この測定量から加速度が導き出される。
【0006】
2状態量子システムのコヒーレント制御は、状態|0>、状態|1>で構成される2状態量子システムが一般に量子ビットまたはQubitと呼ばれる量子情報処理の分野でも使用されている。誘導ラマン遷移を使用して2状態量子システムをコヒーレントに操作することができ、よって、量子ビットの値は、|0>、|1>、または両方の重ね合わせの何れかの2レベルシステムの状態によって決定される。重ね合わせと量子もつれの量子力学的現象は、適切に準備された量子ビットシステムに固有の並列性を利用するアルゴリズムを設計できるコンピューティングの新しいパラダイムを可能にする。これにより、入力パラメーターの線形スケーリングに必要なリソースの指数関数的スケーリング(例えば、数字の長さの関数として大きな数を素数に因数分解するのにかかる時間)により、従来のコンピューティングでは計算不可能と分類される問題を解決できる可能性が広がる。
【0007】
上述した応用すべてにおいて、レーザ光は2状態量子システムをコヒーレントに制御する手段として機能する。更なる説明として、2つのコヒーレント光学場を含む単純な3レベルの誘導ラマン遷移が図1に示されている。誘導ラマン遷移の目的は、エネルギー的により高い中間仮想状態|2>を介して、基底状態|0>、|1>間の遷移をコヒーレントに引き起こすことである。これは、マスタ・スレーブ構成に配置された2つのレーザ光源を使用することで実現することができる。すなわち、スレーブレーザ(SL)は、3レベルシステムの基底状態|0>、|1>の周波数分離と等しく設定された周波数差ΔGSを有するマスタレーザ(ML)に追従するように設定される。
【0008】
図1から分かるように、マスタレーザ(ML)の周波数ωは状態|1>を中間状態|2>に結合するように設定され、スレーブレーザ(SL)の周波数ωは状態|0>を同じ中間状態|2>に同時に結合するように設定される。populationを中間状態|2>にしないようにするため、マスタレーザ(ML)の周波数ωとスレーブレーザ(SL)の周波数ωはともに、それぞれの共振周波数からΔだけ離調している。
【0009】
レーザシステムが上述した原子コヒーレントシステム内の光源として機能するためには、レーザシステムが複数の異なる機能を実行できることが必要である。それは、
1)マスタレーザ(ML)の動作周波数を設定およびロックすることができ、かつ、
2)スレーブレーザ(SL)をマスタレーザ(ML)に位相ロックして、それらのレーザの動作周波数間の周波数差を安定させることができることを含む。
【0010】
多くの応用では、
3)マスタレーザ(ML)とスレーブレーザ(SL)を結合させた連続波出力をパルス出力に変換することも望まれる。
【0011】
Muller等による論文「Phase-Locked,Low-Noise、Frequency Agile Titanium:Sapphire Lasers for Simultaneous Atom Interferometers」,Optics Letters,Vol.31,Issue 2,202-204ページ(2006)では、2つのTi:サファイアレーザを含むCW位相ロックシステムが、原子干渉法内での使用において実証されている。
【0012】
位相ロックレーザシステムをもたらすために、最近の注目が、ダイオードレーザに集中している。例えば、Le Gouet等による論文「Wide bandwidth phase-locked diode laser with an intra-cavity electro-optic modulator」,Optics Communications,Vol.282,Issue 5,977-980ページ(2009)では、2つの独立した拡張キャビティダイオードレーザの低ノイズ位相ロックが、冷却原子重力計内で使用するものとして開示されている。位相ロックダイオードレーザの2つ目の例は、Schmidt等による論文「A portable laser system for high-precision atom interferometry experiments」,Applied Physics B,Vol 102,11-18ページ(2011)に記載されている。より最近では、Merlet等による論文「A simple laser system for atom interferometry」,Applied Physics B,Vol 117,749-754ページ(2014)が、2つの線形拡張キャビティレーザダイオード(ECDL)の位相ロックを原子重力計内で使用することを開示している。
【0013】
しかしながら、ダイオードレーザは、固体レーザシステム、例えばTi:サファイアレーザよりも、本質的に高い周波数ノイズレベルを示すことが知られている。また、ダイオードレーザは、固体レーザよりも遙かに低い出力パワーで動作し、よって、同様のパワーレベルに到達するには光増幅器を使用する必要がある。そのようなデバイス、例えばテーパ型増幅器システムは、ノイズが多く、ビームプロファイルに歪みをもたらし、2つの位相ロックダイオードレーザ間に不要な位相シフトを引き起こす。
【発明の概要】
【0014】
本発明の一実施形態の目的は、当技術分野で知られている2つのレーザを位相ロックするための方法および装置の上記欠点を取り除くこと又は少なくとも軽減することである。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、第1の動作周波数で第1の光学場(first optical field)を提供する第1の連続波レーザ源(first continuous-wave laser source)と、第1の動作周波数からの第1の所定のオフセット周波数で第2の光学場(second optical field)を提供する第2の連続波レーザ源(second continuous-wave laser source)と、位相ロックフィードバックループ(phase-lock feedback loop)とを含むレーザシステムが提供され、
第1と第2の光学場は、結合されて結合連続波光学場(combined continuous-wave optical field)をもたらし、位相ロックフィードバックループは、結合連続波光学場の少なくとも第1の成分(first component)によって生成された光ビート信号から、第2の動作周波数を第1の動作周波数に位相ロックする手段を提供し、
位相ロックフィードバックループは、光ビート信号を第1の電気ビート信号に変換する手段を提供する第1の光ビート検出器と、第1の動作周波数からの第2の所定のオフセット周波数で第1の基準信号を生成する手段を提供する第1の基準信号生成器と、第2の所定のオフセット周波数より低い周波数で第2の基準信号を生成する手段を提供する第2の基準信号生成器と、第1の電気ビート信号、第1の基準信号および第2の基準信号から、第1のエラー信号を生成する手段を提供する位相ロックフィードバックループ電気回路とを備え、第1のエラー信号が、第2の連続波レーザ源のためのフィードバック信号を制御するために使用される。
【0016】
この構成により、当技術分野で知られているシステムと比較した場合、通常は数GHzのオーダである第1の予め設定されたオフセット周波数の周りで、低ノイズを示すとともに、アジャイルな位相ロックレーザシステムがもたらされる。第2の基準信号生成器の存在は、レーザシステムからの出力の機能性および周波数のアジリティを大幅に向上させる手段を提供する低周波数の第2の基準信号(通常はMHzオーダ)を生成する手段を提供する。
【0017】
最も好ましくは、第2の所定のオフセット周波数が、第1の所定のオフセット周波数と同じ桁、例えばGHzである。第2の基準信号の周波数は、第1の基準信号の周波数よりも1桁以上低いこと、例えばMHzであることが好ましい。
【0018】
好ましくは、第2の所定のオフセット周波数は、第1の所定のオフセット周波数に第2の基準信号の周波数を加算または減算した値に等しい。
【0019】
任意選択的には、第1の基準信号生成器は、周波数シンセサイザに接続された恒温槽付水晶発振器(OCXO)を含む。
【0020】
最も好ましくは、第2の基準信号生成器は、第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)を含む。
【0021】
最も好ましくは、位相ロックフィードバックループ電気回路は、第1および第2の周波数ミキサをさらに備える。最も好ましくは、第1の周波数ミキサは、第1の電気ビート信号および第1の基準信号からミックスダウン出力信号(first mixed down output signal)を生成する。同様に、第2の周波数ミキサは、第1のミックスダウン出力信号と第2の基準信号とをミックスダウンすることによって第1のエラー信号を生成する。
【0022】
任意選択的には、第1の電気ビート信号は、第1の周波数ミキサによって第1の基準信号と混合される前に、第1の電気ディバイダを通過する。
【0023】
任意選択的には、第1の基準信号は、第1の周波数ミキサによって第1の電気ビートと混合される前に、第2の電気ディバイダを通過する。
【0024】
任意選択的には、第1のミックスダウン出力信号は、第2の周波数ミキサによって第2の基準信号と混合される前に、ローパスフィルタを通過する。
【0025】
好ましくは、位相ロックフィードバックループは、第1の光ビート検出器と位相ロックフィードバックループ電気回路との間に配置された第1のアナログ位相シフタを備える。
【0026】
任意選択的には、レーザシステムは、第1および第2の光学場が共通の経路に沿って伝播しないことに起因して第1の光学場および第2の光学場間に導入される任意の相対位相ノイズを補償する手段を提供する位相ノイズモニタをさらに備える。
【0027】
好ましくは、位相ノイズモニタは、第2の結合連続波光学場によって生成された第2の光ビート信号を受信するように構成される。
【0028】
最も好ましくは、位相ノイズモニタは、第2の光ビート信号を第2の電気ビート信号に変換する手段を提供する第2の光ビート検出器を備える。
【0029】
最も好ましくは、位相ノイズモニタは、第1の動作周波数からの第3の所定のオフセット周波数で第3の基準信号を生成するための手段を提供する第3の基準信号生成器をさらに備える。
【0030】
最も好ましくは、位相ロックフィードバックループ電気回路は、第3の周波数ミキサを含み、第3の周波数が、第2の電気ビート信号と第3の基準信号とをミックスダウンすることによって第2のエラー信号を生成する手段を提供する。
【0031】
好ましくは、第2のエラー信号は、第1の基準信号生成器によって生成された第1の基準信号の位相を調整するためのフィードバック信号を制御するために使用される。第1の基準信号の位相の調整は、フィードバックを使用して恒温槽付水晶発振器(OCXO)を制御することによって達成され得る。代替的には、第1の基準信号の位相の調整は、第2のアナログ位相シフタを制御することによって達成されてもよい。第2のアナログ位相シフタは、OCXOまたは周波数シンセサイザの後に配置することができる。
【0032】
任意選択的には、第3の所定のオフセット周波数は、第1の所定のオフセット周波数に等しい。
【0033】
任意選択的には、レーザシステムは、第1の光学場が伝播する第1の周波数二倍化結晶をさらに含む。この実施形態では、レーザシステムは、第2の光学場が伝播する第2の周波数二倍化結晶をさらに含む。その結果、第3の所定のオフセット周波数は、第1の所定のオフセット周波数の周波数の2倍となる。
【0034】
最も好ましくは、レーザシステムは、第1の光学場の一成分を用いて、原子遷移からの所定のオフセット周波数で第1の動作周波数を維持する手段を提供する周波数ロックフィードバックループをさらに備える。このようにして、第1の出力場は、原子遷移と共鳴することなく、原子遷移を基準とすることができるため、原子遷移の上位状態にpopulationが追い込まれるのを回避することができる。
【0035】
好ましくは、周波数ロックフィードバックループが光変調器を含み、この光変調器の動作が、原子遷移からの所定のオフセット周波数で第1の光学場の成分を周波数変調する手段を提供し、それにより、原子遷移と共鳴する、第1の光学場の変調成分の周波数側波帯を提供する。
【0036】
最も好ましくは、周波数ロックフィードバックループは、原子蒸気セルを通る第1の光学場の変調成分の透過をモニタリングするために使用される原子飽和吸収分光法モジュールをさらに含む。
【0037】
好ましくは、周波数ロックフィードバックループは、原子飽和吸収分光法モジュールの出力から電気フィードバック信号を生成するための手段を提供するフィードバックループ電気回路をさらに含む。最も好ましくは、電気フィードバック信号は、第1の連続波レーザ源の1または複数の同調要素(tuning elements)を制御して第1の動作周波数を維持するために使用される。
【0038】
好ましくは、原子飽和吸収分光法モジュールは、ルビジウム蒸気セルを含む。
【0039】
代替的には、原子飽和吸収分光法モジュールは、カルシウム蒸気セルを含むことができる。別の代替例では、原子飽和吸収分光法モジュールが、セシウム蒸気セルを含むことができる。さらに別の代替形態では、原子飽和吸収分光法モジュールが、カリウム蒸気セルを含むことができる。
【0040】
好ましくは、レーザシステムは、第1の出力場から第1の連続波レーザ源の励起光源にフィードバックを提供するように構成された光検出器を含む第1のパワーフィードバックループをさらに含む。好ましくは、レーザシステムは、第2の出力場から第2の連続波レーザ源の励起光源にフィードバックを提供するように配置された光検出器を含む第2のパワーフィードバックループをさらに含む。このようにして、第1および第2の出力場のパワーをモニタリングし、必要に応じて自動的に調整することができる。これは、励起レーザのパワーを変化させることによって、かつ/または第1および第2の連続波レーザ源への励起レーザのアライメントを調整することによって達成することができる。
【0041】
最も好ましくは、レーザシステムは、結合連続波光学場の第2の成分から一連の光パルスを生成するために使用されるパルス発生器をさらに含む。
【0042】
パルス発生器は、好ましくは、音響光学変調器(AOM)システムを含み、この音響光学変調器システムが、第1の音響光学変調器(AOM)と、第1のAOMの入力駆動信号を生成するために使用される音響光学変調器(AOM)電気回路とを含む。
【0043】
好ましくは、AOM電気回路は、第1の可変利得増幅器(VGA)によって第1のAOMに電気的に接続される分散制御システム(DCS)を含む。好ましくは、第1のVGAからの電気出力は、第1のデジタル制御スイッチによって制御される。
【0044】
任意選択的には、分散制御システム(DCS)は、第1のデジタル制御スイッチを開閉する制御信号を提供するために使用される第1のデジタル出力源をさらに備える。最も好ましくは、分散制御システム(DCS)は、第1のAOMの周波数源、例えば80MHzの低周波源を生成するために使用される第2のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)をさらに含む。
【0045】
最も好ましくは、第1のVGAは、第1のAOMの周波数源を1または複数のパルスを含む第1の電気信号に変換する手段を提供する。好ましくは、第1のVGAは、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定するための手段を提供する。好ましくは、第1のデジタル制御スイッチは、パルスのオン/オフ消光(on/off extinction)を増加させる手段を提供する。また、第1の電気信号内のパルスのタイミングおよび幅の制御を向上させる手段を提供することもできる。第1のAOMが入力駆動信号によって駆動されると、一連の電気パルスのプロファイルを結合連続波場の第2の成分の両方の成分に与えて、所望のパルス出力場を生成する。
【0046】
任意選択的には、音響光学変調器(AOM)システムは、第1の音響光学変調器(AOM)と直列に配置された第2の音響光学変調器(AOM)をさらに含む。好ましくは、音響光学変調器(AOM)電気回路は、第2のAOMの入力駆動信号を生成するために使用される。
【0047】
好ましくは、分散制御システム(DCS)は、第2の可変利得増幅器(VGA)によって第2のAOMに電気的に接続される。好ましくは、第2のVGAからの電気出力は、第2のデジタル制御スイッチによって制御される。
【0048】
任意選択的には、分散制御システム(DCS)は、第2のデジタル制御スイッチを開閉する制御信号を提供するために使用される第2のデジタル出力源をさらに備える。最も好ましくは、分散制御システム(DCS)は、第2のAOMの周波数源、例えば80MHzの低周波源を生成するために使用される第3のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)をさらに含む。
【0049】
最も好ましくは、第2のVGAは、第2のAOMの周波数源を1または複数のパルスを含む電気信号に変換する手段を提供する。好ましくは、第2のVGAは、1または複数のパルスのパワーレベルを設定するための手段を提供する。第2のVGAは、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定するための手段を提供することもできる。好ましくは、第2のデジタル制御スイッチは、パルスのオン/オフ消光を増加させる手段を提供する。また、電気信号内のパルスのタイミングと幅の制御を向上させる手段を提供することもできる。
【0050】
この実施形態において、一連の電気パルスのプロファイルを結合連続波場の第2の成分の両方の成分に付与して所望のパルス出力場を生成するのは、駆動される第1および第2のAOMの組み合わせ効果である。2つのAOMを採用することには、AOMシステムが、生成されたパルス出力場のパルス間でより高いレベルの消光を示すという利点がある。さらに、そのような音響光学変調器システムは、動作の柔軟性が向上する。例えば、駆動される第1のAOMは、主にパルスを整形するために使用され、駆動される第2のAOMは、生成されたパルス出力場の各パルスのパワーを決定するために使用される。
【0051】
好ましくは、第3のデジタル出力は、第2の基準信号生成器をトリガして、所定の周波数チャープを有する第2の基準信号を生成するように構成される。この構成により、第2の光学場のパルスシーケンス全体にわたって予め設定された周波数チャープを導入することが可能になる。
【0052】
最も好ましくは、第3のデジタル出力は、分散制御システム(DCS)によって生成される。分散制御システム(DCS)でデジタル出力を生成すると、周波数チャープのタイミングを、生成されたパルス出力場の個々のパルスのタイミングと同期させる性能が向上する。
【0053】
好ましくは、本レーザシステムは、アナログ制御信号をアナログ位相シフタに提供するように構成されたアナログ出力源をさらに含み、アナログ制御信号は、アナログ位相シフタが所定の位相オフセットを電気ビート信号に導入する手段を提供する。この構成により、生成されたパルス出力場の第1および第2の光学場の成分間に所定の位相シフトを導入することが可能になる。
【0054】
最も好ましくは、アナログ出力源は、分散制御システム(DCS)に配置される。分散制御システム(DCS)にアナログ出力源を配置すると、生成されたパルス出力場の個々のパルスのタイミングで位相シフトのタイミングを制御する性能が向上する。
【0055】
任意選択的には、音響光学変調器(AOM)システムは、第1の音響光学変調器(AOM)と直列に、かつ第2の音響光学変調器(AOM)と並列に配置された第3の音響光学変調器(AOM)をさらに含む。好ましくは、音響光学変調器(AOM)電気回路は、第3のAOMの入力駆動信号を生成するために使用される。
【0056】
任意選択的には、音響光学変調器(AOM)システムは、第1の音響光学変調器(AOM)と直列に、かつ第2および第3の音響光学変調器(AOM)と並列に配置された第4の音響光学変調器(AOM)をさらに含む。好ましくは、音響光学変調器(AOM)電気回路は、第4のAOMの入力駆動信号を生成するために使用される。
【0057】
音響光学変調器システムは、生成されたパルス出力場を3つの異なる出力に分割する手段を提供し、3つの出力の各々は、2つのAOMの組み合わせによって制御される。その結果、3つの直交軸(X、Y、Z)に対応する3つの出力をレーザシステムから生成でき、これにより、原子干渉法内で特定のアプリケーションが見出される。
【0058】
任意選択的には、レーザシステムは、生成された出力場が結合される光ファイバをさらに含む。光ファイバは、レーザシステムの出力場を必要な目的地に伝播する手段を提供する。
【0059】
任意選択的には、レーザシステムは、レーザシステムからの出力場のパワーをモニタリングするように構成された第1の光検出器を有するパワー出力モニタをさらに備える。任意選択的には、パワー出力モニタは、光ファイバを介した伝播に続く出力場のパワーをモニタリングするように構成された第2の光検出器をさらに備える。任意選択的には、出力モニタは、必要な目的地からレーザシステムへの戻り場のパワーをモニタリングするように構成された第3の光検出器をさらに備える。その結果、第2および第3の光検出器は、出力場が配置されることが意図されている目的地、例えば光ファイバの遠位端で出力場のパワーをモニタリングするための手段を提供する。
【0060】
任意選択的には、本レーザシステムは、当該レーザシステムの出力場から音響光学変調器システムにフィードバックを提供するように構成された第1の光検出器を含む第3のパワーフィードバックループをさらに含む。好ましくは、レーザシステムは、ファイバを通って音響光学変調器システムに伝播した後に、レーザシステムの出力場からフィードバックを提供するように配置された第2の光検出器を含む第4のパワーフィードバックループをさらに含む。好ましくは、レーザシステムは、レーザシステムの戻り場から音響光学変調器システムにフィードバックを提供するように配置された第3の光検出器を含む第5のパワーフィードバックループをさらに含む。第3、第4および第5のフィードバックループは、必要に応じてレーザシステムを自動的に調整する手段を提供する。これは、それらフィードバックループを使用して、第1の音響光学変調器および/または第2の音響光学変調器を駆動するために使用される電気パルス信号の振幅を変化させることによって達成することができる。これは、フィードバック信号が、DCSのアナログ入力によって受信され、その後デジタル化されるように構成することによって達成することができる。フィードバックループを使用して、第1の音響光学変調器および/または第2の音響光学変調器を駆動するのに使用される電気パルス信号の振幅を変化させる手段を提供するのは、それらのデジタル化信号である。代替的には、フィードバックループを使用して、レーザシステムの出力場と光ファイバとの間のアライメントを調整することができる。
【0061】
最も好ましくは、第1および第2の連続波レーザ源はそれぞれ、固体レーザ源を含む。特に、第1および第2の連続波レーザ源はそれぞれ、Ti:サファイアレーザを含み得る。
【0062】
本発明の第2の態様によれば、第1の動作周波数を有する第1の連続波光学場と、第2の動作周波数を有する第2の連続波光学場とを含むレーザシステムを構成する方法が提供され、当該方法が、
-第2の動作周波数を、第1の動作周波数からの第1の所定のオフセット周波数に設定するステップと、
-第1の光学場と第2の光学場を結合させて、結合連続波光学場を生成するステップと、
-結合光学場の少なくとも第1の成分から第1の光ビート信号を生成するステップと、
-第1の光ビート信号を第1の電気ビート信号に変換するステップと、
-第1の動作周波数からの第2の所定のオフセット周波数で第1の基準信号を生成するステップと、
-第2の所定のオフセット周波数よりも低い周波数で第2の基準信号を生成するステップと、
-電気ビート信号、第1の基準信号および第2の基準信号から第1のエラー信号を生成するステップと、
-第1のエラー信号を使用して、第2の連続波レーザ源のためのフィードバック信号を制御し、第2の動作周波数を第1の動作周波数に位相ロックするステップとを含む。
【0063】
最も好ましくは、第2の所定のオフセット周波数は、第1の所定のオフセット周波数と同じ桁、例えばGHzである。第2の基準信号の周波数は、第1の基準信号の周波数よりも1桁以上低いこと、例えばMHzであることが好ましい。
【0064】
好ましくは、第2の所定のオフセット周波数は、第1の所定のオフセット周波数に第2の基準信号の周波数を加算または減算したものに等しい。
【0065】
最も好ましくは、第1のエラー信号を生成することは、第1の電気ビート信号および第1の基準信号から第1のミックスダウン出力信号を生成することを含む。同様に、第1のエラー信号を生成することは、第1のミックスダウン出力信号および第2の基準信号から第2のミックスダウン出力信号を生成することをさらに含む。
【0066】
任意選択的には、第1の電気ビート信号は、第1の基準信号と混合される前に分割される。
【0067】
任意選択的には、第1の基準信号は、第1の電気ビート信号と混合される前に分割される。
【0068】
必要に応じて、第1のミックスダウン出力信号は、第2の基準信号と混合される前に低域通過フィルタリングされる。
【0069】
任意選択的には、この方法は、第1および第2の光学場が共通の経路に沿って伝播しないことに起因して、第1および第2の光学場の間に導入される任意の相対位相ノイズを補償するステップをさらに含む。
【0070】
好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2の結合連続波光学場から第2の光ビート信号を生成することを含む。最も好ましくは、第1および第2の連続波光学場は、結合されて第2の結合連続波光学場を形成する前に、周波数が2倍にされる。
【0071】
好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2の光ビート信号を第2の電気ビート信号に変換することをさらに含む。
【0072】
好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第1の動作周波数からの第3の所定のオフセット周波数で第3の基準信号を生成することをさらに含む。
【0073】
最も好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2の電気ビート信号および第3の基準信号から第2のエラー信号を生成することをさらに含む。好ましくは、第2のエラー信号を生成することは、第2の電気ビート信号および第3の基準信号をミックスダウンすることを含む。
【0074】
最も好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2のエラー信号を使用して第1の基準信号へのフィードバック信号を制御することをさらに含む。
【0075】
最も好ましくは、本方法は、第1の光学場の一成分を使用して、第1の動作周波数を原子遷移からの所定のオフセット周波数に維持するステップをさらに含む。
【0076】
好ましくは、第1の動作周波数を維持することは、原子遷移からの所定のオフセット周波数で第1の光学場の一成分を光学的に変調して、原子遷移と共鳴する、第1の光学場の変調成分の周波数側波帯を提供することを含む。
【0077】
好ましくは、第1の動作周波数を維持することは、原子蒸気セルを通る第1の光学場の変調成分の透過をモニタリングすることをさらに含む。
【0078】
好ましくは、第1の動作周波数を維持することは、モニタリングした透過から電気フィードバック信号を生成することをさらに含む。
【0079】
第1の動作周波数を維持することは、電気フィードバック信号を使用して第1の連続波レーザ源の1または複数の同調要素を制御することにより、第1の動作周波数を維持することをさらに含むことができる。
【0080】
この方法は、第1の連続波光学場のパワーをモニタリングするステップをさらに含むことができる。任意選択的には、モニタリングしたパワーを使用して、第1の連続波光学場の励起光源にフィードバック信号を提供することができる。フィードバック信号を使用して、第1の連続波光学場の励起光源のパワーを調整することができる。代替的には、フィードバック信号を使用して、第1の連続波光学場の励起光源のアライメントを調整することができる。
【0081】
この方法は、第2の連続波光学場のパワーをモニタリングするステップをさらに含むことができる。任意選択的には、モニタリングしたパワーを使用して、第2の連続波光学場の励起光源にフィードバック信号を提供することができる。フィードバック信号は、第2の連続波光学場の励起光源のパワーを調整するために使用されてもよい。代替的には、フィードバック信号は、第2の連続波光学場の励起光源のアライメントを調整するために使用されてもよい。
【0082】
最も好ましくは、この方法は、結合連続波光学場の第2の成分を音響光学変調器システムに通すことによって一連の光パルスを生成するステップをさらに含む。
【0083】
好ましくは、一連のパルスは、第1の周波数源によって駆動される第1の音響光学変調器から生成される。好ましくは、第1の可変利得増幅器は、第1の周波数源を1または複数のパルスを含む第1の電気信号に変換する手段として使用される。好ましくは、第1の可変利得増幅器は、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定するための手段として使用される。
【0084】
任意選択的には、一連のパルスは、第1の音響光学変調器と直列に配置され、かつ第2の周波数源によって駆動される第2の音響光学変調器から生成される。好ましくは、第2の可変利得増幅器は、第2の周波数源を1または複数のパルスを含む第2の電気信号に変換するための手段として使用される。好ましくは、第2の可変利得増幅器は、1または複数のパルスのパワーレベルを設定するための手段として使用される。また、第2の可変利得増幅器は、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定する手段も提供することができる。
【0085】
任意選択的には、一連のパルスは、第3の音響光学変調器から生成され、この第3の音響光学変調器が、第1の音響光学変調器と直列に、かつ第2の音響光学変調器と並列に配置され、第3の周波数源によって駆動される。
【0086】
任意選択的には、一連のパルスは、第4の音響光学変調器から生成され、この第4の音響光学変調器が、第1の音響光学変調器と直列に、かつ第2および第3の音響光学変調器と並列に配置され、第4の周波数源によって駆動される。
【0087】
好ましくは、この方法は、デジタル制御信号を使用して、第2の基準信号に対して所定の周波数チャープをトリガーするステップをさらに含む。この構成により、第2の光学場のパルスシーケンス全体にわたって所定の周波数チャープを導入することが可能になる。
【0088】
好ましくは、この方法は、アナログ制御信号を使用して所定の位相オフセットを電気ビート信号に導入するステップをさらに含む。この構成により、生成されたパルス出力場の第1および第2の光学場の成分間に所定の位相シフトを導入することが可能になる。
【0089】
この方法は、レーザシステムの出力場を光ファイバに結合するステップをさらに含むことができる。
【0090】
この方法はさらに、レーザシステムからの出力場のパワーをモニタリングするステップを含むことができる。必要に応じて、出力場のモニタリングしたパワーを使用して、レーザシステムにフィードバック信号を提供することができる。フィードバック信号は、第1の音響光学変調器に印加される電気信号の電力を変化させるために使用することができる。代替的には、フィードバック信号を使用して、レーザシステムおよび光ファイバからの出力場のアライメントを調整することができる。
【0091】
任意選択的には、本方法は、出力場が展開されることが意図されている目的地で出力場のパワーをモニタリングするステップをさらに含むことができる。必要に応じて、出力場のモニタリングしたパワーを使用して、レーザシステムにフィードバック信号を提供することができる。フィードバック信号は、第1の音響光学変調器に印加される電気信号の電力を変化させるために使用することができる。代替的には、フィードバック信号を使用して、レーザシステムおよび光ファイバからの出力場のアライメントを調整することができる。あるいは、フィードバック信号は、第1の基準信号の位相を調整するために使用されるものであってもよい。
【0092】
本発明の第2の態様の実施形態は、本発明の第1の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0093】
本発明の第3の態様によれば、第1の動作周波数で第1の光学場を提供する第1の連続波レーザ源と、第1の動作周波数からの第1の所定のオフセット周波数で第2の光学場を提供する第2の連続波レーザ源を位相ロックするための位相ロックフィードバックループが提供され、この位相ロックフィードバックループが、
第1および第2の光学場を結合して、第1の光ビート信号を有する第1の結合連続波光学場を生成する手段を提供する第1の光ビーム結合器と、
第1の光ビート信号を第1の電気ビート信号に変換する手段を提供する第1の光ビート検出器と、
第1の動作周波数からの第2の所定のオフセット周波数で第1の基準信号を生成するための手段を提供する第1の基準信号生成器と、
第2の所定のオフセット周波数より低い周波数で第2の基準信号を生成する手段を提供する第2の基準信号生成器と、
第1の電気ビート信号、第1の基準信号および第2の基準信号から、第1のエラー信号を生成する手段を提供する位相ロックフィードバックループ電気回路とを備え、第1のエラー信号が、第2の連続波レーザ源のためのフィードバック信号を制御するために使用される。
【0094】
好ましくは、位相ロックフィードバックループは、第1の光ビート検出器と位相ロックフィードバックループ電気回路との間に配置された第1のアナログ位相シフタを備える。この構成により、第1の光学場と第2の光学場との間に所定の相対位相シフトを導入することが可能になる。
【0095】
好ましくは、位相ロックフィードバックループは、第2の基準信号生成器をトリガーして所定の周波数チャープを有する第2の基準信号を生成するように構成されたデジタル出力をさらに備える。この構成により、第2の光学場のパルスシーケンス全体にわたって所定の周波数チャープを導入することが可能になる。
【0096】
任意選択的には、位相ロックフィードバックループは、第1および第2の光学場が共通の経路に沿って伝播しないことに起因して第1および第2の光学場の間に導入される任意の相対位相ノイズを補償する手段を提供する位相ノイズモニタをさらに備える。
【0097】
好ましくは、位相ノイズモニタは、第2の結合連続波光学場によって生成された第2の光ビート信号を受信するように構成される。
【0098】
最も好ましくは、位相ノイズモニタは、第2の光ビート信号を第2の電気ビート信号に変換する手段を提供する第2の光ビート検出器を備える。
【0099】
最も好ましくは、位相ノイズモニタは、第1の動作周波数からの第3の所定のオフセット周波数で第3の基準信号を生成するための手段を提供する第3の基準信号生成器をさらに備える。
【0100】
最も好ましくは、位相ロックフィードバックループ電気回路は、第3の周波数ミキサを含み、第3の周波数は、第2の電気ビート信号と第3の基準信号をミックスダウンすることによって第2のエラー信号を生成する手段を提供する。
【0101】
好ましくは、第2のエラー信号は、第1の基準信号生成器によって発生された第1の基準信号の位相を調整するためのフィードバック信号を制御するために使用される。
【0102】
本発明の第3の態様の実施形態は、本発明の第1または第2の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0103】
本発明の第4の態様によれば、第1の動作周波数を有する第1の連続波光学場と、第2の動作周波数を有する第2の連続波光学場とを位相ロックする方法が提供され、この方法が、
-第2の動作周波数を、第1の動作周波数からの第1の所定のオフセット周波数に設定するステップと、
-第1および第2の光学場を結合させて、第1の結合連続波光学場を生成するステップと、
-第1の結合光学場の第1の成分から第1の光ビート信号を生成するステップと、
-第1の光ビート信号を第1の電気ビート信号に変換するステップと、
-第1の動作周波数からの第2の所定のオフセット周波数で第1の基準信号を生成するステップと、
-第2の所定のオフセット周波数よりも低い周波数で第2の基準信号を生成するステップと、
-第1の電気ビート信号、第1の基準信号および第2の基準信号から第1のエラー信号を生成するステップと、
-第1のエラー信号を使用して、第2の連続波レーザ源のフィードバック信号を制御することにより、第2の動作周波数を第1の動作周波数に位相ロックするステップとを含む。
【0104】
好ましくは、この方法は、デジタル制御信号を使用して、第2の基準信号に対して所定の周波数チャープをトリガーするステップをさらに含む。この構成により、第2の光学場のパルスシーケンス全体にわたって所定の周波数チャープを導入することが可能になる。
【0105】
好ましくは、この方法は、アナログ制御信号を使用して所定の位相オフセットを電気ビート信号に導入するステップをさらに含む。この構成により、生成されたパルス出力場の個々のパルスに所定の位相シフトを導入することができる。
【0106】
任意選択的には、この方法は、第1および第2の光学場が共通の経路に沿って伝播しないことに起因して、第1および第2の光学場の間に導入される任意の相対位相ノイズを補償するステップをさらに含む。
【0107】
好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2の結合連続波光学場から第2の光ビート信号を生成することを含む。
【0108】
好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2の光ビート信号を第2の電気ビート信号に変換することをさらに含む。
【0109】
好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第1の動作周波数からの第3の所定のオフセット周波数で第3の基準信号を生成することをさらに含む。
【0110】
最も好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2の電気ビート信号および第3の基準信号から第2のエラー信号を生成することをさらに含む。好ましくは、第2のエラー信号を生成することは、第2の電気ビート信号および第3の基準信号をミックスダウンすることを含む。
【0111】
最も好ましくは、任意の相対位相ノイズを補償することは、第2のエラー信号を使用して第1の基準信号へのフィードバック信号を制御することをさらに含む。
【0112】
本発明の第4の態様の実施形態は、本発明の第1~第3の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0113】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第3の態様の位相ロックフィードバックループを展開する方法が提供され、この方法が、
-第1の連続波光学場の第1の動作周波数を第1の所定の周波数に設定するステップと、
-第2の連続波光学場の第2の動作周波数を第1の所定の周波数に設定するステップと、
-第1および第2の連続波光学場を結合させて光ビート信号を生成するステップと、
-第2の連続周波数レーザ光源の1または複数の周波数同調要素に印加される共振器電圧と、第2の動作周波数をスキャンしながら光ビート信号を受信するように配置された光ビート検出器からのパワー出力とをモニタリングするステップと、
-第1の動作周波数に等しい第2の動作周波数に対応する共振器電圧を決定するステップと、
-共振器電圧を決定した共振器電圧に設定するステップと、
-第1の動作周波数に対する第2の動作周波数の第1の所定の周波数オフセット値を選択するステップと、
-位相ロックフィードバックループを介して低利得フィードバック信号を適用するステップと、
-反復制御法を共振器電圧に適用して、第1の連続波光学場と第2の連続波光学場間の周波数オフセットが第1の所定のオフセット値に対応するときの推定値に向けて共振器電圧を収束させるステップと、
-共振器電圧の収束が望ましい許容レベル内になったら、共振器電圧を推定値に設定し、位相ロックフィードバックループを介して高利得フィードバック信号を適用するステップとを含む。
【0114】
好ましくは、波長計を使用して、第1の連続波光学場の第1の動作周波数を設定する。同様に、波長計を使用して、第2の連続波光学場の第2の動作周波数を設定することもできる。
【0115】
最も好ましくは、第1の動作周波数に等しい第2の動作周波数に対応する共振器電圧を決定することは、光ビート検出器のエラー増幅器からのパワー出力に対応する共振器電圧が最小値、例えばゼロに落ちるのを判定することを含む。
【0116】
代替的には、第1の動作周波数に等しい第2の動作周波数に対応する共振器電圧を決定することは、光ビート検出器のエラー増幅器からのパワー出力の微分係数の最大値に対応する共振器電圧を決定することを含む。
【0117】
最も好ましくは、反復制御法は、位相周波数検出器(PFD)からの出力信号をモニタリングすることを含む。
【0118】
任意選択的には、位相周波数検出器(PFD)への第1の入力は、光ビート信号から生成された電気ビート信号と、周波数シンセサイザによって生成された第1の基準信号とをミックスダウンすることによって生成された二次ビート信号を含む。この実施形態では、位相周波数検出器(PFD)への第2の入力は、第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)によって生成された第2の基準信号を含む。
【0119】
代替的には、位相周波数検出器(PFD)への第1の入力は、光ビート信号から生成された電気ビート信号を含む。この実施形態では、位相周波数検出器(PFD)への第2の入力は、周波数シンセサイザによって生成された第1の基準信号を含む。位相周波数検出器(PFD)への第1および第2の入力はともに、位相周波数検出器(PFD)に到達する前に分割されるようにしてもよい。
【0120】
好ましくは、反復制御法は、第2の連続波光学場の第2の動作周波数を走査して、位相周波数検出器(PFD)からの出力信号が状態を変えるときの第1の電圧(V1)および第2の電圧(V2)を求めるステップを含む。
【0121】
任意選択的には、反復制御法は、位相周波数検出器(PFD)からの出力信号に適用されて、第1の所定の周波数オフセット値にある第2の動作周波数に対応する共振器電圧を見付ける二分法を含む。
【0122】
代替的には、反復制御法は、ビート周波数を直接測定して、直接測定したビート周波数を第1の所定の周波数オフセット値と比較するステップを含む。
【0123】
好ましくは、位相ロックフィードバックループを介して低フィードバック信号を適用することは、低利得値で動作するように第1の増幅器を構成することを含む。低利得値の目的は、位相ロック捕捉を可能にすることである。
【0124】
好ましくは、位相ロックフィードバックループを介して高フィードバック信号を適用することは、高利得値で動作するように第1の増幅器を構成することを含む。ノイズ低減には高利得設定が必要である。
【0125】
本発明の第5の態様の実施形態は、本発明の第1~第4の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0126】
本発明の第6の態様によれば、原子遷移からの所定のオフセット周波数にある動作周波数で光学場を提供する連続波レーザ源用の周波数ロックフィードバックループが提供され、この周波数ロックフィードバックループは、
光変調器であって、その動作が、原子遷移からの所定のオフセット周波数で光学場を周波数変調し、それにより原子遷移と共鳴する光学場の変調成分の周波数側波帯を提供する手段を提供する光変調器と、
原子蒸気セルを通過する光学場の変調成分の透過をモニタリングするために使用される原子飽和吸収分光法モジュールと、
原子飽和吸収分光法モジュールの出力から電気フィードバック信号を生成する手段を提供するフィードバックループ電気回路とを備える。
【0127】
最も好ましくは、電気フィードバック信号を使用して、連続波レーザ源の1または複数の同調要素を制御して、動作周波数を維持する。
【0128】
本発明の第6の態様の実施形態は、本発明の第1~第5の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0129】
本発明の第7の態様によれば、原子遷移を基準にして連続波光学場を周波数ロックする方法が提供され、この方法は、
連続波光学場の動作周波数を、原子遷移からの所定のオフセット周波数になるように選択するステップと、
所定のオフセット周波数で連続波光学場を光学的に変調して、連続波光学場に周波数変調を導入し、それにより、原子遷移と共鳴する光学場の変調成分の周波数側波帯を提供するステップと、
原子遷移を含む原子蒸気を介した連続波光学場の周波数変調成分の透過をモニタリングするステップと、
モニタリングした透過から電気的フィードバック信号を生成するステップとを含む。
【0130】
最も好ましくは、上記方法は、電気フィードバック信号を使用して第1の連続波レーザ源の1または複数の同調要素を制御することにより連続波光学場の動作周波数を維持するステップをさらに含む。
【0131】
本発明の第7の態様の実施形態は、本発明の第1~第6の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0132】
本発明の第8の態様によれば、連続波光学場から一連の光パルスを生成するためのパルス発生器が提供され、このパルス発生器は、
第1の音響光学変調器(AOM)と、第1のAOMを駆動するための第1の周波数源を生成するために使用される音響光学変調器(AOM)電気回路とを含む音響光学変調器(AOM)システムを備え、
音響光学変調器(AOM)電気回路は、第1の可変利得増幅器(VGA)によって第1のAOMに電気的に接続される分散制御システム(DCS)を備える。
【0133】
好ましくは、第1のVGAからの電気出力は、第1のデジタル制御スイッチによって制御される。
【0134】
任意選択的には、分散制御システム(DCS)は、第1のデジタル制御スイッチを開閉する制御信号を提供するために使用される第1のデジタル出力源をさらに備える。最も好ましくは、分散制御システム(DCS)は、第1のAOMの周波数源を生成するために使用される第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)をさらに備える。
【0135】
最も好ましくは、第1のVGAは、第1のAOMの周波数源を1または複数のパルスを含む第1の電気信号に変換する手段を提供する。好ましくは、第1のVGAは、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定するための手段を提供する。好ましくは、第1のデジタル制御スイッチは、パルスのオン/オフ消光を増加させる手段を提供する。また、第1のデジタル制御スイッチは、第1の電気信号内のパルスのタイミングおよび幅の制御を向上させる手段を提供することもできる。
【0136】
任意選択的には、音響光学変調器(AOM)システムは、第1の音響光学変調器(AOM)と直列に配置された第2の音響光学変調器(AOM)をさらに含む。好ましくは、音響光学変調器(AOM)電気回路は、第2のAOMの入力駆動信号を生成するために使用される。
【0137】
好ましくは、分散制御システム(DCS)は、第2の可変利得増幅器(VGA)によって第2のAOMに電気的に接続される。好ましくは、第2のVGAからの電気出力は、第2のデジタル制御スイッチによって制御される。
【0138】
任意選択的には、分散制御システム(DCS)は、第2のデジタル制御スイッチを開閉する制御信号を提供するために使用される第2のデジタル出力源をさらに備える。最も好ましくは、分散制御システム(DCS)は、第2のAOMの周波数源を生成するために使用される第2のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)をさらに備える。
【0139】
最も好ましくは、第2のVGAは、第2のAOMの周波数源を1または複数のパルスを含む電気信号に変換する手段を提供する。好ましくは、第2のVGAは、1または複数のパルスのパワーレベルを設定するための手段を提供する。また、第2のVGAは、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定する手段を提供することができる。好ましくは、第2のデジタル制御スイッチは、パルスのオン/オフ消光を増加させる手段を提供する。また、第2のデジタル制御スイッチは、電気信号内のパルスのタイミングと幅の制御を向上させる手段を提供することもできる。
【0140】
任意選択的には、音響光学変調器(AOM)システムは、第1の音響光学変調器(AOM)と直列に、かつ第2の音響光学変調器(AOM)と並列に配置された第3の音響光学変調器(AOM)をさらに含む。好ましくは、音響光学変調器(AOM)電気回路は、第2のAOMの入力駆動信号を生成するために使用される。
【0141】
任意選択的には、音響光学変調器(AOM)システムは、第1の音響光学変調器(AOM)と直列に、かつ第2および第3の音響光学変調器(AOM)と並列に配置される第4の音響光学変調器(AOM)をさらに含む。好ましくは、音響光学変調器(AOM)電気回路は、第4のAOMの入力駆動信号を生成するために使用される。
【0142】
本発明の第8の態様の実施形態は、本発明の第1~第7の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【0143】
本発明の第9の態様によれば、連続波光学場から一連の光パルスを生成する方法が提供され、この方法は、
連続波光学場を、第1の周波数源によって駆動される第1の音響光学変調器(AOM)に通過させるステップと、
第1の周波数源を1または複数のパルスを含む電気信号に変換する手段として、第1の可変利得増幅器を使用するステップとを含む。
【0144】
好ましくは、第1の可変利得増幅器は、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定するための手段として使用される。
【0145】
任意選択的には、上記方法は、第1のデジタルスイッチを使用して、パルスのオン/オフ消光を増加させるための手段を提供するステップをさらに含む。それは、1または複数のパルスのタイミングおよび/または幅をさらに決定するための手段を提供することもできる。
【0146】
任意選択的には、この方法は、生成された一連の光パルスを、第2の音響光学変調器に通すステップをさらに含み、第2の音響光学変調器が、第1の音響光学変調器と直列に配置され、第2の周波数源によって駆動される。好ましくは、第2の可変利得増幅器は、1または複数のパルスのパワーレベルを設定するための手段として使用される。また、第2の可変利得増幅器は、第2の周波数源を1または複数のパルスを含む第2の電気信号に変換する手段を提供することもできる。好ましくは、第2の可変利得増幅器は、1または複数のパルスのタイミング、形状および/または幅を決定するための手段として使用される。
【0147】
任意選択的には、上記方法は、生成された一連の光パルスを、第3の音響光学変調器に通すステップをさらに含み、第3の音響光学変調が、第1の音響光学変調器と直列に、かつ第2の音響光学変調器と並列に配置され、第3の周波数源によって駆動される。
【0148】
任意選択的には、上記方法は、生成された一連の光パルスを、第4の音響光学変調器に通すステップをさらに含み、第4の音響光学変調器が、第1の音響光学変調器と直列に、かつ第2および第3の音響光学変調器と並列に配置され、第4の周波数源によって駆動される。
【0149】
本発明の第9の態様の実施形態は、本発明の第1~第8の態様の好ましいまたは任意の特徴を実行するための特徴を含むことができ、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
以下に、ほんの一例として、図面を参照して本発明の様々な実施形態を説明する。
図1図1は、誘導ラマン遷移の概略図を示している。
図2図2は、本発明の一実施形態に係るレーザシステムの概略図を示している。
図3図3は、ルビジウム-87(87Rb)D2ライン上の誘導ラマン遷移の概略図を示している。
図4図4は、図2のレーザシステムが、図3に示すルビジウム-87(87Rb)D2ライン上の誘導ラマン遷移を制御するように構成されている場合の、レーザ周波数およびオフセットの概略図を示している。
図5図5は、図2のレーザシステムの位相ロックフィードバックループの電気回路を示している。
図6図6は、図2のレーザシステムの第2のTi:サファイアレーザからの出力場の周波数の関数として、位相ロックフィードバックループによって生成されたエラー信号を示すグラフを示している。
図7図7は、図2のレーザシステムの第2のTi:サファイアレーザの1または複数の周波数同調要素に印加される電圧の関数として、位相ロックフィードバックループの光検出器と増幅器によって生成される、(a)出力パワー信号および(b)出力信号の導関数を示すグラフを示している。
図8図8は、図2のレーザシステムの第2のTi:サファイアレーザの1または複数の周波数同調要素に印加されるフィードバック電圧の関数として、位相ロックフィードバックループの位相周波数検出器(PFD)によって生成された出力信号を示すグラフを示している。
図9図9は、図2のレーザシステムの音響光学変調器システムの代替的な実施形態を示している。
図10図10は、(a)図2のレーザシステムの音響光学変調器システムの代替的な実施形態と、(b)図10(a)のシステムの音響光学変調器に提供されるスイッチおよび可変利得増幅器信号の概略図を示している。
図11図11は、レーザシステムの代替的な実施形態とともに使用される位相ノイズモニタの概略図を示している。
【0151】
以下の説明において、明細書および図面を通して、同様の部品には同じ符号が付されている。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の実施形態の細部と特徴をよりよく示すために、特定の部品の大きさが誇張されている。
【発明を実施するための形態】
【0152】
以下、図2を参照して、本発明の一実施形態に係るレーザシステム1について説明する。以下の説明の理解を容易にするために、図2には軸が含まれている。
【0153】
レーザシステム1は、第1のTi:サファイアレーザ2および第2のTi:サファイアレーザ3を含むことがわかる。Ti:サファイアレーザ2、3はともに、専用の連続波ダイオード励起の固体(DPSS)レーザ源4、5によって532nmで光学的に励起され、第1の連続波出力場6および第2の連続波出力場7を生成し、それらがx軸に平行に伝播し、y軸に平行な直線偏光を示す。本出願人所有のSolsTiS(登録商標)レーザは、そのようなTi:サファイアレーザ2、3の適当な例であるが、励起レーザ4、5は、市販のダイオード励起の固体(DPSS)レーザで構成することができる。
【0154】
第1の励起光源4は、最大15ワットの励起電力を第1のTi:サファイアレーザ2に提供することができ、第2の励起光源5は、最大10ワットの励起電力を第2のTi:サファイアレーザ3に提供することができる。以下の説明のために、第1の励起光源4は、約8.5ワットの励起電力を第1のTi:サファイアレーザ2に提供し、それにより780nmで約1ワットの電力を有する調整可能な第1の出力場6(670nm~1050nmで調整可能)を提供するように構成されている。同様に、第2の励起光源5は、約4.5ワットの励起電力を第2のTi:サファイアレーザ3に提供し、それにより780nmで約0.5ワットの電力を持つ調整可能な第2の出力場7(670nm~1050nmで調整可能)を提供するように構成されている。
【0155】
第1の波長計8および第2の波長計9には、第1の出力場6および第2の出力場7の波長または周波数を正確に測定する手段を提供するために、第1の出力場6および第2の出力場7内にそれぞれ配置された第1のビームスプリッタ12および第2のビームスプリッタ13によって生成されるピックオフ場10、11が組み込まれている。
【0156】
当業者であれば分かるように、レーザシステム1の効率は時間とともに変化する場合があり、よって、上述した励起電力がTi:サファイアレーザ2、3から正確に所望の出力パワーを生成することを保証することはできない。このため、正確な出力パワー設定での動作を改善するために、第3のビームスプリッタ15と第1の光検出器16を含む第1のパワーフィードバックループ14を、第1の出力場6と第1の励起光源4との間に配置すると有用である。同様の理由で、第4のビームスプリッタ18と第2の光検出器19を含む第2のパワーフィードバックループ17を、第2の出力場7と第2の励起光源5との間に配置することが好ましい。こうして、第1の出力場6および第2の出力場7のパワーは、それぞれ第3のピックオフ場20および第4のピックオフ場21を介してモニタリングすることができ、必要に応じて自動的に調整することができる。これは、第1の励起レーザ4または第2の励起レーザ5のパワーを変更するか、または第1のTi:サファイアレーザ2または第2のTi:サファイアレーザ3への第1の励起レーザ4または第2の励起レーザ5のアライメントをそれぞれ調整することによって実現することができる。
【0157】
第1のビームステアリングミラー22は、第1の出力場6の方向を変え、それにより第1の出力場が第1の半波長板24を介して第1の偏光ビーム分割板23にy軸に沿って伝播する。第1の半波長板24の機能は、第1の偏光ビーム分割板23に到達したときにz軸に平行な直線偏光を示すように、第1の出力場6の偏光を回転させることである。
【0158】
第1の偏光ビーム分割板23は、直交的に、直線的に、偏光された第1の出力場6と第2の出力場7を結合させて、レーザシステム1でさらに処理するための第1の結合連続波場25および第2の結合連続波場26を生成する手段を提供する。
【0159】
第1の結合連続波場25は、y軸に平行に伝播するように導かれる。図2に示すように、第1の結合連続波場25は、後で詳述するように第2のTi:サファイアレーザ3の位相ロックフィードバックループ30の一部を形成する光ビート検出器29に入射する前に、第2の半波長板27と第2の偏光ビーム分割板28を通って伝播するように配置されている。第2の半波長板27の機能は、第2の偏光ビーム分割板28を透過する第1の結合連続波場25の2つの成分のパワーを等しくすることである。その後、第2の偏光ビーム分割板28は、2つの偏光のそれぞれの一部を、水平な透過偏光成分および垂直な反射偏光成分に投影する。その後、水平な透過偏光成分は光ビート検出器29に入射し、垂直な反射偏光成分は、ビームダンプ(図示省略)によって単に吸収される。
【0160】
対照的に、第2の結合連続波場26は、x軸と平行に伝播するように導かれ、直交的に、直線的に偏光された成分を含む。図2に示すように、第2の結合連続波場26は、音響光学変調器(AOM)システム31に入射する。AOMシステム31は、第1の音響光学変調器(AOM)32を含み、この第1の音響光学変調器の入力駆動信号33が、AOM電気回路34によって生成されることが分かる。後述するように、音響光学変調器システム31は、第2の結合連続波場26をレーザシステム1のパルス出力場35に変換するための手段を提供する。
【0161】
本明細書に記載のレーザシステム1内では、第1のTi:サファイアレーザ2がマスタレーザ(ML)として機能するように選択され、第2のTi:サファイアレーザ3がスレーブレーザ(SL)として機能するように構成されている。この構成を達成するための装置および方法論を以下に詳細に説明する。
【0162】
マスタレーザの動作周波数の設定およびロック
第1のTi:サファイアレーザ2の周波数ロックフィードバックループ36は、第1の出力場6内に配置された第5のビームスプリッタ37を含むことが分かる。第5のビームスプリッタ37は、第1の出力場6から、y軸に沿って伝播するように向けられた第5のピックオフ場38を生成するための手段を提供する。第5のピックオフ場38は、ルビジウム蒸気・飽和吸収分光モジュール40(本出願人所有のSolsTiS(登録商標)Vapour Cell Lock Optionが、そのようなモジュールの適当な例である)に入射する前に、電気光学変調器39を通って伝播する。ルビジウム蒸気・飽和吸収分光法モジュール40によって生成された電気出力信号41は、フィードバックループ電気回路43によって、第1のTi:サファイアレーザ2の共振器の一部を形成する圧電マウントミラー42に接続されている。
【0163】
ルビジウム-87(87Rb)は、ルビジウムの2つの天然に存在する同位体の1つで、もう1つがルビジウム-85(85Rb)である。その特有の特性とエネルギー準位構造により、ルビジウムは量子および原子光学実験の理想的な原子になっている。87Rbは、最外殻5Sに1つの電子を持つアルカリ原子である。5P励起状態への遷移は、2つのDライン成分:D1ライン(51/2→51/2)およびD2ライン(51/2→53/2)に分割される。これらの2つの成分のうち、後者は、87Rbの冷却とトラッピングにその循環遷移を利用できるという事実により、実験原子物理学で使用するのに好ましい成分である。
【0164】
図3は、87Rb D2ラインの概略図を示し、このD2ラインにより誘導ラマン遷移をもたらすために本レーザシステム1が用いられている。一方、図4は、レーザ周波数の概略図と、レーザシステム1の様々な構成要素によって生成されたオフセットを示している。図4の参照文字を使用して、関連する周波数値を以下の表1に示す。
【0165】
図3に示すように、51/2状態のF=1およびF=2の超微細状態は6,834.683MHzだけ分離しており、53/2状態のF=0、1、2、3の超微細状態は、それぞれ72MHz、157MHz、267MHzだけ分離している。51/2(F=2)の超微細状態と53/2(F=3)の超微細状態との間の周波数分離は、384,228,115MHz、または波長で約780nmである。
【0166】
第1のTi:サファイアレーザ2は、次の方法で、87Rb D2ラインの51/2の超微細状態(F=2)と53/2の超微細状態(F=2~3)との間のクロスオーバー遷移に周波数ロックされる。第1の例では、第1の出力場6が、384,227,115MHzの周波数を有するように構成される。これは、第1の出力場6が87Rb D2ラインの51/2(F=2)から53/2(F=3)への遷移からΔ=1,000MHzだけ離調され、それにより、第1のTi:サファイアレーザ2がpopulationを53/2状態の利用可能な超微細状態(F=1、2または3)にするのを回避できることを意味している。
【0167】
その後、電気光学変調器39は、867MHzの変調周波数で駆動され、対応する周波数変調を第1の出力場6に導入する。当業者であれば分かるように、電気光学変調器39は、第1の出力場6の中心動作周波数384,227,115MHzに対して±867MHzで周波数側波帯を効率的に導入する。さらに、この変調レベルは、変調された第1の出力場6の最高周波数成分が87Rb D2ラインの51/2(F=2)超微細状態と53/2(F=2~3)超微細状態との間のクロスオーバーポイントに対応する周波数を持つように設定されている。その後、ルビジウム蒸気・飽和吸収分光法モジュール40を、フィードバックループ電気回路43と組み合わせて使用して、第1のTi:サファイアレーザ2の共振器の一部を形成する圧電マウントミラー42への電気フィードバック信号を生成し、第1の出力場6の動作周波数を384,227,115MHzに維持する。このようにして、第1の出力場6は、87Rb D2ラインの原子遷移と共鳴することなく、この原子遷移が基準とされるため、populationが上位の状態になるのを回避できる。
【0168】
当業者であれば分かるように、第1のTi:サファイアレーザ2は、代替的には、電気光学変調器39が駆動される変調周波数を適切な変調周波数に調整して、第1の出力場6に所望の周波数変調を導入することにより、51/2(F=2)超微細状態と53/2(F=1、2または3)超微細状態との間のクロスオーバー遷移の何れかに対応する周波数または実際には遷移自体の周波数にロックされる。代替的には、または組み合わせて、第1の出力場6の動作周波数も変化させることができる。
【0169】
動作周波数を原子遷移にロックする上記方法は、Ti:サファイアレーザ2光源の使用またはルビジウムの使用に限定されるものではない。例えば、カルシウム、セシウムまたはカリウムを、代替的な原子蒸気として使用することができる。
【0170】
上述したレーザシステム1は、第1のTi:サファイアレーザ2の動作周波数を自動的に設定およびロックするように構成することができる。これは、周波数ロックフィードバックループ36に組み込まれたグラフィックユーザーインターフェイス(GUI)によって実現される。GUIから、第1のTi:サファイアレーザ2の共振器電圧の反復スキャンが開始され、第1の出力場6の周波数または共振器スキャンの中心値が調整されて、Ti:サファイアレーザ2をオフセットロックする第1の出力の原子遷移に対応するスペクトル領域をカバーするように、スキャンが調整される。上記実施形態では、第1の出力場6の変調された成分の周波数側波帯は、所望のルビジウム原子遷移と共鳴しているか、または共鳴しているに近い。その後、GUIは、原子蒸気セル40の透過率を共振器電圧の関数として表示する。所望の原子遷移の領域では、ルビジウム原子遷移の様々な成分に対応する多数のピークが明らかになる。必要なピークにロックするには、第1のTi:サファイアレーザ2をオフセットロックするピークに、GUIのカーソルを配置する。そのポイントでマウスをクリックすると、周波数ロックフィードバックループ36の制御ソフトウェアが、第1のTi:サファイアレーザ2を所望のピークに自動的にオフセットロックする。すなわち、ソフトウェアが、原子遷移の成分のピークに対応する電圧に共振器を調整し、フィードバックループまたはロックが係合される。
【0171】
さらに、当業者であれば分かるように、第1のTi:サファイアレーザ2を原子遷移にロックする代わりに、第1のTi:サファイアレーザ2を当技術分野で知られている別の基準にロックすることもできる。これは、基準キャビティであってもよく、その場合、第1のTi:サファイアレーザ2は、キャビティの共振にロックされる。
【0172】
スレーブレーザ(SL)をマスタレーザ(ML)に位相ロック
以下、図2および図5を参照して、第2のTi:サファイアレーザ3を第1のTi:サファイアレーザ2に位相ロックするための位相ロックフィードバックループ30を構成する構成要素の更なる詳細を説明する。具体的に、図5は、図2のレーザシステムの位相ロックフィードバックループ30の電気回路を示している。
【0173】
位相同期プロセスの第1の段階は、例えば384,233,950MHzの周波数で第2の出力場7を生成するように第2のTi:サファイアレーザ3を構成することである。この実施形態において、これは、87RbのD2ラインの51/2(F=1)超微細状態~53/2(F=2)超微細状態からΔ733MHzだけ離調する第2の出力場7を与える一方で、第2の出力場7が、87Rbの51/2状態のF=1の超微細状態とF=2の超微細状態との間の周波数分離に対応する、第1のTi:サファイアレーザ2によって生成される第1の出力場6よりも大きい6,835MHzの周波数を有することを意味する。その結果、第2のTi:サファイアレーザ3は、populationを53/2状態の利用可能な遷移超微細状態(F=0、1または2)とするのを防ぐ。
【0174】
当業者であれば分かるように、上記構成により、第1の結合連続波場25が、第1の出力場6と第2の出力場7との間の周波数差、すなわち6,835MHzで光ビート信号44を生成する。位相ロックフィードバックループ30は、この光ビート信号44をモニタリングすることによって動作する。これは、第3の光検出器45と第1の増幅器46を含む光ビート検出器29を使用して、光ビート信号44を電気ビート信号47に変換することによって実現される。
【0175】
第1の結合連続波場25は、第2の偏光ビーム分割板28を介した伝播に続いて単一モードファイバを介して伝播するように配置され得る。これにより、第1の結合連続波場25の成分が空間的に完全に重なり、パワーの慎重なバランスにより、光ビート信号44内の最大コントラスト、すなわち100%に近い振幅変調も保証される。その後、第1の結合連続波場25は、電子機器、具体的には第1の光ビート検出器29の近位にあるリモートファイバ結合検出器に送信される。この構成により、高周波(マイクロ波)電気ビート信号47の経路長が最小限に保たれ、不要な損失や、漂遊の空中無線/マイクロ波信号をピックアップする機会(「ピックアップ」)が回避される。反対に、光透過の経路長はペナルティを伴うことなく、長くなる可能性があるが、損失は非常に小さく、ピックアップに相当するものは存在しない。
【0176】
電気ビート信号47は、第1の入力信号48を位相ロックフィードバックループ電気回路49に提供するために使用される。任意選択的には、電気ビート信号47は、位相ロックフィードバックループ電気回路49に到達する前に、アナログ位相シフタ50を通過する。アナログ位相シフタ50の機能の詳細は、後述する「位相シフト制御」のセクションに記載されている。さらに、電気ビート信号47は、位相ロックフィードバックループ電気回路49に到達する前にスケーリングすることもできる。この実施形態では、電気ビート信号47が、第1の電気ディバイダ51を通過し、この第1の電気ディバイダが、電気ビート信号47の周波数を分ける(例えば、半分にする)手段を提供する。すなわち、位相ロックフィードバックループ電気回路49への第1の入力信号48が、約3,417MHzの周波数を有する。
【0177】
2つの基準信号52、53は、好ましくは、位相ロックフィードバックループ電気回路49内で生成される。
【0178】
第1の基準信号52は、好ましくは、第2の出力場7と第1の出力場6との間のスケーリングされたオフセット周波数に第2の基準信号53の周波数を加算または減算した周波数である、すなわち約3,400MHzが、第1の局部発振器54によって生成される。第1の局部発振器54は、100MHzで動作する恒温槽付水晶発振器(OCXO)55を備え、このOCXO55が、当該OCXOの出力を34倍にするように構成された周波数シンセサイザ56に接続されている。この構成により、第1の基準信号52が3,400MHzの動作周波数で非常に低いノイズを示すものとなる。当業者であれば分かるように、周波数シンセサイザ56を使用して、OCXO55の100MHz出力信号を異なる量だけスケーリングすることができ、それにより、位相ロックフィードバックループ30を高度に調整可能にすることができる。さらに、第2の電気ディバイダ57を第1の局部発振器54内に組み込んで、この構成要素に第1の基準信号52の動作周波数に関する高い柔軟性を与えることもできる。
【0179】
代替的な実施形態では、第1の外部入力信号58を第1の基準信号52として使用することができる。
【0180】
代替的な実施形態では、周波数シンセサイザ56への基準入力として、OXCO55の代わりに、100MHzでの第2の外部入力信号59を使用することができる。
【0181】
第2の基準信号53は、好ましくは、第1の基準信号52よりも数桁低い周波数、すなわち、10~150MHzの周波数で、第2の局部発振器60によって生成される。第2の局部発振器60は、第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)を含み、よって、生成された第2の基準信号53が、動作周波数、すなわち10~150MHzで非常にアジャイルなものとなる。第2の基準信号53のノイズは付加的であるが、第1の基準信号52よりも桁違いに小さいため、追加するノイズは周波数シンセサイザ56の出力のノイズに比べて小さくなる。特定のアーキテクチャ(低周波数でアジャイルな第2の基準信号53と組み合わされた高周波数で低ノイズの第1の基準信号52)は、ノイズ性能を損なうことなくシステム1にアジリティをもたらす。
【0182】
その後、第1の入力信号48と第1の基準信号52は、位相ロックフィードバックループ電気回路49にある第1の周波数ミキサ61に供給される。第1の周波数ミキサ61は、第1の入力信号48と第1の基準信号52をミックスダウンして二次ビート信号62を提供するために用いられる。
【0183】
その後、二次ビート信号62は、低域通過周波数フィルタ64を介して、位相ロックフィードバックループ電気回路49にある第2の周波数ミキサ63に供給される。第2の基準信号53も、第2の周波数ミキサ63に供給される。第2の周波数ミキサ63は、二次ビート信号62と第2の基準信号53とをミックスダウンして出力エラー信号65を提供するために使用される。
【0184】
その後、エラー増幅器67を介して第2のTi:サファイアレーザ3へのフィードバック信号66を制御するために、出力エラー信号65が用いられる。実際には、第2の出力場7の周波数が384,233,950MHzの望ましい動作周波数からドリフトする場合、図6に示すように、出力エラー信号65が0ボルトの位置から逸脱する。出力エラー信号65を使用して、第2のTi:サファイアレーザ3の1または複数の同調要素、すなわちレーザキャビティミラーの1つが取り付けられる低速圧電結晶68および高速圧電結晶69、およびキャビティ内電気光学変調器70に対してフィードバック信号66を制御することにより、出力エラー信号65を最小化して、第2の出力場7を第1の出力場6と6.834GHzの周波数差で正確に位相ロックすることができる。この第1の出力場に対する第2の出力場7の位相ロックは、第1の出力場6の動作周波数がドリフトしても、すなわち第1の出力場6の周波数ロックが外れても、そのまま存続する。
【0185】
第2のTi:サファイアレーザ3を特定のオフセット周波数、例えば6,834.683MHzに調整するには、粗い周波数調整が、第1の基準信号52を設定することで処理され、微調整が、例えば第1のDDS60により、第2の基準信号53の周波数を設定することで処理される。第1のDDS60は、正確に100MHzで動作するのではなく、10MHz~150MHzの任意の周波数で動作するように設定することができる。このため、例えば、周波数6,834.683MHzを達成するには、以下の周波数が適用される。
第1の入力信号(ビート)47: 6,834.683MHz
第1の電気ディバイダ:51 2
第1の基準信号52: 3,400MHz
第2の電気ディバイダ57: 1
第2の基準信号53: 17.3415MHz
【0186】
上記周波数ロックフィードバックループ36は、特定の動作周波数において、第1の出力場6と第2の出力場7との間に相対的な位相ノイズ(典型的には<15mrad)を導入することが見出されている。エラー増幅器67における高レベルの低周波利得の状態は、これを大幅に抑制する。
【0187】
オフセット周波数が6.834GHzに設定された場合、25msの平均化時間で、レーザシステム1のパルス出力場35bにおける位相ノイズのアラン偏差は15mrad未満であることが分かる。
【0188】
レーザシステム1は、当技術分野で知られているシステムと比較して、位相ロックレーザ源2、3の相対ノイズレベルを大幅に改善する。本出願人は、通常達成される位相ノイズレベルが25msで、<15mradであることを見出している。しかしながら、この値は、レーザシステム1の終局限界ではないと考えられる。15mradは、第1の局部発振器54、特に、第1の基準信号52を合成する元のOCXO55のノイズフロアに正確に対応することが知られている。第1の局部発振器54内で異なるマイクロ波シンセサイザ(Spectra Dynamics RB1など)、または内部シンセサイザの供給源として最高水準の100MHz基準を使用することにより、測定値は1mradレベルの相対位相ノイズを達成可能であることを示唆している。これは、OCXO55を除くシステム固有のノイズフロアを反映している。そのようなパフォーマンスは、例示的なRF電子設計である、機能/回路図設計、ボードレイアウト、コンポーネントの選択によるものである。それらは、最高水準の基準供給源との組み合わせにより、サブmradレベルのパフォーマンスを実現できる。
【0189】
自動位相ロック
以下に、第2のTi:サファイアレーザ3を第1のTi:サファイアレーザ2に自動位相ロックする方法を説明する。
1)第2のTi:サファイアレーザ3は、当初は第1のTi:サファイアレーザ2にロックされていない状態にある。これは、第2のTi:サファイアレーザ3の1または複数の同調要素68、69および/または70へのフィードバック信号66をオフにすることで実現される。
2)次に、第1の出力場6および第2の出力場7を、例えば384,227,115MHzなどの同じ周波数を有するように設定する。波長計8、9を使用して、それらの周波数の設定を支援することができる。代替的には、複数の入力を有する単一の波長計を使用するようにしてもよい。レーザシステム1内のデジタル制御ソフトウェアを使用して、それらの指定された目標波長で第1の出力場6および第2の出力場7を自動的に調整およびロックすることができる。
3)次に、第2の出力場7を周波数走査し、一方、第1の光ビート検出器29の増幅器46によって生成された出力パワー信号71(すなわち、電気ビート信号47)を、第2のTi:サファイアレーザ3の周波数同調要素68に印加される電圧の関数としてモニタリングする。図7は、第2のTi:サファイアレーザ3の同調要素68に印加される共振器電圧の関数として、(a)出力パワー信号71、および(b)出力パワー信号71の導関数のグラフを示している。
4)次の段階では、(a)出力パワー信号71の値がゼロ、「ゼロパワー電圧」に低下する(図7(a)を参照)か、または(b)出力パワー信号71の微分の係数が最大値、「最大係数パワー電圧」を有する(図7(b)を参照)ときの共振器電圧を求める。これらの共振器電圧値は、第2のTi:サファイアレーザ3の周波数が第1のTi:サファイアレーザ2の周波数にあるか、またはそれに近い周波数にある位置に対応する。
6)次に、第2のTi:サファイアレーザ3に供給される共振器電圧を、(a)ゼロパワー電圧、または(b)最大係数パワー電圧に設定する。これは、第2のTi:サファイアレーザ3の動作周波数の開始点になる。
7)次に、第1の出力場6と第2の出力場7との間の予め設定されたオフセット、例えば、+6,835MHzを選択する。
8)次に、第2のTi:サファイアレーザ3の同調要素69、70に低利得フィードバック信号66を印加する。これは、エラー増幅器67を低利得値で動作するように設定することによって達成される。低利得値の目的は、ロック捕捉を可能にすることである。
9)次に、第2のTi:サファイアレーザ3に供給されるフィードバック信号66の共振器電圧に反復制御法を適用して、第1の出力場6と第2の出力場7との間の周波数オフセットが予め設定されたオフセット値に対応するときの推定値に向かって共振器電圧を収束させる。
10)共振器電圧の収束が所望の許容レベル内になったら、共振器電圧をこの推定値に設定し、第2のTi:サファイアレーザ3の1または複数の同調要素68および/または69および/または70に高利得フィードバック信号66を印加する。これは、エラー増幅器67を高利得値で動作するように設定することによって達成される。高利得設定は、ノイズを低減するために必要とされる。
【0190】
このようにして、自動位相ロックは、エラー増幅器の低利得設定から高利得設定への適時の段階的な遷移によって実現される。本出願人は、これがロック捕捉と低ノイズの両方を可能にするため、レーザシステム1の自動化プロセスの重要な側面であることを見出した。実際には、レーザシステム1は、これらの2つの利得設定の間で適時の段階的な遷移を実行するように構成されている。低利得設定から高利得設定に切り替える最初のコマンドに続いて、制御回路の要素(追加の抵抗器、コンデンサ、利得、増幅器)が時間に沿ったシーケンスでオンになり、パラメータ値が、予め設定されたレートで、予め設定された時間遅延に従って、初期値から最終値まで増加し得る。そのシーケンスはGUIを介して設定される。設定が完了すると、プロセスは完全に自動化され、すなわち、コマンドに従って低利得から高利得に切り替える処理が行われる。コマンドは、GUIから、またはイーサネット(TCP/IP)命令を介して送信することができる。
【0191】
実際には、高利得設定は、3つの増幅器が直列に配置された3段増幅器によって提供される。これには、低周波数で三重積分利得を持つように構成できる、すなわち、各増幅器が積分器として構成されるという利点がある。利得が-18dB/オクターブ(-60dB/ディケード)上昇すると、低周波数で非常に高いレベルのループ内利得が発生する。これは、第1のTi:サファイアレーザ2および第2のTi:サファイアレーザ3が殆どのノイズを示す低フーリエ周波数での相対位相ノイズの成分を除去するのに有利である。
【0192】
第1の実施形態では、共振器電圧に適用される反復制御法は、位相ロックフィードバックループ電気回路49内にある位相周波数検出器(PFD)72を使用することができる。この実施形態では、位相周波数検出器72への入力信号が、(第1の周波数ミキサ61によって生成された)二次ビート信号62と、(第2の局部発振器60、すなわち第1のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)によって生成された)第2の基準信号53とによって提供される。
【0193】
代替的な実施形態では、単一の周波数ミキサを使用することができる。この実施形態では、第1の局部発振器54によって提供される第1の基準信号52および第1の入力信号48は、位相周波数検出器72への入力信号になるように構成されている。
【0194】
その後、位相周波数検出器(PFD)72の出力信号73がモニタリングされる。図8は、スレーブの第2のTi:サファイアレーザ3の周波数を駆動するために使用される共振器電圧の関数としての出力信号73を示している。この出力信号73は、ヒステリシスの性質を持ち、第2の出力場7の周波数が、第1の出力場6から所定のオフセット値だけオフセットされたときに、バイナリの高信号と低信号の間で反転する。その後、収束法を出力信号73に適用して、バイナリの高信号と低信号の間の中点電圧を、第1の出力場6から第1の所定のオフセットにある第2の出力場7に対応する所望の許容レベル内に決定することができる。
【0195】
以下に詳述するように、出力信号73に適用される反復制御法が二分法を含むことができることを当業者であれば分かるであろう。
1)高/低ロックポイントの場合、第2のTi:サファイアレーザ3に印加される共振器電圧を、ゼロ出力電圧または最大係数パワー電圧から上下に調整する。
2)次に、PFDが状態を変化させるときの共振器電圧Vを記録する。
3)次に、共振器電圧を反転し、PFD状態が元の状態に戻るときの共振器電圧Vを記録する。
4)第2の出力場7の周波数が第1の所定のオフセット値だけ第1の出力場6からオフセットされるときの共振器電圧の推定値、すなわち、VとVの記録値の中間値、すなわち(V+V)/2(図8を参照)を求める。
5)次に、1)と同じ方向に調整するように、共振器電圧を反転させる。
6)PFDの状態が変化するときの共振器電圧Vを再び記録する。
7)共振器電圧の方向を再び反転し、PFD状態が元の状態に戻るときの共振器電圧Vを再び記録する。
8)第2の出力場7の周波数が第1の出力場6から第1の所定のオフセット値だけオフセットされるときの共振器電圧の第2の推定値は、VとVの最終値の中間値、(V+V)/2である。
9)その後、ステップ5~8を繰り返し、予め設定された回数、またはVとVの値が定数値に収束するまで、または導出値(V+V)/2が(許容範囲内の)定数値に収束するまで、前後にスキャンする。
【0196】
さらに、他の既知の収束法を、上記自動位相ロック方法論において代替的に使用することができるが理解されよう。
【0197】
代替的な、潜在的により正確な実施形態では、共振器電圧に適用される反復制御法は、RF周波数カウンタを用いたビート周波数の直接測定を含むことができる。そして、この測定した周波数を、第1の所定の周波数オフセット周波数と比較し、それらの値の差を最小限に抑えるように、共振器電圧を調整する。
【0198】
パルス出力の生成
上述したように、第2の結合連続波場26は、第1の出力場6および第2の出力場7の直交的に、直線的に偏光された成分を含み、x軸に沿って伝播して音響光学変調器システム31に入射するように構成されている。その概略図が図2に提供されている。
【0199】
図2に示す実施形態では、AOM電気回路34は、第1の可変利得増幅器(VGA)75によって第1のAOM32に電気的に接続された分散制御システム(DCS)74を備えることが分かる。第1のVGA75は、好ましくは、分散制御システム(DCS)74の統合された構成要素である。
【0200】
第1のVGA75からの電気出力76は、第1のデジタルスイッチ77によって制御される。分散制御システム(DCS)74は、第1のデジタルスイッチ77を開閉する制御信号79を提供するために使用される第1のデジタル出力供給源78をさらに備える。分散制御システム(DCS)74は、第1のAOM32の低周波供給源81を、例えば80MHzで生成するために用いられる第2のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)80をさらに備える。
【0201】
AOM電気回路34は、第1の可変利得増幅器(VGA)75および第1のデジタルスイッチ77の複合効果を使用することにより、第1のAOM32の入力駆動信号33を生成する。特に、第1の可変利得増幅器(VGA)75は、第2のDDS80からの80MHzの出力81を変換してパルス電気入力76を生成する手段を提供する。第1のデジタルスイッチ77の開閉は、パルスのオン/オフ消光を増加させる手段を提供する。また、それは、電気入力76内のパルスのタイミングと幅の制御を向上させる手段も提供する。第1のVGA75は、一連の電気パルス76の形状を決定する手段も提供する。第1のAOM32が入力駆動信号33を受信すると、それは、電気入力76の一連のパルスのプロファイルを結合連続波場26の第2の成分の両方の成分に付与して、所望のパルス出力場35を生成するように機能する。
【0202】
次に、代替的な音響光学変調器システム31bを図9を参照して説明する。図9の音響光学変調器システム31bは、図2の音響光学変調器システム31と共通のいくつかの構成要素を共有しており、同様の部品には同じ符号が付けられている。しかしながら、この実施形態では、音響光学変調器システム31bが、第2のAOM82と、AOM電気回路34bとを含み、AOM電気回路が、第2の可変利得増幅器(VGA)83によって第2のAOM82に電気的に接続される分散制御システム(DCS)74bを含むように構成され、第2のVGAからの電気出力84が第2のデジタルスイッチ85によって制御される。分散制御システム(DCS)74bは、第2のデジタルスイッチ85を開閉する制御信号87を提供するために使用される第2のデジタル出力源86も備える。本実施形態では、第2のAOM82の非常にアジャイルな低周波供給源89を、例えば80MHzで生成するために、第3のダイレクトデジタルシンセサイザ(DDS)88が使用されている。
【0203】
この実施形態では、第2の結合連続波場26の両方の成分に電気出力76、84のパルスプロファイルを付与して所望のパルス出力場35bを生成するのは、駆動される第1のAOM32および第2のAOM82の組み合わせ効果である。図4内で「A」および「X」と記された矢印で示すように、駆動された第1のAOM32と第2のAOM82はどちらも、第1の出力場6と第2出力場7の周波数に80MHzを寄与するように機能する。
【0204】
音響光学変調器システム31bには、図2の音響光学変調器システム31の設計と比較した場合に、生成されたパルス出力場35のプログラムされた光パルス間の暗時において、より高いレベルの消光を示すという利点がある。また、変調器システム31bは、音響光学変調器システム31と比較すると、動作のより大きな柔軟性を提供する。例えば、第1の駆動AOM32は、主にパルス整形をもたらすために使用され、第2の駆動AOM82は、生成されたパルス出力場35bの各パルスのパワーを決定するために使用される。
【0205】
当業者であれば分かるように、可変利得増幅器(VGA)75、83とそれらに関連するデジタルスイッチ77、85の組み合わされた効果により、音響光学変調器システム31、31bが、様々なパルス幅、間隔、形状、例えば方形パルス、ブラックマンパルスなどを有するパルス出力場35、35bを生成することが可能になる。選択した特定のパルス幅、間隔および形状は、レーザシステム1を展開するアプリケーションに応じて、ユーザが選択することができる。実際には、パルス間のタイミングジッタは1ns未満であるが、タイミング分解能は約50nsに減少している。
【0206】
パルス出力場35、35bは、第1の偏光ビーム分割板23で組み合わされた第1のレーザ出力場6および第2のレーザ出力場7から生成され、レーザシステム1の残りの部分を通して共通の経路を共有する。これにより、音響光学変調器システム31、31bおよび/または高出力光ファイバ97によってパルス出力場35、35b内に導入されるノイズが、パルス出力場35、35bの両方の成分に共通であるという利点が得られる。
【0207】
次に、図10を参照して、さらに別の音響光学変調器システム31cについて説明する。図10(a)の音響光学変調器システム31cは、図2の音響光学変調器システム31および図9の音響光学変調器システム31bと共通のいくつかの構成要素を共有する。このため、同様の部品には同じ符号が付けられている。しかしながら、理解を容易にするために、AOM電気回路34は、図10(a)内には提示されていない。本実施形態では、音響光学変調器システム31cが、第3のAOM90および第4のAOM91を備える。AOM32、82、90、91の各々に関連する可変利得増幅器およびデジタルスイッチの例示的な制御信号が、図10(b)に示されている。
【0208】
音響光学変調器システム31cは、生成されたパルス出力場35を3つの別個の出力35c、35d、35eに分割するための手段を提供する。3つの出力35c、35d、35eの各々は、AOM32、82、90、91のうちの2つの組合せによって制御される。パルスシーケンスの生成に使用される第1のAOM32は、すべての出力35c、35d、35eに共通である。特定の各出力パスのAOM82、90、91は、そのパスからの出力35c、35d、35eの属性を設定するために使用される。例えば、それは(可変利得増幅器を使用して)出力のパワーレベルを設定したり、(可変利得増幅器およびデジタルスイッチを使用して)出力をオンまたはオフにしたりするために使用することができる。結果として、3つの直交軸(X、Y、Z)に対応する3つの出力35c、35d、35eを、レーザシステム1から生成することができ、それにより、原子干渉法内で特定の用途が見出される。
【0209】
周波数チャープ制御
上記のコヒーレントに制御された量子実験のいくつかの中で、生成されたパルス出力場35、35bのパルスシーケンス中に任意の周波数掃引を実装できることが望ましい場合が多い。次に、この機能を提供するためにレーザシステム1をどのように使用できるかについて説明する。
【0210】
図2および図9に示すように、分散制御システム(DCS)74、74bは、位相ロックフィードバックループ電気回路49内にある第1のダイレクトデジタルシンセサイザ60にデジタル制御信号93を提供する第3のデジタル出力源92を備える。デジタル出力源92がアクティブになると、デジタル制御信号93は、第1のダイレクトデジタルシンセサイザ60をアクティブにして、その出力周波数を制御された方法で変更させる。すなわち、予め設定された周波数チャープを第2の基準信号53に与える。この第2の基準信号53に誘導された周波数チャープは、第2の周波数ミキサ63に入力される。位相ロックフィードバックループ30が出力エラー信号65を最小化するように構成されているため、フィードバック信号66が、第2のTi:サファイアレーザ3、すなわち第2のTi:サファイアレーザ3の1または複数の同調要素、すなわちレーザキャビティミラーの1つが取り付けられた低速圧電結晶68および高速圧電結晶69によって生成される第2の出力場7の周波数を変えることとなり、キャビティ内電気光学変調器70が、出力エラー信号65を最小化するように、フィードバック信号66に応答して調整される。これにより、周波数チャープが、第2の出力場7によって提供される第2の結合連続波場26の成分に与えられる。分散制御システム(DCS)74、74bを使用することにより、この周波数チャープのタイミングを正確に制御して、生成されたパルス出力場35、35bのパルスシーケンス全体にわたって予め設定された周波数チャープを導入することが可能になる。
【0211】
この制御された周波数チャープを導入する目的は、生成されたパルス出力場35、35bに、加速している原子と本システム内のレーザビームとの間のドップラーシフトを補償する手段を提供することである。
【0212】
位相シフト制御
上記のコヒーレントに制御された量子実験のいくつかの中で、生成されたパルス出力場35、35bのパルス間に任意の位相シフトを実行できることが望ましい場合が多い。次に、この機能を提供するためにレーザシステム1をどのように使用できるかについて説明する。
【0213】
図2および図9に示すように、分散制御システム(DCS)74、74bは、アナログ出力源94を備え、このアナログ出力源は、位相ロックフィードバックループ電気回路49内あるアナログ位相シフタ50に対して0~10ボルトの電圧を有するアナログ制御信号95を提供する。アナログ制御信号95の値が0ボルトを超えると、アナログ位相シフタ50が電気ビート信号47に予め設定された位相シフトを導入し、それが出力エラー信号65にオフセットを導入する。位相ロックフィードバックループ30は出力エラー信号65を最小限に抑えるように構成されているため、フィードバック信号66により、第2のTi:サファイアレーザ3、すなわち第2のTi:サファイアレーザ3の1または複数の同調要素、すなわちレーザキャビティミラーの1つが取り付けられた低速圧電結晶68および高速圧電結晶69によって生成される第2の出力場7の周波数が変化し、キャビティ内電気光学変調器70が、出力エラー信号65を最小化するように、フィードバック信号66に応答して調整される。これにより、第2の出力場7によって提供される第2の結合連続波場26の成分に位相シフトが与えられる。分散制御システム(DCS)74、74bを採用することにより、これらの位相シフトのタイミングを正確に制御して、生成されたパルス出力場35、35bの個々のパルス間に予め設定された相対位相シフトを導入することが可能になる。
【0214】
パワー出力モニタ
図2に示すように、レーザシステム1からのパルス出力場35は、高出力光ファイバ97内に結合される前に、パワー出力モニタ96を通過する。高出力光ファイバ97は、パルス出力場35をレーザシステム1からその必要な目的地に伝播する手段を提供する。
【0215】
パワー出力モニタ96は、第6のビームスプリッタ98、第4の光検出器99および第5の光検出器100を含むことがわかる。第6のビームスプリッタ98は、第6のピックオフ場101が第4の光検出器99に入射するように配置され、それにより、パルス出力場35が高出力光ファイバ97内に結合される前に、レーザシステム1のパワー出力をモニタリングする手段を提供する。
【0216】
第6のビームスプリッタ98は、パルス出力場35の一部が、高出力光ファイバ97を介して所望の目的地まで伝播し、反射して高出力光ファイバ97を通って戻ると、それを第5の光検出器100に入射させるように導くようにさらに構成されている。その結果、第5の光検出器100は、パルス出力場35が展開されることが意図されている目的地でのパワー出力をモニタリングするための手段を提供する。
【0217】
また、パワー出力モニタ96は、第7のビームスプリッタ102も含み、この第7のビームスプリッタは、高出力光ファイバ97のリモートエンドに展開される第6の光検出器104のための第7のピックオフ場103を生成するために使用される。このため、第6の光検出器は、パルス出力場35が展開されることが意図されている目的地でのパワー出力をモニタリングするための第2の手段を提供する。
【0218】
当業者であれば分かるように、レーザシステム1の効率は時間とともに変化する可能性があり、そのため、パルス出力場35のパワーが、オペレータによって行われる実験の期間中一定のままであることを保証することはできない。このため、正確な出力パワー設定での動作を改善するには、第4の光検出器99から音響光学変調器システム31に第3のパワーフィードバックループ105を確立することが有用である。同様に、第5の光検出器100から音響光学変調器システム31まで第4のパワーフィードバックループ106を確立し、第6の光検出器104から音響光学変調器システム31まで第5のパワーフィードバックループ107を確立することが好ましい。このように、パルス出力場35のパワーは、第4の光検出器99および/または第5の光検出器100および/または第6の光検出器104を介してモニタリングされ、その後、必要に応じてレーザシステム1に自動調整を提供することができる。これは、フィードバックループ105、106、107を使用して、DCS74のアナログ入力としてフィードバック信号を提供することによって達成することができ、DCS74は、アナログ入力をデジタル化するように機能する。その後、デジタル化された信号は、第1の音響光学変調器32および/または第2の音響光学変調器82を駆動するために使用される電気パルス信号76、84の振幅を変化させる手段を提供する。
【0219】
代替的には、フィードバックループ105、106を使用して、パルス出力場35と高出力光ファイバ97との間のアライメントを調整することができる。その結果、パワー出力モニタ96を使用して、
1.高出力光ファイバ97に入るパワー、
2.高出力光ファイバ97の後のパワー、
3.高出力光ファイバ97を2回通過した後の戻りビームのパワー、
4.高出力光ファイバ97の近位端に入る出力のアライメント、および
5.高出力光ファイバ97の遠位端に入る戻りビームのアライメント
を制御することができる。
【0220】
位相ノイズモニタ
次に、図5および図11を参照して、レーザシステム1bの代替的な実施形態で使用される位相ノイズモニタ108について説明する。理解を容易にするために、レーザシステム1bから次の構成要素が省略されている。
1)第1のTi:サファイアレーザ2のための周波数ロックフィードバックループ36
2)パルス出力場35を生成するために使用される音響光学変調器システム31
3)パワー出力モニタ96
【0221】
システムの柔軟性をさらに際立たせるために、カルシウム-43(43Ca)の4S1/2から4P1/2(397nm)への原子遷移、3.2GHzである4S1/2グランド状態の分離を使用して、レーザシステム1bを説明する。
【0222】
上記と同様の方法で、位相ロックフィードバックループ30を使用して、第2のTi:サファイアレーザ3を第1のTi:サファイアレーザ2に位相ロックする。これは、794nmで第1の出力場6を生成するように第1のTi:サファイアレーザ3を設定することで実現される。その後、794nmに1.6GHzの予め設定されたオフセットを加えた周波数で第2の出力場7を生成するように第2のTi:サファイアレーザ3が設定される。
【0223】
第8のビームスプリッタ109は、第2のビームステアリングミラー111および第9のビームスプリッタ112を介して第3の光検出器45に向けられる第8のピックオフ場110を生成するように、第1の出力場6内に配置されている。同様に、第10のビームスプリッタ113が第2の出力場7内に配置されて、ビームスプリッタ112により第3の光検出器45に導かれる第9のピックオフ場114を生成する。当業者であれば分かるように、上記構成は、第1の出力場6と第2の出力場7との間の周波数差、すなわち1.6GHzで光ビート信号44を生成する結合連続波場25をもたらす。位相ロックフィードバックループ30は、この光ビート信号44を再びモニタリングすることによって動作する。これは、第3の光検出器45および第1の増幅器46を含む光ビート検出器29を使用して、光ビート信号44を電気ビート信号47に変換することによって達成される。
【0224】
電気ビート信号47は、位相ロックフィードバックループ電気回路49に第1の入力信号48を提供するために再び使用される。位相ロックフィードバックループ電気回路49のために、第1の基準信号52および第2の基準信号53が再び生成される。
【0225】
本実施形態では、第1の基準信号52が、第2の出力場7と第1の出力場6との間のオフセット周波数、すなわち約1.6GHzに第2の基準信号53の周波数を加算または減算した周波数で、第1の局部発振器54により生成される。すなわち、恒温槽付水晶発振器(OCXO)55が100MHzで動作し、周波数シンセサイザ56が、OCXO55の出力を予め設定された係数、例えば、15または17で乗算するように構成される。この構成により、約1.5GHzまたは1.7GHzの周波数を有する非常に低いノイズの第1の基準信号52がもたらされる。
【0226】
第2の基準信号53は、第2の局部発振器(第1のDDS)60によって、第1の基準信号52よりも数桁低い周波数、すなわち10~150MHzの周波数で再び生成される。
【0227】
第1の入力信号48と第1の基準信号52は、位相ロックフィードバックループ電気回路49にある第1の周波数ミキサ61に供給される。第1の周波数ミキサ61は、第1の入力信号48および第1の基準信号52をミックスダウンして二次ビート信号62を提供するために再び用いられる。
【0228】
その後、二次ビート信号62は、低域通過周波数フィルタ64を介して、位相ロックフィードバックループ電気回路49にある第2の周波数ミキサ63に供給される。第2の基準信号53は、第2の周波数ミキサ63にも供給される。このため、周波数ミキサ63は、二次ビート信号62および第2の基準信号53をミックスダウンして出力エラー信号65を提供するために使用され、その後、出力エラー信号は、エラー増幅器67を介して第2のTi:サファイアレーザ3へのフィードバック信号66を制御するために使用され、その結果として、第2の出力場7が、第1の出力場6と正確に位相ロックされる。
【0229】
図11に破線で示すように、位相ノイズモニタ108は、Ti:サファイアレーザ2、3からいくらか離れて配置されるものであってもよい。位相ノイズモニタ108は、第2の光ビート検出器115を備えることが分かる。この第2の光ビート検出器は、第1の出力場6と第2の出力場7の第2の結合場117から第2の電気ビート信号116を生成するために用いられる。その後、第2の電気ビート信号116は、位相ロックフィードバックループ電気回路49に第2の入力信号118を提供するために使用される。
【0230】
第3の基準信号119は、好ましくは100MHzの周波数を有する第3の外部入力信号120によって生成されて、位相ロックフィードバックループ電気回路49の第2の周波数シンセサイザ121に接続されるようにしてもよく、第2の周波数シンセサイザは、第1の動作周波数からの第3の予め設定されたオフセット周波数と一致するように第3の外部入力信号120を乗算するように構成されるようにしてもよい。
【0231】
図5に示すように、第2の入力信号118と第3の基準信号119は、位相ロックフィードバックループ電気回路49にある第3の周波数ミキサ122に供給される。第3の周波数ミキサ122は、第3の外部信号118および第3の基準信号119をミックスダウンして第2の出力エラー信号123を生成するために用いられ、第2の出力エラー信号は、補助増幅器125を介して第1の局部発振器54への第2のフィードバック信号124を制御するために使用される。本実施形態では、制御フィードバック信号124は、OCXO55に提供される。代替的には、制御フィードバック信号124は、OCXO55または周波数シンセサイザ56の後に位置するアナログ位相シフタに提供することができる。
【0232】
本実施形態では、第2の結合場117が、符号6b、7bによって表される第1の出力場6および第2の出力場7の周波数二倍化要素から生成されることが分かる。周波数二倍化要素6b、7bは、標準的な周波数二倍化技術によって、すなわち第1の出力場6および第2の出力場7が周波数二倍化結晶126を通って伝播して397nmの波長を生成するように構成することによって、生成される。適切な周波数二倍化結晶126の例には、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、リン酸チタニルカリウム(KTP=KTiOPO)および三ホウ酸リチウム(LBO=LiB)が含まれる。当業者であれば分かるように、この実施形態では、第3の基準信号119を、第1の主力場6および第2の出力場7間の予め設定されたオフセットの2倍の周波数、例えば3.2GHzで生成する必要がある。
【0233】
当業者であれば分かるように、周波数二倍化結晶126を使用しない別の実施形態、例えば、ルビジウム-87(87Rb)D2ライン(51/2→53/2)で動作するように構成された上記レーザシステム1では、第3の基準信号119を、第1の出力場6および第2の出力場7間の予め設定されたオフセット、例えば6,835MHzに実質的に等しい周波数で生成する必要がある。
【0234】
位相ノイズモニタ108によって調整される制御フィードバック信号124は、実験動作中に第1の出力場6または6aと第2の出力場7または7bとの間に導入される相対位相シフトをモニタリングおよび補償する手段を効果的に提供する。この機能は、第1の出力場6または6bおよび第2の出力場7または7bが共通の経路を共有しない場合に有利である。位相ノイズモニタ108は、第2の電気ビート信号116によるリモート検出点までの非共通経路内に導入される低周波位相ノイズを効果的に除去する。当業者であれば分かるように、この検出点は、相対位相ノイズが影響する相互作用領域に可能な限り近くに、またはそれを超えて位置するものあってもよい。
【0235】
注目すべき点は、制御フィードバック信号124が、レーザシステム1bに導入される低周波位相ノイズを補償するために使用されているため、補助増幅器125の利得帯域幅は、位相ロックフィードバックループ30内で使用されるエラー増幅器67の利得帯域幅よりも大幅に低くなり(約5kHz)、すなわち、エラー増幅器67の>500kHzと比較して、補助増幅器125の約5kHzの利得帯域幅となる。
【0236】
上述したレーザシステムは、当技術分野で知られているシステムよりも優れた多くの利点を提供する。このシステムは、固体レーザをベースにしているため、ダイオードレーザをベースにしたものよりも高い周波数構成可能性と本質的に低い周波数ノイズレベルを示す。また、固体レーザは、ダイオードレーザよりも非常に高い出力パワーで動作し、そのため、ノイズを誘発したり、ビームプロファイルを歪ませたり、2つの位相ロックダイオードレーザ間に不要な位相シフトを誘発したりすることが知られている光増幅器を使用する必要がない。
【0237】
上記レーザシステムは、第1および第2の光学場の動作周波数の間のユーザ定義の予め設定されたオフセット周波数(通常は数GHzのオーダーである)で位相ロックすることができる。これは、予め設定されたオフセット周波数の周囲で低ノイズと高いアジリティの両方を発揮しながら、高い正確性で達成される。
【0238】
パルス発生器を含むことにより、レーザシステムから一連の光パルスを発生させる手段が提供され、その数、持続時間および形状はすべて、ユーザが選択することができる。さらに、パルス発生器は、複数のパルス出力がレーザシステムによって生成される手段を提供する。
【0239】
さらに、位相ロックフィードバックループ内に第2の基準信号生成器が存在することで、レーザシステムの出力場内に含まれる一連のパルス全体に予め設定された周波数チャープを導入できるようにする新規な手段が提供される。
【0240】
さらに、位相ロックフィードバックループ内にアナログ出力源を組み込むことにより、レーザシステムの出力場の個々のパルスに予め設定された位相シフトを導入できるようにする新規な手段が提供される。
【0241】
位相ノイズモニタを含むことにより、非共通経路に沿って伝播する光学場に起因して位相ロックされた出力場に導入される低周波相対位相ノイズを効果的に補償する手段が提供される。
【0242】
レーザシステムは高度に自動化することができる。例えば、位相ロックフィードバックループ電気回路は、第1および第2の波長計とともに使用されて、第1の出力場および第2の出力場の周波数を自動的に調整およびロックすることができる。同様に、第1の出力場に対する第2の出力場の周波数の位相ロックは、位相ロックフィードバックループ電気回路の使用によって完全に自動化することができる。
【0243】
エラー増幅器の自動制御により、高利得設定に切り替えてノイズを低減する前に、低利得値を設定してロック捕捉を可能にすることができる。
【0244】
位相ロックフィードバックループ電気回路および/または分散制御システム(DCS)の採用により、レーザシステム内の位相ロックおよび/またはパルス生成を制御するための手段が提供される。パルスシーケンスと位相ロックパラメータの設定は、リモートイーサネット(TCP/IP)コマンドを使用して実行することができる。これは、シーケンスを初期化する前に行うことも、シーケンスの途中で「オンザフライ」で行うこともできる。シーケンスの開始は、DCS(デジタルトリガー)へのデジタル入力によってトリガーすることもでき、これにより、レーザシステムを、それが展開されているアプリケーションの制御システムと同期させることが可能になる。
【0245】
分散制御システム(DCS)は、レーザシステムからのパルス出力の高速制御も可能にする。これにより、ユーザは、レーザシステムを展開するアプリケーションに応じて、パルスパワー、幅、間隔および形状を容易に設定することができる。分散制御システム(DCS)は、生成されたパルス出力場のパルスシーケンス全体に導入されるタイミング位相シフトおよび周波数チャーピングの自動で正確な制御も可能にする。
【0246】
上記特徴はすべて、開示のレーザシステムを、例えば原子干渉法、ジャイロスコープ、精密重力計および重力勾配計などのコヒーレント制御二状態量子システム内での使用に理想的に適合させる。レーザシステムは、量子情報処理、特にトラップされたイオンの超微細準位に基づく量子ビットまたはキュービットの生成と制御に理想的なレーザ源も提供する。
【0247】
2つの位相ロックされた固体レーザ源を含むレーザシステムが記載されている。レーザシステムは、レーザの動作周波数間の予め設定されたオフセットで位相ロックすることができる。これは、予め設定されたオフセット周波数の周囲で低ノイズと高いアジリティの両方を発揮しながら、高精度で達成される。パルス発生器を使用して、レーザシステムから一連の光パルスを生成することができ、その数、持続時間および形状は、すべてユーザが選択することができる。位相ロックフィードバックループは、生成された一連のパルス全体に予め設定された周波数チャープと位相シフトを導入する手段を提供する。レーザシステムは高度に自動化することができる。上記特徴は、レーザシステムを、例えば原子干渉法、ジャイロスコープ、精密重力計および重力勾配計などのコヒーレント制御二状態量子システム、および量子情報処理、特に量子ビットの生成と制御における使用に理想的に適合させる。
【0248】
明細書全体を通して、文脈が他を要求しなければ、「備える」若しくは「含む」という用語、または「備え」若しくは「備えている」、「含み」若しくは「含んでいる」のような活用形は、記載した数または数の群を包含するが、他の数または数の群の除外を意味するものではないと理解されるべきである。
【0249】
さらに、本明細書における任意の先行技術への言及は、先行技術が一般的な一般知識の一部を形成することを示すものとして解釈されるべきではない。
【0250】
本発明の上記詳細な説明は、例示および説明の目的のために示され、排他的なものではなく、または本発明を開示された正確な形態に限定することを意図していない。記載された実施形態は、本発明の原理およびこれらの実際の適用を最良に説明するために選択されて説明され、これらによって他の当業者が、考えられる特定の使用に適した様々な変更を伴う本発明の様々な実施形態を最適に利用することが可能になる。したがって、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、さらなる変更または改良が包含される。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11