(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】肺組織への標的化薬物及び遺伝子送達のためのシンシチンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/64 20170101AFI20230111BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230111BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230111BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230111BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61K47/64
A61K48/00
A61K9/72
A61P11/00
A61P9/12
(21)【出願番号】P 2020521924
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2018078809
(87)【国際公開番号】W WO2019077150
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-08-16
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】503119487
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・デヴリ・ヴァル・デソンヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ・ガリー
(72)【発明者】
【氏名】ユナ・コキャン
(72)【発明者】
【氏名】マクシム・フェラン
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-510412(JP,A)
【文献】特表2010-535495(JP,A)
【文献】国際公開第2004/087748(WO,A1)
【文献】特開2013-055941(JP,A)
【文献】Journal of Virology,2001年,Vol.75, No.7,p.3488-3489
【文献】Journal of Virology,2005年,Vol.79, No.24,pp.15573-15577
【文献】The Journal of Immunology,2007年,Vol.179,p.1210-1224
【文献】Journal of Virology,2017年07月05日,Vol.91, No.18, e00832-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61K 45/00-45/08
A61K 48/00
A61P 11/00
C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-14/825
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンシチンタンパク質で偽型化されたレンチウイルスベクター粒子にパッケージングされた、少なくとも1つの治療のための目的とする遺伝子を含む、肺疾患の予防及び/又は治療において使用するための
、肺組織を標的とする医薬組成物。
【請求項2】
シンシチンタンパク質が、ヒト又はマウスシンシチンで
ある、請求項1に記載
の医薬組成物。
【請求項3】
シンシチンが、ヒトシンシチン1、ヒトシンシチン2、マウスシンシチンA及びマウスシンシチンBからなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
治療のための目的とする遺伝子が、治療的遺伝子
;治療的抗体又は抗体断片及びゲノム編集酵素等の治療的タンパク質又はペプチド
をコードする遺伝子;並びに干渉RNA、ゲノム編集のためのガイドRNA及びエクソンスキップすることができるアンチセンスRNA等の治療的RNAをコードする遺伝
子からなる群から選択される、請求項1から
3のいずれか一項に記載
の医薬組成物。
【請求項5】
肺疾患が、肺に影響を与える遺伝性疾患;肺に影響を与える感染症;肺の炎症性疾患又は自己免疫疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、肺浮腫、肺気腫又は肺高血圧、急性呼吸促迫症候群、塵肺症、間質性肺疾患又はびまん性実質性肺疾患、肺移植拒絶反応の予防並びに新生児及び未熟児における肺の障害又は疾患の予防からなる群から選択される、請求項1から
4のいずれか一項に記載
の医薬組成物。
【請求項6】
肺疾患の遺伝子療法に使用するための、請求項1から
5のいずれか一項に記載
の医薬組成物。
【請求項7】
目的とする遺伝子が、SERPINA3、SERPINA1、MMP、特にMMP1、MMP2及びMMP9、CFTR、SFTPB、SFTPC、ABCA3、CSF2RA、TERT、TERC、SFTPA2、SLC34A2、DKC1、TERC、TERT、TINF2、NF1、TSC1、FLCN、STAT3、HPS1、GBA、SMPD1、SLC7A7、SMAD9、KCNK3並びにCAV1遺伝
子からなる群から選択される、請求項
1から6のいずれか一項に記載
の医薬組成物。
【請求項8】
注射、吸入又は気管支肺胞洗浄による投与のための、請求項1から
7のいずれか一項に記載
の医薬組成物。
【請求項9】
目的とする遺伝子が、干渉RNA、ゲノム編集のためのガイドRNA及びエクソンスキップすることができるアンチセンスRNA等の治療的RNAをコードし、前記治療的RNAが、SERPINA3、SERPINA1、MMP、特にMMP1、MMP2及びMMP9、CFTR、SFTPB、SFTPC、ABCA3、CSF2RA、TERT、TERC、SFTPA2、SLC34A2、DKC1、TERC、TERT、TINF2、NF1、TSC1、FLCN、STAT3、HPS1、GBA、SMPD1、SLC7A7、SMAD9、KCNK3
並びにCAV1
遺伝子からなる群から選択される遺伝子を標的とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載
の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺組織を標的とする医薬組成物、並びに肺疾患の予防及び/又は治療におけるその使用に関する。より詳細には、本発明は、肺への遺伝子送達を含む標的化薬物送達のためのシンシチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
標的療法は、とりわけ嚢胞性線維症等の肺疾患の治療に有望である。しかし、遺伝子送達を含む標的化薬物送達の臨床的関連性は、薬物又は薬物担体を特異的に標的化して、薬物由来の全身性毒作用を最小限にし、特に肝毒性を最小限にする能力にある。
【0003】
プラスミド、アデノウイルスベース、アデノウイルス随伴ウイルスベース、及びレトロウイルスベースのベクターが、標的療法での使用のために開発されているが、これらは遺伝子導入の効率の悪さ、ウイルスベクターに対する宿主免疫応答、又は形質導入のための細胞の増殖要件によって限られている。
【0004】
天然に存在するウイルスの指向性は、細胞に結合し、これらの細胞に侵入してこれらを感染させる特異的能力を与える1つ又はいくつかの分子決定因子に起因する。ウイルス指向性の分子決定因子は、遺伝子送達の新たなツールを作り出すのに利用することができる。レトロウイルス等のエンベロープウイルスの場合、これは偽型化と呼ばれ、一般的にはレトロウイルス又はレンチウイルス(典型的にはHIV-1ベースの)ベクターを用いて、内在性タンパク質をそれらの脂質エンベロープに固定して使用される。偽型化は、一般に、細胞の受容体に結合し、ベクター膜を標的細胞膜と融合して侵入を可能にすることができる。
【0005】
サイズ約120nmのエンベロープRNA粒子であるレンチウイルスベクター(LV)は、効率のいい薬物送達ツールであり、より具体的には遺伝子送達ツールである。LVは、LVの偽型を与えるそのエンベロープタンパク質を通じて標的細胞に結合し、侵入する。LVは細胞に侵入すると、カプシド成分を放出し、レンチウイルスRNAの逆転写を受けた後、プロウイルスDNAを標的細胞のゲノムに組み込む。非組込みレンチウイルスベクターがベクター組込み機構の特性を修飾することによって生成されており、一過性の遺伝子発現に使用することができる。プロウイルスを欠くウイルス様粒子も生成されており、タンパク質又はメッセンジャーRNAを送達するのに使用することができる。LVは、例えば、遺伝子付加、RNA干渉、エクソンスキッピング又は遺伝子編集に使用することができる。これらのアプローチの全ては、LVのその偽型を介した組織又は細胞標的化によって促進することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Cireら Plos One 9、e101644頁、2014
【文献】Dupressoirら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2005、102、725~730頁
【文献】Lavialleら、Phil. Trans. R. Soc. B.、2013、368:20120507頁
【文献】Cornelisら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2013、110、E828~E837頁
【文献】Muratoriら、Methods Mol. Biol.、2010、614、111~24頁
【文献】Burneyら、Curr. HIV Res.、2006、4、475~484頁
【文献】Kaczmarczykら、Proc. Natl. Aca. Sci;U.S.A.、2011、108、16998~17003頁
【文献】Aokiら、Gene Therapy、2011、18、936~941頁
【文献】Nichols JE、Niles JA、Cortiella J. Design and development of tissue engineered lung: Progress and challenges. Organogenesis. 2009、5、57~61頁
【文献】Cuiら J. Clin. Invest. 2015年11月2日;125(11):4255~68頁
【文献】Human gene therapy、2011、22、343~356頁
【文献】Bacquinら、J. Virol.、2017、doi: 10.1128/JVI.00832~17
【文献】Seifart C、Plagens A. Genetics of chronic obstructive pulmonary disease. International Journal of Chronic Obstructive pulmonary Disease. 2007;2(4):541~550頁
【文献】Poulain FR、Clements JA. Pulmonary surfactant therapy. Western Journal of Medicine. 1995;162、43~50頁
【文献】Devine MS、Garcia CK. Genetic Interstitial Lung Disease. Clinics in Chest Medicine. 2012 ;33(1):95~110頁
【文献】Steele MP、Brown KK. Genetic Predisposition to Respiratory Diseases: Infiltrative Lung Diseases. Respiration; international review of thoracic diseases. 2007;74(6):601~608頁
【文献】Selman Mら Surfactant protein A and B genetic variants predispose to idiopathic pulmonary fibrosis. Hum Genet. 2003;113:542~550頁
【文献】Nogee LMら Allelic heterogeneity in hereditary surfactant protein B (SP-B) deficiency. Am J Respir Crit Care Med. 2000;161:973~981頁
【文献】Fakihら、Respirology、2017 Sep 28.doi/ 10.1111/resp.13193
【文献】Mertenら、Human gene therapy、2011、22、343~356頁
【文献】Farsonら、Hum Gene Tuer. 2001、20、981~97頁
【文献】Charrierら、Gene therapy、2011、18、479~487頁
【文献】Dupressoirら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2005、102、725~730頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的な偽型化タンパク質は、幅広い指向性、粒子安定性及び高い力価を与えることが知られている水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質(VSVg)である。しかし、インビボでのVSVgは補体を結合し、インビボで使用されると肝臓への導入遺伝子送達を標的とし、免疫原性である(Cireら Plos One、9、e101644頁、2014)。したがって、新たな偽型化がインビボでの遺伝子送達に必要とされる。
【0009】
故に、肺組織を標的とし及び肝毒性を持たない(すなわち、肝臓を標的としない)、肺疾患の予防及び/又は治療において使用するための少なくとも薬物を含む組成物を提供する必要がある。
【0010】
特に、肺組織への薬物、とりわけ遺伝子の送達を改善するために、安定なウイルス又はウイルスベクターを提供することは非常に関係があろう。そのようなウイルス又はウイルスベクターは、十分に忍容性であり、肺組織に特異的であり、全身性投与に適切でなければならないであろう。
【0011】
シンシチンは、膜融合特性を有する内在性レトロウイルス(ERVシンシチン)エンベロープ糖タンパク質である(Dupressoirら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2005、102、725~730頁;Lavialleら、Phil. Trans. R. Soc. B.、2013、368:20120507頁)。ERVW-1遺伝子によってコードされるヒト内在性レトロウイルスエンベロープ糖タンパク質(ENSG00000242950;シンシチン1又はHERV-Wとしても知られる)は、特許出願EP2385058にその膜融合特性が記載されている。前記出願は、シンシチウムの形成による癌治療でのその使用を記載する。マウスシンシチンは、マウスシンシチンA(すなわち:ハツカネズミ(mus musculus)シンシチンA、synA)及びマウスシンシチンB(すなわち:ハツカネズミシンシチンB、synB)を包含する。
【0012】
しかし、シンシチンAの候補受容体Ly6eは、マウス成体組織でかなり普遍的に発現されることが示されている(Bacquinら、J. Virol. Doi:10.1128/JVI.00832~17頁、オンライン公開のみ、2017年7月5日)。より詳細には、マウス肝臓におけるLy6eの転写レベルは、成体肺で達する最大レベルの60%超であることが見出された。更に、脳、甲状腺、及び唾液腺等のいくつかの器官は、肺で観察される最大レベルの少なくとも50%を発現する。これらの結果に基づけば、Ly6e受容体を標的とする系を使用する遺伝子送達はかなり普遍性であり、特に多くの他の器官とほとんど同じ程度に肺及び肝臓を効率よく標的とすることが予測されるであろう。特異度のこの欠如は、肝臓標的化が回避されるべき臨床的状況において潜在的問題となる可能性がある。
【0013】
更に、シンシチンは、おそらくはウイルス粒子への不適切な組込みのために機能的偽型を生成しないことが報告された(Bacquinら、J. Virol. Doi:10.1128/JVI.00832~17頁、オンライン公開のみ、2017年7月5日)。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、及び先行技術から予想されることに反して、本発明者らは、LVを偽型化するのにシンシチンが使用され得ること、そのため、肝毒性のリスクなく肺組織への標的化遺伝子送達に使用され得ることを見出した。実際、マウスシンシチンA糖タンパク質は、ルシフェラーゼLucIIをコードするHIV-1由来レンチウイルスベクターを偽型化するのに使用された。偽型化LVはマウスに静脈内注射され、高いレベルまでの導入遺伝子発現が、肝臓ではほとんど発現することなく肺実質細胞で長期にわたって、少なくとも3週間再現性よく得られた。LV-SynAベクターの単回静脈内注射の3週間後のマウスの肺における導入遺伝子カセットの検出は、安定な組込み遺伝子導入が特に肺胞細胞で達成され得ることを示唆した。マウスへのLV-SynAベクターの静脈内投与は、VSVgで偽型化されたLVと比べてより少ない及び極めて低い抗導入遺伝子免疫応答をもたらす。マウスシンシチンAに加えて、ヒトシンシチン2は、レンチウイルスベクターを偽型化してヒト初代肺上皮細胞を含むヒト肺細胞を効率よく形質導入するのに使用することができる。マウスシンシチンAの受容体として報告されているmLy6eの細胞株発現により、SynAで偽型化されたLVによって細胞を形質導入する能力を予測させることはできない。更に、ヒトLy6e受容体発現mRNAレベルとLV-SynAによる形質導入の間に相関関係はない。
【0015】
これらの結果は、治療的遺伝子又は治療薬をコードする遺伝子を含む治療薬の肺への標的化送達のために、シンシチンが確実に使用され得るという概念実証を提供するものである。シンシチン、特にシンシチンで偽型化されたLVは、全身投与後に導入遺伝子を含む薬物を肺胞細胞に送達するのに使用することができる。これは、気道を塞ぐ粘液が、遺伝子送達ベクターを含む薬物の肺上皮細胞、特に肺胞細胞へのアクセスを妨げる、例えば嚢胞性線維症等の肺の疾患の治療に新たな道を開くものである。
【0016】
故に本発明は、肺疾患の予防及び/又は治療において使用するための、シンシチンタンパク質に結合した少なくとも薬物を含む、肺組織を標的とする医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】SynA-LV Luc2送達後の生物発光分析を示す図である。 シンシチンA(SyA)又はVSVgで偽型化されたベクター対対照PBSを比較する、LucII発現ベクターを注射したマウスの生物発光。1群あたり2匹の代表的マウス。マウス1及び2にPBSを注射し、マウス10及び11にLV-SyA-LucIIを注射し、並びにマウス12及び15にLV-VSVg-LucIIを注射した。IV注射後16日時点で、IVIS Lumina器具を用いて生物発光分析を行った。全身発光を光子/秒で測定する。生物発光を、動物の輪郭マスクを使用してマウスの正面及び背面で測定する。- PBS群:背面からのマウス1のシグナル(S1)は3.531.10
5光子/秒、及び正面からは1.446.10
4光子/秒である。マウス2(S2)に関して、背面からのシグナルは3.351.10
5光子/秒、及び正面からは1.163.10
4光子/秒である。- LV-SyA-LucII群:マウス10(S10)に関して、背面からのシグナルは3.952.10
7光子/秒、及び正面からは1.019.10
7光子/秒である。マウス11(S11)に関して、背面からのシグナルは4.344.10
7光子/秒、及び正面からは3.573.10
7光子/秒である。- LV-VSVg-LucII群:マウス12(S12)に関して、背面からのシグナルは3.052.10
8光子/秒、及び正面からは6.636.10
8光子/秒である。マウス15(S15)に関して、背面からのシグナルは5.478.10
8光子/秒、及び正面からは8,311.10
8光子/秒である。
【
図2】シンシチンA-LV LucII全身送達後の肺における生物発光シグナルの定量化を示す図である。 LucII導入遺伝子をコードするLV-シンシチンA又はLV-VSVg(LV-SynA(n=20)又はLV-VSVg(n=4))を、アルビノC57Bl/6マウスに5×10
5ig(感染性ゲノム)/マウスの用量で静脈内注射した。PBSは対照として注射する(n=11)。生物発光シグナルを、注射後7、14及び21日時点(背面照射時)で個々のマウスの肺で経時的に測定する(光子/秒)。各ドットはマウスを表す。
【
図3】シンシチンA媒介遺伝子送達後の遺伝子導入の体内分布を示す図である。 LucII導入遺伝子をコードするLV-シンシチンA(LV-SA-LucII; n=6)を、アルビノC57Bl/6マウスに静脈内注射した(3×10
5ng p24/マウス)。対照として、PBS(n=3)だけでなく、同じ導入遺伝子をコードするLV-VSVgを使用した(LV-VSVg-LucII; n=4)。2倍体細胞あたりのベクターコピー数(VCN)を、3週目のマウスの屠殺時点で回収された異なる器官でのqPCRによって測定した。灰色のゾーンは該手法の定量化の限界を示した。
【
図4】単回投与のLV-SynAベクターを注射したマウスの肺における組み込まれたプロウイルスのPSI配列周囲のPCRを示す図である。 LucII導入遺伝子をコードするLV-シンシチンA又はLV-VSVg(LV-SynA(n=6)又はLV-VSVg(n=4))を、アルビノC57Bl/6マウスに5×10
5ig(感染性ゲノム)/マウスの用量で静脈内注射した。PBSは対照として注射する(n=2)。ゲノムDNAを注射後3週間で全肺細胞から抽出する。これらのgDNAについてPCRを行い、組み込まれたプロウイルスのPSI配列を増幅し、PSIの予測断片を489bpとする。
【
図5A】シンシチンA媒介遺伝子送達後の肺におけるルシフェラーゼの代表的免疫組織染色を示す図である。 LucII導入遺伝子をコードするLV-シンシチンA(LV-SA-LucII; n=6)を、アルビノC57Bl/6マウスに静脈内注射した(3×10
5ng p24/マウス)。対照としてPBS(n=3)を使用した。凍結肺の切片(そのような方法でテストした3マウスの代表)を抗ルシフェラーゼ抗体で染色し、AlexaFluor 594と結合した二次抗体で明らかにした。核をDAPIによって対比染色した。切片を共焦点顕微鏡Leica SP8で可視化した。
図5Aの上のパネルはPBS処置対照動物からの肺切片に対応し、下のパネルはLV-SYnA-Luc2処置マウスからの肺切片に対応する。
図5Aの左のパネルはルシフェラーゼ免疫染色を示し、右のパネルはDAPI染色による同じ切片を示す。これは、切片上の全ての細胞核を示している。
【
図5BC】シンシチンA媒介遺伝子送達後の肺におけるルシフェラーゼの代表的免疫組織染色を示す図である。 LucII導入遺伝子をコードするLV-シンシチンA(LV-SA-LucII)を、アルビノC57Bl/6マウスに静脈内注射した(5×10
5IG/マウス)。注射3週間後、マウスを屠殺し、肺を固定し、パラフィン包埋し、免疫染色のために切片を作成した。(B)及び(C)の画像は、そのような方法でテストした8マウスの代表である。肺切片をDAPIで染色して(B)、肺胞の存在を定義する全ての細胞核を検出し;並びに抗ルシフェラーゼ抗体による染色は、AlexaFluor 594と結合した二次抗体で明らかにして、ルシフェラーゼ発現細胞、及び特に肺胞を覆う上皮細胞を検出した(C)。対照は、同じ条件でPBSを注射したマウスを含んだ(n=11マウス)。PBS注射マウスにおける肺の免疫染色はDAPI+細胞を示し、ルシフェラーゼは不検出であった(データ不図示)。
【
図6A】Elispot抗IFNg及びCBAを使用して測定された、LV-VSVgと比べてLV-SynAを使用した全身送達後の導入遺伝子に対する免疫応答の低下を示す図である。 6週齢C57BL/6マウスに、PBS、7.5.10
5ig(感染性ゲノム)/マウスのLV-SynA_GFP-HY又はLV-VSVg_GFP-HYベクターを尾静脈に静脈内注射(IV)した。(A)21日後、脾臓細胞を回収して、ペプチドインビトロ刺激後にDby特異的CD4+ T細胞及びUty特異的CD8+ T細胞応答をγIFN-ELISPOTによって測定した。データは、1群あたり3マウスを含む1実験を表す。
【
図6B】(B)T細胞によって分泌されるサイトカインの滴定に関する。免疫3週間後、全脾臓細胞をDby、Utyペプチド、又は陽性対照としてのコンカナバリンA(conA)によってインビトロで再刺激した。培養の36時間後、上清を除去し、示されたサイトカインについて滴定した(3マウス/群/実験)。各点は、1マウスあたり少なくとも2つの測定値で個々の測定値を表す。
【
図7】LV-SynAによるヒト肺MRC5及びWI26VA4細胞形質導入(n=2実験)を示す図である。 細胞あたりのベクターコピー数を、シンシチンAで偽型化されたLVの漸増濃度(10
5、5×10
5感染性ゲノム(ig)/mL)による2つの細胞株の形質導入後にqPCRによって決定した。陽性対照として、VSVgで偽型化されたLV 10
6感染単位/mLで細胞を形質導入した。陰性対照は非形質導入細胞からなった。2つの実験の結果。
【
図8】形質導入後7日のLV-シンシチン(A、B、1又は2)によるヒト肺MRC5細胞形質導入(n=3実験)を示す図である。 Vectofusin-1(登録商標)(12μg/mL)の存在下、濃度10
5IG/mLのシンシチン(1、2、A又はB)で偽型化されたLVによるMRC5細胞の形質導入後、細胞あたりのベクターコピー数を、形質導入後7日時点でqPCRによって決定した。陽性対照として、VSVgで偽型化されたLV 10
6IG/mLで細胞を形質導入した。陰性対照は非形質導入細胞からなった。LV-SynB、LV-Syn1及びLV-Syn2に関する2つの実験、又はLV-SynA及びLV-VSVgに関する3つの実験の結果。
【
図9】形質導入後7日のLV-シンシチン(A、1又は2)によるヒト小気道上皮細胞形質導入(n=5実験)を示す図である。 Vectofusin-1(登録商標)(12μg/mL)の存在下、濃度10
5ig/mLのシンシチンで偽型化されたLV(A、1又は2)によるヒト小気道上皮細胞(初代小気道上皮細胞;正常、ヒト(ATCC(登録商標)PCS301010(商標)))の形質導入後、細胞あたりのベクターコピー数を、形質導入後7日時点でqPCRによって決定した。陽性対照として、VSVgで偽型化されたLV 10
6IG/mLで細胞を形質導入し、これらの細胞を形質導入する能力(細胞あたり0.75ベクターコピーが見出された)、及びこれらの細胞で導入遺伝子を検出する能力を確認した(データ不図示)。陰性対照は非形質導入細胞(ベクターなし)からなった。結果は、LV-SynA に関する5つの実験、及びLV-Syn1、LV-Syn2(及びLV-VSVg)に関する3つの実験の平均である。
【
図10】異なる細胞株でのmLy6e mRNAの発現のレベルと形質導入のレベルとの比較(A)異なる細胞株(A20IIA、C2C12、NIH/3T3)からmRNAを抽出し、cDNAに変換してmLy6eでPOをハウスキーピング遺伝子として使用してqRT-PCRを行った。相対的レベルを、式存在量=2
-ΔCtを用いて計算した。C57BL/6マウスの肺、脾臓又は骨髄からの総細胞をテストしてqRT-PCRを検証し、Bacquinら、2017によって発表されているように、mLy6e発現レベルは肺細胞で最も高いことを確認した(データ不図示)。(B)
図10(A)と同じ細胞株に、10
5IG/mLの用量でΔNGFRをコードするLV-シンシチンAベクターを形質導入した。形質導入のレベルを、形質導入後7日時点でフローサイトメトリーによって分析した。
【
図11】異なる細胞株でのhLy6e mRNAの発現のレベルと形質導入のレベルとの比較を示す図である。(A)異なる細胞株(HEK293T、HCT116、HT1080、WI26VA4、Jurkat、RAJI及びMRC5)からmRNAを抽出し、cDNAに変換してPOをハウスキーピング遺伝子として使用してhLy6eについてqRT-PCRを行なった。相対的レベルを、式存在量=2
-ΔCtを用いて計算した。棒グラフに示された数字はmRNA発現の実測値である。(B)
図10(A)と同じ細胞株を、10
5IG/mLの用量でΔNGFRをコードするLV-シンシチンAベクターで形質導入した。形質導入のレベルを、形質導入後7日時点でフローサイトメトリーによって分析した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によるシンシチン(ERVシンシチンとも名付けられた)は、内在性レトロウイルス(ERV)のファミリーに属する、有胎盤哺乳類由来の高度に膜融合性のエンベロープ糖タンパク質を指す。これらのタンパク質は、胎盤において優先的発現を示し、培養細胞に導入されるとシンシチウム形成を誘導する遺伝子によってコードされる(Lavialleら、Phil. Trans. R. Soc. B.、2013、368:20120507頁)。
【0019】
本発明によるシンシチンは、ヒトシンシチン(例えば、HERV-W及びHERV-FRD)、マウスシンシチン(例えば、シンシチンA及びシンシチンB)、シンシチンOry1、シンシチンCar1、シンシチンRum1又はそれらの機能的オルソログ(Dupressoirら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2005、102、725~730頁;Lavialleら、Phil. Trans. R. Soc. B.、2013、368:20120507)、及び少なくとも受容体結合ドメイン(シンシチン1の残基117~144に対応する)を含むそれらの機能的断片から選択することができる。
【0020】
機能的オルソログとは、オルソログ遺伝子によってコードされ、及び膜融合特性を示すオルソログタンパク質が意図される。膜融合特性は、Dupressoirら(PNAS 2005)に記載されている融合アッセイで評価され得る。簡単には、例えば、細胞は、リポフェクタミン(Invitrogen)及び5×105細胞に対して約1~2μgのDNA、又はリン酸カルシウム沈殿(Invitrogen、5×105細胞に対して5~20μgのDNA)を使用してトランスフェクトされる。プレートは一般的に、トランスフェクション24~48時間後に細胞融合について調べられる。シンシチウムは、メイグリュンワルドギムザ染色(Sigma)を使用して可視化することができ、融合指数は、[(N-S)/T]×100(ここで、Nはシンシチウムの核の数であり、Sはシンシチウムの数であり、及びTはカウントされた核の合計数である)として計算することができる。
【0021】
ヒトシンシチンは、HERV-W及びHERV-FRDを包含する。これらのタンパク質の機能的オルソログはヒト科で見出され得る。HERV-Wは、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)のファミリーに属する高度に膜融合性の膜糖タンパク質を指す。HERV-Wは、エンベロープ糖タンパク質であり、シンシチン1とも呼ばれる。HERV-Wは、転写物ERVW-1-001、ENST00000493463に対応するEnsemblデータベースに示された配列を有する。対応するcDNAは、配列番号1にリストされた配列を有する。HERV-FRDもまた、ヒト内在性レトロウイルス(HERV)のファミリーに属する高度に膜融合性の膜糖タンパク質を指す。HERV-FRDは、シンシチン2とも呼ばれるエンベロープ糖タンパク質である。HERV-FRDは、転写物ERVFRD-1、ENSG00000244476に対応する、Ensemblデータベースに示された配列を有する。対応するcDNAは、配列番号2にリストされた配列を有する。
【0022】
マウスシンシチンは、マウスシンシチンA(すなわち、ハツカネズミシンシチンA、synA)及びマウスシンシチンB(すなわち、ハツカネズミシンシチンB、synB)を包含する。これらのタンパク質の機能的オルソログは、ネズミ科ファミリーに見出すことができる。マウスシンシチンAは、シンシチンA遺伝子によってコードされる。シンシチンAは、Ensemblデータベースに示された配列Syna ENSMUSG00000085957を有する。対応するcDNAは、配列番号3にリストされた配列を有する。マウスシンシチンBは、シンシチンB遺伝子によってコードされる。シンシチンBは、Ensemblデータベースに示された配列Synb ENSMUSG00000047977を有する。対応するcDNAは、配列番号4にリストされた配列を有する。
【0023】
シンシチンOry1は、シンシチンOry1遺伝子によってコードされる。シンシチンOry1の機能的オルソログは、ウサギ科ファミリー(典型的にはウサギ及びノウサギ)に見出すことができる。
【0024】
シンシチンCar1は、シンシチンCar1遺伝子によってコードされる。シンシチンCar1の機能的オルソログは、ローラシア獣上目からの肉食哺乳類に見出すことができる(Cornelisら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2013、110、E828~E837頁;Lavialleら、Phil. Trans. R. Soc. B.、2013、368:20120507頁)。
【0025】
シンシチンRum1は、シンシチンRum1遺伝子によってコードされる。シンシチンRum-1の機能的オルソログは、反芻哺乳類に見出すことができる。
【0026】
本発明の様々な実施形態において、本発明によるシンシチンは、典型的には、HERV-W(シンシチン1)、HERV-FRD(シンシチン2)、シンシチンA、シンシチンB、シンシチンOry1、シンシチンCar1及びシンシチンRum1並びにそれらの機能的オルソログからなる群から選択されてもよく、好ましくはシンシチンは、HERV-W、HERV-FRD、マウスシンシチンA、マウスシンシチンB及びそれらの機能的オルソログからなる群から選択され、より好ましくはシンシチンは、HERV-W、HERV-FRD、マウスシンシチンA及びマウスシンシチンBからなる群から選択される。
【0027】
本発明の様々な実施形態において、治療薬は、当技術分野で公知である標準的な結合方法を使用した共有又は非共有結合(coupling)又は結合(bonding)を介して、直接又は間接的にシンシチンタンパク質に結合される。
【0028】
いくつかの実施形態において、薬物はシンシチンタンパク質に共有結合される。例えば、薬物は、シンシチンにコンジュゲートされてもよい。シンシチンへの薬物の共有結合は、反応基をシンシチンタンパク質に組み込み、次いで該基を使用して薬物を共有結合することによって達成されてもよい。或いは、シンシチン及び薬物アミノ酸配列が直接又はペプチドスペーサー若しくはリンカーを介して連結される融合タンパク質を形成するように、タンパク質である薬物がシンシチンに融合されてもよい。
【0029】
いくつかの他の実施形態において、薬物及びシンシチンタンパク質は、ミセル、リポソーム、エクソソーム、デンドリマー、微粒子、ナノ粒子、ウイルス粒子、ウイルス様粒子等を限定せずに含む、例えばポリマーベース又は粒子ベースの送達ビヒクル等の薬物送達ビヒクルに組み込まれる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルスベクター」は、遺伝子材料を細胞に送達するために操作された非複製、非病原性ウイルスを指す。ウイルスベクターでは、複製及び病原性に不可欠なウイルス遺伝子が、目的とする異種遺伝子で置き換えられている。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「組換えウイルス」は、組換えDNA技術によって作製されたウイルス、特にウイルスベクターを指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルス粒子(virus particle)」又は「ウイルス粒子(viral particle)」は、カプシドと呼ばれるタンパク質の外被、及び場合によっては宿主細胞膜の部分に由来し、ウイルス糖タンパク質を含むエンベロープで囲まれたDNA又はRNAのどちらかから作られた遺伝子材料から成る、非病原性ウイルス、特にウイルスベクターの細胞外形態を意味することが意図される。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルス様粒子」又は「VLP」は、インタクトな感染性ウイルス粒子とサイズ及び立体配座が類似した自己集合性、非複製、非病原性、ゲノムレス粒子を指す。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、薬物及びシンシチンタンパク質は、例えばリポソーム、エクソソーム、微粒子、ナノ粒子、ウイルス粒子及びウイルス様粒子等の粒子に組み込まれる。粒子は、有利には、リポソーム、エクソソーム、ウイルス粒子及びウイルス様粒子からなる群から選択される。ウイルス粒子及びウイルス様粒子には、ウイルスカプシド及びエンベロープウイルス又はウイルス様粒子が挙げられる。エンベロープウイルス又はウイルス様粒子には、偽型化ウイルス又はウイルス様粒子が挙げられる。ウイルス又はウイルス様粒子は、好ましくはレトロウイルス、より好ましくはレンチウイルス由来である。ウイルス粒子は、有利には、ウイルスベクター、好ましくはレンチウイルスベクター由来である。
【0035】
レトロウイルスには、特にガンマレトロウイルス、スプーマウイルス、及びレンチウイルスが挙げられる。レンチウイルスには、特にHIV 1型(HIV1)及びHIV 2型(HIV2)等のヒト免疫不全ウイルス、並びにウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)が挙げられる。
【0036】
レンチウイルス様粒子は、例えば、Muratoriら、Methods Mol. Biol.、2010、614、111~24頁;Burneyら、Curr. HIV Res.、2006、4、475~484頁;Kaczmarczykら、Proc. Natl. Acad Sci;U.S.A.、2011、108、16998~17003頁;Aokiら、Gene Therapy、2011、18、936~941頁に記載されている。レンチウイルス様粒子の例は、シンシチンタンパク質をgag融合タンパク質(目的とする遺伝子と融合されたGag)とプロデューサー細胞において同時発現させて生成されたVLPである。
【0037】
薬物及び/又はシンシチンは、粒子の表面に提示されるか、又は粒子に封入(パッケージング)されるかのどちらかであってもよい。シンシチンタンパク質は、有利には粒子の表面に提示されて、例えば粒子に結合され又は(エンベロープ)ウイルス粒子若しくはウイルス様粒子のエンベロープに組み込まれて、偽型化エンベロープウイルス粒子又はウイルス様粒子を形成する。薬物は、粒子に結合され又は粒子にパッケージングされる。例えば、薬物は、ウイルスカプシドに結合され又はウイルスカプシドにパッケージングされ、前記ウイルスカプシドは、好ましくはシンシチンで偽型化されたエンベロープを更に含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態において、薬物は、シンシチンタンパク質で偽型化された粒子にパッケージングされる。粒子にパッケージングされる薬物は、ウイルスベクター粒子、好ましくはレトロウイルスベクター粒子、より好ましくはレンチウイルスベクター粒子にパッケージングされる、有利には目的とする(異種)遺伝子である。
【0038】
いくつかのより好ましい実施形態において、粒子は、エンベロープウイルス粒子又はウイルス様粒子、好ましくはシンシチンタンパク質で偽型化されたエンベロープウイルス粒子又はウイルス様粒子、更により好ましくはシンシチンタンパク質で偽型化されたレンチウイルスベクター粒子又はシンシチンタンパク質で偽型化されたレンチウイルス様粒子である。シンシチンタンパク質で偽型化されたエンベロープウイルス粒子、好ましくはシンシチンタンパク質で偽型化されたレンチウイルスベクター粒子は、有利には、目的とする(異種)遺伝子をパッケージングしている。
【0039】
本発明の様々な実施形態において薬物は、肺組織の細胞、特に、肺上皮細胞等の肺実質細胞への標的化送達によって肺疾患を治療するための目的とする任意の薬物である。そのような薬物には、限定するものではなく;抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬又は抗寄生虫薬等の抗感染薬;抗炎症薬、抗癌薬;免疫調節薬、免疫抑制薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬又は免疫刺激薬を含む免疫治療薬;治療的抗体又は抗体断片及びゲノム編集酵素を含む治療的タンパク質、治療的ペプチド、治療的RNA、並びに治療的遺伝子、及び上記にリストされた治療的タンパク質、治療的ペプチド、及び/又は治療的RNAをコードする遺伝子を含む、治療のための目的とする遺伝子等が挙げられる。いくつかの実施形態において、薬物は抗癌薬を除外する。薬物は、核酸、ペプチド核酸(PNA)、抗体及び抗体断片を含むタンパク質、ペプチド、リン脂質、リポタンパク質及びリン酸脂質タンパク質を含む脂質、糖、小分子、他の分子若しくは薬剤、又はそれらの混合物等の、天然、合成又は組換え分子又は薬剤であってもよい。免疫抑制薬には、例えばインターロイキン10(IL10)、CTLA4-Ig、及び他の免疫抑制タンパク質又はペプチドが挙げられる。リポタンパク質複合体には、特に肺サーファクタントが挙げられる。タンパク質には、プロテインA(SP-A)、SP-B、SP-C及びSP-D等のサーファクタント特異的タンパク質、特にSP-B及びSP-Cが含まれる。治療的RNA等の治療的核酸には、修飾核内低分子RNA(snRNA)等のエクソンスキップすることができるアンチセンスRNA、ゲノム編集のためのガイドRNA又はテンプレート、並びにshRNA及びマイクロRNA等の干渉RNAが挙げられる。
【0040】
「治療のための目的とする遺伝子」、「治療上の目的とする遺伝子」、「目的とする遺伝子」又は「目的とする異種遺伝子」とは、肺疾患を処置するための治療的遺伝子、又は治療的タンパク質、ペプチド若しくはRNAをコードする遺伝子を意味する。
【0041】
治療的遺伝子は、遺伝子又はその断片の機能的バージョンであり得る。機能的バージョンは、前記遺伝子の野生型バージョン、同じファミリーに属する変異型遺伝子、又はコードされたタンパク質の機能性を保存する切断バージョンを意味する。遺伝子の機能的バージョンは、患者において欠損している又は機能しない遺伝子を置き換えるための置換又は付加遺伝子療法に有用である。遺伝子の機能的バージョン又は変異型の断片は、ゲノム編集酵素と組み合わせて使用する組換えテンプレートとして有用である。
【0042】
或いは、目的とする遺伝子は、治療的抗体若しくは抗体断片、ゲノム編集酵素、又は治療的RNAを含む治療的タンパク質をコードしてもよい。目的とする遺伝子は、コードされたタンパク質、ペプチド又はRNAを肺組織の細胞、特に、肺上皮細胞等の肺実質細胞で産生することができる機能的遺伝子である。治療的タンパク質は、抗感染薬、抗炎症薬、抗癌薬及び免疫治療薬等の、上記に定義される任意の薬物であってもよい。
【0043】
治療的RNAは、有利には標的DNA又はRNA配列に相補的である。例えば、治療的RNAは、shRNA、マイクロRNA等の干渉RNA、ゲノム編集のためのCas酵素若しくは類似の酵素と組み合わせて使用するガイドRNA(gRNA)、又は修飾核内低分子RNA(snRNA)等のエクソンスキップすることができるアンチセンスRNAである。干渉RNA又はマイクロRNAは、肺疾患に関与する標的遺伝子の発現を調節するのに使用され得る。ゲノム編集のためのCas酵素又は類似の酵素と複合体を形成するガイドRNAは、標的遺伝子の配列を修飾して、特に変異/欠損遺伝子の配列を修正する、又は肺疾患に関与する標的遺伝子の発現を修飾するのに使用され得る。エクソンスキップすることができるアンチセンスRNAは、特にリーディングフレームを修正し、破壊されたリーディングフレームを有する欠損遺伝子の発現を回復させるのに使用される。
【0044】
本発明によるゲノム編集酵素は、標的ゲノム遺伝子座で遺伝子修飾を誘導する酵素又は酵素複合体である。ゲノム編集酵素は、有利には、例えば、限定するものではなく、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、クラスター化した規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced palindromic repeats)(CRISPR)-Cas系由来のCas酵素及び類似の酵素等の、標的ゲノム遺伝子座に二本鎖切断(DSB)を生成する操作されたヌクレアーゼである。ゲノム編集酵素、特に操作されたヌクレアーゼは、二本鎖切断(DSB)誘導相同組換えによって標的ゲノム遺伝子座を修飾する相同組換え(HR)マトリックス又はテンプレート(DNAドナーテンプレートとも名付けられた)と組み合わせて通常使用されるが、必ずしも使用されるわけではない。特に、HRテンプレートは、目的とする導入遺伝子を標的ゲノム遺伝子座に導入する、又は標的ゲノム遺伝子座の、好ましくは肺疾患を引き起こす異常又は欠損遺伝子の変異を修復することができる。
【0045】
目的とする遺伝子は、有利には、シンシチンタンパク質で偽型化されたエンベロープウイルスベクター粒子、好ましくはシンシチンタンパク質で偽型化されたレンチウイルスベクター粒子にパッケージングされる。ウイルスベクターは、肺細胞で発現可能な形態で目的とする遺伝子を含む。特に、目的とする遺伝子は、肺細胞で機能性である普遍的、組織特異的又は誘導性プロモーター、特に、ヒトEF1-アルファプロモーターと組み合わされたヒトCMVエンハンサー等の強力なプロモーターに作動可能に連結される。
【0046】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、肺疾患を治療するための目的とする遺伝子を含む目的とする薬物は、肺細胞で特異的に発現される肺疾患に関与する遺伝子又は遺伝子産物(タンパク質/ペプチド)を標的とするという点で肺疾患に特異的である。特に、標的遺伝子又は遺伝子産物は、他の細胞タイプと比べて肺細胞で高度に発現される。標的遺伝子又は遺伝子産物はまた、例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory Syncytial Virus)(RSV)等の、肺病原体由来の遺伝子及び遺伝子産物も含む。
【0047】
本発明は、シンシチンタンパク質に結合した2つ以上の薬物を含む医薬組成物、及び/又は少なくとも2つの異なるシンシチンタンパク質が1つ又は複数の薬物に結合した組成物を包含する。
【0048】
本発明の様々な実施形態において、医薬組成物、特に、シンシチンが表面に表示された以前に定義されている粒子、及び更により好ましくは、目的とする遺伝子を含む目的とする薬物をパッケージするシンシチンで偽型化されたレンチウイルス粒子を含む組成物は、肺組織の細胞、例えば、肺上皮細胞等の特に肺実質細胞を形質導入することによって肺疾患の任意の標的療法において使用される。
【0049】
肺は、肺胞で終端する気道及びその内層、その間の肺組織(肺実質)、並びに静脈、動脈、神経及びリンパ管を含有する。
【0050】
下気道は、気管及び気管支で始まる。これらの構造は、小さな葉状突起である線毛を有する円柱上皮細胞で覆われている。上皮細胞で分散されているのが、粘液を産生する上皮杯細胞、及びマクロファージに類似した作用を持つクラブ細胞である。気管及び気管支においてこれらを囲んでいるのが軟骨輪であり、安定性を維持するのに役立つ。細気管支は同じ円柱上皮内層を有するが、軟骨輪に囲まれていない。代わりに、細気管支は平滑筋の層に取り囲まれている。気道は小葉で終わる。これらは呼吸細気管支からなり、呼吸細気管支は肺胞管及び肺胞嚢に枝分かれし、肺胞嚢は今度は肺胞に分かれる。
【0051】
気道全体を通じて上皮細胞は、上皮被覆液(ELF)を分泌する。その成分はしっかり制御され、粘液線毛クリアランスがどれくらい十分に働いているかを決定する。上皮被覆液は、今度はサーファクタントの層で覆われる。
【0052】
肺胞は、2つのタイプの肺胞細胞及び肺胞マクロファージからなる。2つのタイプの細胞は、I型及びII型肺胞細胞として知られる(肺細胞(pneumocyte)としても知られる)。I型及びII型は、壁及び肺胞中隔を構成する。I型細胞は各肺胞の表面積の95%を占め、II型細胞は一般に肺胞の隅でクラスターを形成している。I型は、肺胞壁構造を構成する扁平上皮細胞である。I型は、容易なガス交換を可能にする非常に薄い壁を有する。これらのI型細胞はまた、各肺胞を隔てる肺胞中隔も構成している。中隔は、上皮内層及び結合する基底膜からなる。I型細胞は分裂することができず、その結果、II型細胞からの分化に依存している。II型上皮細胞はより大きく、肺胞を覆っており、上皮被覆液及び肺サーファクタントを産生及び分泌する。II型細胞は分裂し、1型細胞に分化することができる。本発明の組成物は、肺組織の細胞への標的化送達を可能にする。典型的には、該組成物は、肺上皮細胞等の肺実質細胞への標的化送達を可能にする。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物、特に、シンシチンが表面に提示された以前に定義されている粒子、及び更により好ましくは、目的とする薬物又は遺伝子、好ましくは目的とする遺伝子をパッケージングするシンシチンで偽型化されたレンチウイルスベクター粒子を含む組成物は、肺疾患の(標的)遺伝子療法に使用される。
【0054】
遺伝子療法は、核、ミトコンドリア中に、又は共生核酸(例えば、限定するものではなく、細胞に含有されるウイルス配列)として含まれる配列を含む、細胞中の任意のコード配列又は制御配列の遺伝子導入、遺伝子編集、エクソンスキッピング、RNA干渉、トランススプライシング、又は任意の他の遺伝子修飾によって行われ得る。
【0055】
遺伝子療法の2つの主なタイプは、以下の通りである:
- 欠損/異常遺伝子に対する機能的置換遺伝子を提供することを目的とした療法であって、これは、置換又は付加遺伝子療法であり;
- 遺伝子又はゲノム編集を目的とした療法:そのような場合、機能的遺伝子が発現されるように配列を修正する、又は欠損/異常遺伝子の発現若しくは調節を修飾するための必要なツールを細胞に提供することが目的であって、これは、遺伝子編集療法である。
【0056】
付加遺伝子療法では、目的とする遺伝子は、例えば遺伝子疾患の場合と同様に、患者における欠損又は変異遺伝子の機能的バージョンであってもよい。そのような場合、目的とする遺伝子は、機能的遺伝子の発現を回復させるであろう。そのような実施形態においてより好ましくは、本発明の組成物は、目的とする遺伝子をコードするウイルスベクターを好ましくは含む。更により好ましくは、ウイルスベクターは、レトロウイルス、とりわけ以前に記載されているレンチウイルス等の組込みウイルスベクターである。
【0057】
遺伝子又はゲノム編集は、1つ又は複数の目的とする遺伝子、例えば、(i)shRNA若しくはマイクロRNAのような干渉RNA、Cas酵素若しくは類似の酵素と組み合わせて使用するガイドRNA(gRNA)、又は修飾核内低分子RNA(snRNA)等のエクソンスキップすることができるアンチセンスRNA等の、上記に記載の治療的RNAをコードする遺伝子;(ii)メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、Cas酵素又は類似の酵素のような操作されたヌクレアーゼ等の、上記に記載のゲノム編集酵素をコードする遺伝子;又はそのような遺伝子の組み合わせを使用し、最終的には、上記に記載の、組換えテンプレートとして使用する遺伝子の機能的バージョンの断片も使用する。遺伝子編集は、非組込みレンチウイルスベクター等の非組込みウイルスベクターを使用して行われてもよい。
【0058】
特に興味深いのは、肺組織由来の細胞で修正されると患者の疾患又は症状を改善する、肺疾患を示す患者における欠損又は変異遺伝子である。肺組織由来の細胞は、好ましくは、気道由来の上皮細胞又は肺胞細胞等の肺実質細胞である。肺に影響を与える遺伝子疾患の変異遺伝子の例は、以下である:
- 家族型の慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関与する遺伝子、例えば(Seifart C、Plagens A. Genetics of chronic obstructive pulmonary disease. International Journal of Chronic Obstructive pulmonary Disease. 2007;2(4):541~550頁を参照のこと):
- アルファ1-アンチトリプシン(A1AT)をコードする遺伝子SERPINA1、この欠損は、COPDの1つの証明された遺伝的危険因子である。A1ATは分泌され、セリンプロテアーゼ阻害剤である。該阻害剤の標的には、エラスターゼ、プラスミン、トロンビン、トリプシン、キモトリプシン、及びプラスミノーゲン活性化因子が挙げられる。A1ATは、好中球エラスターゼに対する重要な防御を提供する急性期タンパク質である。この遺伝子の欠損は、肺気腫又は肝臓疾患を引き起こし得る。同じタンパク質をコードするいくつかの転写バリアントがこの遺伝子について見出されている。
- α1-抗キモトリプシン(SERPINA3)をコードする遺伝子SERPINA3は、カテプシンG及び肥満細胞キマーゼを可逆的に阻害することができる。SERPINA3遺伝子では、2つの機能的SNPが低いα1-抗キモトリプシンレベル及びCOPDと関連している;
- マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)をコードする遺伝子、例えば、MMP9、MMP1及びMMP2等。
- 肺及び他の器官を覆っている上皮細胞の表面で見出された塩化物トランスポーターをコードするCFTR遺伝子。CFTR遺伝子欠損は、気管支拡張を特徴とする最も一般的な致死的遺伝子疾患の1つ、嚢胞性線維症(CF)をもたらす。CFは多量のねばねばした粘液を身体に生じさせ、肺を塞ぎ、感染をもたらし、及び膵臓を遮断し、食べ物を消化するのに必要とされる消化酵素が腸に届くのを止める。数百の変異がこの遺伝子で見出されており、その全てが、上皮細胞による塩化物、及び副次的にナトリウムの輸送不全をもたらす。その結果、塩化ナトリウム(塩)の量が体分泌で増加する。CFの疾患症状の重症度は、患者に受け継がれた特定の変異の特徴的影響に直接関係する。
- 肺胞を囲んでいる組織及び空間に影響を与える100を超える種々の肺障害の寄せ集めである、肺間質性肺疾患(ILD)及びびまん性実質性肺疾患(DLPD)等の原発性肺病理による障害に関与する欠損遺伝子。いくつかの変異は、原発性肺病理又は肺を含む多臓器の病理による障害に関係している(Devine MS、Garcia CK. Genetic Interstitial Lung Disease. Clinics in Chest Medicine. 2012 ;33(1):95~110頁、又はSteele MP、Brown KK. Genetic Predisposition to Respiratory Diseases: Infiltrative Lung Diseases. Respiration; international review of thoracic diseases. 2007;74(6):601~608頁、及びSelman Mら Surfactant protein A and B genetic variants predispose to idiopathic pulmonary fibrosis. Hum Genet. 2003;113:542~550頁、又はNogee LMら Allelic heterogeneity in hereditary surfactant protein B (SP-B) deficiency. Am J Respir Crit Care Med. 2000;161:973~981頁を参照のこと)。例えば:
サーファクタント機能不全に関連する遺伝子:
- SFTPB遺伝子、この変異は欠如したSP-Bと関連しており、新生児及び乳児における重度の呼吸促迫であるサーファクタント代謝機能不全1患者で見出されている;
- SFTPC遺伝子、この変異はSP-Cの欠如及びERストレスと関連しており、新生児及び乳児における重度の呼吸促迫であるサーファクタント代謝機能不全2患者で見出されている;
- SFTPA2遺伝子、この変異は肺胞上皮のERストレスと関連しており、家族性肺線維症患者で見出されている;
- SFTPD遺伝子、この変異はCOPD及び喘息におけるアトピーと関連している(Fakihら、Respirology、2017 Sep 28.doi/ 10.1111/resp.13193);
- ABCA3遺伝子、この変異は層板小体へのリン脂質の輸送不全と関連しており、新生児及び乳児における重度の呼吸促迫であるサーファクタント代謝機能不全3患者で見出されている;
- CSF2RA遺伝子(この変異はGM-CSFシグナル伝達不全と関連している)、CSF2RBは、新生児及び乳児における重度の呼吸促迫であるサーファクタント代謝機能不全4患者で見出されている;
- SLC34A2遺伝子、この変異は肺胞腔からのリン酸クリアランスの低下と関連しており、肺胞微石症患者で見出されている。このタンパク質は、身体のいくつかの器官及び組織で見出すことができるが、主に肺の数百万個の小さな空気嚢(肺胞)、特にサーファクタントを産生する肺胞II型細胞にある。
【0059】
他の目的とする遺伝子:
- TERT遺伝子、この変異はテロメア短縮と関連しており、家族性肺線維症患者で見出されている;
- TERC遺伝子、この変異は家族性肺線維症患者で見出されている;
- DKC1、TERC、TERT、TINF2遺伝子、これらの変異はテロメア短縮と関連しており、先天性角化異常症に関係している;
- NF1遺伝子、この変異は、I型の神経線維腫症患者における腫瘍抑制因子の機能の喪失と関連している;
- TSC1遺伝子(この変異はLAM細胞の増殖と関連している)及びTSC2(この変異は結節性硬化症/LAM患者で見出されている);
- FLCN遺伝子、この変異は卵胞ホルモンの欠如と関連しており、バート-ホッグ-デュベ症候群患者で見出されている;
- HPS1遺伝子(この変異は細胞質小器官の欠損と関連している)及びHSP4遺伝子(この変異はヘルマンスキー-パドラック症候群患者で見出されている);
- GBA遺伝子、この変異は酸性β-グルコシダーゼの欠損と関連しており、ゴーシェ病、I型患者で見出されている;
- SMPD1遺伝子、この変異は酸性スフィンゴミエリナーゼの欠損と関連しており、ニーマン-ピック病、B型患者で見出されている;
- SLC7A7遺伝子、この変異はカチオン性アミノ酸輸送の欠損と関連しており、リジン尿性タンパク質不耐症患者で見出されている;
- 原発性肺高血圧症に関与する欠損遺伝子(高肺動脈圧、血管リモデリング及び早死を引き起こす)、例えば:
- SMAD9遺伝子(SMADファミリーのメンバーをコードする)、TGF-ベータファミリーメンバーからのシグナルを伝達する。コードされたタンパク質は、骨形成タンパク質によって活性化され、SMAD4と相互作用する。SMAD9遺伝子のヘテロ接合性切断変異(R294X)が、原発性肺高血圧症2(PPH2)患者で同定されている。
- KCNK3遺伝子、4-膜貫通/2-ポアドメインスーパーファミリーでpH感受性カリウムチャネルをコードする。E182K、V221L、G97R及びG203Dを含む、高度に保存された残基のいくつかの置換が、原発性肺高血圧症4(PPH4)患者で同定された。
- CAV1遺伝子、この変異は原発性肺高血圧症3(PPH3)と関連している。
【0060】
そのような遺伝子は、置換遺伝子療法において肺組織で標的とすることができ、目的とする遺伝子は、欠損又は変異遺伝子の機能的バージョンである。
【0061】
或いは、これらの遺伝子は、遺伝子編集の標的として使用され得る。遺伝子編集の特定の例は、嚢胞性線維症の治療であろう:そのような疾患では、点欠失(F508Del)又はCFTR遺伝子のG551D、G542X(L265P)等の点変異がいくつかの患者集団で観察されている。故に、罹患した患者でこの遺伝子の修正バージョンを遺伝子編集することにより、これはこの疾患に対する有効な療法に寄与し得る。上記にリストされている肺の他の遺伝子疾患は、同じ原理を使用して遺伝子編集によって治療され得る。
【0062】
重度の肺病理、特に、原因遺伝子を上皮細胞で発現又は修正して治療され得る、非機能的上皮被覆液又は肺サーファクタントの産生をもたらす肺上皮細胞で発現される病理を含む、原発性肺病理又は多臓器病理による遺伝性疾患における変異遺伝子の例は、以下である: SERPINA3、SERPINA1、MMP(とりわけMMP1、MMP2及びMMP9)、CFTR、SFTPB、SFTPC、ABCA3、CSF2RA、TERT、TERC、SFTPA2、SLC34A2、DKC1、TERC、TERT、TINF2、NF1、TSC1、FLCN、STAT3、HPS1、GBA、SMPD1、SLC7A7、SMAD9、KCNK3及びCAV1。
【0063】
より好ましくは、目的とする遺伝子は、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、様々な間質性肺疾患(ILD)又はびまん性実質性肺疾患、及び原発性肺高血圧症を含む肺に影響を与える疾患と特異的に関連するSERPINA3、SERPINA1、MMP、CFTR、SFTPB、SFTPC、ABCA3、CSF2RA、TERT、TERC、SFTPA2、SLC34A2、SMAD9、KCNK3及びCAV1を含む群から選択されてもよい。
【0064】
DKC1、TERC、TERT、TINF2、NF1、TSC1、FLCN、STAT3、HPS1、GBA、SMPD1及びSLC7A7を含む群から選択される遺伝子は、肺を含む多臓器に影響を与える遺伝性障害と関連している。
【0065】
1つの実施形態において、目的とする遺伝子はまた、肺で特異的に発現される遺伝子、例えばより具体的には、SERPINA3、SERPINA1、CFTR、SFTPB、SFTPC、SFTPA2、及びABCA3を含む群から選択することもできる。
【0066】
遺伝子療法はまた、COPD及び喘息におけるアトピーを引き起こすサーファクタントタンパク質D遺伝子変異を修正することによって(Fakihら、Respirology 2017)、或いは肺のIL4、IL-13若しくはIL-23又は肺の好酸球、肥満細胞、若しくはTh2炎症を制御する分子をブロックする、抗体又は抗体断片等の分子を発現させることによって、喘息の治療にも使用され得る。
【0067】
補充又は付加的遺伝子療法もまた、癌、とりわけ肺癌を治療するのに使用され得る。癌における目的とする遺伝子は、細胞周期若しくは腫瘍細胞の代謝及び遊走を制御し得、又は腫瘍細胞死を誘発し得る。例えば、誘導性カスパーゼ9は、好ましくは持続的な抗腫瘍免疫応答を誘発するための併用療法において、肺組織の上皮細胞で発現されて細胞死の引き金を引き得る。
【0068】
遺伝子療法では、以前に記載されている本発明の組成物、及びより具体的には、本発明によるシンシチンで偽型化された安定なレンチウイルス粒子を、肺組織工学、好ましくは内在性肺幹細胞工学に関する療法において、前記細胞を形質導入して使用することが可能であり得る(Nichols JE、Niles JA、Cortiella J. Design and development of tissue engineered lung: Progress and challenges. Organogenesis. 2009、5、57~61頁)。
【0069】
また、遺伝子スプライシング、発現若しくは調節、又は遺伝子編集に好都合な配列を挿入することも可能であり得る。CRISPR/Cas9等のツールがこの目的のために使用されてもよい。自己免疫又は癌の場合、これは、肺上皮細胞等の肺実質細胞での遺伝子発現を修飾する、又はそのような細胞でのウイルス周期を撹乱するのに使用され得る。そのような場合、好ましくは、目的とする異種遺伝子は、ガイドRNA(gRNA)、部位特異的エンドヌクレアーゼ(TALEN、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、Casヌクレアーゼ)、DNAテンプレート、並びにshRNA及びマイクロRNA等のRNAi成分をコードするものから選択される。
【0070】
肺の感染症を治療するために、目的とする遺伝子はまた、肺病原体の生活環の不可欠な成分を標的とすることもできる。例えば、目的とする遺伝子は、肺病原体を特異的に認識し、その生活環又はその作用をブロックすることができる抗体又は抗体様分子をコードしてもよい。
【0071】
「感染症」とは、細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌等の病原性微生物によって引き起こされる疾患を意味する。感染症は、人から人へ直接又は間接的に伝播し得る。
【0072】
本発明による安定な偽型化レンチウイルス粒子を含む医薬組成物は、同じ細胞を標的とするのに一緒に又は連続して使用され得る。遺伝子編集プラットフォームの複数の成分を細胞に付加する必要がある遺伝子編集等の戦略では、これは利点であり得る。
【0073】
本発明のいくつかの他の実施形態において、シンシチンタンパク質に結合した薬物、特にシンシチンが表面に提示された以前に定義されている粒子を含む組成物、及び更により好ましくは、目的とする薬物又は遺伝子をパッケージングするシンシチンで偽型化されたレンチウイルス粒子、好ましくは目的とする遺伝子を含む本発明の医薬組成物は、免疫調節、又は肺移植寛容を調節するのに使用される。特に、組成物は、肺移植拒絶反応の予防のために移植ドナーに投与される。これらの使用に関して、薬物は、特に、IL-10、CTLA4-Ig若しくは他の免疫抑制ペプチド等の免疫抑制薬、又はリンパ管新生を改善するVEGF変異体(Cuiら J. Clin. Invest. 2015年11月2日;125(11):4255~68頁)であり、目的とする遺伝子は、前記免疫抑制薬又はVEGF変異体をコードする遺伝子である。
【0074】
本発明のいくつかの他の実施形態において、シンシチンタンパク質に結合された薬物を含む本発明の医薬組成物、特に、シンシチンが表面に表示された以前に定義されている粒子、及び更により好ましくは、目的とする薬物又は遺伝子、好ましくは目的とする遺伝子をパッケージするシンシチンで偽型化されたレンチウイルス粒子を含む組成物は、競合タンパク質を用いた線維症又はアミロイドーシスの治療に使用される。
【0075】
いくつかの他の実施形態において、シンシチン含有ウイルス様粒子によって送達される肺サーファクタント又はサーファクタント複合体を含む本発明の医薬組成物は、肺の問題又は疾患の予防のためのサーファクタント補充療法において新生児又は未熟児に投与される(例えば、Poulain FR、Clements JA. Pulmonary surfactant therapy. Western Journal of Medicine. 1995;162、43~50頁を参照のこと)。特に、医薬組成物は、シンシチンをその表面に表示するエンベロープレンチウイルス様粒子にパッケージされた、サーファクタントタンパク質又はサーファクタントタンパク質をコードするRNAを含む。
【0076】
本発明の様々な実施形態において、医薬組成物は、シンシチンタンパク質に結合した薬物の治療有効量を含む。
【0077】
本発明の文脈において、用語「治療する」又は「治療」は、本明細書で使用される場合、そのような用語が適用される障害若しくは状態の進行を逆転、軽減若しくは阻害する、又はそのような用語が適用される障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の進行を逆転、軽減若しくは阻害することを意味する。
【0078】
同様に、治療有効量は、そのような用語が適用される障害若しくは状態の進行を逆転、軽減若しくは阻害する、又はそのような用語が適用される障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状の進行を逆転、軽減若しくは阻害するのに十分な用量を指す。
【0079】
有効用量は、使用される組成物、投与経路、検討中の個体の身体的特徴、例えば、性別、年齢及び体重等、併用薬物、並びに他の要因等の、医学分野の当業者が認識する要因に応じて決定及び調整される。
【0080】
本発明の様々な実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体及び/又はビヒクルを含む。
【0081】
「薬学的に許容される担体」は、哺乳類、特にヒトに必要に応じて投与される場合に、有害な、アレルギー性又は他の厄介な反応を生じないビヒクルを指す。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、任意のタイプの非毒性の固体、半固体若しくは液体充填剤、希釈剤、被包材又は補助製剤を指す。
【0082】
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤用の薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらは、特に、等張性滅菌生理食塩溶液(リン酸一ナトリウム若しくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、カリウム、カルシウム若しくはマグネシウム等、又はそのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水を添加すると、注射可能な溶液の構成が可能になる乾燥、特に凍結乾燥組成物であってもよい。
【0083】
注射可能な用途に適した薬学的形態には、滅菌水溶液又は懸濁液が挙げられる。溶液又は懸濁液は、エンベロープウイルスと適合し、標的細胞へのウイルスの侵入を妨げない添加剤を含んでもよい。全ての場合において、形態は滅菌されなければならず、容易に注射可能な程度に流動性でなければならない。形態は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。適当な溶液の例は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝液である。
【0084】
本発明はまた、上記に記載されている医薬組成物の治療有効量を患者に投与する工程を含む、肺疾患を治療するための方法も提供する。シンシチンで偽型化されたLVのより低い免疫原性は、該医薬組成物の反復投与によって肺組織由来の細胞での長期の遺伝子発現を可能にすると予想される。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「患者」又は「個体」は哺乳類を意味する。好ましくは、本発明による患者又は個体はヒトである。
【0086】
本発明の医薬組成物、特に、シンシチンが表面に提示された以前に定義されている粒子、及び更により好ましくは、目的とする遺伝子を含む目的とする薬物をパッケージングするシンシチンで偽型化されたレンチウイルス粒子を含む組成物は、一般的に、既知の手順に従って、患者において治療効果を誘導するために有効な投与量及び期間で投与される。
【0087】
投与は、注射、経口又は局所(呼吸器)投与によってもよい。注射は、皮下(SC)、筋肉内(IM)、静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮内(ID)、又はその他であってもよい。好ましくは、投与は、注射、吸入又は気管支肺胞洗浄による。好ましくは、注射は静脈内である。吸入は、有利には噴霧によって行われる。
【0088】
本発明の様々な実施形態において、肺疾患は、肺に影響を与える遺伝性疾患、例えば、典型的には嚢胞性線維症及びアルファ-1アンチトリプシン欠乏症等;肺に影響を与える感染症、例えば、結核、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症又は他の肺炎(間質性肺炎等)等;肺の身体疾患及び炎症性疾患、例えば、癌(より具体的には肺癌及び肺転移)、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、肺浮腫、肺気腫又は肺高血圧、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、アスベスト曝露から等の塵肺症、非特異的間質性肺臓炎等の肺の自己免疫疾患、任意の他の間質性肺疾患(ILD)、又はびまん性実質性肺疾患(DLPD)、肺移植拒絶反応の予防並びに新生児及び未熟児における肺の障害又は疾患の予防等からなる群から有利には選択される。いくつかの実施形態において、肺疾患は癌を除外する。いくつかの実施形態において、シンシチンA、好ましくは、目的とする薬物又は遺伝子、好ましくは目的とする遺伝子をパッケージするシンシチンAで偽型化されたレンチウイルスベクター粒子は、肺癌の治療に使用される。いくつかの好ましい実施形態において、肺疾患は、肺に影響を与える遺伝性疾患;肺に影響を与える感染症;肺の炎症性疾患又は自己免疫疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、肺浮腫、肺気腫又は肺高血圧、急性呼吸促迫症候群、塵肺症、間質性肺疾患又はびまん性実質性肺疾患、肺移植拒絶反応の予防並びに新生児及び未熟児における肺の障害又は疾患の予防からなる群から選択される。
【0089】
本発明はまた、シンシチンタンパク質に結合された薬物を含む本発明の組成物、特に、シンシチンが表面に表示された以前に定義されている粒子、及び更により好ましくは、目的とする薬物又は遺伝子、好ましくは目的とする遺伝子をパッケージするシンシチンで偽型化されたレンチウイルス粒子を含む組成物の、非治療目的のための使用にも関する。非治療目的には、特に水中で呼吸するための、健康な対象の肺活量の増加が挙げられる。
【0090】
本発明はまた、肺移植片の調製又は肺組織の死後保存のための本発明の組成物の使用にも関する。そのような実施形態において薬物は、例えば、抗酸化物質から選択されてもよい。
【0091】
本発明はまた、イメージング剤に結合されたシンシチンタンパク質の個体への投与を含む、肺組織を撮像するインビボ又はエクスビボでの方法にも関する。有利には、イメージング剤に結合された前記シンシチンタンパク質は、イメージング剤を組み込むシンシチンで偽型化されたレンチウイルス粒子である。より好ましくは前記イメージング剤は、ウイルスカプシドに結合され、又は前記ウイルスカプシドに封入される。
【0092】
本発明はまた、上記に記載したように、シンシチンタンパク質に結合した肺疾患に特異的な目的とする薬物を含み、目的とする遺伝子を含む目的とする薬物が、上記に記載したように、肺細胞で特異的に発現される肺疾患に関与する遺伝子又は遺伝子産物(タンパク質/ペプチド)を標的とする、肺疾患を標的とする医薬組成物にも関する。
【0093】
いくつかの好ましい実施形態において、医薬組成物は、肺疾患の遺伝子療法のための目的とする遺伝子を含む。好ましくは、目的とする遺伝子は、肺に影響を与える遺伝子疾患(例えば、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺の疾患(COPD)、間質性肺疾患(ILD)、びまん性実質性肺疾患、及び原発性肺高血圧症を含む群から特に選択される)に関与する遺伝子を標的とする。遺伝子疾患に関与する標的遺伝子は、肺で特異的に発現されるSERPINA3、SERPINA1、CFTR、SFTPB、SFTPC、SFTPA2、及びABCA3を含む群からとりわけ選択される、肺に影響を与える疾患と特異的に関連するSERPINA3、SERPINA1、MMP、CFTR、SFTPB、SFTPC、ABCA3、CSF2RA、TERT、TERC、SFTPA2、SLC34A2、SMAD9、KCNK3及びCAV1を含む群から選択されてもよい。目的とする遺伝子は、上記に記載したように、遺伝子置換又は遺伝子編集による前記遺伝子疾患の遺伝子療法に適している。
【0094】
いくつかの他の好ましい実施形態において、医薬組成物は、肺病原体の必須遺伝子を標的とする目的とする遺伝子を含む。病原体は、結核菌、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)等を含む群から選択されてもよい。
【0095】
様々な実施形態において、医薬組成物は好ましくは、シンシチンが表面に提示された粒子、及び更により好ましくは、肺で発現される遺伝子を特異的に標的とすることによる肺疾患の遺伝子療法のための目的とする遺伝子をパッケージングする、シンシチンで偽型化されたレンチウイルス粒子を含む。
【0096】
本発明の実施は、特に指示のない限り、当業者の技能の範囲内である従来の手法を使用する。そのような手法は、文献で十分に説明されている。
【0097】
様々な実施形態において、ウイルス粒子、特にウイルスベクター粒子、及びウイルス様粒子は、標準的な組換えDNA技術法を使用して作製することができる。
【0098】
特に、本発明における使用のための目的とする異種遺伝子を含む安定な偽型化レンチウイルス粒子は、以下の工程:
a)少なくとも1つのプラスミドが、目的とする異種遺伝子、レトロウイルスrev、gag及びpol遺伝子、及びERVシンシチンをコードする核酸を含む、前記少なくとも1つのプラスミドを適当な細胞株にトランスフェクトする工程と;
b)a)で得られたトランスフェクト細胞が、それぞれERVシンシチンで偽型化され、及び目的とする異種遺伝子をパッケージングする安定なレンチウイルス粒子を産生するように、該細胞をインキュベートする工程と;
c)b)で得られた安定なレンチウイルス粒子を回収し、濃縮する工程と
を含む方法によって得ることができる。
【0099】
該方法により、目的とする異種遺伝子を含む安定な偽型化レンチウイルス粒子の高い物理的力価、及び高い感染力価が得られるようになる。好ましくは、方法の工程c)は、工程b)で産生された安定なレンチウイルス粒子を上清から回収、濃縮及び/又は精製する工程を含む。故に、好ましくは、工程c)の濃縮は、b)で得られた回収された安定なレンチウイルス粒子を遠心分離及び/又は精製する工程を含む。前記回収は、当技術分野で周知の方法に従って行うことができる。好ましくは、レンチウイルスベクターは、トランスフェクト細胞の融合前に、より好ましくはトランスフェクション後20時間~72時間の間、好ましくは24時間後に回収される。好ましくは、回収工程は、好ましくはトランスフェクション後20~72時間の間、好ましくはトランスフェクション後20~30時間の間、より好ましくは24時間後に実施される、単回のレンチウイルス回収からなる。
【0100】
工程a)では、適当な細胞株が、少なくとも1つのプラスミドでトランスフェクトされる。好ましくは、トランスフェクションは、一過性のトランスフェクションである。好ましくは、適当な細胞株は、少なくとも1つ、2つ、3つ又は4つのプラスミドでトランスフェクトされる。これらの細胞タイプには、レンチウイルスの生活環を支持する任意の真核細胞が挙げられる。好ましくは、適当な細胞株は、粒子を産生する間増殖し続けるように、安定な細胞株、又はシンシチンの膜融合効果の破壊的結果に不応性の細胞株である。前記適当な細胞株は、哺乳類細胞株、好ましくはヒト細胞株である。そのような細胞の代表的な例には、ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞及びその誘導体、HEK293 T細胞、並びに接着細胞として増殖する能力について選択された、又は無血清条件下の懸濁液で増殖するように適合した細胞のサブセットが挙げられる。そのような細胞は、高度にトランスフェクト可能である。
【0101】
適当な細胞株は、目的とする異種遺伝子、レトロウイルスrev、gag及びpol遺伝子、並びに好ましくは誘導型でHERV-W、HERV-FRD又はマウスシンシチンA等のERVシンシチンをコードする核酸である5つの配列の少なくとも1つ、及び多くて4つを既に発現していてもよい。そのような場合、工程a)は、前記細胞株で既に発現されていない少なくとも1つの配列を含む少なくとも1つのプラスミドで前記細胞株をトランスフェクトする工程を含む。プラスミド混合物、又は単一のプラスミド(1つのみのプラスミドが使用されるならば)は、工程a)で前記細胞株にトランスフェクトされる場合、前記細胞株が5つの上記の配列全てを発現するように選択される。例えば、適当な細胞株が、レトロウイルスrev、gag及びpol遺伝子を発現するならば、トランスフェクトされるプラスミド又はプラスミドの混合物は、発現される残りの配列、すなわち、目的とする異種遺伝子及びHERV-W、HERV-FRD又はマウスシンシチンA等のERVシンシチンをコードする核酸を含む。
【0102】
1つのプラスミドが使用される場合、該プラスミドは、5つの目的とする配列全て、すなわち:
- 目的とする異種遺伝子、
- rev、gag及びpol遺伝子、並びに
- 以前に記載されているERVシンシチンをコードする、及びとりわけHERV-W、HERV-FRD又はマウスシンシチンAをコードする核酸
を含む。
【0103】
2つ又は3つのプラスミドが使用される場合(プラスミド混合物)、プラスミド混合物が上記の目的とする配列全てを含むように、それらの各々は、前段落にリストされた目的とする配列のいくつかを含む。
【0104】
好ましくは4つのプラスミドが使用され、四重トランスフェクションは以下を含む:
- 第1のプラスミドは目的とする遺伝子を含み、
- 第2のプラスミドはrev遺伝子含み、
- 第3のプラスミドは、gag及びpol遺伝子を含み、並びに
- 第4のプラスミドは、以前に記載されているERVシンシチンをコードする、及びとりわけHERV-W、HERV-FRD又はマウスシンシチンAをコードする核酸を含む。
【0105】
前記四重トランスフェクションは、好ましくは、4つのプラスミド間の特定の比で行われる。異なるプラスミド間のモル比は、産生のスケールアップを最適化するために適合され得る。当業者は、目的とするレンチウイルスを作製するために使用する特異的プラスミドに、このパラメーターを適合させることができる。特に、第1、第2、第3、第4のプラスミドの質量比は、好ましくは(0.8~1.2):(0.1~0.4):(0.5~0.8):(0.8~1.2)、より好ましくはおよそ1:0.25:0.65:0.9である。
【0106】
rev、gag及びpol遺伝子は、レトロウイルス、好ましくはレンチウイルスである。好ましくは、これらはHIV遺伝子、好ましくはHIV-1遺伝子であるが、EIAV(ウマ伝染性貧血ウイルス)、SIV(サル免疫不全ウイルス)、泡沫状ウイルス、又はMLV(マウス白血病ウイルス)ウイルス遺伝子でもあってもよい。
【0107】
以前に定義され、及びより優先的にはHERV-W、HERV-FRD又はマウスシンシチンAをコードするERVシンシチン等のERVシンシチンをコードする核酸は、DNA又はcDNA 配列である。好ましくは、該核酸は、配列番号1、2若しくは3にそれぞれリストされたcDNA配列、又はそのような配列番号1、2、若しくは3と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%の同一性をそれぞれ示す配列に対応する。好ましくは、工程a)は、配列番号5又は6にリストされたcDNA配列を含む、好ましくは該配列からなる少なくともプラスミドのトランスフェクションを含む。
【0108】
用語「同一性」は、2つのポリペプチド分子間、又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。比較される両方の配列中の位置が、同じ塩基又は同じアミノ酸残基によって占められる場合、それぞれの分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一性のパーセンテージは、2つの配列によって共有される一致する位置の数を、比較される位置の数で割り、100を掛けたものに相当する。一般的に、比較は、2つの配列が最大の同一性を与えるように整列されるときになされる。同一性は、例えば、GCG(Genetics Computer Group社、GCGパッケージ用プログラムマニュアル、バージョン7、マジソン、ウィスコンシン)パイルアッププログラム、又はBLAST、FASTA又はCLUSTALW等の配列比較アルゴリズムのいずれかを使用するアライメントによって計算することができる。
【0109】
使用され得るエンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミドは、例えば、市販のpCDNA3バックボーン、又は類似の発現系を使用する、例えばCMVプロモーターを使用する任意の他のプラスミドカセット、例えばMertenら(Human gene therapy、2011、22、343~356頁)に記載されたpKGプラスミド等、当業者に公知である。
【0110】
工程a)に従って、当技術分野で公知の様々な手法が細胞への核酸分子の導入に使用され得る。そのような手法には、リン酸カルシウム、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー等の化合物を使用して化学的に促進されるトランスフェクション、リポフェクタミン(リポフェクタミン2000又は3000)、ポリエチレンイミン(PEI)のようなカチオン性リポソーム等のリポソーム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、粒子銃又はマイクロインジェクション等の非化学的方法が挙げられる。工程a)のトランスフェクションは、好ましくは、リン酸カルシウムを使用して実施される。
【0111】
典型的には、工程a)は、リン酸カルシウムの存在下で4つのプラスミド(四重トランスフェクション)を用いた293T細胞の一過性のトランスフェクションによって行うことができる。4つのプラスミドは、好ましくは: HIV-1 gag及びpol遺伝子を発現するpKLプラスミド、HIV-1 rev遺伝子を発現するpKプラスミド、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター等の細胞性プロモーターの制御下で目的とする異種遺伝子を発現するpCCLプラスミド、並びに以前に定義され、及びより優先的にはHERV-W(シンシチン1)、HERV-FRD(シンシチン2)又はマウスシンシチンA(シンシチンA)糖タンパク質をCMVプロモーターから発現するERVシンシチン等のERVシンシチンを発現するpCDNA3プラスミドである。
【0112】
次いで、工程a)後、方法は、a)で得られたトランスフェクト細胞が、以前に定義され、及びより優先的にはHERV-W、HERV-FRD又はマウスシンシチンAで偽型化されたERVシンシチン等のERVシンシチンで偽型化された、目的とする異種遺伝子を含むレンチウイルス粒子を好ましくは上清で産生するように、該細胞をインキュベートする工程b)工程を含む。実際、工程a)が行われたら、得られた細胞のインキュベーションが行われる。これにより、以前に定義され、及びより優先的にはHERV-W、HERV-FRD又はマウスシンシチンAで偽型化されたERVシンシチン等のERVシンシチンで偽型化され、並びに目的とする異種遺伝子を含む、安定なレンチウイルス粒子の上清での産生がもたらされる。
【0113】
トランスフェクション後、トランスフェクト細胞は故に、トランスフェクション後20~72時間の間、特に24時間後に含まれ得る時間にわたって増殖される。
【0114】
細胞を培養するために使用される培地は、グルコース等の糖を含むDMEM等の古典的培地であってもよい。好ましくは、培地は無血清培地である。培養は、懸濁液での細胞の培養に適合したマルチスタックシステム又はバイオリアクター等のいくつかの培養装置で実施されてもよい。バイオリアクターは、単回使用(使い捨て)又は再利用可能なバイオリアクターであってもよい。バイオリアクターは、例えば、培養容器又はバッグ及びタンクリアクターから選択されてもよい。非限定的な代表的なバイオリアクターには、ガラスバイオリアクター(例えばB-DCU(登録商標)2L-10L、Sartorius社)、ウェーブバイオリアクター等のロッキングモーション攪拌を利用する単回使用バイオリアクター(例えばCultibag RM(登録商標)10L-25L、Sartorius社)、単回使用攪拌タンクバイオリアクター(Cultibag STR(登録商標)50L、Sartorius社)、又はステンレススチールタンクバイオリアクターが挙げられる。
【0115】
インキュベーション後、得られた安定なレンチウイルス粒子は、回収され、濃縮される;これが工程c)である。好ましくは、b)で得られた安定なレンチウイルス粒子は、トランスフェクト細胞の融合前に、より好ましくはトランスフェクション後24時間で回収される。好ましくは、b)で得られた上清に存在する安定なレンチウイルス粒子は、遠心分離され及び/又は精製される。前記濃縮工程c)は、遠心分離、限外濾過/透析及び/又はクロマトグラフィー等の当技術分野で任意の公知の方法によって行うことができる。
【0116】
上清は、安定な偽型化ウイルス粒子の遠心分離物を得るために、40000~60000gの間に含まれる速度で、1時間~3時間、1℃~5℃の間に含まれる温度で遠心分離され得る。好ましくは、遠心分離は、45000~55000gの速度で、1時間30分~2時間30分、2℃~5℃、好ましくはおよそ4℃の温度で行われる。この工程の最後に、粒子は遠心分離物の形態で濃縮され、これが使用され得る。
【0117】
工程c)は、陰イオン交換クロマトグラフィー、又はアフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーであってもよい。陰イオン交換クロマトグラフィーは、限外濾過、特に接線流濾過を含む限外濾過/透析の工程に先行又は後行することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、例えば弱陰イオン交換クロマトグラフィー(DEAE(D)-ジエチルアミノエチル、PI-ポリエチレンイミンを含む)である。
【0118】
本発明は、これより、添付図面を参照しながら、限定的ではない以下の例により例示される。
【実施例1】
【0119】
安定な及び感染性のLV-SynA粒子の作製
材料及び方法
細胞株
ヒト胎児腎臓293T細胞を、10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(FCS)(Life Technologies社)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM+グルタマックス)(Life Technologies社、サントーバン、フランス)で、37℃、5% CO2で培養した。
【0120】
シンシチンAのクローニング及びLV-Syn Aの作製。
a. マウスシンシチンAを発現するプラスミドの生成。
マウスシンシチンA cDNAを、標準的な手法を使用してpCDNA3プラスミドにクローニングした。
b. Syn-A偽型化レンチウイルスベクターの作製。
HEK293T細胞を、リン酸カルシウムを使用して以下の4つのプラスミド(フラスコあたりの量)で同時トランスフェクトした: HIV-1 gagpol遺伝子を発現するpKLgagpol(14.6μg)、HIV-1 rev配列(5.6μg)、pcDNA3.1SynA(20μg)を発現するpKRev、及び遺伝子導入プラスミド(脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターの制御下でルシフェラーゼ2導入遺伝子を発現するPRRL-SFFV LucII、又は脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)の制御下、2シストロン性カセットでルシフェラーゼ2導入遺伝子及び切断型の神経成長因子受容体(NGFR)導入遺伝子を発現するpRRL-SFFV-LucII-2A-ΔNGFR-WPREのどちらか)(22.5μg)。24時間後、細胞を洗浄し、新鮮な培地追加する。翌日、培地を回収し、遠心分離1500rpm、5分間によって清澄化し、0.45μm濾過し、次いで超遠心分離50000gによって12℃、2時間濃縮し、使用されるまで-80℃で保管する。VSVg偽型化粒子も、報告されているような一過性のトランスフェクションによって作製した(Mertenら、Human gene therapy、2011、22、343~356頁)。
c. シンシチンA偽型化LVの滴定
物理的力価をp24 ELISA(Alliance(著作権)HIV-1 Elisaキット、Perkin-Elmer社、ヴィルボン/イヴェット、フランス)によって決定し、その後、他のタイプのLVについて以前に報告されているように(Charrierら、Gene therapy、2011、18、479~487頁)、p24の1fgがLVの12ppに相当すると仮定して(Farsonら、Hum Gene Tuer. 2001、20、981~97頁)、物理的粒子(pp)としての力価を計算した。感染性力価を、マウスリンパ腫細胞株A20を使用して感染性ゲノム力価(IG/mL)として決定した。ベクターの連続希釈物を、ベクトフシン-1(登録商標)(12μg/μL)の存在下でA20細胞に6時間添加した。培地を新しくし、細胞を7日間インキュベートし、ゲノムDNAを得て、プライマー: PSIフォワード5'CAGGACTCGGCTTGCTGAAG3'(配列番号7)、PSIリバース5'TCCCCCGCTTAATACTGACG3'(配列番号8)、及びFAM(6-カルボキシフルオレセイン)で標識したPSIプローブ5'CGCACGGCAAGAGGCGAGG3'(配列番号9)、Titinフォワード5'AAAACGAGCAGTGACGTGAGC3'(配列番号10)、Titinリバース5'TTCAGTCATGCTGCTAGCGC3'(配列番号11)、及びVICで標識したTitinプローブ5'TGCACGGAAGCGTCTCGTCTCAGTC3'(配列番号12)を用いたiCycler 7900HT(Applied Biosystems社)での二本鎖qPCRを使用して細胞あたりのベクターコピー数を測定する。
【0121】
結果
マウスシンシチンを、インビボ適用のためのHIV-1由来LVに対する可能性のある新たな偽型として調査した。シンシチンAは、ヒトシンシチン1及び2の非オルソログであるが、機能的に類似したマウスの対応物である(Dupressoirら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、2005、102、725~730頁)。
【0122】
マウスSynAを発現プラスミドにクローニングし、293T細胞でレンチウイルスベクター粒子を産生するのに使用した。シンシチンAは、rHIV由来LVを成功裡に偽型化できることが見出された。トランスフェクション工程に向けたシンシチンAプラスミドの量の最適化により、培地のp24レベルに基づきLV粒子の産生が増加した。定義した条件(プレートあたり20μg DNA、1回の回収のみ;材料及び方法を参照のこと)で、マウスシンシチンで偽型化された安定な及び感染性の粒子を作製することが可能であった。このエンベロープで偽型化されたレンチウイルス粒子は、VSVg偽型化粒子(Charrierら、Gene therapy、2011、18、479~487頁)に使用されるのと同じ条件を使用して、超遠心分離によって成功裡に濃縮することができた。濃縮ストックを-80℃で凍結保存し、数カ月間にわたり安定であった。LV-Syn Aは、ベクトフシン-1(VF1)の存在下でマウスA20 Bリンパ腫細胞株を形質導入するのに極めて効率が良かった。A20細胞株を使用して、シンシチンA偽型化LVの感染性力価を生成する。
【実施例2】
【0123】
LV-SynA粒子を使用した肺へのインビボでの遺伝子送達
材料及び方法
動物
オス又はメスの6週齢C57/Bl6アルビノマウスに100μLのLV-SynA(3.105ng p24当量)を、又は対照マウスには尾静脈に100μLのPBSを注射した。マウスを異なる時点で生物発光によって分析し、注射後21日時点で頸部伸長によって屠殺する。屠殺後、肺を除去する。右肺を新鮮なうちに使用して細胞を選別し、qPCRを実現する。左肺をイソペンタンで凍結し、クリオスタット切片及び免疫組織染色を行うために-80℃で保存する。
【0124】
インビボでのルシフェラーゼイメージング
C57BL/6マウスをケタミン(120mg/kg)及びキシラジン(10mg/kg)により麻酔し、100μL(150μg/mL)のD-ルシフェリン(Interchim社、参照番号FP-M1224D)を腹腔内投与し、10分後にCCDカメラISO14N4191(IVIS Lumina、Xenogen社、MA、USA)で撮像した。10cm視野、ビニング(解像度)係数4、1/fストップ及びオープンフィルターを使用して、3分間の生物発光画像を得た。関心領域(ROI)を手動で定義し(どの場合も標準的な面積を使用)、リビングイメージ3.2ソフトウェア(Xenogen社)を使用してシグナル強度を計算し、1秒あたりの光子として表した。バックグラウンド光子束を、ベクターを投与しなかった対照マウスに描かれたROIから定義した。
【0125】
肺細胞選別
肺をコラゲナーゼIV(1mg/mL、Invitrogen社)及びDNase I(50μg/mL、Roche社)で灌流し、次いで37℃で45分間インキュベートする。反応をEDTA(100mM)の添加によって停止する。細胞を次いで破砕(dilaceration)によって単離する。肺細胞を、抗CD45-FITC抗体(BD Pharmingen社、参照番号553080)及び抗CD31-BV510抗体(BD Horizon社、参照番号563089)で染色する。細胞を次いでMoFlo(登録商標)Astrios(Beckman Coulter社)で選別する。
【0126】
qPCR
Wizard(登録商標)ゲノムDNA Purification Kit(Promega社、参照番号A1125)を使用して、ゲノムDNAを細胞から抽出した。TitinMex5を正規化遺伝子として用いて、多重qPCRをPSIプロウイルス配列又はWPREプロウイルス配列のどちらかで行った。以下のプライマー及びプローブを0.1μMの濃度で使用した:
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
使用するqPCRミックスは、ABsolute qPCR ROXミックス(Thermo Scientific社、参照番号CM-205/A)である。分析は、SDS 2.4ソフトウェアを用いてiCycler 7900HT(Applied Biosystems社)で行う。
【0131】
PCR
Taq Phusion(Thermo Scientific社、参照番号F-549S)を使用するPCRを、肺由来のgDNAで行う。以下のプライマーを0.1μMの濃度で使用する:
Psi-F: 5' AGCCTCAATAAAGCTTGCC 3'(配列番号19)
RRE-R: 5' TCTGATCCTGTCGTAAGGG 3'(配列番号20)
PCRプログラムは、98℃ 30秒→(98℃ 10秒、61℃ 30秒、72℃ 45秒)×35→72℃ 5分である。PCR産物を電気泳動用の2%アガロースゲルに入れ、予測バンドを489bpとする。
【0132】
肺切片の免疫組織染色
マウス肺のクリオスタット切片(12μm)を4%パラホルムアルデヒド溶液で10分間固定し、次いでPBS 1×で3回洗浄する。切片を、次いで、一次抗体として1/100で希釈したポリクロナール抗体抗ルシフェラーゼ(Promega社、参照番号G7451)、及び二次抗体として1/1000で希釈したロバ抗ヤギAlexaFluor 594(Invitrogen社、参照番号A11058)で染色する。一次抗体を湿度チャンバーで4℃、一晩インキュベートし、二次抗体を湿度チャンバーで2時間インキュベートする。
【0133】
結果
目的は、静脈内全身送達後のシンシチンA偽型化LVの体内分布を決定することであった。導入遺伝子ルシフェラーゼは生物発光であり、経時的に動的検出を可能にするため、これを使用した。Luc2をコードする2つの異なるLVを、4つの異なるマウスインビボプロトコールでテストした。一方のLVはLuc2導入遺伝子のみをコードし(LV-SA-LucII)、他方は、2シストロン性カセットにLuc2及びdNGFRをコードした(LV-SA-LucII2AdNGFR)。2シストロン性ベクターはLuc2の発現力がはるかに弱い。したがって、2シストロン性ベクターは、器官の形質導入をqPCRによって確認するのに有用であるが、生物発光による導入遺伝子の発現は最適ではなく、したがって定量化されない。対照として、LV-VSVG Luc2を使用した。マウスでの4つの異なるインビボプロトコールを行なってベクターを注射し、形質導入を経時的に測定した。ベクターの用量は、100μL容量の注射で使用することができる最大用量であり、マウス1匹あたり約3×105ng p24又は5×105IGに相当する。導入遺伝子発現をインビボ生物発光検出によって異なる時点(注射後1、2及び3週間)でマウスにおいて測定し、異なる手法で導入遺伝子発現を確認するために、注射3週間後、ルシフェラーゼ免疫組織化学検出を数匹のマウスで行う。注射後3週間で形質導入をqPCRによって測定した。
【0134】
図1は、2週時点の代表的マウスにおける生物発光分析を示す。明確なシグナルがシンシチンA LV送達後の脾臓及び肺で観察される。VSVGとは反対に、シンシチンAは肝臓を形質導入しない。
【0135】
肺シグナルの定量化を、個々のマウスで経時的(背面照射時)に行なった。LV-SAで得られたシグナルは強力であり、
図2Bに示すように経時的に持続した。これらの結果は、LV-SynAベクターのマウスへの単回静脈内投与が、生物発光導入遺伝子により検出される場合、有意、安定な及び長期にわたる肺への遺伝子導入をもたらすことを示している。
【0136】
ベクターの量を、3週時点のマウスの屠殺時に回収した異なる器官でqPCRによって測定した。結果は、シンシチンA-LVによって投与された場合は肺及び脾臓で、及びVSVG-LVによって投与された場合は肺及び肝臓で優先的にベクターコピーが見出されることを示した(
図3)。組み込まれたプロウイルスのPSI配列周囲のPCRにより、LV-SynAベクターの単回静脈内注射の3週間後、マウスの肺における導入遺伝子カセットの検出が確認され、安定な組込み遺伝子導入が達成され得ることを示唆している(
図4)。
【0137】
全体として、肺、脾臓及び肝臓における形質導入及び導入遺伝子発現を測定することにより、シンシチンA-LVが固有の形質導入プロファイルを有することは明らかである。qPCRに基づくと、シンシチンA-LVは肺及び脾臓を極めて効率よく形質導入することができるが、肝臓は効率よく形質導入することができない。生物発光シグナルは、シンシチンAによる肺及び脾臓の形質導入を確認する。平均的なシグナルが肝臓領域で得られるが、おそらく一部は脾臓の隣接シグナルによるものであり、レベルはVSVgで得られるものと比べてはるかに弱い(Table I)(表4)。VSVg偽型化LVは、qPCR及び生物発光によって示されるように肝臓を極めて効率よく形質導入する。
【0138】
【0139】
肺細胞の形質導入をより詳細に調べた。肺は、単層の扁平上皮細胞から成る肺胞を含有する複合組織である。肺胞は、結合組織によって互いから隔てられ、多数の毛細血管、及びマクロファージ等の浸潤細胞と絡み合っている。導入遺伝子Luc2(LucII)の存在が肺上皮細胞中にあることを2つの手法によって実証した。まず、肺をコラゲナーゼDNAseの混合物で消化し、細胞をCD45抗体で染色して造血起源のCD45+細胞及び非造血起源のCD45-細胞、すなわち肺実質又は間質を認識及び選別した。選別した細胞DNAを抽出し、qPCRによって分析した。結果は、CD45-肺細胞でのみベクターコピーの存在を示し、造血画分では示さない(Table II(表5))。形質導入のレベルは、観察された広範及び明確な生物発光シグナルと一貫性を持つ。
【0140】
【0141】
Luc2の免疫組織化学染色を凍結肺切片で行った。結果は、Luc2が、器官全体にわたって肺の上皮細胞で発現されることを示唆している(
図5)。パラフィン包埋肺で行った染色は、肺胞を覆う上皮細胞が導入遺伝子を発現していることを示した(
図5B)。いくつかの実験では、F4/80マクロファージの二重染色を行い、二重染色はマクロファージ中のLuc2を全く示さず、故にqPCR結果を確認した。更に、CD31+ 肺内皮の染色を行い、染色はLuc2で得られたマークに対応しなかった。
【0142】
結果は、シンシチンA-LVの体内分布がVSVg-LVの体内分布と極めて異なることを示している。VSVgとは反対に、シンシチンAは肝臓を形質導入せず、その代わりに、マウス脾臓及び肺を高レベルで形質導入した。故に、シンシチンA LVは、肺遺伝子療法を含む肺上皮のための薬物及び遺伝子送達ツールとして有用であり得る。
【実施例3】
【0143】
LV-VSVgと比べた、LV-SynAを使用する全身送達後の導入遺伝子に対する免疫応答の低下
材料及び方法
ELISPOTによる免疫応答の決定
1μMのDby又はUtyペプチドを含む又は含まない1ウェルあたり106脾臓細胞をIFN-γ酵素結合免疫スポットプレート(MAHAS45、Millipore社、モルスアイム、フランス)で培養して、IFN-γ酵素結合免疫スポットアッセイ(ELISPOT)を行った。陽性対照として、細胞をコンカナバリンA(Sigma社、リヨン、フランス)(5μg/ml)で刺激した。+37℃での培養の24時間後、プレートを洗浄し、ビオチニル化抗IFNγ抗体(eBiosciences社)、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(Roche Diagnostics社、マンハイム、ドイツ)、及びBCIP/NBT(Mabtech社、レジュリス、フランス)を用いてIFNγの分泌を明らかにした。スポットを、AIDリーダー(Cepheid Benelux社、ルーヴェン、ベルギー)及びAID ELISpot Reader v6.0ソフトウェアを使用してカウントした。スポット形成単位(SFU)は、非パルス脾臓細胞で得られたバックグラウンド値を差し引いた後に表される。
【0144】
サイトメトリービーズアレイによるサイトカイン滴定
刺激培地[培地、Uty(2μg/mL)、Dby(2μg/mL)、又はコンカナバリンA(5μg /mL)]を播種し、106脾臓細胞/ウェルを添加した。+37℃での培養の36時間後、上清を滴定まで-80℃で凍結した。サイトメトリービーズアレイを、BD Biosciencesフレックスキット(IL-6、IFN-γ、TNFα、及びRANTES)を用いて行った。簡単には、明確に異なる蛍光強度を有し、サイトカイン特異的捕捉抗体でコーティングされた捕捉ビーズ集団を一緒に混合した。次に、ビーズのビーズミックス25μLを分配し、及び25μLの各試料(上清)を添加した。室温でのインキュベーションの1時間後、サイトカイン特異的PE抗体を一緒に混合し、25μLのこのミックスを添加した。室温でのインキュベーションの1時間後、ビーズを1mLの洗浄緩衝液で洗浄し、データをLSRIIフローサイトメーター(BD Biosciences社)で取得した。FCAPソフトウェア(BD Biosciences社)を分析に使用した。
【0145】
結果
全身性投与後のLV-SynAの免疫原性の低下を、VSVgで偽型化されたLV(LV-VSVg)を用いる比較アッセイでテストした。これらの試験では、使用した導入遺伝子は、オスHY遺伝子配列でタグ付けされたGFPからなる融合タンパク質をコードするGFP-HYであった。導入遺伝子が抗原提示細胞によって提示されると、Dby及びUtyペプチドはCD4及びCD8 T細胞に提示され、導入遺伝子特異的免疫応答の検出が可能になる。結果は、GFP-HYをコードするLV-SynAベクターのマウスへの全身投与、静脈内(IV)投与が、LV-VSVgと比べてより少ない及び極めて低いレベルの抗導入遺伝子CD4及びCD8 T細胞免疫応答(
図6A)、並びにより低いレベルのサイトカイン(
図6B)をもたらすことを示している。これらの結果は、シンシチン偽型化ベクターによる遺伝子送達後の肺で導入遺伝子の長期発現を達成する可能性と一貫性を持つ。結果はまた、導入遺伝子の反復投与をこれらのベクターにより達成できることも示唆している。結果はまた、高レベルの更なる免疫応答又は炎症を誘発することなく、シンシチン偽型化ベクターを炎症状態で安全に使用できることも示唆している。
【実施例4】
【0146】
LV-シンシチンによるヒト及びマウス肺細胞株の形質導入
この試験の第1の目的は、ヒト肺細胞が、ヒト又はマウスシンシチン(シンシチンA、B、1又は2)で偽型化されたレンチウイルスベクターを用いて形質導入され得るかどうかを評価することであった。この試験の第2の目的は、シンシチンAで偽型化されたレンチウイルスベクターによる異なるヒト及びマウス細胞株並びにマウス初代細胞の形質導入が、標的細胞でのLy6e発現と相関しているか否かを決定することであった。
【0147】
材料及び方法
LV-Synによるヒト初代小気道上皮細胞及びヒト肺細胞株形質導入
Luc2又はΔNGFRをコードし、及びSyn-A、-B、-1又は-2で偽型化されたレンチウイルスベクターをこれらの実験に使用した。12μg/mLのVectofusin-1(登録商標)(Miltenyi Biotec社、参照番号130-111-163)の存在下、1種類の濃度又は2種類の濃度のLV-SynAレンチウイルス粒子(1×105又は1×105及び5×105感染性ゲノム(IG)/mL(A20細胞で定義した感染性ゲノム単位))と、37℃で1×105MRC5細胞(ヒト肺胎児細胞、ECACC、参照番号84101801)、WI26VA4細胞(SV40形質転換ヒト肺細胞、ATCC、参照番号CCL-95.1)、又はヒト小気道上皮細胞(初代小気道上皮細胞;正常、ヒト(ATCC(登録商標)PCS301010(商標))を培養して、ベクターをテストした。陽性対照として、細胞を、Vectofusin-1の存在下、1×106IG(HCT116細胞/mLで定義した感染性ゲノム単位)のLV-VSVgとも並行して培養した。37℃での形質導入の6時間後、培養培地を変更し、新鮮な培地(DMEM+10%胎仔ウシ血清+1%ペニシリン-ストレプトマイシン+1%グルタミン)を細胞に添加して感染を停止した。
【0148】
形質導入後3日又は7日、Wizard(登録商標)Genomic DNA Purification Kit(Promega社、参照番号A1125)を使用して細胞のゲノムDNAを抽出した。正規化遺伝子としてPSIプロウイルス配列及びアルブミンの増幅を使用して、細胞あたりのベクターコピー数を決定するためにマルチプレックスqPCRを行った。以下のプライマー及びプローブを、0.1μMの濃度で使用した:
【0149】
【0150】
【0151】
使用したqPCRミックスはABsolute qPCR ROXミックス(Thermo Scientific社、参照番号CM-205/A)であった。分析は、SDS 2.4ソフトウェアを用いてiCycler 7900HT(Applied Biosystems社)、又はLightCycler(登録商標)480 SW 1.5.1ソフトウェアを用いてLightCycler480(Roche社)で行なった。
【0152】
異なるヒト及びマウス細胞株並びにマウス初代細胞でのLy6e mRNA発現
異なるヒト細胞株(HEK293T、HCT116、HT1080、WI26VA4、Jurkat及びRAJI)、マウス細胞株(A20IIA、C2C12、NIH/3T3)、並びにC57BL/6マウスの肺、脾臓及び骨髄由来の全細胞からのmRNAを、Qiagen社製RNeasy(登録商標)ミニキットを使用して抽出した。Thermofischer社製Verso cDNA合成キットを使用して、mRNAの逆転写を行った。以下のプライマーを使用してcDNAでqPCRを行なった: mLy6eフォワードプライマー5' CGGGCTTTGGGAATGTCAAC 3' (配列番号21)、mLy6eリバースプライマー5' GTGGGATACTGGCACGAAGT 3' (配列番号22)、hLy6eフォワードプライマー5' AGACCTGTTCCC CGGCC 3' (配列番号23)、hLy6eリバースプライマー5' CAGCTGATGCCCATGGAAG 3' (配列番号24)、POリバースプライマー5' CTCCAAGCAGATGCAGCAGA 3' (配列番号25)、及びPOフォワードプライマー5' ACCATGATGCGCAAGGCCAT 3' (配列番号26)。POは、ウェアハウス遺伝子(warehouse gene)として使用した。存在量を式存在量=2-ΔCtを用いて計算する。
【0153】
結果
LV-Syn(-A、-B、-1、-2)によるヒト初代小気道上皮細胞及びヒト肺細胞株形質導入
マウスシンシチンAで偽型化されたレンチウイルスベクター(LV-SynA)に感染後のMRC5及びWI26VA4細胞の形質導入のレベルを、2つの独立した形質導入実験で測定した。マウスシンシチンA(LV-SynA)、マウスシンシチンB(LV-SynB)、ヒトシンシチン1(LV-Syn1)、又はヒトシンシチン2(LV-Syn2)で偽型化されたレンチウイルスベクターに感染後のMRC5細胞の形質導入のレベルも、2つ又は3つの独立した形質導入実験で測定した。VSVgで偽型化され、高濃度で使用された対照レンチウイルスベクター(LV-VSVg)は、使用した実験条件で細胞が形質導入され得ることを確認した。
【0154】
更に、マウスシンシチンA(LV-SynA)、ヒトシンシチン1(LV-Syn1)、又はヒトシンシチン2(LV-Syn2)で偽型化されたレンチウイルスベクターに感染後のヒト小気道上皮細胞の形質導入のレベルを、5つ(SynA)又は3つ(Syn1、Syn2)の独立した形質導入実験で測定した。
【0155】
全ての実験において、特異的プライマーを使用したqPCRにより細胞へのプロウイルスの組込みが確認された。結果を
図7~
図9に表す。
【0156】
図7は、2つの実験でのマウスシンシチンAで偽型化されたレンチウイルスベクター(LV-SynA)によるMRC5及びWI26VA4細胞の形質導入の平均レベルを表している。用量依存的効果を示す2つの濃度のベクターを使用した(1 E+05及び5E+05ig/mL)。明らかに、LV-SynAベクターによるMRC5細胞の形質導入は、WI26V4細胞の形質導入より効率的であったが、両方の細胞タイプが許容的であった。VSVgで偽型化されたベクターを、陽性対照としてより高濃度で使用した。結論として、シンシチンA偽型化は、ヒト肺細胞を形質導入するのに使用することができる。
【0157】
図8は、マウスSynAに加えて、ヒトSyn2もヒト肺細胞を形質導入することができ、それによって肺での治療用途のためのシンシチン2偽型化レンチウイルスベクターの使用を支持することを示している。シンシチン2偽型化は、10×高い濃度で使用した陽性VSvg対照のレベルと少なくとも同じくらい高いレベルに達することから、極めて有効である。
【0158】
図9は、マウスシンシチンA及びヒトシンシチン2が、レンチウイルスベクターを偽型化してヒト初代肺上皮細胞を効率よく形質導入するのに使用され得ることを示している。これらの結果は、シンシチン偽型化粒子が、肺の疾患及び特に、肺上皮を含む疾患を治療するのに使用され得ること、並びにヒトシンシチン偽型化ベクターが、全身性投与後に導入遺伝子を肺に送達すると予測されることを更に実証するものである。
【0159】
異なる細胞株でのLy6e mRNAの発現のレベルと形質導入のレベルとの比較
ΔNGFRをコードするLV-シンシチンAベクターによるmLy6e及びhLy6e mRNAの発現のレベル並びに形質導入のレベルを異なる細胞株で比較した。
【0160】
結果は、マウスシンシチンAの受容体として報告されたmLy6eの細胞株における発現により、SynAで偽型化されたLVによる細胞を形質導入する能力を予測することはできないことを示している(
図10)。C2C12細胞は相対的に十分なレベルのLy6eを発現するが、形質導入されない。最も高いレベルのLy6emRNAを発現するA20IIA細胞は形質導入される。これは、閾値が存在することを示している可能性がある。
【0161】
マウスSynAの受容体は、マウスLy6eである。ヒトLy6eがいずれかのシンシチンの受容体であるかどうかは不明である。結果は、ヒトLy6e受容体発現mRNAレベルとLV-SynAによる形質導入の間に相関関係はないことを示している(
図11)。結腸癌細胞であるHCT116はhLy6e mRNAを発現するが、形質導入されない。Raji細胞はヒトLy6e-mRNAを発現しないが、形質導入され得る。
【配列表】