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▶ オーリス ヘルス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】医療手技を行うシステム及び医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20230111BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20230111BHJP
   A61B 34/35 20160101ALI20230111BHJP
【FI】
A61M1/00 140
A61B17/22 510
A61B34/35
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020531507
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018064353
(87)【国際公開番号】W WO2019113389
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】62/596,711
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー,ジェイソン ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,カー チュン
(72)【発明者】
【氏名】チョク,レイチェル リー
(72)【発明者】
【氏名】デフォンツォ,ジョシュア エフ.
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ビン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ビビアン タリア
(72)【発明者】
【氏名】プロヒット,リシ ニヒル
(72)【発明者】
【氏名】アーバン,ジョセフ エー., ジュニア
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0215964(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0215897(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0165944(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166320(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0215965(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0019358(US,A1)
【文献】米国特許第05514088(US,A)
【文献】国際公開第2017/075574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61B 17/22
A61B 34/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療手技を行うシステムであって、
経皮的に治療部位に挿入されるように構成された第1の医療器具であって、前記第1の医療器具は第1の流体チャネルおよび第2の流体チャネルを有する、第1の医療器具と、
前記第1の流体チャネルに接続され、負圧を加えて前記治療部位からの吸引を提供するように構成された真空装置と、
灌流源と前記第2の流体チャネルとに接続され、前記治療部位に灌流を提供するように構成されている、ポンプと、
前記真空装置および前記ポンプに接続され、1つまたは複数のプロセッサを有する流体工学制御システムであって、前記1つまたは複数のプロセッサは、
前記灌流および前記吸引の一方の特性を特定することと、
特定された前記特性に基づいて、前記ポンプまたは前記真空装置の少なくとも一方の特性を制御することと、
を実行するように構成されている、流体工学制御システムと、
患者の管腔を通って前記治療部位に挿入されるように構成された第2の医療器具であって、前記第2の医療器具は、前記治療部位内の物体に砕石術を行うように構成された砕石器を含む、第2の医療器具と、
を有し、
前記第1の医療器具は、軸に沿って遠位端まで延伸する関節動作可能な細長い本体を備え、
前記第1の流体チャネルは、前記軸に沿って延伸し、前記第1の流体チャネルは前記遠位端の遠位面に形成された第1の流体オリフィスで終端し、
前記第2の流体チャネルは、前記細長い本体を通るように形成され、前記第2の流体チャネルは、前記遠位端の近傍の前記細長い本体の径方向面に形成された少なくとも1つの追加の流体流出オリフィスで終端し、
関節動作可能な前記細長い本体の前記遠位端の遠位面に凹部を含むポケットが形成され、前記ポケットは、前記第2の医療器具によって行われる前記砕石術の間、前記物体を保持するように構成されており、前記第1の流体チャネルは、前記砕石術の結果として前記物体が破砕される際に、小片を除去することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第1の医療器具は、前記第1の流体チャネル内に配置された流量センサをさらに有し、
前記流量センサの出力は、前記流体工学制御システムと接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の医療器具は、前記治療部位の内圧を計測するために配置された圧力センサをさらに有し、
前記圧力センサの出力は前記流体工学制御システムに接続され、
前記1つまたは複数のプロセッサは、前記ポンプまたは前記真空装置の少なくとも一方を制御して、前記治療部位の計測された前記内圧に基づいて前記吸引および前記灌流の少なくとも一方を調整するようにさらに構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の医療器具は、関節動作可能な遠位端を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の流体チャネルは、前記第1の流体チャネルを環状に囲み、前記第2の流体チャネルは、前記遠位端の近傍の前記細長い本体の前記径方向面に形成された複数の追加の流体流出オリフィスで終端することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
軸に沿って遠位端まで延伸する関節動作可能な細長い本体と、
前記軸に沿って延伸する第1の流体チャネルであって、前記第1の流体チャネルは前記遠位端の遠位面に形成された第1の流体オリフィスで終端する、第1の流体チャネルと、
前記細長い本体を通るように形成された第2の流体チャネルであって、前記第2の流体チャネルは、前記遠位端の近傍の前記細長い本体の径方向面に形成された少なくとも1つの追加の流体流出オリフィスで終端する、第2の流体チャネルと、
関節動作可能な前記細長い本体の前記遠位端の遠位面に形成された凹部を含むポケットであって、前記ポケットは、他の医療器具によって行われる砕石術手技の間、物体を保持するように構成されており、前記第1の流体チャネルは、前記砕石術手技の結果として前記物体が破砕される際に、小片を除去する、ポケットと、
を有することを特徴とする医療機器。
【請求項7】
前記第2の流体チャネルは、前記第1の流体チャネルを環状に囲むことを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの追加の流体オリフィスを含む複数の流体オリフィスを更に有し、前記複数の流体オリフィスは、前記軸の周囲に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
【請求項9】
前記第2の流体チャネルを含む複数の流体チャネルを更に有し、前記複数の流体チャネルは、前記第1の流体チャネルの径方向の周囲に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
【請求項10】
前記第2の流体チャネルは、前記軸の径方向の周囲に配置された追加の流体オリフィスで終端することを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
【請求項11】
前記細長い本体を関節動作させる少なくとも1つのプルワイヤをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
【請求項12】
前記第2の流体チャネルは、前記第1の流体チャネルを環状に囲み、前記第2の流体チャネルは、前記遠位端の近傍の前記細長い本体の前記径方向面に形成された複数の追加の流体流出オリフィスで終端することを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療ロボットに関し、より具体的には、患者から物体を取り除くための方向制御された流体工学を用いるロボット医療システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、患者の尿路から結石を取り除く手技が施術者によって行われている。尿路結石には、腎臓内や尿管内で発見される腎臓結石や膀胱内で発見される膀胱結石が含まれる。尿路結石は、無機物が凝縮した結果として形成されるものであり、尿管や尿道を通る尿の流れを妨げるほどの大きさになると、腹部に激痛をもたらすことがある。欠席は、カルシウムやマグネシウム、アンモニア、尿酸、システインなどの化合物により形成される。
【0003】
尿道や尿管から尿路結石を取り除くために、一般に施術者は、尿管鏡を尿道を通って尿管に挿入する。通常は、尿管鏡は、その遠位端に、尿管を視覚化することができるスコープを有する。この手技では、切石術機構を用いて尿路結石の捕捉や破砕が行われる。尿管鏡検査では、1人の施術者が尿管鏡の位置制御を行い、もう1人の施術者が切石術機構を制御する。腎臓からサイズの大きい腎臓結石を取り除く場合、施術者は、皮膚を経由して腎臓鏡を挿入する経皮的腎切石術(PCNL;Percutaneous Nephrolithotomy)法を用いて、腎臓結石の破砕および除去を行う。
【発明の概要】
【0004】
本件開示内容は、患者の治療部位から物体を取り除くシステムおよび手法に関し、特に物体除去手技時の方向制御された流体工学を用いる方法およびシステムに関する。「方向制御された流体工学」とは、物体除去手技を改善あるいは支援する灌流吸引(流体の流入および流出など)を提供する方法やシステムを指す。方向制御された流体工学には、治療部位を通る流体の好適な、有利なあるいは所望の流れをもたらすための、灌流および/または吸引の特性に対する設定、制御、調整が含まれる。
【0005】
第1の側面では、医療手技時における流体工学を管理する方法が、第1の医療器具を治療部位に挿入することであって、前記第1の医療器具は第1の流体チャネルおよび第2の流体チャネルを有する、ことと、前記第1の医療器具の前記第1の流体チャネルを通って前記治療部位に灌流を提供することと、前記第1の医療器具の前記第2の流体チャネルを通って前記治療部位からの吸引を提供することと、前記灌流および前記吸引の一方の特性を特定することと、前記特定された特性に基づいて、前記灌流および前記吸引の他方の特性を選択することと、を含む。
【0006】
上記の方法は、以下の1つまたは複数の特徴を有してもよい。(a)前記第1の医療器具を前記治療部位に挿入することは、前記第1の医療器具を経皮的に前記治療部位に進行させることを含む。(b)前記第1の医療器具を前記治療部位に挿入することは、前記第1の医療器具を患者の管腔を通って前記治療部位に進行させることを含む。(c)第2の医療器具を前記患者の管腔を通って前記治療部位に挿入することをさらに含む。(d)第2の医療器具を経皮的に前記治療部位に挿入することをさらに含む。(e)前記特定された特性は、瞬間流量および一定時間における平均流量の少なくとも一方を含む。(f)前記選択された特性は、瞬間流量および一定時間における平均流量の少なくとも一方を含む。(g)前記選択された特性は、実質的に前記特定された特性と一致する。(h)前記治療部位の特性を特定することと、前記治療部位の前記特定された特性が閾値を超えた場合に、前記治療部位に対する灌流を減少させることと、前記治療部位からの吸引を増加させることと、警告を提供することと、の少なくとも1つを行うことと、をさらに含む。(i
)前記治療部位の前記特定された特性は、前記治療部位内の流体の体積および前記治療部位の内圧の一方を含む。(j)灌流または吸引を提供する際に、前記第1の医療器具の遠位端をスイープ動作させることをさらに含む。(k)前記第1の医療器具および前記第2の医療器具の少なくとも一方は、ロボット制御される。(l)前記治療部位内の物体に砕石術を行って、前記物体を小片に破砕することと、前記第1の医療器具の前記第2の流体チャネルを通って前記小片を吸引することと、をさらに含む。(m)第2の医療器具を用いて砕石術を行う。(n)前記第1の医療器具は、関節動作可能な遠位端を有する操縦可能な医療器具を含む。(o)前記第1の医療器具の関節動作可能な遠位端を前記治療部位内の物体に接触させることと、前記第2の流体チャネルを通って吸引を提供して、前記物体を前記関節動作可能な遠位端に保持することと、をさらに含む。(p)前記関節動作可能な遠位端は、前記物体を保持するポケットを有する。(q)前記物体が前記ポケットに保持されているときに砕石術を行うことをさらに含む。(r)前記第1の医療器具を動作させて前記治療部位内の前記物体の位置を変えることをさらに含む。(s)前記治療部位内の物体に砕石術を行って、前記物体を小片に破砕することと、前記砕石術中に、前記砕石術によって生じた塵を、前記第2の流体チャネルを通って吸引して除去することと、をさらに含む。(t)前記追加の第1の流体チャネルは、前記第2の医療器具から流体を逃がす流体オリフィスを有する。(u)灌流および吸引が同時に提供される。(v)灌流および吸引が同時に提供されない。
【0007】
別の側面では、医療手技を行うシステムが、治療部位に挿入される第1の医療器具であって、前記第1の医療器具は第1の流体チャネルおよび第2の流体チャネルを有する、第1の医療器具と、前記第1の流体チャネルおよび前記第2の流体チャネルの一方に接続され、負圧によって前記治療部位からの吸引を提供する真空装置と、灌流源と前記第1の流体チャネルおよび前記第2の流体チャネルの他方とに接続され、前記治療部位に灌流を提供する、ポンプと、前記真空装置および前記ポンプに接続され、1つまたは複数のプロセッサを有する流体工学制御システムであって、前記1つまたは複数のプロセッサは、前記灌流および前記吸引の一方の特性を特定することと、前記特定された特性に基づいて、前記灌流および前記吸引の他方の特性を選択することと、を実行する、流体工学制御システムと、を有する。
【0008】
上記のシステムは、以下の1つまたは複数の特徴を有してもよい。(a)前記第1の医療器具は、患者の管腔を通って前記治療部位に挿入される。(b)前記第1の医療器具は、経皮的に前記治療部位に挿入される。(c)患者の管腔を通って前記治療部位に挿入される第2の医療器具をさらに有する。(d)経皮的に前記治療部位に挿入される第2の医療器具をさらに有する。(e)前記第1の医療器具はさらに、前記第1の流体チャネル内に配置された流量センサを有し、前記流量センサの出力は、前記流体工学制御システムと接続されている。(f)前記第2の第1の医療器具はさらに、前記第2の流体チャネル内に配置された流量センサを有し、前記流量センサの出力は、前記流体工学制御システムと接続されている。(g)前記第1の医療器具は、前記治療部位の内圧を計測するために配置された圧力センサをさらに有し、前記圧力センサの出力は前記流体工学制御システムに接続され、前記1つまたは複数のプロセッサはさらに、前記ポンプまたは前記真空装置の少なくとも一方を制御して、前記治療部位の前記計測された内圧に基づいて前記吸引および前記灌流の少なくとも一方を調整する。(h)前記治療部位に挿入される第2の医療器具をさらに有し、前記第2の医療器具はさらに、前記治療部位の内圧を計測するために配置された圧力センサと、前記流体工学制御システムに接続された前記圧力センサの出力と、を有し、前記1つまたは複数のプロセッサはさらに、前記ポンプまたは前記真空装置の少なくとも一方を制御して、前記治療部位の前記計測された内圧に基づいて前記吸引および前記灌流の少なくとも一方を調整する。(i)前記第1の医療器具は、関節動作可能な遠位端を有する。
【0009】
別の側面では、医療機器が、軸に沿って遠位端まで延伸する関節動作可能な細長い本体と、前記軸に沿って延伸する第1の流体チャネルであって、前記第1の流体チャネルは前記遠位端の遠位面に形成された第1の流体オリフィスで終端する、第1の流体チャネルと、前記細長い本体を通るように形成された少なくとも1つの追加の流体チャネルであって、前記少なくとも1つの追加の流体チャネルは、前記遠位端の近傍の前記細長い本体の径方向面(radial surface)に形成された少なくとも1つの追加の流体流出オリフィスで終端する、少なくとも1つの追加の流体チャネルと、を有する。
【0010】
上記の医療機器は、以下の1つまたは複数の特徴を有してもよい。(a)前記遠位面に形成されたポケットをさらに有する。(b)前記ポケットは、医療手技時に除去される物体を少なくとも部分的に受ける。(c)前記少なくとも1つの追加のチャネルは、前記第1の流体チャネルを環状に囲む。(d)前記少なくとも1つの追加の流体オリフィスは、前記軸の周囲に配置された追加の流体オリフィスを有する。(e)前記少なくとも1つの追加のチャネルは、前記第1の流体チャネルの径方向の周囲に配置された追加のチャネルを有する。(f)前記4つの追加の流体チャネルは、前記軸の径方向の周囲に配置された追加の流体オリフィスで終端する。(g)前記細長い本体を関節動作させる少なくとも1つのプルワイヤをさらに有する。
【0011】
別の側面では、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が命令を記憶し、前記命令が実行されると、装置のプロセッサに少なくとも、第1の医療器具の第1のチャネルを通って治療部位に行う灌流と、前記第1の医療器具の第2のチャネルを通って前記治療部位に行う吸引との少なくとも一方の特性を特定することと、前記特定された特性に基づいて、前記灌流および前記吸引の少なくとも一方の特性を選択することと、を実行させる。
【0012】
上記の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、以下の1つまたは複数の特徴を有してもよい。(a)前記特定された特性は、瞬間流量および一定時間における平均流量の少なくとも一方を含む。(b)前記選択された特性は、瞬間流量および一定時間における平均流量の少なくとも一方を含む。(c)前記選択された特性は、実質的に前記特定された特性と一致する。(d)前記命令が実行されると、前記プロセッサに、前記治療部位の特性を特定することと、前記治療部位の前記特定された特性が閾値を超えた場合に、前記治療部位に対する灌流を減少させることと、前記治療部位からの吸引を増加させることと、警告を提供することと、の少なくとも1つを行うことと、をさらに実行させる。(e)前記治療部位の前記特定された特性は、前記治療部位内の流体の体積および前記治療部位の内圧の一方を含む。(f)前記命令が実行されると、前記プロセッサに、前記治療部位内の物体に第2の医療器具を用いて砕石術を行って、前記物体を小片に破砕することと、前記第2の第1の医療器具の前記第2の流体チャネルを通って前記小片を吸引することと、をさらに実行させる。(g)前記命令が実行されると、前記プロセッサに、前記治療部位内の物体に第2の医療器具を用いて砕石術を行って、前記物体を小片に破砕することと、前記砕石術中に、前記砕石術によって生じた塵を、前記第2の第1の医療器具の前記第2の流体チャネルを通って吸引して除去することと、をさらに実行させる。(h)前記命令が実行されると、前記プロセッサに、灌流および吸引を同時に提供すること、をさらに実行させる。(i)灌流および吸引が同時に提供されない。
【0013】
別の側面では、患者から物体を除去する際の流体工学を管理する方法が、除去する物体を有する治療部位に向かって、患者の管腔を通って第1の医療器具を前進させることであって、前記第1の医療器具は、遠隔的に関節動作可能な遠位先端に配置された第1の開口を通って灌流を提供する第1の流体チャネルを有し、前記第1の開口は、第1の流体の流れの方向に灌流を提供する、ことと、第2の医療器具を経皮的に前記治療部位に挿入することであって、前記第2の医療器具は、前記第2の流体チャネルの第2の開口を通って吸引を提供する第2の流体チャネルを有する、ことと、前記第1の医療器具を用いて、前記
第1の開口を通って前記治療部位への灌流を提供することと、前記第2の医療器具の前記第2の流体チャネルの前記第2の開口を通って前記治療部位からの吸引を提供することと、前記第1の医療器具の前記遠位端を遠隔的に操作して、前記第1の流体の方向を第2の開口に向かせることと、を含む。
【0014】
上記の方法は、以下の1つまたは複数の特徴を有してもよい。(a)前記治療部位内の前記第2の開口の前記位置を特定することをさらに含み、前記遠位先端を操作することは、前記治療部位内の前記第2の開口の前記特定された位置に基づいて前記遠位先端を自動的に操作することを含む。(b)腎臓鏡が前記第2の医療器具および砕石器を有し、前記方法は、前記砕石器を前記物体に接触させることと、砕石術を行って、前記物体を小片に破砕することと、前記吸引チューブによって前記小片を吸引することと、をさらに含む。(c)前記第1の医療器具を通って灌流を提供する際に、前記第1の医療器具の遠位先端をスイープ動作させることをさらに含む。
【0015】
本件開示は、主に、尿管鏡、経皮的腎切石術(PCNL;Percutaneous Nephrolithotomy)法、尿路結石および結石の小片の除去に関して説明するが、本件開示は、胆嚢結石の除去や肺(肺状器官、胸腔)の腫瘍の生検など、患者の体腔(食道、尿管、消化管など)や経皮アクセスを介して安全に除去できる物体を対象とした、患者の種々の治療部位からの物体除去に関するその他の手術操作や医療操作にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本件開示の側面について、添付の図面および表と共に以下に説明するが、例示であって開示の側面を限定するものではなく、同様の構成要素には同様の名称を付す。
【0017】
図1】気管支鏡検査手技の診断および/または治療用に構成されたカートベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図2図1のロボットシステムの別の側面を示す図である。
図3】尿管鏡検査用に構成された図1のロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図4】血管手技用に構成された図1のロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図5】気管支鏡検査手技用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図6図5のロボットシステムの代替の図である。
図7】ロボットアームを収容するように構成されたシステムの一例を示す図である。
図8】尿管鏡検査用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図9】腹腔鏡検査用に構成されたテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図10】ピッチ調整または傾き調整された図5~9のテーブルベースのロボットシステムの一実施形態を示す図である。
図11図5~10のテーブルベースのロボットシステムのテーブルとカラムとの間のインタフェースの詳細図である。
図12】例示的な器具駆動部を示す図である。
図13】組になった器具駆動部を有する例示的な医療器具を示す図である。
図14】駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸と平行である、器具駆動部および器具の代替の設計を示す図である。
図15】実施形態の一例における、図13や14の器具の位置など、図1~10のロボットシステム1つまたは複数の要素の位置を推定する位置決めシステムを示すブロック図である。
図16】経皮的に腎臓に挿入された第1の医療器具を使用して腎臓から物体を除去する手技の一例を示す図である。
図17】患者の管腔を通って腎臓に挿入された第1の医療器具と、経皮的に腎臓に挿入された第2の医療器具と、方向制御された流体工学を使用して腎臓から物体を除去する手技の一例を示す図である。
図18】患者の管腔を通って腎臓に挿入された第1の医療器具と、経皮的に腎臓に挿入された第2の医療器具と、方向制御された流体工学を使用して腎臓から物体を除去する手技の別の例を示す図である。
図19】患者の管腔を通って腎臓に挿入された第1の医療器具と、経皮的に腎臓に挿入された第2の医療器具と、方向制御された流体工学を使用して腎臓から物体を除去する手技の別の例を示す図である。
図20】物体の除去手技において、灌流を提供する第1の医療器具の遠位先端と、吸引を提供する第2の医療器具の遠位先端を示す詳細図である。
図21A】物体の除去手技において、灌流を提供する第1の医療器具の遠位先端と、灌流および吸引を提供する第2の医療器具の遠位先端を示す詳細図である。
図21B】物体の除去手技において、砕石術を提供する第1の医療器具の遠位先端と、灌流および吸引を提供する第2の医療器具の遠位先端を示す詳細図である。
図22A】物体の除去手技において、方向制御された流体工学のための方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図22B】物体の除去手技において、方向制御された流体工学のための別の方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図23】物体の除去手技において、方向制御された流体工学のための別の方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図24】物体の除去手技において、方向制御された流体工学を用いて物体を保持および位置変更するための方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図25】方向制御された流体工学のシステムの一実施形態を示すブロック図である。
図26A】物体の除去手技において灌流および吸引を提供する医療器具の遠位端の斜視図である。
図26B図26Aの医療器具の灌流チャネルおよび吸引チャネルを示す、図26Aの医療器具の遠位端の断面図である。
図27】方向制御された流体工学を用いる物体の除去手技を行うロボットシステムの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1.はじめに)
本件開示の側面は、腹腔鏡検査などの低侵襲の手技や内視鏡検査などの非侵襲の手技を含む種々の医療手技を実行可能なロボット対応医療システムに組み込むことができる。内視鏡検査の手技においては、本システムは、気管支鏡検査、尿管鏡検査、消化器病検査などを実行することができる。
【0019】
本システムは、さまざまな手技を実行できることに加えて、術者を支援する強化された画像取得や誘導など、追加の利点を提供することができる。また、本システムは、扱いにくいアームの動きや位置などに対応する必要なく、人工工学による位置から手技を行うことが可能な機能を術者に提供することができる。さらに、本システムは、システムの1つまたは複数の器具を1人のユーザで制御可能な使いやすさが向上した手技を行うことが可能な機能を術者に提供することができる。
【0020】
以下に、例示目的の図面とともに種々の実施形態について説明する。開示の技術的思想
のその他多数の実装が可能であり、さまざまな利点が開示の実装と共に得られる。また、ここには、参照用および多数の節の位置がわかるように見出しが含まれている。これらの見出しは、見出しが示す技術思想の範囲を制限するものではない。それぞれの技術思想は本明細書全体にわたって適用されてよい。
【0021】
(A.ロボットシステム-カート)
ロボット対応医療システムは、特定手技に応じてさまざまに構成することができる。図1は、気管支鏡検査の診断手技および/または治療樹技用に配置されたカートベースのロボット対応システム10の一実施形態を示す。気管支検査時に、システム10は、気管支鏡検査用の手技に特化した気管支鏡を自然開口のアクセスポイント(この例ではテーブルに配置された患者の口など)に操作可能な内視鏡13などの医療器具を搬送して診断用の道具および/または治療用の道具を搬送するための、1つまたは複数のロボットアーム12を有するカート11を備える。図に示すように、カート11は、当該アクセスポイントにアクセスするために、患者の上半身に近い位置に配置されている。同様に、ロボットアーム12は、当該アクセスポイントに対して気管支鏡を配置するように作動可能である。図1に示す配置は、胃腸に関する(GI;gastro-intestinal)手技用の特別な内視鏡で
ある胃鏡を用いた胃腸に関する手技を行うときにも使用できる。図2は、カートの一例である実施形態をより詳細に示す。
【0022】
引き続き図1を参照すると、カート11が適切に位置決めされると、ロボットアーム12は操縦可能な内視鏡13を患者に、ロボットにより、手動により、またはそれらの組み合わせにより挿入することができる。図示のように、操縦可能な内視鏡13は内側リーダ部分および外部シース部分などの少なくとも2つの入れ子式部分を備えることができ、各部分は器具ドライバ28のセットから別個の器具ドライバに結合され、各器具ドライバは個々のロボットアームの遠位端に結合される。リーダ部分をシース部分と同軸に位置合わせすることを容易にする、器具ドライバ28のこの線形配置は、1つ以上のロボットアーム12を異なる角度および/または位置に操作することによって、空間内で再配置され得る「仮想レール」29を作成する。本明細書で説明する仮想レールは破線を使用して図示され、したがって、破線はシステムのいかなる物理的構造も示さない。仮想レール29に沿った器具ドライバ28の移動は外部シース部分に対して内側リーダ部分を入れ子式にし、または内視鏡13を患者から前進または後退させる。仮想レール29の角度は、臨床用途または医師の好みに基づいて、調整、移動、および旋回されてもよい。例えば、気管支鏡検査では、図示のような仮想レール29の角度および位置が内視鏡13を患者の口内に曲げることに起因する摩擦を最小限に抑えながら、内視鏡13への医師のアクセスを提供することの折衷案を表す。
【0023】
内視鏡13は、挿入後、ロボットシステムからの正確なコマンドを使用して、目標位置または手術部位に到達するまで、患者の気管および肺に向けられ得る。患者の肺ネットワークを通るナビゲーションを強化し、かつ/または所望の標的に到達するために、内視鏡13を操作して、外部シース部分から内側リーダ部分を入れ子式に延ばして、関節動作を強化し、曲げ半径を大きくすることができる。別個の器具ドライバ28の使用はまた、リーダ部分およびシース部分が、互いに独立して駆動されることを可能にする。
【0024】
例えば、内視鏡13は例えば、患者の肺内の病変または結節などの標的に生検針を送達するように指示されてもよい。針は病理学者によって解析されるべき組織サンプルを得るために、内視鏡の長さにわたるワーキングチャネルに沿って展開され得る。病理学的結果に応じて、追加のツールが追加の生検のために、内視鏡のワーキングチャネルの下方に配置されてもよい。悪性である結節を同定した後、内視鏡13は、潜在的に癌性の組織を切除するためのツールを内視鏡的に送達し得る。いくつかの例において、診断および治療手技は、別々の手続で送達される必要があり得る。これらの状況では、内視鏡13はまた、
基準を送達して、対象結節の位置を「マーキング」するために使用され得る。他の例において、診断および治療手技は、同じ手順の間に送達され得る。
【0025】
システム10はまた、可動タワー30を含むことができ、このタワー30は、支持ケーブルを介してカート11に接続されて、カート11に対する制御、電子機器、流体工学、光学系、センサ、および/または電力のためのサポートを提供することができる。このような機能をタワー30内に配置することにより、より小さなフォームファクタのカート11が可能になり、これは、手術医師およびそのスタッフによって、より容易に調整および/または再配置され得る。さらに、カート/テーブルと支持タワー30との間の機能の分割は手術室の混乱を低減し、臨床作業の流れを改善することを容易にする。カート11を患者の近くに配置することができるが、タワー30は手技中に邪魔にならないように離れた場所に収容することができる。
【0026】
上述のロボットシステムのサポートにおいて、タワー30はコンピュータプログラム命令を、例えば、永続的磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に記憶するコンピュータベースの制御システムの構成要素を含むことができる。これらの命令の実行は、実行がタワー30またはカート11内で行われるかどうかにかかわらず、システム全体またはそのサブシステムを制御することができる。例えば、コンピュータシステムのプロセッサによって実行される場合、命令はロボットシステムの構成要素に、関連するキャリッジおよびアームマウントを作動させ、ロボットアームを作動させ、医療器具を制御させることができる。例えば、制御信号の受信に応じて、ロボットアームのジョイント内のモータは、アームを特定の姿勢に位置決めすることができる。
【0027】
タワー30はまた、内視鏡13を通して展開され得るシステムに制御された灌流および吸引能力を提供するために、ポンプ、流量計、弁制御、および/または流体アクセスを含む。これらの構成要素は、タワー30のコンピュータシステムを使用して制御することもできる。いくつかの実施形態では、灌流および吸引能力が別個のケーブルを介して内視鏡13に直接送達されてもよい。
【0028】
タワー30はカート11にフィルタされ保護された電力を供給するように設計された電圧およびサージプロテクタを含むことができ、それによって、カート11内に電力変圧器および他の補助電力部品を配置することが回避され、その結果、より小さく、より可動性の高いカート11が得られる。
【0029】
タワー30はまた、ロボットシステム10全体に展開されるセンサのための支持装置を含むことができる。例えば、タワー30はロボットシステム10全体にわたって光学センサまたはカメラから受信したデータを検出し、受信し、処理するための光電子機器を含むことができる。制御システムと組み合わせて、このような光電子機器を使用して、タワー30を含むシステム全体に配置された任意の数のコンソールに表示するためのリアルタイム画像を生成することができる。同様に、タワー30は配置された電磁(EM;Electromagnetic)センサから受信された信号を受信し、処理するための電子サブシステムも含む
ことができる。タワー30はまた、医療器具内または医療器具上の電磁センサによる検出のために電磁場発生器を収容し、位置決めするために使用されてもよい。
【0030】
タワー30は、システムの残りの部分で利用可能な他のコンソール、例えばカートの頂部に取り付けられたコンソールに加えて、コンソール31を含むこともできる。コンソール31は、ユーザインタフェースと、医師の操作者のためのタッチスクリーンなどの表示画面とを含むことができる。システム10内のコンソールは一般に、ロボット制御と、内視鏡13のナビゲーションおよび位置決め情報などの手術前およびリアルタイム情報との
両方を提供するように設計される。コンソール31が医師が利用できる唯一のコンソールではない場合、看護師のような第二の操作者によって、患者の健康状態や活動状態とシステムの動作を監視し、ナビゲーションおよび位置決め情報などの手続固有のデータを提供するために使用することができる。他の実施形態では、コンソール30は、タワー30とは別の筐体内に格納されている。
【0031】
タワー30は、1つまたは複数のケーブルまたは接続部(図示せず)を介してカート11および内視鏡13に結合することができる。いくつかの実施形態では、タワー30からのサポート機能が単一のケーブルを介してカート11に提供されてもよく、手術室を単純化し、混乱を解消する。他の実施形態では、特定の機能が別個のケーブル配線および接続で結合されてもよい。例えば、単一の電力ケーブルを介してカートに電力を供給することができるが、制御、光学、流体、および/またはナビゲーションのための支持体は別個のケーブルを介して提供することができる。
【0032】
図2は、図1に示されたカートベースのロボット使用可能システムからのカートの実施形態の詳細図を提供する。カート11は全体として、細長い支持構造14(しばしば「カラム」と呼ばれる)、カート基部15、およびカラム14の上端部にコンソール16を含む。カラム14は、1つまたは複数のロボットアーム12(図2には3つが示されている)の展開を支持するためのキャリッジ17(あるいは「アーム支持体」)などの1つまたは複数のキャリッジを含むことができる。キャリッジ17は、患者に対してより良好に位置決めするためにロボットアーム12の基部を調整するために垂直軸に沿って回転する個別に構成可能なアームマウントを含むことができる。キャリッジ17はまた、キャリッジ17がカラム14に沿って垂直に移動することを可能にするキャリッジインタフェース19を含む。
【0033】
キャリッジインタフェース19は、キャリッジ17の垂直方向の移動を案内するためにカラム14の両側に配置されたスロット20のようなスロットを介してカラム14に接続されている。スロット20はキャリッジをカート基部15に対して種々の垂直高さに位置決めし、保持するための垂直移動インタフェースを含む。キャリッジ17の垂直移動は、カート11が様々なテーブル高さ、患者サイズ、および医師の好みに合うようにロボットアーム12の到達範囲を調整することを可能にする。同様に、キャリッジ17上の個々に構成可能なアームマウントは、ロボットアーム12のロボットアームベース21が様々な構成で角度付けされることを可能にする。
【0034】
いくつかの実施形態では、スロット20がキャリッジ17が垂直に移動するときに、カラム14の内部チャンバおよび垂直移動インタフェース内への汚れおよび流体の進入を防止するために、スロット表面と面一であり、かつ平行であるスロットカバーで補足されてもよい。スロットカバーは、スロット20の縦上端部および底部の近くに配置されたバネスプールの対を通して展開されてもよい。カバーはキャリッジ17が垂直に上下に平行移動するときに、展開されてそれらのコイル状態から伸縮するまで、スプール内でコイル状に巻かれる。スプールのばね荷重はキャリッジ17がスプールに向かって移動するときにカバーをスプール内に引っ込める力を提供し、一方、キャリッジ17がスプールから離れるように移動するときにも緊密な捺印を維持する。カバーは例えば、キャリッジ17が移動するときにカバーの適切な伸縮を確実にするために、キャリッジインタフェース19内のブラケットを使用して、キャリッジ17に接続されてもよい。
【0035】
カラム14はユーザ入力、例えばコンソール16からの入力に応答して生成される制御信号に応答して機械的な方法でキャリッジ17を移動させるために、垂直に位置合わせされた親ねじを使用するように設計された、歯車およびモータなどの機構を内部に備えることができる。
【0036】
ロボットアーム12は一般に、一連のジョイント24によって接続された一連のリンク機構23によって分離されたロボットアーム基部21およびエンドエフェクタ22を備えることができ、各ジョイントは独立したアクチュエータを備え、各アクチュエータは独立して制御可能なモータを備える。各独立して制御可能なジョイントは、ロボットアームに利用可能な独立した自由度を表す。アーム12のそれぞれは7つのジョイントを有し、したがって、7つの自由度を提供する。多数のジョイントは多数の自由度をもたらし、「冗長である」自由度を可能にする。冗長な自由度は、ロボットアーム12が異なる結合位置および関節角を使用して、空間内の特定の位置、向き、および軌道にそれぞれのエンドエフェクタ22を位置決めすることを可能にする。これにより、システムは医師が腕の関節を患者から離れた臨床的に有利な位置に移動させて、腕の衝突を回避して、より広いアクセス範囲を実現しながら、空間内の所望の位置から医療器具を位置決めしたり方向付けたりすることが可能になる。
【0037】
カート基部15は、床上のカラム14、キャリッジ17、およびアーム12の重量を釣り合わせる。したがって、カート基部15は、電子機器、モータ、電源などのより重い構成要素、ならびにカートの移動および/または固定のいずれかを可能にする構成要素を収容する。例えば、カート基部15は、手技の前にカートが部屋の周りを容易に移動することを可能にする、回転可能なホイール形状のキャスタ25を含む。適切な位置に到達した後、キャスタ25は、手続中にカート11を所定の位置に保持するためにホイールロックを使用して固定されてもよい。
【0038】
コンソール16はカラム14の垂直端部に配置されているので、ユーザ入力を受け取るためのユーザインタフェースと、医師ユーザに手術前および手術中の両方のデータを提供するための表示画面(または、例えば、タッチスクリーン26などの二目的用装置)との両方を可能にする。タッチスクリーン26上の潜在的な術前データは、術前計画、術前コンピュータ断層撮影(CT)スキャンから導出されたナビゲーションおよびマッピングデータ、および/または術前患者インタビューからの注を含むことができる。ディスプレイ上の手術中データは、器具から提供される光学情報、センサおよびセンサからの座標情報、ならびに呼吸、心拍数、および/または脈拍などの患者の活動統計を含むことができる。コンソール16は医師がキャリッジ17の反対側のカラム14の側からコンソールにアクセスすることができるように、配置され、傾斜されてもよい。この位置から、医師はカート11の背後からコンソール16を操作しながら、コンソール16、ロボットアーム12、および患者を見ることができる。図示のように、コンソール16はまた、カート11の操縦および安定化を補助するためのハンドル27を含む。
【0039】
図3は、尿管鏡検査のために配置されたロボット使用可能システム10の実施形態を示す。尿管鏡手技では、カート11が患者の尿道および尿管を横切るように設計された手技特有の内視鏡である尿管鏡32を患者の下腹部領域に送達するように配置されてもよい。尿管鏡検査では、尿管鏡32を患者の尿道と直接位置合わせして、領域内の繊細な解剖学的構造に対する摩擦および力を低減することが望ましい場合がある。図に示されるように、カート11はロボットアーム12が患者の尿道への直接的な線形アクセスのために尿管鏡32を位置決めすることを可能にするために、テーブルの足に位置合わせすることができる。テーブルの足から、ロボットアーム12は、尿管鏡32を仮想レール33に沿って尿道を通して患者の下腹部に直接挿入することができる。
【0040】
尿道への挿入後、気管支鏡検査におけるのと同様の制御手法を使用して、尿管鏡32は診断および/または治療用途のために、膀胱、尿管、および/または腎臓内にナビゲートされ得る。例えば、尿管鏡32は、尿管鏡32のワーキングチャネルの下に配置されたレーザまたは超音波砕石装置を用いて、尿管および腎臓に向けられて、腎臓結石の蓄積を破
砕することができる。砕石術が完了した後、得られた結石断片は、尿管鏡32の下方に配置されたバスケットを用いて除去され得る。
【0041】
図4は、血管手技のために同様に配置されたロボット使用可能システムの実施形態を示す。血管手技では、システム10がカート11が操縦可能なカテーテルなどの医療器具34を患者の脚の大腿動脈内のアクセスポイントに送ることができるように構成することができる。大腿動脈はナビゲーションのためのより大きな直径と、患者の心臓への比較的遠回りで曲がりくねった経路との両方の特徴があり、このためナビゲーションを単純化できる。尿管鏡手技におけるように、カート11は、ロボットアーム12が患者の大腿/股関節領域における大腿動脈アクセスポイントへの直接的な線形アクセスを有する仮想レール35を提供することを可能にするように、患者の脚および下腹部に向かって配置され得る。動脈内への挿入後、医療器具34は、器具ドライバ28を移動させることによって方向付けられ、挿入されてもよい。あるいは、カートが例えば、肩および手首の近くの頸動脈および上腕動脈などの代替の血管アクセスポイントに到達するために、患者の上腹部の周りに配置されてもよい。
【0042】
(B.ロボットシステム-テーブル)
ロボット対応医療システムの実施形態はまた、患者のテーブルを組み込んでもよい。テーブルを組み込むことにより、カートを取り外すことによって手術室内の資本設備の量が減少し、患者へのアクセスがより大きくなる。図5は、気管支鏡検査手順のために配置されたそのようなロボット使用可能システムの実施形態を示す。システム36は、床の上にプラットフォーム38(「テーブル」または「ベッド」として示される)を支持するための支持構造または支柱37を含む。カートベースのシステムと同様に、システム36のロボットアーム39のエンドエフェクタは、図5の気管支鏡40などの細長い医療器具を、器具ドライバ42の直線的な位置合わせから形成された仮想レール41を通して、またはそれに沿って操作するように設計された器具ドライバ42を備える。実際には、X線透視画像を提供するためのCアームがテーブル38の周りにエミッタおよび検出器を配置することによって、患者の上腹部領域の上に配置され得る。
【0043】
図6は、説明のため患者および医療器具を除いたシステム36の代替図を示す。図示されているように、カラム37はシステム36内にリング形状として示されている1つ以上のキャリッジ43を含むことができ、このキャリッジを基に1つ以上のロボットアーム39を構成することができる。キャリッジ43はロボットアーム39が患者に到達するように配置され得る異なる視点を提供するために、カラム37の長さに沿って延びる垂直カラムインタフェース44に沿って移動してもよい。キャリッジ43は、カラム37内に配置された機械的モータを使用してカラム37の周りを回転して、ロボットアーム39がテーブル38の複数の側、例えば患者の両側にアクセスできるようにすることができる。複数のキャリッジを有する実施形態では、キャリッジがカラム上に個別に配置されてもよく、他のキャリッジとは独立して移動および/または回転してもよい。キャリッジ43はカラム37を取り囲む必要はなく、または円形である必要もないが、図示されるようなリング形状は構造的バランスを維持しながら、カラム37の周りのキャリッジ43の回転を容易にする。キャリッジ43の回転および移動により、システムは、内視鏡および腹腔鏡のような医療器具を患者の異なるアクセスポイントに位置合わせすることができる。他の実施形態(図示せず)では、システム36は、調節可能なアーム支持部を有する患者テーブルまたはベッドを備えてもよく、アーム支持部はテーブルまたはベッドに沿って延伸するバーやレールの形態として設けることができる。1つまたは複数のロボットアーム39(肘関節を有する肩部を介するなどによる)は、上記の調節可能なアーム支持部を垂直方向に調整して取り付けることができる。垂直方向の調整ができることで、ロボットアーム39は、患者テーブルまたは別途の下にコンパクトに収容でき、後で手技時に引き上げることができる。
【0044】
アーム39は、ロボットアーム39に追加の構成要素を提供するために個別に回転および/または入れ子式に延在することができる一連のジョイントを備える一組のアームマウント45を介してキャリッジに取り付けることができる。さらに、アームマウント45は、キャリッジ43が適切に回転されたときに、アームマウント45がテーブル38の同じ側(図6に示す)、テーブル38の反対側(図9に示す)、またはテーブル38の隣接する側(図示せず)のいずれかに配置されるように、キャリッジ43上に配置されてもよい。
【0045】
カラム37は構造的に、テーブル38を支持し、キャリッジを垂直方向に移動させるための経路を提供する。内部においては、カラム37がキャリッジの垂直移動を案内するためのリードスクリューと、リードスクリューに基づいて前記キャリッジの移動を機械化するためのモータとを備えることができる。カラム37はまた、キャリッジ43およびその上に取り付けられたロボットアーム39に電力および制御信号を伝達することができる。
【0046】
テーブル基部46は図2に示すカート11のカート基部15と同様の機能を果たし、テーブル/ベッド38、カラム37、キャリッジ43、およびロボットアーム39をバランスさせるためのより重い構成要素を収容する。テーブル基部46はまた、手続中の安定性を提供するために、硬性キャスタを組み込んでもよい。キャスタはテーブル基部46の下端から展開されて、基部46の両側で反対方向に延在し、システム36を移動させる必要があるときに後退することができる。
【0047】
引き続き図6を参照すると、システム36は、テーブルとタワーとの間でシステム36の機能を分割してテーブルのフォームファクタおよびバルクを低減するタワー(図示せず)を含むこともできる。上記の実施形態と同様に、タワーは、処理、計算、および制御能力、電力、流体工学、ならびに/または光学およびセンサ処理などの様々なサポート機能をテーブルに提供することができる。タワーはまた、医師のアクセスを改善し、手術室を煩雑にしないようにするために、患者から離れて配置されるように移動可能であってもよい。さらに、タワー内に部品を配置することにより、ロボットアームの潜在的な収納のためのテーブル基部内のより大きい収納スペースが実現する。タワーはまた、キーボードおよび/またはペンダントなどのユーザ入力のためのユーザインタフェースと、リアルタイム画像、ナビゲーション、および追跡情報などの術前および術中情報のための表示画面(またはタッチスクリーン)との両方を提供するコンソールを含むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、テーブル基部が使用されていないときにロボットアームを収納し、格納することができる。図7は、テーブルベースのシステムの一実施形態においてロボットアームを収容するシステム47を示す。システム47では、キャリッジ48がロボットアーム50、アームマウント51、およびキャリッジ48を基部49内に収容するために、基部49内に垂直に移動させることができる。基地カバー52は、キャリッジ48、アームマウント51、およびアーム50を列53の近辺に展開するために移動されて開閉され、使用されていないときにそれらを保護するために閉じられてもよい。基部カバー52は、その開口の縁部に沿って膜54で封止されて、閉鎖時の汚れおよび流体の進入を防止することができる。
【0049】
図8は、尿管鏡検査手順のために構成されたロボット使用可能なテーブルベースのシステムの実施形態を示す。尿管鏡検査では、テーブル38が患者をカラム37およびテーブル基部46から外れた角度に位置決めするための旋回部分55を含むことができる。旋回部分55は旋回部分55の下端を支柱37から離して位置決めするために、旋回点(例えば、患者の頭部の下に位置する)の周りで回転または旋回してもよい。例えば、旋回部分55の旋回は、Cアーム(図示せず)がテーブル38の下のカラム(図示せず)と空間を
競合することなく、患者の下腹部の上に配置されることを可能にする。キャリッジ35(図示せず)を支柱37の周りに回転させることによって、ロボットアーム39は、尿管鏡56を仮想レール57に沿って患者の鼠径部に直接挿入して尿道に到達させることができる。尿管鏡検査では、手技中に患者の脚の位置を支持し、患者の鼠径部への明確なアクセスを可能にするために、スターラップ58をテーブル38の旋回部分55に固定することもできる。
【0050】
腹腔鏡手技では、患者の腹壁の小さな切開を通して、最小侵襲性器具(1つ以上の切開のサイズに適応するように細長い形状)が患者の解剖学的構造に挿入され得る。患者の腹腔を膨張させた後、しばしば腹腔鏡と呼ばれる器具は把持、切断、切除、縫合などの手術タスクを実行するように指示されてもよく、図9は腹腔鏡手技のために構成されたロボット使用可能なテーブルベースのシステムの実施形態を示す。図9に示されるように、システム36のキャリッジ43はテーブル38の両側にロボットアーム39の対を位置決めするように回転され、垂直に調整され、その結果、腹腔鏡59は患者の腹腔に到達するために患者の両側の最小切開部を通過するようにアームマウント45を使用して位置決めされ得る。
【0051】
腹腔鏡手技に適応するために、ロボット使用可能テーブルシステムは、プラットフォームを所望の角度に傾斜させることもできる。図10は、ピッチまたはチルト調整を有するロボット使用可能医療システムの実施形態を示す。図10に示すように、システム36は、テーブル38の傾斜に適応して、テーブルの一部分を床から他の部分よりも大きな距離に位置決めすることができる。さらに、アームマウント45はアーム39がテーブル38と同じ平面関係を維持するように、傾きに合わせて回転することができる。より急勾配の角度に適応するために、カラム37は、カラム37の垂直延長部がテーブル38が床に触れたり基部46と衝突したりしないようにする入れ子式部分60を含むこともできる。
【0052】
図11は、テーブル38とカラム37との間のインタフェースの詳細を示す。ピッチ回転機構61は、欄37に対するテーブル38のピッチ角を複数の自由度で変更するように構成されてもよい。ピッチ回転機構61はカラム・テーブル・インタフェースにおける直交軸1、2の位置決めによって可能にすることができ、各軸は、電気的なピッチ角コマンドに応答して各軸が別個のモータ3、4によって作動される。一方のねじ5に沿った回転は一方の軸1における傾斜調整を可能にし、他方のねじ6に沿った回転は、他方の軸2に沿った傾斜調整を可能にする。いくつかの実施形態では、ボールジョイントを用いて、複数の自由度でカラム37に対する相対的なテーブル38のピッチ角を変更することができる。
【0053】
例えば、ピッチ調整は下腹部手術のために、テーブルをトレンデレンブルグ位置に位置決めしようとするとき、すなわち、患者の下腹部を患者の下腹部よりも床から高い位置に位置決めしようとするとき、特に有用である。トレンデレンブルグ位置は患者の内部器官を重力によって患者の上腹部に向かってスライドさせ、腹腔鏡前立腺切除術などの下腹部手術手技を開始して実行するための最小侵襲性ツール(minimally invasive tool)のた
めに腹腔の空間を空ける。
【0054】
(C.器具ドライバとインタフェース)
システムのロボットアームのエンドエフェクタは、(1)医療器具を作動させるための電気機械的手段を組み込む器具ドライバ(あるいは「器具駆動機構」または「器具装置マニピュレータ(IDM;instrument device manipulator)」と呼ばれる)と、(2)モ
ータなどの任意の電気機械的構成要素を削除できる取り外し可能または取り外し可能な医療器具とを備える。この二分法は、医療手技に使用される医療器具を滅菌する必要性、およびそれらの複雑な機械的アセンブリおよび繊細な電子機器のために高価な資本設備を適
切に滅菌することができないことが起因となりうる。したがって、医療器具は医師または医師のスタッフによる個々の滅菌または廃棄のために、器具ドライバ(したがってシステム)から取り外し、取り外し、および交換されるように設計されてもよい。対照的に、器具ドライバは、交換または滅菌される必要はなく、保護のためにドレープで覆われてもよい。
【0055】
図12は、例示的な器具ドライバを示す。ロボットアームの遠位端に配置された器具ドライバ62は駆動シャフト64を介して医療器具に制御されたトルクを提供するために、平行軸に配置された1つ以上の駆動ユニット63を備える。各駆動ユニット63は器具と相互作用するための個々の駆動シャフト64と、モータシャフトの回転を所望のトルクに変換するためのギアヘッド65と、駆動トルクを生成するためのモータ66と、モータシャフトの速度を測定し、制御回路にフィードバックを提供するためのエンコーダ67と、制御信号を受信し、駆動ユニットを作動させるための制御回路68とを備える。各駆動ユニット63は独立して制御され、電動化されており、器具ドライバ62は、医療器具に複数(図12に示すように4つ)の独立した駆動出力を提供することができる。動作中、制御回路68は制御信号を受信し、モータ信号をモータ66に送信し、エンコーダ67によって測定された結果のモータ速度を所望の速度と比較し、モータ信号を変調して所望のトルクを生成する。
【0056】
無菌環境を必要とする手技では、ロボットシステムが器具ドライバと医療器具との間に位置する、無菌ドレープに接続された無菌アダプタなどの駆動インタフェースを組み込むことができる。無菌アダプタの主な目的は駆動シャフトと駆動入力との間の物理的分離、したがって無菌性を維持しながら、器具ドライバの駆動シャフトから器具の駆動入力に角運動を伝達することである。したがって、例示的な無菌アダプタは、器具ドライバの駆動シャフトおよび器具上の駆動入力と嵌合されることが意図される一連の回転入力および出力を備えてもよい。滅菌アダプタに接続された滅菌ドレープは透明または半透明プラスチックなどの薄い軟性材料からなり、器具ドライバ、ロボットアーム、およびカート(カートベースのシステム内)またはテーブル(テーブルベースのシステム内)などの資本設備を覆うように設計される。ドレープの使用は滅菌を必要としない領域(すなわち、非滅菌領域)に依然として配置されている間に、患者の近くに資本設備を配置することを可能にする。滅菌ドレープの反対側では、医療器具が滅菌を必要とする領域(すなわち、滅菌野)において患者と接触することができる。
【0057】
(D.医療器具)
図13は、組になった器具ドライバを有する例示的な医療器具を示す。ロボットシステムと共に使用するように設計された他の器具と同様に、医療器具70は、細長いシャフト71(または細長い本体)および器具基部72を備える。医師による手動操作向けの設計として「器具ハンドル」とも呼ばれる器具基部72は、全体として、ロボットアーム76の遠位端で器具ドライバ75上の駆動インタフェースを通って延びる駆動出力74と嵌合するように設計された、回転可能な駆動入力73、例えば、レセプタクル、プーリ、またはスプールを備えてもよい。物理的に接続され、ラッチされ、および/または結合されると、器具基部72の嵌合された駆動入力73は器具ドライバ75内の駆動出力74と回転軸を共有し、駆動出力74から駆動入力73へのトルクの伝達が可能になる。いくつかの実施形態では、駆動出力74が駆動入力73上のレセプタクルと嵌合するように設計されたスプラインを備えてもよい。
【0058】
細長いシャフト71は例えば、内視鏡検査におけるように、解剖学的な開口またはルーメン、または、例えば、腹腔鏡検査におけるように、最小侵襲性切開のいずれかを介して送られるように設計される。細長いシャフト66は軟性(例えば、内視鏡と同様の特性を有する)または硬性(例えば、腹腔鏡と同様の特性を有する)のいずれかであり得るか、
または軟性部分および硬性部分の両方のカスタマイズされた組み合わせを含む。腹腔鏡検査用に設計される場合、硬性の細長いシャフトの遠位端は回転軸を有するUリンクと、器具ドライバ75の駆動出力74から受け取ったトルクに応じて駆動入力が回転するときにテンドンからの力に基づいて作動され得る、例えば、1つまたは複数の把持器などの手術用道具とから形成される接合手首を備えるエンドエフェクタに接続されてもよい。内視鏡検査用に設計される場合、可撓性の細長いシャフトの遠位端は、器具ドライバ75の駆動出力74から受け取られるトルクに基づいて関節動作および屈曲され得る、操縦可能または制御可能な屈曲部を含む。
【0059】
器具ドライバ75からのトルクは、シャフト71内のテンドンを使用して細長いシャフト71に伝達される。プルワイヤなどのこれらの個々のテンドンは、器具ハンドル72内の個々の駆動入力73に個々に固定することができる。ハンドル72から、テンドンは、細長いシャフト71内の1つ以上のプルルーメンに向けられ、細長いシャフト71の遠位部分に固定される。腹腔鏡検査では、これらのテンドンが手首、把持器、またはさみなどの遠位に取り付けられたエンドエフェクタに結合されてもよい。このような構成の下では、駆動入力73に及ぼされるトルクがテンドンに表面張力を伝達し、それによってエンドエフェクタを何らかの方法で作動させる。腹腔鏡検査では、テンドンは関節を軸の周りに回転させ、それによってエンドエフェクタを一指示または別の指示に移動させることができる。あるいはテンドンは細長いシャフト71の遠位端において、把持器の1つ以上の顎に接続され得、ここで、テンドンからの張力によって把持器が閉じる。
【0060】
内視鏡検査では、テンドンは接着剤、制御リング、または他の機械的固定を介して、細長いシャフト71に沿って(例えば、遠位端で)配置された屈曲または関節動作部に結合されてもよい。屈曲部の遠位端に固定して取り付けられると、駆動入力73に及ぼされるトルクがテンドンに伝達され、より柔軟性のある屈曲部(関節部または関節動作領域と呼ばれることもある)を屈曲または関節動作させる。非屈曲部に沿って、個々のテンドンを内視鏡シャフトの壁に沿って(または内側に)向ける個々のプルルーメンを螺旋状または螺旋状にして、プルワイヤの表面張力から生じる半径方向の力を釣り合わせることが効果的であり得る。スパイラルの角度および/またはそれらの間の間隔は特定の目的のために変更または設計されてもよく、スパイラルを緊密にすると荷重力下でのシャフト圧縮が小さくなり、一方、スパイラルを少なくすると荷重力下でのシャフト圧縮が大きくなるが限界曲げとなる。スペクトルの他端では、プルルーメンが細長いシャフト71の長手方向軸に平行に向けられて、所望の屈曲または関節動作可能な部分における制御された関節動作が可能となる。
【0061】
内視鏡検査では、細長いシャフト71がロボットシステム手続を補助するために、いくつかの構成要素を収容する。シャフトは、シャフト71の遠位端における手術領域に手術ツール、灌流、および/または吸引を展開するためのワーキングチャネルを備えてもよい。シャフト71はまた、ワイヤおよび/または光ファイバを収容して、光学カメラを含む遠位先端の光学アセンブリへ/から信号を伝達し得る。シャフト71はまた、光ファイバを収容して、発光ダイオードなどの近位に位置する光源からシャフトの遠位端に光を運ぶことができる。
【0062】
器具70の遠位端において、遠位先端はまた、診断および/または治療、灌流、および吸引のためのツールを手術部位に送達するためのワーキングチャネルの開口を備え得る。遠位先端はまた、内部解剖学的空間の画像を取得するために、ファイバースコープまたはデジタルカメラなどのカメラのためのポートを含んでもよい。関連して、遠位先端はまた、カメラを使用するときに解剖学的空間を照明するための光源のためのポートを含む。
【0063】
図13の例では駆動シャフト軸、したがって駆動入力軸は細長いシャフトの軸に直交す
る。しかしながら、この配置では、細長いシャフト71の回転機能が複雑になる。駆動入力73を静止状態に保ちながら、細長いシャフト71をその軸に沿って回転させると、テンドンが駆動入力73から延出して細長いシャフト71内のプルルーメンに入るときに、テンドンの望ましくない絡み合いが生じる。そのようなテンドンによって生じる絡み合いは、内視鏡手技時に可撓性の細長いシャフトの移動を予測することを目的とする任意の制御アルゴリズムの障害となり得る。
【0064】
図14は器具ドライバおよび器具の代替設計を示し、駆動ユニットの軸が器具の細長いシャフトの軸に平行である。図示のように、円形の器具ドライバ80は、ロボットアーム82の端部に平行に位置合わせされた駆動出力81を有する4つの駆動ユニットを備える。駆動ユニットおよびそれぞれの駆動出力81は、アセンブリ83内の駆動ユニットのうちの1つによって駆動される器具ドライバ80の回転アセンブリ83内に収容される。回転駆動ユニットによって提供されるトルクに応じて、回転アセンブリ83は、回転アセンブリ83を器具ドライバの非回転部分84に接続する円形ベアリングに沿って回転する。電気接点を介して器具ドライバ80の非回転部分84から回転アセンブリ83に電力および制御信号を伝達することができ、この信号は、ブラシ付きスリップリング接続(図示せず)による回転によって維持することができる。他の実施形態では、回転アセンブリ83が非回転部分84に一体化され、したがって他の駆動ユニットと平行ではない別個の駆動ユニットに応答することができる。回転機構83は、器具ドライバ80が器具ドライバ軸85の周りに単一のユニットとして、駆動ユニットおよびそれぞれの駆動出力81を回転させることができる。
【0065】
上記に開示した実施形態と同様に、器具86は、細長いシャフト部分88と、器具ドライバ80内の駆動出力81を受けるように構成された複数の駆動入力89(レセプタクル、プーリ、およびスプールなど)を備える器具基部87(説明のために透明な外皮と共に示されている)とを備えることができる。先に開示された実施形態とは異なり、器具シャフト88は、図13の設計におけるように直交するのではなく、駆動入力89の軸に実質的に平行な軸を有する器具基部87の中心から延伸する。
【0066】
器具ドライバ80の回転アセンブリ83に結合されると、器具基部87および器具シャフト88を備える医療器具86は、器具ドライバ軸85の周りで回転アセンブリ83と組み合わせて回転する。器具シャフト88は器具基部87の中心に配置されているので、器具シャフト88は取り付けられたとき、器具ドライバ軸85と同軸である。したがって、回転アセンブリ83の回転は、器具シャフト88をそれ自体の前後軸の周りに回転させる。さらに、器具基部87が器具シャフト88と共に回転するとき、器具基部87の駆動入力89に接続されたテンドンは、回転中に絡み合わない。したがって、駆動出力81、駆動入力89、および器具シャフト88の軸の平行性は、任意の制御テンドンの絡み合いを発生させることなく、シャフトを回転させることができる。
【0067】
(E.ナビゲーションと制御)
従来の内視鏡検査には、X線透視法(例えば、Cアームを介して送達され得るよう)および他の形態の放射線ベースの画像化モダリティの使用が含まれ、操作者の医師に管腔内ガイダンスが提供される。一方、本件開示によって実現されるロボットシステムは、放射線に対する医師の曝露を低減し、手術室内の器具の数を減らすために、非放射線ベースのナビゲーションおよび位置決め手段を提供する。本明細書で使用されるように、用語「位置決め」は、基準座標系における物体の位置を特定および/または監視することを指すことができる。術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイム電磁追跡、およびロボットコマンドデータなどの技術は放射線を用いない運用環境を達成するために、個別に、または組み合わせて使用されてもよい。放射線ベースの画像モダリティが依然として使用される他の場合には、術前マッピング、コンピュータビジョン、リアルタイム電磁追跡
、およびロボットコマンドデータは放射線ベースの画像モダリティによってのみ得られる情報を改善するために、個別に、または組み合わせて使用されてもよい。
【0068】
図15は、例示的な実施形態による、器具の位置など、ロボットシステムの1つまたは複数の要素の位置を推定する位置決めシステム90を示すブロック図である。位置決めシステム90は、1つまたは複数の命令を実行するように構成された1つまたは複数の計算装置のセットとすることができる。計算装置は、上述の1つまたは複数の構成要素内のプロセッサ(または複数のプロセッサ)およびコンピュータ可読メモリによって具現化され得る。限定ではなく例示として、計算装置は、図1に示すタワー30内や、図1~4に示すカート内や、図5~10に示すベッド内などに配置されてよい。
【0069】
図15に示すように、位置決めシステム90は、入力データ91~94を処理して医療器具の遠位先端の位置データ96を生成する位置決めモジュール95を含むことができる。位置データ96は、基準系に対する器具の遠位端の位置および/または向きを表すデータまたはロジックであってもよい。基準系は、患者の解剖学的構造、または電磁場発生器(電磁場発生器については以下の説明を参照)などの既知の物体に対する基準系とすることができる。
【0070】
ここで、さまざまな入力データ91~94についてより詳細に説明する。術前マッピングは、低線量CTスキャンの収集を使用することによって達成することができる。術前CTスキャンは2次元画像を生成し、各画像は、患者の内部解剖学的構造の破断図の「スライス」を表す。集合体で解析される場合、患者の肺ネットワークなどの患者の解剖学的構造の解剖学的空洞、空間、および構造のための画像ベースのモデルが生成され得る。中心線ジオメトリのような手法は、CT画像から決定され、近似されて、術前モデルデータ91と呼ばれる患者の解剖学的構造の3次元ボリュームを展開することができる。中心線ジオメトリの使用については、米国特許第14/523,760号に記載されており、その内容の全体を本願に援用する。また、ネットワークトポロジーモデルは、CT画像から導出されてもよく、気管支鏡検査に特に適している。
【0071】
いくつかの実施形態では、器具が視覚データ92を提供するためにカメラを装備することができる。位置決めモジュール95は1つまたは複数の視覚ベースの位置追跡を可能にするために、視覚データを処理することができる。例えば、手術前モデルデータは医療器具(例えば、内視鏡または内視鏡のワーキングチャネルを通る器具の前進)のコンピュータビジョンベースの追跡を可能にするために、ビジョンデータ92と共に使用されてもよい。例えば、手術前モデルデータ91を使用して、ロボットシステムは内視鏡の予想される移動経路に基づいてモデルから予想される内視鏡画像のライブラリを生成することができ、各画像はモデル内の位置にリンクされる。手術中に、このライブラリはカメラ(例えば、内視鏡の遠位端にあるカメラ)で取得されたリアルタイム画像を画像ライブラリ内の画像と比較して位置決めを補助するために、ロボットシステムによって参照されてもよい。
【0072】
他のコンピュータビジョンベースの追跡技術は、カメラ、したがって内視鏡の動きを特定するために特徴追跡を使用する。位置決めモジュール95のいくつかの特徴は解剖学的な管腔に対応する手術前モデルデータ91内の円形の幾何学的形状を識別し、それらの幾何学的形状の変化を追跡して、どの解剖学的な管腔が選択されたかや、カメラの相対的な回転および/または移動運動を特定することができる。トポロジーマップの使用によって、視覚ベースのアルゴリズムまたは方法をさらに強化することができる。
【0073】
別のコンピュータビジョンベースの技術であるオプティカルフローはカメラの動きを推測するために、ビジョンデータ92のビデオシーケンス内の画像画素の変位および移動を
解析することができる。複数の反復にわたる複数のフレームの比較によって、カメラ(したがって、内視鏡)の移動および位置を特定することができる。
【0074】
位置決めモジュール95は、リアルタイム電磁追跡を使用して、手術前モデルによって表される患者の解剖学的構造に位置合わせすることができるグローバル座標系における内視鏡のリアルタイム位置を生成し得る。電磁追跡では医療器具(例えば、内視鏡ツール)の1つ以上の位置および向きに埋め込まれた1つ以上のセンサコイルを備える電磁センサ(トラッカ)は既知の位置に配置された1つ以上の静的電磁場発生器によって生成された電磁場の変動を測定する。電磁センサによって検出された位置情報は、電磁データ記憶される。電磁場発生器(または送信機)は埋め込まれたセンサが検出し得る低強度磁場を生成するために、患者の近くに配置され得る。磁界は電磁センサコイルに小さな電流をガイドし、この電流は、電磁センサと電磁界発生器との間の距離および角度を特定するために解析され得る。これらの距離および向きは、座標系内の単一の位置を患者の解剖学的構造の手術前モデル内の位置と位置合わせさせる幾何学的変換を特定するために、患者の解剖学的構造(例えば、手術前モデル)に対して手術中に「位置合わせ」されてもよい。一旦位置合わせされると、医療器具の1つ以上の位置(例えば、内視鏡の遠位先端)に埋め込まれた電磁追跡装置は、患者の解剖学的構造を通る医療器具の進歩のリアルタイムの指示を提供し得る。
【0075】
ロボットコマンドおよび運動学データ94はまた、ロボットシステムのための位置決めデータ96を提供するために、位置決めモジュール95によって使用されてもよい、関節動作コマンドから生じる装置ピッチおよびヨーは、手術前較正中に特定され得る。手術中に、これらの較正計量値は器具の位置を推定するために、既知の挿入デプス情報と組み合わせて使用されてもよい。あるいは、これらの計算がネットワーク内の医療器具の位置を推定するために、電磁、視覚、および/またはトポロジーモデリングと組み合わせて解析されてもよい。
【0076】
図15に示すように、多数の他の入力データを位置決めモジュール95によって使用することができる。例えば、図15には示されていないが、形状感知ファイバを用いる器具は、位置決めモジュール95が器具の位置および形状を特定するために使用する形状データを提供することができる。
【0077】
位置決めモジュール95は、入力データ91~94を組み合わせて使用することができる。場合によっては、このような組み合わせは位置決めモジュール95が入力データ91~94のそれぞれから特定された位置に信頼性重みを割り当てる確率的アプローチを使用することができる。したがって、電磁データが信頼できない場合(電磁干渉がある場合のように)、電磁データによって特定される位置の信頼性は低下する可能性があり、位置決めモジュール95は、視覚データ92および/またはロボットコマンドおよび運動学データ94により依存する可能性がある。
【0078】
上記の通り、本明細書で説明するロボットシステムは、上記の技術のうちの1つまたは複数の組合せを組み込むように設計することができる。タワー、ベッドおよび/またはカートに基づくロボットシステムのコンピュータベースの制御システムはコンピュータプログラム命令を、例えば、永続的磁気記憶ドライブ、ソリッドステートドライブなどの非一時的コンピュータ可読記憶媒体内に記憶することができ、これは、実行時に、システムにセンサデータおよびユーザコマンドを受信および解析させ、システム全体の制御信号を生成させ、グローバル座標系内の器具の位置、解剖学的マップなどのナビゲーションおよび位置決めデータを表示させる。
【0079】
(2.方向制御された流体工学)
本開示の実施形態は、患者の治療部位から物体を除去するためのシステムおよび手法、特に、物体の除去手技中に方向制御された流体工学を使用する方法およびシステムに関する。
【0080】
物体の除去手技において、流体工学(例えば、生理食塩水などの液体の灌流(流入量)および/または吸引(流出)が治療部位に適用され得る。例えば、経皮的腎切開術(PCNL;Percutaneous Nephrolithotomy)中に、流体を用いて、腎臓結石の破砕によって引き起こされる結石塵や小片を視野から除去することができる。しかしながら、以下でより詳細に説明するように、物体の除去手技中の流体工学に対する従来のアプローチでは、複雑な問題を引き起こし得る。例えば、灌流によって治療部位内に流体の流れを生じた結果、手技に使用する医療器具から遠ざかる方向に物体が移動してしまう可能性がある。
【0081】
本明細書中で使用する用語「方向制御された流体工学」は、従来の流体工学に対する改良を提供して、物体の除去手技を容易にし、および/または従来の物体の除去手技に関連する1つ以上の問題を解決または緩和する、本開示の方法、技術およびシステムに適用される。一般に、方向制御された流体工学は、灌流および/または吸引の流体の流れの種々の特徴(例えば、流速、方向、圧力、位置等)を制御すること、および/または物体の除去手技を容易にするために、吸引の流出点(または複数の流出点)から灌流の流入点(または複数の流入点)を分離することを含む。いくつかの例では、方向制御された流体工学は、単一の医療器具(例えば、経皮的に挿入された医療器具)を介して灌流および吸引を提供することを含み、また、物体の除去を容易にするための灌流および吸引の特徴を制御することを含み得る。いくつかの例では、方向制御された流体工学は、流入点から流出点までの流れ方向を制御することを含み、それによって、例えば、手技中に物体を保持または安定化させる。方向制御された流体工学のこれらおよび他の特徴、ならびに物体除去手技中に方向制御された流体工学を実施するための種々の方法およびシステムは、以下に詳細に説明する実施例によって明らかにされる。以下の実施例は、本開示の原理を説明することを目的とし、本開示を限定するものと解釈すべきではない。
【0082】
本明細書に記載されるいくつかの実施例において、物体の除去手技は、腎臓からの腎臓結石の除去に関する。しかし、この開示は、腎臓結石の除去に限定されるものではない。例えば、以下の説明は、例えば、胆嚢結石の除去、肺(肺/胸郭)の腫瘍生検、白内障の混濁部分の除去など、経皮的および/または内視鏡的なアクセスを介して、治療部位または患者の管腔(例えば、食道、尿管、腸、眼など)から除去することができる物体を含む、患者から物体を除去することに関係する他の手術的または医療的な手技や医療手技に適用することができる。
【0083】
(A.物体の除去に関する背景について)
上述のように、物体除去は、一般的な外科手術または医療手技である。この節では、本明細書に開示する方向制御された流体工学を使用する物体除去のための方法およびシステムの特徴および利点の理解を深めるために、最初に特定の物体の除去手技に関する背景情報について説明する。一例として、腎臓から腎臓結石を除去するための手技について説明する。
【0084】
一般に、腎臓結石の患者を治療する方法としては、観察、医学的な治療(排出療法など)、非侵襲的治療(体外衝撃波結石破砕術(ESWL)など)、手術的な治療(尿管鏡検査やPCNLなど)などがある。2つの手術的なアプローチ(尿管鏡検査およびPCNL)では、術者は病変部(例えば、結石など除去される物体)にアクセスして、結石にエネルギーを送って小片または小片に分割し、断片/小片が腎臓から機械的に抽出される。
【0085】
PCNLを構成する一要素は、流体工学(灌流および吸引)の使用である。PCNLに
おいて、流体は、治療部位から結石の粉塵や小片、血栓を取り除き、医療器具によって提供される視野を明瞭にするために用いられる。
【0086】
図16は、経皮的に腎臓103に挿入された医療器具100を使用して、腎臓103から物体101を除去するための手技の一例を示す。図示された例は、PCNL法を表す例でもある。物体101は、腎臓結石のような除去のために標的とされる任意の物体である。図の例では、医療器具100は、腹腔鏡または腎臓鏡105を含む。腎臓鏡105は、アクセスシース107を通して腎臓103内に経皮的に挿入することができる。腎臓鏡105は、種々の器具を挿入することができるが、ワーキングチャネル108を含む。図示のように、砕石器109(超音波砕石器など)は、腎臓鏡105のワーキングチャネル108を介して挿入さる。腎臓鏡105はまた、手術医が治療部位を可視化できるように構成された光学系を有してもよい。図には、光学系の視野117を示す。
【0087】
一般に、医療器具100は、医療器具100を物体101に向けてトルクを付与することによって、腎臓103内をナビゲートする。手術医の目標は、砕石器109の遠位端121を物体101に接触させて、物体101を小片に破砕し、これを除去することである。
【0088】
図16の矢印で示すように、灌流(例えば、生理食塩水溶液)は、医療器具100を介して治療部位(例えば、腎臓103)に適用することができる。この例では、灌流は腎臓鏡105を流れて、遠位先端113を通って腎臓103に流出する。灌流は、手術医が治療部位を可視化することを可能にするとともに、物体101へのアクセスを可能にするために腎臓103を膨張させることを可能にするために、視野117から結石の粉塵および小さな断片を除去するために使用することができる。図示の例では、吸引は、医療器具100を介して治療部位にも適用される。図示のように、液体は、アクセスシース107および砕石器109のチャネルを通して腎臓103から除去することができる。いくつかの例では、灌流は、砕石器109を通って(能動的に)ポンピングされ、アクセスシース107を通る灌流の残りは、受動的に流れる(例えば、アクセスシース107を通って受動的に流れる)。いくつかの例において、手順全体において流体工学が適用される。
【0089】
手技時に適用される流体は、図16の矢印によって示される流体の流れを確立することができる。最初に、流体は、腎臓鏡105の遠位先端113から物体101に向かって外向きに流出することができる。アクセスシース107および砕石器109を通る灌流は、流体を医療器具100に逆流させることができる。図に示すように、物体101の領域では、流体は、医療器具100の遠位端に対して、物体101に向かって流れており、また物体101から遠ざかる方向にも流れている。場合によっては、このような流体の全体としての影響として、小さく予測不可能な多数の渦119が、物体101および医療器具100の遠位端の周りに形成されることである。これにより、物体101が医療器具100から押し離されることになる。この結果、手術医は、砕石器109を物体101に接触させることができなかったり、および/または結石が破砕される際に、結石109の小片が散らばってしまったりする。これらの問題は、灌流のみが能動的に管理され、吸引が受動的であるために、手技時に高度な流体制御ができない場合に生じる。もう1つの潜在的な問題は、腎臓103が過度に膨張する可能性があることである。
【0090】
別の例として、尿管鏡による結石破砕術において、尿管鏡が尿管を通って腎臓に入り、結石回収バスケットおよび砕石器を用いて、腎臓結石を移動および破砕することができる。例えば、尿管鏡を通して砕石器を展開し、結石を小片に破砕することができる。腎臓結石の砕石の際には、いくつかの問題が生じうる。例えば、(結石を破砕するためにエネルギーを加える)砕石器は、腎臓内で結石が予期せず動き回る原因となることがある。また、上述のように、砕石器によって、治療部位内の視野を制限する可能性のある粉塵が発生
する。結石が破砕された後、小片を除去し、バスケット装置を尿管鏡を通して展開して、小片を回収することができる。この方法は、手間と時間の両方が必要である。すべての小片をバスケットで除去しようとしても、わずかな小片が残存する可能性がある。
【0091】
前述した腎臓結石除去の手技(PCNLおよび尿管鏡検査)では、一定の課題または複雑な問題を生じる可能性がある。例えば、PCNLでは、腎臓内に流体の流れを発生させることで物体および小片を医療器具から遠ざける結果、除去手技が複雑になる可能性がある。尿管鏡検査では、腎臓結石を破砕するために尿管鏡を通して使用される砕石器を使用することがあるが、砕石時に結石を安定化させるための機構がない場合がある。場合によっては、結石を破砕するために使用されるエネルギーにより、結石は砕石器から遠ざかる方向に跳ね返り、除去が難しくなる。また、砕石器を介して結石を破砕すると、治療部位の視界を妨げる粉塵が発生する。これらの手技に関する別の課題は、腎臓の周囲の解剖学的構造に起因して、医師が治療部位にアクセスすることが困難な場合があることである。例えば、腎臓の外部の周囲の解剖学的構造のために、腎臓への経皮的なアクセス位置が制限されることがある。
【0092】
(B.方向制御された流体工学を用いた物体の除去の概要)
本明細書に記載される方法およびシステムは、方向制御された流体工学を使用することによって、(上記の)PCNLおよび尿管鏡の1つまたは複数の問題を緩和または解決するために使用することができる。いくつかの実施形態では、灌流(流入)が第1の医療器具の第1のチャネル(例えば、経皮的に挿入された医療器具)を介して治療部位に流入し、吸引(流出)が第1の医療器具の第2のチャネルを介して治療部位から流出するように、方向制御された流体工学を適用することができる。ある実施形態において、灌流および吸引は両方とも能動的である。いくつかの実施形態において、灌流および吸引は、所望の流動特性を生成するように管理することができる。いくつかの実施形態では、灌流または吸引を提供しない第2の医療器具も、手技中に、例えば、除去される物体を分解するために使用することができる。いくつかの実施形態では、灌流(流入)が第1の医療器具(例えば、カテーテルまたは内視鏡)を介して治療部位に流入し、吸引(流出)が第2の医療器具(例えば、カテーテルまたは内視鏡)を介して治療部位から流出するように、方向制御された流体工学を適用することができる。これにより、第1の器具から第2の器具に向かって制御された流体の流れを生み出すことができる。制御された流れは、物体の除去を容易にする。第1の医療器具は、除去される物体の治療部位の順行性に挿入することができ、第2の医療器具は、物体の治療部位の逆行性に挿入することができる。第1の医療器具は、患者の管腔を介して、または経皮的に挿入することができる。第2の医療器具は、患者の管腔を介して、または経皮的に挿入することができる。いくつかの実施形態において、第1の医療器具は、患者の管腔(例えば、尿管)を介して治療部位(例えば、腎臓)に挿入され、第2の医療器具は、経皮的に治療部位に挿入される、あるいはその逆でもよい。
【0093】
第1および第2の医療器具の一方または両方は、図1図15を参照して説明したようにロボット制御された医療機器であってもよい。したがって、以下に記載される方法およびシステムは、いくつかの実施形態においてロボットにより使用することができる。
【0094】
いくつかの例において、方向制御された流体工学は、流出(吸引)点からの流入(灌流)点の分離を含む。流入は、例えば、流体の流れが第2の医療器具に向かうように、第1の医療器具の遠位端を第2の医療器具に偏向させることで、流出点に向かわせることができる。これは、図1図15を参照して上述したシステムおよび機器を用いてロボット的におよび/または自動的に達成することができる。いくつかの実施形態において、流入(灌流)は、第1の医療器具が乱流を引き起こすことなく十分に高い流入率を達成するように構成される限り、方向性を有する(すなわち、特定の方向に向けられる)必要はない。
これにより、治療部位(例えば、腎臓)において、結石の位置をずらすことなく流体で満たすことが可能になる。いくつかの実施形態において、流出(吸引)は、単一の点あるいは集約された点である。流出点は、小片が流出点に向かって引っ張られるように、高速かつ流量の多い流体を提供するように構成することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、灌流速度および吸引速度を調整して、結石の位置ずれまたは位置固定を良好にしたり、灌流が治療部位のすみずみに到達するよう意図的に乱流を発生させたりすることができる。例えば、灌流と吸引のサイクルを緩やかに変更することで、大きな結石を腎杯から遠ざけ、吸引部位に向かって優先的に引っ張るような効果を生み出すことができる。あるいは、短いパルス的な流入と流出を用いることで、乱流を生じさせ、より小さく軽い小片を治療部位に定着させることなく、灌流内に浮遊させて、最終的に流出物と共に吸引することができる。
【0096】
図17は、患者の管腔202を介して腎臓103に挿入された第1の医療器具200、経皮的に腎臓に挿入された第2の医療器具204、および方向制御された流体工学を用いて、腎臓103から物体101を除去するための手技の一例を示す。図17に示す例では、第1の医療器具200は、尿管鏡などの内視鏡を含む。患者の管腔202は、尿管を含む。第1の医療器具200は、灌流を供給するためのチャネルを含む。チャネルは、灌流源およびポンプに接続することができる(図25参照)。第1の医療器具200は、関節動作可能とすることができる。第1の医療器具200は、ロボット制御されてもよい。
【0097】
図示のように、第2の医療器具204は、腎臓鏡105を含む。腎臓鏡105は硬性の腎臓鏡であってもよい。腎臓鏡105は、アクセスシース107を通して腎臓103内に経皮的に挿入することができる。腎臓鏡105は、ワーキングチャネル108を含むことができるが、種々のツールを挿入することができ、または吸引または灌流のためのチャネルとして使用することができる。いくつかの実施形態において、腎臓鏡内の他のチャネルを吸引および灌流のために使用することができる。図示のように、砕石器109(超音波砕石器など)は、腎臓鏡105のワーキングチャネル108を介して挿入されてもよい。腎臓鏡105はまた、手術医が治療部位を可視化できるように構成された光学系を含む。図には光学系の視野117が示されている。
【0098】
図17に、流体の流れを矢印で示す。図示のように、灌流は第1の医療器具200を介して提供され、吸引は第2の医療器具204を介して提供される。図示された実施形態では、灌流は、砕石器109を介して提供されるが、灌流は、腎臓鏡105および/またはアクセスシース107を介して代替的に(または追加的に)提供され得る。図示のように、流入(灌流)点と流出(吸引)点とが分離され、第1の医療器具200から第2の医療器具204への一般的な流れ方向が確立される。
【0099】
上述のように、第2の医療器具204は、(視野117を用いて)治療部位を可視化するための光学系(例えば、カメラ)を含むことができる。フローは、第1の器具200から離れ、第2の器具204に向かって連続的に導かれるので、光学系の視野117は、透明であり続けることができ、治療部位の改善された視覚化を可能にする。さらに、流体の流れは、砕石器109を含む第2の医療器具204に向けられているので、物体101および小片は第2の医療器具204に向かって押されることで、砕石器109との接触が容易になる。
【0100】
方向制御された流体工学のこの概念は、破片、塵、血栓、および小片が、第2の医療器具204に向かって、および結石の抽出または破砕装置(砕石器109)に自然に流れ込むことを可能にする。医師が小片を追跡する必要がある場合に、医師は、第2の医療器具204から離れるよりもむしろ医療機器204に向かって流れる傾向があるため、他の手
技に比べて小さい程度で装置を操作するだけでよい。
【0101】
さらに、灌流が腎臓鏡105および/またはアクセスシース107を介して提供される場合には、灌流および/または吸引は砕石器109を介して提供される必要がないため、さらに大きい直径の砕石器109を使用することができる。
【0102】
別の例では、第2の器具204は、治療部位(例えば、腎臓)への経皮的アクセスを介して挿入される関節動作可能なカテーテルである(図18、19、26Aおよび26Bを参照)。カテーテルは、腎臓内をナビゲートできるように構成することができる。例えば、カテーテルは、治療部位に挿入および後退したり、関節動作(例えば、屈曲)させたりすることができる。いくつかの実施形態において、カテーテルは、関節を制御するためのプルワイヤを含む。いくつかの実施形態では、カテーテルの関節動作を可能にするために、4本のプルワイヤが4つの直交方向に偏向される。カテーテルの関節動作を可能にする他の方法も可能である。カテーテルは、例えば、吸引管腔(またはチャネル)を含むことができる。吸引管腔はポンプに接続することができる。ポンプは、外部ポンプであってもよい。ポンプは、治療部位からカテーテル内への流れを引き起こす負圧を発生させる。吸引機能は、ユーザまたはシステムによって切り替え(例えば、オンおよびオフ)したり、調節したりすることができる。いくつかの実施形態において、吸引用の管腔は、灌流にも使用することができる。
【0103】
カテーテルは、方向制御された流体工学を使用する物体の除去手技中にいくつかの機能を提供する。例えば、カテーテルは、破砕術の際に結石の位置を固定させることができる。結石がカテーテルの吸引管腔よりも大きい場合、結石は吸引管腔の遠位面に保持され、結石が粉塵や小片に破砕される際に、結石の位置を固定させることができる。吸引に用いる流体の流れによって、結石を遠位面に保持することができる。これは、使用者にとって破砕術において物体の移動をより少なくすることができる。
【0104】
カテーテルによって治療部位の視認性が向上する。カテーテルは腎臓から結石の粉塵を除去することができる。これは、例えば、治療部位に挿入された画像処理装置(例えば、治療部位に挿入された医療器具上に配置されている)からの、可視性の改善(例えば、継続的な適切な可視性)をユーザに提供することができる。
【0105】
カテーテルは、結石の粉塵や破片を除去することができる。流体の流れは、カテーテル内に流体および破片を運ぶことができる。破片は、発生時(すなわち、結石が破砕されている間)に除去することができる。カテーテルを介した破片の除去は、尿管鏡バスケットによる小片の除去の代わりに使用でき、これは、結石の周りのバスケットを閉じるのが困難であること、および小片の除去中に尿管鏡を抜去して再挿入する必要があるために時間がかかることがある。これにより、より効率的な除去手技が実現する。このような手技は、例えば、結石が破砕されるにつれて、小片が除去されるので、より早く完了することができる。カテーテルを介して塵を除去することは、結石断片による組織の損傷(例えば、尿管からの結石の除去中)のリスクを抑えることもできる。
【0106】
カテーテルは腎臓結石の位置を変えるために使用できる。例えば、カテーテルは、腎臓内を結石または結石の破片に向かってナビゲートするように構成することができる。吸引により、結石または結石の破片をカテーテルの遠位先端に保持し、腎臓内の別の位置に移動させることができる。この機能は、結石を移動または移動させるためにバスケット装置を使用する必要性をなくすあるいは小さくすることができる。カテーテルは、尿管内に移動した結石または小片を回収するために、尿管内を前進するように構成することもできる。これにより、医師は特定の手技中に用いられる尿管保護装置を用いることなく手技を行うことができる。
【0107】
カテーテルは、手技中に種々の方法で使用することができる。例えば、カテーテルは、手技全体を通して移動可能である。カテーテルは、砕石術中に特定の結石/破片を保持するために、また塵/破片を吸引するために、治療部位の周囲を移動することができる。別の例では、カテーテルは、手技中に最初に静止させておき、そして第1の医療器具(例えば、尿管鏡)を使用して、結石をカテーテルに移すことができる。そして、結石をカテーテルにおいて破砕することができる。手技の後段において、カテーテルを治療部位を通って残存する塵を除去することができる。別の例では、例えば、手技時に必要な場合にのみカテーテルを(例えば、経皮的に)挿入してもよい。
【0108】
図18は、患者の管腔202を介して腎臓103に挿入された第1の医療器具200、経皮的に(例えば、アクセスシース107を介して)腎臓103に挿入されたステアラブルカテーテルのような第2の医療器具204、および方向制御された流体工学を用いて、物体101を腎臓103から除去するための例示的手続を示す。灌流は、第1の医療器具200を介して提供することができ、吸引は、第2の医療器具204を介して提供することができる。この例では、流入量(灌流)点と流出(吸引)点とが分離され、第1の医療器具200から第2の医療器具204へと一般的な流向が確立される。矢印は流体の流れの方向を示す。
【0109】
図18に示すように、第1の医療器具200は、関節動作可能である。これは、第1の医療器具200の形状または姿勢を制御することができる。いくつかの実施形態において、関節動作は、上述のようにロボット的に制御される。図示のように、第1の医療器具200は、灌流の流れが第2の医療器具204に向くように関節動作することができる。これは、第1の医療器具200から第2の医療器具204への流体の流れを確立するのに役立つ。
【0110】
第2の医療器具204(例えば、操縦可能なカテーテル)もまた、関節動作可能である。これは、第2の医療器具204の形状または姿勢を制御することができる。いくつかの実施形態において、関節動作は、上述のようにロボット的に制御される。図示のように、第2の医療器具204は、関節可能な遠位端206を含む。第2の医療器具204(またはその遠位先端206)は、遠位先端206が第1の医療器具200および/または物体101に向くように関節動作させることができる。これは、第1の医療器具200から第2の医療器具204に向かう流体の流れを確立し、それによって、物体101を第2の医療器具204に向かって引っ張るのに役立つ。
【0111】
図19は、患者管腔202を介して腎臓103内に挿入された第1の医療器具200、経皮的に(例えば、アクセスシース107を介して)腎臓103内に挿入された第2の医療器具204、および方向制御された流体工学を用いて、物体101を腎臓103から除去するための別の手技の例を示す。図の例では、第1の医療器具200は、砕石器109を含む。第1の医療器具200から第2の医療器具204への流体の流れを用いて、物体101および/または小片を第2の医療器具204の遠位端206上に保持することができる。これは、第1の医療器具200の砕石器109を用いた砕石術において、物体101および/または小片の位置を維持することができる。第2の医療器具204の遠位先端206は、物体101および/または小片の位置を維持するよう保持するために、その遠位先端にポケット(または他の保持装置)を含むことができる。例えば、以下に説明する図26Aおよび図26Bを参照されたい。
【0112】
図20は、第1の医療器具200の遠位先端203(灌流を提供する)および第2の医療器具204の遠位先端206(物体の除去手技中に吸引を提供する)の詳細図である。矢印は、第1の医療器具200から第2の医療器具204への流れの方向を示す。図に示
すように、灌流は、第1の医療器具200内の第1の流体チャネル205を通過し、遠位端203から流出する。吸引は、遠位端206および第2の流体チャネル207を介して提供される。図に示すように、流体の流れによって、物体101が第2の医療器具204の遠位端206に向かって移動する。
【0113】
いくつかの例では、カテーテルは、(上記の吸引に加えて)腎臓内への流体の灌流を提供する機能を有する。例えば、カテーテルの灌流チャネルは、カテーテルの近位端で開始することができ、カテーテルシャフトと吸引用のルーメンチューブとの間の環状空間を含む。カテーテルの遠位端は、灌流用の開口を含む。例えば、カテーテルは、灌流が流出する円周方向の穴(例えば、4つの穴)を含む。灌流は、ユーザまたはシステムによってオン/オフされる。灌流は、本明細書で説明する灌流と吸引とのバランスを維持したり変更したりする機能を有するための流体システムに接続されてもよい。
【0114】
図21Aは、灌流を提供する第1の医療器具200の遠位先端と、物体の除去手技中の灌流および吸引の両方を提供する第2の医療器具204の遠位先端206の詳細図である(以下に説明する図26Aおよび図26Bも参照)。矢印は、第1の医療器具200から第2の医療器具204への流れの方向を示す。図に示すように、この例では、灌流は、第1の医療器具200内の第1の流体チャネル205を通過し、遠位端203から流出する。図20と同様に、吸引は、第2の医療器具204の遠位端206および第2の流体チャネル207を介して提供される。しかしながら、第2の医療器具204は、灌流を供給するための追加の流体チャネル209を含む。追加の流体チャネル209は、第2の流体チャネル207を環状に囲む。図示の実施形態では、追加の流体チャネル209は、第2の医療器具204の遠位端206付近の流体出口211で終端する。いくつかの実施形態では、流体出口211は、第2の医療器具204からの灌流を遠位端206から離れるように方向付けることができる。いくつかの実施形態では、流体出口211は、灌流を遠位端206から半径方向に向けることができる。図に示すように、流体の流れによって、物体101が第2の医療器具204の遠位端206に向かって移動する。
【0115】
いくつかの実施形態では、灌流および吸引は単一の医療器具によって提供することも、別の医療器具によって手技を行う際に使用することもできる。例えば、図21Bは、砕石器216と、物体の除去手技中の灌流と吸引の両方を提供する第2の医療器具204の遠位先端206とを有する、砕石術を行う第1の医療器具200の遠位先端の詳細図である。第2の医療器具204は、図を参照して以下に説明する器具700と同様であってもよい。図26Aおよび図26Bに示すように、ここでは、第2の器具204のみが流体工学を提供するために使用される。また、灌流と吸引の両方が、第2の器具204を介して提供される。
【0116】
方向制御された流体工学は、以下の利点の1つ以上を提供する。尿管鏡による砕石術の際には、腎臓結石が腎臓内を移動する可能性がある。砕石器が与えるエネルギーによって、この運動が悪化することがある。吸引と灌流の両方を提供するカテーテルの有無にかかわらず、方向制御された流体工学では、吸引によってこれらの望ましくない結石の動きを制限することができる。例えば、流体の流れによって結石を器具の遠位端で保持することができる。
【0117】
さらに、砕石術中に、小さな塵粒子が生じ、尿管鏡による視界が不明瞭になる可能性がある。一部の尿管鏡による砕石術では、視界が不明瞭になり、手技を中止しなければならなくなることがある。吸引と灌流の両方を提供するカテーテルの有無にかかわらず、方向制御された流体工学では、治療部位から塵粒子(または他の物体)を吸引して、ユーザに良好な視認性を継続的に提供することができる。
【0118】
さらに、バスケット内の小片を捕捉した後、小片の除去のために患者から尿管鏡全体を除去することが困難であるために、バスケットの展開に時間がかかることがある。方向制御された流体工学によれば、生じた小片を迅速に除去するという利点を提供することができる。
【0119】
最後に、いくつかの尿管鏡による砕石術において、腎臓結石に位置を変更する必要がある場合には、バスケット回収装置を使用できるが、バスケット内に結石を配置する必要があるため、また、砕石器をバスケット回収装置と交換する必要があるため、時間がかかることがある。方向制御された流体工学によれば、腎臓を通ってカテーテルをナビゲートし、吸引を用いて結石を保持し、吸引用のカテーテルを移動して結石を腎臓内の別の位置に移動させることができる利点が得られる。
【0120】
(C.方向制御された流体工学の方法の例)
図22Aは、物体の除去手技などの医療手技中に方向制御された流体工学を管理する方法300の実施形態を示すフローチャートである。いくつかの例では、物体の除去手技は腎臓から腎臓結石を除去する手技である。方法300は、他の種類の医療手技や他の治療部位にも適用できる。いくつかの実施形態では、方法300は、ロボット医療システム、例えば、図1図15を参照しながら説明したいずれかのシステムに適用できる。
【0121】
方法300は、ブロック302から開始する。ブロック302において、第1の医療器具が治療部位に挿入される。第1の医療器具は患者の管腔を通って挿入できる。腎臓結石除去の例では、患者の管腔は尿管であってもよい。いくつかの例では、第1の医療器具を治療部位に経皮的に挿入することができる。第1の医療器具は、内視鏡、腎臓鏡、カテーテル、または他の種類の医療器具である。第1の医療器具は、関節動作可能であってもよい。いくつかの例では、第1の医療器具は関節動作可能でなくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の医療器具は、種々の道具(例えば、砕石器、バスケット回収装置、鉗子等)を受け入れるように構成された1つ以上のワーキングチャネルを有してもよい。第1の医療器具は、少なくとも1つの第1の流体チャネルを有してもよい。第1の流体チャネルは、医療手技中に治療部位に流体工学を提供するように構成することができる。
【0122】
ブロック304において、第2の医療器具が治療部位に挿入される。第2の医療器具は、患者の管腔から挿入することができる。腎臓結石除去の例では、患者の管腔は尿管であってもよい。いくつかの例では、第2の医療器具を治療部位に経皮的に挿入することができる。第2の医療器具は、内視鏡、腎臓鏡、カテーテル、または他の種類の医療器具である。第2の医療器具は、関節動作可能であってもよい。いくつかの例では、第2の医療器具は関節動作可能でなくてもよい。第2の医療器具は、種々の道具(例えば、砕石器、バスケット回収装置、鉗子等)を受け入れるように構成された1つ以上のワーキングチャネルを有してもよい。第2の医療器具は、少なくとも1つの第2の流体チャネルを有してもよい。第2の流体チャネルは、医療手技中に治療部位に流体工学を提供するように構成することができる。
【0123】
場合によっては、ブロック302およびブロック304の命令を逆にすることができる。いくつかの例では、ブロック302とブロック304を同時に実行することができる。
【0124】
場合によっては、第1および第2の医療器具は、異なるアクセス方法を介して治療部位に挿入される。例えば、第1の医療器具を患者の管腔を介して挿入し、第2の医療器具を経皮的に挿入することができ、またはその逆も可能である。別の例として、第1の医療器具を第1の患者の管腔を介して治療部位に挿入し、第2の医療器具を第1の患者の管腔とは異なる第2の患者の管腔を介して治療部位に挿入することができる。別の例として、第1の医療器具を第1の経皮的なアクセスにより挿入し、第2の医療器具を第1の経皮的な
アクセスとは異なる第2の経皮的なアクセスを介して挿入することができる。いくつかの例では、第1および第2の医療器具は、同一の患者の管腔を介して、または同一の経皮的なアクセスを介して挿入することができる。
【0125】
場合によっては、第1および第2の医療器具の遠位端が治療部位内で分かれるように、第1および第2の医療器具が治療部位に挿入されてもよい。例えば、第1の医療器具の遠位端は、除去される物体に対して順行性に配置することができ、第2の医療器具の遠位端は、除去される物体に対して逆行性に配置することができる。別の例として、医療器具の遠位端は、除去される物体に対して逆行性に配置することができ、第2の医療器具の遠位端は、除去される物体に対して順行性に配置することができる。場合によっては、第1および第2の医療器具は、物体が第1および第2の医療器具の遠位端の間に位置するように位置決めされてもよい。
【0126】
いくつかの場合において、第1の医療器具の遠位端は、第2の医療器具の遠位端を向くように方向付けられてよい。この代わりにあるいはこれに加えて、第2の医療器具の遠位端を、第1の医療器具の遠位端を向くように方向付けられてよい。いくつかの実施例では、「向く」とは、第1または第2の医療器具の第1または第2の流体チャネルに流入あるいは流体チャネルから流出する流体の流れの全体的な軸または方向に沿っていることを指す。いくつかの実施形態において、第1および第2の医療器具の遠位端は、位置センサを含む。位置センサは、電磁センサであってもよい。第1および第2の医療器具の遠位端に関する位置情報および/または第1および第2の医療器具の遠位端に関する向き情報を提供するように構成することができる。他の種類の位置センサや方向センサを使用することができる。位置センサの出力は、第1および第2の医療器具を方向付けるために使用されてよい。いくつかの実施形態において、第1および第2の医療器具は、視覚的にまたは他の方法を介して方向付けることができる。
【0127】
場合によっては、第1の医療器具の遠位端を除去する物体に接触させることができる。この代わりにあるいはこれに加えて、第2の医療器具の遠位端を、除去する物体に接触させることができる。いくつかの実施形態では、これらの医療器具を、除去する物体に接触しないように構成されてもよい。
【0128】
ブロック306において、灌流は、第1の医療器具を介して提供される。例えば、灌流は、第1の医療器具の第1の流体チャネルを介して提供することができる。第1の流体チャネルは、ポンプを介して灌流源に接続することができる。灌流源は、処理部位を灌流するための液体灌流(生理食塩水など)を提供することができる。ポンプは、灌流を流体チャネルを通って治療部位に移動させるように構成することができる。一例では、ポンプは蠕動ポンプである。また、ポンプは、第1の医療器具を通る特定の流量を設定するように構成することができる。別の例では、ポンプは、灌流源から灌流を吸引し、第1の医療器具を通って、治療部位に送るような、負圧を加えるように構成された真空源であってもよい。流量は、真空圧力の調整によって変更することができる。
【0129】
ブロック308において、吸引は、第2の医療器具を介して提供される。例えば、吸引は、第2の医療器具の第2の流体チャネルを介して提供することができる。第2の流体チャネルは、真空装置を介して回収容器に接続することができる。真空装置は、治療部位から、第2の医療器具を介して、回収容器に流体(例えば、灌流)を引き込むような、負圧を加えるように構成することができる。真空装置の圧力を調整することにより、流量を変更することができる。別の例では、真空装置は、蠕動ポンプなどのポンプで置き換えることができる。ポンプを使用して、治療部位から第2の医療器具を介して、回収容器に流体(例えば、灌流)を移動させることができる。ポンプまたは真空装置は、第2の医療器具を通る特定の流量を設定するように構成することができる。
【0130】
場合によっては、ブロック306およびブロック308の命令を逆にすることができる。場合によっては、ブロック306とブロック308とを同時に実行することができる。いくつかの例では、例えば、一連の繰り返しステップにおいて、灌流に次いで吸引が行われるように、ブロック306およびブロック308を交互に実行してもよい。
【0131】
ブロック310において、方法300は、灌流または吸引のいずれかの特性を特定する。この特性は、灌流または吸引の瞬間流量であってもよい。またこの特性は、一定期間における灌流または吸引の平均流量であってもよい。この期間としては、例えば、1.0秒、2.5秒、5秒、10秒、15秒、あるいは15秒より長い期間であってよく、また、これらの期間の中間の期間であってもよい。この特性は、例えば、上記の期間のいずれかにおいて灌流または吸引された体積の流体であってもよい。またこの特性は、灌流または吸引に関連する瞬間的な流体圧であってもよい。またこの特性は、例えば、上記の期間のいずれかにおける灌流または吸引に関連する平均流体圧であってもよい。流体圧力は、例えば、第1の流体チャネル内の流体圧力、第2の流体チャネル内の流体圧力、あるいは治療部位自体における流体圧力とすることができる。
【0132】
いくつかの例では、この特性は、1つ以上のセンサを使用して特定できる。センサは、例えば、第1の流体チャネル内、第1の医療器具上、第2の流体チャネル内、第2の医療器具上、あるいは治療部位内に配置することができる。センサは、流量センサ、圧力センサ、または灌流または吸引の特性を特定するための他のセンサであってよい。いくつかの実施形態において、センサは、腎臓の内圧を計測することができる。いくつかの例において、この特性は、灌流または吸引を供給するポンプまたは真空源を用いて特定される。例えば、この特性は、ポンプによって設定される流量または真空源によって印加される真空圧力に基づいて特定することができる。いくつかの例において、この特性は、1つ以上の既知または計測されたパラメータから計算される。例えば、この特性は、治療部位にポンプによって送り込まれる灌流の流量に基づいて算出される治療部位内の灌流の体積を含むことができる。
【0133】
ブロック312において、方法300は、ブロック310で特定された灌流または吸引の一方の特性に基づいて、灌流または吸引の他方の特性を選択する(例えば、設定または調整する)。例えば、ブロック310で吸引の特性が特定される場合、ブロック312では、特定された特性に基づいて灌流の特性が選択される。ブロック310で灌流の特性が特定される場合、ブロック312では、特定された特性に基づいて吸引の特性が選択される。
【0134】
選択される特性は、ブロック310で特定された特性に関連して上述した特性のいずれでもよい。例えば、選択される特性は、瞬間流量または平均流量、流体体積、圧力である。
【0135】
いくつかの場合において、選択される特性は、特定される特性に対応する。例えば、灌流の瞬間流量が特定される場合、吸引の流量が選択される。これは、すべての場合に当てはまるわけではない。例えば、灌流の流量を特定して、吸引に関連する瞬間流量または圧力を調整することができる。いくつかの例では、選択される特性は、特定された特性と一致するように選択される特性であってもよい。例えば、灌流の流量がx ml/秒と特定される場合に、吸引の流量は、灌流および吸引の流量が一致するように、x ml/秒となるように選択される。ただし、これは、すべての実施形態において当てはまるわけではない。例えば、灌流の流量がx ml/秒として特定される場合に、特定された流量に基づいて、吸引の流量をy ml/秒と選択して、灌流および吸引の流量が正確に一致しなくてもよい。いくつかの実施形態では、特定される特性と選択される特性とは、互いに関
連はするが、正確に一致しなくてもよい。例えば、吸引の流量は、灌流の流量よりも大きい流量、小さい流量、あるいは等しい流量とすることができる。
【0136】
ブロック310および312では、吸引および灌流の一方は、吸引または灌流の他方に基づいて調整することができる。したがって、方法300は、吸引と灌流のバランスを(例えば、瞬間的にまたは一定期間にわたって)取るための方法を提供する。方法300はまた、治療部位の状態を調整するための機構を提供する。例えば、灌流および吸引のバランスを取ることによって、治療部位における流体体積または圧力を調整または維持することができる。方法300は、流体の流れの状態を調整するための機構を提供する。例えば、灌流と吸引のバランスを取ることによって、第1の医療器具と第2の医療器具との間の流量を調整または維持することができる。方法300を用いて、吸引および/または灌流をパルス的に制御することによって、他の流体の流れの特性を調整または生成してもよい。
【0137】
方法300によって生み出される治療部位を通る流体の流れは、一般に、第1の医療器具から第2の医療器具へと流れるので、方法300は、上記の方向制御された流体工学の利点の多くを実現することができる。例えば、方法300によれば、明瞭な視野を維持したり、吸引のために結石(またはその小片)を第2の医療器具に向かって引き込んだり、砕石術において結石(またはその小片)を所定の位置で保持し、および/または結石を第2の医療器具の遠位端に保持することによって、結石(またはその小片)の移動または位置の変更を可能にしたりするために使用することができる。
【0138】
方法300は、図22Aに図示されていない追加のステップまたはブロックを含むことができる。例えば、方法300は、治療部位の特性を特定することを含む。治療部位の特性は、例えば、治療部位内の体積の流体または治療部位内の圧力である。治療部位の特定された特性は、センサを用いて特定することができ、灌流および/または吸引の1つ以上の特性に基づいて算出することができる。いくつかの実施態様において、治療部位の特定された特性は、灌流および吸引の圧力および/または灌流および吸引の流量に基づいて特定さる治療部位の内圧であってもよい。
【0139】
場合によっては、治療部位の特定された特性を閾値と比較してもよい。特定された特性が閾値を満たすか、または超えると判定された場合に、本件開示の方法は、治療部位への灌流を減少させること、治療部位からの吸引を増加させること、および警告を提供することのうちの少なくとも1つを含むことができる。例えば、治療部位の内圧が高すぎると特定された場合、灌流を減少させることができ、および/または吸引を増加させて、治療部位内の圧力を低下させることができる。警告を医師に提供することもできる。
【0140】
また、方法300は、灌流または吸引を提供しつつ、第1の医療器具および/または第2の医療器具の遠位先端をスイープ動作によって移動させる工程を含んでもよい。すなわち、第1の医療器具および/または第2の医療器具の遠位先端を振動動作によって移動させることができる。
【0141】
また、方法300は、治療部位内の物体上で砕石術を行って、物体を小片に破砕することを含むことができる。結石の破砕は、第1または第2の医療器具を通して挿入された結石砕石器を用いて行うことができる。また、方法300は、第2の医療器具の第2の流体チャネルを介して物体の小片を吸引することを含む。場合によっては、第2の医療器具は、小片を収集するために治療部位の周囲にナビゲートされる。場合によっては、第1の医療器具から第2の医療器具に向かって流体が流れ、小片を吸引のために第2の医療器具に移動させることができる。
【0142】
上記の通り、第2の医療器具は、関節動作可能な遠位端を有する操縦可能な医療器具であってもよい。方法300は、遠位端を治療部位内の物体に接触させることを含む。遠位端に接触させることは、遠位端を物体に向かって関節動作させるあるいはナビゲートすることを含む。遠位端を物体に接触させることは、流体の流れを用いて物体を遠位端まで誘導することを含む。また、方法300は、第2の流体チャネルを通って物体を第2の医療器具の遠位端に保持するための吸引を提供することを含む。遠位端は、物体を保持するように構成されたポケットを有してもよい。方法300は、物体が第2の医療器具の遠位端に保持されている間に破砕術を行うことをさらに含む。さらに、方法300は、物体が遠位端に保持されているときに第2の医療器具を移動させて治療部位内で物体の位置を変更することを含む。
【0143】
ブロック306で第1の医療器具を介して灌流を提供し、第2の医療器具308を介して吸引することに加えて、方法300は、第2の医療器具を介して灌流を提供することを含む。第2の医療器具は、吸引を提供するための第2の流体チャネルに加えて、灌流を提供するための1つ以上の追加の流体チャネルを有してもよい。例えば、図26Aおよび図26Bに示す装置を参照されたい。
【0144】
図22Bは、物体の除去手技などの医療手技中に方向制御された流体工学を適用するための別の方法350の実施形態を示すフローチャートである。いくつかの例では、物体の除去手技は腎臓から腎臓結石を除去する手技である。方法350は、他の種類の医療手技や他の治療部位にも実施することができる。いくつかの実施形態において、方法350は、ロボット医療システム、例えば、図1図15を参照して説明したいずれかのシステムにおいて実施することもできる。
【0145】
方法350では、灌流および吸引の両方が、例えば、図21Bを参照して説明したように、単一の医療器具を介して提供される。医療器具は、図26Aおよび図26Bを参照して以下に説明する医療器具700と同様の器具であってもよい。
【0146】
方法350は、ブロック350から開始する。ブロック352において、第1の医療器具が治療部位に挿入される。第1の医療器具は患者の管腔から挿入できる。腎臓結石の除去の例では、患者の管腔は尿管であってもよい。いくつかの例では、第1の医療器具を治療部位に経皮的に挿入することができる。第1の医療器具は、内視鏡、腎臓鏡、カテーテル、または他の種類の医療器具である。第1の医療器具は、関節動作可能であってもよい。いくつかの例では、第1の医療器具は関節動作可能でなくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の医療器具は、種々の道具(例えば、砕石器、バスケット回収装置、鉗子等)を受け入れるように構成された1つ以上のワーキングチャネルを有してもよい。第1の医療器具は、少なくとも1つの第1の流体チャネルおよび少なくとも1つの第2の流体チャネルを含むことができる。第1の流体チャネルおよび第2の流体チャネルは、医療手技中に治療部位に流体工学を提供するように構成することができる。場合によっては、第1の医療器具の遠位端を除去する物体と接触させることができる。
【0147】
ブロック354において、灌流は、第1の医療器具を介して提供される。例えば、灌流は、第1の医療器具の第1の流体チャネルを介して提供することができる。第1の流体チャネルは、上記のように灌流源に接続することができる。
【0148】
ブロック356において、吸引は、第1の医療器具を介して提供される。例えば、吸引は、第1の医療器具の第2の流体チャネルを介して提供することができる。第2の流体チャネルは、上記のように真空装置を介して回収容器に接続することができる。場合によっては、ブロック354およびブロック356の命令を逆にすることができる。いくつかの例では、ブロック354およびブロック356を同時に実行することができる。いくつか
の例では、例えば、一連の繰り返しステップにおいて、灌流に次いで吸引が行われるように、ブロック354およびブロック356を交互に実行してもよい。
【0149】
ブロック358において、方法350は、上記のように灌流または吸引のいずれかの特性を特定する。ブロック360において、方法350は、ブロック358で特定された灌流または吸引の一方の特性に基づいて、灌流または吸引の他方の特性を選択する(例えば、設定または調整する)。
【0150】
方法350は、いくつかの例において、方向制御された流体工学が、図26Aおよび図26Bに示す器具のような単一の医療器具を介して提供することができる。いくつかの実施形態において、上記のように、他のタスクを実行するために、手技中に第2の医療器具を使用することもできる。例えば、第2の器具は尿管鏡であってもよく、これを介して、除去される物体を破砕するために、砕石器を配置することができる。
【0151】
図23は、物体の除去手技のような医療手技中に方向制御された流体工学のための別の方法400の実施形態を示すフローチャートを示す。いくつかの例では、物体の除去手技は腎臓から腎臓結石を除去する手技である。方法400は、他の種類の医療手技や他の治療部位にも実施することができる。いくつかの実施形態において、方法400は、図1図15を参照して説明したいずれかのシステムであるロボット医療システムにも実施することができる。いくつかの例において、方法400は、図22Aの方法300および/または図22Bの方法350と共に実施することができる。
【0152】
方法400は、ブロック402から開始する。ブロック402において、第1の医療器具が治療部位に配置される。第1の医療器具は患者の管腔から挿入できる。腎臓結石の除去の例では、患者の管腔は尿管であってもよい。いくつかの例では、第1の医療器具を治療部位に経皮的に挿入することができる。第1の医療器具は、内視鏡、腎臓鏡、カテーテル、または他の種類の医療器具である。第1の医療器具は、関節動作可能であってよい。いくつかの例では、第1の医療器具は関節動作可能でなくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の医療器具は、種々の道具(例えば、砕石器、バスケット装置、鉗子等)を受け入れるように構成された1つ以上のワーキングチャネルを有してもよい。第1の医療器具は、少なくとも1つの第1の流体チャネルを有してもよい。第1の流体チャネルは、医療手技中に治療部位に流体工学を提供するように構成することができる。
【0153】
ブロック404において、第2の医療器具が治療部位に配置される。第2の医療器具は、患者の管腔から挿入することができる。腎臓結石の除去の例では、患者の管腔は尿管であってもよい。いくつかの例では、第2の医療器具を治療部位に経皮的に挿入することができる。第2の医療器具は、内視鏡、腎臓鏡、カテーテル、または他の種類の医療器具である。第2の医療器具は、関節動作可能であってもよい。いくつかの例では、第2の医療器具は関節動作可能でなくてもよい。第2の医療器具は、種々の道具(例えば、砕石器、バスケット回収装置、鉗子等)を受け入れるように構成された1つ以上のワーキングチャネルを有してもよい。第2の医療器具は、少なくとも1つの第2の流体チャネルを有してもよい。第2の流体チャネルは、医療手技中に治療部位に流体工学を提供するように構成することができる。
【0154】
場合によっては、ブロック402およびブロック404の命令を逆にすることができる。場合によっては、ブロック402とブロック404を同時に実行することができる。
【0155】
場合によっては、第1および第2の医療器具は、異なるアクセス方法を介して治療部位に配置される。例えば、第1の医療器具を患者の管腔を介して挿入し、第2の医療器具を経皮的に挿入することができ、またはその逆も可能である。別の例として、第1の医療器
具は、第1の患者管腔を介して治療部位に挿入することができ、第2の医療器具は、第1の患者管腔とは異なる第2の患者管腔を介して治療側に挿入することができる。別の例として、第1の医療器具は、第1の経皮的なアクセスによって挿入することができ、第2の医療器具は、第1の経皮的なアクセスとは異なる第2の経皮的なアクセスを介して挿入することができる。いくつかの例では、第1および第2の医療器具は、同一の患者の管腔を介して、または同一の経皮的なアクセスを介して挿入することができる。
【0156】
場合によっては、第1および第2の医療器具は、第1および第2の医療器具の遠位端が治療部位内で分かれるように、治療部位内に配置される。例えば、第1の医療器具の遠位端は、除去される物体に対して順行性に配置することができ、第2の医療器具の遠位端は、除去される物体に対して逆行性に配置することができる。別の例として、第1の医療器具の遠位端は、除去される物体に対して逆行性に配置することができ、第2の医療器具の遠位端は、除去される物体に対して順行性に配置することができる。場合によっては、第1および第2の医療器具は、物体が第1および第2の医療器具の遠位端の間に位置するように位置決めされてもよい。
【0157】
ブロック406において、灌流は、第1の医療器具の第1の開口を通って第1の流体の流れ方向に提供される。第1の流体の流れ方向は、一部の実施形態では、第1の開口に垂直な方向である。第1の流体流れ方向は、第1の流体開口から流出する流体の全体的な流れ方向である。ブロック408において、吸引は、第2の医療器具の第2の開口を介して提供される。場合によっては、ブロック406およびブロック408の命令を逆にすることができる。いくつかの例では、ブロック406およびブロック408は、同時に実行することができる。
【0158】
ブロック410において、第1および/または第2の医療器具は、第1の流れ方向が第2の医療器具の第2の開口に向けられるように操作される。第1および/または第2の医療器具を操作することは、第1および/または第2の医療器具を遠隔的および/またはロボットにより操作することを含む。第1および/または第2の医療器具を操作することは、第1の流体の流れ方向が第2の流体開口に向くように、第1および/または第2の医療器具を移動させることを含む。
【0159】
方法400によれば、流体の流れは、第1の医療器具から第2の医療器具に向かって方向付けられ、上記の1つ以上の利点が得られる。
【0160】
方法400は、1つ以上の追加ステップを含むことができる。例えば、方法400は、第1および/または第2の医療器具の遠位端の位置および/または向きを特定することを含む。第1および/または第2の医療器具は、その遠位端上の位置センサを含むことができる。位置センサは、電磁センサは、第1および第2の医療器具の遠位端に関する位置情報、ならびに第1および第2の医療器具の遠位端に関する方向情報を提供するように構成することができる。例えば、形状感知ファイバ等の他の種類の位置センサおよび方位センサを使用することができる。位置センサの出力を用いて、第1および第2の医療器具を方向付けることができる。
【0161】
方法400の一部の実装例では、ブロック410が自動的に実行される。例えば、第1および第2の医療器具の遠位端の位置および向きを特定して、第1および第2の医療器具を自動的に操作することができる。例えば、第1の医療器具の方向は、第2の医療器具の位置を追跡するように自動的に操作することができる。すなわち、第2の医療器具が移動するにつれて、第1の医療器具の方向は、第1の流体の流れ方向が第2の医療器具に向けられるか、またはその方向に向けられるように、自動的に調整される。これにより、流体の流れが適切な方向に向いていることを確実にすることができる。
【0162】
図24は、物体の除去手技などの医療手技中に方向制御された流体工学を使用して物体を保持および再配置するための方法500の実施形態を示すフローチャートである。いくつかの例では、物体の除去手技は腎臓から腎臓結石を除去する手技である。方法500は、他の種類の医療手技および他の治療部位に実施することもできる。いくつかの実施形態では、方法500は、図1図15を参照して説明したシステムのいずれかのロボット医療システムで実施することもできる。いくつかの例において、方法500は、図22Aの方法300、図22Bの方法350、および/または図23の方法400と共に実施することができる。いくつかの例において、方法500は、図26Aおよび図26Bに示す医療器具を使用して実行することができる。
【0163】
方法500は、ブロック502から開始する。ブロック502では、第1の医療器具が治療部位に配置される。例えば、第1の医療器具は、患者の管腔を介して挿入することができる。腎臓結石の除去の例では、患者の管腔は尿管であってもよい。いくつかの例では、第1の医療器具を治療部位に経皮的に挿入することができる。第1の医療器具は、内視鏡、腎臓鏡、カテーテル、または他の種類の医療器具である。第1の医療器具は、人工的であることができる。いくつかの例では、第1の医療器具は人工的でない。いくつかの実施形態では、第1の医療器具は、種々の道具(例えば、砕石器、バスケット回収装置、鉗子等)を受け入れるように構成された1つ以上のワーキングチャネルを有してもよい。第1の医療器具は、少なくとも1つの第2の流体チャネルを有してもよい。第1の流体チャネルは、医療手技中に治療部位に流体工学を提供するように構成することができる。
【0164】
ブロック504において、第1の医療器具の遠位端を除去される物体に接触させる。遠位端を物体に接触させることは、遠位端を物体に関節動作またはナビゲートすることを含む。いくつかの例では、第1の医療器具の関節動作またはナビゲーションは、例えば、第1の医療器具が取り付けられた器具マニピュレータまたはロボットアームを用いて第1の医療器具を操作することによってロボット的に実現される。場合によっては、ロボットシステムを制御する医師によって、関節動作またはガイドが制御される。場合によっては、関節動作またはガイドは、ロボットシステムによって自動的に決定される。例えば、ロボットシステムは、物体および第1の医療器具の位置を特定し、第1の医療器具を物体に移動させることができる。遠位端を物体に接触させることは、例えば、第1の医療器具を通る吸引および/または第2の医療器具を介して提供される灌流によって、流体の流れによって物体を遠位端に引き寄せることを含む。
【0165】
ブロック506では、第1の医療器具を介して吸引が行われ、第1の医療器具の遠位端に物体を保持する。吸引は、第1の医療器具に接続された真空装置を備えることができる。真空装置は、第1の医療器具を介して、治療部位から流体を引き出す負圧を印加するように構成することができる。別の例では、真空装置は、蠕動ポンプなどのポンプで置き換えることができる。ポンプを使用して、治療部位から第1の医療器具を介して液体を移動させることができる。流体が第1の医療器具を介して吸引されると、流体の流れによって物体を第1の医療器具の遠位端で保持することができる。場合によっては、第1の医療器具は、物体の位置を維持できるように、その遠位端にポケット(または他の回収容器または保持装置)を含む。例えば、図26Aおよび図26Bを参照されたい。
【0166】
ブロック508において、第1の医療器具は、治療部位内で移動されて、物体の位置を変更する。移動中、物体を遠位端に保持するために吸引を継続してもよい。移動はロボットで行うことができる。移動は、自動的に(例えば、あらかじめプログラムされた動作の後、またはあらかじめプログラムされた位置に移動すること)、または医師の入力または制御に基づいて行うことができる。場合によっては、第1の医療器具を用いて、結石の破砕に適した治療部位内の位置に物体を移動させる。例えば、物体を、小片がより容易に回
収できる位置、または、作業のためより大きい空間が存在する位置に移動させることができる。別の例として、物体を患者の解剖学的構造において注意が必要な領域から遠ざけることができる。いくつかの実施形態では、ブロック508を省略することができる。すなわち、いくつかの実施態様においては、物体は、治療部位内で位置を変更しなくてもよい。
【0167】
ブロック510では、第2の医療器具を用いて灌流を行う一方で、第2の医療器具を用いて物体に対して砕石術を行う。さらに、砕石術は、物体が第1の医療器具の遠位端に保持されている間に実施することができる。第2の医療器具から第1の医療器具への流体の流れは、砕石術の間、物体を保持し、また、小片および塵を吸引および除去するために第1の流体器具に向ける役割を果たす。また、流体の流れによって、明瞭な視野が確保され、医師による手技が支援される。
【0168】
方法500は、1つ以上の追加ステップを含むことができる。例えば、方法500は、第1の医療器具を介して灌流を提供することを含む。第1の医療器具は、灌流を提供するための1つ以上の追加の流体チャネル(吸引を提供するための第1の流体チャネルに加えて)を含む。追加の流体チャネルは、例えば、以下に説明する図26Aおよび図26Bに示すように装置に配置されてもよい。灌流の流出は、第1の医療器具の遠位端から離れる(例えば、半径方向に離れる)方向に向けることができる。
【0169】
(D.方向制御された流体工学用のシステムおよび装置の例)
図25は、物体の除去手技などの医療手技中に方向制御された流体工学を使用するためのシステム600の一実施形態を示すブロック図である。いくつかの例では、上述の方法300、400、500は、システム600を使用して実施することができる。さらに、システム600は、図1図15を参照して説明したいずれかのロボットシステムの一部として構成できる。
【0170】
図示のように、システム600は、第1の医療器具616と、第2の医療器具620と、第1の医療器具616に接続されたポンプ608と、第2の医療器具620に接続された真空装置612と、ポンプ608および真空装置612に接続された方向制御された流体工学モジュールまたは流体工学制御システム602とを含む。方向制御された流体工学制御システム602は、ポンプ608および真空装置612を制御して、第1および第2の医療器具616、620を介して、治療部位に向けられた流体(例えば、灌流および吸引)を提供するように構成することができる。
【0171】
第1の医療器具616は、患者の管腔を介して治療部位に挿入されるように構成することができる。あるいは、第1の医療器具616は、経皮的に治療部位に挿入されるように構成することができる。第1の医療器具616は、内視鏡(例えば、尿管鏡)、カテーテル(例えば、操縦可能なまたは操縦可能でないカテーテル)、腎臓鏡、または本明細書に記載される他の種類の医療器具でもよい。第1の医療器具616は、流体工学(灌流または吸引)を提供するための第1の流体工学チャネルを有してもよい。図示の実施形態では、第1の医療器具は、灌流を提供するためにポンプ608に取り付けられる。ポンプ608は、灌流源610に取り付けられ、灌流(例えば、生理食塩水溶液)を供給し、第1の医療器具を介して治療部位にポンプで送り込む。いくつかの例では、ポンプ608は蠕動ポンプであってもよい。いくつかの実施形態では、ポンプ608は、灌流源610から灌流を引き出したり、第1の医療器具616を通って流出させたりするための真空圧を加える真空装置に置き換えることができる。
【0172】
第1の医療器具616は、第1の器具マニピュレータ624に接続することができる。第1の器具マニピュレータ624は、第1の医療器具616を操作するためにロボット制
御することができる。例えば、第1の医療器具616は、関節動作可能または操縦可能であってもよく、第1の医療器具マニピュレータ624は、第1の医療器具を関節動作または操縦するために使用される。さらに、第1の医療器具マニピュレータ624は、第1の医療器具616を治療部位内に挿入または治療部位外に後退させるように構成されたロボットアームに取り付けることができる。器具マニピュレータの例については、図1図15を参照して説明した通りである。第1の医療器具616は、砕石器、バスケット回収装置、鉗子等などの追加の道具を治療部位に導入することができる1つ以上のワーキングチャネルを有してもよい。
【0173】
第2の医療器具620は、経皮的なアクセスによって治療部位に挿入されるように構成することができる。あるいは、第2の医療器具620は、患者の管腔を介して治療部位に挿入されるように構成することができる。第2の医療器具620は、内視鏡(例えば、尿管鏡)、カテーテル(例えば、操縦可能なまたは操縦可能でないカテーテル)、腎臓鏡、または本明細書に記載される他の種類の医療器具である。第2の医療器具620は、流体を提供するための第2の流体チャネル(灌流または吸引)を含む。図に示す実施形態では、第2の医療器具は吸引を提供するために真空装置612に取り付けられる。真空装置612は、治療部位から流体を引き出すために負圧を印加するように構成することができる。真空装置612は、取り出された流体が収集される回収容器に接続される。いくつかの例において、真空装置612は、治療部位から、第2の医療器具620を介して、そして回収容器614内に液体をポンプするポンプと置き換えることができる。
【0174】
第2の医療器具620は、第2の器具マニピュレータ626に接続することができる。第2の器具マニピュレータ626は、第2の医療器具620を操作するためにロボット制御することができる。例えば、第2の医療器具620は、関節動作可能または操作可能であり、第2の医療器具マニピュレータ626は、第2の医療器具620を関節動作または操縦するように構成することができる。さらに、第2の医療器具マニピュレータ626は、第2の医療器具620を治療部位内に挿入または治療部位外に後退させるように構成されたロボットアームに取り付けることができる。第2の医療器具620は、砕石器、バスケット回収装置、鉗子などの追加の道具を治療部位に導入することができる1つ以上のワーキングチャネルを有する。
【0175】
いくつかの実施形態では、流体は、第1の医療器具616または第2の医療器具620のうちの一方を介して提供され、吸引と灌流の両方を行うように構成されてもよい。流体を提供する器具は、経皮的に患者に挿入することができる。いくつかの実施形態において、器具は、図26Aおよび図26Bに示す器具と同様に構成してもよい。第1の医療器具616または第2の医療器具620の他方は、流体を提供せずに、除去される物体を破砕するなどの他の機能のために使用してもよい。
【0176】
流体制御システム602は、プロセッサ604およびメモリ606を有する。メモリ606は、プロセッサ604に、灌流および吸引のうちの1つの特性を特定し、特定された特性に基づいてポンプまたは真空装置のうちの少なくとも一方の特性を制御させる命令を含む。特定された特性は、例えば、灌流または吸引の瞬間流量である。この特性は、一定期間における灌流または吸引の平均流量である。この期間は、例えば、1.0秒、2.5秒、5秒、10秒、15秒以上、ならびに、これらの時間間隔よりも長いあるいは短い、またはこれらの間隔の間の時間であってよい。特性は、例えば、上記のいずれかの時間間隔の期間において灌流または吸引された流体の体積である。特性は、灌流または吸引に関連する瞬間的な流体の圧力である。特性は、例えば、上記のいずれかの時間間隔の期間において灌流または吸引に関連する平均の流体の圧力である。ここで、流体の圧力は、例えば、第1の流体チャネル内の流体の圧力、第2の流体チャネル内の流体の圧力、または治療部位自体における流体の圧力であってよい。
【0177】
いくつかの例において、特性は、第1および第2の医療器具616、620上のセンサ618、622などの1つまたは複数のセンサをそれぞれ使用して特定できる。センサ618は、例えば、第1の医療器具616の第1の流体チャネルまたは第1の医療器具616自体に配置することができる。センサ622は、第2の医療器具620の第2の流体チャネルまたは第2の医療器具620自体に配置することができる。いくつかの実施形態において、第1および第2の医療器具616、620の一方または両方は、複数のセンサ616、622を有する。センサ618、622は、流量センサ、圧力センサ、または灌流または吸引の特性を特定するための他のセンサであってもよい。センサ616、622の出力は、プロセッサ604に接続することができ、これにより、プロセッサ604は、センサ618、622の出力を用いて特性を特定することができる。いくつかの例において、特性は、灌流または吸引を供給するポンプ608または真空装置612によって特定できる。例えば、特性は、ポンプ608によって設定される流量または真空装置612によって印加される真空圧力に基づいて特定できる。いくつかの例において、特性は、1つ以上の既知または測定されたパラメータを用いて計算される。例えば、特性は、治療部位にポンプされる灌流の流量および/または治療部位から吸引される灌流の流量に基づいて計算された治療部位内の灌流の流体の体積を含む。
【0178】
いくつかの実施形態では、センサ618、622は、第1および第2の医療器具616、620に関する位置情報を提供するように構成された位置センサを含む。位置センサは、3つの自由度からなる位置情報(例えば、x、yおよびz座標)または6つの自由度からなる位置情報(例えば、x、yおよびz座標、ピッチ角、ロール角およびヨー角)を提供することができる。位置センサ618、622は、例えば、電磁センサ、形状感知ファイバ、または加速度計、ジャイロスコープ等を含む他の種類の位置センサであってもよい。
【0179】
いくつかの実施形態では、メモリ606は、プロセッサ604に、第1の医療器具616の位置を特定するために第1の位置センサの位置を算出することと、第2の医療器具620の位置を特定するために第2の位置センサの位置を算出することと、第1の医療器具616の流出開口が第2の医療器具620の流入開口に向けられるように第1の医療器具616または第2の医療器具620を操縦することと、をさらに実行させる命令を含む。
【0180】
第1および第2の医療器具616、620の一方または両方は、灌流および吸引の両方を提供するように構成することができる。例えば、図25に示すように、第2の医療器具620は、吸引を提供するために真空装置612に接続することができ、また、灌流を提供するためにポンプ608(点線で示す部分を通って)に接続することもできる。この実施形態では、第2の医療器具620は、灌流を提供するための追加の流体チャネルを有する。吸引または灌流の一方を提供するための第1の流体チャネルと、吸引または灌流の他方を提供するための追加の流体チャネルとを含む医療器具700の例については、図26Aおよび図26Bを参照しながら以下に説明する。
【0181】
図26Aおよび図26Bは、物体の除去手技中に吸引および灌流を提供するように構成された医療器具700の遠位端の斜視図および断面図である。医療器具700は、上記の第1および/または第2の医療器具のいずれかとして使用することができる。医療器具700は、経皮的にまたは患者の管腔を介して治療部位に挿入することができる。
【0182】
図26Aおよび図26Bに示すように、医療器具700は、遠位端704で終端する細長い本体702を有する。図に示す実施形態では、ポケット706または凹部が遠位端の遠位面に形成される。ポケット706は、除去する物体を手技中に受けることができる空間を提供する。いくつかの実施態様において、吸引および/または灌流は、物体をポケッ
ト706内に保持する。物体の位置を維持あるいは固定するために、砕石術において、物体をポケット706内に保持することができる。砕石術によって物体が破砕されると、その小片および塵は、医療器具700を通して吸引することができる。
【0183】
医療器具700は、流体チャネル708(図26Bを参照)を有する。流体チャネル708は、流体オリフィス710によって遠位端で終端される。流体チャネル708は、吸引または灌流のために使用することができる。一例では、流体チャネル708は吸引のために使用され、流体チャネル708内に引き込まれた流体は、物体をポケット706内に保持するために使用される。
【0184】
また、医療器具700は、流体チャネル708を取り囲む1つ以上の追加チャネル712を有してもよい(図26B参照)。これらの追加チャネル712は、流体チャネル708以外の吸引または灌流の他方を提供するように構成することができる。追加のチャネル712は、医療機器の遠位端704の近傍のオリフィス714で終端することができる。オリフィス714は、例えば図21A及び図21Bに示すように、医療器具700の半径方向の表面に配置され、流体がオリフィスを通って半径方向に流れるようにすることができる。いくつかの実施態様において、医療器具700は、4つのオリフィス714を有する。いくつかの実施態様において、オリフィス714は、医療器具700の長手方向軸に直交するあるいは実質的に直交する方向に流体を導く。いくつかの実施態様において、オリフィス714は、医療器具700の長手方向軸に対して直交でないあるいは角度付けられた方向に流体を導くように構成されてもよい。
【0185】
医療器具700は、関節動作可能であってもよい。例えば、医療器具は、医療器具700の形状または姿勢を制御するためのプルワイヤ(または他の機構)を有してもよい。
【0186】
図27は、方向制御された流体工学を用いて物体の除去手技を行うために配置されたロボットシステム800の一実施形態を示す。ロボットシステム800は、図1図15を参照して説明したロボットシステムと同様のシステムであってよい。図ぬい示す実施形態では、ロボットシステムは、複数のロボットアーム805を有する。ロボットアーム805は、手技中に使用される器具および道具を操作するように構成されてもよい。図に示すように、システム800は、3つのロボットアーム805a、805b、805cを有する。他の実施形態では、他の数のロボットアーム805が用いられてよい。
【0187】
ロボットアーム805a、805bは、第1の器具801に取り付けることができる。第1の器具801は、ワーキングチャネルを有する外部シースと、外部シース内に配置された内側カテーテルとを有する。いくつかの実施形態では、ロボットアーム805aは外部シースを制御し、ロボットアーム805bは内部シースを制御する。第1の器具801は、患者の管腔を介して患者に挿入することができる。図に示すように、ロボットアーム805a、805bは、第1の器具801を尿道を通って患者の下腹部に挿入することができる。いくつかの実施形態において、挿入は、上記の仮想レールに沿って行うこともできる。上記の制御を用いて尿道に挿入した後、第1の器具801は、診断および/または治療目的で治療部位(例えば、膀胱、尿管、および/または腎臓)にナビゲートすることができる。
【0188】
ロボットアーム805cは、第2の器具802に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、第2の器具802は、ワーキングチャネルを有する外部シースと、外部シース内に配置された内部カテーテルとを有してもよい。いくつかの実施形態では、複数のロボットアームを使用して、第2の器具802を操縦することができる。図に示す実施形態では、第2の器具802は、治療部位に経皮的に(すなわち、腹腔鏡的に)挿入される。
【0189】
図27に示すように、ロボットアーム805によって位置決めされた第1および第2の器具801、802を用いて、システム800は、上記のように方向制御された流体工学を用いるように構成されてもよい。例えば、第1および第2の器具801、802は、上記のように灌流および吸引を治療部位に提供するために使用することができる。
【0190】
図27は、方向制御された流体工学用に構成されたロボットシステム800の一例を示す。図に示す以外の数または種類のロボットアームや医療器具、および/または器具の挿入および制御のための他の方法を含む他のシステムが用いられてよい。
【0191】
(3.システムの実装および用語)
本明細書に開示される実施形態は、患者の治療部位から物体を除去するためのシステム、方法、および装置、特に物体の除去手技において方向制御された流体工学を用いるシステムおよび方法を提供する。方向制御された流体工学により、治療部位に対する灌流および/または吸引の種々の流体の流れの特性(流量、方向、圧力など)を制御したり、灌流の流入点と吸引の流出点とを分離することで物体の除去手技を支援したりすることができる。いくつかの例では、方向制御された流体工学には、流入点から流出点への流れの方向を制御して、手技時に物体を保持したり物体の位置を維持したりすることができる。
【0192】
本明細書で使用される用語「結合する」、「結合する」、「結合される」、または単語対の他の変更は間接接続または直接接続のいずれかを示すことができ、例えば、第1の構成要素が第2の構成要素に「結合される」場合、第1の構成要素は、別の構成要素を介して第2の構成要素に間接的に接続されるか、または第2の構成要素に直接接続されることができることに留意されたい。
【0193】
本明細書で説明する特徴類似度計算、位置推定、およびロボット動作作動機能は、プロセッサ可読媒体またはコンピュータ可読媒体上に1つまたは複数の命令として格納することができる。用語「コンピュータ可読媒体」は、コンピュータまたはプロセッサによってアクセスされ得る任意の利用可能な媒体を指す。限定ではなく例として、そのような媒体は、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリメモリ)、EEPROM(電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ)、フラッシュメモリ、CD-ROM(コンパクトディスクリードオンリ)または他の光ディスクストレージ、磁気ディスクストレージまたは他の磁気ストレージデバイス、あるいは命令またはデータ構造の様式で所望のプログラムコードを格納するために使用され得、コンピュータによってアクセスされ得る任意の他の媒体を備えることができる。コンピュータ可読媒体は、有形かつ非一時的であり得ることに留意されたい。本明細書で使用されるように、用語「コード」は、計算装置またはプロセッサによって実行可能なソフトウェア、命令、コード、またはデータを指すことができる。
【0194】
本明細書で開示される方法は、説明される方法を達成するための1つまたは複数のステップまたはアクションを備える。方法のステップおよび/またはアクションは、代替形態の範囲から逸脱することなく、互いに交換することができる。言い換えれば、ステップまたはアクションの特定の命令が説明されている方法の適切な動作のために必要とされない限り、特定のステップおよび/またはアクションの命令および/または使用は、代替の範囲から逸脱することなく修正され得る。
【0195】
本明細書で使用される場合、用語「複数」は2つ以上を意味する。例えば、複数の構成要素は2つ以上の構成要素を示す。用語「特定すること」が多種多様なアクションを包含し、したがって、「特定すること」は計算すること、計算すること、処理すること、導出すること、調査すること、参照すること(例えば、テーブル、データベース、または別の
データ構造を参照すること)、確認することなどを含むことができ、「特定すること」は受信すること(例えば、情報を受信すること)、アクセスすること(例えば、メモリ内のデータにアクセスすること)などを含むことができる。また、「特定すること」は、解決すること、選択すること、選ぶこと、確立することなどを含むことができる。
【0196】
「に基づく」という語句は特に断らない限り、「のみに基づく」という意味ではない。言い換えれば、「に基づく」という語句は、「のみに基づく」および「少なくともに基づく」の両方を表す。
【0197】
開示された実施形態の上記の説明は、当業者が本件開示を実現または使用することを可能にするために提供される。これらの実装に対する様々な修正は当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、本件開示の範囲から逸脱することなく、他の実装に適用することができる。例えば、当業者は、工具構成要素を固定、取り付け、結合、または係合する等価な方法、特定の作動運動を生成するための等価な機構、および電気エネルギーを送達するための等価な機構などの、いくつかの対応する代替的および等価な構造的詳細を採用することができることが理解されるのであろう。したがって、本件開示は、本明細書に示される実装に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および新規な特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。
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