(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】投与ユニットの再充填スケジューリング
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20230111BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/142 520
A61M5/14 510
(21)【出願番号】P 2020544513
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2019053005
(87)【国際公開番号】W WO2019162098
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-19
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デック、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ファルツ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】リスト、ハンス
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-008969(JP,A)
【文献】特開平07-051385(JP,A)
【文献】特表2016-536039(JP,A)
【文献】特表2016-538958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0049127(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0088271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の薬剤を貯蔵している第1の一次リザーバ(300)からの携帯型の注入システムの第1の二次リザーバ(110)の再充填をスケジューリングし、第2の薬剤を貯蔵しており、前記第1の一次リザーバ(300)とは別である第2の一次リザーバ(300’)からの前記携帯型の注入システムの第2の二次リザー
バの再充填をスケジューリングするための方法であって、前記方法が、
充填容積評価ルーチンを繰り返しかつ自動的に実行する工程を含み、前記充填容積評価ルーチンが、現時点で前記第1の二次リザーバが再充填されるべきか、および/または前記第2の二次リザーバが再充填されるべきかを、現時点で判定する工程を含み、前記判定が、前記現時点と将来の推定時点との間の第1の薬剤および第2の薬剤の予期される注入に基づいている、方法。
【請求項2】
前記充填容積評価ルーチンは、前記将来の推定時点における前記第1の二次リザーバの第1の推定充填容積を判定する工程と、前記第1の二次リザーバが前記第1の推定充填容積に依存して再充填されるべきか否かを判定する工程とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記充填容積評価ルーチンは、前記第1の推定充填容積が第1の充填容積閾値を下回る場合に、前記第1の二次リザーバが再充填されるべきであることを判定する工程を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記充填容積評価ルーチンは、前記現時点での前記第1の二次リザーバの第1の充填容積から、前記現時点と前記将来の推定時点との間で注入されることが予期される第1の薬剤の量の推定量である第1の注入推定量を減算することによって、前記第1の推定充填容積を判定する工程を含む、請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、第1の標準注入推定量のセットを計算する工程であって、各第1の標準注入推定量が、関連付けられた所定の時刻から始まる推定時間間隔で注入されることが予期される第1の薬剤の量の推定量である、工程と、前記第1の標準注入推定量のセットをメモリに保存する工程とを含み、
前記充填容積評価ルーチンが、前記現時点に対応する前記時刻に関連付けられている前記第1の標準注入推定量を前記メモリから取得する工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の二次リザーバが再充填されるべきかを判定する工程は、少なくとも部分的に、前記第1の薬剤のための所定の第1の基礎注入スケジュールに基づいている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の二次リザーバが再充填されるべきかを判定する工程は、少なくとも部分的に、前記現時点と前記将来の推定時点との間の前記第1の薬剤に対するオンデマンドのボーラス注入の予期される量に基づいている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、第2の標準注入推定量のセットを計算する工程であって、各第2の標準注入推定量が、関連付けられた所定の時刻から始まる推定時間間隔で注入されることが予期される第2の薬剤の量の推定量である、工程と、前記第2の標準注入推定量のセットをメモリに保存する工程とを含み、
前記充填容積評価ルーチンが、前記現時点に対応する前記時刻に関連付けられている前記第2の標準注入推定量を前記メモリから取得する工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の二次リザーバおよび前記第2の二次リザーバが、単一の共通の二次リザーバによって形成され、前記単一の共通の二次リザーバが、第1の二次リザーバおよび第2の二次リザーバとして交互に機能する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記充填容積評価ルーチンが、前記現時点と前記将来の推定時点との間、および前記第1の薬剤の次の続くオンデマンドのボーラス注入の前に、第2の薬剤の注入が行われることが予期される場合に、前記第2の二次リザーバが再充填されるべきであると判定する工程を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている再充填スケジューリングユニット(251)。
【請求項12】
携帯型の注入装置の動作を制御するように構成されている、携帯型の注入装置の制御ユニットであって、前記携帯型の注入装置の制御ユニットが、
充填状態と代替の投与状態との間で第1のバルブユニットを切り替えるように第1のバルブアクチュエータの作動を制御するように構成されている第1のバルブ制御ユニットと、
充填状態と代替の投与状態との間で第2のバルブユニットを切り替えるように第2のバルブアクチュエータの作動を制御するように構成されている第2のバルブ制御ユニットと、
充填モードで動作して、前記充填モードで第1の二次リザーバの流体容積を増加させるように、および代替的に投与モードで動作し、前記投与モードで前記第1の二次リザーバの前記流体容積を減少させるように、第1の二次リザーバアクチュエータの動作を制御するように構成されている第1の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットと、
充填モードで動作して、前記充填モードで第2の二次リザーバの流体容積を増加させるように、および代替的に投与モードで動作して、前記投与モードで前記第2の二次リザーバの前記流体容積を減少させるように、第2の二次リザーバアクチュエータの動作を制御するように構成されている第2の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットと、
請求項11記載の再充填スケジューリングユニットと
を含み、
前記再充填スケジューリングユニットが、前記投与モードで前記第1の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットおよび前記第2の二次
リザーバアクチュエータの制御ユニットと並行して動作するように構成され、
前記携帯型の注入装置の制御ユニットがさらに、前記第1の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第1の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成され、前記第1の二次リザーバの再充填手順が、(i)前記第1のバルブユニットを前記充填状態に切り替えるように前記第1のバルブアクチュエータを制御する工程、(ii)前記第1の二次リザーバの前記流体容積を増加させるように前記第1の二次リザーバアクチュエータを制御する工程、および(iii)前記第1のバルブユニットを前記投与状態に切り替えるように前記第1のバルブアクチュエータを制御する工程のシーケンスを含み、
前記携帯型の注入装置の制御ユニットがさらに、前記第2の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第2の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成され、前記第2の二次リザーバの再充填手順が、(I)前記第2のバルブユニットを前記充填状態に切り替えるように前記第2のバルブアクチュエータを制御する工程、(II)前記第2の二次リザーバの前記流体容積を増加させるように前記第2の二次リザーバアクチュエータを制御する工程、および(III)前記第2のバルブユニットを前記投与状態に切り替えるように前記第2のバルブアクチュエータを制御する工程のシーケンスを含む、携帯型の注入装置の制御ユニット。
【請求項13】
携帯型の注入装置(200)の動作を制御するように構成されている、携帯型の注入装置の制御ユニット(250)であって、前記携帯型の注入装置の制御ユニット(250)が、
バルブユニットを第1の充填状態と、代替の第2の充填状態と、代替の投与状態との間で切り替えるようにバルブアクチュエータ(227)の作動を制御するように構成されているバルブ制御ユニットと、
充填モードで動作して、前記充填モードで共通の二次リザーバの流体容積を増加させるように、および代替的に投与モードで動作して、前記投与モードで共通の二次リザーバ(110)の流体容積を減少させるように、二次リザーバアクチュエータ(217)の動作を制御するように構成されている二次リザーバアクチュエータの制御ユニットと、
請求項11記載の再充填スケジューリングユニット(251)と
を含み、
前記再充填スケジューリングユニット(251)が、前記投与モードで前記二次リザーバアクチュエータと並行して動作するように構成され、
前記携帯型の注入装置の制御ユニット(
250)はさらに、前記第1の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第1の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成され、前記第1の二次リザーバの再充填手順が、(ia)前記バルブユニットを前記第1の充填状態に切り替えるように前記バルブアクチュエータ(227)を制御する工程、(iia)前記共通の二次リザーバの前記流体容積を増加させるように前記二次リザーバアクチュエータ(217)を制御する工程、および(iiia)前記バルブユニットを前記投与状態に切り替えるように前記バルブアクチュエータ(227)を制御する工程のシーケンスを含み、
前記携帯型の注入装置の制御ユニット(
250)はさらに、前記第2の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第2の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成され、前記第2の二次リザーバの再充填手順が、(ib)前記バルブユニットを前記第2の充填状態に切り替えるように前記バルブアクチュエータ(227)を制御する工程、(iib)前記共通の二次リザーバの前記流体容積を増加させるように前記二次リザーバアクチュエータ(217)を制御する工程、および(iiib)前記バルブユニットを前記投与状態に切り替えるように前記バルブアクチュエータ(227)を制御する工程のシーケンスを含む、携帯型の注入装置の制御ユニット(250)。
【請求項14】
前記第1の二次リザーバの再充填
手順が、工程(ia)の前に、第1の空にするシーケンスを含み、前記第1の空にするシーケンスが、(ia’)前記バルブユニットを前記第2の充填状態に切り替えるように前記バルブユニットを制御する工程、および(iia’)前記共通の二次リザーバの流体を最小容積まで減少させるように前記二次リザーバアクチュエータを制御する工程を含み、
および/または
前記第2の二次リザーバの再充填
手順が、工程(ib)の前に、第2の空にするシーケンスを含み、前記第2の空にするシーケンスが、(ib’)前記バルブユニットを前記第1の充填状態に切り替えるように前記バルブユニットを制御する工程、および(iib’)前記共通の二次リザーバの流体を最小容積まで減少させるように前記第2のリザーバアクチュエータを制御する工程を含む、請求項13記載の携帯型の注入装置の制御ユニット(250)。
【請求項15】
コンピュータプログラム製品であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するようにプロセッサに指示するように、ならびに/または請求項11記載の再充填スケジューリングユニット(251)および/もしくは請求項12~14のいずれか1項に記載の携帯型の注入装置の制御ユニット(
250)として動作するように構成されたコンピュータプログラムコードを保存している非一時的コンピュータ可読媒体を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つまたはそれ以上の薬剤の混合注入のための注入装置および注入システムの分野に関する。本発明は、特に、長期間にわたる1つまたは複数の二次リザーバからの続く注入のための、一次リザーバからの1つまたは複数の二次リザーバの充填スケジューリングに関する。典型的な適用分野は、インスリン注入とグルカゴン注入の組み合わせによる糖尿病治療の分野である。
【背景技術】
【0002】
携帯型の注入装置は、当該技術分野、たとえば、持続皮下インスリン注入(CSII)による真性糖尿病の治療に加えて、疼痛治療または癌治療において周知であり、多くの供給者から入手可能である。本明細書全体を通して、特にCSIIに適した設計が、概して例示的な目的のために想定される。
【0003】
CSIIに使用される携帯型の注入装置は、「ユーザ」とも呼ばれる糖尿病患者(PwD)によって、概して昼夜持続的に実行されるように設計されている。携帯型の注入装置は、たとえば、ベルトクリップを用いて、またはズボンのポケットに入れて、外部から見えなくして実行されるように設計され、および/または接着パッドを介して身体に直接取り付けられて代替的に実行されるように設計され得る。携帯型の注入装置は、少なくとも2つの方法で、薬剤、特にインスリンを注入するように設計されている。第1に、これらは、典型的に予めプログラムされた、および時間的に可変の基礎注入スケジュールに自律的にしたがって、すなわち、特定のユーザの相互作用または操作を必要とすることなく、薬剤を実質的に持続的に注入するように設計されている。第2に、これらは、より大きな薬剤ボーラスをオンデマンドで注入する、たとえば、炭水化物の摂取を補うだけでなく、望ましくない高い血糖値を補正するように設計されている。これらおよび随意のさらなる機能を制御するために、携帯型の注入装置は、典型的に、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、またはマイクロコントローラに基づいて、電子制御ユニットを備える。本明細書全体を通して、「携帯型の注入装置」または「携帯型の注入システム」という表現は、少なくとも先に説明した基本的な機能を有する装置またはシステムを指す。
【0004】
典型的かつ十分に確立された設計によれば、携帯型の注入装置またはシステムは、典型的に、カートリッジピストンの制御されたおよび増分的な変位によって、薬剤が薬剤カートリッジから注入されるシリンジドライバタイプのものである。カートリッジピストンを変位させるために、電動モータを備えたスピンドルドライブが提供される。典型的なカートリッジ容積は、1mlから3mlの範囲であり、数日から1週間またはそれ以上までの間、薬剤、特にインスリンを貯蔵する。このような装置の多くの欠点は、当該技術分野で知られている。特に、それらは、ミリリットル範囲の総薬剤量を有する薬剤カートリッジから、典型的にナノリットル範囲で、非常に少量の薬剤量を送達することを伴うため、精度が限定されている。したがって、たとえばマイクロメンブレインポンプまたはマイクロピストンポンプを備える薬剤リザーバから下流に専用の投与ユニットを使用する、および薬剤リザーバに連結するように適合された、および特に少量の正確な計量用に設計された、追加の概念およびアーキテクチャが提案されている。このような投与ユニットのためのいくつかの設計は、当該技術分野で知られているが、むしろ複雑であり、それらのほとんどは高価であり、および/または大きなスケールに関して重要である。
【0005】
特許文献1は、投与シリンダを有する小型の計量ピストンポンプを備えたシステムを開示し、投与シリンダは、より大きなリザーバに繰り返し流体連結されて、そこから充填され、その後、投与シリンダを注入部位に流体連結し、増分的なステップで長期間にわたって投与シリンダから薬剤を注入する。代替的に投与シリンダをリザーバおよび注入部位に連結するために、バルブシステムまたはバルブユニットが提案される。注入は、制御された量または増分量の計量された注入である。
【0006】
本明細書全体を通して、特許文献1の原理に従ったアーキテクチャが想定され、ここでは異なるようには述べられていない。より大きなリザーバは、「一次リザーバ」とも呼ばれ、前に説明したように、数日から1週間またはそれ以上までの間、薬剤を貯蔵する。投与シリンダの内部容積は「二次リザーバ」とも呼ばれる。投与シリンダから、上記の典型的なシリンジドライバ設計の場合と実質的に同じ方法で薬剤が注入される。バルブの切り替えと、投与シリンダまたは二次リザーバ内のピストンの変位との両方は、電子制御ユニットを介して制御される。
【0007】
典型的なシリンジドライバとは対照的に、二次リザーバの充填容積は比較的小さく、一例として、標準濃度U100の液体インスリン製剤の7I.U.(国際単位)に対応する70マイクロリットルであり得る。
【0008】
二次リザーバが、空である、または空に近づくときにはいつも、注入を継続するために一次リザーバからの再充填が必要とされる。二次リザーバの充填状態を監視し、必要に応じて再充填することは、ユーザの関与を必要とせずに自律的に携帯型の注入装置によって制御され実行される好ましいバックグラウンドプロセスである。装置設計およびエネルギー消費に関連する多くの理由および制約のために、二次リザーバの充填または再充填は、好ましくは比較的ゆっくりと行われ、たとえば1分またはそれ以上の範囲の時間を必要とし得る。
【0009】
特許文献2は、携帯型の注入装置およびそのような装置を動作させるための方法を開示し、当該方法は、(a)所与の外部パラメータに基づいて、二次リザーバの最大再充填レベルを判定する工程であって、最大再充填レベルが二次リザーバの最大容量を超えない、工程と、(b)一次リザーバからの液状製剤を最大再充填レベルまで二次リザーバに充填する工程と、(c)大部分の液状製剤を計量し、下流の導管に送達する工程と、(d)二次リザーバが空になった場合に、工程(b)でのように二次リザーバを再充填し、工程(c)を継続する工程とを含む。
【0010】
ホルモングルカゴンは、糖尿病の血糖の急速な上昇を可能にするインスリン拮抗薬である。グルカゴンの注射は、重度の低血糖症を患うPwDの緊急治療における日常的な手段であるが、通常の糖尿病治療において、グルコースは日常的には使用されない。しかし、ホルモンインスリンと、その拮抗薬、グルカゴンの両方を注入することにより、治療の質が向上され得ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第1970677号明細書
【文献】国際公開第2012/140063号
【発明の概要】
【0012】
したがって、本質的に2つの別個のシリンジドライバポンプを使用して、インスリンとグルカゴンの両方の注入を可能にする、携帯型の注入装置が提案されている。しかし、このような装置は、複雑で、かさばり、高価である。現在、日常的な使用に適した装置およびシステムは市販されていない。
【0013】
糖尿病治療におけるインスリンおよびグルカゴンの注入とは別に、長期間にわたる2つまたはそれ以上の薬剤の併用投与が望ましい他の状況、たとえば、種々のホルモン、治療、癌治療または疼痛治療において、概して同様の状況が与えられている。本明細書全体を通して、インスリンおよびグルカゴンの注入は主に、他の薬剤を追加的にまたは代替的に排除することなく、例示的な目的のために考慮される。
【0014】
糖尿病治療のためのインスリンおよびグルカゴンの注入に関連して、インスリン注入は、概して、前に説明したように、基礎注入およびボーラス注入の両方を含むが、グルカゴンは、典型的に、特定の状況で行われるボーラス注入のみである。以下では、そのような用途は、概して、異なって記載されていないと仮定される。さらに、インスリンおよびグルカゴンの注入の場合、インスリンは第1の薬剤とみなされ、グルカゴンは第2の薬剤と見なされる。
【0015】
前に説明したように一次リザーバおよび二次リザーバを備える携帯型の注入装置および携帯型の注入システムに関連して、各再充填が、かなりのエネルギー消費と、バルブの切り替えおよびピストン運動の方向的変化が原因の何らかの投与エラーの導入の可能性とに関連付けられるため、概して不必要な再充填工程は回避されるべきである。さらに、二次リザーバを間に再充填する必要なしに、可能な限り薬剤ボーラスを注入することが望ましい。すなわち、ボーラス注入中の二次リザーバの再充填は回避されるべきである。
【0016】
本発明の全体的な目的は、特に、概して1つまたは複数の二次リザーバと組み合わせて様々な薬剤との2つまたはそれ以上の一次リザーバの使用に基づく、携帯型の注入装置および携帯型の注入システムを介して、長期間にわたる2つまたはそれ以上の薬剤の併用注入の分野の技術水準に関する技術の現状を改善することである。これらの薬剤は液剤である。
【0017】
本発明の特定の目的は、適切な時点で再充填が行われるように、1つまたは複数の二次リザーバの充填または再充填を管理またはスケジューリングすることである。特に適した時点は、携帯型の注入装置の治療的に関連する動作、特に基礎注入およびボーラス注入が影響を受けないか、またはその効果が少なくとも小さいような時間である。不必要な再充填手順は回避されることが好ましい。
【0018】
全体的な目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる好ましいおよび例示的な実施形態は、従属請求項の主題だけでなく、本明細書の全体的な開示によって定義される。一般的な方法で、目的は、より近い将来注入されることが予期される2つまたはそれ以上の薬剤の量を予想または予測し、上記予測に基づいて再充填のための時点を判定することによって達成される。
【0019】
以下では、概して、それぞれ第1の薬剤および第2の薬剤と呼ばれる2つの異なる薬剤の注入が想定される。例示的な目的のために、第1の薬剤は液体インスリン製剤であり、第2の薬剤は液体グルカゴン製剤である。
【0020】
一態様では、全体的な目的は、第1の薬剤を貯蔵している第1の一次リザーバからの携帯型の注入システムの第1の二次リザーバの再充填をスケジューリングし、第2の薬剤を貯蔵している第2の一次リザーバからの携帯型の注入システムの第2の二次リザーバの再充填をスケジューリングする方法によって達成される。第2の一次リザーバは、第1の一次リザーバとは別である。この方法は、充填容積評価ルーチンを繰り返しかつ自動的に実行する工程をさらに含み、充填容積評価ルーチンは、第1の二次リザーバが再充填されるべきか、および/または第2の二次リザーバが再充填されるべきかを、現時点で判定する工程を含み、判定は、現時点と将来の推定時点との間の第1の薬剤および第2の薬剤の予期される注入に基づいている。
【0021】
この方法によって、潜在的に不適当な将来の時点、特に、薬剤投与が行われるべき時点および二次リザーバの残りの充填容積が十分でなくなるであろう時点での再充填の必要性を回避するために、第1および/または第2の二次リザーバが、直ちにまたは現時点で再充填されるべきなのかが判定される。
【0022】
この方法は、典型的にコンピュータ実施方法として実施され、対応するソフトウェアまたはファームウェアコードを実行する1つまたは複数のマイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラによって実行される。
【0023】
一実施形態では、第1の二次リザーバは第2の二次リザーバとは物理的に別個であり、第1の一次リザーバは第1の二次リザーバに流体連結され、第2の一次リザーバは第2の二次リザーバにのみ流体連結されている。
【0024】
しかし、他の実施形態では、第1の二次リザーバおよび第2の二次リザーバは、単一の共通の二次リザーバによって形成され、単一の共通の二次リザーバは、第1の二次リザーバおよび第2の二次リザーバとして交互に機能する。そのような実施形態では、単一の共通の二次リザーバは、物理的に存在する、および第1の液剤の注入のために第1の液剤を、または第2の液剤の注入のために第2の液剤を代替的に充填され得る、唯一の二次リザーバである。特定の時点で、単一の共通の二次リザーバは、第1の薬剤のみが充填され、したがって、第1の二次リザーバとして機能し得るか、または第2の薬剤が充填され、したがって、第2の二次リザーバとして機能し得る。明確には別途記載されていないが、「第1の二次リザーバ」および「第2の二次リザーバ」いう用語は、特定の状況における第1の二次リザーバまたは第2の二次リザーバとして機能する単一の共通の二次リザーバを指し得る。さらに、第1の二次リザーバおよび第2の二次リザーバは、明確である場合にのみ「二次リザーバ」と呼ばれ得る。
【0025】
第1の二次リザーバおよび第2の二次リザーバに加えて、さらなる物理的な別個の二次リザーバまたは共有される共通の二次リザーバとして、さらなる二次リザーバが、類似した方法で存在し得ることに留意されたい。各二次リザーバに対して、物理的に別個の一次リザーバが存在する。
【0026】
予期される注入の判定は、現時点と将来の時点との間の第1の薬剤および第2の薬剤の量に対する推定量としての注入推定量に基づいている。
【0027】
推定が行われる、基準時点、たとえば現時点と、続く時点、たとえば将来の時点との間の時間間隔は、推定時間間隔と呼ばれる。推定時間間隔は、以下にさらに詳細に説明するように、二次リザーバからの(第1、第2の、または任意のさらなる)薬剤の薬剤投与が十分な確実性で予測または推定され得る時間間隔である。しかし、二次リザーバは、必要な場合にはいつでも一次リザーバから再充填され得るため、正確な予測が必要とされないことに留意されたい。糖尿病治療に関連して、推定時間間隔は、たとえば2時間であり得る。1時間または4時間などのより長い時間間隔またはより短い時間間隔を使用してもよい。典型的には、推定時間間隔は予め決定され、一定である。しかし、さらなる実施形態では、推定時間間隔は予め決定されておらず、適応性である。一般的な規則として、推定時間間隔は、予測可能性が高い場合、すなわち、時刻に応じた基礎注入および/またはボーラス注入のプロファイルが、たとえば数日または数週間の長期間にわたって一定または類似している場合には長くなり得る。予測可能性が対照的に低い場合には、より短い推定時間間隔が好ましい。一実施形態では、この方法は、統計的分析によって過去の基礎注入および/またはボーラス注入のプロファイルの変動性を繰り返し判定する工程と、判定された変動性に依存して推定時間間隔を修正する工程とを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、この方法は、推定時間間隔より短い持続時間の時間間隔で充填容積評価ルーチンを実行する工程を含む。充填容積評価ルーチンは、たとえば10分の一定の時間間隔で実行されてもよい。5分、30分または60分などのより長いまたはより短い時間間隔が使用されてもよい。典型的な実施形態では、工程は、携帯型の注入装置のクロック回路の制御下で、予め決定された特定の時刻に実行される。代替的な実施形態では、充填容積評価ルーチンが実行される時刻は、少なくとも部分的には、予め決定されていないが、様々な時刻で異なる。一般的な法則として、充填容積評価ルーチンは、基礎注入および/またはボーラス注入の予測可能性が高い時刻にはそれほど頻繁には実行されず、予測可能性が低い時刻にはより頻繁に実行され得る。例として、充填容積評価ルーチンは、日中にはより頻繁に実行され、夜間にはそれほど頻繁には実行されない。さらに、充填容積評価ルーチンは、随意に、基礎注入、特に基礎インスリン注入と同期され得る。以下にさらに説明するように、増分量での実質的に持続的な基礎インスリン注入を有する携帯型の注入装置に関しては、充填容積評価ルーチンは、たとえば、概して実質的に増分の基礎注入に続いて実行され、それによって、二次リザーバの再充填のための最大の利用可能な時間間隔を保証し、続いて次の後続の増分注入との干渉が回避される。
【0029】
スケジュールに従って充填容積評価ルーチンを実行することの代替として、または好ましくはそれに加えて、この方法は、トリガー事象の発生で充填容積評価ルーチンを実行する工程を含み得る。このようなトリガー事象は、たとえば、予め決定された基礎注入スケジュールの一時的なユーザ指示の修正またはそのような修正の解除、および/または以下により詳細にさらに説明されたような低血糖の状況などの、注入に影響を及ぼす治療関連事象の発生であり得る。さらに、オンデマンドのボーラス注入のプログラミングは、トリガー事象として作用し得る。
【0030】
充填容積評価ルーチンは、携帯型の注入システムの通常の動作中に、前に述べたように、時間間隔を用いて実行されるバックグラウンドルーチンであり、ここで基礎注入および/またはボーラス注入が行われる。充填容積評価ルーチンが実行される時点は現時点である。
【0031】
いくつかの実施形態では、充填容積評価ルーチンは、将来の推定時点における第1の二次リザーバの第1の推定充填容積を判定する工程と、第1の二次リザーバが第1の推定充填容積に依存して再充填されるべきか否かを判定する工程とを含む。
【0032】
第1の推定充填容積は、予測充填容積であり、第1の二次リザーバが再充填されずに現時点から推定時点まで第2のリザーバから薬剤が注入される場合の推定時点で予期される第1の二次リザーバの充填容積である。同じことが、類似した方法で付加的にまたは代替的に第2の二次リザーバまたは任意のさらなる二次リザーバにも適用され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、充填容積評価ルーチンは、第1の推定充填容積が第1の充填容積閾値を下回る場合に、第1の二次リザーバが再充填されるべきであることを判定する工程を含む。典型的に、第1の充填容積閾値は予め決定されている。この種のいくつかの実施形態では、第1の充填容積閾値はゼロであり、すなわち、推定された第1の充填容積が負である場合に、第1の二次リザーバが現時点で再充填されるべきであると判定される。これに関連して、負の物理的充填容積が技術的な理由で不可能であることが理解されるべきである。代替的に、充填容積閾値はゼロではないが、正であり、たとえば、いくらかの安全マージンを考慮する。このような実施形態では、充填容積閾値は、CSIIの場合には、たとえば、標準濃度U100の液体インスリン製剤の10マイクロリットルから50マイクロリットル、または1IU~5IU(国際単位)の範囲であり得る。正の充填容積閾値は、特に、以下でさらに説明するように、少なくとも逆投与量に対応し得る。同じ原理が、類似した方法で付加的にまたは代替的に第2の二次リザーバまたは任意のさらなる二次リザーバにも適用され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、この方法は、充填容積評価ルーチンの一部として、推定充填容積が充填容積閾値を下回る場合に、二次リザーバが再充填されるべきではないことを判定する工程を含むが、オンデマンドのボーラスの次の続く投与までの予期される持続時間は、ボーラスのタイムアウト閾値を超える。このタイプの実施形態では、二次リザーバは、先に説明したように原則として推定に基づいて再充填されるべきであっても、現時点では再充填されなくてもよい。特に、次のオンデマンドのボーラスに対する現時点から予測または予期された時点までの時間間隔がボーラスのタイムアウト閾値を超える場合には、二次リザーバはこのタイプの実施形態では再充填されない。ボーラスのタイムアウト閾値は、典型的には予め決定され、たとえば、特定の例に従って20分であり得る。このタイプの実施形態は、薬剤注入の典型的な変動により実際に不必要である再充填を回避する。特に、ボーラスのタイムアウト閾値は時間間隔に対応し、その時間間隔を超えて、二次リザーバの推定充填容積は、実質的に推定充填容積を外れ、特に上回る可能性がかなり大きい。このような偏差の典型的な理由は、散発的活性または低血糖のために基礎注入が一時的に減少または中断されることであり得る。さらに、予期されるように次のボーラスまでに長い時間がある場合、ボーラスが予期される通りには実際に注入されない可能性がある。
【0035】
上記の種のいくつかの実施形態では、この方法は、充填容積評価ルーチンの一部として、推定充填容積が充填容積閾値を下回る場合に、二次リザーバが再充填されるべきではないことを判定する工程を含み、オンデマンドのボーラスの次の続く投与の予期される持続時間はボーラスのタイムアウト閾値を超えないが、次の続くオンデマンドのボーラスの予期されるボーラス量もボーラス量の閾値を超えない。推定充填容積が充填容積閾値を下回り、オンデマンドのボーラスの次の続く投与までの予期される持続時間がボーラスのタイムアウト閾値を超えない状況では、二次リザーバは、概して、前に説明したように再充填されるべきである。しかし、ここで記載されたタイプの実施形態では、次の続くオンデマンドのボーラスの予期されるボーラス量がボーラス量の閾値を超えない場合に、二次リザーバは、これらの条件下で再充填されない。典型的な実施形態では、ボーラス量の閾値は、随意に安全マージンを含む、現時点での二次リザーバの充填レベルに対応している。安全マージンは、少なくとも逆投与量に対応し得る。このタイプの実施形態では、事前の再充填を伴わない充填容積が、次の続くオンデマンドのボーラスの投与に十分であることを予期することができる場合に、二次リザーバは現時点で再充填されない。
【0036】
いくつかの実施形態では、充填容積評価ルーチンは、現時点での第1の二次リザーバの第1の充填容積から、現時点と将来の推定時点との間で注入されることが予期される薬剤量の推定量である第1の注入推定量を減算することによって、第1の推定充填容積を判定する工程を含む。第1の注入推定量は、以下でさらに説明されるように、基礎注入とボーラス注入の組み合わせのための専用の基礎注入推定量および専用のボーラス注入推定量を含むことができ、ここで、たとえば糖尿病治療におけるインスリンのための薬剤に関して、基礎注入およびボーラス注入の両方が行われる。さらに、注入推定量は、全注入、すなわちボーラスおよび基礎の両方を反映する注入推定量の組み合わせであってもよい。同じ原理が、類似した方法で付加的にまたは代替的に第2の二次リザーバまたは任意のさらなる二次リザーバにも適用され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1の標準注入推定量のセットを計算する工程であって、各第1の標準注入推定量が、関連付けられた所定の時刻から始まる推定時間間隔で注入されることが予期される第1の薬剤の量の推定量である、工程と、第1の標準注入推定量のセットをメモリに保存する工程とを含む。このような実施形態では、充填容積評価ルーチンは、現時点に対応する時刻に関連付けられている第1の標準注入推定量をメモリから取得する工程を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、この方法は、第2の標準注入推定量のセットを計算する工程であって、各第2の標準注入推定量が、関連付けられた所定の時刻から始まる推定時間間隔で注入されることが予期される第2の薬剤の量の推定量である、工程と、第2の標準注入推定量のセットをメモリに保存する工程とを含む。このような実施形態では、充填容積評価ルーチンは、現時点に対応する時刻に関連付けられている第2の標準注入推定量をメモリから取得する工程を含む。
【0039】
現時点での取得された標準注入推定量は、予測のための注入推定量として使用される。例として、標準注入推定量は、10分の時間間隔、たとえば、0:00(深夜)、0:10、0:20、0:30、0:40、0:50、1:00(午前1時)などの時間間隔で計算され得る。充填容積評価ルーチンが実行される時刻は、以下で評価時刻とも呼ばれる。
【0040】
標準注入推定量は、好ましくは予め計算され、繰り返し実行される充填容積評価ルーチンの一部として計算される必要はなく、注入推定ルーチンを形成する標準注入推定量のセットを判定し保存する。しかし、注入推定ルーチンは、時折または定期的に実行されてもよく、それによって、標準注入推定量のセットを更新または再計算する。典型的には、標準注入推定量は、基礎注入とボーラス注入の両方を考慮し、ここで基礎注入とボーラス注入の両方は、薬剤、たとえば糖尿病治療におけるインスリンのために行われる。標準注入推定量のセットからの各標準注入推定量は、以下にさらに詳細に説明するように、標準基礎注入推定量および/または標準ボーラス注入推定量を含み得る。しかし、代替的に、充填容積評価ルーチンが実行される度に、充填容積評価ルーチンの一部として注入推定量が明示的に計算されてもよい。標準注入推定量の計算のための同じ原理が、類似した方法で付加的にまたは代替的に第2の二次リザーバまたは任意のさらなる第2のリザーバにも適用され得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の二次リザーバが再充填されるべきかを判定する工程は、少なくとも部分的に、第1の薬剤のための所定の第1の基礎注入スケジュールに基づいている。
【0042】
インスリン注入などの実質的に持続的な薬剤注入を含む治療では、通常、基礎注入スケジュールに従って基礎薬剤注入が行われる。基礎注入スケジュールは、概して、予め決定され、時間的に可変であり、すなわち、基礎注入の速度は時間によって変化する。必ずしも必要ではないが、典型的に、基礎注入スケジュールは、CSIIにおいて、24時間の周期を有する周期的な概日スケジュールである。異なるように記載されていない例示的な目的のために以下でも仮定されるような場合には、基礎注入の速度は、それに応じて、時間に依存して定義される。典型的には、基礎注入スケジュールは、時間間隔での、たとえば、一日の1時間ごと、または一日の30分ごとの基礎注入速度を含むルックアップテーブルによって、携帯型の注入システムのメモリ、特に携帯型の注入装置の制御ユニットに保存される。さらに、実用的な実施において、基礎注入は、厳密な意味で持続的に行われないことが多いが、連続する増分量の投与間で、たとえば3分または6分の一定の時間間隔で、増分用量で行われることに留意されたい。代替的に、増分用量は、たとえば0.05IU、0.1IUまたは0.2IUに固定され、連続する投与間の時間間隔は、基礎注入スケジュールに従って変化する。さらなる変形例では、前述の両方のアプローチの混合または組み合わせが使用される。さらに、基礎注入スケジュールは、ルックアップテーブルの形で保存されなくてもよいが、数学的関数またはそのような関数のパラメータの形では保存され得る。基礎投与は、典型的に、以下にさらに説明するようにユーザによって一時的に中断または修正され得るが、概して、ユーザインタラクションを必要とすることなく、携帯型の注入装置の制御ユニットの制御下で自律的に携帯型の注入システムによって実行される。
【0043】
少なくとも部分的に所定の基礎注入スケジュールに基づいて推定充填容積を判定する工程は、推定時間間隔に対する基礎注入の総量(容積)を判定する工程と、この値を現時点での二次リザーバの充填容積から減算する工程とを含む。所定の基礎注入スケジュールに従って判定される基礎注入の総量は、基礎注入推定量として作用する。
【0044】
基礎注入スケジュールは概して予め決定されているため、基礎注入推定量は、前に述べたように注入推定ルーチンで予め計算され得る。特に、所与の開始時刻および所与の終了時刻に関して、開始時刻と終了時刻との間の時間間隔に対する基礎注入スケジュールに従って基礎注入の容積を合計または積分することによって、標準基礎注入推定量が計算され得る。ここで、推定充填容積を充填容積評価ルーチンの一部として計算することは、単純に、現時点に従って標準基礎注入推定量をメモリから取得する工程と、この値を現時点での二次リザーバの充填容積から減算する工程とを含む。標準基礎注入推定量の計算は、たとえば、基礎注入スケジュールが再プログラムされる度に、または二次リザーバが交換される度に実行され得る。これは、特に、以下にさらに説明するようにボーラス注入推定量の計算と共に実行され得る。
【0045】
所定の基礎注入スケジュールは、それが、概して、前に説明したように保存され、したがって予め知られていることを意味している。典型的には、基礎注入スケジュールは、患者またはユーザの個々のニーズに応じて医療専門家によって、またはいくつかの場合では必要に応じて患者自身によってプログラムされ、必要であれば再プログラムされてもよい。基礎注入スケジュールは概して予め決定されているため、二次リザーバの充填容積の予測は正確であるが、これは、スケジュールに従って基礎注入が実際に行われることを前提とする。以下にさらに詳細に説明するように、これは必ずしもそうである必要はない。
【0046】
いくつかの実施形態では、推定充填容積を判定する工程は、現時点と推定時点との間の時間間隔での所定の基礎注入スケジュールの一時的な修正を考慮に入れることを含む。基礎注入スケジュールの一時的な修正は、典型的には、自発的におよび任意の時点で行われ得る。最高水準の携帯型の注入システムによって、ユーザは、散発的活性または病気などの特別なまたは例外的な状況に対処するために、典型的に長い時間、たとえば12時間または24時間までの時間間隔で基礎注入を一時的に修正する、および/または基礎注入を一時的に中断することが可能になる。このような修正から結果として生じる一時的に適用される基礎注入スケジュールは、修正基礎注入スケジュールと呼ばれる。携帯型の注入システムに依存して、修正基礎注入スケジュールは、(基礎注入の増加のために)1を上回る、または(基礎注入の減少のために)1を下回るスケール係数を用いる、所定のスケジュールに従う基礎注入の比例スケーリングによって判定され得る。さらなる変形例では、修正基礎注入スケジュールは、一定の基礎速度注入スケジュールとして判定され、所定の基礎注入スケジュールは、一定の基礎速度注入スケジュールによって一時的に置き換えられる。所定の基礎注入スケジュールの一時的な修正の考慮は、推定時間間隔またはその一部で、所定の基礎注入スケジュールを修正基礎注入スケジュールと置き換えるか、またはそれを修正することによって達成され、その修正は有効である。前述したように、一時的な修正のプログラミングまたは終了は、典型的に一般的なスケジュールとは非同期で、充填容積評価ルーチンを直ちに実行させるトリガー事象として作用し得る。以下に説明するような測定および/または予測された血糖値に基づく一時的な修正についても同様である。
【0047】
いくつかの実施形態では、この方法は、推定充填容積を予測するために測定および/または予測された血糖値を考慮に入れる工程を含む。このタイプの実施形態は、CSIIに関連して特に好ましい。携帯型の注入システムは、実質的に持続的な方法で体液または身体組織においてグルコース濃度を測定するように設計されている持続的なグルコース測定ユニットを含み得るか、またはそれと動作可能に連結するように設計され得る。携帯型の注入システムはさらに、測定された血糖値に応じて基礎注入スケジュールを一時的に修正するように設計されてもよい。それは、特に、低血糖値の場合には所定の閾値にしたがって基礎注入を一時的に中断するか、または基礎注入を減少させるように設計されてもよい。このような基礎注入スケジュールの修正は、ユーザ指示された修正に関連した以前に説明されたような修正基礎注入スケジュールを結果としてもたらし、類似した方法で考慮され得る。
【0048】
基礎注入スケジュールの一時的な修正が、たとえば計画された散発的活性に従って選択された、典型的にユーザプログラムされたおよび予め決定された持続時間を有し得ることが理解されるべきである。基礎注入推定量が上述のように概して予め計算される実施形態では、一時的な修正を考慮に入れる、対応して修正された基礎注入量推定量は、プログラムされた通りの修正によって影響される、来たる推定時点をカバーするすべてのタイムスパンに対して修正の開始時に計算され得る。その後、容積評価は、影響を受けたタイムスパンに対する修正基礎注入推定量を使用し得る。
【0049】
しかし、代替的には、一時的な修正の持続時間は予め知られていなくてもよい。これは、特に、一時的な修正が、先に説明したように持続的なグルコース測定ユニットによって制御される場合であり得る。ここで、予め判定された基礎注入スケジュールの一時的な修正の考慮は、容積評価ルーチンにおいて、現時点で修正が有効であるか否かを判定し、肯定的な場合に、対応して修正された基礎注入推定量を使用することによって達成され得る。このタイプの実施形態では、修正された基礎注入推定量は、修正間隔の開始時ではなく、むしろ現時点でそれに応じて計算される。修正の持続時間が既知であっても、このタイプの実施形態が使用可能であることにも留意されたい。典型的に、有効な修正がユーザによって解除され得ることがさらに留意される。この場合、動作は所定の基礎注入スケジュールに基づいて有利に進行する。
【0050】
いくつかの実施形態では、第1の二次リザーバが再充填されるべきかを判定する工程は、少なくとも部分的に、現時点と将来の推定時点との間の第1の薬剤に対するオンデマンドのボーラス注入の予期される量に基づいている。
【0051】
CSIIに関連して、食品、特に炭水化物の摂取を補うめに、さらに望ましくない高い血糖値を補正するために、例示的な第1の薬剤としてのインスリンのオンデマンドのボーラスが注入される。基礎注入とは対照的に、オンデマンドのボーラスは、概して、任意の時点で専用のユーザコマンドを介して開始または引き起こされ、様々な量を有し得る。オンデマンドのボーラスは、典型的に、数秒または1秒以下から数分までの典型的な範囲の比較的短い時間間隔で注入される。いくつかのタイプの食品の摂取などの特別な状況に対処するために、オンデマンドのボーラスはまた、たとえば1時間から数時間までのより長い時間にわたって注入されてもよく、および/または実質的に即時に注入される部分と、より長い時間にわたって注入されるさらなる部分との組み合わせであってもよい。使用される典型的な最高水準の注入装置は、たとえばCSIIにおいて、典型的に、多数の所定のボーラスプロファイル(たとえば、多波ボーラス(Multi Wave Bolus)、拡張ボーラス(Extended Bolus)などと呼ばれる)を提供し、そこから、ユーザは特定の状況で必要とされる通りに選択し得る。
【0052】
量およびサイズの典型的な変動性のために、オンデマンドのボーラスの予測は、基礎注入の予測と比較して、それほど端的ではない。しかし、実用的な用途のシナリオでは、たとえばCSIIにおいて、いくつかの予測可能性が典型的に与えられる。食事は、しばしば、様々な日に対する類似の時点で摂取される傾向があり、さらにしばしばサイズおよび/または組成が類似している傾向があるため、オンデマンドのボーラスも同様である傾向がある。
【0053】
少なくとも部分的に、オンデマンドのボーラス注入の予期される量または容積に基づいて、推定充填容積を判定する工程は、開始時間から終了時間までの予期される総ボーラス量を判定する工程と、この容積を現時点での二次リザーバの充填容積から減算する工程とを含み得る。基礎注入に関連して前に説明したように、終了時間と開始時間との間の時間差は、推定時間間隔に対応し、終了時間は、開始時間と推定時間間隔との和によって定義される。オンデマンドのボーラス注入の予期される量は、開始時間と終了時間との間のボーラス注入のためのボーラス注入推定量として作用する。
【0054】
基礎注入推定量と同様に、ボーラス注入推定量は、現時点でオンラインで判定され得るか、または予め決定され得る。後者の場合、現時点でおよび充填容積評価ルーチンの一部として実行される工程は、ボーラス注入推定量のための対応する値を取得し、それを現時点での二次リザーバの充填容積から減算することに分解される。
【0055】
基礎注入、ボーラス注入に加えて、基礎注入およびボーラス注入の組み合わせの考慮は、第1の薬剤としてのインスリン注入に焦点を当てて上で説明されており、ボーラス注入推定量は第1のボーラス注入推定量であり、基礎注入推定量は第1の基礎注入推定量である。しかし、同じ原理が、類似した方法で、第2、第3の薬剤などの基礎注入が行われるすべての薬剤および適用可能な他の任意の薬剤にも適用され得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、推定充填容積を予測することは、少なくとも部分的に、実際の過去の注入の履歴に基づいている。実際の過去の注入の履歴は、典型的に、携帯型の注入システムの履歴メモリ、特に携帯型の注入装置の制御ユニットによって保存される。さらに、実際の過去の注入の履歴は、遠隔制御装置または糖尿病管理装置などの構造的に別個の遠隔装置に保存され得る。遠隔装置および携帯型の注入装置の制御ユニットは、典型的に、対応する通信インターフェースを介して、データを通信し、交換するように構成されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、実際の過去の注入の履歴は、1つまたは複数の外部装置によって、サーバまたはクラウドなどの1つまたは複数の遠隔位置で保存され、インターネット通信によって必要に応じて携帯型の注入装置および/または遠隔制御装置もしくは糖尿病管理装置に直接送信される。さらに、注入推定量、特に標準注入推定量は、そのような(1つまたは複数の)外部装置によって予め計算され、保存され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、履歴は、タイムスタンプ(時刻および好ましくは日付にも関する情報を提供するタイムスタンプ)と一緒に、基礎注入スケジュールに従うオンデマンドのボーラスの注入または増分基礎注入である各薬剤注入の時間および量を保存する。しかし、基礎投与は、概して、所定の基礎注入スケジュールに従って所定の時点(0:00に開始して3分毎など)に行われるため、過去の基礎注入の履歴は、基礎注入スケジュールから判定することができるが、これは、基礎注入に一時的に影響を及ぼす事象が生じていないことを前提とする。
【0059】
オンデマンドのボーラスの履歴は、タイムスタンプおよびボーラス量のリスト(ti、Bi)によって保存され、iはインデックス値であり、tiは過去のボーラス注入のタイムスタンプであり、Biは対応するボーラス量である。携帯型の注入装置が、前述したように様々なタイプのオンデマンドのボーラスを提供する場合、ボーラスタイプの識別子などのさらなる関連データが保存され、その量は、直ちに、およびより長い時間にわたって、また注入が行われる時間にわたって注入される。
【0060】
実際の過去の注入の履歴は、前に説明したボーラス注入推定量を判定するのに特に好ましい。開始時間に開始して、終了時間としての開始時間と推定時間間隔の和の時間に終了する間隔に対する実際の過去のボーラス注入の統計的評価によって、時刻としての所与の開始時間に対するボーラス注入推定量が取得され得る。統計的評価は、1日または好ましくは数日を含み得る。ボーラス注入推定量の判定は、直近の前の数日、または好ましくは、7、14、または30日などの、前の数日を考慮し得る。この判定は、毎度過去のボーラス注入の量から直接計算されてもよく、または前に計算された推定量をそれぞれ修正することによって計算されてもよい。いくつかの実施形態では、計算に使用される過去のすべての日数は均等に重み付けされる。しかし、代替的な実施形態では、様々な日が異なるように重み付けされる。特に、最近の過去の数日は、より長い過去の数日と比較して、より高い重み付けで考慮され得る。
【0061】
ボーラス注入推定量として、80%パーセンタイルまたは90%パーセンタイルまたは100%パーセンタイルなどの、考慮された過去の数日に対するボーラス注入量の予め判定されたパーセンタイルが使用され得、100%のパーセンタイルは、考慮された過去の数日および開始時間から終了時間までの時間間隔に対する最大のボーラス注入量である。たとえば平均および偏差に基づく、当該技術分野で知られている他の静態分析法も同様に使用され得ることに留意されたい。
【0062】
いくつかの実施形態では、過去の数日に対する実際の過去の注入の履歴に基づいてボーラス注入推定量を判定する工程は、過去の数日の持続的なシーケンスを考慮する。しかし、代替的に、選択された日のみが考慮されてもよい。たとえば、ボーラス注入推定量は、すべての日または週に対して別々に、または作業日および週末に対して別々に計算されてもよい。このような実施形態は、典型的なボーラス注入パターンが日毎に実質的に異なる場合に利点があり得る。さらなる実施形態では、病気、旅行、または一般的な例外的状況の日数などの、計算から特定の日数を除外するために、ユーザ入力が提供され得る。このタイプの実施形態は、計算に少ない日数
しか使用されず、結果として、各日の注入履歴が計算に重大な影響を及ぼす場合に特に好ましい。
【0063】
充填容積評価ルーチンが実行されるたびに、すなわち現時点で、ボーラス注入推定量がオンラインで計算されない場合、ボーラス注入推定量は、たとえば一日に1回、一週間に1回、または二次リザーバの交換とともに、計算され得る。
【0064】
異なる日に別々にボーラス注入推定量を計算することと同様に、基礎注入推定量は、異なる日に別々に計算され得ることに留意されたい。典型的な当該技術の携帯型の注入システムは、ユーザが切り替え得るか、またはシステムが自動的に切り替え得るかの様々な基礎注入スケジュールの定義を可能にし、たとえば、日中シフトと夜間シフトとの間の差、および/または作業日と週末との間の差に対処する。基礎注入推定量は、様々な基礎注入スケジュールに対して別々に判定され得る。
【0065】
前に説明したように実際の過去の注入の履歴に基づいてボーラス注入推定量を判定することに代えて、ボーラス注入推定量は、たとえば糖尿病の栄養スケジュールに基づいて予め計算されてもよく、たとえば判定が行われる単一の時刻に対するルックアップテーブルによって、携帯型の注入システムのメモリに保存されてもよく、単一の時刻は開始時間として機能する。
【0066】
さらなる変形例では、上述のアプローチの両方が組み合わされ、ボーラス注入推定量は、ユーザへの供給後に携帯型の注入装置がセットアップもしくは初期化されたときに、または栄養スケジュールが基本的に変更された場合に、たとえば栄養スケジュールに基づいて、予め定義される。その後、推定量は、実際の過去の注入の履歴に基づいて補正または修正される。
【0067】
所定の評価時刻に対する標準基礎注入推定量のセットを計算する工程を含む実施形態では、標準基礎注入推定量のセットは、各評価時刻、たとえば0:00、0:10、0:20などに対する基礎注入推定量を含む。
【0068】
前に説明したような所定の評価時刻に対する標準ボーラス注入推定量のセットを計算する工程を含む実施形態では、ボーラス注入推定量は、基礎注入に対するように、評価時刻、たとえば0:00、0:10、0:20などの各々に対して計算され得る。
【0069】
したがって、予め計算された注入推定量のセットは、テーブルまたはトリプルのリストによって表わされてもよく、各トリプルは、評価時刻、Tj、対応する予め計算された基礎注入推定量、b*
j、および対応する予め計算されたボーラス注入推定量B*
jを含み、jは指数である。
【0070】
しかしながら、オンデマンドのボーラス注入は、典型的に、(食事時間と相関した)同様の時刻ではあるが、いくらかの変動性を有して行われるため、この方法は、実際の過去のボーラス注入の履歴から、典型的なボーラス投与時刻および関連する典型的なボーラス量を判定する工程を含み得る。典型的なボーラス投与時刻tjおよび典型的なボーラス量B*
jは、当該技術分野で本来公知の統計的なまたはパターン認識のアルゴリズムを使用して実際の過去のボーラス注入の履歴から判定され得る。典型的なボーラス投与時刻および関連する典型的なボーラス量のセットは、たとえば典型的な日に対する(食事/スナックの数に対応する)3乃至5のエントリを有し得る対のリスト(tj、B*
j)に保存され得る。現時点で充填容積評価ルーチンを実行する際に、対応する典型的なボーラス投与時刻tjによって示されるように、現時点と将来の推定時点との間の時間間隔にあるこれらの典型的なボーラス量B*
jのみが考慮され得る。
【0071】
少なくとも部分的にオンデマンドのボーラス注入の予期される量または容積に基づいて、推定充填容積を判定する工程を含むいくつかの実施形態では、この方法は、選択された過去のボーラスを無視する工程を含み得る。このようにして、上昇した血糖値を低下させる目的のために投与されるオンデマンドのボーラスは、散発的にしか必要とされず、典型的に定義されたスケジュールに従わないため、推定の目的で除外され得る。この目的のために、対応するマーカーは、前に説明したようなボーラス量およびタイムスタンプと共に履歴に保存され得る。同様に、ボーラスは、随意に、他の理由のために例外としてマークされてもよく、計算のために無視または除外されてもよい。
【0072】
典型的な実施形態では、予期される基礎注入および予期されるボーラス注入の両方が、現時点での充填容積から対応する量を減算することによって考慮される。ここで、現時点で、将来の推定時点での二次リザーバの推定充填容積を判定する工程は、現時点での現在の充填容積から基礎注入推定量およびボーラス注入推定量を減算する工程を含む。
【0073】
実際の過去の注入の履歴および注入推定量の計算の考慮は、主に第1の薬剤としてのインスリンの基礎注入およびボーラス注入に関連して説明されている。第2の薬剤としてのグルカゴンの注入の場合、概して同じ原理が適用され得る。しかし、第2の薬剤としてのグルカゴンの注入は、ボーラス注入に限定され得る。さらに、同じ原理は、適用可能なように第3、第4の、および任意のさらなる薬剤にも適用され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、充填容積評価ルーチンは、現時点と将来の推定時点との間および第1の薬剤の次の続くオンデマンドのボーラス注入の前に、第2の薬剤の注入が行われることが予期される場合に、第2の二次リザーバが再充填されるべきであると判定する工程を含む。このタイプの実施形態は、第1の薬剤がほとんどの時間注入され、典型的には基礎注入を含み、第2の薬剤の注入は、時折のオンデマンドのボーラス注入としてのみ行われる用途において特に好ましい。これは、第1の薬剤としてのインスリンおよび第2の薬剤としてグルカゴンの組み合わせの注入の典型的な場合である。さらに、このタイプの実施形態は、前に説明したように共通の二次リザーバを用いるセットアップにおいて好適に使用され得る。さらなる実施形態では、充填容積評価ルーチンは、現時点と将来の推定時点との間および第1の薬剤の次の続く注入の前に、第2の薬剤の注入が行われると予期される場合に、第2の二次リザーバが再充填されるべきであると判定する工程を含む。
【0075】
さらなる態様では、全体的な目的は、再充填スケジューリングユニットによって達成される。再充填スケジューリングユニットは、前に説明したおよび/または後に説明される任意の実施形態に従って、二次リザーバの再充填をスケジューリングする方法を実行するように構成されている。再充填スケジューリングユニットは、マイクロコンピュータおよび/またはマイクロコントローラによって実現され得るか、またはそれに基づき得る。コンピュータで実施される実施形態は、例示的な目的のために以下でさらに想定されるが、必須ではない。本開示による方法を実行するように構成されている再充填スケジューリングユニットは、他のタイプの回路、およびたとえばASICに基づいて、全体的にまたは部分的に実現され得る。
【0076】
さらなる態様では、全体的な目的は、携帯型の注入装置の制御ユニットによって達成される。携帯型の注入装置の制御ユニットは、携帯型の注入装置の動作を制御するように構成されている。携帯型の注入装置の制御ユニットは、第1のバルブ制御ユニットを含み、第1のバルブ制御ユニットは、充填状態と代替の投与状態との間で第1のバルブユニットを切り替えるように第1のバルブアクチュエータの作動を制御するように構成されている。携帯型の注入装置の制御ユニットは、第2のバルブ制御ユニットをさらに含み、第2のバルブ制御ユニットは、充填状態と代替の投与状態との間で第2のバルブユニットを切り替えるように第2のバルブアクチュエータの作動を制御するように構成されている。
【0077】
携帯型の注入装置の制御ユニットは、第1の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットをさらに含み、第1の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットは、充填モードで動作して、充填モードで第1の二次リザーバの流体容積を増加させるように、および代替的に投与モードで動作し、投与モードで第1の二次リザーバの流体容積を減少させるように、第1の二次リザーバアクチュエータの動作を制御するように構成されている。携帯型の注入装置の制御ユニットは、第2の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットをさらに含み、第2の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットは、充填モードで動作して、充填モードで第2の二次リザーバの流体容積を増加させるように、および代替的に投与モードで動作して、投与モードで第2の二次リザーバの流体容積を減少させるように、第2の二次リザーバアクチュエータの動作を制御するように構成されている。
【0078】
携帯型の注入装置の制御ユニットは、上述のおよび/またはさらに以下で説明する任意の実施形態による再充填スケジューリングユニットをさらに含む。再充填スケジューリングユニットは、投与モードで第1の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットおよび第2の二次アクチュエータの制御ユニットと並行して動作するように構成されている。
【0079】
携帯型の注入装置の制御ユニットはさらに、第1の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第1の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成されている。第1の二次リザーバの再充填手順は、(i)第1のバルブユニットを充填状態に切り替えるように第1のバルブアクチュエータを制御する工程、(ii)第1の二次リザーバの流体容積を増加させるように第1の二次リザーバアクチュエータを制御する工程、および(iii)第1のバルブユニットを投与状態に切り替えるように第1のバルブアクチュエータを制御する工程のシーケンスを含む。携帯型の注入装置の制御ユニットはさらに、第2の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第2の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するように構成され、第2の二次リザーバの再充填手順は、(I)第2のバルブユニットを充填状態に切り替えるように第2のバルブアクチュエータを制御する工程、(II)第2の二次リザーバの流体容積を増加させるように第2の二次リザーバアクチュエータを制御する工程、および(III)第2のバルブユニットを投与状態に切り替えるように第2のバルブアクチュエータを制御する工程のシーケンスを含む。
【0080】
このタイプの実施形態による携帯型の注入装置の制御ユニットは、互いに物理的に別々である第1および第2の二次リザーバを備え、第1の二次リザーバが、第1の一次リザーバとのみ流体連結され、第2の二次リザーバが、第2の二次リザーバとのみ流体連結されている携帯型の注入装置との関連で特に適している。さらに、このようなタイプの携帯型の注入装置では、第1のバルブアクチュエータと第2のバルブアクチュエータとは物理的に別々であり、第1のバルブアクチュエータは第1のバルブユニットに連結され、第2のバルブアクチュエータは第2のバルブユニットに別々に連結されている。さらに、このようなタイプの携帯型の注入装置では、第1の二次リザーバアクチュエータと第2の二次リザーバアクチュエータとは物理的に別々であり、第1の二次リザーバアクチュエータは、第1の二次リザーバに連結され、その流体容積を制御し、第2の二次リザーバアクチュエータは、第2の二次リザーバと別々に連結され、その流体容積を制御する。別々であることで、第1および第2のバルブユニットのバルブの切り替えは、概して互いに独立している。同様に、第1および第2の二次リザーバの流体容積は、互いに独立して増加または減少され得る。
【0081】
患者への流体連結は、共通の注入部位インターフェース(たとえば、チュービング)を介して、第1および第2の薬剤のための完全に別々の注入部位インターフェースを介して、または第1および第2の薬剤のための流体的に異なる別個のルーメンを有する注入部位インターフェース(チュービング)を介して行われ得る。
【0082】
さらなる態様では、全体的な目的は、携帯型の注入装置の制御ユニットのさらなる実施形態によって達成される。携帯型の注入装置の制御ユニットは、携帯型の注入装置の動作を制御するように構成されている。携帯型の注入装置の制御ユニットは、バルブ制御ユニットを含み、バルブ制御ユニットは、バルブユニットを第1の充填状態と、代替の第2の充填状態と、代替の投与状態との間で切り替えるようにバルブアクチュエータの作動を制御するように構成されている。
【0083】
このような携帯型の注入装置の制御ユニットのさらなる実施形態は、二次リザーバアクチュエータの制御ユニットをさらに含む。二次リザーバアクチュエータの制御ユニットは、充填モードで動作して、充填モードで共通の二次リザーバの流体容積を増加させるように、二次リザーバアクチュエータの動作を制御するように構成されている。二次リザーバアクチュエータの制御ユニットは、代替的に投与モードで動作して、投与モードで共通の二次リザーバの流体容積を減少させるようにさらに設計されている。
【0084】
このような携帯型の注入装置の制御ユニットのさらなる実施形態は、上述のおよび/またはさらに以下に説明される実施形態による再充填スケジューリングユニットをさらに含む。再充填スケジューリングユニットは、投与モードで二次リザーバアクチュエータの制御ユニットと並行して動作するように構成されている。
【0085】
このような携帯型の注入装置の制御ユニットのさらなる実施形態は、第1の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第1の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するようにさらに構成され、第1の二次リザーバの再充填手順は、(ia)バルブユニットを第1の充填状態に切り替えるようにバルブアクチュエータを制御する工程、(iia)共通の二次リザーバの流体容積を増加させるように二次リザーバアクチュエータを制御する工程、および(iiia)バルブユニットを投与状態に切り替えるようにバルブアクチュエータを制御する工程のシーケンスを含む。
【0086】
携帯型の注入装置の制御ユニットのさらなる実施形態は、第2の二次リザーバが再充填されるべきであると判定された場合に、第2の二次リザーバの再充填手順の実行を制御するようにさらに構成され、第2の二次リザーバの再充填手順は、(ib)バルブユニットを第2の充填状態に切り替えるようにバルブアクチュエータを制御する工程、(iib)共通の二次リザーバの流体容積を増加させるように二次リザーバアクチュエータを制御する工程、および(iiib)バルブユニットを投与状態に切り替えるようにバルブアクチュエータを制御する工程のシーケンスを含む。
【0087】
このタイプの実施形態に関連して、第1の二次リザーバおよび第2の二次リザーバは仮想的であるが、先に説明したように、単一の共通の二次リザーバのみが物理的に存在する。共通の二次リザーバが第1の薬剤で充填されている場合、第1の二次リザーバとして作用する。共通の二次リザーバが第2の薬剤で充填されている場合、第2の二次リザーバとして作用する。
【0088】
共通の二次リザーバのみが存在するため、注入部位インターフェースへの連結は、ここでは共通のチュービングまたは共通の注入カニューレを介して実現される。
【0089】
携帯型の注入装置制御ユニットの上記のさらなる実施形態の特定の実施形態では、第1の二次リザーバの再充填ルーチンは、工程(ia)の前に、第1の空にするシーケンスを含み、第1の空にするシーケンスは、(ia’)バルブユニットを第2の充填状態に切り替えるようにバルブユニットを制御する工程、および(iia’)共通の二次リザーバの流体を最小容積まで減少させるように二次リザーバアクチュエータを制御する工程を含む。さらに、二次リザーバの再充填ルーチンは、工程(ib)の前に、第2の空にするシーケンスを含み、第2の空にするシーケンスは、(ib’)バルブユニットを第1の充填状態に切り替えるようにバルブユニットを制御する工程、および(iib’)共通の二次リザーバの流体を最小容積まで減少させるように第2のリザーバアクチュエータを制御する工程を含む。
【0090】
共通の二次リザーバは、第1の二次リザーバまたは第2の二次リザーバとして代替的に機能するため、共通の二次リザーバを薬剤のいずれかから空にすることが、他の薬剤を充填または再充填する前に必要とされる。これは、上記の第1および第2の空にするシーケンスによって達成される。同じ原理が、必要に応じて第3、第4、および概して任意の数の一次リザーバについても適用され得る。
【0091】
このさらなるタイプの実施形態による携帯型の注入装置の制御ユニットは、先に説明したように、第1の二次リザーバまたは第2の二次リザーバとして代替的に機能し得る共通の二次リザーバを備えた携帯型の注入装置との関連で特に適している。さらに、このようなタイプの携帯型の注入装置に関して、バルブアクチュエータは、第1の充填状態と、第2の充填状態と、投与状態との間で、バルブユニットを共通のバルブユニットとして切り替え得る共通のバルブアクチュエータである。上記のタイプの実施形態は、それぞれ、第1および第2の薬剤の注入に関連付けられたコンポーネントの機能的および流体的な分離に関して好ましい一方で、第2のさらなる実施形態は、(典型的には使い捨ての)二次リザーバおよびバルブユニットに加えて、バルブアクチュエータおよび二次リザーバアクチュエータが共有されるため、コストおよびコンパクト性に関して好ましい。さらなるタイプの実施形態では、前述のように共通の二次リザーバが存在するが、患者への流体連結は別々に実現される。ここで、バルブユニットは、5つの異なる状態、すなわち、第1の一次リザーバが第1の入口ポートを介して共通の二次リザーバと連結する第1の入口状態、第2の一次リザーバが第2の入口ポートを介して共通の二次リザーバと連結する第2の代替の入口状態、共通の二次リザーバが第1の注入ポートを介して第1の注入部位インターフェースに連結する第1の代替の投与状態、共通の二次リザーバが第2の投与ポートを介して別々の第2の注入部位インターフェースに連結する第2の代替投与状態を有する。他の実施形態と同様に、このタイプの実施形態は、別の数、たとえば3つまたはそれ以上の薬剤に拡張されてもよく、別々の入口および投与ポートが各薬剤に対して存在する。
【0092】
いくつかの実施形態では、一次リザーバは、必ずしも必要ではないが典型的に、一次リザーバを空にするときにカートリッジ本体内に変位される密封変位可能カートリッジピストンを備えている円筒状のカートリッジであり、典型的には、医療グレードのガラスまたはプラスチックガラスのカートリッジである。このような薬剤カートリッジのカートリッジピストン、典型的にはゴムピストンは、長時間の間移動または変位されていない場合には固着する傾向があり、かなりの摺動降伏応力(break-loose force)を続けて必要とすることが知られている。一次リザーバおよび1つまたは複数の二次リザーバを備えた本明細書で想定されるアーキテクチャに関連して、カートリッジピストンは、二次リザーバの再充填のためにのみ移動する。ユーザの個々の治療要求に応じて、持続的な再充填動作間の時間は比較的長くてもよく、典型的には数時間から1日またはそれ以上であってもよい。二次リザーバを再充填する際に、薬剤が一次リザーバから吸引され、カートリッジピストンが、薬剤によってその液体を含有する前面にかけられる吸引圧力の結果として、牽引力のみを介して移動することもさらに理解されるべきである。好ましくは、カートリッジピストンには、追加の押圧力が加えられないか、またはわずかしか加えられない。固着を解消するために必要とされる摺動降伏応力は、吸引圧力によって適用可能な最大の力と同じ範囲であり得るか、それより大きくもなり得ることがさらに理解されるべきである。最終的に、固着は懸念される問題である。
【0093】
さらなる態様では、全体的な目的は、固着するカートリッジピストンの前述した問題を軽減し、好ましくは回避することである。一態様では、この目的は、ピストン固着防止方法によって達成される。ピストン固着防止方法は、投与状態において、二次リザーバの再充填から経過した時間と、所定の逆投与の時間間隔とを比較する工程を含む。ピストン固着防止方法はさらに、逆投与の時間間隔が経過したと判定された場合に、バルブユニットを投与状態から充填状態に切り換えるようにバルブアクチュエータを制御し、その後、逆投与容積だけ二次リザーバの流体容積を減少させるように二次リザーバアクチュエータを制御して、その後、バルブユニットを充填状態から投与状態に戻して切り替えるようにバルブアクチュエータを制御する工程を含む。
【0094】
さらなる態様によれば、カートリッジピストンの固着を防止する問題は、ピストン固着防止方法を実行するように構成されている携帯型の注入装置の制御ユニットによって解決される。
【0095】
二次リザーバの流体容積を減少させることによって、逆投与容積に対応する薬剤量が二次リザーバから一次リザーバに押し込まれる。このプロセスでは、これに応じて、薬剤によってカートリッジピストン上に押圧力が付与され、これによって、固着摩擦および摺動降伏応力が解消される。逆投与の間、患者の体内に薬剤が注入されないことに留意されたい。逆投与量は比較的少なく、たとえば1IU~5IUの範囲内にあり得る。逆投与の時間間隔は、好ましくは固着が行われることが予期され得る時間間隔よりも若干短く、たとえば、例示的な実施形態では1~2時間であり得る。
【0096】
ピストン固着防止方法は、再充填をスケジューリングするための方法と並行しておよび独立して、繰り返しまたは持続的に実施され得る。しかし、代替的な実施形態では、それは、再充填をスケジューリングする方法と協調的に実行され得る。それは、特に、二次リザーバが現時点で再充填されるべきではないと判定された場合に実行され得る。
【0097】
開示された固着-摩擦防止方法が、原理的に、再充填スケジューリング方法とは独立して、別々であり、随意に、他の方法の工程の一部または全部を伴わずに実施および実行され得ることに留意されたい。同様に、携帯型の注入装置の制御ユニットは、必ずしも二次リザーバの再充填をスケジューリングするための方法の工程のすべてまたは一部を実行するように構成されることなく、固着-摩擦防止方法を実行するように構成され得る。
【0098】
前に説明したピストン固着防止方法は、一部またはすべての一次リザーバ、特に第1および第2の一次リザーバに適用され得る。
【0099】
さらなる態様では、全体的な目的は、上述のおよび/もしくは以下に説明されるような任意の実施形態による方法を実行するようプロセッサに指示するように、ならびに/または上述のおよび/もしくは任意の実施形態による再充填スケジューリングユニットおよび/もしくは携帯型の注入装置の制御ユニットとして動作するように構成されたコンピュータプログラムコードを保存している非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品によって達成される。プロセッサは、特に、1つまたは複数のマイクロプロセッサおよび/またはマイクロコントローラによって形成されることで実現され得る。
【0100】
さらなる態様では、全体的な目的は携帯型の注入装置によって達成される。携帯型の注入装置は、上述したような携帯型の注入装置の制御ユニットを含む。携帯型の注入装置は、第1のバルブ制御ユニットと動作可能に連結している第1のバルブアクチュエータおよび第2のバルブ制御ユニットと動作可能に連結している第2のバルブアクチュエータをさらに含む。携帯型の注入装置は、第1の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットと動作可能に連結している第1の二次リザーバアクチュエータおよび第2の二次リザーバアクチュエータの制御ユニットと動作可能に連結している第2の二次アクチュエータをさらに含む。バルブアクチュエータおよび二次リザーバアクチュエータは、典型的に、回転アクチュエータ、特にDCモータ、ブラシレスDCモータまたはステッパモータなどの電気アクチュエータである。他のタイプの電気アクチュエータ、特にバルブアクチュエータとしての形状記憶合金のアクチュエータが使用されてもよい。バルブアクチュエータは、関連するバルブユニットを解放可能で動作可能に連結し、係合するように設計されている。二次リザーバアクチュエータは各々、以下に説明するように投与シリンダに収容されているピストンと解放可能で動作可能に連結し、係合するように設計され、ピストンおよび投与シリンダは計量ポンプユニットを形成する。計量ポンプユニットおよびバルブユニットは、組み合わさって、投与ユニットを形成し、共通の一体型ユニットとして実現される。投与シリンダおよびそのピストンは、制御された可変容積の二次リザーバをさらに形成する。
【0101】
さらなるタイプの携帯型の注入装置では、単一のバルブアクチュエータと、前に説明したおよび以下でさらに説明するように共通の二次リザーバと連結するように設計されている二次リザーバアクチュエータが存在する。
【0102】
携帯型の注入装置の1つの二次リザーバアクチュエータまたは複数の二次リザーバアクチュエータに加えて、対応する二次リザーバアクチュエータの制御ユニットは、好ましくは、計量された、すなわち容積的に制御された方法で1つの二次リザーバまたは複数の二次リザーバの容積を増加および/または減少させて変化させるように、ならびに特に、定義された容積の多くの増分工程において、および長時間にわたって流体容積を減少させるように設計される。
【0103】
概して、任意の開示された実施形態による方法は、それに応じて開示されている、再充填スケジューリングユニット、携帯型の注入装置、携帯型の注入装置の制御ユニット、および/またはコンピュータプログラム製品の対応する実施形態によって実行され得る。同様に、開示された実施形態による再充填スケジューリングユニット、携帯型の注入装置の制御ユニット、携帯型の注入装置およびコンピュータプログラム製品は、対応する方法の実施形態を実行するために使用されてもよく、これもまたそれに応じて開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】簡略化された機能図で携帯型の注入システムの主要なコンポーネントを示す。
【
図3】本開示による再充填スケジューリング方法のさらなる動作フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下では、まず
図1が参照される。
図1は、投与ユニット100、携帯型の注入装置200、第1の薬剤リザーバ300、第2の薬剤リザーバ300’を示す。以下でも想定される例では、第1の薬剤リザーバ300はインスリンを貯蔵し、第2の薬剤リザーバ300’はグルカゴンを貯蔵し、両方とも液体製剤の形態である。本開示に関連して特に関連性のあるこれらの構造および機能ユニットのみが示されていることに留意されたい。
【0106】
投与ユニット100は、概要において上述したように、ボアを有する投与シリンダおよびピストン(別途参照されない要素)を含む計量ポンプユニット110を含む。投与シリンダの近位前壁には、ポンプポート127aに連結する流体ポートとしてボアが配置されている。投与ユニットは、代替的に、第1の充填状態120b、第2の充填状態120b’、または投与状態120aであり得るバルブユニット120をさらに含む。動作中、バルブユニット120は、以下でより詳細に説明するように、これらの状態間で繰り返し切り替えられる。第1の薬剤リザーバ300は、第1の充填ポート127bを介してバルブユニット120に流体連結され、第2の薬剤リザーバ300b’は、第1の充填ポート127bとは異なる第2の充填ポート127b’を介してバルブユニット120に流体連結される。患者900は、投与ポート127cおよび随意に流体ライン、たとえばカテーテルと一体であり得る注入部位インターフェース890を介してバルブユニット120cに流体連結される。投与ユニット100は、バルブユニット120を第1の充填状態120bと、第2の充填状態120b’と、投与状態120aとの間で切り替えるためのバルブドライバカプラ125をさらに含む。同様に、投与ユニット100は、ポンプユニット110のピストンを投与シリンダ内で直線的に移動させるためのポンプドライバカプラ115を含む。例示的な実施形態では、投与シリンダの最大充填容積は、濃度U100、または70マイクロリットルを有する液体インスリン製剤の7IU(国際単位)である。
【0107】
バルブユニット120に関して、
図1は、充填ポート127b、127b’または投与ポート127cのいずれかがポンプポート127aに連結されている状態120a、120b、120b’を示すのみであることにさらに留意されたい。しかし、さらなる随意の中間状態では、すべてのポート127a、127b、127b’、127cは閉じられてもよく、結果として流体隔離をもたらす。
【0108】
携帯型の注入装置は、ポンプドライブカプラ215に連結されているポンプドライブ217に加えて、バルブドライブカプラ225に連結されているバルブドライブ227を含む。ポンプドライブ217およびバルブドライブ227は、典型的には1つまたは複数のマイクロコントローラおよび/またはマイクロプロセッサに基づく電子の携帯型の注入装置の制御ユニット250によって電力供給され、制御される。
【0109】
投与シリンダおよびピストンは、組み合わさって共通の二次リザーバを形成し、一方で、概要で前に説明したように、薬剤リザーバ300は第1の一次リザーバを形成し、第2の薬剤リザーバ300’は第2の一次リザーバを形成する。第1の薬剤リザーバ300および第2の薬剤リザーバ300’は、密封変位可能カートリッジピストンを備える円筒状のカートリッジによって実現され得るか、またはポーチなどの完全にまたは部分的に可撓性のリザーバであり得る。第1の薬剤リザーバ300および第2の薬剤リザーバ300’は、同一または異なる設計のものであり得る。さらに、それらのいずれか一方は、製造業者によってすでに充填されて提供されるか、またはユーザによって充填されてもよい。携帯型の注入装置の制御ユニット250は、二次リザーバアクチュエータとしてのポンプドライブ217の動作を制御する二次リザーバアクチュエータの制御ユニット(別途参照されていない)をさらに含む。さらに、携帯型の注入装置の制御ユニット250は、バルブアクチュエータとしてのバルブドライブ227の動作を制御するバルブアクチュエータの制御ユニット(別途参照されていない)を含む。携帯型の注入装置の制御ユニット250は、本開示による再充填スケジューリングユニット251をさらに含み、その動作は、さらに以下でより詳細に説明される。
【0110】
薬剤リザーバ300、300’および投与ユニット100が、携帯型の注入装置200とは別個のものとして示されていることに留意されたい。しかし、これらは、動作上の構成において、携帯型の注入装置200に機械的に連結されて、共通のコンパクトなユニットを形成してもよく、かつ典型的には形成し、および/または携帯型の注入装置のハウジングの対応する区画に挿入されてもよい。さらに、投与ユニット100および薬剤リザーバ300、300’のいずれかまたは両方は、いくつかの実施形態では共通ユニットとして実現されてもよい。
【0111】
好ましくは、携帯型の注入装置は、使用の状況において、患者900の身体、たとえば当技術分野で概して知られるような腹部に直接取り付けられるように設計されているパッチ装置として設計されている。これは、注入部位インターフェース890の流体容積が小さく、好ましくは無視することができるという利点を有している。注入部位インターフェースの無視することができる流体容積は、インスリンの注入とグルカゴンの注入との間、より一般的には第1の薬剤と第2の薬剤との間の必要とされる切り替えの観点から好ましい。流体容積が無視することができない場合、以下でさらに説明するように考慮され得る。
【0112】
以下では、本開示による例示的な方法を例示している
図2がさらに参照される。この方法は工程S1で開始し、工程S1では、新しい携帯型の注入装置が、ユーザ、たとえば糖尿病患者(PwD)に提供される。携帯型の注入装置は、第1および第2の一次リザーバおよび共通の二次リザーバ(「二次リザーバ」と呼ばれる)と組み合わせて使用されるように設計されている。
図2、
図3に例示されている方法が、
図1に例示され、前に説明されたように、携帯型の注入装置200および投与ユニット100と、そのコンポーネントとのセットアップに基づいていることに留意されたい。
【0113】
続くパラメータ設定の工程S2では、携帯型の注入装置が、ユーザによる使用のために準備され、初期化される。これは、特に、前に説明したように、第1の薬剤としてのインスリンに対する基礎投与スケジュール、またはたとえば作業日および週末のための多くの基礎投与スケジュールのプログラミングを含む。多くの最高水準のシステムでは、携帯型の注入装置は、ボーラス推奨システムを備えるか、またはそれに動作可能に連結するように適合されている。ボーラス推奨システムは、食物摂取、特に炭水化物摂取の量をカバーするのに適している、および/または望ましくない上昇した血糖値を低下させるのに適している、薬剤ボーラス、特にインスリンボーラスのボーラス量を計算し、それをユーザに提案するように設計されている。この計算は、工程S2でも設定またはプログラムされる多くの患者特有ボーラス計算パラメータを使用して、食品の量および潜在的なタイプおよび/または血糖値に依存して行われる。工程S1で提供された携帯型の注入装置が、以前に使用された装置のための置換装置である場合、工程S2は、1つまたは複数の基礎管理スケジュールおよびボーラス計算パラメータを、以前に使用された装置から、または上記パラメータを保存するデータファイルから取得することを含むか、または取得することからなる。
【0114】
続く保守工程S3では、二次リザーバに加えて、第1の一次リザーバおよび第2の一次リザーバを備える投与ユニットが、携帯型の注入装置に挿入され、直接または注入管を介して注入カニューレと連結される。さらに、プライミングなどの、投与ユニットおよび/または二次リザーバを交換する関連で必要とされる追加の工程が実行される。ここで、一次リザーバと、二次リザーバを備える投与ユニットとの両方が、概して、ユーザの個々の要件に依存して、たとえば数日ごとから数週間ごとに、共に交換されると想定される。投与ユニットおよび一次リザーバは、共通の一体型ユニットとして形成されてもよい。しかし、代替的に、それらは構造的に別個であってもよく、互いに別々に交換されてもよい。さらに、第2の薬剤としてのグルカゴンは、第1の薬剤インスリンと比較して、実質的に少ない量で注入され得る。したがって、第1および第2の一次リザーバを互いに独立して交換することが予想され得る。
【0115】
続く工程S4では、標準注入推定量が、通常の動作中に使用するために計算される。標準注入推定量は、インスリンに対する第1の標準注入推定量のセットおよびグルカゴンに対する第2の標準注入推定量のセットを含む。第1の標準注入推定量のセットは、標準基礎注入推定量のセットおよび標準ボーラス注入推定量のセットを含む。第2の薬剤としてのグルカゴンがボーラスの形態のみで注入されるため、第2の標準注入推定量のセットはボーラス注入のみを考慮する。例として、推定時間間隔は2時間と予め決定され、インスリンに対する標準ボーラス推定量および標準基礎推定量に加えて、グルカゴンに対する標準ボーラス推定量は、10分の間隔、すなわち0:00(深夜)、0:10、0:20、0:30、0:40、0:50、1:00(午前1時)などの特定の時刻に対して計算される。インスリンに対する標準基礎注入推定量のセットは、基礎注入スケジュールに基づいて計算される。プログラムされた基礎注入スケジュールに基づく計算に代えて、基礎注入推定量は、履歴メモリに保存された実際の過去の基礎インスリン注入に基づいて計算されてもよい。このアプローチは、過去に行われた典型的な一時的な修正も考慮されるという利点を有する。インスリンに対する標準ボーラス注入推定量のセットは、携帯型の注入装置自体および/または遠隔制御装置または糖尿病管理装置などの外部装置の履歴メモリに保存されている実際の過去のボーラス注入の履歴に基づいて計算される。計算のために、データは履歴メモリからを取得される(工程S4’)。計算が実行される開始時間としての各時刻について、対応するボーラス注入推定量は、概要において前に説明されたように、たとえば80%パーセンタイルとして計算される。この計算は、たとえば、多くの日数、たとえば過去の3日間または7日間に基づいて行われる。グルカゴンに対する標準ボーラス注入推定量は、インスリンに対する標準ボーラス注入推定量と同じ原理に従って計算される。
【0116】
工程S4、S4’に続いて、通常の薬剤注入が行われる。バックグラウンドプロセスとして、充填容積評価手順が、繰り返しかつ自動的に実行され(工程S5、S5’)、これはより詳細に後述される。
【0117】
通常動作中に、一次リザーバのいずれかが空になると、動作フローは工程S6に進み、ここで、注入は停止され、対応するメッセージが提供される。工程S6から、動作フローは保守ルーチンS3に戻る。好ましくは、一次リザーバが実際に空にされるかなり前に、1つまたは複数の警告が提供され、それによって、ユーザは、保守工程S3に進み、好適な時点で投与ユニットおよび一次リザーバを交換することができる。
【0118】
以下では、さらに
図3が参照され、
図3は、再充填のスケジューリングに関連付けられた工程に加えて、携帯型の注入装置の通常の動作中のさらなる関連する工程の動作フローを示す。
【0119】
工程S10では、第1の薬剤としてのインスリンの注入のために、携帯型の注入装置の通常動作が開始され、すなわち、携帯型の注入装置は、基礎投与スケジュールに従ってインスリンを自律的に注入し、オンデマンドで追加のインスリンのボーラスを注入するように動作される。
【0120】
続く工程S11では、現時点は、充填容積評価を実行するための時間として設定される。続く工程S12では、共通の二次リザーバの推定充填容積が判定され、共通の二次リザーバは第1の二次リザーバとして機能する。
【0121】
インスリンおよびグルカゴンに対する標準ボーラス注入推定量およびインスリン注入に対する標準基礎注入推定量のセットが事前に計算されている実施形態では、工程S12は、現時点に関連付けられている標準基礎注入推定量および標準ボーラス推定量を取得し、二次リザーバの現在の充填容積からインスリンに対する標準基礎推定量および標準ボーラス推定量を減算することによって、二次リザーバの推定充填容積を判定することを含む。標準注入推定量が事前に計算されていない代替の実施形態では、二次リザーバの推定充填容積は、現時点を開始点として、および現時点に推定時間間隔を加えた時点を終了時間として使用して、概要において説明されるように工程S12で計算され得る。
【0122】
続く工程S13では、インスリン注入の任意の一時的な修正が有効であるか否かが判定される。このような一時的な修正に関するデータは、持続的なグルコース測定装置または持続的なグルコース測定ユニットから、および/または一時的な修正に関する情報を保存する携帯型の注入装置のメモリから取得され得る(工程S5’)。このような修正が有効である場合、工程S13は、それに応じて二次リザーバの推定充填容積を修正または更新することをさらに含む。
【0123】
続く工程S13’では、グルカゴンボーラスの注入が、現時点と将来の時点との間の推定時間間隔に行われることが予期されるか否かが判定され、その結果に応じて動作フローは分岐する。グルカゴンボーラスの注入が予期されない場合には、以下にさらに説明するように、動作フローは工程S14に進む。
【0124】
グルカゴンボーラスの注入が予期される場合、動作フローは工程S101に進む。工程S101では、グルカゴンボーラスの注入が、インスリンボーラスの次の続く注入の前に行われることが予期されるか否かが判定されるか、または代替的にグルカゴンボーラスの注入が次の続くインスリン注入の前に予期されるか否かが判定され、その結果に応じて動作フローは分岐する。工程S13’のさらなる一般的な実施において、予期される次の続く注入がインスリンであるのか、またはグルカゴンであるのかが判定される。
【0125】
次の続くインスリン注入またはインスリンボーラス注入が、グルカゴン注入の実際の時点より前に行われることが予期されると工程S101で判定された場合、動作フローは再び工程S14に進む。そうでない場合には、動作フローは工程S102に進む。工程S102では、第2の空にするシーケンスが最初に行われる。第2の空にするシーケンスでは、バルブアクチュエータは、バルブユニットを第1の充填状態に切り換えるように制御され、それにより、共通の二次リザーバとしての投与シリンダと第1の投与リザーバとが流体連結され、その後、共通の二次リザーバとしての投与シリンダの流体を最小容積に減少させるようにリザーバアクチュエータを制御する。これにより、投与シリンダはインスリンから空にされる。注入部位インターフェース890の流体容積が無視することができない実施形態では、第2の空にするシーケンスは、バルブユニットを投与状態から第1の充填状態に切り替える前に、投与シリンダ内のピストンを引き出すことによって第2のリザーバの流体容積を注入部位インターフェースの流体容積だけ増加させることを含んでもよく、それにより、注入部位インターフェースに存在するインスリンを投与シリンダまたは二次リザーバに吸引する。
【0126】
続く工程S103では、バルブユニットは、バルブユニットを第2の充填状態に切り替えるように制御され、これにより、共通の二次リザーバとしての投与シリンダとグルカゴンを含む第2の薬剤リザーバとを流体連結する。さらに、工程S103では、二次リザーバアクチュエータは、二次リザーバとしての投与シリンダの流体容積を増加させるように制御され、それにより、投与シリンダにグルカゴンを充填する。グルカゴンを有する充填容積は、好ましくは、グルカゴンに対するボーラス注入推定量に基づいて注入されることが予期される量に対応する。
【0127】
続く工程S104では、グルカゴン注入のための特定のユーザコマンドが待機される。さらに、工程S104では、ユーザによってグルカゴン注入が命令されると、バルブアクチュエータは、バルブユニットを投与状態に切り換えるように制御され、その後、二次リザーバとしての投与シリンダの充填容積を減少させるように二次リザーバアクチュエータを制御し、それにより、グルカゴンを注入する。投与シリンダには予めグルカゴンが充填されているため、グルカゴン注入は、命令されると直ちに開始することができ、これは特に好ましい。バルブユニットを投与状態に切り替える工程が、投与シリンダにグルカゴンを充填した後に工程S103で代替的に行われ得ることに留意されたい。グルカゴン注入の終了時に、投与シリンダは空であり、すなわち、二次リザーバの流体容積は、最小であるか、ゼロであるか、または少なくとも無視することができる。続いて、動作フローは、前に説明したように工程S11に戻る。
【0128】
携帯型の注入装置が、持続的なグルコースセンサと動作可能に連結されて、閉ループシステムとして動作する実施形態では、グルカゴン注入のための特定のユーザコマンドの待機は必要とされなくてもよい。
【0129】
実際の実施では、第2の薬剤としてのグルカゴン注入に直接関係する工程S102、S103およびS104のシーケンスは、明確性および簡潔性のために
図3に反映されていないいくつかのさらなる工程および分岐を含み得る。特に、注入履歴に基づいて予期されるグルカゴン注入が実際には行われない状況が生じ得る。このような状況では、動作フローは、グルカゴンを第2の薬剤リザーバに戻すことを提供し得る。さらに、ユーザがグルカゴンを注入することを決めるが、予期されるよりも異なるボーラス量である状況が生じ得る。実際のボーラス量が予期されるよりも少ない場合、投与シリンダは、グルカゴン注入の終了時に空ではない。この場合、工程S104は、バルブユニットを第2の充填状態に切り換え、残りのグルカゴンを第2の薬剤リザーバに戻すことを含み得る。実際に命令されたボーラス量が予期されるよりも多い場合には、現在の充填容積は第1の工程で注入されてもよく、その後、続く第2の工程で投与シリンダに残りの容積が充填されてもよく、または投与シリンダの充填容積は最初に望ましい容積まで増加され、グルカゴン注入は単一工程で実行されてもよい。
【0130】
注入部位インターフェース890の流体容積が無視することができない実施形態では、工程S104は、グルカゴン注入に続いて、投与シリンダ内のピストンを引き抜くことによって二次リザーバとしての投与シリンダの流体容積を注入部位インターフェースの流体容積だけ増加させることを含んでもよく、それによって、注入部位インターフェースに存在するグルカゴンを投与シリンダまたは二次リザーバに吸引し、その後、バルブユニットを第2の充填状態に切り替え、グルカゴンを第2の薬剤リザーバに押し込む。
【0131】
工程S14では、動作フローは、第1の薬剤としてのインスリンによる推定充填容積に依存して分岐する。
【0132】
将来の推定時点での推定充填容積が正であれば、動作フローは工程S15に進む。ここでは、したがって、二次リザーバが推定時間間隔内で空にならないと想定される。この場合、随意の工程S15、S16、S17が実行される。
【0133】
工程S15では、2次リザーバの最後の再充填から経過した時間は、たとえば12時間の所定の逆投与時間間隔との比較によって評価され、その結果に応じて動作フローは分岐する。逆投与時間間隔内で再充填が実行された場合、動作フローは工程S16に進み、ここでアクションは必要とされない。そうでない場合には、工程S17において逆投与のシーケンスが実行される。
【0134】
逆投与のシーケンスでは、バルブアクチュエータは、投与状態から充填状態に切り替わるように制御される。続いて、二次リザーバアクチュエータは、投与モードの間、二次リザーバの流体容積を少量の逆投与量だけ減少させるように制御される。続いて、バルブアクチュエータは、充填状態から投与状態に切り替えて戻すように制御される。二次リザーバの流体容積を減少させることによって、逆投与量に対応する薬剤量が、二次リザーバから一次リザーバに押し込まれる。ガラスカートリッジ本体内に密封してかつ移動可能に配置されているカートリッジピストンを備えたガラスまたはプラスチックカートリッジである一次リザーバに関して、これは、カートリッジを空にするためのその通常の移動方向に対するカートリッジ本体内のカートリッジピストンの強制移動に関連付けられ、強制されたピストンの移動は、薬剤によってカートリッジに加えられる押圧力に関連付けられている。このようにして、ピストンがいくらかの時間の間移動させられない場合に典型的に積み上げられるカートリッジピストンとカートリッジ本体との間の離脱力が克服される。このような離脱力は、相当なものであり得、カートリッジから液体を引き出すことによってピストンに流体的に加えられ得る引張力をかなり上回り得る。逆投与に関連付けられた方法の工程が、ピストン固着防止方法として独立して実施されてもよいことに留意されたい。
【0135】
工程S16または工程S17のいずれかの後、以下にさらに説明するように動作フローは工程S22に進む。
【0136】
離脱力が特に低い代替の実施形態、またはポーチなどの別のタイプの一次リザーバが使用される実施形態では、工程S15、S16、およびS17は必要とされなくてもよい。
【0137】
終了時の推定充填容積が負であれば、動作フローは、工程S14後に、工程S18に進む。工程S18では、次の続くボーラス注入が、現時点からのボーラスのタイムアウト閾値によって定義される時間間隔の後にのみ行われると予期されるか否かが判定される。ボーラスのタイムアウト閾値は、特定の例では20分であり得るが、より長いまたはより短い値が使用されてもよい。肯定的な場合には、動作フローは工程S19に進み、ここではアクションが現在必要とされていないと判定される。そうでない場合、動作フローは工程S20に進み、ここでは次の続くボーラスの予期される量がボーラス量の閾値を超えるか否かが判定される。好ましくは、ボーラス量の閾値は、二次リザーバの現在の充填容積に動的に設定される。負の場合には、動作フローはまた工程S19に進む。そうでない場合には、動作フローは工程S21に進み、ここではインスリンでの二次リザーバの再充填が開始される。
【0138】
工程S19または工程S21のいずれかを実行した後、動作フローは工程S22に進む。工程S22では、現時点が充填容積評価ルーチンの次の続く実行に対する時間に対応するまで、動作フローは休止する。続く工程S23では、一次リザーバが空であるか否かが判定される。肯定的な場合には、動作フローは工程S6に進み、ここではアルゴリズムは終了し、一次リザーバおよび随意に二次リザーバを備える投与ユニットのための置換ルーチンが開始される。負の場合には、動作フローは、充填容積評価ルーチンの次の実行のために工程S11に戻る。
【0139】
工程S15、S16、およびS17のように、工程S18、S19、およびS20は随意である。工程S18およびS19を介して、概要で説明したように、薬剤注入の典型的な変動に起因して実際に不必要である状況では、別の方法で開始される再充填が回避される。追加の工程S20を介して、次の予期されるオンデマンドのボーラスが、事前の再充填を行わずに依然として注入され得る状況において、現時点での再充填が回避される。