IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケイシー・カンパニー・リミテッドの特許一覧

特許7208257貯蔵安定性が改善されたポリチオールの調製方法
<>
  • 特許-貯蔵安定性が改善されたポリチオールの調製方法 図1
  • 特許-貯蔵安定性が改善されたポリチオールの調製方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】貯蔵安定性が改善されたポリチオールの調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 319/14 20060101AFI20230111BHJP
   C07C 319/28 20060101ALI20230111BHJP
   C07C 323/12 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C07C319/14
C07C319/28
C07C323/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020559500
(86)(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 KR2019005007
(87)【国際公開番号】W WO2019209046
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】10-2018-0048043
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ホン、スンモ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ヒョンミョン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンム
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1455645(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0141723(KR,A)
【文献】特開2003-206287(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0024513(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式6又は化学式7で表されるポリオール1当量に対してチオウレア1.11~1.30範囲の当量を反応させる段階と、
前記反応の生成物を加水分解して未精製のポリチオールを得る段階と、
前記未精製のポリチオールを酸洗浄および水洗浄して未反応のチオウレアを除去する段階とを含み、
前記酸洗浄を2回以上行い、
前記水洗浄を廃液のpHが6~7になるまで繰り返し行う、ポリチオールの調製方法。
[化6]
[化7]
【請求項2】
前記ポリオールが下記化学式7の化合物である場合、
前記ポリチオールが下記化学式8aの化合物である、請求項1に記載のポリチオールの調製方法:
[化8a]
【請求項3】
前記ポリオールが下記化学式7の化合物である場合、
前記ポリチオールが下記化学式8a~8cの化合物の混合物である、請求項1に記載のポリチオールの調製方法:
[化8a]
[化8b]
[化8c]
【請求項4】
前記ポリオールが下記化学式6の化合物である場合、
前記ポリチオールが下記化学式9の化合物である、請求項1に記載のポリチオールの調製方法:
[化9]
【請求項5】
前記酸洗浄および水洗浄は、廃液内にチオウレアが検出されなくなるまで繰り返し行われる、請求項1に記載のポリチオールの調製方法。
【請求項6】
前記酸洗浄が、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、フッ化水素酸、および臭素酸からなる群より選択される無機酸が1重量%~40重量%で含有された酸水溶液を用いて行われる、請求項1に記載のポリチオールの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、貯蔵安定性が改善されたポリチオールを調製する方法に関するものである。より具体的に、実現例は硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオールをチオウレアと反応させて加水分解する工程における条件を限定して、貯蔵安定性が改善されたポリチオールを調製する方法に関するものである。また、実現例は、前記方法により調製され、貯蔵安定性が改善されたポリチオールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光学材料は、ガラスのような無機材料からなる光学材料に比べて軽量でかつ容易に割れなく染色性に優れているので、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料として広く利用されている。最近では、高透明性、高屈折率、低比重、高耐熱性、高耐衝撃性などの光学材料の高性能化が求められている。
【0003】
プラスチック光学材料中、ポリチオウレタンは優れた光学特性および機械的物性を有し、光学材料として広く使用されている。ポリチオウレタンは、ポリチオールとイソシアネートを反応させて調製することができ、ポリチオウレタンから製造されたレンズは、屈折率が高く軽量で、比較的耐衝撃性が高いので、広く使用されている。
【0004】
ポリチオウレタンの主な原料であるポリチオールは、硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオールをチオウレアと反応させてイソチオウロニウム塩を生成し、これを塩基性水溶液の存在下で加水分解して調製されている(特許文献1を参照)。一方、このような過程により調製されたポリチオールには、微量の不純物が含有されるが、これは最終光学材料の品質に影響を与えるため、純度の高い原材料を使用するなどの方法でポリチオールおよび最終光学材料の品質を向上させようとする努力が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国登録特許第180926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、純度の高い原材料を使用してポリチオールおよび最終光学材料の品質を向上させようとする努力にもかかわらず、このように調製されたポリチオールを長期間または高温条件における保管時、色の変化や沈殿物による白濁が発生する問題がしばしばあった。そこで、本発明者らが研究した結果、従来の方法で調製されたポリチオール内に残留するチオウレアが、ポリチオールの貯蔵安定性に大きい影響を与えるという事実を見出した。
【0007】
通常、ポリチオールを調製するために硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオールをチオウレアと反応させる工程において、ポリチオールの収率を高めるためには一般的に反応当量に対して過量のチオウレアを使用している。これにより、反応生成物には未反応のチオウレアが残留することとなり、これに起因して長期保管または高温条件にて変色や白濁が発生し、これは最終光学レンズの光学的特性に致命的な影響を与えることとなる。
【0008】
したがって、実現例は、残留するチオウレアがないように、ポリチオールを調製する方法を提供しようとする。また、実現例は、前記方法により調製され貯蔵安定性が改善されたポリチオールを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実現例によると、硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオール1当量に対して、チオウレア1.11~1.30範囲の当量を反応させる段階と、前記反応の生成物を加水分解して未精製のポリチオールを得る段階と、前記未精製のポリチオールを酸洗浄および水洗浄して未反応のチオウレアを除去する段階とを含む、ポリチオールの調製方法が提供される。
【0010】
他の実現例によると、130℃の温度および8時間の条件で保管した後のCIE L*a*b*色座標のL*値が95以上であり、下記式(I)によるL*値の変化(ΔL*)が5以下である、ポリチオールが提供される。
【0011】
前記式において、L*初期は前記条件の保管前のL*値であり、L*最終は前記条件の保管後のL*値である。
【発明の効果】
【0012】
前記実現例によると、従来と類似の方法でポリチオールを調製するが、結果物に残留するチオウレアがないように反応条件を調節することにより、貯蔵安定性が改善されたポリチオールを容易に調製し得る。
【0013】
具体的に、反応に使用されるチオウレアの当量を特定の範囲に調節して未反応のチオウレアの量を減らし、後工程によりチオウレアをもう一度除去することによって、残留チオウレアを効果的に除去しながらも、高い収率を達成し得る。
【0014】
このように調製されたポリチオールは、残留チオウレアを含有しないので、長期保管または高温条件においても色が変わったり沈殿物による白濁が発生したりしない。
【0015】
したがって、前記実現例により調製されたポリチオールは、長期間の保管または高温の工程を経ても光学的物性に優れたポリチオウレタンに調製され得るので、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1および比較例4で調製されたポリチオール試料のFT-IR分析結果である。
図2図2は、比較例1で調製されたポリチオール試料の残留チオウレア検出試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実現例をより具体的に説明する。
実現例に係るポリチオールの調製方法は、硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオール1当量に対してチオウレア1.11~1.30範囲の当量を反応させる段階と、前記反応の生成物を加水分解して未精製のポリチオールを得る段階と、前記未精製のポリチオールを酸洗浄および水洗浄して未反応のチオウレアを除去する段階を含む。
【0018】
以下、各段階別で具体的に説明する。
まず、硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオールを準備する。
前記硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオールは、従来の公知の方法により調製され得る。
【0019】
例えば、下記化学式1のジアリルジスルフィドを塩化スルフリル、臭素ガスまたは塩素ガスと反応させて、下記化学式2で表される有機ハロゲン化物を調製し得る。
【0020】
[化1]

[化2]

前記化学式2においてXはハロゲンであり、例えば、ClまたはBrである。
【0021】
また、下記化学式4のエピハロヒドリンと下記化学式5の2-メルカプトエタノールとを反応させて下記化学式5aの化合物を調製し得る。
【0022】
[化4]

[化5]

[化5a]

前記化学式4および5aにおいてXはハロゲンであり、例えばCl、BrまたはIである。
この際、前記化学式5の化合物1モルに対して、前記化学式4の化合物0.9モル~1.1モルが使用され得る。
【0023】
反応触媒としては、トリフェニルホスフィンまたは塩基性触媒を使用し得る。前記塩基性触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジンのような第3級アミン類と、トリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムブロマイド、トリエチルアンモニウムクロリド、トリエチルアンモニウムブロマイド、トリブチルアンモニウムクロリド、トリブチルアンモニウムブロマイドのような第3級アンモニウム塩類と、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムのような金属塩基類となどを使用し得る。反応触媒の使用量は、前記化学式4の化合物と化学式5の化合物との合計量100重量部に対して、0.01重量部~3重量部または0.1重量部~1重量部であり得る。
【0024】
反応溶媒としては水またはアルコール類が可能であり、前記アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの前記塩基性触媒と混合可能な溶媒であれば制限されない。
【0025】
反応温度は、副反応を抑制しながら反応性を高め得る10℃~40℃であり得、または15℃~30℃であり得る。
【0026】
その後、前記化学式5aの化合物と前記化学式5の化合物とをさらに反応させ、下記化学式6の化合物を調製し得る。
【0027】
[化6]

この際、前記化学式5aの化合物1モルに対して、前記化学式5の化合物1モル~1.2モルが使用され得る。
【0028】
また、前記反応は、金属塩基類の存在下で行われ、この際、前記金属塩基類の使用量は、前記化学式5aの化合物1モルに対して1モル~1.2モルイルであり得る。前記金属塩基類としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムなどが用いられ、価格や反応効率性の面から水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを用いるのが好ましい。
【0029】
または、前記化学式4の化合物に過量の前記化学式5の化合物を加え、前記化学式6の化合物を直接調製することもできる。例えば、前記化学式4の化合物1モルに対して、前記化学式5の化合物1.9モル~2.1モルが使用され得る。
【0030】
反応触媒としては金属塩基類を用いることができ、反応溶媒としては水またはアルコール類を用いることができ、反応触媒の使用量は、前記化学式4の化合物1モルに対して0.9モル~1.2モルであり得る。また、反応溶媒の使用量は、前記化学式3の化合物と化学式4の化合物との合計量100重量部に対して10重量部~300重量部であり得る。
【0031】
また、前記化学式5aの化合物と硫化ナトリウムとを反応させて、下記化学式7の化合物を調製し得る。
【0032】
[化7]

硫化ナトリウムは概して水和物として存在し、商業的には硫化ナトリウム5水和物、または硫化ナトリウム9水和物を容易に購入して使用し得る。
【0033】
硫化ナトリウムは、水に10重量%~50重量%に希釈され、ゆっくり反応に投入され得る。反応温度は10℃~30℃、または15℃~25℃であり得る。
【0034】
以上により調製された硫黄原子含有の有機ハロゲン化物またはポリオールは、分離または精製され次の段階に用いられるか、または別途の分離や精製なく得た結果物のままで次の段階に用いられても良い。
【0035】
その後、前記硫黄原子が含有された有機ハロゲン化物またはポリオールは、チオウレアと反応される。
【0036】
実現例によると、前記有機ハロゲン化物または前記ポリオール1当量に対して、チオウレア1.11~1.30範囲の当量が反応に使用される。例えば、前記チオウレアの使用当量範囲は、1.11~1.25、1.15~1.25、1.20~1.25、1.11~1.20、1.11~1.15、または1.15~1.20であり得る。前記範囲の当量でチオウレアを使用するとき、最終ポリチオール内に残存するチオウレアがほとんどなく収率は高い。
【0037】
具体的に、前記範囲よりも高い当量(例えば、1.4当量)のチオウレアを反応に使用すると、最終ポリチオールに残存するチオウレアの量が多いので、洗浄などの精製工程によっても完全に除去するのが難しく、その結果、ポリチオールの貯蔵安定性を低下させることとなる。
【0038】
また、前記範囲よりも低い当量(例えば、1.1当量)のチオウレアを反応に使用すると、有機ハロゲン化物のハロゲン基またはポリオールの水酸基がチオール基に置換される比率が低くなり、その結果、ポリチオールの収率を低下させることとなる。
【0039】
一例によると、前記ポリオールがチオエーテル基を有するポリオールであり、前記ポリチオールがチオエーテル基を有し得る。
【0040】
具体的な一例によると、前記有機ハロゲン化物が下記化学式2の化合物であり、前記ポリチオールが下記化学式3の化合物であり得る。
【0041】
[化2]

[化3]

前記化学式2においてXはハロゲンであり、例えば、ClまたはBrである。
【0042】
具体的な他の例によると、前記ポリオールが下記化学式7の化合物であり、前記ポリチオールが下記化学式8aの化合物であり得る。
【0043】
[化7]

[化8a]

【0044】
または、前記ポリオールが下記化学式7の化合物であり、前記ポリチオールが下記化学式8a~8cの化合物の混合物であり得る。
【0045】
[化7]

[化8a]

[化8b]

[化8c]

【0046】
具体的なまた他の例によると、前記ポリオールが下記化学式6の化合物であり、前記ポリチオールが下記化学式9の化合物であり得る。
【0047】
[化6]

[化9]

【0048】
前記チオウレアとの反応は、還流条件にて行われ得る。
前記還流時の温度は60℃~130℃にてあり得、より好ましくは90℃~120℃であり得る。また、前記還流時間は1時間~24時間であり得、より具体的に6時間~12時間であり得る。
以上のようなチオウレアとの反応によりイソチオウロニウム塩が生成される。
【0049】
前記チオウレアとの反応で生成されたイソチオウロニウム塩は加水分解を経る。具体的に、前記チオウレアとの反応後、塩基条件下において加水分解を行う。前記塩基条件の形成のためには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニアなどの塩基性化合物を使用し得る。
【0050】
前記塩基性化合物は、前記イソチオウロニウム1当量に対して1.0~2.5範囲の当量、より具体的には、1.3~1.8範囲の当量を反応させ得、例えば、水溶液状で添加して反応させ得る。
【0051】
前記塩基性化合物を加える前に、有機溶媒を添加し得る。有機溶媒の添加量は、イソチオウロニウム溶液に対して0.1倍~3.0倍の体積量、より具体的には、0.2倍~2.0倍の体積量で加え得る。有機溶媒の種類としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。副生成物の抑制効果のためにトルエンが好ましい。
【0052】
前記加水分解の反応温度は10℃~130℃にてあり得、より具体的には、30℃~80℃であり得る。前記加水分解の時間は0.1時間~6時間であり得、より具体的に0.5時間~4時間であり得る。
【0053】
このような加水分解を経ると、未精製のポリチオールが得られる。
前記粗ポリチオールは、洗浄、精製、および脱水などの後工程を経る。
【0054】
実現例によると、前記加水分解後に得たポリチオールを酸洗浄および水洗浄して未反応のチオウレアを除去する。
【0055】
具体的に、前記酸洗浄および水洗浄は、廃液内にチオウレアが検出されなくなるまで繰り返し行われ得る。例えば、前記酸洗浄および水洗浄は、それぞれ2回以上行われ得る。
【0056】
具体的な一例によると、まず、前記加水分解後に得たポリチオールに対して、廃液内にチオウレアが検出されなくなるまで酸洗浄を繰り返して未反応のチオウレアを除去する。前記酸洗浄のための酸は無機酸であり得、また、水溶液状のものが好ましい。
【0057】
前記酸洗浄には、硫酸水溶液、塩酸水溶液などの酸水溶液が使用され得る。より具体的に、前記酸洗浄は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、フッ化水素酸、および臭素酸からなる群より選択される無機酸が1重量%~40重量%(または1重量%~20重量%)で含有された酸水溶液を用いて行われ得る。前記酸水溶液の濃度は、酸洗浄の繰り返し回数が増えるにつれ、酸水溶液の濃度を下げながら行われ得る。
【0058】
その後、水洗浄を行ってポリチオールのpHを調節する段階を経る。
前記水洗浄は、廃液が中性、例えば、pH6~7になるまで繰り返し行うことが、ポリチオールの品質を確保するために有利である。
【0059】
前記酸洗浄および水洗浄工程により、ポリチオール内に残留するチオウレアがすべて除去され得る。
【0060】
特に、前記実現例によると、前の段階でチオウレアの当量を特定の範囲に調節して反応に使用したので、酸洗浄および水洗浄工程により残余チオウレアが容易に除去され得る。
【0061】
したがって、実現例の方法によると、残留チオウレアを効果的に除去しながらも、高い収率でポリチオールを調製し得る。
他の実現例によると、先般の方法により調製されたポリチオールが提供される。
【0062】
前記ポリチオールは、長期間または高温の条件における保管時にも、色が変わったり沈殿物による白濁が発生したりしない。
【0063】
すなわち、前記実現例によるポリチオールは、130℃の温度および8時間の条件で保管した後のCIE L*a*b*色座標のL*値が95以上であり、下記式(I)によるL*値の変化(ΔL*)が5以下である。
【0064】
前記式において、
L*初期は前記条件の保管前のL*値であり、
L*最終は前記条件の保管後のL*値である。
【0065】
具体的に、前記ポリチオールは、130℃の温度および8時間の条件で保管した後のCIE L*a*b*色座標のL*値が96以上、97以上、または98以上であり、L*値の変化(ΔL*)が4以下または3以下であり得る。
【0066】
また、前記ポリチオールは、60℃の温度および7日の条件における保管時にL*値の変化(ΔL*)が3以下または2以下であり得る。
【0067】
また、前記ポリチオールは10℃~20℃の温度および365日の条件における保管時にL*値の変化(ΔL*)が3以下または2以下であり得る。
【0068】
前記L*値は、明度を示す数値として上限値である100の場合、完全に透明の液体として判断することができ、色差計で測定する際に蒸留水またはイオン交換水基準で補正して測定し得る。また、前記式(I)によるΔL*は、ポリチオールの透明度の変化に関り、小さいほど透明度が維持されることを意味する。
【0069】
したがって、前記ポリチオールは、高温条件や1年以上の長期保管時にも品質が低下しない。
【0070】
また、前記実現例によるポリチオールは、高温条件における保管時にAPHA(American Public Health Association)色彩値の変化がほとんどない。具体的に、前記ポリチオールは、80℃にて30日間の保管時にAPHA色彩値の変化が0~15の範囲、または0~10の範囲であり得る。
【0071】
前記ポリチオールは、先般の方法により調製されるため、これに含有されている不純物の中にチオウレアが含まれないか、極微量で含まれる。例えば、前記実現例によるポリチオール内のチオウレア含有量は、100ppm以下、または50ppm以下であり得る。
【0072】
前記ポリチオールは、2官能以上、3官能以上、または4官能以上のポリチオールであり得る。例えば、前記ポリチオールは、分子内にチオール基の数が2~10、2~8、2~6、または2~4のポリチオールであり得る。また、前記ポリチオールは、分子内にチオエーテル基(-S-)を1個以上有し得る。
【0073】
例えば、前記ポリチオールは、前記化学式3のような環状ポリチオールであり得る。または、前記ポリチオールは、前記化学式8a、8b、8cおよび9のような線形ポリチオールであり得る。
【0074】
具体的に、前記ポリチオールは、3官能以上の脂肪族線形ポリチオールであり得、例えば、1,2,3-プロパントリチオール、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアシクロヘキサン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン等であり得る。
【0075】
また、前記実現例によるポリチオールは、純度が90重量%以上、95重量%以上、97重量%以上、99重量%以上、または99.5重量%以上であり得る。
【0076】
実現例によると、前記ポリチオールおよびイソシアネートを含む重合性組成物が提供される。
【0077】
前記重合性組成物は、ポリチオールおよびイソシアネートを混合状態で含むか、または分離された状態で含み得る。すなわち、前記重合性組成物内で、ポリチオールおよびイソシアネートは、互いに接触して配合された状態か、または互いに接触しないように分離された状態であり得る。
【0078】
前記重合性組成物は、前記ポリチオールとして前記実現例によるポリチオールを100重量%の量で含み得る。
【0079】
また、必要に応じて、前記重合性化合物は、実現例によるポリチオール以外に他のポリチオールをさらに含み得る。
【0080】
この場合、前記重合性組成物は、全ポリチオール100重量部に対して実現例によるポリチオールを5重量部~70重量部の量で含み得る。
【0081】
前記他のポリチオールは、脂肪族ポリチオールであり得、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、ペンタエリトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン等であり得る。
【0082】
前記イソシアネートは、ポリチオウレタンの合成に用いられる通常のものを使用し得る。
【0083】
具体的に、上記イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカトリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,2-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンイソシアネート、2,2-ジメチルジシクロヘキシルメタンイソシアネート、ビス(イソシアネートエチル)スルフィド、ビス(イソシアネートプロピル)スルフィド、ビス(イソシアネートヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアネートメチル)スルホン、ビス(イソシアネートメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアネートプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、ビス(イソシアネートエチルチオ)メタン、ビス(イソシアネートエチルチオ)エタン、ビス(イソシアネートメチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアネート-2-イソシアネートメチル-3-チアペンタン、2,5-ジイソシアネートチオフェン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)チオフェン、2,5-ジイソシアネートテトラヒドロチオフェン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、3,4-ビス(イソシアネートメチル)テトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアネート-1,4-ジチアン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-1,4-ジチアン、4,5ジイソシアネート-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアネートメチル)-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアネートメチル)-2-メチル-1,3-ジチオランなどを含む脂肪族イソシアネート系化合物;およびビス(イソシアネートエチル)ベンゼン、ビス(イソシアネートプロピル)ベンゼン、ビス(イソシアネートブチル)ベンゼン、ビス(イソシアネートメチル)ナフタレン、ビス(イソシアネートメチル)ジフェニルエーテル、フェニレンジイソシアネート、エチルフェニレンジイソシアネート、イソプロピルフェニレンジイソシアネート、ジメチルフェニレンジイソシアネート、ジエチルフェニレンジイソシアネート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3-ジメチルジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、ビベンジル-4,4-ジイソシアネート、ビス(イソシアネートフェニル)エチレン、3,3-ジメトキシビフェニル-4,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアネート、ヘキサヒドロジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジフェニルスルフィド-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルスルフィド-4,4-ジイソシアネート、3,3-ジメトキシ-4,4-ジイソシアネートジベンジルチオエーテル、ビス(4-イソシアネートメチルベンゼン)スルフィド、4,4-メトキシベンゼンチオエチレングリコール-3,3-ジイソシアネート、ジフェニルジスルフィド-4,4-ジイソシアネート、2,2-ジメチルジフェニルジスルフィド-5,5-ジイソシアネート、3,3-ジメチルジフェニルジスルフィド-5,5-ジイソシアネート、3,3-ジメチルジフェニルジスルフィド-6、6-ジイソシアネート、4,4-ジメチルジフェニルジスルフィド-5,5-ジイソシアネート、3,3-ジメトキシジフェニルジスルフィド-4,4-ジイソシアネート、4,4-ジメトキシジフェニルジスルフィド-3,3-ジイソシアネート、およびこれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0084】
より具体的に、前記イソシアネートとして、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートなどを使用し得る。
【0085】
前記重合性組成物は、そのほかにも必要に応じて、内部離型剤、紫外線吸収剤、重合開始剤、熱安定剤、色補正剤、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤などの添加剤をさらに含み得る。
【0086】
前記内部離型剤としては、パーフルオロアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはリン酸エステル基を有するフッ素系非イオン界面活性剤;ジメチルポリシロキサン基、ヒドロキシアルキル基またはリン酸エステル基を有するシリコーン系非イオン界面活性剤;アルキル第4級アンモニウム塩、つまり、トリメチルセチルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩、ジメチルエチルセチルアンモニウム塩、トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジエチルシクロヘキサドデシルアンモニウム塩;および酸性リン酸エステルの中から選択された成分が、単独でまたは2種以上がともに使用され得る。
【0087】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチレート系、シアノアクリレート系、オキサニリド系などが使用され得る。
【0088】
前記重合開始剤としては、アミン系、リン系、有機スズ系、有機銅系、有機ガリウム、有機ジルコニウム、有機鉄系、有機亜鉛、有機アルミニウムなどが使用され得る。
【0089】
熱安定剤としては、脂肪酸金属塩系、リン系、鉛系、または有機スズ系を、単独でまたは2種以上混合して使用できる。
【0090】
また他の実現例によると、前述のような重合性組成物から得たポリチオウレタン系化合物が提供される。前記ポリチオウレタン系化合物は、前記ポリチオール組成物とイソシアネート化合物とが重合(および硬化)されて調製される。前記重合反応において、SH基/NCO基の反応モル比は0.5~3.0であり得、具体的に0.6~2.0、より具体的に0.8~1.3であり得、前記範囲内であれば、光学材料として要求される屈折率、耐熱性などの特性およびバランスを向上させ得る。また、反応速度を調節するために、ポリチオウレタンの調製に通常利用される前述の反応触媒が添加され得る。
【0091】
また他の実現例によると、前記重合性組成物を硬化させて得た成形体および前記成形体からなる光学材料が提供される。前記光学材料は、重合性組成物が重合および成形されて調製され得る。
【0092】
まず、前記重合性組成物を減圧下で脱気(degassing)した後、光学材料の成形用モルドに注入する。このような脱気およびモルド注入は、例えば、20℃~40℃の温度範囲で行われ得る。モルドに注入した後は、通常、低温から高温に徐々に加熱して重合を行う。
【0093】
前記重合反応の温度は、例えば20℃~150℃であり得、具体的に25℃~120℃であり得る。また、反応速度を調節するために、ポリチオウレタンの調製に通常利用される反応触媒が添加され得、その具体的な種類は前記例示したとおりである。
その後、ポリチオウレタン系光学材料をモルドから分離する。
【0094】
前記光学材料は、調製時に使用する鋳型のモルドを変えることで様々な形状であり得る。具体的に、眼鏡レンズ、カメラレンズ、発光ダイオード(LED)などの形状であり得る。
【0095】
前記光学材料は、1.65~1.75または1.65~1.70の屈折率を有し得る。
【0096】
前記光学材料は、光学レンズ、具体的にプラスチック光学レンズであり得る。前記光学レンズは、必要に応じて反射防止、高硬度付与、耐摩耗性の向上、耐薬品性の向上、くもり止め(anti-fogging)付与、またはファッション性付与のために、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的、化学的処理を実施して改良し得る。
【0097】
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0098】
(実施例1:ポリチオールの調製)
[段階(1):ポリオールの合成]
撹拌機、還流冷却管、窒素ガスパージ管、および温度計が装着された2L4口反応フラスコ内に、2-メルカプトエタノール89.1g(1.14モル)、水44.8g、および47%水酸化ナトリウム水溶液0.4gを装入した。反応フラスコにエピクロロヒドリン107.3g(1.16モル)を10℃にて4時間滴下し、1時間熟成した。その後、16.9%硫化ナトリウム水溶液261.6g(0.58モル)を25℃にて1時間滴下し、同じ温度にて3時間熟成してポリオールを得た。
【0099】
[段階(2):チオウレアの反応および加水分解]
以降、予め再結晶して得たカルシウム含有量0.05%および純度99.90%のチオウレア199.4g(2.62モル、ポリオール1当量対比約1.15当量)を投入し、110℃還流条件下で3時間熟成した。反応液を60℃に冷却した後、トルエン360.0gおよび25%アンモニア水溶液347.4g(5.10モル)を加え加水分解を行った。
【0100】
[段階(3):チオウレアの除去]
有機層を分離し、36%塩酸水溶液180gで洗浄した。さらに5%塩酸水溶液180gで2回洗浄して廃液内にチオウレアがないことをHPLCにより確認した。このように酸洗浄された溶液に対して水洗浄を行うが、廃液のpHが6~7になるまで水洗浄を繰り返した。その後、ポリチオール溶液を減圧濃縮してトルエンを除去し、0.2μmPTFEフィルタでろ過して、前記化学式8a~8cのポリチオールの混合物191.4gを得た。
【0101】
(実施例2:ポリチオールの調製)
[段階(1):ポリオールの合成]
45%水酸化ナトリウム水溶液50.4g(0.567モル)に2-メルカプトエタノール88.7g(1.14モル)を滴下して均一溶液にした後、エピクロロヒドリン50.5g(0.546モル)を1.5時間の間滴下し、112℃にて0.5時間加熱撹拌した。
【0102】
[段階(2):チオウレア反応および加水分解]
室温に冷却後、36%塩酸270g(2.66モル)とチオウレア143.1g(1.88モル、ポリオール1当量対比約1.15当量)とを添加して112℃にて1.5時間撹拌した。
【0103】
その後、20℃~25℃を維持しながら、45%水酸化ナトリウム水溶液288g(3.24モル)を0.5時間の間滴下し、110℃にて1.5時間加熱撹拌した。
【0104】
[段階(3):チオウレアの除去]
有機層を分離し、5%塩酸水溶液150gで2回洗浄して廃液内にチオウレアがないことをHPLCにより確認した。このように酸洗浄された溶液に対して水洗浄を行うが、廃液のpHが6~7になるまで水洗浄を繰り返した。その後、ポリチオール溶液を減圧濃縮してトルエンを除去し、0.2μmPTFEフィルタでろ過して、前記化学式9のポリチオール138.3gを得た。
【0105】
(実施例3:ポリチオールの調製)
前記実施例1の手順を繰り返すが、段階2においてチオウレアの投入量を215.1g(2.83モル、ポリオール1当量比で約1.24当量)にした。また、段階3において36%塩酸水溶液による酸洗浄の後、5%塩酸水溶液で3回洗浄して廃液内にチオウレアがないことをHPLCにより確認した。その後、水洗浄、減圧濃縮、およびろ過を同様に行い、前記化学式8a~8cのポリチオールの混合物192.7gを得た。
【0106】
(実施例4:ポリチオールの調製)
前記実施例2の手順を繰り返すが、段階2においてチオウレアの投入量を144.4g(1.90モル、ポリオール1当量対比約1.11当量)にした。また、段階3において36%塩酸水溶液による酸洗浄の後、5%塩酸水溶液で1回洗浄し、廃液内にチオウレアがないことをHPLCにより確認した。その後、水洗浄、減圧濃縮、およびろ過を同様に行い、前記化学式9のポリチオール134.7gを得た。
【0107】
(実施例5:ポリチオールの調製)
前記実施例2の手順を繰り返すが、段階2においてチオウレアの投入量を169.2g(2.22モル、ポリオール1当量対比約1.30当量)にした。また、段階3において36%塩酸水溶液による酸洗浄の後、5%塩酸水溶液で4回洗浄して廃液内にチオウレアがないことをHPLCにより確認した。このように酸洗浄された溶液に対して水洗浄を行うが、廃液のpHが6~7になるまで水洗浄を繰り返した。その後、水洗浄、減圧濃縮、およびろ過を同様に行い、前記化学式9のポリチオール130.6gを得た。
【0108】
(比較例1:ポリチオールの調製)
前記実施例1の手順を繰り返すが、段階2においてチオウレアの投入量を242.9g(3.19モル、ポリオール1当量対比約1.40当量)にした。また、段階3において、36%塩酸水溶液の酸洗浄工程の後、5%塩酸水溶液を5回酸洗浄したが、廃液内にチオウレアが検出された。このように酸洗浄された反応液に対して水洗浄を繰り返して廃液のpHが6~7まで到達したが、やはり廃液内にチオウレアが検出された。その後、水洗浄、減圧濃縮、およびろ過を同様に行い、前記化学式8a~8cのポリチオールの混合物171.7gを得た。
【0109】
(比較例2:ポリチオールの調製)
前記実施例2の手順を繰り返すが、段階3において、36%塩酸水溶液の酸洗浄後に、追加の酸洗浄することなく水洗浄を繰り返して廃液のpH6~7まで到達させており、廃液内に除去されていないチオウレアが検出された。その後、減圧、濃縮およびろ過を同様に行い、前記化学式9のポリチオール140.7gを得た。
【0110】
(比較例3:ポリチオールの調製)
前記実施例1の手順を繰り返すが、段階2においてチオウレアの投入量を182.2g(2.39モル、ポリオール1当量対比約1.05当量)にして、前記化学式8a~8cのポリチオールの混合物164.8gを得た。
【0111】
(比較例4:ポリチオールの調製)
前記実施例2の手順を繰り返すが、段階2においてチオウレアの投入量を139.2g(1.83モル、ポリオール1当量対比約1.07当量)にした。また、段階3において、36%塩酸水溶液で酸洗浄後に、追加の酸洗浄することなく水洗浄を繰り返して廃液のpHが6~7まで到達したが、廃液内にチオウレアが検出された。その後、減圧、濃縮およびろ過を同様に行い、前記化学式9のポリチオール130.8gを得た。
【0112】
(試験例)
前記実施例および比較例で調製したポリチオールについて、以下の手順により評価し、その結果を下記表1にまとめた。
【0113】
(1)残留チオウレアの有無
ポリチオール試料について、以下の条件に基づいて残留チオウレアが存在するか試験を行った。
【0114】
- カラム:ACQUITY UPLC(登録商標) BEHアミド、2.1×150mm、1.7μm
- 流速:0.2mL/min、注入量:5.0μL(PLNO)、試料濃度:10μg/mL、
- 試料希釈:MeCN/MeOH(75:25)、0.2%HCOOH、カラム温度:25℃、弱ニードル洗浄:MeCN/HO(95:5)
- 検出波長:245nmUV、サンプリングレート:20points/sec、フィルタ時定数:0.2
- 機器名:Waters ACQUITY UPLC with ACQUITY UPLC PDA Detector
- 前記条件により4.2分間廃液内チオウレアの存在有無を判断
また、比較例1の試験結果を図2に示し、残留チオウレアのピークを確認することができた。
【0115】
(2)水酸基の有無
ポリチオール試料について、FT-IR分析により3400cm-1~3500cm-1の水酸基存在の有無を判断した。
【0116】
また、実施例1および比較例4のポリチオールのFT-IR分析の結果を図1に示した。図1に示すように、比較例4の曲線では、実施例1の曲線では現れない水酸基(OH)のピークが観察された。
【0117】
(3)APHA色
JIS K0071-1規格に準拠して、標準溶液をAPHA5単位で調製し、ポリチオール試料のAPHA(American Public Health Association)色彩値を目視で観察した。正確な色を判断するために、ポリチオールは0.2μmPTEFフィルタを利用し固相沈殿物を除去して色彩値を測定した。
【0118】
(4)耐熱変色
ポリチオール試料を80℃のオーブンに30日間保管した後、初期に比べて変化したAPHA色彩値の差値を測定した。
【0119】
(5)沈殿物発生
ポリチオール試料を130℃のオーブンに2日関保管した後、沈殿物の発生有無を目視で観察した。
【0120】
(6)貯蔵安定性
ポリチオール試料の貯蔵安定性を評価するために、色差計(Colormate、シンコー社)を利用して、CIE L*a*b*色座標のL*値を測定した(D65光源、10°)。
【0121】
この際、蒸留水とアセトンできれいに洗浄した幅10mmの石英セルを用いており、毎測定前に蒸留水を先に測定して基準線を補正した。
【0122】
各ポリチオール試料の調製後1日以内に初期L*値(L*初期)を測定しており、それぞれの試験温度にて一定時間経過後に最終L*値(L*最終)を測定して、その差値(ΔL*)を計算した。
【0123】
【表1】
【0124】
前記表1に示すように、実施例1~5で調製したポリチオールは、残留チオウレアおよび水酸基が観察されておらず、APHA色彩値が低く、高温条件における保管時に変色が少なく、沈殿物や白濁が発生しなかった。
【0125】
一方、実施例の範囲よりも過量のチオウレアを使用した比較例のポリチオールは酸洗浄および水洗浄工程を経ても残留チオウレアの除去が難しく、また、実施例の範囲よりも少ない量のチオウレアを使用した比較例のポリチオールは、水酸基が観察され収率が低下した。特に、チオウレアが残留する場合、貯蔵安定性の評価において、白濁に起因してL*値が著しく低くなることが確認された。また、比較例のポリチオールは、APHA色彩値が大きく、高温条件における保管時に変色が大きく、かつ、沈殿物や白濁が発生した。
図1
図2