(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】タイム・センシティブ・ネットワークキング(TSN)ネットワークにおいてクラスベースのスケジューリングをサポートするために用いる装置および方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20230111BHJP
H04L 45/42 20220101ALI20230111BHJP
【FI】
H04L12/28 200Z
H04L45/42
H04L12/28 100F
(21)【出願番号】P 2021191108
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506080739
【氏名又は名称】四零四科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Moxa Inc.
【住所又は居所原語表記】4F., No. 135, Ln. 235, Baoqiao Rd., Xindian Dist., New Taipei City, Taiwan(R.O.C.)
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】柯 岳明
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 子倫
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-136688(JP,A)
【文献】特表2017-521914(JP,A)
【文献】特表2021-536708(JP,A)
【文献】特表2020-510342(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0259896(US,A1)
【文献】国際公開第2020/057766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-13/18,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイム・センシティブ・ネットワークキング(TSN)ネットワークにおけるTSNスイッチに接続される装置であって、
トランシーバーと、
トラフィッククラスとタイムスロットとの第1のマッピング、およびTSNストリームのフレームタイプと前記トラフィッククラスとの第2のマッピングを保存するように構成された記憶媒体と、
前記トランシーバーおよび前記記憶媒体に接続し、前記TSNネットワークのネットワークトポロジー、前記第1のマッピング、および前記第2のマッピングに基づいて、前記TSNストリームに対応するルーティング経路およびゲート・コントロール・リスト(Gate Control List,GCL)を決定すると共に、前記トランシーバーを介して前記GCLを前記ルーティング経路における各TSNスイッチにデプロイするように構成されたコントローラと
を含む、装置。
【請求項2】
前記トラフィッククラスが、
ベストエフォート(Best Effort, BE)、
周期性(cyclic)、
時刻同期(Time Synchronization,TimeSync)、および
ユーザー定義(User-defined)
のうちの1つである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記トラフィッククラスが周期性またはユーザー定義である場合、前記フレームタイプが、
産業用イーサネットを用いるコントロールおよびコミュニケーションリンク(Control and Communication Link using Industrial Ethernet,CC-Link IE)、
EtherCAT、
PROFINET、
イーサネット/産業プロトコル(IP)、
ユーザー定義、および
TSN
のうちの1つである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記記憶媒体がさらに、前記タイムスロットを含むタイムサイクルの第1の設定を保存するように構成されており、前記第1の設定が、前記タイムサイクルの開始時間、前記タイムスロットのインデックス、および前記タイムスロットの継続時間の情報を含み、前記ルーティング経路および前記GCLは前記第1の設定に基づいて決定される、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記記憶媒体がさらに、前記TSNストリームに関連するユニキャストグループまたはマルチキャストグループの第2の設定を保存するように構成されており、前記第2の設定が、送信先メディアアクセスコントロール(Media Access Control, MAC)アドレス、トーカーIPアドレス、および1つまたはそれ以上のリスナーIPアドレスの情報を含み、前記ルーティング経路および前記GCLは前記第2の設定に基づいて決定される、請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラがさらに、前記フレームタイプおよび前記第2の設定に基づいて前記TSNストリームの優先度コードポイント(Priority Code Point,PCP)およびVLAN ID (VID)を決定すると共に、前記トランシーバーを介して前記送信先MACアドレスおよび前記VIDを前記ルーティング経路における各TSNスイッチにデプロイするように構成されており、前記GCLは前記PCPに基づいて決定される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、前記TSNネットワークにおける1つまたはそれ以上のTSNスイッチと接続するセントラルネットワーク設定(Central Network Configuration,CNC)サーバーである、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
タイム・センシティブ・ネットワークキング(TSN)ネットワークにおけるTSNスイッチに接続された装置により実行される方法であって、
トラフィッククラスとタイムスロットとの第1のマッピング、およびTSNストリームのフレームタイプと前記トラフィッククラスとの第2のマッピングを受け取るステップと、
前記TSNネットワークのネットワークトポロジー、前記第1のマッピング、および前記第2のマッピングに基づいて、前記TSNストリームに対応するルーティング経路およびゲート・コントロール・リスト(Gate Control List,GCL)を決定するステップと、
前記GCLを前記ルーティング経路における各TSNスイッチにデプロイするステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記トラフィッククラスが、
ベストエフォート(Best Effort, BE)、
周期性(cyclic)、
時刻同期(Time Synchronization,TimeSync)、および
ユーザー定義(User-defined)
のうちの1つである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記トラフィッククラスが周期性またはユーザー定義である場合、前記フレームタイプが、
産業用イーサネットを用いるコントロールおよびコミュニケーションリンク(Control and Communication Link using Industrial Ethernet,CC-Link IE)、
EtherCAT、
PROFINET、
イーサネット/産業プロトコル(IP)、
ユーザー定義、および
TSN
のうちの1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タイムスロットを含むタイムサイクルの第1の設定を受け取るステップをさらに含み、
前記第1の設定が、前記タイムサイクルの開始時間、前記タイムスロットのインデックス、および前記タイムスロットの継続時間の情報を含み、
前記ルーティング経路および前記GCLは前記第1の設定に基づいて決定される、
請求項8から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記TSNストリームに関連するユニキャストグループまたはマルチキャストグループの第2の設定を受け取るステップをさらに含み、
前記第2の設定が、送信先メディアアクセスコントロール(Media Access Control, MAC)アドレス、トーカーIPアドレス、および1つまたはそれ以上のリスナーIPアドレスの情報を含み、
前記ルーティング経路および前記GCLは前記第2の設定に基づいて決定される、
請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記フレームタイプおよび前記第2の設定に基づいて前記TSNストリームの優先度コードポイント(Priority Code Point, PCP)およびVLAN ID (VID)を決定するステップであって、前記GCLは前記PCPに基づいて決定される、ステップと、
前記送信先MACアドレスおよび前記VIDを前記ルーティング経路における各TSNスイッチにデプロイするステップと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記装置が、前記TSNネットワークにおける1つまたはそれ以上のTSNスイッチと接続するセントラルネットワーク設定(Central Network Configuration,CNC)サーバーである、請求項8から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
TSNスイッチであって、
入口ポートと、
複数のキューおよび前記キューに対応する複数のゲートを含む出口ポートと、
前記入口ポートおよび前記出口ポートに接続し、前記入口ポートを介してセントラルネットワーク設定(Central Network Configuration,CNC)サーバーからTSNストリームのフレームタイプに対応するゲート・コントロール・リスト(Gate Control List, GCL)を受け取り、前記GCLを用い、タイムスロットにおけるゲートのうちの1つを開いて、開かれたゲートに対応する前記キューのうちの1つの中のフレームを伝送すべく前記出口ポートを設定する、ように構成されているコントローラと
を含み、
前記フレームタイプが、前記タイムスロットに対応するトラフィッククラスに対応する、
TSNスイッチ。
【請求項16】
前記トラフィッククラスが、
ベストエフォート(Best Effort, BE)、
周期性(cyclic)、
時刻同期(Time Synchronization,TimeSync)、および
ユーザー定義(User-defined)
のうちの1つである、請求項15に記載のTSNスイッチ。
【請求項17】
前記トラフィッククラスが周期性またはユーザー定義である場合、前記フレームタイプが、
産業用イーサネットを用いるコントロールおよびコミュニケーションリンク(Control and Communication Link using Industrial Ethernet,CC-Link IE)、
EtherCAT、
PROFINET、
イーサネット/産業プロトコル(IP)、
ユーザー定義、および
TSN
のうちの1つである、請求項16に記載のTSNスイッチ。
【請求項18】
前記コントローラがさらに、前記入口ポートを介して前記CNCサーバーから前記TSNストリームの送信先メディアアクセスコントロール(Media Access Control, MAC)アドレスおよびVLAN ID (VID)を受け取るように構成されており、
前記フレームが前記送信先MACアドレスおよび前記VIDに基づいて伝送される、
請求項15から17のいずれか1項に記載のTSNスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.§119条の下で、2021年4月22日に出願された、発明の名称を「Traffic isolation scheduling for centralized configuration in a time sensitive network(TBD)」とする米国仮特許出願第63/177,989号に基づく優先権を主張し、その特許発明の対象が、参照することにより本明細書に援用される。
【0002】
本出願は概してタイム・センシティブ・ネットワークキング(time-sensitive networking, TSN)に関し、より詳細には、TSNネットワークにおいてクラスベースのスケジューリングをサポートするために用いる装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インダストリー4.0(Industry 4.0)として知られる新たなデジタル産業テクノロジーの台頭は、機器間のデータ収集および分析を可能として、より速く、よりフレキシブルで、かつより効率のよい製造工程を実現し、コストを抑えながらより高品質の製品を製造できるような変化をもたらしている。インダストリー4.0の中心のコア的な実体の1つは、サイバーフィジカルシステム(cyber-physical systems, CPS)である。定義によれば、これらのシステムはサイバースペースにおいて表現が必要とされる。そのためには、製造設備につながるオペレーションテクノロジー(OT)ネットワークと、より上のファクトリーレイヤーからのインフォメーションテクノロジー(IT)との統合が必要となる。
【0004】
残念なことに、現在、産業用イーサネット規格のほとんどが専用のハードウェアを必要とする。このことは、ネットワークの統合をほぼ不可能なものとしている。その結果、他の階層に接続するためのゲートウェイを必要とする孤立したネットワークができている。これらの必要を満たすべく、リアルタイム確定的動作を実現し、同時に垂直および水平の両方においてスケーラブルとするため、一連のIEEE規格をまとめる米国電気電子学会(Institute of Electrical and Electronics Engineers,IEEE)802.1ワーキンググループにより、タイム・センシティブ・ネットワークキング(TSN)テクノロジーが提案されている。
【0005】
従来のOTネットワークにおいて、トラフィックはそれぞれ異なるクラスに分類され、異なるクラスのトラフィックは異なるタイムスロットで伝送されるため、重要なトラフィックが他のクラスのトラフィックによって妨げられない。一方、ITネットワークにおいては、トラフィックはこのようなクラスベースのスケジューリングで管理されない。その結果、ITネットワークがOTネットワークと統合された場合、重要なトラフィックの伝送がITトラフィックにより妨げられてしまう。こうした状況は、OTネットワークからTSNネットワークへの移行においてよく見られるものであり、統合されたネットワークではTSNスイッチがTSNエンドデバイスおよび非TSNエンドデバイスと共存する場合があるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故に、TSNネットワークにおいて、エンド・ツー・エンド(end-to-end)のレイテンシが保証されたクラスベースのスケジューリングでデータストリームを伝送できるようにする安定した方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一態様では、タイム・センシティブ・ネットワークキング(TSN)ネットワークにおけるTSNスイッチに接続される装置を提供する。当該装置は、トランシーバー、記憶媒体、およびコントローラを含む。記憶媒体は、トラフィッククラスとタイムスロットとの第1のマッピング、およびTSNストリームのフレームタイプとトラフィッククラスとの第2のマッピングを保存するように構成されている。コントローラは、トランシーバーおよび記憶媒体に接続し、TSNネットワークのネットワークトポロジー、第1のマッピング、および第2のマッピングに基づいて、TSNストリームに対応するルーティング経路およびゲート・コントロール・リスト(Gate Control List,GCL)を決定すると共に、トランシーバーを介してルーティング経路における各TSNスイッチにGCLをデプロイするように構成されている。
【0008】
本出願の別の態様では、TSNネットワークにおけるTSNスイッチに接続された装置によって実行される方法を提供する。当該方法は、トラフィッククラスとタイムスロットとの第1のマッピング、およびTSNストリームのフレームタイプとトラフィッククラスとの第2のマッピングを受け取るステップと、TSNネットワークのネットワークトポロジー、第1のマッピング、および第2のマッピングに基づいて、TSNストリームに対応するルーティング経路およびGCLを決定するステップと、GCLをルーティング経路における各TSNスイッチにデプロイするステップとを含む。
【0009】
本出願のまた別の態様では、入口ポート、出口ポート、およびコントローラを含むTSNスイッチを提供する。出口ポートは、複数のキューおよびキューに対応する複数のゲートを含む。コントローラは、入口ポートおよび出口ポートに接続され、入口ポートを介してCNCサーバーからTSNストリームのフレームタイプに対応するGCLを受け取ると共に、GCLを用いて、タイムスロットにおけるゲートのうちの1つを開き、開かれたゲートに対応するキューのうちの1つの中のフレームを伝送すべく出口ポートを設定する、ように構成されている。
【0010】
TSNネットワークにおいてクラスベースのスケジューリングをサポートするために用いる装置および方法の特定の実施形態の以下の説明を読むことによって、当業者には、本出願の他の態様および特徴について明らかになる。
【発明の効果】
【0011】
開示される実施形態から、本出願は、非TSNエンドデバイスを含むTSNネットワークにおいて、エンド・ツー・エンドのレイテンシが保証されたクラスベースのスケジューリングにおけるデータストリームの伝送を実現するものであるということが、理解されるはずである。純粋なTSNネットワーク(つまり、TSNネットワークがTSNエンドデバイスのみを含む)において用いられるストリームベーススケジューリングでは、計算されるGCLはTSNストリームごと、およびTSNスイッチごとにそれぞれ異なる一方で、非TSNエンドデバイスを含むTSNネットワークでは、全てのTSNスイッチについて計算されるGCLはいずれも同じである、という点に留意されたい。また、OTネットワークで用いられる従来のクラスベースのスケジューリングはタイムスロット設定を実行するのみであるが、一方、本出願におけるエンド・ツー・エンドのレイテンシが保証されているクラスベースのスケジューリングは、タイムスロット設定を実行するだけでなく、各タイムスロットで伝送可能なデータストリームをも設定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことによって、本出願をより十分に理解することができる
【0013】
【
図1】本出願の一実施形態によるTSNネットワークのブロック図である。
【
図2】本出願の一実施形態によるCNCサーバーを説明するブロック図である。
【
図3】本出願の一実施形態によるTSNスイッチを説明するブロック図である。
【
図4】本出願の一実施形態による、TSNネットワークにおいてクラスベースのスケジューリングをサポートするために用いる方法を説明するフローチャートである。
【
図5】本出願の一実施形態によるタイムサイクルを設定するために用いるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を説明する概略図である。
【
図6】本出願の一実施形態によるユニキャストグループを設定するために用いるGUIを説明する概略図である。
【
図7】本出願の一実施形態によるマルチキャストグループを設定するために用いるGUIを説明する概略図である。
【
図8】本出願の一実施形態によるTSNストリームの決定されたPCPおよびVIDを説明する概略図である。
【
図9】本出願の一実施形態による各TSNスイッチについて決定されたGCLを説明する概略図であり、このうち、IPアドレスはTSNスイッチIPアドレスのことを示す。
【
図10】
図9の実施形態におけるGCLによるTSNストリームのルーティング経路を説明する概略図である。
【
図11】本出願の一実施形態による、TSNネットワークにおいてクラスベースのスケジューリングをサポートするために用いる方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の記載は、本出願の原理を説明する目的のためのものであって、限定の意味に解されてはならない。実施形態はソフトウェア、ハードウェア、フォームウェア、またはこれらの任意の組み合わせによって実現され得るということが理解されるはずである。用語「~を含む」は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、ステップ、オペレーション、構成要素、および/またはコンポーネントの存在を明確に述べるものであるが、1つまたはそれ以上の他の特徴、整数、ステップ、オペレーション、構成要素、コンポーネント、および/もしくはこれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0015】
図1は、本出願の一実施形態によるTSNネットワークのブロック図である。
【0016】
図1に示されるように、TSNネットワーク110は複数のネットワーク装置111A、111Bを含み得る。ネットワーク装置111A、111Bの各々は、TSNゲートウェイ/スイッチ/ルーター/ブリッジであり得る。ネットワーク装置111A、111Bの各々は1つまたはそれ以上の端末装置と接続可能であり、端末装置のそれぞれはTSNエンドデバイスまたは非TSNエンドデバイスであってよい。例えば、ネットワーク装置111Aは、機械112A、監視カメラ112B、およびロボットアーム112Cに接続され、一方ネットワーク装置111Bは、コンベヤ112D、プリンタ112E、およびセキュリティロック112Fに接続される。
【0017】
さらに、TSNネットワーク110は、ネットワーク装置111A、111Bの設定の管理を担ってTSNネットワーク110内におけるリアルタイム確定的通信を実現するセントラルネットワーク設定(Central Network Configuration,CNC)サーバー113を含んでいてよい。より重要なことは、TSNネットワーク110においてデータストリーム(TSNストリームおよび非TSNストリームを含む)が、エンド・ツー・エンドのレイテンシが保証されたクラスベースのスケジューリングで伝送され得る(つまり、異なるクラスのトラフィックが異なるタイムスロットで伝送される)ように、CNCサーバー113がネットワーク装置111A、111Bを設定することが可能である、という点である。詳細には、CNCサーバー113は、トポロジー・ディスカバリープロセスを実行してTSNネットワーク110のトポロジーを決定することができるか、またはユーザー入力からネットワークトポロジーを受け取ることができる。ネットワークトポロジー、アプリケーションサイクルの設定、およびユニキャスト/マルチキャストグループの設定に基づいて、CNCサーバー113は、TSNネットワーク110において通信されるデータストリームのルーティング経路、およびデータストリームに対応するゲート・コントロール・リスト(Gate Control Lists ,GCL)を決定することができる。その後、CNCサーバー113は、ルーティング経路中にあるTSNスイッチにGCLをデプロイし得る。
【0018】
図1の実施形態で記載したコンポーネントは単に例示目的で挙げたに過ぎず、本出願の範囲を限定する意図はないということを理解しなければならない。例えば、TSNネットワーク110のネットワークトポロジーは、ライントポロジー、スタートポロジー、リングトポロジー、およびメッシュトポロジーの任意の組み合わせであってよい。
【0019】
図2は、本出願の一実施形態によるCNCサーバーを説明するブロック図である。
【0020】
図2に示されるように、CNCサーバーは、トランシーバー10、コントローラ20、および記憶媒体30を含む。
【0021】
トランシーバー10は、TSNネットワーク110内においてデータストリーム通信(例えばオーバー・イーサネット)の機能を提供するように構成されている。
【0022】
コントローラ20は、汎用プロセッサ、マイクロコントロールユニット(MCU)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、または類似のものであってよく、コントローラ20は、データ処理および計算の機能を提供する、TSNネットワーク110内でデータストリームの通信がなされるようにトランシーバー10をコントロールする、ならびにデータ(例えば、トラフィッククラスとタイムスロットとの第1のマッピング、およびTSNストリームのフレームタイプとトラフィッククラスとの第2のマッピング)を記憶媒体30に保存しかつこれから読み出す、ために用いる各種回路を含む。
【0023】
特に、コントローラ20はトランシーバー10および記憶媒体30の上述した動作を調整して、本出願の方法が実行されるようにする。
【0024】
当業者には理解され得るように、コントローラ20の回路は、ここに記載した機能および動作のとおりに、回路の動作をコントロールするように構成されているトランジスタを含み得る。さらに理解され得るように、トランジスタの特定の構造または配線は、レジスタトランスファー言語(Register Transfer Language, RTL)コンパイラのようなコンパイラによって決定されてよい。RTLコンパイラは、アセンブリ言語コードによく似たスクリプトに基づき、プロセッサにより動作して、スクリプトを、最終的な回路のレイアウトまたは製造に用いられる形式にコンパイルすることができる。事実、RTLは、電子およびデジタルシステムの設計工程の円滑化におけるその役割および使用がよく知られている。
【0025】
記憶媒体30は、フラッシュメモリもしくは不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)のようなメモリ、ハードディスクもしくは磁気テープのような磁気記憶装置、光ディスク、またはこれら任意の組み合わせを含む非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であってよく、データ(例えば、アプリケーションサイクル設定、ユニキャストグループ設定、およびマルチキャストグループ設定)、命令、ならびに/またはアプリケーション、通信プロトコル、および/もしくは本出願の方法のプログラムコードを保存するために用いられる。一例において、アプリケーションサイクル設定およびユニキャスト/マルチキャストグループ設定は、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)またはトランシーバー10を介してユーザーから受け取られるものとしてもよいし、または実施の形式によって決めてもよい。
【0026】
図2の実施形態において記載したコンポーネントは単に例示目的で挙げたに過ぎず、本出願の範囲を限定する意図はないということが理解されなければならない。例えば、CNCサーバーは、入/出力(I/O)装置(例として、1つもしくはそれ以上のボタン、1つもしくはそれ以上の発光装置、スピーカー、キーボード、マウス、タッチパッドおよび/またはディスプレイ装置)のようなより多くのコンポーネントを含んでいてもよい。
【0027】
図3は、本出願の一実施形態によるTSNスイッチを説明するブロック図である。
【0028】
図3に示されるように、TSNスイッチは、入口ポート40、出口ポート50、およびコントローラ60を含み得る。
【0029】
入口ポート40は、CNCサーバー113からTSNストリームのフレームタイプに対応するGCLを受け取ると共に、TSNネットワーク110内において通信されるフレーム(またはパケットと称される)を受け取るように構成されている。
【0030】
出口ポート50は、GCLを保存するための記憶媒体51、ルーティングされることとなるフレームをバッファリングするための複数のキューQ0~Q7、キューQ0~Q7中にバッファリングされたフレームに関連する伝送動作をコントロールするための複数のゲートG0~G7、および設定されたユニキャスト/マルチキャストの送信先MACアドレスおよびVIDに基づいてフレーム伝送を行うために用いられる送信選択回路を含む。キューQ0~Q7およびゲートG0~G7は一対一でマッピングされている。
【0031】
コントローラ60は、汎用プロセッサ、MCU、DSP、または類似のものであってよく、コントローラ60は、データ処理および計算の機能を提供する、GCLおよびフレームを受け取るように入口ポート40をコントロールする、ならびにGCLを用い、タイムスロットにおけるゲートG0~G7のうちの1つを開いて、開いたゲートに対応するキューのうちの1つの中のフレームを伝送するよう出口ポート50を設定する、ために用いる各種回路を含む。
【0032】
当業者には理解され得るように、コントローラ60の回路は、ここに記載した機能および動作のとおりに、回路の動作をコントロールするように構成されているトランジスタを含み得る。さらに理解され得るように、トランジスタの特定の構造または配線は、RTLコンパイラのようなコンパイラによって決定されてよい。RTLコンパイラは、アセンブリ言語コードによく似たスクリプトに基づき、プロセッサにより動作して、スクリプトを、最終的な回路のレイアウトまたは製造に用いられる形式にコンパイルすることができる。事実、RTLは、電子およびデジタルシステムの設計工程の円滑化におけるその役割および使用がよく知られている。
【0033】
図3の実施形態において記載したコンポーネントは単に例示目的で挙げたに過ぎず、本出願の範囲を限定する意図はないということを理解しなければならない。例えば、ネットワーク装置は、より多くの入口ポート、より多くの出口ポート、ならびに/または入/出力(I/O)装置(例として、1つもしくはそれ以上のボタン、1つもしくはそれ以上の発光装置、スピーカー、キーボード、マウス、タッチパッドおよび/もしくはディスプレイ装置)のようなより多くのコンポーネントを含んでいてもよい。
【0034】
図4は、本出願の一実施形態による、TSNネットワークにおいてクラスベースのスケジューリングをサポートするために用いる方法を説明するフローチャートである。
【0035】
この実施形態において、当該方法は、TSNスイッチの設定を管理するためのCNCサーバー(例えば、CNCサーバー113)として構成されている装置に適用されると共に、これによって実行される。
【0036】
ステップS410において、装置がアプリケーションサイクル設定を、例えばユーザーから受け取る。詳細には、アプリケーションサイクル設定は、1つまたはそれ以上のタイムスロットを含むタイムサイクルの設定のことを指し得る。アプリケーションサイクル設定は、(1)タイムサイクルの名称、(2)タイムサイクルの開始時間(または基準時間と称される)、(3)タイムサイクルの継続時間、(4)各タイムスロットのインデックス、(5)各タイムスロットの継続時間、および(6)各タイムスロットの対応するトラフィッククラス(トラフィッククラスとタイムスロットとのマッピングと称してもよい)の情報を含んでいてもよい。つまり、アプリケーションサイクル設定は、トラフィッククラスとタイムスロットとのマッピングに関する情報を有するものとして理解することができる。
【0037】
一例において、ベストエフォート(Best Effort,BE)、周期性(Cyclic)、時刻同期(Time Synchronization,TimeSync)、およびユーザー定義(User-defined,UD)を含む4つのトラフィッククラスがあってよいが、本出願はこれには限定されない。
図5は、本出願の一実施形態によるタイムサイクルを設定するために用いるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を説明する概略図である。
図5に示されるように、タイムサイクルの名称は”FA1”であり、タイムサイクルの基準時間は年:月:日/時間:分:秒:マイクロ秒のフォーマットで示される2020:02:10/12:01:01:00であり、タイムサイクルの継続時間は1000マイクロ秒(μs)である。
【0038】
ステップS420において、装置がユニキャスト/マルチキャストグループ設定を、例えばユーザーから受け取る。詳細には、ユニキャストグループ設定は、TSNストリームに関連するユニキャストグループの設定のことを指し得る。ユニキャストグループ設定は、
(1)TSNストリームの名称、(2)ユニキャストの送信先のメディアアクセスコントロール(MAC)アドレス(3)トーカーのインターネットプロトコル(IP)アドレス、(4)リスナーのIPアドレス、および(5)トラフィッククラスのTSNストリームのフレームタイプ(すなわち、フレームタイプの情報はフレームタイプとトラフィッククラスとのマッピングと称してもよい。)の情報を含んでいてもよい。つまり、フレームタイプとトラフィッククラスとのマッピングは、ユニキャストグループ設定から派生したものであってよい。
【0039】
一例において、産業用イーサネットを用いるコントロールおよびコミュニケーションリンク(Control and Communication Link using Industrial Ethernet,CC-Link IE)、EtherCAT、PROFINET、イーサネット/IP、ユーザー定義、およびTSNを含む6つのフレームタイプがあってよいが、本出願はこれには限定されない。各フレームタイプは産業プロトコルに対応している。
図6は、本出願の一実施形態によるユニキャストグループを設定するために用いるGUIを説明する概略図である。CC-Link IEのフレームタイプでは、ユーザーはチェックボックスをクリックすることでサブタイプフィールドの設定を有効/無効にすることができる。BE、周期性、およびユーザー定義(UD)のトラフィックタイプ(
図6においてグレーの背景で示されている)に対応するタイムスロットのみが、ユニキャスト/マルチキャストグループと共に設定されることが必要であるという点に留意されたい。
【0040】
詳細には、マルチキャストグループ設定は、TSNストリームに関連するマルチキャストグループの設定のことを指し得る。マルチキャストグループ設定は、(1)TSNストリームの名称、(2)マルチキャストの送信先のMACアドレス(3)トーカーのIPアドレス、(4)リスナーのIPアドレス(複数のリスナーのIPアドレス)、および(5)トラフィッククラスのTSNストリームのフレームタイプ(すなわち、フレームタイプの情報はフレームタイプとトラフィッククラスとのマッピングと称してもよい。)の情報を含んでいてもよい。つまり、フレームタイプとトラフィッククラスとのマッピングは、マルチキャストグループ設定から派生したものであってよい。
図7は、本出願の一実施形態によるマルチキャストグループを設定するために用いるGUIを説明する概略図である。BE、周期性、およびユーザー定義(UD)のトラフィックタイプ(
図7においてグレーの背景で示されている)に対応するタイムスロットのみが、ユニキャスト/マルチキャストグループと共に設定されることが必要であるという点に留意されたい。
【0041】
ステップS430において、装置は、TSNネットワークのネットワークトポロジー、アプリケーションサイクル設定、およびユニキャスト/マルチキャストグループ設定に基づいて、TSNストリームに対応するルーティング経路、PCP、およびGCLを決定する。詳細には、フレームタイプおよびユニキャスト/マルチキャストグループ設定に基づいて、TSNストリームの優先度コードポイント(Priority Code Point, PCP)およびバーチャル・ローカル・エリア・ネットワーク(Virtual Local Area Network,VLAN)ID(VID)を、装置が決定することができるか、またはPCPおよびVIDがユーザーによって設定されて、GCLがPCPに基づいて決定され得る。
図8は、本出願の一実施形態によるTSNストリームの決定されたPCPおよびVIDを説明する概略図である。
【0042】
ステップS440において、装置は、GCL、ユニキャスト/マルチキャスト送信先MACアドレス、およびVIDを、ルーティング経路における各TSNスイッチにデプロイする。
図9は、本出願の一実施形態による各TSNスイッチについて決定されたルーティング経路およびGCLを説明する概略図であり、このうち、IPアドレスはTSNスイッチIPアドレスのことを示す。
図10は、
図9の実施形態におけるGCLによるTSNストリームのルーティング経路を説明する概略図である。
図10において、太線はマルチキャストTSNストリームのルーティング経路を表している。
【0043】
図11は、本出願の一実施形態による、TSNネットワークにおいてクラスベースのスケジューリングをサポートするために用いる方法を説明するフローチャートである。
【0044】
この実施形態において、当該方法は、CNCサーバー(例えば、CNCサーバー113)によって設定されるTSNスイッチ(例えば、TSNスイッチ111A、111B)に適用されると共に、これによって実行される。
【0045】
ステップS1110において、TSNスイッチは、TSNストリームのフレームタイプに対応するGCL、ならびにTSNストリームのユニキャスト/マルチキャスト送信先MACアドレスおよびVIDを、CNCサーバーから受け取る。
【0046】
ステップS1120において、TSNスイッチは、GCL、ユニキャスト/マルチキャスト送信先MACアドレス、およびVIDを用いて自身の出口ポートを設定する。
【0047】
ステップS1130において、TSNスイッチは自身の入口ポートからフレームを受け取る。
【0048】
ステップS1140において、TSNスイッチは、フレームがVLANタグを含むか否かを判断する。
【0049】
フレームがVLANタグを含む場合(S1140:YES)、当該方法はステップS1150に進む。一方、フレームがVLANタグを含まない場合(S1140:NO)、当該方法はステップS1180に進む。
【0050】
ステップS1150において、TSNスイッチはフレームを出口ポートに送る。
【0051】
ステップS1160において、TSNスイッチは、VLANタグ中のPCPに基づいて、フレームを対応するキューに入れる。
【0052】
ステップS1170において、TSNスイッチは、GCL中の予定されたエントリーに基づいて、対応するタイムスロットにおいてフレームを伝送する。
【0053】
ステップS1180において、TSNスイッチは、フレームのストリームIDを識別する。
【0054】
ステップS1190において、TSNスイッチは、ストリームIDに対応する事前に定められたVLANタグをフレームに挿入する。
【0055】
ステップS1190の後、当該方法はステップS1150に戻る。
【0056】
前述した実施形態から、本出願は、非TSNエンドデバイスを含むTSNネットワークにおいて、エンド・ツー・エンドのレイテンシが保証されたクラスベースのスケジューリングにおけるデータストリームの伝送を実現するものであるということが、理解されるはずである。純粋なTSNネットワーク(つまり、TSNネットワークがTSNエンドデバイスのみを含む)において用いられるストリームベーススケジューリングでは、計算されるGCLはTSNストリームごと、およびTSNスイッチごとにそれぞれ異なる一方で、非TSNエンドデバイスを含むTSNネットワークでは、全てのTSNスイッチについて計算されるGCLはいずれも同じである、という点に留意されたい。また、OTネットワークで用いられる従来のクラスベースのスケジューリングはタイムスロット設定を実行するのみであるが、一方、本出願におけるエンド・ツー・エンドのレイテンシが保証されているクラスベースのスケジューリングは、タイムスロット設定を実行するだけでなく、各タイムスロットで伝送可能なデータストリームをも設定する。
【0057】
例を用いて、本出願を好ましい実施形態の見地から説明したが、本出願はそれらに限定されないということが理解されなければならない。本出願の範囲および精神を逸脱することなく、当業者は各種変更および修飾を加えることができる。よって、本出願の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物により定義されると共に保護される 。
【0058】
特許請求の範囲の構成要素を修飾するための特許請求の範囲における順序を表す用語、例えば「第1」、「第2」等の使用は、それ自体、1つの特許請求の範囲の構成要素の別の構成要素に比しての何らかの重要度、優先順位、もしくは順番、または方法の行為が実行される時間的な順序を示唆するものではなく、それらは、特定の名称を有する1つの特許請求の範囲の構成要素を、同じ名称を有する別の構成要素と区別するための単なる標識としてのみ用いられて(順序を表す用語の使用がない場合)、特許請求の範囲の構成要素どうしを区別するものである。
【符号の説明】
【0059】
110 TSNネットワーク
111A、111B ネットワーク装置
112A 機械(machinery)
112B 監視カメラ
112C ロボットアーム
112D コンベヤ
112E プリンタ
112F セキュリティロック
113 CNCサーバー
10 トランシーバー
20、60 コントローラ
30、51 記憶媒体
40 入口ポート
50 出口ポート
Q0~Q7 キュー
G0~G7 ゲート