(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-24
(54)【発明の名称】タイヤ用シーリング材組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
C09K3/10 A
(21)【出願番号】P 2021510657
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(86)【国際出願番号】 CN2018103211
(87)【国際公開番号】W WO2020042075
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】518293516
【氏名又は名称】アクティブ ツールズ インターナショナル(ホンコン)リミティド
【氏名又は名称原語表記】ACTIVE TOOLS INTERNATIONAL(HK)LTD.
【住所又は居所原語表記】27/F COFCO Tower,262 Gloucester Road,Causeway Bay,Hong Kong,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】チン,ワイ クォン
(72)【発明者】
【氏名】ウィジャヤ,アンジェリン
(72)【発明者】
【氏名】ラム,クーン フン
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104725885(CN,A)
【文献】特表2019-500481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0166848(US,A1)
【文献】特開2013-6949(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104403109(CN,A)
【文献】特表2018-515660(JP,A)
【文献】特表2012-528911(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105263978(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0291253(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0141696(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10- 3/12
B29C 73/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックスエマルジョンと、界面活性剤と、凍結防止剤と、デンドリマーと、水と、湿潤剤および多孔性粒子からなる群より選択される1種以上の任意成分とを含む、タイヤ用シーリング材組成物
であって、
前記凍結防止剤が、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、および1,3-プロパンジオールのうちの少なくとも1種を含み、
前記湿潤剤が、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酪酸エチル、およびコハク酸ジメチルのうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の凍結防止剤の重量パーセントが、20重量%~95重量
%の範囲である、シーリング材組成物。
【請求項3】
請求項1
または2のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中のラテックスエマルジョンの重量パーセントが、0.01重量%~20重量
%の範囲である、シーリング材組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中におけるラテックスエマルジョン対界面活性剤の質量比が1:5~3:1である、シーリング材組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中のデンドリマーの重量パーセントが、50ppm~40000pp
mの範囲である、シーリング材組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、前記デンドリマーが、スクシンアミド酸表面を有するデンドリマー、カルボン酸ナトリウム塩表面を有するデンドリマー、および第一級アミン表面を有するデンドリマーのうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の界面活性剤の重量パーセントが、0.1重量%~10重量
%の範囲である、シーリング材組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の湿潤剤の重量パーセントが、0.001重量%~10重量
%の範囲である、シーリング材組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、前記多孔性粒子が、ゼオライト、シリカエアロゲル、メソポーラスシリカ、カーボンエアロゲル、メソポーラス炭素、活性炭、セノスフェア、珪藻土、多孔性金属、および有機キレート化合物のうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の多孔性粒子の重量パーセントが、0.001重量%~10重量
%の範囲である、シーリング材組成物。
【請求項11】
請求項1~1
0のいずれか一項に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物は、さらに助剤を含み、該助剤は、耐腐食剤、殺虫剤、pH調整剤、消泡剤、保存料、着色剤、および付臭剤のうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、タイヤ修理のためのタイヤ用シーリング材組成物に関し、より詳しくは、タイヤのパンクを修理するためのタイヤ用シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のタイヤは、路上の硬い物によってパンクする場合があり、パンクしたタイヤは、不安定に回転し得る。この状況は、交通事故を引き起こし得、また、自動車の運転手に身体的害を及ぼし得る。この状況を避けるために、ある種の液体シーリング材が開発されている。一時的な緊急の方法として、液体シーリング材組成物をパンクしたタイヤの修理用に使用することができ、それにより、自動車は、修理場に到着するまで移動を継続できる。
【0003】
現在、市販されている液体シーリング材組成物は、様々な剤型により作製することができる。
【0004】
シーリング性能以外に、特に天然ラテックスを含む液体シーリング材組成物の場合、液体シーリング材組成物の安定性も重要である。界面活性剤を液体シーリング材組成物に加えることによって、当該液体シーリング材の安定性を向上させることができる。一般的に、液体シーリング材組成物に添加されたアニオン性界面活性剤は、優れた安定化効果を実現することができるが、それは、特に低温において、液体シーリング材の高粘度を生じることとなる。
【0005】
この点に関して、国際公開第2018021239号によれば、天然ゴムラテックスと、合成樹脂エマルジョンと、凍結防止剤と、界面活性剤と、キレート化剤とを含有し、当該キレート化剤の含有量が0.1質量%以上である、優れた注入性を有するタイヤのパンク用シーリング材、ならびに、このタイヤのパンク用シーリング材を使用するタイヤのパンク修理キットが提供される。しかしながら、現在、このような先行技術におけるシーリング材の安定性をさらに向上させることが、依然として必要とされている。
【0006】
国際公開第2017070837号は、タイヤ修理用のシーリング材に関するものであり、より詳しくは、タイヤのパンクを修理するためのシーリング材組成物ならびにその調製方法に関するものであり、ここでは、ラテックスを安定化するために界面活性剤が使用されている。しかしながら、このような先行技術におけるシーリング材の安定性をさらに向上させることが、依然として必要とされている。
【0007】
米国特許出願公開第20150166848号によれば、ラテックスエマルジョンと、ナノ多孔性粒子と、界面活性剤と、凍結防止剤と、湿潤剤と、水とを含むシーリング材組成物であって、湿潤剤およびpH調整剤が当該シーリング材組成物を安定化する、シーリング材組成物が提供される。しかしながら、このような先行技術におけるシーリング材の安定性をさらに向上させることが、依然として必要とされている。
【0008】
米国特許第9126375号は、溶存および非溶存の天然生体材料と、凍結防止剤と、他の剛性粒子とを含むバルブスルー型のタイヤパンク用シーリング材組成物を対象としている。これらのシーリング材組成物は、環境に優しく、沈降が少なく、貯蔵寿命が長いなどのいくつかの利点を有するが、このような先行技術におけるシーリング材の安定性のさらなる向上が依然として必要とされている。
【0009】
米国特許出願公開第20150152302号は、80~95重量%の液体保持体と、0.1~10重量%の水溶性ポリマー由来ゲル材料と、1~10重量%のラテックスエマルジョンと、0.1~5重量%の剛性粒子と、0.1~5重量%の界面活性剤とを含むシーリング材組成物に関するものであり、ここでも、当該界面活性剤が、シーリング材組成物の安定性および機能性を向上させるために使用されている。しかしながら、このような先行技術におけるシーリング材組成物の安定性をさらに向上させることが依然として必要とされている。
【0010】
多くのシーリング材組成物製品が開発されているが、これらのシーリング材組成物製品が使用される場合、それらは、安定性の問題を引き起こし得、とりわけ、70℃超などの高温において不安定であり得、また、長期間においてそれらは不安定になり得る。
【発明の概要】
【0011】
したがって、本願の目的の1つは、先行技術におけるシーリング材組成物の安定性を向上するためのタイヤ用シーリング材組成物を提供することにある。
【0012】
本願の別の目的は、タイヤ用シーリング材組成物のための新規の安定化剤を提供することにある。
【0013】
本願のタイヤ用シーリング材組成物は、タイヤのパンクに対する良好なシーリング性能および高温下での優れた安定性を実現する。その上、当該タイヤ用シーリング材組成物は、長期において安定である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[好適な実施形態の詳細な説明]
【0015】
上記において特定された技術的問題を解決するための本願の技術的解決策は、以下の通りである。
【0016】
タイヤ用シーリング材組成物であって、ラテックスエマルジョンと、界面活性剤と、凍結防止剤と、デンドリマーと、水と、湿潤剤および多孔性粒子からなる群より選択される1種以上の任意成分(optional component(s))とを含む、タイヤ用シーリング材組成物。
【0017】
先述の技術的解決策に記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の凍結防止剤の重量パーセントが、20重量%~95重量%、好ましくは25重量%~94重量%、より好ましくは30重量%~93重量%、最も好ましくは35重量%~92重量%の範囲である、シーリング材組成物。例えば、当該シーリング材組成物中の凍結防止剤の重量パーセントを、40重量%、50重量%、または90重量%とすることができる。
【0018】
先述の技術的解決策に記載のシーリング材組成物であって、凍結防止剤が、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、および1、3-プロパンジオールのうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【0019】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中のラテックスエマルジョンの重量パーセントが、0.01重量%~20重量%、好ましくは0.05重量%~15重量%、より好ましくは0.06重量%~13重量%、最も好ましくは0.08重量%~12重量%の範囲である、シーリング材組成物。例えば、シーリング材組成物中のラテックスエマルジョンの重量パーセントを、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、0.1重量%、1重量%、または10重量%とすることができる。
【0020】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中におけるラテックスエマルジョン対界面活性剤の質量比が1:5~3:1である、シーリング材組成物。
【0021】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中のデンドリマーの重量パーセントが、50ppm~40000ppm、好ましくは60ppm~30000ppm、より好ましくは70ppm~25000ppmの範囲である、シーリング材組成物。例えば、当該シーリング材組成物中のデンドリマーの重量パーセントを、50ppm~40000ppm、100ppm~20000ppm、1000ppm~10000ppm、100ppm、1000ppm、2500ppm、5000ppm、10000ppm、または20000ppmとすることができる。先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、デンドリマーが、スクシンアミド酸表面を有するデンドリマー、カルボン酸ナトリウム塩表面を有するデンドリマー、および第一級アミン表面を有するデンドリマーのうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【0022】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の界面活性剤の重量パーセントが、0.1重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~8重量%、より好ましくは0.2重量%~7重量%、最も好ましくは0.2重量%~7重量%の範囲である、シーリング材組成物。例えば、当該シーリング材組成物中の界面活性剤の重量パーセントを、0.3重量%、1重量%、2重量%、4重量%、または5重量%とすることができる。
【0023】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の湿潤剤の重量パーセントが、0.001重量%~10重量%、好ましくは0.005重量%~8重量%、より好ましくは0.007重量%~7重量%、最も好ましくは0.008重量%~6重量%の範囲である、シーリング材組成物。例えば、当該シーリング材組成物中の湿潤剤の重量パーセントを、0.01重量%、1重量%または5重量%とすることができる。
【0024】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、湿潤剤が、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酪酸エチル、およびコハク酸ジメチルのうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【0025】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、多孔性粒子が、ゼオライト、シリカエアロゲル、メソポーラスシリカ、カーボンエアロゲル、メソポーラス炭素、活性炭、セノスフェア、珪藻土、多孔性金属、および有機キレート化合物のうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【0026】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、当該シーリング材組成物中の多孔性粒子の重量パーセントが、0.001重量%~10重量%、好ましくは0.005重量%~8重量%、より好ましくは0.007重量%~7重量%、最も好ましくは0.008重量%~6重量%の範囲である、シーリング材組成物。例えば、当該シーリング材組成物中の多孔性粒子の重量パーセントを、0.01重量%~5重量%、0.01重量%~2重量%、0.1重量%~2重量%、0.5重量%~1.5重量%、0.01重量%、1重量%、または5重量%とすることができる。
【0027】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、さらに凍結防止添加剤を含み、当該凍結防止添加剤は、無機塩および/または有機塩を含む、シーリング材組成物。
【0028】
先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物であって、さらに助剤(assisted additive)を含み、当該助剤は、耐腐食剤(anti-corrosion additive)、殺虫剤、pH調整剤、消泡剤、保存料、着色剤、および付臭剤のうちの少なくとも1種を含む、シーリング材組成物。
【0029】
本発明による技術的解決策は、シーリング材組成物または先述の技術的解決策のいずれか1つに記載のシーリング材組成物のための安定化剤としてのデンドリマーの使用を含み得る。
【0030】
本発明による技術的解決策は、さらに、本願の文脈において定義されるようなデンドリマーを含むシーリング材組成物のための安定化剤を含み得る。
【0031】
本願の文脈において、当該シーリング材組成物中の水の重量パーセントは、0.01重量%~90重量%、好ましくは0.1重量%~80重量%、より好ましくは1重量%~70重量%、最も好ましくは1.2重量%~55重量%の範囲である。例えば、当該シーリング材組成物中の水の重量パーセントを、1.5重量%、32.5重量%、37.5重量%、40重量%、41重量%、41.5重量%、41.9重量%、42重量%、42.4重量%、42.5重量%、44.5重量%、45.5重量%、46.2重量%、または51.5重量%とすることができる。
【0032】
本願の文脈において、デンドリマーを、異なる一連の世代および異なる表面官能基を有するエチレンジアミン-コア(EDA-コア)ポリアミドアミンデンドリマーとすることができる。当該ポリアミドアミンデンドリマーを、スクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2、第一級アミン表面を有するEDA-コアG2、およびカルボン酸ナトリウム塩表面を有するEDA-コアG0.5のうちの少なくとも1種とすることができる。シーリング材組成物は、異なる種類のデンドリマーを一緒に混合することによって複合デンドリマー(composite dendrimers)を含むことができる。複合デンドリマーを、異なる種類の表面官能基の混合物とすることができる。
【0033】
本願において、シーリング材組成物中のデンドリマーの重量パーセントは、50ppm~40000ppm、好ましくは60ppm~30000ppm、より好ましくは70ppm~25000ppmの範囲であってもよい。例えば、シーリング材組成物中のデンドリマーの重量パーセントを、100ppm、1000ppm、2500ppm、5000ppm、10000ppm、または20000ppmとすることができる。本願の文脈において、界面活性剤を、アニオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤とすることができる。非イオン性界面活性剤を、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、およびラウリン酸トリエタノールアミンのうちの少なくとも1種とすることができる。アニオン性界面活性剤を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)とすることができる。SDSは、シーリング材組成物の粘度を増加させ得るが、当該シーリング材組成物中のラテックスエマルジョンを効果的に安定化することができる。
【0034】
シーリング材組成物は、異なる種類の界面活性剤を一緒に混合することによって形成された複合界面活性剤(composite surfactant)を含むことができ、その場合、当該複合界面活性剤を形成するための当該界面活性剤の種類は、当該シーリング材組成物において使用されるラテックスエマルジョンの種類および量に応じて選択することができる。複合界面活性剤を、異なる種類の非イオン性界面活性剤の混合物、少なくとも1種類の非イオン性界面活性剤と少なくとも1種類のアニオン性界面活性剤との混合物、または異なる種類のアニオン性界面活性剤の混合物とすることができる。
【0035】
また、シーリング材組成物は、さらに、当該シーリング材組成物の濡れ性、粘度、および拡展性を向上させるために使用される湿潤剤(例えば、アルコール、エーテル、またはエステル)を含む。湿潤剤は、シーリング材組成物の表面張力を減少させるために使用され、それにより、当該シーリング材組成物は、タイヤの末端表面エリアまでより容易に広がることができる。したがって、当該シーリング材組成物は、タイヤのトレッドエリア以外の場所のパンクを効果的に封止することができる。
【0036】
本願において、湿潤剤を、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酪酸エチル、コハク酸ジメチル、または他の化学材料などとすることができる。これらの湿潤剤は、低い表面張力を有し、それにより、これらの湿潤剤がシーリング材組成物に添加された場合、当該シーリング材組成物の表面張力を効果的に減少させることができる。本願において、当該シーリング材組成物中の湿潤剤の重量パーセントは、0.01%~5%の範囲である。湿潤剤がシーリング材組成物の接触角を減少させることは明白である。それと同時に、湿潤剤は、当該シーリング材組成物の凍結防止効果および安定化効果を増強させることができる。
【0037】
本願の文脈において、単位「ppm」は、質量(重量)に基づいており、1重量%=10000ppmの換算率に基づいて「重量%」に変換可能であることは理解される。
【実施例】
【0038】
以下の実施例を参照しながら本発明を説明する。
【0039】
<シーリング材組成物の調製>
以下の実施例を包含する本発明によるシーリング材組成物は、2つのパーツを一緒に混合することによって調製される。第1のパーツであるパーツAは、水/溶媒、界面活性剤、ナノ多孔性粒子、凍結防止剤、湿潤剤、およびデンドリマーを含む。
【0040】
第2のパーツであるパーツBは、水/溶媒およびラテックスを含む。
【0041】
典型的な調製において、パーツAがパーツBに加えられる。最終組成物のpHは、これらに限定されるわけではないがNaOH、KOH、アンモニア、および水酸化テトラメチルアンモニウムなどのアルカリの添加によって8.5超に調節される。
【0042】
<評価>
シーリング材組成物の性能は、300mlの調製されたシーリング材組成物を、ホースを介して高圧下、好ましくは3~7barで195/65R15の老化タイヤに注入することによって試験される。併せて、8mm未満の長さのスパイクを使用してタイヤにパンクを形成する。次いで、当該タイヤを備えた自動車を20km未満走行させ、2~5km走行するごとに、タイヤの内圧を測定することによってタイヤの空気漏れをチェックする。このようにして、シーリング材組成物によってもたらされる、タイヤのパンクに対するシーリング効果を、上記の方法によって記録することができる。タイヤ内圧の減少が0.2bar未満の場合、シーリング材組成物は、成功裏にタイヤのパンクを封止していることを示しており、すなわち、当該シーリング材組成物のシーリング性能が良好であることを示している。自動車からタイヤを取り外した後、タイヤのパンク箇所が上を向くようにして、当該タイヤを静置状態に維持する。24時間後または48時間後に、再び、圧力減少を測定することで、シーリング性能を確認することができる。
【0043】
シーリング材組成物の貯蔵寿命は、静的老化試験(static aging test)および加熱動的試験(heat dynamic test)によって試験することができる。静的老化試験では、シーリング材組成物を70℃以上の温度のオーブン中に40日超にわたって載置し、続いて、シーリング性能を上記において説明されるように評価することができる。
【0044】
本発明による実施例の試験結果を、後記の表1中に示す。
【0045】
調製したシーリング材組成物の実施例およびそれらの評価結果を、以下に示す。
【0046】
[実施例1]
シーリング組成物は、42.4重量%の水と、1重量%のドデシル硫酸ナトリウムと、4重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のグリセリンと、1重量%のn-プロパノールと、0.1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0047】
[実施例2]
シーリング組成物は、32.5重量%の水と、1重量%のドデシル硫酸ナトリウムと、4重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のグリセリンと、1重量%のn-プロパノールと、10重量%の天然ラテックスとを含む。
【0048】
[実施例3]
シーリング組成物は、41.5重量%の水と、5重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテルと、1重量%のメソポーラスシリカと、5000ppmのカルボン酸ナトリウム塩表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のジエチレングリコールと、1重量%のエタノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0049】
[実施例4]
シーリング組成物は、46.2重量%の水と、0.3重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテルと、1重量%のメソポーラスシリカと、5000ppmのカルボン酸ナトリウム塩表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のジエチレングリコールと、1重量%のエタノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0050】
[実施例5]
シーリング組成物は、51.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のカーボンエアロゲルと、5000ppmの第一級アミン表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、40重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0051】
[実施例6]
シーリング組成物は、1.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のカーボンエアロゲルと、5000ppmの第一級アミン表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、90重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0052】
[実施例7(湿潤剤なし)]
シーリング組成物は、42.5重量%の水と、5重量%のポリオキシアルキレンアルケニルエーテルと、1重量%のメソポーラス炭素と、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%の1,3-プロパンジオールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0053】
[実施例8]
シーリング組成物は、42.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のメソポーラス炭素と、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%の1,3-プロパンジオールと、0.01重量%のn-プロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0054】
[実施例9]
シーリング組成物は、37.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のメソポーラス炭素と、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%の1,3-プロパンジオールと、5重量%のn-プロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0055】
[実施例10(ナノ多孔性粒子なし)]
シーリング組成物は、42.5重量%の水と、5重量%のポリオキシエチレンアルキルアミンと、5000ppmのカルボン酸ナトリウム塩表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のエタノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0056】
[実施例11]
シーリング組成物は、42.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、0.01重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのカルボン酸ナトリウム塩表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のエタノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0057】
[実施例12]
シーリング組成物は、37.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、5重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのカルボン酸ナトリウム塩表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のエタノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0058】
[実施例13(ナノ多孔性粒子および湿潤剤なし)]
シーリング組成物は、43.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、5000ppmの第一級アミン表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0059】
[実施例14]
シーリング組成物は、42重量%の水と、5重量%のポリオキシエチレンココアルキルアミンと、1重量%の活性炭と、100ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0060】
[実施例15]
シーリング組成物は、41.9重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%の活性炭と、1000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0061】
[実施例16]
シーリング組成物は、41.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0062】
[実施例17]
シーリング組成物は、41重量%の水と、5重量%のラウリン酸トリエタノールアミン、1重量%のシリカエアロゲルと、10000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0063】
[実施例18]
シーリング組成物は、40重量%の水と、5重量%のラウリン酸トリエタノールアミンと、1重量%のセノスフェアと、20000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0064】
[実施例19(比較:デンドリマー、ナノ多孔性粒子、および湿潤剤なし)]
シーリング組成物は、44重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0065】
[実施例20]
シーリング組成物は、41.5重量%の水と、5重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のシリカエアロゲルと、2500ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、2500ppmのカルボン酸ナトリウム塩表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0066】
[実施例21]
シーリング組成物は、42.5重量%の水と、4重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0067】
[実施例22]
シーリング組成物は、44.5重量%の水と、2重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0068】
[実施例23]
シーリング組成物は、45.5重量%の水と、1重量%のモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと、1重量%のシリカエアロゲルと、5000ppmのスクシンアミド酸表面を有するEDA-コアG2ポリアミドアミンデンドリマーと、50重量%のプロピレングリコールと、1重量%のイソプロパノールと、1重量%の天然ラテックスとを含む。
【0069】
【0070】
【0071】
表1に示された結果より、デンドリマーを含まない実施例19(比較)のシーリング材組成物の高温下でのシーリング性能は乏しかった。
【0072】
対照的に、本発明によるデンドリマーを有する実施例1~実施例18および実施例20のシーリング材組成物の高温下でのシーリング性能は、実施例19(比較)よりも良好であった。この結果は、本発明によるデンドリマーが、先行技術におけるシーリング材組成物の安定性を向上させることができることを明確に証明しており、また、本願のシーリング材組成物がタイヤのパンクに対する良好なシーリング性能ならびに高温下での優れた安定性を実現することができるように、当該シーリング材組成物のために安定化剤が使用可能であることを証明している。さらに、実施例の結果は、本発明によるデンドリマーが、シーリング材組成物のための安定化剤として使用可能であることも明確に証明している。
【0073】
その上、実施例16を実施例21~実施例22と比較することにより、本発明者は、当該デンドリマーを使用することで、高温下での当該シーリング材組成物のシーリング性能に対する有害効果なしに、使用される界面活性剤の量を減らすことができることを見出した。界面活性剤の量を可能な限り最小限に維持することができるが高温下でのシーリング材組成物のシーリング性能は依然として維持されるように、本発明のシーリング材組成物中の界面活性剤の量を1重量%、2重量%、または4重量%に減らすことができることに留意されたい。これは、デンドリマーが、当該シーリング材組成物を安定化させるための安定化剤として使用可能であること、ならびに、当該デンドリマーが、本発明のシーリング材組成物中の界面活性剤の一部と置き換え可能であることのさらなる証拠である。したがって、本発明のシーリング材組成物においては、より少量の界面活性剤が必要であるため、界面活性剤の一部に代わるデンドリマーの使用は、界面活性剤、例えばアニオン性界面活性剤を添加することによってとりわけ低温で生じる液体シーリング材の高粘度という問題に、少なくとも部分的に対処することができる。
【0074】
何よりも、本願のシーリング材組成物は、タイヤのパンクに対する良好なシーリング性能を実現する。その上、当該シーリング材組成物は、長期間において、さらに安定であり、使用が容易であり、保存が利き、長い貯蔵寿命を有し、このことは、当該シーリング材組成物に良好な市場見通しを与える。
【0075】
本願は、上記において言及した特定の実践形態に限定されるものではない。それどころか、上記において言及した特定の実践形態は例示を意図したものであって、限定を意図するものではない。本願のインスピレーションによって、当業者は、本願の主題および特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく多くの変更を為すこともできる。これらの変更のすべては、本願の保護に属する。