(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-10
(45)【発行日】2023-01-18
(54)【発明の名称】共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C07D 301/03 20060101AFI20230111BHJP
C02F 1/04 20230101ALI20230111BHJP
C02F 1/58 20230101ALI20230111BHJP
C02F 1/02 20230101ALI20230111BHJP
B01D 17/00 20060101ALI20230111BHJP
B01J 23/889 20060101ALI20230111BHJP
C07D 301/14 20060101ALI20230111BHJP
C07D 301/16 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C07D301/03
C02F1/04 D
C02F1/58 H
C02F1/58 A
C02F1/02 A
B01D17/00 503A
B01J23/889 M
C07D301/14
C07D301/16
(21)【出願番号】P 2021520207
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2019126780
(87)【国際公開番号】W WO2021120133
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521147204
【氏名又は名称】万華化学集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 17, Tianshan Rd, YEDA, Yantai 264000 Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】範珍龍
(72)【発明者】
【氏名】薫岩峰
(72)【発明者】
【氏名】曾凡雪
(72)【発明者】
【氏名】葉建初
(72)【発明者】
【氏名】冷炳文
(72)【発明者】
【氏名】▲ユ▼根海
(72)【発明者】
【氏名】賀信淳
(72)【発明者】
【氏名】張宏科
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102093316(CN,A)
【文献】特表2002-518166(JP,A)
【文献】米国特許第05993673(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法であって、
前記生産廃水は過酸化物含有量が2000mg/L以上の第1の部分廃水と過酸化物含有量が50mg/L未満の第2の部分廃水とを含み、前記処理方法は、
前記第1の部分廃水を予め触媒酸化処理し、その中の過酸化物を除去し、排出廃水を得るステップ(1)と、
前記排出廃水と前記第2の部分廃水とを混合して得られた混合廃水を多効蒸発ユニットに注入して処理するステップ(2)であって、前記多効蒸発ユニットは、
注入された前記混合廃水を精留処理して前記混合廃水を濃縮し、塔頂部から第1の塔頂部材料を得て、塔底部から第1の塔釜液としての一次濃縮廃水を得るための第1の精留塔と、
前記第1の精留塔からの前記第1の塔釜液を精留処理して前記第1の塔釜液をさらに濃縮し、塔頂部から第2の塔頂部材料を得て、塔底部から第2の塔釜液としての二次濃縮廃水を得るための第2の精留塔と、
前記第1の精留塔からの第1の塔頂部材料と前記第2の精留塔からの第2の塔頂部材料を精留処理して油と水を分離し、塔頂部から第3の塔頂部材料としての油相を得て、塔底部から第3の塔釜液としての水相を得るための第3の精留塔とを含むステップ(2)と、
前記第2の塔釜液を焼却処理し、塩残留物を得るステップ(3)と、
前記第3の塔釜液を生化学的処理し、その中の有機物を除去するステップ(4)とを含む、処理方法。
【請求項2】
前記第3の塔頂部材料を油水分離装置に注入して油と水を分離し、その頂部から油相を得て、その底部から水相を得るステップと、
前記油水分離装置からの油相を回収塔に注入して精製し、塔頂部からそのうちの沸点が150℃未満の軽質成分を除去し、塔釜から回収塔の塔釜液を得て、前記回収塔の塔釜液を供給材料として共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムにおける精製ユニットに返送して精製処理するステップとをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記塩残留物を塩残留物処理ユニットに輸送して順に溶解及び濾過することをさらに含み、前記塩残留物処理ユニットは、
前記塩残留物を溶解してアルカリ性塩残留物溶解液を得るための溶解装置と、
前記塩残留物溶解液を濾過してその中の沈殿物を濾別して濾液を得るための濾過装置とを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記触媒酸化処理は触媒酸化反応器で行われ、前記処理方法は、前記排出廃水の一部を前記触媒酸化反応器の入口にリサイクルすることをさらに含み、リサイクル比は1~5であ
る、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の処理方法。
【請求項5】
前記処理方法は、リサイクル部分の排出廃水にアルカリ性溶液を加えて前記触媒酸化反応器内の材料系のpHを向上させることをさらに含む、ことを特徴とする請求項4に記載の処理方法。
【請求項6】
塔内の中上部に富む酸を中和するために、第1の精留塔及び前記第2の精留塔の塔上部からそれぞれアルカリ性溶液を塔に補給することをさらに含む、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の処理方法。
【請求項7】
前記アルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度は20~40wt%である、ことを特徴とする請求項
5に記載の処理方法。
【請求項8】
前記触媒酸化処理で使用される触媒はMnO
2とNiOの複合触媒であり、ただし、MnO
2とNiOの質量比は(0.5~2):1である、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の処理方法。
【請求項9】
前記触媒酸化処理の触媒酸化条件は、温度が20~80℃、供給材料の空間速度が0.5~4h
-1である、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の処理方法。
【請求項10】
前記第1の精留塔の操作温度は100~150℃、操作圧力は0.1~0.5MPa、濃縮倍率は1.2~2であり、
前記第2の精留塔の操作温度は60~90℃、操作圧力は20~80kPa、濃縮倍率は1.5~5であり、
前記第3の精留塔の操作温度は120~170℃、操作圧力は0.1~1MPa、還流比は10~50である、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の処理方法。
【請求項11】
前記ステップ(2)において、前記第1の精留塔の塔釜リボイラーは前記第3の精留塔の第3の塔頂部材料を熱源として使用し、前記第1の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させ、前記第3の塔頂部材料を冷却し、
前記第2の精留塔の塔釜リボイラーは前記第1の精留塔の第1の塔頂部材料を熱源として使用し、前記第2の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させ、前記第1の塔頂部材料を冷却する、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水処理の分野に属し、特に、共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンオキシド(PO)は、無色透明で低沸点の燃えやすい液体であり、アクリロニトリルとポリプロピレンを除く第3のタイプのプロピレン誘導体であり、有機化学工業生産に重要な役割を果たす。現在、中国のプロピレンオキシドの生産方法は、主にクロロヒドリン法と共酸化法(メチルtert-ブチルエーテルを併産する共酸化チオバルビツール酸法、すなわち、POMTBE、スチレンを併産するエチルベンゼン共酸化法、すなわち、POSM、及びクメンペルオキシド法、すなわち、POCHP法を含む)、及び直接酸化法(酸化剤として過酸化水素を使用するHPPO法を含む)を含む。
【0003】
中国の省エネ、環境保護、低炭素生産の要求はますます厳しくなり、重大な汚染のある伝統的なクロロヒドリン法の生産企業と開発スペースはますます制限されている。HPPO法は、穏やかな反応条件と汚染がないという利点があるが、触媒と過酸化水素のコストは比較的高い。共酸化法の一部のプロセスには大規模な工場生産に適した、イソブタン又はエチルベンゼンの併産が存在する。要約すると、共酸化法のPOSM及びPOCHPプロセスは、より多くの開発価値がある。
【0004】
POSM、POCHPに代表される共酸化法でPOを調製するプロセスによる廃水は、水量が大きく、塩分及び有機物含有量が高い特徴を有する。同時に、一部の廃水流れには、自己分解しやすい過酸化物が含まれ、安全上のリスクが高い。工業的に使用される上記の廃水の処理方法は、通常、チオ硫酸ナトリウム還元プロセス、アルカリ分解プロセス、流動床触媒分解及び酵素分解プロセスを用いて過酸化物含有廃水を処理することである。過酸化物が除去された後、廃水を装置に残った廃水と混合してから焼却処理を行う。しかしながら、上記の方法は、過酸化物の除去効率が低く、反応時間が長く、運転コストが高く、酸素生成量が多いなどの欠点があり、プロセスの安全性と安定性を本質的に向上させることは困難であると同時に、廃水の直接焼却処理コストが高く、且つ廃水における価値のある成分を回収できず、生産の単位消費量の増加を引き起こす。
【0005】
現在、POSM、POCHPプロセスの廃水処理プロセスに関する研究はほとんどなく、比較的成熟したシステムプロセスフローはない。したがって、高塩分、高有機物含有量及び過酸化物含有廃水の処理に適した処理プロセスを開発することが急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、高塩分、高有機物含有量及び過酸化物含有廃水の処理に適しており、共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水における過酸化物を除去すると同時に、廃水の生分解性を向上させ、廃水処理の難しさとコストを低下させることができる共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を実現するために、本発明は以下の技術案を講じた。
共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法であって、前記生産廃水は過酸化物含有量が2000mg/L以上の第1の部分廃水と過酸化物含有量が50mg/L未満の第2の部分廃水とを含み、前記処理方法は、
前記第1の部分廃水を予め触媒酸化処理し、その中の過酸化物を除去し、排出廃水を得るステップ(1)と、
少なくとも一部の前記排出廃水と前記第2の部分廃水とを混合して得られた混合廃水を多効蒸発ユニットに注入して処理するステップ(2)であって、前記多効蒸発ユニットは、
注入された前記混合廃水を精留処理して前記混合廃水を濃縮し、塔頂部から第1の塔頂部材料を得て、塔底部から第1の塔釜液としての一次濃縮廃水を得るための第1の精留塔と、
前記第1の精留塔からの前記第1の塔釜液を精留処理して前記第1の塔釜液をさらに濃縮し、塔頂部から第2の塔頂部材料を得て、塔底部から第2の塔釜液としての二次濃縮廃水(すなわち、濃縮後の廃水)を得るための第2の精留塔と、
前記第1の精留塔からの第1の塔頂部材料と前記第2の精留塔からの第2の塔頂部材料を精留処理して油と水を分離し、塔頂部から第3の塔頂部材料としての油相(すなわち、軽質成分を除去した油相)塔底部から第3の塔釜液としての水相(すなわち、軽質成分を除去した塔釜廃水)を得るための第3の精留塔とを含むステップ(2)と、
前記第2の塔釜液を焼却処理し、塩残留物を得るステップ(3)と、
前記第3の塔釜液を生化学的処理し、その中の有機物を除去するステップ(4)とを含む、処理方法。
【0008】
本発明の共酸化法でプロピレンオキシドを調製するプロセスは、スチレンを併産するエチルベンゼン共酸化法(すなわち、POSM法)とクメンペルオキシド法(すなわち、POCHP法)を含み、当業者は、それは主に過酸化ユニット、エポキシ化ユニット及び精製ユニットなどを含むことを理解している。本発明の共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水とは、一般的な共酸化法(POSM法とPOCHP法を含む)でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水を指し、例えば、過酸化排ガス吸収塔/凝縮タンクからの過酸化排ガス凝縮水相と、過酸化物アルカリ洗浄沈殿タンクからの過酸化物アルカリ洗浄廃水とを第1の部分廃水とし、エチルベンゼンアルカリ洗浄廃水、スチレンアルカリ洗浄廃水、真空システム凝縮液、プロピレン回収システム廃水及びPO精製システム水洗水相を第2の部分廃水とする。具体的なPOSM法を用いてプロピレンオキシドを調製するプロセスは、「プロピレンオキシド生産技術の進歩及び市場分析」、分類号:F426.7、TQ223.26、Chen Lu、中国石油化学工業股フン有限公司、上海石油化学工業研究院に参照可能である。
【0009】
本発明では、ステップ(1)の触媒酸化処理を行うときに、過酸化物の含有量は過酸化水素の含有量で計算され、好ましくは、前記第1の部分廃水に前記過酸化物の含有量は2000~28000mg/L、好ましくは、3000~25000mg/Lであり、COD≦100000mg/L、好ましくは、COD≦80000mg/Lである。好ましくは、前記触媒酸化処理は触媒酸化反応器で行われ、使用可能な触媒酸化反応器は固定床反応器であってもよい。
【0010】
触媒酸化反応器内の材料系のpHが低い場合、酸性であり、前記触媒酸化反応器内の触媒酸化反応の進行に不利であり、従って、一実施形態において、前記排出廃水の一部を前記触媒酸化反応器の入口にリサイクルし、リサイクル比は1~5である。リサイクル比とは、前記触媒酸化反応器にリサイクルする排出廃水量と前記排出廃水合計量の比値を指す。好ましくは、該リサイクルの一部の排出廃水にアルカリ性溶液(例えば、NaOH溶液)を加えてそのpH値を調節することにより、該部分の排出廃水につれて前記触媒酸化反応器内に輸送して前記触媒酸化反応器内の材料系のpHを向上させ、触媒酸化反応の進行を促進し、触媒酸化反応の反応効率を向上させる。さらに好ましくは、該リサイクル部分の排出廃水中のアルカリ性溶液(例えば、NaOH溶液)の添加量は前記触媒酸化反応器内の材料系のpHを6~13、好ましくは、9~10に向上させ、前記触媒酸化反応の反応効率をさらに向上させる添加量である。さらに好ましくは、NaOH溶液の濃度は20~40wt%、例えば、24wt%、28wt%、32wt%及び36wt%である。前記排出廃水の一部がリサイクルし、一方では、供給材料廃水中の過酸化水素の濃度を希釈し、触媒酸化反応器内の運転安定性を向上させることができ、他方では、該リサイクル流れへのアルカリ補給は、前記触媒分解反応器内のpH変動への影響が少ない。
【0011】
一実施形態において、前記触媒酸化処理で使用される触媒はMnO2とNiOの複合触媒であり、ただし、MnO2とNiOの質量比は(0.5~2):1、例えば、1:1、1.2:1、1.5:1である。MnO2とNiOの複合触媒は、硝酸マンガンと硝酸ニッケルを比率に応じて混合か焼することにより取得可能であり、か焼温度は500~600℃であり、か焼時間は1.5~2.5hである。好ましくは、前記触媒酸化処理の触媒酸化条件は、温度が20~80℃、好ましくは、50~70℃であり、供給材料空間速度が0.5~4h-1、好ましくは、1~2h-1である。
【0012】
本発明において、第1の部分廃水に対して別々に触媒酸化処理し、第1の部分廃水中の過酸化物に大量の活性酸素フリーラジカル[O]を迅速に生成させることにより、第1の部分廃水中の生化学的分解しにくい有機物をCO2、H2O、メタノール及び小分子カルボン酸などに触媒分解し、その中の過酸化物を反応原料に(例えば、過酸化物EBHP(エチルベンゼンヒドロペルオキシド)/CHP(クメンヒドロペルオキシド)をフェニルエタノール/ジメチルベンジルアルコールに方向的に変換することができる)変換し、過酸化物の濃度を低下させながら生分解性能を向上させ、廃水処理の難しさとコストを低下させ、同時に、前記第1の部分廃水と前記第2の部分廃水とを混合して一緒に処理するときに、触媒酸化反応器により処理される廃水の量が大きいという欠点が回避され、触媒酸化反応器の材料処理量が低下する。ステップ(1)で触媒酸化処理して得られた排出廃水中の過酸化物含有量は50~1000mg/Lに低減する。
【0013】
そのうち、過酸化物EBHP(エチルベンゼンヒドロペルオキシド)はPOSMプロセスでプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水にある。エチルベンゼンはPOSMプロセスにおける過酸化ユニットの原料であり、過酸化物EBHPから変換されたフェニルエタノールはPOSMプロセスにおける精製ユニットに戻され、精製純化し、精製したフェニルエタノールを得て、精製したフェニルエタノールはPOSMプロセスにおけるフェニルエタノール脱水反応器に進入して脱水処理してスチレンを得て、副産物として産出され、保管、使用又は販売される。本発明の共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法により、200kg/hのスチレンを別途に回収でき、システムが1年間8000時間運転し、スチレンの市場単価は7400元/トンで計算すると、1年間の経済的利益は1280万元である。従って、過酸化物EBHP(エチルベンゼンヒドロペルオキシド)をフェニルエタノールに方向的に変換することは、POSMプロセスでプロピレンオキシドを調製する時の資本消費の減少に役立ち、エチルベンゼンの単位消費を間接的に減少することに相当する。過酸化物EBHPの回収率は80%(モルパーセント)以上、さらに90%以上に達することができ、損失は少ない。
【0014】
そのうち、過酸化物CHP(クメンヒドロペルオキシド)はPOCHPプロセスでプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水にある。クメンはPOCHPプロセスにおける過酸化ユニットの原料であり、過酸化物CHPから変換されたジメチルベンジルアルコールはPOCHPプロセスにおける精製ユニットに戻され、精製・純化・水素化分解してクメンを得て、クメンはPOCHPプロセスにおける過酸化ユニットに進入して原料として再利用し、副産物として産出され、保管、使用又は販売されてもよい。本発明の共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法により、130kg/hのクメンを別途に回収でき、システムが1年間8000時間運転し、クメンの市場単価は8000元/トンで計算すると、1年間の経済的利益は832万元である。従って、過酸化物CHP(クメンヒドロペルオキシド)をジメチルベンジルアルコールに方向的に変換することは、POCHPプロセスでプロピレンオキシドを調製する時の資金消費の減少に役立ち、クメンの単位消費を減少することに相当する。過酸化物CHP(クメンヒドロペルオキシド)の回収率は80%(モルパーセント)以上、さらに90%以上に達することができ、損失は少ない。
【0015】
従って、第1の部分廃水中の過酸化物を反応原料(例えば、過酸化物EBHP(エチルベンゼンヒドロペルオキシド)/CHP(クメンヒドロペルオキシド)をフェニルエタノール/ジメチルベンジルアルコールに方向的に変換することができる)に変換することは、共酸化法でプロピレンオキシドを調製する時のエチルベンゼン/クメンの単位消費の減少に役立つ。
【0016】
本発明は、ステップ(2)の処理を行うときに、前記排出廃水と前記第2の部分廃水とをまとめて混合して得られた混合廃水は、COD≦50000mg/L、好ましくは、10000~30000mg/Lであり、pH値が5~12、好ましくは、8~10であり、塩含有量が1~20wt%、好ましくは、5~10wt%(ここでの塩は、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び安息香酸ナトリウムなど)である。
【0017】
前記多効蒸発ユニットでは、混合廃水を前記第1の精留塔により精留処理し、その中の大部分の水及び少部分の有機物が塔頂部に上昇して第1の塔頂部材料を形成し、残った水及び塩が塔底部に下降して第1の塔釜液を形成し、第1の塔釜液を前記第2の精留塔により精留処理し、その中の大部分の水及び少部分の有機物が塔頂部に上昇して第2の塔頂部材料を形成し、残った水及び塩が塔底部に下降して第2の塔釜液を形成し、前記第1の精留塔からの第1の塔頂部材料及び前記第2の精留塔からの第2の塔頂部材料を第3の精留塔により精留処理し、その中の大部分の有機物が塔頂部に上昇して第3の塔頂部材料(すなわち、軽質成分を除去した油相)を形成し、その中の大部分の水及び少量の有機物が塔底部に下降して第3の塔釜液(すなわち、軽質成分を除去した塔釜廃水、ただし、含水量>99.9wt%)を形成する。POSMプロセスにおいて、上記した有機物は、主にフェニルエタノール、アセトフェノン、エチルベンゼン、スチレン、小分子アルデヒド、小分子アルコールを含み、POCHPプロセスにおいて、上記した有機物は、主にジメチルベンジルアルコール、クメン、メチルスチレン、小分子アルデヒド、小分子アルコールを含む。
【0018】
好ましくは、前記第1の精留塔の塔釜リボイラーは前記第3の精留塔の第3の塔頂部材料を熱源として使用し、前記第1の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させ、前記第3の塔頂部材料を冷却し、好ましくは、125~130℃に冷却する。好ましくは、前記第1の精留塔の操作温度は100~150℃、例えば、110~130℃であり、操作圧力は0.1~0.5MPa、好ましくは、0.1~0.2MPaであり、濃縮倍率は1.2~2、好ましくは、1.4~1.6である。好ましくは、前記第1の精留塔の還流比は0.2~5、例えば、1~2である。
【0019】
本発明において、各精留塔の操作温度とは、その塔釜温度を指し、それをさらに限定することで本発明の操作過程におけるプロセス調整制御が容易に実現され、プロセスの変動につながる廃水の組成変化により、塔頂部の温度の変化を引き起こし可能性があるため、塔頂部温度は指導意味を持たず、本発明ではそれが限定されない。
【0020】
好ましくは、前記第2の精留塔の塔釜リボイラーは前記第1の精留塔の第1の塔頂部材料を熱源として使用し、前記第2の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させ、前記第1の塔頂部材料を冷却し、好ましくは、100~105℃に冷却する。好ましくは、前記第2の精留塔の操作温度は60~90℃、例えば、70~80℃であり、操作圧力は20~80kPa、好ましくは、30~50kPaであり、濃縮倍率は1.5~5、好ましくは、2~4である。好ましくは、前記第2の精留塔の還流比は0.2~5、例えば、1~2である。得られた第2の塔釜液は、COD>105mg/Lであり、塩含有量が5~40wt%である。
【0021】
本発明において、濃縮倍率とは、対応する精留塔の供給材料と塔釜液の流量比を指し、例えば、第1の精留塔の濃縮倍率とは、第1の精留塔の供給材料と第1の塔釜材料の流量比、すなわち、混合廃水と第1の塔釜液の流量比を指し、第2の精留塔の濃縮倍率とは、第2の精留塔の供給材料と第2の塔釜液の流量比、すなわち、第1の塔釜液と第2の塔釜材料の流量比を指す。
【0022】
前記第1の精留塔及び前記第2の精留塔において、廃水に存在可能な酸は主にギ酸及び酢酸であり、且つギ酸及び酢酸の沸点は水と廃水中の主要な有機物(例えば、フェニルエタノール、エチルベンゼン、アセトフェノンなど)の間にあるため、塔内の中上部に酸が富む可能性があり、これにより、機器を腐食する可能性がある。一実施形態において、塔内の中上部に富み可能な酸を中和し、機器への腐食を回避するために、第1の精留塔及び前記第2の精留塔の塔上部からそれぞれアルカリ性溶液(例えば、NaOH溶液)を塔に補給する。好ましくは、前記第1の精留塔及び前記第2の精留塔に補給したNaOH溶液の濃度は、それぞれ20~40wt%、例えば、24wt%、28wt%、32wt%及び36wt%であり、その添加量はそれぞれが前記廃水との質量比は0.001~0.01であり、好ましくは、0.002~0.004、例えば0.003であり、前記廃水は処理される共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水である。アルカリ性溶液の補給は、前記第1の精留塔及び前記第2の精留塔内の中上部に富み可能な酸を中和し、機器への腐食を回避することができる。
【0023】
好ましくは、前記第3の精留塔の塔釜リボイラーは蒸気を熱源として前記第3の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させる。好ましくは、前記第3の精留塔の操作温度は120~170℃、例えば、130℃、140℃、150℃及び160℃であり、操作圧力は0.1~1MPa、好ましくは、0.3~0.5MPaであり、還流比は10~50であり、好ましくは、20~30である。得られた第3の塔釜液は、COD<2000mg/L、B/C>0.3である。B/CはBOD/CODであり、生分解性を指し、ただし、BODとは水中の有機物の生分解に必要な酸素の量を測定するものであり、水の生分解性の指標である生物化学的酸素要求量を指し、CODとは、重クロム酸カリウムを使用して水中の有機物により消費される酸素の量を測定するものであり、水中の有機物の含有量を直接反映するものである化学的酸素要求量を指し、B/Cの値が大きいほど、水の生分解性能がよくなる。好ましくは、前記第3の精留塔の供給材料は熱交換器によって前記第3の塔釜液を熱源として予熱(好ましくは、128~133℃に予熱する)し、適切な供給材料温度に達し、短時間内で油相と水相の分離を実現させる。当業者は、前記熱交換器は前記第3の精留塔の供給材料管路に設けられていることを理解している。
【0024】
本発明において、前記多効蒸発ユニットの第1の精留塔、第2の精留塔及び第3の精留塔の間に、各流れ間の熱交換で廃水の濃縮消費を低下させ、第2の塔釜液の量を低下させることにより、後続きの焼却処理時の材料処理量が減少し、後続きの焼却ユニットの構築及び運転コストを節約する。
【0025】
一実施形態において、前記処理方法は、
前記第3の塔頂部材料を油水分離装置に注入して油と水を分離し、その頂部から油相を得て、その底部から水相を得るステップと、
前記油水分離装置からの油相を回収塔に注入して精製し、塔頂部からその中の軽質成分(例えば、沸点が120℃未満の軽質成分)を除去して焼却処理し、塔釜から回収塔の塔釜液を得て、供給材料として前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムにおける精製ユニットに返送して精製処理するステップをさらに含む。
【0026】
これにより、第1の部分廃水中の過酸化物から変換された反応原料を抽出し、回収塔の塔釜液にし、供給材料として前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムにおける精製ユニットに返送して精製処理し、第1の部分廃水中の過酸化物から変換された物質を共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムにおける精製ユニットにより精製処理し、販売又は原料として再利用のために副産物を産出し、共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムの資金消費が減少し、生産コストを削減させることができる。
【0027】
一実施形態において、前記油水分離装置からの水相を還流することにより、前記油水分離装置からの水相を再度に油と水を分離し、水相に残った有機物を分離させ、水相中の有機物含有量を低下させ、油水分離で得られた油相の質量を向上させることもできる。
【0028】
前記回収塔の操作温度は80~150℃であってもよく、好ましくは、90~110℃であり、操作圧力は20~80kPaであってもよく、好ましくは、30~50kPaであり、還流比は0.2~5であり、好ましくは、1~2である。
【0029】
油水分離は、主に水と油の密度差又は化学的性質に基づいて、重力沈降又は他の物理的及び化学的反応の原理を使用して不純物を除去するか、油と水の分離を完了することである。回収塔も精留塔であり、混合物中の異なる物質の異なる沸点を使用して異なる物質の分離を実現する。
【0030】
本発明は、ステップ(3)の焼却処理を行うときに、焼却炉に行われることができる。焼却した前記塩残留物に、主に炭酸ナトリウムであり、また、金属元素も含まれる。金属元素は、一般的に、使用される機器内の炉レンガの落下により引き起こされ、その種類は使用される機器によって異なる。本発明において、前記塩残留物に主に炭酸ナトリウムであり、また、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaをさらに含む。金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量は10~500mg/Lである。
【0031】
一実施形態において、前記処理方法は前記塩残留物を塩残留物処理ユニットに輸送して処理することをさらに含み、前記塩残留物処理ユニットは、
前記塩残留物を溶解してアルカリ性塩残留物溶解液を得るための溶解装置であって、そのpHが約11であり、アルカリ性条件下で、その中の金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの大部分の沈殿物が析出され、好ましくは、溶解過程において、溶解用水の質量は前記塩残留物質量の2~10倍、好ましくは、2~5倍であり、好ましくは、溶解温度は40~60℃であり、得られた前記塩残留物溶解液は、懸濁固体含有量≦50mg/Lであり、当業者は、前記溶解装置は本分野でよく使用されている溶解装置、例えば、塩溶解プール、塩溶解桶及び塩溶解タンクなどであってもよいことを理解している溶解装置と、
前記塩残留物溶解液を濾過してその中の沈殿物を濾別して濾液を得るための濾過装置であって、前記濾過装置は本分野でよく使用されている濾過装置、例えば、焼結フィルタ、セラミックス膜フィルタ及びグラスファイバーフィルタなどであってもよく、好ましくは、前記濾過装置の濾過孔の孔径が0.1~10μm、好ましくは、0.5~2μmであり、濾過装置によって沈殿物を濾別して得られた濾液は、Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量<0.1mg/Lであり、海上排出基準に達し、海上排出することができる濾過装置とを含む。
【0032】
本発明において、第3の精留塔によって油と水を分離して得られた第3の塔釜液としての水相は、COD<2000mg/Lであり、生化学的排水水質指標の要求を満たし、生化学的処理に送ることができ、例えば、人工曝気で酸素供給し、微生物分解を利用することで廃水中の可溶性有機物及び一部の不溶性有機物を除去する目的を達成し、本分野で一般的に使用されている廃水処理方法に属し、ここでさらに紹介しない。本発明はステップ(4)の生化学的処理を行うときに、前記第3の塔釜液は生化学的処理後、その中の有機物を除去して排出基準に達成することができる。
【0033】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
(1)本発明は、触媒酸化プロセス及び触媒酸化反応器を用いて第1の廃水中の過酸化物に大量の活性酸素フリーラジカル[O]を迅速に生成させることにより、第1の廃水中の生化学的分解しにくい有機物をCO2、H2O、メタノール及び小分子カルボン酸などに媒分解し、その中の過酸化物を共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムにおける精製ユニットにより処理した後、産品として産出されるか、又は原料として再利用されることができる物質(例えば、過酸化物EBHP(エチルベンゼンヒドロペルオキシド)/CHP(クメンヒドロペルオキシド)をフェニルエタノール/ジメチルベンジルアルコールに方向的に変換することができる)に完全に変換させ、過酸化物濃度を低下させると同時に、廃水の生化学的性能を向上させ、廃水処理の難しさとコストを低下させることができ、且つ触媒酸化プロセスは、廃水処理過程における酸素の生産量を大幅に削減し、プロセスの安全性を向上させることができる。
(2)本発明の処理方法では、多効蒸発ユニット処理時、前記第1の精留塔、前記第2の精留塔、前記第3の精留塔の間に、塔圧力に応じて各流れ間の熱交換を実現し、廃水濃縮のエネルギー消費を削減し、第2の塔釜液の量を減少することにより、焼却系ユニットの材料処理量を低下させ、焼却ユニットの構築及び運転コストを低下させることでき、同時に第2の塔釜液としての二次濃縮後廃水は、COD含有量>105mg/L、塩含有量が5~40wt%であり、それを焼却ユニットに注入して焼却するときに、補給の燃料は必要なく、燃料費が節約される。
(3)廃水を濃縮・分離して得られた第3の塔釜液は、COD<2000mg/L、B/C>0.3であり、直接に生化学ユニットに輸送して生化学的処理することができ、生化学的処理コストが削減される。
(4)廃水を濃縮・分離して得られた第3の塔頂部材料を油水分離によって油相を得て、得られた油相を回収塔によって精製して軽質成分を除去した後、過酸化物から変換された物質(例えば、過酸化物EBHP/CHPから変換されるフェニルエタノール/ジメチルベンジルアルコール)を抽出でき、回収塔の塔釜液に存在し、回収塔の塔釜液を共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムにおける精製ユニットに返送して処理した後、スチレン副産物/クメン副産物を産出し、保管、使用又は販売することができ、回収利用率が高い、そのうち、クメン副産物は、さらに原料としてPOCHPプロセスでプロピレンオキシドを調製するシステムの過酸化ユニットに使用可能であり、したがって、過酸化物の方向的な変換は、エチルベンゼン/クメンの単位消費を削減することにより、共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステムは1年間で800~1300万元を節約することができる。
(5)第2の塔釜液としての二次濃縮後廃水を焼却ユニットにより焼却して得られた塩残留物を、溶解及び濾過処理を順に用いてその中の金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaを除去し、得られた濾液は、Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量<0.1mg/Lであり、海上排出基準に達し、海上排出することができ、これにより、焼却塩残渣の有害廃棄物としての外注を回避し、固形廃棄物処理コストを削減し、固形廃棄物処理コストを削減することができる。
【0034】
本願で言及される「いずれの」という用語は、すべて「含む」又は「含まない」という意味である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は本発明の実施例1における共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法のプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、具体的な実施例によって本発明の技術案及びその効果をさらに説明する。以下の実施例は、本発明の内容を説明するものに過ぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではない。本発明の構想を適用することによって本発明に加えられた簡単変更は、すべて本発明の保護の範囲内にある。
【0037】
以下の実施例及び比較例の主要な原料の供給源は次の通りである。
MnO2/NiO複合触媒において、
MnO2、分析試薬、湘潭マイオン工業貿易有限公司から購入した。
NiO、分析試薬、河南三維化学工業産品有限公司から購入した。
NaOH、工業用グレード、滄州志明化学工業産品生産販売有限公司から購入した。
【0038】
気相の分析条件について
アジレントクロマトグラフィーでオンライン測定し、Agilent HP-5msクロマトグラフィーカラムを使用し、気化チャンバー温度は300℃、検出器温度は300℃、階段昇温は50℃で2分間保持し、100℃で1分間保持し、300℃まで10℃/分間保持する。
【0039】
金属元素の分析条件について
サンプルをマイクロ波分解で前処理し、800Wで10分間昇温し、温度を5分間維持し、1200Wで5分間昇温し、温度を20分間維持し、温度を5分間冷却し、金属元素含有量を誘導結合プラズマ発光分析により分析し、電力は1.2kW、ネブライザの流量は15L/min、観測高さは8mm、サンプル洗浄時間は30s、検出波長は204nm、ポンプ速度は7rad/minである。
【0040】
〔実施例1〕
図1に示すように、共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水の処理方法は以下の通りであった。
【0041】
(1)第1の部分廃水を予め触媒酸化反応器1に送り、触媒酸化反応し、その中の過酸化物を除去し、前記触媒酸化反応器1の出口から排出廃水を得て、前記触媒酸化反応器1からの一部の前記排出廃水をその供給口から前記触媒酸化反応器1内にリサイクルし、該リサイクル部分の排出廃水にアルカリ性溶液を加えることで、アルカリ性溶液が該リサイクル部分の排出廃水につれて前記触媒酸化反応器1内に輸送し、その内の材料系のpHを向上させた。
【0042】
(2)前記排出廃水と第2の部分廃水と混合してから得られた混合廃水を前記多効蒸発ユニット2における第1の精留塔21に注入して精留処理して濃縮し、塔頂部から第1の塔頂部材料を得て、塔釜から第1の塔釜液としての一次濃縮後廃水を得て、アルカリ性溶液を前記第1の精留塔21の上部から前記第1の精留塔21内に注入し、
次に、前記第1の塔釜液を第2の精留塔22に注入して精留処理してさらに濃縮し、塔頂部から第2の塔頂部材料を得て、塔釜から第2の塔釜液としての二次濃縮後廃水を得て、アルカリ性溶液を前記第2の精留塔22の上部から前記第2の精留塔22内に注入し、
次に、前記第1の塔頂部材料及び前記第2の塔頂部材料を第3の精留塔23に注入して精留処理して油と水を分離し、塔頂部から第3の塔頂部材料としての油相を得て、塔底部から第3の塔釜液としての水相を得て、
第1の塔釜リボイラーは前記第3の塔頂部材料を熱源として前記第1の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させ、前記第3の塔頂部材料を冷却し、第2の塔釜リボイラーは前記第1の塔頂部材料を熱源として前記第2の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させ、前記第1の塔頂部材料を冷却し、第3の塔釜リボイラーは蒸気を熱源として前記第3の精留塔内の材料を加熱して再沸騰させ、
熱交換器26は前記第3の塔釜液を熱源として前記第3の精留塔23の供給材料を予熱し、
前記第3の塔頂部材料を油水分離装置24に注入して油と水を分離し、その頂部から油相を得て、その底部から水相を得て、前記油水分離装置24からの水相が還流し、
前記油水分離装置24からの油相を回収塔25に注入して精製し、塔頂部からそのうちの沸点が150℃未満の軽質成分を除去し、塔釜から回収塔の塔釜液を得て、
前記回収塔25からの回収塔の塔釜液を前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステム7における精製ユニットに返送した。
【0043】
(3)前記第2の塔釜液を前記焼却ユニット4に輸送して焼却処理して塩残留物を得て、その後、前記塩残留物を順に溶解及び濾過処理し、その中の金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaを除去して濾液を得て、そのうち、前記溶解処理は前記焼却ユニット4からの塩残留物を前記溶解装置51に輸送して溶解し、アルカリ性塩残留物溶解液を得ることであり、その中の金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaはアルカリ性環境で沈殿物が析出され、前記濾過処理は前記溶解装置51からの塩残留物溶解液を濾過装置52に輸送して濾過し、その中の沈殿物を濾別して濾液を得た。
【0044】
(4)前記第3の塔釜液を前記生化学ユニット3に輸送して生化学的処理し、その中の有機物を除去し、
そのうち、第1の部分廃水とは共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水中の過酸化物含有量が2000mg/Lを超える廃水を指し、第2の部分廃水とは共酸化法でプロピレンオキシドを調製することによる生産廃水中の過酸化物含有量が50mg/L未満の廃水を指した。
【0045】
処理条件は以下の通りであった。
前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステム7は煙台万華工業団地からのPOSMシステムであり、それにより生産される廃水は、前記第1の部分廃水に過酸化物含有量が25000mg/L、CODが80000mg/Lであり、前記第2の部分廃水に過酸化物含有量が40mg/Lであり、
触媒酸化反応で使用される触媒はMnO2/NiO複合触媒であり、MnO2とNiOの質量比が0.5:1であり、触媒酸化反応の温度が70℃、供給材料空間速度が2h-1であり、触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水のリサイクル比は2であり、この一部のリサイクル排出廃水に注入されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が32wt%であり、その添加量は前記触媒酸化反応器1内の材料系のpHを9に向上させ、
前記排出廃水と前記第2の部分廃水とを混合して得られた混合廃水は、CODが30000mg/L、pH値が10、塩含有量が5wt%であり、
前記第1の精留塔21の操作温度は110℃、操作圧力は0.1MPa、濃縮倍率は1.4であり、還流比は2であり、前記第1の精留塔21の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が32wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.002であり、
前記第2の精留塔22の操作温度は80℃、操作圧力は30kPa、還流比は2であり、濃縮倍率は2であり、前記第2の精留塔22の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が32wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.002であり、その溶解用水の質量は前記塩残留物の質量の4倍であり、溶解温度は50℃であり、それを濾過時に、使用される濾過装置は濾過孔の孔径が2μmの焼結フィルタであり、
前記第3の精留塔23の操作温度は150℃、操作圧力は0.5Mpa、還流比は20であり、回収塔25の操作温度は90℃、操作圧力は50kPa、還流比は2であった。
【0046】
処理結果は以下の通りであった。
触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水は、pHが10、過酸化物含有量が100mg/Lであり、ただし、EBHPをフェニルエタノールに方向的に変換する回収率は83%であり、
二次濃縮後廃水としての前記第2の塔釜液は、CODが1.2×105mg/L、塩含有量が20wt%であり、
前記第2の塔釜液が焼却システム4により焼却して得られた塩残留物には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が50mg/Lであり、
得られた塩残留物溶解液には、懸濁固体含有量が20mg/Lであり、
濾過処理して得られた濾液には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が0.09mg/Lであり、
前記第3の塔釜液は、CODが1900mg/L、B/Cが0.33であり、生化学的排水水質指標の要求を満たし、生化学的処理後、COD<50mg/Lとなった。
【0047】
〔実施例2〕
処理方法は実施例1と同じであった。
【0048】
処理条件は以下の通りであった。
前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステム7は煙台万華工業団地からのPOSMシステムであり、それにより生産される廃水は、前記第1の部分廃水に過酸化物の含有量が28000mg/L、CODが100000mg/Lであり、前記第2の部分廃水に過酸化物含有量が45mg/Lであり、
触媒酸化反応で使用される触媒はMnO2/NiO複合触媒であり、MnO2とNiOの質量比が2:1であり、触媒酸化反応の温度が70℃、供給材料空間速度が2h-1、触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水のリサイクル比は1.5であり、この一部のリサイクル排出廃水に注入されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が25wt%であり、その添加量は前記触媒酸化反応器1内の材料系のpHを10に向上させ、
前記排出廃水と第2の部分廃水とを混合して得られた混合廃水は、CODが50000mg/L、pH値が8、塩含有量が8wt%であり、
前記第1の精留塔21の操作温度は130℃、操作圧力は0.2MPa、濃縮倍率は1.5であり、還流比は5であり、前記第1の精留塔21の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が25wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.004であり、
前記第2の精留塔22の操作温度は90℃、操作圧力は20kPa、濃縮倍率は5であり、還流比は1であり、前記第2の精留塔22の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が25wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.004であり、その溶解用水の質量は前記塩残留物の質量の10倍であり、溶解温度は50℃であり、それを濾過時に、使用される濾過装置は濾過孔の孔径が0.5μmのセラミックス膜フィルタであり、
前記第3の精留塔23の操作温度は170℃、操作圧力は1MPa、還流比は20であり、回収塔25の操作温度は150℃、操作圧力は80kPa、還流比は1であった。
【0049】
処理結果は以下の通りであった。
触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水は、pHが9、過酸化物含有量が1000mg/Lであり、EBHPをフェニルエタノールに方向的に変換する回収率は81%であり、
二次濃縮後廃水としての前記第2の塔釜液は、CODが106mg/L、塩含有量が40wt%であり、
前記第2の塔釜液が焼却システム4により焼却して得られた塩残留物には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が500mg/Lであり、
得られた塩残留物溶解液には、懸濁固体含有量が50mg/Lであり、
濾過処理して得られた濾液には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が0.09mg/Lであり、
前記第3の塔釜液は、CODが500mg/L、B/Cが0.4であり、生化学的排水水質指標の要求を満たし、生化学的処理後、COD<50mg/Lとなった。
【0050】
〔実施例3〕
処理方法は実施例1と同じであった。
【0051】
処理条件は以下の通りであった。
前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステム7は煙台万華工業団地からのPOSMシステムであり、それにより生産される廃水は、前記第1の部分廃水に過酸化物の含有量が20000mg/L、CODが10000mg/Lであり、前記第2の部分廃水に過酸化物含有量が30mg/Lであり、
触媒酸化反応で使用される触媒はMnO2/NiO複合触媒であり、MnO2とNiOの質量比が1:1であり、触媒酸化反応の温度が20℃、供給材料空間速度が4h-1であり、触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水のリサイクル比は1.5であり、この一部のリサイクル排出廃水に注入されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が20wt%であり、その添加量は前記触媒酸化反応器1内の材料系のpHを8に向上させ、
前記排出廃水と第2の部分廃水とを混合して得られた混合廃水は、CODが10000mg/L、pH値が12、塩含有量が1wt%であり、
前記第1の精留塔21の操作温度は150℃、操作圧力は0.5MPa、濃縮倍率は1.6であり、還流比は1.5であり、前記第1の精留塔21の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が20wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.001であり、
前記第2の精留塔22の操作温度は75℃、操作圧力は40kPa、濃縮倍率は3であり、還流比は5であり、前記第2の精留塔22の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が20wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.001であり、その溶解用水の質量は前記塩残留物の質量の4.5倍であり、溶解温度は50℃であり、それを濾過時に、使用される濾過装置は濾過孔の孔径が1μmのグラスファイバーフィルタであり、
前記第3の精留塔23の操作温度は140℃、操作圧力は0.4MPa、還流比は10であり、回収塔25の操作温度は110℃、操作圧力は40kPa、還流比は1.5であった。
【0052】
処理結果は以下の通りであった。
触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水は、pHが13、過酸化物含有量が200mg/Lであり、EBHPをフェニルエタノールに方向的に変換する回収率は85%であり、
二次濃縮後廃水としての前記第2の塔釜液は、CODが300000mg/L、塩含有量が5wt%であり、
前記第2の塔釜液が焼却システム4により焼却して得られた塩残留物には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が100mg/Lであり、
得られた塩残留物溶解液には、懸濁固体含有量が10mg/Lであり、
濾過処理して得られた濾液には、金属元素合計含有量が0.05mg/Lであり、
前記第3の塔釜液は、CODが1500mg/L、B/Cが0.4であり、生化学的排水水質指標の要求を満たし、生化学的処理後、COD<50mg/Lとなった。
【0053】
〔実施例4〕
処理方法は実施例1と同じであった。
【0054】
処理条件は以下の通りであった。
前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステム7は煙台万華工業団地からのPOSMシステムであり、それにより生産される廃水は、前記第1の部分廃水に過酸化物含有量が10000mg/L、CODが40000mg/Lであり、前記第2の部分廃水に過酸化物含有量が30mg/Lであり、
触媒酸化反応で使用される触媒はMnO2/NiO複合触媒であり、MnO2とNiOの質量比が1.5:1であり、触媒酸化反応の温度が50℃、供給材料空間速度が0.5h-1であり、触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水のリサイクル比は1であり、この一部のリサイクル排出廃水に注入されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が15wt%であり、その添加量は前記触媒酸化反応器1内の材料系のpHを8に向上させ、
前記排出廃水と第2の部分廃水とを混合して得られた混合廃水は、CODが20000mg/L、pH値が5、塩含有量が20wt%であり、
前記第1の精留塔21の操作温度は120℃、操作圧力は0.15MPa、濃縮倍率は1.5であり、還流比は0.2であり、前記第1の精留塔21の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が15wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.01であり、
前記第2の精留塔22の操作温度は60℃、操作圧力は80kPa、濃縮倍率は2であり、還流比は0.2であり、前記第2の精留塔22の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度は15wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.01であり、その溶解用水の質量は前記塩残留物質量の5倍であり、溶解温度は50℃であり、それを濾過時に、使用される濾過装置は濾過孔の孔径が0.1μmの焼結フィルタであり、
前記第3の精留塔23の操作温度は120℃、操作圧力は0.1MPa、還流比は50であり、回収塔25の操作温度は80℃、操作圧力は20kPa、還流比は0.2であった。
【0055】
処理結果は以下の通りであった。
触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水は、pHが6、過酸化物含有量が300mg/Lであり、EBHPをフェニルエタノールに方向的に変換する回収率は92%であり、
二次濃縮後廃水としての前記第2の塔釜液は、CODが200000mg/L、塩含有量が30wt%であり、
前記第2の塔釜液が焼却システム4により焼却して得られた塩残留物には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が200mg/Lであり、
得られた塩残留物溶解液には、懸濁固体含有量が10mg/Lであり、
濾過処理して得られた濾液には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が0.06mg/Lであり、
前記第3の塔釜液は、CODが1500mg/L、B/Cが0.5であり、生化学的排水水質指標の要求を満たし、生化学的処理後、COD<50mg/Lとなった。
【0056】
〔実施例5〕
処理方法は実施例1と同じであった。
【0057】
処理条件は以下の通りであった。
前記共酸化法でプロピレンオキシドを調製するシステム7は煙台万華工業団地からのPOCHPシステムであり、それにより生産される廃水は、前記第1の部分廃水に過酸化物含有量が3000mg/L、CODが20000mg/Lであり、前記第2の部分廃水に過酸化物含有量は30mg/Lであり、
触媒酸化反応で使用される触媒はMnO2/NiO複合触媒であり、MnO2とNiOの質量比が1.2:1であり、触媒酸化反応の温度が60℃、供給材料空間速度が1.5h-1であり、触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水のリサイクル比は5であり、この一部のリサイクル排出廃水に注入されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が10wt%であり、その添加量は前記触媒酸化反応器1内の材料系のpHを9.5に向上させ、
前記排出廃水と第2の部分廃水とを混合して得られた混合廃水は、CODが50000mg/L、pH値が9、塩含有量が10wt%であり、
前記第1の精留塔21の操作温度は100℃、操作圧力は0.12MPa、濃縮倍率は1.2であり、還流比は2であり、前記第1の精留塔21の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が10wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.003であり、
前記第2の精留塔22の操作温度は70℃、操作圧力は50kPa、還流比は1.5であり、濃縮倍率は4であり、前記第2の精留塔22の上部から添加されたアルカリ性溶液はNaOH溶液であり、濃度が10wt%であり、その添加量と前記廃水の質量比は0.003であり、その溶解用水の質量は前記塩残留物質量の4倍であり、溶解温度は50℃であり、それを濾過時に、使用される濾過装置は濾過孔の孔径が10μmのセラミックス膜フィルタであり、
前記第3の精留塔23の操作温度は130℃、操作圧力は0.3MPa、還流比は30であり、回収塔25の操作温度は100℃、操作圧力は30kPa、還流比は5であった。
【0058】
処理結果は以下の通りであった。
触媒酸化反応により分解して得られた排出廃水は、pHが9.5、過酸化物含有量が50mg/Lであり、ただし、CHPをジメチルベンジルアルコールに方向的に変換する回収率は94%であり、
二次濃縮後廃水としての前記第2の塔釜液は、CODが300000mg/L、塩含有量が25wt%であり、
前記第2の塔釜液が焼却システム4により焼却して得られた塩残留物には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が10mg/Lであり、
得られた塩残留物溶解液には、懸濁固体含有量が8mg/Lであり、
濾過処理して得られた濾液には、金属元素Al、Fe、Ni、Ti及びCaの合計含有量が0.08mg/Lであり、
前記第3の塔釜液は、CODが1800mg/L、B/Cが0.35であり、生化学的排水水質指標の要求を満たし、生化学的処理後、COD<50mg/Lとなった。