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特許7208457情報処理システム、情報処理方法、情報処理プログラム及び情報処理装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法、情報処理プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/34 20120101AFI20230112BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20230112BHJP
【FI】
G06Q50/34
G06Q50/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018225653
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020087338
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 勇
(72)【発明者】
【氏名】大井 登
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 あきら
【審査官】岸 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-221227(JP,A)
【文献】特開2008-176434(JP,A)
【文献】特開2018-124702(JP,A)
【文献】特開2017-174264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある人物に関する複数の項目それぞれについての行動に関する情報が、標準からどの程度異なっているかを示す指標を取得する取得部と、
前記複数の項目それぞれについての行動に関する情報から得られる前記ある人物のある対象に対する依存度を示す値の大きさに対し、前記複数の項目それぞれが寄与している度合を示す寄与度を、前記取得部が取得した前記複数の項目それぞれの前記指標に、記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報を乗じることにより算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する表示制御部と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
ある人物に関する複数の項目それぞれについての行動に関する情報が、標準からどの程度異なっているかを示す指標を取得し、
前記複数の項目それぞれについての行動に関する情報から得られる前記ある人物のある対象に対する依存度を示す値の大きさに対し、前記複数の項目それぞれが寄与している度合を示す寄与度を、取得した前記複数の項目それぞれの前記指標に、記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報を乗じることにより算出し、
算出した前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
ある人物に関する複数の項目それぞれについての行動に関する情報が、標準からどの程度異なっているかを示す指標に、記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報を乗じることにより算出された、前記複数の項目それぞれについての行動に関する情報から得られる前記ある人物のある対象に対する依存度を示す値の大きさに対し、前記複数の項目それぞれが寄与している度合を示す寄与度を取得し、
取得した前記寄与度の値の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項4】
前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理は、前記値及び/又は前記値の時系列に沿った推移の情報も表示することを特徴とする請求項3に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理は、さらに前記値及び前記寄与度と、予め設定されたルールと、に基づいて、前記ある対象に対する依存に関する対応策の文面作成し、表示することを特徴とする請求項3又は4に記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
ある項目についての指定を受け付けた場合に、指定を受け付けた前記ある項目に対する対応策の文面作成表示することを特徴とする請求項に記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理は、前記複数の項目それぞれに対応付けられた種別の情報に応じて、前記複数の項目のうち、対応策を表示する項目を決定することを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
ある人物に関する複数の項目それぞれについての行動に関する情報が、標準からどの程度異なっているかを示す指標に、記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報を乗じることにより算出された、前記複数の項目それぞれについての行動に関する情報から得られる前記ある人物のある対象に対する依存度を示す値の大きさに対し、前記複数の項目それぞれが寄与している度合を示す寄与度を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記寄与度の値の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する表示制御部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法、情報処理プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギャンブル依存症は社会的な問題となっており、今後、国内においてカジノが実現した場合には、ギャンブル依存症の患者が増加するおそれもある。また、近年ではオンラインゲームやネットへの依存症も大きな社会問題となっている。以降、これらの行動依存症をまとめて、ギャンブル等依存症と呼ぶことにする。
【0003】
ギャンブル等依存症は、アルコール依存症や薬物依存症と同様に、重度に応じた対策を講じる必要がある。例えば、健常者や軽度リスク者であれば、教育機関や、カウンセリングによる指導が有効である。また、中度リスク者や重度リスク者であれば、カウンセリングと医療機関による治療が有効である。更に、重度リスク者や依存症患者であれば、病院などの医療機関に加え、回復施設や自助グループに継続的に参加することが有効である。
【0004】
従来においては、ギャンブルマシン等が、識別された人物のギャンブル等の行動を監視し、監視した人物のギャンブル等の行動のカテゴリを決定する技術が知られている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2007-503631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1等では、ギャンブル等への依存度に関する情報をわかりやすく表示することについての検討がなされていない。
【0007】
1つの側面では、本発明は、ある対象に対する依存度に関する情報をわかりやすく表示することが可能な情報処理システム、情報処理方法、情報処理プログラム及び情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様では、情報処理システムは、ある人物に関する複数の項目それぞれについての行動に関する情報が、標準からどの程度異なっているかを示す指標を取得する取得部と、前記複数の項目それぞれについての行動に関する情報から得られる前記ある人物のある対象に対する依存度を示す値の大きさに対し、前記複数の項目それぞれが寄与している度合を示す寄与度を、前記取得部が取得した前記複数の項目それぞれの前記指標に、記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報を乗じることにより算出する算出部と、前記算出部が算出した前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する表示制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
ある対象に対する依存度に関する情報をわかりやすく表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る情報処理システムの構成を概略的に示す図である。
図2図1のICT基盤運用機関が有するサーバのハードウェア構成を示す図である。
図3図1のICT基盤運用機関が有するサーバの機能ブロック図である。
図4】説明変数作成部、目的変数作成部、及び予測モデル作成部の処理を示すフローチャートである。
図5図5(a)は、カジノ施設への入退場情報を示す図であり、図5(b)はゲーミング情報を示す図であり、図5(c)は広域行動情報を示す図である。
図6図6(a)は、個人ごとの月次説明変数(入退場情報)を示す図であり、図6(b)は、個人ごとの月次説明変数(ゲーミング情報)を示す図であり、図6(c)は、個人ごとの月次説明変数(広域行動情報)を示す図である。
図7図7(a)は、デモグラフィック情報を示す図であり、図7(b)は、個人ごとの月次説明変数(デモグラフィック情報)を示す図である。
図8】個人ごとの月次説明変数(マージ版)を示す図である。
図9図9(a)は、本人・家族申請情報を示す図であり、図9(b)は、訪問制限情報を示す図であり、図9(c)は、イベント情報を示す図であり、図9(d)は、個人ごとの月次目的変数を示す図である。
図10】学習用データを示す図である。
図11】重要度テーブルを示す図である。
図12】予測モデル適用部の処理を示すフローチャートである。
図13】新たに得られたデータから作成した説明変数の一例を示す図である。
図14図14(a)は、予測結果を示す図であり、図14(b)は、説明変数の種別テーブルを示す図である。
図15】出力部の処理(その1)を示すフローチャートである。
図16図15のステップS120の具体的な処理を示すフローチャートである。
図17図17(a)は、図13の説明変数に基づいて作成されたzスコアテーブルを示す図であり、図17(b)は、寄与度テーブルを示す図である。
図18】一覧画面を示す図(その1)である。
図19】一覧画面を示す図(その2)である。
図20図15のステップS130の具体的な処理を示すフローチャートである。
図21】詳細画面を示す図(その1)である。
図22】詳細画面を示す図(その2)である。
図23】出力部の処理(その2)を示すフローチャートである。
図24図24(a)は、リスクスコアに応じた強調方法テーブルを示す図であり、図24(b)は、危険度に応じた強調方法テーブルを示す図である。
図25図23のステップS208において表示される画面の一例を示す図である。
図26図25の画面の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、情報処理システムの一実施形態について、図1図26に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1には、一実施形態に係る情報処理システム100の構成が概略的に示されている。図1に示すように、情報処理システム100は、国や自治体などの公共機関、ギャンブル等依存症対策機関、IR(Integrated Resort:統合型リゾート)事業者、外部機関(医療機関やカウンセラー、外部団体等)、商業施設事業者に設置された装置から、ネットワークNを介してICT基盤運用機関が各種情報(ビッグデータ)を集約し、解析することで、ギャンブル等依存に関する情報を提供するシステムである。
【0013】
図1に示すように、IR事業者は、サーバ20と、サーバ20に接続された複数の機器22と、端末24と、を有する。機器22は、IR事業者が運営するカジノ施設の出入口に設けられた入退出ゲートや、スロットマシーンなどの電子ゲーミング機器、テーブルゲームなどである。端末24は、IR事業者スタッフが業務時に利用する端末である。サーバ20は、機器22から得た情報をICT基盤運用機関が有するサーバ80に送信する。また、これと同時に、サーバ20は、機器22から得た情報を公共機関が管理するサーバ10や、ギャンブル等依存症対策機関が管理するサーバ30に対して送信する。また、サーバ20は、カジノ施設を利用するユーザ本人やその家族がカジノ施設に対して申請した情報や、端末24から入力されたカジノ施設内のスタッフが把握する情報を、ICT基盤のサーバ80に送信する。また、これと同時に、サーバ20は、これらの情報を公共機関が管理するサーバ10や、ギャンブル等依存症対策機関が管理するサーバ30に対して送信する。ここで、機器22から得られる情報には、ユーザ毎の入退出の時刻を記録した入退出ログや、ユーザ毎のゲームのプレイ時刻や賭け金、勝ち金などを記録したゲーミング情報などが含まれる。また、カジノ施設に対してユーザ本人や家族から申請される情報には、ユーザに関する規制情報(月利用回数上限、月利用金額上限等)が含まれる。更に、カジノ施設内のスタッフが端末24より入力する情報には、ユーザに対して訪問制限を実施したという情報や、ユーザの注意すべき態度・言動の情報(Responsible Gambling(RG)適用情報)などが含まれる。
【0014】
公共機関は、サーバ10と、端末12と、を有している。サーバ10では、全国の複数箇所のIR事業者のサーバ20から送信されてくる入退出ログを取得して、図5(a)に示すようなカジノ施設への入退場情報を生成する。入退場情報には、各ユーザの訪問情報(誰が、いつカジノ施設に入場して、いつ退場したかの情報)が含まれている。端末12に入力される情報には、ユーザに対して訪問制限を実施したという情報や、ユーザの注意すべき態度・言動の情報(Responsible Gambling(RG)適用情報)などが含まれる。サーバ10は、これらの入退場情報と端末12から得た情報をICT基盤のサーバ80に送信する。また、これと同時に、サーバ10は、入退場情報と端末12から得た情報をギャンブル等依存症対策機関が管理するサーバ30に対して送信する。
【0015】
外部機関は、サーバ40と、端末42と、を有している。端末42には、外部機関に属する医師やカウンセラーなどからギャンブル等依存症の患者等に関する情報が入力される。患者等に関する情報には、カウンセリング結果、診断や治療結果、回復支援サポートの内容等が含まれる。サーバ40は、端末42から得た情報をICT基盤のサーバ80に送信する。また、これと同時に、サーバ40は、公共機関が管理するサーバ10や、ギャンブル等依存症対策機関が管理するサーバ30に対して端末42から得た情報を送信する。
【0016】
ギャンブル等依存症対策機関は、サーバ30と、端末32と、を有する。端末32には、住民本人や家族からの申請情報(図9(a)に示すような本人・家族申請情報)や、個人属性情報(図7(a)に示すようなデモグラフィック情報)が入力される。また、端末32には、ギャンブル等依存症対策機関が住民に対して早期介入業務(訪問制限の実施)を行ったことを示す情報(図9(b)の訪問制限情報)が入力される。端末32では、入力された情報をサーバ30に送信する。サーバ30は、端末32から得た情報をICT基盤のサーバ80に送信する。
【0017】
商業施設事業者は、サーバ70を有する。商業施設事業者は、自身の運営するスーパーマーケットなどの店舗で得られた広域行動情報(図5(c)参照)などをサーバ70において収集する。サーバ70は、収集した情報をICT基盤のサーバ80に送信する。
【0018】
ICT基盤運用機関は、サーバ80と端末82を有している。サーバ80は、ICT基盤であり、上述した各組織の有するサーバから情報を集約し、解析することで、ギャンブル等依存症に関する情報を表示する画面を生成し、出力する。
【0019】
図2には、ICT基盤のサーバ80のハードウェア構成が示されている。図2に示すように、サーバ80は、CPU(Central Processing Unit)90、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)94、記憶部(ここではHDD(Hard Disk Drive))96、ネットワークインタフェース97、表示部93、入力部95、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。これらサーバ80の構成各部は、バス98に接続されている。サーバ80では、ROM92あるいはHDD96に格納されているプログラム(情報処理プログラムを含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラム(情報処理プログラムを含む)をCPU90が実行することにより、図3に示す、各部の機能が実現される。なお、図3の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。なお、図1の情報処理システム100に含まれるサーバ80以外の機器(サーバや端末)についても、図2と同様のハードウェア構成を有している。
【0020】
図3には、ICT基盤のサーバ80の機能ブロック図が示されている。図3に示すように、サーバ80においては、CPU90がプログラムを実行することで、情報取得部50、説明変数作成部51、目的変数作成部52、予測モデル作成部53、予測モデル適用部54、取得部、算出部及び表示制御部としての出力部55、として機能する。
【0021】
情報取得部50は、ネットワークNを介して、サーバ10、20、30,40、70から情報を取得する。情報取得部50は、取得した情報を説明変数作成部51、目的変数作成部52、及び予測モデル適用部54に対して送信する。
【0022】
説明変数作成部51は、情報取得部50が取得した情報を用いて、機械学習に用いる説明変数を作成する。
【0023】
目的変数作成部52は、情報取得部50が取得した情報を用いて、機械学習に用いる目的変数を作成する。
【0024】
予測モデル作成部53は、説明変数作成部51が作成した説明変数と、目的変数作成部52が作成した目的変数と、を用いて予測モデルを作成する。予測モデル作成部53は、作成した予測モデルを予測モデルDB60に格納する。また、予測モデル作成部53は、予測モデルを作成する際に算出される、各説明変数の重み情報としての重要度については、記憶部としての重要度テーブル62に格納する。なお、図3では、予測モデルDB60をサーバ80が有しているように記載しているが、予測モデルDB60は、サーバ80以外の機器(例えばサーバ80と通信可能なデータサーバ)が保持してもよい。同様に、重要度テーブル62についても、サーバ80以外の機器が保持してもよい。
【0025】
予測モデル適用部54は、新たに情報取得部50が取得した情報から説明変数を作成し、作成した説明変数に対して予測モデルを適用することで、ギャンブル等依存症のリスクに関する予測を行う。予測モデル適用部54は、予測結果や説明変数を、出力部55に対して送信する。
【0026】
出力部55は、予測モデル適用部54の予測結果を表示する画面を生成し、表示部93上に表示(出力)したり、端末82に出力して端末82の表示部に表示させる。出力部55は、画面を生成する際に、予測モデル適用部54の予測結果や説明変数、予測モデル作成部53が作成した重要度テーブル62を利用する。
【0027】
(説明変数作成部51、目的変数作成部52、及び予測モデル作成部53の処理について)
次に、説明変数作成部51、目的変数作成部52、及び予測モデル作成部53の処理について、図4のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。
【0028】
図4の処理は、例えば、情報取得部50がある一定量の情報を取得した段階で、取得した情報を用いて予測モデルを生成(更新)する処理である。一定量の情報は、例えば所定期間(例えば、3か月や6か月など)の間に得られる情報とすることができる。すなわち、図4の処理は、所定期間が経過するごとに行われる。あるいは、利用者が任意の期間やタイミングを指定し、それに基づき予測モデルを生成(更新)することもできる。
【0029】
図4の処理では、まず、ステップS10において、説明変数作成部51が、説明変数を作成する。具体的には、説明変数作成部51は、個人行動情報や個人属性情報を加工・集計し、予測モデル生成に用いる説明変数を作成する。個人行動情報は、個人ごとにいつ何をしたかを記録した時系列イベント情報であり、説明変数作成部51は、各個人ごとに、定められた一定期間の情報を順次集計することで説明変数を作成する。例えば、一定期間を6か月とする場合、2017年1月~6月や、2017年2月~7月というように、6か月の集計期間を1か月ずつずらしながら順次集計処理を行う。
【0030】
個人行動情報には、例えば、図5(a)に示すようなカジノ施設への入退場情報や、図5(b)に示すようなゲーミング情報、図5(c)に示すような広域行動情報などが含まれる。また、個人属性情報には、図7(a)に示すようなデモグラフィック情報などが含まれる。
【0031】
図5(a)のカジノ施設への入退場情報には、各ユーザのカジノ施設への入場時刻及び退場時刻の情報が含まれる。説明変数作成部51は、カジノ施設への入退場情報を集計することで、図6(a)に示すような個人ごとの月次説明変数(入退場情報)を作成する。個人ごとの月次説明変数(入退場情報)には、各ユーザがある期間(例えば、2017年1月~6月や、2017年2月~7月)において、カジノ施設を訪問した日数や総滞在時間、一日の平均滞在時間、一日の最大滞在時間が含まれる。
【0032】
図5(b)のゲーミング情報には、各ユーザが利用したゲーム機、プレイ時刻、賭け金、勝ち金の情報が含まれる。説明変数作成部51は、ゲーミング情報かを集計することで、図6(b)に示すような個人ごとの月次説明変数(ゲーミング情報)を作成する。個人ごとの月次説明変数(ゲーミング情報)には、ある期間(例えば、2017年1月~6月や、2017年2月~7月)における、各ユーザの総賭け回数、総賭け金額、総勝ち金額、一日の平均賭け数、一回の最大賭け金額が含まれる。
【0033】
図5(c)の広域行動情報には、各ユーザが利用した店舗、利用の種別(物品購入や飲食)、利用した日時、金額の情報が含まれる。説明変数作成部51は、広域行動情報を集計することで、図6(c)に示すような個人ごとの月次説明変数(広域行動情報)を作成する。月次説明変数(広域行動情報)には、ある期間(例えば、2017年1月~6月や、2017年2月~7月)における、各ユーザの総購入回数、総購入金額、総飲食回数、一回の平均飲食金額が含まれる。なお、図6(a)~図6(c)に示す個人ごとの月次説明変数のうち、2017年1月~6月の期間における集計結果は、2017年7月時点での予測に用いる説明変数となる。また、2017年2月~7月の期間における集計結果は、2017年8月時点での予測に用いる説明変数となる。
【0034】
図7(a)のデモグラフィック情報には、各ユーザの属性情報として、時間とともに変化する可能性のある情報(既婚/未婚、住居タイプなど)と静的で時間とともに変化しない情報(性別、生年月日など)が含まれている。説明変数作成部51は、デモグラフィック情報を加工することで、図7(b)に示すような個人ごとの月次説明変数(デモグラフィック情報)を作成する。図7(b)の個人ごとの月次説明変数(デモグラフィック情報)には、ある期間(例えば、2017年1月~6月や、2017年2月~7月)における、各ユーザのフラグ情報や、年齢の情報が含まれる。フラグ情報には、男性か否かを示す男性フラグ、既婚か否かを示す既婚フラグ、一軒家か否かを示す一軒家フラグ、マンションか否かを示すマンションフラグ、賃貸か否かを示す賃貸フラグなどが含まれる。フラグ情報は、デモグラフィック情報をダミー変数化(多値のカテゴリ値を複数のフラグ情報に分解)して作成されたものである。年齢の情報は、生年月日の情報から計算したものである。なお、図7(b)の個人ごとの月次説明変数(デモグラフィック情報)のうち、2017年1月~6月の期間の情報は、2017年7月時点での予測に用いる説明変数となる。また、2017年2月~7月の期間の情報は、2017年8月時点での予測に用いる説明変数となる。なお、6か月の期間内で情報が変化した場合には最終状態の情報を用いるが、変化しない場合には過去の情報をそのまま利用してもよい。
【0035】
説明変数作成部51は、上述したように作成される個人ごとの月次説明変数(図6(a)~図6(c)、図7(b))をマージして、図8に示すような個人ごとの月次説明変数(マージ版)を作成する。説明変数作成部51は、作成した個人ごとの月次説明変数(マージ版)を予測モデル作成部53に対して送信する。
【0036】
図4に戻り、ステップS12では、目的変数作成部52が、目的変数を作成する。ここで、ギャンブル等依存症のリスク予測では、依存症リスクをどのように定義するかが重要となる。本実施形態ではギャンブル等依存症の早期検知を目的とする。したがって、依存症の発症ではなく、本人申告や家族申告、訪問拒否情報といった依存症の予兆となるイベントが発生している状態をリスク状態と考え、一定期間内に依存症の予兆となるイベントが発生するかどうかの二値分類(予測)を行う。
【0037】
具体的には、目的変数作成部52は、図9(a)に示すような本人・家族申請情報や、図9(b)に示すような訪問制限情報に基づいて、図9(c)に示すようなイベント情報を生成する。そして、目的変数作成部52は、図9(c)のイベント情報に基づいて、図9(d)に示すような個人ごとの月次目的変数を作成する。
【0038】
ここで、図9(a)の本人・家族申請情報は、依存症のリスクがあるため本人や家族がカジノ施設やギャンブル等依存症対策機関などに対し、カジノ施設への入場制限を申告したことを示す情報であり、ユーザID、申請者、申請日の情報が含まれる。また、図9(b)の訪問制限情報は、訪問回数が閾値を超えるといった依存症の疑いのある行動を監視して、訪問者に入場制限や回数制限を課す予防的対策をカジノ施設やギャンブル等依存症対策機関が行ったことを示す情報である。訪問制限情報には、ユーザIDに対応付けて、訪問制限の種別の情報と訪問制限日の情報が含まれている。図9(c)のイベント情報は、図9(a)の本人・家族申請情報と図9(b)の訪問制限情報とをマージした情報である。
【0039】
図9(d)の個人ごとの月次目的変数は、ユーザIDと、予測実施月と、正解フラグとを含む。本実施形態では、目的変数作成部52は、個人規制適用情報からイベント発生日を抽出し、予測実施月から一定期間内にイベントが起きる場合は「正例」、イベントが起きない場合は「負例」となるよう正解フラグ(目的変数)を作成する。例えば一定期間(「予測期間」)を2か月とした場合には、2017年7月を予測実施月としたときの正解フラグは、2017年8月か9月にイベントが発生している場合であれば正例(正解フラグ=1)、そうでない場合であれば負例(正解フラグ=0)とする。また、2017年8月を予測実施月としたときの正解フラグは、2017年9月か10月にイベントが発生している場合であれば正例(正解フラグ=1)、そうでない場合であれば負例(正解フラグ=0)とする。
【0040】
なお、最初のイベント発生を予測することを目的とする場合には、イベントが発生した後の説明変数と目的変数については、ともに使用しないものとする。
【0041】
図4に戻り、次のステップS14では、予測モデル作成部53が、学習用データを作成する。この場合、予測モデル作成部53は、説明変数作成部51が作成した説明変数と目的変数作成部52が作成した目的変数を列結合して、学習用データを作成する。例えば、予測モデル作成部53は、図8に示す個人ごとの月次説明変数(マージ版)と、図9(d)に示す個人ごとの月次目的変数を内部結合することで、図10に示すような学習用データを作成する。より具体的には、予測モデル作成部53は、例えば、同一ユーザの、2017年1月~6月の説明変数と、予測実施月が2017年7月の目的変数と、を列結合することで、予測実施月が2017年7月の学習用データを作成する。また、例えば、同一ユーザの、2017年2月~7月の説明変数と、予測実施月が2017年8月の目的変数を列結合することで、予測実施月が2017年8月の学習用データを作成する。なお、図10に示す学習用データにおいて、ユーザIDと予測実施月の情報は、上述した列結合の際に用いるものであり、予測モデルを生成する際には使用されない情報である。
【0042】
次いで、図4のステップS16では、予測モデル作成部53が、学習用データを用いて予測モデルを生成し、生成した予測モデルを予測モデルDB60に格納する。具体的には、予測モデル作成部53は、学習用データを入力として、機械学習(二値分類手法)を用いて、説明変数群から目的変数を予測する予測モデルを作成する。機械学習の手法としては、例えば、ロジスティック回帰、決定木、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)などを用いることができる。予測モデル作成部53は、作成した予測モデルを予測モデルDB60に格納する。なお、使用する機械学習の手法により作成される予測モデルの形式は異なるが、ほとんどの機械学習では、モデルの内部パラメータから、各説明変数がどの程度予測に寄与しているのかを表した重要度を算出することができる。予測モデル作成部53は、算出された説明変数の重要度を図11に示すような重要度テーブル62に格納する。予測モデル作成部53が作成した予測モデルは予測モデル適用部54が予測結果を計算するために使用され、重要度は、出力部55が予測結果を出力する際に、予測根拠を可視化するために使用される。
【0043】
(予測モデル適用部54の処理について)
次に、図12のフローチャートに沿って、予測モデル適用部54の処理について詳細に説明する。図12の処理は、新たにデータが得られたタイミング(例えば1カ月に1度)や、もしくは利用者が任意の期間やタイミングを指定し実行される処理であるものとする。
【0044】
ステップS110では、予測モデル適用部54が、新たに得られたデータを用いて説明変数を作成する。図13には、新たに得られたデータから作成した説明変数の一例が示されている。なお、図13の説明変数は、2018年10月のリスクスコアを算出するためのものであり、2018年4月~9月の各ユーザのデータを集計することで、個人ごとの月次説明変数(マージ版)(図8)と同様にして作成される。
【0045】
次いで、ステップS112では、予測モデル適用部54が、作成した説明変数に予測モデルを適用し、リスクスコアを算出する。具体的には、予測モデル適用部54は、図4のステップS16で予測モデル作成部53が作成した予測モデルを予測モデルDB60から読み出す。そして、予測モデル適用部54は、新たに作成した説明変数に対して、読み出した予測モデルを適用することで、各ユーザが問題状況に陥る可能性を示すリスクスコアを算出する。図14(a)には、予測モデル適用部54の予測結果である、各ユーザのリスクスコアが示されている。予測モデル適用部54は、図14(a)の予測結果を出力部55に対して送信する。なお、予測モデル適用部54は、予測結果と併せて、図13の説明変数についても出力部55に送信する。
【0046】
(出力部55の処理(その1)について)
次に、図15のフローチャートに沿って、出力部55の処理(その1)について詳細に説明する。図15の処理は、ギャンブル等依存症対策機関の職員などによりギャンブル依存に関する一覧画面の表示要求が入力された場合に、出力部55により実行される処理である。
【0047】
図15の処理では、まず、ステップS120において、出力部55が、画面作成用のデータを作成する。具体的には、出力部55は、図16のフローチャートに沿った処理を実行する。図16のステップS140では、出力部55は、予測モデル適用部54から取得した各ユーザの各説明変数についてのzスコアを算出し、zスコアテーブルを作成する。zスコアは、1つの説明変数について全ユーザの平均が0、分散が1となるように正規化したときの値を意味する。zスコアは、各ユーザの説明変数が標準からどの程度異なっているのかを表す指標である。図17(a)には、図13の説明変数に基づいて作成されたzスコアテーブルが示されている。なお、各説明変数のzスコアは、各ユーザについて検出された複数の項目(説明変数)それぞれに対応するギャンブル行動に関する情報であると言える。
【0048】
次いで、ステップS142では、出力部55が、zスコア×重要度(=寄与度)を算出し、寄与度テーブルを作成する。具体的には、出力部55は、図17(a)の各ユーザの各説明変数のzスコアに、図11の重要度テーブル62に格納されている各説明変数の重要度を掛けて、各説明変数の寄与度を算出し、図17(b)に示すような寄与度テーブルを作成する。なお、寄与度テーブルにおいては、標準から乖離している説明変数ほど、かつ重要度の高い説明変数ほど寄与度が高くなる。すなわち、寄与度は、ギャンブル等への依存度を判定するための複数の項目(説明変数)それぞれがユーザのギャンブル等への依存度に関する値(リスクスコア)の大きさに寄与している度合であると言える。ステップS142の後は、図15のステップS122に移行する。
【0049】
図15のステップS122に移行すると、出力部55は、予測モデル適用部54の予測結果(図14(a))、寄与度テーブル(図17(b))を用いて、一覧画面を作成し、表示部93上に表示したり、端末12に作成した一覧画面を出力し、端末12の表示部に表示させる。一覧画面は、図18に示すような画面である。出力部55は、図18の一覧画面において、各ユーザのギャンブル依存に関する情報を、リスクスコアの大きいユーザから順に表示する。ここで、一覧画面には、「RANK」、「ID」、「スコア」、「簡易分析結果」の情報が表示される。「RANK」は、リスクスコアの順位を意味し、「ID」は、ユーザIDを意味し、「スコア」は、リスクスコアの値を意味する。「簡易分析結果」の欄には、ユーザ毎に寄与度が大きい方から所定数(例えば4つ)の説明変数とその寄与度が表示される。
【0050】
本実施形態では、図18に示すような一覧画面を表示することで、複数のユーザについての最新の予測結果に関する情報(リスクスコアや予測の理由)を表示することができる。
【0051】
次いで、ステップS124では、出力部55は、図18の一覧画面においてユーザが選択されるまで待機する。図19には、RANK=5、ID=04946392のユーザが選択された場合の例が示されている。図19のようにユーザが選択されると、ステップS126に移行する。
【0052】
ステップS126に移行すると、出力部55は、選択されたユーザの情報を一覧画面に表示する。この場合、出力部55は、図19の一覧画面の上段に示すように、選択されたユーザ(ID=04946392)の情報として、予め定められている情報(リスクスコア、RANK、年齢、合計滞在時間、ギャンブルキャリア、ゲーミング情報)を図13等から抽出して表示する。なお、図19の一覧画面においては、ユーザのリスクスコア(=0.74)を示す色を、リスクスコアの数値に応じて変更することとしている(図19のハッチング部分参照)。これにより、リスクスコアが高いか低いかをわかりやすく表示することができる。
【0053】
図15に戻り、次のステップS128では、出力部55は、選択されているユーザに対応する詳細ボタンが押されるまで待機する。すなわち、図19の例では、出力部55は、符号Aで示すボタンが押されるまで待機する。詳細ボタンが押されると、出力部55は、ステップS130に移行する。
【0054】
ステップS130に移行すると、出力部55は、選択されているユーザのギャンブル依存に対する対応策を特定する処理を実行する。このステップS130においては、図20のフローチャートに沿った処理が実行される。
【0055】
図20の処理では、まず、ステップS150において、出力部55は、リスクスコアが予め定められている閾値よりも大きいか否かを判断する。このステップS150の判断が否定された場合、すなわち、選択されたユーザのリスクスコアが閾値よりも小さい場合には、対応策を提示する必要が無いため、ステップS164に移行し、出力部55は、対応策の提示を行わないことを決定する。その後は、図20の全処理を終了し、図15のステップS132に移行する。
【0056】
一方、ステップS150の判断が肯定された場合には、ステップS152に移行し、出力部55は、選択されたユーザの説明変数の中から、所定条件を満たす説明変数を選定する。この場合、出力部55は、例えば、zスコア×重要度(=寄与度)が閾値以上の説明変数を選定したり、zスコア×重要度(=寄与度)のランキング上位の所定個数の説明変数を選定したりする。
【0057】
次いで、ステップS154では、出力部55は、選定した説明変数の中に、人の意志により制御可能な説明変数が含まれるか否かを判断する。具体的には、出力部55は、図14(b)に示す説明変数の種別テーブルを参照して、ステップS152において選定した説明変数の中に、人の意志により制御可能な説明変数が含まれるか否かを判断する。ここで、図14(b)のテーブルにおいては、人の意志により制御可能な説明変数として、訪問回数や賭け金額などがあり、人の意志により制御不可能な説明変数として、性別などがあることが記述されている。
【0058】
このステップS154の判断が否定された場合、すなわち、選定した説明変数の中に、人の意志により制御可能な説明変数が一切含まれていない場合には、ステップS164に移行する。ステップS164に移行すると、出力部55は、対応策の提示を行わないことを決定し、その後は、図20の全処理を終了して、図15のステップS132に移行する。
【0059】
一方、ステップS154の判断が肯定された場合には、ステップS156に移行し、出力部55は、人の意志により制御可能な説明変数を1つ選択する。次いで、ステップS158では、出力部55は、イベントが発生していない人の平均値などをベースとして低減目標値を設定する。次いで、ステップS160では、出力部55は、事前に設定されたルール及び設定された低減目標値を用いて対策案の文面を作成する。例えば、出力部55は、文面として、「プレイする日数を30%減らして週3回に抑えると、依存症リスクを40%低減することができます」や「一回当たりの賭け金額を30%減らして〇〇円に抑えると、依存症リスクを20%低減することができます」などを作成する。
【0060】
次いで、ステップS162では、出力部55は、全ての説明変数(人の意志により制御可能な説明変数)を選択し終えたか否かを判断する。このステップS162の判断が否定された場合には、ステップS156に戻り、ステップS162の判断が肯定されるまで、ステップS156~S162の処理・判断を繰り返し実行する。そして、ステップS162の判断が肯定されると、出力部55は、図20の全処理を終了し、図15のステップS132に移行する。
【0061】
図15のステップS132に移行すると、出力部55は、詳細画面表示を行う。具体的には、出力部55は、図21に示すような詳細画面を表示する。
【0062】
出力部55は、例えば、図21に示すように、詳細画面の範囲Bに、図19と同様、選択されたユーザ(ID=04946392)の情報として、予め定められている情報(リスクスコア、RANK、年齢、合計滞在時間、ギャンブルキャリア、ゲーミング情報)を表示する。
【0063】
また、出力部55は、詳細画面の範囲Cに「スコア変遷」を表示する。このスコア変遷の欄には、選択されたユーザの過去のリスクスコアの時系列に沿った推移が表示される。
【0064】
また、出力部55は、詳細画面の範囲Dに、リスクスコアの算出の際の根拠となった説明変数に関する情報(スコア根拠)を表示する。この場合、出力部55は、図21に示すように、説明変数を、寄与度(=zスコア×重要度)が大きい方から順に表示する。また、出力部55は、実績値の欄に、実績値そのものと値の大きさを示すグラフを表示する。また、出力部55は、グラフの右端の位置により実績値の最大値を表し、白丸(〇)により健常者平均を表し、黒丸(●)によりギャンブル依存者の平均を表す。また、出力部55は、重要度の欄に、重要度の値そのものと値の大きさを示すグラフを表示し、zスコア×重要度の欄に、zスコア×重要度(=寄与度)の値そのものを表示する。
【0065】
また、出力部55は、詳細画面の範囲Dに、上述したステップS130(図20の処理)において対応策の文面が作成された説明変数に対応付けて「対応策」のボタンを表示する。この対応策のボタンが押された場合には、図22に示すように、出力部55は、押されたボタンに対応する対応策の文面をポップアップ表示する。
【0066】
本実施形態においては、図21図22に示すような詳細画面を表示部93や端末12の表示部上に表示するため、選択されたユーザのギャンブル依存に関する詳細な情報を確認することが可能となる。また、詳細画面にスコア遷移(範囲C)を表示しているため、ユーザにおいてギャンブル依存のリスクが増加しているか否かを簡易に確認することができる。また、実績値の全体の分布の中での選択されたユーザの位置や、各説明変数の重要度、各説明変数がリスクスコアに与えている影響の度合を簡易に確認することができる。
【0067】
また、対応策ボタンを押すことにより、ルールベースでの対応策が表示されるため、どのような対策を行えばギャンブル等依存症のリスクが低減するのかを確認することができる。
【0068】
したがって、ギャンブル等依存症対策機関の職員等の利用者は、図18図19図21図22の画面を参照することで、ギャンブル等依存症のリスクのあるユーザを特定し、ユーザや外部機関に対してリスクスコアが高い理由や、適切な対応策を通知等することができる。
【0069】
なお、図15の処理においては、詳細画面を表示する前に対応策を特定し(S130)、詳細画面において対応策ボタンを表示する(S132)場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、詳細画面の中からある説明変数が選択されたタイミングで、選択された説明変数に関連する対応策を特定し、特定できた場合に、その対応策を表示するようにしてもよい。
【0070】
なお、図21図22では、説明変数を寄与度が大きい順に表示する場合について説明したが、これに限らず、寄与度が小さい順に表示することとしてもよい。また、説明変数の表示順を寄与度が大きい順とするか小さい順とするかを切り替えできるようにしてもよい。また、図21図22では、全ての説明変数を表示してもよいし、一部の説明変数(寄与度が大きい方から所定数だけ)を表示することとしてもよい。
【0071】
(出力部55の処理(その2)について)
次に、出力部55の処理(その2)について、図23のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ説明する。図23の処理は、ギャンブル等依存症対策機関の職員等により、複数ユーザのスコア遷移画面(図25の画面)の表示要求が入力された場合に、出力部55により実行される処理である。
【0072】
図23の処理では、まず、ステップS200において、出力部55が、所定期間ごとの各ユーザのリスクスコアを取得する。ここでは、一例として、出力部55は、1週間ごとの各ユーザのリスクスコアを取得するものとする。すなわち、予測モデル適用部54は、1週間ごとに予測処理(図12)を行うものとする。
【0073】
次いで、ステップS202では、出力部55が、取得した各リスクスコアを図25に示すようにユーザ毎に時系列に沿って表示する場合における、表示枠内の背景色の強調方法を特定する。この場合、出力部55は、例えば、図24(a)に示すようなリスクスコアに応じた強調方法テーブルに基づいて、背景色の強調方法を特定する。ここで、図24(a)のテーブルには、リスクスコアの範囲ごとに強調方法(背景色)が定められている。したがって、出力部55は、ステップS200で取得したリスクスコアそれぞれの背景色を図24(a)のテーブルを参照して特定する。
【0074】
次いで、図23のステップS204では、出力部55が、各ユーザのイベント発生日を特定する。この場合、出力部55は、図9(c)のイベント情報から、各ユーザのイベント発生日を特定する。なお、上述したステップS12において機械学習の目的変数を作成する際には、イベント発生日からその一定期間前までの期間に含まれる場合は「正例」として扱うことで、イベント発生の事前予測を実現している。したがって、事前予測の確からしさを確認するという目的のために、以下の説明において、イベント発生日ではなく、イベント発生日の一定期間前の日を用いても良い。
【0075】
次いで、ステップS206では、出力部55が、各ユーザのイベント発生日とリスクスコアの変化トレンド(又は安定度)から定まる危険度に基づいて、強調方法を特定する。この場合、出力部55は、例えば、図24(b)に示すような危険度に応じた強調方法テーブルに基づいて、強調方法を特定する。ここで、危険度は、図24(b)に示すように、リスクスコアの変化トレンド(傾き)と、イベント発生状況との組み合わせごとに定まっている。例えば、出力部55は、移動窓期間を4週間とし、移動窓期間内のリスクスコアの変化トレンド(傾き)とイベント発生状況に基づいて移動窓期間に含まれる各週の危険度を特定し、特定した危険度に対応する強調方法を図24(b)のテーブルから特定する。なお、傾きとしては、回帰分析等により得られる傾きを用いたり、移動窓期間における傾きの移動平均を利用したりすることができる。例えば、移動窓期間におけるスコア上昇の傾きが2.0以上で、移動窓期間に含まれるある週がイベントが発生した後の週である場合には、出力部55は、その週を四角で囲み、リスクスコアを示す文字をピンク色かつ太字で表示するようにする。なお、本実施形態では、出力部55がステップS204で特定した各ユーザのイベント発生日は、ユーザそれぞれに対応付けられた情報であり、ステップS206において定まる危険度は、ユーザそれぞれのギャンブル依存に関する危険度であるといえる。
【0076】
次いで、ステップS208では、出力部55は、ステップS202、S206で特定した強調方法に基づいて、ステップS200で取得した所定期間ごとの各ユーザのリスクスコアを表示する画面を生成し、表示部93や端末12の表示部上に表示する。
【0077】
図25には、ステップS208において表示される画面の一例が示されている。図25の画面においては、各ユーザの1週間ごとのリスクスコア(値)が時系列に沿って表示されている。また、図25の画面では、リスクスコアに応じて背景色が色分けされている。また、図25の画面では、リスクスコアの変化が急激な箇所が四角で囲われている。なお、図25では、2以上の隣接するリスクスコアを四角で囲う場合には、当該隣接する2以上のリスクスコアを1つの四角で囲うものとしている。更に、図25の画面では、イベントが発生した後の期間のリスクスコア(値)が太字で示されている(図25では、図示の便宜上、文字を大きく表示している)。なお、図25の画面では表現されていないが、文字色も図24(b)のテーブルに基づいて色分けされているものとする。
【0078】
図25の画面によれば、矢印Eの行に着目すると、四角で囲まれた箇所がないのに、リスクスコアが太字で表示されている箇所があることがわかる。この場合、リスクスコアが上昇傾向にないのに、イベントが発生しているユーザが存在することになる。このような場合には、ギャンブル等依存症対策機関の職員等は、予測漏れが生じており、予測モデルの改善が必要であると判断することができる。また、矢印Fの行に着目すると、四角で囲まれた箇所のリスクスコアが太字で表示されていることがわかる。この場合、リスクスコアが上昇しかつ、イベントが発生しているため、ギャンブル等依存症対策機関の職員等は、予測が妥当であると判断することができる。また、矢印Gの行に着目すると、四角で囲まれた箇所において、リスクスコアが太字で表示されていない箇所があることがわかる。このように、リスクスコアが上昇しているにも関わらず、イベントが発生していないユーザが存在する場合には、ギャンブル等依存症対策機関の職員等は、当該ユーザが今後において特に注意すべきユーザであると判断することができる。また、ギャンブル等依存症対策機関の職員等は、対象となるユーザへの対応の漏れが生じており、イベント発生の基準値などの業務プロセスの改善が必要であると判断することができる。
【0079】
このように、本実施形態では、画面に各ユーザのリスクスコアの変化やイベント発生の有無をわかりやすく表示することができる。また、画面を参照することで、予測モデルの改善の必要性を発見することが可能となる。
【0080】
ここで、本実施形態では、背景色と、文字色とが一致しないように表示制御している。これにより、リスクスコアを見やすく表示することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、四角で囲む範囲を、リスクスコアが前週と比較して上昇することが閾値以上(例えば3回以上)連続している範囲などとすることもできる。また、四角で囲む範囲を、スコアが前回と比較して上昇することが、閾値以上の割合(例えば75%以上)で発生する範囲などとすることもできる。
【0082】
なお、本実施形態では、リスクスコアの値に基づいて背景色を制御し、危険度に基づいて文字の色や太さを制御する場合について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、リスクスコアの値に基づいて背景色及び文字のいずれか一方の表示態様を変更し、危険度に基づいて背景色及び文字のいずれか他方の表示態様を変更するようにすればよい。なお、文字の表示態様を変更する場合、文字のサイズを変更するようにしてもよい。
【0083】
なお、本実施形態においは、出力部55は、図26に示すように、リスクスコアの範囲に基づいて背景色を異ならせるとともに、イベントが発生した週及びそれ以降の週のリスクスコアの文字の表示態様を異ならせる(例えば太字にする)のみでもよい。このようにしても、予測と実績の乖離があることや、乖離がある期間を発見しやすくすることができる。これにより、ギャンブル等依存症対策機関の職員等は、予測モデルの改善の必要性が判断しやすくなる。また、ギャンブル等依存症対策機関の職員等は、高額所得者など、頻繁かつ高額のプレイを行うものの依存症には該当しないような例外のユーザを発見しやすくすることができる。
【0084】
なお、出力部55は、図25図26に示す画面を表示した後、画面上でユーザ(ユーザID)が選択された場合に、図21に示すようなユーザの詳細画面を表示するようにしてもよい。
【0085】
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、出力部55は、予測モデル適用部54が算出したリスクスコアを取得するとともに、説明変数のzスコアと重要度テーブル62に記憶された重要度とに基づいて寄与度を算出する。そして、出力部55は、詳細画面(図21図22)において、説明変数を寄与度の大きい方から順に表示する。これにより、各ユーザのリスクスコアの値の大きさに影響を与えている説明変数をわかりやすく表示することができる。
【0086】
また、本実施形態によると、出力部55は、詳細画面(図21図22)において、リスクスコアを表示するとともに、リスクスコアの時系列に沿った推移も表示する。これにより、ユーザのリスクスコアの値や、リスクスコアの変遷をわかりやすく表示することができる。
【0087】
また、本実施形態では、出力部55は、リスクスコアや寄与度に基づいて、ギャンブル等への依存に関する対応策を作成し、表示する。これにより、リスクスコアや寄与度に基づく適切な対応策を自動的に作成し、表示することができる。
【0088】
また、本実施形態の出力部55は、説明変数の種別(人の意志により制御可能な説明変数か否か)に基づいて、対応策を作成するか否かを判断する(S154)。これにより、対応策を作成する必要のある説明変数を適切に選択することができる。
【0089】
また、本実施形態では、出力部55は、図25図26の画面を表示する際に、リスクスコアに応じてリスクスコアを表示する領域の背景色を制御する。また、出力部55は、リスクスコアとイベント発生有無とに基づいて定まる危険度に応じて、リスクスコアの文字の色や太さを制御する。これにより、リスクスコアの大小と、危険度の大小との関係をわかりやすく表示することができる。この場合、ギャンブル等依存症対策機関の職員等は、リスクスコアの大小と、危険度の大小との関係に基づいて、予測モデルの改善の必要性を判断したり、注目すべきユーザを特定したりすることができる。
【0090】
なお、上記実施形態では、サーバ80がICT基盤として機能し、上述した処理を実行する場合について説明したが、これに限られるものではない。ギャンブル等依存症対策機関が管理するサーバ30や、公共機関が管理するサーバ10など、その他のサーバや機器がICT基盤として機能し、上述した処理を実行することとしてもよい。
【0091】
なお、上記実施形態では、サーバ80の出力部55以外の機能(図3参照)を情報処理システム100に含まれるサーバ80以外の装置が有していてもよい。更に、上記実施形態において出力部55が有していた機能の一部(例えば図15のステップS120の処理を実行する機能)を情報処理システム100に含まれるサーバ80以外の装置が有していてもよい。
【0092】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0093】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0094】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0095】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【0096】
なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1) ある人物について検出された複数の項目それぞれに対応する行動に関する情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記行動に関する情報及び記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報に基づいて、前記ある人物のある対象に対する依存度に関する値と、前記ある対象に対する依存度を判定するための前記複数の項目それぞれが前記値の大きさに寄与している度合を示す寄与度とを算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する表示制御部と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
(付記2) 前記表示制御部は、前記値及び/又は前記値の時系列に沿った推移の情報も表示することを特徴とする付記1に記載の情報処理システム。
(付記3) 前記表示制御部は、さらに前記値及び前記寄与度に基づいて、前記ある対象に対する依存に関する対応策を決定し、表示することを特徴とする付記1又は2に記載の情報処理システム。
(付記4) 前記表示制御部は、さらに指定を受け付けたある項目に対する対応策を決定し表示することを特徴とする付記1又は2に記載の情報処理プログラム。
(付記5) 前記表示制御部は、前記複数の項目それぞれに対応付けられた種別の情報に応じて、前記複数の項目のうち、対応策を表示する項目を決定することを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の情報処理プログラム。
(付記6) ある人物について検出された複数の項目それぞれに対応する行動に関する情報を取得し、
取得した前記行動に関する情報及び記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報に基づいて、前記ある人物のある対象に対する依存度に関する値と、前記ある対象に対する依存度を判定するための前記複数の項目それぞれが前記値の大きさに寄与している度合を示す寄与度とを算出し、
算出した前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
(付記7) ある人物について検出された複数の項目それぞれに対応する行動に関する情報及び記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報に基づいて算出された前記ある人物のある対象に対する依存度に関する値と、前記ある対象に対する依存度を判定するための前記複数の項目それぞれが前記値の大きさに寄与している度合を示す寄与度とを取得し、
取得した前記寄与度の値の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
(付記8) 前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理は、前記値及び/又は前記値の時系列に沿った推移の情報も表示することを特徴とする付記7に記載の情報処理プログラム。
(付記9) 前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理は、さらに前記値及び前記寄与度に基づいて、前記ある対象に対する依存に関する対応策を決定し、表示することを特徴とする付記7又は8に記載の情報処理プログラム。
(付記10) 前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理は、さらに指定を受け付けたある項目に対する対応策を決定し表示することを特徴とする付記7又は8に記載の情報処理プログラム。
(付記11) 前記寄与度の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する処理は、前記複数の項目それぞれに対応付けられた種別の情報に応じて、前記複数の項目のうち、対応策を表示する項目を決定することを特徴とする付記7乃至10のいずれかに記載の情報処理プログラム。
(付記12) ある人物について検出された複数の項目それぞれに対応する行動に関する情報及び記憶部に記憶された前記複数の項目それぞれの重み情報に基づいて算出された前記ある人物のある対象に対する依存度に関する値と、前記ある対象に対する依存度を判定するための前記複数の項目それぞれが前記値の大きさに寄与している度合を示す寄与度とを取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記寄与度の値の大きさに応じた順序で前記複数の項目に含まれる一部または全部の項目を表示する表示制御部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0097】
55 出力部(取得部、算出部、表示制御部)
80 サーバ(情報処理装置)
100 情報処理システム
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