(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】制御装置、光走査装置、表示装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0683 20060101AFI20230112BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H01S5/0683
G02B26/10 C
(21)【出願番号】P 2018094039
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-04-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】早川 悦司
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊樹
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-253065(JP,A)
【文献】特開2018-037531(JP,A)
【文献】特開2008-243876(JP,A)
【文献】特開2010-161152(JP,A)
【文献】特開2012-108397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0154882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置で使用される制御装置であって、
レーザ素子と、
前記レーザ素子の温度を検出する温度センサと、
前記レーザ素子を駆動するレーザドライバと、
前記レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するように、前記レーザドライバが前記レーザ素子に流す駆動電流を制御するレーザ制御部とを備え、
前記レーザ制御部は、初期の光出力値を前記レーザ素子から出力させる初期駆動電流値の温度特性データと、前記温度センサにより検出される前記レーザ素子の検出温度とに基づいて、
前記目標光出力値を前記レーザ素子から出力させる駆動電流値よりも低い値に、前記初期駆動電流値を決定し、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させるものであり、
前記レーザ制御部は、前記レーザ素子が発振を開始する閾値電流値の温度特性に基づいて決定した初期閾値電流値と、前記閾値電流値に加える発光電流値の温度特性に基づいて決定した初期発光電流値との和を演算することによって、前記初期駆動電流値を決定する、制御装置。
【請求項2】
前記レーザ制御部は、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させた後、光センサの出力をモニタして得られる前記レーザ素子の光出力モニタ値と、前記目標光出力値との差が小さくなるように、前記駆動電流を制御する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記レーザ制御部は、前記差が所定の範囲内に収束した場合、前記表示装置により表示される映像の輝度が一定になるように、前記表示装置の周囲の外光を検出する受光素子の出力に基づいて、前記駆動電流を制御する、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記レーザ制御部は、前記温度特性データと前記検出温度とに基づいて、前記レーザ素子が発振を開始する閾値電流値以上の値に、前記初期駆動電流値を決定する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
表示装置で使用される制御装置であって、
レーザ素子と、
前記レーザ素子の温度を検出する温度センサと、
前記レーザ素子を駆動するレーザドライバと、
前記レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するように、前記レーザドライバが前記レーザ素子に流す駆動電流を制御するレーザ制御部とを備え、
前記レーザ制御部は、初期の光出力値を前記レーザ素子から出力させる初期駆動電流値の温度特性データと、前記温度センサにより検出される前記レーザ素子の検出温度とに基づいて、前記初期駆動電流値を決定し、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させるものであり、
前記レーザ制御部は、前記レーザ素子の積算発光時間と前記レーザ素子の積算光出力との少なくとも一方に応じて、前記初期駆動電流値を補正する、制御装置。
【請求項6】
前記レーザ制御部は、前記積算発光時間と前記積算光出力との少なくとも一方が所定の閾値を超えた場合、前記初期駆動電流値を補正する、請求項
5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記レーザ制御部は、前記積算発光時間と前記積算光出力との少なくとも一方に応じて、前記温度特性データを補正する、請求項
5又は6に記載の制御装置。
【請求項8】
表示装置で使用される制御装置であって、
レーザ素子と、
前記レーザ素子の温度を検出する温度センサと、
前記レーザ素子を駆動するレーザドライバと、
前記レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するように、前記レーザドライバが前記レーザ素子に流す駆動電流を制御するレーザ制御部とを備え、
前記レーザ制御部は、初期の光出力値を前記レーザ素子から出力させる初期駆動電流値の温度特性データと、前記温度センサにより検出される前記レーザ素子の検出温度とに基づいて、前記初期駆動電流値を決定し、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させるものであり、
前記レーザ制御部は、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させたとき、光センサの出力をモニタして得られる前記レーザ素子の光出力モニタ値と、前記目標光出力値との差が所定値よりも大きく演算された場合、前記温度特性データを補正する、制御装置。
【請求項9】
前記温度特性データを予め保持するメモリを備え、
前記レーザ制御部は、前記メモリから前記温度特性データを読み出して、前記初期駆動電流値を決定する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記レーザ制御部は、前記メモリに保持される前記温度特性データを補正後の前記温度特性データに更新し、更新後の前記温度特性データを用いて次回以降の前記初期駆動電流値を決定する、請求項
9に記載の制御装置。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記レーザ素子から出力されるレーザ光を走査する光走査部とを備える、光走査装置。
【請求項12】
請求項
11に記載の光走査装置と、
前記光走査部により走査される前記レーザ光から映像を映し出す光学系とを備える、表示装置。
【請求項13】
レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するように、前記レーザ素子に流す駆動電流を制御する制御方法であって、
初期の光出力値を前記レーザ素子から出力させる初期駆動電流値の温度特性データと、検出される前記レーザ素子の検出温度とに基づいて、
前記目標光出力値を前記レーザ素子から出力させる駆動電流値よりも低い値に、前記初期駆動電流値を決定し、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させる、制御方法であり、
前記レーザ素子が発振を開始する閾値電流値の温度特性に基づいて決定した初期閾値電流値と、前記閾値電流値に加える発光電流値の温度特性に基づいて決定した初期発光電流値との和を演算することによって、前記初期駆動電流値を決定する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、光走査装置、表示装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ素子を光源とする表示装置において、レーザ素子から出力される光を受光素子でモニタし、レーザ素子の光出力が所定の出力になるように、レーザ素子に流す電流を制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザダイオード(LD)等のレーザ素子を光源とする表示装置において、レーザ素子の光出力を補正する場合、まず、レーザ素子を発振させてレーザ素子から光を出力させる必要がある。しかしながら、レーザ素子は、発振を開始する電流値(閾値電流値)や注入電流に対する光出力の傾き(発光効率)が温度によって変化する温度特性を有する(
図1参照)。
【0005】
そのため、予め決められた一定の初期駆動電流値でレーザ素子を駆動し始めると、レーザ素子の光出力が温度の違いによって変わることになる(
図1の矢印参照)。このように、固定の初期駆動電流値でレーザ素子の駆動を開始する場合、その固定の初期駆動電流値は、或る温度では、所望の光出力値を出力させる最適な電流値になるものの、その温度から離れた温度では、その最適な電流値との差が大きくなる。
【0006】
例えば
図2に示す場合、40℃では、125mA固定の初期駆動電流値は、所望の光出力値60mWを出力させる最適電流値に近いが、40℃から離れた温度においては、その初期駆動電流値とその最適電流値との差が大きくなる。
【0007】
初期駆動電流値と最適電流値との差が大きいことは、初期駆動電流値で駆動を開始した直後にレーザ素子から出力される初期の光出力値と、レーザ素子の光出力値が収束すべき目標光出力値との差が、レーザ素子の駆動開始時から比較的大きいことを意味する。したがって、目標光出力値との差が比較的大きな初期の光出力値をレーザ素子から出力させる初期駆動電流値から、レーザ素子に流す駆動電流を開始させる(立ち上げる)と、レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するまでに時間がかかってしまう。
【0008】
そこで、本開示の技術は、レーザ素子の温度が変わっても、レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するまでの時間を短縮できる、制御装置、光走査装置、表示装置及び制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の技術は、
表示装置で使用される制御装置であって、
レーザ素子と、
前記レーザ素子の温度を検出する温度センサと、
前記レーザ素子を駆動するレーザドライバと、
前記レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するように、前記レーザドライバが前記レーザ素子に流す駆動電流を制御するレーザ制御部とを備え、
前記レーザ制御部は、初期の光出力値を前記レーザ素子から出力させる初期駆動電流値の温度特性データと、前記温度センサにより検出される前記レーザ素子の検出温度とに基づいて、前記目標光出力値を前記レーザ素子から出力させる駆動電流値よりも低い値に、前記初期駆動電流値を決定し、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させるものであり、
前記レーザ制御部は、前記レーザ素子が発振を開始する閾値電流値の温度特性に基づいて決定した初期閾値電流値と、前記閾値電流値に加える発光電流値の温度特性に基づいて決定した初期発光電流値との和を演算することによって、前記初期駆動電流値を決定する、制御装置を提供する。
【0010】
また、本開示の技術は、
当該制御装置と、前記レーザ素子から出力されるレーザ光を走査する光走査部とを備える、光走査装置を提供する。
【0011】
また、本開示の技術は、
当該光走査装置と、前記光走査部により走査される前記レーザ光から映像を映し出す光学系とを備える、表示装置を提供する。
【0012】
また、本開示の技術は、
レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するように、前記レーザ素子に流す駆動電流を制御する制御方法であって、
初期の光出力値を前記レーザ素子から出力させる初期駆動電流値の温度特性データと、検出される前記レーザ素子の検出温度とに基づいて、前記目標光出力値を前記レーザ素子から出力させる駆動電流値よりも低い値に、前記初期駆動電流値を決定し、前記駆動電流を前記初期駆動電流値から開始させる、制御方法であり、
前記レーザ素子が発振を開始する閾値電流値の温度特性に基づいて決定した初期閾値電流値と、前記閾値電流値に加える発光電流値の温度特性に基づいて決定した初期発光電流値との和を演算することによって、前記初期駆動電流値を決定する、制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本開示の技術によれば、レーザ素子の温度に応じて適切な初期駆動電流値に変更でき、そのような適切な初期駆動電流値から前記レーザ素子に流す駆動電流を立ち上げできるようになるので、レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するまでの時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】レーザ素子に流す電流に対するレーザ素子の光出力特性の一例を示す図である。
【
図2】固定の初期駆動電流値と、所望の光出力値をレーザ素子から出力させる最適電流値との関係を
図1の特性から導出した図である。
【
図3】本開示に係る表示装置の構成例を示す図である。
【
図4】本開示に係る制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】レーザ素子が発振を開始する閾値電流値の温度特性の一例を示す図である。
【
図6】閾値電流値に加える発光電流値の温度特性の一例を示す図である。
【
図7】初期の光出力値をレーザ素子から出力させる初期駆動電流値と、目標光出力値をレーザ素子から出力させる最適駆動電流値との関係の一例を示す図である。
【
図8】レーザ素子の閾値電流値が積算発光時間によって変化する特性の一例を示す図である。
【
図9】レーザ素子の発光効率が積算発光時間によって変化する特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0016】
図3は、本実施の形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
図3に示す表示装置100は、外部から入力される映像信号に応じた映像を表示させる装置である。表示装置100の具体例として、使用者の眼の網膜に映像を直接投影するヘッドマウントディスプレイ、スクリーン等の表示面に映像を表示させるレーザプロジェクタ、車載用のヘッドアップディスプレイなどが挙げられる。
【0017】
本実施の形態に係る表示装置100は、例えば、光走査装置1と、光学系500とを備える。光走査装置1は、制御装置20から出力されるレーザ光を光走査部15により走査して光学系500に出射する。
【0018】
光学系500は、光走査部15により走査されて到来するレーザ光から映像を映し出すデバイスである。光学系500は、例えば、レンズ及びハーフミラーを備える光学部であるが、レンズ及びハーフミラー以外の光学部品等を備えていてもよい。
【0019】
本実施の形態に係る光走査装置1は、例えば、受光素子17、光走査部15及び制御装置20を備えている。
【0020】
受光素子17は、表示装置100の周囲の外光を検出する光センサであり、その外光の明るさに応じた電流を出力する。受光素子17として、例えば、フォトダイオード等を用いることができる。
【0021】
光走査部15は、入射するレーザ光を2次元に走査し、走査されたレーザ光は光学系500を介して表示面に直接投影され2次元の映像が形成される。光走査部15は、ミラーを揺動させて制御装置20のレーザ素子から出力されるレーザ光を走査する。
【0022】
光走査部15は、例えば、直交する2軸に対して揺動する1つのミラーを備えている。光走査部15は、例えば、半導体プロセス等で作製されたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とすることができる。光走査部15のミラーは、例えば、圧電素子の変形力を駆動力とするアクチュエータにより駆動することができる。
【0023】
本実施の形態に係る制御装置20は、例えば、レーザモジュール21、バッファ回路31~33、ADC(Analog to Digital Converter)29、主制御部23、バッファ回路24、ミラー駆動回路25、レーザドライバ26、レーザ制御部27及びメモリ34を備える。
【0024】
レーザモジュール21は、レーザ211R、211G及び211B等の複数のレーザ素子と、複数のレーザ素子の夫々の直近の出力光をモニタする光センサ215と、複数のレーザ素子の夫々の温度(周囲温度でもよい)をモニタする温度センサ216とを備える。
【0025】
レーザ211R、211G及び211Bは、夫々、注入される電流の電流値に応じた光出力のレーザ光を出射する。レーザ211Rは、例えば、赤色半導体レーザであり、波長λR(例えば、640nm)の光を出射することができる。レーザ211Gは、例えば、緑色半導体レーザであり、波長λG(例えば、530nm)の光を出射することができる。レーザ211Bは、例えば、青色半導体レーザであり、波長λB(例えば、445nm)の光を出射することができる。レーザ211R、211G及び211Bから出射された各波長のレーザ光は、ダイクロイックミラー等により合成され、光走査部15に入射する。
【0026】
光センサ215は、レーザ211R、211G及び211Bの夫々の直近の光をモニタする素子である。光センサ215は、レーザ211R、211G及び211Bの夫々の光出力を検出し、検出された光出力の大きさに応じた電流を出力する。光センサ215としては、例えば、フォトダイオード等の受光素子を用いることができる。光センサ215は、光走査部15に入射する前のレーザ光を検出できる任意の位置に配置することができる。
【0027】
なお、レーザモジュール21と光走査部15との間に減光手段である減光フィルタが存在する場合、レーザ211R、211G及び211Bから出射された各波長のレーザ光は、ダイクロイックミラー等により合成され、減光フィルタに入射する。光センサ215は、減光フィルタを透過前のレーザ光を検出できる任意の位置に配置することができる。
【0028】
温度センサ216は、レーザ211R、211G及び211Bの夫々の温度をモニタする素子である。温度センサ216は、レーザ211R、211G及び211Bの夫々の温度を検出し、検出された温度の大きさに応じた電流を出力する。温度センサ216としては、例えば、サーミスタ等の可変抵抗素子を用いることができる。温度センサ216は、レーザ211R、211G及び211Bの夫々に対して設けられる複数の温度センス素子を含むものでもよいし、レーザ211R、211G及び211Bに共通の一つの温度センス素子を含むものでもよい。
【0029】
バッファ回路31は、光センサ215から出力される電流を電圧に変換してADC29に出力する。バッファ回路32は、温度センサ216から出力される電流を電圧に変換してADC29に出力する。バッファ回路33は、受光素子17から出力される電流を電圧に変換してADC29に出力する。
【0030】
ADC29は、バッファ回路31~33の夫々から出力されるアナログ電圧をデジタル値に変換してレーザ制御部27に出力するADコンバータである。
【0031】
主制御部23は、例えば、光走査部15のミラー(図示せず)の振れ角制御を行うことができる。主制御部23は、例えば、光走査部15に設けられている水平変位センサ(図示せず)及び垂直変位センサ(図示せず)で得られるミラーの水平方向及び垂直方向の傾きをバッファ回路24を介してモニタし、ミラー駆動回路25に角度制御信号を供給できる。ミラー駆動回路25は、主制御部23からの角度制御信号に基づいて、光走査部15のミラーを所定角度に駆動(走査)できる。
【0032】
また、主制御部23は、例えば、制御装置20の外部から入力されるデジタルの映像信号に応じた駆動信号をレーザドライバ26に供給できる。主制御部23は、入力される映像信号に含まれる同期信号と、輝度信号及び色度信号とを分離する処理を行う。主制御部23は、輝度信号及び色度信号をレーザドライバ26へ供給する。光走査部15のミラーを揺動させる角度制御信号は、同期信号を使用して主制御部23により生成される。なお、制御装置20の外部とは、例えば、パーソナルコンピュータやカメラモジュール等である。
【0033】
レーザドライバ26は、主制御部23からの輝度信号及び色度信号に基づいて、レーザモジュール21のレーザ211R、211G及び211Bに所定の電流を供給する回路である。これにより、レーザ211R、211G及び211Bが映像信号に応じて変調された赤色、緑色及び青色の光を発し、これらを合成することで、制御装置20の外部から入力されるデジタルの映像信号に対応したカラーの映像を形成することができる。
【0034】
レーザドライバ26は、複数のレーザ素子の個数に対応する個数の電流源回路(本実施形態では、3つの電流源回路260R、260G及び260B)を備え、各レーザ素子に駆動電流を流して各レーザ素子を駆動する。電流源回路260Rは、レーザ211Rに流す駆動電流を電流値調整可能に供給し、電流源回路260Gは、レーザ211Gに流す駆動電流を電流値調整可能に供給し、電流源回路260Bは、レーザ211Bに流す駆動電流を電流値調整可能に供給する。
【0035】
電流源回路260R、260G及び260Bは、夫々、少なくとも2つの電流源261,262を有することが好ましい。レーザ211Rに流す駆動電流I1は、電流源回路260Rの第1の電流源261により生成される第1の駆動電流I11と、電流源回路260Rの第2の電流源262により生成される第2の駆動電流I12との和により生成される。レーザ211Gに流す駆動電流I2及びレーザ211Bに流す駆動電流I3についても同様である。
【0036】
レーザ制御部27には、受光素子17の出力(外光の明るさの検出値)が、伝送ケーブル等を介して入力される。レーザ制御部27は、受光素子17の出力に基づいて、レーザ211R、211G及び211Bの夫々の電流値を増減する等によって、使用者が視認する映像の輝度を制御する。
【0037】
具体的には、レーザ制御部27は、表示装置100の周囲の外光の明るさを受光素子17の出力によりモニタし、モニタされた外光の明るさに基づきレーザドライバ26に電流制御信号を供給し、レーザ211R、211G及び211Bの夫々の電流値を増減させる。
【0038】
また、レーザ制御部27は、例えば、レーザ211R、211G及び211Bの根元の光出力を光センサ215の出力によりモニタし、レーザドライバ26に電流制御信号を供給できる。レーザ211R、211G及び211Bは、レーザ制御部27からの電流制御信号に基づいて、夫々の光出力が所定の光出力値になるように電流制御される。例えば、所定の光出力値は、受光素子17の出力に基づいて決定された目標値であり、決定された目標値からずれた分が、光センサ215の出力に基づいてフィードバック制御される。
【0039】
なお、光センサ215は、レーザ211R、211G及び211Bの出射光を独立に検出する3つのセンサを含む構成とすることができる。或いは、光センサ215は、1つのセンサのみから構成してもよい。この場合には、レーザ211R、211G及び211Bを順次発光させて、1つのセンサで順次検出することで、レーザ211R、211G及び211Bの出射光の制御が可能となる。
【0040】
レーザモジュール21から出力されたレーザ光は、光走査部15のミラーに照射され走査される。光走査部15のミラーに走査されたレーザ光は、光学系500により表示面に直接投影されて映像が形成され、使用者は、所定の輝度の映像を視認できる。なお、レーザモジュール21から出力されたレーザ光を、直接ミラーに照射するようにしてもよいし、光ファイバを介してミラーに照射するようにしてもよいし、光学部品等を介してミラーに導光するようにしてもよい。
【0041】
なお、レーザ制御部27は、主制御部23、バッファ回路24、ミラー駆動回路25及びレーザドライバ26とも接続され、これらの初期設定(出力する電圧値の範囲の設定等)を行ってもよい。
【0042】
図4は、本開示に係る制御方法の一例を示すフローチャートである。
図4に示す制御方法は、表示装置100で使用される制御装置20のレーザ制御部27により実行される。
【0043】
ステップS10にて、制御装置20の電源がオンになると、制御装置20が起動する。
【0044】
ステップS20にて、レーザ制御部27は、制御装置20の起動直後に、レーザ211R、211G及び211Bの温度を温度センサ216によりモニタし、その温度モニタ値を取得する。つまり、レーザ制御部27は、レーザ211R、211G及び211Bの駆動を開始する前に温度センサ216により検出されるレーザ211R、211G及び211Bの温度のモニタ値を取得する。
【0045】
ステップS30にて、レーザ制御部27は、初期の光出力値をレーザ211Rから出力させる初期駆動電流値を、温度センサ216によりステップS20にて検出されるレーザ211Rの温度に応じて決定する。同様に、レーザ制御部27は、初期の光出力値をレーザ211Gから出力させる初期駆動電流値を、温度センサ216によりステップS20にて検出されるレーザ211Gの温度に応じて決定する。同様に、レーザ制御部27は、初期の光出力値をレーザ211Bから出力させる初期駆動電流値を、温度センサ216によりステップS20にて検出されるレーザ211Bの温度に応じて決定する。
【0046】
例えば、レーザ制御部27は、初期の光出力値をレーザ素子から出力させる初期駆動電流値Ioの温度特性データDcと、温度センサ216により検出される当該レーザ素子の検出温度とに基づいて、初期駆動電流値Ioを決定する。レーザ制御部27は、初期の光出力値をレーザ素子から出力させる初期駆動電流値Ioの温度特性データDcに基づいて、ステップS20にて取得される温度モニタ値に対応する電流を、初期駆動電流値Ioとして決定できる。
【0047】
初期駆動電流値Ioの温度特性データDcとは、例えば
図7の一点鎖線に示すような、レーザ素子の温度Tと初期駆動電流値Ioとの関係則を定めるデータである。このような温度特性データDcは、例えば、読み出し可能に予めメモリ34に保持されている。
【0048】
メモリ34は、書き換え可能なメモリであることが好ましい。各レーザ素子の光出力特性が経年劣化等により変化しても、メモリ34に保持される温度特性データDcが更新されることで、初期の光出力値を各レーザ素子から出力させる初期駆動電流値Ioを正確に決定可能となる。
【0049】
メモリ34に予め保持される温度特性データDcは、レーザ素子の各温度に対応付けされた初期駆動電流値Ioを定義するマップデータ(テーブルデータ)でもよいし、レーザ素子の温度Tから初期駆動電流値Ioを算出する演算式の係数データでもよい。
【0050】
例えば、レーザ素子の温度Tから初期駆動電流値Ioを算出する演算式が、
図7の一点鎖線に示すような「Io=a×T+b」で表される一次関数である場合、温度補正係数a,bのデータがメモリ34に予め保持される。レーザ制御部27は、温度補正係数a,bのデータをメモリ34から読み出し、ステップS20にて取得される温度モニタ値を上記の一次関数の温度Tに代入することによって、当該温度モニタ値に対応する初期駆動電流値Ioを算出できる。なお、当該演算式は、次数が2以上の多項式で表される多項式関数でも、それ以外の関数でもよい。
【0051】
このように、レーザ制御部27は、検出される各レーザ素子の温度と、各レーザ素子への注入電流に対する光出力特性と、当該光出力特性の温度依存性とに基づいて、初期の光出力値を各レーザ素子から出力させる初期駆動電流値Ioを夫々計算する。そして、レーザ制御部27は、レーザ素子の光出力値が目標光出力値Ptに収束するように、レーザドライバ26がレーザ素子に流す駆動電流を制御する。したがって、レーザ素子の温度に応じて適切な初期駆動電流値Ioに変更でき、そのような適切な初期駆動電流値Ioからレーザ素子に流す駆動電流を立ち上げできるようになるので、レーザ素子の光出力値が目標光出力値Ptに収束するまでの時間を短縮できる。
【0052】
ステップS30にて、レーザ制御部27は、温度特性データDcと直前のステップS20で得られる検出温度とに基づいて、目標光出力値Ptをレーザ素子から出力させる駆動電流値Itよりも低い値に、初期駆動電流値Ioを決定することが好ましい。例えば
図7に示す実線は、目標光出力値Ptが60mWの場合において、目標光出力値Ptをレーザ素子から出力させる駆動電流値Itの温度特性データを表す。つまり、当該実線は、目標光出力値Ptをレーザ素子から出力させるために必要な駆動電流値It(最適電流値)が、レーザ素子の温度Tによって変化する温度特性を持つということを表す。
【0053】
図7は、レーザ制御部27が、温度特性データDcと直前のステップS20で得られる検出温度とに基づいて、目標光出力値Ptをレーザ素子から出力させる駆動電流値It(実線)よりも低い値に、初期駆動電流値Io(一点鎖線)を決定することを示している。これにより、レーザ素子の駆動を開始させるときの初期駆動電流値Ioが、レーザ素子の光出力が収束すべき目標光出力値Ptを駆動開始時からいきなり超えてしまうことを防ぎ、過度なストレスをレーザ素子に与えることを抑制することができる。
【0054】
なお、許容範囲内である限り、場合によっては、レーザ制御部27は、温度特性データDcと直前のステップS20で得られる検出温度とに基づいて、目標光出力値Ptをレーザ素子から出力させる駆動電流値It以上の値に、初期駆動電流値Ioを決定してもよい。レーザ制御部27は、レーザ素子の光出力値が目標光出力値Ptに収束するように、レーザドライバ26がレーザ素子に流す駆動電流を制御し、その駆動電流値はすぐに低下し始めるからである。
【0055】
ステップS30にて、レーザ制御部27は、温度特性データDcと直前のステップS20で得られる検出温度とに基づいて、レーザ素子が発振を開始する閾値電流値Ith以上の値に、初期駆動電流値Ioを決定することが好ましい。これにより、レーザ制御部27が閾値電流値Ith未満の値に初期駆動電流値Ioを決定する場合に比べて、目標光出力値Ptをレーザ素子から出力させる駆動電流値Itに近い電流値からレーザ素子を立ち上げ可能となる。その結果、レーザ素子の光出力値が目標光出力値に収束するまでに時間を短縮することができる。
【0056】
また、初期駆動電流値Ioは、レーザ素子が発振し始める閾値電流値Ithの初期値(初期閾値電流値Ioa)と、閾値電流値Ithに加える発光電流値の初期値(初期発光電流値Iob)とに分けることで、映像の明るさ階調を設定するのに都合が良い。レーザ制御部27は、初期閾値電流値と初期発光電流値とを独立に制御可能となるからである。発光電流値は、レーザ素子に流す駆動電流値を、閾値電流値Ithよりも大きくする電流値(発振電流値)である。
【0057】
例えば、レーザ制御部27は、レーザ素子が発振を開始する閾値電流値Ithの温度特性に基づいて決定した初期閾値電流値Ioaと、閾値電流値Ithに加える発光電流値Ibの温度特性に基づいて決定した初期発光電流値Iobとの和を演算する。レーザ制御部27は、この和の演算値を初期駆動電流値Ioとして決定できる。例えば、初期閾値電流値Ioaは、第1の電流源261により生成される第1の駆動電流により調整され、初期発光電流値Iobは、第2の電流源262により生成される第2の駆動電流により調整される。第1の駆動電流と第2の駆動電流との和が、レーザ素子に流す駆動電流となる。
【0058】
図5は、レーザ素子が発振を開始する閾値電流値Ithの温度特性の一例を示す図である。
図5の一点鎖線は、初期の光出力値Poaをレーザ素子から出力させる初期閾値電流値Ioaの温度特性データDcaの一例を表す。
図6は、閾値電流値Ithに加える発光電流値Ibの温度特性の一例を示す図である。
図6の一点鎖線は、初期の光出力値Pobをレーザ素子から出力させる初期発光電流値Iobの温度特性データDcbの一例を表す。
図5の実線が示す閾値電流値Ithの最適値(最適閾値電流値)と
図6の実線が示す発光電流値Ibの最適値(最適発光電流値)との和が、
図7の実線が示す駆動電流値Itに相当する。
【0059】
つまり、レーザ制御部27は、
図5の一点鎖線のような温度特性データDcaとステップS20での検出温度とに基づいて、初期閾値電流値Ioaを決定できる。また、レーザ制御部27は、
図6の一点鎖線のような温度特性データDcbとステップS20での検出温度とに基づいて、初期発光電流値Iobを決定できる。そして、レーザ制御部27は、初期閾値電流値Ioaと初期発光電流値Iobとを加算することで、初期駆動電流値Ioを決定できる。
【0060】
初期閾値電流値Ioaの温度特性データDcaとは、例えば
図5の一点鎖線に示すような、レーザ素子の温度Tと初期閾値電流値Ioaとの関係則を定めるデータである。初期発光電流値Iobの温度特性データDcbとは、例えば
図6の一点鎖線に示すような、レーザ素子の温度Tと初期発光電流値Iobとの関係則を定めるデータである。これらのような温度特性データは、例えば、読み出し可能に予めメモリ34に保持されている。
【0061】
また、各レーザ素子の光出力特性が経年劣化等により変化しても、メモリ34に保持される温度特性データDca,Dcbが更新されることで、初期閾値電流値Ioa及び初期発光電流値Iobを正確に決定可能となる。
【0062】
メモリ34に予め保持される温度特性データDcaは、レーザ素子の各温度に対応付けされた初期閾値電流値Ioaを定義するマップデータ(テーブルデータ)でもよいし、レーザ素子の温度Tから初期閾値電流値Ioaを算出する演算式の係数データでもよい。温度特性データDcbについても同様である。
【0063】
例えば、レーザ素子の温度Tから初期閾値電流値Ioaを算出する演算式が、
図5の一点鎖線に示すような「Ioa=a1×T+b1」で表される一次関数である場合、温度補正係数a1,b1のデータがメモリ34に予め保持される。レーザ制御部27は、温度補正係数a1,b1のデータをメモリ34から読み出し、ステップS20にて取得される温度モニタ値を上記の一次関数の温度Tに代入することによって、当該温度モニタ値に対応する初期閾値電流値Ioaを算出できる。初期発光電流値Iobを算出する場合も同様に考えることができる。なお、当該演算式は、次数が2以上の多項式で表される多項式関数でも、それ以外の関数でもよい。
【0064】
このように、ステップS30にて、レーザ制御部27は、閾値電流値Ithの温度特性に基づいて決定した初期閾値電流値Ioaと、発光電流値Ibの温度特性に基づいて決定した初期発光電流値Iobとの和を演算することで、初期駆動電流値Ioを決定できる。
【0065】
ステップS40にて、レーザ制御部27は、レーザドライバ26が各レーザ素子に流す駆動電流を、ステップS30にて決定した初期駆動電流値Ioから開始させる(立ち上げさせる)。例えば、レーザ制御部27は、レーザドライバ26から各レーザ素子に流す駆動電流がステップS30にて計算された初期駆動電流値Ioから始まるように電流源261,262を制御する。レーザ制御部27は、ステップS30にて計算された初期駆動電流値Ioから各レーザ素子の駆動を開始させるようにレーザドライバ26を制御することで、各レーザ素子の発振を開始させ発光を開始させる。
【0066】
この発光は、表示装置100が表示すべき映像の表示エリアとは別の非表示エリアで行われる。レーザ制御部27は、例えば、表示エリアの枠外の上下左右の少なくともいずれかのエリアに位置する非表示エリアに、初期駆動電流値Ioを各レーザ素子にステップS40で流すことによって各レーザ素子から出力される光(参照光)を表示させる。
【0067】
ステップS50にて、レーザ制御部27は、この参照光の発光時の光を受ける光センサ215の出力をモニタし、各レーザ素子の光出力モニタ値を取得する。つまり、レーザ制御部27は、駆動電流を初期駆動電流値Ioから開始させた後、光センサ215の出力をモニタして得られる各レーザ素子の光出力モニタ値を取得する。
【0068】
ステップS60にて、レーザ制御部27は、初期駆動電流値Ioで駆動を開始した直後のステップS50にて取得した光出力モニタ値と、予め定められている目標光出力値Ptとを比較し、その両者の差分を算出する。ステップS70にて、レーザ制御部27は、その差分が小さくなるように、レーザドライバ26が各レーザ素子に流す駆動電流値を設定する。ステップS80にて、レーザ制御部27は、ステップS70で設定した駆動電流値で各レーザ素子を駆動させたときの光センサ215の出力をモニタすることで、各レーザ素子の光出力モニタ値を取得する。
【0069】
ステップS90にて、レーザ制御部27は、ステップS80にて取得した光出力モニタ値と、予め定められている目標光出力値Ptとの差分Δが所定の範囲内に収束したか否かを判定する。レーザ制御部27は、差分Δが所定の範囲内に収束していないと判定した場合、その差分Δが小さくなるように、駆動電流値を再設定する(ステップS70)。そして、レーザ制御部27は、ステップS70で設定した駆動電流値で各レーザ素子を駆動させたときの光出力モニタ値を取得し(ステップS80)、ステップS90の判定処理を行う。
【0070】
つまり、レーザ制御部27は、レーザ素子の駆動電流を初期駆動電流値Ioから開始させた後、光センサ215の出力をモニタして得られるレーザ素子の光出力モニタ値と、目標光出力値Ptとの差が小さくなるように、レーザ素子の駆動電流を制御する。そして、レーザ制御部27は、当該差が所定の範囲内に収束するまで、ステップS70~S90の処理を繰り返す。レーザ制御部27は、例えば、このような繰り返し処理をPI制御又はPID制御により実行する(P:Proportional、I:Integral、D:Differential)。
【0071】
ステップS90にて、レーザ制御部27は、ステップS80にて取得した光出力モニタ値と、予め定められている目標光出力値Ptとの差分Δが所定の範囲内に収束したと判定した場合、ステップS100の処理を実行する。
【0072】
ステップS100にて、レーザ制御部27は、差分Δが所定の範囲内に収束した場合、表示装置100により表示される映像の輝度が一定になるように、表示装置100の周囲の外光を検出する受光素子17の出力に基づいて、レーザ素子の駆動電流を制御する。これにより、表示装置100の周囲の明るさが変化しても、一定の輝度の映像を使用者に提供することができる。それに加え、表示装置100の起動後、各レーザ素子の光出力値は目標光出力値Ptに速やかに収束するので、一定の輝度の映像を使用者に速やかに提供することができる。
【0073】
ここで、ステップS30にて、レーザ制御部27は、各レーザ素子の積算発光時間Taと各レーザ素子の積算光出力Paとの少なくとも一方に応じて、初期の光出力値を各レーザ素子から出力させる初期駆動電流値Ioを夫々補正してもよい。このような補正を行うことで、各レーザ素子の光出力特性が経年劣化等により変化しても、初期の光出力値を各レーザ素子から出力させる初期駆動電流値Ioを正確に決定可能となる。
【0074】
レーザ素子の経時変化には、大きく2種類あり、発振するまでの閾値電流値Ithが積算発光時間Taが大きくなるほど増加する場合(
図8)と、注入電流に対する光出力の傾き(発光効率)が積算発光時間Taが大きくなるほど低下する場合(
図9)とがある。したがって、レーザ制御部27は、典型的には、各レーザ素子の積算発光時間Ta又は積算光出力Paが大きくなるほど、初期駆動電流値Ioを増加させる補正を行うことで、光出力を目標光出力値Ptに速やかに収束させることができる。
【0075】
例えば、レーザ制御部27は、各レーザ素子の発光時間をタイマにより計測して、その発光時間の積算値を積算発光時間Taとしてメモリ34に記録する。また、レーザ制御部27は、各レーザ素子の光出力を光センサ215により検出し、その光出力の積算値を積算光出力Paとしてメモリ34に記録する。そして、レーザ制御部27は、積算発光時間Taと積算光出力Paとの少なくとも一方が所定の閾値を超えた場合、初期駆動電流値Ioを補正する。これにより、初期駆動電流値Ioの補正を適切なタイミングで実施することができる。
【0076】
レーザ制御部27は、積算発光時間Taの値に応じて設定される補正係数αと、積算光出力Paの値に応じて設定される補正係数βとの少なくとも一方を、初期駆動電流値Ioに乗算することによって、初期駆動電流値Ioを補正してもよい。補正係数α,βは、例えば、非負の値である。レーザ制御部27は、補正係数α,βの設定値を変化させることで、初期駆動電流値Ioの増減を調整できる。つまり、初期駆動電流値Ioを補正できる。
【0077】
レーザ制御部27は、積算発光時間Taと積算光出力Paとの少なくとも一方に応じて、初期駆動電流値Ioの温度特性データDcを補正してもよい。例えば、レーザ制御部27は、積算発光時間Taの値に応じて設定される補正係数τaと、積算光出力Paの値に応じて設定される補正係数τbとの少なくとも一方を、上述の温度補正係数a,bに乗算することによって、温度特性データDcを補正できる。補正係数τa,τbは、例えば、非負の値である。レーザ制御部27は、補正係数τa,τbの設定値を変化させることで、温度特性データDcを補正できる。レーザ制御部27は、補正後の温度特性データDcを用いて初期駆動電流値Ioを決定することで、初期駆動電流値Ioを補正できる。レーザ制御部27は、補正後の温度特性データDcをメモリ34に記録することで、メモリ34に予め保持されていた温度特性データDcを更新できる。その結果、レーザ制御部27は、更新後の温度特性データDcを用いて次回以降の駆動開始時の初期駆動電流値Ioを決定できるので、各レーザ素子の光出力特性が経時変化等による変化しても、次回以降も継続的に正確な初期駆動電流値Ioを導出できる。
【0078】
例えば、レーザ制御部27は、映像の輝度が一定になるように受光素子17の出力に基づいてレーザ素子の駆動電流を制御する動作を行いながら、当該レーザ素子の光出力特性(光出力の温度特性も含む)のデータを継続的に取得する。レーザ制御部27は、これらの継続的に取得した光出力特性のデータに基づいて、温度特性データDcを補正する補正係数(例えば、補正係数τa,τb)を決定してもよい。
【0079】
例えば、レーザ制御部27は、駆動電流を初期駆動電流値Ioから開始させたとき、光センサ215の出力をモニタして得られるレーザ素子の光出力モニタ値と、目標光出力値Ptとの差が所定値よりも大きく演算された場合、温度特性データDcを補正してもよい。このように補正を行うことによって、レーザ素子の出力特性の経時変化により当該差が次第に大きくなっても、温度特性データDcの補正を適切なタイミングで実施することができる。
【0080】
なお、初期駆動電流値Ioを補正する上述の方法は、初期閾値電流値Ioaと初期発光電流値Iobとを夫々補正する場合にも適用可能である。また、温度特性データDcを補正する上述の方法は、初期閾値電流値Ioaの温度特性データDcaと初期発光電流値Iobの温度特性データDcbとを夫々補正する場合にも適用可能である。
【0081】
このように、本開示の技術によれば、周囲の環境温度やレーザ素子の経時変化に因らず、映像表示装置を起動した直後に速やかに光出力を安定させ、特に明るさや色を安定させることができる。
【0082】
また、映像表示エリア外で発光させる参照光を遮光できない場合もあるため、短時間で制御を行うのが好ましい。さらに、立ち上げ直後は、連続動作に比べて、特に環境の温度変化が起きやすく、レーザ素子の光出力が大きく変化する。このことからも、光出力制御は速やかに行うことが求められる。
【0083】
本開示の技術を用いることで、環境温度やレーザー変化に応じて、レーザ素子の駆動電流値を調整することが可能となる。
図2に示す固定の初期駆動電流値で駆動開始する場合に比べて、
図7に示す温度可変の初期駆動電流値Ioで駆動開始する方が、起動直後のレーザ素子の光出力が目標光出力値Ptに近くなる。そのため、その後の光出力の制御量を減らすことができ、速やかに制御が完了する。
【0084】
なお、主制御部23及びレーザ制御部27の各機能は、例えば、メモリに読み出し可能に記憶されるプログラムによってプロセッサが動作することにより、実現される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。
【0085】
以上、制御装置、光走査装置、表示装置及び制御方法を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0086】
例えば、上記の実施の形態では、本開示に係る制御装置をレーザ走査型表示装置に適用する例を示した。しかし、これは一例であり、本開示に係る制御装置は、表示装置以外の機器にも適用可能である。このような機器としては、例えば、レーザプリンタ、レーザ走査型脱毛器、レーザヘッドランプ、レーザーレーダ等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 光走査装置
20 制御装置
100 表示装置
500 光学系