(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】透析装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20230112BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61M1/16 161
A61M1/16 175
A61M1/36 121
(21)【出願番号】P 2018144223
(22)【出願日】2018-07-31
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】野里 信行
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-245970(JP,A)
【文献】特開2015-156924(JP,A)
【文献】特開2016-096957(JP,A)
【文献】特開2012-005670(JP,A)
【文献】特開昭55-016634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/16
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析用水と透析原液とを混合して透析液を作製する
2つの透析液容器と、該透析液容器に上記透析原液を供給する原液通路と、上記透析液容器に上記透析用水を供給する透析用水通路と、上記透析液容器に所定量の透析原液を供給するとともに、当該透析液容器に所定量の透析用水を供給して該透析液容器内に
所定濃度の新鮮な透析液を調製させる制御装置とを備えた透析装置において、
上記2つの透析液容器は、その内部を可動隔壁によって区画形成されることで、各透析液容器内に、上記原液通路と透析用水通路とが接続されて新鮮な透析液を収容する供給室と、使用済みの透析液を収容する回収室とを有しており、
上記原液通路を介して上記透析原液を上記供給室に供給する原液供給手段を設け、
上記制御装置は、
上記供給室から新鮮な透析液を排出するとともに上記使用済み透析液を上記回収室に流入させる透析液供給動作と、上記供給室で所定濃度の新鮮な透析液を調製するとともに上記回収室に収容されている使用済み透析液が排出される新鮮透析液調製動作と、を上記2つの透析液容器で交互に繰り返し実行するものであり、
上記制御装置に、上記透析液の調製を一時停止させる一時停止ボタンを設け、該制御装置は、
上記新鮮透析液調製動作の途中で上記一時停止ボタンが操作された際には、
当該新鮮透析液調製動作を完了させてから、透析液の調製を一時停止させることを特徴とする透析装置。
【請求項2】
上記制御装置は、血液回路のプライミングの最中に上記一時停止ボタンが操作されたら、該プライミング作業を終了し、かつ
上記一時停止ボタンが操作された時点で実行している上記新鮮透析液調製動作が完了してから、透析液の調製を一時停止させることを特徴とする請求項1に記載の透析装置。
【請求項3】
透析用水と透析原液とを混合して透析液を作製する
2つの透析液容器と、該透析液容器に上記透析原液を供給する原液通路と、上記透析液容器に上記透析用水を供給する透析用水通路と、上記透析液容器に所定量の透析原液を供給するとともに、当該透析液容器に所定量の透析用水を供給して該透析液容器内に
所定濃度の新鮮な透析液を調製させる制御装置とを備えた透析装置において、
上記2つの透析液容器は、その内部を可動隔壁によって区画形成されることで、各透析液容器内に、上記原液通路と透析用水通路とが接続されて新鮮な透析液を収容する供給室と、使用済みの透析液を収容する回収室とを有しており、
上記原液通路を介して上記透析原液を上記供給室に供給する原液供給手段を設け、
上記制御装置は、
上記供給室から新鮮な透析液を排出するとともに上記使用済み透析液を上記回収室に流入させる透析液供給動作と、上記供給室で所定濃度の新鮮な透析液を調製するとともに上記回収室に収容されている使用済み透析液が排出される新鮮透析液調製動作と、を上記2つの透析液容器で交互に繰り返し実行するものであり、
上記制御装置は、血液回路のプライミングが終了したら、
上記プライミングが終了した時点で実行している上記新鮮透析液調製動作を完了してから、透析液の調製を一時停止させることを特徴とする透析装置。
【請求項4】
上記透析液容器は、可動隔壁によって内部が供給室と可変容積室と回収室との3室に順次区画形成され
ており、
上記原液供給手段は、上記可変容積室内の容積
を増減するポンプ手段を
有し、当該ポンプ手段により可変容積室内の容積が減少されることに伴って供給室内の容積が増大されることにより、原液通路から所定量の原液が上記供給室内に導入されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の透析装置。
【請求項5】
上記原液通路は、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウムを成分に含むA原液を供給する第1通路と、炭酸水素ナトリウム水溶液からなるB原液を供給する第2通路を備えており、上記透析液容器には所定量のB原液が供給されてから所定量のA原液が供給され、さらに、これら所定量の透析原液が供給された透析液容器に所定量の透析用水が供給されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の透析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透析装置に関し、より詳しくは透析液容器において透析用水と透析原液とを混合して透析液を調製するようにしてある透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液透析治療に用いるための透析装置として、透析用水と透析原液とを混合して透析液を作製する透析液容器と、該透析液容器に上記透析原液を供給する原液通路と、上記透析液容器に上記透析用水を供給する透析用水通路と、上記透析液容器に所定量の透析原液を供給するとともに、当該透析液容器に所定量の透析用水を供給して該透析液容器内に所要濃度の透析液を調製させる制御装置とを備えたものが知られている(特許文献1)。
上記透析装置においては、透析治療を開始する前に血液回路のプライミングを行う必要があり、その際、制御装置は上記透析液容器内で所要濃度の透析液を調製しながらプライミングを行っている。そして一般に、患者の到着前までに血液回路のプライミングを終了するようにしており、これにより患者が到着し次第、患者を待たせることなく直ちに透析治療を開始することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の透析装置においては、プライミングが終了しても透析液の調製は継続して行われていた。つまり、プライミングが終了した後、透析治療が開始されるまでの間は透析液は無駄に消費されるようになっていた。したがって患者が透析開始時間に対して大幅に遅刻したような場合には、無駄に消費される透析液が大量となり、不経済となっていた。
本発明はそのような事情に鑑み、無駄に消費される透析液を可及的に低減することができる透析装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、透析用水と透析原液とを混合して透析液を作製する2つの透析液容器と、該透析液容器に上記透析原液を供給する原液通路と、上記透析液容器に上記透析用水を供給する透析用水通路と、上記透析液容器に所定量の透析原液を供給するとともに、当該透析液容器に所定量の透析用水を供給して該透析液容器内に所定濃度の新鮮な透析液を調製させる制御装置とを備えた透析装置において、
上記2つの透析液容器は、その内部を可動隔壁によって区画形成されることで、各透析液容器内に、上記原液通路と透析用水通路とが接続されて新鮮な透析液を収容する供給室と、使用済みの透析液を収容する回収室とを有しており、
上記原液通路を介して上記透析原液を上記供給室に供給する原液供給手段を設け、
上記制御装置は、
上記供給室から新鮮な透析液を排出するとともに上記使用済み透析液を上記回収室に流入させる透析液供給動作と、上記供給室で所定濃度の新鮮な透析液を調製するとともに上記回収室に収容されている使用済み透析液が排出される新鮮透析液調製動作と、を上記2つの透析液容器で交互に繰り返し実行するものであり、
上記制御装置に、上記透析液の調製を一時停止させる一時停止ボタンを設け、該制御装置は、上記新鮮透析液調製動作の途中で上記一時停止ボタンが操作された際には、当該新鮮透析液調製動作を完了させてから、透析液の調製を一時停止させることを特徴とするものである。
また請求項2の発明は、請求項1の発明において、上記制御装置は、血液回路のプライミングの最中に上記一時停止ボタンが操作されたら、該プライミング作業を終了し、かつ上記一時停止ボタンが操作された時点で実行している上記新鮮透析液調製動作が完了してから、透析液の調製を一時停止させることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、透析用水と透析原液とを混合して透析液を作製する2つの透析液容器と、該透析液容器に上記透析原液を供給する原液通路と、上記透析液容器に上記透析用水を供給する透析用水通路と、上記透析液容器に所定量の透析原液を供給するとともに、当該透析液容器に所定量の透析用水を供給して該透析液容器内に所定濃度の新鮮な透析液を調製させる制御装置とを備えた透析装置において、
上記2つの透析液容器は、その内部を可動隔壁によって区画形成されることで、各透析液容器内に、上記原液通路と透析用水通路とが接続されて新鮮な透析液を収容する供給室と、使用済みの透析液を収容する回収室とを有しており、
上記原液通路を介して上記透析原液を上記供給室に供給する原液供給手段を設け、
上記制御装置は、
上記供給室から新鮮な透析液を排出するとともに上記使用済み透析液を上記回収室に流入させる透析液供給動作と、上記供給室で所定濃度の新鮮な透析液を調製するとともに上記回収室に収容されている使用済み透析液が排出される新鮮透析液調製動作と、を上記2つの透析液容器で交互に繰り返し実行するものであり、
上記制御装置は、血液回路のプライミングが終了したら、上記プライミングが終了した時点で実行している上記新鮮透析液調製動作を完了してから、透析液の調製を一時停止させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明は、透析液の調製を一時停止させる一時停止ボタンを設けたもので、仮に患者が大幅に遅れて到着することが分かった場合には、上記一時停止ボタンを操作することによって透析液の調製を一時停止させることができるので、無駄に消費される透析液を低減することができる。
そして請求項2の発明においては、血液回路のプライミング中に上記一時停止ボタンが操作された際には、プライミング作業を終了した後で、かつ上記一時停止ボタンが操作された時点で実行している上記新鮮透析液調製動作が完了してから、透析液の調製を一時停止させるようになっているので、その後に患者が到着して透析治療を開始する際には、患者の到着後にプライミングを行うことなく、速やかに透析治療を開始することが可能となる。
さらに請求項3の発明においては、透析液の調製を一時停止させる一時停止ボタンの有無に関係なく、上記制御装置はプライミングが終了したら、上記プライミングが終了した時点で実行している上記新鮮透析液調製動作を完了してから、透析液の調製を一時停止させるようになっている。したがって透析液の無駄を低減することができるとともに、一時停止後に患者が到着して透析治療を開始する際には、速やかに透析治療を開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、
図1は血液透析装置1を示しており、血液透析を行う透析器2と、透析器2に透析液を流通させる透析液回路3と、透析器2に血液を流通させる血液回路4とを備え、制御手段Cによって制御されるようになっている。
上記透析液回路3には、第1透析液容器11と第2透析液容器12が設けられている。これら第1透析液容器11および第2透析液容器12は、それぞれ内部が2枚のダイアフラムによって、新鮮な透析液を調製する供給室11a、12aと、使用済みの透析液を回収する回収室11b、12bと、これら供給室11a、12aと回収室11b、12bとの間に形成された可変容積室11c、12cとに区画されている。
また、上記可変容積室11c、12cは、それぞれシリコンオイル等の液体を収容するようになっており、接続された容積式ポンプ13A、13Bによって収容する液体を増減させることで、容積を変動させることが可能となっている。
なお、上記新鮮な透析液を調製する透析用水としてはRO水が使用され、透析原液としては、塩化ナトリウムを主成分とし、塩化カルシウムを含むA原液と、炭酸水素ナトリウム水溶液からなるB原液があり、これらA原液とB原液と透析用水とを所定の比率で、例えば1:1.26:32.74で混合することにより透析液が調製される。
【0009】
上記透析液回路3は、上記第1、第2透析液容器11、12の供給室11a、12aに上記透析用水を供給する透析用水通路5と、当該透析用水通路5に接続されて透析用水通路5を介して上記供給室11a、12aにA原液を供給するA原液通路6と、同じく透析用水通路5に接続されて透析用水通路5を介して上記供給室11a、12aにB原液を供給するB原液通路7と、上記供給室11a、12aで調製された新鮮な透析液を透析器2に供給する透析液供給通路8と、透析器2を通過した使用済みの透析液を上記回収室11b、12bに回収する透析液回収通路9と、上記回収室11b、12bから使用済みの透析液を排液する排液通路10とを備えている。
上記血液回路4は、患者から透析器2に血液を送る動脈回路4Aと、透析器2から患者に血液を返す静脈回路4Bからなり、動脈回路4Aには血液ポンプBPが設けられている。
【0010】
上記透析用水通路5には、上記透析用水を所定の温度に加温するヒータ21と、上記透析用水を送液する給液ポンプ22とが設けられ、また透析用水通路5の下流部分は2方向に分岐して上記第1、第2透析液容器11、12の上記供給室11a、12aに接続されている。
また上記A原液通路6およびB原液通路7は上記給液ポンプ22と上記第1、第2透析液容器11、12の間の区間で上記透析用水通路5に接続されており、上記A原液通路6は上記A原液を収容したA原液容器23に接続され、上記B原液通路7は上記B原液を収容したB原液容器24に接続されている。
本実施例では、A原液通路6をB原液通路7よりも上流側に設けており、A原液通路6の接続箇所とB原液通路7の接続箇所との間には所定量の透析用水を貯溜するバッファ容器25が設けられている。
なお、A原液およびB原液の供給については、血液透析装置1を設置した治療施設が備える給液設備や供給装置から行うこともでき、またB原液については、容器に収容した粉末剤をRO水で溶解させながら供給することもできる。
そして、上記透析用水通路5における給液ポンプ22とA原液通路6の接続箇所の間には第1開閉弁V1が、上記第1、第2透析液容器11、12の供給室11a、12aへと分岐した通路には給液弁V2,V3がそれぞれ設けられており、また上記A原液通路6にはA原液供給弁V4が、上記B原液通路7にはB原液供給弁V5が設けられている。
ここで、第1開閉弁V1より下流の透析用水通路5については、透析用水、A原液、B原液を透析液容器に供給する共通通路5Aを構成しており、この共通通路5Aを介してA原液通路6およびB原液通路7から供給室11a、12aにA原液およびB原液を供給するようになっている。
【0011】
上記透析液供給通路8の上流部分は2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液容器11、12の供給室11a、12aに接続され、下流側の端部は上記透析器2に接続されている。上記分岐部分にはそれぞれ供給弁V6、V7が設けられ、また透析器2との接続部近傍には第2開閉弁V8が設けられている。
また、透析液供給通路8と上記透析液回収通路9との間にはバイパス通路26が配設されるとともに、当該バイパス通路26には第3開閉弁V9が設けられている。上記バイパス通路26は、異常と判定された透析液を透析器2を介さずに透析液供給通路8から透析液回収通路9に流通させるものとなっている。
【0012】
上記透析液回収通路9は、上流側の端部が上記透析器2に接続され、下流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液容器11、12の回収室11b、12bに接続されている。また使用済み透析液を送液するための送液ポンプ27が設けられるとともに、上記分岐部分には回収弁V10、V11が設けられている。
そして上記排液通路10は、上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液容器11、12の回収室11b、12bに接続され、下流側の端部は治療施設に敷設された排液管に接続されている。また上記分岐部分には排液弁V12、V13が設けられている。
【0013】
上記共通通路5AにおけるB原液通路7の接続箇所の下流側には、接続箇所に接近させて透析原液の電気電導度を計測する電導度計測手段としての原液用電導度センサ29が設けられ、主にB原液通路7から供給されるB原液の電気電導度を計測するようになっている。また、この原液用電導度センサ29の近傍には温度補正を行うための温度センサ28が設けられている。
さらに透析液供給通路8には、透析液の電気電導度を計測する電導度計測手段としての透析液用電導度センサ31が設けられており、透析器2に供給される新鮮な透析液の電気電導度を計測するようになっている。また、この透析液用電導度センサ31の近傍にも温度補正用の温度センサ30が設けられている。
これら電導度センサ29、31および温度センサ28、30の計測信号は制御手段Cに入力されて調製された透析液の濃度異常が判定され、異常が認められた場合には、制御手段Cは透析液供給通路8の第2開閉弁V8を閉鎖して透析器2への透析液の供給を中止するとともに、バイパス通路26の第3開閉弁V9を開放して不良透析液を透析液回収通路9に流通させるようにする。
【0014】
図2は上記血液透析装置1の斜視図を示したもので、上記配管や制御装置Cなどは血液透析装置1の筐体1A内に収納されている。上記透析器2は筐体1Aの外部側面に上下方向に向けて着脱可能に取り付けられており、上記動脈回路4Aは透析器2の上端側に、静脈回路4Bは下端側に接続されている。また上記透析液供給通路8は透析器2の側面上方に、透析液回収通路9は透析器2の側面下方に接続されている。
上記筐体1Aの正面上方にはタッチパネルディスプレイ35が設けられており、該タッチパネルディスプレイ35にはプライミング開始ボタン36と一時停止ボタン37とが表示されるようになっている。プライミング開始ボタン36は制御装置Cにプライミング開始の指令信号を付与するものであり、一時停止ボタン37は透析液を調製している制御装置Cにその実行を一時停止させる指令信号を付与するものである。なお、タッチパネルディスプレイ35には、図示しないが制御装置Cに透析治療を開始させるための透析治療開始ボタンが表示されるようになっている。
【0015】
以下、上記構成を有する血液透析装置1において、最初に透析治療中の作動を説明する。この透析治療は、上記透析装置に接続された透析器2に対するプライミングが終了しており、かつ患者に動脈回路4Aと静脈回路4Bとが接続された状態で、上記図示しない透析治療開始ボタンが操作されることによって開始される。
この透析治療中には、第1透析液容器11の供給室11aにおいて新鮮な透析液が調製され、調製された新鮮な透析液を透析器2へ供給するとともに、透析器2から使用済み透析液を第1透析液容器11の回収室11bに回収されるようになる。なお、第2透析液容器12での動作は同様であるため説明は省略する。
先ず、上記供給室11aにおいて調製された新鮮な透析液を透析器2へ供給するために、第1透析液容器11の供給室11aに接続する透析用水通路5(共通通路5A)の給液弁V2および回収室11bに接続する排液通路10の排液弁V12を閉鎖し、透析液供給通路8の供給弁V6および透析液回収通路9の回収弁V10を開放する。
この状態で、透析液回収通路9に設けた送液ポンプ27が、透析器2を流通した使用済み透析液を回収室11bに流入させる。すると回収室11bの容積が増大し、供給室11aの容積が減少するため、供給室11aからはそれまでに調製されていた新鮮な透析液が透析液供給通路8から透析器2へと供給される。
その際、透析器2を介して血液から所定量の除水を行う場合には、上記容積式ポンプ13Aを用いて可変容積室11cから液体を引き出して容積を減少させ、上記供給室11aからの新鮮な透析液の流出量よりも、回収室11bへの使用済み透析液の流入量が多くなるようにし、透析器2において差圧による除水が行われる。
そして、上記回収室11bに使用済み透析液が充満すると、上記供給室11aの容積がゼロとなり、新鮮な透析液が透析液供給通路8へと完全に排出されることとなる。
【0016】
次に、第1透析液容器11の供給室11aにおいて新鮮な透析液を調製しながら回収室11bの使用済み透析液を排液する際の動作について説明する。
まず、第1透析液容器11の供給室11aに接続する給液弁V2および回収室11bに接続する排液弁V12を開放するとともに、供給弁V6および回弁V10を閉鎖する。このときA原液通路6のA原液供給弁V4およびB原液通路7のB原液供給弁V5は閉鎖されている。
この状態で、上記透析用水通路5の第1開閉弁V1を短時間だけ開放し、給液ポンプ22によって透析用水を少量だけ供給室11aに流入させる。その後、第1開閉弁V1を閉鎖して透析用水の供給を停止する。
なお、供給室11aに透析用水を流入させる際、先の工程において血液から除水を行っていた場合には、容積式ポンプ13Aによって減少していた可変容積室11cの容積を復帰させる。
【0017】
第1開閉弁V1を閉鎖したら、上記排液通路10の排液弁V12を閉鎖するとともに、上記B原液通路7のB原液供給弁V5を開放し、上記容積式ポンプ13Aが所定量の液体を引き出して可変容積室11cの容積を減少させる。
上記回収弁10および排液弁V12が閉鎖されているため、回収室11bの容積は変動しないことから、供給室11aの容積だけが増大する。これに伴って共通通路5Aに留まっている透析用水が供給室11aに引き込まれるとともに、B原液通路7から共通通路5AにB原液が引き込まれ、これが供給室11aに流入する。
その後、供給室11aの容積の増大が停止するとB原液の流動も停止し、これにより供給室11aの容積の増大分、すなわち容積式ポンプ13Aが引き出した液体の量に見合う量のB原液が、B原液通路7から供給されたことになる。
その際、B原液通路7から共通通路5Aに流出したB原液は、温度センサ28と原液用電導度センサ29とを通過し、それらの計測信号が制御手段Cに入力される。
【0018】
次に、透析用水通路5の第1開閉弁V1を閉鎖したまま、上記B原液通路7のB原液供給弁V5を閉鎖し、さらに上記A原液通路6のA原液供給弁V4を開放したら、さらに上記容積式ポンプ13Aが所定量の液体を引き出すことで、可変容積室11cの容積を減少させる。
これに伴って、共通通路5Aに留まっているB原液が供給室11aに引き込まれるとともに、バッファ容器25に貯留されている透析用水が引き出されて、A原液通路6から共通通路5AにA原液が引き込まれ、このA原液がバッファ容器25を通過して供給室11aに流入する。
その後、供給室11aの容積の増大が停止するとA原液の流動も停止し、これにより供給室11aの容積の増大分、すなわち容積式ポンプ13Aが引き出した液体の量に見合う量のA原液が、A原液通路6から供給されたことになる。
また、A原液通路6から共通通路5Aに流出したA原液は、バッファ容器25を通過すると続いて温度センサ28と原液用電導度センサ29を通過し、それらの計測信号が制御手段Cに入力される。
上記B原液通路7の上流にバッファ容器25を設けたことにより、共通通路5Aの内部でA原液とB原液が直接接触することを防止し、結晶等の析出を防止するようになっている。
【0019】
最後に、上記A原液供給弁V4を閉鎖するとともに透析用水通路5の第1開閉弁V1を開放し、また閉鎖していた排液弁V12を開放する。これにより給液ポンプ22により供給される透析用水が共通通路5Aに流通し、留まっていたA原液が供給室11aに供給される。このような透析用水の供給は、回収室11bに収容されている使用済み透析液が全て排出されるまで続く。
その際、上記容積式ポンプ13Aは減少させていた可変容積室11cの容積をもとの容積に復帰させるようになっており、供給室11aへの透析用水の流入が停止した時点で所定量の透析用水が供給されたことになる。この透析用水の供給により、供給室11a内で透析用水とA原液、B原液が所定の比率で混合されて透析液が調製される。
その後は、上述した動作を第1、第2透析液容器11、12によって交互に繰り返すことで、新鮮な透析液を調製しながら透析器2に透析液を供給し、また透析器2から使用済み透析液を回収しながらこれを排液するようになっている。
【0020】
以上の説明は透析治療中の作動であるが、これに先立って透析治療の準備作業が行われる。例えば透析治療の開始20分前となったら、血液透析装置1の筐体1Aに透析器2を取り付け、動脈回路4A、静脈回路4B、透析液供給通路8および透析液回収通路9を透析器2に接続する。
透析治療の準備作業では透析器2内および動脈回路4A、静脈回路4B内に所定濃度の透析液が充満されるプライミングが行われるが、この作業は上記プライミング開始ボタン36が操作されることによって開始される。この作業中においても、上記透析治療中と同様に透析装置によって所定濃度の透析液が調製されるようになる。
そしてプライミングが完了して透析治療の準備作業が完了すると、上記タッチパネルディスプレイ35にその旨が表示される。この後、動脈回路4Aおよび静脈回路4Bが患者に接続され、そのことを確認した旨の信号を制御装置Cに入力すると、これにより上述した図示しない透析治療開始ボタンの操作が可能となり、該透析治療開始ボタンの操作によって透析治療が開始される。
【0021】
上記透析治療の準備作業であるプライミングが終了してから実際に透析治療が開始されるまでの間、透析装置は継続して所定濃度の透析液を調製しており、この透析液は透析治療に利用されることなく無駄に消費されている。
仮にこの間に、つまりプライミングが終了してから透析治療が開始されるまでの間に上記一時停止ボタン37が操作されると、制御装置Cは透析装置による透析液の調製を一時的に停止させて、それ以上の透析液の無駄な消費を防止するようになる。
この際、上記制御装置Cは一時停止ボタン37からの一時停止指令を入力したら直ちに透析装置による透析液の調製を停止させるのではなく、透析液容器11、12内に所定濃度の透析液が調製されたことを確認してその調製を停止させるようになる。より具体的には、上記供給室11a内で透析用水とA原液、B原液が所定の比率で混合されて所定濃度の透析液が調製されたら、その調製を停止させるようになる。
これにより上記供給室11a内で、特にA原液とB原液との濃度が高い状態で透析液の調製が停止された場合のように、炭酸カルシウムが析出してその析出物が透析液容器11、12内や各配管内、或いはバルブなどに詰まってトラブルを発生させる危険性を防止することができる。
【0022】
この一時停止状態では、プライミングが終了しているので、図示しない透析治療開始ボタンが操作されれば、速やかに透析治療を開始することが可能となる。
この際、温度センサ30は透析液の温度を検出しており、上記一時停止時間が長時間にわたり、透析液の温度が許容温度以下となっている際には、直ちに透析治療を開始するのではなく、上記第1、第2透析液容器11、12によって透析液の調製を再開させるが、ヒータ21によって透析液の温度が所定温度となるまでは該低温の透析液は透析治療に用いることなく透析器2を流通させて廃棄させる。
そして透析液の温度が所定温度となったら、容積式ポンプ13A、13Bの制御を開始して、透析治療を開始させる。
【0023】
上述の一時停止ボタン37の操作タイミングは、プライミングが完了した後の場合について述べたものであるが、プライミングが完了する前のプライミング中に一時停止ボタン37が操作される可能性もある。
この場合、第1に、プライミングが終了するまで準備作業を継続し、その後、上記透析液容器11、12内で所要濃度の透析液が調製されたら、当該準備作業を一時停止させることができる。
そしてこの場合には、プライミングが終了しているので、上述した場合と同様に図示しない透析治療開始ボタンが操作されれば速やかに透析治療を開始することができる。他方、一時停止ボタン37が操作されてもプライミングが継続されるので、この場合には操作者に一時停止ボタン37を押しても透析装置の作動が停止しないので故障したのではないかという誤解を与えないために、タッチパネルディスプレイ35に「一時停止」を受け入れた旨、並びにプライミングが完了するまで準備作業が継続される旨を表示することが望ましい。
他方、第2に、プライミングを完了させることなく、一時停止ボタン37が操作されたら、上記透析液容器11、12内で所要濃度の透析液を調製してから、直ちに該透析液の調製を一時停止させるようにしてもよい。この場合には、再びプライミング開始ボタン36を操作することによってプライミング作業が再開されることになる。
なお、プライミング作業以前の任意の段階で一時停止ボタン37が操作された際には、少なくとも上記透析液容器11、12内で所要濃度の透析液を調製してからであれば、直ちに該透析液の調製を一時停止させることができる。
【0024】
図3は第2実施例にかかる血液透析装置1の回路図を示している。なお、以下の説明を除いて、本実施例の血液透析装置1は上記第1実施例の血液透析装置と同様の構成を有しており、詳細な説明を省略するとともに各要素に対して同じ符号を用いて説明する。
本実施例の第1、第2透析液容器11、12の内部は、それぞれ1枚のダイアフラムによって供給室11a、12aと回収室11b、12bに区画されており、可変容積室は備えていない。
その代わりに、透析液回収通路9と排液通路10との間に配設された除水通路41と、透析液回収通路9から排液通路10へ使用済み透析液を流す除水ポンプ42とを備えている。
また、A原液通路6にはA原液容器23への連通を開閉するA原液開閉弁V14が設けられ、このA原液開閉弁V14とA原液供給弁V4の間には、容積式ポンプからなるA原液ポンプ43が接続されている。
同様に、B原液通路7にはB原液容器24への連通を開閉するB原液開閉弁V15が設けられ、このB原液開閉弁V15とB原液供給弁V5の間には、容積式ポンプからなるB原液ポンプ44が接続されている。
本実施例の血液透析装置1も、第1実施例の血液透析装置1と同様、第1、第2透析液容器11、12の供給室11a、12aで透析液を調製するようになっており、第1実施例と同じ順序で供給室11a、12aに透析用水、A原液およびB原液を供給するようになっている。
【0025】
本実施例において供給室11a、12aにB原液を供給するには、最初にB原液供給弁V5を閉鎖しB原液開閉弁V15を開放した状態でB原液ポンプ44を作動させて、B原液容器24から所定量のB原液を吸い出す。
次に、B原液開閉弁V15を閉鎖しB原液供給弁V5を開放してB原液ポンプ44を作動させ、吸い出したB原液を共通通路5Aに放出する。これにより所定量のB原液が供給室11a、12aに供給される。
A原液を供給する場合についても同様に、A原液供給弁V4を閉鎖しA原液開閉弁V14を開放した状態でA原液ポンプ43を作動させて、A原液容器23から所定量のA原液を吸い出し、次に、A原液開閉弁V14を閉鎖しA原液供給弁V4を開放してA原液ポンプ43を作動させ、吸い出したA原液を共通通路5Aに放出する。これにより所定量のA原液が供給室11a、12aに供給される。
【0026】
上記第1実施例と第2実施例とは、所定濃度の透析液を調製するための構成と除水のための構成とが異なっているだけで、その他の構成は実質的に同一であり、上記第2実施例の構成の透析装置においても、
図2に示す一時停止ボタン37を備えている。
これにより第2実施例においても、第1実施例と同等の作用効果を得ることができるようになっている。
【0027】
なお、上記第1、第2実施例に示す血液透析装置1は、いずれも一時停止ボタン37を設けたものであるが、一時停止ボタン37を省略することも可能である。
本第3実施例では、プライミング開始ボタン36を操作することによってプライミングが開始されるが、一時停止ボタン37が省略されているので、プライミング作業を途中で停止させることはできない。他方、本実施例では、血液回路のプライミングが終了したら、自動的に、上記透析液容器内で所要濃度の透析液を調製してから、透析液の調製を一時停止させるようになる。
第3実施例においても、透析液の無駄を防止することができるとともに、析出物のトラブルも防止でき、さらにプライミングが終了しているので、速やかに透析治療を開始することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 血液透析装置 2 透析器
3 透析液回路 4 血液回路
5 透析用水通路 6 A原液通路
7 B原液通路 11 第1透析液容器
12 第2透析液容器 11a、12a 供給室
13A、13B 容積式ポンプ 21 ヒータ
22 給液ポンプ 28、30 温度センサ
36 プライミング開始ボタン 37 一時停止ボタン
41 除水通路 42 除水ポンプ
43 A原液ポンプ 44 B原液ポンプ
C 制御装置