(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】無人飛翔体
(51)【国際特許分類】
B64D 35/08 20060101AFI20230112BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230112BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230112BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20230112BHJP
B64D 25/00 20060101ALI20230112BHJP
H02P 25/22 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B64D35/08
B64C27/08
B64C39/02
B64D27/24
B64D25/00
H02P25/22
(21)【出願番号】P 2019117566
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】513313129
【氏名又は名称】小野塚精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】森 祐司
(72)【発明者】
【氏名】内山 英和
(72)【発明者】
【氏名】柳原 健也
(72)【発明者】
【氏名】五百部 達也
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-197045(JP,A)
【文献】特開2013-187967(JP,A)
【文献】特開2007-325388(JP,A)
【文献】特開2011-078221(JP,A)
【文献】特開2005-304119(JP,A)
【文献】特開2018-050419(JP,A)
【文献】米国特許第09828107(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/08-27/10
B64C 39/02
B64D 25/00-25/20
B64D 27/24
B64D 35/08
H02P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転翼及び該複数の回転翼をそれぞれ回転駆動させる複数のモータを有する無人飛翔体において、
前記複数のモータの回転数を決定するフライトコントローラと、
対応する前記モータに電圧を印加する電力出力部、及び、該電力出力部から該モータに印加される電圧の大きさを調整する制御部をそれぞれ具備し、前記対応するモータを、前記フライトコントローラによって決定された回転数でそれぞれ回転させる複数のエレクトロニックスピードコントローラとを備え、
前記各エレクトロニックスピードコントローラは、複数の前記電力出力部を具備し、通常時は、前記複数の電力出力部それぞれからの電圧印加によって前記対応するモータを回転させ、一部の前記電力出力部から前記対応するモータに対し
て電圧印加ができない異常時には、残りの前記電力出力部か
ら前記対応するモータ
に印加する電圧を前記通常時より大きくして該対応するモータを回転させることを特徴とする無人飛翔体。
【請求項2】
請求項1記載の無人飛翔体において、前記各エレクトロニックスピードコントローラは、二つの前記電力出力部と、該二つの電力出力部から出力される電圧の大きさを調整する一つの前記制御部とを具備することを特徴とする無人飛翔体。
【請求項3】
請求項
2記載の無人飛翔体において、前記各エレクトロニックスピードコントローラの二つの前記電力出力部は、前記対応するモータの異なるコイルに接続されていることを特徴とする無人飛翔体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の無人飛翔体において、
前記フライトコントローラは、前記異常時に、該無人飛翔体を着陸させる制御を行うことを特徴とする無人飛翔体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の無人飛翔体において、前記電力出力部は、回路のショートを防ぐセルフコントロールプロテクタを有することを特徴とする無人飛翔体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の無人飛翔体において、前記回転翼及び前記モータを四つずつ備えることを特徴とする無人飛翔体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の回転翼の回転によって、送信機から送られる信号に沿った飛行を行う無人飛翔体(所謂、ドローン)は、各回転翼に対応するモータの回転数を決定するフライトコントローラ(FC)と、モータに電圧を印加するエレクトロニックスピードコントローラ(ESC)を備えている(引用文献1参照)。複数のモータそれぞれに対応するエレクトロニックスピードコントローラは、フライトコントローラから出力される指令信号に応じた電圧をモータに印加してモータの回転数を調整する。
無人飛翔体には、回転翼が4つのタイプ、6つのタイプ、8つのタイプ等がある。回転翼が4つのタイプは、一般的に一つの回転翼が回転できなくなると飛行を継続できず、墜落する。これに対し、回転翼が6つのタイプや回転翼が8つのタイプは、一つの回転翼が回転できなくなっても飛行を継続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無人飛翔体は、故障が生じたとしても墜落しないようにする冗長化が重要であるが、回転翼を増やそうとすると、モータ等の増加も必要となり、無人飛翔体全体の部品点数が多くなるという課題が招来する。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、回転翼を増やすことなく、冗長化が図られた無人飛翔体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る無人飛翔体は、複数の回転翼及び該複数の回転翼をそれぞれ回転駆動させる複数のモータを有する無人飛翔体において、前記複数のモータの回転数を決定するフライトコントローラと、対応する前記モータに電圧を印加する電力出力部、及び、該電力出力部から該モータに印加される電圧の大きさを調整する制御部をそれぞれ具備し、前記対応するモータを、前記フライトコントローラによって決定された回転数でそれぞれ回転させる複数のエレクトロニックスピードコントローラとを備え、前記各エレクトロニックスピードコントローラは、複数の前記電力出力部を具備し、通常時は、前記複数の電力出力部それぞれからの電圧印加によって前記対応するモータを回転させ、一部の前記電力出力部から前記対応するモータに対して電圧印加ができない異常時には、残りの前記電力出力部から前記対応するモータに印加する電圧を前記通常時より大きくして該対応するモータを回転させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る無人飛翔体は、各エレクトロニックスピードコントローラが、複数の電力出力部を具備し、通常時に、複数の電力出力部それぞれからの電圧印加によって対応するモータを回転させ、一部の電力出力部から対応するモータに対して正常に電圧印加ができない異常時には、残りの電力出力部からの電圧印加によって対応するモータを回転させるので、電力出力部の冗長化を図ることが可能である。エレクトロニックスピードコントローラにおいては、制御部に比べ電力出力部で故障(ショート等)が発生し易い傾向があるため、本発明による電力出力部の冗長化は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る無人飛翔体の説明図である。
【
図2】エレクトロニックスピードコントローラとモータの接続を示す説明図である。
【
図3】エレクトロニックスピードコントローラの電力出力部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る無人飛翔体10は、複数(ここでは、四つ)の回転翼11、12、13、14と、複数の回転翼11、12、13、14をそれぞれ回転駆動させる複数(ここでは、四つ)のモータ15、16、17、18と、複数のモータ15、16、17、18の回転数を決定するフライトコントローラ19と、対応するモータ15、16、17、18にそれぞれ電圧を印加して回転させる複数のエレクトロニックスピードコントローラ20、21、22、23を備えている。以下、詳細に説明する。
【0009】
無人飛翔体10は、
図1に示すように、一つのフライトコントローラ19に一つの受信部24が接続され、エレクトロニックスピードコントローラ20、21、22、23に一つのバッテリー25が接続されている。
受信部24は、図示しない送信機から発信される信号を受信可能で、送信機からの信号を受信すると、その信号をフライトコントローラ19に送る。送信機は、無人飛翔体10の飛行に関する入力操作が人によってなされる操作機であり、送信機でなされた入力操作に対応する信号を発信する。
【0010】
フライトコントローラ19は、図示しないセンサ(例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ)の検出値と、受信機24から送られた信号とを基にして、無人飛翔体10が送信機でなされた入力操作に応じた飛行(例えば、上昇)を行うためのモータ15、16、17、18の回転数を算出し、この回転数を信号化し、指令信号として、エレクトロニックスピードコントローラ20、21、22、23に送る。
エレクトロニックスピードコントローラ20、21、22、23は、回転翼11を回転駆動するモータ15、回転翼12を回転駆動するモータ16、回転翼13を回転駆動するモータ17及び回転翼14を回転駆動するモータ18にそれぞれ接続され(対応し)ている。
【0011】
エレクトロニックスピードコントローラ20は、
図2に示すように、バッテリー25に接続された二つの電力出力部26、27と、フライトコントローラ19及び電力出力部26、27に接続された一つの制御部28を有している。
電力出力部26、27は、バッテリー25から電圧を印加され、電圧を調整してモータ15に印加する。電力出力部26(電力出力部27についても同じ)は、
図3に示すように、制御部28に接続されたスイッチ29、29a、29b、29c、29d、29eと、過電流又は過電圧による回路のショートを防ぐセルフコントロールプロテクタ37、37a、37b、37c、37d、37eを有している。この点、エレクトロニックスピードコントローラ21、22、23それぞれの電力出力部についても同様である。
【0012】
制御部28は、フライトコントローラ19から指令信号を受信し、その指令信号に応じた信号を電力出力部26、27に送って電力出力部26、27のスイッチの接続状態を切り替えて、電力出力部26、27それぞれからモータ15に印加される電圧の大きさを調整し、フライトコントローラ19によって決定された回転数でモータ15を回転させる。
本実施の形態では、モータ15(モータ15のロータ)の角度位置検出がホール素子によるものとモータ端子電圧を基にしたもの(所謂、センサレス)とによって2重に行われ、フライトコントローラ19はモータ15の角度位置の検出結果を取得する。これはモータ16、17、18の角度位置についても同様である。
【0013】
モータ15は、
図2に示すように、円周上に等間隔で配置された六つのスロットにそれぞれコイル31、32、33、34、35、36が巻かれている。従って、コイル31、32、33、34、35、36も円周状に等間隔で順に配置されている。
電力出力部26はコイル34、35、36に接続され、電力出力部27はコイル31、32、33に接続されている。即ち、電力出力部26、27は異なるコイルに接続されている。
【0014】
電力出力部26、27は、電力出力部26、27の双方からモータ15に対し電圧を印加することで、無人飛翔体10の通常の飛行を可能とするレベルの電圧をモータ15に印加できる。
これに対し、何らかの異常によって、モータ15に対する電圧の印加が電力出力部26、27のうちいずれか一方のみからになると、モータ15に印加可能な電圧は、無人飛翔体10が通常の飛行を継続できるレベルではなくなる。但し、電力出力部26、27のいずれかのみからモータ15に電圧が印加されている状態でも、無人飛翔体10を降下させて着陸させるのに必要とされる電圧はモータ15に印加することができる。
【0015】
エレクトロニックスピードコントローラ21、22、23も、エレクトロニックスピードコントローラ20と同様に、それぞれ二つの電力出力部及び一つの制御部を具備している。エレクトロニックスピードコントローラ21の二つの電力出力部及び一つの制御部とバッテリー25、フライトコントローラ19及びモータ16それぞれとの関係、エレクトロニックスピードコントローラ22の二つの電力出力部及び一つの制御部とバッテリー25、フライトコントローラ19及びモータ17それぞれとの関係、並びに、エレクトロニックスピードコントローラ23の二つの電力出力部及び一つの制御部とバッテリー25、フライトコントローラ19及びモータ18それぞれとの関係は、それぞれエレクトロニックスピードコントローラ20の電力出力部26、27及び制御部28とバッテリー25、フライトコントローラ19及びモータ15との関係と同じである。
【0016】
フライトコントローラ19は、エレクトロニックスピードコントローラ20の電力出力部26、27からモータへの電圧の印加が正常になされているか否か、エレクトロニックスピードコントローラ21の二つの電力出力部からモータ16への電圧の印加が正常になされているか否か、エレクトロニックスピードコントローラ22の二つの電力出力部からモータ17への電圧の印加が正常になされているか否か、エレクトロニックスピードコントローラ23の二つの電力出力部からモータ18への電圧の印加が正常になされているか否かを検出できる。
【0017】
フライトコントローラ19は、エレクトロニックスピードコントローラ20、21、22、23から対応するモータ15、16、17、18に対するそれぞれの電圧の印加が正常であることを検出している間、飛行中の無人飛行体10が通常飛行を継続するモードで各種の制御(モータ15、16、17、18の回転数の決定等)を行う。
【0018】
一方、フライトコントローラ19は、エレクトロニックスピードコントローラ20、21、22、23から対応するモータ15、16、17、18に対するそれぞれの電圧の印加が二つの電力出力部から正常に行われていないこと(エレクトロニックスピードコントローラ20のモータ15に対する電圧の印加が電力出力部26、27のいずれか一方のみから行われていること等)を検出すると、無人飛行体10が着陸するように各種の制御を行う。
【0019】
例えば、電力出力部27からモータ15への電圧の印加がなされなくなったのが検出されると、フライトコントローラ19は、制御部28の制御によって、電力出力部26、27の双方からモータ15に電圧が印加されていた時に電力出力部26からモータ15に印加されていた電圧より、電力出力部26からモータ15に印加する電圧を大きくすると共に、エレクトロニックスピードコントローラ21、22、23それぞれの二つの電力出力部からモータ16、17、18にそれぞれ印加される電圧を調整して、無人飛行体10を降下させる。
【0020】
従って、エレクトロニックスピードコントローラ20は、通常時に、電力出力部26、27それぞれからの電圧印加によってモータ15を回転させ、電力出力部27(一部の電力出力部)からモータ15に対して正常に電圧印加ができない異常時には、電力出力部26(残りの電力出力部)からの電圧印加によってモータ15を回転させて、無人飛行体10の墜落を防止する。
【0021】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、回転翼及びモータはそれぞれ三つ又は五つ以上であってもよく、各エレクトロニックスピードコントローラは三つ以上の電力出力部を有していてもよい。
また、各エレクトロニックスピードコントローラが電力出力部と同数の制御部を具備し、一つの制御部で一つの電力出力部を制御するようにしてもよく、例えば、各エレクトロニックスピードコントローラが二つの電力出力部と、二つの電力出力部の状態をそれぞれ変化させる二つの制御部とを具備するようにすることができる。
そして、各エレクトロニックスピードコントローラの複数の電力出力部は対応するモータの同じコイルに接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0022】
10:無人飛翔体、11、12、13、14:回転翼、15、16、17、18:モータ、19:フライトコントローラ、20、21、22、23:エレクトロニックスピードコントローラ、24:受信部、25:バッテリー、26、27:電力出力部、28:制御部、29、29a、29b、29c、29d、29e:スイッチ、31、32、33、34、35、36:コイル、37、37a、37b、37c、37d、37e:セルフコントロールプロテクタ