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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 7/091 20210101AFI20230112BHJP
   H04N 23/70 20230101ALI20230112BHJP
   G03B 7/0997 20210101ALI20230112BHJP
【FI】
G03B7/091
H04N5/235
G03B7/0997
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018142979
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020020898
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501418867
【氏名又は名称】株式会社ブライセン
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】堀内 智史
(72)【発明者】
【氏名】山下 大貴
(72)【発明者】
【氏名】スルシンスキ ボグダン
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-017636(JP,A)
【文献】特開平04-347826(JP,A)
【文献】特開平04-060620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 7/28
H04N 5/235
G03B 7/091
G03B 7/0997
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる特徴量であって、露出制御の対象となる撮像画像の特徴量を計算する特徴量計算手段を備える電子機器において、
前記特徴量計算手段が計算した前記特徴量に基づいて、予め設定された撮像シーンの複数の類型の夫々について、前記撮像画像のシーンとして該当する該当確率を出力するシーン類型推定手段と、
前記撮像シーンの前記複数の類型への該当確率を含むように記述されたルールを用いるルールベース推論により、前記撮像画像についての前記複数の類型の前記該当確率の少なくとも一部に基づいて、前記露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる露出補正係数であって、前記撮像画像に対して適用される露出補正係数を決定するルールベース推論手段と、
を備える電子機器。
【請求項2】
前記特徴量計算手段が計算した前記該当確率をファジー化によりファジー化該当確率とするファジー化手段と、
前記ルールベース推論手段が決定したファジー露出補正係数を、前記露出補正係数に非ファジー化するデファジー手段と、
を更に備え、
前記ルールベース推論手段は、前記ファジー化手段がファジー化した前記ファジー化該当確率に基づいて前記ルールベース推論としてファジー推論を行い、前記ファジー露出補正係数を決定する、
請求項1に記載された電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、様々な画面に対応した詳細な条件設定を行うことなく、ファジー推論を用いることで、予め実験的に決定された少数のルールに基づいた推論で画面の評価を行い、最適な優先度の決定が為される自動露出調整機構(例えば特許文献1参照)が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-009243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、画像分割領域の優先度のみならず、多種多様のパラメータに基づいて自動露出調整をチューニングすることが要求されているが、上述の特許文献1を含め従来の技術を単に適用しただけでは、このような要求に十分に応えることができない状況である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、自動露出調整コアアルゴリズムを理解不要で、原則として既存パラメータとの競合を考慮する必要が無く、インターフェースを統一できる自動露出補正のチューニング手段の提供を目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の電子機器は、
露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる特徴量を計算する特徴量計算手段を備え、
前記特徴量に基づいてルールベース推論により、前記露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる露出補正係数を決定するルールベース推論手段、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自動露出調整コアアルゴリズムを理解不要で、原則として既存パラメータとの競合を考慮する必要が無く、インターフェースを統一できる自動露出補正のチューニング手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る電子機器の機能的構成の一例を示す図である。
図2図1の電子機器のうち自動露出制御部におけるデータフローの一例を示す図である。
図3図2の自動露出制御部の第一の構成を示す図である。
図4図3のルールリストにおけるルールの具体的記述例を示す図である。
図5】3軸の自由度による調整の概略を示すイメージ図である。
図6図3のメンバーシップ関数の調整の概略を示すイメージ図である。
図7図2の露光計算部における重み合成における算出演算の流れの一例を示す図である。
図8図2の自動露出制御部の第二の構成を示す図である。
図9図8のシーン推定部に適用する推定モデルにおける各シーン分類についての各平均特徴量の具体的一例を示す図である。
図10図9の推定モデルを適用したクラス確率推定の具体的一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器の機能的構成の一例を示す図である。
【0010】
電子機器1は、レンズLと、絞りAと、画像センサSと、黒レベル補正部11と、欠陥ピクセル補正部12と、レンズ陰影補正部13と、ノイズ除去部14と、ホワイトバランス調整部15と、デモザイク処理部16と、色補正部17と、ガンマ補正部18と、色空間変換部19と、境界強調部20と、エンコード部21と、ブロック統計部31と、自動露出制御部32と、自動ホワイトバランス部33と、ドライバDと、アクチュエータMとを備える。
【0011】
レンズLは、被写体を撮像するために、光を集光して画像センサSに入射させる。
レンズLは、フォーカスレンズ、ズームレンズを含み、撮像に用いられる任意のものであって良い。
レンズLは1枚に限られず、複数枚のレンズの組合せであって良い。
【0012】
絞りAは、大きさの調整が可能な孔を有しており、当該孔の大きさが調整されることで、レンズLから画像センサSに入射される光の量を調整する。
絞りAは、任意の動力により、制御される。具体的には、絞りAは、後述するドライバDの制御にしたがって、アクチュエータMにより駆動されて、孔の大きさを調整する
【0013】
画像センサSは、光電変換素子や、AFE(Analog Front End)等から構成される。
光電変換素子は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の光電変換素子等から構成される。光電変換素子には、レンズLから絞りAを介して被写体像を結像する光が入射される。そこで、光電変換素子は、被写体像を光電変換(撮像)して画像信号を一定時間蓄積し、蓄積した画像信号をアナログ信号としてAFEに順次供給する。
AFEは、このアナログの画像信号に対して、A/D(Analog/Digital)変換処理等の各種信号処理を実行する。各種信号処理によって、デジタル信号が生成され、出力信号として出力される。
画像センサSは、受光面にベイヤ配列のカラーフィルタが設けられており、AFEは、ゲイン調整後の撮像信号をデジタル信号、つまりカラーフィルタのベイヤ配列に応じたR画素(赤色情報を示す画素データ)、G画素(緑色情報を示す画素データ)、B画素(青色情報を示す画素データ)の各画素データであるベイヤデータに変換する。
【0014】
黒レベル補正部11は、ベイヤデータを黒レベル補正する。
欠陥ピクセル補正部12は、黒レベル補正後のベイヤデータに対して、欠陥画素値の情報を補正する。
【0015】
レンズ陰影補正部13は、欠陥画素値の情報の補正後のベイヤデータに対して、レンズ陰影補正を実行する。
ノイズ除去部14は、レンズ陰影補正後のベイヤデータに対して、ノイズ除去を実行する。
【0016】
ブロック統計部31は、ノイズ除去後のベイヤデータに対して、一のセルとその近傍のセルからなるブロックに属するセルについて、ベイヤ配列のR、Gr、Gb、Bの各カラープレーンの統計及び輝度値の統計を計算し、自動露出制御部32に出力する。
また、ブロック統計部31は、ノイズ除去後のベイヤデータを基に、ヒストグラムHGを生成して、自動露出制御部32に出力する。
【0017】
自動露出制御部32は、ブロック統計部31が計算した統計等に基づいて、絞りAを制御する信号である絞り開度値Av等を、ドライバD、画像センサSに送信する。
自動露出制御部32の詳細については、図2を用いて後述する。
【0018】
ドライバDは、自動露出制御部32が送信したメカシャッターの場合のシャッター速度値Tv及び絞り開度値Avの信号に基づいて、アクチュエータMを作動させることにより、絞りAの開度を制御する。
【0019】
自動ホワイトバランス部33は、ブロック統計部31が計算した統計に基づいて、ホワイトバランス利得を算出し、ホワイトバランス調整部15及び自動露出制御部32に出力する。
また、自動ホワイトバランス部33は、ブロック統計部31が計算した統計に基づいて、色温度を算出し、自動露出制御部32に出力する。
更に、自動ホワイトバランス部33は、ブロック統計部31が計算した統計に基づいて、色補正マトリクス情報を生成し、ホワイトバランス調整部15に出力する。
【0020】
ホワイトバランス調整部15は、自動ホワイトバランス部33が算出したホワイトバランスについての利得に基づいて、ノイズ除去後のベイヤデータに対するR,G,B毎のゲイン調整を行い白バランスの調整を実行する。
【0021】
デモザイク処理部16は、ホワイトバランス調整部15がホワイトバランス処理した撮像データに対してデモザイク処理を行い、RGBデータを生成する。
【0022】
色補正部17は、デモザイク処理部16がデモザイク処理したRGBデータに対して、自動ホワイトバランス部33が生成した色補正マトリクス情報に基づいて、色補正処理を行う。
【0023】
ガンマ補正部18は、色補正部17が色補正処理したRGBデータに対するガンマ特性(階調特性)の補正を行う。
【0024】
色空間変換部19は、ガンマ補正部18がガンマ補正処理したRGBデータに対して、色空間変換処理を行い、YCC(YCrCb)データを生成する。
【0025】
境界強調部20は、色空間変換部19が色空間変換処理したYCCデータに対して、境界強調処理を行う。
【0026】
エンコード部21は、境界強調部20が境界強調処理したYCCデータに対して、エンコード処理を行う。
この様にすることにより、自動露出補正の結果を、撮像装置等に適用することができる。
【0027】
次に、図2を用いて自動露出制御部におけるデータの流れを説明する。
図2は、図1の電子機器のうち自動露出制御部におけるデータフローの一例を示す図である。
【0028】
自動露出制御部32においては、特徴量計算部41と、測光コア42と、加算器43と、ルールベース補正部44と、加算器45と、露光計算部46と、ローパスフィルタ47と、露光ダイアグラム生成部48とが機能する。
測光コア42においては、全体補正部401と、局所補正部402と、適応重みマップ生成部403と、重み生成部404と、乗算器405とが機能する。
自動露出制御部32の入力データは、自動ホワイトバランス部33が算出したホワイトバランス利得並びに色温度、ブロック統計部31が計算したヒストグラムHG、RGB統計並びに輝度信号統計、及びタッチ領域情報、顔認識領域情報並びにデジタルズーム倍率の各情報である。
特徴量計算部41は、露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる特徴量を計算する。
即ち、特徴量計算部41は、入力データのうち、ホワイトバランス利得、色温度、ヒストグラムHG、RGB統計及び輝度信号統計に基づいて特徴量計算をする。
特徴量計算部41は、特徴量計算の結果の一つとして、APEX輝度(Additive system of Photographic EXposure brightness value)を出力する。
APEX輝度は被写体の絶対的な明るさを示す値であり、オートホワイトバランス、オートフォーカスその他のカメラ制御に利用されて良い。
【0029】
また、全体補正部401は、例えばヒストグラムHGなどの画像全体の統計情報を参照して、より適切な露出となるように、画像全体の露出補正値を算出し、特徴量計算の結果を全体補正する。
また、局所補正部402は、例えば各統計における各ブロックの色分布に応じて各統計のブロックごとに補正値を計算し、特徴量計算の結果を局所補正する。
加算器43は、全体補正後の特徴量と、局所補正後の特徴量との和を取り、補正後特徴量を生成する。
【0030】
適応重みマップ生成部403は、自動露出制御部32の入力データと、特徴量計算の結果とに基づいて、これらに応じた統計の重みを計算して、適応重みマップを生成する。
【0031】
重み生成部404は、分割測光要素を集合させて構成した多分割測光重み表を算出する。
即ち、重み生成部404は、タッチ領域情報、顔認識領域情報、デジタルズーム倍率等の情報と、適応重みマップとに基づいて、多分割重みMWを生成する。
ここで、タッチ領域情報は、電子機器1がタッチAE機能を備える場合において、ユーザが画面でタッチした領域に露出を合わせる為の、領域情報である。
また、顔認識領域情報は、電子機器1が顔認識機能を備える場合において、図示せぬ顔認識部が、被写体の顔であると認識した、画像中の領域についての領域情報である。
また、デジタルズーム倍率は、統計に入る全領域に占める、デジタルズームによる拡大表示に使用する中心部分領域の割合である。
乗算器405は、輝度信号統計と、多分割重みMWとの積を生成する。
【0032】
ルールベース補正部44は、輝度信号統計と、特徴量計算部41による特徴量計算の結果と、重み生成部404から出力された多分割重みMWとに基づいて、ルールベース補正を行い、露出補正係数を算出して、加算器45に供給する(露出補正係数は、加算器45に供給される)。
【0033】
露光計算部46は、露出補正係数に基づいて露光計算をする。
また、露光計算部46は、空間重みにより得られる重み表と多分割測光重み表とを混合して得た空間重み表と、輝度重みを各分割測光要素に適用して算出した輝度重み表とを混合して得た重み表を決定する。
即ち、露光計算部46は、輝度信号統計と多分割における重み付けとの積と、補正後特徴量と露出補正係数との和と、参照輝度レベルとに基づいて、露光計算を行う。
【0034】
露光ダイアグラム生成部48は、ローパスフィルタ47を通過した露光計算の結果に基づいて露光ダイアグラムを生成し、シャッター速度値Tv、センサ利得値Sv、絞り開度値Avを出力する。
この様にすることにより、既存の自動露出補正処理後に、ルールベースでのチューニングを、容易に追加することができる。
その結果、自動露出補正のチューニング手段が、自動露出調整コアアルゴリズムを理解不要で、原則として既存パラメータとの競合を考慮する必要が無く、インターフェースを統一できることとなる。
【0035】
図3は、自動露出制御部32の第一の構成を示す図である。
ルールベース補正部44においては、ファジー化部61と、推論部62と、デファジー部63とが機能する。
【0036】
ファジー化部61は、特徴量計算部41が計算した特徴量をファジー化によりファジー化特徴量とする。
即ちファジー化部61は、入力メンバーシップ関数64に基づいて、特徴量計算部41が計算した特徴量を、ファジー化によりファジー化特徴量とする。
入力メンバーシップ関数64は、入力値のファジー化変換後の値とその度数との関係をチューニングパラメータにより定義された関数である。
入力メンバーシップ関数64は、線形補完により連続関数とされて良い。この様にすることにより、数個の数値だけで定義することができる。
入力メンバーシップ関数64の入力値には、特徴量計算の結果が含まれる。
チューニングパラメータについては、詳しくは後述する。
【0037】
推論部62は、特徴量に基づいてルールベース推論により、露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる露出補正係数を決定する。
即ち、推論部62は、ルールリスト65のルールに従って、入力された特徴量からルールベース推論により、露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる露出補正係数を決定する。
本実施例においては、ファジー化部61がファジー化したファジー化特徴量に基づいて、ルールベース推論としてファジー推論を行い、ファジー露出補正係数を決定する。
【0038】
デファジー部63は、推論部62が決定したファジー露出補正係数を、露出補正係数に非ファジー化する。
即ち、デファジー部63は、出力メンバーシップ関数66に基づいて推論の結果を例えば重心法等のデファジー手法により、露出補正係数としての3つの具体的な数値を決定する。
出力メンバーシップ関数66は、デファジー変換後の値をチューニングパラメータにより定義された関数である。出力メンバーシップ関数66の出力値は、露出補正係数(絶対露出の調整値、空間の重み調整値及び輝度の重み調整値)である。
チューニングパラメータについては、詳しくは後述する。
この様にすることにより、特徴量の表現がファジー化により人間が理解し易いものとなるので、自動露出補正のルールベースでのチューニングを、より直感的なものとすることができる。
【0039】
図4は、ルールリスト65におけるルールの具体的記述例を示す図である。
「rule」は、以降にルールを定義する旨の、宣言子である。
「rule」に続く「Sky_ZO」等は、任意かつ一意に命名可能なルール名である。
「:」は、これ以前のルール名と、これ以降の実体定義部を区切る文字である。
【0040】
「if」及び「then」は、ルールの定義において同時に記述される。
「if」の後ろには続いてルールの前件部の定義として、「[Sky is Small] or [Sky is Medium Small]」等を記述することができる。
「then」の後ろには続いて、ルールの後件部の定義として、「[B_ZO, S_ZO, R_ZO]」等を記述することができる。
ルールの前件部の定義においては、「or」、「and」等のファジー論理演算子が使用出来て良い。
前件部の定義における「or」は、いずれか大きい値を取るファジー論理演算子であって良く、「and」は、いずれか小さい値を取るファジー論理演算子であって良い。
【0041】
ルールの前件部の定義の、「is」は、前段部分と後段部分とを区切り、前段部分の入力パラメータの後段部分の入力メンバーシップ関数におけるファジィ論理値(所定のファジー集合に対する適合度)を、ルールの前件部の値とすることを意味する記述子である。
ルールの前件部の定義の前段部分の、「Sky」、「Backlight」等は、入力メンバーシップ関数の入力値とする特徴量計算部41が算出した特徴量の一つである。
特徴量「Sky」は、空画像としての適合値である。
特徴量「Backlight」は、逆光撮像画像としての適合値である。
【0042】
特徴量にはその他に、例えば、Bv値(ブライトネスバリュー値)を示す「Bv」、輝度統計の最大値を8bitで正規化した値を示す「MaxY」、色相を示す「hue」、彩度を示す「saturation」、色温度を示す「ctemp」、輝度勾配の積算値を示す「gradientY」、ヒストグラムHGの低輝度域の割合を示す「low」、ヒストグラムHGの中輝度域の割合を示す「middle」、ヒストグラムHGの高輝度域の割合を示す「high」、ヒストグラムHGの高輝度域の空き具合を示す「highlight」、ヒストグラムHGのbin0の頻度を最大頻度で除した値(黒潰れの指標値)を示す「underexp」、ヒストグラムHGのbin255の頻度を最大頻度で除した値(白飛びの指標値)を示す「overexp」、分離度を示す「separability」、コントラスト値を示す「contrast」等が含まれて良い。
【0043】
ルールの前件部の定義の後段部分には、各入力メンバーシップ関数の一部を構成するファジー集合として、例えば「Small」、「Medium Small」、「Medium」、「Medium Large」、「Large」及び「MS」等を、記述することができ、夫々、小さい(範囲)、やや小さい(範囲)、中程度、やや大きい(範囲)、大きい(範囲)及びやや小さい(範囲)を意味して良い。
【0044】
ルールの後件部の定義の、「[B_ZO, S_ZO, R_ZO]」等は、順に夫々、絶対露出の調整値についてのファジー集合、空間の重み調整値についてのファジー集合及び輝度の重み調整値についてのファジー集合を記述する。
絶対露出の調整値は、例えば、-3程度を下限とする露出補正係数の直接的な値として良い。
絶対露出の調整値「B_ZO」は、例えば、最頻値をゼロとするファジー集合であって良い。
絶対露出の調整値「B_NM」は、最頻値を絶対値中のマイナス値とするファジー集合であって良い。当該最頻値は、例えば-2であって良い。
空間の重み調整値及び輝度の重み調整値は、例えば-1以上1以下の範囲の値として良い。
空間の重み調整値「S_ZO」は、例えば、最頻値をゼロとするファジー集合であって良い。
輝度の重み調整値「R_ZO」は、例えば、最頻値をゼロとするファジー集合であって良い。
輝度の重み調整値「R_NS」は、最頻値を絶対値小のマイナス値とするファジー集合であって良い。当該最頻値は、例えば-0.3であって良い。
輝度の重み調整値「R_NM」は、最頻値を絶対値中のマイナス値とするファジー集合であって良い。当該最頻値は、例えば-0.6であって良い。
輝度の重み調整値「R_NL」は、最頻値を絶対値大のマイナス値とするファジー集合であって良い。当該最頻値は、例えば-1であって良い。
【0045】
即ち、「rule Sky_ZO: if [Sky is Small] or [Sky is Medium Small] then [B_ZO, S_ZO, R_ZO]」の場合は、「Sky_ZO」のルール名で、空画像としての適合値が小さい又はやや小さい場合についての度数を、最頻値をゼロとする絶対露出の調整値のファジー集合、最頻値をゼロとする空間の重み調整値のファジー集合及び最頻値をゼロとする輝度の重み調整値のファジー集合にそれぞれ適用することが記述されている。
また、「rule Sky_NS: if [Sky is Medium] then [B_ZO, S_ZO, R_NS]」の場合は、「Sky_NS」のルール名で、空画像としての適合値が中程度の場合についての度数を、最頻値をゼロとする絶対露出の調整値のファジー集合、最頻値をゼロとする空間の重み調整値のファジー集合及び最頻値を絶対値小のマイナス値とする輝度の重み調整値のファジー集合にそれぞれ適用することが記述されている。
また、「rule Sky_NM: if [Sky is Medium Large] or [Sky is Large] then [B_NM, S_ZO, R_ZO]」の場合は、「Sky_NM」のルール名で、空画像としての適合値がやや大きい又は大きい場合についての度数を、最頻値を絶対値中のマイナス値とする絶対露出の調整値のファジー集合、最頻値をゼロとする空間の重み調整値のファジー集合及び最頻値をゼロとする輝度の重み調整値のファジー集合にそれぞれ適用することが記述されている。
また、「rule Backlight_ZO: if [Backlight is Small] then [B_ZO, S_ZO, R_ZO]」の場合は、「Backlight_ZO」のルール名で、逆光撮像画像としての適合値が小さい場合についての度数を、最頻値をゼロとする絶対露出の調整値のファジー集合、最頻値をゼロとする空間の重み調整値のファジー集合及び最頻値をゼロとする輝度の重み調整値のファジー集合にそれぞれ適用することが記述されている。
また、「rule Backlight_NS: if [Backlight is Medium] or [Backlight is MS] then [B_ZO, S_ZO, R_NS]」の場合は、「Backlight_NS」のルール名で、逆光撮像画像としての適合値が、中程度又はやや小さい場合についての度数を、最頻値をゼロとする絶対露出の調整値のファジー集合、最頻値をゼロとする空間の重み調整値のファジー集合及び最頻値を絶対値小のマイナス値とする輝度の重み調整値のファジー集合にそれぞれ適用することが記述されている。
また、「 rule Backlight_NM: if [Backlight isMedium Large] then [B_ZO, S_ZO, R_NM]」の場合は、「Backlight_NM」のルール名で、逆光撮像画像としての適合値が、やや大きい場合についての度数を、最頻値をゼロとする絶対露出の調整値のファジー集合、最頻値をゼロとする空間の重み調整値のファジー集合及び最頻値を絶対値中のマイナス値とする輝度の重み調整値のファジー集合にそれぞれ適用することが記述されている。
また、「 rule Backlight_NL: if [Backlight is Large] then [B_ZO, S_ZO, R_NL]」の場合は、「Backlight_NL」のルール名で、逆光撮像画像としての適合値が、大きい場合についての度数を、最頻値をゼロとする絶対露出の調整値のファジー集合、最頻値をゼロとする空間の重み調整値のファジー集合及び最頻値を絶対値大のマイナス値とする輝度の重み調整値のファジー集合にそれぞれ適用することが記述されている。
【0046】
ルールリスト65には、この様にルールを複数記載することができるが、デファジー部63が実行するデファジー処理においては、絶対露出の調整値、空間の重み調整値及び輝度の重み調整値の夫々について、例えば、前件部で求めた度数で頭切りした各ファジー集合の領域の和に基づいて、夫々の調整値について具体的数値が決定されて良い。
この様にすることにより、ルール同士の順序、競合、干渉を気にすることなく、自由にルールを追加、削除又は変更することができることとなる。
【0047】
図5は、3軸の自由度による調整の概略を示すイメージ図である。
ルールベース推論RIは、特徴量計算部41が生成した特徴量FMに基づいて3軸の自由度で調整をする3調整軸の出力を行う。
かかる、3調整軸の各軸は、絶対露出の調整、空間の重み調整及び輝度の重み調整である。
【0048】
絶対露出の調整は、平均測光での露出のバイアスである。
シーンによって目標輝度を変えたい場合などに、この調整軸を使用する。
即ち、絶対露出調整値の値が大きくなるほど、画面全体を一様に明るくする様に、露出が補正されるのである。
例えば、晴天時の順光での雪景色の撮像シーンでは、既存の自動露出補正では、露出アンダーとなりがちであるので、かかる事態を想定して絶対露出調整値の値を大きくするチューニングを追加するといったことが可能である。
【0049】
空間の重み調整は、スポット測光についての重みである。
空間重み調整値は、負の方向に値が大きくなるほど画像領域間の重みを平均測光に近づけ、正の方向に値が大きくなるほど画像領域間の重みをスポット測光に近づける調整が可能である。
即ち、正の方向に値を大きくするほど、画像周辺部を無視又は軽視して、画像中央部でより適合するように、露出が補正されるのである。
例えば、逆光シーン等の画面の中央部が暗く、周辺部が明るいシーンの画面の明るさを調整するといったことが可能である。
【0050】
輝度の重み調整は、輝度についての重みである。
輝度重み調整値は、負の方向に値が大きくなるほど暗部の重みを上げ、正の方向に値が大きくなるほど明部の重みを上げる調整が可能である。
即ち、負の方向に値が大きくなるほど黒潰れを抑制して白飛びを容認する様に露出が補正され、正の方向に値を大きくするほど黒潰れを容認して白飛びを抑制する様に露出が補正されるのである。
例えば、晴天時の順光での空と建物の撮像シーンでは、既存の自動露出補正では、建物での反射による白飛びが生じがちであるので、かかる事態を想定して輝度重み調整値の値を正の方向に値を大きくするチューニングを追加するといったことが可能である。
【0051】
ルールベース推論RIは、3調整軸の各出力と、ブロック統計部31が生成したヒストグラムHG等との積から露出補正係数を出力する。
露光計算部46は、露出補正係数と、重み生成部404が生成した多分割重みMW等とに基づいて露光補正値を求める。
この様にすることにより、ルールの簡単な記述による複雑な露出調整が可能となる。
【0052】
図6は、図3のメンバーシップ関数の調整の概略を示すイメージ図である。
入力メンバーシップ関数64については、入力メンバーシップ関数μ(Hue)64Hを例に説明するが、特に断らない限り、他の特徴量又はシーンについての入力メンバーシップ関数についても同様である。
なお、入力メンバーシップ関数64としては「μ(Sky)」、「μ(Backlight)」、「μ(Saturation)」を他に図示しているが、これには限られず、全ての特徴量及びシーンについて入力メンバーシップ関数64が提供されて良い。
【0053】
メンバーシップ関数μ(Hue)64Hは、横軸には特徴量「Hue」を、縦軸には度数を取る平面空間上に、各ファジー集合が取る値がプロットされる。
メンバーシップ関数64Hにおいては、「RedS」、「RedL」、「Magenta」、「Blue」、「Cyan」、「Green」、「Yellow」の6つのファジー集合が各1本の線として示されている。
【0054】
ここで縦軸には度数を取る為、横軸上の如何なる位置においても、全てのファジー集合の縦軸の合計は「1」に保たれる。
即ち、或るファジー集合の縦軸が1である横軸上の位置では、他のファジー集合の縦軸の値は、全てゼロとなるし、どのファジー集合の縦軸も1に満たない横軸上の位置では、縦軸の値がゼロではないファジー集合は、必ず2以上存在する。
【0055】
特徴量「Hue」については、色相についての値である為、ゼロ以上360未満の値を取るが、実際にはゼロと360は同値であり、360Hue以上については360Hue周期で無限に同じ値を繰り返すという他の特徴量には無い特殊性が存在する。
メンバーシップ関数μ(Hue)64Hの例では、6つのファジー集合が1つずつ60Hue間隔で度数1を取り、前後する2つのファジー集合が60Hueを掛けて、1次関数的な勾配で度数を入れ替えることを繰り返す例となっている。
【0056】
チューニングパラメータは各変化点での値を示す数値の集合である。
メンバーシップ関数μ(Hue)64Hの例においては、6個のファジー集合のチューニングパラメータは、60Hue間隔で度数「1、0、0、0、0、0」、度数「0、1、0、0、0、0」、度数「0、0、1、0、0、0」の様に取れば良い。
変化点の間の区間は線形補完される。
この様にすることにより、入力メンバーシップ関数64は数個程度の数値での定義でも連続関数として定義することができる。
【0057】
出力メンバーシップ関数66については、出力メンバーシップ関数μ(WeightR)66Rを例に説明するが、特に断らない限り、他の露出補正係数についての出力メンバーシップ関数についても同様である。
即ち、出力メンバーシップ関数66は、絶対露出の調整値BiasPv、空間の重み調整値WeightS及び輝度の重み調整値WeightRの3つについてそれぞれ定義される。
【0058】
出力メンバーシップ関数μ(WeightR)66Rは、横軸には露出補正係数「WeightR」を、縦軸には度数を取る平面空間上に、各ファジー集合が取る値がプロットされる。
出力メンバーシップ関数66Rにおいては、「S_NL」、「S_NM」、「S_NS」、「S_ZO」、「S_PS」、「S_PM」、「S_PL」の7つのファジー集合が各1本の線として示されている。
【0059】
即ち、或るファジー集合の縦軸が1である横軸上の位置では、他のファジー集合の縦軸の値は、全てゼロとなるし、どのファジー集合の縦軸も1に満たない横軸上の位置では、縦軸の値がゼロではないファジー集合は、必ず2以上存在する点は、入力メンバーシップ関数64の場合と同様である。
【0060】
露出補正係数「WeightR」については、輝度方向についての重み値であって、-1以上1以下の値を取る。
出力メンバーシップ関数μ(WeightR)66Rの例では、7個のファジー集合が1つずつ0.2WeightR間隔で度数1を取り、前後する2つのファジー集合が0.2WeightRを掛けて、1次関数的な勾配で度数を入れ替えることを繰り返す例となっている。
【0061】
チューニングパラメータは各変化点での値を示す数値の集合である。
出力メンバーシップ関数μ(WeightR)66Rの例においては、6個のファジー集合のチューニングパラメータは、0.2WeightR間隔で度数「0、1、0、0、0、0、0、0、0、0、0」、度数「0、0、1、0、0、0、0、0、0、0」、度数「0、0、0、1、0、0、0、0、0、0」の様に取れば良い。
変化点の間の区間は線形補完される。
この様にすることにより、出力メンバーシップ関数66は数個程度の数値での定義でも連続関数として定義することができる。
この様にすることにより、ファジー化、デファジー化を容易に調整することができ、更には特徴量の表現がファジー化により人間が理解し易いものとなるので、自動露出補正のルールベースでのチューニングを、より直感的なものとすることができる。
【0062】
補正重み表Wの算出演算の流れをブロック図で示すと図7のようになる。
図7は、露光計算部46における重み合成における算出演算の流れの一例を示す図である。
【0063】
最初に、露光計算部46は、空間の重み調整値SWより、空間方向の重み表WSを求める。
即ち、露光計算部46は、多分割測光アルゴリズムによって生成された多分割重み表ベクトルWMに、空間の重み調整値SWの値に応じて重みを混合して求める。
ここで、空間の重み調整値SWが負の値又は等しい場合は、露光計算部46は、平均測光の重み表と混合する。
或いは、空間の重み調整値SWが正の値の場合は、露光計算部46は、スポット測光の重み表と混合する。
【0064】
<<輝度の重み調整値>>
次に、露光計算部46は、輝度の重み調整値RWより、輝度方向の重み表ベクトルWRを求める。
まず、露光計算部46は、リファレンスとなる重み表算出のための係数kを統計の全ブロック毎に求め、次に、算出された係数kを元にして比率Rにより重み表を求める。
【0065】
<<weightR:k>>
先ず、露光計算部46は、輝度の重み調整値RWが正の値の場合は高輝度になるほど重みが高くなるように係数kを設定し、輝度の重み調整値RWが負の値の場合は低輝度になるほど重みが高くなるように係数kを設定する。ここで、高輝度領域、低輝度領域の閾値は、現在の統計平均輝度を基準とする。
次に、露光計算部46は、多分割重み表ベクトルWMの各要素をk倍することで、ベースとなる重み表ベクトルWkを得る。多分割重みを基にする理由は、重みの急変化によるハンチングを防ぐためである。具体的には、ベースとなる重み表ベクトルWkの各多分割要素Wkiは、次の式(1)により表される。
Wki=min((WMi+1)◇ki,重み上限値) ・・・(1)
ここで、iは統計のブロック要素を示すインデックスである。ここで演算子◇は、ベクトル同士の各多分割要素iについての乗算を意味するものとする。WM=0のときに補正重みの効果が出ないことを防ぐために+1として良い。
ここで、図7においては省いて表記しているが、(WMi+1)◇kiが重み上限値を超える場合は、重み上限値でクリップする。
【0066】
<<輝度重み表ベクトルWR>>
求められた重み表Wkは、輝度の重み調整値を考慮していないため、最後に輝度の重み調整値の絶対値に応じて多分割重み表ベクトルWMと混合することにより、露光計算部46は、輝度重み表ベクトルWRを求める。具体的には、輝度重み表ベクトルWRは、次の式(2)により表される。
WR=Wk×|輝度の重み調整値RW|+WM×(i-|輝度の重み調整値RW|)
・・・(2)
【0067】
<<混合>>
最後に、露光計算部46は、空間方向の重み表ベクトルWSと、輝度方向の重み表ベクトルWRとを、それぞれ半分ずつの割合で混合して最終的な補正重み表ベクトルWを得る。具体的には、補正重み表ベクトルWは、次の式(3)により表される。

W=(WS+WR)/2 ・・・(3)
露光計算部46は、この補正重み表ベクトルWを使って、空間重み及び輝度重みによる露出補正値deltaPvWを求める。
【0068】
<<ルールベース推論による最終露出補正値算出>>
ルールベース推論は所定の多分割の露出補正演算後に実行されるので、露光計算部46は、所定の多分割の露出補正演算により算出された露出補正値をdeltaPvMultiとし、ルールベース推論によって算出された直接的な露出補正値deltaPvと共に、最終的なルールベース推論による露出補正値deltaPvRBRを以下の式(4)により求める。
deltaPvRBR=biasPv-(deltaPvW-deltaPvMulti) ・・・(4)
ここで、weightS=weightR=0のときにdeltaPvW=deltaPvMultiとなるものとする。
この様にすることにより、空間重みと輝度重みとに基づく最終的な露出補正値を算出することができるので、ルールの後件部を絶対露出と、空間重みと、輝度重みとを独立して定義すれば良いこととなり、簡易に直観的にルールリストを作成することができる。
【0069】
図8は、図2の自動露出制御部32の第二の構成を示す図である。
自動露出制御部32においては、シーン推定部67とルールベース補正部44とが機能する。
ルールベース補正部44においては、ファジー化部61と、推論部62と、デファジー部63とが機能する。
【0070】
シーン推定部67は、特徴量計算手段が計算した特徴量に基づいて、撮像シーンの各類型を推定し、類型毎の該当確率を出力する。
即ち、シーン推定部67は、特徴量計算部41が算出した入力特徴量に基づいて、撮像シーンの各類型を推定し、類型毎の該当確率を出力する。
撮像シーンの類型は、例えば、逆光シーン、花シーン、空シーン、屋内シーン等である。
【0071】
これを実現する為に、ユーザは、事前に機械学習(例えばランダムフォレスト)により、入力特徴量から多数のクラスのシーンを確率的に推定するモデルを生成して、シーン推定部67に適用して良い。
特徴量はカメラのハードウェア構成によって異なるため、シーン推定値を効率的に導くために、統計的手法(機械学習)を利用する。
この様にすることにより、ユーザは自力でモデルを生成する必要が無い為、労力を削減することができる。
これにより撮像実行時に各シーン類型の該当確率を得ることが可能となるので、ルールリスト65におけるルールの具体的記述においては、入力特徴量に加えて、シーン確率が使えるようになり、より直観的なルールの記述が可能となる。
ルールの具体的記述においては、シーン確率と特徴量は併用できて良い。特徴量をそのまま使った方が、ルールの記述において良い場合があるからである。
【0072】
本実施例におけるファジー化部61は、更に、シーン推定部67が出力した各シーン類型の該当確率についてもファジー化を行う点を除いては、上述した、自動露出制御部32の第一の構成の場合の実施例と同様である。
推論部62は、特徴量に基づいてルールベース推論により、露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる露出補正係数を決定する。
また、推論部62は、シーン推定部67が出力した各類型の該当確率にも基づいて露出補正係数又はファジー露出補正係数を決定する。
即ち、推論部62は、入力された特徴量に加えてシーン推定部67が出力した各類型の該当確率にも基づいてルールリスト65のルールに従って露出補正係数又はファジー露出補正係数を決定する。
本実施例においては、ファジー化部61がファジー化したファジー化特徴量及びシーン推定部67が出力した各類型の該当確率に基づいて、ルールベース推論としてファジー推論を行い、ファジー露出補正係数を決定する。
【0073】
本実施例における入力メンバーシップ関数64は、入力値に各シーン類型の該当確率が含まれる点及び出力値にシーン類型のファジー化した該当確率が含まれる点を除いては、上述した、自動露出制御部32の第一の構成の場合の例と同様である。
【0074】
なお、本実施例におけるデファジー部63及び出力メンバーシップ関数66の働きについては、上述した、自動露出制御部32の第一の構成の場合の例と同様であって良い。
ルールベースのみでチューニングをする場合、入力特徴量が多くなりがちで特徴量の意味付けも困難であり、人間によるルール記述には相当な訓練が必要であるが、この様にすることにより、機械学習をルールベース推論の入力変数の前処理として利用することができるので、チューニングを省力化することができ、かつ、容易とすることができる。
【0075】
図9は、シーン推定部67に適用する推定モデルにおける各シーン分類についての各平均特徴量の具体的一例を示す図である。
上述した様に、撮像シーンの各シーン類型への該当確率を使ってルールを記述することを可能にする為、シーン推定部67においては、入力特徴量に基づいて、撮像シーンの各類型(人間にとって意味のあるシーンクラス)を確率的に推定し、それシーンクラス毎の該当確率を出力させる。
この為に、シーン推定部67においては、特徴量を入力パラメータとする、各シーン類型への該当確率を推定する為の推定モデルであるシーン確率推定モデルが適用される。
【0076】
シーン確率の推定の為には、入力パラメータである特徴量の数が、シーンクラス数に対して多い程、精度の良いシーン確率推定が容易となる。
図9に示す例では、8のシーン類型に対する17の特徴量の各平均値が示されている。
【0077】
この例においては、例えばシーンクラス「BrickWall」であれば特徴量「IN_hue」、特徴量「IN_sky」,特徴量「IN_low」及び特徴量「IN_contrast」が他のシーンクラスと比較して低く、特徴量「IN_middle」は他のシーンクラスと比較して高い為、その様な傾向に合致するパラメータであるかによって、シーンクラス「BrickWall」に該当する確率を高く推定する。
この様にすることにより、既存の特徴量からでもシーンクラスを十分に推定することができるので、人間にとって意味付けの困難な特徴量を採用する必要が無く、ルールの記述に熟練を要しないこととなる。
【0078】
図10は、図9の推定モデルを適用したクラス確率推定の例を示す図である。
図9の推定モデルでは、シーンクラス数は8であったので、その夫々の確率は8個存在し、これを合計すると、その和は1となる。
図10(A)は、シーンクラス「FlowerSoil」に該当する確率が高いと推定された画像の具体例である。
ただし、その該当確率は0.227と4分の1以下に留まっており、他のシーンクラスにもある程度該当するとされた例である。
図9の推定モデルでは、シーンクラス「FlowerSoil」は、特徴量「IN_gradientY」,特徴量「IN_gradientRB」が他のシーンクラスと比較して高い為、その様な傾向に合致するパラメータであるかによって、シーンクラス「FlowerSoil」に該当する確率を高く推定する。
【0079】
図10(B)は、シーンクラス「SkyBuilding」に該当する確率が高いと推定された画像の具体例である。
その該当確率は0.482と5割に近い高さであるが、シーンクラス「SkyBuilding_Backlight」についても0.309と3割以上該当するとされた例である。
図9の推定モデルでは、シーンクラス「SkyBuilding」及びシーンクラス「SkyBuilding_Backlight」は、特徴量「IN_Sky」,特徴量「IN_Backlight」が他のシーンクラスと比較して高く、特徴量「IN_gradientRB」が他のシーンクラスと比較して低い為、その様な傾向に合致するパラメータであるかによって、シーンクラス「SkyBuilding」及びシーンクラス「SkyBuilding_Backlight」に該当する確率を高く推定する。
【0080】
図10(C)は、シーンクラス「Green」に該当する確率が高いと推定された画像の具体例である。
その該当確率は0.380と4割に近い高さとされた例である。
図9の推定モデルでは、シーンクラス「Green」は、特徴量「IN_MaxY」,特徴量「IN_Backlight」,特徴量「IN_overexp」,特徴量「IN_high」,特徴量「IN_separability」が他のシーンクラスと比較して低く、特徴量「IN_saturation」が他のシーンクラスと比較して高い為、その様な傾向に合致するパラメータであるかによって、シーンクラス「Green」に該当する確率を高く推定する。
この様にすることにより、シーンクラスを連続値で確率的に推定することができるので、スムースな露出制御が可能となる。
【0081】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0082】
例えば、推論部62が行うルールベース推論は、上述したファジー推論に限られず、様々なルールベース推論の手法を採用することができる。
また、露光計算部46が、露光計算に用いる参照輝度レベルは、撮像に際して外部から取得して良く、事前に取得又は設定して記憶させたもので良く、撮像に際して生成したもので良い。
【0083】
また、入力メンバーシップ関数64及び出力メンバーシップ関数66は、線形補完により変化点から連続関数に変換しているが、2次関数やより高次の関数での補完であって良い。
また、デファジー部63が行うデファジー手法は、上述した重心法に限られず、具体的な露出補正係数を決定可能な、様々なデファジー手法を採用することができる。
【0084】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足りる。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0085】
また例えば、一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであっても良い。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0086】
また例えば、このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0087】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0088】
以上を換言すると、本発明が適用される電子機器は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される電子機器は、
露出制御機構(例えば、図1のドライバD、画像センサS)に適用可能な露出パラメータ(例えば、図2のシャッター速度値Tv、センサ利得値Sv、絞り開度値Av)の算出の基となる特徴量(例えば、図9の特徴量FM)を計算する特徴量計算手段(例えば、図2の特徴量計算部41)を備える電子機器において、
前記特徴量に基づいてルールベース推論(例えば、図5のルールベース推論RI)により、前記露出制御機構に適用可能な露出パラメータの算出の基となる露出補正係数を決定するルールベース推論手段(例えば、図3の推論部62)、
を備える電子機器であれば足りる。
【0089】
ここで、前記電子機器は、
前記特徴量計算手段が計算した前記特徴量をファジー化によりファジー化特徴量とするファジー化手段(例えば、図3のファジー化部61)と、
前記ルールベース推論手段が決定したファジー露出補正係数を、前記露出補正係数に非デファジー化するデファジー手段(例えば、図3のデファジー部63)と、
を更に備え
前記ルールベース推論手段は、前記ファジー化手段がファジー化した前記ファジー化特徴量に基づいて前記ルールベース推論としてファジー推論を行い、前記ファジー露出補正係数を決定する。
【0090】
ここで、前記電子機器は、
前記ルールベース推論手段は、前記露出補正係数又は前記ファジー露出補正係数として全体露出値(例えば、図5のGB)、空間重み値(例えば、図5のSW)及び輝度重み値(例えば、図5のRW)を決定し、
前記露出補正係数に基づいて露光計算をする露光計算手段(例えば、図2の露光計算部46)を更に備える。
【0091】
ここで、前記電子機器は、
分割測光要素を集合させて構成した多分割測光重み表(例えば、図5の多分割重みMW)を算出する多分割測光重み表算出手段(例えば、図2の重み生成部404)を更に備え、
前記露光計算手段は、前記空間重みにより得られる重み表と前記多分割測光重み表とを混合して得た空間重み表(例えば、図7の空間方向の重み表ベクトルWS)と、前記輝度重みを各前記分割測光要素に適用して算出した輝度重み表(例えば、図7の輝度方向の重み表ベクトルWR)とを混合して得た重み表(例えば、図7の補正重み表ベクトルW)を決定する。
【0092】
ここで、前記電子機器は、
前記特徴量計算手段が計算した前記特徴量に基づいて、撮像シーンの各類型(例えば、図9のシーンクラスSC)を推定し、類型毎の該当確率を出力するシーン類型推定手段(例えば、図8のシーン推定部67)、
を更に備え、
前記ルールベース推論手段は、前記シーン類型推定手段が出力した前記各類型の前記該当確率にも基づいて前記露出補正係数又は前記ファジー露出補正係数を決定する。
【0093】
これにより、直感的かつ、AEコアアルゴリズムを理解不要で、原則として既存パラメータとの競合を考慮する必要が無く、インターフェースを統一できる自動露出補正のチューニングを実現することができる。
【符号の説明】
【0094】
1・・・電子機器、11・・・黒レベル補正部、12・・・欠陥ピクセル補正部、13・・・レンズ陰影補正部、14・・・ノイズ除去部、15・・・ホワイトバランス調整部、16・・・デモザイク処理部、17・・・色補正部、18・・・ガンマ補正部、19・・・色空間変換部、20・・・境界強調部、21・・・エンコード部、31・・・ブロック統計部、32・・・自動露出制御部、33・・・自動ホワイトバランス部、41・・・特徴量計算部、42・・・測光コア、43・・・加算器、44・・・ルールベース補正部、45・・・加算器、46・・・露光計算部、47・・・ローパスフィルタ、48・・・露光ダイアグラム生成部、49・・・シーン推定部、61・・・ファジー化部、62・・・推論部、63・・・デファジー部、64・・・入力メンバーシップ関数、入力メンバーシップ関数μ(Hue)・・・64H、65・・・ルールリスト、66・・・出力メンバーシップ関数、66R・・・出力メンバーシップ関数μ(WeightR)、67・・・シーン推定部、401・・・全体補正部、402・・・局所補正部、403・・・適応重みマップ生成部、404・・・重み生成部、405・・・乗算器、A・・・絞り、Av・・・絞り開度値、D・・・ドライバ、HG・・・ヒストグラム、L・・・レンズ、M・・・アクチュエータ、MW・・・多分割重み、RI・・・ルールベース推論、S・・・画像センサ、Sv・・・センサ利得値、Tv・・・シャッター速度値、W・・・補正重み表ベクトル、WM・・・多分割重みベクトル、WS・・・空間方向の重み表、WR・・・輝度方向の重み表ベクトル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10