(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】歯の漂白用のデバイス及びキット
(51)【国際特許分類】
A61C 19/06 20060101AFI20230112BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230112BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61C19/06 Z
A61Q11/00
A61K8/20
(21)【出願番号】P 2018160862
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】502124248
【氏名又は名称】リジェンティス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100107799
【氏名又は名称】岡田 希子
(72)【発明者】
【氏名】柴 肇一
(72)【発明者】
【氏名】川添 祐美
(72)【発明者】
【氏名】野口 直樹
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-536935(JP,A)
【文献】特表2012-515121(JP,A)
【文献】特表2015-512423(JP,A)
【文献】国際公開第2017/060677(WO,A1)
【文献】特表2013-543759(JP,A)
【文献】国際公開第2012/115022(WO,A1)
【文献】特開2004-000509(JP,A)
【文献】特開2004-236962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0040307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/06
A61Q 11/00
A61K 8/20
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部部材、外部部材の内部に載置された亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との間に位置する第一隔壁、及び漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)と中和用剤(III)との間に位置する第二隔壁とを備えることを特徴とする歯の漂白用デバイスであって、
中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端部に結合された、中空容器内を回転しながら移動する回転移動部材とを有し、中空容器は、その内部であって一端部にめねじ部材を有し、めねじ部材及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、一方には亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)が、及び、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し、ここで、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)の少なくとも一方は水溶液の形態であり、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、中和用剤(III)は固体であり、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、回転移動部材が中空容器内を第一移動量だけ進むと第一室と第二室とが連通し、回転移動部材がさらに中空容器内を第二移動量だけ進むと第二室と第三室とが連通する構成である、歯の漂白用デバイス。
【請求項2】
回転移動部材が、その先端に突刺部分を備えるネジである、請求項1に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項3】
液体吸収・保持部材がろ紙、スポンジ又は微細なブラシ構造体である、請求項1又は2に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項4】
外部部材、外部部材の内部に載置された亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との間に位置する第一隔壁、及び漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)と中和用剤(III)との間に位置する第二隔壁とを備えることを特徴とする歯の漂白用デバイスであって、
中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端部に結合された、中空容器内を回転しながら移動する回転移動部材とを有し、中空容器は、その内部であって一端部にめねじ部材を有し、めねじ部材及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、一方には亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)が、及び、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し、ここで、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)の少なくとも一方は水溶液の形態であり、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には、封止部材が存在し、回転移動部材が中空容器内を第一移動量だけ進むと第一室と第二室とが連通し、回転移動部材がさらに中空容器内を第二移動量だけ進むと第二室と第三室とが連通する構成である、歯の漂白用デバイス。
【請求項5】
回転移動部材が、その先端に突刺部分を備えるネジである、請求項4に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項6】
液体吸収・保持部材がろ紙、スポンジ又は微細なブラシ構造体である、請求項4又は5に記載の歯の漂白用デバイス。
【請求項7】
中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端に結合される回転移動部材とを含む歯の漂白用キットであって、
中空容器は、その内部であって一端部にめねじ部材を有し、一端は封止部材で封止されており、めねじ部材及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、一方には亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)が、及び、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し、ここで、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)の少なくとも一方は水溶液の形態であり、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、中和用剤(III)は固体であり、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、中空容器の一端の封止部材を除去するか又はそれに孔をあけて中空容器の一端に回転移動部材を結合させ、回転移動部材を中空容器内で第一移動量だけ進行させると中空容器の第一室と第二室とが連通し、回転移動部材をさらに中空容器内で第二移動量だけ進行させると中空容器の第二室と第三室とが連通する構成である、歯の漂白用キット。
【請求項8】
中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端に結合される回転移動部材とを含む歯の漂白用キットであって、
中空容器は、その内部であって一端部にめねじ部材を有し、一端は封止部材で封止されており、めねじ部材及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、一方には亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)が、及び、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し、ここで、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)の少なくとも一方は水溶液の形態であり、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には、封止部材が存在し、中空容器の一端の封止部材を除去するか又はそれに孔をあけて中空容器の一端に回転移動部材を結合させ、回転移動部材を中空容器内で第一移動量だけ進行させると中空容器の第一室と第二室とが連通し、回転移動部材をさらに中空容器内で第二移動量だけ進行させると中空容器の第二室と第三室とが連通する構成である、歯の漂白用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜塩素酸又はその塩を使用して歯を漂白するためのデバイス及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歯のホワイトニングには、過酸化水素や過酸化尿素等の酸素系漂白剤が用いられている。しかし、これらの酸素系漂白剤を用いたホワイトニングで有効な効果を得るためには、通常、8乃至10分間の処理を3回行うこと、即ち、合計で約30分間以上の処理時間が必要であり、数時間を要する場合もあった。
【0003】
日本において食品添加物としての使用が許可されている亜塩素酸ナトリウムを用いた歯の漂白方法が、特許文献1及び2に開示されている。特許文献1によると、亜塩素酸ナトリウムを酸味料と接触させて二酸化塩素を生じさせ、その二酸化塩素によって歯を漂白するのである。しかし、特許文献1に記載の方法では、酸性状態で漂白を行うため、歯の脱灰を促進してしまうという問題がある。
【0004】
特許文献2の
図1には、亜塩素酸ナトリウムにクエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液を加えて系のpHを低下させても、二酸化塩素はわずかしか生成されなかった旨が、また
図1及び
図3には、クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液の代わりに無水コハク酸及びコハク酸二ナトリウムを加えると、二酸化塩素が生成され且つ漂白効果が得られた旨が記載されている。後者の実施例では、亜塩素酸ナトリウムに弱塩基性(5%水溶液のpHが7.0乃至9.0)のコハク酸二ナトリウムを先に加え、その後、使用直前に無水コハク酸を加えている。
【0005】
また、特許文献1及び2のいずれも、使用の直前まで、亜塩素酸ナトリウムと酸味料又は有機酸無水物とを、物理的に相互に隔離した状態に保持する旨を教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2000-516221
【文献】特表2009-536935
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、歯を脱灰することなく、高効率で、即ち、短時間で、且つ自宅においても安全且つ容易に歯のホワイトニングを実施できる歯の漂白用のデバイス及びキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歯の漂白用デバイスは、外部部材、外部部材の内部に載置された亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)との間に位置する第一隔壁、及び漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)と中和用剤(III)との間に位置する第二隔壁とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明第一の態様の歯の漂白用デバイスは、中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端部に結合された圧力供給部材とを有し、中空容器の圧力供給部材に最も近い第一室及びそれに隣接する第二室には、それぞれ、亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水溶液及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在するか、又は、それぞれ、酸性化剤(II)の水溶液及び漂白剤前駆体(I)が存在し、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には封止部材が存在していてもよく、圧力供給部材によって圧力をかけることにより、第一室と第二室とを連通させることができ、その後さらに圧力をかけることで、第二室と第三室とを連通させることができることを特徴とする。
【0010】
本発明第二の態様の歯の漂白用デバイスは、中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端部に結合された、中空容器内を回転しながら移動する回転移動部材とを有し、中空容器は、その内部であって一端部にめねじ部材を有し、めねじ部材及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、一方には亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)が、及び、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し、ここで、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)の少なくとも一方は水溶液の形態であり、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には封止部材が存在していてもよく、回転移動部材が中空容器内を第一移動量だけ進むと第一室と第二室とが連通し、回転移動部材がさらに中空容器内を第二移動量だけ進むと第二室と第三室とが連通する構成であることを特徴とする。
【0011】
本発明第三の態様の歯の漂白用デバイスは、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)と、第一隔壁と、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)と、第二隔壁と、固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)とがこの順で存在するか、又は、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)と、第一隔壁と、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)と、第二隔壁と、固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)とがこの順で存在しており、中和用剤(III´)が保持部材に保持されているか、及び/又は、中和用剤(III´)の第二隔壁に対向する側の反対側に液体吸収・保持部材があり、これらの外周部には外部部材が存在することを特徴とする。
【0012】
本発明第一の態様の歯の漂白用キットは、中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端部に結合される圧力供給部材とを含む歯の漂白用キットであって、中空容器は、その一端が封止部材で封止されており、その一端及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、それぞれ、亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水溶液及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在するか、又は、それぞれ、酸性化剤(II)の水溶液及び漂白剤前駆体(I)が存在し、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には封止部材が存在していてもよく、中空容器の一端の封止部材を除去するか又はそれに孔をあけて中空容器の一端に圧力供給部材を結合させ、圧力供給部材によって圧力をかけることにより、第一室と第二室とを連通させることができ、その後さらに圧力をかけることで、第二室と第三室とを連通させることができることを特徴とする。このキットを組み立てると、本発明第一の態様の歯の漂白用デバイスとなる。
【0013】
本発明第二の態様の歯の漂白用キットは、中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端に結合される回転移動部材とを含む歯の漂白用キットであって、中空容器は、その内部であって一端部にめねじ部材を有し、一端は封止部材で封止されており、めねじ部材及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、一方には亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)が、及び、他方にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し、ここで、漂白剤前駆体(I)と酸性化剤(II)の少なくとも一方は水溶液の形態であり、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には封止部材が存在していてもよく、中空容器の一端の封止部材を除去するか又はそれに孔をあけて中空容器の一端に回転移動部材を結合させ、回転移動部材を中空容器内で第一移動量だけ進行させると中空容器の第一室と第二室とが連通し、回転移動部材をさらに中空容器内で第二移動量だけ進行させると中空容器の第二室と第三室とが連通する構成であることを特徴とする。このキットを組み立てると、本発明第二の態様の歯の漂白用デバイスとなる。
【0014】
本発明第三の態様の歯の漂白用キットは、中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された第一隔壁及び第二隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ三室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端部に結合されるシリンジとを含む歯の漂白用キットであって、中空容器は、その一端が封止部材で封止されており、その一端及び第一隔壁で画された第一室及びそれに隣接する第二室には、それぞれ、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)及びその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在するか、又は、それぞれ、固体の酸性化剤(II´)及び漂白剤前駆体(I)が存在し、第二室に隣接する第三室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第三室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には封止部材が存在していてもよく、並びに、シリンジが水性液体を含有しているか、又は、シリンジに加え、水性液体を含有している小容器を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明第四の態様の歯の漂白用キットは、中空の外部部材と、外部部材の内部に配置された隔壁とを備え、外部部材の内部は直列状に並んだ二室に分かれている中空容器と、その中空容器の一端部に結合されるシリンジとを含む歯の漂白用キットであって、中空容器は、その一端が封止部材で封止されており、その一端及び隔壁で画された第一室には、亜塩素酸若しくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)又はその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)が存在し、第二室には、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)が存在し、第二室の開放端には、液体吸収・保持部材が存在し、液体吸収・保持部材の外側には封止部材が存在していてもよく、並びに、シリンジが、漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)の水溶液であって、中空容器の第一室には存在しないものを含有しているか、又は、シリンジに加え、漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)の水溶液であって、中空容器の第一室には存在しないものを含有している小容器を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明第五の態様の歯の漂白用キットは、本発明第三の態様の歯の漂白用デバイスと、水性液体供給用部材とを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明第六の態様の歯の漂白用キットは、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)又は固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)と、隔壁と、固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)とがこの順で存在しており、中和用剤(III´)が保持部材に保持されているか、及び/又は、中和用剤(III´)の隔壁に対向する側の反対側に液体吸収・保持部材があり、これらの外周部には外部部材が存在するデバイスと、デバイスが漂白剤前駆体(I´)を備える場合にはその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)を、また、デバイスが酸性化剤(II´)を備える場合には亜塩素酸若しくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水溶液を収納した液体供給用部材とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の歯の漂白用デバイス及びキットは、発明を実施するための形態に記載する、好ましい構成要件の任意の組合せを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、歯を脱灰することなく、高効率で、即ち、短時間で、歯のホワイトニングを実施できるようになる。本発明により、飛躍的に高い歯の漂白効果が、容易に且つ確実に得られる。本発明により、自宅やエステティックサロンにおいても歯の漂白を実施できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の歯の漂白用デバイスの第一の態様の断面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す歯の漂白用デバイスの、圧力供給部材を取り付ける前の中空容器の一部を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の歯の漂白用デバイスの第一の態様の別の例を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す歯の漂白用デバイスの、圧力供給部材を取り付ける前の中空容器の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の歯の漂白用デバイスの第二の態様の断面模式図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す歯の漂白用デバイスの、回転移動部材を示す正面模式図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す歯の漂白用デバイスの、回転移動部材を取り付ける前の中空容器の一部を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の歯の漂白用キットの第三の態様における中空容器を示す断面模式図である。
【
図9】
図9は、本発明の歯の漂白用キットの第四の態様における中空容器を示す断面模式図である。
【
図10】
図10は、本発明の歯の漂白用デバイスの第三の態様の断面模式図である。
【
図11】
図11は、本発明の歯の漂白用キットの第五の態様における水性液体供給用部材60の模式的一部切欠き斜視図及びその使用時の状態を示す模式的断面図である。
【
図12】
図12は、水性液体供給用部材の他の例であるパウチを示す模式的斜視図である。
【
図13】
図13は、本発明の歯の漂白用デバイスの第三の態様の変形例1を示す断面模式図である。
【
図14】
図14は、本発明の歯の漂白用デバイスの第三の態様の変形例2を示す断面模式図である。
【
図15】
図15は、本発明の歯の漂白用キットの第六の態様におけるデバイス示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
先ず初めに、本明細書及び特許請求の範囲において使用する用語の意味等を説明する。
【0022】
亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)及びその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III)は、各々、水溶液等の水性液体や、粉末等の固体の形態をとり得る。その形態が固体のものに限定される場合には、漂白剤前駆体(I´)、酸性化剤(II´)及び中和用剤(III´)と表記する。「水性液体」の定義には、ある特定の物質のみが水に溶解している水溶液のみならず、ある物質特定の物質以外の成分をも含有する水性液体、例えば、ある物質の生理食塩水溶液、緩衝剤水溶液、水性懸濁液及び水性ゲル等も包含される。
【0023】
漂白剤前駆体(I)に含有される亜塩素酸は、無色の液体である。漂白剤前駆体(I)及び(I´)に含有される亜塩素酸塩の例としては、亜塩素酸ナトリウム(CAS:7758-19-2)、亜塩素酸カリウム及び亜塩素酸リチウム等の水溶性の亜塩素酸塩が挙げられる。亜塩素酸塩は、その中性の水溶液は比較的安定である。亜塩素酸ナトリウムの水溶液は、無色乃至淡黄色である。亜塩素酸ナトリウムには、無水塩と三水塩が存在する。無水塩は無色の結晶性粉末であり、水に易溶であり、その水溶液は、塩基性では光にあてない限り安定である。したがって、漂白剤前駆体(I)として、固体(例えば、粉末状)の亜塩素酸ナトリウム又はその塩基性水溶液を使用することが特に好ましい。また、漂白剤前駆体(I´)として、固体の亜塩素酸ナトリウムを使用することが好ましい。なお、漂白剤前駆体(I)の中で、その性状が固体であるものに限定する場合、漂白剤前駆体(I´)という。
【0024】
酸性化剤(II)及び(II´)に含有される「その水溶液が酸性を示す物質」は、無機酸又はその塩でも、有機酸又はその塩でもよく、特に限定されない。「その水溶液が酸性を示す物質」の例としては、ギ酸、酢酸、アスコルビン酸、リン酸類、クエン酸、硫酸及び塩酸、並びにそれらの塩類、例えばアルカリ金属塩が挙げられる。これらの中で、リン酸類、クエン酸及び硫酸並びにそれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種を使用することが好ましい。また、リン酸類及びそれらの塩類の中で、縮合リン酸類及びそれらの塩類からなる群から選択される少なくとも一種を使用することがさらに好ましく、ウルトラリン酸又はその塩を使用することが特に好ましい。酸性化剤(II)においては、「その水溶液が酸性を示す物質」が結晶や粉末形態の場合には、そのまま使用してもよいし、水溶液として使用してもよい。また、酸性化剤(II´)と表記した場合には、それは固体である。
【0025】
「縮合リン酸」とは、2個以上のリン酸(PO4)四面体が酸素原子を共有するポリマー又はそのオキソ酸を意味する。「縮合リン酸」には、直鎖状構造を有する「ポリリン酸」、環状構造又は極めて長い直鎖状構造を有する「メタリン酸」、高度な枝分かれ状(網目状)構造を有する「ウルトラリン酸」が包含される。さらに、「ポリリン酸」には、「長鎖ポリリン酸」、「中鎖ポリリン酸」、「短鎖ポリリン酸」がある。ウルトラリン酸及び短鎖ポリリン酸には、酸性化剤としての効果に加えて、物理化学的に歯のエナメル質や象牙質に沈着した色素(ステイン)の除去及び沈着防止効果が認められている。
【0026】
中和用剤(III)及び(III´)に含有される、「その水溶液が塩基性を示す物質」は、水溶性であり且つ酸を中和できるものであれば特に限定されない。「その水溶液が塩基性を示す物質」の例として、リン酸水素二ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アンモニア、アルギニン、及びエタノールアミン類が挙げられる。「その水溶液が塩基性を示す物質」は、二種以上の物質の混合物であってもよい。例えば、リン酸水素二ナトリウムと水酸化ナトリウムとの併用系である。中和用剤(III)は、水を含有するもの、例えば、水溶液や水性ゲルであってもよい。「その水溶液が塩基性を示す物質」が結晶や粉末形態等の固体である場合には、中和用剤(III)は、固体そのままであっても、そのような固体の水溶液であってもよい。また、「中和用剤(III´)」と表記した場合には、それは固体である。
【0027】
本発明において、漂白剤前駆体(I)、酸性化剤(II)及び中和用剤(III)の各々は、それらの必須成分のほかに、本発明によって得られる効果を損ねない限り、他の任意成分をも含有していてもよい。それらの任意成分は、漂白剤前駆体(I)、酸性化剤(II)、及び中和用剤(III)のいずれに含有されていてもよく、あるいは、これらとは別途に提供されてもよい。任意成分の例としては、プラチナ・ナノコロイド、二酸化チタン、塩化白金酸、酸化コバルト、追加の水等が挙げられる。
【0028】
次に、図面を参照して、本発明の歯の漂白用デバイス及びキットの好ましい実施形態を、順に説明する。
【0029】
(第一の態様の歯の漂白用デバイス及び歯の漂白用キット)
図1は、本発明の歯の漂白用デバイスの第一の態様の断面模式図である。歯の漂白用デバイス1は、中空容器100と圧力供給部材であるスポイトのポンプ部分160とを有する。
【0030】
まず、中空容器100から説明する。中空容器100は、中空の外部部材133を備える。中空の外部部材133は、例えば、非透水性で硬質のチューブ、より具体的には、その横断面形状が円形のプラスチックチューブであり、その太さは一様ではなく、一端141から他端142に向かって、若干の末広がりとなっている(換言すると、他端142から一旦141に向かって先細り(テーパ状)となっている)。外部部材133は、透明、半透明及び不透明のいずれでもよい。中空容器100の一端141は、本発明のデバイス1の使用時には、後記する圧力供給部材であるスポイトのポンプ部分160の内部に対向した開放端となっており、他端142は、液体吸収・保持部材32によって閉鎖されている。
【0031】
この外部部材133の内部には、一端141側から他端142側に向かって順に、第一室10、第一隔壁21、第二室11、第二隔壁22、第三室12及び液体吸収・保持部材32が存在する。液体吸収・保持部材32は、外部部材133の他端部152内に存在する。第一室10及び第二室11には、それぞれ、漂白剤前駆体(I)の水溶液及び酸性化剤(II)が存在するか、又は、それぞれ、酸性化剤(II)の水溶液及び漂白剤前駆体(I)が存在する。即ち、第一室10には水溶液が収納されている。第二室11に収納されている酸性化剤(II)又は漂白剤前駆体(I)は、その性状は限定されない、即ち、水溶液でも粉末(固体)であってもよい。また、第三室12に収納されている中和用剤(III)は、水溶液でも粉末(固体)であってもよい。第一隔壁21及び第二隔壁22は、非透水性の材料製、例えば、プラスチックやゴム製である。
【0032】
液体吸収・保持部材32は、漂白の際にその表面が歯に当てられる部分である。その材質は、液体を吸収・保持できるものであればよい。例えば、ろ紙、スポンジ、及び微細なブラシ構造体が、液体吸収・保持部材32として使用可能である。本発明の歯の漂白用デバイス1は、その使用前には、他端142であって液体吸収・保持部材32の外側に、封止部材154が存在する。但し、第三室12に収納されている中和用剤(III)が固体である場合には、封止部材154がなくてもよい。また、本発明の歯の漂白用デバイス1の使用時には、封止部材154は除去される。
【0033】
この例において、圧力供給部材は、弾性変形可能なプラスチックあるいはゴムにより作られているスポイトのポンプ部分160である。スポイトのポンプ部分160の中には、空気が収容されている。スポイトのポンプ部分160は、中空容器100の一端部151の外側に取り付けられている。
【0034】
図2は、スポイトのポンプ部分160を取り付ける前の中空容器100の一部を示す斜視図である。
図2(1)に示すように、スポイトのポンプ部分160を取り付ける前の中空容器100の一端141は、シール155により封止されている。この状態、即ち、ここで説明したシール155により封止された中空容器100とスポイト160とが別々に存在するものは、本発明の歯の漂白用キットの第一の態様である。使用する際には、シール155を取り除き(
図2(2)を参照のこと)、スポイトのポンプ部分160を、中空容器100の一端部151の外側に取り付ける。シール155を取り除く代わりに、シール155に孔をあけてもよい。
【0035】
図1に示す歯の漂白用デバイス1の使用例を説明する。使用者は、先ず、封止部材154を取り除く。次いで、使用者が圧力供給部材であるスポイトのポンプ部分160を指で1回押すと、空気圧が漂白剤前駆体(I)の水溶液を介して第一隔壁21にかかり、それによって第一隔壁21が押されて外れる。これにより、第一室と第二室とが連通し、漂白剤前駆体(I)の水溶液に酸性化剤(II)が溶解し、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。第一室に酸性化剤(II)の水溶液が存在する場合には、酸性化剤(II)の水溶液に漂白剤前駆体(I)が溶解し、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。この酸性液体中で、亜塩素酸又はその塩が分解して、二酸化塩素が生成される。
【0036】
所定時間経過後、即ち、十分な量の二酸化塩素が生成されたら、使用者はスポイトのポンプ部分160を指でもう1回押す。これにより、空気圧が第二隔壁22にかかり、それによって第二隔壁22が押されて外れ、第二室と第三室とが連通する。その結果、中空容器100の内容物全てが混ざり、酸性の液体が中和される。中和後の液体には、二酸化塩素が含まれている。この液体は、液体吸収・保持部材32に吸収・保持される。液体吸収・保持部材32を歯の表面に当てることにより、液体吸収・保持部材32を通じて二酸化塩素含有液体が歯の表面に供給され、それによって歯が漂白される。
【0037】
(第一の態様の歯の漂白用デバイス及び歯の漂白用キットの他の例)
図3は、本発明の歯の漂白用デバイスの第一の態様の他の例の断面模式図である。歯の漂白用デバイス2は、中空容器200と圧力供給部材であるシリンジ260とを有する。
【0038】
まず、中空容器200から説明する。中空容器200は、中空の外部部材233を備える。中空の外部部材233は、非透水性で硬質のチューブ、例えば、その横断面形状が円形のプラスチックチューブであり、その太さは一様である。この中空の外部部材233は、透明、半透明及び不透明のいずれでもよい。中空容器200の一端241の外側には、接続部材259が存在する。接続部材259は、中空容器200内の一端部251に存在してもよい。接続部材259は、例えば可撓性を有するゴム製のリングである。他端242は、液体吸収・保持部材32によって閉鎖されている。
【0039】
この中空容器200の内部の構成は、前記した中空容器100の内部の構成と同じである。また、液体吸収・保持部材32及び封止部材254も、それぞれ、中空容器100の液体吸収・保持部材32及び封止部材154と同じである。
【0040】
この例では、圧力供給部材は、例えばプラスチック製のシリンジ260である。シリンジ260の中には、空気が収容されている。シリンジ260は、その先端部265が接続部材259の孔273を通って中空容器200の一端241の孔271に指し込まれることにより、中空容器200に接続される。
【0041】
図4は、シリンジ260を取り付ける前の中空容器200の一部を示す斜視図である。
図4(1)に示すように、シリンジ260を取り付ける前の接続部材259の一端(中空容器200と向き合っていない方)は、シール255により封止されている。この状態、即ち、ここで説明したシール255により封止された接続部材259を伴う中空容器200とシリンジ260とが別々に存在するものは、本発明の歯の漂白用キットの第一の態様の他の例である。使用する際には、シール255を取り除き(
図4(2)を参照のこと)、シリンジ260の先端部265を、接続部材259の孔273を介して中空容器200の一端241の孔271に指し込む。これにより、シリンジ260が気密状態で中空容器200に取り付けられる。
【0042】
図3に示す歯の漂白用デバイス2の使用例を説明する。使用者は、先ず、封止部材254を取り除く。次いで、使用者がシリンジ260のピストン263を押して、ピストン263を所定距離だけ移動させると、空気圧が漂白剤前駆体(I)の水溶液を介して第一隔壁21に加わることで、第一隔壁21が押されて外れる。これにより、第一室と第二室とが連通し、漂白剤前駆体(I)の水溶液に酸性化剤(II)が溶解し、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。第一室に酸性化剤(II)の水溶液が存在する場合には、酸性化剤(II)の水溶液に漂白剤前駆体(I)が溶解して混ざり、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。この酸性液体中で、亜塩素酸又はその塩が分解して、二酸化塩素が生成される。
【0043】
所定時間経過後、即ち、十分な量の二酸化塩素が生成されたら、使用者はシリンジ260のピストン263を指でもう1回押す。これにより、空気圧によって第二隔壁22が押されて外れ、第二室と第三室とが連通する。その結果、中空容器200の内容物全てが混ざり、酸性の液体が中和される。中和後の液体には、二酸化塩素が含まれている。この液体は、液体吸収・保持部材32に吸収・保持される。液体吸収・保持部材32を歯の表面に当てることにより、液体吸収・保持部材32を通じて二酸化塩素含有液体が歯の表面に供給され、それによって歯が漂白される。
【0044】
(第二の態様の歯の漂白用デバイス及び歯の漂白用キット)
図5は、本発明の第二の態様の歯の漂白用デバイスの断面模式図である。歯の漂白用デバイス3は、中空容器300と回転移動部材360とを有する。
【0045】
まず、中空容器300から説明する。中空容器300の構造は、
図3に示すデバイス2の中空容器200の構造に似ている。中空容器300は、中空の外部部材333を備える。中空の外部部材333は、非透水性で硬質のチューブ、例えば、その横断面形状が円形のプラスチックチューブであり、その太さは一様である。この中空の外部部材333は、透明、半透明及び不透明のいずれでもよい。中空容器300の一端部351の内側には、めねじ部材303が存在する。めねじ部材303は、例えば可撓性を有するゴム製の、より具体的にはシリコーンゴム製のリング305と、そのリング305の孔に密に装入された金属製のめねじ306とで構成されているものである。他端342は、液体吸収・保持部材32によって閉鎖されている。
【0046】
この中空容器300の内部の構成は、前記した中空容器100の内部の構成と同じである。また、液体吸収・保持部材32は、中空容器100の液体吸収・保持部材32と同じである。中空容器300では、液体吸収・保持部材32の外側に封止部材がないが、封止部材が存在していてもよい。
【0047】
図6に示すように、回転移動部材360は、操作部301と、おねじ部分302と、突刺部分304とを有する。回転移動部材360は、例えば金属製である。おねじ部分302は、中空容器300の内側に固定されているめねじ部材303のめねじ部分306に噛み合う。突刺部分304は、おねじ部分302の先端中央において、第一隔壁21側に向かって突出している。
【0048】
図7は、回転移動部材360を取り付ける前の中空容器300の一部を示す斜視図である。
図7(1)に示すように、回転移動部材360を取り付ける前の中空容器300の一端341は、シール355により封止されている。この状態、即ち、ここで説明したシール355により封止された中空容器300と回転移動部材360とが別々に存在するものは、本発明第三の態様の歯の漂白用キットである。使用する際には、シール355を取り除き(
図7(2)を参照のこと)、回転移動部材360を回転させながら、そのおねじ部分302をめねじ部材303のめねじ部分306と噛み合わせる。中空容器300に回転移動部材360を接続した後、操作部301を回転させると、回転移動部材360は中空容器300内を軸方向に移動する。
【0049】
図5及び
図6には記載されていないが、おねじ部分302の途中に、このおねじ部分302の直線移動量を規制するストッパを取り付けてもよい。このストッパは、操作部301を回転操作する際に、突刺部分304が第1移動量S1だけ移動するように移動量を規制する。そして、操作部301を強く回転操作すると、ストッパが破損され、突刺部分304をさらに第2移動量S2だけ移動することができるように構成する。
【0050】
図5に示す歯の漂白用デバイス3の使用例を説明する。使用者が操作部301を回転させることにより、突刺部分304が第1移動量S1だけ移動し、第一隔壁21を突き破る。これにより、第一室と第二室とが連通し、漂白剤前駆体(I)の水溶液に酸性化剤(II)が溶解し、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。第一室に酸性化剤(II)の水溶液が存在する場合には、酸性化剤(II)の水溶液に漂白剤前駆体(I)が溶解し、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。この酸性液体中で、亜塩素酸又はその塩が分解して、二酸化塩素が生成される。
【0051】
所定時間経過後、即ち、十分な量の二酸化塩素が生成されたら、使用者は操作部301をさらに回転させる。この回転操作により、突刺部分304がさらに第2移動量S2だけ移動し、第二隔壁22を突き破る。これにより、第二室と第三室とが連通する。その結果、中空容器300の内容物全てが混ざり、酸性の液体が中和される。中和後の液体には、二酸化塩素が含まれている。この液体は、液体吸収・保持部材32に吸収・保持される。液体吸収・保持部材32を歯の表面に当てることにより、液体吸収・保持部材32を通じて二酸化塩素含有液体が歯の表面に供給され、それによって歯が漂白される。
【0052】
前記したストッパが存在する場合には、突刺部分304が第1移動量S1だけ移動すると、ストッパによって操作部301の回転が停止される。しかし、その後、操作部301をさらに強く回転させてストッパを破損させることで、突刺部分304をさらに第2移動量S2だけ移動させることが可能となる。即ち、ストッパ部材が存在する場合には、1回目の回転操作による第1移動量S1の設定操作と、2回目の回転操作による第2移動量S2の設定操作を、容易に且つ明確に区別することができる。
【0053】
(第三の態様の歯の漂白用キット)
図8は、本発明の歯の漂白用キットの第三の態様に含まれる中空容器400の断面模式図である。このキットには、他に、圧力供給部材であるシリンジが含まれている。このシリンジの構成は、水性液体を含有していることを除き、第一の態様の歯の漂白用デバイス及びキットの他の例で使用したもの(
図3を参照のこと)と同じである。また、このキットには、シリンジが水性液体を含有しておらず、水性液体は、別途、小容器に封入されて提供されるという態様も包含される。
【0054】
中空容器400について説明する。中空容器400は、中空の外部部材433を備える。中空の外部部材433は、非透水性で硬質のチューブ、例えば、その横断面形状が円形のプラスチックチューブであり、その太さは一様である。この中空の外部部材433は、透明、半透明及び不透明のいずれでもよい。中空容器400の一端441の外側には、接続部材459が存在する。接続部材459は、中空容器400内の一端部451に存在してもよい。接続部材459は、例えば可撓性を有するゴム製のリングである。接続部材459の孔473は、シール455等の封止部材によって閉鎖されている。他端442は、液体吸収・保持部材32によって閉鎖されている。
【0055】
この中空容器400の内部には、一端441側から他端442側に向かって順に、第一室10、第一隔壁21、第二室11、第二隔壁22、第三室12及び液体吸収・保持部材32が存在する。液体吸収・保持部材32は、中空容器400の他端部452内に存在する。第一室10には、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在し、第二室11には、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)が存在し、第三室12には、固体の、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)が存在する。第一室10に固体の酸性化剤(II´)が存在し、第二室11に固体の漂白剤前駆体(I´)が存在してもよい。また、第一室10に存在する成分は固体であるが、第二室11及び第三室12に存在する成分の性状は、固体に限定されず、液体でもよい。第一隔壁21及び第二隔壁22は、非透水性の材料製、例えばプラスチック又はゴム製である。しかし、第一室10及び第二室11に存在する成分が共に固体である場合には、第一隔壁21は、例えばろ紙のような、小さな力(水圧又は空気圧)で外れるものでもよい。
【0056】
液体吸収・保持部材32は、中空容器100の液体吸収・保持部材32と同じである。中空容器400の他端442には封止部材がないが、他端442は封止部材で封止されていてもよい。第三室12に存在する成分の性状が液体である場合には、他端442には封止部材が存在する(
図3における封止部材254を参照のこと)。
【0057】
このキットのもう一つの構成要件であるシリンジは、その形状は
図3に示されているものと同じであるが、水性液体を含有している点が異なる。なお、本発明の歯の漂白用キットの第三の態様には、水性液体を含有していないシリンジ260と、そのシリンジ260に注入される水性液体の入った小容器とが提供され、小容器内の水性液体がシリンジ260に装入されて使用される態様も包含される。水性液体とは、水、生理食塩水、緩衝剤水溶液、水性懸濁液等をいう。
【0058】
図8に示す中空容器433の接続部材459からシール455を剥がし、接続部材459の孔473を介して中空容器400の孔471に、水性液体を含有するシリンジの先端部を装入して組み立てた歯の漂白用デバイスの使用例を説明する。使用者が、圧力供給部材であるシリンジのピストンを押して所定距離だけ移動させると、シリンジ中の水性液体が第一室10に流入する。第一室10に存在する固体の漂白剤前駆体(I´)は、流入した水性液体に溶解する。シリンジのピストンをさらに押すと、シリンジ中の空気による空気圧が漂白剤前駆体(I´)を溶解した水性液体に加わることで、第一隔壁21が押されて外れる。これにより、第一室10と第二室11とが連通する。その結果、水性液体に第二室11に存在する固体の酸性化剤(II´)が溶解し、亜塩素酸塩の酸性液体が生成される。第一室10に固体の酸性化剤(II´)が存在する場合には、先ず、酸性化剤(II´)を溶解した水性液体が調製され、次いでその水性液体に固体の漂白剤前駆体(I´)が溶解し、亜塩素酸塩の酸性液体が生成される。この酸性液体中で、亜塩素酸塩が分解して、二酸化塩素が生成される。
【0059】
所定時間経過後、即ち、十分な量の二酸化塩素が生成されたら、使用者はシリンジのピストンを指でもう1回押す。これにより、空気圧によって第二隔壁22が押されて外れ、第二室11と第三室12とが連通する。その結果、第三室12に存在する固体の中和用剤(III´)も水性液体に溶解し、第二室11に存在した酸性の液体が中和される。中和後の液体には、二酸化塩素が含まれている。この液体は、液体吸収・保持部材32に吸収・保持される。液体吸収・保持部材32を歯の表面に当てることにより、液体吸収・保持部材32を通じて二酸化塩素含有液体が歯の表面に供給され、それによって歯が漂白される。
【0060】
(第四の態様の歯の漂白用キット)
図9は、本発明の歯の漂白用キットの第四の態様に含まれる中空容器500の断面模式図である。このキットには、他に、圧力供給部材であるシリンジが含まれている。このシリンジの構成は、漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)の水溶液を含有していることを除き、第一の態様の歯の漂白用デバイス及びキットの他の例で使用したもの(
図3を参照のこと)と同じである。また、このキットには、シリンジが漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)の水溶液を含有しておらず、当該水溶液は、別途、小容器に封入されて提供されるという態様も包含される。
【0061】
中空容器500について説明する。中空容器500は、中空の外部部材533を備える。中空の外部部材533は、非透水性で硬質のチューブ、例えば、その横断面形状が円形のプラスチックチューブであり、その太さは一様である。この中空の外部部材533は、透明、半透明及び不透明のいずれでもよい。中空容器500の一端541の外側には、接続部材559が存在する。接続部材559は、中空容器500内の一端部551に存在してもよい。接続部材559は、例えば可撓性を有するゴム製のリングである。接続部材559の孔573は、シール555等の封止部材によって閉鎖されている。他端542は、液体吸収・保持部材32によって閉鎖されている。
【0062】
この中空容器500の内部には、一端541側から他端542側に向かって順に、第一室13、隔壁23、第二室14及び液体吸収・保持部材32が存在する。液体吸収・保持部材32は、中空容器500の他端部552内に存在する。第一室13には、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)が存在し、第二室14には、固体の、その水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)が存在する。第一室13に、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在してもよい。また、第一室13に存在する成分は固体であるが、第二室14に存在する成分の性状は、固体に限定されず、液体でもよい。隔壁23は、非透水性の材料製、例えばプラスチック又はゴム製である。
【0063】
液体吸収・保持部材32は、中空容器100の液体吸収・保持部材32と同じである。中空容器500の他端542には封止部材がないが、他端542は封止部材で封止されていてもよい。第二室14に存在する成分の性状が水溶液である場合には、他端542には封止部材が存在する(
図3における封止部材254を参照のこと)。
【0064】
このキットのもう一つの構成要件であるシリンジは、その形状は
図3に示されているものと同じであるが、亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水溶液(中空容器500の第一室13には、固体の、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)が存在している場合)、又は、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(III)の水溶液(中空容器500の第一室13には、固体の、亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在している場合)を含有している点が異なる。なお、本発明の歯の漂白用キットの第四の態様には、前記水溶液を含有していないシリンジ260と、そのシリンジ260に注入される、漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)の水溶液の入った小容器とが提供され、小容器内の水溶液がシリンジ260に装入されて使用される態様も包含される。
【0065】
図9に示す中空容器500の接続部材559からシール555を剥がし、接続部材559の孔573を介して中空容器500の孔571に、前記水溶液を含有するシリンジの先端部を装入して組み立てた歯の漂白用デバイスの使用例を説明する。使用者が、圧力供給部材であるシリンジのピストンを押して所定距離だけ移動させると、シリンジ中の漂白剤前駆体(I)の水溶液が第一室13に流入する。第一室13に存在する固体の酸性化剤(II´)が、流入した水溶液に溶解し、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。この酸性液体中で、亜塩素酸又はその塩が分解して、二酸化塩素が生成される。シリンジ中に酸性化剤(II)の水溶液が存在し、第一室13に固体の漂白剤前駆体(I´)が存在する場合は、ピストンを押して所定距離だけ移動させると、第一室13に存在する固体の漂白剤前駆体(I´)が流入した酸性化剤(II´)の水溶液に溶解し、亜塩素酸塩の酸性液体が生成される。この酸性液体中で、亜塩素酸塩が分解して、二酸化塩素が生成される。
【0066】
所定時間経過後、即ち、十分な量の二酸化塩素が生成されたら、使用者はシリンジのピストンを指でもう1回押す。これにより、空気圧によって隔壁23が押されて外れ、第一室13と第二室14とが連通する。その結果、第二室14に存在する固体の中和用剤(III´)も水溶液に溶解し、第一室13に存在した酸性の液体が中和される。中和後の液体には、二酸化塩素が含まれている。この液体は、液体吸収・保持部材32に吸収・保持される。液体吸収・保持部材32を歯の表面に当てることにより、液体吸収・保持部材32を通じて二酸化塩素含有液体が歯の表面に供給され、それによって歯が漂白される。
【0067】
上記の実施態様中、シリンジを使用する例では、シリンジの代わりに、スポイト、より具体的には、全体が一体成型されているスポイトを使用することもできる。
【0068】
(第三の態様の歯の漂白用デバイス及び第五の態様の歯の漂白用キット)
図10は、本発明の第三の態様の歯の漂白用デバイスの断面模式図である。歯の漂白用デバイス4は、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)の層15と、第一隔壁21と、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)の層16と、第二隔壁22と、固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)の層17とを有し、これらの層はこの順で存在しており、中和用剤(III´)の第二隔壁22に対向する側の反対側には液体吸収・保持部材32があり、これらの外周部は外部部材である非透水性部材33で被覆されているものである。即ち、歯の漂白用デバイス4は、中空の非透水性部材33の空間に、液体吸収・保持部材32、層17、第二隔壁22、層16、第一隔壁21及び層15が、この順に充填されているものである。層15が固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)の層であり、層16が固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)の層であってもよい。
【0069】
層15、16及び17は、それぞれ、例えばろ紙やスポンジのような保持部材に、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)、及び固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)が保持されている層であってもよい。層17が、保持部材に固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)が保持されている層である場合、液体吸収・保持部材32は存在しなくてもよい。
【0070】
第一隔壁21は、保存時に、層15に存在する成分と層16に存在する成分が混ざらないようにする役割を果たし、且つ透水性を有する材料製である。第二隔壁22も、保存時に、層16に存在する成分と層17に存在する成分が混ざらないようにする役割を果たし、且つ透水性を有する材料製である。第一隔壁21及び第二隔壁22の材料の例として、ろ紙及びスポンジが挙げられる。また、液体吸収・保持部材32の材料は、例えば、ろ紙、スポンジ及び微細なブラシ構造体である。デバイス4の外周部を構成している非透水性部材33の材料は、例えば硬質又は軟質プラスチックである。
【0071】
本発明の歯の漂白用デバイス4は、上から見た形状が、例えば、円形、三角形、楕円形、ひし形、長方形や正方形等であってよい。歯の漂白用デバイス4の上から見た形状は、特に限定されず、任意の形状を採用できる。
【0072】
本発明の第五の態様の歯の漂白用キットは、歯の漂白用デバイス4に加え、例えば
図11(1)に示す水性液体供給用部材60を有する。水性液体供給用部材60は、柔軟なプラスチック製の収容部61と収容部61の材質よりは硬質のプラスチック製の被覆部62,63とを有している。収容部61は、所定量の水性液体を収容しており、被覆部62,63は、接続部分65で結合されて、収容部61の開口部64を覆っている。水性液体の例は、水、生理食塩水、緩衝剤水溶液及び水性懸濁液である。
【0073】
図10に示す歯の漂白用デバイス4及び
図11に示す液体供給用部材60の使用例を説明する。使用者は、歯の漂白用デバイス4の上方(層15の上方)において、水性液体供給用部材60の被覆部62,63を、二本の指で矢印Gで示すように収容部61に向かって押す。これにより、被覆部62,63の接続部分65が破断して、収容部61内の所定量の水性液体、例えば水40が、開口部64から出てくる。この水40は、歯の漂白用デバイス4の層15に供給される。
【0074】
図12は、水性液体供給用部材の他の例であるパウチ70の斜視図である。柔軟なプラスチック製のパウチ70には、水性液体、例えば水40が収容されており、その下面中央には、このパウチ70に小さな圧力がかかると破れる裂け目部分66が形成されている。パウチ70を、その裂け目部分66が存在する面を下面として、
図10に示す歯の漂白用デバイス4の層15の上に載せる。パウチ70を指で上から押して、裂け目部分66を破く。このようにして、パウチ70内の水40を、歯の漂白用デバイス4の層15に供給する。
【0075】
層15では、流入した水40に固体の漂白剤前駆体(I´)が溶解し、漂白剤前駆体(I´)の水溶液が調製される。漂白剤前駆体(I´)の水溶液は、第一隔壁21を経由して層16に流入する。層16では、流入した水溶液に固体の酸性化剤(II´)が溶解し、亜塩素酸塩の酸性液体が生成される。層15に固体の酸性化剤(II´)が存在する場合には、先ず、酸性化剤(II´)を溶解した水溶液が調製され、次いでその水溶液に固体の漂白剤前駆体(I´)が溶解し、亜塩素酸塩の酸性液体が生成される。亜塩素酸塩の酸性液体が第二隔壁22を通過する間に、この酸性液体中で、亜塩素酸塩が分解し、二酸化塩素が生成される。したがって、第二隔壁22は、亜塩素酸塩が分解して二酸化塩素が生成される時間を担保できる密度及び/又は距離を有することが必要である。例えば第二隔壁22がろ紙製である場合には、その目の細かさやろ水時間を適切に選択することにより、及び/又は、酸性液体が移動する方向におけるろ紙の長さを適切に選択することにより、酸性液体が所望の時間で第二隔壁22を通過するように調整する。また、例えば第二隔壁22がスポンジ製である場合には、多孔度を適切に選択することにより、及び/又は、酸性液体が移動する方向におけるスポンジの長さを適切に選択することにより、酸性液体が所望の時間で第二隔壁22を通過するように調整する。
【0076】
十分な量の二酸化塩素を含む酸性液体が層17に到達すると、酸性液体に固体の中和用剤(III´)が溶解し、酸性液体が中和される。中和後の液体には、二酸化塩素が含まれている。この液体は、液体吸収・保持部材32に吸収・保持される。液体吸収・保持部材32を歯の表面に当てることにより、液体吸収・保持部材32を通じて二酸化塩素含有液体が歯の表面に供給され、それによって歯が漂白される。なお、層17が固体の中和用剤(III´)を保持したろ紙やスポンジである場合には、液体吸収・保持部材32はなくてもよく、その場合には、層17が歯の表面に当てられる。
【0077】
本発明の歯の漂白用デバイス4は、それ単独で、即ち、液体供給用部材なしでも提供され得る。その場合、使用者は、説明書に記載された量の水を、本発明の歯の漂白用デバイス4に供給すればよい。
【0078】
(第三の態様の歯の漂白用デバイス及び第五の態様の歯の漂白用キットの変形例1)
図13は、本発明の第三の態様の歯の漂白用デバイスの変形例1の断面模式図である。歯の漂白用デバイス5は、上記の歯の漂白用デバイス4の構成に加えて、層15の上に、第三隔壁31及び活性炭層30を有する。活性炭層は、二酸化塩素が過剰に発生し、デバイス5を通過する水性液体に溶解しきらずに気体で存在した場合に、その気体の二酸化塩素をトラップする役割を果たす。
【0079】
上記デバイス5を使用する場合には、液体供給用部材60やパウチ70を使用して、活性炭層30に水性液体を供給すればよい。
【0080】
(第三の態様の歯の漂白用デバイス及び第五の態様の歯の漂白用キットの変形例2)
図14は、本発明の第三の態様の歯の漂白用デバイスの変形例2の断面模式図である。歯の漂白用デバイス6は、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)の層15と、第一隔壁21と、固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)の層16と、第二隔壁22と、固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)の層17とを有し、これらの層はこの順で存在しており、これらの層は、隣接する層同士がその外周部において接着剤で接着されているものである。固化した接着剤の層35が、外部部材である。層15が固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)の層であり、層16が固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)の層であってもよい。また、層17の外側に、その外周部が接着剤で接着された液体吸収・保持部材があってもよい。
【0081】
(第六の態様の歯の漂白用キット)
図15は、本発明の第六の態様の歯の漂白用キットに含まれるデバイス7の断面模式図である。このキットには、他に、図示していない液体供給用部材が含まれている。この液体供給用部材の構成は、それに収容されている液体が漂白剤前駆体(I)又は酸性化剤(II)の水溶液であることを除き、第三の態様の歯の漂白用デバイス4と共に使用する、及び第五の態様の歯の漂白用キットに含まれている水性液体供給用部材(
図11及び
図12を参照のこと)と同じである。
【0082】
デバイス7は、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)又は固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)の層18と、隔壁23と、固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)の層19とがこの順で存在しており、中和用剤(III´)の層19の隔壁23に対向する側の反対側には液体吸収・保持部材32があり、これらの外周部は、外部部材である非透水性部材33で被覆されている。
【0083】
層18及び19は、それぞれ、例えばろ紙やスポンジのような保持部材に、固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)又は固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)、及び固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)が保持されている層であってもよい。層19が、保持部材に固体のその水溶液が塩基性を示す物質を含む中和用剤(III´)が保持されている層である場合、液体吸収・保持部材32は存在しなくてもよい。
【0084】
隔壁23は、保存時に、層18に存在する成分と層19に存在する成分が混ざらないようにする役割を果たし、且つ透水性を有する材料製である。材料の例として、ろ紙及びスポンジが挙げられる。また、液体吸収・保持部材32の材料は、例えば、ろ紙、スポンジ及び微細なブラシである。デバイス6の外周部を構成している非透水性部材33の材料は、例えば硬質又は軟質プラスチックである。
【0085】
デバイス7は、上から見た形状が、例えば、円形、三角形、楕円形、ひし形、長方形や正方形等であってよい。その上から見た形状は、特に限定されず、任意の形状を採用できる。
【0086】
本発明の第六の態様の歯の漂白用キットは、デバイス7に加え、例えば
図11(1)に示す水性液体供給用部材60と同様の形態の液体供給用部材を有する。但し、ここで使用する液体供給用部材の収容部には、デバイス7の層18に固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在する場合には、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水溶液が、また、デバイス7の層18に固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)が存在する場合には、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水溶液が収納されている。
【0087】
液体供給用部材として、
図12に示されたパウチ70と同様の形態のものも使用することができる。但し、その中に収納されている水性液体は、デバイス7の層18に固体の亜塩素酸塩を含む漂白剤前駆体(I´)が存在する場合には、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水溶液であり、また、デバイス7の層18に固体のその水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II´)が存在する場合には、亜塩素酸又はその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水溶液である。
【0088】
図15に示す歯の漂白用デバイス7及び
図11に示す水性液体供給用部材60と同様の形態の液体供給用部材との使用例を説明する。使用者は、液体供給用部材を使用して、デバイス7の上方(層18の上方)から、その水溶液が酸性を示す物質を含む酸性化剤(II)の水溶液(層18に漂白剤前駆体(I´)が存在する場合)、又は、亜塩素酸もしくはその塩を含む漂白剤前駆体(I)の水溶液(層18に酸性化剤(II´)が存在する場合)を供給する。層18では、固体の漂白剤前駆体(I´)又は固体の酸性化剤(II´)が流入した水溶液に溶解し、亜塩素酸又はその塩の酸性液体が生成される。亜塩素酸又はその塩の酸性液体が隔壁23を通過する間に、この酸性液体中で、亜塩素酸又はその塩が分解して、二酸化塩素が生成される。したがって、隔壁23は、亜塩素酸塩が分解して二酸化塩素が生成される時間を担保できる密度及び/又は距離を有することが必要である。例えば隔壁23がろ紙製である場合には、その目の細かさやろ水時間を適切に選択することにより、及び/又は、酸性液体が移動する方向におけるろ紙の長さを適切に選択することにより、酸性液体が所望の時間で隔壁23を通過するように調整する。また、例えば隔壁23がスポンジ製である場合には、多孔度を適切に選択することにより、及び/又は、酸性液体が移動する方向におけるスポンジの長さを適切に選択することにより、酸性液体が所望の時間で隔壁23を通過するように調整する。
【0089】
十分な量の二酸化塩素を含む酸性液体が層19に到達すると、酸性液体に固体の中和用剤(III´)が溶解し、酸性液体が中和される。中和後の液体には、二酸化塩素が含まれている。この液体は、液体吸収・保持部材32に吸収・保持される。液体吸収・保持部材32を歯の表面に当てることにより、液体吸収・保持部材32を通じて二酸化塩素含有液体が歯の表面に供給され、それによって歯が漂白される。なお、層19が固体の中和用剤(III´)を保持したろ紙やスポンジである場合には、液体吸収・保持部材32がなくてもよく、その場合には、層19が歯の表面に当てられる。
【0090】
第六の態様の歯の漂白用キットに含まれるデバイス7は、上記したデバイス6の変形例1同様、層18の上に、隔壁及び活性炭層を有するものであってもよいし、また、上記したデバイス6の変形例2同様、外部部材が、隣接する層同士をそれらの外周部において接着している、固化した接着剤の層であるものであってもよい。
【0091】
(本発明の歯の漂白用デバイスの製造方法)
以下において、本発明の歯の漂白用デバイスのいくつかの例について、製造方法を説明する。
【0092】
1.
図1及び2に記載の歯の漂白用デバイス1の製造方法
チューブ133の一端(その断面の直径が小さい方)を、シール155で閉じる。シール155を下面として、チューブ133を立てる。チューブ133の他端142側から、漂白剤前駆体(I)の水溶液を注入する。第一隔壁21をチューブ内に差し込み、第一室10を画する。次に、固体(例えば、粉状)の酸性化剤(II)を入れる。第二隔壁22をチューブ内に差し込み、第二室11を画する。次に、固体(例えば、粉状)の中和用剤(III)を入れる。液体吸収・保持部材32をチューブ133内に差し込み、第三室12を画する。チューブ133の他端142に、封止部材154を貼付する。使用時、シール155を剥がし、一端部151の外側にスポイト160を取り付ける。
【0093】
2.
図3及び4に記載の歯の漂白用デバイス2の製造方法
チューブ233の一端に、接続部材259を貼りつける。接続部材259の孔273を、シール255で閉じる。シール255を下面として、チューブ233を立てる。以下、歯の漂白用デバイス1と同様の方法により、封止部材254の貼付工程までを行う。使用時、シール255を剥がし、接続部材259の孔273にシリンジ260の先端部265を差し込む。
【0094】
3.
図5乃至7に記載の歯の漂白用デバイス3の製造方法
チューブ333の一端部351に、めねじ部材303を装入する。めねじ部材303の孔(めねじ部分の内側に存在する孔)を、シール355で閉じる。シール355を下面として、チューブ333を立てる。以下、歯の漂白用デバイス1と同様の方法により、液体吸収・保持部材32をチューブ内に差し込む工程までを行う。使用時、シール355を剥がし、回転移動部材360のおねじ部分302をめねじ部材303のめねじ部分306と噛み合せる。
【0095】
4.
図10に記載の歯の漂白用デバイス4の製造方法(その1)
(1)乾燥ろ紙の調製
ろ紙に、所定量の漂白剤前駆体(I)の水溶液を染み込ませ、そのろ紙を乾燥させる(層15の調製)。別のろ紙に、所定量の酸性化剤(II)の水溶液を染み込ませ、そのろ紙を乾燥させる(層16の調製)。さらに別のろ紙に、所定量の中和用剤(III)の水溶液を染み込ませ、そのろ紙を乾燥させる(層17の調製)。
【0096】
(2)歯の漂白用デバイス4の製造
プラスチック製の円筒33に、スポンジ(液体吸収・保持部材)32、層17、数枚のろ紙(第二隔壁)22、層16、ろ紙(第一隔壁)21及び層15を、この順に詰め込む。
【0097】
5.
図10に記載の歯の漂白用デバイス4の製造方法(その2)
プラスチック製の円筒33に、スポンジ(液体吸収・保持部材)32、粉末の中和用剤(III´)(層17の形成)、数枚のろ紙(第二隔壁)22、粉末の酸性化剤(II´)(層16の形成)、ろ紙(第一隔壁)21及び固体の漂白剤前駆体(I´)(層15の形成)を、この順に詰め込む。
【0098】
[実験例1] 褐色鶏卵の殻の漂白(その1)
鶏卵の殻の主成分は炭酸カルシウムであるが、褐色鶏卵の殻にはヘモグロビン由来の色素が入り込み、そのために褐色を呈している。歯の内因性の黄ばみ(象牙質の黄ばみ)もヘモグロビン由来の色である可能性が高い。したがって、褐色鶏卵の殻を用いたホワイトニングの評価系では、表面の汚れの除去ではなく、内因性の色素の漂白効率を評価できる(小川弘美ら、ポリリン酸を含む漂白剤-褐色鶏卵に対する漂白効果―、歯科の色彩、第20巻第1号37乃至42頁(2014))。
【0099】
(歯の漂白用組成物の調製)
30w/v%亜塩素酸ナトリウム水溶液50μLに、水50μL、プラチナ・ナノコロイド原液(アプト株式会社製、プラチナを0.02w/v%含有)2.4μL及び25%濃度のウルトラリン酸ナトリウム水溶液197.6μLを、この順に添加した。ウルトラリン酸ナトリウム水溶液を加えて5秒後から10秒間、得られた混合液体を卓上撹拌機にて撹拌した。この際の混合液体のpHは約2.0であった。その後、40℃に設定したウォーターバス内に5分間静置した。加温終了30秒後に、このようにして得られた混合液体300μLに、中和用剤(0.4Mリン酸水素二ナトリウム水溶液:1N水酸化ナトリウム水溶液:水=9:3:4の割合で混ぜたもの)1.2mLを加えて中和させ、pHがおよそ7.0の歯の漂白用組成物を得た。
【0100】
(歯の漂白用組成物を用いた褐色鶏卵の殻の漂白)
厚さ1mmのろ紙を用い、穴あけポンチで直径約0.5cmの円形にくり抜き、これを褐色鶏卵の殻の表面に乗せた。このろ紙に、上記のようにして調製した歯の漂白用組成物20μLを染み込ませた。5分間静置し、水で軽く洗い流した。
【0101】
漂白処理前の褐色鶏卵の殻の色と、漂白処理後のろ紙が貼付されていた個所の色を、オリンパス株式会社製のクリスタルアイを使用して測色した。具体的には、漂白処理前の褐色鶏卵の殻の色と、漂白処理後のろ紙が貼付されていた個所の色について、白黒の傾向の差ΔL*、赤緑の傾向の差Δa*、黄青の傾向の差Δb*をそれぞれ求め、これらの値から、以下の式1にしたがって色素偏差ΔE*
abを算出した。
【0102】
【0103】
(結果)
結果を表1に示す。本発明に係る歯の漂白用組成物を、液体吸収・保持部材であるろ紙に吸収・保持させて漂白したところ、漂白前後での色素偏差ΔE*
abが4.77であり、このことから、褐色鶏卵の殻が著しく漂白されたことが分かる。なお、漂白がなされなかった場合には、ΔL*、Δa*及びΔb*のいずれも、約0となる。
【0104】
【0105】
[実験例2] 褐色鶏卵の殻の漂白(その2)
(歯の漂白用組成物を染み込ませた乾燥ろ紙の調製)
ろ紙(Whatman製、ろ過フィルター用、FILTER PAPERS 40、CAT No.1440-125、GEヘルスケア株式会社製)を2cm角に切り取り、プラスチック皿の上に載せた。
【0106】
30%w/v亜塩素酸ナトリウム水溶液50μL、水350μL、プラチナ・ナノコロイド原液(アプト株式会社製、プラチナを0.02w/v%含有)2.4μLを混合し、漂白剤前駆体(I)水溶液を調製した。この漂白剤前駆体(I)水溶液200μLをろ紙に染み込ませ、ろ紙全体を湿らせた(以下、これを「ろ紙A」とする)。
【0107】
別途、酸性化剤(II)水溶液として、12.5w/v%ウルトラリン酸ナトリウム水溶液を調製し、その水溶液200μLを別のろ紙に染み込ませた(以下、これを「ろ紙B」)とする。
【0108】
さらに、中和用剤(III)水溶液として、0.4Mリン酸水素二ナトリウム水溶液と10%w/v炭酸ナトリウム水溶液とを3:1(容量比)で混ぜたものを調製し、その水溶液600μLを別のろ紙に染み込ませた(以下、これを「ろ紙C」とする)。
【0109】
ろ紙A、B及びCを、40℃にて2時間、減圧乾燥させた。ろ紙Cは完全に乾燥しなかったので、90℃にてさらに1時間、減圧乾燥させた。
【0110】
(乾燥したろ紙A、B及びCを用いた褐色鶏卵の漂白)
上記のようにして調製したろ紙A、B及びCの各々を四等分し、1cm角とした。また、液体を染みこませていないろ紙を1cm角に切ったもの(以下、「通常ろ紙」とする)を、複数枚用意した。これらのろ紙を用い、以下のようにして褐色鶏卵の漂白を行った。
(1)褐色鶏卵の殻の表面を、オリンパス株式会社製のクリスタルアイを使用して測色した。
(2)褐色鶏卵の殻の表面上に、通常ろ紙、ろ紙C、通常ろ紙3枚、ろ紙B、通常ろ紙及びろ紙Aをこの順に積み上げた。
(3)重ねたろ紙に、上から100μLの水を加え、その後10分間静置した。
(4)ろ紙を除去し、卵の殻表面の水滴のpHを、pH試験紙で測定した。
(5)水洗後、褐色鶏卵の殻のろ紙と接していた個所の色を、クリスタルアイを使用して測色した。
【0111】
(結果)
結果を表2に示す。本発明の歯の漂白用デバイスを使用して褐色鶏卵の殻を漂白したところ、漂白前後での色素偏差ΔE*
abが7.65であり、このことから、褐色鶏卵の殻が著しく漂白されたことが分かる。なお、漂白後、pH試験紙を用いて卵の殻表面の水滴のpHを確認すると、pH=6~7であった。
【0112】
【0113】
[実験例3] 歯の脱灰に対するpHの影響
15w/v%亜塩素酸ナトリウム水溶液300μLに、12w/v%プラチナ・ナノコロイド液体(アプト株式会社製の原液(プラチナヲ0.02w/v%含有)を12w/v%となるように希釈したもの)7.2μLと、25w/v%ウルトラリン酸ナトリウム水溶液592.8μLとを加え、実験(1)用の液体(1)を調製した。液体(1)300μLに対して、中和用剤(0.4Mリン酸水素二ナトリウム水溶液:1N水酸化ナトリウム水溶液:水=9:3:4の割合で混ぜたもの)1.2mLを加え、実験(2)用の液体(2)を調製した。液体(1)及び(2)のそれぞれを使用して、以下に記載の方法で、ハイドロキシアパタイトの溶解実験を行った。
【0114】
(ハイドロキシアパタイトの溶解実験)
2mL容のマイクロチューブに、無処理のハイドロキシアパタイト20.0mgを精秤し、マイクロチューブとハイドロキシアパタイトとの合計重量を量った。マイクロチューブに液体(1)又は(2)600μLを加え、室温にて一晩(17時間)放置した。その後、遠心分離(3000g、15秒間)によりハイドロキシアパタイトを沈殿させ、上清を除去した。水1mL入れてよく混和し、ハイドロキシアパタイトを洗浄した。さらに、遠心分離(3000g、15秒間)し、上清を除去する操作を3回繰り返した。その後、マイクロチューブ内を吸引加熱乾燥によって乾燥させ、マイクロチューブとハイドロキシアパタイトとの合計重量を量った。ハイドロキシアパタイト(HAP)残存率を、下記式2によって算出した。結果を表3に示す。
【0115】
【0116】
【0117】
表3から明らかなように、酸性の液体(液体(1))では、ハイドロキシアパタイトは殆どすべて溶解してしまった。一方、一旦酸性とした後、中和した液体(液体(2))であれば、脱灰がほぼ起こらないことが明らかとなった。
【符号の説明】
【0118】
1,2,3,4,5,6,7 歯の漂白用デバイス
10,13 第一室
11,14 第二室
12 第三室
15,16,17,18,19 層
21 第一隔壁
22 第二隔壁
23 隔壁
30 活性炭層
31 第三隔壁
32 液体吸収・保持部材
33 非透水性部材
35 固化した接着剤
60 水性液体供給用部材
70 パウチ
133,233,333,433,533 中空容器
160 スポイトのポンプ部分
260 シリンジ
360 回転移動部材