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特許7208623プラグ用工具及びプラグ並びにプラグ付きケーブル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】プラグ用工具及びプラグ並びにプラグ付きケーブル
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
G02B6/36
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019038956
(22)【出願日】2019-03-04
(65)【公開番号】P2020144171
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-13
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】平 淳司
(72)【発明者】
【氏名】塩川 直利
(72)【発明者】
【氏名】地引 正幸
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-012253(JP,A)
【文献】特開2003-004975(JP,A)
【文献】特開2018-049045(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0078717(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024300(US,A1)
【文献】特開2009-276493(JP,A)
【文献】特表2018-518718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アダプタに嵌合されるプラグ本体と、前記プラグ本体が前記アダプタから抜去される抜去方向に移動可能に前記プラグ本体に支持されているスライダと、を備え、前記スライダが前記抜去方向に移動することにより、前記アダプタと前記プラグ本体との嵌合が解除され且つ前記プラグ本体が前記アダプタから抜去されるプラグに用いられる工具であって、
前記スライダに設けられているスロットに対して前記抜去方向とは反対の嵌合方向に差し込まれ、前記スロットに差し込まれている状態で前記スライダを係止可能な差込片と、
前記プラグから前記抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、
前記ブーツ係合部から延びる操作部と、
を備え、
前記操作部は、第1把持部と、断面積が局所的に小さい易破断部とを有し、
前記易破断部は、前記ブーツ係合部の後端と前記第1把持部との間に設けられており、
前記差込片が前記スライダを係止している状態で前記抜去方向に引かれることによって前記スライダを前記抜去方向に移動させるプラグ用工具。
【請求項2】
請求項1記載のプラグ用工具であって、
前記差込片は、前記抜去方向に対して平行に前記スロットに差し込まれている場合に前記スライダを係止し、前記抜去方向に対して傾けられることによって前記スライダの係止を解除するプラグ用工具。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプラグ用工具であって、
前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で、前記操作部は、前記ブーツよりも前記抜去方向に延在するプラグ用工具。
【請求項4】
請求項3記載のプラグ用工具であって、
前記嵌合方向に前記プラグ本体又は前記スライダを押圧する押圧部を備えるプラグ用工具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載のプラグ用工具であって、
前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、
前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、
前記差込片が前記スライダを係止している状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まるプラグ用工具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のプラグ用工具であって、
前記操作部は、第2把持部を有し、
前記第2把持部は、前記ブーツ係合部の後端と前記易破断部との間に設けられているプラグ用工具。
【請求項7】
アダプタに嵌合されるプラグに用いられる工具であって、
前記プラグに設けられているスロットに対して前記プラグが前記アダプタに嵌合される嵌合方向に差し込まれ、前記スロットに差し込まれている状態で前記プラグを係止可能な差込片と、
前記プラグから前記嵌合方向とは反対の抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記プラグを係止している状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、
前記嵌合方向に前記プラグを押圧する押圧部と、
前記ブーツ係合部から延びる操作部と、
を備え、
前記操作部は、第1把持部と、断面積が局所的に小さい易破断部とを有し、
前記易破断部は、前記ブーツ係合部の後端と前記第1把持部との間に設けられているプラグ用工具。
【請求項8】
請求項記載のプラグ用工具であって、
前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で、前記操作部は、前記ブーツよりも前記抜去方向に延在するプラグ用工具。
【請求項9】
請求項7又は8記載のプラグ用工具であって、
前記操作部は、第2把持部を有し、
前記第2把持部は、前記ブーツ係合部の後端と前記易破断部との間に設けられているプラグ用工具。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載のプラグ用工具であって、
前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、
前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、
前記差込片が前記プラグを係止している状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まるプラグ用工具。
【請求項11】
アダプタに嵌合されるプラグ本体と、前記プラグ本体が前記アダプタから抜去される抜去方向に移動可能に前記プラグ本体に支持されているスライダと、を備え、前記スライダが前記抜去方向に移動することにより、前記アダプタと前記プラグ本体との嵌合が解除され且つ前記プラグ本体が前記アダプタから抜去されるプラグであって、
前記スライダに着脱可能に取り付けられる工具をさらに備え、
前記工具は、
前記スライダに設けられているスロットに対して前記抜去方向とは反対の嵌合方向に差し込まれ、前記スロットに差し込まれている状態で前記スライダを係止可能な差込片と、
前記プラグから前記抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、
前記ブーツ係合部から延びる操作部と、
を備え、
前記操作部は、第1把持部と、断面積が局所的に小さい易破断部とを有し、
前記易破断部は、前記ブーツ係合部の後端と前記第1把持部との間に設けられ、
前記差込片が前記スライダを係止している状態で前記抜去方向に引かれることによって前記工具は前記スライダを前記抜去方向に移動させるプラグ。
【請求項12】
請求項11に記載のプラグであって、
前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、
前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、
前記差込片が前記スライダを係止している状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まるプラグ。
【請求項13】
アダプタに嵌合されるプラグであって、
前記プラグに着脱可能に取り付けられる工具を備え、
前記工具は、
前記プラグに設けられているスロットに対して前記プラグが前記アダプタに嵌合される嵌合方向に差し込まれる差込片と、
前記プラグから前記嵌合方向とは反対の抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、
前記嵌合方向に前記プラグを押圧する押圧部と、
前記ブーツ係合部から延びる操作部と、
を備え、
前記操作部は、第1把持部と、断面積が局所的に小さい易破断部とを有し、
前記易破断部は、前記ブーツ係合部の後端と前記第1把持部との間に設けられるプラグ。
【請求項14】
請求項13に記載のプラグであって、
前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、
前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、
前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まるプラグ。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項記載のプラグが端末部に取り付けられているプラグ付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグ用工具及びプラグ並びにプラグ付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルと、レシーバやトランスミッタなどの光モジュール又は他の光ファイバケーブルとはアダプタ(いわゆるレセプタクルを含む)を介して接続されており、アダプタに嵌合されるプラグが光ファイバケーブルの端末部に設けられている。そして、光モジュールが実装される通信機器や光ファイバケーブル同士を中継する配線盤などの機器において、機器の小型化等の観点から、複数のアダプタが密集して設けられる場合があり、密集して設けられているアダプタに対するプラグの嵌合作業及び/又は抜去作業を容易とする工具及び工具付きプラグが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたプラグは、アダプタに挿着(嵌合)されるプラグ本体と、プラグ本体に移動可能に支持されているツマミとを備える。アダプタに挿着(嵌合)されているプラグ本体に対してツマミが抜去方向に移動されることにより、アダプタとプラグ本体との嵌合が解除され、プラグ本体がアダプタから抜去される。そして、特許文献1に記載されたプラグ着脱具は、把持部と、把持部の長手方向の一端部に設けられている挿着具と、他端部に設けられている抜脱具とを備える。
【0004】
挿着具は、ツマミを抱えるように保持するツマミ保持部と、ツマミの後端に隣接されているブーツを抱えるように保持するブーツ保持部を有し、ツマミ保持部にはツマミの後端部に当接する突起部が形成されている。突起部がツマミの後端部に当接した状態で把持部が押し込まれることにより、プラグ本体がアダプタに挿着される。また、抜脱具は、ブーツを抱えるように保持するブーツ保持部と、ブーツ保持部から延び且つツマミに被さる係合突起部とを有する。係合突起部がツマミに係合した状態で把持部が引っ張られることにより、ツマミが抜去方向に移動され、これにより、アダプタとプラグ本体との挿着(嵌合)が解除され、プラグ本体がアダプタから抜去される。
【0005】
特許文献2に記載された抜き工具付きプラグもまた、アダプタに嵌合されるプラグ本体と、プラグ本体に移動可能に支持されているツマミとを備え、アダプタに嵌合されているプラグ本体に対してツマミが抜去方向に移動されることにより、アダプタとプラグ本体との嵌合が解除され、プラグ本体がアダプタから抜去される。そして、特許文献2に記載された抜き工具付きプラグは、プルタブをさらに備える。
【0006】
プルタブは、ツマミ及びブーツを抱えるように保持するカバー部を先端側に有し、プル部を後端側に有し、カバー部にはツマミに係合する係止突起が形成されている。係止突起がツマミに係合した状態でプル部が引っ張られることにより、ツマミが抜去方向に移動され、これにより、アダプタとプラグ本体との嵌合が解除され、プラグ本体がアダプタから抜去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-350677号公報
【文献】特開2005-17602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたプラグ挿着具では、ツマミを抱えるように保持するツマミ保持部がプラグの外側に配置され、また、プラグ抜脱具では、ツマミに被さる係合突起部がプラグの外側に配置される。複数のアダプタが密集して設けられる場合に、これらのアダプタに嵌合されるプラグ同士の間に、ツマミ保持部及び係合突起部を収容可能な隙間が設定される必要があり、アダプタの高密度な設置に不利である。特許文献2に記載された抜き工具付きプラグのプルタブもまた、ツマミを抱えるように保持するカバー部がプラグの外側に配置され、やはり、アダプタの高密度な設置に不利である。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、アダプタに嵌合されるプラグの嵌合及び/又は抜去に用いられ、アダプタの高密度な設置を可能とし、アダプタが設置される機器の小型化に資するプラグ用工具を提供すること、及びこの工具を備えたプラグ及びプラグ付きケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のプラグ用工具は、アダプタに嵌合されるプラグ本体と、前記プラグ本体が前記アダプタから抜去される抜去方向に移動可能に前記プラグ本体に支持されているスライダと、を備え、前記スライダが前記抜去方向に移動することにより、前記アダプタと前記プラグ本体との嵌合が解除され且つ前記プラグ本体が前記アダプタから抜去されるプラグに用いられる工具であって、前記スライダに設けられているスロットに対して前記抜去方向とは反対の嵌合方向に差し込まれ、前記スロットに差し込まれている状態で前記スライダを係止可能な差込片と、前記プラグから前記抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、を備え、前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、前記差込片が前記スライダを係止している状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まり、前記抜去方向に引かれることによって前記スライダを前記抜去方向に移動させる。
【0011】
また、本発明の一態様のプラグ用工具は、アダプタに嵌合されるプラグに用いられる工具であって、前記プラグに設けられているスロットに対して前記プラグが前記アダプタに嵌合される嵌合方向に差し込まれる差込片と、前記プラグから前記嵌合方向とは反対の抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、前記嵌合方向に前記プラグを押圧する押圧部と、を備え、前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まる。
【0012】
また、本発明の一態様のプラグは、アダプタに嵌合されるプラグ本体と、前記プラグ本体が前記アダプタから抜去される抜去方向に移動可能に前記プラグ本体に支持されているスライダと、を備え、前記スライダが前記抜去方向に移動することにより、前記アダプタと前記プラグ本体との嵌合が解除され且つ前記プラグ本体が前記アダプタから抜去されるプラグであって、前記スライダに着脱可能に取り付けられる工具をさらに備え、前記工具は、前記スライダに設けられているスロットに対して前記抜去方向とは反対の嵌合方向に差し込まれ、前記スロットに差し込まれている状態で前記スライダを係止可能な差込片と、前記プラグから前記抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、を備え、前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、前記差込片が前記スライダを係止している状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まり、前記抜去方向に引かれることによって前記工具は前記スライダを前記抜去方向に移動させる。
【0013】
アダプタに嵌合されるプラグであって、前記プラグに着脱可能に取り付けられる工具を備え、前記工具は、前記プラグに設けられているスロットに対して前記プラグが前記アダプタに嵌合される嵌合方向に差し込まれる差込片と、前記プラグから前記嵌合方向とは反対の抜去方向に延びるケーブル及び前記ケーブルの基端部を被覆しているブーツが挿通可能な筒状に形成されており、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で前記ブーツを収容するブーツ係合部と、前記嵌合方向に前記プラグを押圧する押圧部と、を備え、前記ブーツ係合部は、当該ブーツ係合部の軸方向の全長に亘って延びるスリットを有し、前記スリットの幅は、前記ケーブルの直径より大きく且つ前記ブーツの最大径より小さく、前記差込片が前記スロットに差し込まれている状態で、前記抜去方向から見た場合に前記ブーツ係合部が前記プラグの最外形線の内側に収まる。
【0014】
また、本発明の一態様のプラグ付きケーブルは、前記プラグが端末部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アダプタに嵌合されるプラグの嵌合及び/又は抜去に用いられ、アダプタの高密度な設置を可能とし、アダプタが設置される機器の小型化に資するプラグ用工具を提供することができ、この工具を備えたプラグ及びプラグ付きケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態を説明するための、プラグ付きケーブルの一例の斜視図である。
図2】プラグの分解斜視図である。
図3】プラグのスライダの背面図である。
図4A】プラグがアダプタから抜去される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図4B】プラグがアダプタから抜去される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図4C】プラグがアダプタから抜去される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図5A】プラグ用工具の側面図である。
図5B】プラグ用工具の平面図である。
図5C】プラグ用工具の背面図である。
図6A】プラグ用工具を用いてアダプタとプラグとを嵌合させる際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図6B】プラグ用工具を用いてアダプタとプラグとを嵌合させる際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図6C】プラグ用工具を用いてアダプタとプラグとを嵌合させる際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図7A】プラグ用工具を用いてプラグをアダプタから抜去する際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図7B】プラグ用工具を用いてプラグをアダプタから抜去する際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図7C】プラグ用工具を用いてプラグをアダプタから抜去する際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図8図5A図5Cに示すプラグ用工具の作用を説明する模式図である。
図9A】プラグ用工具が取り外される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図9B】プラグ用工具が取り外される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図9C】プラグ用工具が取り外される際のプラグの各部の動作を示す断面図である。
図10図7Aにおいて破線円Xで囲った部分の拡大図である。
図11図9Bにおいて破線円XIで囲った部分の拡大図である。
図12A】プラグ用工具の他の例の側面図である。
図12B】プラグ用工具の他の例の平面図である。
図12C】プラグ用工具の他の例の背面図である。
図13図12A図12Cに示すプラグ用工具の作用を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1に示すケーブル1は光ファイバケーブルであり、光ファイバケーブル1の端末部にはプラグ2が取り付けられている。プラグ2は、機器3のパネル4に設けられているアダプタ5に嵌合される。機器3は、例えば通信機器又は配線盤であり、光ファイバケーブル1は、アダプタ5を介して、例えば通信機器に実装されている光モジュールに接続され、又は配線盤に収納されている他の光ファイバケーブルに接続される。
【0019】
アダプタ5は、嵌合孔がパネル4の正面側にのみ設けられる、いわゆるレセクタプルと、嵌合孔がパネル4の正面側及び背面側の双方に設けられるものとを含む。嵌合孔がパネル4の正面側にのみ設けられているアダプタは、典型的には、光ファイバケーブル1と光モジュールとの接続に用いられ、嵌合孔がパネル4の正面側及び背面側の双方に設けられているアダプタは、典型的には、光ファイバケーブル1と他の光ファイバケーブルとの接続に用いられる。
【0020】
図2及び図3は、プラグ2の構成を示す。
【0021】
プラグ2は、プラグ本体10と、スライダ11と、工具12とを備える。
【0022】
プラグ本体10は、光ファイバケーブル1の心線(光ファイバ)の端末部を保持するフェルール20と、フェルール20を支持しているプラグフレーム21と、プラグフレーム21を支持しているラッチフレーム22とを備える。光ファイバケーブル1は単心ケーブルであってもよいし、2心以上の多心ケーブルであってもよい。本例では、フェルール20は心線毎に設けられており、フェルール20の数は、光ファイバケーブル1の心数に応じて適宜変更される。なお、フェルール20は、複数の心線を保持する多心フェルールであってもよい。
【0023】
ラッチフレーム22は筒状に形成されており、光ファイバケーブル1は、ラッチフレーム22に挿通され、ラッチフレーム22の軸方向一端側の開口から引き出されている。ラッチフレーム22から引き出された光ファイバケーブル1の基端部には、ケーブルの屈曲を防止するためのブーツ23が被せられている。ブーツ23は、ラッチフレーム22側に位置する基端部から他端に向けて先細るテーパ状に形成されている。
【0024】
プラグフレーム21はラッチフレーム22の軸方向他端側の開口からラッチフレーム22に挿入され、ラッチフレーム22に着脱可能に係止されている。フェルール20に被さっているプラグフレーム21の先端部は、ラッチフレーム22の軸方向他端側の開口から突出して配置されており、このプラグフレーム21の先端部がアダプタ5に嵌合される。以下、プラグフレーム21がラッチフレーム22から突出する方向をプラグ2における前方とし、反対方向を後方とする。プラグ本体10が後方に引かれることによってプラグフレーム21はアダプタ5から抜去される。
【0025】
ラッチフレーム22の外周の一面22aには、アダプタ5によって係止されるラッチ25が設けられている。以下、外面22aの面内において前後方向に垂直な方向且つ外面22aに平行な方向をプラグ2における幅方向とする。また、外面22aに垂直な方向をプラグ2における上下方向とし、外面22a側を上側とする。なお、二つのラッチ25が幅方向に間隔をあけて配置されているが、ラッチ25は一つ以上あればよい。
【0026】
ラッチ25はラッチフレーム22の外面22aに固定されている支持部26から前方に延びており、ラッチ25の前端部27はプラグフレーム21の上方に配置されている。ラッチ25とラッチフレーム22の外面22a及びプラグフレーム21の外面21aとの間には支持部26を除いて隙間があいており、ラッチ25が弾性的に撓むことによって、前端部27はプラグフレーム21の外面21aの上方から外面21aに向けて変位可能である。前端部27はプラグフレーム21と共にアダプタ5に収容され、前端部27には、アダプタ5によって係止される係止突起28が設けられている。
【0027】
スライダ11は、ラッチ25の上方に配置されるカバー部30と、ラッチフレーム22の後方に配置される把持部31とを備える。ラッチフレーム22の外面22aとカバー部30とはラッチ25を間に挟んで対向しており、外面22aとカバー部30とには、互いに係合する係合部40,41がそれぞれ設けられている。両係合部40,41によって、スライダ11は後方に移動可能に支持され、換言すればプラグフレーム21がアダプタ5から抜去される抜去方向に移動可能に支持されている。
【0028】
ラッチフレーム22の係合部40は、ラッチフレーム22の外面22aに固定されているリブ42と、リブ42の上端部から幅方向両側に突出している一対のウイング43とで構成され、全体として断面略T字形に形成されており、前後方向に延びている。
【0029】
図3に示すように、カバー部30の係合部41は、幅方向に間隔をあけて配置されている一対のアーム44を含む。一対のアーム44は、係合部40のリブ42及び一対のウイング43を幅方向に挟んでおり、リブ42及び一対のウイング43と一対のアーム44との係合によって、カバー部30は前後方向にガイドされる。そして、各アーム44には、ラッチフレーム22の外面22aとウイング43との間に収容される係合爪45が設けられており、ウイング43と係合爪45との係合によってカバー部30の浮き上がりが規制される。これにより、スライダ11は抜去方向に移動可能に支持される。なお、ラッチフレーム22の後方に配置されるスライダ11の把持部31には、ブーツ23が挿通される挿通孔32が設けられており、挿通孔32の内周とブーツ23との係合によってスライダ11の支持が補助されている。
【0030】
係合部41は、一対のアーム44の前端部間を塞ぐストッパ46をさらに含み、スライダ11の抜去方向に沿った可動域は、ストッパ46と、把持部31とによって規定されている。スライダ11が抜去方向に所定量移動するとストッパ46が係合部40のリブ42の前端と当接し、スライダ11の抜去方向の移動が阻止される。また、スライダ11が抜去方向とは反対方向に所定量移動すると、把持部31がラッチフレーム22の後端に当接し、スライダ11の抜去方向とは反対方向の移動が阻止される。
【0031】
なお、ラッチフレーム22の係合部40及びカバー部30の係合部41は、上記の構成に限定されない。例えば、カバー部30の係合部41がリブ42と一対のウイング43とで構成され、ラッチフレーム22の係合部40が一対のアーム44で構成されてもよい。
【0032】
以上のように抜去方向に移動可能に支持されているスライダ11は、抜去方向の移動に応じてラッチ25を押し下げる押下部33をさらに有する。押下部33は、ラッチフレーム22の外面22aとの間にラッチ25を挟んでいるカバー部30に設けられている。ラッチ25には、抜去方向に向かうに従い外面22aから離間するように傾斜した摺接面25aが設けられている。スライダ11が抜去方向に移動すると、押下部33は、摺接面25aを抜去方向に摺動し、ラッチ25を外面22aに向けて押し下げる。押下げられたラッチ25は弾性的に撓み、上記のとおり、ラッチ25の前端部27がプラグフレーム21の外面21aに向けて変位する。
【0033】
図4A図4Cは、アダプタ5とプラグ本体10との嵌合が解除される際のプラグ2の各部の動作を示す。
【0034】
図4Aに示すように、プラグ本体10のプラグフレーム21がアダプタ5に嵌合している。ラッチ25の前端部27もアダプタ5に収容されており、前端部27に設けられている係止突起28がアダプタ5の係止部6によって係止されている。
【0035】
図4Bに示すように、スライダ11が抜去方向に引かれると、アダプタ5に固定されているプラグ本体10に対してスライダ11が抜去方向に移動し、スライダ11の押下部33が、ラッチ25の摺接面25aを摺動し、ラッチ25を押し下げる。押し下げられたラッチ25は弾性的に撓み、ラッチ25の前端部27はプラグフレーム21の外面21aに向けて変位する。前端部27の変位に伴い、アダプタ5の係止部6と前端部27に設けられている係止突起28との係合が解除され、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除可能となる。
【0036】
図4Cに示すように、スライダ11が引き続き抜去方向に引かれると、スライダ11が可動域の抜去方向の一端に達し、以後、スライダ11と一体にプラグ本体10も抜去方向に引かれ、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除され、プラグフレーム21がアダプタ5から抜去される。
【0037】
このように、スライダ11が抜去方向に移動することにより、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除され且つプラグフレーム21がアダプタ5から抜去される。
【0038】
工具12は、スライダ11を抜去方向に引き、プラグ本体10をアダプタ5から抜去するために用いられる。例えば図1に示したように、複数のアダプタ5が機器3のパネル4に密集して設けられ、機器3に接続されている複数の光ファイバケーブル1もまた密集しており、スライダ11に手指が届き難い場合に、工具12がスライダ11に取り付けられ、スライダ11が工具12を介して抜去方向に引かれる。さらに本例では、工具12は、アダプタ5とプラグ本体10とを嵌合させるためにも用いられる。
【0039】
図2及び図3も参照して、スライダ11の把持部31には工具12が差し込まれるスロット50が設けられている。スロット50は、把持部31の後面に開口しており、工具12は、抜去方向とは反対方向にスロット50に差し込まれる。スロット50には、差し込まれた工具12によって係止される係止部51が設けられている。
【0040】
スロット50は、プラグ本体10のラッチフレーム22とスライダ11のカバー部30との隙間に通じており、ラッチフレーム22の外面22aには、スロット50に差し込まれた工具12と当接する受圧部52が設けられている。受圧部52は、前後方向に延びるリブによって構成されているが、受圧部52の構成は特に限定されない。
【0041】
図5A図5Cは、工具12の構成を示す。
【0042】
工具12は、スライダ11のスロット50に差し込まれる差込片53と、差込片53に隣設されているブーツ係合部70と、操作部71とを備える。工具12は樹脂材料からなり、差込片53、ブーツ係合部70、及び操作部71は一体に形成されている。
【0043】
差込片53は、厚みが差込片53の先端に向けて次第に小さくなっているテーパ部55を有し、さらに本例では、テーパ部55のブーツ係合部70側に隣設されている基部56を有する。テーパ部55は、差込片53の厚み方向両側の面のうち一方の第1面53a側に、他方の第2面53bに対して傾斜した傾斜面55aをもつ。基部56は、厚みが一定であり、差込片53の第1面53a側に、第2面53bに対して平行な面56aをもつ。差込片53は、第2面53bをプラグ2における上方に向けてスロット50に差し込まれる。
【0044】
差込片53はまた、スライダ11の係止部51を係止する係止突起57と、係止部51を押圧する押圧突起58と、プラグ本体10の受圧部52に当接する押圧部59とを有する。
【0045】
係止突起57は、差込片53の外周面(第1面53a及び第2面53b並びに幅方向両側の側面53c,53d)のうち、テーパ部55の傾斜面55aが設けられている第1面53aを除いた面に設けられ、本例では、第2面53bに設けられている。
【0046】
スライダ11の係止部51は、図2に示すように、スロット50を囲む四方の壁のうち、スロット50に差し込まれた差込片53の第2面53bと対向する上部壁60に設けられ、本例では、上部壁60に形成された貫通孔61と、貫通孔61のスロット開口側に形成された内壁62とを含む。係止突起57は、貫通孔61に収容され、内壁62によって係止される。
【0047】
差込片53の先端側に位置する係止突起57の前面57aは、差込片53がスロット50に差し込まれる際に係止部51と当接する面であり、差込片53の第2面53bに垂直な方向に対して操作部54側に倒れる傾斜面とされている。差込片53がスロット50に差し込まれる際に、係止部51は係止突起57を乗り越えるが、前面57aが傾斜面であることにより、係止部51は係止突起57を円滑に乗り越え、差込片53をスロット50に差し込む作業が容易となる。
【0048】
一方、前面57aと反対側の後面57bは、差込片53がスロット50に差し込まれている状態で、係止部51の内壁62と係合する面であり、後面57bは第2面53bに対して略垂直となっている。後面57bは、差込片53のテーパ部55上に配置されていてもよいが、本例では、基部56上に配置されている。
【0049】
押圧突起58は、係止突起57よりも操作部54側で差込片53の第2面53bに設けられている。押圧突起58の第2面53bからの高さH2は、係止突起57の高さH1よりも小さく、差込片53がスロット50に差し込まれている状態で、係止部51に接し、又は係止部51との間に僅かな隙間をあけて係止部51の下方に配置される。
【0050】
押圧部59は、差込片53の先端部に設けられており、差込片53がスロット50に差し込まれた際に、プラグ本体10の受圧部52に当接する。押圧部59は、差込片53の先端面によって構成されてもよいが、受圧部52を収容可能な切り欠き部によって構成されており、受圧部52を収容することにより、差込片53がスロット50に差し込まれる際のガイドとしても機能する。
【0051】
ブーツ係合部70は、光ファイバケーブル1及びブーツ23が挿通可能な筒状に形成されている。そして、ブーツ係合部70は、軸方向の全長に亘って延びるスリット72を有し、スリット72の幅Wは、光ファイバケーブル1の直径より大きく且つブーツ23の最大径(基端部の外径)よりも小さい。ブーツ23によって被覆された基端部を除く光ファイバケーブル1の任意の部分は、スリット72を通過してブーツ係合部70に進入可能であり、またスリット72を通過してブーツ係合部70から離脱可能である。一方、ブーツ23はスリット72を通過できず、したがって、ブーツ23と、ブーツ23を収容したブーツ係合部70とは、ブーツ23の径方向に互いに拘束される。
【0052】
軸方向に垂直な断面におけるブーツ係合部70の外周は矩形状に形成されており、操作部71は、ブーツ係合部70の一対の側面に設けられている。図5Bに示すように、ブーツ係合部70の側面における軸方向中央部には凹面が設けられており、操作部71は、この凹面によって構成されている。
【0053】
図5Cに示すように、工具12を抜去方向から見た場合に、工具12のブーツ係合部70はプラグ2の最外形線OLの内側に収まっている。ここで、プラグ2の最外形線OLとは、工具12が取り付けられていない状態のプラグ2を、投射線が投影面に対して垂直となるように平行投影した場合に、投影面に写るプラグ2の射影の輪郭線を言うものとする。
【0054】
工具12は、以下のようにしてプラグ2に取り付けられる。まず、ブーツ23によって被覆された基端部を除く光ファイバケーブル1の一部分がスリット72を通してブーツ係合部70に収容される。そして、光ファイバケーブル1をブーツ係合部70に収容した工具12が光ファイバケーブル1に沿って光ファイバケーブル1の基端部側に移動され、ブーツ23をブーツ係合部70に収容する。併せて、工具12は、差込片53をスライダ11のスロット50に差し込み、差込片53の係止突起57によってスライダ11の係止部51を係止する。
【0055】
図6A図6Cは、工具12を用いてアダプタ5とプラグ2とが嵌合される際のプラグ2の各部の動作を示す。
【0056】
図6Aに示すように、工具12の差込片53がスライダ11のスロット50に差し込まれており、差込片53の押圧部59はプラグ本体10の受圧部52に当接している。
【0057】
図6Bに示すように、プラグ本体10がアダプタ5に嵌合される嵌合方向に工具12の操作部71が押されると、押圧部59と受圧部52とを介してプラグ本体10も押され、プラグ本体10が嵌合方向に移動する。プラグ本体10の移動に応じて、プラグ本体10のプラグフレーム21と、ラッチ25の前端部27とがアダプタ5に挿入される。
【0058】
図6Cに示すように、アダプタ5とプラグフレーム21とが嵌合するまでプラグ本体10が嵌合方向に移動すると、アダプタ5の係止部6がラッチ25の係止突起28を乗り越え、係止突起28が係止部6によって係止される。
【0059】
なお、工具12は、プラグ本体10に替えてスライダ11を押圧してもよく、例えばブーツ係合部70のスライダ側の端面をスライダ11の後端面に当接させることによってスライダ11を押圧できる。ただし、アダプタ5に嵌合されるプラグ本体10を直接押圧することが好ましい。プラグ本体10を直接押圧したほうが、抜去方向及び抜去方向とは反対方向の嵌合方向に移動可能にプラグ本体10に支持されているスライダ11を押圧するよりも操作感が高まる。
【0060】
図7A図7Cは、工具12を用いてプラグ2がアダプタ5から抜去される際のプラグ2の各部の動作を示す。
【0061】
図7Aに示すように、プラグ本体10のプラグフレーム21がアダプタ5に嵌合している。ラッチ25の前端部27もアダプタ5に収容されており、前端部27に設けられている係止突起28がアダプタ5の係止部6によって係止されている。工具12の差込片53はスライダ11のスロット50に差し込まれており、差込片53の第2面53bがプラグ本体10の抜去方向と平行に配置される。なお、第2面53bが抜去方向に対して僅かに(例えば-5°~+5°)傾いていても、第2面53bと抜去方向とは平行であるものと見做す。
【0062】
図7Bに示すように、差込片53の第2面53bがプラグ本体10の抜去方向と平行に配置されている状態で、工具12の操作部71がプラグ本体10の抜去方向に引かれると、差込片53の係止突起57はスライダ11の係止部51を係止し、スライダ11もまた抜去方向に引かれる。抜去方向に引かれたスライダ11は、アダプタ5に固定されているプラグ本体10に対して抜去方向に移動し、スライダ11の押下部33がラッチ25を押し下げる。押し下げられたラッチ25の前端部27はプラグフレーム21の外面21aに向けて変位し、前端部27の変位に伴い、アダプタ5の係止部6と前端部27に設けられている係止突起28との係合が解除され、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除可能となる。
【0063】
図7Cに示すように、工具12が引き続き抜去方向に引かれると、スライダ11が可動域の抜去方向の一端に達し、以後、スライダ11と一体にプラグ本体10も抜去方向に引かれ、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除され、プラグプレーム21がアダプタ5から抜去される。
【0064】
図8は、工具12の作用を模式的に示す。
【0065】
図8に示す例では、機器3のパネル4に設けられている複数のアダプタ5のうち一部のアダプタ5には、プラグ2が既に嵌合している。アダプタ5は密集して設けられており、アダプタ5に嵌合して隣り合っている2つのプラグ2の間に置かれた隙間は僅かである。この状態で、空いているアダプタ5にプラグ2が嵌合される。以下では、アダプタ5に既に嵌合しているプラグ2をプラグ2aとし、空いているアダプタ5に嵌合されるプラグ2をプラグ2bとして、両者を区別する。
【0066】
プラグ2bには工具12が取り付けられている。工具12のブーツ係合部70は、ブーツ23を収容しており、ブーツ23を径方向に拘束している。そして、工具12の差込片53がスライダ11のスロット50に差し込まれており、スライダ11を係止している。したがって、プラグ2bは、前方に抜け落ちることなく、工具12に保持される。これにより、プラグ2bをアダプタ5に嵌合させる際の作業性を高めることができる。
【0067】
また、図5Cに示したように、工具12のブーツ係合部70はプラグ2の最外形線OLの内側に収まっている。したがって、プラグ2bに取り付けられている工具12と、プラグ2bの周囲のプラグ2aに取り付けられている工具12との間に置かれる隙間は、プラグ2bと、周囲のプラグ2aとの間に置かれる隙間よりも拡大される。これにより、プラグ2bに取り付けられている工具12の操作部71を確実に把持でき、工具12の操作が容易となる。特に本例では、工具12の操作部71がブーツ係合部70の側面に凹設されているので、操作部71の周囲に置かれる隙間がさらに拡大される。
【0068】
また、ブーツ23と、ブーツ23を収容しているブーツ係合部70とは、ブーツ23の径方向に互いに拘束される。したがって、プラグ2bに対する工具12の傾きが抑制される。これにより、工具12に加える力を、プラグ2bとアダプタ5との嵌合に余さず利用できる。また、工具12が過度に傾けられることに起因して差込片53及びスロット50が破損することも抑制できる。
【0069】
工具12の以上の作用は、プラグ2bとアダプタ5とを嵌合させる際の作用であるが、プラグ2bをアダプタ5から抜去する際の作用も同様である。すなわち、プラグ2bに取り付けられている工具12の操作部71を確実に把持でき、工具12を操作してプラグ2bをアダプタ5から容易に引き抜くことができる。また、工具12に加える力を、プラグ2bの引き抜きに余さず利用できる。また、工具12が過度に傾けられることに起因して差込片53及びスロット50が破損することも抑制できる。
【0070】
操作部71が設けられているブーツ係合部70の長さは、作業性を考慮して適宜設定でき、ブーツ23より長くてもよいし、ブーツ23より短くてもよいし、ブーツ23と同じでもよい。
【0071】
プラグ2に取り付けられている工具12は、プラグ2がアダプタ5から抜かれている状態で、プラグ2から取り外される。図9A図9Cは、工具12が取り外される際のプラグ2の各部の動作を示す。
【0072】
図9Aに示すように、工具12の差込片53がスライダ11のスロット50に差し込まれている。工具12がプラグ2から取り外される際には、まず、プラグ本体10のプラグフレーム21が、ラッチフレーム22から前方に引き抜かれる。プラグフレーム21の引き抜きに伴い、光ファイバケーブル1及びブーツ23がラッチフレーム22に引き込まれ、工具12のブーツ係合部70には、ブーツ23によって被覆された基端部を除く光ファイバケーブル1の一部分が収容される。ブーツ係合部70のスリット72の幅W(図5C参照)は光ファイバケーブル1の外径よりも小さく、ブーツ係合部70に収容された光ファイバケーブル1の一部分は、スリット72を通過してブーツ係合部70から離脱可能である。したがって、ブーツ係合部70の拘束が解かれ、工具12はプラグ2に対して傾倒可能となる。
【0073】
図9Bに示すように、工具12のブーツ係合部70(操作部71)が持ち上げられ、工具12がプラグ2に対して傾けられる。これにより、差込片53のテーパ部55の傾斜面55aがプラグ2の前後方向(嵌合・抜去方向)と平行に配置される。なお、傾斜面55aが前後方向に対して僅かに(例えば-5°~+5°)傾いていても、傾斜面55aと前後方向とは平行であるものと見做す。
【0074】
そして、図9Cに示すように、テーパ部55の傾斜面55aがプラグ2の前後方向と平行に配置されている状態で、工具12がプラグ2の後方に引かれることにより、差込片53の係止突起57がスライダ11の係止部51の係止を解除し、差込片53がスライダ11のスロット50から引き抜かれる。以上により、工具12はプラグ2から取り外される。
【0075】
図10及び図11は、工具12の差込片53の係止突起57とスライダ11の係止部51との係合関係を詳細に示し、図10は、差込片53の第2面53bがプラグ2の前後方向と平行に配置されている場合、即ち差込片53がプラグ2の前後方向(嵌合・抜去方向)に対して平行にスロット50に差し込まれている場合の係合関係を示し、図11は、差込片53のテーパ部55の傾斜面55aがプラグ2の前後方向と平行に配置されている場合、即ち差込片53がプラグ2の前後方向に対して傾いてスロット50に差し込まれている場合の係合関係を示す。
【0076】
図10に示すとおり、差込片53の第2面53bがプラグ2の前後方向と平行に配置されている場合に、係止突起57の後面57bは第2面53bに対して略垂直であるから、後面57bと係止部51の内壁62とはプラグ2の前後方向に正対している。この場合に、工具12がプラグ2の後方に引かれると、係止突起57は係止部51を係止し、スライダ11が工具12と一体に後方に引かれる(図7B図7C参照)。
【0077】
一方、図11に示すとおり、差込片53のテーパ部55の傾斜面55aがプラグ2の前後方向と平行に配置されている場合に、係止突起57の後面57bは、係止部51の内壁62と反対側に倒れており、後面57bと内壁62とがプラグ2の前後方向に正対している場合に比べて両者の係合力が弱まる。この場合に、工具12がプラグ2の後方に引かれると、係止部51は係止突起57を容易に乗り越え、係止突起57は係止部51の係止を解除する。これにより、工具12がプラグ2から取り外される(図9B図9C参照)。
【0078】
本例では、差込片53は押圧突起58を有し、この押圧突起58は、上記のとおり、差込片53がスロット50に差し込まれている状態で、係止部51に接し、又は係止部51との間に僅かな隙間をあけて係止部51の下方に配置されている。図11に示すように、差込片53のテーパ部55の傾斜面55aがプラグ2の前後方向と平行に配置された際に、係止部51は、弾性的に撓みながら、押圧突起58によって押し上げられる。係止部51が押し上げられることにより、係止突起57の後面57bと内壁62との係合代Lap2は、差込片53の第2面53bがプラグ2の前後方向と平行に配置されている場合の係合代Lap1よりも小さくなる。これにより、後面57bと内壁62との係合力が一層弱まり、工具12をプラグ2から容易に取り外すことができる。
【0079】
図12A図12Cは、上述したプラグ2に適用可能なプラグ用工具の他の例を示す。
【0080】
工具112は、スライダ11のスロット50に差し込まれる差込片153と、差込片153に隣設されているブーツ係合部170と、操作部171とを備える。工具112は樹脂材料からなり、差込片153、ブーツ係合部170、及び操作部171は一体に形成されている。なお、差込片153は、上述した工具12の差込片53と同一であり、差込片153の構成については、差込片53の構成を参照することにより、説明を簡略又は省略する。
【0081】
ブーツ係合部170は、光ファイバケーブル1及びブーツ23が挿通可能な筒状に形成されている。そして、ブーツ係合部170は、軸方向の全長に亘って延びるスリット172を有し、スリット172の幅W1は、光ファイバケーブル1の直径より大きく且つブーツ23の最大径(基端部の外径)よりも小さい。ブーツ23によって被覆された基端部を除く光ファイバケーブル1の任意の部分は、スリット172を通過してブーツ係合部170に進入可能であり、またスリット172を通過してブーツ係合部170から離脱可能である。一方、ブーツ23はスリット172を通過できず、したがって、ブーツ23と、ブーツ23を収容したブーツ係合部170とは、ブーツ23の径方向に互いに拘束される。
【0082】
操作部171は、ロッド状に形成されており、差込片153とは反対側で、ブーツ係合部170の軸方向にブーツ係合部170から延びている。操作部171の幅W2は、ブーツ係合部170の幅W3よりも小さい。操作部171の先端部には、幅方向両側に突出する一対の凸部173a,173bによって構成された第1把持部173が設けられている。また、ブーツ係合部170の操作部側端部と第1把持部173との間には易破断部174が設けられており、ブーツ係合部170の操作部側端部と易破断部174との間には第2把持部175が設けられている。
【0083】
易破断部174には、操作部171を厚み方向に貫通する貫通孔176が形成されている。貫通孔176が形成されることにより、操作部171の長手方向各部の断面積が易破断部174において局所的に小さくなっており、易破断部174は相対的に容易に破断され得る。なお、易破断部174の断面積が局所的に小さくなっていればよく、易破断部174には、貫通孔176に替えて凹部又は溝が形成されてもよい。
【0084】
第2把持部175は、第1把持部173と同様に、幅方向両側に突出する一対の凸部175a,175bによって構成されている。好ましくは、凸部175a,175bは、厚み方向両側に突出し、且つ易破断部174の一部を間に挟むようにして形成される。易破断部174が破断された場合に、操作部171の先端部は第2把持部175によって構成され、破断によって生じるエッジが、一対の凸部175a,175bの間に収納される。これにより、破断によって生じるエッジと、光ファイバケーブル1との接触を抑制でき、光ファイバケール1がエッジとの接触によって損傷することを抑制できる。
【0085】
図12Cに示すように、工具112を抜去方向から見た場合に、工具112のブーツ係合部170はプラグ2の最外形線OLの内側に収まっている。ここで、プラグ2の最外形線OLとは、工具112が取り付けられていない状態のプラグ2を、投射線が投影面に対して垂直となるように平行投影した場合に、投影面に写るプラグ2の射影の輪郭線を言うものとする。
【0086】
工具112は、以下のようにしてプラグ2に取り付けられる。まず、ブーツ23によって被覆された基端部を除く光ファイバケーブル1の一部分がスリット172を通してブーツ係合部170に収容される。そして、光ファイバケーブル1をブーツ係合部170に収容した工具112が光ファイバケーブル1に沿って光ファイバケーブル1の基端部側に移動され、ブーツ23をブーツ係合部170に収容する。併せて、工具112は、差込片153をスライダ11のスロット50に差し込み、差込片153の係止突起157によってスライダ11の係止部51を係止する。
【0087】
工具112を用いてアダプタ5とプラグ2とが嵌合される際には、工具112の差込片153がスライダ11のスロット50に差し込まれ、差込片153の押圧部159がプラグ本体10の受圧部52に当接している状態で、プラグ本体10がアダプタ5に嵌合される嵌合方向に工具112の操作部171が押される。プラグ本体10のプラグフレーム21と、ラッチ25の前端部27とがアダプタ5に挿入され、アダプタ5とプラグフレーム21とが嵌合するまでプラグ本体10が嵌合方向に移動すると、アダプタ5の係止部6がラッチ25の係止突起28を乗り越え、係止突起28が係止部6によって係止される(図6A図6C参照)。
【0088】
また、工具112を用いてプラグ2がアダプタ5から抜去される際には、工具112の差込片153がスライダ11のスロット50に差し込まれ、差込片153の第2面153bがプラグ本体10の抜去方向と平行に配置されている状態で、工具112の操作部171がプラグ本体10の抜去方向に引かれる。差込片53の係止突起57がスライダ11の係止部51を係止し、スライダ11もまた抜去方向に引かれる。抜去方向に引かれたスライダ11が、アダプタ5に固定されているプラグ本体10に対して抜去方向に移動し、スライダ11の押下部33がラッチ25を押し下げる。押し下げられたラッチ25の前端部27はプラグフレーム21の外面21aに向けて変位し、前端部27の変位に伴い、アダプタ5の係止部6と前端部27に設けられている係止突起28との係合が解除され、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除可能となる。工具112が引き続き抜去方向に引かれ、スライダ11が可動域の抜去方向の一端に達し、以後、スライダ11と一体にプラグ本体10も抜去方向に引かれ、アダプタ5とプラグフレーム21との嵌合が解除され、プラグフレーム21がアダプタ5から抜去される。
【0089】
図13は、工具112の作用を模式的に示す。
【0090】
図13に示す例では、機器3のパネル4に設けられている複数のアダプタ5のうち一部のアダプタ5には、プラグ2が既に嵌合している。アダプタ5は密集して設けられており、アダプタ5に嵌合して隣り合っている2つのプラグ2の間に置かれた隙間は僅かである。この状態で、空いているアダプタ5にプラグ2が嵌合される。以下では、アダプタ5に既に嵌合しているプラグ2をプラグ2aとし、空いているアダプタ5に嵌合されるプラグ2をプラグ2bとして、両者を区別する。
【0091】
プラグ2bには工具112が取り付けられている。工具112のブーツ係合部170は、ブーツ23を収容しており、ブーツ23を径方向に拘束している。そして、工具112の差込片153がスライダ11のスロット50に差し込まれており、スライダ11を係止している。したがって、プラグ2bは、前方に抜け落ちることなく、工具112に保持される。これにより、プラグ2bをアダプタ5に嵌合させる際の作業性を高めることができる。
【0092】
また、図12Cに示したように、工具112のブーツ係合部170はプラグ2の最外形線OLの内側に収まっている。したがって、プラグ2bに取り付けられている工具112と、プラグ2bの周囲のプラグ2aに取り付けられている工具112との間に置かれる隙間は、プラグ2bと、周囲のプラグ2aとの間に置かれる隙間よりも拡大される。特に、操作部171の幅W2は、ブーツ係合部170の幅W3よりも小さく、操作部171の周囲に置かれる隙間は、ブーツ係合部170の周囲に置かれる隙間よりもさらに拡大される。これにより、プラグ2bに取り付けられている工具112の操作部171を確実に把持でき、工具112の操作が容易となる。
【0093】
また、ブーツ23と、ブーツ23を収容しているブーツ係合部170とは、ブーツ23の径方向に互いに拘束される。したがって、プラグ2bに対する工具112の傾きが抑制される。これにより、工具112に加える力を、プラグ2bとアダプタ5との嵌合に余さず利用できる。また、工具112が過度に傾けられることに起因して差込片53及びスロット50が破損することも抑制できる。
【0094】
工具112の以上の作用は、プラグ2bとアダプタ5とを嵌合させる際の作用であるが、プラグ2bをアダプタ5から抜去する際の作用も同様である。すなわち、プラグ2bに取り付けられている工具112の操作部171を確実に把持でき、工具112を操作してプラグ2bをアダプタ5から容易に引き抜くことができる。また、工具112に加える力を、プラグ2bの引き抜きに余さず利用できる。また、工具112が過度に傾けられることに起因して差込片53及びスロット50が破損することも抑制できる。
【0095】
さらに、プラグ2bがアダプタ5に嵌合した状態において、操作部171の易破断部174が破断されることにより、プラグ2bから抜去方向に延びる操作部171の長さが短縮される。これにより、プラグ2b及び周囲のプラグ2aから同方向に延びる光ファイバケーブル1の取り回しが容易となる。また、易破断部174が破断された後も、操作部171には第2把持部175が残っており、プラグ2bをアダプタ5から抜去する際には、第2把持部175を把持してプラグ2bをアダプタ5から容易に引き抜くことができる。
【0096】
プラグ2をアダプタ5に嵌合させ、またアダプタ5から抜去する際の作業性を考慮すれば、ブーツ係合部170の差込片側の端から操作部171の先端までの長さL1は、ブーツ23よりも長いことが好ましい。また、プラグ2がアダプタ5に嵌合した状態における光ファイバケーブル1の取り回しを考慮すれば、ブーツ係合部170の長さL2は、ブーツ23よりも短いことが好ましい。ブーツ係合部170の差込片側の端から第2把持部175の先端までの長さL3は、作業性及び光ファイバケーブル1の取り回しを考慮して適宜設定できる。L3がブーツ23よりも長ければ作業性が高まり、L3がブーツ23よりも短ければ光ファイバケーブル1の取り回しが容易となる。
【0097】
ここまで、光ファイバケーブル1とその端末部に取り付けられているプラグ2を例にして実施形態を説明したが、上記実施形態は一例であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでもない。例えばケーブルは、心線に導体が用いられる電気ケーブル(例えばLAN(Local Area Network)ケーブル等)であってもよい。また、ケーブルには、幹線から複数の分岐線が延びる分岐ケーブルも含まれ、分岐ケーブルである場合に、プラグが取り付けられるケーブルの端末部には、幹線の端末部及び/又は各分岐線の端末部が含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 光ファイバケーブル
2 プラグ
5 アダプタ
10 プラグ本体
11 スライダ
12 工具
50 スロット
53 差込片
59 押圧部
70 ブーツ係合部
71 操作部
72 スリット
112 工具
153 差込片
159 押圧部
170 ブーツ係合部
171 操作部
172 スリット
173 第1把持部
174 易破断部
175 第2把持部
OL プラグ2の最外形線
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13