IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 冨士ファニチア株式会社の特許一覧

特許7208626化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法
<>
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図1
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図2
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図3
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図4
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図5
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図6
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図7
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図8
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図9
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図10
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図11
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図12
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図13
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図14
  • 特許-化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20230112BHJP
   B32B 21/08 20060101ALI20230112BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230112BHJP
   B32B 21/10 20060101ALI20230112BHJP
   A47C 5/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B27M3/00 R
B32B21/08
B32B27/00 E
B32B27/00 D
B32B21/10
A47C5/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019072230
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020168818
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】596026545
【氏名又は名称】冨士ファニチア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一之
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-145583(JP,A)
【文献】特公平01-059103(JP,B2)
【文献】特開昭61-172735(JP,A)
【文献】特開2009-061680(JP,A)
【文献】特開2012-245637(JP,A)
【文献】特開2012-001610(JP,A)
【文献】特開2005-313345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 1/00 - 3/38
B32B 21/08
B32B 27/00
B32B 21/10
A47C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧複合板であって、
木質材を含む芯材と、
前記芯材の表面を被覆する介在シートと、
前記介在シートの表面を被覆する、表面に木目を示す化粧板と、
前記芯材と介在シート、及び介在シートと化粧板とを接合する第一接着材と
を備える化粧複合板であって、
前記介在シートが、熱可塑性樹脂を含み、
前記木質材の両面が、前記介在シートでそれぞれ被覆されており、さらに各介在シートの表面が、それぞれ前記化粧板で被覆されており、
少なくとも一部に、絞り加工された曲面を有しており、
前記絞り加工された曲面は、前記化粧複合板の表面と裏面において同様のパターンで表れており、
前記第一接着材が、酢酸ビニル系接着材、ポリプロピレン系接着材、ポリエチレン系接着材、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂又はこれらを混合した接着材である化粧複合板。
【請求項2】
請求項1に記載の化粧複合板であって、
前記絞り加工された曲面が、互いに交差する二方向に折曲された曲面を含んでなる化粧複合板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化粧複合板であって、
前記介在シートが不織布又は織布である化粧複合板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の化粧複合板であって、
前記介在シートが、ポリプロピレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、アラミド系繊維、ガラス系繊維、パルプ繊維、のいずれかを含む不織布で構成されてなる化粧複合板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧複合板であって、
前記芯材が、複数枚の木質材を積層してなる化粧複合板。
【請求項6】
請求項5に記載の化粧複合板であって、
前記複数枚の木質材の間に、第二接着材が介在されており、
前記第二接着材が、シート状に形成されてなる化粧複合板。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧複合板であって、
前記木質材に対する前記介在シートの目付が、該木質材と介在シートの厚さを等しくした条件に換算して、20g/m2~70g/m2である化粧複合板。
【請求項8】
木質材を含む芯材と、
化粧板及び介在シート並びにこれらを接着する第一接着材を含む表面部と
を、それぞれ準備する工程と、
前記芯材の両面それぞれ、前記表面部を第二接着材を介して加熱により接合し化粧複合板を得る工程と、
前記化粧複合板に絞り加工を行い、曲面を形成し、前記絞り加工された曲面が、前記化粧複合板の表面と裏面において同様のパターンで表出させる工程と、
を含む絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、
前記介在シートが、熱可塑性樹脂を含み、
前記第一接着材が、酢酸ビニル系接着材、ポリプロピレン系接着材、ポリエチレン系接着材、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂又はこれらを混合した接着材である絞り加工された化粧複合板の製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、
前記表面部を準備する工程が、
前記化粧板と第一接着材と介在シートとを積層した状態で、熱プレスにより前記第一接着材を溶融させて接着してなる絞り加工された化粧複合板の製造方法。
【請求項10】
請求項に記載の絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、
前記芯材を準備する工程が、
複数枚の木質材を、シート状に形成された熱可塑性樹脂よりなる前記第二接着材を挟んで積層し積層体を得る工程と、
前記積層体を熱プレスして、前記第二接着材を溶融して前記複数枚の木質材を接着する工程と
を含む絞り加工された化粧複合板の製造方法。
【請求項11】
木質材を含む芯材の両面それぞれ、化粧板及び介在シート並びにこれらを接着する第一接着材を含む表面部を、第二接着材を介して積層し、加熱により接合して化粧複合板を得る工程と、
前記化粧複合板に絞り加工を行い、曲面を形成し、前記絞り加工された曲面が、前記化粧複合板の表面と裏面において同様のパターンで表出させる工程と、
を含む絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、
前記介在シートが、熱可塑性樹脂を含み、
前記第一接着材が、酢酸ビニル系接着材、ポリプロピレン系接着材、ポリエチレン系接着材、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂又はこれらを混合した接着材である絞り加工された化粧複合板の製造方法。
【請求項12】
請求項11のいずれか一項に記載の絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、
前記化粧複合板に曲面を形成する工程が、前記化粧複合板を得る工程で加熱された状態を維持したまま、プレスにより形成されてなる絞り加工された化粧複合板の製造方法。
【請求項13】
請求項11のいずれか一項に記載の絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、さらに、
前記化粧複合板に絞り加工を行い曲面を形成する工程の前に、
前記化粧複合板を型抜きする工程を含み、
前記化粧複合板に絞り加工を行い曲面を形成する工程は、前記型抜きされた化粧複合板を、冷間加圧により絞り加工を行う絞り加工された化粧複合板の製造方法。
【請求項14】
請求項8~13のいずれか一項に記載の絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、
前記絞り加工された曲面が、互いに交差する二方向に折曲された曲面を含む絞り加工された化粧複合板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家具、電気製品のキャビネット、ドア、建築内装壁等には、深い凹凸模様を有するものが多い。その大半は、深い凹凸模様に加工したパーチクルボードや合板等の基材に、突板や木目柄等を印刷した塩化ビニルシート等を貼着したものである。パーチクルボードや合板等の基材に深い凹凸模様を形成するため、NCルータ等の木工機械を使用することが行われているが、複雑な形状になるほど高価な機械が必要となる。また木材と比較して刃物の消耗等が格段に大きく、加工費が高額になるといった欠点があった。
【0003】
これに対して、凹部で囲まれる凸部がその中心に向かって滑らかに曲線を描く任意の模様で深絞り加工された熱硬化性樹脂化粧板1から成る表層と、この熱硬化性樹脂化粧板の深絞り模様に応じて凹凸状に成形された合成樹脂発泡体2から成る中間層とが、接着層3を介して基材4に積層一体化された凹凸化粧複合板が提案されている(特許文献1)。この凹凸化粧複合板によれば、表面化粧材として熱硬化性樹脂化粧板を使用し、基材との間に合成樹脂発泡体を介在させ、接着層により積層一体化する際、熱硬化性樹脂化粧板の表面に任意の形状の凹凸付与材を当て熱圧成形することにより、中間層の合成樹脂発泡体の弾力性、熱変形性等の特性を有効に利用し、基材に凹凸模様を施すことなく表層の熱硬化性樹脂化粧板に任意形状の深絞り模様を付加することができるとされている。
【0004】
また、熱硬化性樹脂化粧板を木質芯材の表面に接着剤を介して接着加工して成る加工天板において、その加工天板の表面の一部分または複数部分が絞り加工形状の凹部を有する絞り加工天板が提案されている(特許文献2)。この絞り加工天板によれば、刃物の切削跡、基材の凹凸が全くなく外観上優れ、絞り凹部の化粧板内曲げ部分の化粧板と芯材の空隙を完全に充填接着されているため、化粧板表面に物が当ってもひび割れが生じない品質的にも優れた化粧板の絞り加工天板が得られるとされている。
【0005】
さらに、木質繊維を主原料とする成形用板状やマット状の基材表面に、FRP用成形材料を積層し、この積層したものを、型材を用いて加熱加圧して絞り加工で成形することにより、基材を圧縮、硬化させるとともに表面にFRP化粧層を一体的に形成した化粧成形体の製造方法が提案されている(特許文献3)。これにより、家具や建築内装材等の化粧複合板の表面に、凹凸を形成することができる。
【0006】
さらにまた、メラミン樹脂の化粧板を貼りつける板基材の表面側の平面部に板状物を複数枚隣接させてならべて貼りつけたのち、板状物の側面を、板状物の表面側から天板基材の表面側に至る様に曲面加工を施したポストフオーム絞り加工に木質基材が提案されている(特許文献4)。
【0007】
さらにまた、木質芯材と熱硬化性合成樹脂化粧板を平面接着した物にクサビ形状の物を周囲から挿入することにより、雄、雌のプレス型を使用することなく、凹状の絞りを成形するようにした熱硬化性合成樹脂化粧板を使った絞り加工物の製造方法が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公平1-59103号公報
【文献】特開昭61-172735号公報
【文献】特公平3-73448号公報
【文献】特開昭59-20648号公報
【文献】特公昭59-13350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの化粧成形板やその加工方法はいずれも、表面が熱硬化性樹脂等の合成樹脂層であるため、人工物が表出することとなり、自然の木目本来の美しさを享受することができなかった。また一方で、天然の木質層の表面にスリットを形成することにより、折曲性を付与する方法も提案されているが、予めスリットを形成する必要がある上、折曲時にスリットが拡大して割れが生じる等の問題があった。
【0010】
本発明の目的の一は、木質板を用いつつ、絞り加工を可能とした化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
本発明の第1の側面に係る化粧複合板によれば、化粧複合板であって、木質材を含む芯材と、前記芯材の表面を被覆する介在シートと、前記介在シートの表面を被覆する、表面に木目を示す化粧板と、前記芯材と介在シート、及び介在シートと化粧板とを接合する第一接着材とを備える化粧複合板であって、前記介在シートが、熱可塑性樹脂を含み、前記木質材の両面が、前記介在シートでそれぞれ被覆されており、さらに各介在シートの表面が、それぞれ前記化粧板で被覆されており、少なくとも一部に、絞り加工された曲面を有しており、前記絞り加工された曲面は、前記化粧複合板の表面と裏面において同様のパターンで表れており、前記第一接着材が、酢酸ビニル系接着材、ポリプロピレン系接着材、ポリエチレン系接着材、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂又はこれらを混合した接着材とすることができる。上記構成により、木質材の芯材と介在シートとの密着性と追随性が向上され、木質材に対しても三次元的な絞り加工が可能となる。この結果、木質材を用いながら金属板や樹脂板のような凹凸や曲面を形成する加工が可能となって、木質材の用途が拡大され、我が国の木材の利用拡大にも資することが期待される。また絞り加工を可能としたことで、薄い木質材でも強度を増すことが可能となる。
【0012】
また、本発明の第2の側面に係る化粧複合板によれば、上記構成に加えて、前記絞り加工された曲面が、互いに交差する二方向に折曲された曲面を含むことができる。
【0013】
さらに、本発明の第3の側面に係る化粧複合板によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記介在シートを不織布又は織布とできる。
【0014】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る化粧複合板によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記介在シートを、ポリプロピレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、アラミド系繊維、ガラス系繊維、パルプ繊維のいずれかで構成することができる。
【0015】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る化粧複合板によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記芯材を、複数枚の木質材を積層して構成することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る化粧複合板によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記複数枚の木質材の間に、第二接着材が介在されており、前記第二接着材を、シート状に形成することができる。
【0019】
さらにまた、本発明の第の側面に係る化粧複合板によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記木質材に対する前記介在シートの目付を、該木質材と介在シートの厚さを等しくした条件に換算して、20g/m2~70g/m2とすることができる。
【0022】
さらにまた、本発明の第の側面に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、木質材を含む芯材と、化粧板及び介在シート並びにこれらを接着する第一接着材を含む表面部を準備する工程と、前記芯材の両面それぞれ、前記表面部を第二接着材を介して加熱により接合し化粧複合板を得る工程と、前記化粧複合板に絞り加工を行い、曲面を形成し、前記絞り加工された曲面が、前記化粧複合板の表面と裏面において同様のパターンで表出させる工程と、を含む絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、前記介在シートが、熱可塑性樹脂を含み、前記第一接着材を、酢酸ビニル系接着材、ポリプロピレン系接着材、ポリエチレン系接着材、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂又はこれらを混合した接着材とすることができる。これにより、木質材の芯材と介在シートとの密着性と追随性が向上され、木質材に対しても三次元的な絞り加工が可能となる。この結果、木質材を用いながら金属板や樹脂板のような凹凸や曲面を形成する加工が可能となって、木質材の用途が拡大され、我が国の木材の利用拡大にも資することが期待される。また絞り加工を可能としたことで、薄い木質材でも強度を増すことが可能となる。
【0023】
さらにまた、本発明の第の側面に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記表面部を準備する工程が、前記化粧板と第一接着材と介在シートとを積層した状態で、熱プレスにより前記第一接着材を溶融させて接着することができる。
【0024】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記芯材を準備する工程が、複数枚の木質材を、シート状に形成された熱可塑性樹脂よりなる前記第二接着材を挟んで積層し積層体を得る工程と、前記積層体を熱プレスして、前記第二接着材を溶融して前記複数枚の木質材を接着する工程とを含むことができる。
【0025】
さらにまた、本発明の第11の側面に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、木質材を含む芯材の両面それぞれ、化粧板及び介在シート並びにこれらを接着する第一接着材を含む表面部を、第二接着材を介して積層し、加熱により接合して化粧複合板を得る工程と、前記化粧複合板に絞り加工を行い、曲面を形成し、前記絞り加工された曲面が、前記化粧複合板の表面と裏面において同様のパターンで表出させる工程と、を含む絞り加工された化粧複合板の製造方法であって、前記介在シートが、熱可塑性樹脂を含み、前記第一接着材が、酢酸ビニル系接着材、ポリプロピレン系接着材、ポリエチレン系接着材、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂又はこれらを混合した接着材である。
【0026】
さらにまた、本発明の第12の側面に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、上記に加えて、前記化粧複合板に曲面を形成する工程が、前記化粧複合板を得る工程で加熱された状態を維持したまま、プレスにより形成することができる。これにより、化粧複合板の形成時の加熱を利用し、冷型を用いても絞り加工が可能となり、熱効率のよい木質材の絞り加工が実現される。
【0027】
さらにまた、本発明の第13の側面に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、上記いずれかに加えて、さらに、前記化粧複合板に絞り加工を行い曲面を形成する工程の前に、前記化粧複合板を型抜きする工程を含み、前記化粧複合板に絞り加工を行い曲面を形成する工程は、前記型抜きされた化粧複合板を、冷間加圧により絞り加工を行うことができる。これにより、所望の形状の化粧複合板とした上で、さらに絞り加工が可能となり、従来の木質板では実現困難であった曲面形状の部材を化粧複合板で実現できる。
さらにまた、本発明の第14の側面に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、上記いずれかに加えて、前記絞り加工された曲面が、互いに交差する二方向に折曲された曲面を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る化粧複合板を示す分解斜視図である。
図2図1の化粧複合板の断面図である。
図3】実施形態1に係る化粧複合板の製造方法により得られた化粧複合板の模式断面図である。
図4】芯材の両面に表面部を接合する様子を示す模式分解斜視図である。
図5】化粧複合板に型を用いて絞り加工を行う様子を示す分解斜視図である。
図6】曲面が形成された化粧複合板の斜視図である。
図7】化粧複合板を折曲させた椅子の斜視図である。
図8図7の椅子の展開図に化粧複合板を切断する様子を示す平面図である。
図9図8の展開図状に切断された化粧複合板を中子を用いて曲面状に形成する様子を示す斜視図である。
図10】変形例に係る椅子の斜視図である。
図11】交差する方向に折曲させた化粧複合板を示す斜視図である。
図12図9の椅子の平面図である。
図13】他の変形例に係る椅子の平面図である。
図14】他の実施例に係る木製トレイを示す斜視図である。
図15】さらに他の実施例に係る木製容器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
[実施形態1]
【0030】
本発明の実施形態1に係る化粧複合板を示す分解斜視図を図1に、図1の化粧複合板の断面図を図2に、それぞれ示す。これらの図に示す化粧複合板100は、芯材10と、介在シート20と、化粧板30とを備える。
(芯材10)
【0031】
芯材10は、木質材12を含む。木質材12は、単板等の木質性の部材で構成される。
【0032】
また芯材10は、複数枚の木質材12を積層して構成することが好ましい。この場合、複数枚の木質材12の間には、第二接着材14が介在されている。第二接着材14は、熱可塑性樹脂で構成できる。例えば、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂(EVA系樹脂)、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が第二接着材14に利用できる。特にポリプロピレン系樹脂接着材、EVAが、融点温度が低く木質材を痛めず、強度が高く、吸湿性が低く、安価である等の点で好ましい。
【0033】
さらに熱可塑性樹脂よりなる第二接着材14は、図1に示すようにシート状に形成することが好ましい。これにより、製造時に熱プレスによって芯材10と一体に接着され、折曲時の追随性もよくなる。
(介在シート20)
【0034】
介在シート20は、芯材10の表面をそれぞれ被覆する。好ましくは、介在シート20を熱可塑性樹脂で構成する。また介在シート20は、不織布又は織布を含むことが好ましい。具体的には、ポリプロピレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、レーヨン系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、アラミド系繊維、ガラス系繊維、パルプ繊維、などで不織布や織布を構成できる。
(化粧板30)
【0035】
化粧板30は、各介在シート20の表面を、それぞれ被覆する。化粧板30の表面には、木目を表示させている。化粧板は、木質材で構成する。
(第一接着材40)
【0036】
また芯材10と介在シート20、介在シート20と化粧板30とは、それぞれ第一接着材40で接合されている。第一接着材40は、酢酸ビニル系接着材が用いられる。また第一接着材40として、第二接着材14と同様の熱可塑性樹脂で構成することもできる。例えば、酢酸ビニル系接着材、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂(EVA系樹脂)、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂等を第一接着材40として利用できる。
【0037】
なお以上の例では、芯材10の両面を、それぞれ介在シート20と化粧板30で被覆する積層構造を採用している。ただ本発明は、この構成に限られず、芯材の片面のみに介在シートと化粧板30を被覆し、他の面は被覆しない構成としてもよい。これにより、片面のみを表出させる構成、例えば凹凸を設けた看板や表面部50などに適用する場合に、薄型化と低コスト化を実現できる。
[実施形態1に係る化粧複合板の製造方法]
【0038】
次に、この化粧複合板の製造方法を説明する。ここでは、図4の分解斜視図に示すように、化粧複合板100を、芯材10と、この芯材10の両面にそれぞれ積層される表面部50に三分割する。表面部50は、化粧板30と、介在シート20と、第二木質材12Bで構成される。介在シート20の各面には、それぞれ第一接着材40が介在されて、化粧板30、第二木質材12Bと、それぞれ接着される。この表面部50の第二木質材12B側を、芯材10と対向させた姿勢で、芯材10の両面にそれぞれ表面部50を接合する。接合には第二接着材14が用いられる。接合された化粧複合板100は、図3の断面図に示すように、芯材10の木質材と、表面部50の第二木質材12Bとで構成された積層体の両面に、化粧板30が配置された状態となる。なお、第二木質材12Bは木質材12と同じ材質としてもよいし、同じ厚さとしてもよい。この場合は図2と同様の構成となる。ただ、第二木質材12Bを、芯材10の木質材と異なる材質としたり、異なる厚さとしてもよい。
【0039】
表面部50を構成する部材としては、例えば第二木質材12Bとして厚さ0.2mm~0.6mmの杢、介在シート20としてポリプロピレン系樹脂の不織布、化粧板30として厚さ0.8mm~2.0mmの単板等を、それぞれ利用できる。実施例においては、第二木質材12Bに厚さ0.25mmのブナの杢、介在シート20に40g/m2のポリプロピレン系樹脂、化粧板30に厚さ1.0mmの単板を用いている。この表面部50は、第二木質材12Bと介在シート20と化粧板30を積層した状態で、加熱と加圧を行う熱プレス等により形成できる。
【0040】
このようにして得られた表面部50を、芯材10の両面に接合する。芯材10は、複数枚の木質材を積層してもよいが、単板でもよい。実施例においては、図4の斜視図に示すように厚さ1.0mmの杢を3枚積層し、第二接着材14で接着している。この芯材10の各面に、表面部50を第二接着材14でそれぞれ接合する。ここでも、芯材10と表面部50との間に熱可塑性樹脂の第二接着材14を介在させた状態で、加熱と加圧を行う熱プレス等により接合される。これにより、化粧複合板100が形成される。
【0041】
さらに、熱プレスされて加熱されたままの化粧複合板100に、深絞り加工により曲面を成形する。この際、既に加熱された状態の化粧複合板100を、冷却される前に冷間加圧することで、金型や木型などの型やプレス板の加熱を不要とし、冷プレスとすることで加熱のエネルギーを低減し、効率のよい成形が可能となる。ここで冷間加圧とは、熱を印加しないで加圧する状態を指し、冷間プレス、コールドプレス等とも呼ばれる。また冷間加圧は、冷間等圧加圧とすることが好ましい。図5の分解斜視図に示す例では、予め化粧複合板100に形成したい極面に形成した金型や木型等の型DIを準備し、この型を特に加熱することなく、熱プレスされて既に加熱状態にある化粧複合板100を押し当てて、曲面を形成する。これにより、図6の斜視図に示すような曲面が形成された化粧複合板100が得られる。
【0042】
なお上述した方法において、芯材10と表面部50を準備する工程では、芯材10と表面部50のいずれを先に準備してもよいことはいうまでもない。
[実施形態2に係る化粧複合板の製造方法]
【0043】
以上の方法では、表面部50と芯材10が接合された化粧複合板100をそのまま成形する方法について説明した。この方法に限らず、得られた平板状の化粧複合板を、一旦、型抜きする等の方法で形状を整えた上で、絞り加工を行ってもよい。これにより、所望の形状の化粧複合板に対して絞り加工を行うことが可能となり、従来の木質板では実現困難であった曲面形状の部材を化粧複合板で実現できる。例えば、図7に示すような椅子CH1を木質材の化粧複合板で構成できる。このような方法を、実施形態2に係る化粧複合板の製造方法として、以下説明する。まず芯材10と表面部50をそれぞれ準備する。そして芯材10の表面に、表面部50を第二接着材14を介して加熱により接合し化粧複合板100を得る。ここまでの工程は上述した実施形態1に係る方法と同様である。
【0044】
次に、得られた化粧複合板100を所望の形状に切断する。例えば、トムソン型等の打抜き加工によって、図8に示すように化粧複合板100を所望の形状に型抜きする。ここでは、図7の椅子の展開図を型抜きする例を示している。また、型抜きに限らず、旋盤やソーを用いた切断や切削など、化粧複合板を切断可能な任意の加工方法が利用できる。
【0045】
また、このような型抜き等の加工に際しては、化粧複合板を一旦硬化させる必要がある。このため、熱プレスで芯材10に表面部50を接合した化粧複合板100を、冷プレスしたり、自然冷却するなどして、第二接着材14を硬化させる。そして冷却され硬化された化粧複合板100に対して、型抜き等の切断を行う。
【0046】
そして、所望の形状に切断された化粧複合板100に対して、深絞り加工を行う。例えば、型抜きされた化粧複合板100を、加熱と加圧を行う熱プレス等の方法により再度加熱した後、冷間加圧により、所望の形状に折曲する。ここでは、図8の展開図状に切断された化粧複合板100を、図9に示すように中子CRを用いて曲面状に形成する。なお本明細書において熱プレス、あるいは加熱加圧は、平板状のプレートを加熱して押圧する方法や、金型を加熱する方法等が利用できる。このようにして椅子形に形成された化粧複合板100を、冷却、硬化させた後、脱型して、椅子が得られる。なお変形に例に係る図10に示す椅子CH2では、図9の後、さらに上縁を湾曲させている。これを実現するため、別の型を用いたり、あるいは図9の中子に、予め上縁の湾曲を形成しておくことができる。
[実施形態3に係る化粧複合板の製造方法]
【0047】
以上の化粧複合板の製造方法では、一旦表面部50を準備した上で、芯材10の各面に表面部50をそれぞれ接着する手順について説明した。ただ本発明はこの方法に限らず、表面部と芯材とをまとめて積層して形成することもできる。このような手順を、実施例3に係る化粧複合板の製造方法として、以下説明する。
【0048】
まず、化粧複合板を構成する。ここでは、化粧板30、第一接着材40、介在シート20、第一接着材40、第二木質材12B、第二接着材14、芯材12、第二接着材14、第二木質材12B、第一接着材40、介在シート20、第一接着材40、化粧板30を積層する。第一接着材40と第二接着材14はシート状のものを使用する。これらを積層した状態で、加熱と加圧を行う。そして得られた化粧複合板を、実施例1と同様、加熱された状態のまま、冷間加圧により絞り加工を行い、曲面を成形する。これにより、化粧板30を別途用意することなく、ひとまとめで化粧複合板100が得られ、また曲面の形成も可能となる。
[実施形態4に係る化粧複合板の製造方法]
【0049】
さらに、ひとまとめで化粧複合板を得る方法においても、実施例2と同様、型抜きを行った上で絞り加工を行ってもよい。このような手順を、実施例4に係る化粧複合板の製造方法として、以下説明する。
【0050】
まず、化粧複合板を構成する。ここでは、実施例3と同様、化粧板30、第一接着材40、介在シート20、第一接着材40、第二木質材12B、第二接着材14、芯材12、第二接着材14、第二木質材12B、第一接着材40、介在シート20、第一接着材40、化粧板30を積層し、積層状態で加熱と加圧を行う。そして得られた化粧複合板を、冷間加熱して第一接着材40と第二接着材14を硬化させる。この状態で、実施例2と同様、所望の形状に型抜きする。このように一旦冷却させる等して接着材を硬化させることにより、形状を安定させた化粧複合板を得ることで、切断や型抜きなどの加工が可能となる。
【0051】
そして、所望の形状に切断された化粧複合板100に対して、実施例2と同様に絞り加工を行う。まず、型抜きされた化粧複合板100に加熱と加圧を行う熱プレス等の方法により再度加熱した後、冷間加圧により、所望の形状に折曲する。このようにして、化粧板30を用意することなく、化粧複合板100を得、また一旦硬化させて切断や型抜きなどの加工を経た後、曲面を形成することが可能となる。
【0052】
このような方法により、型抜きされた化粧複合板に対して絞り加工で曲面を形成することができる。すなわち、従来の木質板では図11の斜視図に示すように、交差する方向に木質板を折曲させようとすると、割れが生じて見栄えの良い絞り加工が困難であったところ、本発明の実施形態に係る絞り加工された化粧複合板の製造方法によれば、綺麗な表面仕上げのまま、交差する方向への折曲が可能となる。その理由は、以下の通りである。この化粧複合板は、芯材とその両面の化粧板の三層構成となっている。ここで杢と単板という木質材の間に介在される介在シートの不織布が、木質材の割れ方向に対する補強として作用する。この介在シートが有する強度と延伸性によって、絞り加工時に木質材に、目視されない程度の微小な割れを均等に生じさせつつ、変形による寸法の変化を吸収、補正して、絞り加工に追従した変形が実現される。なお、杢と単板は、木目が同じ方向となるように揃える。これによって、割れの発生する方向を意図的に規定できる。
【0053】
一方、芯材については、単板の積層により構成されている。ここでは、各層の木目を交互に交差するように配置している。これにより、交互に配置された木目が各層の割れを抑制する。更に層間を熱可塑性樹脂接着材で半接着の状態として絞り加工を行う。このように半接着の状態としたことで、層間で滑りを生じさせて変形を許容できる。
【0054】
また以上説明した椅子の例では、図12の平面図に示すように、背もたれと肘置きとを接合したつなぎ目部分を重ね合わせている。ただ本発明はこの例に限らず、図13に示す他の変形例に係る椅子CH3のようにつなぎ目部分で端面同士を当接させた状態で接合することもできる。これにより、つなぎ目で大きな段差が生じることのない、平坦な表面に仕上げることが可能となる。
【0055】
なお、本明細書において「絞り加工」とは、化粧複合板を湾曲させる加工であって、湾曲させる方向が平行な一方向でなく、少なくとも交差している加工を意味する。例えば、球面のように折曲部分自体が湾曲しているものや、開口端に沿って端縁を湾曲させているもの等が含まれ、逆に板材を複数の折曲部分で平行な方向にのみ折曲させるような加工は含まない。特に木質材は、平行な方向であれば湾曲させることが比較的容易であったが、折曲させる方向が交差すると、木目の方向性もあり割れ易くなっていた。これに対して本実施形態に係る化粧複合板は、このような交差する方向への湾曲を実現可能としたものである。いわゆるダイスの穴の中にポンチで板を押し込む深絞り加工で得られる有底筒状の形状に限らず、板材に面圧を印加して曲面状に成形する張出し成形も、本明細書においては絞り加工に含める。
【0056】
木質材12に対する介在シート20の目付は、この木質材12と介在シート20の厚さを等しくした条件に換算して、20g/m2~70g/m2とすることが好ましい。この範囲とすることで、介在シート20と化粧板30の強度バランスを適切に維持できる。目付が20g/m2よりも小さく、又は70g/m2よりも大きくなると、絞り加工の際に木目の割裂が生じる。目付を20g/m2~70g/m2の範囲とすることで、絞り加工の際に割裂を集中させずに化粧板30の変位を分散させて、表面に微小な割れを生じさせることで湾曲に追随した折曲が可能となる。
【0057】
このようにして得られた化粧複合板は、木質材の芯材と介在シートとの密着性と追随性が向上され、木質材に対しても三次元的な絞り加工や真空成形プレス等が可能となる。この結果、木質材を用いながら金属板や樹脂板のような凹凸や曲面を形成する加工が可能となって、木質材の用途が拡大され、我が国の木材の利用拡大にも資することが期待される。また絞り加工を可能としたことで、薄い木質材でも強度を増すことが可能となる。
【0058】
加えて、従来の木質板の加工では、上述の通り木質板の一方向(例えばX方向)にのみ折曲することは可能であるものの、交差する二方向(例えばX方向とY方向)に折曲させることは、困難であった。すなわち、木質板に対して、三次元的な絞り加工を行うと、割れが生じて見栄えが悪くなるという問題があった。
【0059】
これに対して本実施形態に係る化粧複合板によれば、交差する二方向に折曲しても割れが生じ難い、追随性を高めた化粧複合板100を実現できる。それは、芯材10と化粧板30との接合に際して、熱可塑性樹脂の介在シート20を用いたことによる。従来の折曲されることを想定した木質板では、加工性や製造のし易さ等の観点から、熱硬化性樹脂が用いられていたものの、熱可塑性樹脂では折曲時に木質板を加熱する際に、既に硬化された介在シートが折曲し難く、この部分で割れが生じるという問題があった。これに対して熱可塑性樹脂では、折曲時に加熱されると、介在シートが再度軟化するため、木質板の変形に追随し易くなる。加えて、このような介在シートを芯材や化粧板と接着する第一接着材40に、同じく熱可塑性樹脂である酢酸ビニル系接着剤を使用することで、折曲時に木質板を加熱する際に、既に硬化された接着剤の樹脂層も再度軟化するため、介在シートを介して芯材と化粧板とが一体となって折曲され易くなり、変形に対する追随が一層高められて、木質板であっても三次元的な絞り加工が実現される。例えば、木質板で一体的な椅子、例えばセル型の椅子を形成する際、従来であれば精々、背もたれの部分のみしか折曲できなかったところ、本実施形態に係る化粧複合板によれば、肘置きの部分も合わせて形成することが可能となり、より加工の自由度を高め、様々な形状に対応させた化粧複合板を実現できる。
【0060】
また、化粧複合板100を用いて形成される物品は、椅子に限らず、木質板で構成される様々なものに応用できる。例えば、図14に示すように、絞り加工で凹状に窪ませた木製トレイ2を形成したり、あるいは図15に示すように、端縁の湾曲させた木製容器3を形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る化粧複合板及び絞り加工された化粧複合板の製造方法は、椅子やトレイ、容器など、木質板を交差する方向に折曲させたり絞り加工するなどして形成される木製の物品の材質として、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
100…化粧複合板
2…木製トレイ
3…木製容器
10…芯材
12…木質材;12B…第二木質材
14…第二接着材
20…介在シート
30…化粧板
40…第一接着材
50…表面部
DI…型
CR…中子
CH1、CH2、CH3…椅子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15