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  • 特許-流体制御システムおよび流量測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】流体制御システムおよび流量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019534064
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(86)【国際出願番号】 JP2018027755
(87)【国際公開番号】W WO2019026700
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2017148264
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】山下 哲
(72)【発明者】
【氏名】澤田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122714(WO,A1)
【文献】特開2000-305630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、
前記第1バルブの下流側に設けられ、第2バルブおよび前記第2バルブの上流側に配置された圧力センサを有する流量測定装置と、
前記第2バルブに設けられた開閉検出器と、
前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉動作を制御する制御部と
を備える流体制御システムであって流量測定のときに、
前記開閉検出器が出力する信号に応じて前記第1バルブの開閉を制御し、
前記第2バルブを閉じた後の流路内の圧力上昇を前記圧力センサを用いて測定し、前記圧力上昇の起点を、前記開閉検出器が出力する信号に基づいて決定するように構成されている、流体制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記開閉検出器が出力する信号に基づいて検知された前記第2バルブの開閉に基づいて、前記第1バルブへ出力する開閉命令のタイミングを制御する、請求項1に記載の流体制御システム。
【請求項3】
それぞれが前記流量制御器および前記第1バルブを有する複数の第1流路と、
前記複数の第1流路の下流側に共通に接続され、前記流量制御器によって流量が制御された流体を使用対象に供給するための第2流路と、
前記第2流路から分岐するように設けられ前記流量測定装置を有する第3流路と
を含む、請求項1または2に記載の流体制御システム。
【請求項4】
前記流量制御器は、コントロール弁と、絞り部と、前記絞り部の上流側の圧力を測定する上流圧力センサとを備える圧力式流量制御装置である、請求項1から3のいずれかに記載の流体制御システム。
【請求項5】
流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、前記第1バルブの下流側に設けられ、圧力センサ、温度センサおよび第2バルブを有する流量測定装置と、前記第2バルブに設けられた開閉検出器と、前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉動作を制御する制御部とを備える流体制御システムにおいて行われる流量測定方法であって、
前記第1バルブと前記第2バルブとを開いてガスを流し、ガスが流れている状態で前記第2バルブを閉じ、前記第2バルブを閉じた後、ビルドアップ時間が経過した後に前記第1バルブを閉じ、前記第1バルブを閉じた後の圧力および温度を前記圧力センサおよび前記温度センサを用いて測定する第1工程と、
前記第1バルブと前記第2バルブとを開いてガスを流し、ガスが流れている状態で前記第1バルブと前記第2バルブとを同時に閉じ、前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉じた後の圧力および温度を前記圧力センサおよび前記温度センサを用いて測定する第2工程と、
前記第1工程で測定した圧力および温度と、前記第2工程で測定した圧力および温度とに基づいて流量を演算する第3工程とを包含し、
前記第1工程において、前記第2バルブが閉じた時点を、前記開閉検出器からの出力に基づいて判断し、
前記第2工程において前記第1バルブと前記第2バルブとを同時に閉じる動作を行うとき、前記開閉検出器が出力する信号に応じて、前記第1バルブへ出力する開閉命令のタイミングを制御する、流量測定方法。
【請求項6】
前記第3工程は、前記第1工程で測定した圧力PAおよび温度TAと、前記第2工程で測定した圧力PBおよび温度TBとを用いて、Q=22.4・Vs・(PA/TA-PB/TB)/(R・Δt)、ここで、Vsはビルドアップ容量、Rは気体定数、Δtは前記第1工程において前記第2バルブを閉じてから前記第1バルブを閉じるまでの前記ビルドアップ時間、に従って流量Qを演算する工程を含む、請求項5に記載の流量測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御システムおよび流量測定方法に関し、特に、流量制御器の下流側に接続された流量測定装置を備える流体制御システムおよびこれを用いた流量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等に設けられたガス供給システムは、一般的に、各供給ガス種毎に設けた流量制御器を介して、多種類のガスをプロセスチャンバ等のガス使用対象に切換えて供給するように構成されている。
【0003】
流量制御器の運用において、随時、流量精度の確認や流量校正を行うことが望まれており、流量測定方法として、ビルドアップ法が流量精度の確認や流量校正に用いられることがある。ビルドアップ法は、既知のビルドアップ容量に流れ込む単位時間あたりの流体の量を検出することによって流量を測定する方法である。
【0004】
ビルドアップ法では、流量制御器の下流に設けられた所定のビルドアップ容量(V)に下流側の弁を閉じた状態でガスを流し、そのときの圧力上昇率(ΔP/Δt)と温度(T)とを測定することにより、例えば、Q=22.4(ΔP/Δt)×V/RT(Rは気体定数)から流量Qを演算により求めることができる。
【0005】
特許文献1には、ビルドアップ法による流量測定の一例が開示されている。特許文献1に記載のガス供給装置では、複数のガス供給ラインが設けられており、各ガス供給ラインに接続された流量制御器の下流側の開閉弁から共通ガス供給路に設けられた開閉弁までの流路がビルドアップ容量として用いられている。また、特許文献2には、ビルドダウン法による流量測定の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-337346号公報
【文献】国際公開第2013/179550号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に上記のようにガス流路をビルドアップ容量として用いるときなどにおいて、基準容積が比較的小さく圧力上昇の測定時間が比較的短いことによって、流量測定の測定精度が低下する場合があった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、流量測定をより向上した精度で行うことができる流体制御システムを提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態による流体制御システムは、流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、前記第1バルブの下流側に設けられ、第2バルブを有する流量測定装置と、前記第2バルブに設けられた開閉検出器と、前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉動作を制御する制御部とを備え、前記開閉検出器が出力する信号に応じて前記第1バルブの開閉を制御する。
【0010】
ある実施形態において、前記制御部は、前記開閉検出器が出力する信号に基づいて検知された前記第2バルブの開閉に基づいて、前記第1バルブへ出力する開閉命令のタイミングを制御する。
【0011】
ある実施形態において、前記流量測定装置は前記第2バルブの上流側に配置された圧力センサをさらに有し、前記第2バルブを閉じた後の流路内の圧力上昇を前記圧力センサを用いて測定するように構成されており、前記圧力上昇の起点を、前記開閉検出器が出力する信号に基づいて決定する。
【0012】
ある実施形態において、前記流体制御システムは、それぞれが前記流量制御器および前記第1バルブを有する複数の第1流路と、前記複数の第1流路の下流側に共通に接続され、前記流量制御器によって流量が制御された流体を使用対象に供給するための第2流路と、前記第2流路から分岐するように設けられ前記流量測定装置を有する第3流路とを含む。
【0013】
ある実施形態において、前記流量制御器は、コントロール弁と、絞り部と、前記絞り部の上流側の圧力を測定する上流圧力センサとを備える圧力式流量制御装置である。
【0014】
本発明の実施形態による流量測定方法は、流量制御器の下流側に設けられた第1バルブと、前記第1バルブの下流側に設けられ、圧力センサ、温度センサおよび第2バルブを有する流量測定装置と、前記第2バルブに設けられた開閉検出器と、前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉動作を制御する制御部とを備える流体制御システムにおいて行われる流量測定方法であって、前記第1バルブと前記第2バルブとを開いてガスを流し、ガスが流れている状態で前記第2バルブを閉じ、前記第2バルブを閉じた後、ビルドアップ時間が経過した後に前記第1バルブを閉じ、前記第1バルブを閉じた後の圧力および温度を前記圧力センサおよび前記温度センサを用いて測定する第1工程と、前記第1バルブと前記第2バルブとを開いてガスを流し、ガスが流れている状態で前記第1バルブと前記第2バルブとを同時に閉じ、前記第1バルブおよび前記第2バルブを閉じた後の圧力および温度を前記圧力センサおよび前記温度センサを用いて測定する第2工程と、前記第1工程で測定した圧力および温度と、前記第2工程で測定した圧力および温度とに基づいて流量を演算する第3工程とを包含し、前記第1工程において、前記第2バルブが閉じた時点を、前記開閉検出器からの出力に基づいて判断し、前記第2工程において前記第1バルブと前記第2バルブとを同時に閉じる動作を行うとき、前記開閉検出器が出力する信号に応じて、前記第1バルブへ出力する開閉命令のタイミングを制御する。
【0015】
ある実施形態において、前記第3工程は、前記第1工程で測定した圧力PAおよび温度TAと、前記第2工程で測定した圧力PBおよび温度TBとを用いて、Q=22.4・Vs・(PA/TA-PB/TB)/(R・Δt)(ここで、Vsはビルドアップ容量、Rは気体定数、Δtは前記第1工程において前記第2バルブを閉じてから前記第1バルブを閉じるまでの前記ビルドアップ時間)に従って流量Qを演算する工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施形態によれば、流量測定を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による流体制御システムを示す模式図である。
図2】本発明の実施形態において用いられる圧力式流量制御装置の例示的な構成を示す図である。
図3】比較形態における流量測定のバルブ動作シーケンス等を示す図である。
図4】実施形態における流量測定のバルブ動作シーケンス等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る流体制御システム1を示す。流体制御システム1は、ガス供給源4からのガスを半導体製造装置のプロセスチャンバ2などのガス使用対象に制御した流量で供給できるように構成されている。
【0020】
流体制御システム1は、それぞれ別のガス供給源4に接続された複数の第1流路L1と、その下流側の第2流路L2および第3流路L3とを有している。第1流路L1のそれぞれには、流量制御器10と、流量制御器10の下流側に設置された第1バルブ21とが設けられている。各第1流路L1およびそれぞれに設けられた流量制御器10および第1バルブ21は、一体として1つの流量制御ユニット(ガスボックス)内に設けられていてもよい。
【0021】
第1流路L1の下流側には、流量制御器10によって制御された流量のガスをプロセスチャンバ2に供給するための第2流路L2が接続されている。第2流路L2は、複数の第1流路L1に対して共通に設けられており、いずれの第1流路L1からのガスも第2流路L2を通してプロセスチャンバ2に供給される。
【0022】
第2流路L2に設けられたプロセスチャンバ2には真空ポンプ3が接続されており、ガス供給源4からのガスは、典型的には、真空ポンプ3を動作させて流路が減圧された状態で、流量制御器10を介してプロセスチャンバ2へと供給される。また、第2流路L2には、遮断弁5が設けられており、必要に応じてプロセスチャンバ2へのガスの流れを遮断することができる。
【0023】
また、第1流路L1の下流側において、第2流路L2から分岐するようにして第3流路L3が設けられている。第3流路L3も第2流路L2と同様に、複数の第1流路L1に対して共通に設けられている。
【0024】
第3流路L3には、上流側の遮断弁6と流量測定装置30とが設けられており、流量測定装置30の下流側は真空ポンプ31に接続されている。本実施形態の流体制御システム1では、第2流路L2の遮断弁5を閉じるとともに第3流路L3の遮断弁6を開いた状態で、第3流路L3の流量測定装置30に選択的にガスを流通させることによって流量測定を行うことができる。
【0025】
本実施形態の流体制御システム1において、第1流路L1に設けられた各流量制御器10は、図2に示すような圧力式流量制御装置10aであってよい。圧力式流量制御装置10aは、微細開口(オリフィス)を有する絞り部11と、絞り部11の上流側に設けられたコントロール弁14(バルブ14aおよびその駆動部14b)と、絞り部11とコントロール弁14との間に設けられた圧力センサ(上流圧力センサ)12および温度センサ13とを備えている。絞り部11としては、オリフィスプレートなどのオリフィス部材の他に、臨界ノズルまたは音速ノズルを用いることもできる。オリフィスまたはノズルの口径は、例えば10μm~500μmに設定される。また、コントロール弁14としては、例えば、金属製ダイヤフラムバルブ(バルブ14a)をピエゾアクチュエータ(駆動部14b)によって駆動するピエゾ素子駆動型コントロール弁を用いることができる。
【0026】
圧力センサ12および温度センサ13は、ADコンバータを介して制御回路16に接続されている。制御回路16は、コントロール弁14の駆動部14bにも接続されており、圧力センサ12および温度センサ13の出力などに基づいて制御信号を生成し、この制御信号によってコントロール弁14の動作を制御する。本実施形態では、制御回路16は、各圧力式流量制御装置10aに設けられているが、他の態様において、複数の圧力式流量制御装置10aに対して共通の制御回路16が外部に設けられていてもよい。なお、ADコンバータは、制御回路16に内蔵されたものであってもよい。
【0027】
圧力式流量制御装置10aは、臨界膨張条件PU/PD≧約2(ただし、PU:絞り部上流側のガス圧力(上流圧力)、PD:絞り部下流側のガス圧力(下流圧力)であり、約2は窒素ガスの場合)を満たすとき、絞り部を通過するガスの流速は音速に固定され、流量は下流圧力PDによらず上流圧力PUによって決まるという原理を利用して流量制御が行われる。臨界膨張条件を満たすとき、絞り部下流側の流量Qは、Q=K1・PU(K1は流体の種類と流体温度に依存する定数)によって与えられ、流量Qは、上流圧力センサ12によって測定される上流圧力PUに比例する。また、他の態様において、絞り部11の下流側に下流圧力センサ(図示せず)を備える場合、上流圧力PUと下流圧力PDとの差が小さく、臨界膨張条件を満足しない場合であっても流量を算出することができ、各圧力センサによって測定された上流圧力PUおよび下流圧力PDに基づいて、所定の計算式Q=K2・PD m(PU-PDn(ここでK2は流体の種類と流体温度に依存する定数、m、nは実際の流量を元に導出される指数)から流量Qを算出することができる。
【0028】
流量制御を行うために、設定流量が制御回路16に入力され、制御回路16は、圧力センサ12の出力(上流圧力PU)などに基づいて、上記のQ=K1・PUまたはQ=K2・PD m(PU-PDnから流量を演算により求め、この流量が入力された目標流量に近づくようにコントロール弁14をフィードバック制御する。演算により求められた流量は、流量出力値として表示されてもよい。
【0029】
ただし、本実施形態の流体制御システム1において、流量制御器10として用いられるものはこのようなタイプの圧力式流量制御装置10aに限られるものではなく、例えば、熱式流量制御装置や、その他のタイプの流量制御装置であってもよい。
【0030】
再び図1を参照する。上述したように、第3流路L3には、流量測定装置30が設けられている。流量測定装置30は、プロセスチャンバ2へと通じる第2流路L2から分岐した第3流路L3に配置されているが、他の態様において、第2流路L2の途中に介在するように配置されていてもよい。また、流量測定装置30の下流側に設けられた真空ポンプ31は、第2流路L2の下流側に設けられた真空ポンプ3が兼用していてもよい。流量測定装置30は、流量制御器10の下流側に連通するように設けられている限り、種々の態様で配置され得る。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の流量測定装置30は、第2バルブ22と、圧力センサ23および温度センサ24とを備えている。圧力センサ23および温度センサ24は、第2バルブ22の上流側近傍に設けられており、第1バルブ21と第2バルブ22との間の流路の圧力および温度を測定することができる。
【0032】
流量測定装置30は、さらに、第2バルブ22の実際の開閉動作を検出するための開閉検出器26を有している。開閉検出器26としては、第2バルブ22の弁体の移動を検出することができる位置センサなどの各種センサを用いることができる。また、第2バルブ22として後述するAOVを用いる場合、弁体と連動して動くピストンの位置を測定する変位計や、ステムの上下動を検知するリミットスイッチなどを開閉検出器26として用いることができる。開閉検出器26は、第2バルブ22の実際の開閉状態を即座に検知できるもので限り、種々の態様で設けられていてよい。
【0033】
また、流体制御システム1は制御部25を備え、流量測定装置30の圧力センサ23および温度センサ24からの出力信号および開閉検出器26からの出力信号が、制御部25に入力される。制御部25は、圧力センサ23、温度センサ24、第2バルブ22とともに一体的に設けられていてもよいし、外部に設けられた処理装置であってもよい。
【0034】
本実施形態では、制御部25は、第1バルブ21および第2バルブ22の動作を制御できるようにこれらに接続されている。ただし、他の態様において、第1バルブ21および第2バルブ22の動作は、制御部25とは別に設けられた制御部で制御されてもよい。
【0035】
制御部25は、典型的には、CPU、ROMやRAMなどのメモリ(記憶装置)M、A/Dコンバータ等の一部または全部を内蔵しており、後述する流量測定動作を実行するように構成されたコンピュータプログラムを含んでいてよく、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって実現され得る。制御部25は、コンピュータ等の外部装置と情報を交換するためのインターフェイスを備えていてもよく、これにより、外部装置からROMへのプログラム及びデータの書込みなどを行うことができる。
【0036】
第1バルブ21、第2バルブ22としては、開閉弁(遮断弁)が用いられ、例えばAOV(Air Operated Valve)などの流体駆動弁や、電磁弁、電動弁などの電気的動作弁が用いられる。他の態様において、第1バルブ21は、流量制御器10に内蔵されたものであってもよい。
【0037】
ただし、本実施形態においては、第1バルブ21と第2バルブ22とで異なるタイプのものが用いられており、より具体的には、第1バルブ21として、より小型のバルブが用いられ、第2バルブ22として、より大型のバルブ(例えば、3/8インチバルブ)が用いられている。その結果、第2バルブ22の応答性は、第1バルブ21の応答性よりも低くなっている。
【0038】
また、第1バルブ21および第2バルブ22としてAOVが用いられている場合、AOVの設計によっても弁の応答性に差が生じる。AOVは、例えば、流路に介在する弁体を含む弁機構と、弁機構に接続された圧空ラインチューブとを備えており、圧空ラインチューブにコンプレッサからレギュレータなどを介して圧縮空気を送り込むことによって弁を閉じることができる。
【0039】
AOVを用いる場合、弁機構に供給する空気の供給圧(動作圧)によって弁の駆動速度に差が生じることがあり、これによって、第1バルブ21と第2バルブ22とで応答性に差が生じる場合がある。また、AOVでは、圧空ラインチューブの長さによっても応答性が変化し、チューブが長いほど応答性が低下する。
【0040】
このため、例えば、第1バルブ21と第2バルブ22とに同時に閉命令を出したとしても、実際には、第1バルブ21が、第2バルブ22よりも早く閉じることがある。また、応答性が低い第2バルブ22を用いているときには、閉命令が出されたときから遅延して第2バルブ22が実際に閉じられる。このため、閉命令が出されたときを第2バルブ22が閉じた時刻と見なすと時間的な誤差が生じ、このことが原因で流量測定精度が低下するおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態の流体制御システム1では、開閉検出器26が出力する信号に基づいて、第2バルブ22の実際の開閉を検知するようにし、より正確に第2バルブ22の開閉時を特定できるようにしている。これにより、以下に説明するように、例えばビルドアップ法によって流量測定を行うときに、従来よりも向上した精度で流量測定を行うことが可能になる。
【0042】
以下、本実施形態におけるビルドアップ法による流量測定方法を具体的に説明する。
【0043】
本流量測定方法においては、第1バルブ21と第2バルブ22との間の流路(図1において太線で示す部分)をビルドアップ容量20(体積:Vs)として用いることができる。このように、別途にビルドアップタンクを設けることなく流路の一部をビルドアップ容量として用いることで、流量測定装置30の小型化・低コスト化を実現できるとともに、短時間で流量測定を行うことができるという利点が得られる。
【0044】
なお、流量制御器10は、流体制御システム1に組み込んだ後に流量制御特性が変化したり、また、長年の使用によって絞り部の形状が変化して上流圧力と流量との関係性が変化する場合がある。これに対して、流体制御システム1によれば、流量測定装置30を用いてビルドアップ法により任意の時点で向上した精度で流量を測定できるので、流量制御器10の精度を長期にわたって保証することができる。
【0045】
図3および図4は、ビルドアップ法による流量測定時のバルブ動作シーケンス(第1バルブ21および第2バルブ22の開閉タイミング)および流量測定装置30の圧力センサ23が出力する圧力Pの例示的な一態様を示す図である。図3は、開閉検出器26を有しない場合の比較形態を示し、図4は、開閉検出器26を用いる場合の実施形態を示している。
【0046】
図3の比較形態および図4の実施形態に示すように、流量測定は、例えば、第1バルブ21および第2バルブ22が閉じた状態から開始される。このとき、図1に示した第2流路L2の遮断弁5は閉じられ、第3流路の遮断弁6は開けられており、第1流路L1からのガスが第3流路L3に選択的に流れる状態にされている。
【0047】
次に、流量測定を行う対象の第1流路L1において、流量制御器10の設定流量を任意のもの(例えば、最大流量を100%としたときの50%流量など)に設定するとともに、時刻t1において、対応する第1バルブ21を開く。なお、流量測定を行う対象以外の第1流路L1の第1バルブ21は閉じられた状態のまま維持されており、本実施形態では、一度に1つの第1流路L1について流量測定が行われる。
【0048】
また、時刻t1では、第2バルブ22にも開命令が出され、これによって第2流路L2にガスが設定流量で流れる。このとき、圧力センサ23の測定圧力Pは、設定流量に応じた大きさの圧力Pxとなる。
【0049】
ただし、このとき、図3および図4に示すように、第2バルブ22の応答性が低いため、実際には、第1バルブ21および第2バルブ22に対して時刻t1に開命令が出されたとしても、この時刻t1からわずかに遅れて第2バルブ22が開くことになる。なお、本比較形態および本実施形態では、第1バルブ21として、開閉命令からほとんど遅延なく開閉できるバルブが用いられている。
【0050】
なお、上記には、流量測定の開始時に第1バルブ21および第2バルブ22が閉じている例を説明したが、これに限られない。流量制御されたガスを流している状態から流量測定を行う場合など、他の態様においては、第1バルブ21および第2バルブ22が開いた状態(時刻t1の後)から流量測定を開始することもある。
【0051】
次に、時刻t2において、設定流量で第3流路L3にガスが流れている状態から、第1バルブ21と第2バルブ22とが同時に閉じられる。これは、本願出願人によって出願されたPCT/JP2018/4325に開示されているように、ガスの流れが生じていない状態(ガス封止状態)でガス量またはガス圧を測定し、ビルドアップ法で求める測定流量を補正するためである。このような補正を行うことによって、測定誤差のライン依存性を低減し、ビルドアップ時に流れ込んだ実際のガス流量をより正確に求めることができ、より正確な流量測定を行うことが可能になる。
【0052】
上記のガス封止状態を得るために、典型的には、第1バルブ21と第2バルブ22とに対して同時に閉命令が出される。しかし、実際には第2バルブ22が遅れて閉じ、時刻t2からαだけ遅れた時刻t2’に閉じることになる。
【0053】
このため、図3に示す比較形態においては、第1バルブ21と第2バルブ22とが同時に閉じたときの理想圧力推移X1(破線で示すグラフ)から、実際の圧力推移X2(実線で示すグラフ)がずれ、圧力センサ23によって測定される封止時圧力PBはより低い値となる。これは、第2バルブ22の閉動作が遅れることによって第1バルブ21閉止後にもガスの流出が生じ、その後のガス封止状態での圧力PBが低下するからである。なお、ガス封止状態で温度センサ24によって測定される温度TBも、第2バルブ22の動作遅延によって理想的な測定温度からずれる可能性がある。
【0054】
一方、図4に示す実施形態においては、時刻t2に閉命令が出されたとき、第2バルブ22が実際に閉じたことを開閉検出器26(図1参照)の出力信号に基づいて検知し、検知した閉状態に基づいて、第1バルブ21への閉命令のタイミングを調整する。より具体的には、本実施形態では、第1バルブ21の応答性が高いので、開閉検出器26が第2バルブ22の閉状態を検知したときに、第1バルブ21への閉命令を出力するようにしている。このようにすれば、第2バルブ22の応答性が低い場合にも、第1バルブ21と第2バルブ22との閉じるタイミングを同期させて双方を略同時に閉じることが可能になる。したがって、図4に実線で示す実際の圧力推移X2が理想圧力推移と同じになり、封止時圧力PBを良好な精度で測定することができる。
【0055】
なお、上記には、開閉検出器26が第2バルブ22の閉状態を検知したときに、第1バルブ21への閉命令を出力する態様を説明したがこれに限られない。例えば開閉検出器26が第2バルブ22の開閉度を連続的に検出できるときには、第2バルブ22が閉じる直前の状態を検出したときに、第1バルブ21へ閉命令を出力するようにしてもよい。これにより、第1バルブ21が閉命令からわずかに遅れて閉じるような場合であっても、第1バルブ21と第2バルブ22とが閉じるタイミングを同期させることが可能になる。第1バルブ21へ閉命令を出すタイミングは、第1バルブ21および第2バルブ22の応答性を考慮して任意に調整され得る。
【0056】
以上のようにして、設定流量での封止状態における圧力および温度(PB,TB)を測定したあと、図3および図4に示すように、第1バルブ21および第2バルブ22を開いて、再び設定流量で第3流路L3および流量測定装置30にガスを流す定常流状態とする。
【0057】
その後、時刻t4において、第1バルブ21の開状態を維持したまま第2バルブ22のみに閉命令を出す。これにより、ビルドアップ容量内にガスが溜まり、内部の圧力Pが上昇する。そして、圧力センサ23によって測定した圧力Pが、所定の圧力PAに達したときに、ビルドアップが完了したと判断し、第1バルブ21も閉じてガス流入後の封止状態とする。所定の圧力PAは、ビルドアップ容量の容積や、設定流量などに基づいて、予め任意に設定しておくことができる。また、第1バルブ21を閉じるタイミング(ビルドアップ終了タイミング)は、第2バルブ22を閉じてから予め設定された所定時間が経過したときであってもよい。
【0058】
第1バルブ21を閉じて封止状態とした後、上昇後の圧力および温度(PA,TA)を、圧力センサ23および温度センサ24を用いて測定する。なお、圧力PAおよび温度TAは、ビルドアップ後の封止状態において、ガスの流入が収まった状態で測定することが望ましいことがある。これは、第1バルブ21を閉じた直後では、断熱圧縮の影響により温度が一時的に上昇している可能性があるからである。したがって、第1バルブ21を閉じて所定時間経過後のガス安定状態においてビルドアップ後の圧力PAおよび温度TAを測定するようにしてもよい。
【0059】
ビルドアップ法では、圧力センサ23を用いて、第2バルブ22を閉じた後の流路の圧力上昇を測定するように構成されている。また、単位時間当たりのガス流入量(すなわち、流量)を求めるためにビルドアップ時間(圧力上昇時間)Δtを求めて、これに基づいて流量を算出するようにしている。
【0060】
より具体的に説明すると、本実施形態の流量測定方法では、ビルドアップ後のガスのモル数nAを、nA=PAVs/RTAから求めるとともに、上記の封止状態でのガスのモル数nBをnB=PBVs/RTBから求め、実際に流入したと考えられるガスのモル数Δn=nA-nB=(PAVs/RTA)-(PBVs/RTB)=Vs/R・(PA/TA-PB/TB)を求める。ここで、PA、TAは、ビルドアップ後に第1バルブ21を閉じてガス流入を停止させた時刻t5(または時刻t5後の封止状態を維持しつつ所定時間経過した時刻)における圧力および温度であり、PB、TBは、時刻t2において第1バルブ21および第2バルブ22を同時に閉じた後の封止状態における圧力および温度である。また、Rは気体定数であり、Vsはビルドアップ容量の体積である。
【0061】
そして、流量Qは、単位時間あたりに流入したガスの体積であるので、Q=22.4・Δn/Δt=22.4・Vs・(PA/TA-PB/TB)/(R・Δt)からガス流量Q(sccm)を求めることができる。ここで、Δtは、第2バルブ22を閉じてビルドアップを開始してから、第1バルブ21を閉じてガスの流入を停止させるまでの時間(ビルドアップ時間)である。ビルドアップ時間Δtは、例えば2~20秒に設定される。
【0062】
ここで、図3に示す比較形態では、第2バルブ22が実際に閉じた時刻t4’を測定していないので、ビルドアップ時間は、第2バルブ22に閉命令が出された時刻t4から、圧力PがPAに達して第1バルブ21が閉じられる時刻t5’までの時間で計測される。このため、理想圧力推移X1からずれて実際の圧力推移X2が生じているにも関わらす、ビルドアップ時間としては本来のビルドアップ時間Δt(=t5-t4)に遅延分αが加算されたΔt+α(=t5’-t4)が用いられることになる。このために、流量測定精度が低下し得る。
【0063】
一方、図4に示す実施形態では、開閉検出器26を用いて第2バルブ22が実際に閉じた時刻t4’を検知することができる。このため、ビルドアップ時間として、より正確なビルドアップ時間Δt=t5’-t4’を検出することができる。従って、流量測定の精度を向上させることができる。
【0064】
このようにして、ビルドアップ法による流量測定が完了した後は、時刻t6において第1バルブ21および第2バルブ22を開状態にすると、再びガスが流れ出すとともに、封止空間内のガス圧力は、ガス定常流時の圧力まで低下する。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態では、開閉検出器26を用いて、定常流からの封止状態における圧力PBと、ビルドアップ時間Δtとをより精度よく検出することが可能になるので、測定精度を向上させることができる。
【0066】
なお、図1に示す流体制御システム1のように、流量制御器10の下流側の流路をビルドアップ容量20として用いる場合、流量制御器10を接続して流体制御システム1を構築した後に、ビルドアップ容量20の体積Vsを測定により求めることが好ましい場合がある。ビルドアップ容量20の体積Vsは、例えば、設定流量Qsでビルドアップ容量20にガスを流した状態において第2バルブ22を閉じた後の圧力変化率を測定することによって、Qs=(ΔP/Δt)×(Vs/RT)に基づいて求めることができる。ビルドアップ容量20の体積Vsは、従来の種々の方法によって測定することが可能である。このようにして、ビルドアップ容量20の体積Vsを測定するために、ΔP/Δtを求めるときにも、本実施形態の流体制御システム1では、開閉検出器26を用いて第2バルブ22が閉じた時点を検知し、これに基づいて圧力上昇の起点を決めることができるので、Δtをより正確に計測して、より向上した精度で、ビルドアップ容量の体積Vsを求めることが可能である。なお、ビルドアップ容量の体積Vsを求めるときには、基準値との誤差が低減された特定の流量設定で測定を行うことによって、より精度よく体積Vsを求めることも可能である。
【0067】
以上には、第1バルブ21と第2バルブ22とを時刻t2に同時に閉じた後の圧力PBおよび温度TBを測定する工程(第2工程)の後に、ビルドアップ後のガスの圧力PAおよび温度TAを測定する工程(第1工程)の行う態様を説明したが、第1工程と第2工程とを行う順番は逆であってもよい。ただし、第1工程と第2工程とで、開始時の設定流量に対応する圧力(開始時圧力Px)は、同じであることが好適である。
【0068】
第1工程と第2工程とを行った後であれば、第1工程で得られた測定圧力PAおよび温度TAと、第2工程で得られた測定圧力PBおよび温度TBとを用いて、流量が演算により求めることができる。このようにして測定した流量は、流量制御器10の流量設定との比較検証に用いられてもよく、上記のビルドアップ法によって求めた流量に基づいて、任意の流量制御器10の流量設定の校正を行うこともできる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、種々の改変が可能である。例えば、上記には、第2工程として、ガスが流れている状態から第1バルブ21と第2バルブ22とを同時または略同時に閉じて封止状態としたときの圧力および温度を測定したが、第2バルブ22を閉じてから所定時間Δt’が経過した後に第1バルブ21を閉じた後に、上昇後圧力および温度を測定するようにしてもよい。
【0070】
ただし、第2工程における上記の所定時間Δt’は、第1工程におけるビルドアップ時間Δtに比べて短い時間に設定され、例えば、半分以下の時間に設定される。流量演算は、第1工程で求めたガス量nから、第2工程で求めたガス量n’を減算してΔn=n-n’を求めるとともに、流入時間をΔt-Δt’として流量を演算により求めることができる。このときにも、開閉検出器26を用いて検知した実際の第2バルブ22の閉じた時刻に基づいて圧力上昇時間等を決定することにより、より向上した精度で流量測定を行い得る。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の実施形態による流体制御システムによれば、流量測定を向上した精度で行うことができる。
【符号の説明】
【0072】
1 流体制御システム
2 プロセスチャンバ
3 真空ポンプ
4 ガス供給源
10 流量制御器
11 絞り部
12 圧力センサ
13 温度センサ
14 コントロール弁
16 制御回路
20 ビルドアップ容量
21 第1バルブ
22 第2バルブ
23 圧力センサ
24 温度センサ
25 制御部
26 開閉検出器
30 流量測定装置
図1
図2
図3
図4