(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】刃物
(51)【国際特許分類】
B25G 1/00 20060101AFI20230112BHJP
B25G 3/02 20060101ALI20230112BHJP
B26B 3/00 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B25G1/00 F
B25G3/02 G
B26B3/00 C
(21)【出願番号】P 2021106372
(22)【出願日】2021-06-28
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】596093639
【氏名又は名称】株式会社 ヤクセル
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秋人
(72)【発明者】
【氏名】長屋 文彦
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-044479(JP,U)
【文献】実開平02-071468(JP,U)
【文献】特開2005-153065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25G 1/00
B25G 3/02
B26B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃部と、長尺状の柄部と、前記柄部の長さ方向における一方の端面に接着剤を介して固定される固定部材とを備える刃物であって、
前記柄部と前記固定部材とを連結する連結機構を備えており、
前記連結機構は、
前記柄部の前記端面及び前記端面に対向する前記固定部材の対向面のいずれか一方に開口するとともに底面を有する収容凹部と、
頭部及び前記頭部から延びる雄ねじ部を有し、前記雄ねじ部の先端が前記収容凹部の外部に突出した状態で前記収容凹部に収容されるボルトと、
前記端面及び前記対向面の前記一方とは異なる他方に開口するとともに前記雄ねじ部の先端がねじ込まれる雌ねじ部と、を有しており、
前記収容凹部は、前記頭部を収容する大径部と、前記大径部よりも縮径され、前記雄ねじ部を収容するとともに前記ボルトの抜け止めを行う小径部と、を有しており、
前記収容凹部の軸線方向において前記頭部と前記底面との間には、第1隙間が設けられており、
前記収容凹部の径方向において前記頭部と前記大径部との間及び前記雄ねじ部と前記小径部との間には、それぞれ第2隙間及び第3隙間が設けられて
おり、
前記収容凹部は、
前記端面及び前記対向面の前記一方に開口するとともに前記底面を有する取付穴と、
前記取付穴と同軸上に位置し、前記底面との間に空間を有した状態で前記取付穴に取り付けられる筒状部材と、を有しており、
前記空間によって前記大径部が構成されており、
前記筒状部材の内部空間によって前記小径部が構成されている、
刃物。
【請求項2】
前記ボルト及び前記筒状部材は、金属製であり、
前記筒状部材と前記頭部との間には、樹脂製のワッシャが設けられている、
請求項
1に記載の刃物。
【請求項3】
前記収容凹部は、前記柄部に設けられており、
前記雌ねじ部は、前記固定部材に設けられている、
請求項1
または請求項2に記載の刃物。
【請求項4】
前記固定部材を第1固定部材とし、前記連結機構を第1連結機構とするとき、
前記柄部の長さ方向における前記一方の端面とは反対側の端面に接着剤を介して固定される第2固定部材と、
前記柄部と前記第2固定部材とを連結する第2連結機構と、を更に備える、
請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の刃物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長尺状をなす柄部(特許文献1では柄部本体と称されている)と、柄部の前端に固定された口金と、柄部の後端に固定された尻金と、口金に連結された刃部とを備える刃物が開示されている。
【0003】
柄部は、自身の長さ方向に延びる貫通孔を有している。貫通孔には、両端に雄ねじが形成された連結ロッドが収容されている。連結ロッドの両端は、貫通孔からそれぞれ突出している。
【0004】
口金及び尻金には、雌ねじがそれぞれ形成されている。口金及び尻金は、連結ロッドの一端及び他端に対してそれぞれねじ込まれている。柄部の前端と口金との間及び柄部の後端と尻金との間には、それぞれ接着剤が介在している。これらにより、口金及び尻金が、柄部の前端及び後端に対してそれぞれ固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、柄部に対して口金及び尻金を取り付ける際には、機能性及び意匠性の観点から、口金及び尻金のそれぞれと、柄部との間に段差や隙間が生じないようにこれらの位置合わせが行われる。
【0007】
特許文献1に記載の刃物では、口金は、連結ロッドがねじ込まれることにより柄部に対して固定されている。このため、柄部の端面と口金の端面とが接触した状態において口金と柄部との周方向における相対位置がばらつきやすい。その結果、刃物の意匠性が損なわれるおそれがある。このことは、尻金についても同様である。
【0008】
また、こうした口金や尻金などの固定部材及び柄部の形状が複雑であるほど、これらの位置合わせが困難なものとなるため、上記課題は顕著なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための刃物は、刃部と、長尺状の柄部と、前記柄部の長さ方向における一方の端面に接着剤を介して固定される固定部材とを備える刃物であって、前記柄部と前記固定部材とを連結する連結機構を備えており、前記連結機構は、前記柄部の前記端面及び前記端面に対向する前記固定部材の対向面のいずれか一方に開口するとともに底面を有する収容凹部と、頭部及び前記頭部から延びる雄ねじ部を有し、前記雄ねじ部の先端が前記収容凹部の外部に突出した状態で前記収容凹部に収容されるボルトと、前記端面及び前記対向面の前記一方とは異なる他方に開口するとともに前記雄ねじ部の先端がねじ込まれる雌ねじ部と、を有しており、前記収容凹部は、前記頭部を収容する大径部と、前記大径部よりも縮径され、前記雄ねじ部を収容するとともに前記ボルトの抜け止めを行う小径部と、を有しており、前記収容凹部の軸線方向において前記頭部と前記底面との間には、第1隙間が設けられており、前記収容凹部の径方向において前記頭部と前記大径部との間及び前記雄ねじ部と前記小径部との間には、それぞれ第2隙間及び第3隙間が設けられている。
【0010】
作業者が柄部の端面に固定部材を固定する際、柄部及び固定部材の一方に設けられた収容凹部から外部に突出するボルトの雄ねじ部を、柄部及び固定部材の他方に設けられた雌ねじ部にねじ込むことで柄部の端面と固定部材の対向面とを接触させる。
【0011】
ここで、上記構成によれば、収容凹部の軸線方向において頭部と底面との間には第1隙間が設けられている。また、収容凹部の径方向においてボルトの頭部と大径部との間及びボルトの雄ねじ部と小径部との間には、それぞれ第2隙間及び第3隙間が設けられている。このため、柄部と固定部材とが接着剤により固定されるまでは、上記第1~3隙間によって、ボルトが収容凹部に対して相対回転可能、且つ径方向に対して相対移動可能となる。これにより、作業者は、柄部の端面と固定部材の対向面とを接触させた状態で、雌ねじ部に対するボルトのねじ込み量を変化させずに、柄部と固定部材とを相対回転させることができるとともに、径方向に相対移動させることができる。このため、作業者は、柄部と固定部材との位置合わせを容易に行うことができる。
【0012】
また、上記構成によれば、連結機構が刃物の外部に露出しないため、刃物の意匠性が損なわれることを抑制できる。
したがって、刃物の意匠性を向上させつつ、柄部と固定部材との位置合わせを容易に行うことができる。
【0013】
上記刃物において、前記収容凹部は、前記端面及び前記対向面の前記一方に開口するとともに前記底面を有する取付穴と、前記取付穴と同軸上に位置し、前記底面との間に空間を有した状態で前記取付穴に取り付けられる筒状部材と、を有しており、前記空間によって前記大径部が構成されており、前記筒状部材の内部空間によって前記小径部が構成されていることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、柄部及び固定部材のいずれか一方に取付穴を設け、当該取付穴にボルトを収容した後に、当該取付穴に筒状部材を取り付けることで、大径部及び小径部を有する収容凹部が構成される。したがって、柄部を複数に分割して構成することなく収容凹部を容易に具体化することができる。
【0015】
上記刃物において、前記ボルト及び前記筒状部材は、金属製であり、前記筒状部材と前記頭部との間には、樹脂製のワッシャが設けられていることが好ましい。
ボルト及び筒状部材が金属製である場合、雌ねじ部に対するボルトのねじ込み量が大きくなると、ボルトの頭部の座面が筒状部材の端面に対して押し付けられることで、ボルトの頭部と筒状部材の端面との間に生じる摩擦力が大きくなる。その結果、作業者は、柄部の端面と固定部材の対向面とを接触させた状態で、柄部と固定部材とを相対回転させにくくなったり、径方向に相対移動させにくくなったりするおそれがある。
【0016】
この点、上記構成によれば、ボルトの頭部の座面が樹脂製のワッシャに対して押し付けられるようになるため、ボルトの頭部とワッシャとの間に生じる摩擦力は、上述した場合に比べて小さくなる。したがって、上述したような不都合の発生を抑制することができる。
【0017】
上記刃物において、前記収容凹部は、前記柄部に設けられており、前記雌ねじ部は、前記固定部材に設けられていることが好ましい。
収容凹部には大径部及び小径部が設けられるため、刃物のうち収容凹部が設けられる部分には、所定の長さが必要となる。
【0018】
この点、上記構成によれば、そもそも長尺状である柄部に収容凹部が設けられている。このため、固定部材に収容凹部が設けられる場合に比べて、固定部材の長さが増大することを抑制できる。したがって、刃物全体の長さの増大を抑制することができる。
【0019】
上記刃物において、前記固定部材を第1固定部材とし、前記連結機構を第1連結機構とするとき、前記柄部の長さ方向における前記一方の端面とは反対側の端面に接着剤を介して固定される第2固定部材と、前記柄部と前記第2固定部材とを連結する第2連結機構と、を更に備えることが好ましい。
【0020】
同構成によれば、柄部の端面と第2固定部材の対向面とを接触させた状態で、第2連結機構の雌ねじ部に対するボルトのねじ込み量を変化させずに、柄部と第2固定部材とを相対回転させることができるとともに、径方向に相対移動させることができる。このため、作業者は、柄部と第2固定部材との位置合わせを容易に行うことができる。
【0021】
したがって、刃物の意匠性を向上させつつ、柄部と2つの固定部材のそれぞれとの位置合わせを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、柄部と固定部材との位置合わせを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】(a)は、刃物における連結機構を中心とした断面図、(b)は、収容凹部を中心とする拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1及び
図2を参照して、刃物を包丁として具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、刃物は、刃部10と、長尺状の柄部20と、柄部20の長さ方向における一方の端面に固定される口金30と、柄部20と口金30とを連結する連結機構50とを備えている。刃部10は、口金30に固定されている。口金30は、「固定部材」の一例である。
【0025】
以降において、柄部20の長さ方向を単に長さ方向と称することがある。また、長さ方向において、刃部10が位置する側を前側、前側とは反対側を後側と称する。
(刃部10)
刃部10は、刃本体11と、刃本体11から口金30に向かって延びる連結部12とを有している。連結部12は、口金30に連結されている。
【0026】
刃部10の材料としては、例えば、金属材料またはセラミックスなどが挙げられる。本実施形態の刃部10の材料は、ステンレス鋼などの金属材料である。
(柄部20)
柄部20の長さ方向に直交する断面形状は、例えば、八角形状をなしている。同断面形状は、後側に向かうほど外縁が徐々に拡大されている。
【0027】
柄部20の材料としては、例えば、木材または金属材料または樹脂材料などが挙げられる。本実施形態の柄部20の材料は、木材である。
図2(a)に示すように、柄部20は、長さ方向に直交する前端面20aを有している。柄部20には、前端面20aに開口するとともに底面22を有する取付穴21が設けられている。取付穴21の断面形状は、例えば、円形状をなしている。
【0028】
取付穴21には、雌ねじ23が設けられている。雌ねじ23は、取付穴21の開口縁から所定の長さの領域にのみ設けられている。すなわち、取付穴21は、雌ねじ23が設けられていない部分を有している。
【0029】
取付穴21には、貫通孔41を有する筒状部材40が取り付けられている。筒状部材40は、取付穴21と同軸上に位置している。貫通孔41の断面形状は、円形状をなしている。
【0030】
筒状部材40の材料としては、金属材料または樹脂材料などが挙げられる。本実施形態の筒状部材40の材料は、ステンレス鋼などの金属材料である。
筒状部材40の外周面には、雄ねじ42が設けられている。雄ねじ42が雌ねじ23にねじ込まれることによって、筒状部材40が取付穴21に対して取り付けられている。筒状部材40は、取付穴21の底面22との間に空間Sを有した状態で取付穴21に取り付けられている。
【0031】
図1に示すように、筒状部材40の前端面には、図示しない工具が係合される一対の係合溝43が設けられている。
(口金30)
口金30は、ブロック状をなしている。
【0032】
口金30の材料としては、例えば、金属材料または樹脂材料などが挙げられる。本実施形態の口金30の材料は、ステンレス鋼などの金属材料である。
口金30の前端部には、刃部10の連結部12を挟持するスリット31が設けられている。
【0033】
図2(a)に示すように、口金30は、スリット31を挟んで互いに反対側に位置する2つの湾曲面32を有している。2つの湾曲面32は、前側ほど互いに近付くように湾曲している。
【0034】
口金30のうち湾曲面32よりも後側の部分における長さ方向に直交する断面形状は、例えば、八角形状をなしている。同断面形状は、後側に向かうほど外縁が徐々に拡大されている。
【0035】
口金30は、長さ方向に直交する後端面30aを有している。後端面30aは、柄部20の前端面20aに対向する対向面である。口金30の後端面30aと、柄部20の前端面20aとの形状は同一である。口金30と柄部20とは、これらの境界部において全周にわたって面一である。
【0036】
口金30には、後端面30aに開口するとともに底面34を有する雌ねじ部33が設けられている。雌ねじ部33は、取付穴21と同軸上に設けられている。
口金30の後端面30aは、柄部20の前端面20aに対して、図示しない接着剤を介して固定されている。
【0037】
(連結機構50)
連結機構50は、柄部20の前端面20aに開口する収容凹部51と、収容凹部51に収容されるボルト60と、上述した雌ねじ部33とを有している。
【0038】
収容凹部51は、柄部20の取付穴21と筒状部材40とにより構成されている。収容凹部51は、大径部52と、大径部52よりも縮径された小径部53とを有している。
大径部52は、取付穴21における空間Sによって構成されている。小径部53は、筒状部材40の内部空間、すなわち貫通孔41によって構成されている。
【0039】
ボルト60は、頭部61と、頭部61から延びる雄ねじ部62とを有している。頭部61は、例えば、円柱状をなしている。頭部61の直径は、小径部53の直径、すなわち貫通孔41の直径よりも大きい。
【0040】
ボルト60の材料としては、金属材料または樹脂材料などが挙げられる。本実施形態のボルト60の材料は、ステンレス鋼などの金属材料である。
頭部61は、大径部52に収容されている。雄ねじ部62は、小径部53に収容されている。ボルト60は、雄ねじ部62の先端が収容凹部51の外部に突出した状態で収容凹部51に収容されている。雄ねじ部62の先端は、口金30の雌ねじ部33に対してねじ込まれている。
【0041】
収容凹部51の軸線方向における大径部52の長さは、同軸線方向における頭部61の長さよりも大きい。したがって、収容凹部51の軸線方向において、収容凹部51の底面である取付穴21の底面22と、頭部61との間には、第1隙間G1が設けられている。
【0042】
図2(b)に示すように、大径部52の直径は、頭部61の直径よりも大きい。したがって、収容凹部51の径方向において、頭部61と大径部52との間には、第2隙間G2が設けられている。第2隙間G2は、収容凹部51の全周にわたって、且つ頭部61の長さ方向における全体にわたって設けられている。
【0043】
図2(a)に示すように、小径部53の直径は、ボルト60の雄ねじ部62の直径よりも大きい。したがって、収容凹部51の径方向において、雄ねじ部62と小径部53との間には、第3隙間G3が設けられている。第3隙間G3は、収容凹部51の全周にわたって、且つ小径部53の長さ方向における全体にわたって設けられている。
【0044】
筒状部材40とボルト60の頭部61との間には、円板状をなす樹脂製のワッシャ70が設けられている。ワッシャ70のボルト60に対する摩擦係数は、筒状部材40のボルト60に対する摩擦係数よりも小さい。ワッシャ70の材料としては、例えば、ポリアミドなどの樹脂材料が挙げられる。
【0045】
ワッシャ70の内径は、雄ねじ部62の外径よりも大きく、貫通孔41の直径よりも小さい。ワッシャ70の外径は、頭部61の外径と略同一である。したがって、ワッシャ70及びボルト60は、筒状部材40によって取付穴21から抜け止めされている。
【0046】
図2(b)に示すように、収容凹部51の径方向において雄ねじ部62とワッシャ70との間には、第4隙間G4が設けられている。上記径方向における第4隙間G4の大きさは、例えば、上記径方向における第2隙間G2の大きさ以上である。
【0047】
以上のことから、柄部20と口金30とが接着剤によって固定されていない状態において、各隙間G2~G4によって、収容凹部51の周方向におけるボルト60の回転と、収容凹部51の径方向におけるボルト60の移動とが許容されている。また、第1隙間G1が設けられていることで、ボルト60の頭部61と底面22とが接触しないため、上記回転及び移動が円滑に行われる。
【0048】
(柄部20と口金30との固定方法)
作業者は、柄部20と口金30とを固定する際、まず柄部20の取付穴21に対して、頭部61からボルト60を収容する。取付穴21に収容されたボルト60の雄ねじ部62の先端は、取付穴21の外部に突出している。
【0049】
次に、作業者は、ワッシャ70を雄ねじ部62に通した状態で取付穴21に収容する。
次に、作業者は、筒状部材40を雄ねじ部62に通した状態で取付穴21に対してねじ込む。これにより、ボルト60及びワッシャ70が筒状部材40によって取付穴21から抜け止めされる。なお、取付穴21への筒状部材40の取り付けは、例えば、係合溝43に係合する工具を用いて行われる。
【0050】
次に、作業者は、柄部20の前端面20a及び口金30の後端面30aの少なくとも一方に接着剤を塗布する。その後、作業者は、口金30を雄ねじ部62に対してねじ込むことで、口金30の後端面30aと柄部20の前端面20aとを接触させる。
【0051】
そして、上記接着剤が固化することによって、柄部20と口金30とが固定される。
本実施形態の作用について説明する。
作業者が柄部20の前端面20aに口金30を固定する際、収容凹部51から外部に突出するボルト60の雄ねじ部62を、口金30に設けられた雌ねじ部33にねじ込むことで柄部20の前端面20aと口金30の後端面30aとを接触させる。
【0052】
ここで、収容凹部51の軸線方向において頭部61と底面22との間には、第1隙間G1が設けられている。収容凹部51の径方向においてボルト60の頭部61と大径部52との間には、第2隙間G2が設けられている。収容凹部51の径方向においてボルト60の雄ねじ部62と小径部53との間には、第3隙間G3が設けられている。収容凹部51の径方向において雄ねじ部62とワッシャ70との間には、第4隙間G4が設けられている。このため、柄部20と口金30とが接着剤により固定されるまでは、各隙間G1~G4によって、口金30とボルト60とが一体となって収容凹部51に対して相対回転可能、且つ径方向に対して相対移動可能となる。これにより、作業者は、柄部20の前端面20aと口金30の後端面30aとを接触させた状態で、口金30に対するボルト60のねじ込み量を変化させずに、柄部20と口金30とを相対回転させることができるとともに、径方向に相対移動させることができる。
【0053】
本実施形態の効果について説明する。
(1)収容凹部51の軸線方向において頭部61と底面22との間には、第1隙間G1が設けられている。収容凹部51の径方向においてボルト60の頭部61と大径部52との間には、第2隙間G2が設けられている。収容凹部51の径方向においてボルト60の雄ねじ部62と小径部53との間には、第3隙間G3が設けられている。収容凹部51の径方向において雄ねじ部62とワッシャ70との間には、第4隙間G4が設けられている。
【0054】
こうした構成によれば、上述した作用を奏することから、作業者は、柄部20と口金30との位置合わせを容易に行うことができる。
また、上記構成によれば、連結機構50が刃物の外部に露出しないため、刃物の意匠性が損なわれることを抑制できる。
【0055】
したがって、刃物の意匠性を向上させつつ、柄部20と口金30との位置合わせを容易に行うことができる。
また、上記構成によれば、長尺状である柄部20に収容凹部51が設けられている。このため、口金30に収容凹部51が設けられる場合に比べて、口金30の長さが増大することを抑制できる。したがって、刃物全体の長さの増大を抑制することができる。
【0056】
(2)収容凹部51は、柄部20の前端面20aに開口するとともに底面22を有する取付穴21と、底面22との間に空間Sを有した状態で取付穴21に取り付けられる筒状部材40とを有している。空間Sによって大径部52が構成されている。筒状部材40の内部空間によって小径部53が構成されている。
【0057】
こうした構成によれば、柄部20に取付穴21を設け、取付穴21にボルト60を収容した後に、取付穴21に筒状部材40を取り付けることで、大径部52及び小径部53を有する収容凹部51が構成される。したがって、柄部20を複数に分割して構成することなく収容凹部51を容易に具体化することができる。
【0058】
(3)ボルト60及び筒状部材40は、金属製である。ワッシャ70は、樹脂製である。
ボルト60及び筒状部材40が金属製である場合、口金30に対するボルト60のねじ込み量が大きくなると、頭部61の座面が筒状部材40の端面に対して押し付けられることで、頭部61と筒状部材40の端面との間に生じる摩擦力が大きくなる。その結果、作業者は、柄部20の前端面20aと口金30の後端面30aとを接触させた状態で、柄部20と口金30とを相対回転させにくくなったり、径方向に相対移動させにくくなったりするおそれがある。
【0059】
この点、上記構成によれば、ボルト60の頭部61の座面が樹脂製のワッシャ70に対して押し付けられるようになるため、ボルト60の頭部61とワッシャ70との間に生じる摩擦力は、上述した場合に比べて小さくなる。したがって、上述したような不都合の発生を抑制することができる。
【0060】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0061】
・
図3に示すように、刃物は、柄部20の長さ方向における両端にそれぞれ固定される口金30及び尻金130を備えていてもよい。この場合、刃物は、柄部20と口金30とを連結する連結機構50と、柄部20と尻金130とを連結する連結機構150とを備えていてもよい。なお、連結機構150の構成は、連結機構50と同様である。本変更例における口金30及び尻金130は、それぞれ「第1固定部材」及び「第2固定部材」の一例であり、連結機構50及び連結機構150は、それぞれ「第1連結機構」及び「第2連結機構」の一例である。この構成では、柄部20の後端面20bと尻金130の前端面130aとを接触させた状態で、尻金130に対するボルト60のねじ込み量を変化させずに、柄部20と尻金130とを相対回転させることができるとともに、径方向に相対移動させることができる。このため、作業者は、柄部20と尻金130との位置合わせを容易に行うことができる。したがって、刃物の意匠性を向上させつつ、柄部20と口金30との位置合わせ、並びに柄部20と尻金130との位置合わせを容易に行うことができる。
【0062】
・
図4に示すように、刃物は、柄部20と尻金130とを連結する連結機構50を備えるとともに、柄部20と口金30とがボルト160によって固定されていてもよい。同変更例における柄部20の収容凹部51は、柄部20の後端面20bに開口している。柄部20は、収容凹部51の底面22及び柄部20の前端面20aに開口する貫通孔24を有している。貫通孔24には、頭部161が収容凹部51に収容されたボルト160が挿入されている。ボルト160によって、柄部20と口金30とが締結されている。貫通孔24にボルト160が挿入されることによって、収容凹部51の一端が閉塞されている。なお、本変更例において、ボルト60の頭部61と、ボルト160の頭部161との間には、軸線方向において隙間が設けられている。本変更例における尻金130は、「固定部材」の一例である。
【0063】
・本実施形態の連結機構50は、柄部20に設けられた収容凹部51と、口金30に設けられた雌ねじ部33とを有するものであったが、これに限定されない。連結機構50は、柄部20に設けられた雌ねじ部33と、口金30に設けられた収容凹部51とを有するものであってもよい。
【0064】
・刃物からワッシャ70を省略することができる。この場合、筒状部材40における頭部61の座面に対向する部分に高い摺動性を有する塗料を塗布してもよい。塗料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの樹脂材料が含まれていることが好ましい。なお、刃物からワッシャ70が省略された場合は、筒状部材40によってボルト60が取付穴21から抜け止めされる。
【0065】
・大径部52及び小径部53が一体に形成された部材が柄部20に設けられた凹部に取り付けられることによって、収容凹部51が構成されていてもよい。すなわち、収容凹部51は、柄部20とは別体の部材によって構成されていてもよい。
【0066】
・雌ねじが形成された部材が口金30に設けられた凹部に取り付けられることによって、雌ねじ部33が構成されていてもよい。すなわち、雌ねじ部33は、口金30とは別体の部材によって構成されていてもよい。
【0067】
・取付穴21から雌ねじ23が省略されるとともに、筒状部材40から雄ねじ42が省略されてもよい。この場合、例えば、ボルト60が収容された取付穴21に対して筒状部材40が圧入されることによって、筒状部材40が取付穴21に取り付けられていてもよい。
【0068】
・収容凹部51は、小径部53と、小径部53とは反対側に開口する大径部52とを有する段付き穴によって構成されていてもよい。この場合、大径部52の上記開口が閉塞部材によって閉塞されていればよい。この構成では、筒状部材40を省略することができる。
【0069】
・収容凹部51の断面形状は、多角形状などの任意の形状に変更することができる。
・ボルト60の頭部61の直径は、筒状部材40の貫通孔41よりも小さくてもよい。この場合であっても、ボルト60がワッシャ70を介して取付穴21から抜け止めされる。
【0070】
・ボルト60の頭部61の断面形状は、例えば、六角形状などの多角形状であってもよい。
・柄部20の前端面20aの形状と、口金30の後端面30aの形状とは互いに異なっていてもよい。
【0071】
・柄部20の断面形状及び口金30の断面形状は、例えば、八角形状とは異なる多角形状や円形状などの任意の形状であってもよい。
・本発明の刃物は、鋸、鎌、斧、及び種々のナイフなどの包丁とは異なる刃物に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0072】
G1…第1隙間
G2…第2隙間
G3…第3隙間
G4…第4隙間
S…空間
10…刃部
20…柄部
20a…前端面
20b…後端面
21…取付穴
22…底面
30…口金
30a…後端面
33…雌ねじ部
40…筒状部材
50…連結機構
51…収容凹部
52…大径部
53…小径部
60…ボルト
61…頭部
62…雄ねじ部
70…ワッシャ
130…尻金
130a…前端面
150…連結機構
160…ボルト
161…頭部
【要約】
【課題】柄部と固定部材との位置合わせを容易に行うことができる刃物を提供する。
【解決手段】刃物は、刃部と、柄部20と、柄部20に固定される固定部材としての口金30と、柄部20と口金30とを連結する連結機構50とを備える。連結機構50は、柄部20の前端面20aに開口するとともに底面22を有する収容凹部51と、収容凹部51に収容されるボルト60と、口金30の後端面30aに開口するとともに雄ねじ部62の先端がねじ込まれる雌ねじ部33とを有している。収容凹部51は、頭部61を収容する大径部52と、雄ねじ部62を収容する小径部53とを有している。収容凹部51の軸線方向において頭部61と底面22との間には、第1隙間G1が設けられている。収容凹部51の径方向において頭部61と大径部52との間及び雄ねじ部62と小径部53との間には、それぞれ第2隙間G2及び第3隙間G3が設けられている。
【選択図】
図2