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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】刃物
(51)【国際特許分類】
   B26B 9/02 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
B26B9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021525767
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2020019330
(87)【国際公開番号】W WO2021229765
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390028303
【氏名又は名称】株式会社マサヒロ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】服部 浩司
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-000368(JP,U)
【文献】特開昭58-105781(JP,A)
【文献】実開昭59-145367(JP,U)
【文献】登録実用新案第3191820(JP,U)
【文献】特開2019-063390(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側に位置する2つの面を有するとともに、波形の刃先を有する刃体を備える刃物であって、
前記刃体の少なくとも一方の面は、平部と、前記平部に対して傾斜するとともに前記刃先の一部を構成する傾斜部と、を有しており、
前記一方の面には、前記刃先の一部を構成する複数の凹刃が並んで設けられており、
前記傾斜部は、平面状をなし、互いに隣り合う前記凹刃同士の間の中間部分において前記刃先まで延びており、且つ前記複数の凹刃の並び方向において互いに隣り合う前記中間部分にそれぞれ設けられており、
前記複数の凹刃の並び方向における前記中間部分の各々における前記傾斜部の長さは、前記刃先に近づくほど徐々に小さくなっており、前記刃先の位置において最小である、
刃物。
【請求項2】
前記傾斜部は、全ての前記中間部分に設けられている、
請求項1に記載の刃物。
【請求項3】
互いに反対側に位置する2つの面を有するとともに、波形の刃先を有する刃体を備える刃物を製造する方法であって、
前記刃体の少なくとも一方の面に対して、複数の凹刃を互いに隣り合わせて形成することで前記波形の刃先を形成する工程と、
前記一方の面において前記凹刃以外の部分を平部とするとき、
前記凹刃において前記平部と隣接する谷部と、互いに隣り合う前記凹刃同士の間の部分において前記刃先を構成する山部とを含む仮想平面に沿って、前記平部及び前記凹刃の一部を除去することで前記平部に対して傾斜するとともに前記刃先の一部を構成する傾斜部を形成する工程と、を備える、
刃物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形の刃先を有する刃体を備える刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の刃物としては、例えばパン切り用の包丁や回転式機械刃がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の包丁の切刃部分には、連続する波形の刃先、所謂波刃が形成されている。この波形は、連続する複数の弧状凹部により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-190864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした波刃を有する刃物においては、波刃を構成する複数の凹刃を形成する際に刃先が欠けないように刃の角度が比較的大きくされている。また、刃の角度が大きくされることに伴って包丁の厚さ方向における各凹刃の凹凸が大きくなる。そのため、対象物を切る際、すなわち刃先を移動させる際に、対象物との接触面積が大きくなり、摩擦抵抗が大きくなりやすいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、波形の刃先を有しつつ、対象物を切る際の摩擦抵抗を小さくすることのできる刃物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための刃物は、互いに反対側に位置する2つの面を有するとともに、波形の刃先を有する刃体を備える。前記刃体の少なくとも一方の面は、平部と、前記平部に対して傾斜するとともに前記刃先の一部を構成する傾斜部と、を有しており、前記傾斜部には、前記刃先の一部を構成する複数の凹刃が並んで設けられている。
【0008】
同構成によれば、上記傾斜部を有しておらず、複数の凹刃が平部自体に設けられる従来の構成に比べて、互いに隣り合う凹刃同士の間の部分における刃の角度が小さくなる。これにより、刃体の厚さ方向における各凹刃の凹凸が小さくなる。そのため、対象物を切る際、すなわち刃先を移動させる際に、対象物との接触面積が小さくなり、摩擦抵抗が小さくなる。したがって、波形の刃先を有しつつ、対象物を切る際の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0009】
上記刃物において、複数の前記凹刃は、形状または大きさの互いに異なる複数種類の凹刃を含んでいることが好ましい。
【0010】
同構成によれば、複数種類の凹刃の配置パターンを適宜設定することによって、対象物を切る際の摩擦抵抗を自在に設定することができる。
【0011】
上記刃物において、前記刃体は、包丁を構成するものであることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、包丁において、波形の刃先を有しつつ、対象物を切る際の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、波形の刃先を有しつつ、対象物を切る際の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る包丁の平面図。
図2図1の要部を拡大して示す平面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4図1に対応する図であって、傾斜部を形成する直前の状態を示す平面図。
図5】変形例に係る包丁の要部を拡大して示す平面図。
図6】他の変形例に係る包丁について、(a)は、平面図、(b)は、傾斜部を形成する直前の状態を示す平面図。
図7】変形例に係るフードプロセッサ用の回転刃物の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図4を参照して、本発明に係る刃物を調理用の包丁として具体化した一実施形態について説明する。
【0016】
図1に示すように、包丁10は、長尺板状の刃体11と、刃体11の基端部に設けられる柄18とを備えている。刃体11は、先端側ほど幅が小さい先細形状である。刃体11は、ステンレス鋼板などの鋼板製である。刃体11は、互いに反対側に位置する第1の面13及び第2の面(図示しない)を有する。
【0017】
なお、以降において、包丁10の長手方向、包丁10の幅方向、及び包丁10の厚さ方向を、単に長手方向、幅方向、及び厚さ方向として説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、刃体11における幅方向の一側の縁には、波形の刃先12が設けられている。
【0019】
図2に示すように、刃体11の第1面13は、平部14と、平部14に対して傾斜するとともに刃先12の一部を構成する傾斜部15とを有している。平部14は、刃体11における長手方向の略全体にわたって延びている。また、平部14は、刃先12の基端から刃体11における幅方向の上記一側とは反対側の縁まで延びている。
【0020】
傾斜部15には、刃先12の一部を構成する複数の凹刃16が長手方向において並んで設けられている。
【0021】
複数の凹刃16は、形状及び大きさの互いに異なる複数種類の凹刃16A,16Bを含んでいる。複数の凹刃16は、第1凹刃16Aと、第1凹刃16Aよりも幅方向の大きさ及び長手方向の大きさが共に小さい第2凹刃16Bとを含んでいる。本実施形態では、第1凹刃16Aと第2凹刃16Bとが長手方向において交互に設けられている。
【0022】
次に、包丁10の製造方法について説明する。
【0023】
製造方法は、図4に示すように、まず、傾斜部15が形成されていない刃体11の第1面13に対して波形の刃先22を形成する工程を含む。
【0024】
刃先22は、第1凹刃26Aと、第1凹刃26Aと、第1凹刃26Aよりも幅方向の大きさ及び長手方向の大きさが共に小さい第2凹刃26Bとを含んでいる。本実施形態では、第1凹刃26Aと第2凹刃26Bとが交互に設けられている。
【0025】
製造方法は、次に、第1凹刃26Aにおいて平部14と隣接する各谷部P1と、第1凹刃26Aと第2凹刃26Bとの間の部分27において刃先22を構成する各山部P2とを含む仮想平面Vに沿って、平部14、第1凹刃26A及び第2凹刃26Bの一部を研磨により除去する工程を含む。これにより、傾斜部15が形成される。
【0026】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0027】
本実施形態の包丁10と従来の包丁を比較する。図4に示す包丁は、上記傾斜部15を有しておらず、複数の凹刃26A,26Bが平部14自体に設けられる構成を有するため、従来の包丁と同様の構成を有するとみなすことができる。図3に示すように、本実施形態の包丁10では、二点鎖線で示される従来の包丁に比べて、互いに隣り合う凹刃16同士の間の部分17における刃の角度αが小さい。これにより、刃体11の厚さ方向における各凹刃16の凹凸が小さくなる。そのため、対象物を切る際、すなわち刃先12を移動させる際に、対象物との接触面積が小さくなり、摩擦抵抗が小さくなる。
【0028】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0029】
(1)刃体11の第1面13は、平部14と、平部14に対して傾斜するとともに刃先12の一部を構成する傾斜部15とを有している。傾斜部15には、刃先12の一部を構成する複数の凹刃16が並んで設けられている。
【0030】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、波形の刃先12を有しつつ、対象物を切る際の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0031】
(2)複数の凹刃16は、形状及び大きさの互いに異なる複数種類の凹刃16A,16Bを含んでいる。
【0032】
こうした構成によれば、複数種類の凹刃16A,16Bの配置パターンを適宜設定することによって、対象物を切る際の摩擦抵抗を自在に設定することができる。
【0033】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0034】
・第1凹刃16A及び第2凹刃16Bの配置パターンは適宜変更できる。例えば、図5に示すように、第1凹刃16A同士の間に2つの第2凹刃16Bを配置するようにしてもよい。
【0035】
・上記実施形態及びその変形例では、複数の凹刃16が、形状及び大きさの互いに異なる2種類の凹刃16A,16Bを含むものについて例示したが、複数の凹刃は、3種類以上の凹刃を含むものであってもよい。
【0036】
・複数の凹刃16の形状は、1種類の凹刃のみを含むものであってもよい。この場合、例えば、図6(a)に示すような凹刃16であってもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様に、まず、図6(b)に示すように、刃体11の第1面13に対して波形の刃先22を形成する。刃先22は、同一の形状及び大きさの複数の凹刃26により構成されている。次に、凹刃26において平部14と隣接する各谷部P1と、凹刃26同士の間の部分において刃先22となる各山部P2とを含む仮想平面Vに沿って、平部14及び凹刃26の一部を研磨により除去する。これにより、傾斜部15が形成される。
【0037】
・上記実施形態では、刃体11の第1面13に刃先12を構成する傾斜部15を設けたが、第1面13とは反対側の第2面にも傾斜部15を設けるようにしてもよい。また、第2面に設けられた傾斜部15に刃先の一部を構成する複数の凹刃を設けるようにしてもよい。
【0038】
・本発明に係る刃物は、包丁に限定されない。例えばフードプロセッサの回転刃物に対して本発明を適用することもできる。図7に示すように、回転刃物30は、回転体が挿入される挿入孔38aを有する円環状の取付部38と、取付部38から延びる刃体31とを有している。刃体31は、波形の刃先32を有している。刃体31の第1面33には、平部34と、平部34に対して傾斜するとともに刃先32の一部を構成する傾斜部35とを有している。傾斜部35には、刃先32の一部を構成する複数の凹刃36が並んで設けられている。複数の凹刃36は、形状及び大きさの互いに異なる第1凹刃36Aと第2凹刃36Bとを含んでいる。
【符号の説明】
【0039】
10…包丁(刃物)
11…刃体
12…刃先
13…第1面
14…平部
15…傾斜部
16…凹刃
16A…第1凹刃
16B…第2凹刃
17…部分
18…柄
22…刃先
26…凹刃
26A…第1凹刃
26B…第2凹刃
27…部分
30…回転刃物
31…刃体
32…刃先
33…第1面
34…平部
35…傾斜部
36…凹刃
36A…第1凹刃
36B…第2凹刃
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7