(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】圧力制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20230112BHJP
G01L 19/00 20060101ALI20230112BHJP
G01L 13/00 20060101ALI20230112BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230112BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
G01L19/00 A
G01L13/00 A
H01L21/205
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2021567135
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2020045060
(87)【国際公開番号】W WO2021131577
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019235252
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】平田 薫
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】井手口 圭佑
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013172(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/112423(WO,A1)
【文献】特開2015-109022(JP,A)
【文献】特開2018-97759(JP,A)
【文献】特許第5710600(JP,B2)
【文献】特許第6237923(JP,B2)
【文献】特開2011-119433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
G01L 19/00
G01L 13/00
H01L 21/205
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路に設けられた圧力制御バルブと、
前記圧力制御バルブの下流側に設けられガスの流れを制限する流れ抵抗と、
前記圧力制御バルブと前記流れ抵抗との間の流路のガスの圧力を測定する第1圧力センサと、
前記流れ抵抗の下流側の流路のガスの圧力を測定する第2圧力センサと、
前記第1圧力センサおよび前記第2圧力センサに接続された演算制御回路と
を備え、
前記演算制御回路は、前記第1圧力センサの出力によらず前記第2圧力センサの出力に基づいて前記圧力制御バルブの開度を調整することによって前記流れ抵抗の下流側のガスの圧力を制御し、かつ、前記第1圧力センサの出力と前記第2圧力センサの出力とに基づいて前記流れ抵抗の下流側に流れるガスの流量を演算するように構成されている、圧力制御装置。
【請求項2】
前記流れ抵抗は、層流素子である、請求項1に記載の圧力制御装置。
【請求項3】
前記流れ抵抗は、柱状部材と、前記柱状部材の軸方向に貫通する孔に配置されたキャピラリ構造体とを備える、請求項2に記載の圧力制御装置。
【請求項4】
前記柱状部材は、前記キャピラリ構造体の拡径部を収容する凹部を端面に有し、前記柱状部材の前記凹部の底面と、前記キャピラリ構造体の拡径部の底面との間に樹脂製のガスケットが配置されている、請求項3に記載の圧力制御装置。
【請求項5】
前記流れ抵抗は、各々に流路が形成された複数のプレートを積層することによって構成された層流素子である、請求項2に記載の圧力制御装置。
【請求項6】
前記圧力制御バルブはピエゾ素子駆動式バルブであり、前記第1圧力センサおよび前記第2圧力センサは感圧部としてのダイヤフラムと前記ダイヤフラムに通じる細長穴とを有するダイヤフラム式圧力センサであり、前記圧力制御バルブの直径、前記第1圧力センサの直径、前記第2圧力センサの直径、および前記流れ抵抗の直径が、いずれも10mm以下である、請求項1から5のいずれかに記載の圧力制御装置。
【請求項7】
前記圧力制御装置は、プロセスチャンバ内におかれた基板の裏面にガスを供給する供給流路に接続されており、前記基板の裏面のガスを所定の圧力に制御すると共に、前記演算した流量に基づいて、前記基板の裏面から前記プロセスチャンバ内へのガスのリークを検知するように構成されている、請求項1から6のいずれかに記載の圧力制御装置。
【請求項8】
制御されるガスの圧力が1~100Torrになるように構成されている、請求項1から7のいずれかに記載の圧力制御装置。
【請求項9】
穿孔により流路が形成された流路ブロックを有し、前記圧力制御バルブと前記第1圧力センサが前記流路ブロックを挟んで対向して配置され、
前記流路ブロックに形成された流路は、前記圧力制御バルブの弁体中央部から前記第1圧力センサに向かって延びる第1流路と、前記第1流路と交差する方向に沿って前記第1流路から分岐して延びる第2流路とを含み、
前記流れ抵抗が、前記第2流路に配置されている、請求項1から8のいずれかに記載の圧力制御装置。
【請求項10】
流路に設けられた圧力制御バルブと、
前記圧力制御バルブの下流側に設けられガスの流れを制限する流れ抵抗と、
前記圧力制御バルブと前記流れ抵抗との間の流路のガスの圧力と、前記流れ抵抗の下流側の流路のガスの圧力との差圧を測定する差圧センサと、
前記圧力制御バルブと前記流れ抵抗との間の流路のガスの圧力を測定する第1圧力センサ、および、前記流れ抵抗の下流側の流路のガスの圧力を測定する第2圧力センサのうちのいずれか一方と、
前記差圧センサと、前記第1圧力センサまたは前記第2圧力センサとに接続された演算制御回路と
を備え、
前記演算制御回路は、前記第2圧力センサの出力に基づいて、または、前記第1圧力センサと前記差圧センサの出力に基づいて、前記圧力制御バルブの開度を調整することによって前記流れ抵抗の下流側のガスの圧力を制御し、かつ、前記差圧センサと前記第1圧力センサの出力、または、前記差圧センサと前記第2圧力センサの出力に基づいて前記流れ抵抗の下流側に流れるガスの流量を演算するように構成されている、圧力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制御装置に関し、特に、流量測定も可能な圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマCVD装置やエッチング装置などの半導体製造装置において、プラズマプロセス中に、プロセスチャンバ内の載置台に置かれた半導体ウエハなどの処理基板の裏面側に伝熱性の冷却ガス(バックサイドガスともいう)を供給する構成が知られている(例えば特許文献1)。冷却ガスとしては、一般に、Heガス、ArガスまたはN2ガスなどの不活性ガスが用いられている。冷却ガスは、基板裏面と載置台との熱交換を促進させることができ、載置台を冷却するための冷却水ラインとともに基板の温度を制御するために用いられている。
【0003】
基板裏面に供給される冷却ガスは、例えば100Torr(約13.3kPa)以下の低い圧力を有している。これは、冷却ガスの圧力が高いと、静電チャックなどを用いて載置台に吸着されている基板が、載置台から浮いてしまうからである。プロセス期間中、プロセスチャンバ内は100Torr以下の低圧に維持されることがあり、冷却ガスの圧力も、同様に低いことが求められる。
【0004】
また、冷却ガスの供給圧力によって、基板を冷却する能力が異なるものとなる。具体的には、より高い圧力の冷却ガスを基板裏面に供給すれば、基板温度をより下げることができる。このため、求められる冷却能力および基板裏面温度に適合するように、冷却ガスの圧力を正確に制御することが求められている。
【0005】
特許文献1には、圧力制御バルブの下流側に設けられた圧力計の出力に基づいて圧力制御バルブおよび下流側の排気制御弁の開度を調整することによって、冷却ガスの圧力を所望の圧力に制御することが開示されている。また、特許文献2には、下流側の圧力センサの出力に基づいて圧力制御バルブをフィードバック制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6335229号公報
【文献】実開昭58-101213号公報
【文献】特開2012-168823号公報
【文献】国際公開第2017/104643号
【文献】特開平5-233068号公報
【文献】特開平8-63235号公報
【文献】国際公開第2016/013172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにバックサイドガス(冷却ガス)を供給するときの圧力調整は、圧力制御バルブの開度調整によって行うことができる。ただし、載置台上の基板のチャック状態によっては、バックサイドガスがプロセスチャンバ内にリークする場合があり、圧力制御バルブの下流側の圧力センサの出力を参照するだけでは、リーク状況を判別することは困難である。
【0008】
本願出願人は、このようなバックサイドガスのリークも判別可能な圧力制御装置として、圧力制御バルブの上流側にサーマル式流量センサを内蔵させた、流量計測機能付きの圧力制御装置を製造および販売している。流量センサを備えた圧力制御装置では、圧力センサの出力に基づいて下流側のバックサイドガスの圧力を所望値に制御するとともに、ガスの流量を監視してプロセスチャンバへのリーク量を計測することが可能である。サーマル式流量センサを備えた圧力制御装置は、例えば特許文献3にも開示されている。
【0009】
ただし、近年、プロセスチャンバに接続されるガス供給ラインの数は増加しており、プロセスチャンバの周囲におけるガス制御機器の設置スペースの削減が大きな課題となっている。このため、ガス供給ラインおよび介在する制御機器は、従来よりも一層のコンパクト化が求められている。
【0010】
バックサイドガスとして、熱伝導率の異なるガス(例えばHeガスとArガス)の流量を個別に制御して供給する場合など、複数のガスラインが基板のバックサイドに接続されることがある。また、基板の中央部と端部とに異なるガスラインを接続して基板裏面温度をより精密に制御することもある。これらの用途では、各ガスラインに圧力制御装置を各々設ける必要があり、配置のために必要なスペースが大きくなる。また、圧力制御装置は、圧力センサによって基板近傍のガスの圧力を測定することが望ましく、プロセスチャンバから離れた位置に設けることは好ましくない。
【0011】
また、基板の温度均一性を高めるために、同じガスを用いたバックサイドガスのラインを複数設けて、それぞれ圧力を制御する試みもある。このため、各ラインに設けられる圧力制御装置は、より一層のコンパクト化が求められ、特に、幅が小さい、例えば10mm程度にまで幅が縮められた圧力制御装置に対する需要がある。圧力制御装置の幅を縮小することができれば、複数の圧力制御装置を横並びに配置して、スペースの削減を効果的に為し得る。
【0012】
ところが、従来の流量計測機能付きの圧力制御装置に内蔵されていたサーマル式流量センサは、層流素子が設けられた本体流路と、層流素子の上流側で分岐し層流素子の下流側で再合流するバイパス流路を有することで、本体流路を通過する流量がバイパス流路を通過する流量に比例するように形成されている。また、バイパス流路にヒータを設け、ここを流れるガスの入口側と出口側とでの温度差を電気抵抗の変化から読み取って質量流量に変換する構成を有している。このため、構成部品のコンパクト化には限界がある。市販のサーマル式流量センサ付き圧力制御装置には20mm以上の幅を有しているものもあり、小型化が進んでいるとはいえ、サーマル式流量センサを、10mm程度という相当に狭い幅を有するユニットに組み込むことは容易ではない。その結果、特に複数系統のガスラインを設けるときには、プロセスチャンバ近傍の貴重なスペースを多く消費していた。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、コンパクトな設計を可能とし、また、流量計測も適切に行いながら下流側のガス圧力を正確に制御することができる圧力制御装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の実施形態による圧力制御装置は、流路に設けられた圧力制御バルブと、前記圧力制御バルブの下流側に設けられガスの流れを制限する流れ抵抗と、前記圧力制御バルブと前記流れ抵抗との間の流路のガスの圧力を測定する第1圧力センサと、前記流れ抵抗の下流側の流路のガスの圧力を測定する第2圧力センサと、前記第1圧力センサおよび前記第2圧力センサに接続された演算制御回路とを備え、前記演算制御回路は、前記第1圧力センサの出力によらず前記第2圧力センサの出力に基づいて前記圧力制御バルブの開度を調整することによって前記流れ抵抗の下流側のガスの圧力を制御し、かつ、前記第1圧力センサの出力と前記第2圧力センサの出力とに基づいて前記流れ抵抗の下流側に流れるガスの流量を演算するように構成されている。
【0015】
ある実施形態において、前記流れ抵抗は、層流素子である。
【0016】
ある実施形態において、前記流れ抵抗は、柱状部材と、前記柱状部材の軸方向に貫通する孔に配置されたキャピラリ構造体とを備える。
【0017】
ある実施形態において、前記柱状部材は、前記キャピラリ構造体の拡径部を収容する凹部を端面に有し、前記柱状部材の前記凹部の底面と、前記キャピラリ構造体の拡径部の底面との間に樹脂製のガスケットが配置されている。
【0018】
ある実施形態において、前記流れ抵抗は、各々に流路が形成された複数のプレートを積層することによって構成された層流素子である。
【0019】
ある実施形態において、前記圧力制御バルブはピエゾ素子駆動式バルブであり、前記第1圧力センサおよび前記第2圧力センサは感圧部としてのダイヤフラムと前記ダイヤフラムに通じる細長穴とを有するダイヤフラム式圧力センサであり、前記圧力制御バルブの直径、前記第1圧力センサの直径、前記第2圧力センサの直径、および前記流れ抵抗の直径が、いずれも10mm以下である。
【0020】
ある実施形態において、前記圧力制御装置は、プロセスチャンバ内におかれた基板の裏面にガスを供給する供給流路に接続されており、前記基板の裏面のガスを所定の圧力に制御すると共に、前記演算した流量に基づいて、前記基板の裏面から前記プロセスチャンバ内へのガスのリークを検知するように構成されている。
【0021】
ある実施形態において、制御されるガスの圧力が1~100Torrになるように構成されている。
【0022】
ある実施形態において、上記圧力制御装置は、穿孔により流路が形成された流路ブロックを有し、前記圧力制御バルブと前記第1圧力センサが前記流路ブロックを挟んで対向して配置され、前記流路ブロックに形成された流路は、前記圧力制御バルブの弁体中央部から前記第1圧力センサに向かって延びる第1流路と、前記第1流路と交差する方向に沿って前記第1流路から分岐して延びる第2流路とを含み、前記流れ抵抗が、前記第2流路に配置されている。
【0023】
本発明の実施形態による圧力制御装置は、流路に設けられた圧力制御バルブと、前記圧力制御バルブの下流側に設けられガスの流れを制限する流れ抵抗と、前記圧力制御バルブと前記流れ抵抗との間の流路のガスの圧力と、前記流れ抵抗の下流側の流路のガスの圧力との差圧を測定する差圧センサと、前記圧力制御バルブと前記流れ抵抗との間の流路のガスの圧力を測定する第1圧力センサ、および、前記流れ抵抗の下流側の流路のガスの圧力を測定する第2圧力センサのうちのいずれか一方と、前記差圧センサと前記第1圧力センサまたは前記第2圧力センサとに接続された演算制御回路とを備え、前記演算制御回路は、前記第2圧力センサの出力に基づいて、または、前記第1圧力センサと前記差圧センサの出力に基づいて、前記圧力制御バルブの開度を調整することによって前記流れ抵抗の下流側のガスの圧力を制御し、かつ、前記差圧センサと前記第1圧力センサの出力、または、前記差圧センサと前記第2圧力センサの出力に基づいて前記流れ抵抗の下流側に流れるガスの流量を演算するように構成されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施形態によれば、小幅でコンパクトな設計が可能で、流量計測も可能な圧力制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】バックサイドガス供給系において本発明の実施形態に係る圧力制御装置が組み込まれた半導体製造システムを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る圧力制御装置を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る圧力制御装置のより具体的な構成例を示す図である。
【
図4】
図3に示す圧力制御装置が備える流れ抵抗の近傍を拡大して示す図である。
【
図5】流れ抵抗としてオリフィスプレートを用いた場合の、上流圧力P1、下流圧力P2および差圧ΔP(=P1-P2)と流量との関係を示すグラフであり、(a)は下流圧力が20Torrの場合、(b)は下流圧力が100Torrの場合を示す。
【
図6】流れ抵抗としてキャピラリを有する層流素子を用いた場合の、上流圧力P1、下流圧力P2および差圧ΔPと流量との関係を示すグラフである。
【
図7】
図6に示したグラフの低流量域拡大グラフである。
【
図8】流れ抵抗としてキャピラリを有する層流素子を用いた場合の、上流圧力P1および下流圧力P2に基づく流量対応値(P1
2-P2
2)と、実際の測定流量との関係性を示すグラフである。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る圧力制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は、プロセスガス供給系1Aとバックサイドガス供給系1Bとを含む半導体製造システム100を示す。プロセスガス供給系1Aおよびバックサイドガス供給系1Bはいずれもプロセスチャンバ30に接続されている。また、プロセスチャンバ30には、真空ポンプ14が接続されており、プロセスチャンバ30およびプロセスガス供給系1Aの流路を減圧することができる。
【0028】
プロセスチャンバ30には、チャンバ側面に出入口を有する搬送装置(図示せず)を用いて、半導体ウエハやガラス基板などの基板5が出し入れされる。プロセスチャンバ30の内部に搬送された基板5は、載置台32上に置かれ、任意の吸着装置(ここでは静電チャック)34によって載置台32に一時的に固定される。
【0029】
載置台32上に載置された基板5の上面にプロセスガスを供給するために、プロセスガス供給系1Aは、ガス供給源11、上流バルブ12、流量制御器10および下流バルブ13を有している。プロセスガス供給系1Aからは、流量制御器10によって制御された流量で、シャワーヘッド36を介して基板5の表面全体にわたって均一にプロセスガスが供給される。
【0030】
プロセスガスとしては、種々の原料ガスまたはエッチングガスなどが用いられる。流量制御器10としては、圧力式流量制御器や熱式流量制御器などの質量流量制御器が好適に用いられる。上流バルブ12および下流バルブ13としては、遮断性および応答性が良好なオンオフ弁、例えば、空気駆動弁(AOV)、電磁弁(ソレノイドバルブ)、電動弁(モータ作動バルブ)などが好適に用いられる。
【0031】
なお、
図1には1系統のプロセスガスラインのみが示されているが、他の態様において、各ガス種に対応した複数のガスラインが共通ガスラインを通じてプロセスチャンバ30に接続されていてもよい。複数のガスラインを備える場合、各ラインの下流バルブ13は、ガス種の切り替えのために用いられる。また、プロセスチャンバ30の異なる位置(中心部や端部など)に異なる制御流量でガスを供給するために、複数のプロセスガスラインが、プロセスチャンバ30の別々の場所に接続されていてもよい。
【0032】
バックサイドガス供給系1Bは、伝熱性のバックサイドガスを、載置台32の上に置かれた基板5の裏面に供給するように構成されている。バックサイドガス供給系1Bは、バックサイドガス供給源15と、本実施形態による圧力制御装置20とを有しており、バックサイドガスを、圧力制御装置20によって制御された圧力でプロセスチャンバ30内の基板5の裏面に供給することができる。バックサイドガスとしては、Heガス、ArガスまたはN2ガスなどの伝熱性ガスが好適に用いられる。
【0033】
バックサイドガス供給系1Bは、圧力制御装置20の下流側において排気ラインL2を有している。排気ラインL2は、プロセスチャンバ30に向かうラインL1から分岐して設けられている。排気ラインL2には、オリフィス部材(オリフィス径:0.1mm、0.5mmなど)16、排気弁17、真空ポンプ18などが設けられており、バックサイドガスの排気を行うことができる。
【0034】
排気ラインL2にオリフィス部材16を設けることによって、排気弁17を開閉したときの急激な圧力変動を抑制することができる。また、排気弁17を開放したときにオリフィス部材16を介してバックサイドガスを少流量で継続的に排気することができる。これにより、圧力制御装置20におけるバルブ開度調整による圧力制御をより好適に行うことができる。オリフィス径は、必要とされるバックサイドガスの制御圧力範囲等に応じて適宜選択される。
【0035】
なお、排気ラインL2にオリフィス部材16を必ず設ける必要はなく、オリフィス部材16に代えて、他の絞り部材やピエゾバルブを設けてもよい。また、基板5と載置台32との隙間からバックサイドガスがプロセスチャンバに微小量であればリークすることが許容されている場合には、排気ラインL2自体を設けない構成を採用してもよい。
【0036】
また、図示していないが、載置台32には、通常、他の冷却手段も備えられており、例えば載置台32の内部に設けられた流路に冷却水などの冷媒を循環させて流すことによって、プロセス中に載置台32および基板5が高温になりすぎることが防止されている。特にプラズマ処理を行う場合には、載置台32が高温に加熱されるため、冷却水ラインなどの冷却手段を設ける必要がある。
【0037】
この構成において、圧力制御装置20を用いて制御された圧力を有する伝熱性のバックサイドガスを載置台32と基板5の裏面との間に供給することによって、基板5の温度を精度よく制御することができる。具体的には、より高い圧力(例えば10Torr~100Torr)のバックサイドガスを供給することによって、冷却されている載置台32と基板5との熱交換を促し、基板5の温度をより低下させることができる。また、より低い圧力(例えば1Torr~10Torr)のバックサイドガスを供給したときには、基板5の温度がより高いものとなる。
【0038】
基板温度は、バックサイドガスの圧力および熱伝導率によって変化するので、圧力制御装置20(および排気ラインL2)を用いてバックサイドガスの圧力を制御することによって、基板温度を適切に制御することができる。圧力制御装置20は、バックサイドガスの圧力を1Torr~100Torrの範囲で制御できるように構成されていることが好ましい。
【0039】
また、基板5の裏面の温度は、例えば、図示しない放射温度計などの温度センサによって測定されていてもよい。温度センサが出力する基板温度に基づいて、圧力制御装置20の制御圧力を適宜変更することによって、基板5を所望温度に維持しやすい。
【0040】
なお、
図1には1系統のバックサイドガスラインのみが示されているが、他の態様において、複数のバックサイドガスラインが基板5の裏面に接続されていてよい。複数のバックサイドガスラインは、熱伝導率の異なる別種のガス(例えば、HeガスとArガス)を供給するために利用されてもよいし、基板5の中央部と端部とで別々の圧力でガスを供給するために利用されてもよい。基板5の複数の場所に対して、別々に圧力制御されたガスを供給することによって、基板5の温度均一性を向上させることができる。
【0041】
このように、複数のバックサイドガスラインを設けることができるが、後述するように、各ラインに設けられた本実施形態による圧力制御装置20は、例えば10mm以下の幅を有する薄型のユニットとして構成することが可能である。このため、これらを横並びに配置することによって複数のラインを全体としてコンパクトに設置できる。これによって、プロセスチャンバ近傍における省スペース化を実現することができる。
【0042】
また、上記のように、圧力制御装置20を用いて基板5の温度制御が可能であるが、吸着装置34を用いて載置台32上に固定された基板5の裏面にガスを供給するので、基板5の吸着状態によっては、基板5と載置台32との隙間からバックサイドガスがプロセスチャンバ30内へとリークすることがある。本実施形態の圧力制御装置20は、このようなプロセスチャンバ内へのバックサイドガスのリークの発生を検知し、また、リーク量の測定を行うために、流量計測機能を備えている。以下、流量計測機能を備える圧力制御装置20の詳細構成を説明する。
【0043】
図2は、本実施形態の圧力制御装置20の構成を示す図である。圧力制御装置20は、バックサイドガス供給源15(
図1参照)と連通する流路に設けられた圧力制御バルブ25と、圧力制御バルブ25の下流側に設けられた流れ抵抗(ガスの流れを制限することができる種々の部材)23と、圧力制御バルブ25と流れ抵抗23との間の流路に接続された第1圧力センサ(上流圧力センサ)21と、流れ抵抗23の下流側の流路に接続された第2圧力センサ(下流圧力センサ)22とを備えている。
【0044】
圧力制御装置20は、さらに、ガスの温度を測定する温度センサ24と、第1圧力センサ21、第2圧力センサ22および温度センサ24に接続された演算制御回路26とを備えている。演算制御回路26は、例えば、回路基板上に設けられたプロセッサやメモリなどによって構成され、入力信号に基づいて所定の演算を実行するコンピュータプログラムを含み、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現され得る。図示する演算制御回路26は、圧力制御装置20に内蔵されているが、その構成要素の一部(CPUなど)または全部が圧力制御装置20の外側に設けられ、圧力制御装置20と通信できるように構成されていてもよい。
【0045】
圧力制御装置20は、流れ抵抗23の下流側に設けられた第2圧力センサ22の出力(下流圧力P2)に基づいて圧力制御バルブ25の開度を調整するように構成されている。より具体的には、第2圧力センサ22の出力と設定圧力とを比較してその差が0に近づくように、すなわち、第2圧力センサ22の出力が設定圧力に近づくように、圧力制御バルブ25をフィードバック制御するように構成されている。これにより、流れ抵抗23を介して基板5の裏面に供給されるバックサイドガスの圧力を所望の大きさに制御することができる。
【0046】
圧力制御バルブ25としては、開度調整可能な種々のコントロール弁が用いられるが、例えば、
図3に示すような、ピエゾ素子駆動式バルブ(以下、ピエゾバルブと呼ぶ)が好適に用いられる。ピエゾバルブは、金属製のダイヤフラム弁体25bとピエゾアクチュエータ25aとを有しており、ピエゾ素子への駆動電圧の制御により任意開度に調整することが可能である。ピエゾバルブは応答性に優れており、また、その小型化も進んでいる。ピエゾバルブとして直径10mm未満のバルブが容易に入手可能である。
【0047】
また、本実施形態において、流れ抵抗23としては、1本のキャピラリを有する層流素子が用いられている。ただし、これに限られず、流れ抵抗23としては、ガスの流れを制限する種々の構造物を用いることができる。流れ抵抗23としては、複数のキャピラリが形成された層流素子、オリフィスプレート、音速ノズル、または、流路用の溝が表面に形成されたプレートを積層して構成された抵抗体(熱式流量計において層流素子として用いられているもの)などを用いることができる。
【0048】
さらに、圧力制御装置20は、流れ抵抗23の上流側に設けた第1圧力センサ21の出力(上流圧力P1)と、流れ抵抗23の下流側に設けた第2圧力センサ22の出力(下流圧力P2)とに基づいて、流れ抵抗23の下流側に流れるバックサイドガスの流量を求めるように構成されている。
【0049】
上流圧力P1および下流圧力P2を測定することによって、流量を求めることが可能である。例えば、キャピラリ内をガスが流れるときには層流粘性流状態が保たれるので、下記のポアズイユの式(1)にしたがって流量を求めることができる。下記式(1)において、Qは流量(sccm)、Kは比例定数、P1は上流圧力(Pa)、P2は下流圧力(Pa)である。
Q=K・(P12-P22) …(1)
【0050】
比例定数Kは、ガスの種類や温度に依存する定数であり、既知の正確な流量で対象ガスを流したときの上流圧力P1および下流圧力P2の測定によって、予め求めておくことができる。求められた比例定数Kは、例えば演算制御回路26が有するメモリに格納され、流量測定時にはメモリから読み出して利用することができる。
【0051】
また、特許文献4には、気体の漏れ検査装置が開示されている。本実施形態の圧力制御装置20においても、流れ抵抗23としてキャピラリ層流素子を用いる場合には、特許文献4に記載されている下記式(2)を用いて流量を求めることもできる。下記式(2)において、Qは流量(Pa・m3/s)、Dはキャピラリの内径(m)、Lはキャピラリの長さ(m)、ηは気体の粘性係数(Pa・s)、P1およびP2は上流および下流圧力(Pa)である。
Q=(πD4/128ηL)×((P1+P2)/2)×(P1-P2) …(2)
【0052】
このように、本実施形態の圧力制御装置20において、流れ抵抗23を設けるとともに、圧力制御に用いる第2圧力センサ22だけでなく、上流圧力P1を測定する第1圧力センサ21をも設けることによって、下流圧力P2の制御だけでなく、バックサイドガスのリークの検知およびリーク量の測定が可能である。
【0053】
なお、特許文献5および特許文献6には、オリフィス部材や層流素子の上流圧力と下流圧力との差に基づいて制御バルブを制御するように構成された差圧式質量流量制御器が開示されている。ただし、特許文献5および特許文献6に記載の質量流量制御器は、流量制御のために用いられる装置であり、下流圧力を制御するように構成された圧力制御装置ではない。なお、本実施形態の圧力制御装置においても、流れ抵抗23としてキャピラリ層流素子以外の素子を用いる場合などは、上記の式(1)または(2)に基づいて流量計測する代わりに、従来の差圧式流量計で採用されていた種々の方式を適用して流量を計測し得る。
【0054】
以下、圧力制御装置20の具体的な設計例を
図3および
図4を参照しながら説明する。
【0055】
図3に示す圧力制御装置20は、ピエゾバルブ(圧力制御バルブ25)を構成するピエゾアクチュエータ25aとダイヤフラム弁体25bとが取り付けられた、流路ブロック27を有している。また、圧力制御装置20には、演算制御回路26(
図2参照)が形成された回路基板26aも設けられている。
【0056】
図4に示すように、流路ブロック27には、ダイヤフラム弁体25bが当接可能な環状のシート25cが形成されており、ピエゾアクチュエータ25aの駆動により弁体押さえ25dのシート25cへの押圧力を変化させて、ピエゾバルブを所望開度に制御することができる。
【0057】
また、
図3に示すように、流路ブロック27には、ドリルなどを用いた穿孔によって形成された流路27a、27b、27cが設けられている。流路27aは、バックサイドガス供給源15(
図1参照)と圧力制御バルブ25とを連通させる1次側流路であり、流路27b(第1流路と呼ぶことがある)は、圧力制御バルブ25と第1圧力センサ21とを連通させる流路であり、流路27c(第2流路と呼ぶことがある)は、第1流路27bの途中から交差方向(ここでは第1流路27bと直交する方向)に延び、圧力制御バルブ25と流れ抵抗23とを連通させる流路である。
【0058】
本実施形態において、圧力制御バルブ25と第1圧力センサ21とは、流路ブロック27の上下面において、流路ブロック27を挟んで対向するように配置されている。そして、第1流路27bは、圧力制御バルブ25のダイヤフラム弁体25bの中央部(または環状のシート25cの内側)から、第1圧力センサ21に向かって垂直にまっすぐ延びている。一方、一次側流路27aは、圧力制御バルブ25のダイヤフラム弁体25bの周縁部において、シート25cの外側の弁室に接続されている。
【0059】
また、
図4に示すように、第1圧力センサ21は、第1流路27bと連通する細長穴21bと、細長穴21bの先に感圧部として設けられたダイヤフラム21aとを有している。このように、圧力導入パイプの細長穴21bを介してセンサ部を流路ブロック27から離して配置することで、流路ブロック27への第1圧力センサ21の取り付けスペースを削減することができ、その結果、このようなダイヤフラム式圧力センサの全体を小径に設計することができる。第2圧力センサ22も上記と同様の構成を有しており、小径に設計されている。
【0060】
第1圧力センサ21および第2圧力センサ22としては、例えば、本願出願人による特許文献7(国際公開第2016/013172号)に記載されているものを使用することができる。特許文献7に開示されている圧力センサの直径は約8mmであり、10mm未満である。なお、第1および第2圧力センサ21、22は、上記のダイヤフラム21aと、ダイヤフラム21aの変形により圧力が変化する空間に配置されたセンサチップとを内蔵するものであってよい。センサチップは、例えばシリコン単結晶から形成され、感圧部としての薄板部分に歪ゲージを取り付けることによって、計測した圧力を電気信号(歪ゲージの抵抗値変化)として取り出すことができる。
【0061】
また、
図3に示すように、第2流路27cに配置された流れ抵抗23は、キャピラリ23aを有している。より詳細には、流れ抵抗23は、
図4に示すように、金属製のロングガスケット(柱状部材)231と、金属製のキャピラリ構造体232a、232bと、ロングガスケット231とキャピラリ構造体の拡径部232aとの間に配置された樹脂製のガスケット233とによって構成されている。ガスケット233は、例えばPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)製である。
【0062】
ロングガスケット231は、流路ブロック27の端面に設けられた横穴であって第2流路27cと連通するように形成された有底の横穴の内部に収容固定される。また、ロングガスケット231の軸方向に沿って貫通孔が設けられており、その内部にはキャピラリ構造体のキャピラリ部232bが配置されている。さらに、ロングガスケット231の外側端面には、キャピラリ構造体の拡径部232aおよびガスケット233を収容できる凹部が設けられている。ガスケット233は、ロングガスケット231の凹部底面と、キャピラリ構造体の拡径部232aの底面との間に配置されている。
【0063】
本実施形態において、キャピラリ構造体のキャピラリ部232bは、ロングガスケット231の貫通孔を通過して、流路ブロック27に形成された第2流路27cの途中にまで延びている。また、キャピラリ構造体の拡径部232aは、下流側流路ブロック28に形成された流路と接続されており、キャピラリを通ったガスが下流側に流れるようになっている。
【0064】
上記の流れ抵抗23を用いることによって、キャピラリ内を層流粘性流のガスが流れるものと考えられ、第1圧力センサ21および第2圧力センサ22の出力に基づく流量計測を好適に行うことができる。キャピラリのサイズは、例えば、直径0.25mm、長さ20mmに設計され、流れ抵抗23(またはロングガスケット231)の径は、10mm未満のサイズ(例えば3~8mm)に設計される。
【0065】
以上のように構成された圧力制御装置20では、圧力制御バルブ25、第1圧力センサ21および流れ抵抗23が流路ブロック27においてコンパクトに設置されるので、小型化をなすことができる。また、流れ抵抗23を流路ブロック27の端部(下流側流路ブロック28との界面)に配置することにより、流れ抵抗23の交換容易性が向上し、必要とされる流量測定範囲や制御圧力範囲に応じて、キャピラリ寸法を適宜変更することが容易になる。また、キャピラリが詰まったときにも容易に交換できる。
【0066】
また、上記構成では、圧力制御バルブ25、第1圧力センサ21、流れ抵抗23、第2圧力センサを同一面上(図面と平行で流路ブロック27の幅方向真ん中あたりを通る面)に配置することができ、いずれもが小径に構成されているので、圧力制御装置20の幅を小さく設計することができる。これによって、10mm以下の幅を有する圧力制御装置20が実現可能である。
【0067】
このようにして圧力制御装置20は、下流圧力P2(バックサイドガスの供給圧)を適切に制御するとともに、流量計測結果に基づいて、基板裏面からプロセスチャンバ内へのガスのリーク量を測定することができる。リーク量の測定は、典型的には、正常時における設定下流圧力のときの正常流量と比較して、同じ設定下流圧力のときに流量が増加している場合には、増加分をリーク流量とみなすことで測定できる。圧力制御装置20は、バックサイドガスの圧力(下流圧力P2)を、特に1~100Torrの範囲内で正確に制御できるように構成されている。これによって、所望の温度に基板を冷却することができる。
【0068】
ここで、下流側の制御圧力が1~100Torrというような低い圧力範囲の場合にも流量を正確に計測するためには、第1圧力センサ21と第2圧力センサ22とによって検出可能である差圧ΔP(=P1-P2)の下限値近傍において、より少ない流量が検出できることが有利である。言い換えると、小流量であっても差圧ΔPとして大きい値が検出されるように圧力制御装置が構成されていることが有利である。
【0069】
バックサイドガスのリーク量は少量であるが、同じ流量に対して差圧ΔPが大きく検出されるのであれば、より正確に流量を測定することができる。本発明者は鋭意検討を行った結果、流れ抵抗として、オリフィス部材を用いるよりも、キャピラリ層流素子を用いた方が、同じ流量でも大きな差圧がとれ、したがって、より小流量のリーク量をより精度よく計測できることがわかった。
【0070】
図5は、流れ抵抗23としてオリフィスプレートを用いた場合のHe流量と圧力(上流圧力P1、下流圧力P2および差圧ΔP)との関係を示すグラフであり、(a)は下流圧力P2が20Torrの場合、(b)は下流圧力P2が100Torrの場合を示す。また、
図6および
図7は、流れ抵抗23としてキャピラリ層流素子を用いた場合のHe流量と差圧ΔP=(P1-P2)との関係を示すグラフである。
図7は、
図6に示したグラフの低流量域(0~5sccm)を拡大して示す。
【0071】
なお、流れ抵抗23としてオリフィスプレートを用いた場合とキャピラリ層流素子を用いた場合とで、圧力制御バルブの上流側の供給圧力が100kPa abs.のときに圧力制御バルブが全開状態で400sccmのガスが流せる設計(流れ抵抗の下流側は減圧)の素子がそれぞれ用いられている。流れ抵抗23は流路に設けられるものであるので、所定以上の流量でガスを流す能力を備えていることが求められる。
【0072】
図5(a)および(b)からわかるように、オリフィスプレートを用いた場合、ΔPが0.1kPa(=0.75Torr)のとき、下流圧力P2が20Torrのときには約2.7sccmのヘリウムガスが流れ、下流圧力P2が100Torrのときには約8.1sccmのヘリウムガスが流れる。つまり、圧力センサの測定能限界に基づくΔPの検出可能下限値を0.1kPaと見積もったときには、下流圧力P2が20Torrのときであっても約2.7sccmものガスが流れる。このため、下流圧力P2が20Torr以上のときには、2.7sccm未満の流量で流れるガスは、圧力センサの出力から正確な流量を計測することが困難であると考えられる。
【0073】
一方、
図6に示すように、キャピラリ層流素子を用いた場合には、差圧ΔPが検出可能下限値の0.1kPaを大きく超える約0.44kPaのときにも、下流圧力P2が100Torrの条件で約1sccmの流量しか流れない。また、下流圧力P2が20Torrおよび50Torrのときのグラフからわかるように、より下流圧力P2が低いときには、差圧ΔPが0.44kPaのときに、1sccm未満の流量のガスしか流れないことがわかる。このため、下流圧力P2が20~100Torrである場合において、1sccm以下で流れるガスの流量を、第1および第2圧力センサを用いて良好に計測し得ることがわかる。
【0074】
また、
図7に示す拡大図からわかるように、下流圧力P2が100Torrのときであっても、差圧ΔPが検出可能下限値の0.1kPaの近傍(0.13kPa)のときに、約0.3sccmの流量でしかガスが流れない。このため、下流圧力P2が100Torr以下であれば、第1および第2圧力センサを用いて0.3sccm以上で流れるガスの流量を比較的正確に計測できる。このため、リーク流量が小さいときにも、キャピラリ層流素子を用いることによって、そのリークの検知およびリーク流量の測定を適切に実行可能であることがわかる。
【0075】
以上ことから、小流量のリークを差圧に基づいて計測するためには、オリフィスプレートよりもキャピラリ層流素子を用いることが有利と考えられる。これは、
図6および
図7からわかるように、キャピラリ層流素子を用いたときには、0sccmからわずかにガスが流れただけで差圧ΔPが比較的大きく増加するという特性があるのに対して、
図5からわかるように、オリフィスプレートを用いたときは、0sccmからわずかにガスが流れたとしても差圧ΔPが比較的小さくしか増加しないという特性があるためと考えられる。
【0076】
なお、層流素子であれば、
図6および
図7に示されるような特性を示すことが予想されるため、流れ抵抗23としては、複数のキャピラリを設けた層流素子を用いてもよく、また、流路が形成されたプレートを積層して構成される層流素子を用いることも好適であると考えられる。
【0077】
図8は、He流量と、上記のポアズイユの式(1)に含まれる圧力の項(P1
2-P2
2)との関係を示すグラフであり、
図6および
図7に示したデータに基づいて作成されている。
【0078】
図8に示すグラフからわかるように、圧力の項(P1
2-P2
2)と流量とは、広い流量域にわたって、つまり低流量域においても、おおむね比例関係にあることがわかる。したがって、流れ抵抗23としてキャピラリ層流素子を用いるとともに、流量をポアズイユの式(1)に基づいて第1および第2圧力センサの出力結果から演算により求めることで、リーク流量を精度よく求めることができると考えられる。
【0079】
以上、本発明の実施形態を説明したが、種々の改変が可能である。例えば、
図9に示すように、他の実施形態において、圧力制御装置20aは、上流圧力P1を測定する第1圧力センサを備えることなく、第2圧力センサ22とともに、流れ抵抗23をまたいで流路に接続された差圧センサ29を備えるように構成されていてもよい。
【0080】
圧力制御装置20aにおいて、差圧センサ29の出力に基づいて差圧ΔPを測定し、差圧式流量計のようにして流量を測定することが可能であり、また、第2圧力センサ22の出力に基づいて流れ抵抗23の下流側のガスの圧力を制御することが可能である。なお、上述したように上流圧力P1および下流圧力P2を用いて流量を求めるときには、差圧センサ29の出力と第2圧力センサ22の出力との合計を上流圧力P1とし、これを用いて流量を演算により求めればよい。
【0081】
差圧センサ29は、流路に接続したままでも、一次側および二次側の両側の圧力が同じ状況であればゼロ点校正を行うことができ、また、ゼロ点変動が生じたとしても演算流量に誤差が生じにくいという特長を有している(本願出願人による国際公開第2020/218138号に開示)。したがって、圧力制御装置20aにおいても流量計測の精度を向上させ得る。
【0082】
また、圧力制御装置20aに設けられた差圧センサ29と第2圧力センサ22とは、一体的に形成することも可能である。この場合、一体型センサチップが用いられ、流れ抵抗23の下流側に接続された下流圧力部屋に接するセンサチップにおいて、真空部屋と、流れ抵抗23の下流側に接続された上流圧力部屋とが、互いに隔離して設けられる。この構成において、下流圧力部屋と真空部屋とを隔てるダイヤフラム部に固定した歪ゲージの出力から下流圧力P2が求められ、また、下流圧力部屋と上流圧力部屋とを隔てるダイヤフラム部に固定した歪ゲージの出力から差圧ΔPが求められる。
【0083】
さらに、
図9には差圧センサ29と第2圧力センサ22とを設ける形態を示したが、他の実施形態において、第2圧力センサ22を設けることなく、第1圧力センサ21と差圧センサ29を設けるようにしてもよい。この場合、下流圧力P2は、第1圧力センサ21の出力から差圧センサ29の出力を減算することによって求めることができ、求めた下流圧力P2に基づいて圧力制御および流量計測を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の実施形態による圧力制御装置は、例えば、プロセスチャンバ内に置かれた基板の裏面に供給されるバックサイドガスの圧力制御を行うとともに、バックサイドガスの流量を計測するために好適に利用される。
【符号の説明】
【0085】
1A プロセスガス供給系
1B バックサイドガス供給系
5 基板
10 流量制御装置
11 プロセスガス供給源
12 上流バルブ
13 下流バルブ
14 真空ポンプ
15 バックサイドガス供給源
16 オリフィス部材
17 排気弁
18 真空ポンプ
20 圧力制御装置
21 第1圧力センサ
22 第2圧力センサ
23 流れ抵抗
23a キャピラリ
24 温度センサ
25 圧力制御バルブ
26 演算制御回路
27 流路ブロック
28 下流側流路ブロック
29 差圧センサ
30 プロセスチャンバ
32 載置台
34 吸着装置
36 シャワーヘッド