(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】表示装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20230112BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230112BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230112BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20230112BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20230112BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230112BHJP
H05B 33/24 20060101ALI20230112BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230112BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H05B33/04
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/02
H05B33/12 E
H05B33/24
G02B5/20 101
G09F9/30 309
G09F9/30 349A
G09F9/30 349Z
G09F9/30 349C
G09F9/30 349D
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2022026991
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2020174717の分割
【原出願日】2012-08-08
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2012170618
(32)【優先日】2012-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 高寿
(72)【発明者】
【氏名】和泉 健一
(72)【発明者】
【氏名】寺口 晋一
(72)【発明者】
【氏名】中平 忠克
(72)【発明者】
【氏名】横関 弥樹博
(72)【発明者】
【氏名】西 正太
(72)【発明者】
【氏名】古立 学
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-134173(JP,A)
【文献】特開2011-138635(JP,A)
【文献】特開2005-293946(JP,A)
【文献】特開2010-267543(JP,A)
【文献】特開2006-054111(JP,A)
【文献】特開2002-324666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H01L 51/50
H01L 27/32
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、
前記第1の基板上における表示領域に配列され、第1電極層と発光層と第2電極層との積層構造を各々含む複数の発光素子と、
前記第1の基板と前記発光層との間の階層に位置する第1の無機層と、
複数の前記発光層を覆う第2の無機層と、
前記第1の基板と前記第1電極層との間の階層に位置する第1の有機層と、
前記第1電極層と前記第2の無機層との間の階層に位置する第2の有機層と、
前記第1の有機層および前記第2の有機層を貫くと共に前記表示領域を取り囲むように設けられた第1の分離溝と、
前記第1の分離溝から見て前記表示領域と反対側に設けられた前記第1の有機層および前記第2の有機層を含む構造物と
を有し、
前記第1の無機層および前記第2の無機層は、
前記第1の分離溝において直接または第3の無機層を介して互いに接している第1の封止部と、
前記構造物から見て前記第1の分離溝と反対側において直接または第3の無機層もしくは第4の無機層を介して互いに接している第2の封止部と
を含んでいる
表示装置。
【請求項2】
前記第2の無機層の、前記第1の有機層と反対側に設けられた第3の有機層をさらに有し、
前記第2の封止部は、前記第3の有機層の外縁よりも外側に位置する
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第2の無機層の、前記第1の有機層と反対側に設けられた第3の有機層をさらに有し、
前記第1の封止部は、前記第3の有機層の外縁よりも外側に位置する
請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の無機層の、前記第1の有機層と反対側に設けられた第3の有機層をさらに有し、
前記第1の封止部は、前記第3の有機層の外縁よりも内側に位置する
請求項1または請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
前記第3の有機層の、前記第2の無機層と反対側に設けられた第2の基板をさらに有し、
前記第2の基板の外端は、前記第1の封止部よりも外側に位置する
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第2の基板は透明である
請求項5記載の表示装置。
【請求項7】
前記第3の有機層は透明である
請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の有機層および前記第2の有機層を貫くと共に前記表示領域を取り囲むように設けられた第2の分離溝をさらに有し、
前記第2の封止部は、前記第2の分離溝に位置する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第2の無機層の、前記第1の有機層と反対側に設けられたカラーフィルタをさらに有する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第2の無機層の、前記第1の有機層と反対側に設けられた遮光膜をさらに有する
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1電極層は光反射層を含む
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第2電極層は半透過性反射層を含む
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第2電極層は透光性をもつ
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
前記複数の発光素子は共振器構造をもつ
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項15】
表示装置を備えた電子機器であって、
前記表示装置は、
第1の基板と、
前記第1の基板上における表示領域に配列され、第1電極層と発光層と第2電極層との積層構造を各々含む複数の発光素子と、
前記第1の基板と前記発光層との間の階層に位置する第1の無機層と、
複数の前記発光層を覆う第2の無機層と、
前記第1の基板と前記第1電極層との間の階層に位置する第1の有機層と、
前記第1電極層と前記第2の無機層との間の階層に位置する第2の有機層と、
前記第1の有機層および前記第2の有機層を貫くと共に前記表示領域を取り囲むように設けられた第1の分離溝と、
前記第1の分離溝から見て前記表示領域と反対側に設けられた前記第1の有機層および前記第2の有機層を含む構造物と
を有し、
前記第1の無機層および前記第2の無機層は、
前記第1の分離溝において直接または第3の無機層を介して互いに接している第1の封止部と、
前記構造物から見て前記第1の分離溝と反対側において直接または第3の無機層もしくは第4の無機層を介して互いに接している第2の封止部と
を含んでいる電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機層を含む自発光型の発光素子を有する表示装置、およびそのような表示装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料の有機エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)現象を利用して発光する有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機正孔輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けて構成されており、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。ところが、この有機EL素子を用いた表示装置(有機EL表示装置)では、吸湿によって有機EL素子における有機層の劣化が生じ、有機EL素子における発光輝度が低下したり発光が不安定になったりするなど、経時的な安定性が低くかつ寿命が短いといった問題があった。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、基板における有機EL素子やその他の回路が形成された素子形成面側に、封止のためのカバー材を配置し、基板とカバー材との周縁部をシール材で封止するようにした有機EL表示装置が提案されている。また、この特許文献1には、水蒸気などの浸入を防ぐ保護膜として、シール材の外側を硬質な炭素膜で覆う構成も提案されている。このような構成により、基板上に形成された有機EL素子が外部から完全に遮断され、有機EL素子の酸化による劣化を促す水分や酸素等の物質が外部から浸入することを防ぐことが可能となっている。
【0004】
また、この他にも、基板における有機EL素子やその他の回路が形成された素子形成面側に、接着剤を介して封止のためのカバー材を貼り合わせるようにした、完全固体型の有機EL表示装置も提案されている。
【0005】
さらに、表示領域を囲む位置(表示領域の外縁側)に、上記した有機絶縁膜をその内部領域側と外部領域側に分離する分離溝を形成するようにした有機EL表示装置も提案されている(例えば、特許文献2,3参照)。このような分離溝を設けることにより、有機絶縁膜における上記外部領域側に存在する水分が、この有機絶縁膜内を通過して内部領域側(表示領域側)に浸入することが回避される。したがって、表示装置内に取り残された水分が有機絶縁膜を通過することに起因した有機層(有機EL素子)の劣化を抑えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-93576号公報
【文献】特開2006-54111号公報
【文献】特開2008-283222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで最近では、いわゆるタブレット型パーソナルコンピュータ(PC)やスマートフォン(多機能型携帯電話)などの携帯型情報端末機器にも有機EL表示装置が搭載されるようになっている。こうした携帯型情報端末は、携帯性確保のため、本体の寸法をあまり大きくすることができない。その一方、使用者における視認性および操作性確保の観点から、できるだけ有効画面領域を大きく確保する必要がある。したがって、携帯型情報端末の本体における、有効画面領域以外の周辺領域の占有面積をできるだけ縮小する、いわゆる狭額縁化が望まれる。
【0008】
しかしながら、特許文献2,3に提案されている構造では、例えば白色有機EL素子等の場合のように、有機層等を成膜する際にエリアマスクを使用する場合、狭額縁化が困難であった。すなわち、エリアマスクのアライメントずれ(マスクずれ領域)と膜の回り込み(テーパー領域)とを考慮すると、実際には、上記した分離溝を、表示領域から十分に離れた位置に形成する必要がある。このため、額縁を広く取る必要が生じ(表示領域と周辺領域との間の距離を広くする必要が生じ)、狭額縁化が困難となってしまう。加えて、表示領域と周辺領域との間の距離を広くする必要が生じることから、この領域(分離溝の内部領域)における有機絶縁層内に含まれる水分が有機層へ侵入することに起因して、有機層が劣化してしまうことになる。
【0009】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、水分による発光素子の劣化を抑え、高い信頼性を有すると共により大きな有効画面領域を有する表示装置、およびそのような表示装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の表示装置は、以下の各構成要素を有するものである。
(1)第1の基板。
(2)第1の基板上における表示領域に配列され、第1電極層と発光層と第2電極層との積層構造を各々含む複数の発光素子。
(3)第1の基板と発光層との間の階層に位置する第1の無機層。
(4)複数の発光層を覆う第2の無機層。
(5)第1の基板と第1電極層との間の階層に位置する第1の有機層。
(6)第1電極層と第2の無機層との間の階層に位置する第2の有機層。
(7)第1の有機層および第2の有機層を貫くと共に表示領域を取り囲むように設けられた第1の分離溝。
(8)第1の分離溝から見て表示領域と反対側に設けられた第1の有機層および第2の有機層を含む構造物。
ここで、第1の無機層および第2の無機層は、第1の分離溝において直接または第3の無機層を介して接している第1の封止部と、構造物から見て前記第1の分離溝と反対側において直接または第3の無機層もしくは第4の無機層を介して接している第2の封止部と を含んでいる。
【0011】
本開示の電子機器は、上記本開示の表示装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の表示装置および電子機器によれば、簡素な構造でありながら周辺領域から表示領域への水分浸入を効果的に防止することができる。よって、水分による発光素子の劣化を抑え、高い信頼性を実現すると共に狭額縁化をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【
図2】
図1に示した画素駆動回路の一例を表す図である。
【
図3】
図1に示した表示領域の構成を表す平面図である。
【
図4】
図1に示した表示領域の構成を表す断面図である。
【
図5】
図1に示した表示領域の構成を表す他の断面図である。
【
図6】
図4および
図5に示した有機層を拡大して表す断面図である。
【
図7】第1の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図8】第2の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図9A】第3の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図9B】第4の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図9C】第5の変形例としての表示装置の要部構成を表す拡大断面図である。
【
図10】第6の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図11】上記実施の形態等の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【
図12】表示装置の第1の適用例としてのテレビジョン装置の外観を表す斜視図である。
【
図13A】表示装置の第2の適用例としてのデジタルカメラにおける外観を表す第1の斜視図である。
【
図13B】表示装置の第2の適用例としてのデジタルカメラにおける外観を表す第2の斜視図である。
【
図14】表示装置の第3の適用例としてのノート型パーソナルコンピュータの外観を表す斜視図である。
【
図15】表示装置の第4の適用例としてのビデオカメラの外観を表す斜視図である 。
【
図16A】表示装置の第5の適用例としての携帯電話機における、閉じた状態の外観を表す正面図、左側面図、右側面図、上面図、下面図である。
【
図16B】表示装置の第5の適用例としての携帯電話機における、開いた状態の正面図および側面図である。
【
図17A】表示装置を用いた第6の適用例としてのタブレット型PCにおける外観を表す第1の斜視図である。
【
図17B】表示装置を用いた第6の適用例としてのタブレット型PCにおける外観を表す第2の斜視図である。
【
図18】第7の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図19A】第8の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図19B】第9の変形例としての表示装置の要部構成を表す拡大断面図である。
【
図20】第10の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図21A】第11の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図21B】第12の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図22A】第13の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図22B】第13の変形例としての表示装置の要部構成を表す他の断面図である。
【
図23】
図22A,22Bに示した表示装置の製造方法を説明するための斜視図である。
【
図24A】第14の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図24B】第14の変形例としての表示装置の要部構成を表す他の断面図である。
【
図25】第15の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【
図26】
図25に示した表示装置の製造方法を説明するための斜視図である。
【
図27】第16の変形例としての表示装置の要部構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態および適用例について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(
図1~
図10):表示装置
2.表示装置の適用例(
図11~17):電子機器
【0015】
<実施の形態>
[有機EL表示装置の全体構成例]
図1は、本開示の一実施の形態に係る有機EL表示装置1(以下、単に表示装置1という。)の全体構成例を表すものである。表示装置1は、有機ELテレビジョン装置などとして用いられるものであり、基板111の上に表示領域110Aが設けられている。この表示領域110A内には、複数のサブ画素10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されている。サブ画素10Rは赤色を表示し、サブ画素10Gは緑色を表示し、サブ画素10Bは青色を表示する。ここでは、同色を表示するサブ画素をY方向に一列に並べ、それをX方向に順に繰り返し配置するようにしている。したがって、X方向に並ぶ3つのサブ画素の組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。また、表示領域110Aの周辺(外縁側,外周側)に位置する周辺領域110Bには、映像表示用のドライバ(後述する周辺回路12B)である信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が設けられている。
【0016】
信号線駆動回路120は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧を、信号線120Aを介して選択された画素に供給するものである。
【0017】
走査線駆動回路130は、入力されるクロックパルスに同期してスタートパルスを順にシフト(転送)するシフトレジスタなどによって構成されている。走査線駆動回路130は、各画素への映像信号の書き込みに際し行単位でそれらを走査し、各走査線130Aに走査信号を順次供給するものである。
【0018】
表示領域110A内には、画素駆動回路140が設けられている。
図2は、この画素駆動回路140の一例(サブ画素10R,10G,10Bの画素回路の一例)を表したものである。画素駆動回路140は、後述する第1電極層13の下層(後述の画素駆動回路形成層112)に形成されたアクティブ型の駆動回路である。この画素駆動回路140は、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2と、それらの間のキャパシタ(保持容量)Csとを有している。画素駆動回路140はまた、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において、駆動トランジスタTr1に直列に接続された白色有機EL素子10W(以下、単にEL素子10Wという。)を有している。すなわち、サブ画素10R,10G,10Bにはそれぞれ、このEL素子10Wが設けられている。駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)により構成され、その構成は例えば逆スタガ構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガ構造(トップゲート型)でもよく、特に限定されない。
【0019】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、サブ画素10R,10G,10Bのいずれか1つに対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120と接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書込トランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130と接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書込トランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0020】
[表示装置の平面構成例]
図3に、XY平面に広がる表示領域110Aの一構成例を表す。ここでは、第2電極層16、充填層18および封止基板19(いずれも後出)を取り去った状態の表示領域110Aと、それを取り囲む周辺領域110Bとを、上方から眺めた平面構成を模式的に表す。
図3に示したように、表示領域110Aには、複数のEL素子10WがX方向およびY方向に並び、全体としてマトリックス状に配列されている。より詳細には、開口規定絶縁膜24によって相互に分離され、輪郭が規定された発光部20を各々含むEL素子10Wが、サブ画素10R,10G,10Bに対応して1つずつ配置されている。
【0021】
図3において、発光部20を取り囲む破線で示した矩形は有機層14が形成された領域を表す。さらに、有機層14が形成された領域を取り囲む破線で示した矩形は、第1電極層13が形成された領域を表す。第1電極層13の一部には、例えば駆動トランジスタTr1のソース電極との導通を図るコンタクト部124が設けられている。なお、X方向およびY方向に並ぶサブ画素の数は任意に設定されるものであり、
図3に示した数に限定されるものではない。また、例えば黄色および白色を表示するサブ画素をさらに設け、1つの画素が4以上のEL素子10Wを含むようにしてもよい。
【0022】
[表示装置1の断面構成]
図4は、表示領域110Aと周辺領域110Bとの境界近傍における、
図3に示したIV-IV線に沿ったXZ断面の概略構成を示すものである。また
図5は、
図3に示した表示領域110Aの、V-V線に沿った断面図である。さらに
図6は、
図4および
図5に示した有機層14の断面の一部を拡大して表したものである。
【0023】
本実施の形態の表示装置1は、前述したEL素子10Wと後述するカラーフィルタとを用いることによってR(赤),G(緑),B(青)のいずれかの色光が上面(基板111と対向する封止基板19)から出射される、上面発光型(いわゆるトップエミッション型)の表示装置である。
図4に示したように、表示領域110Aでは、基板111に画素駆動回路形成層112が設けられてなる基体11の上に、EL素子10Wを含む発光素子形成層12が形成されている。EL素子10Wの上には、防湿膜17、充填層18および封止基板19がこの順に設けられている。表示領域110Aと周辺領域110Bとは、封止基板19の、基板111と対向する対向面19Sにおける周縁部に沿って設けられたシール部23によって仕切られている。EL素子10Wは、画素駆動回路形成層112の最上層である平坦化膜218の上に、アノード電極としての第1電極層13、発光層14C(後出)を含む有機層14、およびカソード電極としての第2電極層16が各々順に積層されたものである。有機層14および第1電極層13は、開口規定絶縁膜24によってEL素子10Wごとに分離されている。なお、平坦化膜218および開口規定絶縁膜24は、いずれも、例えばポリイミド、アクリルまたはシロキサン等のパターン精度が良い有機材料により構成されている。一方、第2電極層16は、全てのEL素子10Wに共通して設けられている。なお、
図4では、画素駆動回路形成層112における駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2などの詳細な構成については図示を省略した。
【0024】
基体11は、基板111に、画素駆動回路140を含む画素駆動回路形成層112が設けられたものである。基板111はEL素子10Wが配列形成される支持体であって、例えば、石英、ガラス、金属箔、もしくは樹脂製のフィルムやシートなどが用いられる。この中でも石英やガラスが好ましく、樹脂製の場合には、その材質としてポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表されるメタクリル樹脂類、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類、もしくはポリカーボネート樹脂などが挙げられるが、透水性や透ガス性を抑える積層構造、表面処理を行うことが必要である。基板111の表面には、第1階層の金属層として、駆動トランジスタTr1のゲート電極である金属層211Gと、書込トランジスタTr2のゲート電極である金属層221G(
図5)と、信号線120A(
図5)とがそれぞれ設けられている。これら金属層211G,221Gおよび信号線120Aは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などからなるゲート絶縁膜212によって覆われている。
【0025】
ゲート絶縁膜212上の、金属層211G,221Gに対応する領域には、アモルファスシリコンなどの半導体薄膜からなるチャネル層213,223が設けられている。チャネル層213,223上には、その中心領域であるチャネル領域213R,223Rを占めるように絶縁性のチャネル保護膜214,224が設けられており、その両側の領域には、n型アモルファスシリコンなどのn型半導体薄膜からなるドレイン電極215D,225Dおよびソース電極215S,225Sが設けられている。これらドレイン電極215D,225Dおよびソース電極215S,225Sは、チャネル保護膜214,224によって互いに分離されており、それらの端面がチャネル領域213R,223Rを挟んで互いに離間している。さらに、ドレイン電極215D,225Dおよびソース電極215S,225Sをそれぞれ覆うように、第2階層の金属層として、ドレイン配線としての金属層216D,226Dおよびソース配線としての金属層216S,226Sが設けられている。金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sは、例えばチタン(Ti)層、アルミニウム(Al)層、およびチタン層を順に積層した構造を有するものである。第2階層の金属層としては、上記の金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sのほか、走査線130A(図示せず)が設けられている。金属層216Sは、周辺領域110BにおいてFPCなどの外部との接続配線31と接続されている(
図4)。
【0026】
画素駆動回路140は、例えば酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxOy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(AlxOy)などの、水分透過性が低い無機材料からなる保護膜(パッシベーション膜)217によって全体的に覆われており、その上には、絶縁性を有する平坦化膜218が設けられている。平坦化膜218は、その表面が極めて高い平坦性を有するものであることが望まれる。また、平坦化膜218および保護膜217の一部領域には、微細なコンタクト部124が設けられている(
図4)。コンタクト部124には第1電極層13が充填されており、駆動トランジスタTr1のソース電極を構成する金属層216Sとの導通がなされている。
【0027】
平坦化膜218の上に形成された下部電極である第1電極層13は反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有する材料によって構成することが発光効率を高める上で望ましい。そのため、第1電極層13は、例えばアルミニウム(Al)やアルミニウムネオジウム合金(AlNd)などの高反射率材料によって構成される。第1電極層13は、例えば、積層方向の厚み(以下、単に厚みと言う)が10nm以上1000nm以下のものである。第1電極層13の構成材料としては、上記材料に限られず、クロム(Cr),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W)あるいは銀(Ag)などの金属元素の単体または合金でもよい。また、これらの金属元素の単体または合金よりなる金属膜と、インジウムとスズの酸化物(ITO)、InZnO(インジウム亜鉛オキシド)、酸化亜鉛(ZnO)とアルミニウム(Al)との化合物などの透明導電膜との積層構造を有していてもよい。
【0028】
開口規定絶縁膜24は、隣り合うEL素子10Wにおける第1電極層13および有機層14同士の隙間、すなわち、発光部20同士の隙間を埋めるように設けられている。また、開口規定絶縁膜24は隔壁とも呼ばれ、第1電極層13と、第2電極層16との絶縁性を確保すると共に、EL素子10Wの発光部20の輪郭を正確に画定するものでもある。すなわち、開口規定絶縁膜24によって発光領域が規定される。開口規定絶縁膜24は、さらに、後述する製造工程においてインクジェットまたはノズルコート方式による塗布を行う際の隔壁としての機能も有している。なお、有機層14ないし第2電極層16は、開口だけでなく開口規定絶縁膜24の上にも設けられていてもよいが、発光が生じるのは開口規定絶縁膜24の開口に相当する発光部20のみである。
【0029】
有機層14は、開口規定絶縁膜24によって画定された発光部20に全面に亘って隙間無く形成されている。有機層14は、例えば
図6に示したように、第1電極層13の側から正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dが順に積層された構成を有する。但し、発光層14C以外の層は、必要に応じて設ければよい。
【0030】
正孔注入層14Aは、発光層14Cへの正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔注入層14Aの厚みは例えば5nm~100nmであることが好ましく、より好ましくは8nm~50nmである。正孔注入層14Aの構成材料は、電極や隣接する層の材料との関係で適宜選択すればよく、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、ポリキノキサリンおよびそれらの誘導体、芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体などの導電性高分子、金属フタロシアニン(銅フタロシアニン等)、カーボンなどが挙げられる。正孔注入層14Aに用いられる材料が高分子材料である場合には、その高分子材料の重量平均分子量(Mw)は1万~30万の範囲であればよく、特に5000~20万程度が好ましい。また、2000~1万程度のオリゴマーを用いてもよいが、Mwが5000未満では正孔輸送層以後の層を形成する際に、正孔注入層が溶解してしまうおそれがある。また30万を超えると材料がゲル化し、成膜が困難になるおそれがある。正孔注入層14Aの構成材料として使用される典型的な導電性高分子としては、例えばポリアニリン、オリゴアニリンおよびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。この他、エイチ・シー・スタルク製Nafion(商標)で市販されているポリマー、または商品名Liquion(商標)で溶解形態で市販されているポリマーや、日産化学製エルソース(商標)や、綜研化学製導電性ポリマーベラゾール(商標)などがある。
【0031】
正孔輸送層14Bは、発光層14Cへの正孔輸送効率を高めるためのものである。正孔輸送層14Bの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm~200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm~150nmである。正孔輸送層14Bを構成する高分子材料としては、有機溶媒に可溶な発光材料、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレン、ポリアニリン、ポリシランまたはそれらの誘導体、側鎖または主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリピロールなどを用いることができる。正孔輸送層14Bに用いられる材料が高分子材料である場合には、その重量平均分子量(Mw)は5万~30万であることが好ましく、特に、10万~20万であることが好ましい。Mwが5万未満では、発光層14Cを形成するときに、高分子材料中の低分子成分が脱落し、正孔注入層14A,正孔輸送層14Bにドットが生じるため、有機EL素子の初期性能が低下したり、素子の劣化を引き起こしたりするおそれがある。一方、30万を越えると、材料がゲル化するため、成膜が困難になるおそれがある。なお、重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒として、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;Gel Permeation Chromatography)により、ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた値である。
【0032】
発光層14Cは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。発光層14Cの厚みは、素子の全体構成にもよるが、例えば10nm~200nmであることが好ましく、さらに好ましくは15nm~150nmである。発光層14Cは高分子(発光)材料に低分子材料が添加された混合材料により構成されている。ここで低分子材料とは、モノマーまたはこのモノマーを2~10個結合したオリゴマーとし、5万以下の重量平均分子量を有するものが好ましい。なお、重量平均分子量が上記範囲を超えた低分子材料を必ずしも除外するものではない。発光層14Cは、例えばインクジェット等の塗付法により形成してもよい。その際、高分子材料および低分子材料を例えばトルエン、キシレン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、ブサイドクメン(1,2,4-トリメチルベンゼン)、ジハイドロベンゾフラン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、1-メチルナフタレン、p-アニシルアルコール、ジメチルナフタレン、3-メチルビフェニル、4-メチルビフェニル、3-イソプロピルビフェニル、モノイソプロピルナフタレンなどの有機溶媒に少なくとも1種類以上使って溶解し、この混合溶液を用いて形成する。発光層14Cを構成する高分子材料としては、例えばポリフルオレン系高分子誘導体や、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープしたものが挙げられる。ドープ材料としては、例えばルブレン、ペリレン、9,10ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6等を用いることができる。
【0033】
また、発光層14Cを構成する高分子材料に低分子材料を添加することが好ましい。発光層14Cに添加する低分子材料は、低分子化合物が同じ反応または類似の反応を連鎖的に繰り返すことにより生じた高分子量の重合体または縮合体の分子からなる化合物以外のものであって、分子量が実質的に単一であるものを指す。また加熱による分子間の新たな化学結合は生じず、単分子で存在する。このような低分子材料の重量平均分子量(Mw)は5万以下であることが好ましい。これは分子量の大きい、例えば5万以上の材料に比べてある程度小さい分子量の材料のほうが多様な特性を有し、正孔または電子の移動度やバンドギャップあるいは溶媒への溶解度などを調整しやすいためである。また、低分子材料の添加量は、発光層14Cに用いられる高分子材料:低分子材料の混合比率が、その重量比で10:1以上1:2以下になるようにすることが好ましい。高分子材料:低分子材料の混合比率が10:1未満では、低分子材料の添加による効果が低くなるためである。また、この混合比率が1:2を超える場合には、発光材料としての高分子材料が有する特性が得られにくくなるためである。このような低分子材料としては、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキサゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマーあるいはオリゴマーを用いることができる。さらに具体的な材料としては、α-ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(F4-TCNQ)、テトラシアノ4、4、4-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’-テトラキス(p-トリル)p-フェニレンジアミン、N、N、N’、N’-テトラフェニル-4、4’-ジアミノビフェニル、N-フェニルカルバゾール、4-ジ-p-トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’-チエニルピロール)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、発光層14Cに添加する低分子材料は1種類だけでなく、複数種類を混合して用いてもよい。
【0034】
発光層14Cを構成する発光性ゲスト材料としては、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光材料、りん光色素あるいは金属錯体等の有機発光材料が用いられる。ここで青色の発光性ゲスト材料とは、発光の波長範囲が約400nm~490nmの範囲にピークを有する化合物を示す。このよう化合物として、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体などの有機物質が用いられる。なかでも、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体、ビス(アジニル)メテンホウ素錯体から選択されることが好ましい。
【0035】
電子輸送層14Dは、発光層14Cへの電子輸送効率を高めるためのものである。電子輸送層14Dの材料としては、例えば、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、フラーレン、オキサジアゾール、フルオレノン、またはこれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。具体的には、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(略称Alq3 )、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、アントラセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、C60、アクリジン、スチルベン、1,10-フェナントロリンまたはそれらの誘導体や金属錯体が挙げられる。
【0036】
電子輸送層14Dと第2電極層16との間には、LiF,Li2Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。この電子注入層は、電子注入効率を高めるためのものであり、電子輸送層14Dの全面に設けられている。このような電子注入層の材料としては、例えばリチウム(Li)の酸化物である酸化リチウム(Li2O)や、セシウム(Cs)の複合酸化物である炭酸セシウム(Cs2CO3 )、さらにはこれらの酸化物及び複合酸化物の混合物を用いることができる。また、電子注入層は、このような材料に限定されることはなく、例えば、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属、リチウム、セシウム等のアルカリ金属、さらにはインジウム(In)、マグネシウム(Mg)等の仕事関数の小さい金属、さらにはこれらの金属の酸化物及び複合酸化物、フッ化物等を、単体でまたはこれらの金属および酸化物及び複合酸化物、フッ化の混合物や合金として安定性を高めて使用してもよい。
【0037】
なお、有機層14は、発光層14Cと接するように、他の正孔輸送層をさらに有していてもよい。この他の正孔輸送層は蒸着法を用いて形成するため、低分子材料、特にモノマーを用いることが好ましい。オリゴマーまたは高分子材料のような重合された分子は蒸着中分解が起こるおそれがあるためである。なお、他の正孔輸送層に用いる低分子材料は分子量の異なる2種以上の材料を混合して用いてもよい。他の正孔輸送層に用いられる低分子材料としては、発光層14Cにおいて説明した低分子材料と同様に、例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルアミン、ポルフィリン、トリフェニレン、アザトリフェニレン、テトラシアノキノジメタン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポリアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキサゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベンあるいはこれらの誘導体、または、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物あるいはアニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマーまたはポリマーを用いることができる。さらに具体的な材料としては、α-ナフチルフェニルフェニレンジアミン、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、ヘキサシアノアザトリフェニレン、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(F4-TCNQ)、テトラシアノ4、4、4-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、N、N、N’、N’-テトラキス(p-トリル)p-フェニレンジアミン、N、N、N’、N’-テトラフェニル-4、4’-ジアミノビフェニル、N-フェニルカルバゾール、4-ジ-p-トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2、2’-チエニルピロール)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
第2電極層16は、2以上もしくは全てのEL素子10Wに共通に設けられた共通電極であり、各EL素子10Wにおける第1電極層13と対向配置されている。第2電極層16は、有機層14のみならず、開口規定絶縁膜24をも覆うように形成されており、例えば、2nm以上15nm以下の厚さを有する。第2電極層16は、発光層で発生した光に対して透光性を有する導電性材料により構成された透明電極である。したがって、その構成材料としては、例えば、ITO、インジウムと亜鉛(Zn)と酸素とを含む化合物(例えばIZO)、ZnO(酸化亜鉛)などが好ましい。また、第2電極層16は、例えば、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成された半透過性反射膜であってもよい。例えばマグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好適である。中でも、Mg-Ag合金の場合、膜厚比でMg:Ag=20:1~1:1の範囲であることが望ましい。また、第2電極層16は、アルミキノリン錯体、スチリルアミン誘導体、フタロシアニン誘導体等の有機発光材料を含有した混合層でもよい。この場合には、さらに第3層としてMgAgのような光透過性を有する層を別途有していてもよい。
【0039】
EL素子10Wを覆う防湿膜17は、例えば酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸化窒化シリコン(SiNxOy)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(AlxOy)などの、吸湿性が低い無機材料からなる。あるいはアルミニウムなどの金属材料を用いてもよい。防湿膜17を設けることにより、EL素子10Wが外気と遮断され、外部環境からEL素子10W内部への水分浸入が防止される。防湿膜17は、第2電極層16だけでなく、開口規定絶縁膜24および平坦化膜218(後出)をも覆うようにほぼ一様に形成されている。すなわち、防湿膜17は、表示領域110Aから周辺領域110Bに至るまで連続的にEL素子10W、開口規定絶縁膜24および平坦化膜218を覆っている。但し、防湿膜17は、周辺領域110Bにおいて少なくとも開口規定絶縁膜24および平坦化膜218を覆っていればよい。上述したように、開口規定絶縁膜24および平坦化膜218は、いずれも吸湿性の高い有機材料により構成されているので、これらを通じてEL素子10Wの内部へ水分が浸入するのを防ぐ必要があるからである。なお、開口規定絶縁膜24が周辺領域110Bに存在しない場合、防湿膜17は平坦化膜218を覆っていればよい。また、防湿膜17は、単層構造であってもよいが、厚さを大きくする場合には多層構造としてもよい。防湿膜17における内部応力を緩和するためである。
【0040】
充填層18は、防湿膜17の上にほぼ一様に形成された透明な樹脂層であり、接着層としても機能するものである。この充填層18は、例えばエポキシ樹脂またはアクリル樹脂などからなり、好ましくは、充填層18は熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などからなる。充填層18は、基体11と封止基板19との間に封止されている。
【0041】
シール部23は、封止基板19端縁部に設けられ、表示領域110Aを取り囲むように環状をなしている。シール部23は、基板111と封止基板19との間の各層を外部から封止するための部材である。このようなシール部23もまた、例えばエポキシ樹脂またはアクリル樹脂などの非導電性材料からなる。但し、導電性の接着材料により形成してもよい。その場合、シール部23は、充填層18の流出を防ぐと共に第2電極層16の電圧降下を低減する補助配線としての機能を果たすことができる。
【0042】
封止基板19は、充填層18およびシール部23とともに、EL素子10Wを封止するものである。封止基板19は、サブ画素10R,サブ画素10G,サブ画素10Bから出射される各色光に対して高い透過性を有する透明ガラスなどの材料により構成されている。この封止基板19における基板111側の面上には、例えば、赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタからなるカラーフィルタ(図示せず)と、BM層(遮光膜)とが設けられている。これにより、サブ画素10R,サブ画素10G,サブ画素10B内の各EL素子10Wから発せられた白色光が、上記した各色のカラーフィルタを透過することによって、赤色光,緑色光,青色光がそれぞれ出射されるようになっている。また、サブ画素10R,サブ画素10G,サブ画素10B内ならびにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。また、表示領域110Aと周辺領域110Bとの間の領域における対向面19Sには、バーニア32およびブラックマトリクス33が設けられていてもよい。バーニア32は封止基板19を貼り合わせる際の位置決めに使用するものである。また、ブラックマトリクス33は、不要光を遮光するものである。赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ,緑色フィルタおよび青色フィルタは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。さらに、カラーフィルタにおける透過率の高い波長範囲と、共振器構造から取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとは一致している。これにより、封止基板19から入射する外光のうち、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λに等しい波長を有するもののみがカラーフィルタを透過し、その他の波長の外光がEL素子10Wに侵入することが防止される。
【0043】
遮光膜は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr2O3)とを交互に積層したものが挙げられる。
【0044】
この表示装置1は、例えば次のようにして製造することができる。以下、
図4~
図6などを参照して、本実施の形態の表示装置の製造方法について説明する。
【0045】
まず、上述した材料よりなる基板111の上に、駆動トランジスタTr1および書込トランジスタTr2を含む画素駆動回路140を形成する。具体的には、まず、基板111上に例えばスパッタリングにより金属膜を形成する。そののち、例えばフォトリソグラフィ法やドライエッチング、あるいはウェットエッチングによりその金属膜をパターニングすることで、基板111上に金属層211G,221Gと、信号線120Aの一部とを形成する。次いで、全面をゲート絶縁膜212によって覆う。さらに、ゲート絶縁膜212の上に、チャネル層、チャネル保護膜、ドレイン電極およびソース電極、ならびに、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sを順に、所定形状に形成する。ここで、金属層216D,226Dおよび金属層216S,226Sの形成と併せて、信号線120Aの一部、走査線130Aを第2の金属層として各々形成する。その際、金属層221Gと走査線130Aとを接続する接続部、金属層226Dと信号線120Aとを接続する接続部、金属層226Sと金属層211Gとを接続する接続部を予め形成しておく。そののち、全体を保護膜217で覆うことにより、画素駆動回路140を完成させる。その際、保護膜217における金属層216S上の所定位置に、ドライエッチングなどにより開口を形成しておく。
【0046】
画素駆動回路140を形成したのち、スピンコート法などにより、例えばポリイミドを主成分とする感光性樹脂を全面に亘って塗布する。次に、その感光性樹脂に対しフォトリソグラフィ処理を施すことにより、コンタクト部124を有する平坦化膜218を形成する。具体的には、例えば所定位置に開口を有するマスクを用いた選択的な露光および現像により、保護膜217に設けられた開口と連通するコンタクト部124を形成する。そののち、平坦化膜218を必要に応じて焼成してもよい。これにより画素駆動回路形成層112を得る。
【0047】
さらに、上述した所定の材料よりなる第1電極層13を形成する。具体的には、例えばスパッタリングによって上述の材料からなる金属膜を全面成膜したのち、その積層膜上に所定のマスクを用いて所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成する。さらにそのレジストパターンをマスクとして用い、金属膜の選択的なエッチングを行う。その際、第1電極層13については、平坦化膜218の表面を覆うと共にコンタクト部124を充填するように形成する。
【0048】
こののち、隣り合う第1電極層13同士の隙間を充填するように開口規定絶縁膜24を形成する。具体的には、例えば第1電極層13上および平坦化膜218上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition;化学気相成長)法により、SiO2等の無機絶縁材料を成膜し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングすることにより、下部開口規定絶縁膜を形成する。下部開口規定絶縁膜の所定位置、詳しくは画素の発光領域を囲む位置に、上述した感光性樹脂よりなる上部開口規定絶縁膜を形成する。これにより、上部開口規定絶縁膜および下部開口規定絶縁膜よりなる開口規定絶縁膜24が形成される。
【0049】
開口規定絶縁膜24を形成したのち、基体11における第1電極層13および開口規定絶縁膜24を形成した側の表面を酸素プラズマ処理し、その表面に付着した有機物等の汚染物を除去して濡れ性を向上させる。具体的には、基体11を所定温度、例えば70~80℃程度に加熱し、続いて大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。
【0050】
プラズマ処理を行ったのち、撥水化処理(撥液化処理)を行うことにより、特に上部開口規定絶縁膜の上面及び側面の濡れ性を低下させる。具体的には、大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基体11を室温まで冷却することで、上部開口規定絶縁膜の上面及び側面を撥液化し、その濡れ性を低下させる。なお、このCF4プラズマ処理においては、第1電極層13の露出面および下部開口規定絶縁膜についても多少の影響を受けるが、第1電極層13の材料であるITOおよび下部開口規定絶縁膜の構成材料であるSiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、酸素プラズマ処理で濡れ性が向上した面は濡れ性がそのままに保持される。
【0051】
次いで、第1電極層13のうち、上部開口規定絶縁膜に囲まれた領域内の露出している部分を完全に覆うように上述した所定の材料および厚みの正孔注入層14A、正孔輸送層14B、発光層14C、電子輸送層14Dを、例えば蒸着法によって順に積層することで有機層14を形成する。さらに、有機層14を挟んで第1電極層13と対向するように全面に亘って第2電極層16を形成する。そののち、第2電極層16を所定形状にパターニングすることでEL素子10Wを得る。
【0052】
正孔注入層14Aは、蒸着により形成するのみならず、スピンコート法や液滴吐出法などの塗布法により形成してもよい。その場合、特に、上部開口規定絶縁膜に囲まれた領域に正孔注入層14Aの形成材料を選択的に配する必要上、液滴吐出法であるインクジェット方式や、ノズルコート方式を用いることが好ましい。
【0053】
こののち、全体を覆うように、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法やCVD法により、上述した材料よりなる防湿膜17を形成する。例えば、アモルファス窒化シリコンからなる防湿膜17を形成する場合には、CVD法によって2~3μmの膜厚に形成する。この際、有機層14の劣化による輝度の低下を防止するため、成膜温度を常温に設定すると共に、防湿膜17の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。また、電子輸送層14D,電子注入層14E,第2電極層16および防湿膜17の形成は、望ましくは、大気に暴露されることなく同一の成膜装置内において連続して行われる。これにより大気中の水分による有機層14の劣化が防止される。
【0054】
最後に、防湿膜17の上に充填層18を設け、シール部23を介して封止基板19を貼り合わせる。以上により、表示装置1が完成する。
【0055】
[表示装置1の作用・効果]
この表示装置1では、各画素に対して走査線駆動回路130から書込トランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書込トランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、EL素子10Wに駆動電流Idが注入され、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、表示装置1が上面発光型(トップエミッション型)であることから、第2電極層16、防湿膜17、充填層18、各色のカラーフィルタ(図示せず)および封止基板19を透過して取り出される。このようにして、表示装置1において映像表示(カラー映像表示)がなされる。
【0056】
ところで、従来の有機EL表示装置では、吸湿によって有機層の劣化が生じ、EL素子における発光輝度が低下し、あるいは発光が不安定になるなど、経時的な安定性を欠き、寿命が短いといった問題が指摘されていた。
【0057】
これに対し、本実施の形態では、防湿膜17によって周辺領域110Bにおける平坦化膜218を覆うようにした。このため、EL素子10Wの下地となる平坦化膜218が、水分を含む外気から十分に遮蔽される。その結果、簡素な構造でありながら周辺領域110Bから表示領域110Aへの水分浸入を効果的に防止することができる。よって、水による発光素子の劣化を抑え、高い動作信頼性を実現できる。さらに、例えば特許文献2,3に提案されている構造のように、表示領域と周辺領域との間の距離を広くする必要もないことから、狭額縁化をも図ることができる。
【0058】
<変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1~6)について説明する。なお、上記実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0059】
[変形例1]
図7は、変形例1としての表示装置1Aの断面構成を表す。本変形例は、保護膜217と平坦化膜218との間に防湿膜25を、平坦化膜218と開口規定絶縁膜24との間に防湿膜26をそれぞれ設けるようにしたものであり、他は上記実施の形態と同様の構成を有する。防湿膜25,26は、いずれも防湿膜17と同様に吸湿性が低い無機材料からなり、平坦化膜218の端縁もしくは開口規定絶縁膜24の端縁から表示領域110Aへ向かうように延在している。防湿膜17に加え、防湿膜25,26を設けることにより、外部環境からEL素子10W内部への水分浸入が確実に防止される。保護膜217と平坦化膜218との境界部分、もしくは平坦化膜218と開口規定絶縁膜24との境界部分を伝播してEL素子10Wへ至る水分を確実に遮断できるからである。
【0060】
[変形例2~5]
図8,
図9A,
図9Bは、それぞれ、変形例2~5としての有機EL表示装置(以下、単に表示装置)1B,1C1,1C2の断面構成を表す。また、
図9Cは、変形例5としての表示装置1C3の要部を拡大した断面構成を表す。本変形例2~5は、いずれもシール部23と対応する領域に分離溝27を設けるようにしたものであり、他は上記実施の形態と同様の構成を有する。分離溝27は、シール部23と同様に、XY平面において環状をなすように表示領域110Aを取り囲むように延在している。分離溝27は、表示領域110Aに設けられた開口規定絶縁膜24および平坦化膜218と、周辺領域110Bに設けられた開口規定絶縁膜24および平坦化膜218とを分離するものであり、その底部は保護膜217に到達している。分離溝27においては、防湿膜17(表示装置1C3では防湿膜29)が充填されている。特に表示装置1B(変形例2)では、分離溝27の内壁面を防湿膜17が直接覆っている。また、表示装置1C1,1C2,1C3(変形例3~5)では、分離溝27における内壁面および底面を覆うように金属層28がさらに設けられている。なお、この金属層28は、
図9Bに示した表示装置1C2のように、例えば第2電極層16と同種の材料からなり、第2電極層16と一体化されたものであってもよい。あるいは、
図9A,9Cにそれぞれ示した表示装置1C1,1C3のように、金属層28を第2電極層16と別体として形成する場合、第2電極層16と異なる材料を選択してもよい。また、表示装置1C3のように、表示領域110Aにおける開口規定絶縁膜24および第2電極層16を覆う防湿膜17とは別体として、分離溝27の内部を充填し、かつ周辺領域110Bにおける保護膜217および平坦化膜218を覆う3層構造の防湿膜29を設けるようにしてもよい。防湿膜29は、保護膜217および平坦化膜218の上に、第1~第3の層291~293が順に積層されたものである。第1および第3の層291,293は、例えば窒化シリコン(SiNx)などからなる窒化膜であり、第2の層292は、例えば酸化シリコン(SiOx)などの酸化物膜である。また、表示装置1B,1C1,1C2,1C3では、分離溝27を複数設けるようにしてもよい。
【0061】
表示装置1B,1C1,1C2では、防湿膜17に加え、分離溝27を設けるようにしたので、外部環境からEL素子10W内部への水分浸入がより確実に防止される。水分の伝播経路となる保護膜217および平坦化膜218が、表示領域110Aと周辺領域110Bとで分断されているためである。
【0062】
[変形例6]
図10は、変形例6としての表示装置1Dの断面構成を表す。本変形例の表示装置1Dは、防湿膜17の替わりに防湿膜34を有する点を除き、他は上記実施の形態と同様の構成である。防湿膜34は、基板111の端面から封止基板19の端面に亘って連続して設けられ、それら基板111と封止基板19とによって挟まれたEL素子10Wを含む領域を封止するものである。防湿膜34は、例えば防湿膜17と同様の無機材料からなる。
【0063】
表示装置1Dでは、防湿膜34を設けるようにしたので、外部環境からEL素子10W内部への水分浸入が確実に防止される。周辺領域110Bにおける平坦化膜218および開口規定絶縁膜24が防湿膜34によって覆われ、水分を含む外気から十分に遮蔽されるからである。さらに、防湿膜34を導電性の無機材料によって形成した場合、それを信号線として利用することもできる。このような導電性材料としては、例えば白金(Pt),金(Au),銀(Ag),クロム(Cr),タングステン(W),ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe),コバルト(Co),タンタル(Ta),アルミニウム(Al),ネオジム(Nd)あるいはモリブデン(Mo)などの金属元素の単体または合金から構成されている。例えば、このような合金として、銀を主成分とし、0.3重量%~1重量%のパラジウム(Pd)および0.3重量%~1重量%の銅を含有するAg-Pd-Cu合金や、Al-Nd合金を用いることができる。その際、外部との接続を行うFPCなどの接続配線31の一端を防湿膜34に埋め込むようにしてもよい。なお、防湿膜34を、シール部23と共通化してもよい。
【0064】
<適用例>
以下、上記実施の形態および変形例で説明した表示装置(表示装置1,1A~1D)の適用例について説明する。上記実施の形態等の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなどのあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。すなわち、上記実施の形態等の表示装置は、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0065】
(モジュール)
上記実施の形態等の表示装置は、例えば、
図11に示したようなモジュールとして、後述する第1~第6の適用例1~6などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板111の一辺に、封止基板19等から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0066】
(適用例1)
図12は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0067】
(適用例2)
図13A,13Bは、上記実施の形態等の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0068】
(適用例3)
図14は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0069】
(適用例4)
図15は、上記実施の形態等の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0070】
(適用例5)
図16A,16Bは、上記実施の形態等の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態等に係る表示装置により構成されている。
【0071】
(適用例6)
図17A,17Bは、いわゆるタブレット型パーソナルコンピュータ(PC)の外観構成を表している。このタブレット型PCは、例えば、表示部810と、それを保持する筐体などの非表示部820と、電源スイッチなどの操作部830とを備えている。なお、操作部830は、
図17Aに示したように非表示部820の前面に設けられていてもよいし、
図17Bに示したように上面に設けられていてもよい。表示部810は、映像表示機能のほか、位置入力機能(ポインティング機能)を備えたタッチスクリーン(タッチパネル)である。
【0072】
<その他の変形例>
以上、実施の形態およびいくつかの変形例を挙げて本技術を説明したが、本技術は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、周辺領域110Bにおける平坦化膜218などを防湿膜17,29によって覆うことで、EL素子10W内部への水分浸入を防止するようにした本開示はこれに限定されるものではない。例えば
図18に示した表示装置1Eのように、防湿膜17の替わりにシール部23と対応する領域に分離溝27を設けると共に、シール部23を金属材料によって形成し、シール部23の一部が分離溝27を充填するようにしてもよい(第7の変形例)。シール部23に適用される金属材料としては、例えば白金(Pt),金(Au),銀(Ag),クロム(Cr),タングステン(W),ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe),コバルト(Co),タンタル(Ta),アルミニウム(Al),ネオジム(Nd)あるいはモリブデン(Mo)などの 金属元素の単体または合金が挙げられる。より具体的には、銀を主成分とし、0.3重量%~1重量%の パラジウム(Pd)および0.3重量%~1重量%の銅を含有するAg-Pd-Cu合金や、 Al-Nd合金を用いることができる。 または、ジュメット線(鉄ニッケル合金線を心材とした銅線(銅被覆鉄ニッケル合金線))をシール部23に適用してもよい。
【0073】
表示装置1Eでは、金属材料からなるシール部23の一部によって充填された分離溝27を設けるようにしたので、外部環境からEL素子10W内部への水分浸入がより確実に防止される。さらに、シール部23を配線として利用することもできる。シール部23は、例えば、マスクを用い、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法あるいはメッキ法等を用いて形成することができる。 また、ジュメット線を用いる場合には、ジュメット線をバーナーなどにより加熱して所定位置に溶着することでシール部23を形成すればよい。なお、シール部23を形成する際、外部との接続を行うFPCなどの引出線(図示せず)の一端をシール部23に埋め込むようにしてもよい。
【0074】
また、本技術では、例えば
図19Aに示した表示装置1F1のように、シール部23と対応する領域に分離溝27を設けると共に、その分離溝27の内面を金属層28によって覆い、さらに分離溝27の内部を防湿膜17で充填するようにしてもよい(第8の変形例)。あるいは
図19Bに示した表示装置1F2のように、防湿膜17とは別体として、分離溝27の内部を充填する3層構造の防湿膜29を設けるようにしてもよい。防湿膜29は、第1~第3の層291~293が順に積層されたものである。第1および第3の層291,293は、例えば窒化シリコン(SiNx)などからなる窒化膜であり、第2の層292は、例えば酸化シリコン(SiOx)などの酸化物膜である(第9の変形例)。あるいは、
図20に示した表示装置1Gのように、2つの分離溝27A,27Bを設け、内部を金属層28で充填してもよい(第10の変形例)。
【0075】
本技術では、例えば
図21Aに示した表示装置1H1のように、表示領域110Aにおける開口規定絶縁膜24と有機層14との間に、防湿膜17を設けるようにしてもよい。これにより、表示領域110Aにおける開口規定絶縁膜24に含まれる水分によってEL素子10Wが劣化するのを防ぐことができる(第11の変形例)。さらに、
図21Bに示した表示装置1H2のように平坦化膜218と開口規定絶縁膜24との間にも防湿膜26を設けるとよい(第12の変形例)。なお、表示装置1H1,1H2を形成するには、開口規定絶縁膜24を形成したのち、その開口規定絶縁膜24を覆うように防湿性かつ絶縁性を有する所定の材料(例えばSiN)を、CVD法、リソグラフィー法、エッチングで形成する。 そののち、有機層14を例えば蒸着法で形成したのち、第2電極層16を形成することで表示装置1H1,1H2を得る。
【0076】
また、本技術では、例えば
図22A,22Bに示した表示装置1J(第13の変形例)のように、防湿膜17の替わりに、高い防湿性を有する絶縁性樹脂からなる防湿膜35を設けるようにしてもよい。表示装置1Jでは、防湿膜35が、基板111の端面から封止基板19の端面に亘って連続して設けられ、それら基板111と封止基板19とによって挟まれたEL素子10Wを含む領域を封止する。表示装置1Jは、例えば
図23に示したように封止基板19の外縁に沿って所定の樹脂を塗布したのち、それを硬化させて防湿膜35を形成することで得られる。また、例えば
図24A,24Bに示した表示装置1K(第14の変形例)のように、樹脂層351を形成したのち、さらにスパッタリング等により無機材料を樹脂層351の上に堆積させ、無機層352を形成することで2層構造の防湿膜35としてもよい。なお、樹脂層を形成することなく、直接、無機材料や金属材料を堆積させることで防湿膜35を形成してもよい。そのような無機材料としては、酸化シリコン(SiOx)、窒化シリコン(SiNx)、酸窒化シリコン(SiNxOy)、炭化シリコン(SiCx)、酸化チタン(TiOx)または酸化アルミニウム(AlxOy)などの、吸湿性が低い無機材料が好適である。また、金属材料としては、白金(Pt),金(Au),銀(Ag),クロム(Cr),タングステン(W),ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe),コバルト(Co),タンタル(Ta),チタン(Ti),アルミニウム(Al),ネオジム(Nd)あるいはモリブデン(Mo)などの 金属元素の単体または合金、例えば、銀を主成分とし、0.3重量%~1重量%の パラジウム(Pd)および0.3重量%~1重量%の銅を含有するAg-Pd-Cu合金や、 Al-Nd合金、ジュメット線(鉄ニッケル合金線を心材とした銅線(銅被覆鉄ニッケル合金線))などが好適である。また、例えば
図25に示した表示装置1L(第15の変形例)のように、防湿膜37によって基板111と封止基板19との間のEL素子10Wを含む領域を封止してもよい。表示装置1Lは、基板111の外縁に沿ってフリットガラスを塗布したのち、例えば
図26に示したようにそのフリットガラスに対しレーザを照射するなどしてガラスからなる防湿膜37を形成し基板111と封止基板19とを溶接することで得られる。また、例えば
図27に示した表示装置1M(第16の変形例)のように基板111および封止基板19の端面を凹部形状に加工したのち、防湿膜35,37を形成してもよい。
【0077】
また、本技術では、防湿膜17の替わりにシール部23と対応する領域に分離溝27を設けると共に、その分離溝27の内面を金属層28と3層構造の防湿膜によって覆うようにしてもよい。そのような3層構造の防湿膜は、例えば窒化シリコン(SiNx)などからなる一対の窒化物膜、もしくは炭化シリコン(SiCx)などからなる一対の炭化物膜によって酸化シリコン(SiOx)などの酸化物膜を挟んだものである。または、酸化シリコン(SiOx)などからなる一対の酸化物膜により、窒化シリコン(SiNx)などからなる窒化物膜もしくは炭化シリコン(SiCx)などからなる炭化物膜を挟んだものである。そのような3層構造の防湿膜は、例えば窒化シリコン(SiNx)などからなる一対の窒化物膜によって酸化シリコン(SiOx)などの酸化物膜を挟んだものである。なお、その3層構造の防湿膜を周辺領域110Bにまで延在し、平坦化膜218などを防湿膜34によって覆うようにすると、より防湿性能が向上するので好ましい。
【0078】
また、上記実施の形態では、全ての有機発光素子を、白色光を発するものとし、別途設けたカラーフィルタにより各色光を取り出す場合について例示したが、本技術はこれに限定されない。例えば有機層14を所定の材料を用いて塗り分けることで赤色光、緑色光および青色光をそれぞれ発する有機発光素子を設けるようにしてもよい。
【0079】
さらには、黄色光および青色光をそれぞれ発する有機発光素子10Y,10Bと赤色、緑色、青色および黄色のカラーフィルタとを併用することで、赤色光、緑色光、青色光および黄色光を取り出すようにした表示装置であってもよい。あるいは、黄色光および青色光をそれぞれ発する有機発光素子10Y,10Bと赤色、緑色および青色のカラーフィルタとを併用することで、赤色光、緑色光および青色光を取り出すようにした表示装置であってもよい。
【0080】
また、本技術は、上記実施の形態において説明した各層の材料や積層順序、あるいは成膜方法などに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、第1電極層13をアノード、第2電極層16をカソードとする場合について説明したが、第1電極層13をカソード、第2電極層16をアノードとしてもよい。なお、第1電極層13がカソードとして使われる場合には、第1電極層13は正孔注入性の高い材料により構成されていることが望ましい。但し、アルミニウム合金のように、表面の酸化皮膜の存在や、仕事関数が大きくないことによる正孔注入障壁が問題となる材料においても、適切な正孔注入層を設けることによって第1電極層13として使用することが可能である。さらに、上記実施の形態では、発光部20の構成を具体的に挙げて説明したが、他の層をさらに備えていてもよい。例えば、第1電極層13と有機層14との間に、酸化クロム(III)(Cr2O3),ITO(Indium-Tin Oxide:インジウム(In)およびスズ(Sn)の酸化物混合膜)などからなる正孔注入用薄膜層を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0081】
10W…白色有機EL素子、11…基体、111…基板、112…画素駆動回路形成層、12…発光素子形成層、13…第1電極層、14…有機層、14A…正孔注入層、14B…正孔輸送層、14C…発光層、14D…電子輸送層、16…第2電極層、17,25,26,29,34,35…防湿膜、18…充填層、19…封止基板、20…発光部、21…間隙部、22…導電膜パターン、23…シール部、24…開口規定絶縁膜、124…コンタクト部、27…分離溝、28…金属層、110A…表示領域、110B…周辺領域、120…信号線駆動回路、120A…信号線、130…走査線駆動回路、130A…走査線、140…画素駆動回路、217…保護膜(パッシベーション膜)、218…平坦化膜、Cs…キャパシタ(保持容量)、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書込トランジスタ。