(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】変換装置、予測モデル作製装置、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/00 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
G01N33/00 C
(21)【出願番号】P 2022535213
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008416
【審査請求日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021031067
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517289479
【氏名又は名称】株式会社香味醗酵
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】久保 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】浅井 直人
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-073930(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163966(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/085796(WO,A1)
【文献】特表2006-507507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0172279(US,A1)
【文献】国際公開第2019/035476(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02873971(EP,A1)
【文献】国際公開第2020/255305(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/188419(WO,A1)
【文献】今村 岳 Gaku Imamura,化学センサ測定における線形応答理論に基づいた新規解析法 -嗅覚センサ実現に向けて,一般社団法人 人工知能学会 第31回全国大会論文集DVD [DVD-ROM],2017年05月26日,213-OS-10a-2
【文献】久保 賢治,黒田 俊一,ヒト嗅覚受容体センサーによる嗅覚情報のデジタルデータ化-新しい匂い・香りビジネスの創出-,中国創研,2022年10月,Vol.24-5/No.93,p.25-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/46
G01N 27/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換装置であって、
所定の匂い分子に対して前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を取得する出力情報取得部と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力
情報を説明変数とするとともに、前記複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報
を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得
された出力情報を、前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換部と、
変換された前記応答情報を出力する出力部と、
を備える変換装置。
【請求項2】
前記変換部は、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数、空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作成された変数を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる請求項
1に記載の変換装置。
【請求項3】
前記変換部は、前記嗅覚受容体の応答情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数、空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作成された変数を目的変数として機械学習された予想モデルを用いる請求項
1又は
2に記載の変換装置。
【請求項4】
前記変換部は、複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報の時系列データ及び特徴量パターン数を説明変数とし、複数の前記嗅覚受容体の応答情報の時系列データ及び特徴量パターン数を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を応答情報に変換する請求項1から
3のいずれかに記載の変換装置。
【請求項5】
前記変換部は、複数の前記ガス検出機能を有する装置の出力情報の有無を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる請求項1から
4のいずれかに記載の変換装置。
【請求項6】
前記変換部は、前記嗅覚受容体に含まれる複数の受容体の反応の有無を目的変数として機械学習された予測モデルを用いる請求項1から
5のいずれかに記載の変換装置。
【請求項7】
前記変換部は、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報の質量電荷及び強度を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる請求項
1に記載の変換装置。
【請求項8】
変換された応答情報から所定の匂いの特徴を示す文言を推定する推定部をさらに備え、
前記出力部は、推定された文言を出力する請求項1から
7のいずれかに記載の変換装置。
【請求項9】
所定の匂い分子に対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換装置であって、
所定の匂い分子に対して前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を取得する応答情報取得部と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数とするとともに、前記複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換部と、
変換された前記出力情報を出力する出力部と、
を備える変換装置。
【請求項10】
所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置であって、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数として取得する説明変数取得部と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として取得する目的変数取得部と、
取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部と、
を備える予測モデル作製装置。
【請求項11】
所定の匂い分子に対して嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置であって、
複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数として取得する説明変数取得部と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として取得する目的変数取得部と、
取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部と、
を備える予測モデル作製装置。
【請求項12】
所定の匂い分子に対して所定のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換して変換情報を作製する変換情報作製方法であって、
所定の匂い分子に対して前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を取得する出力情報取得段階と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数とするとともに、複数の前記複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換段階と、
変換された前記応答情報を変換情報として出力する出力段階と、
を備える変換情報作製方法。
【請求項13】
所定の匂い分子に対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換して変換情報を作製する変換情報作製方法であって、
所定の匂い分子に対して前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を取得する応答情報取得段階と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数とするとともに、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された応答情報を、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換段階と、
変換された前記応答情報を変換情報として出力する出力段階と、
を備える変換情報作製方法。
【請求項14】
所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置からの出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製方法であって、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数として取得する説明変数取得段階と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として取得する目的変数取得段階と、
取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製段階と、
を備える予測モデル作製方法。
【請求項15】
所定の匂い分子に対して嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製方法であって、
複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数として取得する説明変数取得段階と、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として取得する目的変数取得段階と、
取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製段階と、
を備える予測モデル作製方法。
【請求項16】
所定の匂い分子に対して所定のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
所定の匂い分子に対して前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を取得する出力情報取得部、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数とするとともに、複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換部、
変換された前記応答情報を出力する出力部、
として機能させるプログラム。
【請求項17】
所定の匂い分子に対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
所定の匂い分子に対して前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を取得する出力情報取得部、
複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数とするとともに、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された応答情報を、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換部、
変換された前記応答情報を出力する出力部、
として機能させるプログラム。
【請求項18】
所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置からの出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数として取得する説明変数取得部、
複数の前記複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として取得する目的変数取得部、
取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部、
として機能させるプログラム。
【請求項19】
所定の匂い分子に対して嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数として取得する説明変数取得部、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として取得する目的変数取得部、
取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換装置、予測モデル作製装置、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検知したガスの種類に応じて、電気信号を出力するガス検出機能を有する装置が知られている。ガス検出機能を有する装置の一例として、ガスセンサが知られている。ガスセンサは、検知したガスの匂いに応じて電気信号を出力する。このようなガスセンサを用いて、匂いの種類を特定するシステムが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際特許公開第2017/085796号公報
【文献】国際特許公開第2018/235148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガス検出機能を有する装置の分析方法として、様々な方法が存在する。そのため、ガス検出機能を有する装置の間では、分析方法が異なる場合があり得る。分析方法が異なるガス検出機能を有する装置から出力されるそれぞれの出力データについて、互いに相関を取ることが難しい場合がある。例えば、複合臭を分析する場合、互いに相関を取ることが難しい場合がある。そのため、旧式のガス検出機能を有する装置により取得された匂いデータ(電気信号)の価値は、ガス検出機能を有する装置の進化又は変更に伴い減少していくことがあった。これに対し、ガス検出機能を有する装置間の相関をとることができれば好適である。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、ガス検出機能を有する装置間の相関をとることが可能な変換装置、予測モデル作製装置、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換装置であって、所定の匂い分子に対して前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を取得する出力情報取得部と、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数とするとともに、前記複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を、前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換部と、変換された前記応答情報を出力する出力部と、を備える変換装置に関する。
【0008】
また、前記変換部は、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数、空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作製された変数を説明変数として機械学習された予測モデルを用いるのが好ましい。
【0009】
また、前記変換部は、前記嗅覚受容体の応答情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数、空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作製された変数を目的変数として機械学習された予想モデルを用いるのが好ましい。
【0010】
また、前記変換部は、複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報の時系列データ及び特徴量パターン数を説明変数とし、複数の前記嗅覚受容体の応答情報の時系列データ及び特徴量パターン数を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を応答情報に変換するのが好ましい。
【0011】
また、前記変換部は、複数の前記ガス検出機能を有する装置の出力情報の有無を説明変数として機械学習された予測モデルを用いるのが好ましい。
【0012】
また、前記変換部は、前記嗅覚受容体に含まれる複数の受容体の反応の有無を目的変数として機械学習された予測モデルを用いるのが好ましい。
【0013】
また、前記変換部は、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報の質量電荷及び強度を説明変数として機械学習された予測モデルを用いるのが好ましい。
【0014】
また、変換装置は、変換された応答情報から所定の匂いの特徴を示す文言を推定する推定部をさらに備え、前記出力部は、推定された文言を出力するのが好ましい。
【0015】
また、本発明は、所定の匂い分子に対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換装置であって、所定の匂い分子に対して前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を取得する応答情報取得部と、複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数とするとともに、前記複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された応答情報を、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換部と、変換された前記出力情報を出力する出力部と、を備える変換装置に関する。
【0016】
また、本発明は、所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置であって、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数として取得する説明変数取得部と、複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として取得する目的変数取得部と、取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部と、を備える予測モデル作製装置に関する。
【0017】
また、本発明は、所定の匂い分子に対して嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置であって、複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数として取得する説明変数取得部と、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として取得する目的変数取得部と、取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部と、を備える予測モデル作製装置に関する。
【0018】
また、本発明は、所定の匂い分子に対して所定のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換して変換情報を作製する変換情報作製方法であって、所定の匂い分子に対して前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を取得する出力情報取得段階と、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数とするとともに、複数の前記複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換段階と、変換された前記応答情報を変換情報として出力する出力段階と、を備える変換情報作製方法に関する。
【0019】
また、所定の匂い分子に対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換して変換情報を作製する変換情報作製方法であって、所定の匂い分子に対して前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を取得する応答情報取得段階と、複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数とするとともに、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された応答情報を前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換段階と、変換された前記応答情報を変換情報として出力する出力段階と、を備える変換情報作製方法に関する。
【0020】
また、本発明は、所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置からの出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製方法であって、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数として取得する説明変数取得段階と、複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として取得する目的変数取得段階と、取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製段階と、を備える予測モデル作製方法に関する。
【0021】
また、本発明は、所定の匂い分子に対して嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製方法であって、複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数として取得する説明変数取得段階と、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として取得する目的変数取得段階と、取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製段階と、を備える予測モデル作製方法に関する。
【0022】
また、本発明は、所定の匂い分子に対して所定のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、前記コンピュータを、所定の匂い分子に対して前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を取得する出力情報取得部、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数とするとともに、複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する変換部、変換された前記応答情報を出力する出力部、として機能させるプログラムに関する。
【0023】
また、本発明は、所定の匂い分子に対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、所定の匂い分子に対して前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を取得する出力情報取得部、複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数とするとともに、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された応答情報を、前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する変換部、変換された前記応答情報を出力する出力部、として機能させるプログラムに関する。
【0024】
また、本発明は、所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置からの出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、前記コンピュータを、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数として取得する説明変数取得部、複数の前記複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体の応答を示す応答情報を目的変数として取得する目的変数取得部、取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部、として機能させるプログラムに関する。
【0025】
所定の匂い分子に対して嗅覚受容体の応答を示す応答情報を、ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報に変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
複数の匂い分子のそれぞれに対する前記嗅覚受容体の応答を示す応答情報を説明変数として取得する説明変数取得部、
複数の匂い分子のそれぞれに対する複数の前記ガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を目的変数として取得する目的変数取得部、
取得した前記説明変数と取得した前記目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部、
として機能させるプログラム。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガス検出機能を有する装置間の相関をとることが可能な変換装置、予測モデル作製装置、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る変換装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の変換装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態の変換装置を用いて変換した際の目的変数の値と変換後の値との相関を示すグラフの一例である。
【
図4】第1の実施形態の変換装置を用いて変換した際の目的変数の値と変換後の値との相関を示すグラフの他の例である。
【
図5】第1の実施形態の変換装置を用いて変換した際の目的変数の値と変換後の値との相関を示すグラフのさらに他の例である。
【
図6】1の実施形態の変換装置を用いて変換した際の目的変数の値と変換後の値との相関を示すグラフのさらに他の例である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る予測モデル作製装置を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る変換装置を用いて変換した際の説明変数として用いられるプロットの例を示すグラフである。
【
図9】第3実施形態に係る変換装置を用いて変換した際の目的変数の値と変換後の値との相関を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の各実施形態に係る変換装置1、予測モデル作製装置、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラムについて、
図1から
図9を参照して説明する。
まず、各実施形態の変換装置1、予測モデル作製装置2、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラムを説明するのに先立って、変換装置1の概要を説明する。
【0029】
まず、変換装置1を用いる目的を説明する。
匂いの種類を特定するシステムとして、ガスセンサを用いることが提案されている。しかしながら、ガスセンサのみでは正確に人間が感じている匂いの種類を判別、特定する事は難しい。なぜなら、ガスセンサの検出素子が人間の感覚(嗅覚)に沿わない物質で構成されているためである。そのため、様々な検出素子や分析方法が提案されたとしても、匂いの種類を特定、判別する事は難しい。
【0030】
ガスセンサの出力と人間の官能試験を機械学習などで強制的に情報を結びつけるアプローチが存在するが、官能試験のデータは個々人によって評価にバラツキが発生するため、上記アプローチによる高精度な判定は未だ達成されていない。SMILES表記といった分子の化学構造を英数表記で文字列化した表記方法を採用する事で、ガスセンサ出力と官能試験結果間の結びつきを強めるアプローチも存在する。しかしながら、予測精度は向上するものの、匂いが無い分子の情報を混在させる事実から高精度な匂いの種類の特定、判別、予測をすることは叶わなかった。これに対し、ガスセンサ出力を人間の嗅覚の定量的な数値で表現できれば、高精度に人間の嗅覚に則った匂いの判定が可能となる。
【0031】
変換装置1は、例えば、所定の匂い分子に対して所定のガス検出機能を有する装置(以下、ガス検出装置100ともいう)から出力される出力情報を嗅覚受容体の応答を示す応答情報に変換する装置である。これにより、変換装置1は、同じ匂い分子に対して分析手法の違うガス検出装置100のそれぞれから出力される異なる値の出力情報について、同じ結果を得られる嗅覚受容体200の応答である1つの応答情報に変換するものである。これにより、変換装置1は、ガス検出装置100の分析手法の違いに関わらず、ガス検出装置100の出力情報を1つの応答情報に紐付することを図ることができる。例えば、変換装置1は、1の匂い分子に対する複数のガス検出装置100ごとに値や単位の異なる出力情報に対して、1つの応答情報をいわゆる匂いのメートル原器としての紐付けを図ることができる。以下の実施形態において、変換装置1は、予め機械学習された学習モデルを用いて出力情報を応答情報に変換するものである。
【0032】
次に、ガス検出装置100について説明する。
ガス検出装置100は、例えば、ガスセンサ又は質量分析装置(ガスクロマトグラフ質量分析装置)である。ガスセンサは、所定の匂い分子の種類及び濃度に応じて、出力情報として、所定の電気信号(例えば、電圧値、抵抗値、又は電流値)、周波数変化、光の波長変化、又は嗅覚受容体への匂い分子の暴露による活性化度を出力する。ガス検出装置100は、例えば、接触する匂い分子の濃度の大きさが大きい程、より大きな電圧値の電気信号を出力する。また、質量分析装置は、例えば、匂い分子の種類及び濃度に関して、質量電荷とその強度とを示すプロットをグラフデータとして出力するものである。
【0033】
次に、嗅覚受容体200について説明する。
嗅覚受容体200は、例えば、特開2011-011869号公報等によって示される公知の嗅覚受容体を用いることにより実現することができる。嗅覚受容体200は、例えば、基板(図示せず)に接して搭載される核酸である。核酸は、所定の受容体をコードする遺伝子を含む核酸を含む。基板に接する核酸は複数種であり、基板上に各種核酸が互いに離隔して配置される。基板上の核酸に細胞を接触させることで、各種核酸に対応する嗅覚受容体を一過性発現する細胞がその場で生成される。
【0034】
この態様における受容体は、細胞に被験物質を接触させることにより、細胞状態に変化が起こり得る。具体的には、細胞内カルシウム濃度又は細胞内cAMP濃度の変化が起こり得る。このような変化について、cAMP感受性色素、cAMP感受性蛍光タンパク質、カルシウム感受性色素、又はカルシウム感受性蛍光タンパク質を用いることで、計測することができる。例えば、cAMP感受性色素又はcAMP感受性蛍光タンパク質による輝度変化を計測することにより、受容体の活性化度を定量的に算出することができる。活性化度は、嗅覚受容体200の応答を示す応答情報又は応答情報として用いられる。
【0035】
嗅覚受容体は、人、哺乳類、昆虫、又は線虫の嗅覚受容体であってよい。また、嗅覚受容体は、液体状の被験物質に制限されず、ガス状(気体状)の被験物質に接触して応答する形態であってよい。後者の形態に係る嗅覚受容体は、ガス検出装置100又は嗅覚受容体200のいずれとしても使用可能である。つまり、ガス状の被験物質に対する嗅覚受容体の応答情報と、液体状の被験物質に対する嗅覚受容体の応答情報との間を変換することもできる。
【0036】
嗅覚受容体は、上記した細胞に発現される形態に限られず、無細胞の形態をとってもよい。
例えば、細胞膜等の脂質二重膜で形成されたリポソームであって、該膜に各種の嗅覚受容体が存在するリポソームが、基板に互いに隔離して配置されてよい。リポソームのサイズは特に限定されず、典型的には直径100nm前後であってよい。リポソームの製法は特に限定されないが、嗅覚受容体を発現する細胞を細胞膜画分(Gタンパク質、アデニル酸シクラーゼ、環状ヌクレオチド依存性チャネル等の細胞内情報伝達タンパク質を含んでよい)と細胞質画分(GDP、GTP、ATP、cAMP等の細胞内情報伝達物質を含んでよい)に分け、両者を混合・撹拌して融合する工程を有してよい。
あるいは、嗅覚受容体タンパク質自体を基板のプローブとして使用してもよい。ここで、嗅覚受容体が細胞膜を貫通した状態の立体構造を保持しているナノディスクが好適である。ナノディスクは、例えば、アポリポプロテインA1(APOA1)の変異体からなるmembrane scaffold protein (MSP)であり、脂質二重膜をディスク状に集積させることができるため(Timothy H. Bayburt, Yelena V. Grinkova, and Stephen G. Sligar Nano Letters 2002 2 (8), 853-856)、細胞外でも膜タンパク質を脂質膜に貫通した状態で保持することができる(Civjan NR, Bayburt TH, Schuler MA, Sligar SG. Direct solubilization of heterologously expressed membrane proteins by incorporation into nanoscale lipid bilayers. Biotechniques. 2003 Sep;35(3):556-60, 562-3)。また、ナノディスクを配置する基板は、特に限定されないが、カーボンナノチューブFET(Yang H, Kim D, Kim J, Moon D, Song HS, Lee M, Hong S, Park TH. Nanodisc-Based Bioelectronic Nose Using Olfactory Receptor Produced in Escherichia coli for the Assessment of the Death-Associated Odor Cadaverine. ACS Nano. 2017 Dec 26;11(12):11847-11855. doi: 10.1021/acsnano)、カーボンナノチューブFET等であってよい。ナノディスクの製法は特に限定されないが、大腸菌等で発現させて回収したMSPとし、可溶化させた膜タンパク質と、界面活性剤で水に溶解させたリン脂質と、を混合し、透析等で界面活性剤を除去することで、ナノディスクを自己組織化によって形成させる工程を含んでよい。
これらの無細胞形態の嗅覚受容体を用い、被験物質による電流、電圧、インピーダンス等の変化を計測することでも、受容体の活性化度を定量的に評価することができる。
【0037】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係る変換装置1、変換情報作製方法、及びプログラムについて、
図1から
図6を参照して説明する。なお、本実施形態では、ガス検出装置100として、ガスセンサが一例として説明される。
【0038】
変換装置1は、所定の匂い分子に対して所定のガス検出装置100から出力される出力情報を嗅覚受容体200の応答を示す応答情報に変換するものである。また、本実施形態に係る変換装置1は、変換した応答情報を出力するとともに、変換した応答情報から所定の匂いの特徴を表す言葉(文言)を出力するものである。変換装置1は、
図1に示すように、出力情報取得部11と、変換部12と、推定部13と、出力部14と、を備える。
【0039】
出力情報取得部11は、例えば、CPUが動作することにより実現される。出力情報取得部11は、所定の匂い分子に対してガス検出装置100から出力される出力情報を取得する。出力情報取得部11は、例えば、所定の匂い(匂い分子)を感知することによってガス検出装置100から出力される電圧値を出力情報として取得する。出力情報取得部11は、例えば、ガス検出装置100によって遠隔地で測定された出力情報を取得してもよい。
【0040】
変換部12は、例えば、CPUが動作することにより実現される。変換部12は、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出装置100からの出力される出力信号と前記複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報とに基づいて、取得した出力情報を応答情報に変換する。本実施形態において、変換部12は、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出装置100から出力される出力情報を説明変数とするとともに、複数の複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を嗅覚受容体200の応答を示す応答情報に変換する。
【0041】
変換部12は、例えば、ガス検出装置100から出力される出力情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数、空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作製された変数を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる。また、変換部12は、嗅覚受容体200の応答情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数。空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作製された変数を目的変数として機械学習された予想モデルを用いる。変換部12は、例えば、変換部12は、複数のガス検出装置100から出力される出力情報の時系列データ及び特徴量パターン数を説明変数とし、複数の嗅覚受容体200の応答情報の時系列データ及び特徴量パターン数を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を応答情報に変換する。
【0042】
本実施形態において、変換部12は、複数のガス検出装置100の出力情報の有無を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる。また、本実施形態において、変換部12は、嗅覚受容体200に含まれる複数の受容体の反応の有無を目的変数として機械学習された予測モデルを用いる。また、本実施形態において、変換部12は、ガス検出装置100から出力される出力情報の質量電荷及び強度を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる。これにより、変換部12は、電圧値、抵抗値、電流値、周波数変化、又は光の波長変化で示される変換用電圧値について、嗅覚受容体200の活性化度を示す応答情報に変換する。
【0043】
推定部13は、例えば、CPUが動作することにより実現される。推定部13は、変換された応答情報によって示される定量化されたデータから所定の匂いの特徴を表す文言を推定する。推定部13は、例えば、変換された応答情報について、嗅覚受容体200の活性化度の違いに対して関連付けられた文言を用いて推定する。推定部13は、例えば、応答情報に類似する活性化度に応じて、所定の匂いの特徴(官能性)を示す文言を推定する。推定部13は、例えば、応答情報について、「すっぱい」という文言だけでなく、柑橘系の匂いを示す「さわやか」という文言、又は酢酸系の匂いを示す「ツンとする」という文言を推定する。推定部13は、例えば、応答情報に類似する活性化度に応じて匂いの特徴を複数の文言で推定する。
【0044】
ここで、推定部13に関して、ガス検出装置100の信号から匂いの成分をもたらす物質を同定することが知られている。これに対し、同じ物質の匂いであっても、匂いには差があることがある。例えば、オレンジの匂いであっても、個々のオレンジごとに匂いが違うことがあり得る。すなわち、匂いに対して、例えば、人間が匂いを表現するような、匂いの言葉そのものを出力することができれば好ましい。例えば、オレンジの匂いについて、「すっぱい」、「甘い」、「さわやか」、「苦い」、「柑橘系」のように、オレンジの匂いであっても、甘みが強く酸味が弱い等の匂いの特徴を評価することができれば好適である。
【0045】
推定部13は、嗅覚受容体200の応答を示す応答情報から匂いの特徴を官能的に示す特徴を推定することができるので、匂いの特徴を多面的に表現することができる。これにより、匂いの特徴をより分かりやすく表現することができる。
【0046】
出力部14は、例えば、CPUが動作することにより実現される。出力部14は、変換された応答情報を出力する。また、出力部14は、推定された文言を出力する。出力部14は、例えば、応答情報又は推定された文言を表示することにより出力する。出力部14は、例えば、応答情報として、活性化度を数値化して出力する。
【0047】
次に、変換装置1の動作(変換情報作製方法)の流れを
図2のフローチャートを参照して説明する。
まず、出力情報取得部11は、ガス検出装置100から変換用信号を取得する(ステップS1)。次いで、変換部12は、変換用信号を応答情報に変換する(ステップS2)。次いで、推定部13は、応答情報から文言を推定する(ステップS3)。次いで、出力部14は、応答情報及び文言を出力する(ステップS4)。
【0048】
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
変換装置1に含まれる各構成は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0049】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0050】
次に、本実施形態の実施例を説明する
(実施例1)
嗅覚受容体200として、400個の嗅覚受容体を含むアレイセンサを用いた。そして、所定の匂いを既定の時間、嗅覚受容体発現細胞に暴露した。匂いの濃度は、500μMから10μMのものを用いた。また、12種類のガス検出装置100(ガスセンサ)に対して所定の匂いを既定の時間暴露して出力情報を取得した。そして、変換装置1を用いて、出力情報から応答情報に変換した。また、嗅覚受容体200の発現細胞に暴露した結果の活性化度を測定した。
ここで、測定した匂い分子として、hexyl acetate、hexyl butyrate、butyl butyrate、2,7-octadienol、cis-2-penten-1-ol、toluene、beta-ionone、benzothiazole、cyclotene、acetic acid、coumarin、1,2,4-trimethyl benzene、2-ethylhexanol、propionaldehyde、4-Isopropylphenol、Bis (methylthio) methane、1,2,4,5-tetramethyl benzene、3-methyl-1-butanol、E-2-nonenal、m-cresolを用いた。
【0051】
データ処理では、予測モデルの言語としてpythonを用いた。また、予測モデルのアルゴリズムとして、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、及び勾配ブースト決定木のそれぞれを用いて評価した。また、予測モデルとして、回帰によって作製されたものを用いた。学習方法として、教師あり学習を用いた。モデル評価法として、主に決定係数で評価した。
【0052】
ランダムフォレスト法による回帰を用いた場合、
図3に示すように、縦軸を予想モデルから出力される予測値(応答情報)、縦軸を目的変数の実値(嗅覚受容体200発現細胞の活性化度)として、回帰決定係数0.834(1.0を最大とする)を得ることができた。
【0053】
サポートベクターマシンによる回帰を用いた場合、
図4に示すように、回帰決定係数0.871を得ることができた。また、勾配ブースト決定木による回帰を用いた場合、
図5に示すように、回帰決定係数0.847を得ることができた。これにより、予測値が目的変数の実値に対して十分な相関を得られることがわかった。すなわち、出力情報を定量化可能であることがわかった。
【0054】
(実施例2)
ある匂い分子に対するセンサーデータを学習し、反応する嗅覚受容体200とその活性化度を予想するモデルを作成した。ガス検出装置100、嗅覚受容体200セルアレイセンサの実験条件及び実験手順を実施例1と同様とした。データ処理では、クラス分類を用いた。言語として、pythonを用いた。アルゴリズムとして、ニューラルネットワークを用いた。ガス検出装置100の出力情報と嗅覚受容体200の応答情報とを関連させるうえで、クラス分類モデルを作成した。学習方法は、教師ありとした。隠れ層の数は問わないが本実施例では2層で実施した。モデル評価は全体正解率accuracy、損失関数lossを用いた。
ガス検出装置100の出力情報を説明変数とし、嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を目的変数とした。
【0055】
図6に示すように、学習回数500回程で、予測accuracyが0.9前後で高く維持され、lossは0.3前後と低く維持されている。このことから、前述した予想モデルを作製する事ができた。
【0056】
以上、第1実施形態に係る変換装置1、変換情報作製方法、及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
【0057】
(1)変換装置1は、所定の匂い分子に対して所定のガス検出装置100から出力される出力情報を嗅覚受容体200の応答を示す応答情報に変換する変換層被であって、所定の匂い分子に対してガス検出装置100から出力される出力情報を取得する出力情報取得部11と、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出装置100からの出力される出力信号と複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報とに基づいて、取得した出力情報を応答情報に変換する変換部12と、変換された応答情報を出力する出力部14と、を備える。これにより、種々のガス検出装置100から得られる出力情報を、1種の応答情報に変換して出力することができる。したがって、ガス検出装置100間の相関をとることができる。
【0058】
(2)変換部12は、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出装置100から出力される出力情報を説明変数とするとともに、複数の複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を嗅覚受容体200の応答を示す応答情報に変換する。機械学習を用いるこれにより、変換精度をより向上することができる。
【0059】
(3)変換部12は、ガス検出装置100から出力される出力情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数、空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作製された変数を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる。これにより、変換精度を向上することができる。
【0060】
(4)変換部12は、嗅覚受容体200の応答情報の数学的、統計学的、又は機械学習的手法を用いて算出される、数値、関数。空間的又は時系列的指標、若しくは特徴量エンジニアリングで新たに作製された変数を目的変数として機械学習された予想モデルを用いる。これにより、変換精度を向上することができる。
【0061】
(5)変換部12は、複数のガス検出装置100から出力される出力情報の時系列データ及び特徴量パターン数を説明変数とし、複数の嗅覚受容体200の応答情報の時系列データ及び特徴量パターン数を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を応答情報に変換する。これにより、変換精度を向上することができる。
【0062】
(6)変換部12は、複数のガス検出装置100の出力情報の有無を説明変数として機械学習された予測モデルを用いる。これにより、変換精度を向上することができる。
【0063】
(7)変換部12は、嗅覚受容体200に含まれる複数の受容体の反応の有無を目的変数として機械学習された予測モデルを用いる。これにより、変換精度を向上することができる。
【0064】
(8)変換装置1は、変換された応答情報によって示される定量化されたデータから所定の匂いの特徴を示す文言を推定する推定部13をさらに備え、出力部14は、推定された文言を出力する。これにより、応答情報によって示される匂いの特徴を示すものに近い文言を得ることができる。したがって、応答情報を匂いの情報として感覚的に得ることできる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る予測モデル作製装置2、予測モデル作製方法、及びプログラムについて、
図7を参照して説明する。第2実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第2実施形態に係る予測モデル作製装置2、予測モデル作製方法、及びプログラムは、第1実施形態に係る予測モデルを作製する装置、方法、及びプログラムである。
【0066】
予測モデル作製装置2は、所定の匂い分子に対してガス検出装置100から出力される出力情報を定量化されたデータに変換する予測モデルを作製する。予測モデル作製装置2は、
図6に示すように、説明変数取得部21と、目的変数取得部22と、予測モデル作製部23と、を備える。
【0067】
説明変数取得部21は、例えば、CPUが動作することにより実現される。説明変数取得部21は、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出装置100から出力される出力情報を説明変数として取得する。説明変数取得部21は、例えば、複数のガス検出装置100(例えば20種)の出力の合計値、平均値、反応の有無、各種指標、出力の特徴量とガス検出装置100の個数との積、時系列データと特徴量パターン数とガス検出装置100の個数との積等を出力情報としてもよい。
【0068】
目的変数取得部22は、例えば、CPUが動作することにより実現される。目的変数取得部22は、複数の複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を目的変数として取得する。目的変数取得部22は、例えば、嗅覚受容体200(例えば、400スポット)の出力の合計値、平均値、反応の有無、各種指標、出力の特徴量と嗅覚受容体200のスポット数との積、時系列データと特徴量パターン数と嗅覚受容体200のスポット数との積等を出力情報としてもよい。
【0069】
予測モデル作製部23は、例えば、CPUが動作することにより実現される。予測モデル作製部23は、取得した説明変数と取得した目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する。予測モデル作製部23は、相関係数、主因子分析、及びロジスティック回帰等を用いて予測モデルを作製する。
【0070】
次に、予測モデル作製装置2の動作(予測モデル作製方法)を説明する。
まず、説明変数取得部21は、出力情報を説明変数として取得する。次いで、目的変数取得部22は、応答情報を目的変数として取得する。次いで、予測モデル作製部23は、説明変数及び目的変数を用いて予測モデルを作製する。
【0071】
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
予測モデル作製装置2に含まれる各構成は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0072】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0073】
以上、第2実施形態に係る予測モデル作製装置2、予測モデル作製方法、及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(7)所定の匂い分子に対してガス検出装置100から出力される出力情報を定量化されたデータに変換する予測モデルを作製する予測モデル作製装置2であって、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出装置100から出力される出力情報を説明変数として取得する説明変数取得部21と、複数の複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を目的変数として取得する目的変数取得部22と、取得した説明変数と取得した目的変数とを機械学習に用いることにより、予測モデルを作製する予測モデル作製部23と、を備える。これにより、種々のガス検出装置100から得られる出力情報を、応答情報に変換して出力する予測モデルを作製することができる。出力情報を応答情報に変換することで定量化できるので、ガス検出装置100間の相関をとることができる変換装置1を構成することができる。
【0074】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る変換装置1、変換情報作製方法、及びプログラムについて
図8及び
図9を参照して説明する。第3実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0075】
第3実施形態に係る変換装置1は、ガス検出装置100として、質量分析装置(ガスクロマトグラフ質量分析装置)を用いる点で、第1及び第2実施形態と異なる。また、第3実施形態に係る変換装置1は、ガス検出装置100(質量分析装置)の出力を出力情報とする点で、第1及び第2実施形態と異なる。第3実施形態に係る変換装置1は、ガス検出装置100から出力される、質量電荷に対する強度のプロットの集合を出力情報として取得する。変換装置1は、例えば、ガス検出装置100によってガス状の化合物を検出した結果得られる、質量電荷に対する強度のプロットの集合を出力情報として取得する。すなわち、変換装置1は、ガス検出装置100によってガス状の化合物の分子構造を特定する処理の前の、ガス分子をイオン化した際に発生するフラグメントイオンの(ノイズを含む)質量電荷のデータを出力情報として取得する。また、変換装置1は、(ノイズを含む)質量電荷のデータを説明変数とする予測モデルを用いて出力情報を嗅覚受容体200の応答情報に変換する。これにより、変換装置1は、ガス検出装置100によって異なる機器の特性に関わらず、出力情報を嗅覚受容体の応答情報に変換するものである。なお、ガス検出装置100は、検出に限らず、捕集、測定、及び分析する装置であってもよい。
【0076】
次に、第3実施形態に係る実施例を説明する。
(実施例3)
ガス検出装置100のデータ取得方法は匂い分子溶液を溶媒で10000倍希釈した後、1μLをシリンジで採取し、ガス検出装置100に投入した。検出時に得られる分子種ごとの質量電荷データを変換に用いた。嗅覚受容体セルアレイセンサの実験条件や実験手順は実施例1と同様とした。
【0077】
データ処理では、実施例1と同様にランダムフォレストの回帰にてモデルを作製した。言語には、pythonを用いた。学習方法は、教師ありとした。モデル評価は決定係数を用いた。ガス検出装置100で取得した質量電荷のデータ処理は、
図8に示すように、グラフ化し、その画像のピクセルごとの強度を読み取った。読み取ったデータを出力情報とした。ガス検出装置100(質量分析装置)の出力情報を説明変数とし、嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を目的変数とした。
【0078】
その結果、
図9に示すように、縦軸を予想モデルから出力される予測値(応答情報)、縦軸を目的変数の実値(嗅覚受容体200発現細胞の活性化度)として、回帰決定係数0.828を得ることができた。
【0079】
以上、第3実施形態に係る予測モデル作製装置2、予測モデル作製方法、及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(8)変換部12は、ガス検出装置100として、質量分析装置の出力信号を出力情報として用いた。これにより、質量分析装置についても、出力情報を応答情報に変換することでガス検出装置100間の相関をとることができる。特に、変換部12は、(ノイズを含む)質量電荷のデータを出力情報として用いることにより、分子構造を特定した後のデータを出力情報として用いる場合に比べ、ガス状の化合物の捕集から嗅覚受容体200の応答を示す応答情報への変換までの時間を短くすることができる。また、分子構造を特定した後のデータを出力情報として用いる場合に比べ、より検出後のデータ(生のデータ)に近いデータを用いるので、より決定係数の高い(精度の良い)変換装置1を提供することができる。
【0080】
以上、本発明の変換装置、予測モデル作製装置、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラムの好ましい各実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態において、嗅覚受容体200の応答を説明変数とし、ガス検出装置100の出力を目的変数としてもよい。すなわち、変換装置1は、所定の匂い分子に対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報をガス検出装置100から出力される定量化されたデータに変換してもよい。具体的には、変換装置1は、所定の匂い分子に対して嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を取得する応答情報取得部(図示せず)と、複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を説明変数とするとともに、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出装置100から出力される出力情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された応答情報をガス検出装置100から出力される出力情報に変換する変換部12と、変換された出力情報を出力する出力部14と、を備えてもよい。これにより、嗅覚受容体200の応答情報を用いて、ガス検出装置100を設計することができる。例えば、所定の範囲の応答情報に反応するガス検出装置100の設計に用いることができる。すなわち、嗅覚受容体200の応答をメートル原器として用いることができる。
【0082】
また、上記実施形態において、変換装置1は、ガス検出装置100の出力情報から変換された応答情報が、所定の範囲から外れている場合に、ガス検出装置100の故障と判断する判断部(図示せず)を備えてもよい。出力部14は、判断部の判断結果を出力してもよい。これにより、変換装置1の汎用性を向上することができる。
【0083】
また、上記実施形態において、ガスの匂いに応じて暴露するガス検出装置100を変えてもよい。例えば、ガスの匂いに反応する(反応のよい)ガス検出装置100からの出力を出力情報としてもよい。これにより、学習効率を向上することができる。また、ガス検出装置100ごとに得手不得手を加味した柔軟な変換装置1を構築することができる。
【0084】
また、上記第3実施形態において、ガス検出装置100として、ガスクロマトグラフィー質量分析装置を用いたが、これに制限されない。ガス検出装置100として、ガスクロマトグラフィーを備えていない装置でもよい。また、ガス検出装置100は、直接イオン化質量分析装置(DART-MS)であってもよい。ガス検出装置100は、大気圧で分析する大気圧質量分析装置であってもよい。
【0085】
また、上記第1実施形態において、推定部13は、匂いの特徴(官能性)を示す文言を推定するとしたが、これに制限されない。推定部13は、嗅覚受容体200の応答である変換用応答情に紐づけられた情報であれば、種々の情報を推定することができる。具体的には、推定部13は、例えば、匂いの強度、匂いを感じた際に想起される色、匂いの快又は不快、若しくは鼻慣れの有無を推定することができる。
【0086】
また、上記実施形態において、変換部12は、機械学習された予測モデルを用いて変換するとしたが、これに制限されない。変換部12は、機械学習された予測モデルを用いずに変換してもよい。
【0087】
また、上記実施形態において、変換装置1は、予測(変換)された嗅覚受容体200の応答情報を、他の装置に転送し二次利用されるようにしても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 変換装置
2 予測モデル作製装置
11 出力情報取得部
12 変換部
13 推定部
14 出力部
21 説明変数取得部
22 目的変数取得部
23 予測モデル作製部
100 ガス検出装置
200 嗅覚受容体
【要約】
ガス検出装置間の相関をとることが可能な変換装置、予測モデル作製装置、変換情報作製方法、予測モデル作製方法、及びプログラムを提供すること。
所定の匂い分子に対して所定のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を嗅覚受容体200の定量化されたデータに変換する変換装置1であって、所定の匂い分子に対してガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を取得する出力情報取得部11と、複数の匂い分子のそれぞれに対する複数のガス検出機能を有する装置から出力される出力情報を説明変数とするとともに、複数の複数の匂い分子のそれぞれに対する嗅覚受容体200の応答を示す応答情報を目的変数として機械学習された予測モデルを用いて、取得された出力情報を嗅覚受容体200の応答を示す応答情報に変換する変換部12と、変換された応答情報を出力する出力部14と、を備える。