(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】GNSS信号受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/18 20060101AFI20230112BHJP
G01S 19/21 20100101ALI20230112BHJP
H01Q 5/35 20150101ALN20230112BHJP
【FI】
H04B1/18 B
G01S19/21
H01Q5/35
(21)【出願番号】P 2018104728
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春岡 正起
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0095943(US,A1)
【文献】特開2009-063495(JP,A)
【文献】特開2006-033626(JP,A)
【文献】特開2005-277692(JP,A)
【文献】特表2006-526315(JP,A)
【文献】特開平08-149382(JP,A)
【文献】登録実用新案第3126244(JP,U)
【文献】米国特許第05923287(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0109997(KR,A)
【文献】特開2009-063496(JP,A)
【文献】特表2009-533950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/18-1/24
G01S 5/00-5/14
G01S 19/00-19/55
H01Q 5/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ装置と、
前記アンテナ装置の出力信号に対して信号処理を実行する信号処理部と、
を備え、
前記アンテナ装置は、
第1周波数を用いた第1GNSS信号と、前記第1周波数と異なる複数の周波数帯域のGNSS信号で構成された第2周波数を用いた第2GNSS信号とを受信し、前記第1GNSS信号と前記第2GNSS信号とを含む受信信号を出力するアンテナ素子と、
前記アンテナ素子に直接接続され、前記受信信号のうち前記第2GNSS信号を減衰させ、前記第1GNSS信号を通過させる第1フィルタ処理と、前記受信信号のうち前記第1GNSS信号を減衰させ、前記第2GNSS信号を通過させる第2フィルタ処理とを実行する分波回路と、
前記第1フィルタ処理後の信号を増幅する第1増幅器と、
前記第2フィルタ処理後の信号を増幅する第2増幅器と、
増幅後の前記第1フィルタ処理の出力信号と増幅後の前記第2フィルタ処理の出力信号とを合波する合波回路と、
を備え、
前記信号処理部は、
前記アンテナ装置の出力信号から前記第1GNSS信号を抽出した第1抽出信号と、前記第2GNSS信号を抽出した第2抽出信号とを出力する抽出部を備え、
前記抽出部は、
前記第2GNSS信号に対して、前記第2GNSS信号を構成する複数の周波数帯域のGNSS信号を個別に抽出
し、
前記合波回路は、
前記第1GNSS信号の周波数が通過域内となり、前記第2GNSS信号の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有し、前記第1フィルタ処理の出力信号をフィルタ処理する第3フィルタと、
前記第2GNSS信号の周波数が通過域内となり、前記第1GNSS信号の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有し、前記第2フィルタ処理の出力信号をフィルタ処理する第4フィルタと、
前記第3フィルタの出力信号と前記第4フィルタの出力信号とを合波する合波器と、
を備える、
GNSS信号受信装置。
【請求項2】
アンテナ装置と、
前記アンテナ装置の出力信号に対して信号処理を実行する信号処理部と、
を備え、
前記アンテナ装置は、
第1周波数を用いた第1GNSS信号と、前記第1周波数と異なる複数の周波数帯域のGNSS信号で構成された第2周波数を用いた第2GNSS信号とを受信し、前記第1GNSS信号と前記第2GNSS信号とを含む受信信号を出力するアンテナ素子と、
前記アンテナ素子に直接接続され、前記受信信号のうち前記第2GNSS信号を減衰させ、前記第1GNSS信号を通過させる第1フィルタ処理と、前記受信信号のうち前記第1GNSS信号を減衰させ、前記第2GNSS信号を通過させる第2フィルタ処理とを実行する分波回路と、
前記第1フィルタ処理後の信号を増幅する第1増幅器と、
前記第2フィルタ処理後の信号を増幅する第2増幅器と、
増幅後の前記第1フィルタ処理の出力信号と増幅後の前記第2フィルタ処理の出力信号とを合波する合波回路と、
を備え、
前記信号処理部は、
前記アンテナ装置の出力信号から前記第1GNSS信号を抽出した第1抽出信号と、前記第2GNSS信号を抽出した第2抽出信号とを出力する抽出部を備え、
前記抽出部は、
前記第2GNSS信号に対して、前記第2GNSS信号を構成する複数の周波数帯域のGNSS信号を個別に抽出し、
前記合波回路は、
前記第1GNSS信号の周波数が通過域内となり、前記第2GNSS信号の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有し、前記第1フィルタ処理の出力信号をフィルタ処理する第3フィルタと、
前記第2GNSS信号の周波数が通過域内となり、前記第1GNSS信号の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有し、前記第2フィルタ処理の出力信号をフィルタ処理する第4フィルタと、
を備え、
前記第3フィルタの出力端と前記第4フィルタの出力端との接続端子は、前記合波回路の出力端子である、
GNSS信号受信装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載のGNSS信号受信装置であって、
前記第1抽出信号を増幅する第3増幅器と、
前記第2抽出信号を構成する複数の周波数帯域のGNSS信号を個別に増幅する複数の第4増幅器と、
を備える、
GNSS信号受信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のGNSS信号受信装置であって、
前記合波回路と前記抽出部とは、伝送線路部材を用いて直接接続されている、
GNSS信号受信装置。
【請求項5】
請求項1乃至
請求項4のいずれか一項に記載のGNSS信号受信装置であって、
前記分波回路は、
前記受信信号を分波して、第1分波信号と第2分波信号とを出力する分波器と、
前記第1分波信号に対して前記第1フィルタ処理を実行する第1フィルタと、
前記第2分波信号に対して前記第2フィルタ処理を実行する第2フィルタと、
を備える、GNSS信号受信装置。
【請求項6】
請求項1乃至
請求項4のいずれか一項に記載のGNSS信号受信装置であって、
前記分波回路は、
前記受信信号に対して前記第1フィルタ処理を実行する第1フィルタと、
前記受信信号に対して前記第2フィルタ処理を実行する第2フィルタと、
を備え、
前記第1フィルタの入力端と前記第2フィルタの入力端との接続端子は、前記分波回路における前記アンテナ素子に直接接続される端子である、
GNSS信号受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波数のGNSS信号を受信するアンテナ素子と、受信したGNSS信号を増幅する増幅回路とを備えるアンテナ装置、および、GNSS信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、GNSS(Grobal Navigation Satellite System)では、衛星測位システム毎に、または、同一の衛星測位システム内において、それぞれに異なる複数の周波数からなるGNSS信号が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載の受信装置は、複数の衛星測位システムに対して共通の受信アンテナとLNAとを備える。また、特許文献1に記載の受信装置は、衛星測位システム別の信号処理部を備える。受信アンテナは、各衛星測位システムの測位衛星からのGNSS信号を受信し、LNAに出力する。LNAは、受信信号を増幅して、衛星測位システム別の信号処理部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の受信装置のように、複数のGNSS信号を1個の受信アンテナで受信し、1個のLNAで増幅する場合、例えば、当該干渉波等によってLNAが飽和すると、受信した全てのGNSS信号に対する受信感度の低下等の受信品質の低下が生じてしまう。
【0006】
したがって、本発明の目的は、干渉波等を受信しても、GNSS信号の受信品質の低下を抑制できるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のアンテナ装置は、アンテナ素子、分波回路、第1増幅器、第2増幅器、および、合波回路を備える。アンテナ素子は、第1周波数を用いた第1GNSS信号と、第1周波数と異なる第2周波数を用いた第2GNSS信号とを受信し、第1GNSS信号と第2GNSS信号とを含む受信信号を出力する。分波回路は、アンテナ素子に直接接続され、受信信号のうち第2GNSS信号を減衰させ、第1GNSS信号を通過させる第1フィルタ処理と、受信信号のうち第1GNSS信号を減衰させ、第2GNSS信号を通過させる第2フィルタ処理とを実行する。第1増幅器は、第1フィルタ処理後の信号を増幅する。第2増幅器は、第2フィルタ処理後の信号を増幅する。合波回路は、増幅後の第1フィルタの出力信号と増幅後の第2フィルタの出力信号とを合波する。
【0008】
この構成では、第1GNSS信号と第2GNSS信号とがそれぞれ個別の増幅器で増幅される。これにより、第1GNSS信号の周波数に重なるまたは近接する周波数の干渉波があっても、第2GNSS信号の増幅にはこの干渉波による影響はない。また、第2GNSS信号の周波数に重なるまたは近接する周波数の干渉波があっても、第1GNSS信号の増幅にはこの干渉波による影響はない。
【発明の効果】
【0009】
この構成によれば、干渉波等を受信しても、GNSS信号の受信品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【
図2】(A)、(B)は、本実施形態に係るアンテナ装置のフィルタの通過特性を示す図である。
【
図3】(A)、(B)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置を用いた場合の干渉波の影響を抑制する概念を説明するための図である。
【
図4】(A)は、本願構成における相互変調歪みが生じた場合のアンテナ装置の出力端における信号スペクトルを示す図であり、(B)は、比較構成における相互変調歪みが生じた場合のアンテナ装置の出力端における信号スペクトルを示す図である。
【
図5】(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の各部での信号レベルのスペクトルの概略例を示す図である。
【
図6】干渉波の電力に対するGNSS信号の受信感度のLossを示すグラフである。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す外観斜視図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係るGNSS信号受信装置の等価回路図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【
図13】本発明の第6の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。なお、以下では、GNSS(Grobal Navigation Satellite System)の一種であるGPS(Grobal Positioning System)に用いられるGPS信号に適用する態様を示すが、他のGNSSに用いられるGNSS信号を受信するアンテナ装置に対しても、以下の構成を適用できる。さらには、複数種類のGNSSのGNSS信号を受信するアンテナ装置に対しても、以下の構成を適用できる。
【0012】
図1に示すように、アンテナ装置10は、アンテナ素子20、ハイブリッド回路30、分波器40、フィルタ511、フィルタ512、フィルタ521、フィルタ522、増幅器611、増幅器612、増幅器621、増幅器622、および、合波器70を備える。
【0013】
アンテナ素子20は、ハイブリッド回路30に接続している。ハイブリッド回路30は、分波器40のアンテナ側端子に接続している。分波器40は、フィルタ511およびフィルタ512のそれぞれに接続している。分波器40、フィルタ511、および、フィルタ512からなる回路が、本発明の「分波回路」に対応する。
【0014】
フィルタ511は、増幅器611に接続している。増幅器611は、増幅器612に接続している。増幅器612は、フィルタ512に接続している。
【0015】
フィルタ521は、増幅器621に接続している。増幅器621は、増幅器622に接続している。増幅器622は、フィルタ522に接続している。
【0016】
フィルタ512とフィルタ522は、合波器70に接続している。そして、合波器70の出力端は、アンテナ素子20の出力端であり、同軸ケーブル900等の伝送線路に接続している。フィルタ512、フィルタ522、および、合波器70からなる回路が、本発明の「合波回路」に対応する。
【0017】
(L1波、L2波、L5波、L6波で共通の伝送ルート)
アンテナ素子20は、第1GNSS信号に対応するL1波と、第2GNSS信号に対応するL2波、L5波、L6波を受信して、ハイブリッド回路30に出力する。この際、アンテナ素子20は、後述のように、受信面の中心を基準として、90°の角度差をもって配置された2個の給電体204を用いて、それぞれに90°の位相差をもったI信号とQ信号とからなる状態で、L1波、L2波、L5波、およびL6波を出力する。
【0018】
ハイブリッド回路30は、所謂90°ハイブリッド回路によって実現されている。ハイブリッド回路30は、導体パターンの形状、抵抗、インダクタ、キャパシタによって実現が可能であり、受動素子のみからなる回路である。
【0019】
ハイブリッド回路30は、L1波、L2波、L5波、およびL6波に対して、それぞれにI信号とQ信号とを合成する。ハイブリッド回路30は、合成後のL1波、L2波、L5波、およびL6波を、分波器40に出力する。なお、アンテナ素子20からのL1波、L2波、L5波、およびL6波が、I信号およびQ信号の組でない、それぞれに1信号で構成されていれば、ハイブリッド回路30は、省略できる。そして、ハイブリッド回路30を備える構成では、アンテナ素子20とハイブリッド回路30との組が、実質的に、本発明の「アンテナ素子」に対応する。
【0020】
分波器40は、所謂、電力分配を行う回路によって実現されている。分波器40は、導体パターンの形状、抵抗、インダクタ、キャパシタによって実現が可能であり、受動素子のみからなる回路である。
【0021】
分波器40は、L1波、L2波、L5波、およびL6波をそれぞれ電力分配して、フィルタ511およびフィルタ521に出力する。
【0022】
(L1波と、L2波、L5波、L6波とで異なる伝送ルート)
図2(A)、
図2(B)は、本実施形態に係るアンテナ装置のフィルタの通過特性を示す図である。
図2(A)は、アッパーバンド側のGNSS信号を通過させるバンドパスフィルタの通過特性の一例であり、
図2(B)は、ローバンド側のGNSS信号を通過させるバンドパスフィルタの通過特性の一例である。
【0023】
図2(A)に示すフィルタは、GPSの利用周波数帯域におけるアッパーバンド側の周波数帯域ULBが通過域内になり、ローバンド側の周波数帯域LLBが減衰域内となるフィルタ特性を有する。
図2(A)に示すフィルタは、アッパーバンド側の周波数帯域ULBに対しては、信号を殆ど減衰せず、ローバンド側の周波数帯域LLBに対しては、信号を減衰させる。その減衰量は、例えば、約Y[dB]である。
【0024】
図2(B)に示すフィルタは、GPSの利用周波数帯域におけるローバンド側の周波数帯域LLBが通過域内になり、アッパーバンド側の周波数帯域ULBが減衰域内となるフィルタ特性を有する。
図2(B)に示すフィルタは、ローバンド側の周波数帯域LLBに対しては、信号を殆ど減衰せず、アッパーバンド側の周波数帯域ULBに対しては、信号を減衰させる。その減衰量は、例えば、約X[dB]である。
【0025】
ここで、アッパーバンド側の周波数帯域ULBは、L1波の周波数を含み、L2波、L5波、およびL6波の周波数を含まない周波数帯域からなる。一方、ローバンド側の周波数帯域LLBは、L2波、L5波、およびL6波の周波数を含み、L1波の周波数を含まない周波数帯域からなる。
【0026】
(L1波の増幅ルート)
フィルタ511は、例えば、SAWフィルタによって実現可能であり、受動素子からなる。なお、フィルタ511は、導体パターンの形状、抵抗、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、この場合も受動素子からなる。
【0027】
フィルタ511は、
図2(A)に示すフィルタ特性を有する。これにより、フィルタ511は、分波器40から出力されたL1波、L2波、L5波、およびL6波に対して、L1波を通過させ、L2波、L5波、およびL6波を減衰させる。フィルタ511は、フィルタ処理後の信号(L1波を主とする信号)を、増幅器611に出力する。
【0028】
増幅器611は、トランジスタ等の半導体素子からなる。増幅器611は、フィルタ511でフィルタ処理された信号を増幅して、増幅器612に出力する。なお、ここでは、増幅器611と増幅器612との2段構成を採用しているが、増幅器の段数は、必要な増幅率等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
増幅器612は、トランジスタ等の半導体素子からなる。増幅器612は、増幅器611で増幅後の信号をさらに増幅して、フィルタ512に出力する。
【0030】
フィルタ512は、フィルタ511と同様に、
図2(A)に示すフィルタ特性を有する。なお、フィルタ512のフィルタ特性とフィルタ511のフィルタ特性とは、完全に一致する必要はなく、類似する通過特性および減衰特性を有していればよい。これにより、フィルタ512は、増幅器612から出力された信号におけるL1波の周波数を含む所定の周波数帯域幅の周波数領域の信号を通過させ、L2波、L5波、およびL6波を含む所定の周波数帯域幅の周波数領域の信号を減衰させる。なお、フィルタ512も、例えば、SAWフィルタ、導体パターンの形状、抵抗、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、受動素子からなる。フィルタ512は、フィルタ処理後の信号を、合波器70に出力する。
【0031】
(L2波、L5波、L6波の増幅ルート)
フィルタ521は、例えば、SAWフィルタによって実現可能であり、受動素子からなる。なお、フィルタ521は、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、この場合も受動素子からなる。
【0032】
フィルタ521は、
図2(B)に示すフィルタ特性を有する。これにより、フィルタ521は、分波器40から出力されたL1波、L2波、L5波、およびL6波に対して、L2波、L5波、およびL6波を通過させ、L1波を減衰させる。フィルタ521は、フィルタ処理後の信号(L2波、L5波、およびL6波を主とする信号)を、増幅器621に出力する。
【0033】
増幅器621は、トランジスタ等の半導体素子からなる。増幅器621は、フィルタ521でフィルタ処理された信号を増幅して、増幅器622に出力する。増幅器622は、トランジスタ等の半導体素子からなる。増幅器622は、増幅器621で増幅後の信号をさらに増幅して、フィルタ522に出力する。なお、ここでは、増幅器621と増幅器622との2段構成を採用しているが、増幅器の段数は、必要な増幅率等に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
フィルタ522は、フィルタ521と同様に、
図2(B)に示すフィルタ特性を有する。なお、フィルタ522のフィルタ特性とフィルタ521のフィルタ特性とは、完全に一致する必要はなく、類似する通過特性および減衰特性を有していればよい。これにより、フィルタ522は、増幅器622から出力された信号におけるL2波、L5波、およびL6波を含む所定の周波数帯域幅の周波数領域の信号を通過させ、L1波を含む所定の周波数帯域幅の周波数領域の信号を減衰させる。なお、フィルタ522も、例えば、SAWフィルタ、導体パターンの形状、抵抗、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、受動素子からなる。フィルタ522は、フィルタ処理後の信号を、合波器70に出力する。
【0035】
(L1波、L2波、L5波、L6波で共通の伝送ルート)
合波器70は、分波器40に類似する構成からなり、所謂、合波を行う回路によって実現されている。合波器70は、導体パターンの形状、抵抗、インダクタ、キャパシタによって実現が可能であり、受動素子のみからなる回路である。
【0036】
合波器70は、フィルタ512の出力信号(L1波を主とする信号)と、フィルタ522の出力信号(L2波、L5波、および、L6波を主とする信号)とを、合波して、同軸ケーブル900に出力する。合波信号は、L1波、L2波、L5波、および、L6波を含む信号である。
【0037】
(本願発明の作用効果の説明)
このような構成を備えることによって、アンテナ装置10は、次に示す作用効果が得られる。
【0038】
(増幅器の前段のフィルタによる作用効果)
図3(A)、
図3(B)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置を用いた場合の干渉波の影響を抑制する概念を説明するための図である。
図3(A)は、ローバンド側の周波数帯域LLBに干渉波がある場合、
図3(B)は、アッパーバンド側の周波数帯域ULBに干渉波がある場合を示している。
【0039】
(ローバンド側の周波数帯域LLBに干渉波がある場合)
上述のアンテナ装置10においてフィルタ511を用いることで、
図3(A)に示すように、ローバンド側の周波数帯域LLBに干渉波IWinが存在しても、フィルタ511で減衰される。したがって、増幅器611および増幅器612に入力される干渉波IWoutは極小さく抑えられ、干渉波IWoutによる増幅器611および増幅器612の飽和は抑制される。
【0040】
これにより、アッパーバンド側の周波数帯域ULBに含まれる信号UWは、所望の増幅率で増幅され、歪みも生じない。この結果、L2波、L5波、L6波の近傍の周波数に干渉波が存在しても、アンテナ装置10は、L1波を、所望の増幅率で増幅できる。
【0041】
なお、フィルタ512を備えることによって、干渉波IWoutは、更に小さく抑えられる。
【0042】
(アッパーバンド側の周波数帯域ULBに干渉波がある場合)
上述のアンテナ装置10においてフィルタ521を用いることで、
図3(B)に示すように、アッパーバンド側の周波数帯域ULBに干渉波IWinが存在しても、フィルタ521で減衰される。したがって、増幅器621および増幅器622に入力される干渉波IWoutは極小さく抑えられ、干渉波IWoutによる増幅器621および増幅器622の飽和は抑制される。
【0043】
これにより、ローバンド側の周波数帯域LLBに含まれる信号LWは、所望の増幅率で増幅され、歪みも生じない。この結果、L1波の近傍の周波数に干渉波が存在しても、アンテナ装置10は、L2波、L5波、L6波を、所望の増幅率で増幅できる。
【0044】
なお、フィルタ522を備えることによって、干渉波IWoutは、更に小さく抑えられる。
【0045】
このように、本実施形態の構成を用いることによって、アンテナ装置10は、L2波、L5波、L6波の近傍の周波数に干渉波が存在しても、L1波を、所望の増幅率で増幅でき、L1波の近傍の周波数に干渉波が存在しても、L2波、L5波、L6波を、所望の増幅率で増幅できる。したがって、アンテナ装置10は、干渉波が存在しても、当該干渉波の周波数から離間した周波数帯域に存在するGNSS信号を、干渉波の影響を抑制して、所望の増幅率で増幅できる。
【0046】
これにより、GNSS信号の受信に対してロバスト性が優れたアンテナ装置10を実現できる。この結果、アンテナ装置10の後段の回路は、常に少なくとも1個のGNSS信号を検出でき、捕捉、追尾でき、復調できる。
【0047】
(増幅器の後段のフィルタによる作用効果)
図4(A)は、本願構成における相互変調歪みが生じた場合のアンテナ装置の出力端における信号スペクトルを示す図である。
図4(B)は、比較構成における相互変調歪みが生じた場合のアンテナ装置の出力端における信号スペクトルを示す図である。
図4(B)に示す特性を有する比較構成は、本願構成においてフィルタ512を備えない構成に対応する。
【0048】
アッパーバンド側の周波数帯域ULB内もしくは近傍の周波数の信号において、増幅器611または増幅器612で相互変調歪みが発生すると、
図4(A)、
図4(B)に示すように、その周波数成分は、ローバンド側の周波数帯域LLBにも及ぶ。
【0049】
しかしながら、フィルタ512を備えることによって、相互変調歪みによる信号(IM信号)におけるローバンド側の周波数帯域LLBの周波数成分は減衰する(例えば、
図2(A)の場合であれば、Y[dB]の減衰)。
【0050】
これにより、L2波、L5波、L6波の増幅後の信号レベルに対して、減衰後の相互変調歪みによる信号(IM信号)におけるローバンド側の周波数帯域LLBの周波数成分の信号レベルは、所定値以下(S/N比が所定値以上)になる。したがって、増幅器611、増幅器612で相互変調歪みが生じても、後段の回路において、L2波、L5波、L6波を確実に検出でき、捕捉、追尾でき、復調できる。
【0051】
同様に、ローバンド側の周波数帯域LLB内もしくは近傍の周波数の信号において、増幅器621または増幅器622で相互変調歪みが発生しても、フィルタ522を備えることによって、ローバンド側の相互変調歪みによる信号(IM信号)におけるアッパーバンド側の周波数帯域ULBの周波数成分は減衰する(例えば、
図2(B)の場合であれば、X[dB]の減衰)。
【0052】
これにより、L1波の増幅後の信号レベルに対して、減衰後の相互変調歪みによる信号(IM信号)におけるアッパーバンド側の周波数帯域ULBの周波数成分の信号レベルは、所定値以下(S/N比が所定値以上)になる。したがって、増幅器621、増幅器622で相互変調歪みが生じても、後段の回路において、L1波を確実に検出でき、捕捉、追尾でき、復調できる。
【0053】
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)、
図5(D)、
図5(E)、
図5(F)、
図5(G)、
図5(H)は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の各部での信号レベルのスペクトルの概略例を示す図である。
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)、
図5(D)、
図5(E)、
図5(F)、
図5(G)、
図5(H)は、アッパーバンド側の周波数帯域ULBの近傍に干渉波が存在し、当該干渉波によって相互変調歪みが発生する場合を例に示している。
【0054】
図5(A)は、
図1のA点(分波器40のアンテナ素子20側)のスペクトルを示す。
図5(B)は、
図1のB点(フィルタ521の出力端)のスペクトルを示す。
図5(C)は、
図1のC点(増幅器622の出力端)のスペクトルを示す。
図5(D)は、
図1のD点(フィルタ522の出力端)のスペクトルを示す。
図5(E)は、
図1のE点(フィルタ511の出力端)のスペクトルを示す。
図5(F)は、
図1のF点(増幅器612の出力端)のスペクトルを示す。
図5(G)は、
図1のG点(フィルタ512の出力端)のスペクトルを示す。
図5(H)は、
図1のH点(合波器70の同軸ケーブル900側)のスペクトルを示す。
【0055】
図5(A)に示すように、アンテナ装置10は、ローバンド側の周波数帯域LLBのGNSS信号LW(以下、ローバンド側GNSS信号LWとし、GPS信号のL2波、L5波、L6波に対応)、アッパーバンド側の周波数帯域ULBのGNSS信号UW(以下、アッパーバンド側GNSS信号UWとし、GPS信号のL1波に対応)を、受信環境に応じた信号レベルで受信する。この際、アンテナ素子20の受信可能な周波数範囲に干渉波IWが存在すると、アンテナ装置10は、この干渉波IWも、受信環境に応じた信号レベルで受信する。
図5(A)の場合、干渉波IWの周波数は、アッパーバンド側GNSS信号UWに近接している。
【0056】
フィルタ521に入力された受信信号は、フィルタ521によってフィルタ処理されることで、
図5(B)に示すように、ローバンド側GNSS信号LWのみとなる。フィルタ521によるフィルタ処理後のローバンド側GNSS信号LWは、増幅器621および増幅器622で増幅され、
図5(C)に示すように、信号レベルが向上する。ローバンド側GNSS信号LWの周波数は、フィルタ522の通過帯域内であるので、
図5(D)に示すように、ローバンド側GNSS信号は、減衰されることなく、合波器70に出力される。
【0057】
フィルタ511に入力された受信信号は、フィルタ511によってフィルタ処理されることで、
図5(E)に示すように、アッパーバンド側GNSS信号UWと干渉波IWとになる。フィルタ511によるフィルタ処理後のアッパーバンド側GNSS信号UWと干渉波IWは、増幅器611および増幅器612で増幅され、
図5(F)に示すように、信号レベルが向上する。
【0058】
この際、干渉波IWの信号レベルが高く、干渉波IWの信号レベルが増幅器611、増幅器612の非線形領域に達すると、相互変調歪みIMが発生する。
【0059】
アッパーバンド側GNSS信号UWdと干渉波IWdの周波数は、フィルタ512の通過帯域内であるので、
図5(G)に示すように、アッパーバンド側GNSS信号UWdと干渉波IWdは、減衰されることなく、合波器70に出力される。また、相互変調歪みIMにおけるアッパーバンド側GNSS信号UWdの周波数に重なるまたは近接する周波数成分は、
図5(G)に示すように、減衰されることなく、合波器70に出力される。
【0060】
しかしながら、相互変調歪みIMにおけるローバンド側GNSS信号LWの周波数に重なるまたは近接する周波数成分は、フィルタ512の減衰域内にあるので、
図5(G)に示すように、大きく減衰されて、合波器70に出力される。
【0061】
これにより、
図5(H)に示すように、合波器70の出力端では、ローバンド側GNSS信号LWの周波数において、S/Nが劣化しないレベルまで、十分に相互変調歪みIMが低減する。すなわち、ローバンド側GNSS信号LWに対する受信感度を高くでき、優れた受信特性を実現できる。
【0062】
なお、ローバンド側の周波数帯域LLBの近傍に干渉波が存在し、当該干渉波によって相互変調歪みが発生する場合には、図示を省略しているが、上述の構成によって、逆に、アッパーバンド側GNSS信号UWに対する受信感度を高くでき、優れた受信特性を実現できる。
【0063】
すなわち、アンテナ装置10は、GNSS信号を受信していれば、定常的に、少なくとも1個のGNSS信号を、高い受信感度で受信することができる。
【0064】
一方、分波器40よりもアンテナ素子20側に増幅器を備えた構成(従来の一般的な構成)では、干渉波IWの周波数によることなく、干渉波IWが存在することによって、アッパーバンド側GNSS信号UWおよびローバンド側GNSS信号LWの増幅に影響を与え、且つ、フィルタによって、アッパーバンド側GNSS信号UWおよびローバンド側GNSS信号LWを、干渉波IWおよびその相互変調歪みIMから識別することが難しい。したがって、従来の構成では、定常的に、少なくとも1個のGNSS信号を、高い受信感度で受信することができない。
【0065】
言い換えれば、本願発明のアンテナ装置10は、周波数帯域が近接していない複数種類のGNSS信号に共通の伝送経路には、増幅器等のアクティブ素子を配置しない。これにより、アンテナ装置10は、定常的に、少なくとも1個のGNSS信号を、高い受信感度で受信できる。
【0066】
図6は、干渉波の電力に対するGNSS信号の受信感度のLossを示すグラフである。
図6において、実線は、本願発明の構成による特性を示し、破線は、従来構成による特性を示す。
図6に示すように、従来構成では、干渉波の電力(信号レベル)が、約-30[dB]から、GNSS信号の受信感度が低下し始め、干渉波の電力が大きくなるほど、GNSS信号の受信感度が低下する。特に、干渉波の電力が、約0[dB]を超えると、GNSS信号の受信感度は、大きく低下してしまう。
【0067】
一方、本願発明の構成では、干渉波の電力が、約+25[dB]もあっても、GNSS信号の受信感度は、低下しない。
【0068】
このように、アンテナ装置10は、干渉波の電力が大きくなっても、干渉波と異なる周波数の少なくとも1種類のGNSS信号を受信して、干渉波等と識別可能な状態で出力できる。
【0069】
これにより、アンテナ装置10は、複数種類のGNSS信号の受信環境における、受信のロバスト性を高くできる。したがって、例えば、自動運転等に用いられる車載の測位装置に対して、アンテナ装置10は、測位に利用可能なGNSS信号を定常的に出力でき、特に有効な活用先となる。
【0070】
なお、上述の回路構成からなるアンテナ装置10は、例えば、
図7に示すような構造によって実現可能である。
図7は、本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す外観斜視図である。
【0071】
図7に示すように、アンテナ装置10は、アンテナ素子20、および、回路基板210を備える。アンテナ素子20は、回路基板210の表面に実装されている。
【0072】
図示していないが、ハイブリッド回路30、分波器40、フィルタ511、フィルタ512、フィルタ521、フィルタ522、増幅器611、増幅器612、増幅器621、増幅器622、および、合波器70は、回路基板210に実装された電子部品によって実現されている。回路基板210の表面および裏面には、
図1に示す回路を実現する導体パターンが形成されている。そして、同軸ケーブル900は、例えば、
図2に示すように回路基板210の裏面の導体パターンに接続されている。
【0073】
アンテナ素子20は、
図2に示すように、基材200、放射導体201、放射導体202、グランド導体203、および、給電体204を備える。基材200は、略直方体形状の誘電体からなる。放射導体201は、基材200の天面に形成されている。放射導体201の形状は、第1GNSS信号の周波数(第1周波数)、具体的に本実施形態では、L1波の周波数(1575.42MHz)に応じて設定されている。放射導体202は、基材200の天面から底面に向かう方向(高さ方向)の途中位置に形成されている。放射導体202の形状は、第2GNSS信号の周波数(第2周波数)、具体的に本実施形態では、L2波の周波数(1227.60MHz)、L5波の周波数(1176.45MHz)、および、L6波(1278.75MHz)の周波数を含む周波数帯域に応じて設定されている。
【0074】
グランド導体203は、基材200の底面に形成されている。給電体204は、基材200を高さ方向に沿って貫く導体であり、当該給電体204によって、放射導体201および放射導体202に対する給電が行われる。給電体204は、2個あり、平面視において、放射導体201および放射導体202の中心を基準として、90°の角度差をもって配置されている。
【0075】
この構成により、アンテナ素子20は、測位衛星(GPS衛星)からL1波、L2波、L5波、L6波、すなわち、第1GNSS信号および第2GNSS信号を受信し、2個の給電体204から90°の位相差をもって出力できる。
【0076】
このような構成からなるアンテナ装置10は、例えば、次に示すGNSS信号受信装置に適用される。
図8は、本発明の第1の実施形態に係るGNSS信号受信装置の等価回路図である。
【0077】
図8に示すように、GNSS信号受信装置1は、アンテナ装置10、信号処理部90、および、同軸ケーブル900を備える。アンテナ装置10は、上述の
図1に示した構成を有しており、以下では説明を省略する。
【0078】
信号処理部90は、分波器91、フィルタ921、フィルタ922、フィルタ923、フィルタ924、増幅器931、増幅器932、増幅器933、増幅器934、受信回路94、および、測位演算部95を備える。
【0079】
分波器91のアンテナ側端子は、同軸ケーブル900を介して、アンテナ装置10の合波器70の出力端に接続している。また、分波器91は、フィルタ921、フィルタ922、フィルタ923、およびフィルタ924にそれぞれ接続している。
【0080】
フィルタ921は、増幅器931に接続しており、フィルタ922は、増幅器932に接続している。フィルタ923は、増幅器933に接続しており、フィルタ924は、増幅器934に接続している。増幅器931、増幅器932、増幅器933、および、増幅器934は、受信回路94に接続している。受信回路94は、測位演算部95に接続している。
【0081】
分波器91は、所謂、電力分配を行う回路によって実現されている。分波器91は、導体パターンの形状、抵抗、インダクタ、キャパシタによって実現が可能であり、受動素子のみからなる回路である。分波器91は、アンテナ装置10からの入力信号をそれぞれ電力分配して、フィルタ921、フィルタ922、フィルタ923、およびフィルタ924に出力する。
【0082】
フィルタ921、フィルタ922、フィルタ923、およびフィルタ924は、例えば、SAWフィルタ等の受動素子によって構成されている。フィルタ921、フィルタ922、フィルタ923、およびフィルタ924は、捕捉、追尾の対象となるGNSS信号毎に対応したフィルタ特性を有する。より具体的には、本実施形態では、フィルタ921は、GPS信号のL1波に対応したフィルタ特性を有し、フィルタ922は、GPS信号のL2波に対応したフィルタ特性を有し、フィルタ923は、GPS信号のL5波に対応したフィルタ特性を有し、フィルタ924は、GPS信号のL6波に対応したフィルタ特性を有する。すなわち、フィルタ921は、GPS信号のL1波の周波数が通過域内となり、GPS信号のL2波、L5波、L6波の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有する。フィルタ922は、GPS信号のL2波の周波数が通過域内となり、GPS信号のL1波、L5波、L6波の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有する。フィルタ923は、GPS信号のL5波の周波数が通過域内となり、GPS信号のL1波、L2波、L6波の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有する。フィルタ924は、GPS信号のL6波の周波数が通過域内となり、GPS信号のL1波、L2波、L5波の周波数が減衰域内となるフィルタ特性を有する。
【0083】
フィルタ921は、分波毎の信号(L1波を含む信号)を、増幅器931に出力する。フィルタ922は、分波毎の信号(L2波を含む信号)を、増幅器932に出力する。フィルタ923は、分波毎の信号(L5波を含む信号)を、増幅器933に出力する。フィルタ924は、分波毎の信号(L6波を含む信号)を、増幅器934に出力する。
【0084】
増幅器931、増幅器932、増幅器933、および、増幅器934は、それぞれに入力された信号を増幅して、受信回路94に出力する。
【0085】
受信回路94は、GNSS信号毎に捕捉追尾回路を有している。なお、捕捉追尾回路は、既知の測位装置の構成によって実現でき、詳細な回路構成の説明は省略する。受信回路94は、L1波、L2波、L5波、L6波のそれぞれを捕捉、追尾し、コード位相差、搬送波位相差等の観測データを、測位演算部95に出力する。
【0086】
測位演算部95は、観測データを用いて、既知の構成および既知の方法を用いて、測位演算を実行する。
【0087】
このような構成からなるGNSS信号受信装置1は、上述のアンテナ装置10を備えていることによって、干渉波を受信しても、干渉波と異なる周波数の少なくとも1種類のGNSS信号を、高いS/N比で受信でき、捕捉追尾を継続でき、測位を行うことができる。これにより、GNSS信号受信装置1は、複数種類のGNSS信号の受信環境において、測位を継続的に行うことができる。
【0088】
さらに、GNSS信号受信装置1は、干渉波や相互変調歪みIMと、L1波、L2波、L5波、L6波との全てが含まれる信号の伝送経路には、受動素子からなる分波器91のみが配置されている。そして、GNSS信号受信装置1は、フィルタ921、フィルタ922、フィルタ923、フィルタ924によって、L1波、L2波、L5波、L6波を分離した後に、増幅器931、増幅器932、増幅器933、増幅器934による増幅を行う。
【0089】
これにより、信号処理部90においても、上述のような干渉波が存在することによる、干渉波の周波数から離間する周波数のGNSS信号が、干渉波の影響を受けることを抑制できる。
【0090】
したがって、GNSS信号受信装置1は、捕捉追尾を更に確実に継続でき、測位を更に確実に継続的に行うことができる。
【0091】
次に、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置について、図を参照して説明する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【0092】
図9に示すように、第2の実施形態に係るアンテナ装置10Aは、
図1に示した第1の実施形態に係るアンテナ装置10に対して、増幅器612、増幅器622、フィルタ512、フィルタ522を省略した点で異なる。アンテナ装置10Aの他の構成は、アンテナ装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0093】
増幅器611の出力端および増幅器621の出力端は、合波器70に接続されている。
【0094】
この構成であっても、増幅器611、および、増幅器621よりもアンテナ素子20側の構成によって、アンテナ装置10Aは、アンテナ装置10と同様に、干渉波による影響を抑制できるという作用効果を奏することができる。
【0095】
次に、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置について、図を参照して説明する。
図10は、本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【0096】
図10に示すように、第3の実施形態に係るアンテナ装置10Bは、第2の実施形態に係るアンテナ装置10Aに対して、分波器40、フィルタ511、フィルタ521の組合せに代えて、デュプレクサ40Bを備える点で異なる。アンテナ装置10Bの他の構成は、アンテナ装置10Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0097】
デュプレクサ40Bは、フィルタ411とフィルタ421とを備える。デュプレクサ40Bは、アンテナ側端子、フィルタ411側の端子、およびフィルタ421側の端子を備える。アンテナ側端子は、ハイブリッド回路30に接続しており、フィルタ411側の端子は、増幅器611に接続しており、フィルタ421側の端子は、増幅器621に接続している。
【0098】
フィルタ411は、上述のフィルタ511と同様に、例えば、SAWフィルタによって実現可能であり、受動素子からなる。なお、フィルタ411は、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、この場合も受動素子からなる。フィルタ411は、L1波を通過させ、L2波、L5波、およびL6波を減衰させる。
【0099】
フィルタ421は、上述のフィルタ521と同様に、例えば、SAWフィルタによって実現可能であり、受動素子からなる。なお、フィルタ421は、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、この場合も受動素子からなる。フィルタ421は、L2波、L5波、およびL6波を通過させ、L1波を減衰させる。
【0100】
このような構成であっても、L1波、L2波、L5波、およびL6波、すなわち、第1GNSS信号と第2GNSS信号とに共通の伝送経路には、受動素子しか配置されない。そして、このような増幅器611、および、増幅器621よりもアンテナ素子20側の構成によって、アンテナ装置10Bは、アンテナ装置10Aと同様に、干渉波による影響を抑制できるという作用効果を奏することができる。
【0101】
次に、本発明の第4の実施形態に係るアンテナ装置について、図を参照して説明する。
図11は、本発明の第4の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【0102】
図11に示すように、第4の実施形態に係るアンテナ装置10Cは、第3の実施形態に係るアンテナ装置10Bに対して、合波器70に代えて、デュプレクサ70Cを備える点で異なる。アンテナ装置10Cの他の構成は、アンテナ装置10Bと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。なお、アンテナ装置10Cのデュプレクサ40Cは、アンテナ装置10Bのデュプレクサ40Bと同様の構成を備える。
【0103】
デュプレクサ70Cは、フィルタ711とフィルタ721とを備える。デュプレクサ70Cは、出力側端子、フィルタ711側の端子、およびフィルタ721側の端子を備える。出力側端子は、同軸ケーブル900に接続しており、フィルタ711側の端子は、増幅器611に接続しており、フィルタ721側の端子は、増幅器621に接続している。
【0104】
フィルタ711は、上述のフィルタ512と同様に、例えば、SAWフィルタによって実現可能であり、受動素子からなる。なお、フィルタ711は、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、この場合も受動素子からなる。フィルタ711は、L1波を通過させ、L2波、L5波、およびL6波を減衰させる。
【0105】
フィルタ721は、上述のフィルタ522と同様に、例えば、SAWフィルタによって実現可能であり、受動素子からなる。なお、フィルタ721は、インダクタおよびキャパシタによっても実現可能であり、この場合も受動素子からなる。フィルタ721は、L2波、L5波、およびL6波を通過させ、L1波を減衰させる。
【0106】
このような構成によって、デュプレクサ70Cは、第1の実施形態に係るアンテナ装置10における、フィルタ512、フィルタ522、および、合波器70の組と同様の作用効果を奏することができる。すなわち、アンテナ装置10Cは、アンテナ装置10と同様に、相互変調歪みによる影響を抑制できる。
【0107】
次に、本発明の第5の実施形態に係るアンテナ装置について、図を参照して説明する。
図12は、本発明の第5の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【0108】
図12に示すように、第5の実施形態に係るアンテナ装置10Dは、第1の実施形態に係るアンテナ装置10に対して、フィルタ511D、フィルタ512D、フィルタ521D、および、フィルタ522Dを備える点で異なる。アンテナ装置10Dの他の構成は、アンテナ装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0109】
アンテナ装置10Dは、アンテナ装置10における帯域通過型のフィルタ511を、高域通過型のフィルタ511Dに置き換えた構成を備える。アンテナ装置10Dは、アンテナ装置10における帯域通過型のフィルタ512を、高域通過型のフィルタ512Dに置き換えた構成を備える。アンテナ装置10Dは、アンテナ装置10における帯域通過型のフィルタ521を、低域通過型のフィルタ521Dに置き換えた構成を備える。アンテナ装置10Dは、アンテナ装置10における帯域通過型のフィルタ522を、低域通過型のフィルタ522Dに置き換えた構成を備える。
【0110】
フィルタ511D、フィルタ512D、フィルタ521D、および、フィルタ522Dは、インダクタおよびキャパシタの少なくとも一方を備えた構成からなり、受動素子のみによって構成されている。
【0111】
このような構成によって、アンテナ装置10Dは、アンテナ装置10と同様の作用効果を奏することができる。
【0112】
次に、本発明の第6の実施形態に係るアンテナ装置について、図を参照して説明する。
図13は、本発明の第6の実施形態に係るアンテナ装置の等価回路図である。
【0113】
図13に示すように、第6の実施形態に係るアンテナ装置10Eは、第4の実施形態に係るアンテナ装置10Cに対して、デュプレクサ40E、および、デュプレクサ70Eを備える点において異なる。アンテナ装置10Eの他の構成は、アンテナ装置10Cと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0114】
アンテナ装置10Eのデュプレクサ40Eは、アンテナ装置10Cのデュプレクサ40Cにおける帯域通過型のフィルタ411を、高域通過型のフィルタ411Eに置き換えた構成を備える。また、デュプレクサ40Eは、デュプレクサ40Cにおける帯域通過型のフィルタ421を、低域通過型のフィルタ421Eに置き換えた構成を備える。
【0115】
また、アンテナ装置10Eのデュプレクサ70Eは、アンテナ装置10Cのデュプレクサ70Cにおける帯域通過型のフィルタ711を、高域通過型のフィルタ711Eに置き換えた構成を備える。また、デュプレクサ70Eは、デュプレクサ70Cにおける帯域通過型のフィルタ721を、低域通過型のフィルタ721Eに置き換えた構成を備える。
【0116】
フィルタ411E、フィルタ412E、フィルタ711E、および、フィルタ721Eは、インダクタおよびキャパシタの少なくとも一方を備えた構成からなり、受動素子のみによって構成されている。
【0117】
このような構成によって、アンテナ装置10Eは、アンテナ装置10Cと同様の作用効果を奏することができる。
【0118】
なお、上述の各実施形態の構成は、適宜、部分的に組み合わせることが可能であり、この組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【0119】
また、上述の説明では、干渉波が存在する場合を例に示したが、干渉波に限るものではなく、受信すべきGNSS信号とは別の各種ノイズが存在する場合にも、上述の構成を適用でき、干渉波の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0120】
また、上述の説明では、アンテナ素子20は、2点給電される態様を示したが、給電点数は、これに限るものではなく、例えば、1点給電、4点給電等を用いてもよい。
【0121】
また、上述の説明では、アンテナ装置10は、2種類の信号に分波する態様を示したが、さらに多くの種類の信号に分波する態様を適用することも可能である。同様に、上述の説明では、信号処理部90は、4種類の信号に分波する態様を示したが、さらに多くの種類の信号に分波する態様を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0122】
1:GNSS信号受信装置
10、10A、10B、10C、10D、10E:アンテナ装置
20:アンテナ素子
30:ハイブリッド回路
40:分波器
40B、40C、40E:デュプレクサ
70:合波器
70C、70E:デュプレクサ
90:信号処理部
91:分波器
94:受信回路
95:測位演算部
200:基材
201、202:放射導体
203:グランド導体
204:給電体
210:回路基板
411、411E、412E、421、421E、511、511D、512、512D、521、521D、522、522D:フィルタ
611、612、621、622:増幅器
711、711E、721、721E:フィルタ
900:同軸ケーブル
921、922、923、924:フィルタ
931、932、933、934:増幅器