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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】センサおよび保温材
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20230112BHJP
   G21D 1/00 20060101ALI20230112BHJP
   G21C 17/003 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G01N29/04
G21D1/00 J
G21C17/003 100
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018199722
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020067351
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】古市 肇
(72)【発明者】
【氏名】田村 明紀
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096857(JP,A)
【文献】特開2005-228785(JP,A)
【文献】特開平09-142258(JP,A)
【文献】特開2011-215865(JP,A)
【文献】特開2002-026566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G21D 1/00 - G21D 1/04
G21C 17/00 - G21C 17/14
H02J 7/00 - H02J 7/36
H02J 50/00 - H02J 50/90
H04B 5/00 - H04B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温になる構造体の周囲を覆った状態で非破壊検査を実行することが可能なセンサおよび保温材であって、
前記構造体を検査するために前記構造体の表面に2つ以上配置されているセンサと、
前記センサに接続されるセンサコイルと、
前記センサコイル1つに対して少なくとも1つ以上、前記保温材の内部に前記保温材の断面方向に設けられている磁力線収束部材と、を備え
1つの前記磁力線収束部材が、2つの前記センサコイルにまたがることなく設けられてい
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項2】
高温になる構造体の周囲を覆った状態で非破壊検査を実行することが可能なセンサおよび保温材であって、
前記構造体を検査するために前記構造体の表面に2つ以上配置されているセンサと、
前記センサに接続されるセンサコイルと、
前記センサコイル1つに対して少なくとも1つ以上、前記保温材の内部に前記保温材の断面方向に設けられている磁力線収束部材と、を備え、
前記磁力線収束部材が、正方形状に配置されている
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項3】
請求項に記載のセンサおよび保温材において、
1つの前記磁力線収束部材が、2つの前記センサコイルにまたがることなく設けられている
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材が、正方形状に配置されている
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項5】
請求項1または2に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材は、磁性体で構成されている
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項6】
請求項1または2に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材の透磁率が、1×10-4[H/m]以上である
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項7】
請求項1または2に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材は、対応する1つの前記センサコイルの鉛直方向範囲の内側に配置されている
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項8】
請求項1または2に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材は、前記保温材の内周面側から外周面側まで貫通するように設けられた棒形状の部材である
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項9】
請求項1または2に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材は、前記保温材の内部に埋め込まれた棒形状の部材である
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項10】
請求項1または2に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材は、前記保温材の内面側と外面側とで分割され、かつ同軸上に設けられた棒形状の部材で構成される
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【請求項11】
請求項1または2に記載のセンサおよび保温材において、
前記磁力線収束部材を、前記センサコイルより多く備えている
ことを特徴とするセンサおよび保温材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非破壊検査が行われる配管等の構造物を保温するために用いられるセンサおよび保温材に関する。
【背景技術】
【0002】
試験対象物の非破壊検査に適したワイヤレスセンサに関し、小型、軽量、簡易なワイヤレスセンサの一例として、特許文献1には、変換器と、包囲部を画定するよう構成され、変換器に電気的に結合されて変換器を遠隔的な装置により誘導的に作動させることを可能にする、導電性の変換器コイルとを備えており、変換器コイルにより画定される包囲部は、変換器の対応する幅寸法よりも広い内部幅寸法を有している、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】GB2523266号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】C.Zhong, A.Croxford, P.Wilcox, “Investigation of Inductively Coupled Ultrasonic Transducer System for NDE” IEEE transactions on ultrasonics, Vol.60, No.6 (2013) pp.1115-1125
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非破壊検査技術は、対象物を破壊することなくその状態を検査できる技術である。特に、超音波を用いた非破壊検査は、低コスト、適用が容易等の理由から幅広い分野で用いられている。
【0006】
原子力プラントや火力プラントなどでは、配管や容器などの健全性を担保するため、超音波によるき裂検査や肉厚検査が定期的に行われている。
【0007】
対象となる配管や容器の大部分は保温材で覆われている。このため、超音波検査のためには、まず保温材を取り外し、手動で超音波プローブをあらかじめ決められた検査点に押しつけて検査し、その後保温材を復旧する必要がある。また、検査箇所が高所であれば、検査の前後で足場組み立てが必要となる。
【0008】
特に原子力プラントでは、多数の配管、容器を定期検査毎に検査することが規定されており、多大な労力と時間を必要としている。また、前述の手動による検査では、超音波プローブの押しつけ角などにより、超音波プローブに受信される信号が変化するため、検査点毎に超音波プローブを注意深く制御する必要がある。
【0009】
このような課題を解決するため、検査点にあらかじめバッテリと制御用の電波送受信機を備えた超音波センサを取り付けておく方法がある。これにより、検査時に制御用サーバから各超音波センサを制御し、各検査点における超音波検査を自動的に行うことができる。また、保温材下にあらかじめ超音波センサを取り付けておくことで、保温材の着脱なしに配管、容器を超音波検査することが可能となる。
【0010】
しかしながら、この方法では、超音波センサにバッテリおよび制御用の電波送受信機を取り付ける必要があり、バッテリ交換などの定期的なメンテナンスが必要となる。また、センサ自身が大型化する、といった課題がある。
【0011】
このほか、電磁超音波発信子と光ファイバセンサを組み合わせた超音波光プローブによる検査方法が知られている。電磁超音波発信子により励起した超音波の共振波を光ファイバセンサにより検出する。電磁超音波発振子と光ファイバセンサをあらかじめ保温材下の検査点に設置しておくことにより、保温材の着脱なしで配管の超音波検査が可能である。
【0012】
しかしながら、各電磁超音波発振子と光ファイバセンサから電源線や信号線を引き出すため、多数の配線が必要となり、断線のリスクが高くなる、との課題がある。また、センサにより配管にき裂や減肉が検知された場合、保温材を取り外して手動による詳細検査に移行する必要があるが、センサの電源線や信号線は保温材を通して外側へ引き出されているため、保温材取り外しには電源線や信号線を切断する必要があり、詳細検査が必要ない部分のセンサまで使用できなくなる、という課題がある。
【0013】
上述の特許文献1には、コイル間の電磁誘導を用いて非接触で超音波検査を実施する方法が記載されている。この方法は、検査対象にあらかじめセンサとセンサに接続されたセンサコイルを設置しておき、送信コイルと受信コイルを含むセンサプローブから電磁誘導により発生させた磁場を通してセンサとセンサプローブ間で情報をやり取りして非接触で超音波検査を行うものである。
【0014】
この特許文献1に記載の方法は、センサ部はセンサとセンサコイルのみで構成されることから、バッテリが不要であり、センサ部がメンテナンスフリーとなるため有望な技術と考えられる。
【0015】
ここで、原子力プラントでは多数の配管、容器の定期的な検査が要求されている。特に配管減肉検査では、日本であれば、日本機械学会により推奨される検査方法が定められている。その中では、配管表面での計測ピッチが100mm以下であることが要求されている。
【0016】
本規格に従うと、配管表面に多数のセンサが取り付けられる事になるため、センサ自身がメンテナンスフリーであること、コンパクトであることが重要となる。従来の検査方法に比べ、特許文献1に記載のコイル間の電磁誘導を活用する検査方法では、センサ部がメンテナンスフリー、かつコンパクトであるため有効であると考えられる。
【0017】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、電磁誘導により十分な情報伝達を得るには、コイル間距離とほぼ同じ外径のコイルを用いる必要がある。一方で、前述のように配管減肉の計測ピッチはあらかじめ規定されていることから、使用できるコイルサイズには制約がある。このため、使用するコイル外径以上の厚みを有する保温材を通した計測は困難である、という課題があった。
【0018】
また、計測ピッチが狭い場合、特許文献1に記載の方法では、保温材上からセンサプローブで検査する際に、隣り合うセンサコイルからの信号を受信してしまう、という課題があった。
【0019】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、好適にはコイル外径以上の厚みを有しており、保温材で覆われた配管、容器等の検査対象の構造物の減肉、き裂などを着脱なしに非破壊検査することを可能とするセンサおよび保温材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、高温になる構造体の周囲を覆った状態で非破壊検査を実行することが可能なセンサおよび保温材であって、前記構造体を検査するために前記構造体の表面に2つ以上配置されているセンサと、前記センサに接続されるセンサコイルと、前記センサコイル1つに対して少なくとも1つ以上、前記保温材の内部に前記保温材の断面方向に設けられている磁力線収束部材と、を備え、1つの前記磁力線収束部材が、2つの前記センサコイルにまたがることなく設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、保温材で覆われた配管、容器等の検査対象の構造物の減肉、き裂などを着脱なしに非破壊検査することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係る保温材とセンサシステムの構成を示す図である。
図2】比較用の公知技術の保温材が用いられた系でのセンサシステムの動作原理の概略を示す図である。
図3】本発明の実施例1の保温材が用いられた系でのセンサシステムの動作原理の概略を示す図である。
図4】比較用の公知技術の保温材が配置された系におけるセンサシステムで得られた受信波形の一例を示す図である。
図5】比較用の公知技術の保温材が配置された系におけるセンサシステムで得られた受信波形の他の一例を示す図である。
図6】本発明の実施例1の保温材が配置された系でのセンサシステムにより得られた受信波形の一例を示す図である。
図7】本発明の実施例1に係る保温材とセンサシステムの構成の他の一例を示す図である。
図8】本発明の実施例2に係る保温材とセンサシステムの一部構成をセンサプローブ側から見た図である。
図9】本発明の実施例2に係る保温材の詳細構成をセンサプローブ側から見た図である。
図10】本発明の実施例3に係る保温材の詳細構成をセンサプローブ側から見た図である。
図11】本発明の実施例4に係る保温材とセンサシステムの構成を示す図である。
図12】本発明の実施例4に係る保温材に対する磁力線収束構造物の組み込み方法を示す図である。
図13】本発明の実施例5に係る保温材とセンサシステムの構成を示す図である。
図14】本発明の実施例6に係る保温材とセンサシステムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の保温材の実施例を、図面を用いて説明する。
【0024】
<実施例1>
本発明の保温材の実施例1について図1乃至図7を用いて説明する。
【0025】
最初に、図1を用いて、本実施例における保温材とセンサシステムとの関係やその構成について説明する。図1は実施例1に係る保温材とセンサシステムの構成を示す断面図である。
【0026】
図1に示す形態では、センサシステムは、検査対象41の表面に貼り付けられたセンサ20、ケーブル21、ケーブル21を介してセンサ20と電気的に結合したセンサコイル22、センサコイル22と検査対象41の間に配置される電磁波遮断シート23、送信コイル31および受信コイル30で構成されるセンサプローブ32で構成される。
【0027】
パルサ(図示省略)で発生した送信波に対応する電気信号は、送信コイル31での電磁誘導により磁場へと変換され、磁束3を介してセンサコイル22へ伝達される。送信コイル31で発生させた磁場が検査対象41の表面で渦電流として失われることを避けるため、センサコイル22と検査対象41の間に電磁波遮断シート23が設置されている。
【0028】
電磁波遮断シート23としては、例えば米国3M社製EMI Absorber AB Seriesが用いられる。電磁波遮断シート23の厚みは、十分に遮断性能を発揮するため、0.2―0.5[mm]とするが、より厚いものを用いても良い。
【0029】
センサコイル22で受信された電気信号はケーブル21を通してセンサ20に伝達される。
【0030】
超音波を発生させるために、センサ20には圧電素子が用いられる。使用する超音波の周波数により圧電素子のサイズが決定されるが、本実施例では、外径10[mm]、厚み0.6[mm]とする。使用される圧電素子の材料は、例えば、デンマークNoliac社製のNCE51が用いられる。
【0031】
本実施例では超音波を発生させるため、センサ20を圧電素子としているが、センサ20は例えば、ひずみ計、電磁センサ、加速度計、熱センサなどの他のセンサで構成することも出来る。
【0032】
センサプローブ32の送信コイル31、受信コイル30は、通常の超音波検査に用いられるパルサ・レシーバ(図示省略)およびオシロスコープ機能を備えたPC(図示省略)に接続されている。
【0033】
送信コイル31、受信コイル30、センサコイル22は、例えば、それぞれ0.05[mm]の銅線で形成される平型コイルである。サイズ、巻き数は例えば非特許文献1に記載の方法で決定する。
【0034】
コイル外径が大きくなる程、レシーバで受信される信号のSN比(Signal to Noise比)が向上するが、前述のように配管減肉検査では100[mm]以下の計測ピッチが要求される。
【0035】
このため、隣り合うセンサコイル22同士での干渉を考慮し、本実施例ではセンサコイル22の外径を30[mm]とする。送信コイル31、受信コイル30の外径は、SN比および隣接コイルの干渉を考慮し、それぞれ53[mm]、46[mm]とする。
【0036】
ただし、本発明は例示した寸法に限定されるものではなく、検査対象の形状、求められるSN比等によって適宜変更することができる。
【0037】
本実施例における検査対象41は、炭素鋼もしくはステンレス鋼製の金属板であり、プラント検査における曲率の大きい配管、容器に対応する。検査対象41は、プラント運転中に高温となるため、ケイ酸カルシウム製(もしくはロックウール製、グラスウール製、無定形水練製、硬質ウレタンフォーム製など)の保温材40で覆われている。
【0038】
図1に示すように、本実施例の保温材40は、高温になる検査対象41の周囲を覆うことで検査対象41の温度を保つ部材であり、その中には磁力線収束構造物1a,1b,…(以下、磁力線収束構造物1と記載)が配置されている。これら磁力線収束構造物1は、保温材内面42側から保温材外面43側まで貫通するように設けられた棒形状の部材である。
【0039】
保温材40の保温材内面42側には、センサ20やセンサコイル22等が配置されるスペースとして、切欠き部10が確保されている。
【0040】
磁力線収束構造物1は、例えば磁性体(例えばフェライトなど)で構成されており、形状は保温材内面42側から保温材外面43側へと貫通する棒型をしている。
【0041】
磁力線収束構造物1の断面形状に制約はなく、円形であっても四角形であっても良い。磁力線収束構造物1aの外径は少なくともセンサコイル22の外径の1/10以上の大きさとすることが望ましい。
【0042】
磁力線収束構造物1は、図1に示すように、検査対象41を検査するために検査対象41の表面に配置されているセンサ20に接続される1つのセンサコイル22に対して1つが保温材40の断面方向に設けられている。なお磁力線収束構造物1は、少なくともその一部が検査対象41上に配置されたセンサコイル22の鉛直方向領域2に含まれるように配置されていればよい。
【0043】
また、1つの磁力線収束構造物1は、保温材40中では、2つのセンサコイル22にまたがることなく配置されている。
【0044】
磁力線収束構造物1aは、隣接する磁力線収束構造物1bと所定の間隔(以降、磁力線収束構造物間隔70と記載)を保って配置されている。
【0045】
磁力線収束構造物1は、保温材40の性能を確保することを目的として、比較的熱伝導率が低い材質で構成されていることが望ましい。磁力線収束構造物1の熱伝導率の具体的な値は、磁力線収束構造物1の断面形状や保温材40に求められる保温性能等の要素に応じて一概に決まるものではないものの、保温材40の熱伝導率の10倍以下程度、特には磁性体であることが望まれる。これにより、保温材40の保温性能を損なうことなく、磁力線収束構造物1の追設に伴う放熱量の増加を抑え、保温材としての性能をより確実に発揮させることが可能である。
【0046】
また、磁力線収束構造物1は、保温材40の保温材内面42側から保温材外面43側、かつ保温材外面43側から保温材内面42側へと磁束を到達させるとの特性が求められるため、透磁率が高いことが望ましく、なくとも透磁率は1×10-4[H/m]以上の、特には磁性体であることが望ましい。
【0047】
図2は従来技術の保温材が用いられた系でのセンサシステムの動作原理を説明した図であり、図3は本実施例の保温材が配置された系におけるセンサシステムの動作原理を説明する図である。
【0048】
図2に示した従来技術では、送信コイル31で発生させた磁場が十分な強度でセンサコイル22に到達するためには、送信コイル31とセンサコイル22の距離とほぼ同じサイズの外径を有するコイルを用いる必要があることが実験的に分かっている。従って、検査対象41の温度が高く、図2に示すように、保温材140が厚い条件では、保温材140の厚みに等しいサイズのコイルを用いる必要がある。
【0049】
一方で、センサ20の配置間隔(計測ピッチ)は日本機械学会が推奨する検査方法で規定されているため、磁場が十分な強度でセンサコイル22に到達させるためにセンサコイル22の外径を無制限に大きくすることは出来ない、との課題がある。これは日本国内の場合であるが、世界各国で、国ごとに推奨される検査方法が存在し、同様にセンサコイル22の外径を無制限に大きくすることは困難である。
【0050】
そのため、センサコイル22の外径が制限されると、厚い保温材140の場合、図2から明らかなように、送信コイル31で発生した磁束3がセンサコイル22へ到達せず、計測を行うことが出来ない、という課題がある。
【0051】
これに対し、磁束3をセンサコイル22へ十分な強度で伝達させるためには、保温材140の厚みを薄くし、送信コイル31をセンサコイル22に近づける必要がある。しかしながら保温材140の厚みは、保温材140下の配管などからの放熱を抑制するために規定されており、保温材140の厚みを低減することは困難である。
【0052】
一方で、図3に示すように、本発明では保温材40の中に磁力線収束構造物1が配置されている。また、検査対象41の表面に配置されているセンサ20に接続される1つのセンサコイル22に対して少なくとも1つ以上の磁力線収束構造物1が保温材40の断面方向に設けられている。
【0053】
このため、送信コイル31やセンサコイル22に保温材40の厚さよりもサイズの小さい外径を有するコイルを用いた場合においても、送信コイル31で発生した磁束4が磁力線収束構造物1の中を通過してセンサコイル22に到達する。
【0054】
これにより、保温材40の厚みを低減することなく計測を行うことが可能となる。また、センサコイル22と磁力線収束構造物1を近接して配置することができるので、小さい外径のセンサコイル22を用いることが出来、配管減肉検査のように計測ピッチ71が狭い場合においても、隣接するセンサコイル22からの信号を受信することなく、超音波検査を行うことができる。
【0055】
更に、例えば、原子力プラントや火力プラントでは、配管に保温材を取り付ける際(例えば、新しく施工する場合や、交換作業中または検査中に脱着が必要となる場合など)に、本実施例1に記載したような常にセンサコイル22上に磁力線収束構造物1を有する保温材40によれば、保温材40の取り付け前後で磁力線収束構造物1とセンサコイル22との相対的位置関係の変化が生じることなく、磁力線収束構造物1による送信コイル31および受信コイル30とセンサコイル22間の磁束の伝達効果は保持される。従って、センサコイル22の外径以上の厚みを有する保温材40で覆われた配管又は容器等の検査対象41を非接触にて超音波探査する際に、センサコイル22とセンサプローブ32間の信号伝達が可能となる。
【0056】
そのため、保温材40の脱着時にセンサコイル22と磁力線収束構造物1との相対的位置関係が変化したとしても、磁力線収束構造物1がセンサコイル22上に確実に配置されるため、保温材40の厚みとの関係に関わらず磁束4がセンサコイル22に伝達される。
【0057】
図4および図5は、非特許文献1に開示されている公知技術の保温材が配置された系でのセンサシステム(コイル間の電磁誘導を用いて非接触で超音波検査を実施する方法)により得られた受信波形(底面エコー)を示す図であり、図6は本発明の保温材が配置された系におけるセンサシステムにより得られた受信波形を示す図である。
【0058】
コイルサイズは、前述したように、センサコイルの外径を30[mm]、送信コイルの外径を53[mm]、受信コイル30の外径を46[mm]で固定し、センサプローブ32とセンサコイル22との距離(図中、非接触計測距離と記載)は図4では15[mm]、図5および図6では40[mm]とした。
【0059】
図4から分かるように、非接触計測距離がコイル外径に対して小さい場合では十分な強度で信号が受信されている。また、図5から分かるように、非接触計測距離が大きくなった場合には信号強度が低下している。
【0060】
一方で、図6に示すように、本発明による計測では、非接触計測距離がコイル外径に対して大きい場合においても十分な強度で信号が受信されていることが分かる。
【0061】
センサ20はセンサコイル22とケーブル21を介して電気的に結合しているため、センサコイル22で受信された電気信号によりセンサ20が振動し、検査対象41の中に超音波が発信される。
【0062】
検査対象41のき裂もしくは底面で反射し、センサ20で受信された超音波は圧電効果によりセンサ20に電気信号を発生させる。本電気信号はセンサコイル22からの磁束4を介して、受信コイル30で受信され、レシーバを通してPC上のオシロスコープに表示される。
【0063】
このため、検査員は、表示された波形から、検査対象41におけるき裂の有無、減肉量などを判別することができ、保温材40の着脱なしに検査対象41の超音波検査を行うことが出来る。
【0064】
また、検査対象41が高所に位置する場合、センサプローブ32に高所検査用の長棒を取り付けることにより、足場組み立て無しで超音波検査を行うことが出来るとともに、センサ20があらかじめ検査対象に貼り付けられているため、検査点毎に注意深く超音波プローブを制御する必要はなく、検査時間の短縮が可能である。
【0065】
更に、センサプローブ32とセンサコイル22とが電磁誘導現象を通して結合されるため、センサ20へはセンサプローブ32から磁場を通して非接触でエネルギーが供給されることから、検査対象41に貼り付けられているセンサ20、センサコイル22と、保温材40に取り付けられている磁力線収束構造物1は機械的な接続部を設ける必要がない。すなわち、センサ部にはバッテリ等のエネルギー源が必要なく、センサ部がコンパクトでメンテナンスフリーとなる、との効果が得られる。
【0066】
その上、機械的に結合している必要がないため、センサ20によりき裂もしくは減肉が検知された際に、保温材40を取り外して手動による詳細検査に移行する際も、センサケーブルを切断することなく保温材40を取り外す事ができる。
【0067】
このように、特許文献1に記載の方法では、センサおよびセンサコイルを検査対象表面に設置した後に検査対象を保温材で覆うため、センサコイルの位置が目視できず、検査の際にセンサプローブとセンサコイルの位置を整合させることが困難となる課題がある。
【0068】
一方で、本実施例のような磁力線収束構造物1が配置された保温材40を用いることで、センサコイル22の位置に磁力線収束構造物1があるため、容易にセンサプローブ32とセンサコイル22の位置を整合させることができる。
【0069】
また、1つの磁力線収束構造物1が、2つのセンサコイル22にまたがることなく設けられているため、隣り合うセンサコイル22からの干渉を抑制することが出来、対象箇所の検査をより確実に実行することができる。
【0070】
更に、磁力線収束構造物1は、磁性体で構成されていること、磁力線収束構造物1の透磁率が1×10-4[H/m]以上であることで、より確実に電磁誘導現象を通してセンサプローブ32とセンサコイル22とを結合させることができるとともに、保温材40の性能を十分に担保することができる。
【0071】
また、磁力線収束構造物1は、対応する1つのセンサコイル22の鉛直方向範囲の内側に配置されていることにより、磁力線収束構造物1を配置する距離を短くすることができ、保温材40の性能をより担保したうえで上述したような効果を得ることができる。
【0072】
更に、磁力線収束構造物1は、保温材40の内周面側から外周面側まで貫通するように設けられた棒形状の部材であることで、確実に保温材内面42側から保温材外面43側へと、かつ保温材外面43側から保温材内面42側へと磁力線を接続することができ、より確実に上述したような効果を得ることができる。
【0073】
なお、磁力線収束構造物1は、図1に示すように保温材40中を保温材外面43側から保温材内面42側へまっすぐ配置されることで対応する1つのセンサコイル22の鉛直方向範囲の内側に配置される場合に限られず、図7に示すように斜めに配置されているものとすることができる。
【0074】
この場合も、磁力線収束構造物1d,1fではなく、図7中左側に配置されているセンサコイル22に対応する磁力線収束構造物1eを用いることで、上述したようにセンサプローブとセンサコイルとが電磁誘導現象を通して結合される。このため、コイル外径以上の厚みを有する保温材を備える検査対象であっても、保温材の着脱なしに超音波検査を行う事が出来る。
【0075】
<実施例2>
本発明の実施例2の保温材について図8および図9を用いて説明する。実施例1と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。以下の実施例においても同様とする。
【0076】
図8は実施例2に係る保温材とセンサシステムの一部構成をセンサプローブ側から見た図であり、センサコイルと磁力線収束構造物との位置関係を示す図である。図9は、実施例2に係る保温材の詳細構成をセンサプローブ側から見た図であり、1つのセンサコイル22aとその近傍に配置される磁力線収束構造物の相対的位置関係を示す図である。
【0077】
図8に示すように、本実施例では、保温材40Aを外表面側から見たときに、検査対象41の表面にセンサコイル22a乃至22dが計測ピッチ71で正方形状に設置されている。
【0078】
従って、磁力線収束構造物1は、保温材40Aの内部に、磁力線収束構造物間隔70を保って四角形状、より具体的には正方形状に配置されている。
【0079】
ここで、磁力線収束構造物間隔70は検査対象の外表面上の距離を指す(配管の場合は配管表面上での距離を指す)。なお、センサコイル22a乃至22dおよび磁力線収束構造物1は、図8で示す数だけでなく、計測ピッチ71および磁力線収束構造物間隔70を保って無数に配置されているものとする。
【0080】
センサコイル22a乃至22dの外径72を大きくすることなく、非接触計測距離を大きくするためには、各センサコイル22a乃至22dに対して少なくとも1つの磁力線収束構造物1をセンサコイル22a乃至22d上に配置すれば良い。
【0081】
したがって、常に全ての磁力線収束構造物1の磁力線収束構造物間隔70が、ある上限距離以内で設置されていることにより、配管などの検査対象41と保温材の位置関係が変化したとしても、より確実に、常にセンサコイル22a乃至22d上に1つ以上の磁力線収束構造物1が配置され、必要な非接触計測距離を確保することができる。
【0082】
図9に示すように、磁力線収束構造物1a乃至1dは,正方配置の最小構成とする。磁力線収束構造物1a乃至1dのうち少なくとも1つがセンサコイル22a上に位置するためには、図9のように、センサコイル22aの外周上に磁力線収束構造物1a乃至1dが配置されるような磁力線収束構造物間隔70を上限距離として確保する必要がある。したがって、センサコイル22aの外径72をDS1[m]とすれば、磁力線収束構造物間隔70(PM1[m])は次式(1)で表される。
【0083】
【数1】
【0084】
以上から、予め(1)式を満足するような磁力線収束構造物1a1乃至1d1を備えた保温材40Aを用いることで、センサコイル22と磁力線収束構造物1a1乃至1d1の相対的位置関係が変化したとしても、常にセンサコイル22上の領域に磁力線収束構造物1a1乃至1d1が配置される。
【0085】
その他の構成・動作は前述した実施例1の保温材40と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0086】
本発明の実施例2の保温材40Aにおいても、前述した実施例1の保温材40とほぼ同様な効果が得られる。
【0087】
なお、本実施例のセンサコイル22の数は1つ以上であればよい。
【0088】
また、センサコイル22a乃至22dは正方配置でなくてもよく、長方形配置、千鳥配列や不規則配置でもよい。磁力線収束構造物1a1乃至1d1は正方配置でなくてもよく、長方形配置でもよい。磁力線収束構造物1a1乃至1d1が長方形に配置される場合、長辺にあたる磁力線収束構造物間隔に対して(1)式が適用されることが望ましい。
【0089】
<実施例3>
本発明の実施例3の保温材について図10を用いて説明する。
【0090】
図10は実施例3に係る保温材の詳細構成をセンサプローブ側から見た図であり、1つのセンサコイルとその近傍に千鳥配列で配置される磁力線収束構造物の相対的位置関係を示す図である。
【0091】
図10に示すように、本実施例では、磁力線収束構造物1a2乃至1d2が千鳥配列の最小構成である正方形状に配置されている。
【0092】
実施例3では、センサコイル22aの構成は実施例2と同じであり、以下では違いのみを述べる。磁力線収束構造物1a2乃至1d2は、保温材内部に千鳥配列で位置しており,センサコイル22aの外周上に配置される。
【0093】
磁力線収束構造物間隔70a,70bは、それぞれ正方形の対角線に相当する間隔であり、図10では両者は等しい間隔となっている。
【0094】
本実施例において磁力線収束構造物1a2乃至1d2のうち少なくとも1つがセンサコイル22a上に確実に位置するためには、図10に示すように、センサコイル22aの外周上に磁力線収束構造物1a2乃至1d2が配置されるような磁力線収束構造物間隔70aおよび70bを上限距離として確保する必要がある。
【0095】
したがって、磁力線収束構造物間隔70aおよびbをPM2[m],センサコイル22aの外径72をDS2[m]とすると、少なくとも1つの磁力線収束構造物がセンサコイル22a上に位置するためのPM2[m]は次式(2)で表される。
【0096】
【数2】
【0097】
以上から、予め(1)式を満足するような磁力線収束構造物1a2乃至1d2を備えた保温材を用いることで、センサコイル22と磁力線収束構造物1a2乃至1d2の相対的位置関係が変化したとしても、常にセンサコイル22上の領域に磁力線収束構造物1a2乃至1d2が配置される。
【0098】
その他の構成・動作は前述した実施例1の保温材40と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0099】
本発明の実施例3の保温材においても、前述した実施例1の保温材40とほぼ同様な効果が得られる。
【0100】
なお、本実施例においても、センサコイル22a乃至22dは正方配置でなくてもよく、長方形配置、千鳥配列や不規則配置でもよい。
【0101】
また、磁力線収束構造物1a2乃至1d2は正方形で構成される千鳥配列でなくてもよく、磁力線収束構造物間隔70a,70bが等しくないひし形の配置でもよい。磁力線収束構造物1a2乃至1d2がひし形で構成される千鳥配列の場合、2本の対角線のうち、長い方に相当する磁力線収束構造物間隔に対して(2)式が適用されることが望ましい。
【0102】
<実施例4>
本発明の実施例4の保温材について図11および図12を用いて説明する。図11は実施例4に係る保温材の構成を示す図である。図12は本発明の実施例4に係る保温材に対する磁力線収束構造物の組み込み方法を示す図である。
【0103】
原子力プラントや火力プラントでは、配管内を流れる流体(水、蒸気等)により、配管の構成材が摩耗し減肉が生じることがある。日本機械学会では推奨される配管減肉検査方法が定められており、その中で計測ピッチが100[mm]以下であることが要求されている。本実施例はそのような対象を想定している。
【0104】
本実施例におけるセンサシステムは、図12に示すように、検査対象の配管44の表面に貼り付けられたセンサ20、ケーブル21、ケーブル21を介してセンサ20と電気的に結合したセンサコイル22、送信コイルおよび受信コイルで構成されるセンサプローブ(図示省略)で構成される。
【0105】
検査対象の配管44は、プラント運転中に高温となるため、ケイ酸カルシウム製(もしくはロックウール製、グラスウール製、無定形水練製、硬質ウレタンフォーム製など)の保温材40Bで覆われている。
【0106】
磁力線収束構造物1は、保温材内面42Bと保温材外面43Bを貫通するように配置されており、その構成は実施例1に記載のものと同様である。
【0107】
前述のように、磁力線収束構造物1は、保温材40Bに配置されており、検査対象の配管44上のセンサ20、センサコイル22と機械的に結合している必要がない。
【0108】
このため、図12に示すように、保温材40Bと磁力線収束構造物1を一体構造で製作することができる。これにより、現地で磁力線収束構造物1の保温材への埋め込みなどが不要になり、製作性が向上する。
【0109】
配管減肉検査では、減肉の兆候が見られた箇所は、保温材を取り外し、より密度の高い計測ピッチで計測する詳細計測に移行する必要があるが、そのような場合においても、本実施例であれば図12に示すように、必要箇所のみ保温材40Bを取り外すことができる。
【0110】
その他の構成・動作は前述した実施例1の保温材40と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0111】
本発明の実施例4の保温材40Bにおいても、前述した実施例1の保温材40とほぼ同様な効果が得られる。
【0112】
<実施例5>
本発明の実施例5の保温材について図13を用いて説明する。図13は実施例5に係る保温材とセンサシステムの構成を示す図である。
【0113】
上述したようなセンサシステムの検査対象の一例には、プラント配管、容器等がある。これの検査対象が高温となる場合、実施例1に記載の保温材40では、磁力線収束構造物1が保温材40を貫通しているため、磁力線収束構造物1を通した放熱をより低減する対策を取ることにより、より保温性能を確保することができる。本実施例ではそのような高温の検査対象を想定している。
【0114】
図13に示すように、本実施例では、センサシステムは、検査対象41の表面に貼り付けられたセンサ20、センサ20とケーブル21を介して電気的に結合したセンサコイル22、センサコイルと検査対象41の間に配置される電磁波遮断シート23、送信コイル31および受信コイル30で構成されるセンサプローブ32で構成される。
【0115】
また、図13に示すように、本実施例の保温材40Cは、その内部に棒形状の磁力線収束構造物5が埋め込まれている。
【0116】
本実施例における磁力線収束構造物5は、保温材外面43Cや保温材内面42Cに突出せずに保温材40Cを貫通しておらず、保温材40Cの中に埋め込まれている。埋め込みに際しては、保温材外面43Cに埋め込み口6を設け、そこから保温材40Cの中に磁力線収束構造物5を埋め込む。なお、保温材内面42C側に埋め込み口を設け、そこから磁力線収束構造物5を埋め込むことができる。
【0117】
磁力線収束構造物5の材料および形状は,実施例1で説明した磁力線収束構造物1と略同じとすることができる。配置については実施例2や実施例3と同じとすることができる。
【0118】
磁力線収束構造物5の上端部から保温材外面43Cまでの距離や、磁力線収束構造物5の下端部から保温材内面42Cまでの距離は、送信コイル31からの磁束を収束させる効果を十分に得るため、少なくとも磁力線収束構造物5の直径以下の値とすることが望ましい。
【0119】
また、磁力線収束構造物5の一部が、検査対象41上に配置されたセンサコイル22の鉛直方向領域2に含まれるように配置する。
【0120】
その他の構成・動作は前述した実施例1の保温材40と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0121】
本発明の実施例5の保温材40Cにおいても、前述した実施例1の保温材40とほぼ同様な効果が得られる。
【0122】
また、検査対象41からの放熱の原因となる熱流束の大きさは、伝達経路の保温材40Cの厚みによって決まる。このため、磁力線収束構造物5は、保温材40Cの内部に埋め込まれた棒形状の部材であることで、高温となる検査対象41からの放熱を抑制しつつ送信コイル31からの磁束を収束させる効果を得ることができる。
【0123】
なお、図13では磁力線収束構造物5が保温材外面43Cおよび保温材内面42Cのいずれからも突出していない場合について説明したが、磁力線収束構造物5は保温材外面43Cや保温材内面42Cのいずれか一方から突出するように配置することができる。
【0124】
<実施例6>
本発明の実施例6の保温材について図14を用いて説明する。図14は実施例6に係る保温材とセンサシステムの構成を示す図である。
【0125】
本実施例は、実施例5と同様に、磁力線収束構造物を通した放熱をより低減する対策を取ることにより、より保温性能を確保することを目的としている。
【0126】
図14に示すように、本実施例の保温材40Dには、その内部に、保温材内面42D側と保温材外面43D側とで分割され、かつ同軸上に設けられた棒形状の磁力線収束構造物7,8が埋め込まれている。
【0127】
上述した実施例5のように、保温材40Cの内部に磁力線収束構造物5が埋め込まれる構造では、磁力線収束構造物5の位置が明示されていない場合は、検査の際にセンサプローブ32とセンサコイル22との位置を整合させるために何かしらの対処を取ることが望まれる。
【0128】
これに対し、本実施例では、保温材外面側磁力線収束構造物7と保温材内面側磁力線収束構造物8を用いるため、高温となる検査対象41からの放熱を抑制しつつ、保温材外面側磁力線収束構造物7が目印として機能することにより検査の際に容易にセンサプローブ32とセンサコイル22を整合させることが可能となる。
【0129】
保温材外面側磁力線収束構造物7および保温材内面側磁力線収束構造物8の正対する端部の距離は、磁束収束の効果を十分に得るため、少なくとも磁力線収束構造物の直径以下の値とすることが望ましい。
【0130】
その他の磁力線収束構造物7,8に関する材料、形状などは実施例1に記載された磁力線収束構造物1と同じとすることができる。配置については実施例2や実施例3と同じとすることができる。
【0131】
その他の構成・動作は前述した実施例1の保温材と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0132】
本発明の実施例6の保温材40Dにおいても、前述した実施例1の保温材40とほぼ同様な効果が得られる。
【0133】
また、検査対象41からの放熱の原因となる熱流束の大きさは、伝達経路の保温材40Dの厚みによって決まる、このため、磁力線収束構造物7,8は、保温材40Dの内面側と外面側とで分割され、かつ同軸上に設けられた棒形状の部材で構成されることで、高温となる検査対象41からの放熱を抑制しつつ送信コイル31からの磁束を収束させる効果を得ることができる。
【0134】
なお、保温材40Dを外面側から見たときに保温材外面側磁力線収束構造物7と保温材内面側磁力線収束構造物8との垂直方向の位置関係が一致している場合について説明したが、保温材外面側磁力線収束構造物7と保温材内面側磁力線収束構造物8とは完全に一致している必要はなく、保温材40Dを外面側から見たときに少なくとも一部分が重なっていることが望ましい。
【0135】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0136】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0137】
1,1a,1b,1c,1d,5:磁力線収束構造物(磁力線収束部材)
2:鉛直方向領域
3,4:磁束
6:埋め込み口
7:保温材外面側磁力線収束構造物
8:保温材内面側磁力線収束構造物
10:切欠き部
20:センサ
21:ケーブル
22,22a,22b,22c,22d:センサコイル
23:電磁波遮断シート
30:受信コイル
31:送信コイル
32:センサプローブ
40,46:保温材
41:検査対象(構造体)
42:保温材内面
43:保温材外面
44:配管
70,70a,70b:間隔
71:計測ピッチ
72:外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14