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特許7208778液晶偏光干渉計で使用されるカラーフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】液晶偏光干渉計で使用されるカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/447 20060101AFI20230112BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230112BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20230112BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20230112BHJP
   G01J 3/45 20060101ALI20230112BHJP
   G01J 3/50 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G01J3/447
G02B5/20
G02B5/22
G02B5/28
G01J3/45
G01J3/50
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018228903
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2019120682
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】15/858,354
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ヘギー
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109676(JP,A)
【文献】特開2009-194604(JP,A)
【文献】特開2006-106457(JP,A)
【文献】米国特許第05521705(US,A)
【文献】特表2017-504791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
入力光の第1の偏光と第2の偏光との間の光路遅延を引き起こす液晶偏光干渉計であって、液晶セル間に印加される電圧に応答して、可変リターダンスを提供する液晶可変リターダと、前記液晶セルの反対側の第1および第2の偏光子とを備える液晶偏光干渉計と、
前記液晶偏光干渉計を通過する出力光に基づいて、インターフェログラムを検知する画像センサと、
前記入力光および前記出力光のうちの1つをフィルタリングするカラーフィルタであって、赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内でより多くの光を通過させるスペクトル透過特性を有し、前記入力光および前記出力光のうちの前記1つの見かけの色温度を上昇させることを意図する色温度補正フィルタである、カラーフィルタと、
前記装置のスペクトル感度を補償するように調整された光学スペクトルを有する照明源であって、赤色スペクトル範囲内よりも青色スペクトル範囲内で高い光の強度を含む、照明源と、を備える、装置。
【請求項2】
前記カラーフィルタは、前記青色スペクトル領域における前記画像センサの感度の低下を補償する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記画像センサは、前記インターフェログラムからビデオフレームを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記カラーフィルタは、吸収フィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記カラーフィルタは、干渉フィルタを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
液晶偏光干渉計を備える装置のスペクトル感度を補償するように調整された光学スペクトルを有する照明源で照明することにより入力光を形成することであって、前記照明源が赤色スペクトル範囲内よりも青色スペクトル範囲内で高い光の強度を含む、照明することと、
液晶セル間に印加される電圧に応答して、可変リターダンスを提供する液晶可変リターダと、前記液晶セルの反対側の第1および第2の偏光子とを備える液晶偏光干渉計を介して、前記入力光の第1の偏光と第2の偏光との間の光路遅延を引き起こすことと、
前記液晶偏光干渉計を通過する前記入力光および出力光のうちの1つを、比例してより多くの光が、赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内で通過するように、カラーフィルタでフィルタリングすることであって、前記カラーフィルタは、前記入力光および前記出力光のうちの前記1つの見かけの色温度を上昇させることを意図する色温度補正フィルタである、フィルタリングすることと、
前記出力光に基づいて、インターフェログラムを形成することと、を含む、方法。
【請求項7】
前記フィルタリングすることは、前記青色スペクトル領域内における画像センサの感度の低下を補償し、前記画像センサは、前記インターフェログラムを検知する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルタリングすることは、前記入力光の見かけ上の色温度を上昇させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ハイパースペクトル画像化システムであって、
入力光の第1の偏光と第2の偏光との間の光路遅延を引き起こす液晶偏光干渉計であって、液晶セル間に印加される電圧に応答して、可変リターダンスを提供する液晶可変リターダと、前記液晶セルの反対側の第1および第2の偏光子とを備える液晶偏光干渉計と、
前記液晶偏光干渉計を通過する出力光に基づいて、インターフェログラムを検知する画像センサであって、前記インターフェログラムは、画像フレームを作成するために用いられる、画像センサと、
前記入力光および前記出力光のうちの1つをフィルタリングするカラーフィルタであって、赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内でより多くの光を通過させるスペクトル透過特性を有し、前記入力光および前記出力光のうちの前記1つの見かけの色温度を上昇させることを意図する色温度補正フィルタである、カラーフィルタと、
前記ハイパースペクトル画像化システムのスペクトル感度を補償するように調整された光学スペクトルを有する照明源であって、赤色スペクトル範囲内よりも青色スペクトル範囲内で高い光の強度を含む、照明源と、
前記液晶可変リターダおよび前記画像センサに結合された制御器であって、前記液晶可変リターダの前記可変リターダンスを制御し、前記画像フレームを空間分解スペクトルデータに変換するように構成された制御器と、を備える、ハイパースペクトル画像化システム。
【請求項10】
前記カラーフィルタは、吸収フィルタおよび干渉フィルタのうちの1つを備える、請求項9に記載のハイパースペクトル画像化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液晶偏光干渉計で使用されるカラーフィルタに関する。一実施形態では、装置は、入力光の第1の偏光と第2の偏光との間の光路遅延を引き起こす液晶偏光干渉計を含む。液晶偏光干渉計は、液晶セル間に印加される電圧に応答して可変リターダンスを提供する液晶可変リターダを含む。第1および第2の偏光子は、液晶セルの反対側にある。この装置は、液晶偏光干渉計を通過する出力光に基づいてインターフェログラムを検知する画像センサを含む。この装置は、入力光および出力光のうちの1つをフィルタリングするカラーフィルタを含む。カラーフィルタは、赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内でより多くの光を通過させるスペクトル透過特性を有する。
【0002】
別の実施形態では、方法は、液晶偏光干渉計を介して入力光の第1の偏光と第2の偏光との間の光路遅延を引き起こすことを伴う。液晶偏光干渉計は、液晶セル間に印加される電圧に応答して可変リターダンスを提供する液晶可変リターダを含み、液晶セルの反対側に第1および第2の偏光子をさらに含む。液晶偏光干渉計を通過する入力光および出力光のうちの1つは、比例してより多くの光が赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内を通過するようにフィルタリングされる。出力光に基づいてインターフェログラムが形成される。
【0003】
以下の議論は、複数の図面における同様の/同じ構成要素を識別するために同じ参照番号が使用され得る以下の図面を参照する。図面は、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】例示的な実施形態による入力スペクトルにハイパースペクトル画像装置の入力スペクトルおよび応答を示すプロットである。
図2】例示的な実施形態による入力スペクトルにハイパースペクトル画像装置の入力スペクトルおよび応答を示すプロットである。
図3】例示的な実施形態による画像センサの特性を示すプロットである。
図4】例示的な実施形態による画像センサの特性を示すプロットである。
図5】例示的な実施形態による偏光干渉計の透過率および感度特性を示すプロットである。
図6】例示的な実施形態による偏光干渉計の透過率および感度特性を示すプロットである。
図7】例示的な実施形態による偏光干渉計の透過率および感度特性を示すプロットである。
図8】例示的な実施形態による偏光干渉計の透過率および感度特性を示すプロットである。
図9】例示的な実施形態による偏光干渉計の透過率および感度特性を示すプロットである。
図10】例示的な実施形態によるフィルタの透過プロファイルを示すプロットである。
図11】例示的な実施形態によるフィルタと組み合わされたハイパースペクトル画像装置の感度を示すプロットである。
図12】例示的な実施形態による装置の図である。
図13】例示的な実施形態による方法のフローチャートである。
図14】例示的な実施形態によるシステムおよび装置の図である。
【0005】
本開示は、ハイパースペクトル画像化デバイスに関する。本明細書に記載されるハイパースペクトル画像化デバイスは、干渉計を通過する光の成分に可変光路遅延を導入するように構成された偏光干渉計を使用する。経路遅延を引き起こすデバイス(可変光学リターダと呼ばれる)は、可変経路遅延が入射偏光方向の第1の光線と直交偏光の第2の光線(例えば、常光線および異常光線)との間に導入されるように、2つの偏光子の間に置かれる。この経路遅延は、第1の光線と第2の光線との間の波長依存性位相シフトを引き起こす。経路遅延は、偏光干渉計を出る光に、光センサ、例えば焦点面アレイを介して検出される共通パスインターフェログラムを形成させる。
【0006】
偏光干渉計は、可変光学リターダのような1つ以上の液晶(LC)セルを使用することができる。そのようなデバイスは、本明細書では液晶可変リターダ(LCVR)と呼ばれる。一般に、液晶(LC)材料は、電場または磁場などの外部刺激を印加することによって選択的に変更することができるいくつかの結晶特性(例えば、LC分子の局所平均配列を示すLCダイレクタなどの内部構造の配向)を有する液体である。LCダイレクタの配向の変化は、LC材料の光学特性を変更する、例えば、LC複屈折の光軸を変化させる。
【0007】
LCVRは、液晶を通過する光の直交する2つの偏光の間に、可変光路遅延(可変リターダンスとも呼ばれる)を生成する。LCVR内の1つ以上の液晶セルは、電気的に同調可能な複屈折素子として機能する。液晶セルの電極間の電圧を変更することによって、セル分子の配向が変化し、ある期間にわたって光路遅延を制御可能に変化することが可能となる。
【0008】
LCVRを有する偏光干渉計を作るために、LCVRは、名目上平行または垂直の偏光軸を有する第1の偏光子と第2の偏光子との間に置かれる。LCVRの遅軸(可変光路遅延を伴う偏光軸)は、第1の偏光子の偏光方向に対して名目上45度配向される。入射光は、第1の偏光子によって入射偏光方向に偏光される。LCVRの遅軸は、この入射偏光方向に対して45度であるので、偏光された入射光は、LCVRの遅軸に平行に偏光された光の一部およびこの軸に垂直に偏光された光の一部に関して説明することができる。
【0009】
光がLCVRを通過するとき、光は、第1の偏光と第2の偏光との間の波長依存性相対位相シフトを取得し、それによって偏光状態の波長依存性変化をもたらす。第1の偏光子に平行または垂直に配向された第2の偏光子またはアナライザは、LCVRの遅軸に平行に偏光された光の部分を垂直に偏光された光の部分と干渉させ、LCVRの出力における波長依存性偏光状態を、光検出器または焦点面アレイによって検知することができる波長依存性強度パターンに変化させる。LCVRのリターダンスを変えながらこの強度を検知することにより、入射光のスペクトル特性を確認するために使用することができる、入射光のインターフェログラムを測定することが可能である。
【0010】
上記のLCVRは、入射光のスペクトル情報を非スペクトル分解検出器で容易に測定される強度パターンにエンコードするその能力のために、ハイパースペクトル画像化用途に使用される。ハイパースペクトル画像化は、高密度にサンプリングされた微細分解スペクトル情報が各ピクセルに提供される画像を含んでもよい、ハイパースペクトルデータセットまたはデータキューブを取得するための方法およびデバイスを指す。
【0011】
一部のハイパースペクトル画像化デバイスで見られる1つの問題は、赤色の感度に対して青色の感度が低下することである。この感度の差は、これらのハイパースペクトル画像化デバイスのその光学スペクトルの検出可能な範囲全体のダイナミックレンジを劣化させる。例えばLCVR偏光干渉計を使用してフーリエ変換ハイパースペクトル画像化を実行するとき、より長い波長(例えば、500~600nm以上、または赤色スペクトル領域)に対してより短い波長(例えば、400~500nm以下、または青色スペクトル領域)でのすべての感度の低下に寄与する複数の要因が存在する。これらの要因については、以下でより詳細に説明する。
【0012】
より短い波長での感度の欠如は、そのようなシステムの時間および波長多重画像取得により問題となる場合があり、これは、任意の時点で、ハイパースペクトル画像装置のスペクトル範囲全体からの光が画像センサで検出されることを意味する。各波長からのショットノイズは、完全に再構成されたスペクトルにわたって分布する。したがって、検知されるスペクトルが単位波長当たり等しいエネルギーを有するが、ハイパースペクトル画像装置が短波長感度が低い場合、短波長信号は、より長い波長で生成されるショットノイズによって不明瞭になる。
【0013】
また、そのようなシステムのスペクトル再構成は、完全ではなく、一般的に、ある程度のスペクトル漏れが存在する。例えば、赤色の単色光源は、青色に現れる再構成されたスペクトル内の側波帯を有する。側波帯抑圧が赤色と青色との間の相対感度のオーダ(またはそれ未満)の場合、赤色光源は、青色のあらゆる真の信号をひどく歪める。
【0014】
上記のシナリオは、図1および図2のプロットによって視覚化することができる。図1は、キセノンアークランプによって放射される単位波長当たりのスペクトルパワーのプロットを示し、図2は、例示的な実施形態によるハイパースペクトル画像装置のスペクトル感度および分解能特性を示す。これらの図を生成するために、キセノンアークランプからの光を、モノクロメータを通じて、光パワー検出器をポートのうちの1つに結合させた積分球に送った。モノクロメータは、積分球に入射するモノクロメータ波長を中心とする狭帯域の波長において、パワー検出器が光パワーを記録するにつれて、400nm~1000nmを10nmステップで前進させた。このパワー対波長曲線を図1にプロットする。一方、ハイパースペクトル画像装置を第2の積分球ポートに向けて、モノクロメータからの拡散光を画像化し、各モノクロメータ波長についてのハイパースペクトルデータキューブを得た。各ハイパースペクトルデータキューブの小さなエリアからの空間平均が図2にプロットされ、各曲線は、1つのモノクロメータ波長に対するハイパースペクトル画像装置の線形状を表し、各曲線下のエリアは、図1に示すように、その波長で放射されたキセノンランプパワーを有する所与の波長におけるハイパースペクトル画像装置感度の積に対応する。青色波長に対する感度が、赤色波長に対する感度よりもはるかに低いことが分かる。また、青色に現れる赤色波長の側波帯が、青色のピーク信号と同様の大きさを有し、これが、赤色信号の存在下でほとんどの青色信号を著しく歪めることが分かる。
【0015】
上記の問題は、ハイパースペクトル画像装置と、光源の見かけの色温度を上昇させることを意図する色温度補正フィルタとして既知の特定の種類の光学フィルタとを組み合わせることによって解決することができる。これらのフィルタは、光透過率が、青色が高く、赤色に近づくほど次第に低くなり、近赤外で再びピックアップすることが多く、これによりさらに、そのスペクトル範囲内の比較的低いスペクトル感度を補償することができる点で、この用途にとって理想的な特性を有する。この特性は、ハイパースペクトル画像装置のスペクトル感度と乗算されると、全体的な感度曲線が平坦化され、検出可能な光学スペクトルにわたってダイナミックレンジが増加するのに役立つ。以下の考察では、液晶偏光干渉計に基づくフーリエ変換ハイパースペクトル画像装置の青色感度を低下させ得るいくつかの要因が詳述されている。さらに、スペクトル全体のダイナミックレンジを維持するために、一様でないスペクトル感度を補償するための機構が記載されている。
【0016】
いくつかの実装形態では、青色が低感度である1つの原因は、入射光パワーに発生する光電流に関連する機能である画像センサの応答性である。これは、センサの量子効率およびより青色(より短い波長)の光子がより赤色の光子よりも光子当たりでより多くのエネルギーを運ぶという基本的な事実の両方を考慮に入れており、したがって、より短い波長で入射パワーの単位当たりに生成される光電流はより少ない。これは、図3および図4のプロットに示されており、それぞれ、例示的な実施形態による画像センサの量子効率および近似応答性を示す。図4で分かるように、400nmの信号~600nmの信号に約3倍の応答性の差がある。
【0017】
いくつかの実装形態では、青色が低感度である別の原因は、波長とスペクトル分解能との関係であり、利用される干渉計技法の場合、スペクトル分解能は、波長の二乗に比例する。したがって、単位波長当たりの光パワーが均一なスペクトルの場合、スペクトル帯域当たりの測定されたエネルギーは、波長の二乗に比例し、検出可能な光学スペクトルにわたってダイナミックレンジを再び減少させる。
【0018】
可変光学リターダのクリアアパーチャにわたって存在する任意の経路遅延誤差は、より長い波長に対してより短い波長でより顕著である位相不均質性(フリンジコントラストの損失)につながる。図1図4のプロットに示された波長範囲にわたり、このフリンジコントラストの差は、50%以上であってもよい。
【0019】
液晶偏光干渉計に基づくハイパースペクトル画像化システムの場合(より一般的には、透過光学素子を用いるハイパースペクトル画像化システムの場合)、液晶セル基板(例えば、ガラス)の透過率および偏光子基板の透過率、ならびに偏光子によって与えられる偏光度を考慮するべきである。これらの量のすべては、図5および図6に示すように、より短い波長で減少する。図5のプロットは、液晶材料の有無にかかわらず、例示的な実施形態によるハイパースペクトル画像装置のための偏光干渉計に使用される単一の液晶セルの光透過率を示す。このセルは、従来のソーダ石灰ガラスから構成されていたので、透過波長が400nmに近づくにつれてわずかな透過ディップが存在する。この透過のディップは、十分な最大光路遅延を有する液晶可変リターダを構築するために必要となり得る複数の液晶セルの積み重ねによって複合化される。ホウケイ酸ガラスまたは溶融シリカ基板の使用は、この問題を緩和するのに役立つ。液晶(LC)材料の透過率は、空のLCセルの透過率をLCで充填されたセルの透過率と比較することによって推測され、この測定の場合、LC透過率は、比較的均一であった。しかしながら、異なる基板および偏光子材料の均一なスペクトル透過率に関するすべての考慮事項は、LC材料にも当てはまる。図6のプロットは、2つの偏光子基板タイプおよび4つの偏光子タイプの透過率を示す。偏光子基板および偏光子タイプは、赤色から青色へ、または検出可能な光学スペクトルにわたって均一な(または可能な限り均一な)透過率を有するように選択することができる。
【0020】
図7図11では、様々なプロットは、ハイパースペクトル画像装置の実施形態の不均一な感度に寄与する様々な要因の複合効果、およびこれらの要因のいくつかが対処されたときに何が起こるかを示している。図7において、プロットは、液晶偏光干渉計(図5および図6のように2つの充填された液晶セルおよび2つの偏光子を有する)を通る透過率と、図4の画像センサの応答性との複合効果を示す。400nmの青色(紫色)よりも600nmの赤色において約14倍高い感度が存在する。図8のプロットは、図7からのプロットを組み合わせたものであり、様々な波長でのインターフェログラムフリンジコントラストの相対的変化の影響およびスペクトル分解能の波長二乗依存性(したがって、単位波長当たりの均一なパワーを有する光源に対する感度)の影響を伴う。
【0021】
図9のプロットは、図8からのプロットを取り入れ、液晶偏光干渉計の不均一なスペクトル透過率の影響を除去する。これは、偏光干渉計のスペクトル透過率が、LC材料、LCセル基板、および偏光子の適切な選択によって平坦化することができることを仮定している。図10のプロットは、例示的な実施形態によるカラーバランスフィルタ(または色温度シフトフィルタ)のスペクトル透過プロファイルである。この場合、カラーバランスフィルタは、-200ミレッドの色温度シフトを有し、フィルタは、Hoya(登録商標)Corporation製のLB-200カラーガラスの厚さ2.5mmのスラブを含む。図11のプロットは、図10に示すフィルタの透過率による乗算後の図9のハイパースペクトル画像装置感度を示す。
【0022】
したがって、上述した不均一なスペクトル感度を補償するために、装置(例えば、ハイパースペクトル画像装置)は、少なくとも青色と赤色との間で、波長に対して比較的平坦なスペクトル応答を作成するために、偏光子効率および補償フィルタ特性を有する1つ以上の材料(例えば、偏光子およびLCセル用基板材料)を含む。これを行う好ましい方法は、白熱(例えば、タングステン-ハロゲン)光源の見かけの色温度を上昇させるために使用される種類の色温度バランスフィルタを光路に導入することである。そのようなフィルタの色温度シフトは、「ミレッド」で以下の式(1)に示されており、Kは、白熱源の色温度であり、Kは、フィルタを通して見た光源の見かけの色温度である。赤色に対する青色の感度を高めるのに好適であるフィルタの「ミレッド」を特徴付ける別の方法は、以下の式(2)に示され、Tは、610nm、635nm、および655nmにわたる平均フィルタ透過率値(%)であり、Tは、405nm、435nm、および465nmにわたる平均フィルタ透過率値(%)である。
【0023】
【化1】
【0024】
図12において、ブロック図は、例示的な実施形態による画像化システム1200および装置を例証する。システム1200は、液晶偏光干渉計1202を含む。液晶偏光干渉計1202は、1つ以上の液晶セル1204a間に印加される電圧に応答して可変リターダンスを提供する液晶可変リターダ1204を含む(例えば、セル基板1204b上に堆積された電極を介して。液晶セル1204aは、図には示されていない追加のセル基板および電極を備えることができることに留意されたい)。第1および第2の偏光子1206、1208は、液晶可変リターダの反対側にある。液晶偏光干渉計1202は、入力光1201の第1の偏光と第2の偏光との間に光路遅延を引き起こす。画像センサ1210は、液晶偏光干渉計1202を通過し、第2の偏光子1208で干渉した出力光1203の偏光成分における相対的な経路遅延から形成されるインターフェログラム1211を検知する。液晶可変リターダ1204の液晶セルおよび2つの偏光子1206、1208のいずれかは、溶融シリカ基板および/またはホウケイ酸塩基板から形成され得る。
【0025】
システム1200はまた、画像センサ1210によって検知された光をフィルタリングするカラーフィルタ1212を含む。カラーフィルタ1212は、赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内でより多くの光を通過させるスペクトル透過特性を有する。カラーフィルタ1212は、例えば、入力光1201の見かけの色温度を上げることによって、青色スペクトル領域内の画像センサ1210の感度の低下を補償し得る。
【0026】
この実施例では、液晶偏光干渉計1202と画像センサ1210との間にあるカラーフィルタ1212が示される。カラーフィルタ1212は、点線1213~1217によって示されるように、システム1200内の他の場所にあってもよい。カラーフィルタ1212は、吸収フィルタおよび干渉フィルタのうちの1つを含んでもよく、同じまたは異なるタイプの複数のフィルタ1212を使用してもよい。カラーフィルタは、-20~-400ミレッドの組み合わされた色温度シフトを有し、かつ/またはそれぞれ、赤色波長帯域と青色波長帯域との間の1%~100%の相対的な差に対するインターフェログラムの波長依存性を改質する特性を有してもよい。
【0027】
図13において、フローチャートは、例示的な実施形態による方法を示す。本方法は、液晶偏光干渉計を介して入力光の第1の偏光と第2の偏光との間の光路遅延を引き起こすこと1300を伴う。液晶偏光干渉計は、液晶セル間に印加される電圧に応答して可変リターダンスを提供する液晶可変リターダを含み、液晶セルの反対側に第1および第2の偏光子も含む。液晶偏光干渉計を通過する入力光および出力光のうちの1つは、比例してより多くの光が赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内を通過するようにフィルタリングされる1301。青色光振幅は、このフィルタリング1301による赤色光振幅よりも(絶対的な意味で)大きくする必要はなく、ただ青色のフィルタリングされた相対量が赤色のものよりも小さいことに留意されたい。出力光に基づいてインターフェログラムが形成される1302。
【0028】
図14において、ブロック図は、例示的な実施形態による画像処理を実行する装置1400を例証する。装置1400は、1つ以上のプロセッサ、例えば、中央処理装置、サブプロセッサ、グラフィック処理装置、デジタル信号プロセッサなどを含み得るデバイス制御器1402を含む。制御器1402は、以下により詳細に記載される機能モジュールを含むメモリ1404に結合される。メモリ1404は、揮発性メモリと不揮発性メモリとの組み合わせを含んでもよく、当技術分野で既知のような命令およびデータを記憶してもよい。
【0029】
装置1400は、装置1400の外部から光を受ける外部光インターフェース1408を有する光学セクション1406を含む。外部光インターフェース1408は、装置1400の外部から内部光学部品に光1409を通過させるのに好適な窓、レンズ、フィルタ、アパーチャなどを含んでもよい。この実施例では、外部レンズ1410に結合された外部光インターフェース1408が示されている。
【0030】
偏光干渉計1412は、装置1400の光学セクション1406内にある。偏光干渉計1412は、例えば、電気信号線を介して制御器1402に結合される。制御器1402は、偏光干渉計1412に信号を印加して、干渉計1412の一部であるLCVR1412aに時変光路遅延またはリターダンスを生じさせる。この時変光路遅延は、光1409の異なる偏光の間のシフトを引き起こし、光路遅延の関数として変更されるインターフェログラムを形成する出力光1411を生じる。インターフェログラムは、制御器1402にも結合されている画像センサ1414(例えば、一連のセンサピクセル、焦点面アレイ)によって検出される。画像センサ1414は、インターフェログラムに基づいて静止画像および/またはビデオフレームを形成し得る。
【0031】
リターダンス制御器1418は、時変リターダンス軌道を達成するために、LCVRの1412aに制御信号を適用するために、デバイス制御器1402に指示する。画像プロセッサ1420は、画像センサ1414で検出されたインターフェログラムと共に、時変経路遅延の尺度としてこのリターダンス軌道を使用する。検出された各インターフェログラムは、LCVR1412aの対応する位置での経路遅延の関数として変換を計算することによって処理することができ、位置の関数として共に処理されたインターフェログラムは、空間的に分解されたスペクトル情報、例えば、ハイパースペクトルデータキューブを生じる。ハイパースペクトルデータキューブは、静止画像およびビデオの一方または両方として提示されてもよい。
【0032】
光学セクション1406は、入力光1409および出力光のうちの1つ以上をフィルタリングするカラーフィルタ1430を含む。カラーフィルタ1430は、赤色スペクトル領域内よりも青色スペクトル領域内でより多くの光を通過させるスペクトル透過特性を有する。カラーフィルタ1430は、とりわけ、青色スペクトル領域における画像センサの感度の低下を補償する。カラーフィルタ1430は、吸収フィルタまたは干渉フィルタを含んでもよい。カラーフィルタ1430は、-20~-400ミレッドの色温度シフトを有するような光源の見かけの色温度を上昇させる。カラーフィルタ1430は、装置のスペクトル感度を、赤色波長帯域と青色波長帯域との間の1%~100%の相対差にそれぞれ改質され得る。他の実施形態では、カラーフィルタは、入力光1409が通過するレンズ1410などの外部光学アセンブリに含まれてもよい。
【0033】
液晶偏光干渉計が、スペクトル検知を実行する他の装置と同様に、ハイパースペクトル画像化システムにも使用することができるとすると、そのような装置に、その不均一なスペクトル感度を補償するように調整された光学スペクトルを有する照明源を含めることが有益であり得る。例えば、装置1400は、外部の風景を照明するために装置1400の外部に向けられた照明源1440を含んでもよい。次いで、照明源1440からの光は、外部の風景から反射し、外部の風景に存在する反射スペクトルに関する情報を組み込み、それが入力光1409として装置1400に入る。したがって、レンズ1410は、光源1440によって照明された外部の風景をFPA1414に画像化する。本実施形態のように、装置1400の感度が、赤色スペクトル範囲内よりも青色スペクトル範囲内が低い場合、照明源1440は、これを補償するために赤色スペクトル範囲内よりも青色スペクトル範囲内で高い光の強度を含むことができる。そのような照明源1440は、個別に調整された出力強度および中心波長を有する複数の狭帯域光源、例えばLEDを備えることができる。あるいは、それは、キセノンアークランプのような高色温度源を備えることができる。外部の風景は、光源1440からの光と周辺光との組み合わせによって照明することができる。光源1440は、本実施形態で使用されるフィルタ1430と同様のカラーフィルタでフィルタリングされて、青色光の赤色光に対する比を増加させてもよい。
【0034】
装置1400は、多くの用途のために構成されてもよい。例えば、装置1400は、モバイルデバイス(例えば、ポータブルカメラ、携帯電話、タブレット、ウェアラブルデバイス)および/またはモバイルデバイス用アクセサリとして構成されてもよい。一般に、モバイルデバイスは、モバイル電源(例えば、バッテリ、燃料電池、太陽電池)を含み得、ユーザによって輸送されるのに好適なサイズおよび重量を有し得る。モバイルデバイスは、制御器1402が内部的に画像処理を実行できるように構成されてもよいが、依然として、未処理のデータまたは処理されたデータをデータインターフェース1422を介して外部コンピュータ1424に転送するように構成されてもよい。データインターフェース1422は、無線インターフェース、例えば、WiFi、ブルートゥース(登録商標)などを含んでもよい。
【0035】
上述の種々の実施形態は、特定の結果を提供するために相互作用する回路、ファームウェア、および/またはソフトウェアモジュールを使用して実装されてもよい。関連分野の当業者は、当技術分野で一般的に既知の知識を使用して、モジュラーレベルで、または全体として、そのような記載された機能性を容易に実装することができる。例えば、本明細書に例証されるフローチャートおよび制御図は、プロセッサによる実行のためのコンピュータ可読命令/コードを作るために使用されてもよい。そのような命令は、非一時的なコンピュータ可読媒体に記憶され、当技術分野で既知のように実行のためにプロセッサに転送されてもよい。上に示した構造および手順は、上で記載した機能を提供するために使用することができる実施形態の代表例に過ぎない。
【0036】
他に示さない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される特徴の大きさ、量、および物理的特性を表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、上記の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようと試みる所望の特性に応じて変えることができる近似値である。端点による数値範囲の使用には、その範囲内のすべての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)およびその範囲内の任意の範囲が含まれる。

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