(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】潤滑添加剤としてのアゾール誘導体
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20230112BHJP
C10M 129/10 20060101ALI20230112BHJP
C10M 129/32 20060101ALI20230112BHJP
C10M 133/46 20060101ALI20230112BHJP
C10M 135/10 20060101ALI20230112BHJP
C10M 135/36 20060101ALI20230112BHJP
C10M 169/04 20060101ALI20230112BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20230112BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20230112BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20230112BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M129/10
C10M129/32
C10M133/46
C10M135/10
C10M135/36
C10M169/04
C10N30:02
C10N40:04
C10N40:08
(21)【出願番号】P 2018509543
(86)(22)【出願日】2016-08-17
(86)【国際出願番号】 US2016047247
(87)【国際公開番号】W WO2017031145
(87)【国際公開日】2017-02-23
【審査請求日】2019-07-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-15
(32)【優先日】2015-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グエン, ンガ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ミアット, ピーター
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-537008(JP,A)
【文献】米国特許第4202783(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
C10N 10/00- 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.潤滑粘度の油と、
b.0.05~0.3wt%のチアジアゾールと、
c.0.01~2wt%の式(VI):
【化1】
で表されるアゾール-アクリル付加物であって、
ここで、R
6は、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であり;R
7は、窒素原子に結合しており、そして直鎖状C
2~C
20ヒドロカルビル基であり;そしてR
8は、C
1~C
20ヒドロカルビル基であり、そして直鎖状、分枝鎖状、同素環式、複素環式、またはそれらの組合せである、アゾール-アクリル付加物と
を含む潤滑組成物であって、
ここで、チアジアゾールおよびアゾール-アクリル付加物の総量は、前記潤滑組成物の合計重量に基づいて、0.1wt%よりも大きい値から1wt%未満である、
潤滑組成物。
【請求項2】
前記アゾール
-アクリル付加物が、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体、1,2,3-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール誘導体、1,3,4-トリアゾール、1,3,4-トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラゾール、ピラゾール誘導体、1,4,メチルベンゾトリアゾール、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記チアジアゾールが、1,3,4-チアジアゾール,2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)、2-(ヘプチルヒドロキシフェニルメチルチオ)-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、またはそれらの混合物を含む、請求項1または2に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の摩擦調整剤をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記潤滑組成物が前記潤滑組成物の合計重量に基づき、300ppmのリンを有するような量で存在するリン含有抗摩耗剤をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の潤滑組成物。
【請求項6】
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素を潤滑する方法であって、前記構成要素を、請求項1から5のいずれかに記載の潤滑組成物と接触させるステップを含む、方法。
【請求項7】
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させるための、請求項1から5のいずれかに記載の潤滑組成物におけるアゾール-アクリル付加物の使用。
【請求項8】
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させる方法であって、前記構成要素を、請求項1から5のいずれかに記載の潤滑組成物と接触させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示の技術の分野は、概して、アゾール誘導体を含む潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ドライブライン動力伝達デバイス(ギアまたはトランスミッション等)のための潤滑剤、とりわけ、車軸流体、オートマチックトランスミッションフルード(ATF)およびマニュアルトランスミッションフルード(MTF))は、耐久性および清浄度を提供しながら、複数の、しばしば矛盾する潤滑要件を満足するための、非常に難易度の高い技術的問題および解決策を提示する。潤滑組成物は、一般に、長期寿命および効率を有するドライブライン動力伝達デバイスを提供するための抗摩耗剤および極圧添加剤を有する。潤滑組成物はまた、堆積物形成および腐食を低減させ、酸化安定性を提供すべきである。残念なことに、用いられる抗摩耗剤または極圧添加剤の多くは、限られた酸化安定性を有し、堆積物を形成し、または腐食を増大させる。加えて、多くのリン抗摩耗剤または極圧添加剤は、典型的には、硫黄を含有し、これは、リン抗摩耗剤または極圧添加剤を含有する、臭気のある潤滑組成物をもたらす。
【0003】
加えて、多くの潤滑剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)抗摩耗剤を含有する。水の存在下で、ZDDPは崩壊し得、より不安定な(または反応性の)硫黄の放出をもたらす。不安定な硫黄は、銅腐食を増大させ得る。加えて、ZDDP抗摩耗剤が分解するにつれて、低減した量の抗摩耗剤の存在により、摩耗の増大が発生し得る。
【0004】
配合者が、ある特定の有益な添加剤を用いることにより、鉛または銅腐食に向けた仕様も満たしながら、本発明のドライブライン潤滑剤仕様を満たすことは困難である。一般的に使用される銅腐食阻害剤は、メチルベンジルトリアゾール(多くの場合、トリルトリアゾールまたは単純に「TTZL」とも称される)等のアゾールまたはそれらの誘導体を含む。TTZLおよびTTZL誘導体はいずれも、ある特定の用途において欠点を有し得る。TTZLは、80℃で溶融する固体であり、潤滑油製造プロセスにおけるブレンドまたは懸濁を困難にする。TTZLは、一部の状況下で、鉛腐食にも寄与し得る。故に、TTZLおよびその公知の誘導体は、潤滑油における腐食阻害の必要性に十分に対処してこなかった。追加の銅腐食阻害剤は、チアジアゾール、および1,3,4-チアジアゾール,2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)または2-(ヘプチルヒドロキシフェニルメチルチオ)-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール等の置換チアジアゾールを含む。しかしながら、チアジアゾールは、t-ノニルメルカプタンを放出し得、不快な臭気をもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
しかしながら、驚くべきことに、アクリルを用いて作製されたアゾール誘導体は、鉛腐食に対して最小限の損害で、銅腐食を阻害することが分かった。さらに、アゾール誘導体は、チアジアゾールとともに使用すると、銅腐食を阻害する相乗効果を提供し、それにより、腐食阻害性能を維持しながら、臭気のあるチアジアゾールの量を低減させる。アゾール誘導体は、室温で油溶性液体であり、それらのTTZLまたはTTZL誘導体前駆体よりも、潤滑油中へのブレンドまたは懸濁を簡単にする。したがって、一実施形態では、チアジアゾールと、アゾール化合物をアクリルと接触させることによって形成されたアゾール-アクリル付加物とを含む、潤滑組成物が開示される。形成された付加物は、少なくとも1つのアシルを含む少なくとも1つの窒素-アルキル(または「N-アルキル」)基を有する。
【0006】
アクリルは、少なくとも1つの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはそれらの組合せを含んでよい。本明細書において使用される場合、用語「アクリル」は、アクリル酸もしくはメタクリル酸の誘導体、塩またはアミドを含む。さらに、用語「(メタ)アクリレート」および関連用語は、アクリレート基およびメタクリレート基の両方を含む、すなわち、メチル基は任意選択である。したがって、一部の実施形態では、アクリルは、少なくとも1つのアクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、またはそれらの組合せを含んでよい。さらに他の実施形態では、アクリルは、式(I):
【化1】
[式中、Rは、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であり、R
1は、C
1~C
20ヒドロカルビル基である]
を有する(メタ)アクリレートであってよい。別の実施形態では、Rは、水素またはメチル基であってよい。
【0007】
さらに他の実施形態では、(メタ)アクリレートは、少なくとも1つのアクリレート、メタクリレート、またはそれらの組合せを含んでよい。
【0008】
好適なアクリレートは、オクタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。好適なメタクリレートは、オクタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、デシルメタクリレート、2-プロピルヘプチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0009】
アゾール-アクリル付加物を作製するための好適なアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体、1,2,3-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール誘導体、1,3,4-トリアゾール、1,3,4-トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラゾール、ピラゾール誘導体、1,4,メチルベンゾトリアゾール、またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0010】
一実施形態では、潤滑組成物は、式(II)または(III):
【化2】
[式中、R
2およびR
3は、独立して、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であるか、あるいはR
2およびR
3は一緒になって、5から6個の炭素原子を含有する飽和または不飽和環を形成し;R
4は、少なくとも1つのアシルを含むC
2~C
40ヒドロカルビル基であり、ここで、ヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝鎖状、同素環式もしくは複素環式、またはそれらの組合せであり;X
1は、NまたはCであり;X
2およびX
3は、独立して、NまたはC-R
5であり、ここで、R
5は、水素またはC
1~C
12ヒドロカルビル基である]
によって表されるアゾール-アクリル付加物を含んでよい。
【0011】
別の実施形態では、アゾール-アクリル付加物は、X1、X2およびX3の少なくとも2つが、Nである、上記の式を有してよい。別の実施形態では、X1、X2およびX3の少なくとも1つは、Cである。さらに別の実施形態では、X2およびX3は、いずれもNである。
【0012】
別の実施形態では、アゾール-アクリル付加物は、式(VI):
【化3】
[式中、R
6は、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であり;R
7は、窒素原子に結合しており、直鎖状C
2~C
20ヒドロカルビル基であり;R
8は、C
1~C
20ヒドロカルビル基であり、直鎖状、分枝鎖状、同素環式、複素環式、またはそれらの組合せである]
を有してよい。
【0013】
アゾール-アクリル付加物は、式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII):
【化4】
[式中、R
6は、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基である]
の少なくとも1つであってよい。
【0014】
潤滑組成物は、前記潤滑組成物の合計重量に基づき、0.01wt%から2wt%の前記アゾール-アクリル付加物を含んでよい。
【0015】
他の実施形態では、潤滑組成物は、潤滑組成物の合計重量に基づき、0.01wt%から1wt%のチアジアゾールを含んでよい。他の実施形態では、チアジアゾールは、0.05wt%から0.5wt%の範囲であってよい。代替として、チアジアゾールは、潤滑組成物の合計重量に基づき、約0.3wt%で存在してよい。チアジアゾールは、1,3,4-チアジアゾール,2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)、2-(ヘプチルヒドロキシフェニルメチルチオ)-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、またはそれらの混合物を含んでよい。
【0016】
一部の実施形態では、チアジアゾールおよびアゾール-アクリル付加物の総量は、潤滑組成物の合計重量に基づき、0.01より大きい値から3wt%未満の範囲である。他の実施形態では、総合計量は、潤滑組成物の合計重量に基づき、0.05より大きい値から2wt%未満、またはさらには0.1より大きい値から1もしくは0.75wt%未満であってよい。
【0017】
さらに別の実施形態では、潤滑組成物は、少なくとも1種の摩擦調整剤をさらに含んでよい。
【0018】
一実施形態では、潤滑組成物は、抗摩耗剤を有してよい。一実施形態では、抗摩耗剤は、潤滑組成物の合計重量に基づき、潤滑組成物が少なくとも約300ppmのリンを有するような量で存在してよい。
【0019】
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素を潤滑する方法も開示される。本方法は、構成要素を、上述した潤滑組成物のいずれかと接触させるステップを含んでよい。
【0020】
上述した通りのアゾール-アクリル付加物は、農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させるために、潤滑組成物において使用されてよい。農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させるための方法も開示される。本方法は、構成要素を、上述した通りのアゾール-アクリル付加物を含む潤滑組成物と接触させるステップを含んでよい。
【0021】
一実施形態では、構成要素は、トランスミッション、マニュアルトランスミッション、ギア、ギアボックス、車軸ギア、オートマチックトランスミッション、デュアルクラッチトランスミッション、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含むドライブトレイン構成要素である。別の実施形態では、トランスミッションは、オートマチックトランスミッションまたはデュアルクラッチトランスミッションであってよい。代替として、トランスミッションは、マニュアルトランスミッションまたはギアであってよい。さらに別の実施形態では、構成要素は、湿式ブレーキ、トランスミッション、油圧、ファイナルドライブ、パワーテイクオフシステム、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む農業用トラクターまたはオフハイウェイ車両構成要素であってよい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明の技術は、上記で開示されている通りの農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレイン構成要素を潤滑するための潤滑組成物および方法を提供する。典型的には、構成要素は、ドライブライン構成要素(ギアまたはトランスミッションを含む)である。潤滑組成物は、農業用トラクター、オフハイウェイ機器および建設機器等のオフハイウェイ移動機器の可動部分を潤滑するために使用される多用途潤滑剤であってもよい。これらの多用途潤滑剤は、前記機器のトランスミッション、差動装置、ファイナルドライブ遊星ギア、湿式ブレーキおよび油圧システムを潤滑するように設計される。したがって、これらの流体は、耐水性、銅腐食耐性、湿式ブレーキ摩擦、耐摩耗性および高エネルギークラッチトランスミッション性能を含む多くの性能要件を満たさなくてはならない。トラクター潤滑剤等の潤滑剤は、多くの場合、大規模な汚染物質量の水に曝露される。汚染物質量の水は、作動中に機器のシールを通る水の進入によって引き起こされると考えられている。水は、潤滑剤中に第2の層を形成し得る。典型的には、第2の層の形成を低減させるために、乳化剤が用いられる。水が潤滑剤中に乳化されない場合、水は、湿式ブレーキ、トランスミッション、油圧、ファイナルドライブ、パワーテイクオフシステムの銅含有部分からの銅腐食等の追加の困難を引き起こし得る。これらの部分は、典型的には、共通サンプから供給された単一の潤滑剤によって潤滑される。
【0023】
本明細書で言及される文書のそれぞれは、本明細書において具体的に挙げられているか否かに関わらず、任意の先行出願を含む参考文献によって組み込まれ、その優先権が主張されている。任意の文書の言及は、そのような文書が先行技術として適格であること、またはいかなる権限においても当業者の一般知識を構築するものであることの承認ではない。実施例中または別段の明示がある場合を除いて、材料の量、反応条件、分子量、炭素原子の数等を指定する本明細書中のすべての数量は、語「約」によって修飾されているものとして理解されたい。本明細書で説明されている量、範囲および比の上限および下限は独立して組み合わせられ得ることを理解されたい。同様に、本発明の各要素についての範囲および量は、他の要素のいずれかについての範囲または量と一緒に使用され得る。
【0024】
本明細書において使用される場合、移行句「を含む(comprising)」は、「を含む(including)」、「を含有する」または「を特徴とする」と同義であり、包含的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。しかしながら、本明細書における「を含む(comprising)」の各列挙において、この用語は、代替的な実施形態として、語句「から本質的になる」および「からなる」も包含し、ここで、「からなる」は、指定されてないあらゆる要素またはステップを除外し、「から本質的になる」は、検討中の組成物または方法の基本的なおよび新規の特徴に著しく影響を及ぼさない追加の列挙されていない要素またはステップの包含を許可することが意図されている。
【0025】
種々の特色および実施形態を、非限定的な記述および例を利用して後述する。一実施形態では、アゾール化合物をアクリルと反応させることによって形成されたアゾール-アクリル付加物を含む潤滑組成物が開示される。形成された付加物は、少なくとも1つのアシルを含む少なくとも1つの窒素-アルキル(または「N-アルキル」)基を有する。潤滑組成物は、抗摩耗剤および酸化防止剤も含む。本明細書において使用される場合、本明細書において開示される潤滑組成物中に存在する構成要素または添加剤の量への言及は、オイルフリーベースで、すなわち活性物質の量で示される。
【0026】
アクリルは、少なくとも1つの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはそれらの組合せを含んでよい。一実施形態では、アクリルは、式(I):
【化5】
[式中、Rは、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であり、R
1は、C
1~C
20ヒドロカルビル基である]を有する(メタ)アクリレートであってよい。別の実施形態では、Rは、水素またはメチル基であってよい。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、この用語は、分子の残りに直接結合している炭素原子を有し、主として炭化水素の特徴を有する基を指す。ヒドロカルビル置換基またはヒドロカルビル基は、1より多くの炭素原子を有してよい。炭素原子の数も、本明細書において指示され得る。例えば、用語「C1~C20ヒドロカルビル基」は、1から20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を意味する。ヒドロカルビル基の例は:
【0028】
炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族および脂環式置換芳香族置換基、ならびに、環が分子の別の部分を介して完成している環式置換基(例えば、2つの置換基が一緒になって環を形成する);
【0029】
置換された炭化水素置換基、すなわち、本開示の技術の文脈で、置換基の主として炭化水素の性質を変更しない、非炭化水素基を含有する基(例えば、ハロ(とりわけクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソおよびスルホキシ);
【0030】
ヘテロ置換基、すなわち、主として炭化水素の特徴を有しながら、本開示の技術の文脈で、それ以外は炭素原子で構成される環または鎖中に炭素以外を含有し、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基を包含する置換基を含む。ヘテロ原子は、硫黄、酸素および窒素を含む。概して、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに、2個以下、または1個以下の非炭化水素置換基が存在し;代替として、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基がなくてもよい。
【0031】
他の実施形態では、アクリルは、式(III):
【化6】
[式中、Rは、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基である]
を有するアクリル酸を含んでよい。
【0032】
さらに他の実施形態では、アクリルは、式(IV):
【化7】
[式中、各Rは、独立して、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であってよい]
を有するアクリルアミドを含んでよい。
【0033】
一実施形態では、アクリレートは、少なくとも1つのアクリレート、(メタ)アクリレート、(ブチル)アクリレート、またはそれらの組合せを含んでよい。一実施形態では、アクリレートは、少なくとも1つのアクリレート、(メタ)アクリレート、またはそれらの組合せを含んでよい。別の実施形態では、アクリルは、少なくとも1つのメタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、またはそれらの組合せを含んでよい。
【0034】
好適なアクリレートは、オクタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。好適なメタクリレートは、オクタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、デシルメタクリレート、2-プロピルヘプチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0035】
アゾール化合物は、置換または非置換複素環アゾールであってよい。一実施形態では、置換複素環アゾールは、式(V):
【化8】
[式中、R
6は、水素またはC
1~C
16ヒドロカルビル基である]
におけるような構造を有してよい。
【0036】
アゾール-アクリル付加物を作製するための好適なアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体、1,2,3-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール誘導体、1,3,4-トリアゾール、1,3,4-トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラゾール、ピラゾール誘導体、1,4,メチルベンゾトリアゾール、またはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。アゾール化合物とアクリルとの反応は、触媒または溶媒としてのトリメチルアミンまたはアセトニトリルの存在下で起こり得る。
【0037】
一実施形態では、潤滑組成物は、式(II)または(III):
【化9】
[式中、R
2およびR
3は、独立して、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であるか、あるいはR
2およびR
3は一緒になって、5から6個の炭素原子を含有する飽和または不飽和環を形成し;R
4は、C
2~C
40ヒドロカルビル基であり、少なくとも1つのアシルを含み、ここで、ヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝鎖状、同素環式もしくは複素環式、またはそれらの組合せであり;X
1は、NまたはCであり;X
2およびX
3は、独立して、NまたはC-R
5であり、ここで、R
5は、水素またはC
1~C
12ヒドロカルビル基である]
によって表されるアゾール-アクリル付加物を含んでよい。
【0038】
別の実施形態では、アゾール-アクリル付加物は、X1、X2およびX3の少なくとも1つ、または代替として少なくとも2つがNである、上記の式(II)または(III)を有してよい。別の実施形態では、X1、X2およびX3の少なくとも1つは、Cである。さらに別の実施形態では、X2およびX3は、いずれもNである。他の実施形態では、X1、X2およびX3は、すべてNであってよく、または代替として、それらはすべてCであってよい。
【0039】
別の実施形態では、アゾール-アクリル付加物は、式(VI):
【化10】
[式中、R
6は、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基であり;R
7は、窒素原子に結合しており、直鎖状C
2~C
20ヒドロカルビル基であり;R
8は、C
1~C
20ヒドロカルビル基であり、直鎖状、分枝鎖状、同素環式、複素環式、またはそれらの組合せである]を有してよい。一実施形態では、R
7は、直鎖状C
2ヒドロカルビル基である。
【0040】
例示的なアゾール-アクリル付加物は、ベンゾトリアゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレート、イミダゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレート、1,2,4-トリアゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレート、ベンゾイミダゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレート、ピラゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレート、トリルトリアゾールおよびブチルアクリレート、ならびにトリルトリアゾールおよびエチルアクリレートの反応生成物を含むが、これらに限定されない。
【0041】
例示的なアゾール-アクリル付加物は、2-エチルヘキシルアクリレートおよびエチルアクリレートから作製された付加物および異性体を含む。これらの付加物は、2-エチルヘキシル3-(5-メチル-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1イル)プロパノエート(2-エチルヘキシルアクリレートから)、およびエチル3-(5-メチル-1H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-1イル)プロパノエート(エチルアクリレートから)を含むが、これらに限定されない。一実施形態では、アゾール-アクリル付加物は、式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII):
【化11】
【化12】
[式中、R
6は、水素またはC
1~C
20ヒドロカルビル基である]
を有することができる。
【0042】
さらなるアゾール-アクリル付加物は、以下の表1に挙げられている異性体を含む。
【表1】
【0043】
潤滑組成物は、潤滑組成物の合計重量に基づき、0.01wt%から2wt%のアゾール-アクリル付加物を含んでよい。
【0044】
チアジアゾールとともに使用される場合、アゾール-アクリル付加物は、腐食を低減させるまたは防止することにおいて予想外の相乗効果を提供することができる。したがって、一実施形態では、潤滑組成物は、上述したアゾール-アクリル付加物およびチアジアゾールの両方を含んでよい。
チアジアゾール化合物
【0045】
潤滑組成物は、潤滑組成物の合計重量に基づき、0.01wt%から1wt%のチアジアゾールを含んでよい。他の実施形態では、チアジアゾールは、0.05wt%から0.5wt%の範囲であってよい。代替として、チアジアゾールは、潤滑組成物の合計重量に基づき、約0.3wt%で存在してよい。
【0046】
チアジアゾールは、チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換チアジアゾールであってよい。チアジアゾールの例は、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、またはそれらのオリゴマー、ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3-4-チアジアゾール、ヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3-4-チアジアゾール、またはそれらのオリゴマーを含む。ヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3-4-チアジアゾールのオリゴマーは、典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3-4-チアジアゾール単位の間に硫黄-硫黄結合を形成して、前記チアジアゾール単位の2つまたは2つより多くのオリゴマーを形成することによって、形成する。
【0047】
好適なチアジアゾール化合物の追加の例は、ジメルカプトチアジアゾール、2,5-ジメルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、3,5-ジメルカプト-[1,2,4]-チアジアゾール、3,4-ジメルカプト-[1,2,5]-チアジアゾールまたは4-5-ジメルカプト-[1,2,3]-チアジアゾール(thiadaizole)の少なくとも1つを含む。典型的には、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾールまたはヒドロカルビル置換2,5-ジメルカプト-1,3-4-チアジアゾールまたはヒドロカルビルチオ置換2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール等の容易に入手可能な材料が一般的に利用されてよく、2,5-ジメルカプト-[1,3,4]-チアジアゾールが、入手可能性により最も一般的に利用される。異なる実施形態では、ヒドロカルビル置換基上の炭素原子の数は、1から30、2から25、4から20、6から16、または8から10を含む。
【0048】
一実施形態では、チアジアゾール化合物は、フェノールとアルデヒドおよびジメルカプトチアジアゾールとの反応生成物であってよい。フェノールは、アルキル基が、少なくとも6個、例えば、6から24個、または6(または7)から12個の炭素原子を含有する、アルキルフェノールを含む。アルデヒドは、1から7個の炭素原子を含有するアルデヒド、またはホルムアルデヒド等のアルデヒドシントンを含む。有用なチアジアゾール化合物は、2-アルキルジチオ-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、2,5-ビス(アルキルジチオ)-[1,3,4]-チアジアゾール、2-アルキルヒドロキシフェニルメチルチオ-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール(2-[5-ヘプチル-2-ヒドロキシフェニルメチルチオ]-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール等)、およびそれらの混合物を含む。
【0049】
一実施形態では、チアジアゾール化合物は、2,5-ビス(tert-オクチルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール、2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールまたは2,5-ビス(tert-デシルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールの少なくとも1つを含む。さらに別の実施形態では、チアジアゾールは、1,3,4-チアジアゾール,2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)、2-(ヘプチルヒドロキシフェニルメチルチオ)-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、またはそれらの混合物の少なくとも1つを含む。
摩擦調整剤
【0050】
一実施形態では、潤滑組成物は、摩擦調整剤をさらに含んでよい。異なる実施形態では、摩擦調整剤は、潤滑組成物の0wt%から5wt%、または0.1wt%から4wt%、または0.25wt%から3.5wt%、または0.5wt%から2.5wt%、または1wt%から2.5wt%、または0.05wt%から0.5wt%で存在してよい。
【0051】
摩擦調整剤は、脂肪アミン、ホウ素化(borated)グリセロールエステル、脂肪酸アミド、非ホウ素化脂肪エポキシド、ホウ素化脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ素化アルコキシル化脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、アルキルサリチレートの金属塩(清浄剤と称されることもある)、スルホネートの金属塩(清浄剤と称されることもある)、カルボン酸もしくはポリアルキレン-ポリアミンの縮合生成物、またはヒドロキシアルキル化合物のアミドを含む。
【0052】
一実施形態では、摩擦調整剤は、別の種類の脂肪酸誘導体である。一実施形態では、摩擦調整剤は、グリセロールの脂肪酸エステルまたは部分エステルを含む。そのような摩擦調整剤は、金属塩、アミド、イミダゾリン、またはそれらの混合物の形態であってよい。脂肪酸は、6から24個、または8から18個の炭素原子を含有してよい。脂肪酸は、分枝鎖状または直鎖状、飽和または不飽和であってよい。好適な酸は、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸およびリノレン酸、ならびに天然産物 獣脂、パーム油、オリーブ油、落花生油、トウモロコシ油および牛脚油由来の酸を含む。一実施形態では、脂肪酸は、オレイン酸であってよい。金属塩の形態である場合、典型的には、金属は、亜鉛またはカルシウムを含み;生成物は、過塩基性および非過塩基性生成物を含む。例は、過塩基性カルシウム塩および塩基性オレイン酸-亜鉛塩錯体であってよい。アミドの形態である場合、縮合生成物は、アンモニアを用いて、またはジエチルアミンおよびジエタノールアミン等の第1級もしくは第2級アミンを用いて調製されたものを含む。イミダゾリンの形態である場合、酸と、ジアミンまたはポリエチレンポリアミン等のポリアミンとの縮合生成物。一実施形態では、摩擦調整剤は、C8からC24原子を持つ脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合生成物、特に、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミンとの生成物であってよい。
【0053】
一実施形態では、摩擦調整剤は、式RaRbNRc[式中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、Rcは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基またはアミン含有アルキル基である]によって表される第2級または第3級アミンを含む。摩擦調整剤のより詳細な記述は、米国特許出願第2005/037897号、8および19から22段落において記述されている。
【0054】
一実施形態では、摩擦調整剤は、ヒドロキシアルキル化合物のアシル化剤またはアミンとの縮合によって形成されたものを含む。ヒドロキシアルキル化合物のより詳細な記述は、米国特許出願第60/725360号(2005年10月11日出願、発明者、Bartley、Lahiri、BakerおよびTipton)、8および19~21段落において記述されている。米国特許出願第60/725360号において開示されている摩擦調整剤は、式RdRdN-C(O)Rf[式中、RdおよびReは、それぞれ独立して、少なくとも6個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、Rfは、1から6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基、または前記ヒドロキシアルキル基の、そのヒドロキシル基を介するアシル化剤との縮合によって形成された基である]によって表されるアミドを含む。調製例は、実施例1および2(米国特許出願第60/725360号の68および69段落)において開示されている。一実施形態では、ヒドロキシアルキル化合物のアミドは、グリコール酸、すなわち、ヒドロキシ酢酸、HO-CH2-COOHを、アミンと反応させることによって調製される。
【0055】
一実施形態では、摩擦調整剤は、ジ-ココアルキルアミン(またはジ-ココアミン)とグリコール酸との反応生成物を含む。摩擦調整剤は、米国特許出願第60/820516号の調製例1および2において調製された化合物を含む。
【0056】
一実施形態では、摩擦調整剤は、カルボン酸またはその反応性等価物とアミノアルコールとの反応生成物に由来するものを含み、ここで、摩擦調整剤は、それぞれ少なくとも6個の炭素原子を含有する少なくとも2つのヒドロカルビル基を含有する。そのような摩擦調整剤の例は、イソステアリン酸またはアルキルコハク酸無水物とトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンとの反応生成物を含む。そのような摩擦調整剤のより詳細な記述は、米国特許出願第2003/22000号(または国際公開第WO04/007652号)、8および9から14段落において開示されている。
【0057】
一実施形態では、摩擦調整剤は、アルコキシル化アルコールを含む。好適なアルコキシル化アルコールの詳細な記述は、米国特許出願第2005/0101497号の19および20段落において記述されている。アルコキシル化アミンは、米国特許第5,641,732号、7欄15行から9欄25行においても記述されている。
【0058】
一実施形態では、摩擦調整剤は、米国特許第5,534,170号の37欄19行から39欄38行において定義されている通りのヒドロキシルアミン化合物を含む。任意選択で、ヒドロキシルアミンは、米国特許第5,534,170号の39欄39行から40欄8行において記述されているようなホウ素化生成物を含む。
【0059】
一実施形態では、摩擦調整剤は、アルコキシル化アミン、例えば、米国特許第5,703,023号の実施例E、28欄30から46行において記述されている通りの、1.8% Ethomeen T-12および0.90% Tomah PA-1に由来するエトキシ化アミンを含む。他の好適なアルコキシル化アミン化合物は、商標「ETHOMEEN」で公知であり、Akzo Nobelから入手可能な市販のアルコキシル化脂肪アミンを含む。これらのETHOMEEN(商標)材料の代表例は、ETHOMEEN(商標)C/12(ビス[2-ヒドロキシエチル]-ココ-アミン)、ETHOMEEN(商標)C/20(ポリオキシエチレン[10]ココアミン)、ETHOMEEN(商標)S/12(ビス[2-ヒドロキシエチル]-ソイアミン)、ETHOMEEN(商標)T/12(ビス[2-ヒドロキシエチル]-獣脂-アミン)、ETHOMEEN(商標)T/15(ポリオキシエチレン-[5]獣脂アミン)、ETHOMEEN(商標)0/12(ビス[2-ヒドロキシエチル]オレイル-アミン)、ETHOMEEN(商標)18/12(ビス[2-ヒドロキシエチル]オクタデシルアミン)、およびETHOMEEN(商標)18/25(ポリオキシエチレン[15]オクタデシルアミン)である。脂肪アミンおよびエトキシ化脂肪アミンは、米国特許第4,741,848号においても記述されている。
【0060】
一実施形態では、摩擦調整剤は、米国特許第5,750,476号8欄40行から9欄28行において記述されている通りのポリオールエステルを含む。
【0061】
一実施形態では、摩擦調整剤は、米国特許第5,840,662号2欄28行から3欄26行において記述されている通りの低効力摩擦調整剤を含む。米国特許第5,840,662号は、3欄48行から6欄25行において、低効力摩擦調整剤を調製するための具体的な材料および方法をさらに開示している。
【0062】
一実施形態では、摩擦調整剤は、米国特許第5,840,663号2欄18から43行において記述されている通りの異性化アルケニル置換コハク酸無水物とポリアミンとの反応生成物を含む。米国特許第5,840,663号において記述されている摩擦調整剤の具体的な実施形態は、3欄23行から4欄35行においてさらに開示されている。調製例は、米国特許第5,840,663号の4欄45行から5欄37行においてさらに開示されている。
【0063】
一実施形態では、摩擦調整剤は、Rhodiaによって商標Duraphos(登録商標)DMODPで市販されているアルキルホスホネートモノまたはジ-エステルを含む。
【0064】
一実施形態では、摩擦調整剤は、カナダ国特許第1,188,704号から公知であるホウ素化脂肪エポキシドまたはアルキレンオキシドを含む。これらの油溶性ホウ素含有組成物は、80℃から250℃の温度で、ホウ酸または三酸化ホウ素を、少なくとも1種の脂肪エポキシドまたはアルキレンオキシドと反応させることによって調製され得る。脂肪エポキシドまたはアルキレンオキシドは、典型的には、エポキシドの脂肪基(またはアルキレンオキシドのアルキレン基)中に少なくとも8個の炭素原子を含有する。
【0065】
ホウ素化脂肪エポキシドは、2つの材料の反応を伴うそれらの調製のための方法を特徴とするものを含む。試薬Aは、三酸化ホウ素、またはメタホウ酸(HBO2)、オルトホウ酸(H3BO3)および四ホウ酸(H2B4O7)を含むホウ酸の種々の形態のいずれか、またはオルトホウ酸を含む。試薬Bは、少なくとも1種の脂肪エポキシドを含む。試薬A対試薬Bのモル比は、概して、1:0.25から1:4、または1:1から1:3、または1:2であってよい。ホウ素化脂肪エポキシドは、2つの試薬をブレンドし、それらを、80℃から250℃、または100℃から200℃の温度で、反応が起こるのに十分な時間にわたって加熱することによって調製された化合物を含む。所望ならば、反応は、実質的に不活性な、通常は液体の有機希釈剤の存在下で達成され得る。反応中に、水が放出され、蒸留によって除去され得る。
【0066】
一実施形態では、摩擦調整剤は、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、アルキルサリチレートの金属塩、スルホネートの金属塩、またはそれらの組合せを含んでよい。
抗摩耗剤
【0067】
別の実施形態では、潤滑組成物は、抗摩耗剤を有してよい。抗摩耗剤は、リン含有または硫黄含有抗摩耗剤であってよい。一実施形態では、抗摩耗剤は、潤滑組成物が、潤滑組成物の合計重量に基づき、200から1500、または300から1300、350から800、または500から1000ppmのリンを有するような量で存在するリンを含んでよい。
【0068】
抗摩耗剤は、+3の酸化状態を有するリン原子を持つ非イオン性リン化合物、金属ジアルキルジチオホスフェート、金属ジアルキルホスフェート(典型的には、亜鉛ジジアルキルホスフェート(zinc di dialkylphosphate))、金属ジアルキルジチオホスフェート(典型的には、亜鉛ジジアルキルジチオホスフェート(zinc di dialkyldithiophosphate))、またはそれらの混合物を含む。
【0069】
多くの場合、ZDDP、ZDPまたはZDTP)と称される好適な亜鉛ジアルキルジチオホスフェートの例は、亜鉛ジ-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェート/ジ-(アミル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(1,3-ジメチルブチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(ヘプチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(オクチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(2-エチルヘキシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(ノニル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(デシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(ドデシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ-(ヘプチルフェニル)ジチオホスフェート、またはそれらの混合物を含む。
【0070】
亜鉛ジアルキルホスフェートの例は、亜鉛ジ-(2-メチルプロピル)ホスフェート、亜鉛ジ-(アミル)ホスフェート、亜鉛ジ-(1,3-ジメチルブチル)ホスフェート、亜鉛ジ-(ヘプチル)ホスフェート、亜鉛ジ-(オクチル)ホスフェート、亜鉛ジ-(2-エチルヘキシル)ホスフェート、亜鉛ジ-(ノニル)ホスフェート、亜鉛ジ-(デシル)ホスフェート、亜鉛ジ-(ドデシル)ホスフェート、亜鉛ジ-(ドデシルフェニル)ホスフェート、亜鉛ジ-(ヘプチルフェニル)ホスフェート、またはそれらの混合物を含む。
【0071】
+3の酸化状態を有するリン原子を持つ非イオン性リン化合物の例は、亜リン酸エステル、またはその混合物を含む。非イオン性リン化合物のより詳細な記述は、US6,103,673の9欄48行から11欄8行を含む。
【0072】
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素を潤滑する方法も開示される。本方法は、構成要素を、上述した潤滑組成物のいずれかと接触させるステップを含んでよい。
【0073】
上述した通りのアゾール-アクリル付加物は、農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させるために、潤滑組成物において使用されてよい。農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させるための方法も開示される。本方法は、構成要素を、上述した通りのアゾール-アクリル付加物を含む潤滑組成物と接触させるステップを含んでよい。
【0074】
一実施形態では、構成要素は、トランスミッション、マニュアルトランスミッション、ギア、ギアボックス、車軸ギア、オートマチックトランスミッション、デュアルクラッチトランスミッション、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含むドライブトレイン構成要素である。別の実施形態では、トランスミッションは、オートマチックトランスミッションまたはデュアルクラッチトランスミッション(DCT)であってよい。追加の例示的なオートマチックトランスミッションは、連続可変トランスミッション(CVT)、変速比無限大トランスミッション(IVT)、トロイダルトランスミッション、連続スリップトルク変換クラッチ(CSTCC)および有段オートマチックトランスミッションを含むが、これらに限定されない。
【0075】
代替として、トランスミッションは、マニュアルトランスミッションまたはギアであってよい。さらに別の実施形態では、構成要素は、湿式ブレーキ、トランスミッション、油圧、ファイナルドライブ、パワーテイクオフシステム、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む農業用トラクターまたはオフハイウェイ車両構成要素であってよい。
潤滑粘度の油
【0076】
潤滑油組成物は、潤滑粘度の天然または合成油、水素化分解、水素添加、水素化仕上げに由来する油、ならびに未精製油、精製油および再精製油、ならびにそれらの混合物を含む。
【0077】
天然油は、動物油、植物油、鉱油およびそれらの混合物を含む。合成油は、炭化水素油、シリコンベース油(silicon-based oil)、およびリン含有酸の液体エステルを含む。合成油は、フィッシャー・トロプシュのガス・ツー・リキッド合成手順および他のガス・ツー・リキッド油によって生成されてよい。一実施形態では、本発明の組成物は、ガス・ツー・リキッド油において用いられる場合に有用である。多くの場合、フィッシャー・トロプシュの炭化水素またはワックスは、水素化異性化され得る。
【0078】
一実施形態では、基油は、PAO-2、PAO-4、PAO-5、PAO-6、PAO-7またはPAO-8を含むポリアルファオレフィンを含む。ポリアルファオレフィンは、一実施形態ではドデセンから、別の実施形態ではデセンから調製される。
【0079】
一実施形態では、潤滑粘度の油は、アジペート等のエステルである。
【0080】
一実施形態では、潤滑粘度の油は、少なくとも部分的に、スチレン-ブタジエンの水素化コポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィン、無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、無水マレイン酸-オレフィンコポリマーのエステル、およびそれらの混合物を含むポリマー(粘度調整剤と称されることもある)である。異なる実施形態では、ポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、および無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、ポリイソブテンまたはそれらの混合物を含む。
【0081】
一実施形態では、潤滑組成物は、粘度調整剤およびAPIグループIIIまたはIV基油の混合物を含有する潤滑粘度の油を含有する。一実施形態では、潤滑組成物は、潤滑粘度の合成油を含有する。
【0082】
潤滑粘度の油は、米国石油協会(API)基油互換ガイドラインにおいて指定されている通りに定義されることもある。一実施形態では、潤滑粘度の油は、APIグループI、II、III、IV、V、VI基油、またはそれらの混合物を、別の実施形態では、APIグループII、III、IV基油またはそれらの混合物を含む。別の実施形態では、潤滑粘度の油は、グループIIIまたはIV基油、別の実施形態では、グループIV基油である。
【0083】
存在する潤滑粘度の油の量は、典型的には、100wt%から、本発明の化合物、チアジアゾールおよび後述する通りの他の性能添加剤の量の合計を差し引いた残量である。
【0084】
一実施形態では、潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に配合された潤滑剤の形態であってよい。潤滑組成物(本明細書において開示される添加剤を含む)が、追加の油と組み合わさって、全体または一部において、完成潤滑剤を形成し得る濃縮物の形態である場合、これらの添加剤と潤滑粘度の油および/または希釈油との比は、重量で1:99から99:1、または重量で80:20から10:90の範囲を含む。
他の性能添加剤
【0085】
本発明の組成物は、任意選択で、少なくとも1種の他の性能添加剤をさらに含む。他の性能添加剤は、抗摩耗剤(上述したものを含むまたはそれらに加えて)、極圧剤、摩擦調整剤(上述したものを含むまたはそれらに加えて)、金属不活性化剤、清浄剤、分散剤、粘度調整剤、分散粘度調整剤、酸化防止剤、腐食阻害剤、抑泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物を含む。
【0086】
異なる実施形態では、他の性能添加剤化合物の合わせた合計量は、潤滑組成物の0wt%から25wt%、または0.1wt%から15wt%、または0.5wt%から10wt%で存在してよい。他の性能添加剤の1種または複数が存在してよいが、他の性能添加剤は、互いに対して異なる量で存在することが一般的である。
【0087】
酸化防止剤は、ジチオカルバミン酸モリブデン等のモリブデン化合物、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール;アルキル化ジフェニルアミン(典型的には、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミンまたはジ-オクチルジフェニルアミン)等のアミン系化合物、またはそれらの混合物を含む。
【0088】
清浄剤は、中性または過塩基性清浄剤;フェネート、硫化フェネート、スルホネート、カルボン酸、リン酸、モノ-および/またはジ-チオリン酸、サリゲニン、アルキルサリチレート、ならびにサリキサレート混合物の1つまたは複数を持つ、アルカリ、アルカリ土類または遷移金属の、ニュートン性または非ニュートン性塩基性塩を含む。
【0089】
分散剤は、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミド、ならびにマンニッヒ縮合生成物およびその後処理型を含む。後処理分散剤は、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物、混合物との反応によるものを含む。
【0090】
追加の好適な分散剤は、ホウ素含有化合物である。一実施形態では、分散剤は、ホウ素化分散剤、典型的にはホウ素化ポリイソブチレンスクシンイミドである。典型的には、ポリイソブチレンの数平均分子量は、450から5000、または550から2500までの範囲である。ホウ素化分散剤は、摩擦性能も有し得る。
【0091】
異なる実施形態では、分散剤は、潤滑組成物の0wt%から10wt%、または0.01wt%から10wt%、または0.1wt%から5wt%で存在してよい。
【0092】
粘度調整剤は、スチレン-ブタジエンの水素化コポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィン、無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、無水マレイン酸-オレフィンコポリマーのエステル、またはそれらの混合物を含む。
【0093】
一実施形態では、粘度調整剤は、オレフィンコポリマー以外、典型的にはエチレン-プロピレンコポリマーである。一実施形態では、粘度調整剤は、ポリイソブテン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、無水マレイン酸-スチレンコポリマーのエステル、無水マレイン酸-オレフィンコポリマーのエステル、またはそれらの混合物を含む。一実施形態では、粘度調整剤は、ポリメタクリレートを含む。
【0094】
異なる実施形態では、粘度調整剤は、潤滑組成物の0wt%から70wt%、または1wt%から65wt%、または5wt%から60wt%、または12wt%より大きい値から55wt%で存在してよい。低い数平均分子量(すなわち、20,000または20,000未満)を持つ粘度調整剤が用いられる場合、より高い処理率(treatment rate)が典型的には必要とされる。一部の事例では、処理率(treat rate)は、粘度調整剤が基油(または潤滑粘度の油)のための有意な代用品となるほど十分に高くなり得る。そのため、粘度調整剤は、合成基剤ストックとして、または基油の構成要素としてみなされ得る。
【0095】
分散粘度調整剤(多くの場合、DVMと称される)は、官能化ポリオレフィン、例えば、無水マレイン酸およびアミンの反応生成物で官能化したエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化したポリメタクリレート、またはアミンと反応させたスチレン-無水マレイン酸コポリマーを含み、これらは、本発明の組成物においても使用され得る。
【0096】
腐食阻害剤は、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸または無水物およびオレイン酸等の脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物、または上述したチアジアゾール化合物を含む。金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール(典型的にはトリルトリアゾール)、1,2,4-トリアゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾチアゾールまたはベンゾイミダゾールの誘導体を含む。
【0097】
抑泡剤は、エチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートおよび任意選択で酢酸ビニルのコポリマーを含む。抗乳化剤は、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む。流動点降下剤は、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートまたはポリアクリルアミドを含む。シール膨潤剤は、Exxon Necton-37(商標)(FN1380)およびExxonミネラルシールオイル(FN3200)を含む。
【0098】
潤滑組成物は、リンの酸のエステル(phosphorus acid ester)のアミン塩を含んでよい。この材料は、極圧剤および摩耗防止剤の1種または複数として役立つことができる。リンの酸のエステルのアミン塩は、リン酸エステルおよびその塩;ジアルキルジチオリン酸エステルおよびその塩;ホスファイト;ならびにリン含有カルボン酸エステル、エーテルおよびアミド;ならびにそれらの混合物を含んでよい。リンの酸のエステルのアミン塩は、多様な化学構造のいずれかを含んでよい。多様な構造は、リンの酸のエステル化合物が、1つまたは複数の硫黄原子を含有する場合、すなわち、リン含有酸が、モノ-またはジチオリンの酸のエステルを含むチオリンの酸のエステル(thiophosphorus acid)である場合、可能である。リンの酸のエステルは、五酸化リン等のリン化合物を、アルコールと反応させることによって調製され得る。好適なアルコールは、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、s-アミルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコールおよびオレイルアルコール等の第1級または第2級アルコールを含む、最大30個まで、または24個まで、または12個までの炭素原子を含有するもの、ならびに、例えば、8から10個、12から18個、または18から28個の炭素原子を有する多様な市販のアルコール混合物のいずれかを含む。ジオール等のポリオールを使用してもよい。アミン塩として使用するために好適であり得るアミンは、少なくとも1つのヒドロカルビル基、あるいは、ある特定の実施形態では、例えば、2から30または8から26または10から20または13から19個の炭素原子を有する2または3つのヒドロカルビル基を持つアミンを含む、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、およびそれらの混合物を含む。一実施形態では、リンの酸のエステルのアミン塩は、潤滑組成物が、潤滑組成物の合計重量に基づき、200から1500、または300から1300、350から800、または500から1000ppmのリンを有するような量で存在するリンを含んでよい。
【0099】
異なる実施形態では、潤滑組成物は、表2に記述されている通りの組成物を有してよい。以下の表2に示されている重量パーセント(wt%)は、活性物質ベースである。
【表2】
【0100】
下記の実施例は、本発明の例証を提供するものである。これらの実施例は、非網羅的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0101】
実施例-アゾール-アクリル付加物の合成
下記の実施例は、本明細書において記述されているアゾール-アクリル付加物を含む種々のマイケル反応生成物の合成を示す。
実施例A-1:トリルトリアゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートの反応生成物
【0102】
実施例A-1では、トリルトリアゾールTTZL(1モル当量(equivalant))、2-エチルヘキシルアクリレート(1モル当量)、トリエチルアミン(0.33モル当量)およびアセトニトリルを、4つ口の1L丸底フラスコに添加する。混合物を激しく撹拌して、TTZLの溶解を容易にする。反応が完了するまで、反応物を75℃で保持する。ロータリーエバポレーションおよび焼成珪藻土での濾過により、アゾール-アクリル付加物を含む反応混合物が得られる。
実施例A-2:ベンゾトリアゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートの反応生成物
【0103】
実施例A-2では、ベンゾトリアゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートを、実施例A-1と同じ反応条件下で反応させる。
実施例A-3:イミダゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートの反応生成物
【0104】
実施例A-3では、イミダゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートを、実施例A-1と同じ反応条件下で反応させる。
実施例A-4:1,2,4-トリアゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートの反応生成物
【0105】
実施例A-4では、1,2,4-トリアゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートを、実施例A-1と同じ反応条件下で反応させる。
実施例A-5:ベンゾイミダゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートの反応生成物
【0106】
実施例A-5では、ベンゾイミダゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートを、実施例A-1と同じ反応条件下で反応させる。
実施例A-6:ピラゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートの反応生成物
【0107】
実施例A-6では、ピラゾールおよび2-エチルヘキシルアクリレートを、実施例A-1と同じ反応条件下で反応させる。
実施例A-7:トリルトリアゾールおよびブチルアクリレートの反応生成物
【0108】
実施例A-7では、トリルトリアゾールおよびブチルアクリレートを、実施例A-1と同じ反応条件下で反応させる。
実施例A-8:トリルトリアゾールおよびエチルアクリレートの反応生成物
【0109】
実施例A-8では、トリルトリアゾールおよびエチルアクリレートを、実施例A-1と同じ反応条件下で反応させる。
実施例-アゾール-アクリル付加物の性能
【0110】
アゾール-アクリル付加物の性能は、銅クーポンを試験流体に浸漬する銅腐食試験を使用して試験した。試験流体を150℃に加熱し、その間、空気を1週間にわたって連続的に吹き込んで発泡させる。1週間後、誘導結合高周波プラズマ質量分析法(ICP)を使用して、試験流体を銅含有量について分析する。銅クーポンを、視覚的にも評価した。
マニュアルトランスミッションフルード(MTF)
【0111】
マニュアルトランスミッションフルード(MTF)を試験流体として使用する一連の試験を実施する。MTFのために、潤滑粘度の4cSt合成グループIV基油および上述したアゾール-アクリル付加物、ならびに、ホウ素含有化合物(ホウ素化スクシンイミド分散剤)、摩擦調整剤(カルボン酸エステルおよびエトキシ化アミンの組合せ)、酸化防止剤/極圧剤(アミン系化合物および硫化オレフィンの組合せ)、過塩基性清浄剤(スルホン酸ナトリウム)、リン酸エステル/アミン塩、抗摩耗剤(アルケニルホスファイトおよびアルキルホスファイトの組合せ)および抑泡剤を含む従来の添加剤を使用して、潤滑組成物を調製する。潤滑剤はすべて、表3中の以下の通りの一般的な配合物から調製する。
【0112】
本開示の技術の添加剤を、以下のMTFベースライン配合物に添加する。
【表3】
【0113】
本開示の技術の添加剤を、上記のMTFベースライン配合物に添加し、上述した銅試験を実施する。試験が完了したら、油中の濃度を測定する。結果を表4にまとめる。
【表4】
デュアルクラッチトランスミッションフルード(DCT)
【0114】
デュアルクラッチオートマチックトランスミッションフルード(DCT)を試験流体として使用する一連の試験を実施する。DCTのために、上述したアゾール-アクリル付加物、ならびに、ホウ素含有化合物(ホウ素化スクシンイミド分散剤)、摩擦調整剤(ホウ酸エステル、エトキシ化アミン、リン酸、ならびにイソステアリン酸およびテトラエチレンペンタミンの反応生成物の組合せ)、酸化防止剤(アミン系化合物)、過塩基性清浄剤(スルホン酸カルシウム)、抗摩耗剤(アルケニルホスファイトおよびアルキルホスファイトの組合せ)、シール膨潤剤、流動点降下剤および抑泡剤を含む従来の添加剤を含有する、潤滑粘度の3cStおよび4cStグループIII基油の混合物を調製した。潤滑剤はすべて、表5中の以下の通りの一般的な配合物から調製する。
【0115】
本開示の技術の添加剤を、以下のDCTベースライン配合物に添加する。
【表5】
【0116】
本開示の技術の添加剤を、上記のDCTベースライン配合物に添加し、上述した銅試験を実施する。試験が完了したら、油中の濃度を測定する。結果を表6にまとめる。
【表6】
【0117】
銅試験結果は、潤滑剤組成物にアゾール-アクリレート付加物を添加することで、流体中の銅濃度を低減させることができることを示し、銅腐食が低減されることを示唆している。試験は、アゾール-アクリレート付加物をチアジアゾールとともに使用すると相乗効果があり得ることも示す。
【0118】
上述した材料の一部は、最終配合物において相互作用し得るため、最終配合物の構成要素は、最初に添加されるものと異なる場合があることが公知である。例えば、(例えば清浄剤の)金属イオンは、他の分子の他の酸性またはアニオン性部位に移動することができる。それによって形成された生成物は、その意図された使用において本発明の組成物を用いた際に形成された生成物を含み、簡単な記述が不可能なことがある。それでもなお、すべてのそのような改変および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれ、本発明は、上述した構成要素を混合することによって調製された組成物を包含する。
【0119】
本発明を例証する目的で、ある特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、その中で種々の変更および改変が為され得ることが、当業者には明らかであろう。これに関して、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
a.潤滑粘度の油と、
b.チアジアゾールと、
c.アゾール-アクリル付加物であって、
i.前記付加物はアゾール化合物をアクリルと接触させることによって形成され、そして
ii.前記付加物は少なくとも1つのアシルを含む少なくとも1つの窒素-アルキル基を有する
アゾール-アクリル付加物と
を含む潤滑組成物。
(項目2)
前記アクリルが、少なくとも1つの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、またはそれらの組合せを含む、項目1に記載の潤滑組成物。
(項目3)
前記アクリルが、少なくとも1つのアクリレート、アクリル酸、アクリルアミド、メタクリレート、メタクリル酸、メタクリルアミド、またはそれらの組合せを含む、項目1または2に記載の潤滑組成物。
(項目4)
前記アクリルが、式(I):
【化13】
[式中、Rは、水素またはC
1
~C
20
ヒドロカルビル基であり、R
1
は、C
1
~C
20
ヒドロカルビル基である]
を有する(メタ)アクリレートである、項目1から3のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目5)
Rが、水素またはメチル基である、項目3に記載の潤滑組成物。
(項目6)
前記(メタ)アクリレートが、少なくとも1つのアクリレート、メタクリレート、またはそれらの組合せを含む、項目2から5に記載の潤滑組成物。
(項目7)
前記アクリルが、オクタデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、トリデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、2-プロピルヘプチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む、項目1から6のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目8)
前記アクリルが、オクタデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、デシルメタクリレート、2-プロピルヘプチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルメタクリレート、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む、項目1から6のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目9)
前記アゾール化合物が、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体、1,2,3-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール誘導体、1,3,4-トリアゾール、1,3,4-トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール誘導体、ピラゾール、ピラゾール誘導体、1,4,メチルベンゾトリアゾール、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む、項目1から8のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目10)
前記アゾール-アクリル付加物が、式(II)または(III):
【化14】
[式中、R
2
およびR
3
は、独立して、水素またはC
1
~C
20
ヒドロカルビル基であるか、あるいはR
2
およびR
3
は一緒になって、5から6個の炭素原子を含有する飽和または不飽和環を形成し;R
4
は、少なくとも1つのアシルを含むC
2
~C
40
ヒドロカルビル基であり、ここで、前記ヒドロカルビル基は、直鎖状、分枝鎖状、同素環式もしくは複素環式、またはそれらの組合せであり;X
1
は、NまたはCであり;X
2
およびX
3
は、独立して、NまたはC-R
5
であり、ここで、R
5
は、水素、または1から12個の炭素原子を含有するC
1
~C
12
ヒドロカルビル基である]
によって表される、項目1から9のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目11)
X
1
、X
2
およびX
3
の少なくとも2つが、Nである、項目10に記載のアゾール-アクリル付加物。
(項目12)
前記アゾール-アクリル付加物が、式(VI):
【化15】
[式中、R
6
は、水素またはC
1
~C
20
ヒドロカルビル基であり;R
7
は、窒素原子に結合しており、直鎖状C
2
~C
20
ヒドロカルビル基であり;R
8
は、C
1
~C
20
ヒドロカルビル基であり、直鎖状、分枝鎖状、同素環式、複素環式、またはそれらの組合せである]
を有する、項目1から11のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目13)
前記アゾール-アクリル付加物が、式(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)または(XII):
【化16】
[式中、R
6
は、水素またはC
1
~C
20
ヒドロカルビル基である]
を有する少なくとも1種の付加物を含む、項目1から12のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目14)
前記チアジアゾールが、1,3,4-チアジアゾール,2,5-ビス(tert-ノニルジチオ)、2-(ヘプチルヒドロキシフェニルメチルチオ)-5-メルカプト-[1,3,4]-チアジアゾール、またはそれらの混合物を含む、項目1から13のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目15)
少なくとも1種の摩擦調整剤をさらに含む、項目1から14のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目16)
前記摩擦調整剤が、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、アルキルサリチレートの金属塩、スルホネートの金属塩、またはそれらの組合せを含む、項目15に記載の潤滑組成物。
(項目17)
前記潤滑組成物が前記潤滑組成物の合計重量に基づき、約300ppmのリンを有するような量で存在するリン含有抗摩耗剤をさらに含む、項目1から16のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目18)
前記潤滑組成物の合計重量に基づき、0.01wt%から2wt%の前記アゾール-アクリル付加物を含む、項目1から17のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目19)
前記潤滑組成物の合計重量に基づき、0.01wt%から1wt%の前記チアジアゾールを含む、項目1から18のいずれかに記載の潤滑組成物。
(項目20)
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素を潤滑する方法であって、前記構成要素を、項目1から19のいずれかに記載の潤滑組成物と接触させるステップを含む、方法。
(項目21)
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させるための、項目1から19のいずれかに記載の潤滑組成物におけるアゾール-アクリル付加物の使用。
(項目22)
農業用トラクター、オフハイウェイ車両またはドライブトレインの構成要素における腐食を低減させる方法であって、前記構成要素を、項目1から19のいずれかに記載の潤滑組成物と接触させるステップを含む、方法。
(項目23)
前記構成要素が、トランスミッション、マニュアルトランスミッション、ギア、ギアボックス、車軸ギア、オートマチックトランスミッション、デュアルクラッチトランスミッション、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む、ドライブトレイン構成要素である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記トランスミッションが、オートマチックトランスミッションまたはデュアルクラッチトランスミッションである、項目22または23に記載の方法。
(項目25)
前記トランスミッションが、マニュアルトランスミッションまたはギアである、項目22または23に記載の方法。
(項目26)
前記構成要素が、湿式ブレーキ、トランスミッション、油圧、ファイナルドライブ、パワーテイクオフシステム、またはそれらの組合せの少なくとも1つを含む農業用トラクターまたはオフハイウェイ車両構成要素である、項目22に記載の方法。