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  • 特許-組成物、発泡シート及び成形体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】組成物、発泡シート及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230112BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20230112BHJP
   B65D 65/02 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08L25/08
B65D65/02 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019002001
(22)【出願日】2019-01-09
(65)【公開番号】P2020111649
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】和泉 英二
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101403(JP,A)
【文献】特開2014-201605(JP,A)
【文献】特開2014-169391(JP,A)
【文献】特開2018-090753(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012373(WO,A1)
【文献】特開2018-203838(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122774(WO,A1)
【文献】特開2018-203837(JP,A)
【文献】特開平10-087929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
B65D65/00- 65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のポリマーを含有する組成物からなる発泡シートであって、
前記2種以上のポリマーは、
スチレン及び(メタ)アクリル酸をモノマー単位として含むポリマー(A)と、
(メタ)アクリル酸メチル、及び前記(メタ)アクリル酸メチル以外の、アルキル基の炭素数が3~7の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むポリマー(B)と、
共役ジエンをモノマー単位として含むゴム成分にスチレンを重合させたポリマー(C)のみからなり、
前記ポリマー(A)に含まれるモノマー単位全量を基準として、前記スチレンの含有量が85~97質量%であり、前記(メタ)アクリル酸の含有量が3~15質量%であり、
前記ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量を基準として、前記(メタ)アクリル酸メチルの含有量が65~90質量%であり、前記(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が10~35質量%であり、
前記ポリマー(C)に含まれるモノマー単位全量を基準として、前記ゴム成分の含有量が2~40質量%であり、前記スチレンの含有量が60~98質量%であり、
前記2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、前記(メタ)アクリル酸の含有量が2~15質量%であり、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が3~15質量%である、発泡シート。
【請求項2】
前記2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、前記スチレンの含有量が68~95質量%である、請求項1に記載の発泡シート
【請求項3】
前記2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、前記共役ジエンの含有量が0.01~4質量%である、請求項1又は2に記載の発泡シート
【請求項4】
前記ポリマー(C)により形成される粒子の平均ゴム粒子径が1.2~12.0μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡シート
【請求項5】
発泡倍率が1.1~20倍である、請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡シート。
【請求項6】
セルの扁平度が1.1~9.0である、請求項1~5のいずれか一項に記載の発泡シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡シートを成形してなる成形体。
【請求項8】
食品用容器である、請求項に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、発泡シート及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂を用いた発泡シートは、食品用容器、包装用容器等の材料として用いられている。一方、ポリスチレン系樹脂のみで形成される食品用容器は耐熱性等の特性が十分でない場合があり、近年では食品用容器等の成形体の特性向上を図るべく、成形体の原料となる組成物の組成について種々の提案がなされている。例えば特許文献1には、スチレン-メタクリル酸共重合体、ポリフェニレンエーテル、及びポリスチレンを所定量含有する樹脂発泡シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-205761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
品質に優れた成形体を得るためには、凹凸が少なく外観に優れ、耐衝撃性にも優れた発泡シートが求められる。さらに、食品用容器は電子レンジで加熱される場合もあるため、耐熱性に優れることも求められる。
【0005】
本発明は、外観、耐衝撃性、及び耐熱性の全てに優れる発泡シートを得られる組成物、及びそれを用いて得られる発泡シート及び成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す組成物、発泡シート及び成形体を提供する。
(1)2種以上のポリマーを含有する組成物であって、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位の中には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、及び共役ジエンが含まれ、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、(メタ)アクリル酸の含有量が2~15質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が3~15質量%である、組成物。
(2)2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、スチレンの含有量が68~95質量%である、(1)に記載の組成物。
(3)2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、共役ジエンの含有量が0.01~4質量%である、(1)又は(2)に記載の組成物。
(4)スチレン及び(メタ)アクリル酸をモノマー単位として含むポリマー(A)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル、及び(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むポリマー(B)と、共役ジエンをモノマー単位として含むゴム成分にスチレンを重合させたポリマー(C)と、を含有する、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)ポリマー(A)に含まれるモノマー単位全量を基準として、スチレンの含有量が85~97質量%であり、(メタ)アクリル酸の含有量が3~15質量%である、(4)に記載の組成物。
(6)ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量を基準として、(メタ)アクリル酸メチルの含有量が65~90質量%であり、(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が10~35質量%である、(4)又は(5)に記載の組成物。
(7)ポリマー(C)により形成される粒子の平均ゴム粒子径が1.2~12.0μmである、(4)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)(1)~(7)のいずれかに記載の組成物からなる発泡シート。
(9)発泡倍率が1.1~20倍である、(8)に記載の発泡シート。
(10)セルの扁平度が1.1~9.0である、(8)又は(9)に記載の発泡シート。
(11)(8)~(10)のいずれかに記載の発泡シートを成形してなる成形体。
(12)食品用容器である、(11)に記載の成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観、耐衝撃性、及び耐熱性の全てに優れる発泡シートを得られる組成物、及びそれを用いて得られる発泡シート及び成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る成形体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」等の類似表現についても、同様である。
【0011】
本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により以下の条件で測定される分子量分布から算出されたものである。分子量は、単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間において算出された分子量に基づいて、ポリスチレン換算の分子量として算出されたものである。
機種:Shodex GPC-101(昭和電工株式会社製)
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-A
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
【0012】
一実施形態に係る発泡シートは、以下に示す組成物からなる。発泡シートは、必ずしも下記組成物と同一の組成である必要はなく、製造条件等によっては、シート状に形成する過程で組成物に含まれる成分の一部が揮発等によって失われてもよい。すなわち、一実施形態に係る発泡シートは、以下の組成物を用いて形成されたものである。
【0013】
一実施形態に係る組成物は、2種以上のポリマーを含有する。2種以上のポリマーを構成するモノマー単位の中には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、及び共役ジエンが含まれる。
【0014】
2種以上のポリマーは、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、(メタ)アクリル酸を2~15質量%含有する。これにより、特に外観及び耐熱性に優れた発泡シートを得ることが可能となる。2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれる(メタ)アクリル酸の含有量は、耐熱性に優れた発泡シートを更に得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは2.3質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、外観に優れた発泡シートを更に得やすくする観点から、好ましくは14.5質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれる(メタ)アクリル酸の含有量は、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、2~15質量%、2~14.5質量%、2~12質量%、2~10質量%、2.3~15質量%、2.3~14.5質量%、2.3~12質量%、2.3~10質量%、3~15質量%、3~14.5質量%、3~12質量%、3~10質量%、5~15質量%、5~14.5質量%、5~12質量%、又は5~10質量%であってもよい。
【0015】
2種以上のポリマーは、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを3~15質量%含有する。これにより、外観、耐衝撃性及び耐熱性に優れた発泡シートを得ることが可能となる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであってよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル)等が挙げられる。
【0017】
2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、耐熱性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは4質量%以上、より好ましくは4.5質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、外観及び耐衝撃性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは13質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下である。2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、3~15質量%、3~13質量%、3~12質量%、3~10質量%、4~15質量%、4~13質量%、4~12質量%、4~10質量%、4.5~15質量%、4.5~13質量%、4.5~12質量%、4.5~10質量%、5~15質量%、5~13質量%、5~12質量%、又は5~10質量%であってもよい。
【0018】
2種以上のポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有してもよい。この場合、(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、例えば2~8又は3~7であってよい。(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、好ましくは、アルキル基の炭素数が4である(メタ)アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル)である。
【0019】
2種以上のポリマーが(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する場合、(メタ)アクリル酸メチルの含有量は、耐熱性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。(メタ)アクリル酸メチルの含有量は、均一なセル(発泡セル又は気泡とも呼ばれる。)を生じさせることにより外観に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。
【0020】
2種以上のポリマーが(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、(メタ)アクリル酸メチルの分解による発泡シートの変色を抑制して外観に更に優れた発泡シートを得やすくする観点、及び耐衝撃性に優れた発泡シートを得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.6質量%以上である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、組成物のガラス転移点が低下することを抑制し、耐熱性に更に優れ、強度にも優れた発泡シートを得やすくする観点から、好ましくは6質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0021】
2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれるスチレンの含有量は、外観に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは68質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上である。スチレンの含有量は、耐熱性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下である。2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれるスチレンの含有量は、2種以上のポリマーを構成するモノマー単位全量基準で、68~95質量%、68~90質量%、68~87質量%、70~95質量%、70~90質量%、70~87質量%、75~95質量%、75~90質量%、又は75~87質量%であってもよい。
【0022】
2種以上のポリマーにモノマー単位として含まれる共役ジエンは、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、1-クロロ-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン(ピペリレン)、1,3-ヘキサジエンであってよい。共役ジエンは、好ましくは1,3-ブタジエンである。
【0023】
共役ジエンの含有量は、耐衝撃性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。共役ジエンの含有量は、強度に優れた発泡シートを得やすくする観点から、好ましくは4質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。0.01~4質量%、0.01~2質量%、0.01~1質量%、0.03~4質量%、0.03~2質量%、0.03~1質量%、0.05~4質量%、0.05~2質量%、又は0.05~1質量%であってもよい。
【0024】
上述した各モノマー単位は、それぞれ別々のポリマーに含まれて4種以上のポリマーを構成してよく、2種以上のモノマー単位が1つのポリマーに含まれてコポリマー(共重合体)を構成してもよい。組成物は、2種以上のコポリマーを含んでいてよく、ホモポリマー及びコポリマーを含んでいてもよい。
【0025】
上述したモノマー単位を含む2種以上のポリマーの組み合わせとしては、一実施形態において、スチレンと(メタ)アクリル酸とをモノマー単位として含むポリマー、1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むポリマー、及びスチレンと共役ジエンとをモノマー単位として含むポリマーが挙げられる。
【0026】
1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むポリマーは、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むポリマーであってよい。また、スチレンと共役ジエンとをモノマー単位として含むポリマーは、共役ジエンをモノマー単位として含むゴム成分にスチレンを重合させたポリマーであってよい。すなわち、一実施形態に係る組成物は、スチレンと(メタ)アクリル酸とをモノマー単位として含むポリマー(A)、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルをモノマー単位として含むポリマー(B)、及び共役ジエンをモノマー単位として含むゴム成分にスチレンを重合させたポリマー(C)を含有する。
【0027】
ポリマー(A)において、スチレンの含有量は、ポリマー(A)に含まれるモノマー単位全量基準で、80質量%以上、85質量%以上、87質量%以上であってよく、97質量%以下、95質量%以下、又は93質量%以下であってよい。スチレンの含有量は、ポリマー(A)に含まれるモノマー単位全量基準で、80~97質量%、80~95質量%、80~93質量%、85~97質量%、85~95質量%、85~93質量%、87~97質量%、87~95質量%、又は87~93質量%であってよい。
【0028】
ポリマー(A)において、(メタ)アクリル酸の含有量は、ポリマー(A)に含まれるモノマー単位全量基準で、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上であってよく、20質量%以下、15質量%以下、又は13質量%以下であってよい。(メタ)アクリル酸の含有量は、ポリマー(A)に含まれるモノマー単位全量基準で、3~20質量%、3~15質量%、3~13質量%、5~20質量%、5~15質量%、5~13質量%、7~20質量%、7~15質量%、又は7~13質量%であってもよい。
【0029】
ポリマー(A)は、スチレン及び(メタ)アクリル酸のみをモノマー単位として含有してよく、スチレン及び(メタ)アクリル酸以外に、他のモノマー単位を含有してもよい。他のモノマー単位としては、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、無水マレイン酸等が挙げられる。この場合の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等であってよい。
【0030】
他のモノマー単位の含有量は、ポリマー(A)に含まれるモノマー単位全量基準で、1質量%以上であってよく、17質量%以下であってよい。
【0031】
ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、発泡シート作製の際の製膜性を良好にする観点から、好ましくは12万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは18万以上であり、また、好ましくは25万以下、より好ましくは22万以下、更に好ましくは20万以下である。
【0032】
組成物に含まれるポリマー(A)の含有量は、組成物全量基準で、65質量%以上、70質量%以上、又は75質量%以上であってよく、99質量%以下、98質量%以下、又は97質量%以下であってよい。
【0033】
ポリマー(A)の重合方法としては、ポリスチレン等で工業化されている塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等の公知の重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、これらの連続重合であることが好ましい。重合において用いられる溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等のアルキルベンゼン類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類であってよい。
【0034】
ポリマー(A)の重合時には、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、有機過酸化物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシベンゾネート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)、エチル-3,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等が挙げられる。連鎖移動剤の具体例としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α-メチルスチレンダイマー、テルピノーレン等が挙げられる。
【0035】
ポリマー(B)において、(メタ)アクリル酸メチルの含有量は、耐熱性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。(メタ)アクリル酸メチルの含有量は、外観及び耐衝撃性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量基準で、好ましくは98質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。(メタ)アクリル酸メチルの含有量は、ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量基準で、50~98質量%、50~93質量%、50~90質量%、60~98質量%、60~93質量%、60~90質量%、65~98質量%、65~93質量%、又は65~90質量%であってもよい。
【0036】
ポリマー(B)に含まれ得る、(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上述した(メタ)アクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと同様のものであってよい。
【0037】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、外観及び耐衝撃性に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量基準で、好ましくは2質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、耐熱性に更に優れた発泡シートを得る観点から、ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量基準で、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量基準で、2~50質量%、2~40質量%、2~35質量%、7~50質量%、7~40質量%、7~35質量%、10~50質量%、10~40質量%、又は10~35質量%であってもよい。
【0038】
ポリマー(B)は、(メタ)アクリル酸メチル、及び上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルのみをモノマー単位として含有してよく、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外に、他のモノマー単位を含有してもよい。他のモノマー単位としては、スチレン等の芳香族ビニル化合物などであってよい。
【0039】
他のモノマー単位の含有量は、ポリマー(B)に含まれるモノマー単位全量基準で、1質量%以上であってよく、40質量%以下であってよい。
【0040】
ポリマー(B)の重量平均分子量(Mw)は、容器を成形する際の成形性に優れた発泡シートを得る観点から、好ましくは100万以上、より好ましくは200万以上、更に好ましくは300万以上であり、外観に更に優れた発泡シートを得やすくする観点から、好ましくは1000万以下、より好ましくは800万以下、更に好ましくは600万以下である。
【0041】
組成物に含まれるポリマー(B)の含有量は、組成物全量基準で、0.5質量%以上、1質量%以上、又は3質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下であってよい。
【0042】
ポリマー(B)の重合方法は特に限定されず、乳化重合法、ソープフリー重合法、懸濁重合法、微細懸濁重合法、分散重合法等であってよい。ポリマー(B)の重合方法は、好ましくは乳化重合法又はソープフリー重合法である。これらの重合法によれば、コアシェル構造等の粒子の構造を制御することが容易であり、コア部分を構成するモノマーの混合物を重合してコア部分を形成した後、更に他のモノマー単体又はモノマーの混合物を添加して、これを重合することによりコアシェル型のポリマー微粒子を製造することができる。上記の重合法、特に乳化重合法によって得られるポリマー微粒子を含むラテックスからポリマー微粒子(ポリマー(B))を回収する方法は、噴霧乾燥法(スプレードライ式)、凍結乾燥法、塩析凝固後脱水乾燥させる方法など種々の方法であってよいが、好ましくは噴霧乾燥法である。
【0043】
ポリマー微粒子としてポリマー(B)を回収する場合、ポリマー微粒子においては、乾燥粉体としての性状や構造は問わない。例えば、重合で得られた一次粒子が多数集合して凝集粒子(二次粒子)を形成していても構わないし、又はそれ以上の高次構造であってもよい。ただしこのような凝集構造の場合、組成物中で一次粒子が微細かつ均一に分散されるために、一次粒子同士が強固に結合せず、緩く凝集している状態が好ましい。
【0044】
ポリマー(C)は、例えば、共役ジエンをモノマー単位として含むゴム成分にスチレンをグラフト重合させたグラフトコポリマーであってよい。このようなポリマー(C)は、ゴム変性スチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS;High Impact PolyStyrene)等とも呼ばれる。グラフトコポリマーであるポリマー(C)は、例えばゴム成分としてのゴム状ポリマーの存在下で、スチレンをグラフト重合することにより得られる。重合方法は、塊状重合法、塊状・懸濁二段重合法、溶液重合法等の公知の方法であってよい。
【0045】
ゴム成分は、上述した共役ジエンをモノマー単位として含むポリマー又はコポリマーであってよい。ゴム成分は、上述した共役ジエンの1種以上のみをモノマー単位として含むポリマー又はコポリマーであってもよいし、共役ジエン及び共役ジエン以外の他のモノマー単位を含むコポリマーであってもよい。他のモノマー単位を含むコポリマーとしては、例えば、ブタジエン-スチレンコポリマー、ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー、ブタジエン-スチレン-アクリロニトリルコポリマー、イソブチレン-アクリル酸エステルコポリマー、エチレン-プロピレン-ターポリマー(EPDM)等が挙げられる。ゴム成分は、好ましくはポリブタジエン(1,3-ブタジエンのポリマー)である。
【0046】
ポリマー(C)に含まれるゴム成分の含有量は、ポリマー(C)全量基準で、1質量%以上、1.5質量%以上、又は2質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。
【0047】
ポリマー(C)に含まれるスチレンの含有量は、ポリマー(C)全量基準で、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、99質量%以下、又は98質量%以下であってよい。
【0048】
ポリマー(C)は、組成物において粒子(ゴム状分散粒子)を形成し、組成物中に分散している。ポリマー(C)が形成する粒子の平均ゴム粒子径(Ro)は、耐衝撃性に更に優れた発泡シートを得る観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.2μm以上、更に好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは1.7μm以上であり、強度に優れた発泡シートを得る観点から、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、更に好ましくは12.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。平均ゴム粒子径は、0.5~50.0μm、0.5~30.0μm、0.5~12.0μm、0.5~5.0μm、1.2~50.0μm、1.2~30.0μm、1.2~12.0μm、1.2~5.0μm、1.5~50.0μm、1.5~30.0μm、1.5~12.0μm、1.5~5.0μm、1.7~50.0μm、1.7~30.0μm、1.7~12.0μm、又は1.7~5.0μmであってもよい。
【0049】
平均ゴム粒子径(Ro)は、組成物について、四酸化オスミウム(OsO)にてゴム成分を染色した後、透過型顕微鏡にてゴム状分散粒子100個の粒子径を測定し、下記式(1)により算出することができる。
【数1】

(式中、nは測定個数、Diは測定したゴム状分散粒子の粒子径を示す。)
【0050】
ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)は、10万以上、13万以上、又は15万以上であってよく、50万以下、30万以下、又は20万以下であってよい。
【0051】
組成物に含まれるポリマー(C)の含有量は、組成物全量基準で、0.1質量%以上、0.3質量%以上、又は0.5質量%以上であってよく、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0052】
組成物が、ポリマー(A)、ポリマー(B)、及びポリマー(C)を含有する場合、これらのポリマー以外に他の成分を含有してもよい。他の成分は、例えば、高分子加工助剤であってよい。高分子加工助剤は、組成物をシート状に成形する際、厚さ精度、製膜安定性及びフィッシュアイの低減に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05~0.5μmの粒子径を有するポリマー粒子である。高分子加工助剤は、上述したポリマー(A)、ポリマー(B)、及びポリマー(C)とは異なる樹脂からなっていてよく、例えばポリマー(A)、ポリマー(B)、及びポリマー(C)とは異なるアクリル系樹脂を含有してよい。高分子加工助剤は、単一組成比及び単一極限粘度のポリマーからなる単層粒子であってもよいし、組成比又は極限粘度の異なる2種以上のポリマーからなる多層粒子であってもよい。
【0053】
上述した組成物を用いて、発泡シートを得ることができる。発泡シートの製造方法は特に制限されず、例えば押出機の先端にダイ(特にTダイ)を取り付け、押出発泡する手法、射出成形により発泡した成形体を得る手法等によって製造することができる。製造方法としては、コストを抑える観点から、押出発泡により製造することが好ましい。
【0054】
発泡シートの製造の際には、組成物に発泡剤を添加してもよい。発泡剤としては、揮発性発泡剤及び化学発泡剤等が挙げられる。揮発性発泡剤としては、二酸化炭素、窒素及び空気等のガス;プロパン、ブタン及びペンタン等の揮発性炭化水素;塩化メチル等のハロゲン化炭化水素、水などが挙げられる。化学発泡剤としては、炭酸水素ナトリウム、無水クエン酸モノナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トリヒドラジノトリアジン、ベンゼンスルホニルセミカルバジド等が挙げられる。発泡剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0055】
発泡シートの発泡倍率は、発泡シートの断熱性に優れる観点から、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは2倍以上である。発泡倍率は、発泡シートの外観及び耐衝撃性に更に優れる観点から、好ましくは25倍以下、より好ましくは20倍以下、更に好ましくは15倍以下である。発泡倍率は、1.1~25倍、1.1~20倍、1.1~15倍、1.5~25倍、1.5~20倍、1.5~15倍、2~25倍、2~20倍、又は2~15倍であってもよい。発泡倍率は、発泡前の組成物の比重を、水中置換法(JIS K 7112)に従って測定した発泡シートの比重で割った値である。
【0056】
発泡シートにおいて、セルの扁平度は、発泡シートの断熱性に優れる観点から、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上である。セルの扁平度は、発泡シートの曲げ強度に優れる観点から、好ましくは9.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは3.0以下である。セルの扁平度は、1.1~9.0、1.1~5.0、1.1~3.0、1.2~9.0、1.2~5.0、1.2~3.0、1.5~9.0、1.5~5.0、又は1.5~3.0であってもよい。セルの扁平度は、セル径の長径と短径の比の体積平均で表される値であり、観察面が発泡シートの主面と垂直、且つ、発泡シートの流れ方向と平行になるように切削し、顕微鏡にて観察される断面楕円形のセルni個の長軸方向セル径D、及び短軸方向セル径Dを測定し、下記式(2)により算出することができる。
【数2】
【0057】
発泡シートは、例えば、熱成形によって所望の形状の成形体に加工することができる。すなわち、発泡シートは、例えば、熱成形用発泡シートとして用いることができる。発泡シートの成形体は、外観、耐衝撃性、及び耐熱性に優れているため、食品用容器又は包装用容器として好適に用いることができ、特に食品用容器として好適に用いることができる。発泡シートの成形体は、電子レンジで加熱して用いられる容器(電子レンジ加熱用容器)であってよい。
【0058】
発泡シートの成形体の形状及び大きさは特に限定されない。成形体の平面形状は、四辺形、円形、楕円形、多角形などの種々の形状であることが可能である。成形体の立体形状は、箱形(特に弁当箱状)、トレー状及び丼状等の種々の形状であることが可能である。成形体は、蓋と容器本体とを別々に備える容器の一部又は全部、蓋と容器本体とがヒンジ部となる側壁の一部を介して連結された蓋付き容器の一部又は全部であってもよい。
【0059】
図1は、一実施形態に係る発泡シートの成形体を示す斜視図である。図1に示す成形体10は、発泡シート1で構成されている。図1に示すように、成形体10は、一面側が開口した中空箱状に成形されており、内部に食品等の収容物を収容可能になっている。成形体10は、容器本体と蓋とを別々に備える容器における容器本体として好適に用いることができる。
【実施例
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
<製造例1:ポリマー(A)(スチレン-メタクリル酸コポリマー(A-1))の製造>
内容量200Lのジャケット及び撹拌機付きのオートクレーブに、純水100kg、ポリビニルアルコール100gを加え、130rpmで撹拌した。続いて、スチレン72.0kg、メタクリル酸4.0kg及びt-ブチルパーオキサイド20gを仕込み、オートクレーブを密閉して、110℃に昇温して5時間重合を行った(ステップ1)。また、4.0kgのメタクリル酸を、重合温度が110℃に達した時点から2時間かけて、均等に追加添加した(ステップ2)。さらに140℃で3時間保持し、重合を完結させた(ステップ3)。得られたビーズを洗浄、脱水、乾燥した後、押出し、ペレット状のスチレン-メタクリル酸コポリマー(A-1)を得た。このコポリマーについて熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて分析した結果、スチレンモノマー単位/メタクリル酸モノマー単位の質量組成比は、92/8であった。また、GPC測定により求めた重量平均分子量(Mw)は19万であった。
【0062】
<製造例2:ポリマー(A)(スチレン-メタクリル酸コポリマー(A-2)~(A-5))の製造>
スチレン及びメタクリル酸の仕込み量を、表1に示す質量比になるように変更した以外は、製造例1と同様にしてスチレン-メタクリル酸コポリマー(A-2)~(A-5)を得た。GPC測定により求めた重量平均分子量(Mw)は全て19万であった。
【0063】
【表1】
【0064】
<製造例3:ポリマー(B)(メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチルコポリマー(B-1))の製造>
温度計、窒素導入管、冷却管及び撹拌装置を備えたセパラブルフラスコ(容量5L)に、分散媒としてイオン交換水300質量部(3000g)、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.1質量部、連鎖移動剤としてn-オクチルメルカプタン0.01質量部、モノマーとしてメタクリル酸メチル80質量部、アクリル酸ブチル20質量部を投入した。このセパラブルフラスコに窒素気流を通じることにより、フラスコ内雰囲気の窒素置換を行った。次いで、内温を60℃まで昇温させ、過硫酸カリウム0.15質量部、脱イオン水5質量部を加えた。その後、加熱撹拌を2時間継続して重合を終了し、アクリル系樹脂ラテックスを得た。
得られたアクリル系樹脂ラテックスを25℃まで冷却後、酢酸カルシウム5質量部を含む70℃の温水500質量部中に滴下した後、90℃まで昇温させて凝析させた。得られた凝析物を分離洗浄後、60℃で12時間乾燥させて、ポリマー(B)として、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチルコポリマー(B-1)を得た。メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチルコポリマー(B-1)のガラス転移温度を、JIS K 7121:2012のプラスチックの転移温度測定方法に従った示差走査熱量測定(DSC)により測定したところ、60℃であった。また、GPC測定により求めた重量平均分子量(Mw)は400万であった。
【0065】
<製造例4:ポリマー(B)(メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチルコポリマー(B-2)~(B-5))の製造>
メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルの仕込み量を表2のとおりに変更した以外は、製造例3と同様にしてメタクリル酸メチル-アクリル酸ブチルコポリマー(B-2)~(B-5)を得た。GPC測定により求めた重量平均分子量(Mw)はいずれも400万であった。
【0066】
【表2】
【0067】
<製造例6:ポリマー(C)(グラフトコポリマー(C-1))の製造>
ゴム状重合体としてローシスポリブタジエンゴム(旭化成社製、商品名「ジエン55AS」)を使用し、このゴム状重合体3.4質量%と、91.6質量%のスチレンとを、溶剤として5.0質量%のエチルベンゼンに溶解して重合原料とした。また、ゴムの酸化防止剤(チバガイギー社製、商品名「イルガノックス1076」)0.1質量部を添加した。この重合原料を翼径0.285mの錨型撹拌翼を備えた14リットルのジャケット付き反応器(R-01)に12.5kg/hrで供給した。反応温度140℃、回転数2.17sec-1で撹拌して重合させ、ポリマー液を得た。得られたポリマー液のポリマー率は25%であった。得られたポリマー液を、直列に配置した2基の内容積21リットルのジャケット付きプラグフロー型反応器に導入した。1基目のプラグフロー型反応器(R-02)では、反応温度がポリマー液の流れ方向に120~140℃となるようにジャケット温度を調整した。2基目のプラグフロー型反応器(R-03)では、反応温度がポリマー液の流れ方向に130~160℃の勾配を持つようにジャケット温度を調整した。R-02出口でのポリマー率は50%、R-03出口でのポリマー率は70%であった。ここで、ポリマー率とは、下記式によって算出される。
ポリマー率(%)=100×(生成したポリマー量)/{(仕込んだモノマー量)+(溶剤量)}
得られたポリマー液を230℃に加熱後、真空度5torrの脱揮槽に送り、未反応単量体、溶剤を分離・回収した。その後、脱揮槽からギヤポンプで抜き出し、ダイプレートを通してストランドとした後、水槽を通してペレット化し、ポリマー(C-1)(グラフトコポリマー(C-1))として回収した。得られたポリマー(C-1)のゴム成分含有量は10.0質量%であった。また、GPC測定により求めた重量平均分子量(Mw)は19万であった。
【0068】
<製造例7:ポリマー(C)(グラフトコポリマー(C-2)~(C-3))の製造>
スチレン及びブタジエンの仕込み量を、表3に示す質量比になるように変更した以外は、製造例6と同様にしてグラフトコポリマー(C-2)~(C-3)を得た。GPC測定により求めた重量平均分子量(Mw)はいずれも19万であった。
【0069】
<製造例8:ポリマー(C)(グラフトコポリマー(C-4)~(C-5))の製造>
製造例6において、重合させる際の撹拌強度、及び重合温度を変更することにより、後述する平均ゴム粒子径が変更されたグラフトコポリマー(C-4)~(C-5)を得た。
【0070】
【表3】
【0071】
[組成物の調製]
<実施例1~74、比較例1~5>
後述する表4~14に示す組成に基づき、製造例1~8で得られたポリマーを、単軸押出機(VS40-36(φ40mm、L/D=36、圧縮比2.7)、田辺プラスチックス機械社製)に供給し、最高温度が230℃となるように溶融混練して組成物とした。組成物について、上述の方法により平均ゴム粒子径を測定したところ、表4~14に示すとおりであった。
【0072】
[発泡シートの作製]
溶融状態の組成物に、発泡剤としてブタンガス(イソブタン/n-ブタン=68/32(質量比))を、組成物100質量部に対して5.3質量部圧入して、ブタンガスを組成物中に均一に分散させた。組成物を、単軸押出機(VS40-36(φ40mm、L/D=36、圧縮比2.7)、田辺プラスチックス機械社製)の先端に取り付けられた幅600mmのTダイ(コートハンガー型水平出式)からクリアランスを0.5mmとして押出発泡して、シート状の発泡体を得た。続けて、このシート状の発泡体をキャストロールに供給し、ニップロールと挟み込み冷却した。このとき、発泡剤の添加量を調整することにより、発泡倍率を表4~14に示すとおりにした。発泡倍率を確認する際には、電子天秤(MDS-300、アルファーミラージュ社製)を使用して発泡シートの比重を測定した。
冷却の後、シート状の発泡体の端部を、押出方向に連続的に切断することにより、所定のシート幅にカットされた発泡シート(厚み:4mm、幅:500mm)を得た。
また、得られた発泡シートの扁平度を算出した。結果を表4~14に示す。
【0073】
[発泡シートの評価]
(外観)
発泡シートの外観(表面状態)を目視観察し、下記基準に基づき評価した。評価結果がA又はBであれば、外観に優れているといえる。結果を表4~14に示す。
A:表面の凹凸が微小であり、セルの破れが認められない。
B:表面の凹凸が少ない、又はセルの破れが軽微である。
C:表面の凹凸が著しい、又はセルの破れのため外観が損なわれている。
【0074】
(耐衝撃性)
発泡シートを用いて、真空圧空成形機(FVS-500、脇坂エンジニアリング社製)にて、ヒーター温度500℃、加熱時間20秒、真空成形時間5秒で弁当容器(縦:20cm、横:13cm、容器深さ:3cm)を成形した。500gの錘を入れ、蓋をした弁当容器を1mの高さから落下させる試験を10回行い、容器に破損が見られる数を評価した。評価基準は下記のとおりとした。評価結果がA又はBであれば、耐衝撃性に優れているといえる。結果を表4~14に示す。
A:容器の破損が2個以下
B:容器の破損が3~4個
C:容器の破損が5個以上
【0075】
(耐熱性)
前記弁当容器を110℃に設定した熱風乾燥機に60分間入れた後、容器底部の長辺の長さを加熱前の長さと比較し、下記基準に基づき評価した。評価結果がA又はBであれば、耐熱性に優れているといえる。結果を表4~14に示す。
A:変形なし
B:外寸変化5%未満
C:外寸変化5%以上
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
【表8】
【0081】
【表9】
【0082】
【表10】
【0083】
【表11】
【0084】
【表12】
【0085】
【表13】
【0086】
【表14】
【0087】
さらに、各実施例の発泡シート又は弁当容器について、以下の評価を行った。評価結果を表15~19に示す。
【0088】
(曲げ強度)
発泡シートの曲げ強度について、ASTM D2176に従って、シート押出方向(縦方向)とそれに垂直な方向(横方向)の耐折曲げ強さを測定し、その最小値を求め、下記基準に基づき評価した。評価結果がA又はBであれば、曲げ強度に優れているといえる。
A:5回以上
B:2回以上5回未満
C:2回未満
【0089】
(容器成形性)
弁当容器を形成後、弁当容器の外観について下記の基準に基づき評価した。評価基準は下記のとおりとした。評価結果がA又はBであれば、容器成形性に優れているといえる。
A:4つのコーナー部の内、いずれのコーナー部においても、表面粗さ(Rz)が40μm未満である。
B:4つのコーナー部の内、コーナー部の一部において、表面粗さ(Rz)が40μmを超える箇所がある。
C:4つのコーナー部の内、コーナー部の全てにおいて、表面粗さ(Rz)が40μmを超える箇所がある。
表面粗さ(Rz)は、オリンパス社製のレーザー顕微鏡(OLS4000)を用い、コーナー部の任意の箇所について、12.5mmの長さにおいて表面形状の測定を行うことにより算出した。
【0090】
(断熱性)
発泡シートの熱伝導率を、迅速熱伝導率計(QTM-710、京都電子工業社製)を用いて測定し、当該測定箇所のシート厚み(マイクロメータを用いて測定)を測定した熱伝導率で割った値を熱抵抗値とした。熱抵抗値から、下記基準に基づき断熱性を評価した。評価結果がA又はBであれば、断熱性に優れているといえる。
A:熱抵抗値が5×10-3(m・K/W)以上
B:熱抵抗値が4×10-3(m・K/W)以上5×10-3(m・K/W)未満
C:熱抵抗値が4×10-3(m・K/W)未満
【0091】
(強度)
上述の弁当容器に500gの錘を入れ、蓋をした弁当容器を5段重ね、24時間静置後の一番下の容器の変形状態を確認し、下記基準に基づき容器強度を評価した。評価結果がA又はBであれば、強度に優れているといえる。
A:形状変化なし
B:変形有り
C:割れ有り
【0092】
【表15】
【0093】
【表16】
【0094】
【表17】
【0095】
【表18】
【0096】
【表19】
【符号の説明】
【0097】
1…発泡シート、10…成形体。
図1