(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】真空ポンプ、および真空ポンプの作動のための方法
(51)【国際特許分類】
F04D 19/04 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
F04D19/04 A
F04D19/04 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019029323
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2019-07-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-16
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アドリーアン・ヴィルト
(72)【発明者】
【氏名】ダーニエール・ジーベン
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】田合 弘幸
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-213695(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10-2007-052479(DE,A1)
【文献】特開平7-135345(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3043074(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
F16C 23/04
F16C 35/06
F16C 35/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ、又はターボ分子ポンプであって、
ハウジングを有し、および、
ハウジング内に回転可能に支承されたローターを有し、このローターが、真空ポンプのインレットからアウトレットへのプロセスガスの搬送を行う回転を実施するよう駆動可能であり、
その際、ローターがハウジング内において少なくとも一方側で転がり軸受(260,273,275)によって回転可能に支承されており、そして、
転がり軸受(260,273,275)が少なくとも一つの軸受リング(264)と複数の転動体(262)を有し、転動体が、軸受リング(264)に沿って転動し、その際、基礎要素(266)と軸受リング(264)のための懸架部が、軸受リング(264)と基礎要素(266)の間に設けられており、この懸架部が、アクチュエーター(272,274,276)を有し、そして転がり軸受(260,273,275)に、変更可能な剛性、及び/又は減衰効果を少なくとも部分的に付与しており、並びに、
制御装置が設けられており、
この制御装置が、転がり軸受(260,273,275)の剛性及び/又は減衰効果を、ローターの回転
数及び/又は振動態様に応じ
て変更するように形成されている、
並びに
この制御装置が、剛性及び/又は減衰効果を、少なくとも二つの設定で若しくは段階の間
で切り替える
、即ち、ハードな設定とソフトな設定の間で切り替えるように形成されている、並びに
アクチュエーター(272,274,276)が、異なる剛性及び/又は減衰効果を実現するために、軸受リング(264)を、異なる強度で半径方向及び/又は軸方向に付勢するように形成されている、
当該真空ポンプにおいて、
制御装置は、定格回転数、又は作動回転数へのローターの始動の際に、まずハードな設定が選択され、回転周波数がハードな設定の第一の振動最大値に近づくと第一の切り替え周波数においてソフトな設定に切り替え、回転周波数がソフトな設定の振動最大値に近づくと第二の切り替え周波数においてハードな設定に切り替え、回転周波数がハードな設定の第二の振動最大値に近づくと第三の切り替え周波数においてソフトな設定に切り替える、ように形成されており、
ソフトな設定とハードな設定の間での切り替え期間が期間τであり、この期間τとローターの回転周波数Ωの間の関係が、τ<5*2π/Ωである、
ことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
半径方向において、及び/又は軸方向において剛性、及び/又は減衰効果が変更可能であることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
アクチュエーター(250,272,274,276)によって剛性、及び/又は減衰効果が変更可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
アクチュエーター(250,272,274,276)が電気的、及び/又は磁気的に作動可能であることを特徴とする請求項3に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
アクチュエーター(250,272,274,276)が電気的に活性、及び/又は磁気的に活性なポリマーを有することを特徴とする請求項3または4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
アクチュエーター(250,272,274,376)と、制御装置が設けられており、アクチュエーターによって剛性、及び/又は減衰効果が変更可能であり、制御装置は、アクチュエーター(250,272,274,276)を、ローターの振動態様のためのセンサーとしても使用するよう形成されていることを特徴とする請求項1から
5の少なくとも一項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
アクチュエーター(272,274)が、第一の切替状態において、軸受リング(264)及び基礎要素(266)の内の少なくとも一方と非接触であり、そして第二の切替状態において軸受リング(264)を基礎要素(266)において支持するよう付勢するよう形成されていることを特徴とする請求項1から
6の少なくとも一項に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
アクチュエーター(276)が、永続的に軸受リング(264)及び基礎要素(266)と接続されているよう形成されていることを特徴とする請求項1から
6の少なくとも一項に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
懸架部が、アクチュエーター(272,274,276)に追加的に、少なくとも一つのパッシブ式の懸架要素(268,270)を、基礎要素(260)と軸受リング(264)の間に有することを特徴とする請求項1から
8の少なくとも一項に記載の真空ポンプ。
【請求項10】
パッシブ式の懸架要素(268,270)が、半径方向、および軸方向において、軸受リング(264)と基礎要素(266)の間に配置されていることを特徴とする請求項
9に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の真空ポンプを作動させるための方法であって、その際、真空ポンプが、ハウジングを有し、および、
ハウジング内に回転可能に支承されたローターを有し、このローターが、真空ポンプのインレットからアウトレットへのプロセスガスの搬送を行う回転を実施するよう駆動され、その際、ローターがハウジング内において少なくとも一方側で転がり軸受(260,273,275)によって回転可能に支承されており、そして、
その際、転がり軸受(260,273,275)の剛性、及び/又は減衰作作用が変更され、並びに、
制御装置が設けられており、
この制御装置が、転がり軸受(260,273,275)の剛性及び/又は減衰効果を、ローターの回転
数及び/又は振動態様に応じ
て変更するように形成されている、
並びに
この制御装置が、剛性及び/又は減衰効果を、少なくとも二つの設定で若しくは段階の間
で切り替える
、即ち、ハードな設定とソフトな設定の間で切り替えるように形成されている、並びに
アクチュエーター(272,274,276)が、異なる剛性及び/又は減衰効果を実現するために、軸受リング(264)を、異なる強度で半径方向及び/又は軸方向に付勢するように形成されている、
当該真空ポンプにおいて、
制御装置は、定格回転数、又は作動回転数へのローターの始動の際に、まずハードな設定が選択され、回転周波数がハードな設定の第一の振動最大値に近づくと第一の切り替え周波数においてソフトな設定に切り替え、回転周波数がソフトな設定の振動最大値に近づくと第二の切り替え周波数においてハードな設定に切り替え、回転周波数がハードな設定の第二の振動最大値に近づくと第三の切り替え周波数においてソフトな設定に切り替える、ように形成されており、
ソフトな設定とハードな設定の間での切り替え期間が期間τであり、この期間τとローターの回転周波数Ωの間の関係が、τ<5*2π/Ωである、
ことを特徴とする真空ポンプを作動させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプに関するものであり、ハウジングを有し、および、ハウジング内に回転可能に支承されたローターを有し、このローターが、真空ポンプのインレットからアウトレットへのプロセスガスの搬送を行う回転駆動を実施されることが可能であり、その際、ローターがハウジング内において少なくとも一方側で転がり軸受によって回転可能に支承されている真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は更に、真空ポンプの作動のための方法であって、真空ポンプが、ハウジングを有し、および、ハウジング内に回転可能に支承されたローターを有し、このローターが、真空ポンプのインレットからアウトレットへのプロセスガスの搬送を行う回転駆動を実施されることが可能であり、その際、ローターがハウジング内において少なくとも一方側で転がり軸受によって回転可能に支承される方法に関する。
【0003】
一般的に、回転する機械、例えば上述した形式の真空ポンプは、設計基準に従う。これに応じて、定格回転数の範囲、又は許容される回転数範囲においては、システムの共振は存在してはならない、及び/又は必要とされる最小減衰量が保証されている必要がある。しかし、存在するシステム共振は、作動の為に許容される回転数範囲を制限する。しばしば、許容される回転数範囲の拡張と達成すべき回転数範囲における振動は減少が望まれている。これにともない、音響的放射が減少し、寿命が延長される。
【0004】
更に、真空ポンプの定格回転数(これと関連して最終回転数とも称される)における低減された振動は、常に重要となる真空ポンプのスペックの特徴である。例えば低振動であることは、電子顕微鏡の真空引きのためのターボ分子ポンプにとって特に重要である。
【0005】
冒頭に記載した真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいては、通常、定格回転数、又は作動回転数へのローターの加速の際(始動とも称される)、ローターの一つ又は複数の共振領域を通過し、特に、ローター動的剛体モード、及び/又は場合によっては、曲げ振動モードも通過する。定格回転数の範囲においては、相応する設計によって確かに共振が発生しない可能性があるので、ここでは比較的静かなローターの運転が可能である。しかしまた、より静かで、振動の少ない定格回転数への始動もまた、より静かな、特に音響的に知覚不可能な定格回転数への作動と同様に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、振動、特に冒頭に記載した形式の真空ポンプのローターの振動を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の真空ポンプによって、特に転がり軸受の剛性、及び/又は減衰効果が可変であることによって解決される。
【0008】
冒頭に記載した形式の公知の真空ポンプにおいては、一般的に、許容される回転数範囲、共振状態、振動減衰動作及び音響減衰動作、ローターの水平的な作動における最小支承剛性、及び/又は場合によっては別のパラメーター、例えば、複数のローターのパラメーターなどの間の妥協点が見いだされる必要がある。発明に従い、特に、様々な回転数範囲に対して、異なる剛性、及び/又は異なる減衰効果が、特に作動中に提供されることが可能である。これによって、ローターの振動態様が、共振周波数を含め、特に作動中に必要に応じて変更されることが可能である。よって振動が全体として明らかに低減されることが可能である。これは、真空ポンプのより少ない音響放射と、より長い寿命に作用する。
【0009】
上述した妥協案は、先行技術においては通常、作動安定性に関して定格回転数が優先される一方で、始動の際にはより高い振動が甘受されるということに通じる。発明に従い、例えば始動の際にも良好な作動安定性が、相応して低い音響放射のもと、およびより改善された寿命のもと達成されることが可能である。これは例えば、ローターの回転数が始動の際に共振周波数に近いとき、転がり軸受の剛性及び/又は減衰効果が変更されることによって可能とされる。よって共振周波数は、例えば避けられる、又は回避されることが可能である。特に、剛性の変更によって、共振周波数は単にスライドするということが可能で、しかし特に、その回転数範囲の達成の前にも、剛性、及び/又は減衰効果のさらなる変更が行われることが可能であるので、その結果、まず生じる共振周波数が避けられることができる。よって、結局、其々所定のシステムの剛性、又はシステムの減衰効果に対するすべての共振領域、及び/又は振動最大値が、避けられることが可能である。全体として、つまり特に始動の際にも、特に作動安定的な真空ポンプが提供されることが可能である。
【0010】
例えば、発明に係る真空ポンプにおいて、システムの共振回転数に対して特別間をあけた定格回転数が設定される(セットされる)よう、剛性、及び/又は減衰効果も、変更可能であることができ、又は変更されることが可能である。これによって振動が更に低減され、そして寿命が延長されることが可能である。
【0011】
本発明は、特に最低50Hzの高い回転数をともなう真空ポンプにおいて特別良好な振動低減を可能とする。真空ポンプは、例えばターボ分子ポンプ、ローラーピストンポンプ、またはスクリューポンプとして形成されていることが可能である。
【0012】
一つの実施形は、剛性、及び/又は減衰効果が半径方向において、及び/又は軸方向において変更可能であることを意図する。よって、望まれない大きな振動が半径方向、及び/又は軸方向において発生するとき、ローターの振動態様は、特に意図的に影響されることが可能である。
【0013】
一つの実施形においては、アクチュエーターが設けられている。このアクチュエーターによって、剛性、及び/又は減衰効果が変更されることが可能である。これによって、変更が特に簡単かつ有利に制御可能な方法で行われることが可能である。
【0014】
アクチュエーターは、例えば電気的、及び/又は磁気的に作動可能であることが可能である。アクチュエーターは、特に簡単に制御されることが可能である。
【0015】
一つの発展形に従い、アクチュエーターは電気的に活性、及び/又は磁気的に活性なポリマーを含むことが意図されている。それは、剛性、及び/又は減衰効果の迅速な変更、少ない製造コスト、および比較的大きな変更サイクル、つまり良好な寿命を可能とする。電気的に活性なポリマーは、更には、基本的にある状態において電力消費を必要とせず、変更、又は切替の間のみこれを必要とする。ここで、必要な(高)電圧源が小さな構造空間で、かつ安価に得られることができるというメリットもわかった。ポリマーは、例えばエラストマーとして、特に誘電性のエラストマーとして、形成されていることが可能である。このことは有利な減衰効果のもと良好な制御可能性を保証する。ポリマーの代替として、又はこれに追加的に、例えばピエゾアクチュエーターも設けられていることが可能である。基本的に、エラストマー、及び/又は流体のような電気レオロジー材料、及び/又は磁気レオロジー材料の使用も考え得る。
【0016】
別の実施形においては、制御装置、特にアクチュエーターのための制御装置が設けられている。この制御装置は、転がり軸受の剛性、及び/又は減衰効果をローラーの回転数、及び/又は振動態様に応じて変更するよう形成されている。よってローターの振動は意図的に最小化されることが可能である。回転数に応じた制御は、回転数、剛性、および減衰効果に応じた公知の振動態様を有するシステムに特に適している。その際、作動中の制御コストは比較的低い。特に、回転数は多くの場合いずれにせよ検出されるからである。より正確には、振動は、実際のローターの振動が測定され、そして制御が、ローターの振動態様に応じて転がり軸受の剛性、及び/又は減衰効果を変更することによって行われる。これによって、実際の振動態様の相違、つまり計算上の振動態様、又は作動の現場で経験的に得られた振動態様からの相違が確実に補償されることが可能である。回転数のため、一般的にはローターの回転周波数が援用されることが可能である。
【0017】
例えば制御装置が、特にアクチュエーターの為に設けられていることが可能である。この制御装置は、少なくとも二つの段階の間で剛性、及び/又は減衰効果を切り替えるよう形成されている。この例において基本的に、連続的な変更は行われず、いわば断続的な切替が行われる。特に、制御装置は、剛性、及び/又は減衰効果のちょうど二つの段階の間のみにおいて切り替えられることが可能である。電気的、又は電磁的に操作されるアクチュエーターが設けられている場合は、その際、例えば「オン」状態や、「オフ」状態が意図されていることが可能である。その際、制御装置は、相応してアクチュエーター内において電圧、及び/又は電流がオン、又はオフ切替される。
【0018】
少なくとも二つの段階は、例えば、少なくとも1.5:1の比率の転がり軸受の剛性、特に少なくとも2:1、特に少なくとも3:1、及び/又は最高10:1、特に最高5:1、特に最高4:1の比率の転がり軸受の剛性を有し得る。代替として、又は追加的に、少なくとも二つの段階が、例えば、少なくとも2:1の比率の転がり軸受の減衰効果、特に少なくとも5:1、特に少なくとも9:1、及び/又は最高30:1、特に最高20:1、特に最高11:1の比率の転がり軸受の減衰効果を有し得る。
【0019】
例えば、制御装置が設けられ、そして、真空ポンプ内の所定の箇所におけるローターの振動推移が、少なくとも二つのアクチュエーター状態に対する回転数に応じて検出可能であり、及び/又は保管可能であり、そして、振動推移の少なくとも一つの交点において、これらアクチュエーターの状態が切り替えられるよう形成されていることが可能である。特に、常に、より低い振動推移が選択されることが可能である。よって、簡単に、できるだけ振動の少ない実際の振動推移が実現されることが可能である。
【0020】
別の実施例においては、ある制御装置が設けられている。この制御装置は、ある期間において剛性、及び/又は減衰効果を変更するよう形成されている、及び/又はある期間において、二つの設定(状態)、又は段階の間で切替を行う、特に、ハードな設定とソフトな設定の間で切り替えを行う。好ましくは、当該期間は、1秒よりも短く、好ましくは500msよりも短く、特に好ましくは100msよりも短いことが意図されている。その際、またはこれと関係なく、期間τとローターの回転数Ωの間の関係はτ<5*2π/Ωである。
【0021】
本発明は、結果、変更、又は切替の為、比較的短い期間を可能とする。短い切り替え時間と、結果、迅速な切替は特に有利である。
【0022】
基本的に、剛性、および減衰効果がともに変更可能であるとき、特に有利である。これは例えば真空ポンプの制御を簡単とする。
【0023】
別の実施形に従い、アクチュエーターと制御装置が設けられている。アクチュエーターによって、剛性、及び/又は減衰効果が変更可能である。制御装置は、アクチュエーターを、ローターの振動数態様のためのセンサーとしても使用するよう形成している。この措置は、有利な機能統合を意味する。これによって製造コストおよび作動コストが低減されることが可能である。例えば、追加的なセンサーが設けられる必要がないからである。同時に、アクチュエーターの特に正確な制御も可能とされることが可能であり、よって振動は結果としてさらに低減されることが可能である。特に、制御装置は、ローターの振動態様(振動挙動)を、センサーとして使用されるアクチュエーターによって検出し、そして転がり軸受の剛性を検出したローターの振動態様に応じて変更するよう形成されていることが可能である。
【0024】
一つの発展形においては、転がり軸受が少なくとも一つの軸受リングと複数の転動体を有し、転動体が、軸受リングに沿って転動し、その際、基礎要素と軸受リングのための懸架部が、軸受リングと基礎要素の間に設けられており、この懸架部が、アクチュエーターを有し、そして転がり軸受に、変更可能な剛性、及び/又は減衰効果を少なくとも部分的に付与することが意図されている。これは、構造上、および製造技術上、ローター振動を低減するための、特に簡単で、信頼性の高い可能性を意味する。
【0025】
アクチュエーターは、例えば、外側の軸受リングを異なる剛性、及び/又は減衰効果の実現のため、異なる強度で半径方向及び/又は軸方向に付勢するよう形成されていることが可能である。その際、基本的に付勢レベルは、ゼロの力にも相当することが可能である。このレベルは、例えば、アクチュエーターが軸受リング、及び/又は基礎要素に接触しない状態に相当することが可能である。
【0026】
基本的に、アクチュエーターは、電気的、及び/又は磁気的な操作の際、場の方向に、又は場の方向を横切る方向に作用し、及び/又は軸受リング、及び/又は基礎要素を付勢することが可能である。よって例えば、特に大きな拡張、及び/又は特に大きな力が場に関して相応する方向で有利に利用されることが可能である。
【0027】
一般的に、アクチュエーターは例えば、操作方向において少なくとも1mm、特に少なくとも2mm、及び/又は最高10mm、特に最高5mm、特に最高3mm、特に約2.5mmの長さを有し得る。
【0028】
例えば、アクチュエーターは、第一の切替状態において、少なくとも軸受リングの一方及び基礎要素と非接触であり、そして第二の切替状態において軸受リングを基礎要素において支持するよう付勢するよう形成されている。これによって、特に簡単な方法で、剛性、及び/又は減衰効果における効果的な相違を有する二つの切替状態が実現されることが可能である。
【0029】
代替として、アクチュエーターは例えば、永続的に軸受リングおよび基礎要素と接続されているよう形成されていることが可能である。これによって、あらゆる状況において、つまりアクチュエーターが接続されていない状態においても、そのパッシブ式の剛性、及び/又は減衰効果によってこれらが軸受リングのために提供されることが可能である。これによって例えば、相応する方向において、つまり特に半径方向、又は軸方向において、追加的なパッシブ式の懸架要素が省略されることが可能である。
【0030】
基本的に、複数のアクチュエーターを設けることも可能である。これらは、例えば一部は、非接触の切替状態で、そして他の部分は、永続的に接続されて形成されていることが可能である。また、例えば、半径方向の剛性、及び/又は減衰効果に対しても、軸方向の剛性、及び/又は減衰効果に対しても独立した複数のアクチュエーターが設けられていることが可能である。両者に対して一つの共通のアクチュエーターが設けられていることも可能である。基本的に、複数のアクチュエーターが軸受リングの内周、及び/又は外周にわたって分配されて設けられていることも可能である。特に一様な制御を可能とするためである。アクチュエーター自体が、少なくとも部分的に、特に完全に周回して、例えばバンド形状(帯形状)に形成されていることも可能である。
【0031】
別の実施形においては、懸架部はアクチュエーターに対して追加的に、少なくとも一つのパッシブ式の懸架要素を基礎要素および軸受リングの間に有する。これによって、アクチュエーターがアクティベートされていない状態においても有利な剛性、及び/又は減衰効果が提供されることが可能である。パッシブ式の懸架要素は、例えば半径方向、及び/又は軸方向において軸受リングと基礎要素の間に配置されていることが可能である。
【0032】
ローターは、例えば、更に磁石軸受によって支承されていることが可能である。そのような配置は、「ハイブリッド支承」とも称される。特に磁石軸受は、インレット側に、そして転がり軸受はアウトレット側に配置されていることが可能である。
【0033】
本発明の課題は、請求項12に記載の方法によっても解決され、特に、転がり軸受の剛性、及び/又は減衰効果が改善されることによって解決される。
【0034】
発明に係る方法は、発明に係る装置のここに記載した実施形の意味においても有利に発展させられることが可能であり、また逆もしかりであると解される。
【0035】
以下に本発明を、有利な実施形に基づき添付の図面を参照しつつ説明する。図は以下を簡略的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図3】
図2に示された線A-Aに沿うターボ分子ポンプの断面図
【
図4】
図2に示された線B-Bに沿うターボ分子ポンプの断面図
【
図5】
図2に示された線C-Cに沿うターボ分子ポンプの断面図
【
図6】発明に係る真空ポンプのためのアクチュエーターの図
【
図7】発明に係る真空ポンプの
転がり軸受の実施形の図
【
図8】発明に係る真空ポンプの
転がり軸受の別の実施形の図
【
図9】発明に係る真空ポンプの
転がり軸受のさらに別の実施形の図
【
図10】発明に係る真空ポンプのローターの振動の推移の図
【
図11】同じローターの当該ローターの別の軸方向箇所における振動の推移の別の図
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、インレットフランジ113に取り囲まれたポンプインレット115を有する。このポンプインレットには、公知の方法で、図示されていないレシピエントが接続されることが可能である。レシピエントからのガスは、ポンプインレット115を介してレシピエントから吸引され、そしてポンプを通してポンプアウトレット117へと搬送されることが可能である。ポンプアウトレットには、予真空ポンプ(例えばロータリーベーンポンプ)が接続されていることが可能である。
【0038】
インレットフランジ113は、
図1の真空ポンプの向きにおいては、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。これには、側方にエレクトロニクスハウジング123が設けられている。エレクトロニクスハウジング123内には、真空ポンプ111の電気的、及び/又は電子的コンポーネントが収容されている。これらは例えば、真空ポンプ内に配置される電動モーター125を作動させるためのものである。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリーのための複数の接続部127が設けられている。更に、データインターフェース129(例えばRS485スタンダードに従うもの)と、電源供給接続部131がエレクトロニクスハウジング123には設けられている。
【0039】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、フローインレット133が、特にフローバルブの形式で設けられている。これを介して真空ポンプ111は溢出を受けることが可能である。下部分121の領域には、更にシールガス接続部135(洗浄ガス接続部とも称される)が設けられている。これを介して、洗浄ガスが、電動モーター15をポンプによって搬送されるガスに対して保護するため、モーター室137内に取り込まれることが可能である。モーター室内には、真空ポンプ111の電動モーター125が収容されることが可能である。下部分121内には、更に二つの冷却媒体接続部139が設けられている。その際、一方の冷却媒体接続部は冷却媒体のインレットとして、そして他方の冷却媒体接続部はアウトレットとして設けられている。冷却媒体は、冷却目的で真空ポンプ内に導かれることが可能である。
【0040】
真空ポンプの下側面は、起立面として使用されることが可能であるので、真空ポンプ111は下側面141上に起立して作動させられることが可能である。しかしまた、真空ポンプ111は、インレットフランジ113を介してレシピエントに固定されることも可能であり、これによっていわば懸架して作動させられることが可能である。更に真空ポンプ111は、
図1に示されたものと異なった向きとされているときにも作動させられることが可能であるよう構成されていることが可能である。下側面141が下に向かってではなく、当該面に向けられて、又は上に向けられて配置されている真空ポンプの実施形も実現されることが可能である。
【0041】
図2に表わされている下側面141には、更に、種々のスクリュー143が設けられている。これらによって、ここでは詳細に特定されない真空ポンプの部材が互いに固定されている。例えば、
軸受カバー145が下側面145に固定されている。
【0042】
下側面141には、更に、固定穴147が設けられている。これを介してポンプ111は例えば載置面に固定されることが可能である。
【0043】
図2から5には、冷却媒体配管148が表わされている。この中に、冷却媒体接続部139を介して導入、又は導出される冷却媒体が循環していることが可能である。
【0044】
図3から5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有している。これは、ポンプインレット115に及ぶプロセスガスをポンプアウトレット117に搬送するためのものである。
【0045】
ハウジング119内には、ローター149が配置されている。このローターは、回転軸線151を中心として回転可能なローターシャフト153を有している。
【0046】
ターボ分子ポンプ111は、ポンプ効果を奏するよう互いにシリアルに接続された複数のポンプ段を有している。これらポンプ段は、ローターシャフト153に固定された複数の半径方向のローターディスク155と、ローターディスク155の間に配置され、そしてハウジング119内に固定されているステーターディスク157を有している。その際、一つのローターディスク155とこれに隣接する一つのステーターディスク157がそれぞれ一つのターボ分子ポンプ段を形成している。ステーターディスク157は、スペーサーリング159によって互いに所望の軸方向間隔に保持されている。
【0047】
真空ポンプは、更に、半径方向において互いに入れ子式に配置され、そしてポンプ作用を奏するよう互いにシリアルに接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段のローター側は、ローターシャフト153に設けられるローターハブ161と、ローターハブ161に固定され、そしてこれによって担持されるシリンダー側面形状の二つのホルベックロータースリーブ163,165を有している。これらは、回転軸線151と同軸に向けられており、そして半径方向において互いに入れ子式に接続されている。更に、シリンダー側面形状の二つのホルベックステータースリーブ167,169が設けられている。これらは同様に、回転軸線151に対して同軸に向けられており、そして半径方向で見て互いに入れ子式に接続されている。
【0048】
ポンプ効果を発揮するホルベックポンプ段の表面は、側面によって、つまり、ホルベックロータースリーブ163,165とホルベックステータースリーブ167,169の内側面、及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータースリーブ167の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、ターボ分子ポンプに後続する第一のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータースリーブ163の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータースリーブ169の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第二のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータースリーブ169の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータースリーブ165の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第三のホルベックポンプ段を形成する。
【0049】
ホルベックロータースリーブ163の下側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173と接続されている。更に、ホルベックステータースリーブ169の上側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられていることが可能である。これを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175と接続されている。これによって、入れ子式に接続される複数のホルベックポンプ段が互いにシリアルに接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータースリーブ165の下側の端部には、更に、アウトレット117への接続チャネル179が設けられていることが可能である。
【0050】
ホルベックステータースリーブ163、165の上述したポンプ効果を発揮する表面は、それぞれ、螺旋形状に回転軸線151の周りを周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝を有する。他方で、ホルベックロータースリーブ163、165のこれに向かい合った側面は、滑らかに形成されており、そして真空ポンプ111の作動のためのガスをホルベック溝内へと駆り立てる。
【0051】
ローターシャフト153の回転可能な支承のため、ポンプインレット117の領域に転がり軸受181、およびポンプアウトレット115の領域に永久磁石軸受183が設けられている。
【0052】
転がり軸受181の領域には、ローターシャフト153に円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。これは、転がり軸受181の方に向かって増加する外直径を有している。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも一つのスキマー(独語:Abstreifer)と滑り接触状態にある。作動媒体貯蔵部は、互いに積層された吸収性の複数のディスク187を有する。これらディスクは、転がり軸受181のための作動媒体、例えば潤滑剤を染み込ませてある。
【0053】
真空ポンプ111の作動中、作動媒体は、毛細管効果によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力によってスプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の大きくなる外直径の方向へと、転がり軸受181に向かって搬送される。そこでは例えば、潤滑機能が発揮される。転がり軸受181と作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内において槽形状のインサート189と、軸受カバー145に囲まれている。
【0054】
永久磁石軸受183は、ローター側の軸受半部191と、ステーター側の軸受半部193を有している。これらは、各一つのリング積層部を有している。リング積層部は、軸方向に互いに積層された永久磁石の複数のリング195、197から成っている。リングマグネット195,197は、半径方向の軸受間隙199を形成しつつ互いに向き合っており、その際、ローター側のリングマグネット195は、半径方向外側に、そしてステーター側のリングマグネット197は半径方向内側に設けられている。軸受間隙199内に存在する磁場は、リングマグネット195,197の間の磁気的反発力を引き起こす。これは、ローターシャフト153の半径方向の支承を実現する。ローター側のリングマグネット195は、ローターシャフト153のキャリア部分201によって担持されている。これは、リングマグネット195を半径方向外側で取り囲んでいる。ステーター側のリングマグネット197は、ステーター側のキャリア部分203によって担持されている。これは、リングマグネット197を通って延びており、そしてハウジング119の支材205に吊架されている。回転軸線151に平行に、ローター側のリングマグネット195が、キャリア部分203と連結されるカバー要素207によって固定されている。ステーター側のリングマグネット197は、回転軸線151に平行に、キャリア部分203と接続される固定リング209によって、およびキャリア部分203と接続される固定リング211によって一つの方向に固定されている。その上、固定リング211とリングマグネット197の間には、さらばね213が設けられていることが可能である。
【0055】
磁石軸受の内部には、緊急用または安全用軸受215が設けられている。これは、真空ポンプの通常の作動時には、非接触で空転し、そしてローター149がステーターに対して半径方向において過剰に偏移した際に初めて作用するに至る。ローター149のための半径方向のストッパーを形成するためである。ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのが防止されるからである。安全用軸受215は、潤滑されない転がり軸受として形成されており、そして、ローター149及び/又はステーターと半径方向の間隙を形成する。この間隙は、安全用軸受215が通常のポンプ作動中は作用しないことに供する。安全用軸受が作用するに至る半径方向の間隙は、十分大きく寸法取られているので、安全用軸受215は、真空ポンプの通常の作動中は作用せず、そして同時に十分小さいので、ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのがあらゆる状況で防止される。
【0056】
真空ポンプ111は、ローター149を回転駆動するための電動モーター125を有している。電動モーター125のアンカーは、ローター149によって形成されている。そのローターシャフト153はモーターステーター217を通って延びている。ローターシャフト153の、モーターステーター217を通って延びる部分には、半径方向外側に、または埋め込まれて、永久磁石装置が設けられていることが可能である。ローター149の、モーターステーター217を通って延びる部分と、モーターステーター217との間には、中間空間219が設けられている。これは、半径方向のモーター間隙を有する。これを介して、モーターステーター217と永久磁石装置は、駆動トルク伝達のため、磁気的に影響することが可能である。
【0057】
モーターステーター217は、ハウジング内において、電動モーター125のために設けられるモーター室137の内部に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(洗浄ガスとも称され、これは例えば空気や窒素であることが可能である)が、モーター室137内へと至る。シールガスを介して電動モーター125は、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の部分に対して保護されることが可能である。モーター室137は、ポンプアウトレット117を介しても真空引きされることが可能である、つまりモーター室137は、少なくとも近似的に、ポンプアウトレット117に接続される予真空ポンプによって実現される予真空状態となっている。
【0058】
モーター室137を画成する壁部221とローターハブ161の間には、更に、いわゆる公知のラビリンスシール223が設けられていることが可能である。特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対してモーター室217をより良好にシールすることを達成するためである。
【0059】
上述した真空ポンプ111は、先行技術の一部である。
図3からは、真空ポンプ111がハイブリッド支承されるターボ分子ポンプであること、つまりローター149は、
転がり軸受181(ここではアウトレット側)と、磁石
軸受183(ここではインレット側)の組み合わせによって支承されていることが見て取れる。真空ポンプ111は、有利には発明に従い発展させられることが可能であり、そして逆に、他のここに記載した真空ポンプと作動方法も、真空ポンプ111の個々の特徴、又は特徴の組み合わせによって有利に発展させられることが可能である。
【0060】
図6には、アクチュエーター250が示されている。これは、可変の
剛性、及び/又は
減衰効果を真空ポンプの
転がり軸受に対して提供するのに適している。アクチュエーター250は、電気的に活性なポリマーを有する。このポリマーは、可動体252を形成する。ボディ252には、平行に向けられた複数の電極254が貫通している。これら電極は、電源256に接続されており、電源は、図示されていない制御装置によって制御される。電極254の間に電源256によって電圧が掛けられるとすぐに、ボディ252の形状が変化する。変化は特に電極254に対して垂直な方向、つまり
図6の垂直方向で行われる。しかしその際、これに対して垂直な方向、つまり
図6において図平面に対して水平および垂直な方向においての変形が同時に行われる。しかしその際、この変形は、通常、電極254に対して垂直な変形よりも小さい。
【0061】
図7には、発明に係る真空ポンプの
転がり軸受260の一部が簡略的に見て取ることができる。
転がり軸受260は、ボール
軸受として形成され、そして複数のボール262、内側の
軸受リング、およびケージ(図示されていない)、並びに外側の
軸受リング264を有している。外側の
軸受リングに沿って、ボールが転動する。図示されていないローターの回転軸
線は、軸
線265によって示唆されている。
軸受リング264は、懸架部によって基礎要素266に保持されている。懸架部は、軸方向に配置されたパッシブ式の二つの懸架要素268と、半径方向外側に配置されたパッシブ式の一つの懸架要素270を有する。
【0062】
更に、基礎要素266には、アクチュエーター272が配置されている。このアクチュエーターは、電圧によってその形状が変化するよう形成されており、詳しく言うと、アクチュエーター272が
軸受リング264に向かう方向、つまり
図7における水平方向に拡張し、そして最終的にはこれを付勢するよう変化するよう形成されている。
【0063】
アクチュエーター272と異なり、パッシブ式の懸架要素268と270は、制御不可能であり、よって「パッシブ式」と称されている。懸架要素は、その剛性と減衰効果に関して、理想的な構成で選択される。基本的に、これら懸架要素、またはさらなる懸架要素が唯一のアクチュエーター装置、例えば電気的に変形可能なポリマーを設けられていることも考え得る。例えば、すべての剛性、及び/又は減衰効果の更に正確な制御を達成するためである。
【0064】
つまりアクチュエーター272は、表わされた状態では、軸受リング264に接触せず、有利には、転がり軸受260の剛性と減衰効果の向上のため、応力下に置かれ、これによって拡張し、軸受リング264を付勢するよう制御され、よって接触しない状態におけるものとは異なるより剛性と減衰効果を、軸受リング264に与える。これによって、有利には二つの切替状態が実現される。これら切替状態は、剛性、又は減衰効果の異なる二つのレベルに相当する。
【0065】
軸受リング264は、転がり軸受260の外側リングである。しかしまた、基本的に、例えば内側リングが相応して懸架され、そしてアクチュエーター的に影響を与えられることが可能である。アクチュエーター272は、軸受リング264に固定され、よって基礎要素266を選択的に付勢することも可能である。アクチュエーターは、例えば軸方向に作用し、そして特にパッシブ式の懸架要素268の一方を置き換える、又は補足することができる。しかし基本的に、示されているように、軸方向と半径方向の懸架が厳密に分離することのみが考え得るのではなく、例えば軸受リング264の角に懸架要素、及び/又はアクチュエーターを設けること、または軸受リング264の他の形状の場合、他の多くの箇所に設けることも考え得る。
【0066】
アクチュエーター272の電極は、平行な複数の線によって示されている。
図7の実施形においては、アクチュエーター272は電極に対して平行な方向で使用される。
図8の
転がり軸受273は、基本的に、アクチュエーター274が設けられており、その拡張が電極に直角な方向で使用され、
軸受リング264を付勢する点で異なっている。
【0067】
これに対して、
図9に示される発明に係る真空ポンプの
転がり軸受275の実施形においてはアクチュエーター276が設けられている。このアクチュエーターは、永続的に、基礎要素266とも、
軸受リング264とも接続されている。ここでアクチュエーター276は、そのパッシブ式の材質特性により、
軸受リング264の懸架部に半径方向の
剛性と
減衰効果を、制御されていない状態においても付与する。この理由から、この実施形においては、半径方向のパッシブ式の懸架要素、つまり例えば
図7および8において懸架要素270によって意図されているようなものが省略される。アクチュエーター276に電圧をかけることによってこれが変形させられることが可能である。ここでこれは半径方向に拡張することができないので、その
剛性と
減衰効果のみが高められる。
【0068】
アクチュエーター276は、例えば段階的に制御されることが可能であり、又は連続的に制御されることも可能である。
図7の実施例に似て、アクチュエーター276の変形は、電極に対して平行な方向で、かつ電場に対して垂直な方向で使用される。しかしその際、例えば変形の使用が、電場に対して並行であることも考えられる。
【0069】
図10には、グラフが示されている。このグラフを、回転周波数Ωに応じたローターの振動推移のプロットを示す。振動推移は、真空ポンプの表面の加速aとして検出されたものである。ローターは、規範的・例示的な発明に係る真空ポンプの部分である。この部分は、ハイブリッド支承されたターボ分子ポンプとして形成されている。ターボ分子ポンプの下部分、つまり
転がり軸受の近くの振動推移が示されている。ターボ分子ポンプの
転がり軸受は、
剛性と
減衰効果において二つの段
階が実現されるよう制御される。つまり、より高い
剛性および
減衰効果を有する、又は、より低い
剛性および
減衰効果を有する「ハードな」設定と「ソフトな」設定である。
【0070】
第一に、一貫して転がり軸受のソフトな設定に相当するローターの振動推移280が示されている。この設定においては、ローターは示されている回転周波数領域においては、二つの振動最大値を有する。更に、別の振動推移282が示されている。この振動推移は、一貫して転がり軸受のハードな設定に相当する。その際、ローターは、示された回転周波数領域で、同様に二つの振動最大値を有する。これらは、しかし他の回転周波数にあり、これは、弱い設定の場合である。
【0071】
推移280および282と比較してより太い線として振動推移284が示されている。これは、転がり軸受の剛性及び減衰効果の有利な制御における振動推移に相当する。その際、常に設定が、つまりハードかソフトが選択される。これは、存在する回転数、又は回転周波数にとってより低い振動振幅が期待されることが可能である。
【0072】
具体的には、始動の際、つまり回転周波数Ωがゼロから始まって、まずハードな設定が選択される。よって、ソフトな設定の第一の振動最大値が回避される。しかし回転周波数が、ハードな設定の第一の振動最大値に近づくと、第一の切替周波数286においてソフトな設定に切り替えられるので、ハードな設定の第一の振動最大値も回避される。相応して、第二の振動最大値についても操作が行われる。その際、其々、第二の切替周波数282において、および第三の切替周波数290において、振動推移280および282の交点で、切り替えられる。
【0073】
実際の振動推移284は、その振幅が全体として明らかにより低く、そして特に、ハード又はソフト各設定において共振によって引き起こされる最大値を持っていないことが示されている。これによって、ポンプの音響放射(主として加えられる表面加速に影響される音響放射)が明らかに低減されることが可能である。これは、ポンプの寿命にもポジティブに作用する。
【0074】
図11には、振動推移がプロットされる別のグラフが示されている。これは、
図10に関して説明したように、
剛性及び
減衰効果の制御に基づいている。ここで、表面加速aは、ポンプハウジングにおいて、磁石
軸受の高さで、つまり他の軸方向の場所で検出される。振動推移292はソフトな設定に相当し、そして、振動推移294はハードな設定に相当する。実際の振動推移296は、より太い線によってあらわされている。
【0075】
ここで確かに、常に、可能な最も低い振動振幅が、実際の振動推移296によって使用されるのではない。これは、システムがこのような他の軸方向の領域において、少し異なる振動推移を有することに基づいている。しかし、ソフトな設定とハードな設定の間の選択された切替戦略によって、ここでも振動最大値が回避されることが可能であり、そして全体として、比較的小さな振動振幅が達成されることが可能である。もちろん転がり軸受の剛性、及び/又は減衰効果のための切替戦略、又は制御戦略は、違うように形成されていることも可能である。例えば、磁石軸受の高さ、または中程度の高さにおける振動態様に向けられている結果、そこで其々、可能な最も低い振動が発生するよう形成されていることが可能である。
【0076】
ソフト及びハードな設定の間で比較的迅速に切替が行われると有利である。例えば、両方の設定の間で切り替え期間がτ<5*2π/Ωであると特に好ましい。その際、Ωは切替ポイントにおけるローターの回転周波数である。ターボ分子ポンプにおいては、例えば切替時間が最高100msであると有利である。これに対して単なる緩やかな変更は、切替の間のローターの過渡的な動的な状態へと通じることが可能であり、ひいては短時間の共振の増大へと通じ得る。
【0077】
発明に従い、簡単な手段で真空ポンプ内の振動が明らかに低減されることが可能であり、そして特に、共振の結果たる著しい振動最大値が回避されることが可能である。よって、高い振動数領域にわたって、低い音響放射の良好な動作安定が達成されることが可能である。これによって、ポンプの主観的音響的知覚が快適となるのみならず、接続されるシステムはあきらかに低い振動にさらされることとなり、この事は、作業正確性を高めることができる。特に本発明は、真空ポンプの寿命にもポジティブに作用する。
【符号の説明】
【0078】
111 ターボ分子ポンプ
113 インレットフランジ
115 ポンプインレット
117 ポンプアウトレット
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モーター
127 アクセサリー接続部
129 データインターフェース
131 電源供給接続部
133 フローインレット
135 シールガス接続部
137 モーター室
139 冷却媒体接続部
141 下側面
143 ねじ
145 軸受カバー
147 固定穴
148 冷却媒体配管
149 ローター
151 回転軸線
153 ローターシャフト
155 ローターディスク
157 ステーターディスク
159 スペーサーリング
161 ローターハブ
163 ホルベックロータースリーブ
165 ホルベックロータースリーブ
167 ホルベックステータースリーブ
169 ホルベックステータースリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 転がり軸受
183 永久磁石軸受
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ローター側の軸受半部
193 ステーター側の軸受半部
195 リングマグネット
197 リングマグネット
199 軸受間隙
201 担持部分
203 担持部分
205 半径方向の支柱
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 さらばね
215 緊急用または安全用軸受
217 モーターステーター
219 中間空間
221 壁部
223 ラビリンスシール
250 アクチュエーター
252 ボディ
254 電極
256 電力源
260 転がり軸受
262 ボール
264 軸受リング
265 軸線
266 基礎要素
268 パッシブ式の懸架要素
270 パッシブ式の懸架要素
272 アクチュエーター
273 転がり軸受
274 アクチュエーター
275 転がり軸受
276 アクチュエーター
280 振動推移
282 振動推移
284 振動推移
286 第一の切替周波数
288 第二の切替周波数
290 第三の切替周波数
290 振動推移
292 振動推移
294 振動推移
Ω 回転周波数
a 加速度