(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】開閉窓
(51)【国際特許分類】
E05C 17/26 20060101AFI20230112BHJP
E05D 15/44 20060101ALI20230112BHJP
E05D 15/30 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
E05C17/26
E05D15/44
E05D15/30
(21)【出願番号】P 2019029352
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 富広
(72)【発明者】
【氏名】力竹 洋明
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-164817(JP,A)
【文献】特開2017-125304(JP,A)
【文献】実開昭63-201178(JP,U)
【文献】特開平10-088889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 17/12-15/34
E05D 15/30
15/42-15/44
E06B 3/36
3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開口を縁取る枠体と、
前記窓開口を閉じた状態と前記窓開口を開いた状態との間で揺動変位する障子と、
前記障子が開いた状態を、第1状態又は当該第1状態よりも大きく開いた第2状態に保持するための状態保持機構と、
前記第1状態を解除して前記障子を揺動可能な状態とする際に操作される操作部であって、前記障子の正面側に配置された操作部と
、
前記操作部が操作されて前記障子が前記「揺動可能な状態」となったときに、当該「揺動可能な状態」になったことを報知する報知部と
を備える開閉窓。
【請求項2】
前記操作部が操作されたときに、前記「揺動可能な状態」を維持する解除維持機構を備える請求項1に記載の開閉窓。
【請求項3】
前記状態保持機構は、
前記障子の揺動変位と連動して揺動変位する揺動アームであって、一端側が前記枠体に連結され、他端側が当該障子に連結され、かつ、前記枠体又は前記障子との連結部がスライド可能な揺動アーム、及び
前記揺動アームと係合して前記障子を前記第1状態とする係合位置と前記「揺動可能な状態」となる解除位置との間で変位可能なロック部材を有しており、
前記解除維持機構は、
前記ロック部材が前記解除位置にあるときに当該ロック部材と係合可能となる解除維持部材であって、前記ロック部材と係合可能な第1位置と当該係合が解除された第2位置との間で変位可能な解除維持部材、及び
前記解除維持部材を前記第1位置に維持するための弾性力を当該解除維持部材に作用させる維持ばねを有している
請求項2に記載の開閉窓。
【請求項4】
前記障子が前記第1状態にあるときに、当該第1状態を解除不可とする解除停止機構を備える請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の開閉窓。
【請求項5】
前記状態保持機構は、前記操作部が操作されたときには、前記障子の状態によらず、当該障子を揺動可能な状態とする請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の開閉窓。
【請求項6】
前記操作部は、前記障子の側面を経由して前記ロック部材側から前記障子の正面側に延びている請求項3に記載の開閉窓。
【請求項7】
前記状態保持機構は、前記操作部が前記障子の正面側から当該障子の背面側に向けて変位したときに、前記第1状態を解除するように構成されている請求項3又は
6に記載の開閉窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉窓に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の開閉窓は、障子が開いた状態を第1状態又は第2状態で保持することが可能である。第2状態は、第1状態より障子が大きく傾いて開いた状態である。当該文献に記載の発明では、利用者が可動ストッパをスライド変位させることにより、第1状態を解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、可動ストッパは障子の側面に設けられている。このため、利用者は、障子の側面から可動ストッパをスライド変位させざるを得ない。したがって、側面側に十分な操作用スペースが無い場合には、第1状態の解除作業の作業性に難がある。
【0005】
本開示は、上記点に鑑み、解除作業の作業性を向上させることが可能な開閉窓の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開閉窓は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、窓開口(1A)を縁取る枠体(3)と、窓開口(1A)を閉じた状態と窓開口(1A)を開いた状態との間で揺動変位する障子(5)と、障子(5)が開いた状態を第1状態又は当該第1状態よりも大きく開いた第2状態に保持するための状態保持機構(7)と、第1状態を解除する際に操作される操作部(9)であって、障子(5)の正面側に配置された操作部(9)とである。
【0007】
これにより、当該開閉窓では、操作部(9)が障子(5)の正面側に位置するので、解除作業の作業性を向上させることが可能となり得る。
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第1実施形態に係る状態保持機構を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る状態保持機構を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る状態保持機構の分解図である。
【
図8】第2実施形態に係る状態保持機構を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る状態保持機構を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る状態保持機構を示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る状態保持機構を示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る状態保持機構の分解図である。
【
図13】第3実施形態に係る状態保持機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0010】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
【0011】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0012】
(第1実施形態)
1.開閉窓の概要
本実施形態は、障子が室内側に倒れる内倒れ窓に本開示に係る開閉窓の一例が適用されたものである。
図1に示されるように、本実施形態に係る開閉窓1は、枠体3、障子5、状態保持機構7及び操作部9等を少なくとも備えている。
【0013】
枠体3は、窓開口1Aを縁取る部材である。本実施形態に係る枠体3は、アルミニウム等の軽金属にて構成された矩形状の枠にて構成されている。障子5は、窓開口1Aを閉じた状態と当該窓開口1Aを開いた状態(
図1等に示す状態)との間で揺動変位する。
【0014】
本実施形態に係る障子5は、当該障子5の下端側を揺動中心として、上端側が室内側に倒れるように揺動変位する。枠体3の側枠3A、3B又は下枠3Cには、障子5を揺動可能に支持する支持部(図示せず。)が設けられている。
【0015】
利用者がロック機構(図示せず。)のロックを解除すると、障子5は、当該障子5に作用する重力により、上端が室内側に倒れるように揺動変位する。なお、ロック機構は、窓開口1Aを閉じる位置に障子5を保持する機構である。
【0016】
2.状態保持機構
<状態保持機構の概要>
状態保持機構7は、障子5を第1状態(
図2参照)又は第2状態(
図3参照)に保持するための機構である。第1状態及び第2状態では、障子5の上端が室内側に倒れ、窓開口1Aが開いた状態となる。
【0017】
第2状態にある障子5は、
図3に示されるように、第1状態にある障子5(
図2参照)より上端が下方側に位置して、当該第1状態よりも窓開口1Aを大きく開く。操作部9は、第1状態を解除する際に利用者により操作される部位である。
【0018】
当該操作部9は、障子5の正面側に配置されている。「障子5の正面」とは、本実施形態では、障子5のうち室内に面している部位である。このため、本実施形態に係る障子5は、当該障子5の正面側に倒れるように揺動変位する。
【0019】
状態保持機構7は、
図4及び
図5に示されるように、揺動アーム71及びロックプレート72等を少なくとも有して構成されている。揺動アーム71は、障子5の揺動変位と連動して揺動変位する腕状の部材である。
【0020】
揺動アーム71の一端(上端)側は、枠体3に回転可能に連結されている。揺動アーム71の他端(下端)側は、固定バー70を介して障子5に回転可能に連結されている。揺動アーム71と枠体3との連結部は、枠体3に対してスライド可能である。固定バー70は障子5の枠部に対して固定される部材である。
【0021】
ロックプレート72は、
図2及び
図3に示されるように、障子5の側面側に配置されたロック部材の一例である。当該ロックプレート72は、係合位置(
図4参照)と解除位置(
図5参照)との間で変位可能である。
【0022】
係合位置は、ロックプレート72と揺動アーム71とが係合する位置である。解除位置は、当該係合位置からずれて係合状態が解除された位置である。そして、ロックプレート72が係合位置にあるときには、障子5は第1状態に保持される。ロックプレート72が解除位置にあるきには、障子5は、第2状態まで揺動可能な状態となる。
【0023】
<状態保持機構の詳細>
状態保持機構7は、
図6に示されるように、揺動アーム71及びロックプレート72に加え、復帰ばね73及びガイドピン74A、74B等を有する。復帰ばね73は、ロックプレート72を係合位置に保持するための弾性力を発揮する。
【0024】
具体的には、コイルばね状の復帰ばね73は、一端側がPねじ等の締結具73Aを介してロックプレート72に連結され、他端側がガイドピン74Aを介して固定バー70に連結されている。
【0025】
復帰ばね73は、ロックプレート72が係合位置から解除位置側に変位したときに、弾性変形量が増大するように構成されている。このため、復帰ばね73は、ロックプレート72を係合位置側に変位させる弾性力を常に当該ロックプレート72に作用させる。
【0026】
ガイドピン74A、74Bは、固定バー70に固定されてロックプレート72の変位方向及び操作部9の変位方向を規制する。すなわち、操作部9には、ガイドピン74A、74Bが挿入される長穴9A、9Bが設けられている。長穴9A、9Bの長径方向は、操作方向と略平行である。
【0027】
操作方向は、障子5の正面側から当該障子5の背面側に向かう向きと平行な方向である。このため、操作部9は、操作方向に平行変位可能であって、操作方向と直交する方向に変位できない。
【0028】
ロックプレート72にもガイドピン74A、74Bが挿入される長穴72A、72Bが設けられている。長穴72A、72Bの長径方向は、操作方向に対して傾いた方向である。当該傾きの方向は、以下の要件を満たす向きである。
【0029】
すなわち、障子5の正面側から当該障子5の背面側に向かう向きの押圧力F(
図4参照)が、ロックプレート72に作用したときに、当該ロックプレート72を係合位置側から解除位置側に変位させる向きである。
【0030】
操作部9は、操作面9C及び押圧部9D等を有する。
図2に示されるように、操作面9Cは障子5の正面側に位置する。押圧部9Dは、障子5の背面側に位置するとともに、操作面9Cに上記押圧力Fが作用したときに、当該押圧力をロックプレート72に伝達する。
【0031】
このため、操作部9は、
図7に示されるように、障子5の側面を経由してロックプレート72側(障子5の背面側)から障子5の正面側に延びる形状に構成されている。つまり、操作面9C、押圧部9D、及び操作面9Cと押圧部9Dとを繋ぐ部位9Eにより、U字状又はコの字状の断面形状が構成されている(
図6参照)。
【0032】
ロックプレート72が係合位置にある状態では、
図4に示されるように、ロックプレート72の角部に揺動アーム71の突起部71Aが係合する。突起部71Aのうちロックプレート72と接触する部位には、押圧力Fの向きと略直交する当接面71Cが設けられている。
【0033】
このため、揺動アーム71とロックプレート72とが係合している状態では、押圧力Fが操作部9に作用しても、ロックプレート72を解除位置側に変位させる力、つまり当接面71Cに対して傾いた力がロックプレート72に発生しない。
【0034】
換言すれば、状態保持機構7は、揺動アーム71とロックプレート72とが係合した状態では、当該ロックプレート72の変位が規制された状態となるように構成されている。つまり、突起部71Aは、障子5が第1状態にあるときに、当該第1状態を解除不可とする解除停止機構として機能する。
【0035】
<状態保持機構の作動>
ロックプレート72が係合位置にある状態では、
図2及び
図4に示されるように、ロックプレート72の角部に揺動アーム71の突起部71Aが係合するので、障子5は第1状態に保持される。
【0036】
利用者により障子5が背面側に押圧されると、ロックプレート72と突起部71Aとの係合が解除される。このため、障子5が背面側に押圧された状態で操作部9(操作面9C)に押圧力Fが作用すると、ロックプレート72を解除位置側に変位させる力が発生する。
【0037】
これにより、ロックプレート72が解除位置側に変位するので(
図3及び
図5参照)、障子5は、当該障子5に作用する重力により、第1状態よりも大きく開いた状態、つまり第2状態となり得る。
【0038】
なお、障子5が第1状態から第2状態に移行する際、及び障子5が第2状態から第1状態に移行する際おいては、ロックプレート72の上端72Cは、円弧状の摺動面71Bと滑り接触する。
【0039】
そして、第2状態にある障子5を利用者が閉じる向きに押圧すると、摺動面71Bがロックプレート72の上端72Cと滑り接触しながら、揺動アーム71が起立状態となっていく。突起部71Aがロックプレート72の上端72Cを乗り越えると、ロックプレート72は、復帰ばね73の弾性力により係合位置になる。
【0040】
3.本実施形態に係る開閉窓の特徴
本実施形態に係る開閉窓1では、第1状態を解除する際に操作される操作部9が障子5の正面側に配置されている。これにより、当該開閉窓1では、解除作業の作業性を向上させることが可能となり得る。
【0041】
操作部9は、障子5の側面を経由してロックプレート72側から障子5の正面側に延びている。これにより、開閉窓1を提供する者は、枠体3又は障子5に穴等を新たに設けることなく、既存の枠体3を利用しながら、当該開閉窓1に操作部9を容易に配置することが可能となり得る。
【0042】
状態保持機構7は、操作部9が操作方向に押圧されて変位したときに、第1状態を解除するように構成されている。したがって、利用者は、容易に第1状態を解除することが可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
<本実施形態の概要>
本実施形態に係る開閉窓1は、
図8~
図11に示されるように、上述の実施形態に示された構成に加えて、解除維持機構11及び報知部13を備えている。
【0044】
なお、以下の説明は、上述の実施形態に係る開閉窓1との相違点に関する説明である。上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0045】
解除維持機構11は、操作部9が操作されたときに、障子5を揺動可能な状態に維持するための機構である。報知部13は、操作部9が操作されて障子5が「揺動可能な状態」となったときに、当該「揺動可能な状態」になったことを報知する部位である。
【0046】
<解除維持機構の詳細>
解除維持機構11は、解除維持部材111及び維持ばね112等を少なくとも有する。解除維持部材111は、ロックプレート72が解除位置にあるときに当該ロックプレート72と係合可能な部材である。
【0047】
当該解除維持部材111は、ロックプレート72と係合可能な第1位置(
図10参照)と当該係合が解除された第2位置(
図8等参照)との間で変位可能である。具体的には、以下の通りである。
【0048】
すなわち、本実施形態に係るロックプレート72には、
図12に示されるように、凹部72Dが設けられている。解除維持部材111には、凹部72Dに嵌り込むように係合可能な係合部113が設けられている。
【0049】
解除維持部材111は、ガイドピン74Bにより回転可能に支持された状態で、第1位置と第2位置との間で回転変位する。つまり、解除維持部材111の回転中心位置は、障子5に対して不動である。
【0050】
そして、
図10に示されるように、凹部72Dに係合部113が嵌り込んだときに解除維持部材111が第1位置となる。
図8、
図9及び
図11に示されるように、係合部113が凹部72Dから離脱すると、解除維持部材111は第2位置となる。
【0051】
凹部72Dに係合部113が嵌り込んだ状態では、ロックプレート72の変位が規制される。このため、当該状態では、ロックプレート72が解除位置に維持される。係合部113が凹部72Dから離脱した状態では、ロックプレート72は操作部9の操作に応じて変位でき得る。
【0052】
維持ばね112は、解除維持部材111を第1位置に維持するための弾性力を当該解除維持部材111に作用させる。本実施形態に係る維持ばね112は、引っ張りコイルバネである。
【0053】
なお、維持ばね112の弾性力の方向と交差する方向の成分が、解除維持部材111を第1位置に維持するための弾性力として機能する。復帰ばね73Aは、復帰ばね73と同一の機能を発揮する。
【0054】
<報知部>
報知部13は、凹部72Dに係合部113が嵌り込んだ時に前記「揺動可能な状態」になったことを報知するための音(以下、報知音という。)を発する。つまり、凹部72Dに係合部113が嵌り込むと、ロックプレート72が解除位置に維持されるので、報知部13は報知音を発する。
【0055】
本実施形態に係る報知部13は、維持ばね112の弾性力によって係合部113が凹部72Dに突入したときに、当該係合部113が他の部材と衝突した際に発する衝突音を報知音としている。
【0056】
<開閉窓の開作動>
開閉窓1が閉鎖状態にあるとき、つまり障子5が閉じられた状態にあるときには、
図8に示されるように、揺動アーム71はロックプレート72に係合しておらず、かつ、解除維持部材111は第2位置にある。
【0057】
閉鎖状態において、障子5を閉じた状態に維持するための閉鎖機構(図示せず。)が解除されると、障子5に作用する重力により、当該障子5は、下端側を中心として上端側が室内側に倒れるように回転変位する。
【0058】
障子5の回転変位に伴って揺動アーム71が障子5に対して回転するので、突起部71Aがロックプレート72の角部に係合するので、
図9に示されるように、障子5は第1状態に保持される。
【0059】
図9に示される状態では、解除維持部材111は第2位置にある。このため、利用者により障子5が背面側に押圧された状態、つまり揺動アーム71とロックプレート72との係合が解除された状態で、操作部9に押圧力F(
図4参照)が作用すると、ロックプレート72は解除位置に変位する。
【0060】
そして、ロックプレート72解除位置に変位し、当該ロックプレート72に設けられた凹部72Dが、解除維持部材111に設けられた係合部113と係合可能な位置に到達すると、維持ばね112の弾性力により、係合部113が凹部72Dに突入する。
【0061】
これにより、係合部113の突入時に発せられる衝突音が報知音として報知されるとともに、
図10に示されるように、復帰ばね73Aの弾性力によりロックプレート72が係合位置に復帰することが規制される。
【0062】
障子5が
図10に示す状態から更に室内側に回転変位すると、
図11に示されるように、解除維持部材111は、押圧部71Dにより押圧されて第1位置から第2位置に変位する。これにより、係合部113が凹部72Dから離脱する。
【0063】
係合部113が凹部72Dから離脱すると、当該係合部113は、固定バー70又はロックプレート72に引っ掛かるように係止されるため、凹部72D内に嵌り込むことが規制される(
図11参照)。
【0064】
なお、押圧部71Dは、揺動アーム71に設けられて当該揺動アーム71と一体的に変位する。押圧部71Dが解除維持部材111を押圧する力は、揺動アーム71が回転する力、つまり障子5が室内側に回転変位する力である。
【0065】
<開閉窓の閉作動>
図11に示される状態において、利用者が障子5を閉じる向きの力を当該障子5に作用させると、障子5は、
図11→
図9→
図8の順に回転変位する。
【0066】
なお、係合部113は、固定バー70又はロックプレート72に係止されて凹部72D内に嵌り込むことが規制されている。このため、利用者が操作部9に押圧力F(
図4参照)を作用させない限り、係合部113が凹部72Dから離脱した状態が維持される。
【0067】
障子5が閉じる向きに回転変位している際には、揺動アーム71の突起部71Aは、ロックプレート72から離間する向きに変位するので、揺動アーム71とロックプレート72とが係合することはない。
【0068】
<本実施形態に係る開閉窓の特徴>
開閉窓1は、操作部9が操作されたときに、障子5を揺動可能な状態に維持するための解除維持機構11を備える。換言すれば、本実施形態に係る開閉窓1は、操作部9が操作されない限り、第1状態が維持される。したがって、第1状態が解除された後、利用者が意図しないタイミングでロックプレート72が係合位置に復帰してしまう等の不具合の発生を未然に抑制でき得る。
【0069】
開閉窓1は、操作部9が操作されて障子5が「揺動可能な状態」となったときに、当該「揺動可能な状態」になったことを報知する報知部13を備える。これにより、利用者は、「揺動可能な状態」になったことを確実に知覚することが可能となり得る。
【0070】
開閉窓1は、障子5が第1状態にあるときに、当該第1状態を解除不可とする解除停止機能を備える。これにより、利用者が意図していないのに、障子5が「揺動可能な状態」になってしまうことが抑制される。
【0071】
(第3実施形態)
上述の実施形態に係る開閉窓1は、障子5が第1状態にあるときに、当該第1状態を解除不可とする解除停止機能を備える開閉窓であった。これに対して、本実施形態に係る開閉窓1は、解除停止機能が廃止された開閉窓である。
【0072】
以下の説明は、上述の実施形態に係る開閉窓1との相違点に関する説明である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0073】
すなわち、上述の実施形態に係る開閉窓1では、
図13に示されるように、揺動アーム71(突起部71A)の当接面71C、及びロックプレート72のうち係合時に当接面71Cと接触する被当接面72Eが、長穴72Bの長径方向と略平行な面にて構成されている。
【0074】
第1状態、つまり
図13に示される状態において、操作部9に押圧力F(
図4参照)が作用すると、被当接面72Eは、当接面71Cに対して滑り変位でき得る。このため、操作部9に押圧力Fが作用すると、利用者が障子5を背面側に押圧することなく、ロックプレート72は解除位置に変位する。
【0075】
これにより、利用者は、容易に障子5を「揺動可能な状態」にすることが可能となり得る。なお、上述の実施形態では、当接面71Cが押圧力Fの向きに対して略直交しているので、操作部9に押圧力Fが作用しても、ロックプレート72は解除位置側に変位し難い。
【0076】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る開閉窓1は、障子5の幅方向一端側のみに状態保持機構7が設けられていた(
図1参照)。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。
【0077】
すなわち、当該開示は、例えば、障子5の幅方向他端側のみに状態保持機構7が設けられた構成、又は障子5の幅方向一端側及び他端側に状態保持機構7が設けられた構成であってもよい。
【0078】
上述の実施形態では、障子5の回転中心軸が当該障子5の下端側において水平な方向に延び、かつ、当該障子5が室内側に倒れる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、以下の(1)~(3)のいずれかであってもよい。
【0079】
(1)障子5の回転中心軸が当該障子5の下端側において水平な方向に延び、かつ、当該障子5が室外側に倒れる構成の開閉窓。(2)障子5の回転中心軸が当該障子5の上端側において水平な方向に延び、かつ、当該障子5が室内側又は室外側に倒れる構成の開閉窓。(3)障子5の回転中心軸が鉛直、かつ、当該障子5が水平方向に揺動又は回転する開閉窓。
【0080】
上述の実施形態に係る状態保持機構7は、操作部9が操作方向に押圧されたとき第1状態を解除する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、操作部9がスライド操作されたときに第1状態を解除する状態保持機構7を備える構成であってもよい。
【0081】
上述の実施形態に係る操作部9は、障子5の側面を経由してロックプレート72側から障子5の正面側に延びる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、枠体3に穴が設けられ、当該穴を貫通して障子5の正面側に延びる構成の操作部9であってもよい。
【0082】
第1実施形態に係る開閉窓1では、報知部13が設けられていなかった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、第1実施形態に係る開閉窓1に報知部13が設けられていてもよい。
【0083】
上述の実施形態に係る報知部13は、係合部113が凹部72Dに突入する際の衝突音を利用して報知音を発生させる構成であった。しかし、本開示はこれに限定されるものではない。すなわち、当該開示は、例えば、衝突音以外の音、又は利用者が視認可能な音以外で報知する構成等であってもよい。
【0084】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0085】
1… 開閉窓 1A… 窓開口 3… 枠体 5… 障子
7… 状態保持機構 71… 揺動アーム 72… ロックプレート
9… 操作部