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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】高炉の残銑の切断方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 7/00 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
C21B7/00 304
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019093244
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020186458
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】上村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】古長 達廣
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩利
【審査官】藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153327(JP,A)
【文献】特開2008-231491(JP,A)
【文献】特開2007-084856(JP,A)
【文献】特開2009-013459(JP,A)
【文献】特開2009-001836(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109648143(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109680111(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の外殻を構成する鉄皮内で、耐火物により取り囲まれている残銑を、該高炉の外側に設けたワイヤーソーマシンで切断する方法であって、
先ず、上記残銑下に、上記鉄皮外方に向けて始端が開放され終端が上記耐火物内に位置するように、該鉄皮から該耐火物にわたり横向き孔を形成するステップと、
次に、上記残銑横に、上記耐火物上方に向けて始端が開放され終端側で上記横向き孔につながるように、該耐火物に縦向き孔を形成するステップと、
ワイヤーソーを、上記残銑上を経由するように、上記横向き孔と上記縦向き孔とにわたって挿通し、かつ上記鉄皮に予め形成した通路と該横向き孔の上記始端を介して、上記ワイヤーソーマシンに接続するステップと、
該ワイヤーソーマシンで上記ワイヤーソーを駆動して上記高炉の外側から上記残銑の切断を行うステップとを備えたことを特徴とする高炉の残銑の切断方法。
【請求項2】
前記縦向き孔の孔径は前記横向き孔の孔径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の高炉の残銑の切断方法。
【請求項3】
前記縦向き孔は、前記耐火物上面で前記始端が長孔状になるように、前記横向き孔と交差する方向に並べて、複数回の穿孔により形成されることを特徴とする請求項1に記載の高炉の残銑の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残銑を撤去して高炉を改修するにあたり、ワイヤーソーによる残銑の切断作業に関し、既存部分である鉄皮やステーブ、耐火レンガなどの炉内耐火物をできるだけ残して有効に再利用することが可能であり、必要材料量を少なく、そしてまた工期を短縮できて、高い経済性を確保することが可能な高炉の残銑の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉を改修するにあたり、高炉内の残銑を切断する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1の「高炉の残銑の撤去方法」は、高炉の改修を行う際に、ワイヤーソーを使用して炉底に残留する固化した残銑を短期間で且つ安全に撤去することができる残銑の撤去方法を提供することを課題とし、高炉の改修を行う際に、炉底に残留する固化した残銑を分割した残銑ブロックとして炉外へ引き出して撤去する残銑の撤去方法において、分割した残銑ブロックを引き出す部分の鉄皮を除去し、残銑下の炉底耐火物にワイヤーソーを挿通する残銑下貫通孔を穿孔し、残銑下貫通孔にワイヤーソーを挿通し、ワイヤーソーを残銑の外周に巻きつけ、ワイヤーソーを走行させて残銑と炉底耐火物を垂直方向に切断して複数の残銑ブロックに分割し、残銑ブロックを炉外へ引き出すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-84856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、残銑下貫通孔を形成するボーリングマシン及びワイヤーソーマシンによる作業用として、また、残銑撤去用として、鉄皮に鉄皮開口部を向かい合わせで一対形成していた。また、上記マシンで作業を実施する前に、鉄皮内で残銑を取り囲んでいる炉底耐火物を、鉄皮開口部に相当する範囲で残銑が露出するように、除去していた。
【0005】
このため、特許文献1では、残銑撤去後の高炉の修復に際し、残銑をワイヤーソーで切断するために、鉄皮開口部を形成した分の鉄皮やステーブ、そしてまた炉底耐火物を除去した分、高炉の既存部分を再利用することができず、必要材料量が嵩むと共に、工事期間が長期化し、経済性が良くないという課題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、残銑を撤去して高炉を改修するにあたり、ワイヤーソーによる残銑の切断作業に関し、既存部分である鉄皮や炉内耐火物をできるだけ残して有効に再利用することが可能であり、必要材料量を少なく、そしてまた工期を短縮できて、高い経済性を確保することが可能な高炉の残銑の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる高炉の残銑の切断方法は、高炉の外殻を構成する鉄皮内で、耐火物により取り囲まれている残銑を、該高炉の外側に設けたワイヤーソーマシンで切断する方法であって、先ず、上記残銑下に、上記鉄皮外方に向けて始端が開放され終端が上記耐火物内に位置するように、該鉄皮から該耐火物にわたり横向き孔を形成するステップと、次に、上記残銑横に、上記耐火物上方に向けて始端が開放され終端側で上記横向き孔につながるように、該耐火物に縦向き孔を形成するステップと、ワイヤーソーを、上記残銑上を経由するように、上記横向き孔と上記縦向き孔とにわたって挿通し、かつ上記鉄皮に予め形成した通路と該横向き孔の上記始端を介して、上記ワイヤーソーマシンに接続するステップと、該ワイヤーソーマシンで上記ワイヤーソーを駆動して上記高炉の外側から上記残銑の切断を行うステップとを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記縦向き孔の孔径は前記横向き孔の孔径よりも大きいことを特徴とする。
【0009】
前記縦向き孔は、前記耐火物上面で前記始端が長孔状になるように、前記横向き孔と交差する方向に並べて、複数回の穿孔により形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる高炉の残銑の切断方法にあっては、残銑を撤去して高炉を改修するにあたり、ワイヤーソーによる残銑の切断作業に関し、既存部分である鉄皮やステーブ、耐火レンガなどの炉内耐火物をできるだけ残して有効に再利用することができ、必要材料量を少なく、そしてまた工期を短縮できて、高い経済性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る高炉の残銑の切断方法の好適な一実施形態の横向き孔の形成ステップを示す側断面図である。
図2図1に示した実施形態のワイヤーソー配設状態を示す平面図である。
図3図1に示した実施形態の縦向き孔の形成ステップを示す側断面図である。
図4図2に対応するワイヤーソーの配設ステップを示す側断面図である。
図5図1に示した実施形態を経た後の、残銑撤去作業の手順の一例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる高炉の残銑の切断方法の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、高炉1は、外殻が平断面円形の中空筒体状の鉄皮2によって構成される。高炉1の改修等のために高炉1を休止すると、高炉1の内部にはコークスや混銑滓3等の下に残銑4が溜まり、固化する。これらが高炉1外へ撤去された後に、高炉1は元の状態に修復され、再度操業に供される。
【0014】
鉄皮2下部となる高炉1内の炉底部には、内張として、カーボンレンガ等の耐火物5,6が設けられる。具体的には、高炉1の炉底部では、鉄皮2の下端部内方に、水冷金物であるステーブ(図示せず)、そしてまた底部耐火物5が盤状に構築されると共に、周側部耐火物6が、鉄皮2の下部内周面に沿わせて環状に、高炉1の高さ方向上方から下方の底部耐火物5に向かって徐々に厚みを増すようにして構築される。
【0015】
残銑4は、周側部耐火物6内方の底部耐火物5上に溜まり、これら耐火物5,6により取り囲まれた状態で固化する。図示例では、残銑4は、平面円形状であって、当該円形状の周縁から中心に向かって徐々に厚みが増す椀の蓋を上向きに置いたような形態をなしている。
【0016】
残銑4は、平面的な広がりが大きく、そのままの大きさでは、高炉1外へ撤去することが困難である。そのため、残銑4は、切断する必要がある。切断作業によって残銑4は小さな残銑塊に分割され、分割した残銑塊の形態で高炉1外へ撤去される。
【0017】
本実施形態に係る高炉の残銑の切断方法は、高炉1の外側に設けられるワイヤーソーマシン7によって、残銑4の切断が行われる(図2及び図4参照)。以下の説明では、残銑4を一回切断すること、すなわち残銑4に単一の切断面を形成することを例にとって説明するが、この切断作業が複数回行われて、高炉1内の残銑4には、複数の切断面が形成される。
【0018】
図1に示すように、先ず、残銑4下に、一つの横向き孔8を形成するステップが実施される。高炉1の外側に、穿孔作業で横向き孔8を形成するボーリングマシン9が設置される。一つの横向き孔8は、上述した単一の切断面を形成するためのもので、残銑4を上から見下ろしたとき、おおよそ残銑4を横切る向きに形成される。
【0019】
横向き孔8が残銑4を「横切る向き」とは、例えば残銑4が平面円形状であるとき、その直径方向に横切る向きであることだけを意味するものではなく、残銑4の一方側の周縁から他方側の周縁に向く向きで、おおよそ残銑4に切断面を形成する横向き孔8が形成できればよいものである。
【0020】
ボーリングマシン9は、鉄皮2の外側から当該鉄皮2を貫通する貫通孔10を形成するように穿孔を開始し、さらに進んで、残銑4下方の底部耐火物5へ向かって穿孔を継続し、鉄皮2から底部耐火物5にわたり、おおよそ横向き水平な横向き孔8を形成する。
【0021】
ボーリングマシン9で形成される横向き孔8は、鉄皮2外方に向けて穿孔始端8aが開放され、穿孔終端8bが底部耐火物5内に位置するように、行き止まりの孔として形成される。穿孔終端8bの位置は、後述する縦向き孔11とつなげることができれば、残銑4を上から見下ろしたときに、必ずしも当該残銑4の外側となる位置である必要はない。図示例では、横向き孔8の穿孔終端8bの位置は、鉄皮2の貫通孔10とは反対側で、残銑4の外側に設定されている。
【0022】
なお、横向き孔8には、これに給水することで、残銑4を下側から冷却することもできる。横向き孔8を形成するボーリングマシン9としては、どのようなものを用いても良いことはもちろんである。
【0023】
次に、図3に示すように、穿孔終端8bが位置する残銑4横に、一つの縦向き孔11を形成するステップが実施される。
【0024】
このステップの開始前に、残銑4上のコークスや混銑滓3など、そしてまた、これらを掻き出す際に障害となる高炉1内の周側部耐火物6が高炉1外へ撤去される。高炉1内の残銑4横の周側部耐火物6上に、穿孔作業で縦向き孔11を形成するコアボーリングマシン12が設置される。
【0025】
一つの縦向き孔11は、一つの横向き孔8とつなげられて、上述した単一の切断面を形成するためのもので、炉底部を横から見たとき、残銑4の外側に形成される。コアボーリングマシン12は、周側部耐火物6から底部耐火物5にわたり、おおよそ下方に向けて縦向き孔11を形成する。コアボーリングマシン12で形成される縦向き孔11は、高炉1内方の周側部耐火物6上方に向けて穿孔始端11aが開放され、穿孔終端11b側で横向き孔8につながるように形成される。
【0026】
穿孔終端11b側が横向き孔8につながるとは、縦向き孔11と横向き孔8とがつながっていれば良く、つまり縦向き孔11の穿孔終端11bの位置が横向き孔8位置に必ず一致することのみを意味せず、当該穿孔終端11bが横向き孔11の深さ位置を超えて、より深い位置に達する場合を含むものである。
【0027】
また、縦向き孔11は、横向き孔8につながれば良く、必ずしも鉛直に、あるいは横向き孔8に対し垂直に、形成される必要はなく、斜めに傾いて形成されてもよい。
【0028】
また、縦向き孔11の穿孔始端11aと、横向き孔8の穿孔終端8bとは、単一の切断面が垂直面となるように、横向き孔8が残銑4を横切る向きに関して、それらの上下位置が一致する位置関係か、あるいは横切る向きで互いに並ぶ位置関係であることが好ましい。しかしながら、これらの上下位置関係は、僅かながらずれていても良い。
【0029】
また、縦向き孔11は、横向き孔8に対し、適切かつ簡便につなげることができるように、縦向き孔11の孔径は、横向き孔8の孔径よりも大きくするようにしても良い。同じ目的で、縦向き孔11は、周側部耐火物6の上面で、穿孔始端11aが長孔状になるように、横向き孔8が横切る向きに対し、これと交差する向きに、横方向に並べて複数形成してもよい。横向き孔8の形成位置は、測量によって把握することができる。
【0030】
横向き孔8を形成した後に、縦向き孔11を形成する理由について、さらに詳述する。横向き孔8は、穿孔する長さが長く、途中で残銑4等に突き当たることもあるため、水平方向にずれが生じることがある。また、ボーリングマシン9のドリル先端が重力で下がり、穿孔終端8bが目標高さよりも下方に低く下がることもある。
【0031】
このように、横向き孔8を水平に真っ直ぐ穿孔することには困難が伴う。このため、縦向き孔11を先に穿孔した場合、縦向き孔11の位置が正確に分かっていても、その位置に合致するように横向き孔8を形成することは至難である。
【0032】
このような事情から、横向き孔8を先に穿孔し、穿孔終端8bの位置を測量等で確認した後に、縦向き孔11を穿孔することが望ましい。
【0033】
縦向き孔11は、穿孔にあたり重力の影響等がなく、比較的真っ直ぐに穿孔できるため、横向き孔8の位置を正確に知ることができれば、容易に横向き孔8に到達できるからである。
【0034】
この際、縦向き孔11の孔径を横向き孔8の孔径よりも大きくすれば、より確実であり、また、縦向き孔11は、穿孔長さが短い分、容易に複数回穿孔できるため、一回の穿孔で横向き孔8につなげることができなかった場合でも、縦向き孔11を、穿孔始端11aが長孔状を呈するなど、複数回穿孔することで接続範囲を広げることができる。
【0035】
このように、先に横向き孔8を形成し、後から縦向き孔11を形成する手順を採用することで、きわめて容易かつ確実に当該横向き孔8に縦向き孔11をつなげることができる。
【0036】
なお、縦向き孔11の形成は、コアボーリングマシン12に限らず、穿孔ビット等を用いた穿孔機など、どのようなものを用いても良いことはもちろんである。
【0037】
これらステップの作業中、あるいは事前に、または後述するワイヤーソー13の挿通作業前に、鉄皮2には、横向き孔8の穿孔始端8aの上方、好ましくは直上に位置させて、ワイヤーソー13を挿通するための通路(穴)14が形成される(図2及び図4参照)。
【0038】
ボーリングマシン9による横向き孔8の形成ステップ完了以降、高炉1の外側には、図2及び図4に示すように、横向き孔8の穿孔始端8a及び通路14の形成位置に位置させて、ワイヤーソーマシン7が設けられる。ワイヤーソーマシン7は周知のように、環状のワイヤーソー13を駆動して切断作業を実施するものである。
【0039】
コアボーリングマシン12による縦向き孔8の形成ステップ完了後、残銑4周りにワイヤーソー13を設けるステップが実施される。
【0040】
ワイヤーソー13の一端は、鉄皮2の外側から、当該鉄皮2外方に開放されている横向き孔8の穿孔始端8aを介して、横向き孔8の穿孔終端8bへ向けて残銑4下の底部耐火物5に挿通される。
【0041】
さらに、残銑4横の底部耐火物5から周側部耐火物6に通すように、横向き孔8の穿孔終端8bから上向きに縦向き孔11へ挿通されて、当該縦向き孔11の穿孔始端11aから周側部耐火物6上方へ引き出される。
【0042】
さらにその後、残銑4上を経由させて、鉄皮2の通路14に挿通され、鉄皮2の外側に引き出される。引き出されたワイヤーソー13の一端は、その他端と接続されて、ワイヤーソー13は環状形態とされる。
【0043】
このように、残銑4に単一の切断面を形成するためのワイヤーソー13は、残銑4上を経由するように、横向き孔8と縦向き孔11とにわたって挿通され、かつ鉄皮2に形成した通路14と横向き孔8の穿孔始端8aを介して、高炉1の外側でワイヤーソーマシン7にその両端が接続される。
【0044】
最後に、ワイヤーソーマシン7でワイヤーソー13を駆動し、高炉1の外側から残銑4の切断を行うステップが実施される。
【0045】
ワイヤーソー13による切断は、横向き孔8及び縦向き孔11周辺から始まって、先ず、耐火物5,6が切断され、引き続き、残銑4が、横向き孔8の穿孔始端8aや通路14が形成されている側とは反対側の位置から次第に切断されていき、最終的には、通路14等に近接している耐火物5,6にワイヤーソー13で切り込みが入れられることで、残銑4の切断が完了する。
【0046】
以上説明した本実施形態に係る高炉の残銑の切断方法では、ワイヤーソー13による残銑4の切断作業に関し、ボーリングマシン9及びワイヤーソーマシン7を高炉1の外側に設置して作業を行うことができ、そしてまた、鉄皮2には、横向き孔8の穿孔始端8aと通路14を形成するだけであるので、鉄皮2をほぼそのまま残すことができ、切断作業自体について、鉄皮2をほぼそのまま再利用することができ、工期短縮を図ることができる。
【0047】
また、耐火物5,6についても、分断箇所が少なく、ワイヤーソー13による切断箇所のみ補修することで再利用することができ、工期短縮を図ることができる。従って、高炉1を構成する鉄皮2やステーブ及び耐火物5,6のいずれについても、改修に要する必要材料量を少なくすることができ、そしてまた工期を短縮できて、高炉1の改修作業に対し、高い経済性を確保することができる。
【0048】
縦向き孔11の孔径を、横向き孔8の孔径よりも大きくすることにより、縦向き孔11を横向き孔8に対して適切かつ簡便につなげることができる。
【0049】
また、縦向き孔11は、周側部耐火物6の上面で、穿孔始端11aが長孔状になるように、横向き孔8が横切る向きに対し、これと交差する向きに、横方向に並べて複数形成することにより、縦向き孔11を横向き孔8に対して適切かつ簡便につなげることができる。
【0050】
なお、高炉1内のコークスや混銑滓3など、また解体した耐火物5,6などを搬出したり、あるいは、コアボーリングマシン12等の作業機械の搬入のために開口部を設ける場合には、鉄皮2に形成される横向き孔8の貫通孔10や、ワイヤーソー13を挿通するための通路14が納まる範囲に設ける。このようにすると、鉄皮2やステーブの損傷範囲は当該開口部のみとなり、必要最小限に抑えることができる。
【0051】
図5には、本実施形態に係る高炉の残銑の切断方法によって、高炉1内の残銑4に対し切断作業を行った後、残銑4を小さな残銑塊4aに分割し、分割した残銑塊4aを高炉1外へ撤去する様子の一例が示されている。
【0052】
この例では、上記切断方法が2回実施され、これら2回の作業で形成された2つの切断面Cにより、残銑4が中央部分4Xと図示上側と下側の端部分4Y,4Zの3つに分けられている。
【0053】
図5(A)に示すように、撤去作業では、残銑塊4aを撤去するために、鉄皮2の一箇所に、撤去用開口部15が形成されている。また、残銑塊4aの撤去時には、図5(B)に示すように、撤去用開口部15周辺で部分的に耐火物5,6が撤去されている。
【0054】
図5(B)では、中央部分4Xと下側の端部分4Zとが、ワイヤーソーマシン7とは異なる切断装置によるラインカットDによって底部耐火物5へ達するように切断されて、小さな残銑塊4aに切り分けられている。また、上側の端部分4Yにも、同様なラインカットDが形成されている。
【0055】
図5(C)では、残銑塊4aにされた中央部分4X及び下側の端部分4Zが、底部耐火物5の上層から剥離するように移動して、高炉1外へ撤去されている。また、上側の端部分4Yの周縁付近には、4つの縦向き孔11が形成されている。
【0056】
図5(D)では、中央部分4X等の残銑塊4aを撤去したスペースに、ワイヤーソーマシン7が設置されている。このときには、4つの縦向き孔11それぞれにつながる各横向き孔の形成が完了している。
【0057】
図5(E)では、ワイヤーソーマシン7による切断作業で形成された切断面Cにより、上側の端部分4Yが小さな残銑塊4aに切り分けられている。
【0058】
図5(F)では、ワイヤーソーマシン7が高炉1外へ搬出されると共に、上側の端部分4Yが高炉1外へ撤去されている。この撤去作業の一例では、撤去用開口部15周辺の耐火物5,6だけが撤去され、それ以外の耐火物5,6は、高炉1内の既存設備としてそのまま残すことができている。
【符号の説明】
【0059】
1 高炉
2 鉄皮
4 残銑
5 底部耐火物
6 周側部耐火物
7 ワイヤーソーマシン
8 横向き孔
8a 穿孔始端
8b 穿孔終端
11 縦向き孔
11a 穿孔始端
11b 穿孔終端
13 ワイヤーソー
14 通路
図1
図2
図3
図4
図5