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特許7208870多能性幹細胞から肝細胞及び胆管細胞を作製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】多能性幹細胞から肝細胞及び胆管細胞を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20230112BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20230112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0735
C12N5/10
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019136542
(22)【出願日】2019-07-25
(62)【分割の表示】P 2015557300の分割
【原出願日】2014-02-18
(65)【公開番号】P2019213538
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2019-08-23
(31)【優先権主張番号】61/766,002
(32)【優先日】2013-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(73)【特許権者】
【識別番号】501181075
【氏名又は名称】ザ・ホスピタル・フォー・シック・チルドレン
【氏名又は名称原語表記】THE HOSPITAL FOR SICK CHILDREN
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】オガワ、シンイチロウ
(72)【発明者】
【氏名】ガーネカー、アナンド
(72)【発明者】
【氏名】ベアー、クリスティーン
(72)【発明者】
【氏名】カマス、ビニータ、エム.
(72)【発明者】
【氏名】オガワ、ミナ
(72)【発明者】
【氏名】スラピシトチャット、ジェイムズ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534065(JP,A)
【文献】特表2012-533310(JP,A)
【文献】特表2009-542215(JP,A)
【文献】特表2016-517266(JP,A)
【文献】分子消化器病, 2007, 4(4):292-297
【文献】Tissue Engineering: Part A, 2008, 14(6):995-1006
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
C12N
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞から肝細胞系細胞及び/又は胆管細胞系細胞を製造する方法であって、
(a)前記多能性幹細胞を、単層としてnodalシグナル伝達アゴニストおよびwnt/β-カテニンシグナル伝達アゴニストを含む内胚葉培地で少なくとも4~8日間培養することによって、誘導された内胚葉細胞集団を生成するステップと、
(b)前記誘導された内胚葉細胞集団を、nodalシグナル伝達アゴニストと、1~4日間単層培養で接触させて、更にnodalシグナル伝達アゴニストで誘導された内胚葉細胞集団を生成するステップと、
(c)前記更にnodalシグナル伝達アゴニストで誘導された内胚葉細胞集団を、
i)FGF受容体アゴニスト及び
ii)BMP4受容体アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲートを含む特定化培地と、少なくとも4~10日間接触させることによって、肝芽細胞集団を生成するステップと、
(d)
i. 前記肝芽細胞集団を解離し、
ii. 前記解離した肝芽細胞集団であって、少なくとも70%のアルブミン陽性細胞を含む肝芽細胞集団の肝芽細胞の凝集体を作製し、
iii. 前記肝芽細胞の凝集体を、肝細胞増殖因子(HGF)もしくはその活性コンジュゲート、デキサメタゾン(DEX)もしくはその活性コンジュゲートおよびオンコスタチンM(OSM)もしくはその活性コンジュゲートを含む成熟培地で培養して、肝臓細胞系細胞及び/又は胆管細胞系細胞を生成することによって、
前記肝芽細胞集団の成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップを含む、方法。
【請求項2】
ステップiiiにおける前記成熟培地での前記肝芽細胞の凝集体の培養は、ゼラチン状マトリックス中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記FGF受容体アゴニストは、FGF10、FGF2又はFGF4である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記nodalシグナル伝達アゴニストは、アクチビンAである、請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記多能性幹細胞は、ヒト胚幹細胞(ESC)又は誘導されたヒト多能性幹細胞(hiPSC)である、請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記成熟培地は、更にcAMP経路活性剤を含み、前記肝芽細胞の凝集体を、前記cAMP経路活性剤と1~10日接触させる、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記cAMP経路活性剤は、8-ブロモアデノシン-3’5”-環状一リン酸である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記成熟培地が、
a.wnt受容体アゴニストおよびTGFβ受容体アンタゴニストの少なくとも1つを更に含み、前記肝芽細胞の凝集体は、6日から12日間処理され、または
b.Wnt受容体アンタゴニストおよびMek/Erkアンタゴニストの少なくとも1つを更に含み、これらはcAMP活性化ステップの間に添加されて、CYP酵素の発現を増強し、前記肝芽細胞集団の成熟を促進する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記さらなる系統特定化が、機能的肝細胞を生成し;
前記機能的肝細胞が、前記肝芽細胞集団の細胞と比較して、
i)ALB、CPS1、G6P、TDO、CYP7A1、CYP3A7、CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、CYP2C9、CYP2D6、NAT2及びUGT1A1からなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質の発現及び/又は活性の増大;ならびに
ii)ALB、CPS1、G6P、TDO、CYP7A1、CYP3A7、CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、CYP2C9、CYP2D6、NAT2及びUGT1A1からなる群から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現の増大
の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記機能的肝細胞の少なくとも40%が、ASGPR-1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記成熟培地は、さらにnotchアゴニストを含み;
前記notchアゴニストは、支持体の表面と結合しているnotchリガンドであるか;
notchシグナル伝達ドナー細胞である;
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記notchアゴニストは、細胞、プラスチック、細胞外マトリックス(ECM)又はビーズの表面に結合している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記notchシグナル伝達ドナー細胞は、OP9、OP9δ及びOP9Jagged1細胞から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記notchアゴニストが、notchリガンドδ、Jagged-1、Jagged1ペプチドおよびPref-1/DLK-1/FA1から選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記さらにnotchアゴニストを含む成熟培地において、前記肝芽細胞の凝集体を5~14日間培養して、前記肝芽細胞集団における肝芽細胞の、胆管細胞系細胞および機能的胆管細胞の少なくとも1つへのさらなる系統特定化及び成熟が誘導される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記機能的胆管細胞系細胞は、肝芽細胞集団の細胞と比較して、
Sox9、CK19及びCFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)から選択される少なくとも1種のタンパク質の発現が増大している、及び
Sox9、CK19及びCFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)から選択される少なくとも1種の遺伝子の発現が増大している
少なくとも1つの特性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
肝細胞及び/又は胆管細胞系統集団の細胞を濃縮又は単離するステップをさらに含み、
少なくとも10%の肝細胞及び/又は胆管細胞、
任意選択で、機能的肝細胞を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載する方法で多能性幹細胞から肝細胞系細胞及び/又は胆管細胞系細胞を製造するために使用されるキットであって、
請求項1に記載の、アゴニスト、成熟因子、細胞を増殖させるための培地、及び細胞を増殖させるための容器と、
任意選択で、請求項1に記載する方法で長期アクチビン/nodalシグナル伝達アゴニストで誘導された内胚葉細胞集団から肝細胞及び/又は胆管細胞系統集団の細胞を増殖及び/若しくは製造するために使用される使用説明書と、を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒト多能性幹細胞から機能的肝細胞を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト多能性幹細胞(hPSC;胚幹細胞;hESC及び誘導された多能性幹細胞;hiPSCを含む)から機能的肝細胞を製造する能力は、肝疾患の治療のための薬物代謝研究及び細胞ベースの療法のための肝細胞の供給源を供給する。肝細胞は、薬物代謝、ひいては身体からの生体異物排出の管理に関与する細胞であることから特に重要である1~3。この役割に加えて、特定の薬物を代謝する能力は個体間で異なり得るという事実を考えると、代表集団サンプルから機能的肝細胞を入手する手段は、製薬業界内での創薬及び薬物試験に劇的な影響を与えると予想される。hPSC由来肝細胞は、薬物試験のための新規プラットフォームを提供することに加え、肝疾患の患者のための可能性ある新規療法を提示できる。肝臓移植は、末期肝疾患のために有効な治療を提供するが、生存可能なドナー臓器の不足が、このアプローチで治療され得る患者集団を制限する5~7。肝細胞移植及びhPSC由来肝細胞を用いて開発されたバイオ人工肝臓装置は、特定の種類の肝疾患の患者のための代替救命療法に相当する。しかし、これらの適用は、hPSCから成熟した代謝的に機能性の細胞を生成する能力に応じて変わる。このような細胞の再現性のある効率的な作製は、肝細胞成熟を制御する調節経路があまり理解されていないという事実のために今日まで難しいものであった。
【0003】
機能的ヒト肝細胞の可能性ある治療的及び商業的重要性を考え、hPSCからのこれらの細胞の作製のためのプロトコールを最適化することに、相当な努力が向けられてきた8~16。胚体内胚葉の誘導、内胚葉の肝臓への運命を特定化すること、肝芽細胞として知られる肝臓前駆細胞の作製及び肝芽細胞の成熟肝細胞への分化を含む、分化培養における肝臓発達の重要な段階を繰り返すほとんどすべてのアプローチが試みられた17。ほとんどの研究において、分化は、内胚葉誘導及び肝臓特定化を含む発達の初期段階を調節するとわかっている経路アゴニスト及びアンタゴニストの逐次添加を用いて、単層形式で誘導される。この戦略を用いれば、これらの初期分化ステップを最適化して、Hex、α-フェトプロテイン及びアルブミンなどのマーカーの発現によって規定されるような胚体内胚葉、肝芽細胞及び未熟肝細胞が極めて高濃度化された集団の作製が可能になった17。これらの初期分化ステップは、ある程度確立されているが、例えば、第I相及び第II相薬物代謝酵素活性によって規定されるような機能的細胞への肝細胞の成熟を促進する条件は記載されていない。異なるプロトコールを用いて製造された集団は、その成熟状態が顕著に異なっており、ほとんどの場合、主として未熟な肝細胞が生じる。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、長期nodalアゴニスト(extended nodal agonist)処理され誘導された内胚葉細胞集団から肝細胞系細胞を製造する方法を含み、方法は、
(a)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を特定化して、肝細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
(b)細胞集団の肝細胞前駆細胞の成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導して、肝芽細胞、肝細胞及び/又は胆管細胞などの肝細胞系細胞を含む集団を得るステップであって、成熟を誘導するステップは、細胞集団の凝集体を作製することを含む、ステップと
を含む。
【0005】
一実施形態では、肝細胞及び/又は胆管細胞系細胞は、肝芽細胞である。一実施形態では、方法は、増殖した肝芽細胞集団を製造する。別の実施形態では、肝細胞系細胞は、成熟肝細胞であるか、又は胆管細胞系細胞は、成熟胆管細胞である。
【0006】
いくつかの実施形態では、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団は、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から誘導される。多能性幹細胞は、任意選択で、ヒトESC(hESC)又はヒトiPSC(hiPSC)である。
【0007】
長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団は、一実施形態では、胚葉体(EB)において内胚葉細胞を誘導するステップによって得られる。別の実施形態では、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団は、単層中にある内胚葉細胞を誘導するステップによって得ている。それぞれの場合において、誘導された内胚葉集団が、nodalアゴニスト、例えばアクチビンの存在下で長期間培養されて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団が製造される。
【0008】
一実施形態では、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団は、少なくとも80%、85%、90%、95 CXCR4+及びcKIT+陽性細胞、及び/又は少なくとも70%、75%、80%のSOX17+細胞を含む。
【0009】
一実施形態では、特定化するステップは、長期nodalアゴニスト処理され(例えば、アクチビン処理され)誘導された内胚葉集団を、FGF及びBMP4を含む特定化培地と接触させるステップを含む。FGFは、例えば、bFGF、FGF10、FGF2又はFGF4又はそれらの組合せであり得る。組合せは、例えば、逐次添加され得る。
【0010】
一実施形態では、特定化ステップは、まず、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団を、FGF10及びBMP4を含む特定化培地と、およそ40~60時間、任意選択で、およそ40、42、44、46、48、50、52、54、56、58又は60時間接触させるステップ、次いで、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団を、bFGF及びBMP4を含む特定化培地と任意選択で、約4、5、6又は7日間接触させるステップを含む。
【0011】
別の実施形態では、凝集体が、少なくとも70%、80%、85%又は90%アルブミン陽性細胞を含む細胞集団から作製される。別の実施形態では、凝集体は、24、25、26、27又は28日培養した後に作製される。
【0012】
いくつかの実施形態では、凝集体は、酵素処理及び/又は手作業による解離によって、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団の単層から作製される。
【0013】
成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、1つ又は複数のさらなるステップを含んでいてもよい。さらなる実施形態では、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞及び/又は凝集体を含む細胞集団が、肝細胞増殖因子(HGF)、デキサメタゾン(DEX)及び/又はオンコスタチンM(OSM)及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片の存在下で培養される。
【0014】
一実施形態では、成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、凝集体の細胞内のcAMP経路を活性化して、肝細胞及び胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導するステップをさらに含む。別の実施形態では、cAMP経路を活性化するステップは、凝集体を、cAMP及び/又はcAMP類似体(例えば、8-ブロモアデノシン-3’5”-環状一リン酸、ジブチリル-cAMP、アデノシン-3’,5’-環状モノホスホロチオアート、Sp-異性体(Sp-cAMPS)及び/又は8-ブロモアデノシン-3’,5’-環状モノホスホロチオアート、Sp-異性体(Sp-8-Br-cAMPS)など)及び/又は任意のその他のcAMPアゴニストと接触させるステップを含む。
【0015】
例えば、一実施形態では、HGF、DEX及びOSMを含む成熟培地中でプレ凝集体集団を、例えば、約10、11、12、13又は14日間培養した後で、凝集体に、cAMPアゴニスト及びDEX及び任意選択で、HGFを含む成熟培地が添加される。
【0016】
一実施形態では、製造された肝細胞の集団は、機能的肝細胞を含む集団である。
【0017】
実施形態では、肝細胞、任意選択で、機能的肝細胞は、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞及び/又は凝集及び/又はcAMPシグナル伝達誘導を伴わずに製造された、長期nodalアゴニスト処理されてない誘導された内胚葉細胞集団(例えば、アクチビンなどのnodalアゴニストで長期間処理されていない誘導された内胚葉集団から)製造された肝細胞を含む細胞集団と比較して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種若しくはそれ以上の遺伝子又はALB、CPS1、G6P、TDO、CYP2C9、CYP2D6、CYP7A1、CYP3A7、CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、NAT2及びUGT1A1からなる群から選択されるタンパク質の発現の増大を含む。他の実施形態では、肝細胞、任意選択で、機能的肝細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%又は90%は、ASGPR-1+細胞である。
【0018】
一実施形態では、胆管細胞の運命は、細胞集団の凝集体を、notchアゴニストで処理することによって特定される。
【0019】
一実施形態では、製造される胆管細胞の集団は、機能的胆管細胞の集団である。機能的胆管細胞は、例えば、肝細胞及び胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団の細胞と比較して、及び/又はnotchアゴニストで処理されていない凝集体から製造された集団細胞と比較して、増大された、少なくとも1種、少なくとも2若しくは3種の遺伝子又はSox9、CK19及びCFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)から選択されるタンパク質の発現を含む。他の実施形態では、胆管細胞の集団の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%又は90%は、CK19+胆管細胞である。他の実施形態では、機能的胆管細胞の少なくとも40%、50%、60%、70%、80%又は90%は、CFTR+胆管細胞である。
【0020】
記載されるように、方法は、単層で増殖された内胚葉細胞集団に適用され得る。
【0021】
したがって、さらなる態様は、多能性幹細胞集団から肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法を含み、方法は、
a)単層として培養された多能性幹細胞を、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
b)誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を特定化して、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
d)任意選択で、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、デキサメタゾン及び/又はオンコスタチンM及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む成熟培地と接触させるステップと、
e)細胞集団の肝細胞及び胆管細胞前駆細胞の、増殖した肝芽細胞、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導するステップは、細胞集団の凝集体を作製することを含む、ステップと
を含む。
【0022】
さらに、内胚葉集団はまた、胚葉体中に含まれ得る。
【0023】
したがって、開示のさらなる態様は、多能性幹細胞集団から肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法を提供し、方法は、
a)任意選択で、多能性幹細胞を、BMP4アゴニストと接触させることによって、多能性幹細胞の胚葉体(EB)を形成するステップと、
b)EBを、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと
c)誘導された内胚葉細胞集団を解離して、解離された誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
d)解離された誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
e)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を特定化して、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
f)任意選択で、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、デキサメタゾン及び/又はオンコスタチンM及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む成熟培地と接触させるステップと、
g)細胞集団の肝細胞及び胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、細胞集団の凝集体を作製することを含む、ステップと
を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、成熟、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、凝集体内のcAMP経路を活性化して、細胞集団の肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞を含む集団への成熟を誘導するステップをさらに含む。一実施形態では、方法は、凝集体を、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストと接触させるステップを含む。
【0025】
一実施形態では、単層又はEBは、誘導培地中でnodalアゴニストと少なくとも約1日、2日、3日又は約4日間接触される。
【0026】
一実施形態では、内胚葉集団の解離に先立つステップ(例えば、胚葉体(EB)段階)において、EBは、nodalアゴニストとともに少なくとも36、38、42、44、46、48、50、52、56、58若しくは60時間又は少なくとも約1日、2日、3日若しくは約4日間培養される。
【0027】
したがって、本開示の別の態様では、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法に関し、方法は、
a)単層として培養されたか又は胚葉体に形成された多能性幹細胞を、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
b)誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、少なくとも1種のFGFアゴニスト及び1種のBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を特定化し、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
d)肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップが、
(i)肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、OSM及びDEXを含む成熟培地を用いて培養するサブステップと、
(ii)任意選択で、細胞集団が、少なくとも70%、80%、85%若しくは90%のアルブミン陽性細胞を含む場合に、又は約20~約40日培養した後、例えば、約24~約28日培養した後に、細胞集団の凝集体を作製するサブステップと、
(iii)凝集細胞成熟培地中で凝集細胞を培養するサブステップと、
(iv)任意選択で、凝集の約1~約10日内に、例えば、凝集の6日内に、任意選択で、約27~約36日培養した後に凝集細胞においてcAMP経路を活性化するサブステップと
を含む、ステップと
を含む。
【0028】
一実施形態では、凝集細胞成熟培地は、肝細胞成熟を促進する因子又は胆管細胞発達を促進する因子又は両方を含み得る。
【0029】
別の実施形態では、凝集細胞は、CIHR99021などのwntアゴニストを用いて、任意選択で、SB431542などのTGFβアンタゴニストの存在下で凝集時に処理される。本明細書において実証されるように、例えば、26日目の(又はEBを使用する実施形態では、任意選択で、1日若しくは2日遅く、例えば、27日目の)、Wnt経路及びSMAD経路の活性化は、アルブミン+/HNF4+前駆体集団の増殖を促進する。例えば、wntアゴニストが添加される場合に、前記集団の最大10倍の増殖が、得られ得ることが実証される。
【0030】
一実施形態では、凝集細胞は、wntアゴニスト及び任意選択で、TGFβアンタゴニスト(SB431542など)を用いて、約6~約12日間、好ましくは、約8~約10日間、任意選択で、約9日間処理される。
【0031】
なおさらなる実施形態では、XAV939(略してXAVとも呼ばれる)などのWntアンタゴニスト及び/又はMek/Erkアンタゴニスト、例えばPD0325901(略してPDとも呼ばれる)が、cAMP活性化ステップの間に添加される。cAMPシグナル伝達の活性化の間の、Wntアンタゴニスト及び/又はMEK/Erkアンタゴニストの添加は、CYP酵素の発現を、例えば、最大、成体肝臓細胞において見られるレベルに又はそれ以上に増強する。例えば、培養約28日目から約32日目に添加される、例えば、cAMPの存在下で添加されるMEK/Erkの阻害剤は、CYP3A4のレベルの増大した肝細胞をもたらす。Wntアンタゴニストと組み合わせたMEK/Erkアンタゴニストの添加も、CYP1A2のレベルを高めると示されている。一実施形態では、Wntアンタゴニストは、XAV939である。別の実施形態では、MEK/Erkアンタゴニストは、PD0325901である。
【0032】
一実施形態では、凝集のおよそ1~約4日後に、細胞は、notchアゴニストを用いて処理される。このような段階でのnotchアゴニストの添加は、胆管細胞成熟を促進する。例えば、胆管細胞成熟が好ましいいくつかの実施形態では、cAMPシグナル伝達を誘導することは省略される。
【0033】
例えば、γ-セクレターゼ阻害剤(GSI)L695,458などのNotchアンタゴニストを用いてNotchシグナル伝達をさらに阻害することは、胆管細胞発達を阻害し、生じた細胞は、肝細胞の特徴を保持すると本明細書において実証される。一実施形態では、方法は、例えば、肝細胞分化が望まれる実施形態において、凝集のおよそ1~約4日後に、細胞をnotchアンタゴニストを用いて処理することを含む。
【0034】
別の実施形態では、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法は、
a)単層として培養されたか又は胚葉体に形成された多能性幹細胞を、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と、任意選択で、約4~約8日間接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
b)誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと任意選択で、約1、2、3又は約4日間接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、少なくとも1種のFGFアゴニスト及び少なくとも1種のBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と、任意選択で、約4~約10日間接触させることによって、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を特定化し、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
d)肝細胞又は胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップが、
(i)肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、Dex及び/又はOSMを含む成熟培地を用いて、任意選択で、約10~14日間培養するサブステップと、
(ii)任意選択で、細胞集団が、少なくとも70%、80%、85%若しくは90%のアルブミン陽性細胞を含む場合に、又は約20~約40日培養した後、例えば、約24~約28日培養した後に、細胞集団の凝集体を作製するサブステップと、
(iii)Dexを含む成熟培地中で約1~10日間凝集体を培養するサブステップと、
(iv)a)Dex及びcAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストを含む成熟培地中で約6日~約10日凝集体を培養し、任意選択で、凝集体を作製するステップの約1~約10日内に、例えば、凝集体を作製するステップの6日内に、任意選択で、約27~約36日培養した後にcAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストを添加するサブステップ、又は
b)凝集体を、notchアゴニスト及び任意選択で、cAMPアゴニスト、HGF及び/又はEGFを含む成熟培地中で、約6日~約20日間培養し、任意選択で、凝集体を作製するステップの約1~約10日内に、例えば、凝集体を作製するステップの6日内に、任意選択で、約20~40日培養した後に、notchアゴニストを添加するサブステップと
を含む、ステップと
を含む。
【0035】
一実施形態では、方法は、例えば、約20日培養した後及び/又は培養の40日前に凝集させるステップを含む。
【0036】
本開示はまた、胆管細胞前駆細胞の、胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導する方法も提供し、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、
(i)胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、Notchアゴニストとともに培養して、少なくとも1種の胆管細胞前駆細胞の、胆管細胞、任意選択で、機能的胆管細胞への成熟を誘導するステップを含む。
【0037】
notchアゴニストは、例えば、細胞、プラスチック、ECM又はビーズなどの表面と結合している任意のnotchリガンドであり得る。一実施形態では、notchリガンドは、notchリガンドδである。一実施形態では、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞などのnotchシグナル伝達ドナー(例えば、notchアゴニスト)と、任意選択で、EGF、TGFβ1、HGF及びEGF並びに/又はHGF、TGFβ1及びEGFの存在下で、少なくとも5日間又は約5~約90日間接触させて、胆管細胞前駆細胞の機能的胆管細胞への成熟を誘導するステップを含む。
【0038】
任意選択で、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、notchアゴニスト(例えば、notchシグナル伝達ドナー)と接触させるステップは、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞などのnotchシグナル伝達ドナーと、任意選択で、EGF、TGFβ1、HGF及びEGF、並びに/又はHGF、TGFβ1及びEGFを含む成熟培地中で、少なくとも若しくは約5~少なくとも若しくは約90日間、任意選択で、少なくとも若しくは約5~少なくとも若しくは約60日間、少なくとも若しくは約30日間、少なくとも若しくは約25日間、2日少なくとも若しくは約1日間及び/又は少なくとも若しくは約14日間共培養して、胆管細胞前駆細胞の、胆管細胞への、任意選択で機能的胆管細胞への成熟を誘導するステップを含み、任意選択で、機能的胆管細胞は、分岐した、嚢胞、管状又は球型構造を形成する。
【0039】
別の実施形態では、本出願は、
(a)本明細書において記載される方法のいずれかに従う、肝細胞及び/又は胆管細胞を含む細胞の集団を製造するステップと
(b)細胞の集団又は任意選択で、肝細胞及び/又は胆管細胞が濃縮又は単離された集団を対象に導入するステップと
を含む方法を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、方法は、肝細胞及び/又は胆管細胞の細胞集団を濃縮又は単離するステップをさらに含む。任意選択で、肝細胞及び/又は胆管細胞の細胞集団は、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は最大約95%の肝細胞及び/又は胆管細胞(例えば、任意選択で、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞)を含む。
【0041】
本開示はまた、創薬、薬物代謝分析、バイオ人工肝臓装置の開発のための、並びに/又は肝臓状態及び疾患の治療のための細胞置換療法としての、肝細胞及び/若しくは胆管細胞の集団の使用を提供する。
【0042】
本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、本開示の趣旨及び範囲内の種々の変法及び改変が、この詳細な説明から当業者には明らかとなるので、詳細な説明及び具体的な例は、本開示の好ましい実施形態を示しながら、単なる例示として記載されるにすぎないことが理解されよう。
【0043】
以下、本開示の一実施形態を図面と共に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】hESC由来胚葉体における内胚葉誘導を示す図である。図1(a)は、分化プロトコールの模式図である。EBは、6日目にトリプシン処理され、アクチビンの存在下で単層として2日間置き、適当な段階の胚体内胚葉が生成する。肝系統は、BMP4及びFGFの存在下での培養によってこの内胚葉集団から特定化される。肝成熟は、最初に、HGF、デキサメタゾン(Dex)及びオンコスタチンM(OSM)の12日間の添加と、それに続く、3次元凝集体の生成、それが、Dexを補給した肝細胞培地において8日間、続いて、cAMP類似体、8-br-cAMPを添加したこの培地においてさらに12日間(32~44日目)培養されることによる段階的プロセスによって誘導される。図1(b)は、6日目アクチビン-及びアクチビン/Wnt3a-によって誘導された集団における、CXCR4+、CKIT+(CD117)及びEPCAM+細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析を示す。図1(c)は、6日目アクチビン-及びアクチビン/Wnt3a-によって誘導された集団における、SOX17+及びFOXA2+細胞の割合を示す細胞内フローサイトメトリー分析を示す。SOX17+及びFOXA2+集団の大きさは、アクチビン単独で誘導されたEB(Sox17:91+/-1.8%、FoxA2:80.3+/-2.5%)と比較して、アクチビン/Wnt3aによって誘導されたEBにおいて有意に大きかった(Sox17:96.2+/-1.1%、FoxA2:88.5+/-2.9%)P<0.05(P=0.002)、**P<0.01(P=0.005);スチューデントのt検定、n=4。図1(d)は、アクチビン及びアクチビン/Wnt3aによって誘導されたEBにおけるT、SOX17、GSC及びFOXA2発現のRT-qPCRベースの分析を示す。EBは、示された時点で分析された。バーは、3回の独立した実験の平均のSDを表す。図1(e)は、アクチビン/Wnt3aによって誘導されたEBにおける、CXCR4+、CKIT+、SOX17+及びFOXA2+集団の発生の動態を示すフローサイトメトリー分析である。図1(f)は、神経基本培地中でアクチビンを用いて誘導された6日目EBにおけるCXCR4+、CKIT+、EPCAM+、Sox17+及びFOXA2+細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析である。
【0045】
図2】(a)示されたサイトカインを用いて特定化された単層培養におけるアルブミン発現のRT-qPCR分析。細胞を、6日目から12日目まで種々の因子(bFGF 10ng/ml;BMP4 50ng/ml;HGF 20ng/ml;又はbFGF 20ng/ml及びBMP4 50ng/ml)を用いて処理し、次いで、DEX、HGF及びOSMとともに培養し、24日目に分析した。バーは、3回の独立した実験の平均の標準偏差(SD)を表す。値は、TBPに関連して決定され、1に設定されるbFGF(20ng/ml)培養物における発現に関連して示される。***bFGFで処理された培養物と比較してP<0.001。スチューデントのt検定、n=3。(b)FGF10の存在下及び非存在下で特定化された集団におけるアルブミン発現のRT-qPCR分析。培養物を、6日目から8日目の間、FGF10(50ng/ml)及びBMP4(50ng/ml)を用いて処理した(又はしなかった)。この段階で、FGF10を除去し、細胞を8から12の間、bFGF/BMP4において培養した。バーは、3回の独立した実験の平均の標準偏差(SD)を表す。値は、TBPに関連して決定され、1と設定されるFGF10(-)培養物における発現に関連して示される。P<0.05、スチューデントのt検定、n=3。
【0046】
図3】アクチビンシグナル伝達の期間が、肝発達に影響を及ぼすことを示す図である。図3(a)は、6日目アクチビン/Wnt3A誘導されたEBにおける、並びにそれから誘導された単層集団における、SOX17+及びFOXA2+細胞の割合を示す細胞内フローサイトメトリー分析である。単層集団を、特定化培地(-アクチビン)において直接、又はアクチビン(50ng/ml)において2日間、次いで、特定化培地(+アクチビン)において培養し、特定化培地において2又は4日培養した後に、集団を分析した(-アクチビン群については、総8日目及び10日目、+アクチビン群については、10日目及び12日目)。バーは、3回の独立した実験の平均の標準偏差(SD)を表す。10/12日目のSOX17+の割合は、非処理集団(73.3+/-7.5%対45.9+/-3.7%)と比較してアクチビン処理において有意に高かった。同様に、8/10日目及び10/12日目のFOXA2+細胞の割合は、非処理集団と比較してアクチビン処理において有意に高かった(8日目:96.1+/-0.9%対76.5+/-10.1%、12日目:92.7+/-2.5%対50.2+/-6.3%)。図3(b)は、アクチビン処理及び非処理単層培養物における総細胞数を表す。6日目EB由来細胞を、直接肝分化培地において、又はアクチビンの存在下で2日間、次いで、肝分化培地において培養した。図3(c)は、非処理細胞及びアクチビン処理内胚葉から生成した、8、10及び12日培養時の集団におけるCXCR4及びCKIT陽性細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析である。図3(d)は、アクチビン処理(黒色バー)及び非処理(灰色バー)内胚葉から生成した、肝単層集団のRT-qPCRベースの発現分析を示す。集団を、示された内胚葉(HEX、AFP、ALB及びHNF4a)及び中胚葉(MEOX1、MESP1、CD31及びCD90)遺伝子の発現について分析した。アクチビン処理集団(灰色バー)を、総培養の12、18及び26日目に分析したが、非処理集団(黒色バー)を、培養の10、16及び24日目に分析した。示された発現レベルは、TBPに関連する。バーは、3回の独立した実験の平均の標準偏差(SD)を表す。図3(e)は、アクチビン処理(26日目)及び非処理(24日目)内胚葉に由来する単層集団におけるCD31CD90及びEPCAM細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析である。CD31及びCD90集団は、処理培養物と比較して非処理において有意に大きかった(CD31:13.6+/-2.3%対0.49+/-0.11%、P<0.001;CD90:41.2+/-4.7%対8.5+/-1.19%、P<0.001、スチューデントのt検定、n=3)。対照的に、非処理細胞から生成した集団と比較して、アクチビン処理内胚葉に由来する集団において、より多い部分のEPCAM細胞が検出された(EPCAM:90.7+/-2.7%対56.8+/-7.3%;P<0.01、n=3)。図3(f)は、アクチビン処理(26日目)及び非処理(24日目)内胚葉から生成した培養物におけるアルブミン陽性細胞の割合を示す免疫染色分析を示す。アルブミンは、Alexa488を用いて可視化される。スケールバー:200μm。(g)アクチビン処理(灰色バー;26日目)及び非処理(黒色バー;24日目)内胚葉から生成した単層培養物におけるアルブミン(ALB)及びαフェトプロテイン(AFP)細胞の割合を示す細胞内フローサイトメトリー分析。図中のバーは、3回の独立した実験の平均の標準偏差(SD)を表す。P<0.05、**、P<0.01、***P<0.001(スチューデントのt検定;n=3)。AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓。
【0047】
図4】凝集が肝成熟を促進することを示す図である。図4(a)は、培養28日目の肝凝集体の位相差画像である。スケールバー、200μm。図4(b)は、分化32日目での単層(黒色バー)及び3次元凝集体培養物(灰色バー)におけるALB、CPS1、TAT、G6P及びTDO発現のRT-qPCRベースの分析を示す。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される成体肝臓における発現に関連して示される。図4(c)は、単層(黒色バー)及び3次元凝集体培養(灰色バー)における分化32日目のCYP7A1、CYP3A7及びCYP3A4発現のRT-qPCRベースの分析である。発現レベルは、TBPに関連している。図4(d)は、36日目での単層(2次元)及び凝集体(3次元)培養物におけるアシアロ糖タンパク質受容体-1+(ASGPR-1)細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析である。ASGPR-1+細胞の頻度は、3次元凝集体培養物において有意に高かった(2次元:28.8+/-3.1%、3次元:64.7+/-4.26%、P<0.001、n=3)。すべてのグラフ中のバーは、3回の独立した実験から得たサンプルの平均の標準偏差(SD)を表す。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントのt検定、AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓、PH;2日間培養された初代肝細胞。
【0048】
図5】cAMPシグナル伝達が、hESC由来肝細胞様細胞の成熟を誘導することを示す図である。図5(a)は、8-Br-cAMPの存在下及び非存在下で培養された肝凝集体における、PGC1-a、HNF4a、AFP、ALB、G6P及びTAT発現のRT-qPCR分析である。発現レベルは、TBPと関連している。図5(b)は、8-Br-cAMPの存在下及び非存在下で培養された肝凝集体における、α-フェトプロテイン(AFP)及びアルブミン(ALB)細胞(44日目)の割合を示す細胞内フローサイトメトリー分析である。AFP細胞の頻度は、非誘導集団と比較して、cAMPを用いて誘導された集団において有意に低かった(34.5+/-12.4%対56.9+/-3.6%、P<0.05、平均+/-SD、n=3)。他方、ALB陽性細胞の割合は、cAMP処理集団において高かった(89.5+/-5.6%対82.3+/-3.0%、P<0.05(平均+/-SD、n=3)。図5(c)は、HES2、H9及び38-2細胞から生成したcAMP処理膵臓凝集体及び肝凝集体におけるPGC1-a発現のRT-qPCR分析である。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される非処理細胞における発現に関連して倍数変化として示される。図5(d)は、非処理及びcAMP処理凝集体における44日目のICG取り込みを示す。すべてのグラフ中のバーは、3回の独立した実験から得た値の平均の標準偏差(SD)を表す。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントのt検定、AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓。
【0049】
図6】cAMPシグナル伝達が、hESC由来肝細胞において代謝酵素活性を増大することを示す図である。図6(a)は、8-Br-cAMPの存在下及び非存在下で培養された肝凝集体(44日目)におけるCYP3A7、CYP3A4、CYP1A2、CYP2B6及びUGT1A1の発現を示す。初代肝細胞(PH)のレベルは、対照として示されている。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される非処理細胞における発現と関連して倍数変化として示される。図6(b)は、未処理(-)及びcAMP処理(+)単層集団(44日目)における、PGC1a、TAT、HNF4a、CYP1A2及びCYP3A4の発現を示すRT-qPCR分析を示す。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される未処理(-)及びcAMP処理(+)単層集団(44日目)における発現に関連して倍数変化として示される。図6(c)は、非処理(-Act)又は長期アクチビン処理(+Act)内胚葉から生成したcAMP処理凝集体(44日目)におけるCYP1A2及びALB発現のRT-qPCR分析を示す。図6(d)は、8-Br-cAMP(cAMP+)において6日(cAMP+/-)又は12日間培養された凝集体におけるCYP1A2発現のRT-qPCR分析を示す。図6(e)は、hESC由来肝細胞が、in vitroでCYP1A2活性を示すことを示す。非処理及びcAMP処理凝集体及び初代肝細胞を、フェナセチン(200μM)とともに24時間インキュベートした。フェナセチンからのO-脱エチル化代謝産物アセトアミノフェンの生成を、HPLCによってモニタリングした。活性は、細胞10,000個あたりで示されている(p<0.05、n=5)。図6(f)は、hESC由来肝細胞は、in vitroでCYP2B6活性を示すことを示す。cAMP処理凝集体及び初代肝細胞を、ブプロピオン(1μM)とともに48時間インキュベートした。ブプロピオンからの代謝産物O-ヒドロキシ-ブプロピオンの形成をHPLCによって測定した。活性は、細胞50,000個あたりで示されている(n=3)。図6(g)は、スルファメタジン(SMZ)のN-アセチル化SMZへの代謝は、第II相酵素(単数又は複数)NAT1及び/又はNAT2の存在を示すことを示す。cAMP処理凝集体及び初代肝細胞を、SMZ 500μM)とともに48時間培養し、N-アセチル化SMZをHPLCによって測定した。活性は、細胞10,000個あたりで示されている(n=3)。図6(h)は、総UGT活性を示すcAMP処理凝集体による4-メチルウンベリフェロン(4-MU)からの4-MUグルクロニド(4-MUG)の生成を示すHPLC分析である。cAMP処理凝集体及び初代肝細胞を、4-MUとともに48時間培養した。4MUGの形成は、HPLCによって測定した。活性は、細胞10,000個あたりで示されている、(n=3)。すべてのグラフ中のバーは、3回の独立した実験から得たサンプルの平均の標準偏差(SD)を表す、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントのt検定、PH;初代肝細胞。
【0050】
図7】種々の多能性幹細胞系からの肝分化を示す図である。図7(a)は、H9 hESC、H1 hESC及び38-2 iPSCから生成した、アクチビン/Wnt3a誘導6日目EBにおけるCXCR4+、CKIT+、EPCAM+、SOX17+及びFOXa2+細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析である。図7(b)は、アクチビンを用いて変動する期間処理された、H9、H1及び38-2由来内胚葉から生成した単層培養物におけるアルブミン発現のRT-qPCR分析を示す。種々の集団を以下の時点で分析した:アクチビンなし:24日目、2日アクチビン:分化の26日目、4日アクチビン:28日目。図7(c)は、種々のhPSC系から生成したALB及びAFP陽性細胞の頻度を示す細胞内フローサイトメトリー分析を示す(アクチビンなし(-):24日目、2日アクチビン:分化の26日目、4日アクチビン:28日目)。図7(d)は、培養26日目のH9由来肝細胞の形態を示す位相差画像である。スケールバー:200μm。図7(e)は、8-Br-cAMPの存在下及び非存在下で培養された、H9によって誘導された及びiPSC(38-2)によって誘導された肝凝集体(44日目)におけるCYP3A7、CYP3A4、CYP1A2、CYP2B6及びUGT1A1を示すRT-qPCR分析を示す。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される非処理細胞における発現に関連して倍数変化として示される。すべてのグラフ中のバーは、3回の独立した実験から得た値の平均の標準偏差(SD)を表す。P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、スチューデントのt検定、AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓、PH:初代肝細胞。
【0051】
図8】(a)(b)(c)は、CHIR99021が、胚体内胚葉細胞を誘導し得ることを実証する図である。(a)アクチビン/wnt3a若しくは(b)アクチビン/CHIR99021を用いる胚葉体誘導6日目の、又は(c)アクチビン/wnt3a若しくは(d)アクチビン/CHIR99021を用いる単層誘導7日目のCXCR4+、CKIT+及びEPCAM+細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析を示す図である。(e)、(f)及び(g)NSGマウスにおける異所性肝臓組織。移植後2ヶ月のhESC由来肝細胞のクラスター(矢頭)を示す腸間膜のH&E染色切片の顕微鏡写真。倍率は5倍であった。腸(矢印)、移植された細胞(矢頭)。(f)図8(c)からのH&E染色切片の高倍率(10X)顕微鏡写真。(g)(h)移植の2ヶ月後の腸間膜領域におけるhESC由来細胞の存在を示す免疫組織化学的染色。矢印で示されるヒトアルブミン(Alexa488:緑色)及び矢頭で示されるCK19(Cy3:赤)についての二重染色は、移植された細胞は、肝細胞及び胆管細胞系統に分化する可能性を有することを示す。HESC由来肝細胞様細胞は、アルブミン陽性細胞(矢印)として観察されたのに対し、胆管細胞様細胞は、CK19を発現し、管様構造(矢頭)中に見られた。
【0052】
図9】肝前駆細胞増殖及び成熟に影響を及ぼす因子を表す図である。図9(a)は、Wntシグナル伝達及びSmadシグナル伝達による肝前駆細胞集団の増殖を示す。種々の濃度のCHIR99021(0.3μM、1μM及び3μM)及びTGFβ阻害剤SB431542(6μM)における、H9由来27日目肝前駆細胞の培養9日後のALB+AFP+細胞数の増大倍数が示されている。図9(b)及び(c)は、H9由来27日目肝前駆細胞の培養9日後(36日目)の、ALB陽性細胞(b)並びにALB及びHNF4αの二重陽性(c)の存在を示す免疫蛍光染色を表す。図9(d)及び(e)は、Wnt/p-カテニン及びMEK/Erkシグナル伝達の阻害が、44日目凝集体(全部で3)においてCYP3A4(エルキニブ(erkinhib)+camp十分)及びCYP1A2の発現を増大させることを示す。Wnt阻害剤XAV939(1μM)及びMEK/Erk阻害剤PD0325901(1μM)を、8-Br-cAMPと一緒に分化30日目に凝集体培養物に、単独又は一緒に添加した。成体肝臓において見られるレベルに関連してCYP3A4(d)及びCYP1A2(e)の発現が示されている。cAMPと一緒のMEK/ErK阻害剤の添加は、成体肝臓で見られるレベルに匹敵するCYP3A4発現のレベルを誘導したのに対し、cAMPととものWnt及びMEK/ErK阻害剤両方の添加は、最高レベルのCYP1A2発現を誘導した。図9(f)は、種々の細胞外マトリックス(ECM)での26日目肝細胞様細胞培養物におけるALBの発現を示す。示される値は、1に設定されるゼラチン上で培養された細胞に関連している。
【0053】
図10】肝前駆細胞におけるnotchシグナル伝達経路が、胆管細胞系統の分化に影響を及ぼすことを示す図である。(a)コラーゲン/Matrigelマトリックスにおいて生成した3次元(3D)組織から得たH&E染色切片の高倍率(20X)顕微鏡写真。H9由来25日目肝前駆細胞を、低クラスター培養皿中で48時間、5:1の比でOP9-δ1間質細胞と混合した(凝集させた)。キメラ凝集体を、1型コラーゲン(80%)及びMatrigel(20%)の混合物中に包埋し、3次元共培養を確立した。培養物を、HGF20ng/ml及びEGF50ng/mlを含有する培地中、GSIの存在下又は非存在下で9日間維持した。GSIを用いて処理された培養物中では、凝集体形態が維持された。これらの凝集体は、アルブミンを発現する肝細胞様細胞を含有していた。GSIの非存在下では、凝集体は、大規模な分岐構造を発生した。分岐内の細胞は、上皮形態を示し、内側管腔周囲に組織化した。これらの細胞は、CK19を発現し、これは、それらが胆管細胞であること及び分岐構造が発達中の胆管に相当し得ることを示唆する。図10(b)は、Notchシグナル伝達の活性化が、管構造におけるCK19及び嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の発現を上方制御することを示す。示される値は、GSIの存在下で培養された細胞に関連している。Notch(-)共培養(すなわち、GSIを用いて処理された)における細胞は、アルブミンの発現によって実証されるように肝細胞の特徴を保持した。図10(c)は、3次元共培養におけるCFTRの発現は、単層培養で見られるものよりも高度に誘導されたことを示す。示される値は、単層条件において培養された細胞に関連している。
【0054】
図11】肝細胞/胆管細胞分化プロトコールの模式図である。(a)胚体内胚葉を作製するための単層培養物はまた、wnt3a又はCHIR99021と一緒のアクチビンの存在下でも作製した。単層誘導における5日目の内胚葉細胞は、EBにおける6日目の細胞と同等である。肝前駆細胞及び成熟肝細胞の生成には、単層培養では5日目を超えるさらなるアクチビン処理も必要である。(b)胚体内胚葉を作製するために使用されたEB培養。(c)胆管細胞を作製するために使用されたプロトコールの模式図。単層培養において生成した胚体内胚葉を、肝臓への運命へ特定化し、その結果、培養25日目までに肝前駆細胞(肝芽細胞)が生成した。肝前駆細胞を解離し、低クラスター培養皿中で2日間、OP9/OP9δ細胞を用いて凝集させた。キメラ凝集体をコラーゲン/Matrigelゲル中に包埋し、HGF(20ng/ml)及びEGF(50ng/ml)を補給した培地で、全Notchシグナル伝達の阻害剤(例えば、notchアンタゴニスト)、γ-セクレターゼ阻害剤(GSI)L-685,458の存在下又は非存在下で培養した。
【0055】
図12】hESC由来内皮細胞が肝成熟を増強することを実証する図である。(a)hESC由来内皮細胞(RFP陽性)及び肝芽細胞からなるキメラ凝集体の作製のために使用されるプロトコール。RFP(+)/CD34(+)内皮細胞は、BMP4を用いる4日間の、次いで、VEGF及びbFGFを用いるさらに2日間のEBの誘導によって生成した。FACSによって単離されたRFP(+)/CD34(+)内皮細胞を、コラーゲンI型でコーティングしたウェルに置き、EGM-2培地を用い、VEGF及びbFGFの存在下で6日間培養した。キメラ凝集体を作製するために、培養したRFP(+)/CD34(+)細胞をトリプシン処理し、解離させ、ウェルあたり細胞100個の細胞密度でAggrewellプレート中に置いた。2日培養した後、25日目肝芽細胞を、ウェルあたり細胞1000個の細胞密度でRFP(+)/CD34(+)内皮凝集体上に置いた。スケールバー100μm(b)33日目の内皮/肝凝集体内のRFP陽性細胞を示す位相差及び蛍光画像。RFPは、内皮細胞を伴わずに生成した肝凝集体では検出されない。スケールバー100μm(c)33日目の内皮/肝細胞凝集体中のRFP陽性細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析。(d)44日目の内皮細胞を伴う及び伴わない凝集体におけるCYP3A4発現を示すRT-qPCR分析。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される成体肝臓サンプルの発現に対する変化倍数として示される。
【0056】
図13】hPSC由来肝細胞の成熟に対する3次元ゲル培養の効果を実証する図である。肝芽細胞又は肝芽細胞及び内皮細胞(end)からなる凝集体が、培養25日目に生成し、次いで、VEGF及びbFGFを補給した肝細胞培養培地中液体中でさらに7日間培養し、続いて、cAMP、PD0325901(PD)及びXAV939を補給した同一培地中で12日間培養した。成熟に対するコラーゲンの効果を調べるために、32日目キメラ凝集体を、コラーゲン1型ゲル中に包埋し、cAMP、PD0325901及びXAV939の存在下で12日間培養した。44日目にすべての培養物を回収し、qRT-PCRによって示された遺伝子の発現について分析した。値は、TBPに関連して決定されている。ALB及びCYP3A4の発現は、成体肝臓におけるそのレベルに対する変化倍数として示されている。AFP及びCYP3A7の発現は、胎児肝臓におけるそのレベルに対する変化倍数として示されている。AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓。
【0057】
図14】hPSC分化培養物における発達の肝芽細胞段階の特徴を示す図である。(a)分化プロトコールの模式図。(b)単層誘導形式で7日目のCXCR4+、CKIT+及びEPCAM+集団の発達を示すフローサイトメトリー分析。(c)図14aに示された培養条件で維持された、H9由来肝芽細胞における示された遺伝子の発現を示すRT-qPCR。培養7、13、19及び25日目に示された遺伝子の発現を分析した。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される胎児肝臓における発現に対する変化倍数として示される。AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓。
【0058】
図15】Notchシグナル伝達が、hPSC由来肝芽細胞様集団からの胆管細胞発達を促進することを示す図である。γ-セクレターゼ阻害剤(GSI)、Notch経路のアンタゴニストの存在下又は非存在下で、HGF(20ng/ml)、EGF(50ng/ml)及びTGFb1(5ng/ml)を補給した培地におけるOP9とともに共培養した後の肝芽細胞由来細胞におけるALB及びCK19のRT-qPCRベースの発現分析。培養30、33及び36日目に、細胞を回収し、分析した。値は、TBPに関連して決定され、1として設定される27日目肝芽細胞凝集体における発現のレベルに対する変化倍数として示される。(b)OP9を伴う又は伴わない培養後の肝芽細胞由来細胞におけるNotch標的遺伝子HES1、HES5及びHEY1のRT-qPCRベースの発現分析。細胞を培養36日目にアッセイした。この分析のために、27日目肝芽細胞凝集体を、Notchシグナル伝達アンタゴニストγ-セクレターゼ阻害剤(GSI)の存在下又は非存在下で、HGF、EGF及びTGFb1(5ng/ml)を含有する培地中、OP9(OP9+)間質細胞又はMatrigel(OP9-)のいずれかに置いた。値は、TBPに関連して決定され、Matrigelでの培養36日目の細胞における発現のレベルに対する変化倍数として示された。この値は、1として設定された。すべてのグラフ中のバーは、3回の独立した実験の平均の標準偏差(SD)を表す。P<0.05、**、P<0.01、***P<0.001(スチューデントのt検定;n=3)。
【0059】
図16】3次元培養は、胆管細胞成熟を促進する:25日目hESC由来細胞及びOP9間質細胞(GFP+)からなるキメラ凝集体の形態を示す図である。H9由来25日目肝芽細胞を、低クラスター培養皿中で48時間、4:1の比でOP9間質細胞と混合した(凝集させた)。キメラ凝集体を、1型コラーゲン(1.2mg/ml)及びMatrigel(40%)の混合物に包埋し、3次元ゲル培養を確立した。培養物を、HGF、EGF及びTGFb1を含有する培地中、GSIの存在下又は非存在下で2週間にわたって維持した。(b)3次元培養物において発達する管状、嚢胞又は球形態を示す構造の割合。値は、GSIの存在下又は非存在下で発達する全構造の割合として示されている。値は、3回の独立した実験を代表するものである。(c)3次元ゲルにおいて発達したプールされた構造のRT-qPCRベースの発現分析。44日目に培養物を回収し、細胞を、肝細胞(ALB、AFP及びCYP3A7)及び胆管細胞(CK19、Sox9及びCFTR)系統を示す遺伝子の発現について分析した。値は、TBPに関連して決定され、1に設定されるGSIを用いて処理された集団における発現のレベルに対する変化倍数として示される。
【0060】
図17】hPSC由来胆管細胞が、in vivoで管様構造を形成することを示す図である。(a~b)HGF、EGF及びTGFb1を含有する培地においてOP9間質細胞と9日間共培養された25日目肝芽細胞由来細胞の移植8週間後のMatrigelプラグにおける胆管細胞移植片の組織学的分析。共培養後、細胞を解離し、免疫不全NOD/重症複合免疫不全/IL2rg-/-(NSG)マウスの乳房脂肪パッドに移植した(レシピエントあたり10個)。乳房脂肪パッドにおいて、低倍率像(a)及び高倍率像(b)(H&E染色)で複数の管構造が可視化された。(c~d)移植後に乳房脂肪パッドにおいて発達したhESC由来管構造におけるRFP陽性細胞を検出するための免疫染色。これらの研究のために、ROSA遺伝子座からRFPを発現するHES2-RFP hESCから胆管細胞を作製した。OP9間質細胞とともに9日共培養した後に生成した胆管細胞を、NSGマウスの乳房脂肪パッド中に移植した。移植の8週間後に発達した移植片を、免疫組織化学によってRFP+細胞の存在について分析した。すべての管構造内でRFP陽性細胞が検出され、細胞がヒト起源でありHES2-RFP細胞に由来することが確認された。低倍率(c)及び高倍率(d)の像において、RFP+構造が見えた。
【0061】
図18】3次元ゲルにおいて生成したhPSC由来嚢胞構造が、機能的CFTRタンパク質を含有することを示す図である。(a)H9(hESC)由来及びY2-1(iPSC)由来胆管細胞から生成した、カルセイン緑色標識された、フォルスコリン/IBMX(F/I)刺激された嚢胞構造の代表的な共焦点顕微鏡像。像は、F/I刺激の24時間後に撮られた。スケールバー500μm(b)CFTR阻害剤の存在下又は非存在下でのF/I刺激の24時間後の嚢胞膨潤の程度の定量化。F/I刺激された嚢胞膨潤を、速度イメージングソフトウェアを使用して定量化した。嚢胞の全体の大きさは、F/I刺激の前のものに対して正規化されている。値は、3回の個々の実験に由来する。P<0.05、**、P<0.01、***P<0.001(スチューデントのt検定;n=3)。
【0062】
図19】嚢胞性線維症患者iPSCからの胆管細胞の作製を示す図である。(a)フォルスコリンの存在下又は非存在下での3次元ゲル培養44日目の、CFTRが欠失したF508 iPS細胞(CF-iPSC)に由来する胆管細胞様細胞の位相差画像。CF-iPSC由来肝芽細胞及び図14aに示されるプロトコールを使用して、キメラ肝芽細胞/OP9凝集体を作製した。コラーゲン/Matrigel培養に包埋した後に、2週間の培養期間の最初の1種間のフォルスコリンの添加によって凝集体からの嚢胞形成を誘導した(左)。フォルスコリン刺激がない場合には、CF-iPSC由来胆管細胞は、管腔嚢胞よりも分岐管構造を形成した(右)。(b)培養7及び14日目のCF-iPSC及び正常iPSC(Y2-1)由来胆管細胞から発生した嚢胞構造数の定量化。CF-iPSC由来胆管細胞を、2週間の培養期間の最初の1週間の間、フォルスコリンの存在下又は非存在下で3次元ゲル条件において維持した(左のグラフ)。正常なiPS細胞由来胆管細胞を、2週間の培養期間の最初の1週間の間、CFTR阻害剤の存在下又は非存在下で維持した(右のグラフ)。フォルスコリンの添加は、培養7及び14日目の両方で、CF-iPSC由来胆管細胞から発生した嚢胞構造数を増大させた(左のグラフ)。正常なiPSC由来胆管細胞へのCFTR阻害剤の添加は、嚢胞形成を遅延させた(右のグラフ)。(c)44日目での正常なiPSC-(上のパネル)及びCF-iPSC-(下のパネル)胆管細胞に由来する嚢胞の組織学的分析。両胆管細胞集団を、2週間の培養期間の最初の1週間の間、フォルスコリンの存在下で培養した。正常iPSC由来胆管細胞へのフォルスコリンの添加は、大きな管腔嚢胞の形成を誘導した(上のパネル)。CF-iPSC由来嚢胞は、小さく、しばしば、内部隔壁を含有していた(下のパネル)。
【0063】
図20】低分子矯正剤(correctors)VX-809及びC4での処理によるCF-iPSC由来胆管細胞におけるCFTR機能の回復を示す図である。ウエスタンブロット解析は、VX-809及びC4で処理したCF-iPSC由来胆管細胞におけるCFTR(バンドC)の成熟複合体グリコシル化形態の蓄積を示す。補正されていない細胞では、タンパク質の突然変異体型(バンドB)が優勢であった。陽性対照としてヒト気管支上皮細胞(HBE)を使用した。(b)2人の個別の患者(997CFTR del及びC1 CFTR del-その両方ともδF508突然変異を保持する)から得たCF-iPSCから生成した、カルセイン緑色標識され、フォルスコリン/IBMX(F/I)刺激された嚢胞構造の代表的な共焦点顕微鏡像。像は、F/I刺激の24時間後に撮った。スケールバー500μm(c)CFTR阻害剤の存在下又は非存在下でのF/I刺激の24時間後にhPSC-嚢胞において観察された膨潤の程度の定量化。速度イメージングソフトウェアを使用して、F/I刺激された嚢胞膨潤を定量化した。嚢胞の全体の大きさは、3回の個別の実験から得られたF/I刺激の前のものに対して正規化されている。P<0.05、**、P<0.01、***P<0.001(スチューデントのt検定;n=3)。
【0064】
図21】OP9との共培養の9日後の肝芽細胞由来集団におけるALB+及びCK19+細胞の割合を示す細胞内フローサイトメトリー分析。細胞を、GSIの存在下又は非存在下において、HGF、EGF及びTGFb1を含有する培地で培養した。Ctrlは、アイソタイプ対照を示す。
【0065】
図22】他のhPSCからの肝特定化及び肝芽細胞の分化を示す図である。図14aにおいて示されるように維持された、HES2及びY2-1 iPS細胞由来肝芽細胞における示された遺伝子の発現を示すRT-qPCR分析。培養7、13、19及び25日目に、示された遺伝子の発現を分析した。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される、胎児肝臓における発現に対する変化倍数として示される。AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓。
【0066】
図23】hPSC由来胆管細胞からの嚢胞構造の作製のために使用された3次元ゲルを示す図である。(a)25日目hPSC由来肝芽細胞及びOP9細胞(GFP+)からなるキメラ凝集体を作製するために使用された分化プロトコールの模式図。25日目肝芽細胞を解離し、低クラスター培養皿中4:1の比でOP9細胞と共培養した。キメラ凝集体を1型コラーゲン(1.2mg/ml)及びMatrigel(20%)の混合物からなるゲル中に包埋した。(b)HGF、EGF及びTGFb1を含有する培地における培養44日目にOP9の存在下又は非存在下でゲルにおいて発達した構造のRT-qPCRベースの発現分析。Notch標的遺伝子の発現は、OP9の存在下で有意に上方制御された。値は、TBPに関連して決定され、1に設定される、OP9の非存在下で培養された細胞における発現に対する変化倍数として示されている。(c)培養44日目のGSIの存在下(右のパネル)及び非存在下(左のパネル)でOP9細胞とともに培養されたH9由来胆管細胞から発達した嚢胞構造の組織学的分析(H&E染色)。(d)OP9の存在下又は非存在下で培養された正常iPSC由来胆管細胞から生成した構造におけるCFTRタンパク質(バンドC)の成熟複合体グリコシル化形態の存在を示すウエスタンブロット解析。未分化の正常iPSCを陰性対照として使用した。(e)OP9の存在下又は非存在下で培養された正常iPSC由来胆管細胞から生成した構造におけるCFTRのRT-qPCRベースの発現分析。培養44日目に細胞を分析した。値は、TBPに関連して決定され、1として設定される、caco-2細胞(腸結腸癌腫細胞系統)において検出された発現値に対する変化倍数として示されている。P<0.05、**、P<0.01、***P<0.001(スチューデントのt検定;n=3)。
【0067】
図24】嚢胞性線維症患者iPSCからの胚体内胚葉及び肝芽細胞の作製を示す図である。単層培養7日目のCF-iPS細胞(C1 del CFTR)からのCXCR4+、CKIT+及びEPCAM+集団の発達を示すフローサイトメトリー分析。(b)図14aに概説される培養条件で維持された、CF-iPSC由来肝芽細胞集団における示された遺伝子の発現を示すRT-qPCR分析。培養7、13、19及び25日目に、示された遺伝子の発現を分析した。値は、TBPに関連して決定され、1として示される、胎児肝臓における発現に対する変化倍数として示される。AL:成体肝臓、FL:胎児肝臓。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本明細書において記載される一連のステップによる多能性幹細胞(PSC)からの肝細胞及び胆管細胞の効率的な作製のための、及び代謝的に機能的な肝細胞及び/又は胆管細胞の作製のための、頑強な信頼のおけるプラットフォームが本明細書において記載される。例えば、任意選択で、特定の細胞集団の増殖及び/又は特定の運命を増大する1種又は複数のステップと組み合わせた、例えば、FGFアゴニスト誘導及びBMP4アゴニスト誘導と組み合わせた、凝集及びcAMPシグナル伝達の活性化を誘導する1種又は複数の長期nodal(例えば、アクチビン)シグナル伝達処理は、胚葉体において、又は単層から誘導された胚体内胚葉からの、例えば、増殖した肝芽細胞を含めた肝細胞及び胆管細胞系細胞並びに/又はさらなる操作を用いて、機能的な、成熟した肝細胞及び胆管細胞の再現可能な作製を可能にするということが実証される。
【0069】
本開示の一態様は、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団から肝細胞又は肝芽細胞、肝細胞及び/若しくは胆管細胞などの胆管細胞系細胞を製造する方法を含み、方法は、(a)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片の組合せを含む特定化培地と接触させて、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得ることによって、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を特定化して、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆体を含む細胞集団を得るステップと、(b)細胞集団の肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞の成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導して、肝細胞の増殖した集団並びに/又は肝細胞及び/又は胆管細胞を含む集団を得るステップであって、成熟を誘導するステップは、細胞集団の凝集体を作製するステップを含む、ステップとを含む。
【0070】
凝集は、成熟にとって、また成熟を促進するために重要であると本明細書において実証される。
【0071】
一実施形態では、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞は、肝芽細胞及び/又は未熟肝細胞及び/又は未熟胆管細胞を含む。
【0072】
用語「接触させること」(例えば、内胚葉細胞集団を成分(単数又は複数)と接触させること)は、成分(単数又は複数)及び細胞をin vitroで一緒にインキュベートすること(例えば、培養中の細胞に化合物を添加すること)を含むものとし、接触させるステップは、任意の適した方法で実施され得る。例えば、細胞は、接着培養において、又は懸濁培養において処理され得、成分は、時間的に、実質的に同時に(例えば、カクテル中で一緒に)又は逐次(例えば、第1の成分の添加から1時間、1日又はそれ以上内に)添加され得る。細胞はまた、増殖因子若しくは他の分化剤などの別の薬剤又は細胞を安定化する、若しくは細胞をさらに分化させる環境と接触され得、細胞を、例えば、実施例にさらに記載されるような多能性(及び/又は分化した)集団を培養するための当業界公知の条件下で培養することを含む。
【0073】
用語「内胚葉」及び「胚体内胚葉」とは、本明細書において、極めて初期の胚における3種の原始生殖細胞層のうちの1種を指す(他の2種の生殖細胞層は、中胚葉及び外胚葉である)。内胚葉は、3層のうち最内部である。内胚葉細胞は分化して、まず、胚消化管を、次いで、食道、胃、腸、直腸、結腸、咽頭嚢派生扁桃腺、甲状腺、胸腺、副甲状腺、肺、肝臓、胆嚢及び膵臓を含む派生した組織を生じる。
【0074】
「誘導された内胚葉細胞集団」とは、本明細書において、例えば、図1aに示されるような「胚体内胚葉誘導」段階に対応する内胚葉細胞の集団を指す。この集団は、例えば、アクチビンなどのnodalアゴニストに曝露された胚葉体(embyroid bodies)(EB)から、場合により、nodalアゴニスト及びWnt3aなどのwnt/β-カテニンアゴニスト又はCHIR-99021(Stemolecule(商標)CHIR99021 Stemgent)、6-ブロモ-インディルビン-3’-オキシム(BIO)(Cayman Chemical(カタログ:13123))若しくはStemgent(カタログ:04003)製のStemolecule(商標)BIOなどのGSK-3選択的阻害剤に曝露されたEBから調製され得る。或いは、誘導された内胚葉細胞集団は、単層に増殖された細胞から調製され得る。誘導された内胚葉細胞集団は、例えば、表面マーカーCXCR4、CKIT及びEPCAM並びに転写因子SOX17及びFOXA2などの1種又は複数のマーカーについての、フローサイトメトリー分析及び分子分析によって同定され得る。誘導された内胚葉細胞集団はまた、例えば、CXCR4及びCKIT又はCXCR4及びEPCAMを同時発現する集団の少なくとも70、80、90若しくは95%又は70、80、90若しくは95%超によって同定され得る。誘導された内胚葉細胞集団はまた、例えば、SOX17及び/又はFOXA2を発現する集団の70、80、90又は95%を超える集団によって同定され得る。誘導された内胚葉細胞集団は、例えば、2次元(単層)又は3次元(胚葉体又は凝集体の他の形態)形式であり得る。誘導された内胚葉集団は、例えば、実施例1において実証されるように、hESC並びに誘導された多能性細胞(iPSC)に由来し得る。
【0075】
誘導された内胚葉細胞集団は、例えば、nodalアゴニストで長期間処理され、長期nodalアゴニスト処理され、誘導された内胚葉細胞集団を提供する。
【0076】
実施例1に記載され、図3aに示されるように、6日目細胞(方法が単層誘導を含む場合には5日目)を、FGF/BMP4を用いる特定化に先立ってアクチビンにおいてさらに2日間培養することは、アクチビン(例えば、nodalアゴニストの一例)においてさらに2日間培養されていない細胞と比較して、12日目に測定されるように高い割合のSOX17+FOXA2+細胞をもたらす。このステップはまた、本明細書において、「長期アクチビン」処理とも呼ばれ、「長期nodalアゴニスト」処理の一例である。
【0077】
「長期nodalアゴニスト処理され、誘導された内胚葉細胞集団(extended nodal agonist treated induced endoderm cell population)」とは、本明細書において、アクチビンなどのnodalアゴニストで長期間、例えば、さらなる約1~約4又は約1、2、3若しくは4日処理された誘導された内胚葉細胞集団を指す(例えば、アゴニストでの処理を含み得る内胚葉誘導相に加えたものである「長期間」)。本明細書において実証されるような長期nodalアゴニスト処理は、培養26日目にHEX、AFP、ALB及びHNF4αを含めた肝前駆細胞(肝芽細胞)発達を示す遺伝子の高レベルの発現をもたらした(図3dに示されるように)。長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団は、胚葉体(EB)において内胚葉細胞を誘導することによって、又は単層にある内胚葉細胞を誘導することによって得られ、ここで、誘導された内胚葉集団は、nodalアゴニスト、例えば、アクチビンの存在下で、長期間培養され、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団を製造する。
【0078】
長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団は、一実施形態では、胚葉体(EB)において内胚葉細胞を誘導することによって得られる。別の実施形態では、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団は、単層にある内胚葉細胞を誘導することによって得られる。各場合において、誘導された内胚葉集団は、nodalアゴニスト、例えば、アクチビンの存在下で、長期間培養される。
【0079】
例えば、誘導された内胚葉細胞集団がEBから誘導される実施形態では、任意選択で、誘導された内胚葉集団は、続いて、解離される。本明細書において、「解離された細胞」又は「解離された細胞集団」とは、3次元凝集体ではない、例えば、物理的に互いに分離している細胞を指す。解離された細胞は、細胞のクラスター又はクランプを指す「細胞凝集体」とは区別される。
【0080】
一実施形態では、誘導された内胚葉集団は、少なくとも80%、85%、90%のCXCR4+及びcKIT+陽性細胞、並びに/又は少なくとも70%、75%、80%のSOX17+細胞を含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、誘導された内胚葉細胞集団(及び/又は長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団)は、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から製造される。多能性幹細胞は、任意選択で、ヒトESC(hESC)又はヒトiPSC(hiPSC)である。
【0082】
用語「多能性」とは、本明細書において、種々の条件下で、2種以上の分化した細胞種に分化する能力、例えば、3種の生殖細胞層に特徴的な細胞種に分化する能力を有する細胞を指す。多能性細胞は、例えば、ヌードマウス奇形腫形成アッセイを使用して2種以上の細胞種に分化するその能力によって特性決定される。多能性はまた、胚性幹(ES)細胞マーカーの発現によって実証される。
【0083】
用語「前駆体細胞」とは、分化によって生じ得る、細胞に関連して十分に分化した細胞よりも、発達経路又は進行に沿ってより早い段階である細胞表現型を有する細胞を指す。前駆体細胞は、発達経路及び細胞が発達し、分化する環境に応じて、複数の別個の分化した細胞種又は単一の分化した細胞種を生じさせ得る。
【0084】
用語「幹細胞」とは、本明細書において、増殖し、自己複製し、順に、分化した又は分化可能な娘細胞を生じさせ得る、多数の母細胞を生成する能力を有するより多くの前駆体細胞を生じさせ得る未分化の細胞を指す。娘細胞は、例えば、増殖し、親の発達能力を有する1種又は複数の細胞を保持しながら、1種又は複数の成熟細胞種に続いて分化する後代を製造するよう誘導され得る。
【0085】
用語「胚幹細胞」は、胚盤胞(embryonic blastocyst)の内細胞塊の多能性幹細胞を指すものとして使用される(例えば、米国特許第5,843,780号、同6,200,806号を参照のこと)。このような細胞はまた、体細胞核移植に由来する胚盤胞の内細胞塊から得ることもできる(例えば、米国特許第5,945,577号、同5,994,619号、同6,235,970号を参照のこと)。胚幹細胞の示差的な特徴が、胚幹細胞表現型を規定する。したがって、細胞が、他の細胞から区別できるような1種又は複数の胚幹細胞固有の特徴を有する場合、胚幹細胞の表現型を有する。例示的な示差的な胚幹細胞の特徴として、制限するものではないが、遺伝子発現プロファイル、増殖能、分化能、核型、特定の培養条件に対する反応性などが挙げられる。
【0086】
一実施形態では、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団から肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法は、(a)誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって、長期nodalアゴニスト処理された内胚葉細胞集団を、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団に特定化するステップを含む。
【0087】
一実施形態では、特定化ステップは、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団を、FGFアゴニスト及びBMP4を含む特定化培地と接触させるステップを含む。FGFアゴニストは、例えば、bFGF、FGF10、FGF2又はFGF4、その活性断片及び/又は組合せであり得る。組合せは、細胞に、例えば、逐次添加され得る。
【0088】
一実施形態では、特定化ステップは、まず、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団を、FGF10及びBMP4を含む特定化培地と約40~約60時間、例えば、約40、42、44、46、48、50、52、54、56、58又は約60時間接触させるステップ、次いで、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団を、bFGF及びBMP4を含む特定化培地と、約4~約7日間、例えば、約4、5、6又は約7日間接触させるステップとを含む。
【0089】
一実施形態では、特定化培地は、1%vol/vol B27栄養補助剤(Invitrogen:A11576SA)、アスコルビン酸、MTG、FGF10(50ng/ml)(例えば、8日目~10日目、bFGF(20ng/ml)(例えば、10日目~14日目)及びBMP4(50ng/ml)を補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を含む。
【0090】
任意選択で、内胚葉細胞集団は、FGF10及びBMP4と1~3日間、任意選択で、2日間接触され、その後、bFGF及びBMP4と2~6日間、任意選択で、3~5日間、任意選択で、4日間接触される。いくつかの実施形態では、内胚葉細胞集団は、BMP4及びFGF10又はbFGFを含む細胞培養培地でインキュベートされる。任意選択で、内胚葉細胞集団は、1%vol/vol B27、アスコルビン酸、モノチオグリセロール、BMP4及びFGF10又はbFGFを補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を含む細胞培養培地においてインキュベートされる。
【0091】
いくつかの実施形態では、内胚葉細胞集団は、解離され、次いで、単層細胞は、FGF及びBMP4アゴニストと接触される。
【0092】
他の実施形態では、単層細胞は、アクチビンと、1~4日間、任意選択で、1、2、3又は4日間接触され、次いで、FGF及びBMP4などのBMP4アゴニストと接触される。任意選択で、単層細胞は、アクチビンAを含む細胞培養培地、任意選択で、bFGF、アクチビンA及びBMP4を補給したStemPRO-34を含む培地中でインキュベートされる。
【0093】
さらなる実施形態では、特定化ステップは、細胞を、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を促進する1種又は複数の因子を含む特定化培地と接触させることを含む。
【0094】
用語「特定化培地」とは、本明細書において、細胞又は細胞集団の特定化を促進するか、又は容易にするために使用される培養培地を指す。肝特定化培地の一例は、1%vol/vol B27(Invitrogen:A11576SA)及びアスコルビン酸、MTG、BMP4アゴニストと、FGF10、bFGF、FGF4及びFGF2から選択される少なくとも1種のFGFアゴニストを補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)とを含む。いくつかの段階については、いくつかの実施形態では、例えば、肝細胞及び胆管細胞系統の両方を特定化するために、同一特定化培地が使用され得る。他の段階では、他の実施形態では、特定化培地は、肝細胞及び/又は胆管細胞発達の特定化を促進する1種又は複数の因子、例えば、notchアンタゴニスト又はnotchアゴニストを含む。用語「特定化すること」とは、本明細書において、特定の細胞の運命に向かわせるプロセスを意味し、その前には、細胞種はまだ決定されておらず、細胞が特定の運命に向けて有するいかなる傾向も、逆転され、別の運命に変換され得る。特定化は、細胞の運命が通常の条件下では変更され得ない状態を誘導する。
【0095】
例えば、誘導された内胚葉の、肝臓への運命に沿った特定化は、例えば、実施例9において実証されるように、例えば、Tbx3 ALB、AFP、CK19、Sox9、NHF6β及びNotch2を含めた肝細胞及び/又は胆管細胞によって発現される遺伝子を測定することによって確認され得る。例えば、Notch2発現は、HGF/DEX/OSM処理肝芽細胞では上方制御されることが実証されている。Notch2タンパク質及び/又は発現の検出は、細胞集団が胆管細胞特定化され得ることを確認するために使用され得る、例えば、Notch2は、実施例9に記載されるように検出され得る。
【0096】
細胞との関連で、用語「分化した」又は「分化する」は、相対的な用語であり、「分化した細胞」は、比較されている細胞よりも発達経路をさらに先に進んだ細胞である。したがって、幹細胞は、系統によって制限された前駆体細胞(誘導された内胚葉前駆体細胞など)に分化し得、これは、順に、その経路をさらに進んだ他の種類の前駆体細胞に分化し、次いで、特定の組織種において特徴的な役割を果たし、さらに増殖する能力を保持する場合も保持しない場合もある最終段階の機能的細胞に成熟し得る。用語「分化」とは、本明細書において、誘導された内胚葉集団及び特定化された細胞集団、例えば、肝細胞又は胆管細胞特定化細胞集団を製造するためのステップを含む。
【0097】
別の実施形態では、凝集体が、少なくとも70%、80%、85%又は少なくとも90%のアルブミン陽性細胞を含む細胞集団から生成し、別の実施形態では、凝集体は、24、25、26、27又は28日培養した後に生成する(例えば、PSCが得られた日が0日目と考えられる場合に)。
【0098】
任意選択で、凝集体は、酵素処理及び/又は手作業での解離によって生成する。いくつかの実施形態では、凝集体は、コラゲナーゼ及び/又はTrypleLEを用いて細胞を解離することによって生成する。いくつかの実施形態では、細胞は続いて、超低クラスター皿で培養される。他の実施形態では、単層培養は、ピペッティングによって機械的にばらばらにしてもよいし、又は酵素的に解離させて、低接着プレートでのインキュベーションを用いて、又は細胞の集団を振盪することによって凝集させてもよい。任意選択で、Aggrewellを使用してもよい。
【0099】
一実施形態では、細胞(例えば、単層及び凝集前の細胞)が、マトリックスコーティングされたプレートで、任意選択で、Matrigelコーティングされたプレートで増殖される。肝芽細胞、肝細胞及び/又は胆管細胞の接着を支持する他のマトリックスコーティングされたプレート、例えば、ラミニン、フィブロネクチン及びコラーゲンコーティングされたプレートも使用され得る。図9fは、例えば、いくつかの異なるマトリックスコーティング基板を使用する誘導26日目でのALB発現を実証する。
【0100】
成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、1種又は複数のサブステップを含んでいてもよい。
【0101】
さらなる実施形態では、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞及び/又は凝集体を含む細胞集団は、肝細胞増殖因子(HGF)、デキサメタゾン(DEX)及び/又はオンコスタチンM(OSM)及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片の存在下で培養される。例えば、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団は、凝集前及び/又は凝集後に、HGF、DEX及び/又はOSMを含む成熟培地中で約10、11、12、13又は14日培養してもよく、凝集体は、HGF、DEX及び/又はOSMを含む成熟培地中で約6、7、8、9又は10日間培養してもよい。例えば、約10ng/mL HGFの添加は、凝集体の生存を促進する。
【0102】
一実施形態では、成熟を誘導するステップ並びに任意選択で、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、凝集体の細胞内のcAMP経路を活性化して肝細胞及び胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への分化及び/又は成熟を誘導するステップをさらに含む。
【0103】
例えば、単層誘導された細胞については25日目での、EB誘導された細胞については26日目での長期nodalアゴニスト処理及び細胞の凝集は、例えば、cAMPシグナル伝達に応答できる集団をもたらす。本明細書において示されるように、cAMPの活性化は、CYP発現及び肝細胞成熟を増大する。
【0104】
別の実施形態では、cAMP経路を活性化するステップは、凝集体を、8-ブロモアデノシン-3’5”-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、ジブチリル-cAMP、アデノシン-3’,5’-環状モノホスホロチオアート、Sp-異性体(Sp-cAMPS)及び/又は8-ブロモアデノシン-3’,5’-環状モノホスホロチオアート、Sp-異性体(Sp-8-Br-cAMPS))などのcAMPアゴニスト類似体及び/又はコレラ毒素、フォルスコリン、カフェイン、テオフィリン及び百日咳毒素などの任意の他のcAMPアゴニストと接触させることを含む。実験は、例えば、Sp-8-Br-cAMP(Biolog:カタログ番号:B002CAS番号:[127634-20-2])、8-Br-cAMP及びフォルスコリン(FSK)(Sigma:66575-29-9)を使用して実施された。例えば、フォルスコリン(FSK)(Sigma:66575-29-9)+XAV939+PD0325901を含む組合せは、CYP発現を増大し、肝細胞前駆細胞の肝細胞への成熟を誘導するのに有効であった。本明細書において、「cAMPアゴニスト」として、cAMP並びにcAMPを活性化するコレラ毒素、フォルスコリン、カフェイン、テオフィリン及び百日咳毒素などの分子を活性化するcAMP、cAMP類似体が挙げられる。いくつかの実施形態ではホスホジエステラーゼ阻害剤(ホスホジエステラーゼはcAMP阻害剤である)であるIBMXも、例えば、フォルスコリンと組み合わせて使用され得る。
【0105】
例えば、10ng/ml HGF(20ng/mlから低減した)の添加が、凝集体の生存を促進するが、OSMを維持することは、第1相CYP酵素、特に、CYP3A4の発現の誘導に対して阻害効果を有することがわかっている。したがって、いくつかの実施形態では、凝集体は、OSMの非存在下でcAMP類似体及び/又はアゴニストとともに培養される。
【0106】
用語「成熟」とは、本明細書において、細胞(例えば、肝芽細胞)にとって、より特定化されたようになる及び/又は十分に機能的な状態、例えば、in vivoでのその機能的状態を得るのに必要であるプロセスを意味する。一実施形態では、未熟な肝細胞又は肝前駆細胞が、成熟した、機能的肝細胞になるプロセスが、成熟と呼ばれる。
【0107】
図1aは、「肝成熟A」を指し、図14aは、肝芽細胞分化を指す。両場合において言及される細胞集団は、例えば、DEXの存在下で、任意選択で、HGF及びOSM及び/又はcAMPと組み合わせて培養され続けた場合に肝細胞を製造し得る、又はEGF、TGB1 HGF及びEGFの存在下で、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞などのNotchアゴニスト(例えば、notchシグナルドナー)と組み合わせて培養される場合に胆管細胞を製造し得る肝芽細胞集団である。
【0108】
用語「成熟培地」とは、本明細書において、細胞又は細胞集団の成熟を促進するか、又は容易にするために使用される培養培地を指し、成熟因子並びに細胞増殖誘導因子及び系統誘導因子を含み得る。肝細胞成熟を有するための成熟培地の一例として、1%vol/vol B27 (Invitrogen:A11576SA)並びにアスコルビン酸、グルタミン、MTG及び任意選択で、肝細胞増殖因子(HGF)、デキサメタゾン(Dex)及び/又はオンコスタチンMを補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)が挙げられる。肝細胞を誘導するための成熟培地の別の例として、EGFを含まない肝細胞培養培地(HCM)(Lonza:CC-4182)が挙げられる。成熟培地はまた、任意選択で、例えば、肝細胞系細胞の増殖及びその成熟を誘導するcAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストも含む。成熟培地は、肝細胞及び/又は胆管細胞発達、さらなる系統特定化及び/又は増殖及び/又はさらなる系統選択を促進する因子を含み得る。例えば、Wntアンタゴニストは、単独で又はTGFβアンタゴニスト及び/若しくはMEK/Erkアンタゴニストと組み合わせて、肝細胞成熟を促進する。Notchアゴニストは、例えば、本明細書において、胆管細胞系統発達を誘導すると実証され、胆管細胞が望まれる場合に添加される。同様に、Notchアンタゴニストは、肝細胞系統を促進し、肝細胞が望まれる場合に、例えば、胆管細胞発達を阻害するために添加され得る。
【0109】
種々の成熟培地が逐次使用され得る(例えば、単層成熟培地(例えば、凝集前に使用される)、凝集体成熟培地(例えば、凝集後に使用される);例えば、肝細胞発達を促進する因子を含む肝細胞成熟培地及び例えば、胆管細胞発達を促進する胆管細胞成熟培地。
【0110】
例えば、一実施形態では、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニスト及びDEX、任意選択で、HGFを含む成熟培地は、HGF、DEX及びOSMを含む成熟培地で、例えば、約10、11、12、13又は14日間、プレ凝集体集団を培養した後に凝集体に添加される。
【0111】
用語「肝細胞」とは、本明細書において、肝臓実質細胞を指す。肝細胞は、肝臓の細胞質塊の大部分を構成し、タンパク質合成及び貯蔵、炭水化物代謝、コレステロール、胆汁酸塩及びリン脂質合成及び解毒、外因性及び内因性物質の修飾及び排泄に関与している。
【0112】
用語「初代培養肝細胞」とは、本明細書において、生存組織(例えば、生検材料)から直接採取され、in vitroで増殖のために確立された肝細胞である。
【0113】
用語「肝芽細胞」とは、本明細書において、肝臓及び胆管細胞系統の細胞、例えば、肝細胞又は胆管細胞に分化する能力を有する前駆体細胞を指す。肝芽細胞は、例えば、未熟な肝細胞及び未熟な胆管細胞(例えば、特定化された細胞の運命を有し、肝細胞のみ又は胆管細胞のみに成熟し得る細胞)を含み得る肝細胞及び胆管細胞前駆細胞のサブセットである。いくつかの実施形態では、肝芽細胞は、Hex、HNF4、α-フェトプロテイン(AFP)及びアルブミン(ALB)などのマーカーの発現によって規定される。例えば、肝芽細胞は、例えば、28日目肝芽細胞含有培養物においてnotchシグナル伝達が活性化される場合に、胆管細胞(例えば、CK19+細胞)を生じさせ得る。用語「肝細胞前駆体」とは、本明細書において、例えば、アルブミン陽性である、及び/又はCYP酵素を発現する、機能的肝細胞に分化する能力を有する細胞を意味する。
【0114】
用語「胆管細胞前駆細胞」とは、本明細書において、例えば、CK19陽性である、及び/又はCFTRを発現する、機能的胆管細胞に分化する能力を有する細胞を意味する。
【0115】
用語「未熟な肝細胞」とは、本明細書において、アルブミンを発現するが、適当なレベルの機能的CYP3A4及び/又はCYP1A2酵素を発現しない肝細胞系細胞を指す。いくつかの実施形態では、未熟な肝細胞は、成熟肝細胞の機能性を獲得するには成熟を経なければならない。いくつかの実施形態では、未熟な肝細胞は、Hex、α-フェトプロテイン及びアルブミンなどのマーカーの発現によって規定される。
【0116】
「成熟肝細胞」とは、本明細書において、CYP酵素、例えば、CYP3A4及びCYP1A2並びにアルブミンを発現する肝細胞系細胞を意味する。任意選択で、成熟肝細胞は、機能的又は測定可能なレベルの、例えば、成体細胞に匹敵する、第I相及び第II相薬物代謝酵素などの代謝酵素を含む。第I相薬物代謝酵素の例として、それだけには限らないが、チトクロムP450 CYP1A2、CYP3A4及びCYP2B6が挙げられる。第II相薬物代謝酵素の例として、それだけには限らないが、アリールアミンN-アセチルトランスフェラーゼNAT1及びNAT2及びUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼUGT1A1が挙げられる。例えば、成熟肝細胞は、代謝的に活性な肝細胞であり得る。ヨードシアニングリーン(ICG)の細胞取り込みは、成体肝細胞に特徴的であると考えられ29、肝機能を評価するための試験基質として臨床的に使用される30。成熟した肝細胞は、例えば、ICG陽性染色肝細胞である。肝細胞の集団では、肝細胞の集団は、成熟した50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上の肝細胞が、ICGであると考えられ得る。成熟した肝細胞は、「未熟な肝細胞」と比較して増大したアルブミンを発現し、例えば、未熟な肝細胞よりも少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%又は200%多いアルブミンを発現する。
【0117】
一実施形態では、肝細胞は、機能的肝細胞である。
【0118】
用語「機能的肝細胞」とは、本明細書において、成体肝細胞(例えば、成熟した肝細胞)及び/又は、例えば、アルブミン及び/又は出発細胞と比較して増大したアルブミンを発現する、肝臓への運命に向かわされる、出発細胞よりも分化した(例えば、内胚葉集団細胞、肝細胞前駆体又は未熟な肝細胞と比較して)未熟な肝細胞の1種又は複数の特徴を示す肝細胞を指す。任意選択で、機能的肝細胞は、成熟した肝細胞であり、機能的な、又は測定可能なレベルの、例えば、成体細胞に匹敵する、第I相及び第II相薬物代謝酵素などの代謝酵素を含む。例えば、機能的肝細胞は、代謝的に活性な肝細胞であり得る。ヨードシアニングリーン(ICG)の細胞取り込みは、成体肝細胞に特徴的であると考えられ29、肝機能を評価するための試験基質として臨床的に使用される30。機能的肝細胞は、例えば、ICG陽性染色肝細胞である。肝細胞の集団では、肝細胞の集団は、例えば、肝細胞の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上が、ICG陽性であり、肝細胞の機能的集団と考えられ得る。別の例では、機能的肝細胞は、アルブミン分泌性肝細胞であり、肝細胞の集団は、例えば、肝細胞の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上が、アルブミン分泌性である場合に、肝細胞の機能的集団と考えられ得る。
【0119】
実施形態では、肝細胞は、任意選択で、機能的肝細は、肝細胞及び/若しくは胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団並びに/又は長期nodalアゴニスト処理されていない誘導された内胚葉細胞集団から製造され、凝集及び/若しくはcAMPシグナル伝達誘導を伴わずに製造された肝細胞と比較して、ALB、CPS1、G6P、TDO、CYP2C9、CYP2D6、CYP7A1、CYP3A7、CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、NAT2及びUGT1A1からなる群から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種又はそれ以上の遺伝子又はタンパク質の増大した発現を含む。他の実施形態では、肝細胞、任意選択で、機能的肝細胞の少なくとも40、50、60、70、80又は90%が、ASGPR-1+細胞である。
【0120】
いくつかの実施形態では、機能的肝細胞は、初代培養成熟肝細胞で見られるレベルに匹敵するか、又はそれよりも高い、CYP1A2、CYP2B6、CYP3A4、CYP2C9及び/又はCYP2D6の核酸又はタンパク質レベル、任意選択で、少なくとも1.1、2、3、4又は5倍又は1.1倍から5倍の間の任意の0.1増分増大している、任意選択で、少なくとも50%~100%、75%~125%、85%~115%、90%~110%又は95%~105%増大しているレベルを示す。例えば、初代肝細胞で見られる発現の1.15倍~6.1倍(例えば、CYP1A2 6.1倍(610%)、CYP3A4 13.2倍(1320%)、CYP 2B6 2倍(200%)、CYP2C9 1.52倍152%、UGT1A1 2倍(200%)、CYP2D6 1.15倍(115%))の増大した発現。いくつかの実施形態では、肝細胞は、同様の段階の初代肝細胞で見られるレベルに匹敵するか、又はそれより高いALB、HNF4、AFP、CPS1、G6P、TDO1、NAT1、NAT2及び/又はUGT1A1の核酸又はタンパク質レベル、任意選択で、初代肝細胞で見られるレベルの少なくとも50%~100%、75%~125%、85%~115%、90%~110%又は95%~105%であるレベルを示す。
【0121】
他の実施形態では、機能的肝細胞は、肝芽細胞及び/又は未熟な肝細胞におけるものよりも高いCYP1A2、CYP2B6、CYP3A4、CYP2C9及び/又はCYP2D6の核酸又はタンパク質レベル、任意選択で、初代肝細胞で見られるレベルの少なくとも110%、125%、150%、175%、200%、300%、400%又は500%であるレベルを示す。いくつかの実施形態では、機能的肝細胞は、肝芽細胞及び/又は未熟な肝細胞で見られるレベルよりも高いALB、CPS1、G6P、TDO1、NAT1、NAT2及び/又はUGT1A1の核酸又はタンパク質レベル、任意選択で、初代肝細胞で見られるレベルの少なくとも110%、125%、150%、175%、200%、300%、400%又は500%であるレベルを示す。
【0122】
他の実施形態では、機能的肝細胞は、受容体アシアロ糖タンパク質受容体1(ASGPR1)を発現する。他の実施形態では、肝細胞、任意選択で、機能的肝細胞の少なくとも40、50、60、70、80又は90%は、ASGPR-1+細胞である。
【0123】
さらなる実施形態では、機能的肝細胞は、in vitroでCYP1A2活性を示す。任意選択で、機能的肝細胞は、初代肝細胞で見られるレベルに匹敵するか、又はそれより高いCYP1A2活性を、任意選択で、初代肝細胞で見られるレベルの少なくとも50%~100%、75%~125%、85%~115%、90%~110%又は95%~105%であるレベルを示す。いくつかの実施形態では、CYP1A2活性は、細胞をフェナセチンとともにインキュベートすること及び細胞におけるO-脱エチル化代謝産物蓄積の生成をモニタリングすることによって測定される。
【0124】
さらなる実施形態では、機能的肝細胞は、in vitroでCYP2B6活性を示す。任意選択で、機能的肝細胞は、初代肝細胞で見られる活性に匹敵するか、又はそれより高いCYP2B6活性を、任意選択で、初代肝細胞で見られるレベルの少なくとも50%~100%、75%~125%、85%~115%、90%~110%又は95%~105%であるレベルを示す。いくつかの実施形態では、CYP2B6活性は、細胞をブプロピン(bupropin)とともにインキュベートすること及び細胞における代謝産物O-ヒドロキシ-ブプロピオンの形成をモニタリングすることによって測定される。
【0125】
さらなる実施形態では、肝細胞は、in vitroでNAT1及び/又はNAT2活性を示す。任意選択で、肝細胞は、初代肝細胞で見られる活性に匹敵するか、又はそれより高いNAT1及び/又はNAT2活性を、任意選択で、初代肝細胞で見られるレベルの少なくとも1.1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍又は約50%~100%、75%~125%、85%~115%、90%~110%若しくは95%~105%であるレベルを示す。いくつかの実施形態では、NAT1及び/又はNAT2活性は、スルファメタジン(SMZ)のN-アセチル化SMZへの代謝によって示される。
【0126】
さらなる実施形態では、肝細胞は、in vitroでUGT活性を示す。任意選択で、肝細胞は、初代肝細胞で見られる活性に匹敵するか、又はそれより高いUGT活性を、任意選択で、初代肝細胞で見られるレベルの少なくとも50%~100%、75%~125%、85%~115%、90%~110%又は95%~105%であるレベルを示す。いくつかの実施形態では、UGT活性は、細胞における4-メチルウンベリフェロン(4-MU)からの4-MUグルクロニド(4-MUG)の生成によって示される。
【0127】
実施形態では、肝細胞、任意選択で、機能的肝細胞は、肝細胞及び/若しくは胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団並びに/又は長期nodalアゴニスト処理されていない誘導された内胚葉細胞集団から製造され、凝集及び/若しくはcAMPシグナル伝達誘導を伴わずに製造された肝細胞と比較して、ALB、CPS1、G6P、TDO、CYP2C9、CYP2D6、CYP7A1、CYP3A7、CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、NAT2及びUGT1A1からなる群から選択される少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種又はそれ以上の遺伝子又はタンパク質の増大した発現を含む。他の実施形態では、少なくとも40、50、60、70、80又は90%の肝細胞、任意選択で、機能的肝細胞は、ASGPR-1+細胞である。
【0128】
さらに別の実施形態では、機能的肝細胞は、肝細胞成熟を示すグローバルな遺伝子発現プロファイルを示す。任意選択で、機能的肝細胞は、肝芽細胞及び/又は未熟な肝細胞のグローバルな遺伝子発現プロファイルよりも初代肝細胞とより同様であるグローバルな遺伝子発現プロファイルを示す。グローバルな遺伝子発現プロファイルは、当業界公知の任意の方法、例えば、マイクロアレイ分析によって得られる。
【0129】
一実施形態では、胆管細胞の運命は、細胞集団の凝集体をnotchアゴニストを用いて処理することによって特定化される。
【0130】
用語「胆管細胞」とは、本明細書において、胆管を作製する細胞を指す。
【0131】
用語「胆管細胞前駆細胞」とは、本明細書において、胆管細胞(例えば、肝芽細胞)並びに機能的胆管細胞に成熟し得る未熟な胆管細胞に分化する能力を有する細胞を指す。いくつかの実施形態では、胆管細胞系統の細胞は、CK19、セクレチン受容体(SR)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)及びクロライド重炭酸塩陰イオン交換体2(Cl(-)/HCO(3)(-)AE)などのマーカーの発現によって規定される。
【0132】
用語「未熟な胆管細胞」とは、本明細書において、成熟胆管細胞の機能を獲得するために成熟を経なければならない胆管細胞系細胞を指す。いくつかの実施形態では、任意選択で、早期にNotchアゴニスト処理された、任意選択で、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日又は少なくとも4日間処理された細胞を含む未熟な胆管細胞は、CK19及び/又はSox9を発現する。
【0133】
一実施形態では、胆管細胞は、機能的胆管細胞である。
【0134】
用語「機能的胆管細胞」とは、本明細書において、成体胆管細胞(例えば、成熟胆管細胞)の特徴のうち1種又は複数を示す胆管細胞を指す、及び/又はCK-19、MDR1及び/又はCFTRを発現する胆管細胞系細胞である。例えば、機能的胆管細胞は、MDR1輸送体を発現し、嚢胞構造にある場合には、ローダミン123などのトレーサー色素を構造管腔空間中に中に輸送し得る。別の例として、CFTR機能活性は、例えば、図18に示されるように、例えば、嚢胞構造でフォルスコリン誘導性膨潤アッセイを使用して評価され得る。胆管細胞の集団では、集団は、例えば、細胞の少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上が、セクレチン受容体(SR)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)、CK-19及び/又はクロライド重炭酸塩陰イオン交換体2(Cl(-)/HCO(3)(-)AE)を発現する場合に機能的集団と考えられ得る。
【0135】
用語「成熟胆管細胞」とは、本明細書において、セクレチン受容体(SR)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)及び任意選択で、クロライド重炭酸塩陰イオン交換体2(Cl(-)/HCO(3)(-)AE)などの特定化された輸送体又は細胞膜受容体活性を発現する胆管細胞である。
【0136】
一実施形態では、製造される胆管細胞の集団は、機能的胆管細胞の集団である。機能的胆管細胞は、例えば、肝細胞及び胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団の細胞と比較して、及び/又はnotchアゴニストを用いて処理されていない凝集体から製造された集団細胞と比較して、Sox9、CK19及びCFTR(嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子)から選択される少なくとも1種、少なくとも2種又は3種の遺伝子又はタンパク質の増大した発現を含む。他の実施形態では、胆管細胞の集団の少なくとも40、50、60、70、80又は90%は、CK19+胆管細胞である。他の実施形態では、機能的胆管細胞の少なくとも40、50、60、70、80又は90%は、CFTR+胆管細胞である。
【0137】
用語「発現」とは、RNA及びタンパク質並びに、必要に応じて、適当な場合には、それだけには限らないが、例えば、転写、翻訳、フォールディング、修飾及びプロセシングを含めた分泌性タンパク質の製造に関与している細胞プロセスを指す。「発現生成物」は、遺伝子から転写されたRNA及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドを含む。
【0138】
本明細書において言及される用語「細胞培養培地」(本明細書において「培養培地」又は「培地」とも呼ばれる)とは、細胞生存力を維持し、増殖及び任意選択で、分化を支持する栄養素を含有する細胞を培養するための培地である。細胞培養培地は、以下のうちいずれかを適当な組合せで含有し得る:塩(単数又は複数)、バッファー(単数又は複数)、アミノ酸、グルコース又は他の糖(単数又は複数)、抗生物質、血清又は血清代替品及びペプチド増殖因子、ビタミンなどといった他の化合物。特定の細胞種のために通常使用される細胞培養培地は、当業者に公知である。
【0139】
適した培養培地として、例えば、DMEM(Life Technologies)、IMDM、RPMI、CMRL及び/又は例えば、成分及び任意選択で、他の薬剤が添加され得る基本培養培地組成を提供する、内胚葉細胞の成長を支持する任意の他の培地を含めた適した基本培養培地を挙げることができる。
【0140】
種々の日数の培養が本明細書において言及される。当業者ならば、培養期間は変わり得るということを認識していると予想される。
【0141】
本明細書において、いくつかの実施形態では、「5日目」とは、一般に、例えば、PSC単層に由来する誘導された内胚葉細胞集団を指す。EBに由来する誘導された内胚葉細胞集団は、EB形成を誘導するのに約24時間の処理を必要とするので、同様の培養点に達するために約6日間培養される。したがって、7日目単層誘導培養物は、8日目胚葉体誘導培養物などと同等である。この段階で、誘導された内胚葉集団は、例えば、Foxa2及びSox17を発現する細胞を含み得る。同様に、「7日目」は、一般に、2日間長期nodalアゴニスト処理された誘導された内胚葉集団を指す(例えば、EB法については、8日目となる)。「25日目」は、一般に、細胞が凝集される段階を指す(単層に由来する場合には、又はEBに由来する場合には26日目)。単層細胞が使用される場合には、EBを用い、通常、1日遅延された培養期間を用いて同等の方法が使用され得る、図11は、単層細胞を使用するスケジュールの一例(図11A)及びEBを使用する一例(図11B)を提供する。胆管細胞を作製するための一例のスケジュールが、図11C及び14Aに提供されている。
【0142】
用語「FGFアゴニスト」とは、本明細書において、例えば、FGF又はFGFシグナル伝達経路を活性化する、例えば、FGF受容体と結合し、活性化する小分子を含めたサイトカインなどの分子を意味する。例えば、FGF受容体活性化は、免疫検出によってMEK/ERK、AKT及び/又はPI3K活性を測定することによって評価され得る。
【0143】
用語「FGF」とは、本明細書において、任意の線維芽細胞増殖因子、例えば、任意選択で、天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含めた活性コンジュゲート及びその断片を含めた、ヒトFGF1(遺伝子番号2246)、FGF2(bFGFとしても知られる;遺伝子番号2247)、FGF3(遺伝子番号2248)、FGF4(遺伝子番号2249)、FGF5(遺伝子番号2250)、FGF6(遺伝子番号2251)、FGF7(遺伝子番号2252)、FGF8(遺伝子番号2253)、FGF9(遺伝子番号2254)及びFGF10(遺伝子番号2255)を指す。特定の実施形態では、FGFは、FGF10、FGF4及び/又はFGF2である。
【0144】
本明細書において、「FGFの活性コンジュゲート及び断片」は、FGF受容体と結合し、活性化する、任意選択で、FGFシグナル伝達を活性化する線維芽細胞増殖因子のコンジュゲート及び断片を含む。
【0145】
FGFの濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml、例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、FGF濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0146】
FGF10の濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml 例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、FGF10濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0147】
bFGFの濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml 例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、bFGF濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0148】
一実施形態では、BMP4アゴニストは、群BMP4、BMP2及びBMP7から選択される。BMP4、BMP7及びBMP2は、例えば、胚発達において同一受容体を共有する。
【0149】
用語「BMP4」(例えば、遺伝子番号652)は、本明細書において、骨形成タンパク質4、例えば、ヒトBMP4、並びに例えば、BMP4受容体シグナル伝達を活性化し得る、任意選択で、天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含めた、その活性コンジュゲート及び断片を指す。BMP、例えば、BMP4の濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml、例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、BMP濃度、例えば、BMP4濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0150】
記載したように、方法は、単層で増殖された内胚葉細胞集団に適用され得る。
【0151】
したがって、さらなる態様は、多能性幹細胞集団から肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法を含み、方法は、
a)単層として培養された多能性幹細胞を、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
b)誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって特定化して、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
d)任意選択で、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、デキサメタゾン及び/又はオンコスタチンM及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む成熟培地と接触させるステップと、
e)細胞集団の肝細胞及び胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導するステップが、細胞集団の凝集体を作製することを含む、ステップと
を含む。
【0152】
さらに、内胚葉集団はまた、胚葉体中に含まれ得る。したがって、さらなる態様は、多能性幹細胞集団から肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法を含み、方法は、
a)任意選択で、多能性幹細胞を、BMP4アゴニストと接触させることによって、多能性幹細胞の胚葉体(EB)を形成するステップと、
b)EBを、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)誘導された内胚葉細胞集団を解離して、解離された誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
d)解離された誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
e)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって特定化して、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
f)任意選択で、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、デキサメタゾン及び/又はオンコスタチンM及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む成熟培地を接触させるステップと
g)細胞集団の肝細胞及び胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップが、細胞集団の凝集体を作製するステップを含むステップと
を含む。いくつかの実施形態では、成熟を誘導するステップ並びに任意選択で、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、凝集体内のcAMP経路を活性化して、細胞集団の肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞を含む集団への成熟を誘導するステップをさらに含む。一実施形態では、方法は、凝集体をcAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストと接触させるステップを含む。
【0153】
別の態様は、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から機能的肝細胞及び/又は胆管細胞を製造する方法を含み、方法は、
a)胚葉体に形成されるために単層として培養された多能性幹細胞を、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
b)誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、少なくとも1種のFGFアゴニスト及び1種のBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって特定化して、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
d)肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップが、
(i)肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、OSM及びDEXを含む成熟/特定化培地で培養するサブステップと、
(ii)任意選択で、細胞集団が、少なくとも70%、80%、85%若しくは90%のアルブミン陽性細胞を含む場合に、又は約20~約40日培養した後に、例えば、約24~約28日培養した後に、細胞集団の凝集体を作製するサブステップと
(iii)凝集細胞成熟培地で凝集細胞を培養するサブステップと、
(iv)任意選択で、凝集の約1~約10日内に、例えば、凝集の6日内に、任意選択で、約27~約36日培養した後に凝集細胞においてcAMP経路を活性化するサブステップと
を含む、ステップと
を含む。
【0154】
一実施形態では、多能性幹細胞の胚葉体(EB)は、多能性幹細胞をBMP4(任意選択で、1~5ng/mlのBMP4又は約5ng/mlのBMP4)の存在下で12~36時間、任意選択で、約24時間培養することによって形成される。
【0155】
EBが形成された後、それらは、内胚葉細胞集団を誘導するために、nodalアゴニストを補給した誘導培地で3~10日間、任意選択で、4~8日又は約5又は6日間再度培養され得る。nodalアゴニストは、任意選択で、アクチビンAである。EBはまた、内胚葉細胞集団を誘導するために、任意選択で、Wnt3a又はCHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストと接触される。
【0156】
いくつかの実施形態では、EBは、アクチビンAなどのnodalアゴニストの存在下で、さらに1~4日間(例えば、長期nodalアゴニスト処理)(すなわち、内胚葉細胞集団を少なくとも1種のFGFアゴニスト及び1種のBMP4アゴニストの組合せと接触させる前)培養される。
【0157】
記載されたように、次いで、細胞は、例えば、凝集及び種々の成熟因子での処理を含めた、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するよう処理される。これらのステップは、例えば、cAMP活性化に応答する細胞の集団を生成し得る。長期nodalアゴニスト処理及び凝集は、cAMP活性化に応答する細胞を生成するステップである。
【0158】
cAMP活性化に応答する細胞は、単層ベースの方法については培養26日後である。
【0159】
一実施形態では、凝集細胞成熟/特定化培地は、肝細胞成熟を促進する因子又は胆管細胞発達を促進する因子又は両方及び/又は前駆体集団の増殖を増大する因子を含み得る。
【0160】
例えば、凝集体は、実証されるように、肝細胞又は胆管細胞に特定化され得る肝芽細胞を含む。
【0161】
任意選択で、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、細胞凝集体を、i)cAMPシグナル伝達アクチベーター(例えば、cAMP類似体及び/又はアゴニスト)及び/又はii)Wnt/β-カテニンシグナル伝達のアンタゴニスト(例えば、Wnt阻害剤XAV939)及び/又はMEK/Erkシグナル伝達の阻害剤(例えば、MEK/Erk阻害剤PD0325901)と接触させるステップをさらに含む。cAMPシグナル伝達の活性化の間のWntアンタゴニスト及び/又はMEK/Erkアンタゴニストの添加は、CYP酵素の発現を、例えば、成体肝臓細胞において見られるレベル又はそれ以上まで増強する。例えば、約28日目~約32日目培養物に添加されたcAMPの存在下でのMEK/Erkの阻害は、例えば、CYP3A4のレベルの増大された肝細胞をもたらす。Wntアンタゴニストと組み合わせたMEK/Erkアンタゴニストの添加は、CYP1A2のレベルも増大するとわかる。一実施形態では、wntアンタゴニストは、例えば、XAV939、IWP2、DKK1、XXX(IWP2(STEMGENT04-0034)、Dkk-1(R&D、5439-DK-010))、IWR-1 endo(Calbiochem 681699-10)を含む。Wntシグナル伝達の既知アンタゴニストは、Dickkopf(Dkk)タンパク質、Wnt阻害因子-1(WIF-1)及び分泌Frizzled関連タンパク質(sFRP)を含み、一実施形態では使用され得る。別の実施形態では、MEK/Erkアンタゴニストは、PD0325901、U0126(Promega V1121)、PD098059(Sigma-Aldrcih P215-1MG)から選択される。
【0162】
任意選択で、細胞凝集体は、0.1~10μM、任意選択で、0.5~2μM又は約1μMのXAV939及び/又はPD0325901と接触される。
【0163】
他の阻害剤/アクチベーターの濃度は、例えば、本明細書において記載された阻害剤アクチベーターに同様の活性化/阻害をもたらす濃度である。
【0164】
別の実施形態では、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、細胞凝集体を、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニスト及びGSK3選択的阻害剤(例えば、CHIR99021)などのwntアゴニスト又はTGF-βアンタゴニスト(例えば、阻害剤SB431542)の両方と接触させるステップをさらに含む。任意選択で、細胞凝集体は、0.1~10μM、任意選択で、0.2~4μMのCHIR99021及び/又は約2~10μM若しくは約6μMのSB431542と接触される。TGF-β阻害剤は、SB431542(Sigma-Aldrich S4317-5MG)、SB 525334(Sigma-Aldrich S8822-5MG)及びA83-01(Tocris、2929)を含む。
【0165】
本明細書において実証されるように、例えば、27日目でのWnt経路の活性化及びTGF-p/SMAD経路の阻害は、アルブミン+/HNF4+前駆体集団の増殖を促進する。例えば、wntアゴニストが添加される場合には、前記集団の最大10倍の増殖が得られ得るということが実証される。
【0166】
一実施形態では、凝集細胞は、wntアゴニスト及び任意選択で、TGFβアンタゴニスト(SB431542など)を用いて、約6~約12日間、好ましくは、約8~約10日間、任意選択で、9日間処理される。このような処理は、例えば、肝芽細胞の増殖をもたらす。一実施形態では、方法は、肝芽細胞の増殖した集団を製造するステップを含む。これらの細胞は、成熟した肝細胞及び/又は胆管細胞を含めた、より分化した細胞の集団を製造するために使用され得る。
【0167】
一実施形態では、TGF-βアンタゴニストは、SB431542(Sigma-Aldrich S4317-5MG)、SB525334(Sigma-Aldrich S8822-5MG)、A83-01(Tocris、2929)から選択される。
【0168】
一実施形態では、凝集細胞成熟培地は、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を促進する1種又は複数の因子、
任意選択で、アルブミン+/HNF4+前駆体集団の増殖を促進するSB431542などのTGFβアンタゴニストと組み合わせた、CIHR 99021などのwntアゴニスト、又は
XAV939などのWntアンタゴニスト及び/若しくはcAMP活性化ステップの間に添加され、CYP酵素の発現を増強し、肝細胞前駆体の成熟を促進する、Mek/Erkアンタゴニスト、例えば、PD0325901
を含む。
【0169】
別の実施形態では、凝集細胞成熟培地は、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を促進する1種又は複数の因子、任意選択で:
胆管細胞系統特定化を促進するNotchアゴニスト、
肝細胞系統特定化を促進するγ-セクレターゼ阻害剤(GSI)L695,458などのNotchアンタゴニスト
を含む。
【0170】
以下に記載されるように、cAMP類似体8-Br-cAMPの添加は、H9由来凝集体において、CYP3A4(16倍)、CYP1A2(100倍)及びCYP2B6(10倍)並びに第II相酵素UGT1A1(16倍)の有意なレベルの発現を誘導した(図7e)。
【0171】
別の実施形態では、細胞凝集体は、酵素処理及び/又は手作業による解離によって、肝細胞及び胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団の単層から作製される。
【0172】
一実施形態では、HGF、OSM及びDEXを含む成熟/特定化培地において、任意選択で、細胞凝集の前に培養された肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団は、内皮細胞、任意選択で、CD34+陽性内皮細胞と共培養される。一実施形態では、内皮細胞は、胚性ESC、好ましくは、ヒトに由来する。一実施形態では、内皮細胞は、成熟した内皮細胞、任意選択で、ヒトであり、及び/又は成熟した内皮細胞に由来する。
【0173】
CD34+内皮細胞は、例えば、hESCから実施例8に記載されるように作製され得る。実施例8に記載されるように、内皮細胞は、BMP4、bFGF及びVEGFの組合せを用いる約6日間の誘導によって作製され得、その時点で、CD34細胞(CD31及びKDRも)は、FACSによって単離され得る。選別されたCD34細胞は、内皮細胞成長培地、任意選択で、EMG2培地において、例えば、6日間さらに培養され、次いで、キメラ凝集体の作製のために使用され得る。
【0174】
一実施形態では、HGF、OSM及びDEXを含む成熟/特定化培地で培養された肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団は、キメラ凝集体を形成するために、任意選択で、Aggrewells(商標)などの凝集容器(例えば、単一細胞種又は混合細胞種の凝集を促進する容器)を使用して、キメラ凝集が達成されるまで、例えば、Aggrewellsを使用する場合には、約1日、約2日又は約3日間、CD34+陽性内皮細胞とともに共培養される。凝集はまた、本明細書において記載される方法又は当業界公知の方法を使用して実施され得る。実施例8に記載されるように、ウェルの底をコーティングするために、肝細胞集団に先立って内皮細胞が容器に添加され得る。肝細胞集団は、単細胞懸濁液として添加され得る、例えば、25/26日目肝芽細胞は、内皮細胞の頂部に添加され、混合物はAggrewells中で培養され得る。適した凝集時に、キメラ肝/内皮凝集体は、続いて、Aggrewellsから回収され、培養され得る。図12bにおいて示されるように、内皮細胞と一緒に培養された凝集体は、内皮細胞を含有しており、単独で培養されたものよりも大きかった。また、qRT-PCR分析によって、さらに12日間培養されたキメラ肝/内皮凝集体は、内皮細胞を伴わずに作製された肝凝集体よりも実質的に高いレベルのCYP3A4メッセージを発現したことも実証される(図12d)。これらのレベルは、cAMPの添加を伴わずに達成されたので、内皮細胞は、hPSC由来肝細胞の成熟を促進し得る。一実施形態では、肝/内皮キメラ凝集体は、少なくとも若しくは約6日間、少なくとも若しくは約8日間、少なくとも若しくは約10日間、少なくとも若しくは約12日間、又は所望の若しくは予め選択されたレベルのCYP3A4メッセージが得られるまで培養される。
【0175】
さらなる実施形態では、肝内皮キメラ凝集体は、ゼラチン状マトリックス、任意選択で、マトリックスを含むコラーゲン、任意選択で、ゲル中で培養される。一実施形態では、コラーゲンは、コラーゲンI又はIVである。一実施形態では、ゼラチン状マトリックスは、Matrigel、ラミニン、フィブロネクチン、抽出されたECM(例えば、肝臓組織由来の細胞外マトリックス)及び/又はそれらの組合せを含む。
【0176】
一実施形態では、マトリックスを含むコラーゲン中で培養された凝集体は、cAMP、PD0325901及びXAV939の存在下で培養される。
【0177】
3次元凝集、cAMP及びPD/XAVの組合せは、ヒト多能性幹細胞由来肝細胞の大幅な分化を促進することがわかった(図9)、(図9d及びe)。AFP及び胎児CYP3A7の発現の一部は保持された。実施例8において、細胞外マトリックスタンパク質の供給源を供給するよう、コラーゲンゲルにおいてcAMP、PD及びXAVの組合せを用いて肝内皮キメラ凝集体を処理することは、集団のさらなる成熟を促進することが実証される。図13に示されるように、凝集体への内皮細胞の添加(end)は、凝集体が液体培養において維持された場合には、ALB、CYP3A4、AFP又はCYP3A7の発現レベルに大きく影響を与えなかった。対照的に、コラーゲンゲルにおける凝集体の培養は、AFP及びCYP3A7発現に対して劇的な効果を有しており、両方とも、成体肝臓で見られるレベルと同様のほとんど検出できないレベルに低減された。
【0178】
一実施形態では、例えば、凝集後およそ1~約4日内に、細胞はnotchアゴニストを用いて処理される。このような段階でのnotchアゴニストの添加は、胆管細胞成熟を促進する。いくつかの実施形態では、例えば、胆管細胞成熟が好ましい場合には、cAMPシグナル伝達を誘導することは省略される。
【0179】
したがって、本開示はまた、胆管細胞前駆細胞の胆管細胞への成熟を誘導する方法を提供し、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、
(i)胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、Notchアゴニストとともに培養して、胆管細胞前駆細胞の胆管細胞(holangiocytes)、任意選択で、機能的胆管細胞への成熟を誘導するステップ
を含む。
【0180】
一実施形態では、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から機能的胆管細胞を製造する方法:
a)誘導された内胚葉細胞集団を提供するために、単層として培養されたか又は胚葉体に形成された多能性幹細胞を、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と接触させるステップと、
b)誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、FGFアゴニスト及びBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と接触させることによって特定化して、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
d)胆管細胞前駆細胞の胆管細胞への成熟を誘導するステップ並びにさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、
(i)任意選択で、細胞集団が、少なくとも70%、80%、85%、90%若しくは95%のアルブミン陽性細胞を含む場合に、又は約20~約40日培養した後、例えば、約24~約28日培養した後に、細胞集団の凝集体を作製するサブステップと、
(ii)胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、Notchアゴニストを含む成熟培地を用いて培養するサブステップと
を含む、ステップと
を含み、ここで、Notchアゴニストが、Notchシグナル伝達ドナー細胞、任意選択で、OP-9、OP-Jagged1及び/又はOP-9δ1細胞である場合には、Notchシグナル伝達ドナー細胞は、細胞集団と同時凝集される。
【0181】
さらなる実施形態では、凝集体は、ゼラチン状マトリックス、任意選択で、マトリックスを含むコラーゲン、任意選択で、ゲルにおいて培養される(又はNotchシグナル伝達ドナー細胞を含む場合には、共培養される)。一実施形態では、コラーゲンは、コラーゲンI又はIVである。一実施形態では、ゼラチン状マトリックスは、Matrigel、ラミニン、フィブロネクチン、抽出されたECM(例えば、肝臓組織由来の細胞外マトリックス)及び/又はそれらの組合せを含む。
【0182】
さらに、例えば、γ-セクレターゼ阻害剤(GSI)L695,458(Tocris 2627番)DAPT(Sigma_Aldrich D5942)LY 411575(Stemgent 04-0054)及びL-685458)などのNotchアンタゴニストを用いてNotchシグナル伝達を阻害することは、胆管細胞発達を阻害し、生じた細胞は、肝細胞の特徴を保持すると本明細書において実証されている。
【0183】
別の実施形態では、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から肝芽細胞、肝細胞及び/又は胆管細胞などの肝細胞系細胞を製造する方法、本方法は、
a)胚葉体に形成されるために単層として培養された多能性幹細胞を、ActAなどのnodalアゴニストと、任意選択で、i)Wnt3a及び/又はii)CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストとを含む誘導培地と、任意選択で、約4~約8日間接触させて、誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
b)誘導された内胚葉細胞集団を、nodalアゴニストと、任意選択で、約2、3又は約4日間接触させて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を提供するステップと、
c)長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞集団を、少なくとも1種のFGFアゴニスト及び1種のBMP4アゴニスト及び/又はその活性コンジュゲート及び/又は断片を含む特定化培地と任意選択で、約4~約10日間接触させることによって特定化し、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を得るステップと、
d)肝細胞又は胆管細胞前駆細胞の、任意選択で、増殖した肝芽細胞集団及び/又は肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップが、
(i)肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、HGF、Dex及びOSMを含む成熟培地を用いて、任意選択で、約10~14日間培養するサブステップと、
(ii)任意選択で、細胞集団が、少なくとも70%、80%、85%若しくは90%のアルブミン陽性細胞を含む場合に、又は約20~約40日培養した後、例えば、約24~約28日培養した後に、細胞集団の凝集体を作製するサブステップと、
(iii)凝集体を、任意選択で、Dexを含む成熟培地中で、1~10日間培養するサブステップと、
(iv)a)Dex及び任意選択で、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストを含む成熟培地(例えば、凝集成熟培地)において約6日~約10日間、任意選択で、凝集体の作製の約1~約10日内に、例えば、凝集の6日内に、任意選択で、約27~約36日培養した後に、凝集体を培養するサブステップ、又は
b)任意選択で、凝集体を作製するステップの約1~約10日内に、例えば、凝集体を作製するステップの6日内に、任意選択で、約20~40日培養した後にnotchアゴニストを添加しながら、notchアゴニスト及び任意選択で、cAMPアゴニスト、HGF及び/又はEGFを含む成熟培地において、約6日~約20日間、凝集体を培養するサブステップと
を含む、ステップと
を含む。
【0184】
Notchアゴニストは、例えば、細胞、プラスチック、ECM又はビーズなどの表面と結合している任意のnotchリガンドであり得る。一実施形態では、notchリガンドは、notchリガンドδ、Jagged-1(EUROGENTEC 188-204)、Jagged1ペプチド(abcam、ab94375)、組換えヒトPref-1/DLK-1/FA1(R&D 1144-PR)である。一実施形態では、成熟及びさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞などのnotchシグナル伝達ドナーと、任意選択で、EGF、TGFβ1、HGF及びEGF並びに/又はHGF、TGFβ1及びEGFの存在下で、少なくとも若しくは約5~約10日間、約14日間又はそれ以上、例えば、90日間、任意選択で、少なくとも若しくは約5日~少なくとも若しくは約60日間、少なくとも若しくは約30日間、少なくとも若しくは約25日間、2日間少なくとも若しくは約1日間及び/又は少なくとも若しくは約14日間接触させて、胆管細胞前駆細胞の、機能的胆管細胞への成熟を誘導するステップを含む。製造された構造は、培養で60日間にわたって維持され得ることが実証された。したがって、一実施形態では、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団は、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞などのnotchシグナル伝達ドナー(notchアゴニスト)と、任意選択で、EGF、TGFβ1、HGF及びEGF並びに/又はHGF、TGFβ1及びEGFの存在下で、少なくとも5日間、任意選択で、最大5から90日又は5から60日の間の任意の日数、接触される。
【0185】
任意選択で、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、notchシグナル伝達ドナーと接触させるステップは、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞などのnotchシグナル伝達ドナーと、任意選択で、EGF、TGFβ1、HGF及びEGF並びに/又はHGF、TGFβ1及びEGFを含む成熟培地において、少なくとも若しくは約5~少なくとも若しくは約90日間、任意選択で、少なくとも若しくは約5~少なくとも若しくは約60日間、少なくとも若しくは約30日間、少なくとも若しくは約25日間、2日間少なくとも若しくは約1日間及び/又は少なくとも若しくは約14日共培養して、胆管細胞前駆細胞の、胆管細胞、任意選択で、機能的胆管細胞への成熟を誘導するステップを含む。
【0186】
一実施形態では、成熟を誘導し、任意選択でさらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団を、任意選択で、EGF、TGFβ1、HGF及びEGF並びに/又はHGF、TGFβ1及びEGFの存在下で、少なくとも5、8、9、10、11、12、13又は14日間又はそれ以上、90日間、任意選択で、少なくとも若しくは約5~少なくとも若しくは約60日間、少なくとも若しくは約30日間、少なくとも若しくは約25日間、2日間少なくとも若しくは約1日間及び/又は少なくとも若しくは約14日間、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞と共培養するステップを含む。
【0187】
本明細書において、用語「Notchシグナル伝達のアクチベーター」又は「notchアゴニスト」とは、本明細書において、肝細胞及び/又は胆管細胞においてNotchシグナル伝達を活性化する任意の分子又は細胞を指し、それだけには限らないが、OP9細胞などのnotchシグナル伝達ドナー、骨髄由来マウス間質細胞の系統及びnotchリガンドが挙げられる。OP-9細胞は、1種又は複数のnotchリガンドを内因性に発現し、過剰発現するよう操作されている。OP-9-Jagged1は、組換え/外因性Jagged1notchリガンドを過剰発現するよう操作されており、OP9-δ1は、組換えδ1notchリガンドを過剰発現するよう操作されている。一実施形態では、OP9 notchシグナル伝達ドナーは、OP9、OP9-Jagged1又はOP-δ1細胞から選択される。OP9細胞は、notchリガンドδを発現する。それらは、notchリガンドを発現するので、それによって、Notchシグナル伝達のアクチベーターとして作用し得る。Jagged-1(EUROGENTEC 188-204)、Jagged1ペプチド(abcam、ab94375)並びに組換えヒトPref-1/DLK-1/FA1(R&D 1144-PR)を発現する分子及び/又は細胞も含まれる。「notchアゴニスト」は、例えば、細胞、プラスチック、ECM又はビーズなどの表面と結合され得る。
【0188】
一実施形態では、胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団は、少なくとも1種の胆管細胞前駆細胞の、機能的胆管細胞への分化を誘導するために、10~20ng/ml、任意選択で、約20ng/mlのHGF及び/又は25~75ng/ml、任意選択で、約50ng/mlのEGFの存在下でOP9、OP9δ及び/又はOP9Jagged1細胞と共培養される。
【0189】
述べられているように、肝芽細胞(例えば、図1a及び14aに示されるように、段階25又は26日目)は、ステップg)に記載されるように凝集させることができ(3次元凝集体とも呼ばれる)、ステップg)は、細胞集団の肝細胞及び胆管細胞前駆細胞の、肝細胞及び/又は胆管細胞への成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップであって、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、細胞集団の凝集体を作製することを含む、ステップを含む。これらの3次元凝集体は、肝細胞に成熟/分化され、胆管細胞にさらに特定化され得る肝芽細胞を含む。胆管細胞が望まれる実施形態では、さらなる系統特定化は、凝集体を、任意選択で、肝芽細胞及びNotchシグナル伝達ドナー細胞を含むキメラ凝集体として、OP9、OP9δ及び/又はOP9 Jagged1細胞などのNotchシグナル伝達ドナーと共培養するステップによって得られる。
【0190】
一実施形態では、胆管細胞前駆細胞を含む肝芽細胞集団は、Matrigel及び/又はコラーゲンを含むマトリックス/ゲル中で、任意選択で、キメラ凝集体として、OP9、OP9δ及び/又はOP9Jagged1細胞と共培養される。
【0191】
一実施形態では、マトリックス/ゲルは、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも又は最大40%、少なくとも又は最大50%、少なくとも又は最大60%、少なくとも又は最大70%、少なくとも又は最大80%、少なくとも又は最大90%及び/又は最大100%のMatrigelを含む。
【0192】
一実施形態では、コラーゲンは、コラーゲンI及び/又はコラーゲンIVを含む。一実施形態では、マトリックス/ゲルは、約0~約5mg/mLのコラーゲンI、任意選択で、約1.0mg/mL、約2mg/mL、約3.0mg/mL又は約4.0mg/mLのコラーゲンIを含む。一実施形態では、マトリックス/ゲルは、約1.0mg/mL、約1.2mg/mL約1.4mg/mL、約1.6mg/mL、約1.8mg/mL、約2.0mg/mL、約2.25mg/mL、約2.5mg/mL、約2.75mg/mL又は約3.0mg/mLのコラーゲンIを含む。
【0193】
実施例9において実証されるように、共培養が、少なくとも30%又はそれ以上のMatrigel組成物を含む場合には嚢胞構造が得られる。増大した分岐構造が望まれる場合には、Matrigel濃度は、例えば、約20%に低下され得る。
【0194】
実施例9において実証されるように、本明細書において記載される方法を使用して、胆管細胞分岐及び嚢胞構造を発現するCFTRが製造され得る。CFTRは、膨潤アッセイを使用して示されるように機能的である。したがって、一実施形態では、製造及び/又は単離される胆管細胞は、胆管細胞を発現するCFTRである。
【0195】
用語「nodalアゴニスト」は、本明細書において、肝細胞系細胞における「nodal」(例えば、遺伝子番号4338などのヒトnodal)又は「アクチビン」などのnodalシグナル伝達を活性化する任意の分子を意味する。
【0196】
用語「アクチビン」又は「ActA」とは、本明細書において、「アクチビンA」(例えば、遺伝子番号3624)、例えば、ヒトアクチビン並びに任意選択で、例えば、nodalシグナル伝達を活性化し得る、天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含めたその活性コンジュゲート及び断片並びに天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含めたその活性コンジュゲート及び断片を指す。アクチビンの濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml、例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、アクチビン濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0197】
用語「HGF」とは、本明細書において、肝細胞増殖因子(遺伝子番号3082)、例えば、ヒトHGF並びに天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含めた、その活性コンジュゲート及び断片を指す。HGFの濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml、例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、HGF濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0198】
用語「TGFβ」とは、本明細書において、TGFb1、TGFb2及びTGFb3、例えば、ヒトTGFb1、TGFb2及びTGFb3並びに天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含めたその活性コンジュゲート及び断片のうちいずれか1種を意味する。以下に記載されるように、TGFb1は、肝芽細胞がOP9と共培養される場合には、胆管細胞分岐を促進する。TGFb2及びTGFb3もまた試験され、同様の条件下で分岐構造を促進する。
【0199】
用語「TGFβ1」とは、本明細書において、トランスフォーミング増殖因子β1、例えば、ヒトTGFβ1遺伝子ID7040)並びに天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含む、その活性コンジュゲート及び断片を指す。胆管細胞特定化のためのTGFβ1の濃度は、例えば、約5ng/ml~約10ng/mlの範囲であり得る。
【0200】
用語「wnt/β-カテニンアゴニスト」とは、本明細書において、肝細胞においてwnt/β-カテニン受容体シグナル伝達を活性化する任意の分子を意味し、例えば、Wnt3a並びにCHIR99021(Stemolecule(商標)CHIR99021 Stemgent)、6-ブロモ-インディルビン-3’-オキシム(BIO)(Cayman Chemical(カタログ:13123))又はStemgent製のStemolecule(商標)BIO(カタログ:04003)などのGSK3選択的阻害剤を含む。CHIR99021は、GSK3の選択的阻害剤である。考慮されるGSK3選択的阻害剤は、例えば、Wntシグナル伝達経路中のGSK-3α/βの選択的阻害剤である。肝細胞におけるWnt/β受容体シグナル伝達は、例えば、qPCRによって、例えば、Axin2遺伝子発現の増大を測定することによって、及び/又は例えば、Qiagen製のCignal TCF/LEFリポーター(Cignal TCF/LEFリポーター(luc)キット:CCS-018L)を使用してβカテニンリン酸化を測定することによって決定され得る。
【0201】
用語「Wnt3a」とは、本明細書において、無翅型MMTV組込み部位ファミリー、メンバー3A因子(例えば、遺伝子番号89780)、例えば、ヒトWnt3a並びに天然に存在する活性コンジュゲート及び断片を含む、その活性コンジュゲート及び断片を指す。Wnt3aの濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml、例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、Wnt3a濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0202】
用語「アゴニスト」とは、本明細書において、例えば、経路又はシグナル伝達分子のアクチベーターを意味する。例えば、nodalアゴニストとは、nodalシグナル伝達を選択的に活性化する分子を意味する。
【0203】
用語「アンタゴニスト」とは、本明細書において、例えば、経路又はシグナル伝達分子の選択的阻害剤を意味する。例えば、TGFβアンタゴニストは、例えば、Smadのリン酸化を測定することによってTGFβシグナル伝達を選択的に阻害する分子である。A83-01は、SB431542よりも強力なsmad2の阻害剤である。
【0204】
用語「選択的阻害剤」とは、本明細書において、関連分子よりも少なくとも1.5X、2X、3X、4X又は10Xより効率的に選択的実体又は経路を阻害する阻害剤を意味する。例えば、GSK-3選択的阻害剤は、例えば、LiClによって阻害されるよりも少なくとも1.5X、2X、3X、4X若しくは10Xより効率的に、又は他のキナーゼ、他のGSK及び/若しくは他の経路中のGSK3を阻害するよりも少なくとも1.5X、2X、3X、4X若しくは10Xより効率的にwnt経路中のGSK-3を阻害する。例えば、CHIR 99021は、約5nMのIC50でGSK3B及び10nMのIC50でGSK3aを特異的に阻害し、他のキナーゼに対してはほとんど効果がないとin vitroキナーゼアッセイにおいて示されている。したがって、選択的阻害剤は、他のもの、例えば、2種の他の、3種の他のなどの非関連キナーゼよりも少なくとも1.5X、2X、3X、4X又は10X低いIC50を示し得る。同様に、用語「選択的アクチベーター」とは、関連分子よりも少なくとも1.5X、2X、3X、4X又は10Xより効率的に選択的実体又は経路を活性化するアクチベーターを意味する。用語「活性断片」とは、本明細書において、大きさが小さいが、断片であるポリペプチドと実質的に相同であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであり、ここで、活性断片は、断片である全長ポリペプチドと比較して、少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも90%又は少なくとも100%有効な生物学的作用を有し、或いは任意選択で、断片であるポリペプチドと比較して、100%超、例えば、1.5倍、2倍、3倍、4倍又は4倍以上有効な生物学的作用を有する。
【0205】
用語「活性コンジュゲート」とは、本明細書において、分子の活性部分の活性を全く又は実質的に干渉しない、蛍光タグなどのタグ又は例えば、長期貯蔵、熱、酵素、低pH、撹拌などのもとでの安定性を改善するための安定化実体とコンジュゲートしているポリペプチド(又は他の分子)を意味する。例えば、コンジュゲートは、コンジュゲートしていないポリペプチド又は他の分子と比較して、約少なくとも50%又は60%又は70%又は80%又は90%又は100%又は100%超、例えば、1.5倍、2倍、3倍、4倍又は4倍超有効な生物学的作用(例えば、受容体活性化活性)を有し得る。
【0206】
一実施形態では、用語「活性断片及びコンジュゲート」とは、分子の同族受容体を活性化する能力を保持する分子の断片及びコンジュゲートを指す。任意選択で、活性断片及びコンジュゲートは、全長及び/又はコンジュゲートしていない分子の少なくとも60%、70%、80%、90%又は95%程度活性である。
【0207】
各ポリペプチドの保存的突然変異変異体及び活性化突然変異変異体などの変異体も使用され得る。
【0208】
用語「Dex」とは、本明細書において、デキサメタゾン(Dex)を指す。Dexの濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml、例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、Dex濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0209】
用語「OSM」とは、本明細書において、オンコスタチンMを指す。OSMの濃度は、例えば、約1ng~約500ng/ml、例えば、約1ng~約250ng/ml、約10ng~約250ng/ml、約10ng~約100ng/mlの範囲であり得る。別の実施形態では、OSM濃度は、約10ng/ml、約20ng/ml、約30ng/ml、約40ng/ml、約50ng/ml、約60ng/ml、約70ng/ml、約80ng/ml、約90ng/ml、約100ng/ml、約150ng/ml、約200ng/ml、約300ng/ml、約400ng/ml又は約500ng/mlである。
【0210】
述べられているように、本開示のいくつかの実施形態は、肝細胞及び/又は胆管細胞成熟を誘導するために、凝集体内のcAMP経路を活性化することを含む。
【0211】
本明細書において、用語「cAMP経路」とは、細胞間情報伝達において使用される、アデニルシクラーゼ経路、Gタンパク質共役受容体によって引き起こされるシグナル伝達カスケードを指す。cAMP経路は、任意選択で、ヒトcAMP経路である。
【0212】
本明細書において、用語「cAMP経路を活性化するステップ」とは、ATPをcAMPに変換する、例えば、cAMPのレベルを高めるための経路を誘導するステップを指す。cAMP経路が活性化される場合には、活性化されたGPCRは、結合しているGタンパク質複合体においてコンホメーション変化を引き起こし、GDPをGTPと交換するGαサブユニット及びβ及びγサブユニットからの分離をもたらす。Gαサブユニットは、順に、アデニリルシクラーゼを活性化し、これが、ATPをcAMPに変換する。cAMP経路はまた、アデニリルシクラーゼ又はPKAを直接活性化することによって、下流で活性化され得る。cAMP経路を活性化する分子として、それだけには限らないが、cAMP、8-ブロモアデノシン-3’,5’-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、ジブチリル-cAMP、アデノシン-3’,5’-環状モノホスホロチオアート、Sp-異性体(Sp-cAMPS)及び/又は8-ブロモアデノシン-3’,5’-環状モノホスホロチオアート、Sp-異性体(Sp-8-Br-cAMPS))などのcAMP類似体が挙げられる。8-Br-cAMP、ジブチリル-cAMP及びSp-cAMPSは、cAMPの細胞透過性類似体の例である。cAMPシグナル伝達を活性化するいくつかの他のcAMPもまた、当業界公知であり、使用され得る。cAMP経路を活性化する他の化合物(例えば、cAMPアゴニスト)として、それだけには限らないが、コレラ毒素、フォルスコリン、カフェイン、テオフィリン及び百日咳毒素が挙げられる。例えば、Sp-8-Br-cAMP(Biolog:カタログ番号:B 002 CAS番号:[127634-20-2])、8-Br-cAMP及びフォルスコリン(FSK)(Sigma:66575-29-9)を使用して実験が実施され、これらの化合物は、交換され得ることを示した。
【0213】
本方法のいくつかの実施形態では、cAMP経路は、任意選択で、肝凝集体を、8-Br-cAMP、任意選択で、1~40、1~30、1~20、5~15、8~12又は約10mMの8-Br-cAMPなどの0.5~50mMの細胞透過性cAMP類似体と接触させるステップによって活性化される。肝凝集体は、任意選択で、細胞透過性cAMP類似体、例えば、8-Br-cAMPと、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10日間接触される。
【0214】
成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、一連のステップを含んでいてもよい。
【0215】
いくつかの実施形態では、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞及び/又は凝集体を含む細胞集団は、HGF、デキサメタゾン及びオンコスタチンMを含む細胞培養培地で培養される。他の実施形態では、凝集体は、B27、アスコルビン酸、グルタミン、MTG、HGF、デキサメタゾン及びオンコスタチンMを補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を含む細胞培養培地で培養される。他の実施形態では、細胞は、凝集の前及び/又は凝集の間に、HGF、デキサメタゾン及びオンコスタチンM、任意選択で、B27、アスコルビン酸、グルタミン、MTG、HGF、デキサメタゾン及びオンコスタチンMを補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)を含む細胞培養培地で培養される。細胞培養培地は、任意選択で、Rho-キナーゼ阻害剤及びBSAも補給される。例えば、肝細胞及び/又は胆管細胞前駆細胞を含む細胞集団は、HGF、DEX及びOSMを含む成熟培地で、10、11、12、13又は14日間培養され得、及び/又は凝集体は、HGF、DEX及びOSMを含む成熟培地で6、7、8、9、10日間培養され得る。
【0216】
別の実施形態では、成熟を誘導し、さらなる系統特定化及び/又は増殖を誘導するステップは、凝集体内のcAMP経路を活性化して、少なくとも1種の肝細胞又は胆管細胞前駆細胞を、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の成熟を誘導するステップをさらに含む。別の実施形態では、cAMP経路を活性化するステップは、凝集体を、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストと、例えば、上記のcAMP類似体又はcAMPアゴニストと接触させるステップを含む。
【0217】
例えば、一実施形態では、HGF、DEX及びOSMを含む成熟培地で培養するステップに続いて、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニスト及びDEX及び任意選択で、HGFを含む成熟培地が、例えば、約10、11、12、13又は14日間凝集体に添加される。
【0218】
一実施形態では、凝集体は、cAMP経路が活性化されるまで、HGF、Dex及びOSMを含む細胞培養培地で培養される。一実施形態では、凝集体は、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニスト及びDexを含有する培地で培養される。cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストが添加される場合には、OSMは、培地から除去される。いくつかの実施形態では、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストが添加される場合には、HGFもまた培地から除去される。別の実施形態では、培地中のHGFの量は、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストの添加後に低減される(例えば、20ng/ml HGFから10ng/mlのHGFが低減される)。
【0219】
別の実施形態では、凝集体は、HGF、Dex及びOSMで約6、7、8、9、10、11又は12日間培養され、その時点で、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストが添加される。一実施形態では、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストが添加される場合には、OSM及び任意選択で、HGFは除去される。他の実施形態では、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストが添加される場合には、培地中のHGFの濃度は低減される(例えば、約20ng/mlから約10ng/mlに)。
【0220】
いくつかの実施形態では、誘導された内胚葉細胞集団の少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%又は少なくとも50%又は少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%が、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞に分化/成熟する。
【0221】
したがって、一実施形態では、方法は、nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉細胞の集団からの約10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は約95%超の機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の製造を誘導する。
【0222】
成熟は、例えば、成熟肝細胞マーカーのレベルを調べることによって検出され得る。例えば、CYP1A2、CYP2B6、CYP2D6、CYP3A4、CYP7A1、CYP2C9、ALB、CPS1、G6P、TAT、TDO1、NAT2、UGT1A1及び/又はASGPR1は、その発現が、例えば、RT-PCRによって検出され得る成熟肝細胞又は機能的肝細胞マーカーである。分化はまた、成熟肝細胞を認識する抗体、例えば、ASGPR-1を検出する抗体を使用して検出され得る。
【0223】
一実施形態では、内胚葉細胞集団は、胚幹細胞(ESC)又は誘導された多能性幹細胞(iPSC)などの多能性幹細胞(PSC)から分化される。
【0224】
一実施形態では、多能性幹細胞は、ヒトなどの哺乳類に由来する。一実施形態では、多能性幹細胞は、ヒトESC(hESC)又はヒトiPSC(hiPSC)である。
【0225】
本明細書において、用語「iPSC」及び「誘導された多能性幹細胞」は、同義的に使用され、例えば、それだけには限らないが、SOX2(遺伝子番号6657)、KLF4(遺伝子番号9314)、cMYC(遺伝子番号4609)、NANOG(遺伝子番号79923)、LIN28/LIN28A(遺伝子番号79727))と組み合わせた、1種又は複数の遺伝子(POU4F1/OCT4(遺伝子番号5460を含む)の発現を誘導するステップによって、非多能性細胞、通常、成体体細胞から人為的に導かれた(例えば、誘導された又は完全な逆転によって)多能性幹細胞を指す。
【0226】
一実施形態では、方法は、内胚葉細胞集団を得るためのステップを含む。例えば、ESC又はiPSCなどの多能性幹細胞において胚体内胚葉を誘導するための方法が、本明細書において提供される。
【0227】
一実施形態では、内胚葉細胞集団を得るステップは、多能性幹細胞培養物から胚葉体を形成するステップを含む。EBは、当業界公知の任意の方法、例えば、Nostro,M.C.ら18に記載される方法によって形成され、これでは、EBは、低レベルのBMP4アゴニストにおいて24時間培養した小さい凝集体から形成される。
【0228】
別の実施形態では、内胚葉細胞集団を得るステップは、単層で多能性幹細胞培養物を得る及び/又は増殖させるステップを含む。
【0229】
EB及び/又は単層細胞は、続いて、胚体内胚葉を誘導するために高濃度のアクチビンAと接触される。任意選択で、EB及び/又は単層は、80~120ng/ml又は90~110ng/mlのアクチビン、任意選択で、約100ng/mlのアクチビンAに約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は14日間曝露される。
【0230】
別の実施形態では、EB及び/又は単層細胞は、アクチビンAに加えて、Wnt3a又はCHIR-99021、6-ブロモ-インディルビン-3’-オキシム(BIO)、若しくはStemolecule(商標)BIOなどのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストと接触される。例えば、GSK-3選択的阻害剤BIOは、Wntシグナル伝達の活性化によってヒト及びマウスESCにおいて多能性を維持すると実証された。53
【0231】
任意選択で、EB及び/又は単層細胞は、10~40ng/mlのWnt3a又は20~30ng/mlのWnt3A、任意選択で、約25ng/mlのWnt3aに、約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10日間曝露される。別の実施形態では、EB及び/又は単層細胞は、約0.03μM~約30μMのCHIR-99021又は約0.1μM~約3μM、任意選択で、約0.3μM~約1μMのCHIR-99021に曝露される。一実施形態では、EBは、約0.1μM~約2μMに曝露される。別の実施形態では、単層細胞は、約1μM~約30μM、例えば、約1μM~約3μMのCHIR-99021に曝露される。当業者は、同等に有用な量のその他GSK-3阻害剤を確認できる。
【0232】
いくつかの実施形態では、EB及び/又は単層細胞は、まず、80~120ng/mlのアクチビン又は90~110ng/mlのアクチビン、任意選択で、約100ng/mlのアクチビンAと、約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は約10日間と接触され、その後、80~120ng/mlのアクチビン又は90~110ng/mlのアクチビン、任意選択で、約100ng/mlのアクチビンA及び10~40ng/mlのWnt3a又は20~30ng/mlのWnt3A、任意選択で、約25ng/mlのWnt3aと、約1、2、3、4、5、6、7、8、9又は約10日間接触され、誘導された内胚葉細胞集団を製造する。
【0233】
一実施形態では、他所に記載されるように、誘導された内胚葉細胞集団は、ActAなどのnodalアゴニストとともに、少なくとも36、38、42、44、46、48、50、52、56、58若しくは60時間又は約1~約4日間培養されて、長期nodalアゴニスト処理され誘導された内胚葉集団を製造する。
【0234】
任意選択で、胚体内胚葉を誘導するための基本培養培地は、胚体内胚葉を誘導するための当業界公知の任意の培地、任意選択で、神経基本培地又はStemPro34である。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、アクチビンA、グルタミン、アスコルビン酸、MTG、bFGF及びBMP4が補給される。他の実施形態では、細胞培養培地は、Wnt3a又はCHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤などのwnt/β-カテニンアゴニストがさらに補給される。
【0235】
細胞を分化させて、誘導された内胚葉細胞集団を得る他の方法も、使用され得る。
【0236】
確定的な内胚葉又は誘導された内胚葉細胞集団は、任意選択で、表面マーカーCXCR4、CKIT及びEPCAM並びに転写因子SOX17及びFOXA2又はそれらの任意の組合せの発現によって規定される。いくつかの実施形態では、内胚葉細胞集団の50%、60%、70%、80%、85%、90%又は95%超が、アクチビン誘導後にCXCR4、CKIT及びEPCAMを発現する。別の実施形態では、内胚葉細胞集団の50%、60%、70%、80%、85%、90%又は95%超が、アクチビン誘導後にSOX17及び/又はFOXA2を発現する。
【0237】
特定の実施形態では、方法は、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞を濃縮及び/又は単離して、任意選択で、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の単離された集団を作製するステップをさらに含む。
【0238】
一実施形態では、単離するステップは、細胞の集団を、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞と結合する特定の物質と接触させるステップを含む。
【0239】
細胞の単離された集団に関して、用語「単離された集団」とは、本明細書において、細胞の混合された集団又は不均一な集団から除去され、分離された細胞の集団を指す。いくつかの実施形態では、単離された集団は、細胞が単離又は濃縮された不均一な集団と比較して、実質的に純粋な細胞の集団である。細胞は、例えば、単細胞懸濁液、単層及び/又は凝集体であり得る。例えば、胆管細胞を含むいくつかの実施形態では、単離集団はまた、OP9、OP9δ及び/又はOP9Jagged1細胞などのnotchリガンドを発現する細胞を含み得る。例えば、肝細胞を含むいくつかの実施形態では、単離された集団はまた、内皮細胞を含み得る。任意選択で、解離された細胞懸濁液及び/又は凝集体中の単離された集団は、例えば、スクリーニング適用、疾患モデリング適用及び/又は例えば、スキャフォールドなどを含む移植適用において使用され得る。
【0240】
特定の細胞集団に関して、用語「実質的に純粋」とは、総細胞集団を構成する細胞に関して少なくとも約65%、好ましくは、少なくとも約75%、少なくとも約85%、より好ましくは、少なくとも約90%、最も好ましくは、少なくとも約95%純粋である細胞の集団を指す。同様に、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の「実質的に純粋な」集団に関しては、約30%未満、約20%未満、より好ましくは、約15%、10%、8%、7%未満、最も好ましくは、約5%、4%、3%、2%、1%未満又は1%未満の、本明細書においてこの用語によって規定される機能的肝細胞及び/又は胆管細胞ではない細胞又はその後代を含有する細胞の集団を指す。いくつかの実施形態では、本発明は、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の集団を増殖させる方法を包含し、これでは、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の増殖した集団は、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の実質的に純粋な集団である。
【0241】
用語「濃縮する」又は「濃縮された」は、本明細書において同義的に使用され、1種の細胞の収率(割合)が、出発培養物又は調製物中のその種類の細胞の割合を上回って、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%又は少なくとも約60%増大されることを意味する。濃縮と部分的な精製とは、同義的に使用される場合がある。
【0242】
細胞の集団は、細胞表面マーカーなどのマーカーに基づく方法(例えば、FACS選別など)などの種々の方法を使用して濃縮され得る。
【0243】
細胞及び組成物
上記で論じられたように、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞は、本明細書に記載の方法を使用して単離され得る。したがって、適用のさらなる態様は、本明細書において記載される方法に従って製造された細胞の集団を含む。一実施形態では、細胞の集団は、肝芽細胞、肝細胞及び/又は胆管細胞、任意選択で、例えば、本明細書に記載の方法に従って製造され、例えば、成熟した及び/又は機能的細胞のマーカーを発現する成熟した及び/又は機能的な肝細胞及び/又は胆管細胞の濃縮され、精製されるか、又は単離された細胞集団である。濃縮され、精製されるか、又は単離されるものは、任意選択で、単細胞懸濁液、凝集体、キメラ凝集体及び/又は分岐構造及び/若しくは嚢胞を含む構造である。
【0244】
一実施形態では、成熟した及び/又は機能的な肝細胞は、AFP及び/又は胎児CYP3A7の発現を欠く。
【0245】
一実施形態では、成熟した及び/又は機能的胆管細胞(cholangioctye)は、MDR輸送体遺伝子、アクアオリン、CFTR及び/又はその突然変異体を発現する。
【0246】
一実施形態では、細胞集団は、任意選択で、Notch2を発現する肝芽細胞集団である。
【0247】
一実施形態では、単離され、精製された及び/又は濃縮された集団が、in vitroで製造される。
【0248】
一実施形態では、細胞の集団は、適した希釈剤とともに組成物中に含まれる。
【0249】
適した希釈剤として、例えば、血清、血清代替品又は血清栄養補助剤及び/又はジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロールメチルセルロース又はポリビニルピロリドンなどの適した凍結保護物質を含有する、例えば、適した培養培地又は凍結培地が挙げられる。さらなる態様は、任意選択で、細胞培養基本培地の栄養補助剤として使用され得るFGF及び/又はBMP4アゴニストを含む培養培地栄養補助剤組成物を含む。栄養補助剤としてまた、アクチビンA、Wnt3A、CHIR-99021などのGSK-3選択的阻害剤、HGF、デキサメタゾン、オンコスタチンM、アスコルビン酸、グルタミン及びB27栄養補助剤などの本明細書において論じられる他の成分を挙げることができる。
【0250】
一実施形態では、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞は、肝臓及び/又は胆管疾患に罹患した対象のiPSに由来する。一実施形態では、疾患は、一遺伝子性疾患、例えば、嚢胞性線維症、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC1、2及び3型)である。
【0251】
一実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症である。一実施形態では、対象は、突然変異、例えば、嚢胞性線維症遺伝子、例えば、δF508、997 CFTR del及び/C1 CFTR突然変異を保持する。図9に示されるように、記載される方法は、嚢胞性線維症患者から作製され/由来するiPSCから肝芽細胞(heptoblast)集団を作製し得る。
【0252】
一実施形態では、疾患は、複合胆管疾患、任意選択で、原発性硬化性胆管炎又は胆管閉鎖症である。
【0253】
別の態様は、本明細書に記載の方法に従って調製された、本明細書において記載された細胞の集団を含む埋め込み可能な構築物又は体外バイオ人工肝臓装置(BAL)を含む。
【0254】
用途
本明細書において記載される機能的肝細胞及び/又は胆管細胞及びそれらの誘導体は、1種又は複数の適用において使用され得る。例えば、方法は、肝臓及び/又は胆管疾患に罹患した対象に由来するか、又はそれから得られたiPSCから肝系細胞の集団を製造するために使用され得る。
【0255】
したがって、別の態様は、肝臓及び/又は胆管疾患細胞モデルを作製する方法であり、
i)肝臓及び/又は胆管疾患に罹患した対象に由来するか、又はそれから得られる細胞からiPSCを作製するステップと、
ii)本明細書において記載される方法に従って、肝系細胞並びに/又は凝集体及び/若しくは構造、任意選択で、分岐構造及び/若しくは嚢胞を含む肝系細胞を作製するステップと、
を含む。
【0256】
疾患は、一実施形態では、疾患は、一遺伝子性疾患、例えば、嚢胞性線維症、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC1、2及び3型)である。一実施形態では、疾患は、複合体胆管疾患、任意選択で、原発性硬化性胆管炎又は胆管閉鎖症である。
【0257】
別の態様は、嚢胞性線維症細胞モデルを作製するための方法であって、
i)嚢胞性線維症に罹患した対象に由来するか、又はそれから得られた細胞からiPSCを作製するステップと、
ii)本明細書において記載される方法に従って、胆管細胞系細胞並びに/又は構造、任意選択で、分岐構造及び/若しくは嚢胞を含む胆管細胞系細胞を作製するステップと
を含む、方法である。
【0258】
例えば、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞は、予測薬毒性学、薬物スクリーニング及び創薬のために使用され得る。
【0259】
したがって、一実施形態では、本明細書において記載される方法を使用して作製された機能的肝細胞及び/又は胆管細胞集団を、試験化合物と接触させるステップと、1)細胞増殖、2)肝細胞及び/若しくは胆管細胞特定化の成熟、3)1種又は複数の肝芽細胞、肝細胞及び/若しくは胆管細胞特性並びに/又は4)野生型細胞集団及び/又は試験化合物の非存在下で試験された他の対照と比較された、1種若しくは複数の肝臓及び/若しくは胆管疾患細胞モデル欠陥の回復及び/若しくは寛解を測定するステップとを含むアッセイが提供される。
【0260】
一実施形態では、方法は、例えば、実施例9において測定されるような、1種又は複数の肝芽細胞、肝細胞及び/又は胆管細胞特性を測定するステップをさらに含む。
【0261】
一実施形態では、1種又は複数の胆管細胞特性は、
a)I)分岐構造及び/又は嚢胞の存在及び/又は数;II)胆管細胞マーカー発現レベル、形態(成熟した形態及び/又は未熟な形態)及び/又は発現パターンを評価する、野生型iPSCと比較した、肝芽細胞/胆管細胞系統分化能、
b)野生型iPSCと比較した、胆管細胞系形成の動態学、並びに/又は
c)輸送体活性、任意選択で、CFTR活性
を含む。
【0262】
例えば、CFTR活性は、例えば、フォルスコリンなどのcAMPアゴニストを使用して嚢胞膨潤を測定することによって評価され得る。実施例9は、CFTR活性を測定するために使用され得る方法の一例を提供する。
例えば、化学矯正剤VX809及びCorr-4aは、フォルスコリン刺激アッセイにおける嚢胞膨潤によって測定されるように(実施例9)、胆管細胞嚢胞において突然変異体CFTR活性を回復させ/増強し得ることが示された。例えば、新規薬物/生物製剤の評価を提供する及び/又は患者に特異的な反応を評価するための、推定又は既知CFTR処理を用いて試験する場合に、この特性又は別の特性の回復及び/又は寛解が評価され得る。
【0263】
別の態様として、機能的CFTRアッセイであって、
i)任意選択で、CF及び/又はCF関連疾患を有する患者に由来するiPSCから分化した嚢胞中の胆管細胞系細胞を、cAMPアクチベーター、任意選択で、フォルスコリン及びIBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)と接触させるステップと
ii)任意選択で、試験物質の存在下で膨潤を測定するステップと、
iii)任意選択で、試験物質の存在下又は非存在下で野生型細胞又は他の対照と比較するステップと
を含むアッセイが挙げられる。
【0264】
例えば、試験物質は、VX-770などのCFTRチャネル増強物質の存在下で、比較及び/又は試験され得る。VX-770は、特定のCF突然変異、G551Dを保持する患者に使用されるFDA承認薬である(Kalydecoとしても知られる)。
【0265】
【0266】
記載される細胞はまた、細胞移植のために使用され得る。例えば、細胞の混合集団濃縮及び/又は単離された機能的肝細胞及び/又は胆管細胞が、例えば、肝疾患を治療するために、それを必要とする対象に導入され得る。
【0267】
したがって、態様は、本明細書において記載される方法に従って、細胞を得るステップ並びに/又は単離された肝細胞及び/若しくは胆管細胞、任意選択で、機能的肝細胞及び/若しくは胆管細胞を調製するステップ並びにそれを必要とする対象、例えば、肝臓及び/又は胆管疾患を有する対象に前記細胞を投与するステップを含む。
【0268】
例えば、Yusaら(55)は、iPSC由来肝細胞において既知遺伝子欠陥を修正するステップ及びそれらを再移植する(retranspanting)ステップを記載した。修正された細胞は、マウスに再移植され、疾病状態ではこれまでには存在しなかった機能性を示した。Yusaらは、この目的に最も適したトランスポゾンは、piggyBac、ヒト胚性幹(ES)細胞を含めた哺乳類細胞において効率的に転位させることができる蛾由来DNAトランスポゾンであることを見出した。可動性因子によって、piggyBac反転リピートが両端に接する導入遺伝子を全く残りの配列を残さずに除去することが可能となる。生じたiPSC-3-G5-A7は、修正されたA1AT、親の線維芽細胞と比較して無傷のゲノムを有しており、肝細胞様細胞に分化した時点で正常なA1ATタンパク質を発現した。
【0269】
トランスポゾンは、任意選択で使用される。発現構築物を導入する他の方法として、レンチウイルス、アデノウイルスベースの方法が挙げられる。in vitro及びin vivoの両方で遺伝子を細胞中に導入するための効率的な系は、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)及びレンチウイルスを含めたウイルスをベースとするベクターである。ヒトにおける遺伝子送達のための代替アプローチとして、裸の、プラスミドDNA並びにリポソーム-DNA複合体の使用が挙げられる(Ulrichら、1996;Gao及びHuang、1995年)。2種以上の導入遺伝子が、送達されたベクター構築物によって発現され得るということは理解されなければならない。或いは、各々、1種又は複数の異なる導入遺伝子を発現する別個のベクターも、細胞に送達され得る。
【0270】
同時トランスフェクション(別個の分子上のDNA及びマーカー)が、任意選択で、使用される(例えば、US5,928,914及びUS5,817,492を参照のこと)。同様に、ベクター自体(好ましくは、ウイルスベクター)内のマーカー(緑色蛍光タンパク質マーカー又は誘導体など)が有用である。
【0271】
ヒト多能性幹細胞におけるゲノム編集のためによく使用される系は、例えば、Joung及びSander 2013年(56)並びにRanら2013年(57)にそれぞれ記載されるような転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPR-Cas9系である。
【0272】
さらなる方法は、任意選択で、遺伝子編集及び突然変異した遺伝子の修正のためのTALEN(転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼと組み合された、ZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)含む。例えば、Gajら(58)を含む。
【0273】
したがって、一実施形態では、方法は、肝臓及び/又は胆管疾患に罹患した患者から細胞、任意選択で、血液細胞を得るステップと、機能的及び/又は治療用タンパク質をコードする構築物をゲノム編集及び/又は挿入するステップと、構築物を挿入する前又は後のいずれかに、本明細書に記載の方法に従って、肝芽細胞、肝細胞及び/又は胆管細胞を誘導するステップとを含む。
【0274】
一実施形態では、投与される細胞の集団は、約25/26日目の細胞の集団である。一実施形態では、細胞は、肝細胞又は胆管細胞(cholagiocyte)の運命に特定化される。
【0275】
また、前記細胞及び前記細胞を含む組成物の、それを必要とする対象、例えば、肝疾患を有する対象の移植及び/又は治療のための使用も含まれる。
【0276】
例えば、図8c)~e)に示され、実施例3に記載されるように、ESC由来の移植された肝細胞が生着し、肝細胞及び胆管細胞系統の細胞に分化することができることが実証される。同様に、実施例9は、CFTR機能的胆管細胞は、in vitro及び/又はin vivoで製造され得ることを実証する。
【0277】
したがって、一実施形態では、それを必要とする対象を、本明細書に記載の方法に従って作製された肝細胞を用いて移植又は治療する方法が提供される。一実施形態では、本開示は、肝疾患及び/又は胆管疾患を有する対象の例の、それを必要とする対象を治療するための本明細書に記載の方法に従って作製された細胞の使用を含む。
【0278】
一実施形態では、治療有効量が投与される。
【0279】
Takebeらは、in vitroで作出された肝芽の移植による、ヒトiPSCからの血管形成された、機能的ヒト肝臓の作製を実証した。
【0280】
一実施形態では、得られた細胞は、自己細胞、例えば、対象から得た血液及び/又は皮膚細胞から作製したiPSCに由来する。一実施形態では、PSCは、例えば、生検、血液細胞、皮膚細胞、毛包及び/又は線維芽細胞から得られたiPSCであり得る。
【0281】
別の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して作製された肝細胞及び/又は胆管細胞(cholagiocytes)は、毒性スクリーニングにおいて試験物質と接触される。CYPは、薬物代謝及び生体内活性化に関与する主要な酵素である。薬物-薬物相互作用アッセイ、CYP阻害アッセイ及びCYP誘導アッセイを含めた種々のアッセイが実施され得る。
【0282】
例えば、薬物は、CYPアイソザイムを誘導すること(CYP誘導)によって、又は所与のCYPの活性を直接阻害すること(CYP阻害)のいずれかによって、種々のCYPアイソザイムの活性を増大又は低減し得る。CYP酵素活性の変化は、種々の薬物の代謝及び/又はクリアランスに影響を及ぼし得る。例えば、ある薬物が、別の薬物のCYP媒介性代謝を阻害する場合には、第2の薬物は、身体内に毒性レベルに蓄積し得る。
【0283】
他の実施形態では、CYP阻害スクリーニングが実施され得る。本明細書に記載の方法を使用して製造された肝細胞は、CYP1A2、CYP2B6、CYP3A4、CYP2B6、CYP2C9、CYP2D6及び/又はCYP7A1を発現するとわかると実証されるように、例えば、LC-MS/MS又は蛍光アッセイを使用する1種又は複数のこれらのアイソザイムの阻害についてのスクリーニングが実施され得る。CYP IC50及び/又はKが決定され得る。
【0284】
さらに他の実施形態では、CYP酵素の誘導が評価され得る。例えば、いくつかの化合物は、CYP酵素を誘導し、その結果、誘導されたCYP酵素の基質である同時投与される薬物の代謝が増大する。したがって、このような同時投与される薬物は、有効性を失い得る。CYP1A2、CYP2B6、CYP2C及びCYP3A4などのCYP酵素は、誘導の影響を受けやすい。CYPの触媒活性及びmRNAレベルは、対照に対して測定され得、結果は、誘導倍数として表される。
【0285】
さらに他の実施形態では、薬物代謝産物が評価され得る。例えば、薬物の代謝産物スペクトルが決定され得る。
【0286】
一実施形態では、種々の濃度の試験物質が、本明細書に記載の方法を使用して得られた細胞に添加され、細胞は、生存、CYP450アイソザイム活性、CYP450アイソザイムmRNAレベル及び/又は代謝産物プロファイルについて評価される。方法は、例えば、全体的に薬物をスクリーニングするため、又は薬物に対する患者の特異的毒性を評価するために使用され得る。
【0287】
一実施形態では、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞は、組織工学において使用される。例えば、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の精製された集団を利用できることによって、規定数の機能的肝細胞及び/又は胆管細胞を有する操作された構築物の作製が可能となる。他の例では、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞の精製された集団を利用できることによって、バイオ人工肝臓装置の作製が可能となる。
【0288】
研究段階での肝臓を臓器全体として用いる移植の代替手段としては、単離された細胞移植、埋め込み可能な構築物の組織工学、及び体外バイオ人工肝臓装置(BAL)を使用することが挙げられる(51に概説される)。この参考文献の451頁に示されるように、「その将来の使用は、細胞成分の選択及び安定化に応じて変わるであろう」。細胞系統及び非ヒト細胞が評価されてきたが、臨床使用については困難がある。ヒト機能的肝細胞及び/又は胆管細胞供給源における制限も、このような装置の開発を妨げてきた。
【0289】
52に概説されるように、肝臓は、アルブミンを含めた血漿タンパク質、補体系の成分並びに凝固及び線維素溶解因子の主な供給源である。肝臓不全の結果、低分子量物質を処理することができなくなり、低分子量物質の一部は水溶性である(アンモニア、フェニルアラニン、チロシン)が、多くは水に難溶性であり、輸送タンパク質、主にアルブミンと結合されて血液中に輸送される(中鎖脂肪酸、トリプトファン及びその代謝産物、内因性ベンゾジアゼピン及び他の向神経活性物質、メルカプタン、毒性胆汁酸、ビリルビン、重金属及び内因性血管拡張剤)。これは、直接的細胞毒性(例えば、黄疸による急性尿細管壊死)による複数の続発性臓器不全、機能的ホメオスタシス変更(例えば、血行動態調節不全の結果としての肝腎症候群)又は両方の組合せ(例えば、肝性脳症及び昏睡)を引き起こす、内因性毒素の蓄積につながる。肝臓支持療法のために、組み合わされた透析及び血漿交換、選択的血漿ろ過及び吸着27又は選択的血漿交換治療技術が開発されている。血漿交換技術は、例えば、高度選択的メンブラン及びアルブミン透析を使用して、水溶性毒素とともにアルブミン結合型毒素のクリアランスを増大する。
【0290】
アルブミンを産生する機能的肝細胞及び/又は肝細胞を得ることが、BALとともに使用され得る。例えば、機能的肝細胞が得られる場合には、必ずしも、アルブミン透析を実施する必要はない。肝臓から分泌される主要なタンパク質であるアルブミンタンパク質を生成できるES/iPS由来肝細胞も、BAL及びアルブミン透析とともに使用され得る。ヒト供給源からのアルブミンの製造は、例えば、BALにおいて重要である。アルブミンは、ホルモン、脂肪酸及び毒性物質を含めた他の化合物を輸送する。アルブミン透析の利益は、毒性化合物が結合しているアルブミンが血流から排除され得るということである。肝臓及び腎臓疾患のために臨床的に使用されるヒト血清アルブミンは、現在、献血された血液のみから得られる。アルブミン分泌細胞を作製することは、及び/又は高度の肝機能活性とともに、BAL系を確立するために有利であると予想される。
【0291】
一実施形態では、方法は、患者特異的疾患hiPSCに適用され、例えば、モデル肝疾患に使用される。例えば、肝疾患を有する患者から肝臓又は他の細胞が、単離され、hiPSCを得るために処理され得、次いで、これが、培養され、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞を分化するよう誘導され得る。これらの細胞は、疾患に関与している遺伝子又は患者の免疫細胞に対する反応などの疾患の特徴を評価するために使用され得る。
【0292】
例えば、正常な細胞及び患者特異的疾患hiPSCが、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞に誘導され、比較され得る。例えば、正常及び患者特異的hiPSCに由来する膵臓前駆細胞及びβ細胞の遺伝子解析、エピジェネティック解析及びプロテオミクス解析が実施され得る。このような詳細な解析は、シグナル伝達経路、転写調節ネットワーク及び/又は正常ヒト肝臓発達を調節する細胞表面マーカー並びに疾患において役割を果たすものの発見につながり得る。
【0293】
用語「対象」とは、本明細書において、哺乳動物を含めた動物界のすべてのメンバーを含み、ヒトを指すことが適している。
【0294】
単離された細胞に適用されるような、用語「処理する」、「処理すること」、「処理」などは、細胞を、任意の種類のプロセス又は条件に晒したり、又は任意の種類の操作若しくは手順を細胞に実施したりすることを含む。対象に適用される場合、この用語は、個体に医学的又は外科的手当、ケア又は管理を提供することを指す。
【0295】
本明細書において、対象に適用される用語「処理」は、臨床結果を含めた有益な又は所望の結果を得ることを目的とするアプローチを指し、例えば、医薬的介入、手術、放射線療法及び自然療法的介入並びに試験処置を含めた医療処置及び適用を含む。有益な又は所望の臨床結果として、それだけには限らないが、検出可能、検出不能にかかわらず、1種又は複数の症状又は状態の軽減又は寛解、疾患の程度の縮小、疾患の安定した(すなわち、悪化しない)状態、疾患の蔓延を防ぐこと、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の寛解又は緩和及び緩解(部分的又は全体的にかかわらず)を挙げることができる。「処理」はまた、処理を受けていない場合に予測される生存と比較した延命を意味し得る。
【0296】
本明細書において、用語「投与する」、「導入する」及び「移植する」は、所望の部位での導入された細胞の少なくとも部分的局在をもたらす方法又は経路によって細胞(例えば、機能的肝細胞及び/又は胆管細胞)を対象に送達することとの関連で同義的に使用される。細胞は、肝臓に直接的に埋め込まれ得るか、或いは、埋め込まれた細胞の少なくとも一部若しくは細胞の成分が、生存可能なままである対象中の所望の場所への送達をもたらす任意の適当な経路によって投与され得る。
【0297】
キット
さらなる態様は、キットを含む。キットは、例えば、上記のアゴニスト、アンタゴニスト、成熟因子などのうち1種又は複数、本明細書において記載される方法において使用され得る細胞などを増殖させるための1種又は複数の培地、容器、並びに/又は本明細書に記載の方法に従って増殖及び/若しくは調製された細胞を含み得る。一実施形態では、キットは、本明細書における方法に従って使用するための使用説明書を含む。一実施形態では、キットは、任意選択で、使用説明書、例えば、細胞などを増殖させるための1種又は複数の培地、容器を含めた、例えば、上記のアゴニスト、アンタゴニスト、成熟因子などのうち1種又は複数とともに、本明細書において製造された細胞の集団を含む。
【0298】
本開示の範囲を理解するうえで、用語「含む(comprising)」及びその派生語は、本明細書において、述べられた特徴、要素、成分、群、整数及び/又はステップの存在を特定するが、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数及び/又はステップの存在を排除しない制約がない用語であると意図される。前述のことは、用語「含む(including)」、「有する(having)」及びその派生語などの同様の意味を有する語句にも当てはまる。最後に、「実質的に」、「約」及び「およそ」などの程度の用語は、本明細書において、最終結果が有意に変更されないような修飾された用語の合理的な量の逸脱を意味する。これらの程度の用語は、この逸脱が修飾する語句の意味を無効にしない場合には、修飾された用語の少なくとも±5%の逸脱を含むと考えられなければならない。
【0299】
本開示の範囲を理解するうえで、用語「からなる」及びその派生語は、本明細書において、述べられた特徴、要素、成分、群、整数及び/又はステップの存在を特定し、他の述べられていない特徴、要素、成分、群、整数及び/又はステップの存在を排除する制約のある用語であると意図される。
【0300】
本明細書における終点による数的範囲の列挙は、その範囲内に含まれるすべての数及び分数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4及び5を含む)。全ての数及びその分数は用語「約」によって修飾されていると推定されることも理解されるべきである。さらに、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、内容が別のことを明確に示さない限り、複数の言及を含むということも理解されるべきである。用語「約」は、言及がなされる数字の、プラス又はマイナス0.1~50%、5~50%又は10~40%、好ましくは、10~20%、より好ましくは、10%又は15%を意味する。
【0301】
さらに、特定の節において記載される定義及び実施形態は、当業者によって理解されるように適している本明細書において記載される他の実施形態に適用可能であるものとする。例えば、以下の一節では、本発明の種々の態様がより詳細に定義される。そのように定義される各態様は、反対に明確に示されない限り、他の態様(単数又は複数)と組み合され得る。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴(単数又は複数)と組み合され得る。
【0302】
上記の開示は、本願を全般的に記載する。より完全な理解は、以下の特定の実施例を参照することによって得られ得る。これらの実施例は、本願の範囲を制限しようとするのではなく、単に例示目的で記載される。状況が示唆するか、好都合にする場合には、等価物の形態の変化及び置き換えが考慮される。本明細書において特定の用語が使用されてきたが、このような用語は、記述的意味で意図され、制限を目的としない。
【0303】
以下の限定されない例は、本開示の例示である。
【実施例
【0304】
(例1)
<EBにおける内胚葉誘導>
図1aに、胚葉体(EB)を使用してhESCから肝細胞を作製するために使用される戦略を示す。単層培養を使用するプロトコールと同様に16、初期胚における肝臓発達の臨界的段階を繰り返す特定のステップを含む。EBは、これまでに記載されたように18、低レベルのBMP4中での24時間の培養によって小さい凝集体から形成される。EBは、胚体内胚葉、表面マーカーCXCR4、CKIT及びEPCAM並びに転写因子SOX17及びFOXA2の発現によって規定される集団を誘導するために、続いて、高濃度のアクチビンA(本明細書において以下、アクチビンと呼ばれる)に5日間曝露される。図1bに示されるように、誘導されたEB集団の90%超が、5日のアクチビン誘導(6日の総培養)後にCXCR4及びCKIT又はCXCR4及びEPCAMを同時発現する。細胞内フローサイトメトリー分析は、集団の90%超がSOX17を発現し、80%超がFOXA2であると示した。
【0305】
単層誘導プロトコールを使用する研究は、Wntシグナル伝達が、おそらくは前原始線条形成の増強のためにアクチビン誘導性内胚葉発達を増強することを実証した10。アクチビン誘導されたEB培養物へのWnt3Aの添加は、EB内のCXCR4、SOX17及びFOXA2細胞の割合の再現性のある増大につながった(図1c)。CXCR4発現の増大につれて、CKITCXCR4及びCXCR4EPCAM細胞の割合が、集団の95%超に増大した。分子解析は、Wnt誘導されたEBにおけるSOX17及びFOXA2発現レベルの上昇を示し、フローサイトメトリーデータが確認された(図1d)。Wntの添加は、Oct3/4の発現の低下を加速しなかったが、3日目のT(ブラキュリ)発現並びに4及び6日目のグースコイド(GSC)発現の増大につながった(図1d)。Wntは、マウスESCモデルにおいて19、及び単層hESC由来培養物において10実証されるように、原始線条形成を増強する。動態解析は、分化の3から6日の間のCKITCXCR4、SOX17及びFOXA2陽性細胞の割合の迅速な、動的な増大を示した(図1e)。EBにおける内胚葉誘導は、使用された基本培養培地によって影響を受けた。StemPro34は、これまでに使用した神経基本培地よりも効率的な内胚葉誘導を支持した(図1f)。高度に濃縮された内胚葉の誘導は、hPSCからの肝細胞様細胞の効率的な、再現性のある作製における重要な第1のステップである。例えば、少なくとも90%のCXCR4+CKIT+及び80%のSOX17+細胞という誘導レベルが、最適な肝系統発達をもたらすとわかった。
【0306】
<nodal/アクチビンシグナル伝達の期間が、肝発達に影響を及ぼす。>
CXCR4CKIT集団を肝臓への運命に特定化するために、6日目EBを解離し、細胞を単層として、FGF10及びBMP4の存在下でMatrigelコーティングしたプレート上に48時間、次いで、bFGF及びBMP4において6日間置いた。マウスにおいて20及びヒトESC分化培養物において16、FGF及びBMPは、ヒト及びマウス特定化にとって重要であることがこれまでに実証されている。Si-Tayebらでは、FGF2及びBMP4が組み合わされ、作製された細胞の80~85%が、アルブミンを発現した。これら2種の因子の組合せは、試験された条件下での最適な肝誘導にとって必要であることがわかった(図2a)。分化培養においてbFGF/BMP4単独と比較してアルブミン発現を増大するとわかったので、FGF10/BMP4ステップを含めた(図2b)。これらの誘導条件を用いて、相当数のアルブミン陽性細胞が、分化の12から24日目の間に培養物において一貫して発達した。
【0307】
BMP4/FGF特定化ステップは、肝発達を促進するが、10日目での培養物の解析は、培養物内のSOX17及びFOXA2細胞の割合が、90%超からおよそ50%に有意に減少したことを示した(図3a)。理論に捉われるものではないが、この減少は、6日目集団が、FGF及びBMP4の存在下で優先的に増殖した非内胚葉細胞によって混入されていたか、又は細胞の内胚葉の運命がまだ固定しておらず、結果として、使用された条件下で、一部が別の運命を選んだことのいずれかを示唆した。in vitroマウスESC分化系において、前原始線条細胞から内胚葉の運命を確立するために、長期のアクチビン/nodalシグナル伝達が必要であることがこれまでに実証されている19。シグナル伝達が、ヒトPSCを用いた場合に有用であるかどうかはわかっていなかった。このシグナル伝達経路の期間を増大する効果は、FGF/BMP4特定化ステップの前にアクチビンにおいて単層細胞を2日間培養することによってヒト系において延長された。さらに2日間アクチビンを用いて誘導される場合には、12日目に測定されたSOX17及びFOXA2細胞の割合は、非処理群においてよりも有意に高かった(図3a)。理論に捉われるものではないが、総細胞数が、処理集団において少なかったので(図3b)、この段階でのアクチビンシグナル伝達が、内胚葉細胞の生存を優先的に支持することがあり得る。
【0308】
長期アクチビン処理は、CXCR4CKIT集団を、培養8日目まで維持し(図3c)、培養26日目にHEX、AFP、ALB及びHNF4aを含めた肝前駆細胞(肝芽細胞)発達を示す遺伝子の高レベルの発現をもたらした(図3d)。24日目のMEOX1、MESP1、CD31及びCD90の発現によって、並びにCD90間葉細胞及びCD31内皮細胞の存在によって実証されるように、非処理CXCR4CKIT内胚葉から作製された培養物は、混入する中胚葉を含有していた(図3d,e)。アクチビン処理内胚葉に由来する集団は、中胚葉遺伝子の発現の低下を示し、高割合のEPCAM細胞、検出可能でないCD31細胞及びかなり少ないCD90集団を有していた(図3e)。これらの相違と一致して、培養26日目の非処理集団と比較して、処理したものにおいて有意に高い割合のアルブミン陽性細胞が得られた(図3f、g)。興味深いことに、AFP陽性細胞の割合は2群の間で異なっていなかった。理論に捉われるものではないが、これは、この段階では、非処理集団におけるその発現は、肝臓特異的ではない可能性があることを示唆する。
【0309】
<凝集は、肝成熟を促進する>
長期アクチビン/nodalシグナル伝達が肝発達を促進したが、アルブミン及びHNF4aなどの遺伝子の発現レベルは、成体肝臓と比較してhESC由来集団では有意に低く、26日目培養物における細胞は、まだ未熟であることを示唆した。これまでの研究は、細胞凝集は、培養物において初代肝細胞の分化した表現型を維持し得21-23、hESC由来肝細胞のある程度の成熟を促進する24ことを示した。次に、アクチビン処理内胚葉に由来する26日目肝芽細胞集団の成熟に対する凝集の役割を調べた。酵素処理及び手作業による解離の組合せによって単層から凝集体を作製し、次いで、HGF、デキサメタゾン(Dex)及びオンコスタチンM(OSM)の存在下で6日間培養した(図4a)。凝集は、分化に影響を及ぼさず、ALB(アルブミン)、CPS1(カルバモニル-ホスファターゼシンターゼ1)、TAT(チロシンアミノトランスフェラーゼ)、G6P(グルコース6ホスファターゼ)及びTDO(トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ)を含めた、肝臓機能と関連するいくつかの遺伝子の発現の増大につながった(図4b)。いくつかの場合には、レベルは、(ALB)成体肝臓において見られるレベルと同様であり、(TDO)より高かった(図4b)。凝集はまた、CYP7A1、CYP3A7及びCYP3A4を含めたいくつかのシトクロムP450遺伝子の発現を増大させた。CYP3A4のレベルは、初代肝細胞において見られたものと同様であったが、成体肝臓におけるものよりもかなり低かった(図4c)。CYP1A2及びCYP2B6を含めた他のP450遺伝子並びに第II相酵素UGT1A1の発現は、何らかの有意なレベルに誘導されなかった。
【0310】
成熟した肝細胞では、細胞表面マーカーアシアロ糖タンパク質受容体-1(ASGPR-1)が見られ、hESC分化培養物において成熟細胞を示すとわかっている。凝集は、培養物において検出されるASGPR-1細胞の割合の劇的な増大をもたらし、50%超の陽性細胞を含有する集団が一貫して得られた(図4d)。免疫染色は、アルブミン32日目凝集体細胞でASGPR-1及びE-カドヘリンが検出されることを示した。これらの知見は、まとめて、凝集の3-D構造への簡単なプロセスが、肝成熟を示す変化を促進することを示す。
【0311】
<cAMPシグナル伝達は、hESC由来肝細胞様細胞の成熟を誘導する。>
細胞をさらに成熟させるために、cAMPシグナル伝達の役割が調べられた。肝細胞系統を使用する研究は、この経路の活性化が、幾分かは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1-α(PGC1-a)、HNF4aと一緒に機能して、肝細胞機能に関与する多数の遺伝子の発現を調節するコアクチベーターの誘導によって肝遺伝子発現を誘導し得ることを示した25-28。cAMPシグナル伝達が、hESC由来肝細胞様細胞の成熟を促進し得るかどうかを調べるために、8-ブロモアデノシン-3’5”-環状一リン酸(8-Br-cAMP)、cAMPの細胞透過性類似体を培養32~44日目に肝凝集体に添加した。8-Br-cAMPを用いる処理は、PGC1-aの発現を有意に増強した(15倍)が、hESC由来肝細胞においてHNF4aの発現は増強しなかった(図5a)。8-Br-cAMPはまた、G6P及びTATの発現を、成体肝臓におけるものに近似するレベルに対して、それぞれ、平均25及び33倍誘導した(図5a)。対照的に、AFP及びALBの発現レベルは、8-Br-cAMPによって下方制御された。フローサイトメトリー分析によって、AFP発現分析が確認され、非処理対照と比較して、8-Br-cAMP処理凝集体におけるAFP陽性細胞の数の低減(54%から26%)が示された。mRNAのレベルが低下したという事実にもかかわらず、ALB陽性細胞の割合は低減されなかった(図5b)。理論に捉われるものではないが、これらの相違は、RNA対タンパク質発現における相違を反映できなかった。膵臓などの他の組織も、PGC-1aを発現する。しかし、肝細胞において観察された誘導とは対照的に、PGC1-aの発現は、hESC由来インスリン陽性膵臓細胞においてcAMPシグナル伝達によって誘導されず(図5c)、これは、この応答が組織特異的であり得ることを示した。
【0312】
ヨードシアニングリーン(ICG)の細胞取り込みは、成体肝細胞に特徴的であると考えられ29、肝機能を評価するための試験基質として臨床的に使用されている30。cAMPシグナル伝達は、この活性を示す細胞の割合を劇的に増大させたと、ほとんどすべての処理された凝集体がICGで染まったという観察結果によって実証された(図5d)。
【0313】
共焦点顕微鏡を使用して、8-Br-cAMPの存在下及び非存在下で培養した44日目凝集体におけるALB及びAFP又はALB及びHNF4aの同時発現を評価した。免疫染色分析は、フローサイトメトリーデータと一致しており、cAMP処理された凝集体は、非処理のものと比較して、同様のレベルのALBを発現するが、低いレベルのAFPを発現することを示した。
【0314】
hESC由来単層及び凝集体集団によって、並びにHepG2細胞、Huh7細胞及び低温保存された肝細胞(PH、ロットOSI)によって分泌されたアルブミン(ALB)のレベルを、ELISAアッセイを使用して検出した。両凝集体集団におけるHNF4ctfflタンパク質のレベルは匹敵しており、PCR解析を確認した。hESC由来細胞によるアルブミン分泌は、8-Br-cAMP処理によって影響を受けなかったが、凝集ステップによって劇的に増強された。アルブミン分泌は、単層培養物において20日目に低レベルで検出可能であったが、32日目の凝集した培養物では劇的に増大した(約5倍)。HepG2、Huh7及びPH細胞では低レベルのみが検出された。一方、ヨードシアニングリーン(ICG)を取り込む能力、成体肝細胞の特徴(Stiegerら、2012年)は、cAMPシグナル伝達によって増強された。cAMP処理されたもの及び非処理のものによるICG取り込み及び放出を、44日目凝集体において測定した。
【0315】
cAMPシグナル伝達は、hESC由来肝細胞において代謝酵素活性を増大する。
cAMPシグナル伝達はまた、重要な第I相シトクロムP450遺伝子の発現パターンの変化、特に、胎児遺伝子CYP3A7の発現のレベルの低下及び成体遺伝子CYP3A4(2.5倍)、CYP1A2(18倍)及びCYP2B6(4.7倍)の発現の大幅な増大も誘導した(図6a)。UGT1A1、重要な第II相酵素も、8-Br-cAMPによって有意に誘導された(11倍)(図6a)。CYP3A4及びCYP1A2の誘導されたレベルは、初代肝細胞において見られたものよりも有意に高かったが、CYP2B6のレベルは、2種の集団において同様であった。hESC由来集団におけるUGT1A1発現は、初代肝細胞において見られたレベルに達しなかった。理論に捉われるものではないが、CYP1A2の発現が、肝臓に制限され、誕生後にのみ検出されることを考えると31、これらの知見は、cAMPシグナル伝達が、発達の胎児段階を超える分化を促進することを示唆する。
【0316】
単層培養物に添加された場合には、CYP1A2及びCYP3A4の発現の増大はほとんど検出されなかったので、P450遺伝子に対するcAMPシグナル伝達の誘導効果は、3次元凝集体中の細胞においてのみ観察された(図6b)。PGC1-a及びTATの発現は、おそらくは、これらの遺伝子のプロモーター領域がcAMP応答配列結合タンパク質(CREB)部位を含有するという事実のために、単層形式において誘導された。さらに規定するために、長期アクチビン処理された内胚葉から作製されたcAMP応答凝集体に影響を及ぼす変数を、さらに2日のアクチビン/nodal処理を伴わずに内胚葉から作製されたものと比較した。非処理集団(-Act)に由来する凝集体では、CYP1A2及びALBの誘導は、ほとんど観察されず、cAMPシグナル伝達は、高度に濃縮された、適宜パターン形成された細胞に対してのみ有効であることを示唆した(図6c)。上記の研究のために、8-Br-cAMPを、12日間(32日目~44日目)培養物中に含めた。遺伝子発現の変化が、連続的なシグナル伝達に応じて変わるかどうかを調べるために、8-Br-cAMPを用いて6日間誘導され、次いで、残りの6日間8-Br-cAMPの非存在下で維持された細胞を、8-Br-cAMPにおいて全12日間培養されたものと比較した(図6d)。CYP1A2の発現は、短い誘導時間後に維持され、これは、高レベルの発現は、連続的シグナル伝達によるものではなく、むしろ、肝細胞成熟を示す変化を反映することを示した。
【0317】
P450酵素の機能活性を調べるために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によってアイソザイム選択マーカー薬物を代謝する能力を測定した。8-Br-cAMP処理された細胞は、初代培養肝細胞と同程度に高いレベルでCYP1A2選択基質フェナセチンをO-脱エチル化した(図6e)。非処理細胞は、検出可能な活性を示さなかった。8-Br-cAMP処理細胞において、ブプロピオンの水酸化によって測定されるようなCYP2B6活性も、初代肝細胞において見られたものに匹敵するレベルで検出された(図6f)。アリールアミンA/-アセチルトランスフェラーゼNAT1及び/又はNAT2(図6g)並びにUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)(図6h)を含めた第II相代謝酵素の解析は、初代培養肝細胞のものより高い活性を示し、cAMPシグナル伝達が、集団の成熟と一致する、広範囲の酵素の発現の上方制御を誘導することを示した。これらの観察結果は、全体で、cAMPシグナル伝達が、3-D凝集体中のhESC由来肝細胞様細胞の成熟を促進することを示す。
【0318】
さらに、2種の重要な酵素、CYP1A2及びCYP3A4の代謝活性の誘導性も評価した。8-Br-cAMP処理細胞は、CYP1A2選択的基質フェナセチンを代謝できた。72時間のランソプラゾールを用いる細胞の誘導は、この活性の3.4倍の増大をもたらした。非処理(8-Br-cAMP)細胞は、誘導可能ではなかった低レベルの活性を有していた。2種の独立した初代肝細胞サンプルは、低い又は匹敵するレベルの基本代謝活性を示したが、高レベルの誘導(18倍及び9倍)を示した。CYP3A4活性は、テストステロンを6β-ヒドロキシルテストステロンに代謝する細胞の能力によって測定した。8-Br-Camp処理細胞は、この活性を示した。CYP3A4インデューサーリファンピシンの添加は、活性を2.2倍増大させ、hESC由来細胞においてこの酵素もまた誘導可能であることを示した。CYP1A2を用いて観察されたように、非誘導細胞では、CYP3A4活性はほとんど検出されなかった。初代肝細胞は、低いが有意なレベルのCYP3A4誘導を示した。
【0319】
<他のhPSC系からの肝特定化及び成熟>
上記で詳述されたアプローチが、種々のヒト多能性幹細胞系に広く適用可能であるかどうかを調べるために、プロトコールを使用して、hESC系H9及びH1並びに誘導された多能性細胞(iPSC)系38-2を、肝臓への運命に分化させた。3種の系すべてから得た6日目EBが、Wnt3a/アクチビン誘導ステップ後に高割合のCKITCXCR4及びCKITEPCAM細胞を含有していた(図7a)。全てのEBにおいてEPCAM細胞の割合は高かったが、H9由来細胞は、他の系から作製された細胞よりも実質的に高いレベルのEPCAMを発現した。H9由来集団の95%超が、SOX17及びFOXA2を発現したが、iPSC誘導細胞の65~70%しか、これらの転写因子を発現しなかったので(図7a)、EPCAM発現のレベルは、内胚葉誘導の程度と相関していた。これらの知見は、表面マーカー解析単独は、内胚葉発達をモニタリングするのに十分ではないこと並びにSOX17及びFOXA2発現の定量的解析が、この胚葉の誘導を測定するために必要であることを示す。HES2細胞を用いて観察されるように、長期アクチビン/nodalシグナル伝達は、各系からのCKITCXCR4集団の肝発達を改善した(図7b)。しかし、有意なレベルのALB発現をもたらすのに必要なアクチビン処理の期間は、細胞系統間で変わった。H9由来細胞を用いた場合、2日間のアクチビン処理後に高レベルのALB発現が達成されたのに対し、H1及び38-2細胞は両方とも、4日のさらなるアクチビンシグナル伝達を必要とした。この処理を用いて、それぞれ、H9、H1及び38-2細胞系から90%、85%及び70%のALB細胞からなる培養物を作製することが可能であった(図7c)。分化26日目のH9由来細胞は、培養された肝細胞のものと極めて類似した敷石形態を示した(図7d)。
【0320】
8-Br-cAMPの添加は、H9由来凝集体において、有意なレベルのCYP3A4(16倍)、CYP1A2(100倍)及びCYP2B6(10倍)並びに第II相酵素UGT1A1(16倍)の発現を誘導した(図7e)。誘導の規模は、HES2由来細胞において実質的に高く、CYP1A2及びCYP3A4の発現のレベルは、初代肝細胞におけるものよりも有意に高かった。2種のhESC系間の誘導の相違の理由は、現在わかっていない。8-Br-cAMPもまた、hiPSC由来凝集体においてこれらの酵素の発現を、初代肝細胞におけるものと同程度に高いレベルに誘導した(図7e)。
【0321】
HES2系を用いて観察されたように、H9由来細胞は、ランソプラゾール誘導性CYP1A2活性を有していた。H9及びiPSC由来細胞はまた、リファンピシンを用いて誘導可能であるCYP3A4活性も示した。iPSC由来細胞では、誘導性CYP1A2活性は検出可能ではなく、おそらくは、この集団の最適以下の分化を反映していた。
【0322】
<cAMPによって刺激された肝集団のマイクロアレイ解析>
cAMP誘導の結果をさらに評価するために、また初代肝細胞に対するhES由来肝集団の発達状態を評価するために、マイクロアレイ解析を実施して、種々の集団のグローバルな発現プロファイルを比較した。合計23038種のフィルターをかけた転写物を、最終解析において使用した。二元配置教師なし階層的クラスター解析は、3群が別個の集団として現れることを示した。3種のcAMPによって誘導された集団は、互いに最も類似していたが、3種の初代肝細胞集団は最も多様な発現パターンを示した。FDR修正されたANOVA(q<0.05)を使用して、3種のサンプル群すべてにわたって最も統計的に有意な変動性を示す784種の転写物を同定した。これらのデータの階層的にクラスター化された可視化によって、各生物学的群において高度に発現される転写物のクラスターが同定された。これらのクラスターは、初代肝細胞では181種の転写物、8-Br-cAMP誘導された細胞では106種の転写物及び非処理細胞では80種の転写物からなっていた。8-Br-cAMP誘導された細胞において濃縮された遺伝子は、重要なP450酵素並びに糖新生、グルコースホメオスタシス及び脂質代謝を含めた肝臓機能の多数の態様と関連しているものの遺伝子個体発生カテゴリーのほとんどを含んでいた。初代肝細胞において最高レベルで発現されたクラスターは、免疫系、炎症関連及びMHC遺伝子からなっていた。誘導されていないhESC由来細胞において検出されたクラスターは、濃縮された遺伝子個体発生カテゴリーを全く含有していなかった。
【0323】
集団のより詳細な比較のために、肝臓機能の重要な態様に関与しているタンパク質をコードする転写物の選択されたセットを解析した。これらは、第I及びII相薬物代謝酵素のサブセット、トランスポーター、血液凝固因子、リポタンパク質、核受容体及び転写因子及び一般的な肝臓酵素及び他の機能的分子を含んでいた。これらのデータの解析は、8-Br-cAMP処理hESC由来細胞及び初代肝細胞において、遺伝子の多くが匹敵するレベルで発現されることを示した。各カテゴリーの選択遺伝子は、未処理細胞又は初代肝細胞と比較して、8-Br-cAMP処理細胞において相当に高いレベルで発現される。これらとして、qPCR及び機能研究を確認する第I相酵素CYP1A2及びCYP3A4、第II相酵素SULT2A1、輸送体SLCO1B1、一般的な肝臓酵素TAT、G6P及びTDO(それぞれ、チロシン代謝、糖新生及びトリプトファン代謝に関与している)、表面受容体ASGPR-1及びALBが挙げられる。肝細胞におけるICGの細胞取り込みは、有機アニオン輸送体SLCO1B1及びSLCO1B3並びにNa独立性輸送体SLC10A1によって調節されるので29、その発現の誘導は、cAMP処理凝集体が高レベルのICG取り込みを示したという知見と一致する。総合すると、マイクロアレイ解析から得られたこれらのデータは、cAMPを用いる肝芽細胞段階凝集体の誘導が、肝細胞成熟を示すグローバルな発現変化をもたらすことを示す。これらの解析に基づいて、このアプローチによって作製されたhESC由来肝細胞は、初代ヒト肝細胞のものと少なくとも同等の発達段階を表すと思われる。
【0324】
<考察>
hPSC由来肝細胞が薬物代謝解析にとって、及び肝疾患の治療のための移植にとって有用であるためには、細胞は、相対的に成熟しており、測定可能なレベルの重要な第I及びII相薬物代謝酵素を含めた成体肝細胞の多数の特徴を示さなければならない。今日までに、いくつかの異なる研究が、胚における重要な発達ステップの要点を繰り返すよう設計された段階的プロトコールを使用して、hESC及びhiPSCの両方から未熟な肝系細胞を作製することが可能であると示している。これらの研究の成功は、分化の初期段階を制御する経路は、ある程度規定されているという事実を反映する。対照的に、肝細胞成熟を制御する因子及び細胞相互作用は、不十分にしか理解されておらず、結果として、2、3の研究のみしか、代謝的に機能的な細胞の発達を報告していない。Duanら12は、初代肝細胞で見られるレベルに匹敵する、CYP1A2、CYP3A4、CYP2C9及びCYP2D6酵素活性のレベルを示したH9 hESCから肝細胞を導くことが可能であると示した。Duanらは、彼らの方法において、血清のバッチ間でその一部が変わる多数の因子を含む血清を使用した。関与する因子は不明確であった。これらの知見は、相対的に成熟したhESC由来肝細胞が作製され得ることを示すが、研究は、成熟を促進する経路に関する詳細は全く提供せず、また、戦略が、他のhPSC系に広く適用可能であることを実証することもなかった。Duanらの図6に示されるように、彼らは、ヒトES細胞(H9)から得た肝細胞において代謝薬物を測定した。フェナセチンは、CYP1A2活性を誘導し、その評価を提供し、ミダゾラム、ブフラロール及びジクロフェナクは、それぞれ、CYP3A4及びCYP2B6及びCYP2D6を誘導し、その評価を提供する。例えば、本明細書において記載されるHES2細胞系などでは、初代肝細胞と比較して、ほとんど同等のレベルの酵素活性(CYP1A2及びCYP2B6)が見られた。qPCR解析では、H9細胞におけるCYP1A2及びCYP2B6の発現のレベルは、HES2細胞系で見られるレベルよりも5~8倍高かった。本明細書において記載される方法は、CYP酵素CYP1A2及びCYP2B6の点で初代肝細胞とより密接に似ている細胞をもたらす。同様に、初代肝細胞と比較して、本方法を使用して作製された細胞では、ほとんど同一又は匹敵するレベルのCYP2D6発現が見られる。
【0325】
いくつかの他のグループが、単独又はSwiss 3T3細胞との共培養と一緒の、hESC由来集団における特定の転写因子の強制された発現が、成熟を促進し、その結果、重要な代謝酵素を発現する細胞が作製され得ることを示した32-34。しかし、このアプローチの主要な欠点は、どの実験にもウイルス形質導入が必要であること並びに感染の効率における相違及び強力な転写因子の適当なレベルの発現の確立における相違を含めた操作に起因する可変性である。初代肝細胞と比較した場合に、このアプローチによって作製されたhESC由来集団における発現レベルは、初代肝細胞で見られるレベルよりも相当に低かった。
【0326】
本明細書において、成熟を調節する経路についての洞察が提供される。3次元凝集及びcAMPシグナル伝達の組合せは、肝芽細胞の成熟において極めて重要な役割を果たすことも実証される。さらに、内胚葉誘導後のアクチビン/nodalシグナル伝達は、肝芽細胞前駆体集団の最適作製にとって必須であり、濃縮された前駆体集団は、成熟した集団の誘導にとって有用である。これら3種の別個のステップの組合せは、例えば、初代成体肝細胞で見られるレベルと同様の、機能的代謝酵素の発現プロファイル及びレベルを示す肝細胞様細胞の作製をもたらす。
【0327】
CXCR4C-KIT集団内の持続したアクチビン/nodalシグナル伝達は、成熟肝細胞の作製にとって有用であるという観察結果は、成熟細胞の効率的な作製のための初期段階細胞の適当な操作の重要性を強調する。分化6日目から8日目の間の長期アクチビン/nodalシグナル伝達の効果(HES2細胞について)は、培養26日目に検出されたアルブミン陽性細胞の遺伝子発現パターン及び割合に影響を及ぼした。このステップはまた、cAMPに応じて、代謝的に機能する肝細胞を生じさせるよう成熟する肝細胞の集団の発達を促進した。6日目EB標的集団は、95%超のCXCR4CKITEPCAMSOX17細胞からなっていたので、このさらなるシグナル伝達ステップは、不十分な内胚葉誘導の補償ではない。むしろ、理論に捉われるものではないが、おそらくは、アクチビンがこれらの系統を誘導するか、又はBMP若しくはFGFの非存在下でその生存を促進することができないために、混入する中胚葉派生物(CD90及びCD31細胞)を低減すると思われる。中胚葉混入を低減することに加えて、さらなるアクチビン培養ステップも、この経路は、腸管の前側-後側パターン形成において役割を果たすとわかっているので35、36、内胚葉を腹側前腸の運命に適宜パターン形成することにおいて役割を果たし得る。持続したアクチビン/nodalシグナル伝達はまた、hESCからの膵臓発達に影響を及ぼすことがこれまでに実証された18
【0328】
特定の実施形態では、プロトコールの成熟段階は、2つの別個であるが、相互依存するステップを含む。最初のものは、3次元凝集体の作製である。これまでの研究は、3次元培養が、肝細胞生存並びにマウス及びヒト初代胎児肝細胞の成熟を改善し得ることを示した24、37、38。最近、Mikiらが、灌流バイオリアクターにおける3次元培養が、hESC由来肝細胞の分化を改善し得ることを報告し、これは、3次元環境が、細胞の成熟にとって重要であり得ることを示す。しかし、比較が胎児及び成体肝臓対照に対して行われなかったので、これらの相違の規模は、解釈することが困難である。本研究は、ALB、CPS1、G6P及びTDOなどの重要な肝臓遺伝子の発現の大幅な増大によって、またASGPR1、成熟肝細胞で見られる受容体を発現する細胞の割合の劇的な増大によって実証されるように、静的3次元形式での培養が、分化を促進することを示すこれらの知見を拡張した。2次元培養物では、CYP1A2及びCYP3A4などの遺伝子が誘導されなかったので、凝集体内の成熟はまた、cAMPに対する反応性にとって重要である。凝集が成熟を促進する機序は、現在わかっていないが、理論に捉われるものではないが、細胞相互作用の増強及びおそらくは、肝臓内の肝細胞の細胞形態学をある程度模倣する3次元構造内の極性化上皮細胞の生成と関連する可能性がある。
【0329】
成熟戦略の第2のステップは、任意選択で、細胞透過性の、より遅く加水分解されるcAMP類似体8-Br-cAMPの添加による、3次元凝集体内のcAMP経路の活性化である。PGC1-a、TAT及びG6Pを含めた肝臓内の特定の遺伝子は、そのプロモーター領域中にCREBエレメントを含有し、結果として、cAMPシグナル伝達の直接標的である25、39、40。これを考えると、これらの標的遺伝子は、2次元の単層において、並びに3次元凝集体において誘導された。PCR及びマイクロアレイ解析は、経路の活性化が、薬物代謝、ミトコンドリア生合成、脂質合成及びグルコース代謝を含めた肝細胞機能の種々の態様と関連している遺伝子発現パターンの変化を誘導したので、cAMPシグナル伝達の効果が、標的遺伝子の誘導を超えて拡張することを明確に実証する。これらのグローバルな変化は、cAMPシグナル伝達が、肝芽細胞の成熟を促進するという解釈を支持する。持続したcAMPシグナル伝達は、発現の上昇したレベルを維持するためには必要ではなかったという事実は、効果が、成熟の1種であり、特定の遺伝子の発現の簡単な誘導及び維持ではないという解釈をさらに支持する。発現の最も顕著な変化の一部は、初代ヒト肝細胞において見られたものと同程度か、又はそれより高いレベルで検出されたCYP1A2、CYP3A4及びUGT1A1を含めた重要な薬物代謝酵素に関して観察された。HES2由来細胞が、初代肝細胞におけるものに匹敵する機能的酵素のレベルを示したので、転写物レベルが機能を示した。2種のhESC系に由来する肝細胞において同様の誘導のパターンが観察され、1種のhiPSC系は、この成熟戦略が広く適応可能であることを示す。
【0330】
インスリン及びグルカゴンなどの内分泌ホルモンは、グルコース代謝に対する急性効果並びに遺伝子発現の調節による慢性効果を有する成体肝臓においてcAMPレベルに影響を及ぼし得る。空腹という条件下で、cAMPレベルは上方制御され、その結果、PGC1-a及び糖新生に関与する遺伝子の迅速な誘導をもたらし、エネルギー供給を確実にする41、42。空腹という条件に加えて、PGC1-aの発現は、マウス肝臓において誕生の1日後に劇的に上方制御されるということが報告されている43。この上方制御は、新生児肝細胞の成熟を迅速に促進すると考えられる。理論によって制限されるものではないが、PGC-1a発現の上方制御によって、hESC由来肝芽細胞に対するcAMPシグナル伝達の効果は、空腹の際の肝臓において、及び/又は誕生時の肝細胞系において観察される変化の要点をある程度繰り返し、成熟細胞の多数の特徴を示す細胞の生成をもたらし得る。
【0331】
要約すると、本発明者らは、hPSCから得られた肝系細胞の成熟を促進し、初代ヒト肝細胞のものと同様の遺伝子発現プロファイルを示す細胞の生成をもたらすステップを初めて規定した。代謝的に機能的な細胞の発達は、これらの進歩が、製薬業界における薬物代謝解析のための、hPSC由来肝細胞様細胞の日常的な製造を可能にすることを実証するので、重要なエンドポイントである。cAMPによって誘導された細胞はまた、バイオ人工肝臓装置の開発のための、また最終的に、肝疾患の治療のための細胞置換療法のための移植のための理想的な候補集団を提供する。
【0332】
材料及び方法
<HPSC培養及び分化>
これまでに記載されたように44、HPSCを、20%ノックアウト血清代替品(KSR)を補給したDEME/F12(50:50、Gibco)からなるhESC培地中の照射されたマウス胚支持細胞で維持した。胚葉体(EB)の作製に先立って、hESCを、Matrigel(商標)でコーティングされたプレートで1日間継代して、支持細胞の集団を枯渇させた。この段階で、これまでに記載されたように44,45、0.25%のトリプシン-EDTAによってhESCを解離させて、小さいクラスターを作製し、次いで、BMP4(3ng/ml)の存在下、血清不含分化(SFD)培地で24時間(0日目~1日目)培養した。1日目で、EBを回収し、グルタミン(2mM:)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;2.5ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)、Wnt3a(25ng/ml)及びBMP4(0.25ng/ml)を補給したStemPRO-34(登録商標)からなる誘導培地Aで3日間再培養した。4日目に、EBを回収し、bFGF(10ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)、Wnt3a(25ng/ml)及びBMP4(0.25ng/ml)を補給したStemPRO-34(登録商標)(培地B)で再培養した。6日目に、EBを回収し、単細胞に解離させ、細胞を、Wnt3Aを含まず、50ng/mlの濃度のアクチビンAを含む培地B中、細胞4×10個の濃度で、Matrigel(商標)でコーティングされた12ウェルプレートで2日間培養した。8日目に、培地Bを、1%vol/volのB27栄養補助剤(Invitrogen:A11576SA)、アスコルビン酸、MTG、FGF10(50ng/ml)(8日目~10日目)、bFGF(20ng/ml)(10日目~14日目)及びBMP4(50ng/ml)を補給したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)からなる肝特定化培地で置換した。培地を8日目から14日目まで2日毎に交換した。HES2由来肝細胞の成熟を促進するために、それらを成熟培地Aで12日間培養した。成熟培地Aは、1%vol/vol B27栄養補助剤、アスコルビン酸、グルタミン、MTG、肝細胞増殖因子(HGF)(20ng/ml)、デキサメタゾン(Dex)(40ng/ml)及びオンコスタチンM(20ng/ml)を有するIMDMからなっていた。培養26日目に集団から凝集体を作製した。凝集体を作製するために、細胞を、コラゲナーゼ及びTrypleLEを用いて解離させ、次いで、ウェルあたり細胞6×10個の濃度で6ウェル超低クラスター皿において、Rho-キナーゼ阻害剤及び0.1%BSAを補給した成熟培地Aで培養した。凝集体は、3日毎に培地を交換しながら32日目までこれらの条件下で維持した。32日目に、培地を、EGFを含まない肝細胞培養培地(HCM)(Lonza:CC-4182)からなる成熟培地Bに交換した。この段階で10mMの8-Br-cAMP(Biolab:B007)を添加した。培地を3日毎に交換した。H9、H1及びIPS細胞から肝細胞様細胞を作製するために、肝特定化培地へ以下の交換を行った。bFGFの濃度を40ng/mlに増大させ、8日目~14日目の培養のために基本培地をIMDMからH16 DMEMに、次いで、14日目~20日目に、H16 DMEM及び25%Ham’s F12に交換した。20日目~32日目に使用される成熟培地Aのために、IMDMを、H21 DMEM及び25%Ham’s F12及び0.1%BSAと置き換えた。別に記載されない限り、すべてのサイトカインは、ヒトであり、R&D Systemsから購入した。EB及び単層培養物は、5%CO2、5%O2、90%N2環境で維持した。凝集培養物は、5%CO2の周囲空気環境で維持した。
【0333】
<フローサイトメトリー>
フローサイトメトリー分析を、これまでに記載されたように実施した45。細胞表面マーカーについて、染色を10%FCSを含むPBS中で実施した。細胞内タンパク質について、染色を、PBS中、4%のパラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Science、Hatfield、PA、USA)で固定された細胞で実施した。これまでに記載されたように45、細胞を、Sox17及びFoxA2染色のために90%氷冷メタノールを用いて20分間透過処理した。アルブミン及びα-フェトプロテイン染色を、10%FCS及び0.5%サポニン(Sigma)を含むPBS中で実施した。染色された細胞を、LSRIIフローサイトメーター(BD)を使用して解析した。
【0334】
<免疫染色>
免疫染色を、これまでに記載されたように45実施した。細胞を、4%PFAを含む培養ウェル中、37℃で15分間固定し、DPBS(CaCl及びMgClを含む)+0.1%BSAで3回洗浄し、次いで、0.2%Triton-X100を含む洗浄バッファー中で20分間透過処理した。DPBS(CaCl及びMgClを含む)+0.1%BSAでさらに3回洗浄した後、細胞を、タンパク質ブロック溶液(DAKO;X0909)を用いて室温で20分間ブロッキングした。アルブミン及びα-フェトプロテイン陽性細胞の評価のために、細胞を、ヤギ抗ALB抗体(Bethyl)又はウサギ抗AFP抗体(DAKO)のいずれかを用いて室温で1時間染色した。アイソタイプ対照の濃度は、一次抗体と対応していた。シグナルを可視化するために、細胞を、続いて、ロバ抗ヤギAlexa488抗体(Invitrogen)又はロバ抗ウサギCy3抗体(Jackson Immunoresearch)のいずれかとともに室温で1時間インキュベートした。Sox17染色のために、上記のように、細胞を固定し、透過処理し、ブロッキングした。細胞を、ヤギ抗SOX17(R&D)とともに4℃で一晩インキュベートした。ロバ抗ヤギAlexa488(Invitrogen)ととものインキュベーションによってシグナルを可視化した。ASGPR-1染色のために、凝集体をMatrigel(商標)でコーティングされたカバーガラス上で1日間培養した。接着させ、広げたのち、細胞を4%PFAを用いて37℃で15分間固定し、次いで、冷100%メタノールを用いて10分間透過処理した。細胞を、上記の通り、洗浄し、ブロッキングした。固定された細胞を、ヤギ抗ASGPR-1(Santa Cruz)とともに4℃で一晩、次いで、ウサギ抗ALB(DAKO)とともに室温で1時間インキュベートした。ロバ抗ヤギAlexa488抗体及びロバ抗ウサギCY3抗体ととものインキュベーションによって、シグナルを可視化した。一次及び二次抗体は、DPBS+2%BSA+0.05%Triton-X100で希釈した。DAPI(Invitrogen)を含むProLong(登録商標)Gold Antifadeを使用して、核を対比染色した。染色された細胞を、蛍光顕微鏡(Leica CTR6000)を使用して可視化し、Leica Application Suiteソフトウェアを使用して像を獲得した。
【0335】
<定量的リアルタイムPCR>
全RNAを、RNAqueous(登録商標)Micro Kit(Ambion)を用いて調製し、RNアーゼ不含DNアーゼ(Ambion)を用いて処理した。スーパースクリプト(登録商標)IIIリバーストランスクリプターゼ(Invitrogen)を用い、ランダムヘキサマー及びオリゴ(dT)を使用して、500ng~1μgのRNAを、cDNAに逆転写した。qPCRを、これまでに記載されたように45、QuentiFast SYBR Green PCRキット(Quiagen)を使用してMasterCycler(登録商標)ep realplex(Eppendorf)で実施した。発現レベルを、ハウスキーピング遺伝子TATAボックス結合タンパク質(TBP)に対して正規化した。UGT1A1発現を測定するために、δ-δ CT法を使用して、8-Br-cAMP(-)処理細胞におけるレベルに対する相対遺伝子発現を算出した。総ヒト成体及び胎児肝臓RNAは、Clontechから購入した。2種の初代肝細胞RNAサンプルは、Dr Stephen C.Strom(ピッツバーグ大学)によって提供され、3番目のサンプルは、Zenbioから購入した(ロット;2199)。2種の初代肝細胞サンプルは、2日間培養し、回収した。一方(HH1892)は、1歳のコーカサス人男性から単離され、もう一方(HH1901)は、14ヶ月齢の男性の胆汁うっ滞によって拡張された肝臓から単離されている。3番目のサンプル(Zenbio:ロット2199)は、48歳男性コーカサス人臓器ドナーから単離されている。
【0336】
<肝凝集体のヨードシアニングリーン取り込み>
ヨードシアニングリーン(ICG、Sigma)溶液を、HCM(Lonza)中、1mg/ml ICGの最終濃度で細胞に添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄し、次いで、倒立顕微鏡(Leica)で調べた。
【0337】
<HPLCによる薬物代謝アッセイ>
肝凝集体をCYP1A2基質フェナセチン(200μM)、CYP2B6基質ブプロピオン(900μM)、NAT1/2基質スルファメタジン(SMZ)(500μM)又は総UGT基質4-メチルウンベリフェロン(4-MU)(200μM)のいずれかを含有するHCM中で24又は48時間のいずれかインキュベートした。インキュベーション後、培地のアリコートを採取し、個別に最適化された高速液体クロマトグラフィーアッセイを使用して代謝産物のレベルを定量した。ヒドロキシブプロピオンレベルを、Lobozら46におけるHPLC法に基づいてアッセイした。4-MUグルクロニドを、これまでに記載されたように47、タンデム質量分析と一体となった高速液体クロマトグラフィーによって測定した。低温保存肝細胞を解凍し、ウェルあたり細胞1×10個の密度でコラーゲン培養皿上に24又は48時間のいずれかで置いた。24又は48時間のいずれか培養した後、上清を回収し、CYP1A2、CYP2B6、NAT1/2及び総UGTの活性を測定した。
【0338】
<マイクロアレイ処理及びデータ解析>
RNAサンプルを、University Health Network Genomics Centreで標準Affymetrixガイドラインに従ってAffymetrix Human Gene ST v1.0チップに流した。手短には、300ngの各サンプルの全RNA出発材料を、Ambion WT発現キットへのインプットとして使用した。次いで、2.7μgの増幅されたcDNAを断片化し、標識し、Affymetrix Human Gene ST v1.0チップと18時間ハイブリダイズさせた(60RPMで45℃)。アレイを、GeneChip Fluidics Station P450流体工学ステーションを使用して洗浄し、Affymetrix GeneChip Scanner 7Gを用いてスキャンした。スキャニング後、各チップを調べ、Affymetrix品質コントロールガイドラインを通るとわかった。生CELファイルをGenespringソフトウェア(Agilent、v11.5.1)にインポートし、プローブレベルデータを、HuGene-1_0-st0v1_na31_hg19_2010-09-03 buildに基づくExonRMA16アルゴリズムを使用してまとめた。さらに、各遺伝子を検討中の全てのサンプル中の中央値に対して正規化した。すべての統計は、log2変換したデータで実施した。合計、28869種の転写物が、このアレイで表される。
【0339】
第1のステップとして、3種のサンプル群のすべてにわたって測定された発現の低い20番目のパーセンタイル中に一貫してあるものを除去するよう転写物にフィルターをかけた。平均連結ルールの下、ピアソン中心化距離測定基準を用いる教師なし階層的クラスタリング解析を使用して、サンプル及び群間の全体的な類似性及び相違に対処した。3種のサンプル群間の有向統計分析を、Benjamini及びHochberg偽発見率(FDR、q<0.05)48を用いるANOVAを使用して実施した。生物学的意味を有する異なって発現される転写物のセットを見出すために、遺伝子オントロジー(GO)解析を、q<0.1有意水準で補正されたBenjamini及びYuketieli超幾何分布検定を使用して実施した49。特定の転写物の2種の先験的に規定されたセットをより詳細に調べた:対象の特定の肝臓関連活性と関連する転写物;及びHOMERデータベース50から得られる公的に入手可能な情報に基づいて、発現され、肝臓特異的であるとわかった転写物。
【0340】
(例2)
CHIR99021は、正準Wntシグナル経路を模倣すると報告されているGSK3の選択的阻害剤である。CHIR99021を、胚葉体の誘導及びhPSCからの胚体内胚葉のための単層誘導において、wnt3aの代替物として試験した(例えば、アクチビンと組み合わせて添加した)。図8a)及びb)において見られるように、Wnt3aと置き換わるCHIR99021を使用して誘導されたCKIT+CXCR4+及びCXCR4+EPCAM+細胞の割合は、集団の95%超であり、アクチビン/wnt3a誘導を用いて見られるものに匹敵する。
図8(a)及び(b)は、CHIR99021が胚体内胚葉細胞を誘導し得ることを実証する。図8(a)は、アクチビン/wnt3aを用いる胚葉体誘導の6日目アクチビン/CHIR99021におけるCXCR4+、CKIT+及びEPCAM+細胞の割合を示す、フローサイトメトリー分析である。図8(b)は、6日目アクチビン/CHIR99021におけるCXCR4+、CKIT+及びEPCAM+細胞の割合を示すフローサイトメトリー分析である。図8(c)及び(d)は、(c)アクチビン/wnt3a又は(d)アクチビン/CHIR99021を用いる7日の単層誘導を示す。
【0341】
<方法>
<GSK3β阻害剤を用いる胚体内胚葉の誘導>
EB誘導のために、CHIR99021(0.3μM)を、内胚葉誘導のためのWnt3aから置き換えた。
【0342】
これまでに記載されたように(Kennedyら、2007)、単層誘導のために、HPSCを、20%ノックアウト血清代替品(KSR)を補給したDEME/F12(50:50、Gibco)からなるhESC培地中の照射されたマウス胚支持細胞で維持した。単層培養における内胚葉の誘導に先立って、hESCを、Matrigelでコーティングされた表面(通常、12ウェルプレート)上で1日間継代した。0日目に、細胞を、グルタミン(2mM)、MTG(4.5×10-4M:Sigma)、アクチビンA(100ng/ml)、CHIR99021(0.3μM)又はWnt3a(25ng/ml)を補給したRPMIベースの培地で培養した。1日目~3日目に、培地を、グルタミン(2mM:)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;5ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)を補給したRPMIを用いて1日毎に交換した。3日目~5日目に、細胞を、グルタミン(2mM:)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;5ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)を補給したSFDベースの培地で培養した。培地を1日おきに交換した。7日目に、上記のように、胚体内胚葉を、FGF及びBMP経路アゴニストを用いる処理によって肝臓への運命に特定化した。
【0343】
(例3)
<NSGマウスにおける異所性肝臓組織>
移植されたhESC由来肝芽細胞は、生着し、肝細胞分化マーカーを発現する細胞を生成する。
【0344】
【0345】
図8(e)、(f)及び(g)は、例2に記載されるように移植される細胞を作製するためにGSK3阻害剤CHIR99021を使用した点を除いて、例1に記載された方法を使用して調製されたES由来肝臓細胞の生着を実証する。
【0346】
図8(e)、(f)及び(g)(h)NSGマウスにおける異所性肝臓組織。図8(e)は、腸間膜領域のH&E染色の実証的顕微鏡写真であり、移植の2ヶ月後のhESC由来肝細胞のクラスター(矢頭)を示す。倍率は5Xであった。腸(矢印)、移植された細胞(矢頭)。図8(f)は、図8(e)から得たH&E染色された切片の高倍率(10X)顕微鏡写真を示す。
【0347】
図8(g)(h)免疫組織化学的染色は、移植の2ヶ月後の腸間膜領域におけるhESC由来細胞の存在を示す。ヒトアルブミン(Alexa488:緑色)(矢印で示される)及びCK19(Cy3:赤色)(矢頭で示される)の二重染色は、移植された細胞が、肝細胞及び胆管細胞系統に分化する潜在力を有することを示す。HESC由来肝細胞様細胞が、アルブミン陽性細胞(矢印)として観察されたが、胆管細胞様細胞は、CK19を発現し、管様構造中に見られた(矢頭)。
【0348】
<方法>
<NSGマウスにおける異所性肝臓組織>
6週齢のNSGマウスを、The Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME、USA)から入手し、UHN動物施設に収容した。hESC由来肝細胞前駆細胞(肝芽細胞)及びhESC由来CD34+内皮細胞からなる凝集体(27日目)を、50μlのMatrigel(BD bioscience)に懸濁し、移植まで氷上で維持した。レシピエントマウスに1~3%のイソフランを用いて麻酔し、開腹手術した。腸間膜領域を露出させ、Matrigelとの細胞混合物を腸間膜領域上に置き、吸収性止血剤、Surgicel(Ethicon 360、USA)で覆った。移植の2ヶ月後、マウスを屠殺し、組織学的分析によってhESC由来細胞の存在について評価した。
【0349】
(例4)
Wnt/p-カテニン経路と関連する小分子は、肝前駆細胞を増殖させ得る。27日目肝前駆細胞(H9)を解離させ、ウェルあたり細胞1×10個の密度で96ウェルMatrigelコーティングされた皿に置いた。細胞を、種々の濃度のCHIR99021(0.3μM、1μM及び3μM)で処理し、9日間培養した。処理を伴わない27日目細胞数と比較して、細胞数をカウントすることによって、肝前駆細胞の割合の増大を調べた(図9a)。
【0350】
Wnt及びMEK/ErK経路の阻害は、第I相薬物代謝酵素と関連する遺伝子の発現を増大し得る。
【0351】
Wnt/p-カテニンシグナルの阻害と関連する小分子(XAV939:1μM)及びMEK/Erkシグナルの阻害と関連する小分子(PD0325901:1μM)とともに培養された44日目の3次元肝凝集におけるCYP3A4の遺伝子発現。Wnt及びMEK/ErKシグナルの阻害は、8-Br-cAMPと一緒に、CYP3A4の遺伝子発現を増大するよう影響を及ぼす(図9d)。
【0352】
Wnt/p-カテニンシグナルの阻害と関連する小分子(XAV939:1μM)及びMEK/Erkシグナルの阻害と関連する小分子(PD0325901:1μM)とともに培養された44日目の3次元肝凝集におけるCYP1A2の遺伝子発現。Wnt及びMEK/ErKシグナルの阻害は、8-Br-cAMPと一緒に、CYP1A2の遺伝子発現を増大するよう影響を及ぼす(図9d)。
【0353】
いくつかの異なる細胞外マトリックス(ECM)での26日目肝細胞様細胞培養物でのALBの遺伝子発現。胚葉体(EB)に由来する内胚葉細胞を解離させ、細胞4×10個の細胞密度でECM上に置き、上記のように26日目まで肝特定化及び成熟培地で培養した。26日目細胞から全RNAを抽出し、アルブミン発現のレベルを測定した。発現レベルを、ゼラチンコーティングされた培養条件と比較して、倍数差によって決定した(図9f)。
【0354】
<方法>
<GSK3β阻害剤を用いる胚体内胚葉の誘導>
EB誘導のために、CHIR99021(0.3μM)を、内胚葉誘導の間、Wnt3aと置き換えた。
【0355】
これまでに記載されたように(Kennedyら、2007)、単層誘導のために、HPSCを、20%ノックアウト血清代替品(KSR)を補給したDEME/F12(50:50、Gibco)からなるhESC培地中の照射されたマウス胚支持細胞で維持した。単層培養における内胚葉の誘導に先立って、hESCを、12ウェルのMatrigelでコーティングされた表面上で1日間継代した。0日目に、細胞を、グルタミン(2mM)、MTG(4.5×10-4M:Sigma)、アクチビンA(100ng/ml)、CHIR99021(0.3μM)又はWnt3a(25ng/ml)を補給したRPMIベースの培地で培養した。1日目~3日目に、グルタミン(2mM)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;5ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)を補給したRPMIからなる培地を、1日毎に交換した。3日目、5日目に、細胞を、グルタミン(2mM)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;5ng/ml)、アクチビンA(100ng/ml)を補給したSFDベースの培地で培養した。培地を1日おきに交換した。7日目に、胚体内胚葉細胞は、上記のように、肝特定化培地を用いて分化し始めた。
【0356】
(例5)
<cAMP処理を用いる細胞凝集体の成熟の誘導>
細胞凝集体を例1におけるように作製した
【0357】
細胞凝集体を、32日目までHGF、Dex及びOSMで培養し、その時点で、cAMPを添加した。cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストが添加される時点でOSMを除去した。いくつかの実施形態では、HGFもまた、cAMP類似体及び/又はcAMPアゴニストが添加される時点で除去した。他の実施形態では、cAMPが添加された時点での10ng/mlのHGFの添加(20ng/mlから低減された)は、凝集体の生存を促進するとわかった。
【0358】
理論に捉われるものではないが、OSMを維持することは、第1相CYP酵素、特に、CYP3A4の発現の誘導に対して阻害効果を有するということが考えられる。
【0359】
(例6)
<肝前駆細胞におけるnotchシグナル伝達経路は、胆管細胞系統の分化に影響を及ぼす>
胆管細胞様細胞の分化を調べるために、H9由来27日目肝前駆細胞を、HGF20ng/ml及びEGF50ng/mlの存在下でOP9細胞(Notchシグナル伝達ドナー)と共培養した。H9由来の27日目肝前駆細胞を、例1におけるように導いた。肝前駆細胞が、OP-9細胞からNotchシグナル伝達活性化を受け取った場合には、アルブミン陽性細胞は完全に減少し、組織化された分岐外観を有するCK19陽性細胞に変わった(図10a、b)。対照的に、γ-セクレターゼ阻害剤(GSI)L-685,458(10μM;Tocris)と共培養された細胞においてNotchシグナル伝達が阻害される場合には、アルブミン及びCK-19陽性細胞が見出された(図10b)。
【0360】
さらに、GSIの存在下又は非存在下のいずれかで共培養された細胞のH&E切片は、GSIの存在下で、キメラ凝集が維持されることを示した。GSI処理の非存在下では、細胞は、管腔を含有する上皮管様構造に配列された(図10a)。
【0361】
図10bに示されるように、GSIの非存在下で36日目のOP9共培養におけるCK19及び嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の増大された発現。示される値は、GSIの存在下で培養された細胞に対するものである。GSIの存在下で培養することによってNotchシグナル伝達が不活化される場合には、アルブミンの発現が見られ、これは、細胞が肝芽細胞の特徴を保持することを実証する。
【0362】
最後に、肝前駆細胞のOP9細胞との3次元共培養は、2次元培養と比較して36日目でのCFTRの発現の増大をもたらした(図10c)。
【0363】
上記の実験は、胆汁様構造を形成する胆管細胞様細胞は、Notchシグナル伝達の活性化によって(例えば、OP9、OP9δ及び/又はOP9Jagged1細胞と共培養することによって)H9由来肝前駆細胞から誘導され得ることを実証する。CFTR、機能的胆管細胞のマーカーの発現は、2次元培養物においてよりも3次元ゲル共培養物において高く、これは、環境もまた胆管細胞成熟に影響を及ぼし得ることを示す。
【0364】
(例7)
例示的成熟培地処方
<14日目(EB)/13日目単層から26日目(EB)/25日目(単層)のHES2細胞系用>
ベースとする培地:
IMDM、1%vol/vol B27栄養補助剤、グルタミン(2mM:)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)
サイトカイン及び増殖因子:
肝細胞増殖因子(HGF)(20ng/ml)、デキサメタゾン(Dex)(40ng/ml)及びオンコスタチンM(20ng/ml)。
【0365】
<14日目(EB)13日目単層~20日目(EB)/19日目(単層)のH9及びiPS細胞系用>
ベースとする培地:
H16/Ham’s F12(75%/25%)、1%vol/vol B27栄養補助剤、グルタミン(2mM:)、アスコルビン酸(50μg/ml; Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)
サイトカイン及び増殖因子:
肝細胞増殖因子(HGF)(20ng/ml)、デキサメタゾン(Dex)(40ng/ml)及びオンコスタチンM(20ng/ml)。
【0366】
<20日目(EB)/19日目単層~26日目(EB)/25日目(単層)用>
ベースとする培地:
H21/Ham’s F12(75%/25%)、1%vol/vol B27栄養補助剤、グルタミン(2mM:)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)
サイトカイン及び増殖因子:
肝細胞増殖因子(HGF)(20ng/ml)、デキサメタゾン(Dex)(40ng/ml)及びオンコスタチンM(20ng/ml).
【0367】
凝集段階
26日目/25日目~32日目/31日目
ベースとなる培地:
IMDM又はH21/Ham’s F12(75%/25%)、1%vol/vol B27栄養補助剤、グルタミン(2mM:)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)、Rho-キナーゼ阻害剤(10μM)及び0.1%BSA。
サイトカイン及び増殖因子:
肝細胞増殖因子(HGF)(20ng/ml)、デキサメタゾン(Dex)(40ng/ml)及びオンコスタチンM(20ng/ml)。
cAMPを用いる凝集段階
32日目/31日目~44日目/43日目
ベースとなる培地:
EGFを含まない肝細胞培養培地(HCM)(Lonza:CC-4182)。10mM 8-Br-cAMP(Biolab:B007)、Wnt/βカテニンシグナルの阻害と関連する小分子(XAV 939:1μM)及びMEK/Erkシグナルの阻害と関連する小分子(PD032590:1μM)。
【0368】
<胆管細胞成熟培地>
ベースとなる培地:
H21/Ham’s F12(75%/25%)、1%vol/vol B27栄養補助剤、グルタミン(2mM)、アスコルビン酸(50μg/ml;Sigma)、MTG(4.5×10-4M;Sigma)。
サイトカイン及び増殖因子:
肝細胞増殖因子(HGF)(20ng/ml)、上皮成長因子(EGF)(50ng/ml)
【0369】
(例8)
<hESC由来肝発達に対する内皮細胞の効果。>
内皮細胞が、肝臓発達において重要な役割を果たすことを考え、この系統を、hESC由来肝細胞の成長及び/又は成熟に対する影響について評価した。これらの研究のために、hESCからCD34+内皮細胞を作製した。これらの研究のために、ROSA遺伝子座から赤色蛍光タンパク質(RFP)cDNAを発現し、本発明者らが内皮細胞を追跡することを可能にするよう操作されているHES2 hESC系を使用した。BMP4、bFGF及びVEGFの組合せを用いる6日間の誘導によって内皮細胞を作製し、その時点で、FACSによってCD34細胞(同様にCD31及びKDR)を単離した。選別されたCD34細胞を、EGM2内皮細胞増殖培地で6日間培養し、次いで、Aggrewells(商標)を使用するキメラ凝集体の作製のために使用した。内皮細胞を、肝細胞の2日前にAggrewellsに添加し、それらがウェルの底をコーティングするのを可能にした(図12a)。この時点で、25日目肝芽細胞の単細胞懸濁液を内皮細胞の頂部に添加し、混合物をAggrewellsで48時間培養した。凝集体を、続いてAggrewellsから取り出し、さらに6日間培養し、その時点で、それらを回収し分析した。図12bに示されるように、内皮細胞と一緒に培養された凝集体は、RFP細胞を含有しており、単独で培養されたものよりも大きかった。フローサイトメトリー分析は、RFP細胞が、集団の30%超に相当することを示し(図12c)、これは、有意な数が、凝集体中に肝細胞を組み込んだことを示す。qRT-PCR解析は、さらに12日間培養されたキメラ凝集体は、内皮細胞を伴わない肝凝集体よりも実質的に高いレベルのCYP3A4メッセージを発現することを示した(図12d)。重要なことに、これらのレベルはcAMPの添加を伴わずに達成され、これは、内皮細胞が、hPSC由来肝細胞の成熟を促進し得ることを示唆する。これらの知見は、胚性内皮細胞との相互作用が、hESC由来肝細胞の生存及び成熟に影響を及ぼすことを示す。
【0370】
<コラーゲンゲル中でのhESC由来肝細胞の成熟。>
3次元凝集、cAMP及びPD/XAVの組合せは、ヒト多能性幹細胞由来肝細胞の有意な分化を促進し(図9)、(図9d及びe)。細胞は、AFP及び胎児CYP3A7の幾分かの発現を保持しており、これは、それらが十分に成熟していない可能性があることを示す。集団の成熟を促進するために、キメラ内皮/肝凝集体を、cAMP、PD及びXAVの組合せを用いて処理した。これらの凝集体は、液体培養で、又はコラーゲンゲル中のいずれかで維持し、細胞外マトリックスタンパク質の供給源を供給した。図13に示されるように、凝集体への内皮細胞の添加(end)は、凝集体が液体培養で維持された場合にはALB、CYP3A4、AFP又はCYP3A7の発現レベルに大きく影響を及ぼさなかった。対照的に、コラーゲンゲル中での凝集体の培養は、AFP及びCYP3A7発現に対して劇的な効果を有しており、両方とも、成体肝臓で見られるレベルと同様のほとんど検出できないレベルに低減された。これらの知見は、シグナル伝達経路、細胞相互作用及び細胞外環境はすべて、hPSC由来肝細胞の成熟において役割を果たすことを示唆する。これは、AFPを、あったとしてもほとんど発現しない細胞を作製することが可能であることを実証する。この発現パターンは、これらの細胞が、成体肝臓中の肝細胞に匹敵する段階に進んだことを示唆する。
【0371】
(例9)
【0372】
ヒト胚性及び誘導された多能性幹細胞(多能性幹細胞;PSC)からの組織特異的細胞種の効率的な作製のためのプロトコールの開発は、ヒト発達及び疾患のin vitroモデルの確立に向けて、並びに創薬及び予測毒性学のための新規プラットフォームの設計のために役立ってきた。胆管系の臓器を構成する肝細胞並びに胆管細胞は、薬物の、並びにさまざまな遺伝性及び感染性疾患の有害作用の第一標的であるので、肝臓を含む系統は、特に重要なものである。肝細胞の薬物代謝における中心的な役割を考え、今日までのほとんどの努力は、hPSCからのこの細胞種の作製に向けられてきた。低い効率であり、代謝機能を欠くものの、機能的P450酵素の発現を含めた成熟肝細胞の一部の特徴を示す細胞の生成を促進する段階的分化プロトコールを開発することが可能であった。最近の研究は、この戦略を患者に特異的な誘導された多能性幹細胞(iPSC)に、また肝細胞機能に影響を及ぼすモデル遺伝性肝疾患に拡張した。
【0373】
胆道が絡む障害は、相当な病的状態をもたらし、決定的な管理のためには全臓器移植を必要とすることも多い慢性肝疾患の一般的な原因である。嚢胞性線維症肝臓及びアラジール症候群などの一遺伝子性胆管疾患の根底にある機序は、不完全にしか理解されないままであり、原発性硬化性胆管炎及び胆管閉鎖症などのより複雑な胆管疾患には、その病態生理学を理解するための、又は新規薬理学的物質をスクリーニングするための適当なモデルがない。hPSCから機能的な胆管細胞を作製する能力は、これらの満たされていない要求を満たすと予想される。
【0374】
hPSCからの胆管細胞の誘導の成功は、分化培養におけるこの系統の胚性発達を正確にモデル化する能力に左右される。胆管細胞は、胎児期の初期に発達し、同様に肝細胞系統を生じる肝芽細胞として知られる二分化能前駆体から派生する。マウスにおけるターゲッティング研究は肝芽細胞からの胆管細胞系統の特定化は、前駆細胞によって発現されるNotch2と、発達中の門脈間充織に存在するJagged-1の相互作用によって媒介される、Notch依存性事象であると示した。小児胆道疾患アラジール症候群は、Notch2又はJagged1のいずれかにおける突然変異によって引き起こされるという発見は、この経路がまた、ヒトにおける胆管細胞発達にも関与しているという強力な証拠を提供する。胆管細胞が成熟するにつれ、それらは、組織化して、発達中の原始管構造を裏打ちする極性化上皮を形成し、それが胆管を生じさせる。
【0375】
胆管疾患を有する患者から得たiPSCの調査の基礎として、hPSCからの機能的胆管細胞の方向づけられた分化及び成熟のための頑強なプロトコールが記載されている。hPSC由来胆管細胞は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)を含めた、成熟胆管において見られるマーカーを発現する上皮化嚢胞構造を形成するよう誘導され得る。これらの構造におけるCFTR機能は、フォルスコリンを用いるcAMP経路の刺激後の嚢胞膨潤の調節によって実証された。嚢胞性線維症患者iPSCから生成した嚢胞は、フォルスコリン誘導性膨潤アッセイにおいて、CFTR矯正剤の添加によって救出され得る欠乏症を示した。これらの知見は、まとめると、hPSCから胆管細胞及び胆管様構造を作製すること並びにこれらの派生体細胞種を使用して、in vitroで嚢胞性線維症胆管疾患の態様をモデル化することが可能であることを実証する。
【0376】
<結果>
hPSC分化培養における発達の肝芽細胞段階の特性決定
【0377】
hPSCから胆管細胞を作製するために、分化培養において発達の肝芽細胞段階をまず特性決定することが必要であった。本発明者らは、これらの研究のために、hPSCからの機能的肝細胞の作製のために本発明者らが開発したプロトコールの改変版を使用した(図14a)。本発明者らのこれまでのアプローチとの主要な相違は、内胚葉誘導ステップを、3次元胚葉体(EB)においてよりは、むしろ単層において実施したことであった。この変更は、分化3日目までに90%超のCXCR4CKIT及びEPCAM細胞からなる集団が生じたので、培養物における内胚葉発達の加速をもたらした(図14b)。EB分化5日目までに匹敵する集団は検出されなかった。内胚葉を肝臓への運命に特定化するために、培養物を、分化7日目にbFGF及びBMP4の組合せを用いて処理した。
【0378】
胚における肝発達の開始時に、新規に形成された肝芽細胞は、腹側前腸上皮から葉裂し、横中隔に侵入して、肝芽を形成する。芽の形成は、このプロセスの初期段階の間に一時的に発現される転写因子Tbx3に左右される2、3。芽が増殖するにつれ、前駆体細胞は、Tbx3を下方制御し、維持し、並びに/又はアルブミン(ALB)、αフェトプロテイン(AFP)サイトケラチン19(CK19)、Sox9、NHF6p及びNOTCH2を含めた、肝及び/若しくは胆管細胞系統において通常発現される遺伝子の組合せの発現を上方制御する。bFGF/BMP4処理hESC由来内胚葉集団のRT-qPCR分析は、分化13日目でのTBX3発現の一時的な上方制御を示し、この時点を肝芽細胞特定化の段階と同定した(図14c)。免疫染色は、13日目集団中の細胞の大部分はTBX3であることを示し、これは、肝芽細胞特定化が効率的であることを示した。SOX9及びHNF6B発現の開始は、TBX3のものと重複していた(図14c)。しかし、TBX3とは異なり、これらの遺伝子の発現は、25日目、解析の最終日まで増大し続けた。ALB及びAFPの発現は、19日目に上方制御され、25日目でも増大した。CK19は、二相性パターンを示し、発現のピークレベルが13日目及び25日目で検出された。免疫蛍光染色及びフローサイトメトリー解析は、分化25日目の細胞の大部分は、ALB、AFP及びCK19であることを示した。これらの知見は一緒に、25日目集団内の細胞は、発達の増殖した肝芽細胞段階、in vivoでの肝芽の等価物を代表することを強力に示唆する。Notch1ではなくNotch2発現も、25日目に上方制御され、これは、この集団が、この経路によってシグナル伝達できる肝芽細胞を含有するという解釈をさらに支持する。
【0379】
<Notchシグナル伝達は、hPSC由来肝芽細胞様集団からの胆管細胞発達を促進する。>
本発明者らは、胆管細胞発達に対するNotchシグナル伝達の効果を調べるために、肝芽細胞集団(25日目)を、Jagged1を含めた種々のNotchリガンドを発現すると知られているOP9間質細胞と4、5共培養した。hPSC由来細胞は、単細胞懸濁液として間質で培養された場合に十分に生存しなかった。この問題を克服するために、本発明者らは、25日目単層細胞から3次元凝集体を作製し、それらをOP9間質細胞上で培養した。免疫染色及びフローサイトメトリー解析は、凝集体内の細胞の大部分は、共培養前は、ALBAFPCD19NOTCH2であることを示し、それらが肝芽細胞の特徴を維持していることを示した。80%のみのALBAFPCK19細胞からなる、25日目集団から生じた凝集体が、48時間培養した後に90%超のALBAFPCK19細胞を含有していたので、この凝集ステップは、肝芽細胞を選択すると思われる。OP9間質で共培養されると(9日目)、凝集体は、もはやALBを発現しないCK19細胞の別個のクラスターを形成し、これは、それらが胆管細胞特定化の最初の段階を経たことを示唆する。マウスにおける研究は、HGF、EGF及びTGFpiシグナル伝達が胆管発達において役割を果たすことを示したので6-8、本発明者らは、次いで、これらの因子を個別に、又は組み合わせてクラスターに添加して、これらの経路の活性化が、CK19クラスターのさらなる発達を促進するかどうかを調べた6-8。EGF又はTGFβi又は両方の組合せの添加は、CK19凝集体の大きさの増大につながった。対照的に、HGF単独は、ほとんど効果がなかった。興味深いことに、EGF及びHGF又はEGF、HGF及びTGFpiのいずれかの組合せが、劇的な形態変化を誘導し、CK19細胞からなる分岐構造の形成を促進した。RT-qPCR図15a及びフローサイトメトリー解析(図21)は、免疫染色知見を確認し、OP9との共培養後にALB細胞が完全にないことを実証した。
【0380】
γセクレターゼ阻害剤(GSI)、Notch経路のアンタゴニストの添加は、ALB発現の下方制御を阻止し、培養物中のCK19細胞の割合が低下し、分岐構造の発達を阻害し、これは、これらの効果がNotchシグナル伝達によって媒介されることを示す(図15a)。Notch標的HES1、HES5及びHEY1の発現は、OP9での培養の9日後に上方制御された。(図15b)。この発現の増大は、γ-セクレターゼ阻害剤の添加によって阻止され、OP9との共培養は、Notch経路を効率的に活性化したことを実証する(図15b)。2種の他のhPSC系(ESC HES2及びiPSC Y2-1)の分化潜在力の解析は、TBX3及び肝芽細胞マーカー発現の同様の一時的パターンを示し、これは、これらの段階を通した推移が、in vitroにおける肝発達の特徴であることを示す(図22)。両系から導かれた凝集体は、OP9間質細胞との共培養後にCK19ALB細胞からなる分岐構造を生成した。H9由来集団を用いて観察されたように、ALB発現の下方制御及びこれらの構造の発達は、NOTCH依存性事象であった。これらの知見は、まとめると、肝芽細胞集団におけるNotchシグナル伝達の活性化が、胆管細胞発達の最初の段階を誘導すること並びにHGF、EGF及びTGFpiシグナル伝達の組合せが、おそらくは管形態形成の初期段階を反映する、分岐構造の形成につながる形態変化を促進することを示した。
【0381】
<3次元培養は胆管細胞成熟を促進する>
OP9共培養において観察された分岐が、胆管発達の最初の段階を示すかどうかを調べるために、本発明者らは、3次元細胞構造の成長を促進するための培養系を次いで確立した。このアプローチを用いて、25日目hESC由来細胞及びOP9間質細胞(GFP+)からなるキメラ凝集体を、1.2mg/mlのコラーゲン、40%Matrigel並びにHGF、EGF及びTGFpiからなる培地混合物中で培養した(図23a)。これらの条件での培養2週間以内に、凝集体は、劇的な形態変化を経て、管状構造、管腔嚢胞又は両方の混合物のいずれかを形成した(図16a、b)。嚢胞は、これらの培養物中、最も豊富な構造であった(図16b)。Notch標的遺伝子Hes1、Hes5及びHey1の発現は、OP9細胞を伴わない凝集体に由来するものと比較して、キメラ凝集体から発達した集団では上方制御され、これは、Notchシグナル伝達は培養物中で活性であることを示す(図23b)。組織学的解析は、管状及び嚢胞構造が、管腔を有する管形態を有し、CK19及びE-カドヘリンを発現するがALBを発現しない上皮様細胞を含むことを示した。ZO-1(密着帯1)、密着結合マーカーも発現され、構造の頂端側に制限されるとわかり、これは、細胞が頂底極性、成熟した上皮管の特徴を獲得したことを示唆する。管中の細胞はまた、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)、成体胆管において最初に発現される膜貫通チャネルを発現した。ZO-1と同様に、CFTRタンパク質は、管様構造の頂端側で大部分検出された。ウエスタンブロット解析は、キメラ凝集体から生じた集団中のタンパク質の存在を確認した(図23d)。OP9を伴わずに培養された凝集体に由来する細胞では、CFTRメッセージ及びタンパク質のレベルは、有意に低く、これは、その発現は、Notchシグナル伝達に応じて変わることを示す(図23d、e)。これらの構造における、ALB、AFP及びCYP3A7を含めた肝マーカーの欠如並びに胆管細胞マーカーCK19、SOX9及びCFTRの発現の上方制御が、RT-qPCR解析によって確認された(図16c)。これらの条件下での培養後に、iPSC由来凝集体から、同様のCK19CFTR管状及び嚢胞構造が発達した。一緒に、これらの知見は、肝芽細胞集団は、matrigel及びコラーゲンの混合物で培養された場合に、成熟胆管において見られるマーカーを発現する管様構造を生成し得るということを示す。
【0382】
GSIの添加は、管様構造及び嚢胞の形成を防ぎ、ALB及び低レベルのCK19を発現する密な凝集体の発達を促進し(図16a、b 球形)、これは、Notchシグナル伝達の非存在下で、培養物中に肝芽細胞特徴を有する細胞が持続することを示唆する。GSIの添加はまた、肝細胞マーカー(ALB、AFP及びCYP3A7)の発現の増大並びに胆管細胞発達と関連している遺伝子(CK19、Sox9及びCFTR)の発現の減少につながった(図16c)。
【0383】
<hPSC由来胆管細胞は、in vivoで管様構造を形成する。>
in vivoでのhPSC由来胆管細胞の発達潜在力を評価するために、本発明者らは、Matrigelプラグ中のそれら(10個の細胞)を、免疫不全NOD/重症複合免疫不全/IL2rg-/-(NSG)マウスの乳房脂肪パッド中に移植した。本発明者らは、これらの研究のために、HES2-RFP hESCに由来する25日目肝芽細胞集団のOP9間質との共培養によって生じた分岐構造に由来する解離された細胞を使用した。これらのhESCを、ROSA遺伝子座からRFPを発現するよう操作した。移植の6~8週間後、Matrigelプラグ中に複数の管様構造が検出された(図17a、b)。管内の細胞は、RFPであり、これは、それらがヒト起源のものであり、HES2-RFP細胞に由来したことを実証する(図17c、d)。さらに、細胞はCK19及びCFTRを発現し、これは、それらが胆管細胞の特徴を示したことを示す。in vitroで生じた構造を用いて観察されたように、CFTR発現は、管の頂端側に分離した。移植された動物のいずれにおいても奇形腫は観察されなかった。
【0384】
<hPSC由来胆管細胞様は機能的である>
hPSC由来胆管細胞の機能を評価するための第1ステップとして、本発明者らは、ローダミン123、正常な胆管細胞中に存在するMDR1輸送体の機能活性を測定するために使用されるトレーサー色素を流出するその能力を評価した。H9 hESC又はiPSCのいずれかに由来する嚢胞構造は、色素を管腔空間に輸送し、能動輸送体活性を示した。20μMベラパミル、MDR輸送体の阻害剤の存在下では、ローダミンは、構造の管腔中に蓄積せず、色素の動きが、おそらくはMDR輸送体タンパク質による能動輸送を反映することを確認した。
【0385】
CFTR機能活性を実証するために、本発明者らは、嚢胞構造でフォルスコリン誘導性膨潤アッセイを次いで実施した。このアッセイを用いて、フォルスコリン/IBMXの添加によるcAMP経路の活性化は、CFTR機能を増大し、流体輸送及び嚢胞の膨潤をもたらした。膨潤は、カルセイングリーン、細胞透過性蛍光色素を用いて染色した後に可視化され得る(図18a)。培養物へのフォルスコリン及びIBMXの添加は、24時間後に測定された場合に、それぞれ、H9-及びiPSC-由来嚢胞の大きさの2.09+/-0.21及び2.65+/-3.1倍の増大を誘導した(図18b)。CFTR阻害剤(CFTRinh-172)の添加は、フォルスコリン/IBMX誘導性膨潤を防ぎ、これは、嚢胞の大きさの増大がCFTR依存性であることを示す。これらのアッセイから得られた知見は、hPSC由来嚢胞/管様構造中の細胞が、肝胆管において見られる機能的胆管細胞の特性を示すことを実証する。
【0386】
<嚢胞性線維症患者iPSCからの胆管細胞の作製及び機能解析>
in vitroで疾患をモデル化するためのこの系の有用性を実証するために、本発明者らは、共通のF508欠失(例えば、δF508)を保持する2人の異なる嚢胞性線維症患者から作製したiPSCからの嚢胞形成を次いで解析した。両hiPSC系は、野生型hPSCについて観察されたものと同様の動態学を有する肝芽細胞集団を生成した(図24a、b)。肝芽細胞発達は変更されないが、2週間培養した後にゲル中に分岐構造のみが観察されたので、患者iPSCからの嚢胞形成は明確に損なわれた(図19a)。患者細胞からの嚢胞形成は、2週間の培養期間のうち最初の1週間のフォルスコリンの添加(変更)によって誘導され得る(図19a、b)。しかし、患者iPSCから発達した嚢胞の多くは、完全には管腔ではないが、むしろ分岐管構造を含有していた(図19c)。正常なiPSCから発達したものに特有の高頻度の管腔嚢胞が、長期間の培養後に検出され、これは、突然変異体細胞の成熟が遅延されたことを示唆する。正常なiPSC由来胆管細胞の培養物へのCFTR阻害剤の添加はまた、嚢胞形成を遅延し、これは、これらの構造の生成は、ある程度、機能的CFTRに応じて変わったことを示す(図19b)。
【0387】
本発明者らは、CFTR機能アッセイに先立って、化学矯正剤VX-809及びCorr-4aを使用する2日間の嚢胞性線維症患者iPSCに由来する胆管細胞様細胞におけるF508 del CFTRの機能的回復を次いで評価した。両分子は、突然変異体CFTRタンパク質のフォールディング欠陥を修正するよう機能する。矯正剤の添加は、嚢胞形成を改善しなかったが、管腔の頂端側での検出可能なレベルのCFTRの蓄積をもたらした。しかし、野生型嚢胞の管腔中のCFTRの均一分布とは異なり、タンパク質は、矯正剤を用いて処理された患者由来嚢胞では別個のパッチ中に現れた。このパターンは、突然変異体タンパク質の輸送欠陥の不完全な救済を反映する可能性がある。ウエスタンブロット解析は、矯正剤の添加の効果を示した。正常細胞中のCFTRの大部分は、図20a中のレーンHBE中の上部のバンド(C)によって同定される、大きく、成熟した形態である。患者由来細胞は、かなり少ないCFTRタンパク質を含有しており、大部分は、小さい未熟な形態であった。矯正剤の添加は、患者細胞中の成熟したタンパク質の割合を劇的に増大させた。矯正剤がCFTR機能に影響を及ぼすかどうかを調べるために、本発明者らは、次いで、処理された、及び処理されていない嚢胞を、フォルスコリン/IBMX誘導性膨潤アッセイに付した(図20b、c)。患者特異的嚢胞は、矯正剤の非存在下では膨潤をほとんど示さなかった。しかし、矯正剤を添加した場合には、フォルスコリン/IBMX及びVX770を用いて24時間誘導した後に、患者C1から生じた嚢胞は、およそ2.18+/-0.52倍増大したのに対し、患者997由来のものは、1.64+/-0.08倍増大した。これらの知見は、総合すると、患者特異的iPSC由来胆管細胞におけるCFTR機能不全の態様をモデル化することが可能であること及び患者を治療するために使用される矯正剤が欠陥を救済し得ることを示す。
【0388】
<考察>
hPSCの、in vitro及びin vivoで管様構造に自己組織化する機能的胆管細胞様細胞への方向づけられた分化のための系が記載されている。
【0389】
マウス研究は、門脈間充織細胞とのJagged1相互作用及び肝細胞でのNotch2を含めたNotch経路は、in vivoで胆管細胞の運命決定を誘導するために重要であると示唆した。
【0390】
OP9細胞によって提供されたNotchシグナル伝達は、単層だけでなく、3次元ゲル培養物における運命の決定を成功裏に操作した。Gセクレターゼ阻害剤に加えてNotchシグナル伝達が影響を受けた場合には、逆転効果が観察された。これまでの報告は、低い効率であるものの、ヒトES細胞から生成した胆管細胞様管構造は、極性及びローダミン123取り込みで機能を示すこととなった。
【0391】
OP9によって提供されたNotchシグナル伝達は、ヒトES由来胆管細胞様細胞からの生着を促進し、細胞は、マウス乳房脂肪パッド中にRFP陽性管様構造を形成した。これらの構造は、OP9の非存在下では観察されなかった。総合すると、OP9共培養系は、in vitro及びin vivoの両方で、notchシグナル伝達を効率的に提供して、ヒトPSC由来肝芽細胞から胆管細胞様細胞を誘導する。
【0392】
hPSCからの肝細胞成熟が、本明細書における3次元培養環境によって増強されると示される。同様に、胆管細胞系細胞の成熟もまた、3次元ゲル培養系によって促進された。肝芽細胞凝集体がOP9細胞を介してNotchシグナル伝達によって刺激されると、胆管細胞系統及び成熟と関連する遺伝子発現は、有意に増大した。さらに、胆管細胞としての機能活性がin vitroで検出された。
【0393】
ヒトiPS由来胆管細胞様管構造は、機能的CFTR活性を実証した。これらの細胞は、患者特異的な方法での薬物スクリーニングのために使用され得る。
【0394】
さらに、患者特異的胆管細胞様管構造は、効率的に得られ、一遺伝子性状態進行性家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC1、2及び3型)及びアラジール症候群及びより一般的な、複雑な胆管疾患、胆道閉鎖及び原発性硬化性胆管炎などの他の重症胆管疾患において既存又は新規治療薬を検証するために使用され得る。
【0395】
本願を本明細書において好ましい例であると考えられるものを参照して記載したが、本願は開示される例に制限されないと理解されるべきである。対照的に、本願は、種々の改変及び同等の配置を対象とするものとする。
【0396】
すべての刊行物、特許及び特許出願が、参照によりその全文は、各個々の刊行物、特許又は特許出願が、参照によってその全文が組み込まれるよう、具体的に、個別に示されるかのような同程度に、本明細書に組み込まれる。具体的には、表又は別の場所に提供される、例えば、受託番号及び/又はバイオマーカー配列(例えば、タンパク質及び/又は核酸)を含めた、本明細書において提供された各受託番号と関連している配列が、参照によりその全文が組み込まれる。
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