(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20230112BHJP
【FI】
C02F1/42 A
(21)【出願番号】P 2019167342
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-02-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】301050924
【氏名又は名称】株式会社ハウステック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】船木 広二
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】見角 翼
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166067(JP,A)
【文献】特開2004-330194(JP,A)
【文献】特開2007-000740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42
A47L 15/00-21/06
D06F 39/00
E03B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂部と、前記イオン交換樹脂部を収納するタンクを備え、前記タンクに原水を供給するための水入口部と、前記原水を前記イオン交換樹脂に通過させて生成した軟水を前記タンクから外部へ流出させるための水出口部と、前記タンクに前記イオン交換樹脂を再生するための再生液を投入する再生液投入口と、前記イオン交換樹脂部を通過した前記再生液を排水するための再生液排水口を備えた軟水化装置であって、
前記原水の量と前記イオン交換樹脂の再生時期を報知するための報知部と、前記報知部を制御する制御部と、前記報知部と前記制御部に電力を供給する電源部と、前記電源部に電力を供給する電力供給部と、前記報知の作動をリセットするためのリセット手段を備え、
前記電源部に電力を供給する前記電力供給部が水力発電装置であって、前記水力発電装置が前記水入口部のタンク接続部より上流側および/または前記水出口部のタンク接続部より下流側に設けられ、
前記制御部は、前記水力発電装置より供給される発電圧値と発電積算時間により、前記イオン交換樹脂を通過する原水の量を算出し、前記算出した原水量の数値を軟水生成量として把握し、この軟水生成量に基づき、予め前記制御部に記憶されている初期値としての軟水生成量上限閾値を前記軟水生成量が超えた場合に、前記報知部より報知を行う機能を有し、
前記リセット手段が、前記タンクの上部と下部にそれぞれ、前記タンク内部と通電する電極を有し、前記電極の一方が前記タンク上部に配置された第1の電極であり、前記電極の他方が前記タンクの下部に設置された第2の電極であり、前記制御部に、前記第1の電極と前記第2の電極を覆う位置までの満水状態を検知する機能を備え、満水状態でない場合、前記第1の電極と前記第2の電極の非通電状態により、その時点の軟水生成量を前記初期値としての軟水生成量上限閾値と異なる新たな軟水生成量上限閾値として置き換えてから、前記リセット手段を作動させて前記軟水生成量の数値を0にリセットする機能を有することを特徴とする軟水化装置。
【請求項2】
イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂部と、前記イオン交換樹脂部を収納するタンクを備え、前記タンクに原水を供給するための水入口部と、前記原水を前記イオン交換樹脂に通過させて生成した軟水を前記タンクから外部へ流出させるための水出口部と、前記タンクに前記イオン交換樹脂を再生するための再生液を投入する再生液投入口と、前記イオン交換樹脂部を通過した前記再生液を排水するための再生液排水口を備えた軟水化装置であって、
前記原水の量と前記イオン交換樹脂の再生時期を報知するための報知部と、前記報知部を制御する制御部と、前記報知部と前記制御部に電力を供給する電源部と、前記電源部に電力を供給する電力供給部と、前記報知の作動をリセットするためのリセット手段を備え、
前記電源部に電力を供給する電力供給部が商用電源であって、前記水入口部と前記水出口部の間に流量センサーが設けられ、
前記制御部は、前記流量センサーの出力信号により前記イオン交換樹脂を通過する原水の量を算出し、前記算出した原水量の数値を軟水生成量として把握し、この軟水生成量に基づき、予め前記制御部に記憶されている初期値としての軟水生成量上限閾値を前記軟水生成量が超えた場合に、前記報知部で報知を行う機能を有し、
前記リセット手段が、前記タンクの上部と下部にそれぞれ、前記タンク内部と通電する電極を有し、前記電極の一方が前記タンク上部に配置された第1の電極であり、前記電極の他方が前記タンクの下部に設置された第2の電極であり、前記制御部に、前記第1の電極と前記第2の電極を覆う位置までの満水状態を検知する機能を備え、満水状態でない場合、前記第1の電極と前記第2の電極の非通電状態により、その時点の軟水生成量を前記初期値としての軟水生成量上限閾値と異なる新たな軟水生成量上限閾値として置き換えてから、前記リセット手段を作動させて前記軟水生成量の数値を0にリセットする機能を有することを特徴とする軟水化装置。
【請求項3】
前記水入口部が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の下方に
接続され、前記水出口部が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の上方に
接続され、前記再生液投入口が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の上方に設けられ、前記再生液排水口が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の下方に設けられたことを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記制御部に、日本で最高クラスの硬度
(200mg/L)の地域において前記タンクに充填された前記イオン交換樹脂を正常使用した状態で得られる軟水生成量である軟水生成量下限値
(400L)と、前記新たな軟水生成量上限閾値を比較する機能を有し、
前記制御部に、
前記リセット手段起動時点の前記新たな軟水生成量上限閾値が前記軟水生成量下限値未満の時に、前記軟水生成量上限閾値を初期値としての前記軟水生成量上限閾値に戻し、
前記リセット手段起動時点の前記新たな軟水生成量上限閾値が前記軟水生成量下限値以上の時に、前記軟水生成量上限閾値を前記リセット手段起動時点の前記軟水生成量に書き換える機能を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水生成量および/または再生時期の報知と、その報知をリセットするリセット手段を設けた軟水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟水化装置の軟水生成量は、水道水等の原水硬度に比例して生成量に上限があり、上限に達した時点でイオン交換樹脂を再生液(塩水)で再生することで、継続して軟水を生成することができる。
しかし、イオン交換樹脂の再生時期は、原水硬度と予想される使用量(使用者数、浴室や洗面等の使用目的等)から算出されるが、個々の使用量や使用回数等による変動量を都度把握して再生時期を算出することが困難である。このため、再生時期到達前に再生してしまい再生液の無駄と再生の手間の増加を招いたり、または、再生時期が到達後も継続使用することで軟水の機能を利用できないなどの不具合が発生するため、再生時期を適切に把握しさらに、確実な再生作業を促すことができる軟水化装置が要望される。
【0003】
そこで、特許文献1に記載の従来技術では、原水の通水量を定流量弁と圧力スイッチと通水時間の積算時間を用い、軟水化された原水の総量を算出することで、軟水化装置の再生時期をユーザーに報知する方法が開示されている。
特許文献2に記載の従来技術では、水路内に設けた水力発電機で発生する交番電圧の波形を測定して浄水量の積算値を算出し、予め設定された総浄水量と比較し、濾過材の交換時期を表示する方法が開示されている。また、特許文献2には、表示部の近傍に積算値のリセットを行うスイッチを設けた構成が開示されている。
【0004】
さらに、特許文献3に記載の従来技術では、軟水化した水の硬度測定手段で測定した硬度を把握し、イオン交換体の再生時期を判定して利用者へ報知し、自動再生手段を用いてイオン交換体を自動再生する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-232165号公報
【文献】特開平8-206655号公報
【文献】特開2002-272664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の従来技術では、圧力スイッチの電源に乾電池を用いており、水周りで使用する際の水滴の付着や、湿度が飽和状態(例えば入浴中の浴室内)などの環境で使用する場合には、乾電池の格納部や装置自体を防水構造にする必要がある。このため、特許文献1に記載の従来技術は、コスト高であること、定期的な乾電池交換作業の煩わしさと、耐水性に対する信頼性を確保する必要がある等の問題点があった。
【0007】
特許文献1および2に記載の従来技術で使用量を検出することは可能となるが、個々の使用量や使用回数等による変動量を都度把握して再生時期を算出するには、ユーザーがあらかじめ原水硬度或いは再生時期を手動で入力する等の操作をしなければ、個々のユーザーの使用環境に対応できないという問題点があった。
【0008】
特許文献3に記載の従来技術では、硬度測定手段を用いてイオン交換体の再生時期を判定して報知し、自動再生手段を用いて再生漏れや作業の軽減を図っている。ところが、軟水化装置に高価な硬度測定手段や自動再生手段を用いており、軟水化装置の価格が非常に高価となり、市場ニーズに合わないなどの問題点があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みなされたものであって、水周り空間(浴室・洗面所・台所など)で使用される軟水化装置の軟水生成量と的確な再生時期を報知できるとともに、再生後その報知を確実にリセットすることを可能とした軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(1)本発明に係る軟水化装置は、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂部と、前記イオン交換樹脂部を収納するタンクを備え、前記タンクに原水を供給するための水入口部と、前記原水を前記イオン交換樹脂に通過させて生成した軟水を前記タンクから外部へ流出させるための水出口部と、前記タンクに前記イオン交換樹脂を再生するための再生液を投入する再生液投入口と、前記イオン交換樹脂部を通過した前記再生液を排水するための再生液排水口を備えた軟水化装置であって、前記原水の量と前記イオン交換樹脂の再生時期を報知するための報知部と、前記報知部を制御する制御部と、前記報知部と前記制御部に電力を供給する電源部と、前記電源部に電力を供給する電力供給部と、前記報知の作動をリセットするためのリセット手段を備え、前記電源部に電力を供給する前記電力供給部が水力発電装置であって、前記水力発電装置が前記水入口部のタンク接続部より上流側および/または前記水出口部のタンク接続部より下流側に設けられ、前記制御部は、前記水力発電装置より供給される発電圧値と発電積算時間により、前記イオン交換樹脂を通過する原水の量を算出し、算出した原水量の数値を軟水生成量として把握し、この軟水生成量に基づき、予め前記制御部に記憶されている初期値としての軟水生成量上限閾値を前記軟水生成量が超えた場合に、前記報知部より報知を行う機能を有し、前記リセット手段が、前記タンクの上部と下部にそれぞれ、前記タンク内部と通電する電極を有し、前記電極の一方が前記タンク上部に配置された第1の電極であり、前記電極の他方が前記タンクの下部に設置された第2の電極であり、前記制御部に、前記第1の電極と前記第2の電極を覆う位置までの満水状態を検知する機能を備え、満水状態でない場合、前記第1の電極と前記第2の電極の非通電状態により、その時点の軟水生成量を前記初期値としての軟水生成量上限閾値と異なる新たな軟水生成量上限閾値として置き換えてから、前記リセット手段を作動させて前記軟水生成量の数値を0にリセットする機能を有することを特徴とする。
【0011】
(2)本発明に係る軟水化装置は、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂部と、前記イオン交換樹脂部を収納するタンクを備え、前記タンクに原水を供給するための水入口部と、前記原水を前記イオン交換樹脂に通過させて生成した軟水を前記タンクから外部へ流出させるための水出口部と、前記タンクに前記イオン交換樹脂を再生するための再生液を投入する再生液投入口と、前記イオン交換樹脂部を通過した前記再生液を排水するための再生液排水口を備えた軟水化装置であって、前記原水の量と前記イオン交換樹脂の再生時期を報知するための報知部と、前記報知部を制御する制御部と、前記報知部と前記制御部に電力を供給する電源部と、前記電源部に電力を供給する電力供給部と、前記報知の作動をリセットするためのリセット手段を備え、前記電源部に電力を供給する電力供給部が商用電源であって、前記水入口部と前記水出口部の間に流量センサーが設けられ、前記制御部は、前記流量センサーの出力信号により前記イオン交換樹脂を通過する原水量を算出し、前記算出した数値を軟水生成量として把握し、この軟水生成量に基づき、予め前記制御部に記憶されている初期値としての軟水生成量上限閾値を前記軟水生成量が超えた場合に、前記報知部で報知を行う機能を有し、前記リセット手段が、前記タンクの上部と下部にそれぞれ、前記タンク内部と通電する電極を有し、前記電極の一方が前記タンク上部に配置された第1の電極であり、前記電極の他方が前記タンクの下部に設置された第2の電極であり、前記制御部に、前記第1の電極と前記第2の電極を覆う位置までの満水状態を検知する機能を備え、満水状態でない場合、前記第1の電極と前記第2の電極の非通電状態により、その時点の軟水生成量を前記初期値としての軟水生成量上限閾値と異なる新たな軟水生成量上限閾値として置き換えてから、前記リセット手段を作動させて前記軟水生成量の数値を0にリセットする機能を有することを特徴とする。
【0012】
(3)本発明に係る軟水化装置において、前記水入口部が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の下方に接続され、前記水出口部が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の上方に接続され、前記再生液投入口が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の上方に設けられ、前記再生液排水口が前記タンクの前記イオン交換樹脂部の下方に設けられたことが好ましい。
【0013】
(4)本発明に係る軟水化装置において、前記制御部に、日本で最高クラスの硬度(200mg/L)の地域において前記タンクに充填された前記イオン交換樹脂を正常使用した状態で得られる軟水生成量である軟水生成量下限値(400L)と、前記軟水生成量上限閾値を比較する機能を有し、
前記制御部に、前記リセット手段起動時点の前記軟水生成量上限閾値が前記軟水生成量下限値未満の時に、前記軟水生成量上限閾値を前記初期値としての前記軟水生成量上限閾値に戻し、
前記リセット手段起動時点の前記軟水生成量上限閾値が前記軟水生成量下限値以上の時に、前記軟水生成量上限閾値を前記リセット手段起動時点の前記軟水生成量に書き換える機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
「1」本発明によれば、軟水化装置の軟水生成量(原水通水量と等しい)と、イオン交換樹脂の再生時期を報知するための報知部と、報知の作動をリセットするためのリセット手段を備えたことにより、軟水の再生量を把握しながら、適切な再生時期を利用者に提示することで、適切で効率的な軟水の利用を行うことができる軟水化装置を提供できる。
【0016】
「2」本発明によれば、イオン交換樹脂部の下方に水入口部を、上方に水出口部を設けることで、水入口部からの原水の通水により軟水を確実に生成できる。また、イオン交換樹脂部の上方に再生液投入口を下方に再生液排水口を設けることで、再生液を再生液投入口から投入することでイオン交換樹脂部の再生を確実になし得る。
【0017】
「3」本発明によれば、リセット手段として、イオン交換樹脂の再生によるタンク内の水を排出する手順を利用し、タンク上下に配置した第1の電極と第2の電極間の通電状態を把握し、両方の電極を満たす満水状態では無い状態を検出して自動的にリセットする方式を用いることで、リセット漏れなどの不具合を未然に防止することができる。
軟水化装置において、タンクの内部を満水状態として使用し、軟水を生成するが、軟水化装置を使用していない状態でもタンクの内部は満水状態を維持している。しかし、軟水化装置のイオン交換樹脂部を再生する場合は、タンクの中の水を排出し、再生液を投入して再生処理するので、再生処理後に満水で無いことを検出すると、リセット手段は再生直後と判断し、上述のリセット動作を自動的に行う。この自動リセット動作により報知作動の判断基準を明確に設定できる。
【0018】
「4」本発明において電力供給部に水力発電装置を採用することで、商用電源が確保できない環境での使用が可能となり、電池使用による交換の煩わしさや耐水性の不安等を排除することで、電力供給に対するメンテナンスフリー化を実現することができる。
また、水力発電装置を水入口部の上流側と水出口部の下流側の間に設けることで、水入口部からタンク内に原水を供給し水出口部から軟水を排出する水流を利用し発電することが可能であり、この電力を利用して制御部と報知部を作動させる電力を供給できる。
【0019】
「5」本発明において電力供給部に商用電源を採用することで、水力発電装置を採用できない構造や配置の場合の使用に対応できる。この場合、電池使用による交換の煩わしさや耐水性の不安等を排除することで、電力供給に対するメンテナンスフリー化を実現することができる。
【0020】
「6」本発明において流量センサーを採用するならば、軟水生成量を直接測定できるようになり、軟水生成量の測定値に応じた、より精度の高い報知を行うことができる。
【0021】
「7」本発明において原水量の積算に関し、水力発電装置より供給される発電圧値と発電積算時間により算出された数値を用いることで、構造の簡素化を図りながらより精度の高い原水量を把握することができる。
【0022】
「8」本発明におけるリセット手段のリセット方法として、リセット手段の起動時点の軟水生成量の数値が軟水生成量下限値以上の場合は、起動時点の軟水生成量の数値を次回報知に実行するための軟水生成量に置き換えることで、利用者が定めた再生量と再生時期を継続して報知することができる。
【0023】
「9」本発明におけるリセット手段のリセット方法として、リセット手段の起動時点の軟水生成量の数値が軟水生成量下限値未満の場合は、次回報知を実行するための軟水生成量を初期設定数値とすることで、利用者が意図しないで軟水生成量を減少させた場合に自動的に初期化することができ、さらに、引越し等で原水の硬度が変化した場合には、改めて初期化して新たに軟水生成量を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る軟水化装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す軟水化装置の制御系を示す概略構成図である。
【
図3】
図1に示す軟水化装置における制御内容の詳細例について示すフロー図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る軟水化装置を示す斜視図である。
【
図5】
図4に示す軟水化装置の制御系を示す概略構成図である。
【
図6】
図4に示す軟水化装置における制御内容の詳細例について示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
「第一実施形態」
以下、本発明に係る第1実施形態の軟水化装置を挙げて本発明の詳細について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1は、本発明の第1実施形態に係る軟水化装置Nの概要図である。この軟水化装置Nは、イオン交換樹脂を備えたイオン交換樹脂部1を収納するタンク2を有し、このタンク2に、水入口部3、水出口部4、再生液投入口5、再生液排水口6が設けられ、これら全体が外装11で覆われた基本構成を有する軟水化装置である。
軟水化装置Nは、一例として浴室用の給水管を水入口部3に接続し、水出口部4を浴室用の給水栓やシャワー配管に接続して浴室やシャワー室に設置される。
【0026】
図1に示すように直方体状の外装11の内部には外装11より若干小型の直方体状のタンク2が収容され、このタンク2の左側面底部側にL字型の導水管20が接続されている。
導水管20はタンク2の底部側に接続された水平部20aと水平部20aの先端部に接続されて上方に立ち上がる鉛直部20bからなり、鉛直部20bの上端が外装11の天井壁を貫通して上方に開口され、この開口部に水入口部3が形成されている。また、タンク2の上面側であって導水管20に近い位置に直管状の出口管21が接続されている。この出口管21の下端がタンク2に接続され、上端部が外装11の天井壁を貫通して上方に開口され、この開口部に水出口部4が形成されている。
【0027】
タンク2の右側面底部側に直管状の排出管22が接続され、この排出管22の先端部に再生液排出口6が形成されるとともに、
図1に示す状態で排出管22の先端がキャップ23により開閉自在に閉じられている。なお、
図1においてキャップ23は外装11の右側面の若干内側に配置されているが、例えば、外装11の右側面に着脱自在に取り付けられる図示略のカバー体を設け、このカバー体を取り外すことでキャップ23を外部に露出できるように構成することが好ましい。
また、タンク2においてその右側面に近い上面壁の部分に、直管状の投入管24が接続されている。この投入管24の下端がタンク2に接続され、投入管24の上端が外装11の上面壁から上方に突出され、投入管24の上端がキャップ25により開閉自在に閉じられている。投入管24の上端開口部に再生液投入部5が形成されている。
【0028】
本実施形態では排出管22の先端を外装11の内側に配置したが、排出管22の先端で外装11の側面を貫通して排出管22の先端を外装11の外側まで突出させても良い。また、この実施形態では投入管24の先端を外装11の外側まで突出させたが、投入管24の先端を外装11の内側に配置し、外装11の上部にカバー体を装着して投入管24の先端開口部を外部に露出できる構成としても良い。
以上説明のように投入管24と排出管22の先端位置は、後述するイオン交換樹脂の再生の際に必要に応じてキャップ23、25を取り外し、双方の先端側を開口できるように構成されていれば、いずれの位置であっても良い。再生液投入口5と再生液排水口6の形成位置は外装11の内側であっても外側であっても良い。
【0029】
これらに加え、軟水化装置Nは、電源部9aと制御部9bと報知部9cを備えた制御基板9と、水入口部3とタンク2の接続部3aより上流側に配置され制御基板9に電力を供給する水力発電装置7と、タンク2の上部に設けた第1の電極(上部電極)10aおよびタンク2の下部に設けた第2の電極(下部電極)10bからなる電極10と、これら電極10a、10bに電気的に接続された制御部9bを有するリセット手段15とを備えている。
【0030】
リセット手段15は、タンク2の内部と通電するように配線された第1の電極10aと第2の電極10bとの通電状態に基づき制御部9bが報知部9cへのリセット操作を実行する。
本実施形態では、軟水を生成し、軟水化装置Nを使用している場合は、常時タンク2の内部に水が満たされた状態で第1の電極10aと第2の電極10bは通電状態となる。
また、イオン交換樹脂の再生を行う場合は、一度タンク2内の水を排水して再生液(塩水)を投入する作業を行うことで電極10a、10b間が非通電状態となり、その非通電状態に基づき制御部9bが報知部9cへのリセット操作を実行する。
なお、報知部9cとして
図1に示す例では、LEDからなる表示バーを10個横に並べて制御基板9上に配置した構造を適用し、表示バーを透明な防水皮膜で覆い、タンク2の天井壁に設けた透孔から外部に露出させ、視認可能とした構造を採用している。あるいは、タンク2の天井壁に透明窓部を設け、この透明窓部の下にLEDからなる表示バーを視認可能なように設置し、タンク2の外部から視認可能な構成としても良い。
【0031】
水力発電装置7は、水入口部3とタンク2の間の鉛直部20bに組み込まれ、配管内に収容された水車と水車の回転軸により駆動されて発電する発電機を有し、配管内を流れる水により水車が回転され、水車の回転により発電機が出力する電力を制御基板9の電源部9aに配線を介し供給できる構成になっており、制御基板9の電源部9aに電源線8(電源線8aと電源線8b)で接続して電力を供給する。制御基板9は、電源部9a、制御部9b、報知部9cを備えて構成されており、制御部9bはタンク2に設置した第1の電極10aと第2の電極10bに配線により接続されている。
【0032】
以上構成の軟水化装置Nにおいて、水道水等の原水を水入口部3より通水すると、導水管20、水力発電装置7を経由してタンク2に原水が導かれ、タンク2内のイオン交換樹脂部1で軟水が生成され、軟水を水出口部4より得ることができる。
この時、原水の流れを利用して水力発電装置7が発電し制御基板9の電源部9aに(例えば1.8~12Vで)電力を供給する。電源部9aは、供給を受ける電圧が制御部9b並びに報知部9cで使用する電圧(例えば5V)以上の時は(例えば5Vに降圧して)定電圧化し、それ未満(例えば5V未満)の時は水力発電装置7が発電した電力をそのまま其々に供給すると共に、降圧前の発電圧値を制御部9bに供給する。
なお、この制御部9bには、図示略のEEPROM(不揮発性メモリ)が設けられており、このEEPROMに記憶されている情報に従い報知部9cを後述するように制御することができる。また、制御部9bは、前記EEPROMに必要な情報を書き込むか、必要な情報を書き替えるか、各種情報を消去する機能も有し、後述するように報知部9cの作動を制御する。
【0033】
制御部9bは、供給を受ける電力が起動電圧(例えば1.8V)以上になると起動し、内部タイマで稼働時間の積算を開始する。一方で起動中、制御部9bは水力発電装置7より供給されている降圧前の発電圧値を常時監視している。
本形態の軟水化装置Nの通水量の使用域は、6~10L/分を想定しており、起動電圧(1.8V)は概ね5L/分付近とする。このため、起動電圧以下の時は、使用域から外れるので、別途電源不要と考えることができる。しかしながら、起動電圧近傍まで軟水生成量積算のみでも安定機能させることが好ましい。
【0034】
以上より、制御部9bが発電圧を常時監視する目的は、以下の3つとなる。
(1)通水量が6L/分以下になった時を検出し、これにより後述するスリープ処理に移行し、最低限の消費電力として、起動電圧近傍まで軟水生成量積算だけを行う。
(2)スリープ処理に移行することは、供給を受ける電力が不安定になる可能性が高いことから、この時、一旦EEPROMにデータを書き込む。
(3)発電圧を常時監視することで、現在の流量が毎分何L位かを予測することができる。これにより、軟水生成量積算の基準としている後述の時間閾値を、後述するように可変することで、より精度の高い算出ができる。
【0035】
軟水生成量(原水通水量と等しい)は、水力発電装置7による発電圧値と発電積算時間によって水量に算出する方式を使用することができる。
この方式は、あらかじめ発電圧値と流量との関係から時間閾値を求め、発電積算時間(軟水生成時間と等しい)が軟水生成時の平均的な流量の時間閾値に到達すると軟水生成量に1を加算し、発電積算時間を0に戻すことを繰返し行うことで前記軟水生成量を積算して行うものである。尚、軟水生成時の平均的な流量は、使用者が快適にシャワーを浴びることができる6~10L/分の中央値(8L/分)を用いることができる。また、時間閾値とは、流量に基づく、単位水量当たりの通過時間である。
【0036】
中央値(8L/分)の時間閾値とは、1リットル=7.5秒となることから、制御部9に設けたマイコンの内部の基準周期を0.01秒とすると、750回となる。制御部9において用いる計測用のカウンタとして、時間閾値用と軟水生成量用の2つを使い、時間閾値用カウンタは、発電開始から0~750を繰り返す。軟水生成量用カウンタは、時間閾値用カウンタが750になると1L繰り入れる、という扱いを行う。
また、制御部9bに組み込まれているプログラム上では、取りこぼしを防ぐために、時間閾値カウンタが750になると軟水生成量用カウンタに1Lを加算し、その後、時間閾値を0に戻して再積算するという動作を行う。
【0037】
なお、発電積算時間を直接演算することが最も単純と考えられるが、マイコン側は、毎スキャン除算演算するため負荷が高くなり、動作が鈍くなる。これに対し、カウンタ2個を使うと、1個目のカウンタが閾値(750)になった時だけ加算し、数値代入するだけで済むので、マイコンをより安定して動作させることができる。
また、通常のマイコンで取り扱える数値の上限は、8Bit(255)、16Bit(65535)が一般的で、特殊な処理で32Bit(4294967295)を取り扱うことは可能であるが、内部処理が複雑になり動作不良の原因となるおそれがある。
このため、制御部9に搭載するマイコンが高性能マイコンでない限り、通常のマイコンで扱い易い8Bit(255)、16Bit(65535)で数値を取扱い、数値が上限に達する前に別カウンタに1加算し、0から数え直すことが好ましい。
【0038】
さらに、より精度の高い軟水生成量の算出を行うために、常時監視している降圧前の発電圧値より実際の時間閾値を算出し、これを前記軟水生成時の平均的な流量の時間閾値に常時置き換える方式を採用することができる。
本実施形態では、1リットル当たりの実際の軟水生成時の時間閾値を求め、これを用いて1リットル毎に換算し、制御部9bがあらかじめ情報として保有している軟水生成量上限閾値と比較し、報知部9cに対して色彩や数値等の表示による報知に、音による報知を併用も可能である。
【0039】
先に説明した時間閾値が、中央値(8L/分)の時に1リットル=7.5秒となることから、仮にマイコン内部の基準周期を0.01秒とすると750回固定を指しており、実際に使用する流量が6L/分や10L/分に偏ると誤差が大きくなる。
上述した「実際の軟水生成時の時間閾値」とは、先の説明において(3)に記載した通り、発電圧を常時監視することで現在の流量を予測できる。
例えば、流量6L/分の時の発電圧が3V、流量10L/分の時の発電圧が5Vだと仮定すると、先に説明したように監視している発電量が3Vの時の時間閾値は、1000回、5Vの時の時間閾値は600回となり、この関係は後述するメインループ処理のステップS8の説明と
図3に示す通り、傾き(a)と切片(b)で可変することができる。
先の説明のように、この可変させた数値を先の記載に従い0~750を繰り返す時間閾値用カウンタの750に代入することにより、より精度の高い軟水生成量の算出を行うことを目指すことができる。
【0040】
なお、本実施形態では水力発電装置7を用いているので、原水量の積算に関し、水力発電装置7より供給される発電圧値と発電積算時間により算出された数値を用いることで、別途電源等を用いることなく、構造の簡素化を図りながら、より精度の高い原水量を積算して把握することができる効果を有する。
【0041】
報知部9cは、制御部9bより受けた報知指示を視覚化或いは聴覚化し使用者に報知する。
本実施例では、10目盛のLEDカラーバー表示器を報知部9cに搭載し、目盛の数で量的な情報と目盛の色で再生時期に近づいている時間的な情報を使用者に報知する構成を採用することができ、聴覚化する場合は再生時期に近づいていることを音の強弱や種類、音に変化を付けるなど、どちらか一方、或いは数値や音の両方を併用する他の方法に置き換えても良い。
【0042】
次に、
図2に示す軟水化装置Nの概要を参照し、その制御内容詳細に関し、制御部9bによる通水開始から止水までの制御内容につき、
図3に示すフローチャートを参照しつつ以下に説明する。
制御部9bの制御動作においては、
図3に示すように、起動時一回だけ実行する起動時1スキャン処理と、通常時繰返し実行するメインループ処理と、一定時間当たりの通水量が一定値より下回ると制御部9bの稼働を維持するために消費電力を抑えて軟水生成量の積算のみを行うスリープ処理が設定されている。
【0043】
制御部9bは、通水することで水力発電機7が発電した電力により起動し、起動時1スキャン処理を行う。
起動時1スキャン処理では、EEPROM(不揮発性メモリ)に保存してある「軟水生成量A」と「軟水生成量上限閾値B」を読み出す(ステップ:S1)。EEPROMに保存する数値の一例として、「軟水生成量A」の初期値0リットル、「軟水生成量上限閾値B」の初期値1000リットルを選択することができる。
次に、電極10a、10b間の通電状態から、タンク2が満水か否かを検出し(ステップ:S1)、満水でない時は再生直後と判別し、使用者に対し次回も同様のタイミングで再生時期報知ができるように、その時点の「軟水生成量A」を「軟水生成量上限閾値B」に置換えてから「軟水生成量A」をゼロにリセットする(ステップ:S3)。
一方、電極10a、10b間の通電状態から、タンク2の満水状態を検出した時、この段階では何もせずに(ステップ:S4)、次の処理に進む。
【0044】
軟水化装置Nにおいて、通常はタンク2の内部を満水状態として使用し、軟水を生成するが、軟水化装置Nを使用していない状態でもタンク2の内部は満水状態が維持されている。しかし、軟水化装置Nのイオン交換樹脂部1を再生する場合は、タンク2の中の水を排出し、再生処理するので、再生処理後に通水を開始し、水力発電装置7からの電力を制御部9bに供給して制御部9bを電源ON状態とした場合に、満水で無いことを検出すると、制御部9bは再生直後と判断し、上述のリセット動作を行う。
このリセット動作により、「軟水生成量A」の初期値0リットル、「軟水生成量上限閾値B」の初期値1000リットルを自動的かつ確実に選択することができる。
【0045】
次に「軟水生成量上限閾値B」の数値を確認し(ステップ:S5)、軟水生成量上限閾値Bが軟水生成量下限値未満の時は、軟水生成量上限閾値Bを初期値(例えば1000リットル)に書き換える処理を行う(ステップ:S6)。
一方、軟水生成量上限閾値Bが軟水生成量下限値以上の時は何もせずに(ステップ:S7)後に説明するメインループ処理に進む。
なお、軟水生成量下限値とは、日本で最高クラスの硬度地域(200mg/L程度)において、前記軟水化装置Nを正常に再生した状態で得られる軟水生成量(例えば400L)である。
【0046】
即ち、ステップS3で行う、自動リセット機能は「軟水生成量上限閾値B」の値を前回再生操作時の値に自動で置換える学習機能を備えている。更に、電源を水力発電装置7とすることで、使用者は電源接続や電池交換、制御基板9を直接操作することなく、軟水化装置Nの通常操作である通水、止水操作と再生を行うことで、前回再生した「軟水生成量A」に到達した時点を再生時期として報知を受け取ることができる。
【0047】
メインループ処理に進むと、制御部9bは、「軟水生成量A」の換算と加算、EEPROM保存を1リットル毎に繰返しながら(ステップ:S8)、常時「軟水生成量A」と「軟水生成量上限閾値B」の関係から軟水生成完了比率D1と、軟水生成能力比率D2と、軟水生成残能力Eをそれぞれ数値化する(ステップ:S9)。
制御部9bが報知部9cを用いて行う報知処理として、起動時に一回だけ「軟水生成量A」を報知し、以降は軟水生成能力比率D2を報知し、この比率がゼロ以下になった時を再生時期として使用者に報知する。報知処理は、制御基板9上に設けた10段階のLEDバー数と表示色とで行うことができる。
【0048】
一例として、
図3のHで示すように、軟水再生能力比率D2(%)について、数値或いはバー数或いは点滅回数或いは色別のいずれかまたは複数で起動時のみ表示することができる。軟水生成量A(L)について、数値或いはバー数或いは点滅回数或いは色別のいずれかまたは複数で起動時のみ表示することができる。EEPROMアクセス中表時は色別等でEEPROMアクセス中のみ表示することができ、1L加算中表時は色別等でEEPROMアクセス中のみ表示することができ、リセット中操作表示は色別でリセット操作時のみ表示することができる。
なお、本実施形態での報知手段は制御基板9に設けた10段階のLEDバー数と表示色としているが、数値や音で報知できる構成としてもよい。
【0049】
軟水化装置Nの再生時期は、各使用者の使用環境(原水硬度や再生液の量や濃度)によって変化するので、使用者の触感や硬度試薬を使用し、軟水化されなくなった時(例えば硬度20)の「軟水生成量A」の報知量を把握しておくことが好ましい。
長期間使用すると、再生時期を報知するタイミングが軟水化装置Nの実力値とずれることが予想されるが、この場合は一回だけの再生時期報知に頼らずに起動時に表示される「軟水生成量A」で再生操作を行うことにより、簡易的にズレを補正することができる。
【0050】
さらに、「軟水生成量上限閾値B」を初期値に戻したい時は、再生操作後の自動リセット機能が動作した後に、一旦止水してイオン交換樹脂部を収納したタンク2の水を抜き、再度通水することで軟水生成量上限閾値Bが軟水生成量下限値未満となるので、その次に通水した時の起動時1スキャン処理で自動的に初期値に戻すことができる。
【0051】
スリープ処理は、
図3に符号Gで示すように、常時監視している降圧前の発電圧値より実際の流量に換算し、この流量が「一定値C」(例えば毎分5リットル)より下回ると止水域と判断し、その時点の「軟水生成量A」をEEPROMに保存し、消費電力を抑えた状態で発電圧値の監視のみを行う処理である。
この状態が続く時は、「一定値C」より算出した時間閾値毎にメインループ処理に戻り、軟水生成量に1を加算し、その値をEEPROMに保存して再度スリープ処理に移行する動作を繰り返す。
通水量が「一定値C」を上回った時は、メインループ処理に戻る。
その後止水となった場合、制御部9bは稼働停止となるが、水力発電装置7に搭載しているコンデンサにより、僅かではあるが制御部9bの稼働停止を遅延することができるので、その時点の「軟水生成量A」をEEPROMに保存することができる。
【0052】
本実施形態では、制御部9bが積算した「軟水生成量A」を1リットル毎と一定時間当たりの通水量が「一定値C」(例えば毎分5リットル)より下回った時の両方でEEPROMに保存する方法としているが、どちらか一方で保存する方法でも構わない。
【0053】
本実施形態では、水力発電装置7を電源として用いているので、商用電源が確保できない環境での使用が可能となり、電池使用の場合における電池交換の煩わしさを排除し、高湿度の風呂場等に常時設置して使用する場合においても耐水性の不安等を排除することができるので、電力供給に対するメンテナンスフリー化を実現した軟水化装置Nを提供することができる。
【0054】
「割り込み処理」
一般的に、制御にはシングルタスクとマルチタスクという概念があり、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の制御機器ではマルチタスクが主流であるので、複数の複雑な制御を並列で同時実行することができる。しかし、そのためには高度な並行処理が可能な演算装置とメモリを必要とし、制御機器自体が高価になる問題がある。
一方で、マイコンは、安価ではあるが、シングルタスク(1つのソフトしか動かせない)による制御が一般的である。本願の先の実施形態に係る軟水化装置の制御装置9には、単一機能であり、安価なシングルタスク品の演算装置を採用することが好ましい。
タスクとは、先頭行から最終行までを繰返し実行するプログラムのことで、1回の実行を1スキャンといい、本実施形態では
図3に示すメインループ処理に該当する。
この1スキャンの実行時間(周期)は、操作している内容によって変化する。例えば、通常0.01S周期の1スキャンが、1L加算時は演算と表示処理が増えるため0.50S程度となる。
割込み処理とは、シングルタスク実行中にマイコンに標準搭載されているクロック周期等を利用してイベント発生を監視し、イベントが発生した時にシングルタスク実行を一時中断させて(割り込んで)、イベント発生があったことを知らせる機能である。
本実施形態ではこの機能を利用し、先に説明したように、あらかじめ発電圧値と流量との関係から時間閾値を求め、発電積算時間(軟水生成時間と等しい)が軟水生成時の平均的な流量の時間閾値に到達すると軟水生成量に1を加算し、発電積算時間を0に戻すことを繰返し行う処理を実施できる(ステップ:S10)。
即ち、取りこぼしを防ぐために、時間閾値カウンタが750になると軟水生成量用カウンタに1Lを加算し、その後、時間閾値を0に戻して再積算するという動作を行う場合に適用する。
ステップS10により、メインループ処理周期が大きくバラついても、0.01S毎に確実に時間閾値に1を加算できる。
【0055】
「第2の実施形態」
図4は、本発明の第2実施形態における軟水化装置N2の概要図で、水入口部3と前記水出口部4の間の、例えば導水管20に、水力発電装置7の代わりに流量センサー12を組込み、電源線8を商用電源14に接続し、制御基板9と流量センサー12の間に流量センサー12への電源供給と流量信号からなる流量センサー配線13を組み込んだものである。その他の構造については、
図1に示した第1実施形態の軟水化装置Nと同等であり、同等の構成要素については同一の符号を付し、同一要素の説明については省略する。
【0056】
図4に示す軟水化装置N2においても、水道水等の原水を水入口部3より通水すると、導水管20を経由してタンク2に原水を導くことができ、タンク2内のイオン交換樹脂部1にて軟水を生成し、軟水を水出口部4より得ることができる点については同等である。
【0057】
導水管20に設けた流量センサー12は、原水が通過すると磁石が回転しSN極が反転する構造となっており、その状態を流量信号として制御部9bに常時送信しており、この流量信号にはあらかじめ流量閾値(例えば流量1L=SN極反転500回)が定められている。
【0058】
この第2実施形態の軟水化装置N2における軟水生成量(原水通水量と等しい)は、制御部9bが流量センサー12からの流量信号をカウントし、このカウント値が前記流量閾値に到達すると軟水生成量に1を加算し、カウント値を0に戻すことを繰返し行うことで前記軟水生成量を積算して行うものである。
【0059】
また、制御部9bは一定時間毎の前記カウント値の変化を監視し、前記カウント値が変化していれば通水状態、変化していなければ止水状態として、通水状態と止水状態を判別することができる。
【0060】
制御内容詳細は、
図6に示すが、ステップS1~S7における処理と判断は
図3を基に先に説明した第1実施形態の場合と同様である。
軟水化装置N2では、流量センサー12が通水を検出すると通水検出処理を実施してからメインループ処理を実行し、メインループ処理中に流量センサー12が止水を検出するとスリープ処理を実行し、通水検出を待つ動作を繰り返す。
【0061】
なお、軟水化装置N2における其々の動作内容は先に説明した第1実施形態と概ね同様の内容となっている。
メインループ処理において、制御部9bは、「軟水生成量A」の換算と加算、EEPROMに対する情報保存を1リットル毎に繰返しながら(ステップ:S11)、常時「軟水生成量A」と「軟水生成量上限閾値B」の関係から軟水生成完了比率D1と、軟水生成能力比率D2と、軟水生成残能力Eをそれぞれ数値化する(ステップ:S9)。
なお、第2実施形態では水力発電装置7の代わりに流量センサー12を導水管20に組み込んでいるため、ステップS11において、一例として、流量センサー12のSN極反転500回を流量1Lと判断して軟水生成量Aをカウントする。
制御部9bが報知部9cを用いて行う報知処理は、先の第1実施形態と同様に、起動時に一回だけ「軟水生成量A」を報知し、以降は軟水生成能力比率D2を報知し、この比率がゼロ以下になった時を再生時期として使用者に報知することができる。報知処理は、第1実施形態と同様に10段階のLEDバー数と表示色とで行うことができる。
【0062】
スリープ処理Kにおいても、第2実施形態では、第1実施形態の水力発電装置7を流量センサー12に変更しているので、一定時間経過しても流量センサー12が計測している水量信号に変化がない場合は止水と判断することができる。また、その時点における「軟水生成量A」をEEPROMに保存し、スリープ状態に移行することができる。
更に、流量センサー12を採用することで、導水管20を通過した原水量、換言すると軟水生成量Aを直接かつ正確に測定できるようになり、より精度の高い報知を行うことができる。
【0063】
第2実施形態の軟水化装置N2において、電力供給部に商用電源14を採用することにより、水力発電装置7を採用できない構造や配置での使用に対応できる。
第2実施形態の場合、電池使用による電池交換の煩わしさや耐水性の不安等を排除することで、電力供給に対するメンテナンスフリー化を実現した軟水化装置N2を提供することができる。
【0064】
「割り込み処理」
第2実施形態では、割り込み処理により、ステップS12に示すように流量信号ON毎にカウンタ値(C)を加算する処理を行う(ステップS12)。流量信号として、磁石のS極でON、N極でOFFとすれば良い。
図6に示す第2実施形態においては、ステップS12によりメインループ処理周期が長くなっても、あるいは流量が増え、流量計信号の入力周期が高くなっても、流量計信号のON回数を取りこぼしなく加算できる。
【符号の説明】
【0065】
N…軟水化装置、1…イオン交換樹脂部、2…タンク、3…水入口部、4…水出口部、5…再生液投入口、6…再生液排水口、7…水力発電装置(電力供給部)、8…電源線、8a…電源線(+)、8b…電源線(-)、9…制御基板、9a…電源部、9b…制御部、9c…報知部、10…電極、10a…第1の電極(上部電極)、10b…第2の電極(下部電極)、11…外装、N2…軟水化装置、12…流量センサー、13…流量センサー配線、14…商用電源(電力供給部)、15…リセット手段。