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特許7208895疾病治療用カプリン酸及びミリスチン酸組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】疾病治療用カプリン酸及びミリスチン酸組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/215 20060101AFI20230112BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20230112BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230112BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230112BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230112BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
A61K31/215
A23L33/115
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/44
A61P11/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019522426
(86)(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 US2017059000
(87)【国際公開番号】W WO2018081694
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】62/414,942
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595033056
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】The Cleveland ClinicFoundation
【住所又は居所原語表記】9500 Euclid Avenue,Cleveland,Ohio,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カーワン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コムヘアー,スージー
(72)【発明者】
【氏名】アソシング,キューアル
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0045915(US,A1)
【文献】国際公開第2013/032096(WO,A1)
【文献】特表2002-511401(JP,A)
【文献】Journal of Lipid Research,1997年,Vol.38,p.1746-1754
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/20
A23L 33/115
A61K 47/26
A61K 47/42
A61K 47/44
A61P 11/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品、及び包装部材を含み、前記食品が前記包装部材の内部に配置され、前記食品が前記包装部材の内部に無菌の形態で密封されている、ぜんそく治療において使用される製造物品であって、前記食品が、炭水化物、タンパク質、及び脂肪を含み、前記食品の少なくとも60重量%が脂肪からなり、前記脂肪の少なくとも50重量%が、ともにトリグリセリド形態であるカプリン酸(C10)とミリスチン酸(C14)との組み合わせであり、前記食品の少なくとも10重量%が前記タンパク質からなり、前記食品における前記カプリン酸(C10)と前記ミリスチン酸(C14)の構成比が、80:20~90:10である、前記製造物品。
【請求項2】
前記食品の少なくとも65重量%が前記脂肪からなる、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記カプリン酸(C10)と前記ミリスチン酸(C14)の構成比が、80:20である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記食品の少なくとも10重量%が前記炭水化物からなる、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記食品に含まれる前記炭水化物が15重量%未満である、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
請求項1に記載の物品であって、前記食品が、乳化液、粉末、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、及び液体飲料からなる群より選択される形態である、前記物品。
【請求項7】
請求項1に記載の物品であって、前記食品が、卵、落花生、木の実、大豆、小麦、魚、貝、及び亜硫酸塩の少なくとも1種を検出可能に含まない、前記物品。
【請求項8】
請求項1に記載の物品であって、前記食品が90~500カロリーを与える、前記物品。
【請求項9】
請求項1に記載の物品であって、前記食品が、少なくとも10グラムの前記カプリン酸(C10)と前記ミリスチン酸(C14)との組み合わせを含む、前記物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年10月31日出願の米国仮出願第62/414,942号の優先権を主張し、上記出願はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により授与された助成金第HL103453号に基づく政府支援によりなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本明細書では、線維性疾患(例えばぜんそく)などの特定の疾病を治療するための組成物、製造物品、食品、及び方法が提供される。例えば、特定の実施形態において、本明細書では、食品(例えばケトジェニック食)であって、高レベル(例えば、上記食品の少なくとも10重量%)のカプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせを(例えば、遊離脂肪酸としてまたはトリグリセリドとして)含有する上記食品が提供される。他の実施形態において、かかる食品の注文を受け、(例えば、処方情報を受領したまたは確認した後に)線維性疾患を有する対象に上記食品を輸送するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、対象が、少なくとも1日当たり50グラム(例えば1日当たり200グラム)のカプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせを複数の日に摂取するように、上記対象に組成物を投与するまたは与える方法が提供される。
【背景技術】
【0004】
約3800万人のアメリカ人が生涯の間に医療専門家によってぜんそくと診断されている。この慢性炎症性疾患により、健康管理システム及び個々の患者の両方に多大な負担がかかり、ぜんそくに起因する健康のための年間支出及び生産性の損失は200億ドルを超えると推定される。高い罹患率及びコストにもかかわらず、ほとんどのぜんそく患者は軽度から中程度の疾患を有し、「慢性重症ぜんそく」(CSA)に分類されるぜんそく患者は約5~8%である。ぜんそく患者は、ぜんそくの結果として生活の質が著しく低下し、頻繁に入院や緊急来院を行い、全医療費のかなり大きな割合を占める。臨床的には、ぜんそくは、不可逆的な気流障害及び末梢気流疾患の要素、進行中のメディエーターの遊離、ならびにアトピーとの関連性が低いことを特徴とする。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、線維性疾患(例えばぜんそく)などの特定の疾病を治療するための組成物、製造物品、食品、及び方法が提供される。例えば、特定の実施形態において、本明細書では、食品(例えばケトジェニック食)であって、高レベル(例えば、上記食品の少なくとも10重量%)のカプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせを(例えば、遊離脂肪酸としてまたはトリグリセリドとして)含有する上記食品が提供される。他の実施形態において、かかる食品の注文を受け、(例えば、処方情報を受領したまたは確認した後に)線維性疾患を有する対象に上記食品を輸送するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、対象が、少なくとも1日当たり50グラム(例えば1日当たり200グラム)のカプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせを複数の日に摂取するように、上記対象に組成物を投与するまたは与える方法が提供される。
【0006】
いくつかの実施形態において、本明細書では、組成物及び/または食品を含む製造物品であって、上記食品が炭水化物、タンパク質、及び脂肪を含み、上記食品の少なくとも20重量%が上記脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも20重量%が、カプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせである、上記組成物及び/または製造物品が提供される。
【0007】
特定の実施形態において、本明細書では、炭水化物、タンパク質、及び脂肪を含む組成物または食品であって、上記食品の少なくとも30重量%が上記脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも35重量%が、カプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせである、医薬として用いるための、且つ線維性疾患の治療に用いるための(例えば、上記食品が自己投与されることを特徴とする)、上記組成物または食品が提供される。本出願に開示される食品はまた、医薬、特に上記食品の用途に記載される医学的使用のための組成物または物質であってもよい。
【0008】
特定の実施形態において、上記カプリン酸(C10)及び/または上記ミリスチン酸(C14)は、遊離脂肪酸、エステル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、糖脂質、及びリン脂質からなる群より選択される形態で提供される。更なる実施形態において、上記食品の少なくとも22重量%(例えば、少なくとも22重量%・・・45重量%・・・55重量%・・・65重量%・・・75重量%・・・または85重量%)が上記脂肪からなる。更なる実施形態において、上記脂肪の少なくとも27重量%(例えば、少なくとも27重量%・・・38重量%・・・49重量%・・・60重量%・・・80重量%・・・または95重量%)が、上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせである。特定の実施形態において、上記食品の45~80重量%が脂肪であり、及び/または上記脂肪の25~60重量%がカプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせである。特定の実施形態において、上記脂肪の少なくとも75重量%が上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、またはカプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせである。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記食品の少なくとも10重量%が上記タンパク質からなる(例えば、少なくとも10%・・・20%・・・30%・・・40%・・・または55%)。特定の実施形態において、上記食品の15~30重量%が上記タンパク質からなる。更なる実施形態において、上記食品の少なくとも2重量%が上記炭水化物からなる(例えば、2%・・・5%・・・10%・・・15%・・・または25%)。他の実施形態において、上記食品に含まれる炭水化物は15重量%未満である(例えば、1~10%、または14%未満・・・12%未満・・・10%未満・・・8%未満・・・5%未満%・・・または3%未満)。更なる実施形態において、上記脂肪の上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、またはカプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせ以外の脂肪酸は、50重量%未満である(例えば、48%未満・・・38%未満・・・28%未満・・・18%未満・・・10%未満・・・または5%未満)。
【0010】
特定の実施形態において、上記食品は、マヨネーズ、マーガリン、低脂肪スプレッド、ヨーグルト、フルーツスムージー、タンパク質スムージー、チーズスプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、風味付け加工乳、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、練乳製品、アイスクリームミックス、大豆製品、殺菌液卵製品、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪バー、エネルギーバー、乳化液、粉末、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、プリン、ゲル、ゲル濃縮物、液体飲料、及びゼリーからなる群より選択される形態である。いくつかの実施形態において、上記製造物品は包装部材を更に備え、上記食品は上記包装部材の内部に配置され、上記食品は上記包装部材の内部に無菌の形態で密封されている。特定の実施形態において、上記包装部材は、ホイル包装材、プラスチック包装材、紙包装材、ボール紙包装材またはボール箱、プラスチックまたは金属鉢、ジュースの箱容器、ゲル容器などから選択される。
【0011】
特定の実施形態において、上記食品は、牛乳、卵、落花生、木の実、大豆、小麦、魚、貝、及び亜硫酸塩の少なくとも1種を検出可能に含まない。他の実施形態において、上記食品は90~500カロリーを与える(例えば、単一の包装容器内の上記食品は100~300カロリーを含む)。他の実施形態において、上記食品は、少なくとも10グラム(例えば、少なくとも11・・・14・・・18・・・22・・・25・・・30・・・または50グラム)の上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせを含む。
【0012】
特定の実施形態において、カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせが使用される場合、C14に対するC10の比は、(約)5:95・・・(約)10:90・・・(約)20:80・・・(約)30:70・・・(約)40:60・・・(約)50:50・・・(約)60:40・・・(約)70:30・・・(約)80:20・・・(約)90:10・・・(約)95:5である。いくつかの実施形態において、上記食品は香味料を更に含む。
【0013】
特定の実施形態において、本明細書では、上述の及び本明細書に記載の組成物または製造物品を、線維性疾患を有する(例えばぜんそくを有する)対象(例えば、ヒトの対象、男性の対象、もしくは女性の対象)または毎日もしくは隔日の(例えば、対象が消費するカロリーが1日当り600カロリー未満である)カロリー制限食事療法中の対象に提供すること(対象に輸送すること、施設において分配すること、手渡すこと)を含む方法が提供される。特定の実施形態において、上記施設は薬局、病院、または診療所である。特定の実施形態において、上記提供することは、上記製造物品を上記対象の住居に輸送すること、または上記製造物品を医療施設で上記対象に分配することから選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、本明細書では、a)線維性疾患を有する対象(及び/または、例えば対象が消費するカロリーが1日当り600・・・500・・・または400カロリー未満である、毎日もしくは隔日のカロリー制限食事療法中の対象)から、または上記線維性疾患を有する対象の介護者から、上述の及び本明細書に記載の組成物または製造物品の注文を受けることと、b)上記製造物品を上記対象及び/または上記介護者に輸送することとを含む方法が提供される。特定の実施形態において、上記方法は、i)上記対象及び/または上記介護者が上記製造物品を受領することの正当性を認める上記組成物または製造物品の処方箋を受領するステップ、あるいはii)以前受領した、上記対象及び/または上記介護者が上記製造物品を受領することの正当性を認める処方箋情報を確認する(例えば、コンピュータもしくは人が、既にファイルされた処方箋を見て、当該組成物もしくは製造物品を当該対象または対象の介護者に送付してもよいことを確認する)ステップを更に含む。更なる実施形態において、上記処方箋は医療提供者によって正当性が認められている。更なる実施形態において、上記医療提供者は実地看護師または医師である。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記線維性疾患は、ぜんそく、肺線維症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、放射線誘発肺損傷、硬変、胆道閉鎖症、心房線維症、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、グリア性瘢痕、動脈硬化、関節線維症、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド線維症(Keloid fibrosis)、縦隔線維症、骨髄線維症、ペロニー病、腎性全身性線維症、進行性塊状線維症、後腹膜線維症、及び全身性硬化症からなる群より選択される。
【0016】
特定の実施形態において、上記処方箋は、i)上記対象の氏名、ii)上記組成物もしくは製造物品の一般名または商品名、iii)上記処方箋の正当性を認めた医療提供者の氏名、及びiv)上記組成物または製造物品の量の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または全てを記載する。いくつかの実施形態において、上記輸送することは上記対象の住居までである。他の実施形態において、上記輸送することは上記介護者の事業所までである。更なる実施形態において、上記輸送することは、U.S. Postal Service、Federal Express、United Parcel Service (UPS)、またはDHLを介する。特定の実施形態において、上記輸送することは上記製品を運輸事業者に提供することを含み、次いで上記運輸事業者は上記製造物品を上記対象の住居または上記介護者の事業所に配送する。特定の実施形態において、上記運輸事業者は、一般(common)運輸事業者、一般(public)運輸事業者、または自家用運輸事業者(private carrier)である。
【0017】
特定の実施形態において、上記食品は希少疾病用医薬品法(Orphan Drug Act)に規定される医療用食品に該当する。更なる実施形態において、上記組成物または製造物品の上記注文を受けることは、電話、ファックス、電子メール、または用紙によってある量の上記製造物品の依頼を受けることを含む。他の実施形態において、上記注文を受けることは、上記組成物もしくは製造物品の一部または全てに対する支払を受領することを更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書では、対象(例えば、食欲を低減する、食欲を抑制する、食物もしくはカロリー摂取量を削減する、及び/または炎症を低減するために、上述の及び本明細書に記載の組成物または製造物品を必要とする対象)に有効量のかかる組成物または製造物品を与えることを含む、ケトン体生成の増強方法、食欲の低減方法、食欲の抑制方法、あるいは食物またはカロリー摂取量の低減方法、あるいは炎症の低減方法が提供される。特定の実施形態において、上記対象は、肥満である、減量のための食事療法中である、または炎症性疾病もしくは疾患を有している。いくつかの実施形態において、上記与えることは、上記組成物もしくは製造物品を上記対象の住居に輸送すること、または上記組成物もしくは製造物品を医療施設で上記対象に分配することから選択される。特定の実施形態において、上記対象が、1日当り、もしくは隔日で、全食物源から摂取する(または消費する)カロリーは、合計600カロリー以下(例えば、600・・・550・・・500・・・450・・・400・・・350・・・300カロリー)である。
【0019】
特定の実施形態において、本明細書では、a)線維性疾患を有する対象が、1日のうちに少なくとも10グラムの、カプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、もしくは上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせを摂取するように、上記対象に組成物または食品を投与するあるいは与えることと、b)その後の少なくとも2日(例えば、少なくとも連続した2日、または上記対象が上記組成物もしくは食品を摂取するそれぞれの日の間に1日おいた少なくとも2日)に、上記投与すること及び/または上記与えることを繰り返すこととを含む方法が提供される。特定の実施形態において、上記少なくとも10グラムは、1日のうちに少なくとも15グラム(例えば、少なくとも15・・・50・・・100・・・200・・・300または400グラム)である。特定の実施形態において、上記対象が、1日当り全食物源から摂取する(または消費する)カロリーは、合計600カロリー以下(例えば、600・・・550・・・500・・・450・・・400・・・350・・・300カロリー)である。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記組成物は上述の及び本明細書に記載の食品を含む。特定の実施形態において、上記組成物は静脈内投与される。更なる実施形態において、上記組成物は、丸剤、液剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、ソフトゲルカプセル剤、またはシロップの形態である。更なる実施形態において、上記組成物の少なくとも25重量%(例えば、少なくとも30%・・・40%・・・65%・・・85%)が脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも35%(例えば、35%・・・48%・・・65%・・・90重量%)が、上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)の組み合わせからなる。特定の実施形態において、上記組成物の少なくとも85重量%が脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも35重量%が、上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)の組み合わせからなる。更なる実施形態において、上記組成物の少なくとも45重量%が脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも95重量%が、上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせからなる。更なる実施形態において、上記組成物の少なくとも85重量%が脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも95重量%が、上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせからなる。更なる実施形態において、上記与えることは、上記製造物品を上記対象の住居に輸送すること、または上記製造物品を医療施設で上記対象に分配することから選択される。いくつかの実施形態において、上記対象はぜんそくを有する。更なる実施形態において、上記線維性疾患は、肺線維症、嚢胞性線維症、特発性肺線維症、放射線誘発肺損傷、硬変、胆道閉鎖症、心房線維症、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞、グリア性瘢痕、動脈硬化、関節線維症、クローン病、デュピュイトラン拘縮、ケロイド線維症、縦隔線維症、骨髄線維症、ペロニー病、腎性全身性線維症、進行性塊状線維症、後腹膜線維症、及び全身性硬化症からなる群より選択される。
【0021】
特定の実施形態において、上記その後の少なくとも2日には、その後の少なくとも14日(例えば、少なくとも14・・・20・・・25・・・30・・・または50日)にである。更なる実施形態において、上記その後の少なくとも2日には、その後の少なくとも45日(例えば、少なくとも45日・・・8週・・・16週・・・または6ヶ月)にである。更なる実施形態において、上記組成物の少なくとも45重量%が脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも35重量%が、上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせからなり、上記脂肪の上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)及び上記ミリスチン酸(C14)以外の脂肪酸は、25重量%未満である。更なる実施形態において、上記組成物の少なくとも45重量%が脂肪からなり、上記脂肪の少なくとも35重量%が、上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)と上記ミリスチン酸(C14)との組み合わせからなり、上記脂肪の上記カプリン酸(C10)、上記ミリスチン酸(C14)、または上記カプリン酸(C10)及び上記ミリスチン酸(C14)以外の脂肪酸は、15重量%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】全気道狭窄に対する標準食餌C10及びC14の効果を示す図である。
図2】肺コンプライアンスに対する標準食餌C10及びC14の効果を示す図である。
図3】肺の硬さ(lung stiffness)に対する標準食餌C10及びC14の効果を示す図である。
図4】努力性呼気肺気量に対する標準食餌C10及びC14の効果を示す図である。
図5】マウスチリダニモデルにおいて種々の用量のヤシ油を給餌した動物の実験設計を示す図である。
図6A】全気道狭窄を示す図である。
図6B】中央気道狭窄を示す図である。
図6C】末梢気道狭窄を示す図である。
図6D】肺コンプライアンスを示す図である。
図6E】末梢肺組織エラスタンスを示す図である。
図6F】肺エラスタンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[用語の定義]
本技術の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句を以下に定義する。更なる定義は詳細な説明を通して示す。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、文脈による明らかな別段の指示がない限り、以下の用語は本節で明示的に対応付けされた意味をもつ。本明細書では、語句「一実施形態において」は、必ずしも同一の実施形態を指すわけではないが、そうであってもよい。更に、本明細書では、語句「別の実施形態において」は、必ずしも異なる実施形態を指すわけではないが、そうであってもよい。かくして、以下に説明するように、本技術の範囲または趣旨から逸脱することなく、本技術の種々の実施形態を容易に組み合わせることができる。
【0025】
また、本明細書では、用語「または(or)」は包含的「or」演算子であり、文脈による明らかな別段の指示がない限り、用語「及び/または」と同等である。また、本明細書を通して、「a」、「an」、及び「the」の意味は複数の言及を包含する。「in」の意味は、「in」及び「on」を包含する。
【0026】
本明細書では、用語「医療用食品」とは、1988年の希少疾病用医薬品法(21U.S.C. 360ee(b)(3))に規定される通りであり、「医師の監督の下、腸内で消費または投与されるように処方され、疾患または疾病の特定の食事管理であって、そのための認知された科学的原理に基づいた特徴的な栄養学的要件が医学的評価によって確立されている上記食事管理を目的とした食品である」。
【0027】
本明細書中では、用語「対象」及び「患者」とは、任意の動物、例えば、イヌ、ネコ、鳥、家畜、及び好ましくはヒト(例えば、ぜんそく、線維性疾患、肥満などの疾患を有するヒト)などの任意の動物をいう。
【0028】
本明細書では、用語「投与」とは、対象に薬物、プロドラッグ、もしくは他の物質(例えば食品)、または治療上の処置を与える行為をいう。人体への例示的な投与経路は、口(経口)、皮膚(経皮、局所)、鼻(経鼻)、肺(吸入)、口腔粘膜(口腔)を経る、注射(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、腹腔内等)によるものなどであってよい。
【0029】
[詳細な説明]
本明細書では、線維性疾患(例えばぜんそく)などの特定の疾病を治療するための組成物、製造物品、食品、及び方法が提供される。例えば、特定の実施形態において、本明細書では、食品(例えばケトジェニック食)であって、高レベル(例えば、上記食品の少なくとも10重量%)のカプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせを(例えば、遊離脂肪酸としてまたはトリグリセリドとして)含有する上記食品が提供される。他の実施形態において、かかる食品の注文を受け、(例えば、処方情報を受領したまたは確認した後に)線維性疾患を有する対象に上記食品を輸送するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、対象が、少なくとも1日当たり40グラムまたは50グラム(例えば1日当たり200グラム)のカプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせを複数の日に摂取するように、上記対象に組成物を投与するまたは与える方法が提供される。
【0030】
特定の実施形態において、本明細書に記載の食品は、スムージーまたは類似の無害の食品として処方される。特定の実施形態において、本明細書に記載の食品(例えば、スムージー、またはバー)はカロリー制限を伴う(例えばぜんそくを治療するために)。
【0031】
特定の実施形態において、ぜんそくの状態に対するカロリー制限の効果、ならびにぜんそくに関連するミトコンドリアUCP-2発現及びROS生成の代謝パラメータを調査するためのプロトコルが用いられる。このプロトコルは、隔日での5.5kcal/kg(70kgの個人に関しては-400kcal/日)へのカロリー制限を求め、対象がコンプライアンスを高めるために制限する日に消費すべき処方(例えば本明細書に記載の食品)を提供する。UCP-2発現の高レベルの食事規制のため、この処方の選択は結果に顕著な影響を与える可能性がある。動物モデルでの検討において、Sullivan et al.は、ケトジェニック食がUCP-2発現を増加させ、その結果ROS発現を減少させることを実証した(Sullivan et al., Ann Neurol. 2004 Apr;55(4):576-80)。いくつかの実施形態において、上記対象は摂取量を既に制限していることとなることから、ケトーシスを助長するための処方を選択することにより、UCP-2発現が亢進されることとなる可能性が高い。
【0032】
てんかんのケトジェニック食療法においてケトーシスを誘発するために用いられる従来の処方はKetoCalである。しかしながら、この処方により与えられるタンパク質は400kcal(または0.11g/kg)当り8gに過ぎないこととなる。このレベルのタンパク質では、おそらく望ましくない負の窒素バランスを生じることとなる。これに替わって、ヒトにおけるケトーシスは、カロリーのかなりの部分を中鎖トリグリセリドに由来するものとすることにより、より制限の少ない食事で開始させることができることが明らかになっている(Liu, Epilepsia. 2008 Nov;49 Suppl 8:33-6、上記文献はその全体が参照により本明細書に援用される)。高脂肪食がUCP2及び3の発現の増加と相関することもヒトにおいて実証されている(Schrauwen, et al., Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord. 2001 Apr;25(4):449-56)。したがって、いくつかの実施形態において、UCP発現を促進し、研究結果を裏付けるための、炭水化物を制限し且つ中鎖トリグリセリド及び総脂肪含有量を最大にしつつ、最適なタンパク質レベルを与えるための優れた処方が開発された。
【0033】
げっ歯動物の褐色脂肪組織におけるUCP-1は、プロトン駆動力を熱エネルギーとして消散させることによって体温調節の役割を果たすことが周知である。ヒトの脂肪におけるUCP-2の類似の作用機序により、UCP2の発現が増加すると体温の上昇に繋がることが予想される。したがって、いくつかの実施形態において、対象の体温ならびに尿中ケトンレベル(これらにより、当該処方がうまくケトーシスを誘発するかどうかを判定する)を定期的に測定して、食事療法の有効性及びコンプライアンスの両方を調べることが推奨される。食事療法コンプライアンスの第3の尺度は呼吸交換比である。この尺度を当該処方から予測される呼吸交換比(または食物商(food quotient))と比較して、ノンコンプライアンスを検査することができる。
【0034】
食品(スムージー)の例示的なレシピは以下の表1に示す通りである。
【0035】
【表1】
【0036】
特定の実施形態において、本発明は、ぜんそくの状態に対するカロリー制限と、ぜんそくに関係するミトコンドリアUCP-2発現及びROS生成の代謝パラメータとの間の潜在的な帰結に取り組んでいる。上記スムージー及び冷凍スムージーの両方が、スチューデントのT検定を用いると、味、質感、及び口当たりの品質においてAtkinsシェイクよりも有意に(P<0.05)良好であり、上記冷凍スムージーも後味が非常に優れている。
【0037】
本明細書では、ぜんそくを治療して、患者がより楽に呼吸するのに役立つ栄養学的手法が提供される。特定の実施形態において、中鎖トリグリセリド(MCT)処方(例えば、C10及びC14脂肪酸)を含むケトジェニック食に基づく独自開発の処方が提供される。証拠により、細胞代謝の変化がぜんそくに関与すること、及び肥満とぜんそくが炎症及び脂肪過多を促進する共通の経路に由来することが示唆される。本明細書に記載のシェイク/スムージーまたは他の食品用の、(例えば隔日でのカロリー制限としての)独自開発の処方は、ぜんそくの状態に重大な影響を与える活性酸素種(ROS)発現を減少させるUCP発現を増加させるために本明細書に提供される。ミトコンドリア機能は、代謝ならびにアレルギー性疾患及び免疫学的疾患に対する感受性の調節において中核をなす。ミトコンドリアの機序及び機能において、ATPは電子伝達系を介する細胞呼吸によって生成する。この過程で、何がしかの、免疫シグナル伝達及び病理学的炎症において重要な活性酸素種(ROS)が形成される。
【0038】
特定の実施形態において、本明細書では、炭水化物を制限し、(例えば、C10及びC14脂肪酸を提供する)中鎖トリグリセリド(MCT)及び総脂肪含有量を最大にしつつ、一定の、概括的に最適なタンパク質レベルを与える、(本明細書に記載の)食品が提供される。本発明は如何なる特定の機序にも限定されず、上記機序の解明は本発明の実施にとって必要とされるものではないが、かかる食品はミトコンドリア脱共役タンパク質2(UCP発現-2)を促進し、それが次に、ミトコンドリアROSの産生を減弱化し、このことがぜんそくの症状(例えば、尿中ブロモチロシン及び呼気一酸化窒素(NO)などの非侵襲性バイオマーカーによる炎症の判定)を軽減する可能性があると考えられる。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記食品及び組成物中の上記C10及びC14脂肪酸は、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、またはリン脂質分子へとエステル化されている。いくつかの実施形態において、上記食品及び組成物中の上記C10及び/またはC14脂肪酸はエチルエステルとして提供される。いくつかの実施形態において、上記カプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせは、経口送達ビヒクル、食品、栄養補助食品(nutritional supplement)、栄養補助食品(dietary supplement)、または機能性食品中で提供される。いくつかの実施形態において、上記カプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)、またはそれらの組み合わせの投与は、経口投与、局所投与、非経口投与、経腸投与、経皮投与、皮内投与、眼内投与、硝子体内投与、舌下投与、または膣内投与であり、好ましくは有効量の上記組成物を含んでいてもよい。
【0040】
特定の実施形態において、本技術に係る上記カプリン酸(C10)、ミリスチン酸(C14)(またはそれらの組み合わせ)の組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、もしくは賦形剤(それらの組み合わせを含む)を含むかまたはそれらからなる。治療上の使用に許容される担体または希釈剤は製薬技術分野において周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載される。医薬担体、賦形剤、または希釈剤の選択は、意図される投与経路及び標準的な医薬に関する慣行に関して選択される。上記医薬は、上記担体、賦形剤、もしくは希釈剤として、またはそれらに加えて、任意且つ適宜の結合剤(複数可)、滑沢剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、被覆剤(複数可)、及び/または可溶化剤(複数可)を含む。この医薬組成物は、望ましくは無菌形態で提供されることとなる。この医薬組成物は単位剤形で提供されてもよく、一般的には密封容器中で提供されることとなる。複数の単位剤形が提供されてもよい。
【0041】
本技術の範囲内の医薬組成物は、防腐剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香味料、着臭剤、及び/または塩の1種または複数種を含んでいてもよい。本技術の化合物は、それ自体が薬学的に許容される塩の形態で提供されてもよい。また、実施形態は、緩衝剤、被覆剤、抗酸化剤、懸濁剤、アジュバント、賦形剤、及び/または希釈剤を含んでいてもよい。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。
【0042】
上記医薬組成物はまた、本技術の化合物に加えて、他の治療上活性な薬剤を含有していてもよい。2種以上の治療薬が用いられる場合、それらは別個に(例えば、異なる時間に及び/または異なる経路を介して)投与されてもよく、したがって、必ずしも単一の組成物中に存在する必要はない。したがって、併用療法は本技術の範囲内である。
【0043】
投与(送達)の経路としては、経口投与(例えば、錠剤、カプセル剤として、または摂取可能な溶液として)、局所投与、経粘膜投与(例えば、吸入用の鼻腔噴霧剤またはエアロゾルとして)、経鼻投与、非経口投与(例えば注射剤形による)、消化管投与、脊髄内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、静脈内投与、子宮内投与、眼内投与、皮内投与、頭蓋内投与、気管内投与、膣内投与、脳室内投与、脳内投与、皮下投与、点眼(硝子体内投与または前房内投与を含む)、経皮投与、直腸投与、口腔内投与、陰茎経由、経膣投与、硬膜外投与、舌下投与の1または複数が挙げられるが、これらに限定はされない。全ての薬剤を同一の経路で投与する必要があるわけではないことを理解されたい。同様に、上記組成物が複数種の活性成分を含む場合、それらの成分は異なる経路で投与されてもよい。
【0044】
本技術のC10剤及び/またはC14剤が非経口投与される場合、かかる投与の例としては、上記薬剤を静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、尿道内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与、または皮下投与すること、及び/または注入技法を用いることによることの1または複数が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態において、カプセル剤もしくは錠剤として、散剤もしくは顆粒剤として、シロップ剤もしくは(水性もしくは非水性液体中の)懸濁剤として、食用フォームもしくはホイップとして、または乳化液剤としての、経口投与に適した医薬組成物が提供される。錠剤または硬質ゼラチンカプセル剤は、ラクトース、トウモロコシデンプン、またはそれらの誘導体、ステアリン酸またはその塩を含んでいてもよい。軟質ゼラチンカプセル剤は、植物油、ワックス、脂肪、半固体または液体ポリオールなどを含んでいてもよい。溶液剤及びシロップは、水、ポリオール、及び糖を含んでいてもよい。懸濁液剤の製剤には、油分(例えば植物油)を用いて、水中油型または油中水型懸濁液を提供してもよい。経口投与を意図する活性薬剤は、消化管内での活性剤の崩壊及び/または吸収を遅延させる材料で被覆または上記材料と混合されていてもよい(例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを用いてもよい)。このようにして、活性剤の持続放出が何時間にもわたって得られ、必要ならば、上記活性薬剤は胃内で分解されないように保護されていてもよい。経口投与用の医薬組成物は、特定のpHまたは酵素的条件によって特定の消化管の位置で活性薬剤の放出を促進するように製剤されていてもよい。
【0046】
あるいは、本技術のC10剤及び/またはC14剤は、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、溶液剤、クリーム剤、軟膏剤、または粉剤の形態で局所的に塗布されてもよい。本技術の薬剤はまた、例えば皮膚貼付剤を用いることによって、経皮投与(dermally)または経皮投与(transdermally)されてもよい。皮膚への局所塗布用に、本技術の薬剤は、例えば、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、及び水の1種もしくは複数種との混合物中に懸濁または溶解した、上記活性化合物を含有する好適な軟膏剤として製剤されていてもよい。あるいは、上記薬剤は、例えば、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水の1種もしくは複数種の混合物中に懸濁または溶解した、好適なローション剤あるいはクリーム剤として製剤されていてもよい。本技術の薬剤が非経口投与される場合、かかる投与の例としては、上記薬剤を静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、尿道内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与、または皮下投与すること、及び/または注入技法を用いることによることの1または複数が挙げられる。
【0047】
非経口投与には、上記薬剤を、無菌水溶液であって、他の物質、例えば上記溶液を血液と等張にするのに十分な塩またはグルコースを含んでいてもよい上記水溶液の形態で用いることが最もよい。必要ならば、上記水溶液は適宜に(好ましくは3~9のpHに)緩衝化されなければならない。無菌条件下での好適な非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技法によって容易に実現される。
【0048】
一般的には、医師は個々の対象に最も適した実際の用量を決定することとなる。任意の特定の患者についての具体的な用量レベル及び投与頻度は変化する場合があり、用いる具体的な化合物の活性、当該化合物の代謝安定性及び作用の期間、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与方法及び投与時間、排泄速度、薬物の併用、特定の疾病の重篤度、及び治療を受けている個人を含む種々の因子に依存することとなる。本技術の薬剤及び/または医薬組成物は、1日当り1~10回、例えば1日当り1回または2回のレジメンに従って投与することができる。ヒトの患者への経口及び非経口投与に関して、上記薬剤の日用量レベルは、単回での用量または複数回に分割しての用量であってよい。
【0049】
必要に応じて、上記薬剤は、1日当たり1g/kg-体重~10g/kg-体重の用量で投与されてもよい。当然のことながら、本明細書に記載の用量は平均的なケースの例示である。勿論、より高いまたはより低い用量範囲が相応しい個々の事例があり得る。
【0050】
「治療有効量」とは、当該治療薬の量であって、その意図する目的、すなわちぜんそくの症状の治療または炎症及び関連する症状の軽減を実現するのに有効な上記量をいう。本明細書に記載の方法は、治療有効量の日量を用いてもよい。個々の患者の必要性は変化する場合があり、本技術に関連する化合物の有効量の最適範囲の決定は当業者の技量の範囲内である。一般に、本技術の化合物及び/または組成物を用いて疾病を治療するための投与レジメンは、患者の類型、年齢、体重、性別、食事、及び病状、機能障害の重篤度、投与経路、用いる特定の化合物の活性、有効性、薬物動態学的及び毒物学的プロファイルなどの薬理学的考察、ドラッグデリバリーシステムが使用されるかどうか、ならびに当該化合物が薬物併用の一部として投与されるかどうか、及び当業者によって調整することができるかどうかを含む種々の因子に従って選択される。したがって、実際に使用される投与レジメンは大幅に変化する場合があり、それ故に、本明細書に記載の例示的な投与レジメンから逸脱する場合がある。
【0051】
[実施例]
【実施例1】
【0052】
[カプリン酸(C10)及びミリスチン酸(C14)はぜんそくの症状を改善]
天然ヤシ油の中鎖脂肪酸(MCF)組成を以下の表1に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
アレルゲン感作の6週間前に開始して、マウスに標準的なヤシ油またはMCFを添加した食餌を与えた。イソフルラン麻酔したマウスに、50ugの生理学的食塩水中の100ugのチリダニ(D. Pteronyssinus)抽出物(HDME)(Greer Labs, NC)を鼻腔吸引により接種した。5日後に、マウスに10ugのHDMEを5日間毎日接種した。最後のHDME暴露の3日後に、気道過敏性を測定し、分析のために肺を採取する。食餌は、食餌kg当たり21gのヤシ油または精製MCFの用量で15kcal%の脂肪であった。4.75g/日/25g-マウスの食物摂取日量に基づいて、各マウスは1日当たり100mgのヤシ油またはMCFを消費する。
【0055】
【表3】
【0056】
この実施例の結果を図1~4に示し、これらの図はヤシ油中に主としてトリグリセリドとして存在する種々の脂肪酸で処置したマウスでの結果を示す。図1は、気管支収縮薬であるメタコリンの用量を増加させることによって(x軸)誘発される全気道狭窄(Y軸上の呼吸抵抗(Rrs))が、C10またはC14を給餌した動物において抑制されることを示す。図2は、メタコリンの用量を増加させること(x軸)に応答して、肺の伸張する能力(Y軸上の肺胸郭コンプライアンス(Crs))が、C10またはC14を給餌した動物において改善されることを示す。図3は、メタコリンの用量を増加させること(x軸)に応答して、肺の硬さ(Y軸上の肺及び胸郭のエラスタンス(Ers))が、C10またはC14を給餌した動物において低下することを示す。図4は、メタコリンの用量を増加させること(x軸)に応答して、努力性呼気量(Y軸上のFEV)が、C10またはC14を給餌した動物において増加することを示す。
【実施例2】
【0057】
[イエダニ誘発性ぜんそくの前臨床マウスモデルにおける気道過敏性に対するヤシ油食餌の効果]
実験の概要及び結果は以下の通りである。アレルゲン感作の6週間前に開始して、マウスに標準食餌またはヤシ油を添加した食餌を与えた。イソフルラン麻酔したマウスに、50ugの生理学的食塩水中の100ugのチリダニ(D. Pteronyssinus)抽出物(HDME)(Greer Labs, NC)を鼻腔吸引により接種した。5日後に、マウスに10ugのHDMEを5日間毎日接種する。最後のHDME暴露の3日後に、気道過敏性を測定し、分析のために肺を採取する(図5)。
【0058】
図6A~Cに示すように、ヤシ油食餌は用量依存的な形態で気道抵抗を低減し(図6A~C)、全気道過敏性、中央気道過敏性、及び末梢気道過敏性が減少した。肺コンプライアンス及びエラスタンスパラメータは、ヤシ油が用量依存的な形態で肺の硬さを低下させることを示した(図6D~F)。図6に示す検討は以下のように実施した。FlexiVentベンチレーター(FlexiVent, Scireq, Montreal, Canada)を用いて肺力学の測定を行った。吸入させるメタコリンの用量を増加させることに応答する気道過敏性及び肺力学を測定した。(A~C)気道抵抗のパラメータ。(D)組織コンプライアンスであり、肺の硬さに反比例する。(E~F)肺のエラスタンスパラメータ。
【0059】
上記の明細書において言及した全ての刊行物及び特許は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に援用される。記載された本技術の組成物、方法、及び使用の、記載された本技術の範囲及び趣旨から逸脱することのない種々の改変及び変形は当業者には明らかであろう。本技術を特定の例示的な実施形態に関連して説明してきたが、特許請求の範囲に記載の本技術は、かかる特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、薬理学、生化学、医学、または関連分野の当業者にとっては明らかである、記載された形態の、本技術を実施するための種々の改変は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F