(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】多層膜及び二液硬化型コーティング剤
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20230112BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230112BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20230112BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230112BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230112BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230112BHJP
C09D 133/16 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J7/25
C09D175/04
B32B27/40
B32B27/00 M
C09D133/16
(21)【出願番号】P 2019539540
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2018031789
(87)【国際公開番号】W WO2019044843
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/013911
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017166521
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木口 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】松岡 伸行
(72)【発明者】
【氏名】中井 亮一
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-072012(JP,A)
【文献】特開2013-159039(JP,A)
【文献】特開2006-152080(JP,A)
【文献】特開2015-007226(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152631(WO,A1)
【文献】特開昭63-248866(JP,A)
【文献】実開平02-025547(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、
上記基材層の第1の面に積層一体化され、水酸基価が25~380mgKOH/gであり且つフッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)とポリイソシアネート(I)との反応物であるポリウレタンを含む表面保護層と、
上記基材層の第2の面に積層一体化された粘着層とを
含み、
上記ポリオール(P)が、(メタ)アクリルポリオールを含み、
上記(メタ)アクリルポリオールが(メタ)アクリル系モノマーの重合体であり、上記(メタ)アクリル系モノマーは、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)とを含み、上記(メタ)アクリルポリオール中における上記水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位に対する上記フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量比(フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量/水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の質量)が、0.9以下であることを特徴とする多層膜。
【請求項2】
ポリオール(P)の水酸基価が120~180mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の多層膜。
【請求項3】
(メタ)アクリルポリオール中における水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位に対するフッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量比(フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量/水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の質量)が0.003~0.9であることを特徴とする
請求項1に記載の多層膜。
【請求項4】
(メタ)アクリル系モノマーが、シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)を含むことを特徴とする
請求項1に記載の多層膜。
【請求項5】
ポリオール(P)が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールよりなる群から選ばれた少なくとも一種のポリオールを含むことを特徴とする請求項1に記載の多層膜。
【請求項6】
ポリウレタンが、ポリオール(P)と、ポリイソシアネート(I)と、ポリチオール(T)との反応物であることを特徴とする請求項1に記載の多層膜。
【請求項7】
基材層が、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーのうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の多層膜。
【請求項8】
基材層が、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、又はポリエステル系ポリウレタン熱可塑性エラストマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の多層膜。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の多層膜を含むことを特徴とする自動車保護用フィルム。
【請求項10】
水酸基価が25~380mgKOH/gであり且つフッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)を含む主剤と、ポリイソシアネート(I)を含む硬化剤とを
含み、
上記ポリオール(P)が、(メタ)アクリルポリオールを含み、
上記(メタ)アクリルポリオールが(メタ)アクリル系モノマーの重合体であり、上記(メタ)アクリル系モノマーは、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)とを含み、上記(メタ)アクリルポリオール中における上記水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位に対する上記フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量比(フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量/水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の質量)が、0.9以下であることを特徴とする二液硬化型コーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ウォーターマーク性及び耐傷性に優れている表面保護層を有する多層膜、並びに上記表面保護層を形成するための二液硬化型コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車、車輌、航空機、ガラス、建築物や看板などの物品には、汚れや傷から保護して外観を維持するために表面処理が行われている。このような表面処理は、物品表面に表面保護層を適用することにより行われている。表面処理方法としては、例えば、(1)二液硬化型コーティング剤を物品表面に塗工して表面保護層を形成する方法、及び(2)表面保護層及び粘着層を有する多層膜を物品表面に貼着する方法などが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1の実施例1には、水酸基価45mgKOHの(メタ)アクリル系ポリマー100部とイソシアネート系架橋剤28.07部とを反応させたポリウレタンを含む表面保護層、基材層、並びに粘着層を有する粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面処理が行われた物品には降雨や洗浄などによって水が液滴として付着することがあり、これにより一般的に「ウォーターマーク」と呼ばれるシミが発生することがある。このウォーターマークとは、付着した水が蒸発し、水に含まれていたミネラル成分などが析出して白い跡として残る現象である。ウォーターマークが発生すると物品表面の外観を低下させる。そのため、表面保護層には耐ウォーターマーク性の向上が求められている。
【0006】
また、表面処理が行われた物品表面には小石や砂塵等の飛来物の接触や衝突によって傷が発生して外観が低下することもある。そのため、表面保護層には優れた耐傷性を有することも求められている。
【0007】
そこで、本発明は、耐ウォーターマーク性及び耐傷性に優れている表面保護層を有する多層膜、上記表面保護層を形成するための二液硬化型コーティング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[多層膜]
本発明の多層膜は、
基材層と、
上記基材層の第1の面に積層一体化され、水酸基価が25~380mgKOH/gであり且つフッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)とポリイソシアネート(I)との反応物であるポリウレタンを含む表面保護層と、
上記基材層の第2の面に積層一体化された粘着層とを含むことを特徴とする。
【0009】
[表面保護層]
本発明の多層膜は、基材層の第1の面に積層一体化された表面保護層を含んでいる。表面保護層は、水酸基価が25~380mgKOH/gであり且つフッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)とポリイソシアネート(I)との反応物であるポリウレタンを含む。なお、基材層における任意の面を「基材層の第1の面」とし、基材層における第1の面に対して反対側の面を「基材層の第2の面」とする。基材層の第1の面及び第2の面のうち一方又は双方が、基材層の最大面積を有する面であることが好ましい。
【0010】
(ポリオール(P))
本発明では、水酸基価が25~380mgKOH/gであるポリオール(P)を用い、このポリオール(P)とポリイソシアネート(I)とを反応させてなるポリウレタンを表面保護層に含ませている。ポリウレタンに含まれているウレタン結合によって表面保護層表面に適度な親水性を付与することができる。これにより表面保護層に付着した水が、表面保護層の表面上で広がって液滴を形成し難くすることができ、表面保護層の耐ウォーターマーク性を向上させることが可能となる。したがって、表面保護層に付着した水による「ウォーターマーク」と呼ばれるシミの発生を低減することが可能となる。すなわち、表面保護層に付着した水を経時的に広げて接触角を低下させることにより、表面保護層表面の単位面積あたりの水に含まれているミネラル成分の濃度を低下させることができ、水が蒸発した後に表面保護層上にミネラル成分が白い跡(すなわち「ウォーターマーク」)として析出することを低減することができる。このような効果は、例えば、後述する実施例における耐ウォーターマーク性の評価における「接触角の変化率」に基づいて評価することができる。この接触角の変化率では、表面保護層に水滴を付着させてから300秒後に上記水滴の接触角がどの程度低下したかを評価している。
【0011】
さらに、本発明では、フッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)を用いることにより、表面保護層の表面に水が接触した直後に、表面保護層が適度な撥水性(以下、単に「初期水弾き性」とも言う)を発揮することができる。これにより表面保護層の表面に接触した水を弾くことができ、表面保護層に水が付着することを低減できる。また、初期水弾き性は、例えば、後述する実施例における耐ウォーターマーク性の評価における「初期接触角」に基づいて評価することができる。この「初期接触角」が高い程、表面保護層の表面に水が接触した直後に表面保護層が高い撥水性を発揮することを意味する。
【0012】
表面保護層の耐ウォーターマーク性には、上述した通り、表面保護層の撥水性及び親水性の双方が寄与すると考えられ、本発明では、上述したポリオール(P)を用いることにより適度な撥水性及び親水性を表面保護層に付与し、これにより表面保護層の耐ウォーターマーク性を向上させることが可能となる。
【0013】
また、表面保護層の耐ウォーターマーク性は、実施例における耐ウォーターマーク性の評価における「接触角の変化率」及び「初期接触角」の双方に基づいて総合的に評価することができる。なかでも、耐ウォーターマーク性により大きく寄与するのは「接触角の変化率」である。したがって、接触角の変化率が大きく且つ初期接触角が低い表面保護層(A1)の方が、接触角の変化率が小さく且つ初期接触角が高い表面保護層(A2)よりも、総合的に耐ウォーターマーク性に優れる傾向がある。
【0014】
一方、物品表面への多層膜の貼着は、物品表面に多層膜を載置した後に、表面保護層上でスキージー(へら)を押圧摺動させることにより行われる。本発明者等の検討によると、表面保護層の耐ウォーターマーク性を向上させるために表面保護層の親水性を単に向上させると、表面保護層のスキージー滑り性が低下する場合があることが判明した。このような場合、表面保護層上でスキージーが滑り難くなり引っ掛かりが発生し、表面保護層に傷が発生する。このように表面保護層では耐ウォーターマーク性とスキージー滑り性とが相反する場合があり、一方を向上させると他方が低下する場合があることが分かった。
【0015】
そこで、本発明では、ポリオール(P)のフッ素原子の含有量を0.01~20質量%とすることによって、耐ウォーターマーク性の低下を抑制しつつ優れたスキージー滑り性を表面保護層に付与することを可能とした。これにより、耐ウォーターマーク性及びスキージー滑り性の双方が優れている表面保護層を提供することができる。
【0016】
さらに、本発明では、水酸基価が25~380mgKOH/gであり且つフッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)と、ポリイソシアネート(I)とを反応させてなるポリウレタンを用いることにより、表面保護層の耐傷性を向上させることも可能となる。これにより、表面保護層に小石や砂塵等の飛来物が接触又は衝突しても、傷の発生を低減して外観を維持することができる。
【0017】
一方、上述した通り、物品表面へ多層膜を貼着するために、物品表面に多層膜を載置した後に、表面保護層上でスキージーを押圧摺動させるが、この時に多層膜にはスキージーにより引っ張り力が加わる。しかしながら、多層膜がスキージーの引っ張り力に耐えることができず切断することがある。本発明では、表面保護層において、水酸基価が25~380mgKOH/gであり且つフッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)とポリイソシアネート(I)とを反応させてなるポリウレタンを用いることにより、柔軟で伸び性に優れる多層膜を提供することも可能となる。これにより、物品表面へ多層膜を貼着する際に多層膜がスキージーの引っ張り力に耐えることができ、多層膜における切断の発生を低減することも可能となる。
【0018】
ポリオール(P)の水酸基価は、25mgKOH/g以上であるが、45mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましく、110mgKOH/g以上がさらに好ましく、120mgKOH/g以上が最も好ましい。一方、ポリオール(P)の水酸基価は、380mgKOH/g以下であるが、340mgKOH/g以下が好ましく、300mgKOH/g以下がより好ましく、220mgKOH/g以下がさらに好ましく、180mgKOH/g以下が特に好ましく、150mgKOH/g以下が最も好ましい。上記範囲内の水酸基価を有するポリオール(P)を用いることにより、ウレタン結合を適度な量で含有するポリウレタンを形成することができ、これにより表面保護層の耐ウォーターマーク性を向上させることができる。ポリオール(P)の水酸基価を380mgKOH/g以下とすることによって、表面保護層の撥水性(初期水弾き性)を向上させて、多くの水が液滴として表面保護層上に付着することを低減でき、ウォーターマークの発生を低減できる。さらに、ポリオール(P)の水酸基価を380mgKOH/g以下とすることによって、表面保護層のスキージ滑り性や多層膜の伸び性を向上させることができる。一方、ポリオール(P)の水酸基価を25mgKOH/g以上とすることによって、表面保護層に付着した水を経時的に広げることができ、これにより表面保護層表面の単位面積あたりのミネラル成分の濃度を低下させて、水の蒸発後にミネラル成分が白い跡(すなわち「ウォーターマーク」)として析出することを低減できる。また、ポリオール(P)の水酸基価を25mgKOH/g以上とすることによって、表面保護層の耐傷性を向上させることもできる。なお、本発明において、ポリオール(P)の水酸基価は、固形分の水酸基価をいう。
【0019】
なお、ポリオール(P)の水酸基価とは、JIS K 1557-1:2007(ISO 14900:2001)「プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール試験方法-第1部:水酸基価の求め方」の4.2 B法に準拠して測定された値をいう。
【0020】
ポリオール(P)のフッ素原子の含有量は、0.010質量%以上であるが、0.030質量%以上が好ましく、0.080質量%以上がより好ましく、0.20質量%以上がより好ましく、0.40質量%以上がさらに好ましく、0.80質量%以上が最も好ましい。一方、ポリオール(P)のフッ素原子の含有量は、20質量%以下であるが、19質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましく、12質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がより好ましく、2.00質量%以下がさらに好ましく、1.50質量%以下が最も好ましい。ポリオール(P)に含まれているフッ素原子によって、表面保護層の撥水性(初期水弾き性)やスキージー滑り性を向上させることができるが、フッ素原子は表面保護層の親水性を低下させて耐ウォーターマーク性を低下させることがある。しかしながら、ポリオール(P)のフッ素原子の含有量を上記範囲内とすることにより、耐ウォーターマーク性の低下を抑制しつつ優れたスキージー滑り性を表面保護層に付与することが可能となる。ポリオール(P)のフッ素原子の含有量を0.010質量%以上とすることによって、表面保護層の初期水弾き性を向上させて、多くの水が液滴として表面保護層上に付着することを低減でき、これによりウォーターマークの発生を低減できる。さらに、ポリオール(P)のフッ素原子の含有量を0.010質量%以上とすることによって、表面保護層のスキージー滑り性や耐傷性を向上させることもできる。また、ポリオール(P)のフッ素原子の含有量を20質量%以下とすることによって、表面保護層に付着した水を経時的に広げることができ、耐ウォーターマーク性を向上させることができる。
【0021】
ポリオール(P)は、分子中に芳香環を有していないことが好ましい。分子中に芳香環を有していないポリオール(P)によれば、表面保護層に優れた耐候性を付与することができる。これにより表面保護層が経時的に黄変することを低減することができる。
【0022】
((メタ)アクリルポリオール)
ポリオール(P)は、(メタ)アクリルポリオールを含んでいることが好ましい。(メタ)アクリルポリオールは、(メタ)アクリル系モノマーを反応させることにより得られ、末端または側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体である。(メタ)アクリルポリオールは、ラジカル重合開始剤の存在下、通常のアクリル重合体の製造方法を用いて(メタ)アクリル系モノマーを重合させて得ることができる。(メタ)アクリルポリオールを用いることにより、表面保護層の耐ウォーターマーク性及びスキージー滑り性の双方を向上させることができる。
【0023】
なお、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。また、後述する(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0024】
(メタ)アクリルポリオールとしては、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)及び水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)を含む(メタ)アクリル系モノマーの重合体が好ましい。このような重合体を用いることにより、表面保護層の耐ウォーターマーク性及びスキージー滑り性の双方を向上させることができる。なお、(メタ)アクリルポリオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0025】
フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)は、側鎖にフッ素原子を有することが好ましく、主鎖を構成する炭素原子にフッ素原子が直接結合していないことがより好ましい。
【0026】
フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)としては、下記式(1)で示される(メタ)アクリル系モノマーが好ましく挙げられる。
CH2=C(R1)-COO-(CH2)n-Rf1 (1)
(式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、nは0~10の整数であり、Rf1は、アルキル基の炭素数が1~20であり且つアルキル基の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されているフルオロアルキル基である。)
【0027】
式(1)においてRf1で示されるフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。フルオロアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、3~18がより好ましい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-イコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、及びn-(2-エチル)ヘキシル基などが挙げられる。
【0028】
フルオロアルキル基において、アルキル基の水素原子の少なくとも1個がフッ素原子で置換されているが、1級炭素原子に結合している水素原子が全てフッ素原子で置換されていることが好ましく、アルキル基の水素原子の全部がフッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0029】
フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)として、具体的には、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロ-2-プロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロ-2-プロピルアクリレートなどが挙げられる。なかでも、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートがより好ましい。なお、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
(メタ)アクリルポリオールにおけるフッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の含有量は、0.50質量%以上が好ましく、0.70質量%以上がより好ましく、0.90質量%以上がさらに好ましい。一方、(メタ)アクリルポリオールにおけるフッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の含有量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、3.0質量%以下が特に好ましい。フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の含有量を0.50質量%以上とすることによって、表面保護層の初期水弾き性を向上させて、耐ウォーターマーク性を向上できる。さらに、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の含有量を0.50質量%以上とすることによって、表面保護層のスキージー滑り性や耐傷性を向上させることもできる。また、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の含有量を50質量%以下とすることによって、表面保護層に付着した水を経時的に広げて、表面保護層の耐ウォーターマーク性を向上できる。
【0031】
水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)としては、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0032】
(メタ)アクリルポリオールにおける水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の含有量は、4質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、22質量%以上がさらに好ましい。一方、(メタ)アクリルポリオールにおける水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の含有量は、90質量%以下が好ましく、82質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の含有量を4質量%以上とすることによって、表面保護層に付着した水を経時的に広げることができ、これにより耐ウォーターマーク性を向上できる。さらに、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の含有量を4質量%以上とすることによって、表面保護層の耐傷性を向上させることもできる。一方、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の含有量を90質量%以下とすることによって、表面保護層の初期水弾き性を向上させて、これにより耐ウォーターマーク性を向上できる。さらに、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の含有量を90質量%以下とすることによって、表面保護層のスキージー滑り性を向上させることもできる。
【0033】
(メタ)アクリルポリオールにおいて、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位に対するフッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量比[フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量/水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の質量]は、0.0030以上が好ましく、0.0070以上がより好ましく、0.020以上がより好ましく、0.025以上がより好ましく、0.030以上がさらに好ましく、0.033以上が特に好ましく、0.050以上が最も好ましい。質量比[(a1)/(a2)]を0.0030以上とすることによって、表面保護層のスキージー滑り性や耐ウォーターマーク性を向上させることができる。また、(メタ)アクリルポリオールにおいて、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位に対するフッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量比[フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量/水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の質量]は、7.5以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、2.0以下がより好ましく、1.0以下がより好ましく、0.90以下がより好ましく、0.70以下がさらに好ましく、0.30以下が特に好ましく、0.12以下が最も好ましい。質量比[(a1)/(a2)]を7.5以下とすることによって、表面保護層の耐ウォーターマーク性を向上させることができる。
【0034】
(メタ)アクリルポリオールの重合に用いられる(メタ)アクリル系モノマーは、シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)を含んでいることが好ましい。すなわち、(メタ)アクリルポリオールとしては、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)とを含む(メタ)アクリル系モノマーの重合体が好ましい。シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)を用いることにより、優れた耐傷性及びスキージー滑り性を表面保護層に付与することができる。
【0035】
シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)としては、下記式(2)又は(3)で示されるモノマーが好ましく挙げられる。
【0036】
【化1】
(式(2)中、R
2は炭素数が1~12であるアルキル基であり、R
3は炭素数が1~10であるアルキレン基であり、R
4は水素原子又はメチル基であり、pは2~150の整数を示す。)
【0037】
【化2】
(式(3)中、R
5及びR
8はそれぞれ水素原子又はメチル基であり、R
6及びR
7はそれぞれ炭素数が1~10であるアルキレン基であり、qは2~150の整数を示す。)
【0038】
式(2)においてR2で示されるアルキル基の炭素数は、1~12が好ましく、1~5がより好ましい。R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、及びn-ヘプチル基などが挙げられる。式(2)においてR3で示されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。R3で示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、及びn-ブチレン基などが挙げられる。
【0039】
式(3)においてR6及びR7で示される各アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。R6及びR7で示される各アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、及びn-ブチレン基などが挙げられる。なお、R6及びR7は、同一であっても相違していてもよい。
【0040】
シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)として、具体的には、α-ブチル-ω-(3-メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、α-モノ(メタクリロキシメチル)ポリジメチルシロキサン、及びα,ω-ジ(メタクリロキシメチル)ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。なかでも、α-ブチル-ω-(3-メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサンが好ましい。シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0041】
(メタ)アクリルポリオールにおけるシロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)単位の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、9質量%以上が特に好ましい。また、(メタ)アクリルポリオールにおけるシロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)単位の含有量は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)単位の含有量が上記範囲内であると、耐傷性及びスキージー滑り性に優れる表面保護層を提供することができる。
【0042】
(メタ)アクリルポリオールの重合に用いられる(メタ)アクリル系モノマーは、上述したフッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)、及びシロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)以外の他の(メタ)アクリル系モノマーを含んでいてもよい。他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル系モノマー(a4)が挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリルポリオールとしては、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル系モノマー(a4)とを含む(メタ)アクリル系モノマーの重合体、又は、フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)と、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)と、シロキサン結合含有(メタ)アクリル系モノマー(a3)と、フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル系モノマー(a4)とを含む(メタ)アクリル系モノマーの重合体が好ましい。
【0044】
フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル系モノマー(a4)としては、例えば、フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びトリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びイソボルニルメタクリレートがより好ましい。フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル系モノマー(a4)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0045】
(メタ)アクリルポリオールにおいて、フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル系モノマー(a4)単位の含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。一方、(メタ)アクリルポリオールにおいて、フッ素、水酸基及びシロキサン結合を含有しない(メタ)アクリル系モノマー(a4)単位の含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0046】
ポリオール(P)中における(メタ)アクリルポリオールの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、ポリオール(P)中における(メタ)アクリルポリオールの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
(他のポリオール)
ポリオール(P)は、上述した(メタ)アクリルポリオール以外にも、他のポリオールを含んでいてもよい。他のポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらのポリオールを用いることにより、表面保護層の耐傷性や多層膜の伸び性を向上させ得る。他のポリオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0048】
ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオール、脂環式ポリエーテルポリオールなどが挙げられる。脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加トリオール、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加トリオール、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド付加トリオール、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加テトラオール、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加ヘキサオール等のアルキレンオキサイド付加ポリオール等の多価アルコール、或いは2種類以上のイオン重合性環状化合物を開環重合させて得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0049】
なお、イオン重合性環状化合物としては、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン-1-オキシド、イソブテンオキシド、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。上記2種類以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフラン、エチレンオキシドとプロピレンオキシド、ブテン-1-オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフランとブテン-1-オキシドとエチレンオキシド等を挙げることができる。
【0050】
脂環式ポリエーテルポリオールとしては、例えば水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加ジオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキシド付加ジオール、1,4-シクロヘキサンジオールのアルキレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。
【0051】
ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオールが好ましく、ポリテトラメチレングリコールがより好ましく挙げられる。
【0052】
ポリオール(P)におけるポリエーテルポリオールの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、ポリオール(P)におけるポリエーテルポリオールの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0053】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0054】
低分子量ポリオールとしては、水酸基を2つ以上有し且つ分子量が400未満、好ましくは300未満である化合物が挙げられる。低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール;例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール;例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール;例えば、キシリトールなどの5価アルコール;例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール;例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール;例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0055】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸、その他の飽和脂肪族ジカルボン酸(C11~13);例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他の不飽和脂肪族ジカルボン酸;例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、その他の芳香族ジカルボン酸;例えば、ヘキサヒドロフタル酸、その他の脂環族ジカルボン酸;例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物;例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド;例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0056】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、及び、これらの少なくとも一方に上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。ポリカプロラクトンポリオールは、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、ε-カプロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる。また、ポリバレロラクトンポリオールは、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、γ-バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる。
【0057】
ポリエステルポリオールとしては、ラクトン系ポリエステルポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールが好ましく、ポリカプロラクトントリオールがより好ましい。
【0058】
ポリオール(P)におけるポリエステルポリオールの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、ポリオール(P)におけるポリエステルポリオールの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0059】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールや1,6-ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合させた非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0060】
ポリカーボネートポリオールとして、具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール、及びポリ[シクロヘキシレンビス(メチレン)/ヘキサメチレン]カーボネートジオールなどが挙げられる。なお、ポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオールは、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールとジアルキルカーボネートとの共重合体である。また、ポリ[シクロヘキシレンビス(メチレン)/ヘキサメチレン]カーボネートジオールは、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,6-ヘキサンジオールとジアルキルカーボネートとの共重合体である。
【0061】
ポリカーボネートポリオールとしては、ポリ[シクロヘキシレンビス(メチレン)/ヘキサメチレン]カーボネートジオールが好ましく挙げられる。ポリ[シクロヘキシレンビス(メチレン)/ヘキサメチレン]カーボネートジオールの市販品としては、例えば、宇部興産(株)製 エタナコール(登録商標)UM-90などが挙げられる。
【0062】
ポリオール(P)におけるポリカーボネートポリオールの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、ポリオール(P)におけるポリカーボネートポリオールの含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0063】
ポリオール(P)としては、上述した通り、(メタ)アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールが挙げられ、これらはいずれもフッ素原子を含有していてもよいが、(メタ)アクリルポリオールがフッ素原子を含有し、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールはフッ素原子を含有していないことが好ましい。これにより、表面保護層のスキージー滑り性を向上させることができる。
【0064】
ポリオール(P)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。二種以上のポリオール(P)を併用する場合、ポリオール(P)の組合せとしては、多層膜の伸び性の観点から、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールのうち少なくとも1種と、(メタ)アクリルポリオールとの組合せが好ましく、(メタ)アクリルポリオールとポリエーテルポリオールとの組合せ、又は(メタ)アクリルポリオールとポリカーボネートポリオールとの組合せがより好ましい。また、表面保護層の耐傷性の観点から、(メタ)アクリルポリオールとポリエーテルポリオールとの組合せ、又は(メタ)アクリルポリオールとポリエステルポリオールとの組合せがより好ましい。
【0065】
(ポリイソシアネート(I))
表面保護層に含まれているポリウレタンは、上述したポリオール(P)と、ポリイソシアネート(I)とを反応させることにより得られる。
【0066】
ポリイソシアネート(I)は、分子中に芳香環を有していないことが好ましい。分子中に芳香環を有していないポリイソシアネート(I)によれば、表面保護層に優れた耐候性を付与することができる。これにより表面保護層が経時的に黄変することを低減することができる。
【0067】
ポリイソシアネート(I)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環式構造を有するポリイソシアネートなどのポリイソシアネートが挙げられる。
【0068】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
【0069】
脂環式構造を有するポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水素添加m-XDI)などが挙げられる。
【0070】
ポリイソシアネート(I)としては、上記したポリイソシアネートの誘導体も挙げられる。ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したポリイソシアネートと、低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、上記したポリイソシアネートと低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したポリイソシアネートと、アミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、上記したポリイソシアネートと水との反応により生成する化合物、ウレア変性体(例えば、上記したポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。なお、ポリイソシアネートとの反応に用いられる低分子量ポリオールとしては、ポリエステルポリオールにおいて上述した低分子量ポリオールと同じものが挙げられる。なお、ポリイソシアネート(I)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0071】
ポリイソシアネート(I)としては、好ましくは、ポリイソシアネート誘導体が挙げられ、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体が挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体の市販品としては、例えば、三井化学(株)製 商品名「タケネート(登録商標)D-165N」などが挙げられる。
【0072】
ポリウレタンの原料となるモノマー中において、ポリオール(P)中の水酸基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましい。当量比(イソシアネート基/水酸基)を0.8以上とすることによって、表面保護層の耐傷性を向上させることができる。また、当量比(イソシアネート基/水酸基)を1.2以下とすることによって、表面保護層の耐水性を向上させることができる。
【0073】
なお、ポリオール(P)中の水酸基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)は、ポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基数をポリオール(P)中の水酸基数で除して求める。
【0074】
ポリオール(P)中の水酸基数は下記式に基づいて算出される。なお、水酸基価は、JIS K 1557-1:2007(ISO 14900:2001)「プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール試験方法-第1部:水酸基価の求め方」の4.2 B法に準拠して測定して得られた値をいう。
ポリオール(P)中の水酸基数
=ポリオール(P)の含有量(g)×水酸基価/56100
【0075】
ポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基数は下記式に基づいて算出される。イソシアネート当量は、ポリイソシアネート(I)の分子量を一分子中のイソシアネート基の数で除した値をいう。具体的には、JIS K1603に準拠して測定された値をいう。
ポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基数
=ポリイソシアネート(I)の含有量(g)/イソシアネート当量
【0076】
(ポリチオール(T))
表面保護層に含まれているポリウレタンは、ポリチオール(T)単位をさらに含有していることが好ましい。すなわち、ポリウレタンは、ポリオール(P)と、ポリイソシアネート(I)と、ポリチオール(T)との反応物であることが好ましい。ポリチオール(T)を用いることにより、表面保護層の耐傷性、多層膜の伸び性を向上できる場合がある。
【0077】
ポリチオール(T)は、分子中に芳香環を有していないことが好ましい。分子中に芳香環を有していないポリチオール(T)によれば、表面保護層に優れた耐候性を付与することができる。これにより表面保護層が経時的に黄変することを低減することができる。
【0078】
ポリチオール(T)は、分子中に2個以上のチオール基(-SH)を有していればよく、分子中に3個以上のチオール基を有していることが好ましい。ポリチオール(T)としては、例えば、エチレングリコールジメルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、及びトリス(メルカプトプロピオニルオキシエチル)イソシヌレートなどが挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)が好ましい。なお、ポリチオール(T)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0079】
ポリウレタンがポリチオール(T)単位を含んでいる場合、ポリウレタンの原料となるモノマー中において、ポリオール(P)中の水酸基及びポリチオール(T)中のチオール基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比[イソシアネート基/(水酸基+チオール基)]は、0.8~1.2が好ましく、0.9~1.1がより好ましい。当量比[イソシアネート基/(水酸基+チオール基)]を0.8以上とすることによって、表面保護層の耐傷性を向上させることができる。また、当量比[イソシアネート基/(水酸基+チオール基)]を1.2以下とすることによって、表面保護層の耐水性を向上させることができる。
【0080】
なお、ポリオール(P)中の水酸基及びポリチオール(T)中のチオール基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比[イソシアネート基/(水酸基+チオール基)]は、ポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基数を、ポリオール(P)中の水酸基数及びポリチオール(T)中のチオール基数の総数で除して求める。
【0081】
ポリオール(P)中の水酸基数及びポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基数は、上述した方法と同様にして求めることができる。
【0082】
本発明の多層膜は、上述したポリウレタンを含む表面保護層を含んでいる。表面保護層の厚みは、1~50μmが好ましく、5~30μmがより好ましい。表面保護層の厚みを1μm以上とすることによって、耐傷性を向上させることができる。また、表面保護層の厚みを50μm以下とすることによって、外観不良の発生を低減することができる。
【0083】
[基材層]
本発明の多層膜は、基材層を含んでいる。基材層は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーのうち少なくとも一方を含んでいることが好ましい。これにより多層膜の伸び性を向上させることができる。
【0084】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニル樹脂、及びポリカーボネート樹脂などが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン熱可塑性エラストマー、スチレン熱可塑性エラストマー、アクリル熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル熱可塑性エラストマー、ポリエステル熱可塑性エラストマー、及びポリアミド熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーのそれぞれは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0085】
ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂などが挙げられる。ポリエステル系ポリウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリエステルポリオールとの反応物が挙げられる。また、ポリウレタン熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン熱可塑性エラストマーが挙げられる。ポリエステル系ポリウレタン熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリイソシアネートと、ポリエステルポリオールと、鎖伸長剤との反応物が挙げられる。鎖伸長剤としては、水酸基を2つ以上有し且つ分子量が400未満である低分子量ポリオールが挙げられ、具体的には、ポリオール(P)におけるポリエステルポリオールにおいて上述した低分子量ポリオールと同じものが挙げられる。
【0086】
なかでも、基材層は、熱可塑性樹脂を含んでいることが好ましく、ポリウレタン樹脂を含んでいることがより好ましく、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでいることがさらに好ましい。また、基材層は、熱可塑性エラストマーを含んでいることが好ましく、ポリウレタン熱可塑性エラストマーを含んでいることがより好ましく、ポリエステル系ポリウレタン熱可塑性エラストマーを含んでいることがさらに好ましい。基材層の厚みは、特に制限されず、10~300μmであればよく、20~200μmが好ましい。
【0087】
[粘着層]
本発明の多層膜は、基材層の第2の面に積層一体化された粘着層を含んでいる。粘着層の厚みは、特に制限されないが、10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
【0088】
粘着層は粘着剤を含んでいる。粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などが挙げられ、アクリル系粘着剤が好ましい。なお、粘着剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0089】
更に、粘着層は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などの粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、カーボンブラックなどの顔料や染料などの着色剤などが挙げられる。また、粘着剤は、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などの汎用の架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0090】
粘着層の形成は、特に制限されないが、基材層の第2の面に、粘着剤、並びに必要に応じて添加剤及び架橋剤を含む粘着剤組成物を塗布して乾燥させることにより行われる。これにより基材層の第2の面に積層一体化された粘着層が形成される。
【0091】
[金属光輝層]
本発明の多層膜は、金属光輝層をさらに含んでいてもよい。金属光輝層によって多層膜が光輝性を発現することができ、自動車などの物品表面を金属調に加飾することができる。
【0092】
金属光輝層は、特に制限されないが、基材層の第1の面及び第2の面のうち少なくとも一方の面上に配設されればよい。金属光輝層と、この金属光輝層と隣接する層との間には必要に応じてアンカーコート層がさらに配設されてもよい。
【0093】
多層膜において基材層の第1の面上に金属光輝層が積層一体化される場合、金属光輝層は基材層と表面保護層との間に含まれることが好ましい。このような場合、多層膜は、基材層と、上記基材層の第1の面上に必要に応じてアンカーコート層を介して積層一体化された金属光輝層と、上記金属光輝層上に必要に応じてアンカーコート層を介して積層一体化された表面保護層とを含む。
【0094】
また、多層膜において基材層の第2の面上に金属光輝層が積層一体化される場合、金属光輝層は基材層と粘着層との間に含まれることが好ましい。このような場合、多層膜は、基材層と、上記基材層の第2の面上に必要に応じてアンカーコート層を介して積層一体化された金属光輝層と、上記金属光輝層上に必要に応じてアンカーコート層を介して積層一体化された粘着層とを含む。
【0095】
金属光輝層は、金属を含んでいることが好ましい。金属としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、チタン、コバルト、モリブデン、ジルコニウム、タングステン、パラジウム、インジウム、スズ、金、銀、及びアルミニウムなどが挙げられる。なかでも、インジウム、及びアルミニウムが好ましい。これらの金属は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0096】
金属光輝層の厚みは、1nm~100nmが好ましく、1.5nm~7.5nmがより好ましい。金属光輝層の厚みを1nm以上とすることによって光輝性を向上させることができる。また、金属光輝層の厚みを100nm以下とすることによって、金属光輝層が硬くなり過ぎることを低減して、これによりクラックの発生を低減することができる。
【0097】
金属光輝層の形成方法としては、金属蒸着法など公知の方法が用いられる。金属蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、及びイオンプレーティング法などの物理的気相蒸着法(PVD法)、並びに化学的気相蒸着法(CVD法)などが挙げられる。
【0098】
アンカーコート層は、金属光輝層と、この金属光輝層と隣接する層との密着性を向上させるために用いられる。アンカーコート層は、アンカーコート剤を含むことが好ましい。アンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、尿素-メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、及びニトロセルロース系樹脂などが挙げられる。これらのアンカーコート剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。アンカーコート層の厚みは、特に制限されず、0.01~1μmであればよい。
【0099】
本発明の多層膜は、自動車、電車、及び飛行機などの輸送機器、ガラス、建築物や看板などの物品表面を保護するために好ましく用いられる。物品表面に多層膜を粘着層によって貼着一体化することにより、物品表面を汚れや傷から保護して、長期間に亘って外観を維持することが可能となる。
【0100】
特に、本発明の多層膜は、自動車の表面を保護するための自動車保護用フィルムとして好適に用いられる。例えば、多層膜を自動車の塗装面に粘着層を介して貼着一体化して用いることができる。これにより自動車の走行中に小石や砂塵等の飛来物の接触や衝突によって、多層膜に傷が発生することを低減することができる。さらに、多層膜によれば、降雨や洗浄などによって水が多層膜に付着した場合であっても、ウォーターマークの発生を低減することもできる。したがって、多層膜によれば、自動車の表面を長期間に亘って美麗に維持することができる。
【0101】
[二液硬化型コーティング剤]
本発明の二液硬化型コーティング剤は、水酸基価が25~380mgKOH/gであり且つフッ素原子の含有量が0.01~20質量%であるポリオール(P)を含む主剤と、ポリイソシアネート(I)を含む硬化剤とを含む。二液硬化型コーティング剤は、上述した多層膜に含まれている表面保護層の形成に好適に用いられる。
【0102】
二液硬化型コーティング剤におけるポリオール(P)及びポリイソシアネート(I)としては、表面保護層において上述したポリオール(P)及びポリイソシアネート(I)と同じものをそれぞれ使用することができる。また、二液硬化型コーティング剤におけるポリオール(P)中の水酸基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)についても、表面保護層において上述した当量比(イソシアネート基/水酸基)と同様とすることが好ましい。
【0103】
二液硬化型コーティング剤の主剤は、ポリチオール(T)をさらに含有していることが好ましい。二液硬化型コーティング剤の主剤におけるポリチオール(T)としては、表面保護層において上述したポリチオール(T)と同じものを使用することができる。また、二液硬化型コーティング剤におけるポリオール(P)中の水酸基及びポリチオール(T)中のチオール基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比[イソシアネート基/(水酸基+チオール基)]についても、表面保護層において上述した当量比[イソシアネート基/(水酸基+チオール基)]と同様とすることが好ましい。
【0104】
二液硬化型コーティング剤の主剤は、硬化触媒を含んでいることが好ましい。硬化触媒としては、例えば、ジブチル錫オキサイド、2-エチルカプロン酸錫、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレートなどの有機金属化合物などが挙げられる。硬化触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0105】
二液硬化型コーティング剤の主剤及び硬化剤には、二液硬化型コーティング剤の物性を損なわない範囲内において、必要に応じて添加剤が添加されていてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、及び消泡剤などが挙げられる。
【0106】
二液硬化型コーティング剤の主剤及び硬化剤は、溶剤を含んでいてもよい。二液硬化型コーティング剤の主剤が溶剤を含む場合、主剤の固形分濃度は、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。二液硬化型コーティング剤の硬化剤が溶剤を含む場合、硬化剤の固形分濃度は、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。
【0107】
溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。なお、溶剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0108】
二液硬化型コーティング剤の使用方法としては、先ず、二液硬化型コーティング剤の主剤に硬化剤を混合し、二液硬化型コーティング剤を基材層に塗布する。二液硬化型コーティング剤を基材に塗布する直前に、二液硬化型コーティング剤の主剤に硬化剤を混合することが好ましい。なお、基材層としては、多層膜に含まれている基材層として上述したものが用いられる。
【0109】
二液硬化型コーティング剤を基材層に塗布する方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法などによる塗布方法、バーコーター、アプリケーターなどを用いたキャスティングなどが挙げられる。
【0110】
そして、基材層上に塗布された二液硬化型コーティング剤は加熱されて熱硬化される。加熱により、二液硬化型コーティング剤に含まれるポリオール(P)とポリイソシアネート(I)とが反応してポリウレタンを形成することにより、二液硬化型コーティング剤が硬化して表面保護層が形成される。
【0111】
二液硬化型コーティング剤の熱硬化の温度は、60~180℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。二液硬化型コーティング剤の熱硬化の時間は、1~30分が好ましく、1~10分がより好ましい。
【0112】
上述した通り、二液硬化型コーティング剤の主剤に硬化剤を混合し、二液硬化型コーティング剤を基材層の第1の面に塗布することにより、基材層の第1の面に積層一体化された表面保護層を形成することができる。
【0113】
また、二液硬化型コーティング剤は、上述した多層膜に含まれている表面保護層の形成に好適に用いられるが、これに限定されない。例えば、二液硬化型コーティング剤を物品表面に直接、塗布することにより、物品表面に表面保護層を形成することができる。このような表面保護層は物品表面に粘着層や基材層を介さずに積層一体化されている。この表面保護層によっても物品表面を保護することができる。なお、物品としては、特に制限されず、自動車、電車、及び飛行機などの輸送機器、ガラス、建築物や看板などが挙げられる。
【0114】
なお、物品表面に直接、表面保護層を形成する方法としては、上述した二液硬化型コーティング剤の使用方法において、二液硬化型コーティング剤を基材層に代えて物品に塗布する以外は同様にして行えばよい。また、物品表面に粘着層や基材層を介さずに積層一体化された表面保護層は、上述した多層膜に含まれている表面保護層と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【発明の効果】
【0115】
本発明によれば、耐ウォーターマーク性及び耐傷性に優れている表面保護層を提供することができる。したがって、表面保護層が適用された物品表面の外観を長期間に亘って美麗に維持することができる。
【0116】
また、表面保護層では、スキージー滑り性を低下させることなく耐ウォーターマーク性が向上されていることから、表面保護層を含む多層膜をスキージーを用いて物品表面に貼り合わせる際に、表面保護層上で引っかかることなくスキージーを押圧摺動させることができる。したがって、物品表面に傷を発生させることなく、多層膜を貼着一体化させることが可能となる。
【0117】
さらに、多層膜は柔軟で伸び性にも優れていることから、物品表面へ多層膜を貼着する際に多層膜がスキージーの引っ張り力に耐えることができ、多層膜における切断の発生を低減することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1】本発明における接触角を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0120】
[(メタ)アクリルポリオールの合成]
(合成例1)
反応容器中に、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)233質量部を仕込み、60℃まで昇温した。次いで、メチルメタクリレート(MMA)57質量部、n-ブチルアクリレート(n-BA)16.2質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)25.9質量部、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(FAAC-6)0.9質量部を含むモノマー組成物に、重合触媒としてアゾビス-2-メチルブロモニトリル(ABN-E、日本ヒドラジン工業(株)製)4.0質量部を撹拌混合することによりモノマー混合液を調製した。得られたモノマー混合液を上記溶媒に3時間かけて滴下し、さらに3時間後に反応を終了した。これにより、(メタ)アクリルポリオール(水酸基価125mgKOH/g、フッ素原子含有量0.5質量%)を含む(メタ)アクリルポリオール溶液(固形分30質量%)を得た。
【0121】
(合成例2~20)
2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、α-ブチル-ω-(3-メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量(Mw)1,000、JNC(株)製 商品名「サイラプレーン FM-0711」)、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、及びn-ブチルアクリレートを、それぞれ表1及び2に示す配合量で含むモノマー組成物を用いた以外は、合成例1と同様にして、(メタ)アクリルポリオールを含む(メタ)アクリルポリオール溶液(固形分30質量%)を得た。
【0122】
[実施例1~22及び比較例1~3]
下記に示した主剤と硬化剤とを含む二液硬化型コーティング剤を用意した。それぞれ表3及び4に示す配合量で、合成例1~20で得られた(メタ)アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール(ポリテトラメチレングリコール、三菱ケミカル(株)製 PTMG650)、ポリエステルポリオール(ポリカプロラクトントリオール、(株)ダイセル製 プラクセル303)、ポリカーボネートポリオール(ポリ[シクロヘキシレンビス(メチレン)/ヘキサメチレン]カーボネートジオール、宇部興産(株)製 エタナコール(登録商標)UM-90)、ポリチオール(T)(トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート))、硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート、及びメチルイソブチルケトンを反応容器に供給して混合し、主剤(固形分40質量%)を得た。
【0123】
なお、合成例1~20で得られた(メタ)アクリルポリオールについては、各(メタ)アクリルポリオールが表3及び4に示す配合量(固形分量)となるように、(メタ)アクリルポリオールを含む(メタ)アクリルポリオール溶液を反応容器に供給した。また、実施例1~22及び比較例1~3で使用した各(メタ)アクリルポリオールにおける、水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位に対するフッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量比[フッ素含有(メタ)アクリル系モノマー(a1)単位の質量/水酸基含有(メタ)アクリル系モノマー(a2)単位の質量]を、表3及び4の「質量比[(a1)/(a2)]」の欄に示した。そして、実施例1~22及び比較例1~3における、合成例1~20で得られた(メタ)アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリカーボネートポリオールをそれぞれ表3及び4に示す配合量で含むポリオール(P)について、フッ素原子含有量(質量%)及び水酸基価(mgOH/g)をそれぞれ表3及び4に示した。
【0124】
次いで、ポリイソシアネート(I)(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット変性体、イソシアネート基の含有量:23.3%、三井化学(株)製 タケネートD165N)、及びメチルイソブチルケトンをそれぞれ表3及び4に示す配合量(ポリイソシアネート(I)について固形分換算)で含む硬化剤を用意した。硬化剤を、主剤に添加して混合した。その後、直ちに、二液硬化型コーティング剤を、バーコーター(No.16)を用いて、基材層(ポリウレタン熱可塑性エラストマーを含むシート、日本マタイ(株)製 エスマーURS)の第1の面上に塗布した。その後、塗布した二液硬化型コーティング剤を120℃、10分加熱し、溶剤を除去すると共に熱硬化させ、基材層の第1の面上に積層一体化された表面保護層(厚み10μm)を形成した。
【0125】
次いで、アクリル系粘着剤(ハリマ化成(株)製、ハリアクロン560CH)100質量部、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー(株)社製、コロネート(登録商標)L-45E)0.5質量部を混合して粘着剤組成物を得た。その後、直ちに、粘着剤組成物を基材層の第2の面にバーコーター(No.24)を用いて塗布して塗膜を得た。この塗膜を、100℃、3分加熱して溶剤を除去した。加熱後、剥離紙が巻き付けられたローラー(重さ10kg)を塗膜上でゆっくり転動させることにより、塗膜上に剥離紙を積層した。その後、塗膜を40℃、3日間養生させ、基材層の第2の面上に粘着層(厚み25μm)を形成した。これにより、基材層と、この基材層の第1の面に積層一体化された表面保護層と、基材層の第2の面に積層一体化された粘着層とを含む多層膜を得た。
【0126】
なお、表3及び4に記載する「当量比」は、実施例1~7、9~22及び比較例1~3については「ポリオール(P)中の水酸基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/水酸基)」を意味し、実施例8については「ポリオール(P)中の水酸基及びポリチオール(T)中のチオール基に対するポリイソシアネート(I)中のイソシアネート基の当量比[イソシアネート基/(水酸基+チオール基)]を意味する。
【0127】
[評価]
実施例1~22及び比較例1~3で作製した多層膜について、下記手順に従って、耐ウォーターマーク性、耐傷性、スキージー滑り性、及び伸び性を評価した。結果を表3及び4に示す。
【0128】
(耐ウォーターマーク性)
多層膜を表面保護層が上側となるようにして水平に設置した。温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、多層膜の表面保護層上に、水滴2μLを1滴滴下し、水滴の滴下から1秒後及び300秒後に接触角測定機(協和界面科学(株)社製、DM-501)で接触角(°)を測定し、接触角の変化率(%)を式[接触角の変化率(%)=100×(1秒後の接触角-300秒後の接触角)/(1秒後の接触角)]に基づいて算出した。なお、「接触角」とは、
図1に示す通り、水滴Wと表面保護層Sとの界面の端点Pにおける水滴の接線Lと、表面保護層Sの表面との成す角のうち、水滴Wを含む角θである。
【0129】
表3及び4に、1秒後の接触角(単に「初期接触角」とも言う)、及び接触角の変化率を示す。なお、表面保護層の耐ウォーターマーク性には、上述した通り、表面保護層の撥水性(初期水弾き性)及び親水性の双方が寄与すると考えられる。したがって、「1秒後の接触角」に下記評価基準(A)に従って点数を付け、「接触角の変化率」に下記評価基準(B)に従って点数を付けた。これらの点数を表3及び4に示した。そして、「1秒後の接触角」の点数と「接触角の変化率」の点数との合計点数を、表3及び4の耐ウォーターマーク性の「総合評価」の欄に示した。なお、表面保護層の撥水性(初期水弾き性)及び親水性のうち、表面保護層の耐ウォーターマーク性には親水性の方が大きく寄与すると考えられる。そのため、下記評価基準では、1秒後の接触角よりも接触角の変化率の方を高い点数配分とした。
【0130】
評価基準(A):1秒後の接触角
1点:1秒後の接触角が82°以上であり且つ90°未満である。
2点:1秒後の接触角が90°以上であり且つ98°未満である。
3点:1秒後の接触角が98°以上であり且つ106°未満である。
4点:1秒後の接触角が106°以上である。
【0131】
評価基準(B):接触角の変化率
8点:接触角の変化率が14%以上である。
7点:接触角の変化率が13%以上であり且つ14%未満である。
6点:接触角の変化率が12%以上であり且つ13%未満である。
5点:接触角の変化率が11%以上であり且つ12%未満である。
4点:接触角の変化率が10%以上であり且つ11%未満である。
3点:接触角の変化率が9%以上であり且つ10%未満である。
2点:接触角の変化率が8%以上であり且つ9%未満である。
1点:接触角の変化率が7%以上であり且つ8%未満である。
0点:接触角の変化率が7%未満である。
【0132】
(耐傷性)
ガラス板を水平に設置した。多層膜の粘着層から剥離紙を除去した後、粘着層とガラス板とが接触するようにして、ガラス板上に多層膜を載置した。その後、スキージー((株)ミラリード社製、プロビッグゴムヘラ)を手動で荷重0.3Nを加えながら表面保護層上で10往復摺動させ、これにより表面保護層に発生した傷の本数を数えた。
【0133】
(スキージー滑り性)
ガラス板を水平に設置した。多層膜の粘着層から剥離紙を除去した後、粘着層とガラス板とが接触するようにして、ガラス板上に多層膜を載置した。その後、表面保護層上でスキージー((株)ミラリード社製、プロビッグゴムヘラ)を押圧摺動させることにより、多層膜をガラス板上に張り合わせた。スキージーを表面保護層上に押圧摺動させる際の抵抗感を、下記基準に従って評価した。
A:抵抗感がなかった。
B:抵抗感が僅かにあった。
C:抵抗感があった。
D:抵抗感が強く、表面保護層上でスキージーが摺動しなかった。
【0134】
(伸び性)
JIS K 7127(プラスチック-引張特性の試験方法)に準拠し、多層膜を試験片タイプ2の形状にカットし、引っ張り速度100mm/minの条件にて、引張試験機((株)島津製作所製 オートグラフAGS-X)で伸び率(%)を測定した。
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明によれば、耐ウォーターマーク性及び耐傷性に優れている表面保護層を有する多層膜、上記表面保護層を形成するための二液硬化型コーティング剤を提供することができる。上記表面保護層によれば、物品表面を汚れや傷から保護して、優れた外観を維持することができる。
【0140】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年8月31日に出願された日本国特許出願第2017-166521号、及び2018年3月30日に出願された国際出願番号PCT/JP2018/013911に基づく優先権を主張し、この出願の開示はこれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0141】
S 表面保護層
W 水滴
L 水滴の接線
P 水滴Wと表面保護層Sとの界面の端点