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特許7208913硫酸銅めっき液およびこれを用いた硫酸銅めっき方法
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  • 特許-硫酸銅めっき液およびこれを用いた硫酸銅めっき方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】硫酸銅めっき液およびこれを用いた硫酸銅めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/38 20060101AFI20230112BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20230112BHJP
   C08G 59/22 20060101ALI20230112BHJP
   C08G 65/22 20060101ALI20230112BHJP
   C07C 215/28 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C25D3/38 101
C25D7/00 J
C08G59/22
C08G65/22
C07C215/28 CSP
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019549023
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2018031628
(87)【国際公開番号】W WO2020044416
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000120386
【氏名又は名称】株式会社JCU
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 健
(72)【発明者】
【氏名】下村 彩
(72)【発明者】
【氏名】岸本 一喜
(72)【発明者】
【氏名】江田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】高谷 康子
(72)【発明者】
【氏名】谷本 由美
(72)【発明者】
【氏名】小坂 美紀子
(72)【発明者】
【氏名】安田 弘樹
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-149351(JP,A)
【文献】特開2011-207878(JP,A)
【文献】特開2017-002299(JP,A)
【文献】国際公開第2010/132876(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D
C08G
C07C
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物を含有する硫酸銅めっき液であって、
前記化合物が、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、下記式(1)
【数1】
で示される全原子数における窒素原子数の割合(X)と、相対分子量(Mw)が下記式(2)または(3)
【数2】
を満たす化合物であり、
前記化合物がアミン化合物とエポキシ化合物の重合物であり、
前記アミン化合物とエポキシ化合物の重合物が、式(iii)で示されるアミン化合物と、
【化1】
(式(iii)中、Aは炭素数1~6のアルキル基、BはNRで、R、R、R、Rが炭素数1~3のアルキル基を示す。)
式(iv)で示されるエポキシ化合物との、
【化2】
(式(iv)中、Zは炭素数2~6の直鎖アルキルでmは1~9の整数を示し、あるいは、Zは炭素数2~4の分岐アルキルでmは1~3の整数を示し、更に、これらはグリシジル基および/またはヒドロキシ基を1または複数個持っていてもよい。)
重合物であることを特徴とする硫酸銅めっき液。
【請求項2】
少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物を含有する硫酸銅めっき液であって、
前記化合物が、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、下記式(1)
【数3】
で示される全原子数における窒素原子数の割合(X)と、相対分子量(Mw)が下記式(2)または(3)
【数4】
を満たす化合物であり、
前記化合物がアミン化合物とエポキシ化合物の重合物であり、
前記アミン化合物とエポキシ化合物の重合物が、以下の(a)~(h)
(a)
【化3】
【化4】
(b)
【化5】
【化6】
(c)
【化7】
【化8】
(d)
【化9】
【化10】
(e)
【化11】
【化12】
(f)
【化13】
【化14】
(g)
【化15】
【化16】
(h)
【化17】
【化18】
【化19】
に記載されているアミン化合物とエポキシ化合物の重合物の何れかであることを特徴とする硫酸銅めっき液。
【請求項3】
少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物であって、
前記化合物が、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、下記式(1)
【数5】
で示される全原子数における窒素原子数の割合(X)と、相対分子量(Mw)が下記式(2)または(3)
【数6】
を満たす化合物であって、
前記化合物がアミン化合物とエポキシ化合物の重合物であり、
前記アミン化合物とエポキシ化合物の重合物が、式(iii)で示されるアミン化合物と、
【化20】
(式(iii)中、Aは炭素数1~6のアルキル基、BはNRで、R、R、R、Rが炭素数1~3のアルキル基を示す。)
式(iv)で示されるエポキシ化合物との、
【化21】
(式(iv)中、Zは炭素数2~6の直鎖アルキルでmは1~9の整数を示し、あるいは、Zは炭素数2~4の分岐アルキルでmは1~3の整数を示し、更に、これらはグリシジル基および/またはヒドロキシ基を1または複数個持っていてもよい。)
重合物であることを特徴とする化合物。
【請求項4】
少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物であって、
前記化合物が、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、下記式(1)
【数7】
で示される全原子数における窒素原子数の割合(X)と、相対分子量(Mw)が下記式(2)または(3)
【数8】
を満たす化合物であり、
前記化合物がアミン化合物とエポキシ化合物の重合物であり、
前記アミン化合物とエポキシ化合物の重合物が、以下の(a)~(h)
(a)
【化22】
【化23】
(b)
【化24】
【化25】
(c)
【化26】
【化27】
(d)
【化28】
【化29】
(e)
【化30】
【化31】
(f)
【化32】
【化33】
(g)
【化34】
【化35】
(h)
【化36】
【化37】
【化38】
に記載されているアミン化合物とエポキシ化合物の重合物の何れかであることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の化合物を含有する硫酸銅めっき液用添加剤。
【請求項6】
被めっき物を、請求項1または2に記載の硫酸銅めっき液で処理することを特徴とする被めっき物への硫酸銅めっき方法。
【請求項7】
被めっき物が、ビアおよび/または回路パターンを有するものである請求項記載の被めっき物への硫酸銅めっき方法。
【請求項8】
ビアを有する被めっき物を、請求項1または2に記載の硫酸銅めっき液で処理することを特徴とする被めっき物のビアの充填方法。
【請求項9】
回路パターンを有する被めっき物を、請求項1または2に記載の硫酸銅めっき液で処理することを特徴とする被めっき物の回路パターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物を含有する硫酸銅めっき液およびこれを用いた硫酸銅めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化が進み、微細・多様な配線デザインをもつプリント配線板が求められている。通常、レベラーとして使用されるアミン含有の化合物はめっきを抑制する成分として知られている(特許文献1~5)。
【0003】
しかしながら、多様な配線幅を均一に形成しかつビアを充填するためには、それぞれの配線幅、ビアの周辺および内部に対してそれぞれ異なった抑制作用を持たせる必要がある。例えば、ビア周辺は強い抑制力を示して、内部に抑制効果を示さなければビア内にめっきが優先的に析出して充填がなされる。一方、配線は、幅が太い箇所および孤立した箇所に電流が集中してしまうため、配線幅が太い順および配線の粗密順に抑制力を示せば、均一にめっきされる。
【0004】
そのため、従来のアミン系レベラーでは上記の抑制箇所の区別とその箇所に適する抑制力を制御することが非常に困難であり、ビアの充填が達成されても配線の均一性がとれなかったり、配線形状に異常をきたしたり、逆に配線の均一性が達成されてもビアの充填が不十分となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-138265号公報
【文献】国際公開WO2002/90623号パンフレット
【文献】米国特許第7374652号公報
【文献】特開2003-13277号公報
【文献】国際公開WO2011/135716号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、多様なデザインの配線を均一な厚みで形成し、ビアを充填することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、後記する式を満たす特定の化合物を利用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物を含有する硫酸銅めっき液であって、
前記化合物が、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、下記式(1)
【数1】
で示される全原子数における窒素原子数の割合(X)と、相対分子量(Mw)が下記式(2)または(3)
【数2】
を満たす化合物であることを特徴とする硫酸銅めっき液である。
【0009】
また、本発明は少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物であって、
前記化合物が、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、下記式(1)
【数3】
で示される全原子数における窒素原子数の割合(X)と、相対分子量(Mw)が下記式(2)または(3)
【数4】
を満たすことを特徴とする化合物である。
【0010】
更に、本発明は上記化合物を含有する硫酸銅めっき液用添加剤である。
【0011】
また更に、本発明はビアを有する被めっき物を、上記硫酸銅めっき液で処理することを特徴とする被めっき物のビアの充填方法である。
【0012】
また更に、本発明は回路パターン有する被めっき物を、上記硫酸銅めっき液で処理することを特徴とする被めっき物の回路パターンの形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば多様なデザインの配線を均一な厚みで形成し、回路パターンの形成や、ビアを充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例1の結果を要約した図である(図中、○は実施例を示し、×は比較例を示し、右上の数字はそれぞれ実施例または比較例の番号を示す。)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の硫酸銅めっき液(以下、「本発明めっき液」という)に含有される化合物は、少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物であって、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、下記式(1)
【数5】
で示される全原子数における窒素原子数の割合(X:N率ともいう)と、相対分子量(Mw)が下記式(2)または(3)
【数6】
を満たす化合物(以下、これを「本発明化合物」という)である。なお、Mwの上限は特に限定されないが、例えば、500,000が好ましく、100,000がより好ましい。
【0016】
本発明化合物は、例えば、少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物であって、全体あるいは繰り返し単位の水素原子を除いた分子式中、上記要件を満たすものを適宜選択すればよい。このような化合物としては、例えば、アミン化合物とカルボン酸化合物の重合物、ビニル化合物あるいはアリルアミン化合物と、ビニル化合物あるいはアリル化合物との重合物、アミン化合物とエポキシ化合物の重合物、前記重合物に対して更にアルキル基あるいはアルケニル基、アルキニル基、アリール基を付加した付加物等が挙げられる。
【0017】
これら化合物の中でも、アミン化合物とエポキシ化合物の重合物が好ましい。このようなアミン化合物とエポキシ化合物の重合物は、例えば、一般式(i)で示されるアミン化合物と、一般式(ii)で示されるエポキシ化合物を重合させ、相対分子量を、例えば、文献(灰差雅夫著、「現代物理学講座13高分子」)記載の公知の方法で制御することにより得ることができる。
【0018】
【化1】
【0019】
式(i)中、Xは直鎖あるいは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、あるいはアルキルエーテル、あるいは芳香族炭化水素を示し、前記Xはそれぞれアミノ基あるいは-NRで示される置換アミノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、ニトリル基を持っていても良く、R1、R、R、Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1~9のアルキル基、アルケニル、アルキニル、あるいはアルキルエーテル、あるいは芳香族炭化水素で、それぞれニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、ニトリル基等を持っていても良い。前記アルキルエーテルとしては、アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。前記芳香族炭化水素としては、フェニル、ベンジル等が挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
式(ii)中、Yは直鎖あるいは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、あるいはアルキルエーテル、あるいは芳香族炭化水素、あるいはグリセリル、あるいはポリグリセリルを示し、前記Yはそれぞれグリシジル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、ニトリル基を持っていても良い。前記アルキルエーテルとしては、アルキレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。前記芳香族炭化水素としては、フェニル、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0022】
上記アミン化合物とエポキシ化合物の重合物としては、例えば、一般式(iii)で示されるアミン化合物と、一般式(iv)で示されるエポキシ化合物の重合物がより好ましい。
【0023】
【化3】
式(iii)中、Aは炭素数1~9のアルキル基、Bはヒドロキシル基あるいはNRで表されるアミノ基を示す。R、R、R、Rはそれぞれ独立して水素、炭素数1~9のアルキル基、アルケニル、アルキニル、あるいはアルキルエーテル、あるいは芳香族炭化水素で、それぞれニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、ニトリル基等を持っていても良い。前記アルキルエーテルおよび前記芳香族炭化水素としては、式(i)と同じものが挙げられる。
【0024】
式(iii)の中でもAが炭素数1~3のアルキル基でBがヒドロキシ基、R、Rが炭素数1~3のアルキル基および水素で、更に、これらはヒドロキシ基を1または複数個持っていてもよいもの、あるいはAが炭素数1~6のアルキル基でBがNRで、R、R、R、Rが炭素数1~3のアルキル基ものが好ましい。
【0025】
【化4】
式(iv)中、Zは炭素数1~15の直鎖あるいは分岐アルキルあるいは環状アルキルで、前記Zはそれぞれグリシジル基あるいはヒドロキシル基を持っていても良く、mは1~9、好ましくは1~8、より好ましくは1~6の整数を示す。
【0026】
式(iv)の中でも、Zが炭素数2~6の直鎖アルキルでmは1~9のもの、あるいは、Zが炭素数2~4の分岐アルキルでmは1~3のもの、更に、これらはグリシジル基および/またはヒドロキシ基が1または複数個持っていてもよいものが好ましい。
【0027】
より具体的に、本発明化合物となるものとしては、以下のものが挙げられる(上から順に実施例1~8で得られる重合物に該当)。
【0028】
【表1】
※これらの化合物におけるn、m、oは任意の数であり、式(iv)のmとは意味が異なる。
【0029】
本発明めっき液における本発明化合物の含有量は特に限定されないが、例えば、1ppb以上、好ましくは1ppb~100ppmである。なお、本発明化合物は、めっき液においてレベラーの働きをするものである。
【0030】
本発明めっき液には、従来公知の硫酸銅めっき液に含有させる、硫酸、銅、塩素等を含有させればよい。本発明めっき液における硫酸の含有量は特に限定されないが、例えば、硫酸は30g/L以上、好ましくは50~200g/Lである。
【0031】
本発明めっき液には、更にブライトナーを含有させることが好ましい。ブライトナーの種類は特に限定されないが、例えば、スルホアルキルスルホン酸類またはその塩、チオ尿素など硫黄系化合物を1種または2種以上含有させる。また、本発明めっき液におけるブライトナーの含有量は特に限定されないが、例えば、0.1mg/L以上、1mg/L~100mg/Lが好ましい。
【0032】
本発明めっき液には、更に界面活性剤等のキャリアーを含有させることが好ましい。界面活性剤の種類は特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールやアルキルあるいはアルケニル、アルキニル、フェニルアルコール、グリセリン、ポリグリセリンのアルキレンオキシド重合物等が挙げられる。また、本発明めっき液におけるキャリアーの含有量は特に限定されないが、例えば、1mg/L以上、100mg/L~1000mg/Lが好ましい。
【0033】
本発明めっき液には、本発明の効果を損なわない限り、更に硫酸鉄等の銅以外の金属塩やカテコール等の酸化防止剤や本発明化合物以外のレベラー等を含有させてもよい。
【0034】
本発明めっき液は、上記成分を混合して調製してもよいが、本発明化合物を含有する硫酸銅めっき液用添加剤を調製し、それを別途調製した硫酸銅めっき液に添加して調製してもよい。なお、硫酸銅めっき液用添加剤には、必要により、ブライトナー、キャリアー等を含有させてもよい。
【0035】
本発明めっき液は、従来公知の方法に従って、硫酸銅めっきをすることができる。具体的には、被めっき物を本発明めっき液で処理する方法(以下、「本発明めっき方法」という)で被めっき物へ硫酸銅めっきをすることができる。
【0036】
本発明めっき方法でめっきできる被めっき物は、特に限定されないが、例えば、樹脂製等の基板に金属等の導電層を形成し、回路をパターニングしたプリント配線板や、シリコンウエハ等の半導体基板等が挙げられる。これらの被めっき物の中でもビアおよび/または回路パターンを有するものが好ましい。
【0037】
本発明めっき方法では、上記したように、被めっき物に有る回路パターンの形成や、ビアを充填するのに好ましい。具体的にビアを充填するには、特に限定されないが1.5A/dm相当の電流密度で45分程度、液温25℃程度でめっきを行えばよい。更にめっきの際はエアレーション、ポンプ循環、パドル攪拌等による液攪拌を行うことが好ましい。
【0038】
本発明めっき方法で多様なデザインの配線を均一な厚みで形成し、回路パターンの形成や、ビアを充填することができる。
【実施例
【0039】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、相対分子量はポリエチレングリコールを標準の校正試料としてTSKgel G3000PWXL-CP(東ソー株式会社製)カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される値である。更に、元素分析値はN、C、Hについて酸素循環燃焼・TCD検出方式、Oについて不活性ガス中インパルス加熱・融解―NDIR検出方式、Sについて酸素フラスコ燃焼/イオンクロマトグラフ法にて測定される値である。
【0040】
実 施 例 1
本発明化合物の調製(1):
以下の表2に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表2に記載の当量で、10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40度で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表2に示した。元素分析値はC:50.8%、N:2.7%、H:9.0%、O:33.3%、S:2.9%と分析され、S原子は硫酸イオンあるいは硫酸水素イオン由来であるためそれを減算した水素原子を除く組成式はC(4.23)N(0.193)O(1.74)となりN率は3.13と算出できた。この実測値から算出されたN率は計算値と誤差が少なく、実用上は計算値を用いても問題ないことがわかった。
【0041】
【表2】
【0042】
実 施 例 2
本発明化合物の調製(2):
以下の表3に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表3に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表3に示した。
【0043】
【表3】
【0044】
実 施 例 3
本発明化合物の調製(3):
以下の表4に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表4に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表4に示した。
【0045】
【表4】
【0046】
実 施 例 4
本発明化合物の調製(4):
以下の表5に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表5に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表5に示した。
【0047】
【表5】
【0048】
実 施 例 5
本発明化合物の調製(5):
以下の表6に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表6に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、35℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表6に示した。元素分析値はC:45.3%、N:2.7%、H:7.4%、O:36.6%、S:2.5%と分析され、S原子は硫酸イオンあるいは硫酸水素イオン由来であるため減算した水素原子を除く組成式はC(3.77)N(0.193)O(1.98)となりN率は3.25と算出できた。
【0049】
【表6】
【0050】
実 施 例 6
本発明化合物の調製(6):
以下の表7に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表7に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表7に示した。
【0051】
【表7】
【0052】
実 施 例 7
本発明化合物の調製(7):
以下の表8に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表8に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表8に示した。
【0053】
【表8】
【0054】
比 較 例 1
比較化合物の調製(1):
以下の表9に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表9に記載の1/2当量で10wt%の水溶液として25℃で0.5時間、97℃で3時間で反応させた。その後アミン化合物とエポキシ化合物の残り1/2当量を加えて105℃で30分反応させアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表9に示した。
【0055】
【表9】
【0056】
比 較 例 2
比較化合物の調製(2):
以下の表10に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表10に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、98℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表10に示した。
【0057】
【表10】
【0058】
比 較 例 3
比較化合物の調製(3):
以下の表11に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表11に記載の1/2当量で10wt%の水溶液として25℃で0.5時間、97℃で3時間で反応させた。その後アミン化合物とエポキシ化合物の残り1/2当量を加えて105℃で30分反応させアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表11に示した。
【0059】
【表11】
【0060】
比 較 例 4
比較化合物の調製(4):
以下の表12に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表12に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表12に示した。
【0061】
【表12】
【0062】
比 較 例 5
比較化合物の調製(5):
以下の表13に記載したニットーボーメディカル社製のポリアリルアミン化合物(PAS-24)を使用した。N率と相対分子量(Mw)も表13に示した。
【0063】
【表13】
【0064】
比 較 例 6
比較化合物の調製(6):
以下の表14に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表14に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表14に示した。
【0065】
【表14】
【0066】
比 較 例 7
比較化合物の調製(7):
以下の表15に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表15に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40℃で3時間反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表15に示した。
【0067】
【表15】
【0068】
比 較 例 8
比較化合物の調製(8):
以下の表16に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表16に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、25℃で3時間で反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表16に示した。
【0069】
【表16】
【0070】
比 較 例 9
比較化合物の調製(9):
以下の表17に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表17に記載の当量で10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、25℃で3時間で反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表17に示した。
【0071】
【表17】
【0072】
実 施 例 8
本発明化合物の調製(8):
以下の表18に記載のアミン化合物とエポキシ化合物を表18に記載の当量で、10wt%の水溶液として5℃で0.5時間、40度で3時間で反応させてアミン化合物とエポキシ化合物の重合物を得た。得られた重合物のN率と相対分子量(Mw)も表18に示した。
【0073】
【表18】
【0074】
試 験 例 1
めっき試験:
実施例1~8で調製した化合物を5~30mg/Lで、それぞれ表19に記載の組成の硫酸銅めっき液に含有させ、本発明の硫酸銅めっき液を調製した。これらの硫酸銅めっき液に、無電解銅めっきを施した開口径φ60μm、深さ35μmのブラインドビアホールを有する樹脂基板および厚さ25μmのDFRを使用して30/150、15/150、9/150、30/30、15/15、9/9のL/Sを有するパターニング基板を入れ以下の条件で硫酸銅めっきを行った。めっき後の基板についてフィリング性と最大膜厚差を以下のようにして評価した。それらの結果を表20に示した。また、比較として、比較例1~9で調製した化合物を含有させた硫酸銅めっき液を調製し、それらについても同様に硫酸銅めっきを行い評価した。それらの結果を表21に示した。
【0075】
<硫酸銅めっき液組成>
【表19】
SPS:ビス―(3-ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィド
PEG:ポリエチレングリコール(分子量4000)
PO:グリセリンのポリプロピレングリコール付加物(分子量700)
【0076】
<硫酸銅めっき条件>
電流密度:1.65A/dm
時間:45分
浴量:500mL
攪拌:エアレーション 1.5L/min
【0077】
<フィリング性評価基準>
充填したビアホール上方の窪み量(μm)を3次元白色光干渉型顕微鏡を用いて測定した。窪み量が5μm以内を○として、5μm以上を×とした
【0078】
<最大膜厚差評価基準>
各配線幅の回路高さを3次元白色光干渉型顕微鏡を用いて測定した。最大高さ―最小高さを最大膜厚差として、5μm以内を○、5μm以上を×とした。
【0079】
【表20】
【0080】
【表21】
【0081】
上記結果を要約したものを図1に示した。この結果より、本発明化合物は硫酸銅めっき液に含有させることにより、多様なデザインの配線を均一な厚みで形成し、ビアを充填できることが示された。一方、少なくとも窒素原子、水素原子、炭素原子を含む化合物であってもXやMwが本発明化合物の範囲に入らない場合、多様なデザインの配線を均一な厚みで形成できず、ビアを充填できないことも示された
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、多様なデザインの配線を均一な厚みで形成し、回路パターンの形成やビアを充填することができるため、プリント配線板等の製造に利用できる。

以 上
図1