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  • 特許-特にタンクの形をした補償装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】特にタンクの形をした補償装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/10 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
F15B1/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019554815
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067631
(87)【国際公開番号】W WO2019007845
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】102017006305.2
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591204333
【氏名又は名称】ハイダック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HYDAC TECHNOLOGY GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クロフト
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト バルテス
(72)【発明者】
【氏名】イェルク マイヤー
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102005035749(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にタンクの形をした補償装置であって、そのハウジング(2)は少なくとも1つのハウジング壁(4)に流体を受容若しくは放出するための少なくとも1つの入口(8)と出口(10)を有していて、流体で充満可能である、補償装置において、
前記ハウジング(2)の内部に少なくとも1つの補償体(14)が配置されていて、この補償体(14)は少なくとも部分的に弾性的に可撓な隔壁(20)を備えてその内部空間を画定しており、この内部空間はハウジング壁(4)の1つの貫通部(12、32)で周囲環境と少なくとも部分的に圧力補償接続(32)している、補償装置において、
前記ハウジング(2)は、それぞれの入口(8)と出口(10)、並びにそれぞれの圧力補償接続(32)などの貫通部が存在していることを除いて、ハウジング(2)内で受容される流体のための閉じた包囲体を形成しており、ハウジング(2)は例えば流体の振動体積及び/又はハウジング(2)内に貯蔵された流体の温度上昇時の体積増加からなる追加体積を受容し、この追加体積はそれぞれの補償体(14)の隔壁(20)が内部空間に向かって変形することによって生じる押しのけ体積に相当し、
前記補償体(14)は、弾性的に可撓な隔壁としてエラストマー材料からなる柔軟なアキュムレータブラダ(20)を有しており、その内部空間は少なくとも部分的にフォーム材料(22)が充填されており、
アキュムレータブラダ(20)を圧力脈動と圧力サージから保護するために、アキュムレータブラダ(20)は保護ハウジング(16)内に収容されており、保護ハウジング(16)は少なくとも部分的に流体通過のために少なくとも1つの通過部(26)を備え、
前記柔軟なアキュムレータブラダ(20)は、場合によってはその保護ハウジング(16)と共に、ハウジング(2)の上部ハウジング壁(4)に面した上側で、保持具(30、34)を介してこの上部ハウジング壁(4)に静止して固持されて、媒体交換、特にアキュムレータブラダ(20)の内部体積と周囲環境との間の空気交換のための貫通部(12、32)を形成していることを特徴とする補償装置。
【請求項2】
前記フォーム材料(22)は、連続気泡性、高多孔質及び弾性的に可撓に形成されていることを特徴とする、請求項に記載の補償装置。
【請求項3】
柔軟なブラダ(20)は、圧縮されていない状態では紡錘形であり、ハウジング(2)内に垂直に配置されて突入していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の補償装置。
【請求項4】
ハウジング(2)とそのハウジング壁(4)は、方形貯蔵タンクを形成していること、及び柔軟なアキュムレータブラダ(20)はハウジング(2)の貫流によって少なくとも部分的に接触されない角領域でハウジング(2)内に固持されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の補償装置。
【請求項5】
フォーム材料(22)として、硬化するとポリウレタン(PU)軟質フォームを形成するポリマーポリオールが使用され、ジグリコールアミンなどの架橋剤によって架橋されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の補償装置。
【請求項6】
完成した軟質ポリウレタンフォームは、熱容量が20℃>1J/gK、好ましくは1.4J/gK~1.9J/gKの値であり、フォーム材料(22)の多孔度の尺度としての流動抵抗が1400~3800Ns/mであることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタンクの形をした補償装置であって、そのハウジングは少なくとも1つのハウジング壁に流体を受容若しくは放出するための少なくとも1つの入口と出口を有していて、流体で充満可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
システム構成要素として液体を循環又は搬送する極めて種々の設備において、タンクなどの容器が、入口を通して充填でき、かつ出口を通して排出できる構成要素として存在する。例えば特許文献1(独国特許出願公開第102012000221号)は、液体を脱気するための装置の構成要素をなす、液体を受容及び放出する装置を備えたタンク状容器を示している。タンクなど入口と出口を有する液体容器も、当該設備の運転中に生じる体積変動を補償するための補償要素として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102012000221号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、体積変動の補償のために使用した場合に特に有利な運転特性を特徴とする、タンクなどの液体容器を有する補償装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば上記の課題は、特許請求項1の特徴をその全体において有する装置によって解決される。請求項1の特徴部分によれば、本発明は、ハウジングの内部に少なくとも1つの補償体が配置されていて、この補償体は少なくとも部分的に弾性的に可撓な隔壁を備えてその内部空間を画定しており、この内部空間はハウジング壁の1つの貫通部で周囲環境と少なくとも部分的に圧力補償接続していることを特徴とする。
【0006】
本発明ではハウジング内に補償体が配置されて、弾性的に可撓な壁が周囲環境に対して圧力補償された内部空間を包囲していることにより、この内部空間がタンクの運転中に隔壁に圧力がかかると直ちにそれに応じて体積が変化する可撓な補償空間として提供される。これにより、完全に充填された状態でも弾性的に可撓な隔壁の内部空間の体積変化によって提供される補償機能が維持されるので、閉じた油圧システム内でタンクを運転する有利な可能性が開かれる。タンクが閉じた油圧回路内で運転可能であることにより、タンクの外側から汚れが流体中に入る危険や、タンクから流体が出ることにより周囲環境を汚染する危険もない。
【0007】
本発明による補償装置は有利には、ハウジングは、それぞれの入口と出口、並びにそれぞれの圧力補償接続などの貫通部が存在していることを除いて、ハウジング内で受容される流体のための閉じた包囲体を形成しており、ハウジングは例えば流体の振動体積及び/又はハウジング内に貯蔵された流体の温度上昇時の体積増加からなる追加体積を受容し、この追加体積はそれぞれの補償体の隔壁が内部空間に向かって変形することによって生じる押しのけ体積に相当するように実現できる。
【0008】
特に有利な実施形態では、補償体は弾性的に可撓な隔壁としてエラストマー材料からなる柔軟なアキュムレータブラダを有しており、その内部空間は少なくとも部分的にフォーム材料で充填されている。
【0009】
有利には、アキュムレータブラダを充填するために、連続気泡性、高多孔質及び弾性的に可撓に形成されフォーム材料を設けることができる。
【0010】
特に有利には、アキュムレータブラダを圧力脈動と圧力サージから保護するために、アキュムレータブラダは保護ハウジング内に収容されており、この保護ハウジングは少なくとも部分的に流体通過のために少なくとも1つの通過部を備えているように構成できる。
【0011】
有利な実施形態では、柔軟なアキュムレータブラダは、場合によってはその保護ハウジングと共に、ハウジングの上部ハウジング壁に面した上側で、保持具を介してこの上部ハウジング壁に静止して固持されて、媒体交換、特にアキュムレータブラダの内部体積と周囲環境との間の空気交換のための貫通部を形成している。
【0012】
この場合に有利には、柔軟なブラダは、圧縮されていない状態では紡錘形であり、ハウジング内に垂直に配置されて突入しているように構成されている。
【0013】
ハウジングとそのハウジング壁が方形貯蔵タンクを形成する実施形態では、柔軟なアキュムレータブラダを有利にはハウジングの貫流によって少なくとも部分的に接触されない角領域でハウジング内に固持できる。激しい流れを受けるのを回避することにより、流動力による補償体の負荷並びに装置の運転中に気泡が発生する危険が軽減される。
【0014】
特に有利には、フォーム材料として、硬化するとポリウレタン(PU)軟質フォームを形成するポリマーポリオールを使用でき、これはコールアミンなどの架橋剤によって架橋されている。
【0015】
補償要素として用いられるアキュムレータブラダのために、特に有利には完成した状態で熱容量が20℃>1J/gK、好ましくは1.4J/gK~1.9J/gKの値であり、フォーム材料の多孔度の尺度としての流動抵抗が1400~3800Ns/mである軟質ポリウレタンフォームを使用できる。
【0016】
以下に本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明によるタンクの形態の補償装置の実施形態の斜視図を模式的に簡略化した表現で示す。
図2図2は、実施形態の補償体の縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、タンクの形態の実施形態を非常に模式的に簡略化した表現で示しており、そのハウジング2はそれぞれ平坦なハウジング壁4を有する立方体の形状を有する。ハウジング2は、貫通部を除いて完全に閉じた流体用の容器をなしている。図1の表現では、これらの貫通部のうち通常は閉じているサービス開口部は6で示されており、これは垂直ハウジング壁4の中央位置に配置され、開いた状態でハウジング内部への進入を可能にする。このサービス開口部6を有する壁に続いている、図1に見られる垂直ハウジング壁4には、別の貫通部として8で示す6つのポートが設けられており、それぞれ流体入口を形成する。これと対向する垂直ハウジング壁4には、同様に10で示す6つのポートが設けられており、それぞれが流体出口を形成する。別の最後の貫通部として上部水平ハウジング壁4に接続部12が存在し、これに補償体14が取り付けられており、これは図2に付随する保護ハウジング16と共に別個に示されている。図1に見える、ハウジング壁4にある残りの構成要素は、ハウジング壁4内で容器内部への通路を形成しないベースボード18のような取付部品又は固定部品である。
【0019】
補償体14は、弾性的に可撓な隔壁として、フォーム材料からなる充填材22を備えた柔軟なアキュムレータブラダ20を有する。本発明による補償装置で設けられた充填材22の場合は、高多孔質で弾性的に可撓な連続気泡フォーム材料が想定されている。この例では、充填材22として軟質ポリウレタンフォームが設けられている。しかしながら他の高多孔質フォームを使用することもできる。図2に示すように、アキュムレータブラダ20は圧力脈動と圧力サージから保護するために保護ハウジング16内に収容されている。この例では保護ハウジング16は、それぞれの断面図に見られるようにアキュムレータハウジングとして円形貯蔵ボトルの形状を有する。保護ハウジング16は金属又は積層材から作られてもよい。保護ハウジング16は図2で下側の端部に開口部26を有しており、この開口部26を介してアキュムレータブラダ20を圧縮された状態で保護ハウジング16内に挿入することができる。図2に示すように、柔軟なアキュムレータブラダ20は圧縮されていない状態では図示の紡錘状の回転対称形を有する。アキュムレータブラダ20は上端部には補強部28を有しており、これに接続体30が嵌め込まれて保護ハウジング16を貫通して外側に突出している。回転対称ピン形状を有する接続体30内には同軸貫通路32があり、これはアキュムレータブラダ20の内部からアキュムレータブラダ20の内側と周囲環境との間で空気交換するための貫通部を形成している。接続体30は同時にアキュムレータブラダ20を上部ハウジング壁4の接続部12で保護ハウジング16との接続を形成する。この目的のために接続体30は、ハウジング壁4とのねじ止めを形成する固定ナット34のための雄ねじを有する。接続体30のハウジング壁4を越えて外方に突出する端部は、ナット34に被せた空気透過性に設計された保護フード36によって保護されている。
【0020】
フォーム充填材22の導入は、軟質ポリウレタンフォームを形成するためにフォーム成分をポリオール、触媒、及びジグリコールアミンなどの架橋剤の流動性混合物として接続体30内の流路32を通して導入する方法によって実施できる。本発明による補償装置の補償体で使用するのに有利に適した、架橋混合物の硬化後に完成する軟質ポリウレタンフォームは、20℃>1J/gK、好ましくは1.4J/gK~1.9Jの値の熱容量を有し、フォーム材料の多孔度に対する尺度をなす流動抵抗は1400~3800Ns/mである。図1に示すように、垂直方向にハウジング2内に延びる補償体14は、ハウジング2内で角38の近傍にある上部ハウジング壁4の角領域に取り付けられている。角38では、上部ハウジング壁4と、ポート10を含むハウジング壁4と、サービス開口部6を含むハウジング壁4とが合流している。この構成で補償体14があるハウジング部分は、ポート8からポート8に流れる流体の主流領域に対して、上方へも側方へもずらされており、流れが比較的穏やかなので、補償体14は有害な流動力による負荷に暴露されることが少ない。
図1
図2