(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】システム及びデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20230112BHJP
G01N 15/00 20060101ALI20230112BHJP
G01N 1/40 20060101ALI20230112BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230112BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N15/00 C
G01N1/40
G01N1/28 J
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2019562606
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2018062265
(87)【国際公開番号】W WO2018206802
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-28
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501339171
【氏名又は名称】ユニバーシティ・カレッジ・ダブリン,ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド,ダブリン
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】テオ ダ ワール
(72)【発明者】
【氏名】ローホラ エブラヒミ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル クリボルチコ
(72)【発明者】
【氏名】ブラディミール ロバスキン
(72)【発明者】
【氏名】トリッシュ マコーワン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム オコナー
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ ショルツ
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0139110(US,A1)
【文献】特開2006-029824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0135457(US,A1)
【文献】特開2006-058112(JP,A)
【文献】特表2002-505009(JP,A)
【文献】特表2015-535728(JP,A)
【文献】特開平02-072860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339434(US,A1)
【文献】国際公開第2015/156738(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0170151(US,A1)
【文献】特表2007-508569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/03-G01N 21/83
G01N 1/00-G01N 1/44
G01N 33/48-G01N 33/98
G01N 35/00-G01N 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
ACS PUBLICATIONS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル懸濁液中の物質の濃縮に使用するためのカセット(1,200,300)であって、
ハウジング(2)を含み、前記ハウジング(2)は、支持体(5)と
、前記サンプル懸濁液を受け取るように作用するように適合された入口ポート(20)と、前記入口ポート(20)と液体を流通させるように配置された密閉サンプル受取りチャネル(6)とを有
し、
前記密閉サンプル受取りチャネル(6)が、上側部分(
7)と少なくとも2つの壁(11a,11b)により接続されたベース(5a)とを有し、前記上側部分(7)が、前記ベース(5a)の幅未満の幅
を有し、前記密閉サンプル受取りチャネル(6)が400μm超の深さを有するように構成され
、
前記入口ポート(20)が前記サンプル懸濁液を前記密閉サンプル受取りチャネル(6)に送達する導管として作用するように配置され、
前記密閉サンプル受取りチャネル(6)の前記壁(11a,11b)が前記ベース(5a)に対して40°以上90°未満の傾きを有し、
前記密閉サンプル受取りチャネル(6)が、前記ベース(5a)から上方向に延在する隆起プラットフォーム(50)をさらに含み、
前記隆起プラットフォーム(50)が前記上側部分(7)及び両方の前記壁(11a,11b)から分離され、
前記密閉サンプル受取りチャネル(6)の深さは、隆起プラットフォーム(50)のトップから測定されたものである、カセット(1,200,300)。
【請求項2】
前記ベース(5a)が前記ハウジング支持体(5)により形成される、請求項
1に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項3】
前記密閉サンプル受取りチャネル(6)が、直線、曲線、円形、部分的円形、楕円形、接続された一連の2つ以上の直線若しくは曲線、又はそれらの組合せを含む群から選択されるいずれかの形状を有しうる、請求項
1又は2に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項4】
前記ハウジング(2)が、前記密閉サンプル受取りチャネル(6)に流体連通した空気放出ポート(14)をさらに含
み、
前記空気放出ポート(14)が前記入口ポート(20)に直径方向に対向するか、又は、前記空気放出ポート(14)と前記入口ポート(20)は、前記密閉サンプル受取りチャネル(6)の反対側端部にある、請求項
1~3のいずれか1項に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項5】
前記入口ポート(20)がノンリターンバルブである、請求項
1~4のいずれか1項に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項6】
前記カセット(1)の前記ハウジング(2)が、前記密閉サンプル受取りチャネル(6)を収容するように構成された下側セクション(201)と、前記下側セクション(201)に可逆的に装着してシールを形成するように構成された上側セクション(202)と、からなる、請求項1~
5のいずれか一項に記載のカセット(200)。
【請求項7】
前記密閉サンプル受取りチャネル(6)が、前記下側セクション(201)と前記上側セクション(202)とを組み合わせたときに形成され、且つ密閉され、シールされた前記ハウジング(2)を形成する、請求項
6に記載のカセット(200)。
【請求項8】
前記ハウジングが、画像キャプチャーデバイス(100)に接続されたアクチュエーター(101)を受け取るように構成された孔(30)をさらに含む、請求項
1~7のいずれか一項に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項9】
前記カセット(1,200,300)が一平面内を移動するように構成される、請求項1~
8のいずれか一項に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項10】
前記平面内の動作が、直線並進又は回転又はそれらの組合せでありうる、請求項
9に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項11】
前記密閉サンプル受取りチャネル(6)の前記壁(11a,11b)の内表面が疎水性材料又は親水性材料で被覆される、請求項1~
10のいずれか一項に記載のカセット(1,200,300)。
【請求項12】
サンプル懸濁液中の微粒子状物質を濃縮するためのシステム(400)であって、請求項1~
11のいずれか一項に記載のカセット(1,200,300)と、前記カセット(1,200,300)を収容するように構成された画像キャプチャーデバイス(100)と、を含む、システム(400)。
【請求項13】
前記システムが、コンピューターと、内部記憶デバイスと、検出器(122)と、クラウドコンピューティング記憶のためにデータを送信する無線ネットワークと、をさらに含む、請求項
12に記載のシステム(400)。
【請求項14】
液状サンプル中の微粒子状物質の存在を決定するためのキットであって、請求項1~
11のいずれか一項に記載のカセット(1,200,300)と浮選溶液とを含む、キット。
【請求項15】
前記浮選溶液が、1.20の比重を有する飽和NaCl溶液、1.280の比重を有する飽和糖溶液、の1.20の比重を有するシーザー(Sheather)糖溶液、1.20の比重を有する飽和硫酸亜鉛溶液、1.20の比重を有する飽和硝酸ナトリウム溶液、及び1.280の比重を有する飽和硫酸マグネシウム溶液から選択される、請求項
14に記載のキット。
【請求項16】
サンプル懸濁液中の微粒子状物質の存在を決定するための方法であって、
前記サンプル懸濁液を調製する工程と、
前記サンプル懸濁液を容器内で完全に混合する工程と、
十分に混合した前記サンプル懸濁液を請求項1~
11のいずれか一項に記載のカセット(1,200,300)の前記密閉サンプル受取りチャネル(6)に導入する工程と、
混合された前記サンプル懸濁液を含む前記カセット(1,200,300)を対物レンズ(102)付き画像キャプチャーデバイス(100)に取り付ける工程と、
前記対物レンズ(102)の視野を前記密閉サンプル受取りチャネル(6)の上側部分(7,208)の幅に対応させた状態で、前記サンプル懸濁液中の微粒子状物質の存在の決定が可能になるように一平面内で前記カセット(1,200,300)又は前記光学画像デバイス(100)を移動させる工程と、
を含む、方法。
【請求項17】
前記画像キャプチャーデバイス(100)が、前記カセット(1,200,300)に係合して前記対物レンズ(102)又は前記カセット(1,200,300)のどちらかを一平面内でのみ移動させるように構成されたアクチュエーター(101)を含む、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学顕微鏡法による液体サンプル中の微粒子状物質の定性分析及び定量分析のためのシステム及びデバイスに関する。特に、システム及びデバイスは、糞便サンプルなどの生物学的サンプル中の寄生虫卵などの生物学的要素の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
広範にわたる診断目的では、動物及びヒトの健康において並びに環境研究において所与のサンプル中の粒子の定性分析及び定量分析はかなりの価値を有する。定性とは、特定の生物学的要素の存在又は不在の確認を意味し、一方、定量とは、こうした要素の数を提供する。実験室で使用される現在の標準的方法は、顕微鏡法を用いて糞便中の寄生虫、水中の原生動物、土壌中の微生物などのサンプル中の特定の生物学的物質を検出、同定、及び定量する浮選技術である。こうした試験の多くから得られる結果は、重要な環境的、財政的、及び医学的意義を有する。しかしながら、既存の試験は、労力を要し、時間がかかり、而も好適な設備を備えた実験室で特別な訓練を受けたオペレーターを必要とする。
【0003】
糞便中卵数(FEC)試験は、価値のある診断ツールであり、さまざまな用途を有する。FECは、蠕虫卵又は寄生虫オーシストの検出である。それは、当該寄生虫要素よりも大きな比重の溶液中に糞便サンプルを懸濁させる浮選技術である。当該要素は、ある特定の時間遅延後に表面域に浮遊し、一方、より重いデブリは沈むであろう。次いで、顕微鏡法を用いてサンプル中の卵及びオーシストを検出、同定、及び定量する。
【0004】
動物の糞便のこうした顕微鏡検査は、治療の必要性の判断を可能にするのに重要である。それは、寄生虫の駆虫剤耐性(耐性がなければ同一条件で寄生虫を死滅させうる薬剤治療に寄生虫が耐えて生き延びる能力)の主な促進要因である食品生産動物の盲目的全頭治療に対する代替手段を提供する。寄生虫の抵抗力は、新しい薬剤の開発よりも急速に増大しており、無差別な治療が問題に拍車をかけている。これに対処する緊急の必要性が存在する。FECは、駆虫薬剤治療の必要性を決定するのに重要であり、その場合、特定の寄生虫に対してどの特定の薬剤が最も有効であるかを決定することが重要である。感染動物の治療に使用される選択された駆虫薬剤の有効性を決定するために、さらなる糞便中卵数低減試験(FECRT)を使用可能である。
【0005】
現在のFEC試験は、一般に専用実験室で行われる。糞便サンプルは、寄生虫要素の存在に関して試験され、結果は、卵/グラム糞便(EPG)の形式で生成される。この評価は、使用する方法に依存していくつかの工程を必要とする。方法はすべて、特定量の糞便サンプルを好適な体積の浮選溶液と共にホモジナイズするサンプル調製を必要とする。サンプル及び溶液の量は、マーク領域下でカウントされた数卵と単純変換係数とを乗算することにより最終FECを容易に決定できるようにとくに考慮して選択される。次いで、最もよく使用されるMcMaster Slideやmini-FLOTAC(登録商標)デバイスなどの専用容器に移す前に、溶液中のサンプルを濾過及び遠心分離しうる。FLOTAC(登録商標)デバイスは、デバイスを顕微鏡に挿入する前に、10分間程度待ってから浮選チャンバーに対して上側ディスクを回転させる必要がある。それにより浮選チャンバーの内容物のトップ表面域が顕微鏡下の分析のために非常に浅い観察領域として並進されるので、この回転プロセスは「並進」と呼ばれる。
【0006】
他の遠心分離浮選技術では、サンプルを遠心分離して高感度でより大量で評価可能である。しかしながら、遠心分離機を必要とするうえに技術の実施に時間を要することから、実験室で定期的に使用されることはなく、低コストのルーチンFEC用としてはコスト的に制限される。
【0007】
FEC分析の代替法は、ベースとベースから延在する突起とを含むサンプルホルダーと組み合わせて使用される画像キャプチャーデバイスを含むFECPAKG2装置を必要とする(SOWERBYに付与された米国特許第8,961,907号明細書の主題)。ベースは、使用時に液状サンプルの表面域が突起に接触しうる接触領域を含む。このデバイスは、装置の突出部分の表面域に卵を濃縮する。この溶液は、糞便サンプルのオンサイト画像キャプチャーを提供し、次いで、これは分析のために実験室に移送される。
【0008】
粒子の検出、同定、及び分析のためのこれらのデバイス及び方法は、いくつかの問題又は欠点を呈する。
【0009】
・ 試験の感度は、検査される体積に比例する。McMasterスライド下で0.3mlを検査するとわずか50卵/グラムの感度を与えるにすぎないが、mini-FLOTAC(登録商標)デバイス下で2mlを検査すると改善された5卵/グラムの感度を与える。
【0010】
・ 検査される体積が大きいほど、分析に必要な表面積は大きくなる。顕微鏡下では、可視表面領域又は視野(FOV)はいずれかの単一の瞬間に限定される。倍率が大きいほど、視野は小さくなる。これは、全表面領域の効率的検査又はスキャニングの主要な障害となる。全表面域のかかるスキャニングは時間がかかり、分析のコストを増大させる。そのことはまた、全表面域を適正且つ完全にスキャンするためには多数の個別画像が必要となるので、いずれの自動認識システムでも問題となる。
【0011】
・ 流体サンプルの体積と表面積との関係には制約が存在する。体積の増加すなわち感度の増加は、検査される表面積の増加を招く。対象となる物体のディジタル同定は、各視野をカバーするのに必要な画像の数が未熟なオペレーターによるオンサイト同定の妨げとなるので、実行できないおそれがある。
【0012】
・ かかる既存のデバイスの機械設計は、自動プロセスへの組込み又は未熟な作業者による使用にあまり好適でない。McMasterはオープンシステムであり、注意深く取り扱わなければサンプル漏れを引き起こす。miniFLOTAC(登録商標)は、所要の浮選時間後に蓋の回転を必要とするので、プロセス時のヒトの介入並びにいくらかの専用知識及び技能を必要とする。
【0013】
FECPAKG2装置はサンプルの濃縮要件に対処するが、システムはその欠点も有する。
【0014】
・ 一FOVに粒子を濃縮することにより、装置は、当該サンプルを過剰濃縮するおそれがあり、これは顕微鏡で見られる卵とデブリとのオーバーラップの原因となる。このため、とりわけ画像認識ソフトウェアを用いてカウントする場合、有意なミスカウントを生じるおそれがある。
【0015】
・ この装置の現在の出願は、サンプルのリモート画像キャプチャー用であるが、画像解析は、依然として熟練実験スタッフにより行われる。画像が自動物体認識に好適であるという証拠は存在しない。
【0016】
・ このデバイスによる粒子の濃縮は、1つの視野への卵の層状化又は蓄積を必要とするが、このことは、球虫類などのより小さな種を同定する能力を制限するであろう。なぜなら、それらはより大きな種により覆われるおそれがあるからである。
【0017】
・ この装置は密閉されないので、デバイスに挿入する前にカセットがチルトしてより低いメニスカスレベルを生じるおそれがあり、固定焦点画像キャプチャーデバイスでは焦点ずれのリスクが存在する。
【0018】
・ オープンカセットはまた、蒸発を起こしやすいおそれもあるので、2~5分間の浮選時間後に形成されるメニスカスのレベルを低減させるであろう。このため、カメラ又はセンサーが固定焦点機構を有する場合、焦点ずれ画像を生じる可能性もある。
【0019】
・ 流体チャネルの50μm以下のトップ表面域でアイテムを同定及びカウントするめに、顕微鏡の光学系は、高い倍率及び分解能を必要とするので、より小さな焦点深度となる。この結果として、正確で信頼できるカウント処理を達成することがより困難になる。
【0020】
・ この焦点深度の問題は、より低い倍率では軽減される可能性があるが、この結果として、より小さな種の同定可能性が制限されるであろう。
【0021】
米国特許出願第13/387,076号明細書(米国特許出願公開第20120135457A号明細書)には、突起を備えたホルダーを含むデバイスを用いて糞便サンプル中の寄生虫卵又は他の粒子を分析する方法が開示されている。突起は、面取りされた傾斜壁を備え流体キャビティーを含むテーパー状先端部を含む。光は、突起のベースを透過する。デバイスは、画像キャプチャーデバイス/顕微鏡を併用して卵の存在を決定可能である。このデバイスに関連する問題は、以下の通りである。
1.画像品質不良による自動化結果不良及び確度損失の発生。
【0022】
・ 検査されるサンプルを保持する容器が開放されているので観測されるサンプルのy平面位置が異なるため、対象となる拡大される物体は同一平面に拘束されない。いくつかは、メニスカスを超えて上昇するであろうし、一方、いくつかは、溶液中に存在し続けることもあろう。このため、1つの画像内に異なる焦点領域を生じて認識のコントラストの損失を招くであろう。
【0023】
・ この装置は密閉されないので、デバイスに挿入する前にカセットがチルトしてより低いメニスカスレベルを生じるおそれがあり、固定焦点画像キャプチャーデバイスでは焦点ずれのリスクが存在する。
【0024】
・ このカセットは開放されており、ここままでは蒸発を起こしやすいおそれがあるので、2~5分間の浮選時間後に形成されるメニスカスのレベルを低減させることもあろう。このため、異なる平面で種が観測されて焦点ずれ画像を生じる可能性もある。
【0025】
・ 一FOVに粒子を濃縮することにより、装置は、当該サンプルを過剰濃縮するおそれがあり、これは卵とデブリと溶存気泡とのオーバーラップの原因となる。このため、可能性のあるいずれの画像認識ソフトウェアを用いても問題を生じるおそれがある。
【0026】
・ このデバイスによる粒子の濃縮は、1つの視野への卵の層状化又は蓄積を必要とするが、このことは、球虫類などのより小さな種の同定を制限する可能である。なぜなら、それらはそれらをマスクする大きな種により覆われるおそれがあるからである。
【0027】
・ 50μm未満のサイズのより小さな種に必要とされるレンズ装置の倍率及び分解能係数が高いほど、画像キャプチャーデバイスの焦点深度がより小さくなる。
2.試験の感度
・ 試験の感度は、サンプルの体積に正比例する。容器のサイズは限定されないが、サンプルを遠心分離するために3mmの深さにわたり保持する容器が必要であることが確認されており(対象物に対するデブリを除去して顕微鏡観察下で画像鮮明度を維持するために)、このため各キャビティーの体積は非常に小さな値に限定される。複数のキャビティーを使用しうるが、精密なx及び/又はy移動を必要とするであろうから、デバイスの費用が増大するであろう。
【0028】
特開2006-029824号公報では、サンプル懸濁液中の物質の存在を決定するために400μm以下の深さのサンプルチャネルを有するデバイスが使用される。チャネルの深さは、代表的な十分に大きな体積でチャネルの流路で観測を行うのに適さない。
【0029】
特開平02-72860号公報では、溶液中の細胞のサンプルを収容するように適合されたチャネルでレーザーを用いて細胞を検出する。
【0030】
国際公開第2015/156738号パンフレットには、ウェルが共通の流体チャネルを介して充填される半径方向に対称なパターンで配置された複数のウェルを有するマイクロ流体ベースのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)デバイスが記載されている。対象となる産物をPCR時に作製する場合、このデバイスを含有するシステムは、生成された産物により発せられるシグナルを検出する。
【0031】
米国特許出願公開第2016/339434号明細書には、慣性弾性法を用いてマイクロチャネル中に粒子を集束させるデバイスが記載されている。粒子は、チャネルを通って駆動され、チャネルの中心又はその近傍に粘弾性流体の局在流跡線を形成する。高流量が必要とされ、粘弾性物質は、剪断速度と共に変化する動粘度を有していなければならない。
【0032】
欧州特許第3020480号明細書には、ヒドロゲルマトリックス上で細胞を成長させるための細胞培養デバイスが記載されており、マトリックスは、対象となる細胞を供給するための細胞培養培地を収容するように設計された2つのチャンバーを分離するチャネルに保持される。
【0033】
米国特許出願公開第2009/170151号明細書には、チャネルと、入出口と、チャネル内の粒子の検出を可能にする光透過性基材部分と、を有する基材を含むフロースルーセルが記載されている。セルは、毛管作用の機能を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の目的は、上述した問題の少なくとも1つを克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、サンプル内から表面域に浮上する標的(微粒子)物質の濃縮及び正確な同定及びカウント処理を促進するように特定体積の液状サンプル(又はサンプル懸濁液)を保持すべく設計されたカセットに関する。液状サンプルは、造形(台形又はより狭いトップ及びより広いベースと等価又は矩形のどれか)断面を有する密閉サンプル受取りチャネルに含有される。密閉サンプル受取りチャネルの内壁は、チャネルの側壁に沿って表面張力を低減して微粒子状物質の接着を防止するために疎水性又は親水性の材料で被覆可能である。液状サンプルは、観察用サンプル部分と対象となる粒子よりも高い密度の浮選溶液とで構成される。浮選プロセスの進行中に短時間にわたり振動を印加しうる。液状サンプル中の懸濁粒子は、顕微鏡下の観察のために密閉サンプル受取りチャネルのトップ表面域に浮上する。
【0036】
密閉サンプル受取りチャネル表面域のスキャニングを容易にするために、スキャンプロセスがチャネルと顕微鏡の光学系との間の相対動作の成分を1つのみ必要とするように、密閉サンプル受取りチャネルの幅を選択された顕微鏡の光学系の視野の幅にほぼ対応させることが便利である。次いで、全表面域のスキャニングは、漸進的相対動作、たとえば、顕微鏡の光学系が密閉サンプル受取りチャネルの上表面域の全部(又はほとんど全部)を漸進的に見るようなカセットの移動からなる。代替的に、スキャニングを達成するために、密閉サンプル受取りチャネルは静止状態を維持して光学系を移動させることが可能であるか、又は相対動作が達成されるように2つの動作のいずれかの組合せを用いることが可能である。そのため、システムの自動化が可能であり、ユーザーは、専用オペレーターの技能がなくても迅速により広範にわたる数多くのサンプルの正確なデータを照合できるようになる。
【0037】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に示されるように、サンプル懸濁液中の物質の存在の決定に使用されるカセット(1,200,300)が提供される。カセット(1,200,300)は、支持体(5)と、サンプル懸濁液を受け取るように適合された入口チャネル(20)と、入口チャネル(20)に流体連通した密閉サンプル受取りチャネル(6)と、を有するハウジング(2)を含み、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、上側部分(7,208)と少なくとも2つの壁(11a,11b)により接続されたベース(5a)とを有して長軸を形成し、上側部分(7,208)は、ベース(5a)の幅以下の幅を有するように構成される。
【0038】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に示されるように、サンプル懸濁液中の(微粒子状)物質の濃縮に使用されるカセット(1,200,300)が提供される。カセット(1,200,300)は、支持体(5)と密閉サンプル受取りチャネル(6)とを有するハウジング(2)を含み、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、上側部分(7,208)と少なくとも2つの壁(11a,11b)により接続されたベース(5a)とを有し、上側部分(7,208)は、ベース(5a)の幅未満の幅を有するように構成される。
【0039】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に示されるように、サンプル懸濁液中の(微粒子状また懸濁)物質の濃縮に使用されるカセット(1,200,300)が提供される。カセット(1,200,300)は、支持体(5)と密閉サンプル受取りチャネル(6)とを有するハウジング(2)を含み、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、上側部分(7,208)と少なくとも2つの壁(11a,11b)により接続されたベース(5a)とを有し、上側部分(7,208)は、ベース(5a)の幅未満の幅と約400μm超の深さとを有するように構成される。
【0040】
好ましくは、上側部分は、ベースの幅未満の幅と、隆起プラットフォーム(50)のトップから測定したとき約300μm超ただし約3000μm未満すなわち約300μm~約3000μmの深さと、を有するように構成される。好ましくは、深さは、約300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595、600、605、610、615、620、625、630、635、640、645、650、655、660、665、670、675、680、685、690、695、700、705、710、715、720、725、730、735、740、745、750、755、760、765、770、775、780、785、790、795、800、805、810、815、820、825、830、835、840、845、850、855、860、865、870、875、880、885、890、895、900、905、910、915、920、925、930、935、940、945、950、955、960、965、970、975、980、985、990、995、1000、1005、1010、1015、1020、1025、1030、1035、1040、1045、1050、1055、1060、1065、1070、1075、1080、1085、1090、1095、1100、1105、1110、1115、1120、1125、1130、1135、1140、1145、1150、1155、1160、1165、1170、1175、1180、1185、1190、1195、1200、1205、1210、1215、1220、1225、1230、1235、1240、1245、1250、1255、1260、1265、1270、1275、1280、1285、1290、1295、1300、1305、1310、1315、1320、1325、1330、1335、1340、1345、1350、1355、1360、1365、1370、1375、1380、1385、1390、1395、1400、1405、1410、1415、1420、1425、1430、1435、1440、1445、1450、1455、1460、1465、1470、1475、1480、1485、1490、1495、1500、1505、1510、1515、1520、1525、1530、1535、1540、1545、1550、1555、1560、1565、1570、1575、1580、1585、1590、1595、1600、1605、1610、1615、1620、1625、1630、1635、1640、1645、1650、1655、1660、1665、1670、1675、1680、1685、1690、1695、1700、1705、1710、1715、1720、1725、1730、1735、1740、1745、1750、1755、1760、1765、1770、1775、1780、1785、1790、1795、1800、1805、1810、1815、1820、1825、1830、1835、1840、1845、1850、1855、1860、1865、1870、1875、1880、1885、1890、1895、1900、1905、1910、1915、1920、1925、1930、1935、1940、1945、1950、1955、1960、1965、1970、1975、1980、1985、1990、1995、2000、2005、2010、2015、2020、2025、2030、2035、2040、2045、2050、2055、2060、2065、2070、2075、2080、2085、2090、2095、2100、2105、2110、2115、2120、2125、2130、2135、2140、2145、2150、2155、2160、2165、2170、2175、2180、2185、2190、2195、2200、2205、2210、2215、2220、2225、2230、2235、2240、2245、2250、2255、2260、2265、2270、2275、2280、2285、2290、2295、2300、2305、2310、2315、2320、2325、2330、2335、2340、2345、2350、2355、2360、2365、2370、2375、2380、2385、2390、2395、2400、2405、2410、2415、2420、2425、2430、2435、2440、2445、2450、2455、2460、2465、2470、2475、2480、2485、2490、2495、2500、2505、2510、2515、2520、2525、2530、2535、2540、2545、2550、2555、2560、2565、2570、2575、2580、2585、2590、2595、2600、2605、2610、2615、2620、2625、2630、2635、2640、2645、2650、2655、2660、2665、2670、2675、2680、2685、2690、2695、2700、2705、2710、2715、2720、2725、2730、2735、2740、2745、2750、2755、2760、2765、2770、2775、2780、2785、2790、2795、2800、2805、2810、2815、2820、2825、2830、2835、2840、2845、2850、2855、2860、2865、2870、2875、2880、2885、2890、2895、2900、2905、2910、2915、2920、2925、2930、2935、2940、2945、2950、2955、2960、2965、2970、2975、2980、2985、2990、2995、及び3000μmの間である。より好ましくは、深さは、約350μm超ただし約3000μm未満であり、さらにより好ましくは、深さは、約375μm超ただし3000μm未満であり、理想的には、深さは、隆起プラットフォーム(50)のトップから測定したとき約400μm超ただし約3000μm未満である。
【0041】
好ましくは、密閉サンプル受取りチャネル(6)の壁(11a,11b)は直線であり、ベース(5a)に対して40°~90°の傾きを有する。
【0042】
好ましくは、上側部分(7,208)は、ベースの幅未満の幅(5a)を有するように構成される。
【0043】
好ましくは、ベース(5a)は、ハウジング支持体(5)により形成される。
【0044】
好ましくは、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、ベース(5a)から上方向に延在する隆起プラットフォーム(50)をさらに含む。理想的には、隆起プラットフォーム(50)は、上側部分(7,208)及び壁(11a,11b)の一方又は両方から分離される。つまり、プラットフォーム(50)は、壁(11a,11b)の一方又は両方に接続されず、上側部分(7,208)にも接続されないので、液状サンプルを充填して懸濁粒子を上昇させるための空間(空隙)がプラットフォーム(50)の少なくとも1つの側の周りに残るものと理解される。
【0045】
好ましくは、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、直線、曲線、円形、部分的円形、楕円形、接続された一連の2つ以上の直線若しくは曲線、又はそれらの組合せを含む群から選択されるいずれかの形状を有しうる。
【0046】
好ましくは、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、断面が台形、等脚台形、切頂三角形、矩形、矩形上の等脚台形、楕円形、凹状若しくは凸状の弧形である。
【0047】
好ましくは、カセットは、サンプル懸濁液を受け取るように且つサンプルを密閉サンプル受取りチャネルに送達する導管として作用するように適合された入口ポート(20)をさらに含む。
【0048】
好ましくは、ハウジング(2)は、密閉サンプル受取りチャネル(6)に流体連通した空気放出ポート(14)をさらに含む。理想的には、出口ポート(14)は、入口ポート(20)に直径方向に対向する。代替的に又は両方で、空気放出ポート(14)は、入口ポート(20)の反対側にある。
【0049】
好ましくは、入口ポート(20)はノンリターンバルブである。
【0050】
好ましくは、カセット(1)のハウジング(2)は、開放型又は密閉型のどちらかである。
【0051】
好ましくは、カセット(1)のハウジング(2)はシングルピースである。
【0052】
好ましくは、カセット(1)のハウジング(2)は、密閉サンプル受取りチャネル(6)を収容するように構成された下側セクション(201)と、下側セクション(201)に可逆的に装着してシールを形成するように構成された上側セクション(202)と、からなる。理想的には、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、下側セクション(201)上に形成される。より好ましくは、密閉サンプル受取りチャネル(6)は、下側セクション(201)と上側セクション(202)とを組み合わせたときに形成され、且つ密閉シールされたハウジング(2)を形成する。
【0053】
好ましくは、ハウジング(2)は、実質的に円形、線形、三角形、四角形である。理想的には、ハウジング(2)が実質的に円形である場合、密閉サンプル受取りチャネル(6)は円形である。好ましくは、ハウジングは、画像キャプチャーデバイス(100)に接続されたアクチュエーター(101)を受け取るように構成された孔(30)をさらに含む。
【0054】
好ましくは、ハウジング(2)は線形であり、密閉サンプル受取りチャネル(6)は線形であり、且つハウジング(2)はその長軸に沿って移動する。ハウジング(2)及び密閉サンプル受取りチャネル(6)は、直線又は曲線でありうる。
【0055】
好ましくは、カセット(1,200,300)は、一平面内を移動するように構成される。代替的に又は交互に、カセット(1,200,300)が静置される場合、画像キャプチャーデバイス(100)は、一平面内を移動するように構成される。
【0056】
好ましくは、平面内の動作は、直線並進又は回転又はそれらの組合せでありうる。
【0057】
好ましくは、密閉サンプル受取りチャネル(6)の壁(11a,11b)の内表面は、疎水性材料で被覆される。
【0058】
好ましくは、密閉サンプル受取りチャネル(6)の壁(11a,11b)の内表面は、親水性材料で被覆される。
【0059】
好ましくは、ハウジング(2)は透明又は半透明である。
【0060】
好ましくは、カセット(1,200,300)は、使い捨てであるか又は再使用に好適である。
【0061】
好ましくは、物質は懸濁物質又は微粒子状物質である。
【0062】
添付の特許請求の範囲に示されるように、サンプル懸濁液中の微粒子状物質の存在を決定する方法が提供される。本方法は、
サンプル懸濁液を調製する工程と、
サンプル懸濁液を容器内で完全に混合する工程と、
十分に混合したサンプル懸濁液を以上に記載のカセット(1,200,300)の密閉サンプル受取りチャネル(6)に導入する工程と、
混合されたサンプル懸濁液を含むカセット(1,200,300)を対物レンズ(102)付き画像キャプチャーデバイス(100)に取り付ける工程と、
対物レンズ(102)の視野を密閉サンプル受取りチャネル(6)の上側部分(7,208)の幅に対応させた状態で、サンプル懸濁液中の微粒子状物質の存在の決定が可能になるように一平面内でカセット(1,200,300)又は光学画像デバイス(100)を移動させる工程と、
を含む。
【0063】
好ましくは、画像キャプチャーデバイス(100)は、カセット(1,200,300)に係合して対物レンズ(102)又はカセット(1,200,300)のどちらかを一平面内でのみ移動させるように構成されたアクチュエーター(101)を含む。
【0064】
添付の特許請求の範囲に示されるように、サンプル懸濁液中の微粒子状物質の存在を決定するシステム(400)が提供される。本システムは、以上に記載のカセット(1,200,300)と、カセット(1,200,300)を収容するように構成された画像キャプチャーデバイス(100)と、を含む。
【0065】
好ましくは、システムは、コンピューターと、内部記憶デバイスと、検出器(122)と、クラウドコンピューティング記憶のためにデータを送信する無線ネットワークと、をさらに含む。
【0066】
添付の特許請求の範囲に示されるように、液状サンプル中の微粒子状物質の存在を決定するキットが提供される。本キットは、以上に記載のカセット(1,200,300)と浮選溶液とを含む。
【0067】
好ましくは、浮選溶液は、1.20の比重を有する飽和NaCl溶液、1.280の比重を有する飽和糖溶液、の1.20の比重を有するシーザー(Sheather)糖溶液、1.20の比重を有する飽和硫酸亜鉛溶液、1.20の比重を有する飽和硝酸ナトリウム溶液、及び1.280の比重を有する飽和硫酸マグネシウム溶液から選択される。
【0068】
本明細書では、「カセット」という用語は、特定体積の液状サンプルを受け取って含有するように適合された筐体又はハウジングを意味するものと理解すべきである。カセットは、液状サンプル中の微粒子状物質の分析のために画像キャプチャーデバイスで使用するように構成される。液状サンプルは、カセット内に収容された密閉チャネルに含有される。
【0069】
本明細書では、「液状サンプル」という用語は、液体源、たとえば、血液、痰、液状糞便、尿、脳脊髄液、唾液、滑液、水(小川、河川、海、海洋から)、処理水廃棄物、未処理水廃棄物、生物学的廃棄流出液、農地流出液、又は好適な浮選溶液中に懸濁された土壌や固形糞便などの固形物質などから得られるサンプルを意味するものと理解すべきである。固形物質を好適な浮選溶液中に懸濁させた場合、液状サンプルは、一般に「サンプル懸濁液」としても知られる。
【0070】
本明細書では、「物質」という用語は、試験又は分析される液状サンプルに関する限り、懸濁液体と識別可能な液状サンプル中の対象となるいずれかの微粒子状物質又は懸濁物質を意味するものと理解すべきである。かかる物質は、寄生虫の卵若しくはオーシスト、真菌胞子、花粉、種子、微視的アーテファクト/昆虫、骨片、鉱物、プラスチック(たとえばマイクロビーズ)、又は遺跡発掘現場から得られた土壌のスクリーニングから回収された他のアーテファクト、或いは土壌及び/又は水域から回収された鉱物でありうる。
【0071】
本明細書では、「画像キャプチャーデバイス」という用語は、スキャン時にカセット内のサンプルの画像をキャプチャー可能なデバイス、たとえば、拡大レンズ、ディジタル光学センサーアレイ、全自動イメージングを可能にするソフトウェアを備えたコンピューターに結合された単一画像若しくは複数画像を取得可能なカメラ(たとえば、アナログ若しくはディジタル一眼レフ(SLR)カメラ、ビデオカメラ、ムービーカメラ)、個別拡大レンズ若しくは他の光学拡大デバイス若しくは取外し可能なレンズを有する若しくは有していない他のデバイス内のカメラデバイス(たとえば携帯電話)、又はキャプチャー前に画像を他の場所に転送可能な若しくはキャプチャー前にそれをスクリーン上に表示可能なシステムを備えた顕微鏡などを意味するものと理解すべきである。単一ディジタル画像は、チャネルの全幅ただし通常はその長さの一部のみをカバーしうる。したがって、画像のキャプチャー工程の後に通常はカセット又は光学デバイスの移動工程が続き、これは自動化可能である。こうしたキャプチャー/移動サイクルの工程は、カセット全体のイメージングを行って解析可能な状態になるまで繰り返される。スキャンプロセスはまた、カセットを静置した状態に保持して顕微鏡の光学系を移動させることによっても、又は任意に2つの動作を組み合わせることによっても、達成可能である。サンプル容器と顕微鏡の光学系との間の所望の相対動作を達成するいずれの方法も、本発明で使用するのに好適である。
【0072】
画像は、レンズからイメージセンサー上に直接投影される。制御ボードは、画像のキャプチャー及び記憶をデバイスに指令する。画像は、部分的若しくは完全にデバイス上でローカル処理してからクラウド(ローカルサーバーやパーソナルコンピューターではなく、データを記憶、管理、及び処理するためにインターネット上にホストされたリモートサーバーのネットワーク)にアップロードしうるか、又はアップロード前になんら前処理せずに若しくはいくらか前処理してアップロードしうる。この解析は、ある特定の基準と照合して対象となる特定の粒子の存在を検出するために画像の処理を必要とするであろう。また、定性的及び定性的結果が得られるであろう。この結果は記憶され、コピーがエンドユーザーに送付されるであろう。
【0073】
本明細書では、「密閉サンプル受取りチャネル」という用語は、サンプル中に浮遊する微粒子状物質がチャネルの上表面域に上昇するにつれて濃縮されるように40°~90°、好ましくは40°~90°未満の角度の壁を有する特定の断面形状の密閉チャネルを意味するものと理解すべきである。密閉サンプル受取りチャネルの壁は、直線形、円形、曲線形、部分的円形、楕円形でありうる。
【0074】
本明細書では、「台形断面密閉サンプル受取りチャネル」という用語は、サンプル中の浮遊する微粒子状物質が上表面域に上昇するにつれて濃縮させるように40°~90°未満の角度の側壁を有する台形の断面形状の密閉チャネルを意味するものと理解すべきである。「矩形」断面密閉チャネルという用語は、側壁とベースとのなす角度が90°である密閉チャネルを意味するものと理解すべきである。チャネルの側壁の傾き(角度)は、トップの小表面領域に粒子を濃縮させるのに役立つ十分な角度であるが、トップに向かって進む粒子の接着を助長するような傾斜にしない。密閉サンプル受取りチャネルは、たとえば、透明蓋、透明上表面窓、又は透明天井によりトップで一般に密閉され、これらを介して画像がキャプチャーされる。下方からの照明を容易にするために、密閉サンプル受取りチャネルの底は、そのいずれの隆起部分も含めて、光が下方から密閉サンプル受取りチャネルに進入して透明蓋/透明上表面窓/透明天井に到達できるように少なくとも半透明又は任意に透明にすべきである。密閉サンプル受取りチャネルの深さは、流体を介する上表面域への標的粒子の浮上を容易にするために(深さが過度に深いとサンプル中のデブリ及び外来物質が浮選プロセスを妨害する可能性がある)、トップ表面域への部分浮遊性粒子の移動を容易にするために、トップ表面域下の下層の過剰蓄積デブリによる光の遮断及びキャプチャー画像のコントラストの低減を回避するために、制限される。次いで、密閉サンプル受取りチャネルの長さは、密閉サンプル受取りチャネルの全体積(断面積×長さ)がサンプル内容物を代表するのに十分であるように設定される。密閉サンプル受取りチャネルのこの長軸(「長さ」軸)は、いずれかの便利な経路を追跡可能である。それは直線でありうるとともに、その場合、カセットと光学系との相対動作は線形並進になるであろう。密閉サンプル受取りチャネルのより長い寸法を円形にして部分的又は完全な環形状を形成することが有利でありうる。以下で考慮されるカセットの一実施形態では、密閉サンプル受取りチャネルの長い寸法は、ディスクの外周近傍に位置決めされて完全円形を形成し、スキャン時に水平に保持される。次いで、顕微鏡の光学系は、光学系が着座する表面の下方に且つそれに垂直に方向付けられて密閉サンプル受取りチャネルの上方に静置した状態に保持される。こうして、スキャンプロセスは、ディスクの単純回転により達成可能になり、顕微鏡の光学系は、ディスクが360°のすべて又はほとんどにわたり回転するにつれて密閉サンプル受取りチャネルの全部(又はほとんど全部)をスキャンするであろう。代替的に、光学系は、回転可能であり、且つディスクが約360°にわたり回転するにつれてチャネル全体をスキャン可能である。
【0075】
密閉サンプル受取りチャネルの全体積は、正確な尺度を得るのに十分な粒子を含みうる代表的な液状サンプルを含有するのに十分である必要がある。
【0076】
密閉サンプル受取りチャネルは、チャネルのベースから上方向に隆起するプラットフォームも含みうる。しかしながら、プラットフォームは、決してチャネルの側壁と同一平面をなさない。
【0077】
本明細書では、「疎水性材料」という用語は、以上に記載のカセットのチャネルの内壁上のナノスケールの表面層に対するポリマー又は他の材料のナノメートル程度のいずれかの薄いコーティングを意味するものと理解すべきであり、これは、サンプル溶液中に懸濁されたバイオ分子、タンパク質、卵、又は他の標的物質の付着を阻止する。疎水性材料の例としては、限定されるものではないが、ケイ素系又はフッ素系ポリマー、たとえば、テトラフルオロエチレンやポリジメチルシロキサン(PDMS)など、アルカン、油、官能基化ナノ粒子、ナノテクスチャーシリカ、ナノテクスチャーフッ素化ポリマー、ナノテクスチャーポリマーなどが挙げられる。
【0078】
本明細書では、「親水性材料」という用語は、以上に記載のカセットのチャネルの内壁上のナノスケールの表面層に対するポリマー又は他の材料のナノメートル程度のいずれかの薄いコーティングを意味するものと理解すべきであり、これは、サンプル溶液中に懸濁されたバイオ分子、タンパク質、卵、又は他の標的物質の付着を阻止する。かかる親水性材料の例としては、限定されるものではないが、タンパク質、セルロース、ポリエチレングリコールエーテル、ポリアミド、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコールエーテルソフトセグメントを含むポリウレタン、エトキシル化グラフトポリマーなどが挙げられる。
【0079】
本明細書では、「出口チャネル」又は「空気放出ポート」という用語(前記用語は同義的に用いられる)は、入口ポートを介して液状サンプルを密閉サンプル受取りチャネルに導入するとき、密閉サンプル受取りチャネルをすでに占有している空気を空気放出ポートにより逃散させて送入液体で置き換えるように配置された出口ポートを意味するものと理解すべきである。空気放出ポートは、真空シールによるか又は入口ポート(ノンリターンバルブとして作用しうる)若しくは制御バルブとの組合せによるかのどちらかで、密閉サンプル受取りチャネル中の液体の逃散を阻止する。後でカセットを光学デバイス中に移動しても、こうした保持は行われるであろう。
【0080】
本明細書では、「入口ポート」という用語は、サンプルの受取りに関する限り、通常は、流体(液体又は気体)を一方向にのみ貫流させて流体の戻り流出を阻止する入口ポートを意味するものと理解すべきである。それは流体の逆流を阻止する。空気放出ポートと組み合わせて使用した場合、液状サンプルは、サンプルの分析を妨害又は混乱させる可能性のある気泡の導入リスクを伴うことなく密閉サンプル受取りチャネルに導入可能である。入口ポートは、なんらかの形でノンリターンバルブのように作用する。
【0081】
本明細書では、「一平面」という用語は、軸の水平面に沿ったカセット又は光学デバイスの移動を意味するものと理解すべきであり、この場合、移動軸は、直線、円、ジグザグ、アップダウンでありうるが、常に水平面内にある。次いで、移動は、カセットの密閉サンプルチャネル及びカセット自体が水平面内に留まるか又は光学デバイスが水平面内を移動してチャネルをスキャンするかのどちらかで行われる。したがって、平面は鉛直軸に垂直である。
【0082】
本明細書では、「(長)軸に沿った移動」という用語は、密閉サンプル受取りチャネルの軸が固定観察領域下を移動するようにカセット又は光学デバイスが移動可能であることを意味するものと理解すべきである。たとえば、密閉サンプル受取りチャネルの軸が直線を形成する場合、動作は直線であろう。密閉サンプル受取りチャネルの軸が円を形成する場合、カセットは、密閉サンプル受取りチャネルの平均半径に等しい固定軸からの距離に観察領域を有して中心固定鉛直軸を中心に回転可能である。カセットは、光学デバイスが移動する間、固定状態を保持す可能であり、その逆も可能である。
【0083】
カセットは、顕微鏡や画像キャプチャーデバイスなどの画像キャプチャーデバイスの真下に見られる浮選溶液中のオーシスト及び他の寄生虫及び微粒子状物質のサンプリング及び濃縮を容易にし、訓練や実験室技能をなんら必要性とすることなく簡単に使用できる。このシステムは、より大量のサンプルの検査に使用されるロバストな感度の良い低コストの時間の削減された代替法を提供する。したがって、これにより寄生虫の存在を決定する感度が増加し、一般人による使用が可能である。他の利点としては、以下が挙げられる。
【0084】
・ 効率的且つ削減された分析時間でのサンプルの表面層の濃縮。
【0085】
・ サンプルの濃縮に遠心分離が不要。
【0086】
・ 密閉システムのため実験室ではなく現場でのサンプルの自動分析のために画像取得デバイスを併用して逐次的なデバイスの使用が可能である。
【0087】
・ 現在の参照標準のMcMaster又はmini-FLOTAC(登録商標)システムよりもサンプル体積を大きくできるので高感度の可能性がある。
【0088】
・ デバイスの対物レンズの一視野の幅になるように設計されたバンドに粒子が濃縮されるので、画像キャプチャーデバイス中のカセット又はカセットに沿って移動する画像キャプチャーデバイスの一次元動作により全サンプル表面を検査可能である。
【0089】
・ カセット中の密閉サンプル受取りチャネルの壁の角度は、壁への卵の接着を最小限に抑えるように設計される。接着は、密閉サンプル受取りチャネル壁の内表面を疎水性又は親水性の化学品の薄層で被覆することによりさらに低減される。トラップされたいずれの卵/粒子の静止摩擦も低減するように振動も使用可能である。
【0090】
・ 寄生虫粒子をより小さな表面領域に濃縮させることから、システムは、サンプルサイズを低減させても感度を損なうことなくサンプル中の寄生虫の自動ディジタル認識に理想的である。また、寄生虫粒子の存在の検査に表面域のごく一部が必要であるにすぎないので、検査技師やオペレーターなどのユーザーの時間が節約される。
【0091】
・ 表面積対体積が最適レベルに保持されるので、最終分析の同定及び定量のためにデブリから粒子を十分に単離する遠心分離の必要性はない。
【0092】
・ 密閉サンプル受取りチャネルのジオメトリーは、本明細書に記載のシステム及び方法の全プロセスにわたり不変の状態を維持する。
【0093】
・ システムはまた、熟練スタッフや検査介入のいずれの必要性も除去するように設計されており、いくつかの単純な操作工程を必要とするにすぎない。このためサンプルが収集されるリモート状況でのデバイスの使用が可能になり、短時間内で結果が入手可能になる。
【0094】
・ 本明細書に記載のシステムは、2mlの10:1浮選溶液:糞便溶液サンプルを取り扱うので、0.2gの糞便では5卵/グラムの感度をもたらす。
【0095】
・ カセットの体積容量は、カセットの直径を増加させることにより増加させることが可能である。接続性が改善され、データ転送があまり画像取得数の制限因子にならなくなっているので、体積を増加させて試験の感度を増加させることが可能である。カセットに懸濁液溶液を充填し、デバイス上に配置し、そしてアクティブにしたら、結果の処理にそれ以上のヒトの介入は必要でない。
【0096】
・ プラットフォームは、プラットフォームの両側の2つのリザーバーから形成されたチャネルの断面積ひいてはカセットの体積を増加させつつ観察領域の真下の限られた深さを維持することにより、チャネルの濃縮能力を増加させる。
【0097】
本明細書に記載のカセットの利点の1つは、カセットに可動部が存在しないことである。システムを自動化する場合、これによりカセットの設計、製造、組立て、及び操作がきわめて単純になる。そのためパワー要件が低減し、機械的信頼性及びロバスト性が改善される。そのためすべての関連コストが削減される。FLOTAC(登録商標)システムでは、上側プレートを回転(「並進」)させると、待ち時間の間に浮選チャンバーの表面域に達していないいずれの卵や他の粒子も永久に取り残されるので、そのシステムの確度が低下する。提案されたカセットでは、かかるスキミングプロセスが存在しないので、画像が最後にキャプチャーされるまで、浮選カットオフ時間が存在しない。
【0098】
本発明のカセット及びシステムの他の利点は、群れの動物が寄生虫感染を有しているか否かの決定である。感染動物及び感染レベルの同定は、疾患を予防するために動物を治療すべきか否かをユーザーに通知するのに役立つであろう。一方、群れの動物に寄生虫感染がないことが示された場合、群れに寄生虫が感染する可能性が存在することをユーザーに通知可能である。本発明のシステム及びカセットを用いてある区域の群れから収集されたデータはまた、寄生虫の疫学的研究及びある区域全体にわたる疾患の広がりの追跡にも役立ちうる。いくつかの群れの結果を合わせて、寄生虫感染の有病率及び発生率さらには治療不奏効の出現の地理的傾向を提供可能である。この情報は、一般にクラウドに記憶されたデータへのアクセスを提供することにより、全国的及び国際的な疾患監視機構及び他のサードパーティーで利用可能である。それは、薬剤に対する特定の寄生虫の耐性に関する情報も提供しうる。たとえば、治療前の糞便中卵数を測定する特定の糞便中卵数低減試験(FECRT)を用いれば、治療の前後の糞便サンプル間の糞便中卵数の減少パーセントを測定することにより、特定の寄生虫に対する特定の薬剤の有効性を評価可能である。
【0099】
本発明は、単なる例として添付の図面を参照して与えられたその実施形態の以下の説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1A-1B】
図1A及び
図1Bは、カセットがそれぞれカバーあり及びなしのディスク形の場合の本発明のカセットの例の斜視図を例示する。
図1Bのカセットは、個別カバーあり及びなしとして判断可能であり、カセット全体が透明であり且つカバーも透明であるので同一の内観図を与える。
【
図2A-2B】
図2Aは、
図1のカセットの断面図を例示し、一方、
図2Bは、プラットフォームを有する
図1の密閉サンプル受取りチャネルの断面図を例示する。
【
図3】
図3は、カセットがシングルピースであり且つ密閉サンプル受取りチャネルがプラットフォームをさらに含む場合の本発明のカセットの一実施形態の断面図を例示する。
【
図4】
図4は、カセットがプラットフォームなしで四辺形又は線形の形状である場合の本発明のカセットの一実施形態の例を例示する。
【
図5A-5B】
図5A及び5Bは、
図1~4に例示されるカセットが使用される典型的な画像キャプチャーデバイスを例示する。
【
図6】
図6は、本発明の決定システムと組み合わせて使用される典型的なデータ収集システムを例示する。
【
図7A-7C】
図7A~Cは、本明細書に記載のカセット及び
図5Aに示されるシステムを用いて以下に概説されるように調製されたヒツジ糞便サンプルの一FOVの典型的な顕微鏡写真を例示する。
図7Aは、ネマトディラス属(Nematodirus)のオーシスト(円で囲まれた部分)を例示し、オーシストの内部の特徴が明確に見て取れる。
図7Bは、気泡(円で囲まれた部分)が容易に同定されることを示す。
図7Cは、より微弱なオーシスト(円で囲まれた部分)がコクシジウム亜綱(Coccidia)に対応することを示す。
【
図8】
図8は、本発明のカセットの例の側断面図を例示する。
【
図9】
図9は、特許請求された本発明のカセットのチャネルに見られるヒツジ(
図9A、9B)、ウシ(
図9C、9D)、及びウマ(
図9E)の糞便サンプルの卵(円で囲まれた部分)の一FOVの典型的な顕微鏡写真を例示する。これは、本発明に記載の光学システムを用いてキャプチャーされた。卵のタイプは次のように表記される。N=ネマトディラス属(Nematodirus)、M=モニエジア属(Moniezia)、C=球虫、S=円虫。モニエジア属(Moniezia)及び円虫の卵は
図7に示されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図面の詳細な説明
本発明は、拡大レンズを有する画像キャプチャーデバイスと、特定体積の液状サンプルを保持するように設計されたカセットと、対象となる特定のアイテム/粒子を認識及びカウントするように設計された画像解析ソフトウェアと、エンドユーザー用に手順を単純化するキットと、を含むシステムを記述する。
【0102】
次に図面を参照して、
図1、
図2、及び
図8は、本発明のカセットの一実施形態を例示する。具体的には、
図1は、本発明のカセットの一実施形態の斜視図を例示し、全体として参照番号1で参照される。
図2A及び
図8は、
図1のカセット1を断面で例示する。カセット1は、外壁3と、アクチュエーター又はモータードライブシャフトを収容するように構成された孔30と、支持体5と、を有するハウジング2を含む。カセット1のハウジング2は、外壁3あり又はなしでありうる。支持体5は、孔30と外壁3との間に位置する密閉サンプル受取りチャネル6のベース5aを形成する。密閉サンプル受取りチャネル6は、液状サンプルを収容するように適合された導管12を形成する壁11a,11bを含む。ハウジング2は、密閉サンプル受取りチャネル6に流体連通した入口ポート20をさらに含む。入口ポート20は、液状サンプルを受け取ってサンプルを密閉サンプル受取りチャネル6の導管12に送達するように構成される。いくつかの実施形態では、入口ポート20を介して密閉サンプル受取りチャネル6に液状サンプルを適用するときに空気の逃散を可能にする(小さな)空気放出ポート14を入口ポート20の反対側に位置決め可能である(
図2A参照)。
【0103】
図1、
図2、及び
図8に示されるように、密閉サンプル受取りチャネル6の断面は、壁11a,11bが支持体5に平行な上側部分7と共に台形形状を形成することを示す。上側部分7は、好ましくは透明又は半透明である。壁11a,11bは、導管12に面する側を疎水性又は親水性の材料で被覆しうる。導管12は、液状サンプル中の浮遊性物質を上側部分7に濃縮する。上側部分7の幅は、画像キャプチャーデバイス100の視野(FOV)により決定される(
図4参照)。理想的には、追加の相対動作を必要とすることなく単に360°にわたりカセット1を回転させるか又は360°にわたり画像キャプチャーデバイスを回転させるかのどちらかにより上側部分7全体を逐次的にスキャンできるように、上側部分7の幅はFOVの幅に対応する。
図2Bに示されるように、密閉サンプル受取りチャネルは、ベース5aから上方向に延在する隆起プラットフォーム50を(任意に)さらに含む。隆起プラットフォーム50は、壁11a,11bの一方又は両方及び上側部分7から明確に離れている(
図2B)。隆起プラットフォーム50を有する利点は、より小さなより浅い深さが観察領域の真下のチャネル6に存在するが、より大きな体積がプラットフォーム50の両側のリザーバーに存在することであり、このため、顕微鏡の対物レンズ又は画像リーダーの下の液体の体積がより小さくなる。液体の体積がこうしてより小さくなるので、液体を通る光の回折により引き起こされるボケが低減する。隆起プラットフォーム50は、壁11a,11b及び上側部分7に接触しない状態を維持して決して接触することはない。
【0104】
次に
図3を参照して、本発明のカセットの一実施形態の断面図が例示され、参照番号200が与えられる。先の実施形態を参照して記述された部分又は工程には、同一の数字が割り当てられる。カセット200は、下側セクション201と上側セクション202とからなるツーピースの物体である。下側セクション201は、外壁3と、アクチュエーター又はモータードライブシャフトを収容するように構成された孔30と、上に及び外壁3と孔30との間に位置決めされた密閉サンプル受取りチャネル6を有する支持体5と、を含む。カセット200の下側セクション201は、外壁3あり又はなしで使用可能である。密閉サンプル受取りチャネル6の断面は、台形形状を形成するように壁11a,11bに角度が付けられていることを示す。壁11a,11bにより密閉された支持体5の部分は、密閉サンプル受取りチャネル6のベース5aを形成する。壁11a,11bは、導管12に面する側を疎水性又は親水性の材料で被覆しうる。
【0105】
上側セクション202は、トップ表面206及びボトム表面207を有し、好ましくは透明又は半透明である。上側セクション202は、密閉サンプル受取りチャネル6に流体連通した小さな空気放出ポート14をさらに含む。小さな空気放出ポート14は、入口ポート20を介して密閉サンプル受取りチャネル6に液状サンプルを適用しているときに空気の逃散を可能にするように構成される。入口ポート20は、液状サンプルを受け取ってサンプルを密閉サンプル受取りチャネル6の導管12に送達するように構成される。上側セクション202は、密閉サンプル受取りチャネル6の壁11a,11bに可逆的に係合するように構成される。ボトム表面207は、支持体5に平行に位置し且つ密閉サンプル受取りチャネル6の壁11a,11bのトップ上に位置するように構成されて上側部分208を形成し、これを介して画像キャプチャーデバイス100のレンズは、導管12内の浮遊性物質を検出可能である。上側セクション202と壁11a,11bとの係合により気密シールが形成される。上側セクション202が密閉サンプル受取りチャネル6とシールを形成する場所、すなわち上側部分208の領域に、導管12は液状サンプル中の浮遊性物質を濃縮する。
【0106】
次に
図4を参照して、カセットの他の一実施形態が例示され、参照番号300が与えられる。先の実施形態を参照して記述された部分又は工程には、同一の数字が割り当てられる。カセット300は、線形又は四辺形の形状である。カセット300は、(任意の)外壁3と、上に位置決めされた密閉サンプル受取りチャネル6を有する支持体5と、を有するハウジング301を含む。密閉サンプル受取りチャネル6は、液状サンプルを収容するように適合された導管12を形成する壁11a,11bを含む。ここに示された密閉サンプル受取りチャネル6は、支持体5に平行な上側部分7を有する台形形状を形成するように角度が付けられた壁11a,11bを有する。壁11a,11bにより密閉された支持体5の部分は、密閉サンプル受取りチャネル6のベース5aを形成する。上側部分7は、好ましくは透明又は半透明である。壁11a,11bは、導管12に面する側を疎水性又は親水性の材料で被覆しうる。
【0107】
導管12は、液状サンプル中の浮遊性物質を上側部分7に濃縮する。上側部分7の幅は、画像キャプチャーデバイス100のFOVにより決定される(
図3参照)。理想的には、単にカセット300又は画像キャプチャーデバイス100のどちらかを一平面内で移動させることにより上側部分7全体を逐次的にスキャンできるように、上側部分7の幅はFOVの幅に対応する。
【0108】
次に
図5を参照して、以上に記載のカセット1,200,300を使用するのに好適な画像キャプチャーデバイス100が例示される。この図では、ステージ120と、160mmの焦点距離に補正された対物レンズ102(4×/NA0.1 plan)と、検出器122(8MpiのRaspberry Piカメラ)と、を備えた画像キャプチャーデバイス100として、典型的な複合顕微鏡が例示される。画像キャプチャーデバイス100は、ある特定の軸に沿ってカセット1,200,300を回転又は移動させるアクチュエーター101と、対物レンズ102と、センサー(検出器122として例示される)と、1つ以上照明源と、コンピューターと、送信デバイスと、好適なハウジング124と、電源と、を含む。
【0109】
アクチュエーター101は、平面に沿ってカセット1,200を回転させて又はカセット300を移動させて、画像キャプチャーデバイス100の対物レンズ102の下を密閉サンプル受取りチャネル6が通過するようにする電気モーターである。カセット1,200,300の孔30は、アクチュエーター101を収容してアクチュエーター101とカセット1,200,300とを係止一体化させることにより一緒に回転/移動するように構成される。アクチュエーター101及びカセット1,200,300の係止は、カセット又はスライドを顕微鏡ステージにマウントするための当技術分野で公知の典型的なシステムにより達成可能である。たとえば、係止は、アクチュエーター101上にマウントされた磁石110とカセット1,200,300内に配置された磁気ディスク112との間に発生する磁力により達成可能である。代替的に、係止は、アクチュエーター101に結合されて係止一体化されたシャフトが嵌合するカセット1,200,300のベース5に成形された容器により達成可能である。カセット1,200,300は、デバイス100の中心軸に対して直角を維持することにより、デバイス100の対物レンズ102からカセット1,200,300の上側部分7,208までの一定の距離を確保する。
【0110】
カセット1,200,300はまた、カセット1,200,300の上側部分7,208に対してキャプチャーデバイス100の中心軸をその直角位置に維持することにより、カメラからカセットまでの適正距離を維持する。所要により、これからの逸脱はいずれも、たとえば、アクチュエーターを用いてレンズ102に対してカセット1,200,300の垂直距離を微調整することにより打消し可能である。
【0111】
画像キャプチャーデバイス100とカセット1,200,300とを併用するために、液状サンプルを調製しなければならない。サンプルは、分析用サンプルの調製に典型的な先行技術に記載の方法により、次のように調製される。たとえば、45mlの浮選溶液(FS)を計量してメスシリンダーに入れる。最初にサンプルを完全にホモジナイズし、5gのホモジナイズされたサンプルを浮選溶液に添加してサンプル懸濁液を提供する。サンプル:浮選溶液の希釈比は、体積基準で測定される(典型的には1:10の希釈比)。スパチュラを用いてメスシリンダー内でサンプル懸濁液をさらに完全にホモジナイズし、フィルターに通す。フィルターの細孔サイズは、試験で同定される一連の特定の物質の最大寸法をよりも少なくとも5%大きく決定されるであろう。たとえば、試験で同定されている特定の物質が100μmの直径を有する場合、フィルターの細孔サイズは105μmであろう。次いで、いずれの残留する大きなデブリも除去するために、サンプルをたとえば212μmの細孔サイズを有するワイヤーメッシュに通してさらに濾過する。
【0112】
シリンジを用いて濾過サンプルの一部分を得る。濾過サンプルを完全に絶え間なく混合して、その間にサンプルを採取する。
【0113】
以上に明記された方法の1つ(又はかかるサンプルの調製に好適ないずれかの方法)によりサンプルを調製したら、調製後の遅延を最小限に抑えてサンプルを入口チャネル20に導入する。その際、対象となる浮遊性粒子を最大限に保持し、且つ閉じ込められた空気又はガスを最小限に抑えるようにする(理想的にはゼロ)(とりわけ、後者が微視的バブルの形態である場合)。調製されたサンプルは、シリンジ又は類似のポンプ機構を用いて入口ポート20を介して密閉サンプル受取りチャネル6の導管12に送入される。入口ポート20の反対側の小さな空気放出ポート14は、液状サンプルが密閉サンプル受取りチャネル6に進入するときに導管12内の空気の逃散を可能にする(
図1B及び
図2Aを参照されたい)。カセット1,200,300は、サンプルローディング時、カセット1,200,300の中心軸が水平且つ地面に平行になるように、したがって、カセット1,200,300の平面が鉛直且つ地面に垂直になるように保持可能である。入口ポート20は、カセット1,200,300の中心軸の真下に、且つ対向点の空気放出ポート14は、中心軸の真上にすべきであり、そうすれば、当然ながら、バブルは、サンプル中でその浮力に起因して空気放出ポート14の方向に向かうであろう。サンプルがこの小さな空気放出ポート14に達したとき、導管12の充填は終了する。入口ポート20の効果は、空気放出ポート14で漏出する傾向を伴うことなくサンプルを内側に保持することであろう。したがって、シールせずに開放したままにすることが可能である。
【0114】
次に
図5Aを見ると、画像キャプチャーデバイス100のレンズ102は、処理時間及び性能を最適化するために自動分析に必要とされる分解能の要件を最小限に抑えて最大FOVを達成するように構成される。これは、次式:
R=1.22λ/(NAobj+NAcond)≒0.61λ/NA≒λ/2
により表されるように、レンズ102の光学分解能とカメラのピクセル分解能とをマッチングさせることにより達成される。
【0115】
λ=520nm(緑色光)の場合
R=3μm、分解可能なポイント間の最短距離、指定のλと同一のユニット。
【0116】
NA=0.1(使用したレンズの開口数)
これは、使用した対物レンズ102により認識可能の詳細レベルである。検出器122は、最良のシステムを得るために類似のレベルを発揮すべきである。したがって、倍率を低下させて視野を獲得するには作動距離を減少させなければならない。
【0117】
次に、視野のサイズをカセット1,200,300内の密閉サンプルチャネル6の幅にマッチさせる。レンズ102のホルダーの内表面は、画像キャプチャーデバイス100のセンサー/検出器122上の画像の歪み又は鮮明度の低下を生じる可能性のあるいずれの内部反射も低減するためにサンドペーパー又はフェルトライニング(又は光の反射を低減又は防止する類似の表面)を有しうる。画像キャプチャーデバイス100内のレンズ102とセンサー/検出器122との間のカラムは、画像の収差を引き起こすおそれのある内部反射を軽減するように最小直径を有する。画像キャプチャーデバイス100は、好適な分解能及び画像品質を達成しつつ低コストのソリューションを達成するように選択される。
【0118】
上側部分7,208の幅は、選択される倍率で画像キャプチャーデバイス100の対物レンズ102のFOVにより決定される。上側部分7,208の幅をFOVの幅に対応させれば、一方向若しくは一平面内のみのカセット1,200,300の動作により又は一方向若しくは一平面内の対物レンズ102の動作により、密閉チャネル6の全表面域をスキャン可能である。
【0119】
図6は、カセット1,200,300の密閉サンプル受取りチャネル6にロードされたサンプルの画像を得るためのシステム400をブロック図で例示する。密閉サンプル受取りチャネル6の全表面領域がカバーされるまで又は十分な代表的な一連の画像がキャプチャーされるまで、アクチュエーター101がカセット1,200,300を一平面内のみに移動させて、密閉サンプル受取りチャネル6から得られた画像が逐次的にキャプチャーされる。代替的に、密閉サンプル受取りチャネル6の全表面領域がカバーされるまで又は十分な代表的な一連の画像がキャプチャーされるまで、アクチュエーター101は対物レンズ102を移動させる。対象となる特定の微生物又は他のアイテムの存在又は不在を確定するために、これらの画像は画像解析ソフトウェアにより処理される。この例は、農場の動物から採取された糞便サンプル中に存在する1つ以上の特定の寄生虫の卵のカウントを行う農業者でありうる。ユーザーが記憶及び後続の解析のためにいずれの試験の結果もクラウドベースのデータベースに送ることも可能である。この方法又は他の方法を用いて、異なる場所又は同一の場所からの経時的結果を比較することにより、寄生虫感染の増加、広がり、又は抑制をモニター可能である。この情報は、たとえば、家畜の寄生パターンをモニターするために、局所的、地域的、全国的、及び国際的なレベルで非常に価値がありうる。政府の農業部門などの全国的エンティティー又は地域たとえば欧州レベルの関係当局は、動物治療、動物移動、疾患抑制、獣医学的慣行などに関する指針を設定するためにこの情報を使用可能である。
【0120】
次に
図7に目を向けると、画像認識アルゴリズムを用いて種を区別する能力は、キャプチャーされた画像の品質及び達成されたコントラストに正比例するであろう。
図7Aのコントラストは、オーシストのアスペクト比、コントラスト、及び内部の特徴に基づいてヒトの眼で形状を区別するのに十分である。
図7Bに記された暗色環に囲まれた球形状は、気泡を明確に同定する。
図7Cに記されたより微弱なオーシストは、コクシジウム亜綱(Coccidia)に対応する。本明細書に記載のカセット中の対象となるアイテム(たとえばオーシスト)の濃縮は、自動キャプチャーに必要とされる画像数の減少により、先行技術のデバイスを上回ってキャプチャー効率を増加させる。そのため、特許請求された本発明のカセット及びシステムは、自動プロセスでより少ない画像を取得しつつより大きな体積の分析が可能であるという顕著な利点を提供する。これらの画像は、同定するのに十分な程度に対象となるアイテムを明確に見ることができるように好適な分解能でキャプチャー可能である。
【0121】
次に
図9に目を向けると、特許請求された本発明のカセットのチャネルに見られるヒツジ(
図9A、9B)、ウシ(
図9C、9D)、及びウマ(
図9E)の糞便サンプルの卵(円で囲まれた部分)の一FOVの典型的な顕微鏡写真が例示される。これは、本発明の自動システムを用いてキャプチャーされた。卵のタイプは次のように表記される。N=ネマトディラス属(Nematodirus)、M=モニエジア属(Moniezia)、C=球虫、S=円虫。カセットは、同定のために粒子を濃縮する。このプロセスは自動化が可能である。以上に説明したように、本明細書に記載のカセット中の対象となるアイテム(たとえばオーシスト)の濃縮は、自動キャプチャーに必要とされる画像数の減少により、先行技術のデバイスを上回ってキャプチャー効率を増加させる。キャプチャーされた画像品質及び自動システムを用いて対象となるアイテムを濃縮することにより達成されたコントラストのおかげで、ユーザーは、より少ない画像を用いて同定するのに十分な程度に対象となるアイテムを明確に見ることが可能であり、自動化しえない先行技術のデバイスよりも優れた顕著な利点を提供する。このことはまた、特許請求された本発明のカセット及びシステムを異なる種にわたるサンプルから物質の存在を決定するために使用可能であることを実証する。
【実施例】
【0122】
材料及び方法
天然で感染した家畜から新鮮な糞便サンプルを収集した。次いで、10%ホルマリン溶液(4%ホルムアルデヒド)を用いてこれらを固定し、試験まで4℃で貯蔵した。一群の動物の複合サンプルを10個体からなるグループで組み合わせて十分に混合した(Morgan et al.,2005 (Morgan,E.R.,Cavill,L.,Curry,G.E.,Wood,R.M.,Mitchell,E.S.(2005)Effects of aggregation and sample size on composite faecal egg counts in sheep.Veterinary Parasitology.131:79-87),Rinaldi et al.,2014 (Rinaldi,L.,Levecke,B.,Bosco,A.,Ianniello,D.,Pepe,P.,Charlier,J.,Cringoli,G.,Vercruysse,J.,2014.Comparison of individual and pooled faecal samples in sheep for the assessment of gastrointestinal strongyle infection intensity and anthelmintic drug efficacy using McMaster and Mini-FLOTAC.Vet.Parasitol.205,216-223))。
サンプル調製
もはや塩が溶解しなくなるまで(400~500g)、1lの加熱H2O(40~50℃)にNaClを添加することにより、飽和塩化ナトリウム浮選溶液を実験室で調製する。スターラーを用いてNaClを溶解させ、一晩かけて溶液を完全飽和にする。次いで、1.2のS.Gであるか浮き秤を用いて比重(S.G.)をチェックする(Cringoli et al.,2010(Cringoli G,Rinaldi L,Maurelli M.P & Utzinger J(2010)FLOTAC:new multivalent techniques for qualitative and quantitative copromicroscopic diagnosis of parasites in animals and humans.Nature Protocols:5(3):503-515))。
【0123】
45mlの浮選溶液(FS)を計量してメスシリンダーに入れる。保存サンプルを十分にホモジナイズし、5gを浮選溶液に添加し、体積基準で測定して(希釈比1:10)とした。スパチュラを用いてサンプル懸濁液をシリンダー内で完全にホモジナイズし、サンプル中の対象となる粒子よりも5%大きい細孔サイズを有する(ティーストレーナー)フィルターに通す。次いで、いずれの残留する大きなデブリも除去するために、サンプルをワイヤーメッシュ(212μmの細孔サイズ)に通してさらに濾過する。
デバイスへの充填
4mlの濾過サンプル懸濁液をシリンジ内に吸引する。シリンジ内の卵浮選を回避するために迅速な作業及びシリンジ内のサンプル混合を行うようにこの時点で注意しなければならない。これは、充填前にシリンジ2~3回反転させることにより達成可能である。カセットを垂直に保持し且つ入口ポートを水平軸よりも下に位置決めした状態で、シリンジをカセットの入口ポート(充填孔)に嵌入する。プランジャーを押し下げて密閉サンプル受取りチャネルに充填することにより、トップで空気放出ポートを介した空気の逃散を可能にする。密閉サンプル受取りチャネルが一杯になったらシリンジを除去する。
卵の同定及びカウント
観測された数と稀釈倍率とを乗算し、次いで、検査した溶液の体積で除算することにより、糞便の卵数/グラム(EPG)を計算する。FECを報告するデフォルト単位はEPGである。
本明細書に記載のカセット及びシステムでの卵/グラム(EPG)の計算。
【0124】
9mlの浮選溶液中に1gの糞便、(5mlの溶質に対して45mlの溶媒)カセット中に2.2ml、及びEPG値の計算に対して4.55の乗算係数。(9mlの浮選溶液中に1gの糞便(10mlの全体積を与える)、2.2mlを検査、したがって10ml/2.2ml=4.55)
McMasterシステムでのEPG計算
9mlの浮選溶液中に1gの糞便、スライド中に0.3ml(チャンバー1で標準的な0.15mlの体積、チャンバー2で0.15mlを与える)、及びEPG値の計算に対して33.33の乗算係数。(9ml中に1gの糞便(10mlの全体積を与える)、0.3mlの浮選溶液を検査、したがって10ml/.3ml=33.33)
mini-FlotacでのEPG計算
9mlの浮選溶液中に1gの糞便、デバイス内に2ml(チャンバー1で標準的な1ml、チャンバー2で1mlを与える)、及びEPG値の計算に対して5の乗算係数。(9ml中に1gの糞便(10mlの全体積を与える)、2mlの浮選溶液を検査、したがって10ml/2ml=5)。
結果
【0125】
【表1】
* 体積は2.2mlであり、且つ密閉サンプル受取りチャネルのプロファイルは、60°の角度の側壁、3.5mmのチャネル深さ、5.54mmのチャネルベース、及び1.5mm×2.5mmのプラットフォームサイズである。
【0126】
表1に記載のMcMaster法は、2.2ml中1卵を同定するのに4EPGの汚染レベルを必要とするにすぎない本明細書に記載のデバイス及びシステムとは対照的に、0.3ml中1卵を同定するのに50EPGの最小汚染レベルの糞便を理論上必要とするであろう。したがって、本明細書に記載のデバイス及びシステムは、より正確であり偽陰性の結果を生じる可能性はより少ないであろう。
【0127】
本明細書に記載のデバイス及びシステムは、検査体積を容易に増加可能であり、表1に記載のFlotac(登録商標)法で検査される5mlに呼応する。しかしながら、自動プロセス時間は比例して増加するであろう。また、Flotac(登録商標)システムは、その長い処理時間、遠心分離要件、及び本質的に労力を要する方法に起因してほとんど使用されない。本明細書に記載のデバイス及びシステムで検査される体積は、最小限のプロセス時間を維持しつつ、最も頻繁に用いられる方法の最高レベルを超える増加に対応するはずである。
【0128】
試験の感度は検査される体積に正比例し、この体積は分析に必要な画像の数を決定する。検査される体積に対して提案された観察表面領域の懸濁浮遊性物質の濃縮によれば、感度を維持したまま送信される画像の数を最小限に抑えることが可能である。インターネットの接続性が向上し改善されているので、本明細書に記載のデバイスは、画像取得数を増加させるように最適化可能であり、したがって、デバイスの感度のさらなる向上が可能である。
【0129】
mini-FLOTAC(登録商標)、McMaster、及び本明細書に記載のシステムの間の糞便学的検査技術の比較を以下の表2に提供する。GIT寄生虫コクシジウムのオーシスト、ネマトディラス属(Nematodirus)、円虫、及びストロンギロイデス属(Strongoloides)の卵の存在に関して、3つのヒツジ糞便サンプルを分析した。
【0130】
【表2】
本発明は、McMaster及びMini-FLOTAC(登録商標)システムのどちらと比較しても真の糞便中卵数の正確な推定を提供することが、これらの結果から実証される。分析される体積がより大きいことの重要性は、大きい外挿係数に起因して歪んだ平均値を提供するMcMasterの結果により実証される。この場合、乗算係数が大きいと読み値が大きくなるが、主要な欠点は、いずれの偽陰性の結果も分析全体ではるかに大きい結果を有することである。つまり、非常に小さなサンプル体積を用いて寄生虫の存在に関して陰性であることが見いだされた場合、その結果から全体として陰性の試験結果を与えると推定されることを意味する。サンプル内の寄生虫卵の分布が均一ではないのが、サンプルサイズが大きいほど、結果の変動は小さくなり、感度が高くなる。
【0131】
また、排泄後のサンプルは経時及び環境暴露に起因して変質するので、提案された自動プロセスを用いて現場でただちにサンプル試験を実施できれば、結果の確度が増加するであろう。
【0132】
本明細書では、「comprise、comprises、comprised、及びcomprising(~を含む)」という用語又はそのいずれの変化形も、また「include、includes、included、及びincluding(~を含む)」という用語又はそのいずれの変化形も、完全に同義的であるとみなされ、それらはすべて、可能な限り広義の解釈が与えられるべきであり、その逆も同様である。
【0133】
本発明は、以上に記載した実施形態に限定されるものではなく、構成及び詳細は両方とも変更しうる。