(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】DUB阻害剤としての活性をもつ置換シアノピロリジン類
(51)【国際特許分類】
C07D 403/12 20060101AFI20230112BHJP
A61K 31/4192 20060101ALI20230112BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20230112BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230112BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230112BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230112BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230112BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20230112BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230112BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230112BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230112BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230112BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230112BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230112BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230112BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K31/4192
A61K31/4196
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61P27/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P7/00
A61P9/10
A61P9/04
A61P9/00
A61P25/02 101
A61P25/02
A61P13/12
A61P3/10
A61P3/00
A61P25/18
A61P3/06
A61P13/02
A61P25/08
(21)【出願番号】P 2019570553
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 GB2018051691
(87)【国際公開番号】W WO2018234775
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-18
(32)【優先日】2017-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517299582
【氏名又は名称】ミッション セラピューティクス リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】マーティン リー ストックリー
(72)【発明者】
【氏名】マーク イアン ケンプ
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/156816(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/046530(WO,A1)
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN: 2016年11月28日以前,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号2039505-25-2, 2038813-80-6, 2038703-11-4, 2037845-12-6, 2037749-99-6, 2035201-39-7
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN:2016年11月18日以前,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号2034672-98-3, 2033782-12-4, 2033478-47-4, 2030606-67-6, 1940801-27-3, 1940239-55-3
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN: 2015年12月8日以前,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号1825275-44-2, 1825162-74-0, 1825100-39-7, 1824965-48-1, 1824954-20-2, 1822197-09-0, 1822192-17-5, 1821966-42-0, 1821632-48-7
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN:2016年11月29日,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号2040584-70-9
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN:2015年12月8日,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号1825132-25-9
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN:2016年11月29日以前,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号2040592-41-2, 2040054-88-2, 2039953-48-3, 2039944-12-0, 2039826-93-0, 2038813-55-5, 2038515-36-3, 2038256-99-2
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN: 2016年11月25日以前,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号2038023-43-5, 2037526-90-0, 2037395-21-2, 2037266-21-8, 2037206-83-8, 2037066-95-6, 2036839-59-3, 2036284-65-6
【文献】REGISTRY (STN) [online],Entered STN: 2016年11月23日以前,検索日:2022年5月6日,CAS 登録番号2036157-82-9, 2035068-31-4, 2034720-09-5, 2034122-54-6, 2033230-60-1, 2033060-99-8, 2031766-08-0, 2031713-88-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ia)、(Ib)、および(Ic)から選択される、式(I)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩:
【化1】
(式中、mは0~5であり;
nは0~5であり;
各R
1は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、および(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキルから独立に選択され;
R
1aおよびR
1bは、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、および(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキルから各々独立に選択され;
R
2は、水素、(C
1~C
6)アルキル、および(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキルから選択される;
あるいは
R
1b
はR
2と共に、N、O、Sから独立に選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環を形成してもよく、前記ヘテロ原子のうち少なくとも1個はNであり;
前記複素環は必要に応じて、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルキル、およびハロ(C
1~C
6)アルコキシから独立に選択された1~4個の置換基でさらに置換されていてもよく;
R
3とR
4は、水素、シアノ、および(C
1~C
6)アルキルから各々独立に選択されるか、R
3とR
4は共に3~6員のシクロアルキル環を形成し;
R
5は、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、NH(C
1~C
6)アルキル、N((C
1~C
6)アルキル)
2、C(O)NH(C
1~C
6)アルキル、C(O)N((C
1~C
6)アルキル)
2、NHC(O)(C
1~C
6)アルキル、N(((C
1~C
6)アルキル)C(O)(C
1~C
6)アルキル)、C(O)(C
1~C
6)アルキル、C(O)O(C
1~C
6)アルキル、CO
2H、CONH
2、SO
2NH(C
1~C
6)アルキル、およびSO
2N((C
1~C
6)アルキル)
2から選択され;かつ
各R
6は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、NH(C
1~C
6)アルキル、N((C
1~C
6)アルキル)
2、C(O)NH(C
1~C
6)アルキル、C(O)N((C
1~C
6)アルキル)
2、NHC(O)(C
1~C
6)アルキル、N(((C
1~C
6)アルキル)C(O)(C
1~C
6)アルキル)、C(O)(C
1~C
6)アルキル、C(O)O(C
1~C
6)アルキル、CO
2H、CONH
2、SO
2NH(C
1~C
6)アルキル、およびSO
2N((C
1~C
6)アルキル)
2から独立に選択される)。
【請求項2】
mは0、1、または2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1はクロロ、フルオロ、メチル、エチル、およびメトキシから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R
1aは水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシ、およびメトキシメチルから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
1bは水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシ、およびメトキシメチルから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
2は水素およびメチルから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
R
1bはR
2と共に、N、OおよびSから独立に選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環を形成し、前記ヘテロ原子のうち少なくとも1個はNであり;
前記複素環は必要に応じて、フルオロ、クロロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、およびメトキシから独立に選択される1~2個の置換基でさらに置換されていてもよい、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
3は水素およびメチルから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
R
4は水素、シアノ、およびメチルから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
R
5は水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、およびメトキシメチルから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
nは0、1、または2であり;かつ各R
6はクロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、CF
3、およびOCF
3から独立に選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
各R
6はクロロおよびシアノから独立に選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
以下から選択される、請求項1に記載の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩:
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2R,3R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2R,3S)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
(R)-1-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
(R)-2-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;および
(R)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩。
【請求項15】
中枢神経系(CNS)障害;神経変性疾患;多発性硬化症;ミトコンドリア脳症・乳酸アシドーシス・脳卒中様症候群;レーベル遺伝性視神経症;神経障害;運動失調;網膜色素変性症;母性遺伝性リー症候群;ダノン病;糖尿病;糖尿病性腎症;代謝障害;心不全;心筋梗塞を引き起こす虚血性心疾患;精神病;統合失調症;多種スルファターゼ欠損症;ムコ脂質症II型;ムコ脂質症III型;ムコ脂質症IV型;GM1ガングリオシド蓄積症;神経セロイドリポフスチン沈着症;アルパース病;バース症候群;β酸化異常;カルニチン-アシル-カルニチン欠乏症;カルニチン欠乏症;クレアチン欠乏症候群;補酵素Q10欠乏症;複合体I欠損症;複合体II欠損症;複合体III欠損症;複合体IV欠損症;複合体V欠損症;チトクロムc酸化酵素(COX)欠損症;慢性進行性外眼筋麻痺症候群;カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)I欠損症;カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)II欠損症;グルタル酸尿症II型;カーンズ・セイヤー症候群;乳酸アシドーシス;長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;リー病または症候群;乳児致死性心筋症;ルフト病;中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群;ミトコンドリア細胞症;ミトコンドリア劣性運動失調症候群;ミトコンドリアDNA欠乏症候群;ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症(myoneurogastointestinal disorder and encephalopathy);ピアソン症候群;ピルビン酸脱水酵素欠損症;ピルビン酸カルボキシ基転移酵素欠損症;POLG変異;中鎖/短鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素欠損症;極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症;ならびに加齢に伴う認知機能や筋力の低下から選択される、ミトコンドリアの機能不全を伴う障害または疾患の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項16】
前記神経変性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、虚血、脳卒中、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症;ならびにαシヌクレイン、パーキン、およびPTEN誘導推定キナーゼ1(PINK1)の変異に関連するパーキンソン病、パーキンが変異している常染色体劣性若年性パーキンソン病から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、腎がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頚部がん、膵臓がん、脳がん、黒色腫、骨がん、組織器官のがん、血液細胞のがん、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、大腸がん、非小細胞肺がん;アポトーシス経路が調節不全であるがん;ならびにBCL-2ファミリーのタンパク質が変異、過剰発現または低発現しているがんから選択されるがんの治療に使用するための、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩を薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含有する医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱ユビキチン化酵素、特にユビキチンC末端加水分解酵素30またはユビキチン特異的ペプチダーゼ30(USP30)、の阻害剤としての活性をもつ置換シアノピロリジン類、その使用、その調製方法、および前記阻害剤を含む組成物に関する。これらの阻害剤は、がんやミトコンドリアの機能不全を伴う疾患などの多様な治療分野で有用である。
【発明の背景】
【0002】
ユビキチンは、76個のアミノ酸からなり、細胞内のタンパク質機能の制御にとって重要な小さなタンパク質である。ユビキチン化と脱ユビキチン化は酵素によって媒介され、ユビキチンが標的タンパク質に共有結合されるか、脱ユビキチン化酵素(DUB)によって標的タンパク質から切断される過程である。ヒト細胞には約95種類のDUBが存在するが、これらは配列相同性に基づきサブファミリーに分けられる。USPファミリーは、DUB活性に重要なCys残基およびHis残基を含む共通のCysボックスおよびHisボックスを特徴とする。ユビキチン化および脱ユビキチン化の過程は、細胞周期進行、アポトーシス、細胞表面受容体の修飾、DNA転写およびDNA修復の制御などの多くの細胞機能の制御と関連付けられてきた。したがって、ユビキチンシステムは、炎症、ウイルス感染症、代謝機能不全、中枢神経系(CNS)障害、腫瘍形成などの多くの病状の病態形成と関連付けられてきた。
【0003】
ユビキチンは、ミトコンドリア動態の主要制御因子である。ミトコンドリアは動的な細胞小器官であり、その新生、融合、分裂事象はマイトフュージンなどの多くの重要な因子のユビキチン化により翻訳後の制御によって制御されている。パーキンなどのユビキチン連結酵素は多くのミトコンドリアタンパク質をユビキチン化することが知られているが、最近まで脱ユビキチン化酵素についてはよくわかっていなかった。USP30は517個のアミノ酸からなるタンパク質でありミトコンドリア外膜に見られる(Nakamura et al., Mol Biol 19:1903-11, 2008)。これはミトコンドリア行きシグナルをもつ唯一の脱ユビキチン化酵素であり、多くのミトコンドリアタンパク質を脱ユビキチン化することがわかっている。USP30はパーキンが関与するマイトファジーに拮抗することや、USP30活性を低下させるとパーキンが関与するマイトファジー異常を回復する可能性があることが実証されている。
【0004】
ミトコンドリアの機能不全はミトコンドリア含量(マイトファジーまたはミトコンドリアの新生)の減少、ミトコンドリア活性および酸化的リン酸化の低下と定義できるが、活性酸素種(ROS)の生成の変化とも定義できる。したがって、ミトコンドリアの機能不全は非常に多くの老化過程および症状に関与している。症状の例としては、神経変性疾患(たとえば、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症)、がん、糖尿病、代謝障害、心血管疾患、精神病(たとえば統合失調症)、および骨関節炎などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0005】
たとえば、パーキンソン病は世界で約1千万人の患者がおり(Parkinson's Disease Foundation)、黒質のドーパミン作動性神経の減少を特徴とする。PDの根底にある正確な機構は不明であるが、ミトコンドリアの機能不全はドーパミン作動性ニューロンのPD感受性の重要な決定因子として理解が深まっており、家族性疾患と孤発性疾患の両方の特徴であり、毒素に誘導されるパーキンソン症においても同様である。パーキンは早期発症型PDと関連付けられてきた多くのタンパク質のうちの一種である。ほとんどのPD症例はαシヌクレインの異常と関連しているが、パーキンソン症例の10%は特異的な遺伝的異常と関連しており、その一つはユビキチンE3連結酵素パーキンにおける遺伝的異常である。パーキンとタンパク質キナーゼPTEN誘導推定キナーゼ1(PINK1)は協働して、損傷したミトコンドリアのミトコンドリア膜タンパク質をユビキチン化し、それによってマイトファジーが起こる。マイトファジーの調節不全は酸化ストレスを増加させるが、それがPDの特徴として述べられてきた。したがって、USP30の阻害はPDの治療の有望な戦略となる可能性がある。たとえば、活性低下を起こすパーキン変異をもつPD患者はUSP30の阻害によって治療的に補償される可能性がある。
【0006】
USP30が不足するとミトコンドリアのマイトファジーによる排除が増強し、さらにパーキンに誘導される細胞死が増強することが報告されている。また、USP30はパーキンの過剰発現とは独立にBAX/BAK依存性アポトーシスを制御することがわかっている。USP30が不足すると、パーキンを過剰発現させなくてもがん細胞はBH-3模倣体(ABT-737など)に対して感作される。このように、USP30の抗アポトーシスの役割が実証されており、したがってUSP30は有望な抗がん治療の標的である。
【0007】
ユビキチン-プロテアソーム系は、多発性骨髄腫の治療のためのプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標))が承認されてから、がん治療の標的として関心を集めている。ボルテゾミブによる治療の延長は、関連する毒性や薬物耐性により制限されている。しかし、ユビキチン-プロテアソーム経路のプロテアソーム上流の特異的な側面(DUBなど)を標的とする治療戦略はより許容されると予測される(Bedford et al., Nature Rev 10:29-46, 2011)。
【0008】
したがって、USP30の阻害の必要性が示されている症状の治療のためにUSP30の阻害剤である化合物が必要である。
【0009】
一連のシアノ置換複素環の誘導体が脱ユビキチン化酵素阻害剤として以下のPCT出願に開示されている:WO2016/046530、WO2016/156816、WO2017/009650、WO2017/093718、WO2017/103614、WO2017/149313、WO2017/109488、WO2017/141036、WO2017/163078、WO2017/158381、WO2017/158388、PCT/GB2017/052971、PCT/GB2017/052949、PCT/GB2017/052880、およびPCT/GB2017/052882。Falgueyret et al., J.Med.Chem. 2001, 44, 94-104およびPCT出願WO01/77073には、骨粗鬆症や他の骨吸収に関連する疾患の治療に潜在的有用性のあるカテプシンKおよびL阻害剤としてシアノピロリジン類が記載されている。PCT出願WO2015/179190は、潰瘍性結腸炎およびクローン病の治療に潜在的有用性のあるN-アシルエタノールアミン加水分解酸アミダーゼ阻害剤が記載されている。PCT出願WO2013/030218には、がん、神経変性疾患、炎症性疾患およびウイルス感染症の治療に潜在的有用性のあるユビキチン特異的プロテアーゼ(USP7など)阻害剤としてキナゾリン-4-オン化合物が記載されている。PCT出願WO2015/017502およびWO2016/019237には、自己免疫疾患、炎症性疾患およびがんなどの疾患の治療に潜在的有用性のあるブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤が記載されている。PCT出願WO2009/026197、WO2009/129365、WO2009/129370、およびWO2009/129371には、COPDの治療に潜在的有用性のあるカテプシンC阻害剤としてシアノピロリジン類が記載されている。米国特許出願US2008/0300268には、チロシンキナーゼ受容体PDGFRの阻害剤として多環芳香族化合物が記載されている。
【発明の概要】
【0010】
第一の側面によれば、本発明は(Ia)、(Ib)、および(Ic)から選択される、式(I)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩を提供する:
【化1】
式中、mは0~5であり;
nは0~5であり;
各R
1は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、および(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキルから独立に選択され;
R
1aおよびR
1bは、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、および(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキルから各々独立に選択され;
R
2は、水素、(C
1~C
6)アルキル、および(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキルから選択される;
あるいはR
1bはR
2と共に、N、O、Sから独立に選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環を形成してもよく、前記ヘテロ原子のうち少なくとも1個はNであり、前記複素環は必要に応じて、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルキル、およびハロ(C
1~C
6)アルコキシから独立に選択された1~4個の置換基でさらに置換されていてもよく;
R
3とR
4は水素、シアノ、および(C
1~C
6)アルキルから各々独立に選択されるか、R
3とR
4は共に3~6員のシクロアルキル環を形成し;
R
5は、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、NH(C
1~C
6)アルキル、N((C
1~C
6)アルキル)
2、C(O)NH(C
1~C
6)アルキル、C(O)N((C
1~C
6)アルキル)
2、NHC(O)(C
1~C
6)アルキル、N(((C
1~C
6)アルキル)C(O)(C
1~C
6)アルキル)、C(O)(C
1~C
6)アルキル、C(O)O(C
1~C
6)アルキル、CO
2H、CONH
2、SO
2NH(C
1~C
6)アルキル、およびSO
2N((C
1~C
6)アルキル)
2から選択され;かつ
各R
6は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C
1~C
6)アルキル、(C
1~C
6)アルコキシ、(C
1~C
6)アルコキシ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルキル、ハロ(C
1~C
6)アルコキシ、NH(C
1~C
6)アルキル、N((C
1~C
6)アルキル)
2、C(O)NH(C
1~C
6)アルキル、C(O)N((C
1~C
6)アルキル)
2、NHC(O)(C
1~C
6)アルキル、N(((C
1~C
6)アルキル)C(O)(C
1~C
6)アルキル)、C(O)(C
1~C
6)アルキル、C(O)O(C
1~C
6)アルキル、CO
2H、CONH
2、SO
2NH(C
1~C
6)アルキル、およびSO
2N((C
1~C
6)アルキル)
2から独立に選択される。
【0011】
他に特に示されない限り、アルキルおよびアルコキシ基(対応する二価の基を含む)は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、1~6個の炭素原子、典型的には1~4個の炭素原子を含む。アルキルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、およびヘキシルなどが挙げられる。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロオキシ、およびn-ブトキシなどが挙げられる。シクロアルキルとしては、たとえばシクロプロピルが挙げられる。
【0012】
ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード、特にフルオロまたはクロロを意味する。ハロアルキルおよびハロアルコキシ基は1個以上のハロ置換基を含んでいてもよい。例としてはトリフルオロメチルおよびトリフロオロメトキシが挙げられる。複素環は飽和していても部分飽和していてもよい。
【0013】
他に特に示されない限り、「置換された」という用語は、定義された1個以上の基で置換されていることを示す。基が2個以上の選択肢から選択されてもよい場合、その選択された基は同じであっても異なっていてもよい。「独立に」という用語は、2個以上の置換基が可能性のある2個以上の置換基から選択される場合にそれらの置換基が同じであっても異なっていてもよいことを意味する。
【0014】
本発明に使用する式(I)の化合物の好ましい態様を以下に定義する。
好ましくは、mは0、1、2、3、および4から選択される。
より好ましくは、mは0、1、または2である。
さらに好ましくは、mは0または1である。
最も好ましくは、mは0である。
好ましくは、nは0、1、2、3、および4から選択される。
より好ましくは、nは0、1、または2である。
最も好ましくは、nは1または2である。
【0015】
好ましくは、各R1はハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから独立に選択される。
より好ましくは、各R1はクロロ、フルオロ、メチル、エチル、およびメトキシから独立に選択される。
最も好ましくは、R1はメチルである。
【0016】
好ましくは、R1aは水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから選択される。
より好ましくは、R1aは水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシ、およびメトキシメチルから選択される。
さらに好ましくは、R1aは水素およびフルオロから選択される。
最も好ましくは、R1aは水素である。
【0017】
R1bとR2が独立である好ましい一態様では、
好ましくは、R1bは水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから選択される。
より好ましくは、R1bは水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシ、およびメトキシメチルから選択される。
さらに好ましくは、R1bは水素およびメチルから選択される。
最も好ましくは、R1bは水素である。
【0018】
好ましくは、R2は水素、(C1~C3)アルキル、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから選択される。
より好ましくは、R2は水素、メチル、エチル、プロピル、およびメトキシエチルから選択される。
さらに好ましくは、R2は水素、メチル、およびエチルから選択される。
最も好ましくは、R2は水素およびメチルから選択される。
【0019】
別の好ましい態様では、R1bはR2と共に、N、O、Sから独立に選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環を形成し、前記ヘテロ原子のうち少なくとも1個はNであり;
前記複素環は必要に応じて、フルオロ、クロロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、およびメトキシから独立に選択された1~4個、好ましくは1~2個の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0020】
より好ましくは、R1bはR2と共に1個の窒素原子を含む5~6員の複素環を形成し;
前記複素環は必要に応じて、フルオロ、クロロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、およびメトキシから独立に選択された1~2個の置換基でさらに置換されていてもよい。最も好ましくは、前記複素環は必要に応じて、フルオロ、オキソ、およびメチルから独立に選択された1~2個の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0021】
好ましくは、R3とR4は水素、シアノ、メチル、エチル、およびプロピルから各々独立に選択されるか、R3とR4は共にシクロプロピル環を形成する。
より好ましくは、R3は水素およびメチルから選択される。
最も好ましくは、R3は水素である。
より好ましくは、R4は水素、シアノ、およびメチルから選択される。
最も好ましくは、R4は水素である。
【0022】
好ましくは、R5は水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、NH(C1~C3)アルキル、N((C1~C3)アルキル)2、C(O)NH(C1~C3)アルキル、C(O)N((C1~C3)アルキル)2、NHC(O)(C1~C3)アルキル、N(((C1~C3)アルキル)C(O)(C1~C3)アルキル)、C(O)(C1~C3)アルキル、C(O)O(C1~C3)アルキル、CO2H、CONH2、SO2NH(C1~C3)アルキル、およびSO2N((C1~C3)アルキル)2から選択される。
より好ましくは、R5は水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルキル、およびハロ(C1~C3)アルコキシから選択される。
さらに好ましくは、R5は水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、およびメトキシメチルから選択される。
最も好ましくは、R5は水素およびメチルから選択される。
【0023】
好ましくは、各R6は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、NH(C1~C3)アルキル、N((C1~C3)アルキル)2、C(O)NH(C1~C3)アルキル、C(O)N((C1~C3)アルキル)2、NHC(O)(C1~C3)アルキル、N(((C1~C3)アルキル)C(O)(C1~C3)アルキル)、C(O)(C1~C3)アルキル、C(O)O(C1~C3)アルキル、CO2H、CONH2、SO2NH(C1~C3)アルキル、およびSO2N((C1~C3)アルキル)2から独立に選択される。
より好ましくは、各6はクロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルキル、およびハロ(C1~C3)アルコキシから独立に選択される。
さらに好ましくは、各R6はクロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、CF3、およびOCF3から独立に選択される。
最も好ましくは、各R6はクロロおよびシアノから独立に選択される。
【0024】
本発明の第一の側面の特に好ましい一態様によれば、式(I)の化合物は式(Ia)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩である。
【化2】
式中、m、n、R
1、R
1a、R
1b、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は本発明の第一の側面およびその好適な態様に関して定義されたとおりである。
【0025】
本発明の第一の側面の好ましい態様の一例によれば、前記式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩である。
式中、mは0、1、または2であり;
nは0、1、または2であり;
各R1は、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから独立に選択され;
R1aは、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから選択され;
R1bは、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシ、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから選択され;
R2は、水素、(C1~C3)アルキル、および(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキルから選択される;
あるいはR1bはR2と共に、N、O、Sから独立に選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~6員の複素環を形成してもよく、前記ヘテロ原子のうち少なくとも1個はNであり;
前記複素環は必要に応じて、フルオロ、クロロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、およびメトキシから独立に選択された1~4個、好ましくは1~2個の置換基でさらに置換されていてもよく;
R3とR4は水素、シアノ、メチル、エチル、およびプロピルから各々独立に選択されるか、R3とR4は共にシクロプロピル環を形成し;
R5は、水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシから選択され;かつ
各R6は、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、(C1~C3)アルキル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)アルコキシ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルキル、ハロ(C1~C3)アルコキシから独立に選択される。
【0026】
本発明の第一の側面のより好ましい態様の別の例によれば、前記式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩である。
式中、mは0または1であり;
nは1または2であり;
R1はクロロ、フルオロ、メチル、エチル、およびメトキシから選択され;
R1aは水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシ、およびメトキシメチルから選択され;
R1bは水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、メトキシ、およびメトキシメチルから選択され、
R2は水素、メチル、エチル、プロピル、およびメトキシエチルから選択される;
あるいはR1bはR2と共に、1個の窒素原子を含む5~6員の複素環を形成してもよく、
前記複素環は必要に応じて、フルオロ、クロロ、シアノ、ヒドロキシ、オキソ、メチル、およびメトキシから独立に選択された1~2個の置換基でさらに置換されていてもよく;
R3とR4は水素、シアノ、メチル、エチル、およびプロピルから各々独立に選択されるか、R3とR4は共にシクロプロピル環を形成し;
R5は、水素、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、およびメトキシメチルから選択され;かつ
各R6は、クロロ、フルオロ、シアノ、ヒドロキシ、メチル、エチル、プロピル、メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、CF3、およびOCF3から独立に選択される。
本発明の第一の側面のさらに好ましい態様の別の例によれば、前記式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩である。
式中、mは0または1であり;
nは1または2であり;
R1はメチルであり;
R1aは水素およびフルオロから選択され;
R1bは水素およびメチルから選択され;
R2は水素およびメチルから選択され;
R3は水素およびメチルから選択され;
R4は水素、シアノ、およびメチルから選択され;
R5は水素およびメチルから選択され;かつ
各R6はクロロおよびシアノから独立に選択される。
【0027】
本発明の第一の側面の別の特に好ましい態様によれば、前記式(I)の化合物は、式(Ib)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩である。
【化3】
式中、m、n、R
1、R
1a、R
1b、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は本発明の第一の側面およびその好適な態様に関して定義されたとおりである。
【0028】
式(Ib)の化合物の好ましい態様の例は、式(Ia)の化合物の好ましい態様の上記例に対応する。
【0029】
本発明の第一の側面の別の特に好ましい態様によれば、式(I)の化合物は式(Ic)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩である:
【化4】
式中、m、n、R
1、R
1a、R
1b、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は本発明の第一の側面およびその好適な態様に関して定義されたとおりである。
【0030】
式(Ic)の化合物の好ましい態様の例は、式(Ia)の化合物の好ましい態様の上記例に対応する。
本発明に用いる好ましい式(I)の化合物は以下から選択される:
1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(R)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
(S)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2R,3R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2R,3S)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2S,3S)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2S,3R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
N-(((2R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例4);
N-(((2S)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド;
1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
1-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
(R)-1-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
(S)-1-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
2-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
(R)-2-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;および
(S)-2-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド;
その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩。
【0031】
本発明に用いる最も好ましい式(I)の化合物は以下から選択される:
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例1);
(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例2);
N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例3);
N-(((2R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例4);
N-(((2R,3R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例4のジアステレオ異性体);
N-(((2R,3S)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例4のジアステレオ異性体);
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(実施例5);
(R)-1-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(実施例6);
(R)-2-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(実施例7);および
(R)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(実施例8);
その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩。
【0032】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩としては、それらの酸付加塩および塩基性塩(ジ塩など)が挙げられる。
【0033】
好適な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例としては、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、水素リン酸塩、イセチオン酸塩、D-およびL-乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロト酸塩、パーム脂肪酸塩、リン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、D-およびL-酒石酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。
【0034】
好適な塩基性塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム塩、アンモニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオラミン塩、グリシン塩、リシン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩、および亜鉛塩が挙げられる。
【0035】
好適な塩の概説についてはStahl and Wermuth, Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, Wiley-VCH, Weinheim, Germany (2002)を参照のこと。
【0036】
必要に応じて、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を、式(I)の化合物の溶液と所望の酸または塩基を混合することによって容易に調製してもよい。塩を溶液に沈殿・濾過して回収するか、溶媒を蒸発させて回収してもよい。
【0037】
本発明による薬学的に許容される溶媒和物としては水和物および溶媒和物が挙げられ、結晶化の溶媒は同位体置換されていてもよい(たとえば、D2O、アセトン-d6、DMSO-d6)。
【0038】
包接化合物、薬物-ホスト包接複合体(drug-host inclusion complex)も本発明の範囲に含まれる。ここで、上記の溶媒和物とは異なり、薬物とホストは非化学量論的な量で存在する。このような複合体の概説については、HaleblianによるJ.Pharm Sci, 64 (8), 1269-1288 (August 1975)を参照のこと。
【0039】
以下、式(I)の化合物と記載する場合、すべてその塩と、式(I)の化合物の溶媒和物および包接化合物とその塩に関する記載を包含する。
【0040】
本発明は、先に定義した式(I)の化合物のすべての多形体を包含する。
【0041】
式(I)の化合物のいわゆる「プロドラッグ」も本発明の範囲に含まれる。したがって、式(I)の化合物の特定の誘導体でそれ自体は薬理活性をもたないかほとんどもたない誘導体が、体に投与されると代謝されて所望の活性をもつ式(I)の化合物を生じる可能性がある。このような誘導体を「プロドラッグ」という。
【0042】
本発明によるプロドラッグは、たとえば、式(I)の化合物に存在する適切な官能基を、特定の「前駆部分」として当業者に公知の部分(たとえばH Bundgaardの"Design of Prodrugs"(Elsevier, 1985)に記載のもの)で置換することによって製造できる。
【0043】
最後に、式(I)の特定の化合物は、それ自体が式(I)のその他の化合物のプロドラッグとして作用してもよい。
【0044】
窒素原子を含む式(I)の化合物の特定の誘導体は、対応するN-オキシドを形成してもよく、このような化合物も本発明の範囲に含まれる。
【0045】
1個以上の不斉炭素原子を含む式(I)の化合物は、2種以上の光学異性体として存在する可能性がある。式(I)の化合物がアルケニル基またはアルケニレン基を含む場合、幾何異性体シス/トランス(またはZ/E)体の可能性があり、化合物がたとえばケト基またはオキシム基を含む場合、互変異性が生じる可能性がある。したがって、一つの化合物は2種以上の異性化を示してもよい。
【0046】
本発明の範囲には、式の化合物のすべての光学異性体、幾何異性体、および互変異性体の形態(2種以上の異性化を示す化合物、およびその1種以上の混合物を含む)が包含される。
【0047】
シス/トランス異性体は、当業者に周知の従来技術(たとえば分別結晶とクロマトグラフィ)により分離されてもよい。
【0048】
個々のエナンチオマーを調製/分離するための従来技術としては、好適な光学的に純粋な前駆体からキラル合成するか、ラセミ化合物(あるいは塩または誘導体のラセミ化合物)をたとえばキラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分割することが挙げられる。あるいは、そのラセミ化合物(またはラセミ前駆体)を適切な光学活性化合物(たとえばアルコール)と反応させるか、式(I)の化合物が酸性または塩基性部分を含む場合、塩基または酸(たとえば1-フェニルエチルアミンまたは酒石酸)と反応させてもよい。得られたジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶により分離でき、一方または両方のジアステレオ異性体を当業者に周知の方法により対応する純粋なエナンチオマーに変換できる。本発明のキラル化合物(およびそのキラル前駆体)は、炭化水素(典型的にはヘプタンまたはヘキサン)からなり0~50容量%(典型的には2%~20%)のイソプロパノールと0~5容量%のアルキルアミン(典型的には0.1%のジエチルアミン)を含む移動相を用いて不斉樹脂でクロマトグラフィー(典型的にはHPLC)を行うことにより、エナンチオマーを富化させた形態で得られてもよい。溶出液を濃縮して富化混合物を得ることができる。本発明は、式(I)の化合物のすべての結晶形態(ラセミ化合物やラセミ混合物(集合体)を含む)を包含する。立体異性体の集合体は当業者に公知の従来技術で分離できる。たとえば、E. L. ElielとS. H. WilenによるStereochemistry of Organic Compounds (Wiley, New York, 1994)を参照のこと。
【0049】
特に、式(I)の化合物はR
1aで置換されたピロリジン環の炭素原子にキラル中心を含み、したがって前記立体中心は(R)配置で存在してもよいし(S)の配置で存在してもよい。IUPAC命名法による立体異性体の絶対立体配置(R)および(S)の命名は、置換基の性質と順位付け規則の方法の適用に依存する。したがって、式(I)の化合物は以下のエナンチオマー立体配置のいずれで存在してもよい:
【化5】
【0050】
好ましい側面では、式(I)の化合物は以下の絶対立体化学配置をもつ:
【化6】
【0051】
別の好ましい側面では、式(I)の化合物は以下の絶対立体化学配置をもつ:
【化7】
【0052】
式(I)の化合物のこれらの(R)および(S)立体異性体の個々の形態(すなわち式(I)(i)、式(I)(ii)、またはそれらの混合物)の各々が本発明の範囲に包含される。式(I)の化合物を単一の立体異性体として分離する場合、その化合物は少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%(たとえば96%、97%、98%、99%、または100%)のエナンチオマー過剰率で存在してもよい。
【0053】
本発明はさらに、式(I)の化合物のすべての薬学的に許容される同位体標識化合物(isotopic variations)を包含する。同位体標識化合物は、少なくとも1個の原子が、同じ原子番号ではあるが自然界で通常みられるものとは異なる原子質量をもつ原子で置換されている化合物と定義される。
【0054】
本発明の化合物に包含される好適な同位体の例としては、2Hや3Hなどの水素同位体、13Cや14Cなどの炭素同位体、15Nなどの窒素同位体、17Oや18Oなどの酸素同位体、32Pなどのリン同位体、35Sなどの硫黄同位体、18Fなどのフッ素同位体、および36Clなどの塩素同位体が挙げられる。
【0055】
本発明の化合物を重水素などの同位体で置換すると、代謝安定性が上がることによる特定の治療上の利点(たとえば生体内半減期の延長または必要用量の減少)を得られる可能性があるため、状況によっては好ましい可能性がある。
【0056】
式(I)の化合物の特定の同位体標識化合物(たとえば放射性同位体を導入したもの)は、薬物および/または基質組織の分布の研究に有用である。放射性同位体トリチウムおよび14Cは導入が容易であることや即時の手段で検出できることから、この目的に特に有用である。
【0057】
式(I)の同位体標識化合物は一般に、当業者に公知の従来技術または添付の実施例および調製の項に記載されているのと類似の方法により、好適な試薬の適切な同位体標識化合物を用いて調製できる。
式(I)の化合物は、脱ユビキチン化酵素USP30の阻害剤である。
【0058】
さらなる側面によれば、本発明は、医薬として使用するための、本明細書に定義される式(I)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩を提供する。
【0059】
さらなる側面によれば、本発明は、USP30の阻害が有益な作用をもたらすと知られているか有益な作用を示す可能性のある哺乳動物の障害または疾患を治療する方法を提供する。この方法は、前記哺乳動物に治療に有効な量の本明細書に定義される式(I)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0060】
さらなる側面によれば、本発明は、USP30の阻害が有益な作用をもたらすと知られているか有益な作用を示す可能性のある障害または疾患を治療するための医薬の調製における、本明細書に定義される式(I)の化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0061】
USP30の活性から利益を受ける障害または疾患は、ミトコンドリアの機能不全を伴う疾患およびがんから選択される。
【0062】
本発明のすべての側面の好ましい一態様において、USP30の活性から利益を受ける障害または疾患は、ミトコンドリアの機能不全を伴う疾患である。
【0063】
ミトコンドリアの機能不全は、体内の赤血球以外のすべての細胞に存在する特殊な区画であるミトコンドリアの異常によって起こる。ミトコンドリアが機能しなくなると、細胞内で生成されるエネルギーが次第に減少し、結果として細胞傷害または細胞死すら起こる。この過程が全身で繰り返された場合、これが起こっている患者の生命は著しく損なわれる。ミトコンドリアの疾患は、非常にエネルギーを要する器官(脳、心臓、肝臓、骨格筋、腎臓、内分泌系および呼吸器系など)に最もよく現れる。
【0064】
ミトコンドリアの機能不全を伴う疾患は、マイトファジー異常を伴う疾患、ミトコンドリアDNAの変異を伴う疾患、ミトコンドリアの酸化ストレスを伴う疾患、ミトコンドリアの膜電位、ミトコンドリアの新生の異常を伴う疾患、ミトコンドリアの形状または形態の異常を伴う疾患、およびリソソーム蓄積異常を伴う疾患から選択されてもよい。
【0065】
具体的には、ミトコンドリアの機能不全を伴う疾患は、神経変性疾患;多発性硬化症(MS);ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様(MELAS)症候群;レーベル遺伝性視神経症(LHON);がん(たとえば、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、腎がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頚部がん、膵臓がん、脳がん、黒色腫、骨がんまたは他の組織器官のがん、および血液細胞のがん(リンパ腫、白血病など)、多発性骨髄腫、大腸がん、非小細胞肺がんなど);神経障害;運動失調;網膜色素変性症;母性遺伝性リー症候群(NARP-MILS);ダノン病;糖尿病;糖尿病性腎症;代謝障害;心不全;心筋梗塞を引き起こす虚血性心疾患;精神病(たとえば、統合失調症);多種スルファターゼ欠損症(MSD);ムコ脂質症II型(ML-II);ムコ脂質症III型(ML-III);ムコ脂質症IV型(ML-IV);GM1ガングリオシド蓄積症(GM1);神経セロイドリポフスチン沈着症(NCL1);アルパース病;バース症候群; β酸化異常;カルニチン-アシル-カルニチン欠乏症;カルニチン欠乏症;クレアチン欠乏症候群;補酵素Q10欠乏症;複合体I欠損症;複合体II欠損症;複合体III欠損症;複合体IV欠損症;複合体V欠損症;チトクロムc酸化酵素(COX)欠損症;慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO);カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)I欠損症;カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)II欠損症;グルタル酸尿症II型;カーンズ・セイヤー症候群;乳酸アシドーシス;長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(LCHAD);リー病または症候群;乳児致死性心筋症(LIC);ルフト病;グルタル酸尿症II型;中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症(MCAD);赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん(MERRF)症候群;ミトコンドリア細胞症;ミトコンドリア劣性運動失調症候群;ミトコンドリアDNA欠乏症候群;ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症(myoneurogastointestinal disorder and encephalopathy);ピアソン症候群;ピルビン酸脱水酵素欠損症;ピルビン酸カルボキシ基転移酵素欠損症;POLG変異;中鎖/短鎖3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(M/SCHAD)欠損症;極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症;ならびに加齢に伴う認知機能や筋力の低下から選択されてもよい。
【0066】
ミトコンドリアの機能不全を伴う疾患は、CNS障害、たとえば神経変性疾患であってもよい。
【0067】
神経変性疾患としては、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、虚血、脳卒中、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
特に、本発明の化合物はパーキンソン病の治療に有用となり得る。パーキンソン病としては、αシヌクレイン、パーキン、およびPINK1の変異に関連するPD、パーキンが変異している常染色体劣性若年性パーキンソン病(AR-JP)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0069】
本明細書に記載されている本発明の化合物またはその医薬組成物をミトコンドリアの機能不全を伴う疾患の治療に用いる場合、1種以上の添加剤と組み合わせてもよい。化合物は、レボドパ、ドーパミン作用薬、モノアミン酸化酵素(MAO)B阻害薬、カテコールO-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬、抗コリン薬、リルゾール、アマンタジン、コリンエステラーゼ阻害薬、メマンチン、テトラベナジン、抗精神病薬、ジアゼパム、クロナゼパム、抗うつ薬、および抗けいれん薬から選択される1種以上の添加剤と組み合わせられてもよい。
【0070】
本発明のすべての側面の別の好ましい態様では、USP30の活性から利益を受ける障害または疾患は、がんである。がんはミトコンドリアの機能不全と関連する可能性がある。好ましいがんとしては、たとえば乳がん、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、腎がん、胃がん、結腸がん、精巣がん、頭頚部がん、膵臓がん、脳がん、黒色腫、骨がん、または他の組織器官のがん、血液細胞のがん(リンパ腫、白血病など)、多発性骨髄腫、大腸がん、および非小細胞肺がんが挙げられる。
【0071】
特に、本発明の化合物は、アポトーシス経路が調節不全であるがんや、より詳細にはBCL-2ファミリーのタンパク質が変異、過剰発現または低発現しているがんの治療に有用となる可能性がある。
【0072】
「治療」という記載は根治、対症、および予防治療を包含し、寛解、症状の緩和、一時的または持続的基準での症状の原因の除去、あるいは指定された障害または疾患の症状の出現の予防または遅延のための手段を包含する。本発明の化合物は、ヒトおよびその他の哺乳動物の治療に有用である。
【0073】
さらなる側面によれば、本発明は、本明細書に定義される式(I)の化合物、あるいは前記化合物または互変異性体の薬学的に許容される塩を薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含有する医薬組成物を提供する。
【0074】
本発明の医薬組成物には、任意の薬学的に許容される担体、補助剤、または溶媒と組み合わせられた本発明の化合物のいずれも包含される。薬学的に許容される担体の例は当業者に公知であり、投与方法や剤形の性質に応じて、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、着香剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤、および分散剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。組成物は、たとえば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、トローチ剤類、坐剤、シロップ剤、および液剤(懸濁剤および溶液剤など)の形態であってもよい。本発明に関して、「医薬組成物」という用語は、活性薬剤に加えて1種以上の薬学的に許容される担体を含有する組成物を意味する。この組成物は、投与方法や剤形の性質に応じて、たとえば、希釈剤、補助剤、賦形剤、溶媒、保存剤、充填剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、着香剤、芳香剤、抗菌剤、抗真菌剤、滑沢剤、および分散剤から選択される成分をさらに含んでいてもよい。
【0075】
本明細書に記載の本発明の化合物またはその医薬組成物は、単独で用いられてもよいし1種以上の付加的な医薬品と併用されてもよい。化合物は付加的な抗腫瘍治療薬(たとえば化学療法薬)または他の調節タンパク質の阻害剤と併用されてもよい。一態様では、付加的な抗腫瘍治療薬はBH-3模倣体である。さらなる態様では、BH-3模倣体はABT-737、ABT-199、ABT-263、およびオバトクラキスのうちの1種以上から選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。さらなる態様では、付加的な抗腫瘍剤は化学療法剤である。化学療法剤は、オラパリブ、マイトマイシンC、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、電離放射線(IR)、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、テモゾロミド、タキサン、5-フルオロピリミジン、ゲムシタビン、およびドキソルビシンから選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明の医薬組成物は、経口投与、非経口投与、局所投与、吸入投与、鼻腔内投与、直腸投与、膣内投与、眼内投与、耳内投与など、好適な有効性の任意の方法で投与されてもよい。本発明の化合物の送達に適した医薬組成物およびその調製方法は当業者に容易に明らかになる。このような組成物およびその調製方法は、たとえば"Remington's Pharmaceutical Sciences", 19th Edition (Mack Publishing Company, 1995)に見られる。
(経口投与)
【0077】
本発明の化合物は経口投与されてもよい。経口投与は、化合物が胃腸管に入るための嚥下を含んでもよく、あるいは化合物が口から血液へ直接入る口腔投与または舌下投与を採用してもよい。
【0078】
経口投与に適した製剤としては、錠剤などの固形剤、微粒子、液体、または粉体を含有するカプセル剤、トローチ剤類(液体を充填したものを含む)、咀嚼剤、多粒子および微粒子剤、ゲル剤、フィルム剤(粘膜接着剤を含む)、卵形状製剤(ovule)、スプレー剤、ならびに液剤が挙げられる。
【0079】
液剤としては、懸濁液、溶液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられる。このような製剤は軟カプセル剤または硬カプセル剤の充填剤として用いられてもよく、典型的には担体(たとえば水、エタノール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または好適な油)と、1種以上の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。たとえば小袋から固体を再構成することによって液剤を調製してもよい。
【0080】
本発明の化合物は、Liang, ChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents(治療特許に関する専門家の意見),11 (6), 981-986 (2001)に記載されているような速溶解性・速崩壊性の剤形で用いられてもよい。
【0081】
典型的な錠剤は、製剤化学者に公知の標準的な方法、たとえば直接圧縮、造粒(乾式、湿式、または溶融)、溶融凝固、または押出によって調製できる。錠剤は1つ以上の層を含んでもよく、コーティングされていてもされていなくてもよい。
【0082】
経口投与に適した賦形剤の例としては、担体(たとえば、セルロース、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、マンニトール、およびクエン酸ナトリウム)、造粒結合剤(たとえば、ポリビニルピロリジン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびゼラチン)、崩壊剤(たとえば、グリコール酸ナトリウムでんぷん、およびケイ酸塩類)、滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸)、湿潤剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム)、保存剤、酸化防止剤、着香剤、ならびに着色剤が挙げられる。
【0083】
経口投与用の固形剤は、即時放出および/または放出調節されるように製剤されてもよい。放出調節製剤としては、放出遅延製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、二段階徐放性製剤、標的放出製剤、およびプログラム放出製剤が挙げられる。好適な放出調節技術(高エネルギー分散、浸透圧および被覆粒子など)の詳細についてはVerma et al, Pharmaceutical Technology On-line, 25 (2), 1-14 (2001)に記載されている。他の放出調節製剤については、米国特許第6,106,864号に記載されている。
(非経口投与)
【0084】
本発明の化合物は、血液、筋肉、または内臓に直接投与されてもよい。好適な非経口投与手段としては、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、髄腔内投与、脳室内投与、尿道内投与、胸骨内投与、頭蓋内投与、筋肉内投与、および皮下投与が挙げられる。非経口投与に適した装置としては、針(マイクロニードルを含む)式注射器、無針注射器、および輸液法が挙げられる。
【0085】
非経口製剤は一般に、塩類、糖類および緩衝剤(好ましくはpH3~9)などの賦形剤を含有してもよい水溶液であるが、用途によっては、滅菌した非水性溶液、あるいは好適な溶媒(発熱物質を含まない滅菌水など)と共に使用される乾燥形態として、より好適に製剤されてもよい。
【0086】
滅菌条件での、たとえば凍結乾燥による非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な製薬技術を用いて容易に達成できる。
【0087】
非経口溶液剤の調製に用いられる式(I)の化合物の溶解度を、たとえば高エネルギー噴霧乾燥させた分散系の使用(WO01/47495を参照のこと)などの好適な処理、および/または溶解促進剤の使用などの適切な製剤技術を用いて向上させてもよい。
【0088】
非経口投与用の製剤は、即時放出および/または放出調節されるように製剤されてもよい。放出調節製剤としては、放出遅延製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、二段階徐放性製剤、標的放出製剤、およびプログラム放出製剤が挙げられる。
【0089】
本発明の医薬組成物は、血液脳関門をバイパスするための当技術分野で公知の組成物および方法も含み、すなわち脳に直接注入できる。注入に適した領域としては、大脳皮質、小脳、中脳、脳幹、視床下部、脊髄および脳室組織、ならびに頸動脈小体および副腎髄質などの末梢神経系(PNS)の領域が挙げられる。
(用量)
【0090】
化合物の有効投与量の程度は、当然ながら、治療される疾患の重症度や投与経路の性質によって変動する。適切な用量の選択は医師に従う。一日の投与量の範囲は、ヒトおよびヒト以外の動物の体重1kgあたり約10μg~約100mgであり、一般に一回の投与につき体重1kgあたり約10μg~30mgであってもよい。上記の投与量を一日に1~3回投与してもよい。
【0091】
たとえば、経口投与は体重1kgあたり5mg~1000mg(たとえば5~500mg)の一日の総投与量を必要としてもよく、静脈投与は体重1kgあたりわずか0.01~30mg(たとえば0.1~10mg/kg、より好ましくは0.1~1mg/kg)を必要としてもよい。一日の総投与量は一回で投与されてもよいし分割投与されてもよい。
【0092】
当業者は、特定の疾患の治療では本発明の化合物を「要求事項」に応じて(すなわち必要に応じて)単回投与として与えてもよいことも理解している。
(合成方法)
【0093】
式(I)の化合物は、以下の一般的な反応スキームおよび代表例に記載の方法で調製されてもよい。適切な場合、スキーム内の個々の変換を別の順序で行ってもよい。
【0094】
さらなる側面では、本発明は、本明細書に[(Ia)、(Ib)、(Ic)]と定義される式(I)の化合物を調製する方法であって、適切な式(IVa)、(IVb)、または(IVc)の化合物(式中、XはOHである)を式(V)のアミン(式中、PGはBOCまたはCBZなどの保護基である)と反応させて式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)のアミドを得ることを含む方法を提供する(スキーム1)。このアミドカップリング反応は、標準的な方法、たとえば、カップリング試薬(DCC、HATU、HBTU、EDCなど)を用いる反応、または混合無水物を介して実施できる。あるいは、酸(IVa)、(IVb)、または(IVc)(式中、XはOH)をSOCl2、PCl3、またはPCl5を用いて酸塩化物(IVa)、(IVb)、または(IVc)(式中、XはCl)に変換した後、好ましくは好適な溶媒中、好適な塩基の存在下でアミン(V)と反応させてもよい。あるいは、化合物(IVa)、(IVb)、または(IVc)(式中、Xはエステルを形成する)をアミン(V)と、好ましくは好適な溶媒中で、直接反応させてもよい。
【0095】
また、式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)の1つの化合物を、たとえばブロモ-アリールまたはブロモ-ヘテロアリール基の鈴木カップリングによって式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)の別の化合物に変換してもよい。式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc)の化合物を標準的な方法で脱保護してアミン(IIa)、(IIb)、または(IIc)を得て、次いでこれを臭化シアンと反応させ対応する式(I)の化合物を得てもよい。スキーム1は、式(Ia)の化合物にあてはめた場合に使用できる、式(IVa)の化合物を用いた1つの方法を示す。この方法は、対応する適切な式(IVb)および(IVc)の化合物を用いた式(Ib)および式(Ic)の化合物の調製にも同等にあてはまる。
【化8】
【0096】
さらなる側面では、本発明は、式(IIa)、(IIIa)、(IIb)、(IIIb)、(IIc)、および(IIIc)から選択される化合物、その互変異性体、あるいは前記化合物または互変異性体の塩を提供する:
【化9】
(式中、PGは保護基であり、好ましくはBOCまたはCBZであり、m、n、R
1、R
1a、R
1b、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は請求項1~16のいずれか一項に定義されたとおりである)。
【0097】
さらなる好ましい側面では、本発明は、本明細書に記載の式(IIa)、(IIIa)、(IIb)、(IIIb)、(IIc)、および(IIIc)から選択される、式(I)の化合物に対応する絶対立体化学配置の化合物とその好ましい態様を提供する。
【0098】
さらなる代表的な化合物およびその立体異性体、ラセミ混合物、ジアステレオマー、およびエナンチオマーを、一般的なスキームに従い調製された中間体、ならびに当業者に公知のその他の材料、化合物、および試薬を用いて調製されてもよい。エナンチオマーは、たとえばカラムCHIRALART SA 250 x 4.6 mm, 5 μmを用いたキラルHPLCなどの標準的な方法で分離されてもよい。
【0099】
本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。以下の略語および定義を使用する。
(略語)
ACN:アセトニトリル
d:二重項(NMR信号)
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:N,N-ジイソプロピルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMS:硫化ジメチル
DMSO:ジメチルスルホキシド
EDC:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ES:電気スプレー
EtOAc:酢酸エチル
h:時
HATU:1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート
LCMS:液体クロマトグラフィー-質量分析
m:多重項(NMR信号)
MeOH:メタノール
min:分
NMR:核磁気共鳴
rt:室温
s:一重項(NMR信号)
SFC:超臨界流体クロマトグラフィー
TBD:1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
(分析方法)
LCMS方法:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
長時間LCMS方法
【表6】
【表7】
【表8】
【実施例】
【0100】
(実施例1)
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド
【化10】
【0101】
工程a:3-ヨードベンゾニトリル(0.500g、2.18mmol)と1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル(CAS番号4928-88-5;0.277g、2.18mmol)のDMSO(6mL)撹拌溶液に、L-プロリン(0.050g、0.44mmol)と、Cu(I)I(0.083g、0.44mmol)と、K2CO3(0.602g、4.34mmol)を室温で添加した。この溶液を80℃で18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、氷水(100mL)に注ぎ、EtOAcで抽出した(50mLで4回)。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(化合物を35%EtOAc・ヘキサン溶液で溶離)で精製して1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル(0.105g、0.46mmol)を得た。LCMS:方法H、1.517分、MS:ES+229.19。
【0102】
工程b:1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキシル酸メチル(0.100g、0.44mmol)と(R)-3-(アミノメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(CAS番号199174-29-3;0.106g、0.53mmol)のTHF(4mL)撹拌溶液に、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(CAS番号5807-14-7;0.092g、0.66mmol)のTHF(1mL)溶液を0℃で添加した。得られた混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を水(50mL)に注ぎ、EtOAcで抽出した(50mLで2回)。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(化合物を5%MeOH・DCM溶液で溶離)で精製して(R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.083g、0.21mmol)を得た。LCMS:方法H、1.789分、MS:ES+[M-100]297.26。
【0103】
工程c:(R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)-メチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.075g、0.189mmol)のDCM(4mL)撹拌溶液に、TFA(0.37mL)を0℃で添加し、1.5時間撹拌した。揮発性物質を減圧で留去し、残留物をDCMで共沸蒸留し(50mLで3回)、高真空で乾燥して(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドTFA塩(0.110g、粗生成物)を得た。LCMS:方法H、1.331分、MS:ES+297.26。
【0104】
工程d:(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドのTFA塩(0.100g、前の工程で得た粗体)のTHF(5mL)撹拌溶液にK2CO3(0.100g、0.73mmol)を0℃で添加した。0℃で15分間撹拌した後、臭化シアン(0.026g、0.24mmol)を添加し、さらに1時間撹拌を続けた。得られた混合物を水(50mL)に注ぎ、EtOAcで抽出した(50mLで2回)。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(化合物を95%EtOAc・ヘキサン溶液で溶離)で精製して(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(0.030g、0.09mmol)を得た。LCMS:方法J、2.767分、MS:ES-320.2;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.49 (s, 1 H), 8.93 - 8.96 (t, J= 6.0 Hz, 1 H), 8.44 (s, 1 H), 8.23 - 8.25 (m, 1 H), 7.93 - 7.95 (d, J= 7.6 Hz 1 H), 7.78 - 7.82 (m, 1 H), 3.34 - 3.42 (m, 3 H), 3.14 - 3.29 (m, 4 H), 1.89 - 1.94 (m, 1 H), 1.63 - 1.68 (m, 1 H)。
(実施例2)
【0105】
(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド
【化11】
【0106】
工程a:(R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)-メチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(実施例1の工程aおよびbに記載;0.100g、0.25mmol)のDMF(2mL)撹拌溶液に、NaH(60%の鉱油溶液;0.008g、0.30mmol)を0℃で少しずつ添加した。15分間撹拌した後、ヨウ化メチル(0.035g、0.25mmol)を添加し、得られた反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応物を氷水(50mL)に注ぎ、EtOAcで抽出した(50mLで2回)。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(2%MeOH・DCM溶液で溶離)で精製して(R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.095g、0.23mmol)を得た。LCMS:方法H、1.755分、MS:ES+411.4。
【0107】
工程b:(R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)メチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.090g、0.22mmol)のDCM(5mL)撹拌溶液にTFA(0.45mL)を0℃で添加した。反応混合物を0℃から室温で1.5時間撹拌した。得られた反応混合物を減圧で濃縮した。得られた残留物をDCMで共沸蒸留(50mLで3回)し、高真空で乾燥して(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-メチル-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドのTFA塩(0.110g、粗体)を得た。LCMS:方法H、1.325分、MS:ES+311.28。
【0108】
工程c:(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-メチル-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,4-トリアゾ-ル-3-カルボキサミドTFA塩(0.100g、前工程の粗生成物)のTHF(5mL)撹拌溶液にK2CO3(0.097g、0.71mmol)を0℃で添加した。10分間撹拌した後、臭化シアン(0.024g、0.24mmol)を添加し、室温で1時間撹拌を続けた。得られた混合物を水(50mL)に注ぎ、EtOAcで抽出した(50mLで2回)。合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(化合物を2%MeOH・DCM溶液で溶離)によって精製して(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-N-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(0.028g、0.08mmol)を得た。LCMS:方法J、2.723分、MS:ES+336.15;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.48 (s, 1 H), 8.42 - 8.43 (d, J= 4.0 Hz, 1H), 8.19 - 8.23 (m, 1H), 7.92 - 7.94 (d, J= 8.0 Hz, 1 H), 7.77 - 7.81 (t, J= 8 Hz 1 H), 3.44 - 3.58 (m, 3 H), 3.36 - 3.41 (m, 1 H), 3.23 - 3.27 (m, 1 H), 2.99 - 3.10 (m, 4 H), 2.59 - 2.65 (m, 1 H), 1.86 - 1.89 (m, 1 H), 1.64 - 1.69 (m, 1 H)。
(実施例3)
【0109】
N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド
【化12】
本明細書に記載されているのと類似の手順で調製した。
(実施例4)
【0110】
N-(((2R,3R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドとN-(((2R,3S)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド
【化13】
【0111】
工程a:アセト酢酸メチル(200g、1724.13mmol)と1,2-ジブロモエタン(179.2mL、2068.95mmol)のアセトン(2000mL)溶液にK2CO3(356.8g、2586.19mmol)を室温で添加した。反応混合物を70℃で24時間加熱した。得られた混合物を室温まで冷却し、セライトで濾過し、アセトンで洗浄した(100mLで2回)。濾液を減圧で濃縮して油状の粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(4%EtOAc・ヘキサン溶液)で精製して1-アセチルシクロプロパン-1-カルボン酸メチル(100g、704.22mmol)を得た。LCMS:方法C、1.47分、MS:ES+143.14。
【0112】
工程b:1-アセチルシクロプロパン-1-カルボン酸メチル(82.0g、577.46mmol)と(R)-1-フェニルエタン-1-アミン(69.87g、577.46mmol)のトルエン(820mL)溶液をディーン・スタークガラス装置に入れた。反応混合物を130℃に24時間加熱した(放出された水をディーン・スターク装置で集めた)。反応混合物を室温まで冷却し、減圧で濃縮した。得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(1.5%EtOAc・ヘキサン溶液で溶離)で精製して(R)-2-メチル-1-(1-フェニルエチル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸メチル(51.0g、208.16mmol)を得た。LCMS:方法C、1.409分、MS:ES+246.40。
【0113】
工程c:NaBH
4(35.5g、936.73mmol)に酢酸(765mL、15倍容量)を0℃で慎重に滴加し、0℃で45分間撹拌した。次いで、(R)-2-メチル-1-(1-フェニルエチル)-4,5-ジヒドロ-1H-ピロール-3-カルボン酸メチル(51.0g、208.16mmol)のアセトニトリル(765mL)溶液を0℃で添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。得られた混合物を水で蒸留し(4000mL)、固体Na
2CO
3でアルカリ性にした。水層をEtOAcで抽出した(3000mLで2回)。合わせた有機相を回収し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。得られた残留物をヘキサンに溶解し、不溶性の固体を濾過により除去した。濾液を減圧で蒸発させ、ジアステレオマーの混合物(51.0g、208.16mmol)を得た。LCMS:方法D-NH
3、28.96分(92%、主要なジアステレオマー)および29.114分(7%、少ないほうのジアステレオマー)、MS:ES+248.2。ジアステレオマー混合物をn-ヘキサン(500mL)に溶解して透明な溶液を得た。これを-78℃で2時間撹拌した。得られた沈殿物を濾過により除去し、冷ヘキサンで洗浄して(2R,3R)-2-メチル-1-((R)-1-フェニルエチル)ピロリジン-3-カルボン酸メチル(28g、113.36mmol)を得た。LCMS:方法D-NH
3、28.819分、方法D-FA:12.098分、MS:ES+248.2;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 7.29 - 7.35 (m, 4 H), 7.22 - 7.24 (m, 1 H), 3.60 (s, 3 H), 3.55 - 3.58 (m, 1 H), 3.34-3.37 (m, 1H) 3.06 - 3.09 (m, 1 H), 2.58 - 2.61 (m, 1 H), 2.43 - 2.47 (m, 1 H), 1.92 - 1.99 (m, 1 H), 1.80 - 1.83 (m, 1 H), 1.27 (d, J=6.71 Hz, 3 H), 0.71 (d, J=6.40 Hz, 3 H)。
工程d:
【化14】
【0114】
(2R,3R)-2-メチル-1-((R)-1-フェニルエチル)ピロリジン-3-カルボン酸メチル(26.0g、105.263mmol)をDBU(47.99g、315.723mmol)に溶解し、封管中で100℃で24時間加熱した。反応混合物を水(800mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(700mLで3回)。合わせた有機層を水(100mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧で蒸発させて粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(30%酢酸エチル・ヘキサン溶液で溶離)で精製して(2R,3R)-2-メチル-1-((R)-1-フェニルエチル)ピロリジン-3-カルボン酸メチルと(2R,3S)-2-メチル-1-((R)-1-フェニルエチル)ピロリジン-3-カルボン酸メチルの混合物(22g、89.068mmol)を得た。LCMS:方法D-FA、11.94分(21.72%)および12.68分(77.01%)、MS:ES+248.4;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm: 7.25-7.40 (m, 5H), 3.85-3.87 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.00-3.30 (m, 1H), 2.56-2.81 (m, 3H), 1.93-2.08 (m, 2H), 1.41 (m, 3H), 1.04 (dd, J=6.4 Hz, 3H)。
工程e:
【化15】
【0115】
(2R,3S)-2-メチル-1-((R)-1-フェニルエチル)ピロリジン-3-カルボン酸メチルと(2R,3R)-2-メチル-1-((R)-1-フェニルエチル)ピロリジン-3-カルボン酸メチル(10g、40.485mmol)のメタノール(100mL)溶液に、1g(10%パラジウム炭素(Pd/C)、含水率50%)を添加した。反応混合物を水素(40bar)下、室温で24時間撹拌した。得られた混合物をセライトで濾過し、メタノール(50mL)で洗浄し、濾液を減圧で濃縮して(2R,3S)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸メチルと(2R,3R)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸メチルの混合物(5.3g、37.062mmol)を得た。LCMS:方法C、0.31分、MS:ES+144.1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm: 3.74 (s, 3H), 3.40-3.43 (m, 1H), 3.10-3.20 (m, 2H), 2.53-2.63 (m, 1H), 2.13-2.19 (m, 2H), 2.04-2.08 (m, 1H), 1.37 (dd, J=6.4 Hz, 3H)。
工程f:
【化16】
【0116】
(2R,3S)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸メチルと(2R,3R)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸メチル(5.3g、37.062mmol)のTHF(53mL)溶液に、4-ジメチルアミノピリジン(0.53g、0.1w/w)と二炭酸ジ-tert-ブチル(9.69g、44.449mmol)を0℃でN
2流中で添加した。反応混合物が室温に温まるまで放置し、さらに16時間撹拌した。得られた混合物を水(200mL)で希釈し、酢酸エチルで抽出した(200mLで3回)。合わせた有機層を水(200mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧で蒸発させて粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(10%酢酸エチル・ヘキサン溶液で溶離)で精製して(2R,3S)-2-メチルピロリジン-1,3-ジカルボン酸1-(tert-ブチル)3-メチルと(2R,3R)-2-メチルピロリジン-1,3-ジカルボン酸1-(tert-ブチル)3-メチル(8.0g、32.92mmol)の混合物を得た。LCMS:方法C、1.665分、MS:ES+(-56)188;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm: 4.00-4.30 (m, 1H), 3.74 (s, 3H), 3.52-3.56 (m, 1H), 3.35-3.39 (m, 1H), 2.71-2.72 (m, 1H), 2.11-2.16 (m, 2H), 1.50 (s, 9H), 1.32 (dd, J=5.6 Hz, 3H)。
工程g:
【化17】
【0117】
(2R,3S)-2-メチルピロリジン-1,3-ジカルボン酸1-(tert-ブチル)3-メチルと(2R,3R)-2-メチルピロリジン-1,3-ジカルボン酸1-(tert-ブチル)3-メチル(8.0g、32.921mmol)のTHF:水(5:1)(12mL)溶液に水酸化リチウム一水和物(2.07g、49.381mmol)を0℃で添加した。得られた反応混合物を室温まで温め、6時間撹拌した。混合物を水(300mL)に注ぎ、酢酸エチルで洗浄した(300mLで3回)。水層を1MのHCl溶液(約200mL)で酸性にし、酢酸エチルで抽出した(300mLで3回)。合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、減圧で蒸発させて(2R,3R)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸と(2R,3S)-(tert-ブトキシカルボニル)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸の混合物(6.5g、28.384mmol)を得た。LCMS:方法D-AA、8.770分(18.63mmol)および9.105分(81.37分)、MS:ES+(-56)156.25;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 12.47 (s, 1H), 3.8 - 4.1 (m, 1H), 3.25-3.37 (m, 2H), 2.60-2.75(m, 1H), 2.05-2.12 (m, 1H), 1.89-1.97 (m, 1H), 1.40 (s, 9H), 1.18 (dd, J=5.6 Hz, 3H)。
工程h:
【化18】
【0118】
(2R,3R)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸と(2R,3S)-1-(tert-ブトキシカルボニル)-2-メチルピロリジン-3-カルボン酸(5.5g、24.017mmol)のTHF(50mL)溶液にEDC・HCl(5.50g、28.795mmol)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(3.67g、23.986mmol)を0℃でN
2流中で添加した。トリエチルアミン(16.16mL、120.087mmol)とNH
4Cl(6.42g、120.000mmol)を反応混合物に添加し、室温で16時間撹拌した。得られた反応混合物を飽和NaHCO
3溶液(400mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(400mLで3回)。合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥し、減圧で蒸発させて粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(2%MeOH・DCM溶液)で精製して(2R,3R)-3-カルバモイル-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルと(2R,3S)-3-カルバモイル-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(4.8g、21.056mmol)を得た。LCMS:方法C、1.380分、MS:ES+(-56)173.2;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm: 5.57 (br, 2H), 3.95-4.12 (m, 1H), 3.42-3.63 (m, 2H), 2.42-2.61(m, 1H), 2.09-2.11 (m, 2H), 1.47 (s, 9H), 1.30 (dd, J=5.6 Hz, 3H)。
工程i:
【化19】
【0119】
(2R,3R)-3-カルバモイル-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルと(2R,3S)-3-カルバモイル-2-メチルピロリジン-1-カルボキン酸tert-ブチル(4.8g、21.052mmol)のTHF(20mL)溶液に、BH
3・DMS(2MのTHF溶液)(15.78mL、31.57mmol)を0℃でN
2流中で滴加した。反応混合物を室温に温まるまで放置し、70℃で16時間撹拌した。次いで混合物を室温まで冷却し、メタノ-ル(50mL)を添加した。混合物をさらに80℃で2時間加熱した後、室温まで冷却し、1NのHCl溶液(240mL)で酸性にし、酢酸エチルで抽出した(400mLで3回)。水層を重炭酸ナトリウム溶液(50mL)でアルカリ性にし、酢酸エチルで抽出し(300mLで3回)、減圧で濃縮して(2R,3R)-3-(アミノメチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルと(2R,3S)-3-(アミノメチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.137g、0.640mmol)を得た。LCMS:方法C、1.322分、MS:ES-56+159.31;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 3.28-3.48 (m, 3H), 3.15-3.26 (m, 1H), 2.41-2.44 (m, 1H), 1.65-2.05 (m, 2H), 1.41-1.60 (m, 3H), 1.34 (s, 9H), 0.95 (dd, J=6.4 Hz, 3H)。
工程j:
【化20】
【0120】
1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸メチル(1.66g、13.1004mmol)と3-ヨードベンゾニトリル(2g、8.733mmol)のDMSO(10mL)撹拌溶液にK
2CO
3(3.6g、26.200mmol)を室温で添加した。反応混合物を15分かけてN
2置換した。L-プロリン(0.2g、1.746mmol)とCuI(0.33g、1.746mmol)を室温で添加し、混合物を85℃に16時間加熱した。次いで混合物を水(200mL)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した(100mLで2回)。水層を1MのHCl溶液(150mL)で酸性にし、酢酸エチルで抽出した(100mLで4回)。合わせた有機層を水(100mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧で蒸発させて1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸(0.522g、63.11mmol)を得た。LCMS:方法C、1.29分、MS:ES+215.23;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm: 12.8 (br, 1H), 7.35 (t, J=8 Hz, 1H), 7.02 (d, J=7.6 Hz, 1H), 6.83 (s, 1H), 6.77-6.80 (dd, J=8.4Hz, 2H)。
工程k:
【化21】
【0121】
1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボン酸(0.156g、0.728mmol)のTHF(7mL)溶液に、HATU(0.319g、0.841mmol)とDIPEA(0.232g、1.682mmol)を0℃でN
2流中で添加した。反応混合物を30分間撹拌し、(2R,3R)-3-(アミノメチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルと(2R,3S)-3-(アミノメチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.120g、0.560mmol)を添加した。反応混合物は透明な黄色の溶液になり、これを室温で16時間撹拌した。得られた反応混合物に水(100mL)を添加し、酢酸エチルで抽出した(25mLで3回)。合わせた有機層を飽和NaHCO
3溶液(100mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧で蒸発させて粗生成物を得た。これをコンビフラッシュ(Combi-flash)クロマトグラフィー(0.2%MeOH・DCM溶液で溶離)で精製して(2R,3R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)メチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルと(2R,3S)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)メチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.106g、0.258mmol)を得た。LCMS:方法C、1.627分、MS:ES+(-100)311.48。
工程l:
【化22】
【0122】
(2R,3S)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)メチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルと(2R,3R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)メチル)-2-メチルピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.103g、0.251mmol)のDCM(5mL)溶液にTFA(0.2mL、2.512mmol)を0℃でN
2雰囲気中で添加した。反応混合物を室温に温まるまで放置し、2時間撹拌した後に減圧で濃縮して1-(3-シアノフェニル)-N-(((2R,3R)-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩と1-(3-シアノフェニル)-N-(((2R,3S)-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.140g、0.267mmol)を得た。LCMS:方法C、1.286分、MS:ES+311.5。
工程m:
【化23】
【0123】
1-(3-シアノフェニル)-N-(((2R,3S)-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩と1-(3-シアノフェニル)-N-(((2R,3R)-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.139g、0.327mmol)のTHF(5mL)溶液にK2CO3(0.090g、0.654mmol)を添加し、混合物を10分間撹拌した。CNBr(0.034g、0.392mmol)を室温で添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。得られた反応混合物に水(50mL)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した(50mLで3回)。合わせた有機層を水(50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧で蒸発させて粗生成物を得た。この粗生成物をコンビフラッシュクロマトグラフィー(0.4%MeOH・DCM溶液で溶離)で精製してN-(((2R,3R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(0.052g、0.155mmol)を得た。これを分取TLC(3%MeOH・DCM溶液)、次いで分取HPLC(MeOH:ACN(0.1%アンモニアを使用))でさらに精製し、n-ペンテンを加えて研和(3mLで2回)してN-(((2R,3S)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミドとN-(((2R,3R)-1-シアノ-2-メチルピロリジン-3-イル)メチル)-1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド(0.0028g、0.0083mmol)を得た。LCMS:方法M、17.82(25.34%)、18.29分(68.88%)、MS:ES+336;MS:ES+336.2。
このジアステレオ異性体を標準的な方法で分離してもよい。
(実施例5)
【0124】
(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド
【化24】
【0125】
工程a:アジ化ナトリウム(0.424g、6.535 mmol)とCuSO4(0.086g、0.544mmol)のMeOH(8mL)撹拌溶液に、(3-シアノフェニル)ボロン酸(0.8g、5.445mmol)(CAS番号150255-96-2、Combi-Blocksより市販)を室温で添加した。反応混合物を室温で16時間撹拌した。プロピオン酸エチル(0.587g、5.99mmol)と、L-(+)-アスコルビン酸ナトリウム(0.539g、0.272mmol)の水(2mL)溶液を反応混合物に添加し、さらに1時間、室温で撹拌した。得られた反応混合物を濾過し、水で洗浄し(5mLで3回)、固体を減圧で乾燥して1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチル(0.25g、1.033mmol)を得た。LCMS:方法C、1.579分;MS:ES+243.4。
【0126】
工程b:1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチル(0.2g、0.826mmol)と(R)-3-(アミノメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.165g、0.826mmol)(CAS番号199174-29-3、Synthonixより市販)のTHF(5mL)撹拌溶液に、TBD(0.23g、1.653mmol)のTHF(1mL)溶液を0℃で滴加した。反応混合物を80℃で16時間加熱した。得られた反応混合物を水(40mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(40mLで3回)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。粗体をフラッシュカラムクロマトグラフィー(69%EtOAc・ヘキサン溶液)で精製して(R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド)-メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.13g、0.328mmol)を得た。LCMS:方法C、1.659分;MS:ES+397.48。
【0127】
工程c:(R)-3-((1-(3-シアノフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド)-メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.12g、0.303mmol)のDCM(3mL)撹拌溶液にTFA(1.2mL、10倍容量)を0℃で滴加し、室温で2時間撹拌した。得られた反応混合物を減圧で濃縮し、残留物を、DCMを加えてさらに濃縮して(5mLで3回)(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.14g、0.341mmol)を得た。LCMS:方法C、1.249分;MS:ES+297.43。
【0128】
工程d:(S)-1-(3-シアノフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.13g、0.317mmol)のTHF(4mL)撹拌溶液にK2CO3(0.131g、0.951mmol)を0℃で添加し、10分間撹拌した。臭化シアン(0.04g、0.380mmol)を少しずつ0℃で添加し室温で1.5時間撹拌した。得られた反応混合物を水(30mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(30mLで3回)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。粗体をフラッシュカラムクロマトグラフィー(72%EtOAc・ヘキサン溶液)で精製して(R)-1-(3-シアノフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(0.12g、0.374mmol)を得た。LCMS:方法H、2.97分、MS:ES-320.2;1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm: 8.61 (s, 1 H), 8.18 (s, 1 H), 8.05 (m, 1 H), 7.86 - 7.75 (m, 2 H), 7.41 - 7.36 (m, 1 H), 3.65 - 3.47 (m, 4 H), 3.31 - 3.27 (m, 1 H), 2.71 - 2.64 (m, 1H), 2.22 - 2.12 (m, 1 H), 1.87 -1.78 (m, 1 H)。キラルHPLC:純度100%、保持時間:5.67分。
(本発明の化合物に関するキラルSFC分析方法)
【0129】
キラル化合物をWatersのSFC InvestigatorとPDA(光ダイオードアレイ)検出器で分析した。カラムは、Chiralcel OX-H 250*4.6 mm(5ミクロン)を用いた。カラムの流速を4.0mL/分、ABPR(自動背圧調節器)を100barに設定した。移動相は(A)液体二酸化炭素(Liq.CO
2)および(B)0.1%ジエチルアミン・(プロパン-2-オール:アセトニトリル)(50:50)溶液を用いた。
UVスペクトルを246nmの吸収極大で記録した。濃度勾配比は以下のとおりであった。
【表9】
(実施例6)
【0130】
(R)-1-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド
【化25】
【0131】
工程a:1-(3-クロロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸(0.15g、0.671mmol)(CAS番号944901-58-0、Synthonixより市販)と(R)-3-(アミノメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.134g、0.671mmol)(CAS番号199174-29-3、Astatechより市販)のピリジン(5mL)撹拌溶液にPOCl3(0.307g、0.19mL、2.013mmol)を0℃で滴加し、0℃で40分間撹拌した。得られた反応混合物を冷水(30mL)に注ぎ、EtOAcで抽出した(30mLで3回)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(70%EtOAc・ヘキサン溶液)で精製して(R)-3-((1-(3-クロロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド)-メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.235g、0.580mmol)を得た。LCMS:方法C、1.734分、MS:ES+406.49。
【0132】
工程b:(R)-3-((1-(3-クロロフェニル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド)-メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.23g、0.568mmol)のDCM(5mL)撹拌溶液にTFA(2.3mL、10倍容量)を0℃で滴加し、室温で1.5時間撹拌した。得られた反応混合物を減圧で濃縮し、粗体を、DCMを加えてさらに濃縮(5mLで3回)して(S)-1-(3-クロロフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.35g、0.835mmol)を得た。LCMS:方法C、1.341分、MS:ES+306.36。
【0133】
工程c:(S)-1-(3-クロロフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.34g、0.811mmol)のTHF(7mL)撹拌溶液にK2CO3(0.335g、2.434mmol)を0℃で添加し、0℃で10分間撹拌した。臭化シアン(0.103g、0.974mmol)を反応混合物に少しずつ添加した。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。得られた反応混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(50mLで3回)。合わせた有機相をNa2SO4で乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(80%EtOAc・ヘキサン溶液)で精製して(R)-1-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)-メチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(0.13g、0.394mmol)を得た。LCMS:方法H、3.59分;MS:ES+331.10;1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ ppm: 9.38 (s, 1 H), 8.97 - 8.94 (m, 1H), 8.14(s, 1H), 8.01 - 7.99 (d, J= 8.0 Hz, 1 H), 7.69 - 7.61 (m, 2 H), 3.48 - 3.19 (m, 7 H), 2.00 - 1.92 (m, 1 H), 1.75 - 1.66 (m, 1 H)。キラルHPLC(先に示した方法):純度100%、保持時間:4.42分。
(実施例7)
【0134】
(R)-2-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド
【化26】
【0135】
工程a:2-(3-クロロフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸(0.15g、0.671mmol)(CAS番号90839-69-3、Enamineより市販)と(R)-3-(アミノメチル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.134g、0.671mmol)(CAS番号199174-29-3、Astatechより市販)のピリジン(3mL)撹拌溶液にPOCl3(0.307g、0.19mL、2.013mmol)を0℃で滴加し、混合物を30分間撹拌した。得られた反応混合物を水(100mL)に注ぎ、EtOAcで抽出した(50mLで3回)。合わせた有機相を水(100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。粗体をフラッシュカラムクロマトグラフィー(42%EtOAc・ヘキサン溶液)で精製して(R)-3-((2-(3-クロロフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド)-メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.175g、0.432mmol)を得た。LCMS:方法C、2.014分;MS:ES+350.38(M-56)。
【0136】
工程b:(R)-3-((2-(3-クロロフェニル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド)-メチル)-ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(0.17g、0.419mmol)のDCM(10mL)撹拌溶液にTFA(0.478g、0.3mL、4.197mmol)を0℃で滴加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。得られた反応混合物を減圧で濃縮し、粗体を、DCMを加えてさらに濃縮(5mLで3回)して(S)-2-(3-クロロフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.339g、0.809mmol)を得た。LCMS:方法C、1.374分;MS:ES+306.31。
【0137】
工程c:(S)-2-(3-クロロフェニル)-N-(ピロリジン-3-イルメチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(0.335g、0.799mmol)のTHF(10mL)溶液にK
2CO
3(0.22g、1.599mmol)を添加し、混合物を10分間0℃で撹拌した。臭化シアン(0.102g、0.959mmol)を反応混合物に少しずつ添加し、室温で45分間撹拌した。得られた反応混合物を水(50mL)で希釈し、EtOAcで抽出した(25mLで3回)。合わせた有機相を水(50mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、減圧で濾過・濃縮した。残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(45%EtOAc・ヘキサン溶液)を行いn-ヘキサンを加えて研和(15mLで2回)で精製して(R)-2-(3-クロロフェニル)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)-メチル)-2H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(0.094g、0.284mmol)を得た。LCMS:方法J、3.99分、MS:ES+331.4;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ ppm: 8.31 (s, 1 H), 8.17 (s, 1H), 8.05 - 8.03 (m, 1H), 7.52 - 7.44 (m, 2 H), 7.08 - 6.99 (m, 1 H), 3.65 - 3.47 (m, 5 H), 3.32 - 3.27 (m, 1 H), 2.73 - 2.66 (m, 1 H), 2.20 - 2.13 (m, 1 H), 1.88 - 1.79 (m, 1 H)。キラルHPLC:純度100%、保持時間:14.05分。キラル化合物をAgillent 1200シリーズのHPLCおよびPDA検出器で分析した。カラムは、Chiralcel OJ-H 250*4.6 mm(5ミクロン)を用いた。カラムの流速は1.0mL/分であった。移動相は(A)0.1%ジエチルアミン・ヘキサン溶液、および(B)0.1%ジエチルアミン・(プロパン-2-オール:メタノール)(50:50)溶液を用いた。UVスペクトルを272nmの吸収極大で記録した。濃度勾配の比率は以下のとおりであった。
【表10】
(実施例8)
【0138】
(R)-N-((1-シアノピロリジン-3-イル)メチル)-1-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド
【化27】
本明細書に記載されているのと類似の方法で調製できる。
(本発明の化合物の生物活性)
略語:
TAMRA:カルボキシテトラメチルローダミン
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応
PBS:リン酸緩衝生理食塩水
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
トリス:2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール
NP-40:ノニデットP-40、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール
BSA:ウシ血清アルブミン
PNS:末梢神経系
BH3:Bcl-2相同領域3
PTEN:ホスファターゼ・テンシン・ホモログ
(USP30の生物化学的IC50試験)
【0139】
ポリプロピレン製V字底96ウェルプレート(Greiner、#651201)で、50%DMSOで終濃度の21倍(終濃度100μMに対し2100μM)で希釈プレートを調製した。典型的な8点希釈系列は100、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03(最終)μMである。黒色384ウェルプレート(小容量、Greiner 784076)で、最終反応容量21μlで反応を2回実施した。50%DMSOまたは希釈された化合物の1μlをプレートに添加した。USP30を反応緩衝剤(40mMのトリス、pH7.5、0.005%のTween20、0.5mg/mlのBSA、5mMのβメルカプトエタノール)で希釈し0.05μl/ウェル相当にし、10μlの希釈USP30を化合物に添加した。酵素と化合物を室温で30分間保温した。イソ-ペプチド結合でユビキチンと連結されたTAMRA標識付きペプチド(50nM)を蛍光偏光基質として添加して反応を開始した。基質を添加して室温で2時間保温した後、すぐに反応物を測定した。Pherastar Plus (BMG Labtech)で測定を行った。励起波長λ:540nm;発光波長λ:590nm。
(USP30生化学的IC50試験における化合物例の活性)
範囲:
A*<0.01μM;
0.01<A<0.1μM;
0.1<B<1μM;
1<C<10μM;
D>10μM
【表11】