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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】回転子、回転子の製造方法及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20230112BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K15/03 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020069097
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021166440
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2021-01-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 啓介
(72)【発明者】
【氏名】平林 久男
(72)【発明者】
【氏名】池田 雅一
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102006049866(DE,A1)
【文献】特開2008-236895(JP,A)
【文献】特開昭61-46151(JP,A)
【文献】特開昭63-228949(JP,A)
【文献】特開2015-159639(JP,A)
【文献】特開2013-183537(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/278
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子ヨークの周面に周方向で複数に分割され表面が防錆処理された希土類磁石である平板状マグネットを所定間隔で備えた回転子であって、
硬化条件の異なる複数の接着剤が用いられ、前記平板状マグネットの接着面に所定時間で硬化する紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型の接着剤の組み合わせである第一接着剤が前記回転子ヨークの周面に周回して塗布された第一接着部と前記第一接着剤より硬化時間を要するが接着強度が高い熱硬化型の第二接着剤が塗布された第二接着部が隣接又は一部重なり合って形成され、前記回転子ヨークの湾曲面と前記平板状マグネットの平板面との間に形成される空隙部を前記第一接着剤及び前記第二接着剤の接着剤溜り部として接着剤層が形成されており、
前記回転子ヨークの周面に配置された複数の前記平板状マグネットが前記接着剤溜り部を含む前記第一接着剤の硬化により各平板状マグネット間を周方向に仕切る仕切り部が各々形成されて前記第一接着部に部分的に接着されて径方向及び軸方向に位置決めされ、前記接着剤溜り部を含む前記第二接着剤の熱硬化により複数の前記平板状マグネットどうしが前記仕切り部により周方向に所定間隔で仕切られたまま前記第一接着部及び前記第二接着部の全てが接着固定されていることを特徴とする回転子。
【請求項2】
前記平板状マグネットの接着面において第一接着剤が塗布される第一接着部と第二接着剤が塗布される第二接着部の面積は、第二接着部が第一接着部と同等かそれより大きい面積を有する請求項1記載の回転子。
【請求項3】
カップ状に形成される前記回転子ヨークの内周面に周方向に複数に分割された前記平板状マグネットを所定間隔で固定されたアウターロータ型モータの回転子である請求項1又は請求項2記載の回転子。
【請求項4】
円柱状に形成される前記回転子ヨークの外周面に周方向に複数に分割された前記平板状マグネットを所定間隔で固定されたインナーロータ型モータの回転子である請求項1又は請求項2記載の回転子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の回転子と、当該回転子の平板状マグネットに対向する固定子極歯を有する固定子と、を備えたことを特徴とするモータ。
【請求項6】
回転子ヨークの周面に所定時間で硬化する紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型の接着剤の組み合わせである第一接着剤を周回して塗布する工程と、
複数に分割され表面が防錆処理された希土類磁石である平板状マグネットの接着面に前記第一接着剤より硬化時間を要するが接着強度が高い熱硬化型の第二接着剤を各々塗布する工程と、
前記回転子ヨークの周面に前記平板状マグネットを径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材が環状に連結された位置決め部材を装着する工程と、
前記位置決め部材が装着された前記回転子ヨークの仕切り部材間に、前記平板状マグネットを前記仕切り部材間に位置決めして前記回転子ヨークの湾曲面と前記平板状マグネットの平板面との間に形成される空隙部を接着剤溜り部として前記第一接着剤及び前記第二接着剤を介して前記回転子ヨークの周面に所定間隔で配置する工程と、
前記第一接着剤を硬化させて各平板状マグネット間を周方向に仕切る仕切り部を各々形成するとともに前記平板状マグネットを第一接着部にて前記回転子ヨークに部分接着して径方向及び軸方向に位置決めする工程と、
前記回転子ヨークより前記位置決め部材を抜き取る工程と、
前記第二接着剤を熱硬化させて前記第一接着部と隣接又は一部重なり合って形成される第二接着部に接着し、前記平板状マグネットを前記第一接着部及び前記第二接着部の全てを前記回転子ヨークに対して接着固定する工程と、を含むことを特徴とする回転子の製造方法。
【請求項7】
筒状の前記回転子ヨークの内周面に前記平板状マグネットを径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材が環状連結部に連結された位置決め部材を装着する工程と、
複数の前記平板状マグネットを前記仕切り部材間に各々挿入すると共に第一接着剤及び第二接着剤を介して前記回転子ヨークの内周面に位置決めして所定間隔で配置する工程と、
前記回転子ヨークに回転子ハブ及び回転子軸を一体に組み付ける工程と、を含む請求項6記載のアウターロータ型モータの回転子の製造方法。
【請求項8】
回転子軸を中心とする前記回転子ヨークの外周面に前記平板状マグネットを径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材が環状連結部に連結された位置決め部材を装着する工程と、
複数の前記平板状マグネットを前記仕切り部材間に各々挿入すると共に前記第一接着剤及び前記第二接着剤を介して前記回転子ヨークの外周面に位置決めして所定間隔で配置する工程と、を含む請求項6記載のインナーロータ型モータの回転子の製造方法。
【請求項9】
複数の前記平板状マグネットは前記回転子ヨーク内に接着される前に着磁されているか若しくは前記回転子ヨーク内に接着された後に着磁される請求項6乃至請求項8のいずれかに記載の回転子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転子、回転子の製造方法及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高出力のモータにおいては、回転子マグネットとして、例えばネオジムなどを主成分とする希土類磁石が用いられる。希土類磁石を用いて多極マグネットを製造する場合、軽量化、低コスト化を実現するため環状マグネットではなく、1極ごとにセグメントに切り分けたセグメント磁石を用いている。しかしながら、セグメント磁石を回転子ヨークの周方向に所定位置に整列して配置固定することが難しい。希土類磁石は、フェライト系磁石に比べて磁力が強い反面錆び易いため耐食性を向上させるためニッケルめっきが施されて表面は防錆処理されている。そして、接着剤が塗布された湿潤時の接着面は摩擦力が低下するためマグネットが動きやすくなる。特にエポキシ樹脂系の接着剤を用いると、加熱硬化工程では接着剤の粘度が一時的に低下するため、マグネットの位置ずれを起こしやすくなる。マグネットが位置ずれすると、モータ特性が低下し、モータ振動や騒音が発生するおそれがある。
【0003】
そこで、例えばアウターロータ型モータの回転子において、図6Aに示すように、筒状の回転子ヨーク51に対して複数のセグメント磁石52の位置決め保持する位置決め部材53を用いて各セグメント磁石52を径方向及び軸方向に位置決めして接着固定している。位置決め部材53は、環状連結部53aより櫛歯状の仕切り部材53aが所定間隔で起立形成されている。環状連結部53aはセグメント磁石52の軸方向位置を規定し、仕切り部材53bが径方向位置を規定する。位置決め部材53を回転子ヨーク51の一端側開口部から内周面51aに沿って挿入した後、回転子ヨーク51の他端側開口部より接着剤54が塗布されたセグメント磁石52を仕切り部材53a間に挿入して接着する(図6A参照)。そして、接着剤54を加熱硬化させて回転子ヨーク51の内周面51aに位置決め部材53と共にセグメント磁石52が接着固定される(図6B参照)。この後、回転子軸55を一体に組み付けられた回転子ハブ56を、回転子ヨーク51に圧入固定し(図6C参照)、回転子軸55を中心に回転可能なアウターロータ型の回転子57が形成される(図6D参照)。
【0004】
同様に、インナーロータ型モータの回転子においては、回転子軸55を中心とする円柱状の回転子ヨーク51の外周面51bに位置決め部材53を軸方向一方側から装着した後、軸方向他方側より接着剤54が塗布されたセグメント磁石52を仕切り部材53a間に挿入して接着する(図7A参照)。そして、接着剤54を加熱硬化させて回転子ヨーク51の外周面51bに位置決め部材53と共にセグメント磁石52が接着固定されたインナーロータ型の回転子57が形成される(図7B参照)。
【0005】
また、アウターロータ型モータの回転子ヨーク内に装着されるマグネットの固定保持力を強め、組立て中のマグネットの倒れを防止して作業性を向上させる技術が提案されている。円筒状のロータ外筒の内面側に円筒状の内ケースが嵌め込まれ、ロータ外筒及び内ケースの間に円周方向に沿って複数のマグネットが仕切片を介して配設された樹脂製ホルダリングが一体に組み付けられている(特許文献1:特開2003-3046602号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-3046602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図6D及び図7B或いは特許文献1においては、回転子ヨーク51の内周面51a若しくは外周面51bに位置決め部材53と共にセグメント磁石52が接着固定されているので、本来不要である位置決め部材53は接着剤を加熱硬化させるとセグメント磁石52共に回転子ヨーク51に接着されてしまい、位置決め部材53を除去することができない。また、特許文献1の樹脂製ホルダリングは、マグネットを固定する必要不可欠な部材として使用されている。
このように、回転子57に本来不要である位置決め部材53や樹脂製ホルダリングを組み込むことは、部品点数が増大して製造コストが嵩むうえに、モータ重量も増加する。
【0008】
また、位置決め部材53を使用せずに、セグメント磁石52を回転子ヨーク51に接着固定するとすれば、図8Aに示すように、回転子ヨーク51の内周面にセグメント磁石52を位置決めするため凹部51aと凸部51bを周方向に交互に形成する必要がある。或いは図8Bに示すように、回転子ヨーク51に圧入される回転子ハブ56の外周縁部に櫛歯状の位置決め部材56aを設けておく必要がある。いずれの場合も、部品の加工工数が増えて製造コストが増大する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、部品点数を減らし製造コストを低減し軽量化を実現した回転子を提供し、板状マグネットの径方向及び軸方向の位置決めを行なって回転子ヨークに組み付けることができる組立性の良い回転子の製造方法を提供し、回転子を用いて、安価で組立性がよくモータ特性を維持することができるモータを提供することにある。
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
回転子ヨークの周面に周方向で複数に分割され表面が防錆処理された希土類磁石である平板状マグネットを所定間隔で備えた回転子であって、硬化条件の異なる複数の接着剤が用いられ、前記平板状マグネットの接着面に所定時間で硬化する紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型の接着剤の組み合わせである第一接着剤が前記回転子ヨークの周面に周回して塗布された第一接着部と前記第一接着剤より硬化時間を要するが接着強度が高い熱硬化型の第二接着剤が塗布された第二接着部が隣接又は一部重なり合って形成され、前記回転子ヨークの湾曲面と前記平板状マグネットの平板面との間に形成される空隙部を前記第一接着剤及び前記第二接着剤の接着剤溜り部として接着剤層が形成されており、前記回転子ヨークの周面に配置された複数の前記平板状マグネットが前記接着剤溜り部を含む前記第一接着剤の硬化により各平板状マグネット間を周方向に仕切る仕切り部が各々形成されて前記第一接着部に部分的に接着されて径方向及び軸方向に位置決めされ、前記接着剤溜り部を含む前記第二接着剤の熱硬化により複数の前記平板状マグネットどうしが前記仕切り部により周方向に所定間隔で仕切られたまま前記第一接着部及び前記第二接着部の全てが接着固定されていることを特徴とする。
【0011】
これにより、回転子ヨークの周面に位置決め部材を用いて径方向及び軸方向に位置決めして複数の平板状マグネットが所定間隔で配置され、紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型の接着剤の組み合わせである第一接着剤を硬化させることで各平板状マグネット間を仕切る仕切り部が各々形成され、平板状マグネットを回転子ヨークに対して周方向及び軸方向に位置決めして第一接着部で部分接着することができる。
また、第二接着剤を熱硬化させることで複数の平板状マグネットどうしが周方向に仕切り部を介して第一接着部及び第二接着部の全てで接着固定されるので、本来不要な位置決め部材を減らし製造コストを低減し回転子の軽量化を実現することができる。
また、複数の平板状マグネットを回転子ヨークに所定間隔で接着することができ、第一接着剤を硬化させた仕切り部を介して周方向に位置決めされているので、環状マグネットに比べてコストダウンを図り、回転子ヨークに対する径方向及び軸方向の平板状マグネットの位置精度が高く位置ずれすることなく組み付けることができる。
特に、平板状マグネットの接着のため回転子ヨーク側の格別な加工は不要となるため、製造コストが低減できるうえに、回転子ヨークの接着面である湾曲面との間に形成される空隙部を第一接着剤及び第二接着剤の接着剤溜り部として十分な接着スペースとして使用できるので、第一接着部及び第二接着部の接着強度を維持することができる。また、平板状マグネットを第一接着部に部分接着する際に紫外線照射する場合には、湾曲面と平板面の隙間から紫外線を照射する十分なスペースを確保することができる。
【0013】
前記板状マグネットの接着面において第一接着剤が塗布される第一接着部と第二接着剤が塗布される第二接着部の面積は、第二接着部が第一接着部と同等かそれより大きい面積を有することが好ましい。
これにより、板状マグネットの回転子ヨークに対する最終的な接着強度を維持することができる。
【0016】
カップ状に形成される前記回転子ヨークの内周面に周方向に複数に分割された前記板状マグネットを所定間隔で固定されたアウターロータ型モータの回転子であってもよいし、円柱状に形成される前記回転子ヨークの外周面に周方向に複数に分割された前記板状マグネットを所定間隔で固定されたインナーロータ型モータの回転子であってもよい。
環状マグネットに比べてコストダウンと軽量化を図り、アウターロータ型かインナーロータ型かを問わず回転子ヨークに対する径方向及び軸方向の板状マグネットの位置精度を高く組み付けることができる。
【0017】
モータにおいては、上述したいずれかの回転子と、当該回転子の板状マグネットに対向する固定子極歯を有する固定子と、を備えたことにより、安価、軽量で組立性がよくモータ特性を維持することができるアウターロータ型モータ又はインナーロータ型モータを提供することができる。
【0018】
回転子の製造方法においては、回転子ヨークの周面に所定時間で硬化する紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型の接着剤の組み合わせである第一接着剤を周回して塗布する工程と、複数に分割され表面が防錆処理された希土類磁石である平板状マグネットの接着面に前記第一接着剤より硬化時間を要するが接着強度が高い熱硬化型の第二接着剤を各々塗布する工程と、前記回転子ヨークの周面に前記平板状マグネットを径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材が環状に連結された位置決め部材を装着する工程と、前記位置決め部材が装着された前記回転子ヨークの仕切り部材間に、前記平板状マグネットを前記仕切り部材間に位置決めして前記回転子ヨークの湾曲面と前記平板状マグネットの平板面との間に形成される空隙部を接着剤溜り部として前記第一接着剤及び前記第二接着剤を介して前記回転子ヨークの周面に所定間隔で配置する工程と、前記第一接着剤を硬化させて各平板状マグネット間を周方向に仕切る仕切り部を各々形成するとともに前記平板状マグネットを第一接着部にて前記回転子ヨークに部分接着して径方向及び軸方向に位置決めする工程と、前記回転子ヨークより前記位置決め部材を抜き取る工程と、前記第二接着剤を熱硬化させて前記第一接着部と隣接又は一部重なり合って形成される第二接着部に接着し、前記平板状マグネットを前記第一接着部及び前記第二接着部の全てを前記回転子ヨークに対して接着固定する工程と、を含むことを特徴とする。
尚、平板状マグネットの接着面に塗布される第一接着剤及び第二接着剤は、接着面に直接塗布される場合と、予め被接着面に供給されて間接的に塗布される場合の双方含むものとする。
【0019】
上記回転子の製造方法によれば、硬化条件の異なる複数の接着剤を用いて紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型の接着剤の組み合わせである第一接着剤を回転子ヨークの周面に周回して塗布し、平板状マグネットに熱硬化型の第二接着剤を各々塗布するので、硬化条件が異なる接着剤の取り扱いが容易で作業効率よく塗布することができる。
また、回転子ヨークに径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材が環状に連結された位置決め部材を装着することで平板状マグネットを仕切り部材間で径方向及び軸方向に位置決めして配置することができる。
また、第一接着剤を硬化させると平板状マグネット間を仕切る仕切り部(第一接着剤硬化部)が形成されて平板状マグネットが回転子ヨークに対して周方向及び軸方向に位置決めされて第一接着部で部分接着することができる。この状態で回転子ヨークより位置決め部材を抜き取ることができ、本来不要である位置決め部材を省略することで部品点数を減らし製造コストを低減し回転子の軽量化を実現することができる。
また、位置決め部材を回転子ヨークから除去した後で、平板状マグネットに塗布された第二接着剤を熱硬化させて回転子ヨークに対して第一接着部及び第二接着部の全てを接着固定するので、平板状マグネットを位置精度よく接着固定することができる。
特に平板状マグネットの平板面と回転子ヨークの接着面である湾曲面との間に形成される空隙部を第一接着剤及び第二接着剤の接着剤溜り部として十分な接着スペースとして使用できるので、第一接着部及び第二接着部の接着強度を維持することができる。
【0020】
筒状の前記回転子ヨークの内周面に前記板状マグネットを径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材が環状連結部に連結された位置決め部材を装着する工程と、複数の前記板状マグネットを前記仕切り部材間に各々挿入すると共に前記第一接着剤及び前記第二接着剤を介して前記回転子ヨークの内周面に位置決めして所定間隔で配置する工程と、前記回転子ヨークに回転子ハブ及び回転子軸を一体に組み付ける工程と、を含むアウターロータ型モータの回転子の製造方法であってもよい。
【0021】
或いは、回転子軸を中心とする前記回転子ヨークの外周面に前記板状マグネットを径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材が環状連結部に連結された位置決め部材を装着する工程と、複数の前記板状マグネットを前記仕切り部材間に各々挿入すると共に前記第一接着剤及び前記第二接着剤を介して前記回転子ヨークの外周面に位置決めして所定間隔で配置する工程と、を含むインナーロータ型モータの回転子の製造方法であってもよい。
【0023】
複数の前記板状マグネットは前記回転子ヨーク内に接着される前に着磁されているか若しくは前記回転ヨーク内に接着された後に着磁されるようにしてもよい。
板状マグネットが予め着磁されていると、回転子ヨークに挿入する際に互いに吸引し合って吸着するおそれがあるが、位置決め部材を用いることにより、そのような不具合が発生することはない。
また、板状マグネットが回転子ヨーク内に接着された後に着磁されるようにすれば、板状マグネットの組み付け作業がし易くなり、熱減磁の影響も受けにくくなる。
【発明の効果】
【0024】
上述したように、部品点数を減らし製造コストを低減し軽量化を実現した回転子を提供することができる。
また、複数の板状マグネットの径方向及び軸方向の位置決めを行なって位置精度良く回転子ヨークに接着固定することができる組立性の良い回転子の製造方法を提供することができる。
また、上記回転子を用いて、安価で組立性がよくモータ特性を維持することができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】アウターロータ型モータの回転子の製造工程を示す説明図である。
図2図1に続くアウターロータ型モータの製造工程を示す説明図である。
図3】回転子ヨークに接着固定される板状マグネットの形態を示す説明図である。
図4】インナーロータ型モータの回転子の製造工程を示す説明図である。
図5】板状マグネットの第一接着部と第二接着部の接着領域を示す説明図である。
図6】従来のアウターロータ型モータの回転子の製法を示す工程図である。
図7】従来のインナーロータ型モータの回転子の製法を示す工程図である。
図8】回転子ヨーク及び回転ハブの必要構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る回転子、回転子の製造方法及びモータの一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、モータの概略構成について図1を参照して説明する。本実施例ではモータの一例としてアウターロータ型若しくは後述するインナーロータ型のDCブラシレスモータが用いられる。
【0027】
図2C,Dに示すように、DCブラシレスモータは、回転子1と固定子2を備えたアウターロータ型のモータMが用いられる。回転子1は、回転子軸3と連繋した回転子ハブ4が筒状の回転子ヨーク5(鉄、SUS等の磁性材)の一端開口部を閉止するように嵌め込まれてカップ状に形成されている。回転子ヨーク5の内周面5a(図2A参照)には周方向にN極若しくはS極に交互に着磁された複数に分割された板状マグネット6(回転子マグネット)が接着固定されている(図2B参照)。各板状マグネット6は、後述する固定子コア7の固定子極歯7bと対向配置されている。尚、板状マグネット6というときは、一定の厚みを有する磁性板材であれば平板状(図3B1参照)に限らず湾曲板(図3A1参照)等様々な形態を含むものとする。
【0028】
図2Cに示すように、固定子2は、軸受ハウジング2aの外周に固定子コア7が組み付けられている。固定子コア7は環状のコアバック部7aより複数の固定子極歯7bが径方向外向きに突設されている。固定子コア7は、電磁鋼板が積層プレスされた積層コアであっても磁性体金属ブロックよりなるブロックコアのいずれでもよい。固定子コア7は、固定子極歯7bの周囲がインシュレータ(絶縁ボビン)7cで被覆されており、インシュレータ7cの周囲にはコイル7dが各々巻かれている。回転子1は回転子軸3を固定子2の軸受ハウジング2aに挿入され、板状マグネット6が固定子コア7の固定子極歯7bと対向配置されて回転可能に組み付けられる(図2D参照)。
【0029】
ここで回転子1の構成について詳述する。
図3A3図3B3に示すように、筒状の回転子ヨーク5の内周面5aに周方向に複数に分割された板状マグネット6が所定間隔で隙間を空けて設けられている。板状マグネット6は表面が防錆処理された希土類磁石(例えばネオジム磁石)が用いられ、回転子ヨーク5と平板状の板状マグネット6間の隙間に、第一接着剤8a及び第二接着剤8bを介在させて接着されている。複数の板状マグネット6は、仕切り部(第一接着剤硬化部)8cにより周方向に仕切られて固定されている。これにより、後述するように、高出力の板状マグネット6を回転子ヨーク5に対して硬化条件の異なる複数の接着剤を用いて位置ずれすることなく接着固定することができる。
【0030】
各板状マグネット6の接着面6cには、図5A,Bに示すように、所定時間で硬化する第一接着剤8aが塗布される第一接着部6aと第一接着剤6aより硬化時間を要するが接着強度が高い接着固定用の第二接着剤8bが塗布される第二接着部6bが隣接して形成されている。第一接着剤8aは、例えば紫外線硬化型の接着剤若しくは紫外線硬化型の接着剤と嫌気硬化型の接着剤を混合したものが用いられ、第二接着剤8bは例えば熱硬化型のエポキシ樹脂系接着剤が用いられる。これにより、板状マグネット6と回転子ヨーク5との間に介在する第一接着剤8aに紫外線を照射するだけで第一接着剤8aが比較的短時間で硬化して板状マグネット6間を仕切る仕切り部(第一接着剤硬化部)8cが形成されるため、板状マグネット6は回転子ヨーク5に対して容易に部分接着することができる。さらには、第二接着剤8bを加熱硬化させる際に、板状マグネット6は仕切り部8cにより周方向に位置決めされ第一接着剤8aにより部分接着されているので、位置ずれすることはない。回転子ヨーク5の内周面5aに板状マグネット6が接着された状態を図3B3に示す。
【0031】
板状マグネット6は平板状であり、図3B2に示すように、回転子ヨーク5の湾曲する内周面5aと平板状の板状マグネット6の接着面6cとの間に形成される空隙部9に第一接着剤8a及び第二接着剤8bの接着剤溜り部が形成される。この場合には、板状マグネット6の格別な加工は不要となるため、製造コストが低減できるうえに、回転子ヨーク5の接着面である内周面5a(湾曲面)との間に形成される空隙部9を第一接着剤8a及び第二接着剤8bの接着剤溜り部として使用できるので、部分接着や固定接着の強度を維持することができる。特に部分接着の際に紫外線照射する場合には、内周面5a(湾曲面)と平板の板状グネット6の端面の隙間から紫外線を照射する十分なスペースを確保することができる。
【0032】
図5A,Bに示すように、板状マグネット6の接着面6cに形成される接着領域は、第二接着部6bが第一接着部6aと同等か(図5A参照)それより大きい面積(第二接着部6b>第一接着部6a)を有すること(図5B参照)が好ましい。これにより、板状マグネット6の回転子ヨーク5に対する接着強度を維持することができる。
【0033】
上述したように、第一接着剤8aは紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型接着剤を混合したものが用いられ、第二接着剤8bは熱硬化型のエポキシ樹脂系接着剤が用いられる。これにより、板状マグネット6間及び板状マグネット6と回転子ヨーク5との間に介在する第一接着剤8aに紫外線を照射することにより、第一接着剤8aが比較的短時間で硬化して板状マグネット間を仕切る仕切り部8cが形成されるため、板状マグネット6は回転子ヨーク5に対して容易に部分接着することができる。さらには、第二接着剤8bを加熱硬化させる際に、板状マグネット6は仕切り部8cにより周方向に位置決めされ第一接着剤8aにより部分接着されているので、位置ずれすることはない。
【0034】
尚、板状マグネット6が平板状の場合について説明したが、図3A1に示すように、接着面6cが回転子ヨーク5の曲率と同一である湾曲板状であってもよい。この場合、回転子ヨーク5の湾曲する内周面5aと板状マグネット6の接着面6cとの間に形成される接着剤層8a,8bは、図3A2に示すように、接着面6cの周方向に均一に形成される。回転子ヨーク5の内周面5aには、図1Bに示すように、部分接着用の第一接着剤8aが周回して塗布され、板状マグネット6には接着固定用の第二接着剤8bが塗布される点は平板状マグネットの場合と同様である。回転子ヨーク5の内周面5aに板状マグネット6が接着された状態を図3A3に示す。
【0035】
また、図1Cに示すように、回転子ヨーク5の内周面5aに、複数の板状マグネット6を位置決めして接着固定するために樹脂製の位置決め部材10が用いられる。位置決め部材10は、樹脂成形材が用いられ、環状に連結された環状連結部10aと、この環状連結部10aより複数の仕切り部材10bが櫛歯状に起立形成されている。仕切り部材10bどうしの間隔は、板状マグネット6の幅寸法と同等か若干広い程度である。また、環状連結部10aには回転子ヨーク5の開口端に突き当てて位置決めするためのフランジ部10cが径方向外側に延設されている。
【0036】
図1Dに示すように、回転子ヨーク5の一端開口部より内周面5aに位置決め部材10(仕切り部材10b)が挿入され、板状マグネット6が他端開口部より仕切り部材10b間に挿入されることで内周面5aに径方向及び軸方向に位置決めされる。
このとき、板状マグネット6は回転子ヨーク5の内周面5aに第一接着剤8aが周回して塗布されているので、板状マグネット6を回転子ヨーク5に径方向及び軸方向に位置決めして配置される。紫外線を照射すると第一接着剤8aが比較的短時間で硬化して板状マグネット間を仕切る仕切り部8cが形成される。このため、板状マグネット6は回転子ヨーク5に対して容易に部分接着することができる。
【0037】
また、図1Eに示すように、板状マグネット6を回転子ヨーク5の内周面5aに部分接着した状態で、不要となった位置決め部材10を回転子ヨーク5から引き抜いて除去することができる。回転子ヨーク5から位置決め部材10を除去してから、エポキシ樹脂系の第二接着剤8bを例えば100°~180°で加熱硬化することで板状マグネット6を第二接着部6bにて接着固定する。加熱硬化工程では第二接着剤8bの粘度が一時的に低下するが、板状マグネット6は仕切り部8cにより周方向に位置決めされ第一接着剤8aにより部分接着されているので、板状マグネット6が位置ずれすることはない。これにより、本来不要な位置決め部材10を減らし製造コストを低減し回転子1の軽量化を実現することができる。
また、複数の板状マグネット6が位置決め部材10を用いて回転子ヨーク5に所定間隔で接着固定されているので、環状マグネットに比べてコストダウンを図り、回転子ヨーク5に対する径方向及び軸方向の板状マグネット6の位置精度が高く位置ずれすることなく組み付けることができる。
【0038】
このように、回転子ヨーク5の内周面5aに周方向に複数に分割された板状マグネット6を所定間隔で固定されたアウターロータ型モータの回転子1を形成してもよい。
【0039】
また、図4Aに示すように、インナーロータ型モータの回転子ヨーク5の外周面5bに、複数の板状マグネット6(湾曲板)を位置決めして接着固定するために位置決め部材10を用いてもよい。位置決め部材10は、樹脂成形材よりなり、環状に連結された環状連結部10aと、この環状連結部10aより複数の仕切り部材10bが櫛歯状に起立形成されている。フランジ部10cはなくてもよい。
【0040】
図4Aに示すように、回転子ヨーク5の軸方向一端側より外周面5bに位置決め部材10の仕切り部材10bを嵌め合わせ、環状連結部10aを回転子ヨーク5の一端面に突き当てて装着される。複数の板状マグネット6を回転子ヨーク5の他端面側から仕切り部材10b間に各々挿入することで径方向及び軸方向に位置決めされる。
このとき、図4Bに示すように、回転子ヨーク5の外周面5bに第一接着剤8aが周回して塗布されているので、板状マグネット6を回転子ヨーク5に位置決めして配置することができる。紫外線を照射すると第一接着剤8aが比較的短時間で硬化して板状マグネット間を仕切る仕切り部(第一接着剤硬化部)8cが形成される。このため、板状マグネット6は回転子ヨーク5に対して容易に部分接着することができる。板状マグネット6を部分接着した状態で、図4Cに示すように回転子ヨーク5から不要となった位置決め部材10を引き抜いて除去することができる。回転子ヨーク5から位置決め部材10を除去してから、第二接着剤8bを例えば100°~180°で加熱硬化することで板状マグネット6を第一接着部6a及び第二接着部6bの全てにおいて接着固定する。加熱硬化工程では第二接着剤8bの粘度が一時的に低下するが、板状マグネット6は仕切り部8cにより周方向に位置決めされ第一接着剤8aにより部分接着されているので板状マグネット6が位置ずれすることはない。
【0041】
このようにして、図4Cに示すように円柱状に形成される回転子ヨーク5の外周面5bに周方向に複数に分割された板状マグネット6を所定間隔で固定されたインナーロータ型モータの回転子1が得られる。
【0042】
以上の回転子1の構成によれば、環状マグネットに比べてコストダウンと軽量化を図り、アウターロータ型かインナーロータ型かを問わず回転子ヨーク5に対する径方向及び軸方向の板状マグネット6の位置精度を高く組み付けることができる。
また、モータMにおいては、上述したいずれかの回転子1と、当該回転子1の板状マグネット6に対向する固定子極歯7bを有する固定子2と、を備えたことにより、安価、軽量で組立性がよくモータ特性を維持することができるアウターロータ型モータ又はインナーロータ型モータを提供することができる。
【0043】
ここで、アウターロータ型モータの回転子1の製造工程について図1図2を参照して説明する。図1Aにおいて、回転子軸3を回転子ハブ4の中心部に嵌め込んで一体に組み付ける。図1Bに示すように、板状マグネット6の第一接着部6a(図5参照)に対応する回転子ヨーク5の内周面5aに所定時間で硬化する第一接着剤8aを周回して塗布する。第一接着剤8aは、例えば紫外線硬化型接着剤若しくは紫外線硬化型接着剤と嫌気硬化型接着剤の混合したものが用いられる。また、板状マグネット6の第一接着部6aに隣接する第二接着部6bに第一接着剤8aより硬化時間を要するが接着強度が高い第二接着剤8bを各々塗布する。第二接着剤8bは、例えば熱硬化型のエポキシ樹脂系接着剤が用いられる。
【0044】
第一,第二接着剤8a,8bを塗布する工程は、図1Bに示すように、回転子ヨーク5の一端開口側より第一接着部6aに対応する内周面5aに第一接着剤8aを周回して塗布し、板状マグネット6の第二接着部6bに長手方向に第二接着剤8bをライン状に塗布する。これにより、硬化条件が異なる接着剤の取り扱いが容易で作業効率よく塗布することができる。
【0045】
次に、図1Cに示すように、回転子ヨーク5の内周面5aに板状マグネット6を径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材10bが環状連結部10aに連結された位置決め部材10を装着する。仕切り部材10bを回転子ヨーク5の他端開口側より挿入しフランジ部10cが開口端に突き当たるまで挿入する。
【0046】
次いで、図1Dに示すように、位置決め部材10が装着された回転子ヨーク5の仕切り部材10b間に板状マグネット6を一端開口側より各々挿入して第一接着剤8a及び第二接着剤8bを介して回転子ヨーク5の内周面5aに所定間隔で配置する。
【0047】
図1Dの状態で、板状マグネット6に塗布された第一接着剤8aを硬化させて当該板状マグネット6を第一接着部6aにて回転子5に対して部分接着する。具体的には、第一接着剤8aに紫外線を照射すると、第一接着剤8aが硬化し板状マグネット6間を仕切る仕切り部8cが形成されて板状マグネット6が回転子ヨークに対して周方向に位置決めして部分接着することができる。
尚、第一接着剤8aは、紫外線硬化性接着剤と嫌気硬化性接着剤が混合している場合には、紫外線照射により板状マグネット6の端面の接着剤が硬化することにより外気と遮断され、それより内部(空隙部9内部:図3B2参照)の接着剤が嫌気状態となって硬化する。
【0048】
次に図1Eに示すように、板状マグネット6が部分接着された回転子ヨーク5より、不要な位置決め部材10を他端開口より抜き取る。
次いで図2Aに示すように、図1Aで組み立てた回転子ハブ4及び回転子軸3を回転子ヨーク5の一端開口に嵌め込んで一体に組み付け回転子1を組み立てる。回転子1組み立て後の状態を図2Bに示す。
【0049】
次にエポキシ樹脂系の第二接着剤8bを100℃から180℃の範囲内の所定温度で加熱硬化させて、板状マグネット6を第一接着部6a及び第二接着部6bの全てにおいて回転子ヨーク5の内周面に対して接着固定する。
【0050】
尚、複数の板状マグネット6は回転子ヨーク5内に接着される前に着磁されているか若しくは回転子ヨーク5内に接着された後に着磁されるかいずれでもよい。
板状マグネット6が予め着磁されていると、回転子ヨーク5に挿入する際に互いに吸引し合って吸着するおそれがあるが、位置決め部材10を用いることにより、そのような不具合が発生することはない。また、板状マグネット6が回転子ヨーク5の内周面5aに接着された後に着磁されるようにすれば、板状マグネット6の組み付け作業がし易くなり、熱減磁の影響も受けにくくなる。
【0051】
以上により回転子1が製造され、固定子2に組み付けられてモータMが製造される。具体的には、図2Cに示すように回転子1は回転子軸3を固定子2の軸受ハウジング2aに挿入されて図示しない軸受により回転可能に支持される。回転子ヨーク5の板状マグネット6が固定子コア7の固定子極歯7bと対向配置されて回転可能に組み付けられる。固定子2に回転子1を組み付けたモータMを図2Dに示す。
【0052】
また、インナーロータ型モータの回転子1の場合には、図4Aに示すように回転子ヨーク5への第一接着剤8aの面が異なるだけで、同様な工程を経て回転子1を製造することができる。即ち、図4Aに示すように、回転子ヨーク5の第一接着部6aに対応する外周面5bに第一接着剤8aを周回して塗布し、板状マグネット6の第二接着部6bに対応する接着面6cに第二接着剤8bを塗布しておく。
【0053】
図4Aに示すように回転子軸3を中心として柱状に組み付けられた回転子ヨーク5の外周面5bに板状マグネット6を径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材10bが環状連結部10aで連結された位置決め部材10を装着する。仕切り部材10bを回転子ヨーク5の外周面5bに沿って嵌め合わせて環状連結部10aが回転子ヨーク5の端面に突き当たるまで嵌め込む。
【0054】
次いで、図4Bに示すように、位置決め部材10が装着された回転子ヨーク5の仕切り部材10b間に板状マグネット6を各々挿入して第一接着剤8a及び第二接着剤8bを介して回転子ヨーク5の外周面5bに位置決めして所定間隔で配置する。
【0055】
図4Bの状態で、第一接着剤8aに紫外線を照射して第一接着剤8aを硬化させて板状マグネット6間を仕切る仕切り部8cを各々形成し、板状マグネットを第一接着部6aにて回転子ヨーク5の外周面5bに対して部分接着する。板状マグネット6に塗布された第一接着剤8aを硬化させると当該板状マグネット6が第一接着部6aにて回転子ヨーク5に対して部分接着される。
【0056】
次に図4Cに示すように、板状マグネット6が部分接着された回転子ヨーク5より、不要になった位置決め部材10を抜き取ることで回転子1を組み立てる。
【0057】
最後にエポキシ樹脂系の第二接着剤8bを100℃から180℃の所定温度で加熱硬化させて、板状マグネット6を第二接着部6bにて回転子ヨーク5の外周面5bに対して接着固定する。以上によりインナーロータ型モータの回転子1が製造される。
【0058】
尚、複数の板状マグネット6は回転子ヨーク5に接着される前に着磁されているか若しくは回転子ヨーク5内に接着された後に着磁されるかいずれでもよい。
【0059】
上述した回転子1の製造方法によれば、第一接着剤8aを回転子ヨーク5の周面に周回して塗布し、板状マグネット6に第二接着剤8bを各々塗布するので、硬化条件が異なる接着剤の取り扱いが容易で作業効率よく塗布することができる。
また、回転子ヨーク5に径方向及び軸方向に位置決めする櫛歯状の仕切り部材10bが環状に連結された位置決め部材10を装着することで板状マグネット6を仕切り部材10b間で径方向及び軸方向に位置決めして配置することができる。
また、第一接着剤8aを硬化させると板状マグネット6間を仕切る仕切り部8cが形成されて板状マグネット6が回転子ヨーク5に対して周方向に位置決めされて部分接着することができる。この状態で回転子ヨーク5より位置決め部材10を抜き取ることができ、本来不要である位置決め部材10を省略することで部品点数を減らし製造コストを低減し回転子1の軽量化を実現することができる。
また、位置決め部材10を回転子ヨーク5から除去した後で、板状マグネット6に塗布された第二接着剤8bを硬化させて回転子ヨーク5に対して接着固定するので、板状マグネット6を位置精度よく接着固定することができる。
【0060】
以上説明したように、部品点数を減らし製造コストを低減し軽量化を実現した回転子1を提供することができる。また、複数の板状マグネット6の径方向及び軸方向の位置決めを行なって位置精度良く回転子ヨーク5に接着固定することができる組立性の良い回転子の製造方法を提供することができる。
また、上記回転子1を用いて、安価で組立性がよくモータ特性を維持することができるモータMを提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
M モータ 1 回転子 2 固定子 2a 軸受ハウジング 3 回転子軸 4 回転子ハブ 5 回転子ヨーク 5a 内周面 6 板状マグネット 6a 第一接着部 6b 第二接着部 7 固定子コア 7a コアバック部 7b 固定子極歯 7c インシュレータ 7d コイル 8a 第一接着剤 8b 第二接着剤 8c 仕切り部(第一接着剤硬化部) 9 空隙部 10 位置決め部材 10a 環状連結部 10b 仕切り部材 10c フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8