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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】温度を算出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 5/00 20220101AFI20230112BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
G01J5/00 101Z
F04D19/04 H
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020084973
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021043180
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】19196742
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・ヴィスナー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・シュナール
(72)【発明者】
【氏名】アドリーアン・ヴィルト
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-287463(JP,A)
【文献】特開2001-272877(JP,A)
【文献】特開2019-066214(JP,A)
【文献】国際公開第2018/046913(WO,A1)
【文献】特開2006-053127(JP,A)
【文献】特開平10-266991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 5/00-5/90
F04D 19/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプ(111)内で一体化されているIRセンサシステムを用いて温度を算出するための方法であって、
第1の温度Tobs,1が測定位置(226)で測定され、
基準温度Trefが基準位置(228)で熱源(230)によって発生され、
第2の温度Tobs,2が基準位置(228)で測定され、
第2の温度Tobs,2が基準温度Trefから生じる期待温度Texpと比較され、及び
期待温度Texpから第2の温度Tobs,2がずれる場合には、第1の温度Tobs,1が偏差に基づいて修正される、方法において
IRセンサシステムは、第1のIRセンサ(225)と第2のIRセンサ(227)を備え、
第1のIRセンサ(225)は、第1の温度T obs,1 を、ロータシャフト(153)上に配置されている測定位置(226)で把握し、
第2のIRセンサ(227)は、熱源(230)を介して発生される第2の温度T obs,2 を、基準位置(228)で把握し、
測定位置(226)が基準位置(228)とは異なる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
期待温度Texpからの第2の温度Tobs,2の偏差に基づいて補正係数が算出され、この補正係数を用いて、測定位置(226)における実際の温度Tistが第1の温度Tobs,1から決定されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱源(230)の基準温度Trefは、センサ(229)によって把握されること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基準温度Trefが熱源(230)によって、一時的にのみ又はパルス化して発生されること、を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
期待温度Texpが実際の温度Tistと基準温度Trefとの組み合わせによって定義されること、を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
期待温度Texpと基準温度Trefとが同等であること、を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
IRセンサ(225、227)が同じ構造であること、を特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
IRセンサ(225、227)が、場合によっては周囲によって引き起こされる機能障害によって同程度に阻害されるように配置されていること、を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
基準温度Trefは、第2の温度Tobs,2が第1の温度Tobs,1と一致するように設定されること、を特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2の温度Tobs,2は、IRセンサシステムが一体型である真空ポンプ(111)の構成要素(217)上で測定されること、を特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実施する真空ポンプ(111)に一体化されているIRセンサシステムを有する真空ポンプ(111)であって、
このIRセンサシステムが、
ロータシャフト(153)上に配置されている測定位置(226)で第1の温度Tobs,1を測定するための第1のIRセンサ(225)、及び基準位置(228)で第2の温度Tobs,2を測定するための第2のIRセンサ(227)を有する温度測定ユニットを備え
基準温度Trefを基準位置(228)で発生することのために形成されている一つの熱源(230)を備え、並びに
第2の温度Tobs,2を基準温度Trefから結果として生じる期待温度Texpと比較すること、及び期待温度Texpから第2の温度Tobs,2がずれる場合には、偏差に基づいて第1の温度Tobs,1を修正することのために形成されている制御装置を備え、
測定位置(226)が基準位置(228)とは異なる、IRセンサシステムを有する真空ポンプ(111)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線(IR)センサシステムによって、例えば真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの温度を算出するための方法、及び本発明による方法を実施するためのIRセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
IRセンサは、温度、特に回転機器と作動中の可動部分の温度の非接触監視の際に、重要な役割を果たす。とりわけ、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにはIRセンサが使用される。対応する装置は、特許文献1に示されている。例えば、特定の測定値を超えると温度に依存した構造部材の膨張が欠陥を引き起こす可能性があるので、回転機器又は真空ポンプの欠点のない機能は、作動温度に何度も敏感に左右される。したがって、作動温度を算出するための方法は、常に間違いなく機能し、正しい温度値を出力することが重要である。しかしながら、回転機器の作動中、例えば作動媒体の堆積によって又は腐食性プロセスガスとの接触によって、機器に取り付けられているIRセンサの汚染又は変化を引き起こす。その結果、場合によっては、誤った温度値がIRセンサによって測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】英国特許出願公開第2553374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術にもとづき、本発明の課題は、温度を測定するための方法、及び高信頼性かつ高測定精度によって傑出したIRセンサシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって及び請求項14の特徴を有するIRセンサシステムによって解決される。
【0006】
本発明によれば、IRセンサシステムによって、例えば真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの温度を算出する方法であって、この方法は、第1の温度Tobs,1が測定位置で測定され、基準温度Trefが基準位置で熱源によって発生され、第2の温度Tobs,2が基準位置で測定され、第2の温度Tobs,2が基準温度Trefから生じる期待温度Texpと比較され、及び期待温度Texpから第2の温度Tobs,2がずれる場合には、第1の温度Tobs,1が偏差に基づいて修正される。
【0007】
その結果、IRセンサシステムから出力された測定値が既知の期待測定値と比較されることによって、一方ではIRセンサの機能性を再検討することができる。出力された測定値と期待測定値との間に偏差が検出された場合、IRセンサシステムの機能障害が想定される。他方、IRセンサシステムの誤った測定値を修正することができる。これは、温度に敏感なデバイス、例えばターボ分子ポンプに対する高い作動安全性がもたらされる。したがって、不十分な温度制御に基づく故障の発生が回避することができ、回転する機械の作動の経済性が改善される。
【0008】
特に、本発明による方法は、IRセンサシステムが一体型であるデバイスの連続作動中、例えば真空ポンプの連続作動中にも実施することができる。
【0009】
obs,1は、実際の温度Tistが可能な限り正確に決定されるべき測定位置で、IRセンサを用いて測定された温度である。測定位置は、基本的に静的な表面とすることができる。しかしながら、IRセンサは非接触での温度測定に適しているので、可動の機械部品の温度も決定することができる。従って、測定位置は、機械が回転する部分上に、特に真空ポンプのロータシャフト上に配置することができる。
【0010】
基準位置で基準温度Trefを発生するための熱源は、加熱要素を、特に制御可能な加熱要素を含む可能性がある。例えば、抵抗加熱器を使用することができる。このような抵抗加熱器は、例えば、電熱線を含む可能性がある。測定位置と基準位置とが一致する場合、電熱線をIRセンサの領域に配置することができ、その上さらに、このIRセンサに固定することもできる。IR基準放射体としての電熱線の使用は、一方では安価であり、他方では、加熱電流出力にふさわしい選択の場合に、電線の自浄効果が生じ及び「自由燃焼」によって電線の放射挙動が一定に保たれるという利点を有している。
【0011】
熱源から発生する基準温度Trefは、校正から知ることができる。例えば、電熱線が特定の消費電力又はすべての消費電力に対して発生する温度Trefを知ることができる。
【0012】
第2の温度Tobs,2は、特に同様にIRセンサを用いて基準位置で測定される。基準位置での期待温度Texpは、熱源から発生する基準温度Trefによって定義されており、及び場合によっては、別の(既知の)温度寄与によって定義されている。IRセンサが正しく機能する際、測定された第2の温度Tobs,2は期待温度Texpと一致するはずである。しかしながら、測定された第2の温度Tobs,2は、周囲からの影響によってIRセンサの機能が阻害されている場合、Texpからずれる可能性がある。その結果、得られた測定値は、実際の温度値からずれる。とりわけ、このような機能障害は、IRセンサ又はそのIR透過窓の汚染によって、例えば、デバイスの堆積した作動媒体によって引き起こされる可能性がある。さらに、腐食性プロセスガス又は他の種類の汚染との接触は、IR透過の変化につながる可能性がある。
【0013】
測定された第2の温度Tobs,2が期待温度Texpからずれる場合、IRセンサの機能障害であると結論付けることができる。本発明によれば、第1の温度Tobs,1は、Tobs,2とTexpとの偏差に基づき、必要に応じて修正される。代替的もしくは付加的に、警報信号を出すこともでき、機械もしくはポンプを停止することもでき、及び/又は整備もしくは修理を実施するための要求を出すこともできる。
【0014】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項、明細書及び図面で看取できる。
【0015】
このように、熱源から発生する基準温度Trefは、測定位置での実際の温度Tistより高くなる可能性がある。
【0016】
この方法の一つの実施形態によれば、補正係数は、期待温度Texpからの第2の温度Tobs,2の偏差に基づき算出される。この補正係数を用いて、測定位置での実際の温度Tistが第1の温度Tobs,1から決定される。
【0017】
機能障害は、発生した基準温度Trefに基づいて予想するIR透過と比較して、基準位置の一つのIRセンサの一つのIR透過窓を通ったIR透過が減少する可能性がある。この場合、基準位置のIRセンサから測定された温度は、熱源によって発生する基準温度Trefには対応せず、ずれた観測温度Tobs,2に対応する。測定位置と基準位置のIRセンサに同じ周囲の影響が作用すると仮定すると、測定位置の実際の温度Tistは、商Tref/Tobs,2に基づく補正係数を用いて、第1の温度Tobs,1から決定することができる。この方法によれば、機械、特に真空ポンプの持続的な作動においてIRセンサの機能障害を補償することができるという利点がある。その結果、汚染された又は他に阻害されているIRセンサの場合でも、機械の安全な作動が可能なままである。
【0018】
有利には、熱源の基準温度Trefは、測定センサで把握される。例えば、IRセンサから独立してTrefを把握するために、温度センサとして測定抵抗器を使用することができる。場合によっては、基準温度Trefのこのように正確な決定によって、Tobs,1からTistを決定するための補正を、特に正確に実施することができる。
【0019】
一つの実施形態によれば、基準温度Trefは、熱源によって一時的にのみ、特にパルス化されて発生される。この場合、基準位置では、基準温度Trefは、熱源がスイッチオンされたときにのみ検出可能である。熱源によるTrefが、周期的に発生し得る。その際、特に、Trefが発生する期間は、Trefが発生しない期間よりも短くなる可能性がある。そのような時間依存の基準温度Trefは、単一のIRセンサでTobs,1及びTobs,2の測定が可能であるという利点がある。熱源がスイッチオフした際、測定対象の第1の温度Tobs,1のみが測定位置で検出されるが、熱源がスイッチオンした時間のときにTobs,2が測定位置で測定される。その際、基準温度Trefが測定に含まれる。この場合、基準位置は測定位置と一致する。
【0020】
原則として、期待温度Texpは、実際の温度Tistと基準温度Trefとの組み合わせによって定義することができる。例えば、IRセンサは、熱源がスイッチオンした際に測定位置と基準位置が一致する場合、測定対象の実際の温度Tistによって定義されている測定された第1の温度Tobs,1から及び熱源の基準温度Trefから結果として生じる温度上昇ΔTから構成される第2の温度Tobs,2を把握する。他方で、Tobs,2からTexpの偏差は、Tobs,1の補正の基礎を構成する。
【0021】
一つの有利な実施形態によれば、期待温度Texpは、基準温度Trefに等しい。この場合、IRセンサの誤動作は、特に容易に確かめることができ、及び、Tobs,2からTrefの偏差によって修正することができる。
【0022】
別の実施形態によれば、測定位置は、基準位置と異なる。次いで、基準温度Trefは、熱源によって連続的に発生することができる。
【0023】
さらに、第1の温度Tobs,1は、第1のIRセンサを用いて測定することができ、第2の温度Tobs,2は第2のIRセンサを用いて測定することができる。
【0024】
有利には、IRセンサは同じ構造である。これにより、測定値Tobs,1及びTobs,2の直接比較が可能であり、構造の違いから生じる可能性がある偏差の発生が回避される。さらに、第1と第2のIRセンサは、測定位置と基準位置とが同じ放射率を有するように配置することができる。
【0025】
好ましくはIRセンサが、場合によって、周囲によって引き起こされる機能障害に同程度に阻害するように配置されている。これによって、不純物及び/又は作動媒体の堆積が、腐食性プロセスガス及び/又は他の汚染との接触が、第1のIRセンサと第2のIRセンサにおいて同程度に作用する。その結果、等しい値の測定値Tobs,1とTobs,2は、場合によって生じる機能障害の影響を受けている。これにより、一方では、Tobs,2とTexpとの比較を、IRセンサシステムの機能を制御するために間違いなく考慮することができることが保証され、及び他方ではTobs,2とTexpに基づいてTobs,1の補正を誤りなく実施することができることが保証されている。
【0026】
この方法の別の実施形態によれば、基準温度Trefは、第2の温度Tobs,2が第1の温度Tobs,1と一致するように設定される。特に、基準温度Trefを発生するための制御可能な熱源を使用することができ、その手段によってTrefが、第2のセンサによって基準温度で測定される第2の温度Tobs,2が、第1のIRセンサによって測定位置で測定される第1の温度Tobs,1と一致するように調整される。調整された基準温度Trefによって定義されるTexpからのTobs,2の偏差の場合は、第2のIRセンサの機能障害とみなすことができる。この際、Tobs,2がTobs,1と一致する場合には、TistはTrefに相当する。それによって、Tobs,1はTistとして保証することができる。
【0027】
第2の温度Tobs,2は、IRセンサシステムが一体型であるデバイスの構造部材で、特に真空ポンプの構造部材で測定することができる。この場合、構成要素の温度は、例えば、基準温度Trefとして利用する可能性があり、第2のIRセンサで測定された温度Tobs,2からの実際の構成要素温度の偏差が、Tobs,1を補正するために使用される。例えば、Tobs,2は、真空ポンプのモータステータ上で測定することができる。その際、モータステータの基準面の放射率は、測定位置の放射率と一致する可能性がある。加えて、モータステータでは別の温度センサ、例えば抵抗温度計がモータステータの実際の温度、すなわちTrefを決定する可能性がある。これは、温度を算出するための方法を実施するために、真空ポンプ内の熱源として追加の加熱要素を設置する必要がないという利点がある。
【0028】
第1の温度Tobs,1と第2の温度Tobs,2とは、測定位置と基準位置とが一致するように、同じIRセンサで測定することができる。これにより、IRセンサの機能障害は、同じ高さのそのIRセンサで検出されるという利点がある。そのため、構造、位置決め等による測定の不確実性は、完全に回避される。
【0029】
加えて、本発明の別の目的は、上記のような温度を算出するための方法を実施することができるIRセンサシステムである。IRセンサシステムは、測定位置で第1の温度Tobs,1を測定するための、及び基準位置で第2の温度Tobs,2を測定するための少なくとも一つのIRセンサを有する温度測定ユニット、基準温度Trefを基準位置で発生することのために形成されている一つの熱源、並びに第2の温度を基準温度Trefから結果として生じる期待温度Texpと比較すること、及び期待温度Texpから第2の温度Tobs,2がずれる場合には、偏差に基づいて第1の温度Tobs,1を修正することのために形成されている制御装置を含む。
【0030】
上述の温度を算出するための方法の利点は、本発明によるIRセンサシステムによって達成することができる。
【0031】
本発明は、以下で添付の図面を参照しつつ一例に過ぎない有利な実施例に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】ターボ分子ポンプの斜視図を示す。
図2図1のターボ分子ポンプの下面図を示す。
図3図2に示した切断線A-Aに沿ったターボ分子ポンプの断面図を示す。
図4図2に示した切断線B-Bに沿ったターボ分子ポンプの断面図を示す。
図5図2に示した切断線C-Cに沿ったターボ分子ポンプの断面図を示す。
図6】第1の実施形態によるIRセンサシステムを有するターボ分子ポンプの断面図を示す。
図7】第2の実施形態によるIRセンサシステムを有するターボ分子ポンプの断面図を示す。
図8A】第3の実施形態によるIRセンサシステムの為の赤外線センサの正面図を示す。
図8B図8AのIRセンサの断面図を示す。
図9A図8による清潔なIRセンサで測定された温度経過を示す。
図9B図8による汚染したIRセンサで測定された温度経過を示す。
図9C図8による再洗浄されたIRセンサで測定された温度経過を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、インレットフランジ113によって取り囲まれたポンプインレット115を有する。このポンプインレットには、公知の方法で、図示されていない真空容器を接続することができる。真空容器からのガスは、ポンプインレット115を介して真空容器から吸引され、そしてポンプを通してポンプアウトレット117へと搬送することができる。ポンプアウトレットには、予真空ポンプ(例えばロータリベーンポンプ)を接続することができる。
【0034】
インレットフランジ113は、図1の真空ポンプの向きにおいては、真空ポンプ111のハウジング119の上端部を形成する。ハウジング119は、下部分121を有する。これには、側方にエレクトロニクスハウジング123が配置されている。エレクトロニクスハウジング123内には、真空ポンプ111の電気的、及び/又は電子的なコンポーネントが収容されている。これらは例えば、真空ポンプ内に配置される電動モータ125を作動するためのものである。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリのための複数の接続部127が設けられている。更に、データインタフェース129(例えばRS485規格に準拠する)と、電源供給接続部131がエレクトロニクスハウジング123に配置されている。
【0035】
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、通気インレット133が、特に通気バルブの形式で設けられている。これを介して真空ポンプ111に通気を行うことができる。下部分121の領域には、更にシールガス接続部135(パージガス接続部とも称される)が設けられている。これを介してパージガスが、ポンプによって搬送されるガスに対して電動モータ125(例えば図3参照)を保護するため、モータ室137内に取り込まれることができる。モータ室内には、真空ポンプ111の電動モータ125を収容することができる。下部分121内には、更に二つの冷却媒体接続部139が設けられている。その際、一方の冷却媒体接続部は冷却媒体のインレットとして、そして他方の冷却媒体接続部はアウトレットとして設けられている。冷却媒体は、冷却目的で真空ポンプ内に導かれることができる。
【0036】
真空ポンプの下側面141は、ベースとして使用されることが可能であるので、真空ポンプ111は、下側面141上に縦置きで作動することができる。しかしまた、真空ポンプ111は、インレットフランジ113を介して真空容器に固定されることも可能であり、これによっていわば懸架して作動することができる。更に真空ポンプ111は、図1に示されたものと異なった向きとされているときにも作動することができるように構成することができる。下側面141が下向きではなく、横向きに、又は上向きに配置されている真空ポンプの実施形も実現することができる。
【0037】
図2に表わされている下側面141には、更に、種々のねじ143が配置されている。これらによって、ここでは詳細に特定されない真空ポンプの構造部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が下側面141に固定されている。
【0038】
下側面141には、更に、固定孔147が設けられている。これを介してポンプ111は例えば載置面に固定することができる。
【0039】
図2から5には、冷却媒体配管148が表わされている。この中に、冷却媒体接続部139を介して導入、又は導出される冷却媒体が循環することができる。
【0040】
図3から5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有している。これは、ポンプインレット115にあるプロセスガスをポンプアウトレット117に搬送するためのものである。
【0041】
ハウジング119内には、ロータ149が配置されている。このロータは、回転軸線151を中心として回転可能なロータシャフト153を有している。
【0042】
ターボ分子ポンプ111は、ポンプ効果を奏するよう互いに直列に接続された複数のポンプ段を有している。これらポンプ段は、ロータシャフト153に固定された複数の半径方向のロータディスク155と、ロータディスク155の間に配置され、そしてハウジング119内に固定されているステータディスク157を有している。その際、一つのロータディスク155とこれに隣接する一つのステータディスク157がそれぞれ一つのターボ分子ポンプ段を形成している。ステータディスク157は、スペーサリング159によって互いに所望の軸方向間隔に保持されている。
【0043】
真空ポンプは、更に、半径方向において互いに内外に配置され、そしてポンプ効果を奏するよう互いに直列に接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段のロータは、ロータシャフト153に配置されたロータハブ161と、ロータハブ161に固定され、そしてこれによって担持される円筒側面形状の二つのホルベックロータスリーブ163,165を有している。これらは、回転軸線151と同軸に向けられており、そして半径方向において互いに内外に接続されている。更に、円筒側面形状の二つのホルベックステータスリーブ167,169が設けられている。これらは同様に、回転軸線151に対して同軸に向けられており、そして半径方向で見て互いに内外に接続されている。
【0044】
ポンプ効果を発揮するホルベックポンプ段の表面は、側面によって、つまり、ホルベックロータスリーブ163,165とホルベックステータスリーブ167,169の内側面、及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータスリーブ167の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、ターボ分子ポンプに後続する第1のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第2のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向外側面と向かい合っており、そしてこれと、第三のホルベックポンプ段を形成する。
【0045】
ホルベックロータスリーブ163の下側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられれていることが可能である。これを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173と接続されている。更に、内側のホルベックステータスリーブ169の上側端部には、半径方向に延びるチャネルが設けられれていることが可能である。これを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175と接続されている。これによって、互いに内外に接続される複数のホルベックポンプ段が互いに直列で接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータスリーブ165の下側の端部には、更に、アウトレット117への接続チャネル179を設けることができる。
【0046】
ホルベックステータスリーブ163,165の上述したポンプ効果を発揮する表面は、それぞれ、螺旋形状に回転軸線151の周りを周回しつつ軸方向に延びる複数のホルベック溝を有する。他方で、ホルベックロータスリーブ163,165のこれに向かい合った側面は、滑らかに形成されており、そして真空ポンプ111を作動するためのガスをホルベック溝内へと送り出す。
【0047】
ロータシャフト153の回転可能な軸支のため、ポンプアウトレット117の領域に転がり軸受181、及びポンプアウトレット115の領域に永久磁石軸受183が設けられている。
【0048】
転がり軸受181の領域には、ロータシャフト153に円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。これは、転がり軸受181の方に向かって増加する外径を有している。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも一つのスキマー(独語:Abstreifer)と滑り接触状態にある。作動媒体貯蔵部は、互いに上下にスタックされた吸収性の複数のディスク187を有する。これらディスクには、転がり軸受181のための作動媒体、例えば潤滑剤が含浸されている。
【0049】
真空ポンプ111の作動中、作動媒体は、毛細管現象によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して、回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力によってスプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の大きくなる外径の方向へと、転がり軸受181に向かって搬送される。そこでは例えば、潤滑機能が発揮される。転がり軸受181と作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内において槽形状のインサート189と、軸受カバー145に囲まれている。
【0050】
永久磁石軸受183は、ロータ側の軸受半部191と、ステータ側の軸受半部193を有している。これらは、各一つのリングスタックを有している。リングスタックは、軸方向に互いに上下にスタックされた永久磁石の複数のリング195,197から成っている。リング磁石195,197は、半径方向の軸受間隙199を形成しつつ互いに向き合っており、その際、ロータ側のリング磁石195は、半径方向外側に、そしてステータ側のリング磁石197は、半径方向内側に配置されている。軸受間隙199内に存在する磁場は、リング磁石195,197の間に磁気的反発力を引き起こす。これは、ロータシャフト153の半径方向の支持を実現する。ロータ側のリング磁石195は、ロータシャフト153の支持部分201によって担持されている。これは、リング磁石195を半径方向外側で取り囲んでいる。ステータ側のリング磁石197は、ステータ側の支持部分203によって担持されている。これは、リング磁石197を通って延びており、そしてハウジング119の支材205に吊架されている。回転軸線151に平行に、ロータ側のリング磁石195が、支持部分203と連結されるカバー要素207によって固定されている。ステータ側のリング磁石197は、回転軸線151に平行に一つの方向で、支持部分203と接続される固定リング209によって、及び支持部分203と接続される固定リング211によって固定されている。その上、固定リング211とリング磁石197の間には、皿ばね213が設けられていることが可能である。
【0051】
磁石軸受の内部には、非常用軸受又は安全用軸受215が設けられている。これは、真空ポンプの通常の作動時には、非接触で空転し、そしてロータ149がステータに対して半径方向において過剰に偏移した際に初めて作用するに至る。ロータ側の構造がステータ側の構造と衝突するのが防止されるので、ロータ149に対する半径方向のストッパーが形成される。安全用軸受215は、非潤滑の転がり軸受として形成されており、そして、ロータ149及び/又はステータと半径方向の間隙を形成する。この間隙は、安全軸受215が通常のポンプ作動中は作用しないことに供する。安全用軸受が作用するに至る半径方向の偏移は、十分大きく寸法取られているので、安全用軸受215は、真空ポンプの通常の作動中は作用せず、そして同時に十分小さいので、ロータ側の構造がステータ側の構造と衝突するのがあらゆる状況で防止される。
【0052】
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動するための電動モータ125を有している。電動モータ125の電機子は、ロータ149によって形成されている。そのロータシャフト153は、モータステータ217を通って延びている。ロータシャフト153の、モータステータ217を通って延びる部分には、半径方向外側に、又は埋め込まれた、永久磁石装置を配置することができる。ロータ149の、モータステータ217を通って延びる部分と、モータステータ217との間には、中間空間219が配置されている。これは、半径方向のモータ間隙を有する。これを介して、モータステータ217と永久磁石装置は、駆動トルク伝達のため、互いに磁気的に影響することが可能である。
【0053】
モータステータ217は、ハウジング内において、電動モータ125のために設けられるモータ室137の内部に固定されている。シールガス接続部135を介して、シールガス(パージガスとも称され、これは例えば空気や窒素であることが可能である)が、モータ室137内へと至る。シールガスを介して電動モータ125は、プロセスガス、例えばプロセスガスの腐食性の成分に対して保護することができる。モータ室137は、ポンプアウトレット117を介して真空引きすることができる、つまりモータ室137は、少なくとも近似的に、ポンプアウトレット117に接続される予真空ポンプによって実現される真空状態となっている。
【0054】
モータ室137を画成する壁部221とロータハブ161の間には、更に、いわゆる公知のラビリンスシール223を設けることができる。これは、特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対してモータ室217をより良好にシールすることを達成するためである。
【0055】
図6は、ターボ分子ポンプ111のロータ149上の測定位置226における温度Tistを算出するための第1の実施形態のIRセンサシステムを有するターボ分子ポンプ111を示す。IRセンサシステムは、2つのIRセンサ225,227をそれぞれ1つの基板上に含み、その際、両方のIRセンサは同じ構造である。第1のIRセンサ225は、ロータ149上に配置されている測定点226で、第1の温度Tobs,1を把握する。第2のIRセンサ227は、第2の温度Tobs,2を基準位置228で把握する。本発明の実施形態によれば、基準位置228は、モータステータ217の表面上に配置されている。その際、基準位置228の表面は、測定位置226の表面と同じ放射率を有する。モータステータ217は熱源として作用し、基準位置228で基準温度Trefを準備する。ここでは、例としてPCTサーミスタを有する温度センサ229が、モータステータ217の基準温度Trefを把握する。
【0056】
IRセンサ225,227は、ポンプ内部からの影響(この影響は、IRセンサ225,227の機能を阻害する可能性がある)に同程度さらされているようにターボ分子ポンプ111内に配置されている。場合によっては、IRセンサ227の汚染又は機能障害は、IRセンサ225にも同様に影響をもたらす。
【0057】
測定点226で測定されたロータ149又はロータシャフト153上の温度を算出するために、制御ユニット(図示せず)が、IRセンサ227で測定された温度Tobs,2を期待温度Texpと比較する。本発明の実施形態によれば、基準位置228における期待温度Texpは、モータステータ217を介して発生し、温度センサ229によって把握される基準温度Trefに対応する。IRセンサ227から測定された温度Tobs,2が既知の基準温度Trefと異なる場合、この機能のIRセンサ227が、例えば堆積した不純物によって、又は腐食性プロセスガスとの接触後に変化したIR透過によって阻害されているとみなさなければならない。同じ周囲の影響の範囲内に位置するために、IRセンサ225に応じた機能障害を想定することができる。したがって、測定された温度Tobs,1は、測定位置226のロータシャフト153の実際の温度Tistを反映していないとみなさなければならない。
【0058】
ロータシャフト153のTistを算出するために、制御装置によってTobs,1からTistに変換する補正係数が決定される。これは、IRセンサ227によって測定される第2の温度Tobs,2と温度センサ229によって測定される実際のこの基準温度Trefとの間の比率を考慮する。
【0059】
図7は、第2の実施形態によるIRセンサシステムを有するターボ分子ポンプ111を示す。同様にIRセンサシステムは、二つの同じ構造のIRセンサ225,227を含む。その際、第1のIRセンサ225が、温度Tobs,1を、ロータシャフト153上に配置されている測定位置226で把握する。第2のIRセンサ227は、熱源230を介して発生される温度Tobs,2を基準位置228で把握する。図示されている実施形態では、熱源230は、ヒータ230によって実際に提供される基準温度Trefを把握するために使用する温度センサ229を有す制御可能なヒータとして形成されている。
【0060】
ここでも、IRセンサ225,227は、周囲の影響による機能障害が両方のIRセンサ225,227に同程度に影響するように配置されている。
【0061】
ロータシャフト153上の測定位置226で実際の温度Tistを算出するために、第2のIRセンサ227は、制御可能な熱源230によって加熱される。その際、第2のIRセンサ227は、温度Tobs,2を測定する。熱源230の温度Trefは、第2のIRセンサ227で把握する温度Tobs,2が第1のIRセンサ225で把握する温度Tobs,1に等しくなるように調整される。この場合、測定位置226の実際の温度Tistは、温度センサ229で把握された熱源230の温度Trefに対応する。
【0062】
図8Aは、第3の実施形態による温度を算出するためのIRセンサシステムの正面図を示す。その際、このシステムは、IR透過窓231を有する一つのIRセンサ225のみを含む。IRセンサ225は、測定位置226(図8B参照)の前に配置されており、及び視野233を有する。加えて、IRセンサシステムは、IR基準放射体としての熱源230を含む。この熱源は、図示された実施形態において、電熱線230としてIRセンサ225の視野233を中心とした周囲に配置されている。
【0063】
電熱線230を通る電流の場合には、ワイヤ230が、IRセンサ225によって検出されるIR放射線を放射する。図8BのIRセンサシステムの断面図から、電熱線230を通る電流が通電した場合のIRセンサ225の測定信号が、測定位置226で放射される部分から及び電熱線230から放射される部分から構成されていることが明らかである。
【0064】
測定位置226で実際の温度Tistを算出するために、電熱線230は、特定の電力でもって電気エネルギーが供給される。この場合、電熱線230は、測定位置226の温度に依存しない既知の基準温度Trefを放射する。IRセンサ225には、差分温度ΔTだけ増加した温度Tobs,2が記録される。この温度Tobs,2は、基準温度Trefによって定義されており及びIRセンサ225が正常に機能している際に基準温度Trefと等しい。
【0065】
ワイヤ230が単にパルス化され、例えば、周期的に電力が供給される場合、IRセンサ225は、電熱線230を通る電流がスイッチオフにされされているとき、測定位置226から発する温度Tobs,1を常に検出する。一方、電熱線230を通る通電した電流が流れる場合、Tobs,1及び温度上昇ΔTから構成されている温度Tobs,2が把握される。したがって、Tobs,1及びTobs,2は、同じ測定位置226で測定され、同じIRセンサ225で測定される。その際、IRセンサ225は、測定時間に応じてTobs,1又はTobs,2を把握する。
【0066】
図9Aは、測定位置226の温度Tistを算出する間、第3の実施形態によって最適に機能するIRセンサ225を介して把握される温度の経過235を示す。比較するために、測定位置226の実際の温度Tistの経過241が示されている。把握する温度経過235は、実際の温度経過241と大部分が重なったベースライン237を有する。これは、電熱線230がスイッチオフされている時間の間の温度Tobs,1の測定に対応する。加えて、把握された温度経過235は、周期的に発生する特徴的な温度ピーク239を有する。電熱線230を通る電流が流れる間、これらの温度ピークは、測定された温度Tobs,2に対応する。したがって、温度Tobs,2は、最適に機能するIRセンサ225のために、温度Tobs,1から及び電熱線230によって生じる温度上昇ΔTから構成される。温度Tobs,2は、示されている場合には基準温度Trefに対応する。
【0067】
IRセンサ225によって記録する温度Tobs,2は、電熱線から放射される既知の基準温度Trefと等しいために、通電した電熱線230の場合には、期待温度Texpとみなされている。図9Aの温度Tobs,2は既知の基準温度Trefと一致するので、IRセンサ225が最適に機能しているとみなすことができる。この場合、温度Tobs,1も測定位置226の実際の温度Tistと一致する。これは、実際の温度Tistの経過241と把握された温度経過235のベースライン237とが重なることによって確認する。
【0068】
図9Bは、汚染物質によってIRセンサ225の機能が阻害されている場合に対する、IRセンサ225によって把握される温度経過235を示す。比較するために、測定点226の実際の温度経過241が再び示されている。電熱線230は、図9Aのように、同様の、特定の電力が供給される。従って、IRセンサ225は、通電した電熱線230の状態で温度Trefを把握すればよいはずである。しかし、実際には、図9Bの温度ピーク239は、基準温度Trefに対する期待値よりも小さい値ΔTだけ、ベースライン237と異なる。このように、測定された第2の温度Tobs,2は、期待温度Texpからずれる。このことから、IRセンサ225の機能が阻害されていると推測することができる。
【0069】
その結果、損傷を回避するために、例えば制御装置によって警報信号が出力され、又はIRセンサシステムが一体型である機械(例えばターボ分子ポンプ)がスイッチオフされる。代替的もしくは付加的に、ベースライン237に対応する測定温度値Tobs,1は、補正係数を用いて実際の温度Tistに対して補正することができ、この補正係数には、通電した加熱電流の状態で測定された第2の温度Tobs,2に対する期待温度Texpの比率、または測定された第2の温度Tobs,2に対する基準温度Trefの比が組み込まれている。その上、制御装置は要求(メンテナンス又はIRセンサシステムの復旧を実施すること)を出力する可能性がある。
【0070】
例えば、測定位置226の実際の温度Tistは、図9Bの温度経過235から、特に、システムが熱平衡状態に、つまりベースライン237が実質的に一定の温度値を想定している温度曲線の領域内にある場合に、決定し得る。通電した電熱線230の状態で測定された温度Tobs,2は、温度ピーク239のこの領域では約75℃であり、他方で、(例えば図9Aから)基準温度Trefは約112℃であることがわかる。スイッチオフした電熱線230の状態で測定されている温度Tobs,1に対する値は、熱平衡状態で約60℃であり、そのことから、Tref/Tobs,2≒1.5の補正係数を用いて、測定点226の実際の温度Tistが約90℃と算出される。これは、図9Bに示されている測定位置226の実際の温度経過241とよく一致する。
【0071】
図9Cは、汚れた後に再び洗浄されたIRセンサ225によって把握する温度の経過235、及びTistの経過を再現する制御曲線241を示す。観測された温度ピーク239は、IRセンサ225の洗浄後、再び基準温度Trefあたりに、温度経過235のベースライン237と比較して対応する大きな温度差ΔTを有する。再び通電した電熱線230の状態で測定された温度Tobs,2が、基準温度Trefと一致するので、測定された温度Tobs,2が期待温度Texpに対応する。これに対応して、ベースライン237と実際の温度曲線241の線とが重なることによって確認されるように、IRセンサ225が正しい機能とみなすことができる。
【符号の説明】
【0072】
111 ターボ分子ポンプ
113 インレットフランジ
115 ポンプインレット
117 ポンプアウトレット
119 ハウジング
121 下部分
123 エレクトロニクスハウジング
125 電動モータ
127 アクセサリ接続部
129 データインタフェース
131 電源供給接続部
133 通気インレット
135 シールガス接続部
137 モータ室
139 冷却媒体接続部
141 下側面
143 ねじ
145 軸受カバー
147 固定孔
148 冷却媒体配管
149 ロータ
151 回転軸線
153 ロータシャフト
155 ロータディスク
157 ステータディスク
159 スペーサリング
161 ロータハブ
163 ホルベックロータスリーブ
165 ホルベックロータスリーブ
167 ホルベックステータスリーブ
169 ホルベックステータスリーブ
171 ホルベック間隙
173 ホルベック間隙
175 ホルベック間隙
179 接続チャネル
181 転がり軸受
183 永久磁石軸受
185 スプラッシュナット
187 ディスク
189 インサート
191 ロータ側の軸受半部
193 ステータ側の軸受半部
195 リング磁石
197 リング磁石
199 軸受間隙
201 支持部分
203 支持部分
205 半径方向の支材
207 カバー要素
209 支持リング
211 固定リング
213 皿バネ
215 緊急用軸受又は安全用軸受
217 モータステータ
219 中間空間
221 壁部
223 ラビリンスシール
225 第1のIRセンサ
226 測定位置
227 第2のIRセンサ
228 基準位置
229 温度センサ
230 熱源
231 IR透過窓
233 視界
235 測定された温度経過
237 ベースライン
239 温度ピーク
241 実際の温度経過
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C