(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】発光ダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 33/02 20100101AFI20230112BHJP
H01L 33/22 20100101ALI20230112BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20230112BHJP
【FI】
H01L33/02
H01L33/22
H01L33/48
(21)【出願番号】P 2020183485
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2020-11-02
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】310014779
【氏名又は名称】隆達電子股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】郭修邑
(72)【発明者】
【氏名】許國翊
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-088524(JP,A)
【文献】特開2011-233650(JP,A)
【文献】特開2017-050472(JP,A)
【文献】特開2015-056652(JP,A)
【文献】特表2019-534565(JP,A)
【文献】特開2008-205468(JP,A)
【文献】特開2006-128227(JP,A)
【文献】国際公開第2016/110896(WO,A1)
【文献】特開2015-111639(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1773736(CN,A)
【文献】特開2013-201411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動層と、
それぞれ前記能動層の対向する両側に配置される第1型半導体層及び第2型半導体層と、
前記第1型半導体層に設けられる第1の接触パッドと、
前記第2型半導体層に設けられる第2の接触パッドと、
前記第2型半導体層に配置され、捕捉面として、パターン化された外面を有し、かつ、有機材料を含む捕捉層
であって、レーザーにより解離可能な材料を含む捕捉層であって、前記捕捉層の上面がレーザーにより破壊された面である捕捉層と、
を含むものであって、
前記第1の接触パッドと前記第2の接触パッドの両方が、前記第2型半導体層の一方側に配置されており、かつ、
前記捕捉層が、前記第1の接触パッドと前記第2の接触パッドが配置されている側と反対側である前記第2型半導体層の他方側に配置されて
おり、かつ、
前記捕捉層が、前記第2型半導体層の前記一方側と前記他方側との間に連結された前記第2型半導体層の側面には配置されていない発光ダイオード。
【請求項2】
前記捕捉層は、前記能動層の発する光により透過されることができる請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項3】
前記有機材料は、ベンゾシクロブテンを含む請求項1に記載の発光ダイオード。
【請求項4】
前記捕捉層は、感光性高分子材料を含む請求項1~
3の何れか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項5】
前記第2型半導体層は、粗面化された上面を含む請求項1~
3の何れか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記パターン化された外面は、規則的なパターン化された表面である請求項1~
3の何れか1項に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記粗面化された上面は、不規則な粗面化された表面である請求項
5に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記粗面化された上面は、前記捕捉層に直接接触する請求項
5に記載の発光ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ発光ダイオード(micro LED)は、新世代の表示技術である。マイクロ発光ダイオードのメリットとしては、低消費電力、高輝度、高解像度及び高彩度を含む。そのため、マイクロ発光ダイオードからなる表示パネルは、次世代の表示技術の主流と見なされている。
【0003】
マイクロ発光ダイオードの体積がマイクロオーダーであるため、大量転送は必然的且つ重要なプロセスとなる。従来、大量転送の形態は数多く存在し、ただし、レーザーによる転送は、現在、最小コストで最高の転送効率を達する機会のある形態であるが、その転送の歩留まりがマイクロ発光ダイオードの形態によって変更する可能性があり、安定したプロセスにはならない。そのため、レーザーによる転送によって大量転送を達成すると共に、転送の歩留まりを向上させることのできる新規なマイクロ発光ダイオード及びそのプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、先行技術の課題を解決するために、革新的な発光ダイオード構造を提出する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例において、発光ダイオードは、能動層と、それぞれ能動層の対向する両側に配置される第1型半導体層及び第2型半導体層と、第2型半導体層に配置され、転送時の捕捉面として、パターン化された外面を有する捕捉層と、を含む。
【0006】
本発明の一実施例において、捕捉層は、能動層の発する光により透過されることができる。
【0007】
本発明の一実施例において、捕捉層は、レーザーにより解離可能な材料を含む。
【0008】
本発明の一実施例において、捕捉層は、有機材料を含む。
【0009】
本発明の一実施例において、有機材料は、ベンゾシクロブテン(Benzocyclobutene)を含む。
【0010】
本発明の一実施例において、捕捉層は、感光性高分子材料を含む。
【0011】
本発明の一実施例において、第2型半導体層は、粗面化された上面を含む。
【0012】
本発明の一実施例において、パターン化された外面は、規則的なパターン化された表面である。
【0013】
本発明の一実施例において、粗面化された上面は、不規則な粗面化された表面である。
【0014】
本発明の一実施例において、粗面化された上面は、捕捉層に直接接触する。
【発明の効果】
【0015】
以上をまとめると、本発明の発光ダイオードは、捕捉層として適当な材質を選用することにより、転送時の捕捉面として、パターン化された外面を形成することができるだけではなく、レーザーアブレーションプロセスの犠牲層として利用することもでき、発光ダイオード構造が少ない層数、及び低コストで高い転送効率を達成できるようにすることができる。捕捉面が規則的なパターンを有するので、捕捉面と捕捉装置との接触面積を増加させ、パターン化されていない平らな捕捉面に比べると、捕捉時の安定度を改善し、捕捉失敗の確率を低下させ、結晶粒転送の歩留まりを向上させることができる。
【0016】
以下、実施形態によって上記の説明を詳しく述べ、本発明の技術案を更に解釈する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
下記の添付図面の説明は、本発明の上記及び他の目的、特徴、メリットと実施例をより分かりやすくするためのものである。
【
図1】本発明の一実施例による発光ダイオードを示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である。
【
図7】本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の説明をより詳しく完備にするように、添付の図面及び下記に示す各種の実施例を参照することができ、図面における同じ符号は同様又は類似の素子を表す。一方、本発明に不要な制限を避けるために、周知の素子や工程は実施例に記述されていない。
【0019】
実施形態と特許請求の範囲において、『電気的接続』に係る記述は、ある素子が他の素子によって別の素子に間接に電気的結合され、或いはある素子が他の素子によらずに別の素子に直接に電気的連結されることを大まかに指してよい。
【0020】
実施形態と特許請求の範囲において、本文には冠詞に対して特別に限定しない限り、「一」と「前記」は、単一又は複数をまとめて指すことができる。
【0021】
本発明の一実施例による発光ダイオードを示す断面図である
図1を参照されたい。発光ダイオード100は、第1型半導体層104と、能動層106と、第2型半導体層108と、捕捉層110と、を含む。ある実施例において、能動層106は、多層構造を有する量子井戸(multiple quantum well;MQW)である。量子井戸によって、電子と正孔とが結合する可能性が高く、光を発生させて、発光ダイオード100の発光効率を向上させることができる。
【0022】
本実施例において、第1型半導体層104、能動層106及び第2型半導体層108の全厚さT2は捕捉層110の厚さT1よりも大きいが、これに限定されない。
【0023】
第1型半導体層104及び第2型半導体層108は、それぞれ能動層106の対向する両側に配置される。例としては、第1型半導体層104が能動層106の第1の表面に配置され、第2型半導体層108が能動層106の第2の表面に配置される。第1型半導体層104と第2型半導体層108の導電型(conductivity type)は異なっている。ある実施例において、第1型半導体層104はN型ドープであり、第2型半導体層108はP型ドープである。ある実施例において、半導体層の材料はIII-V族半導体を含み、例えば、III族窒化物、III族リン化物、III族砒化物或いはIII族リン化砒化物であってよい。本実施例において、第1型半導体層104はN型ドープのリン化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaP)であってよく、第2型半導体層108はP型ドープのリン化ガリウム(GaP)であってよい。
【0024】
発光ダイオード100は、それぞれ第1型半導体層104と第2型半導体層108に設けられる第1の接触パッド171と第2の接触パッド172を更に含む。第1の接触パッド171は、第1の半田付け金属層181を介して基板105の対応する電極に電気的接続される。第2の接触パッド172は、第2の半田付け金属層182を介して基板105の対応する電極に電気的接続される。発光ダイオード100は、第1型、第2型半導体層と能動層106の側壁に位置する絶縁層190を更に含む。絶縁層190は、絶縁性を提供する以外、また好適な機械的強度を有し、第1型半導体層104、能動層106及び第2型半導体層108が傷つけられないようにする。
【0025】
本実施例において、捕捉層110は、捕捉面110aとして、パターン化された外面を有し、且つ捕捉装置がその捕捉の形態を容易に制御できるように、捕捉面110aは、規則的なパターン化された表面であってよいが、これに限定されない。
【0026】
本実施例において、捕捉層110は、第2型半導体層108の光取出し面に直接接触するため、光取出しの経路となるので、能動層106の発する光が透過可能なものでなければならない。
【0027】
本実施例において、第2型半導体層108の捕捉層110に接触する表面は、光取出し効率を向上させるために、粗面化された上面108aであってよい。例えば、ウェットエッチングで第2型半導体層108の表面に不規則な粗面化された表面を形成してよい。
【0028】
本発明の一実施例による発光ダイオードの製造方法を示す断面図である
図2~
図8を参照されたい。
図2の工程において、規則的なパターン化された表面101aを有する、例えば、パターン化されたサファイア基板である透光性基板101を提供する。
【0029】
図3の工程において、一次基板103を含むエピタキシャル積層体を提供し、透光性接着層110bによって透光性基板101に接着させる。エピタキシャル積層体は、順次に基板103に積層された第1型半導体層104、能動層106及び第2型半導体層108を含む。本実施例において、基板103は、砒化ガリウム(GaAs)の基板であってよい。透光性接着層110bは感光性高分子材料を含んでよく、光照射された後で前記の捕捉層110として固化され、且つ透光性基板101の規則的なパターン化された表面101aが捕捉層110に転写されて、更に規則的なパターン化された外面の捕捉面110aを形成する。
【0030】
図4の工程において、基板103をエピタキシャル積層体から除去する。
【0031】
図5の工程において、エピタキシャル積層体を複数の発光ダイオードに素子化して透光性基板101に接着させる。
【0032】
図6の工程において、透光性基板101を上下逆さにして、レーザー光200で転送しようとする発光ダイオード100bの捕捉層110を照射して、捕捉層110と透光性基板101との接面が解離されて破壊される(つまりレーザーアブレーションプロセスである)ので、透光性基板101から脱離して、仮基板102に位置する。所望の色(例えば、赤色、緑色、青色)の発光ダイオードを異なる基板から仮基板102に転送するために、類似なレーザーアブレーションプロセスを複数回実行する必要がある。捕捉層110は、レーザーアブレーション(laser lift off;LLO)プロセスを採用するために、レーザーにより解離可能な材料を含む必要がある。捕捉層110の材料としては、例えばベンゾシクロブテン(Benzocyclobutene)等のレーザーにより解離可能な材料のような有機材料を含んでよい。
【0033】
図7の工程において、捕捉装置120によって仮基板102から所望の色(例えば、赤色、緑色、青色)の発光ダイオード(100a-c)を捕捉する。捕捉面110aがパターン化された表面であるため、捕捉面110aと捕捉装置120との接触面積が増加し、パターン化されていない平らな捕捉面に比べると、捕捉時の安定度を改善し、捕捉失敗の確率を低下させ、結晶粒転送の歩留まりを向上させることができる。捕捉の歩留まりに影響を与える要素としては、結晶粒の寸法(捕捉面の面積)、捕捉装置120の結晶粒に対する捕捉力(例えば、粘度、吸引力等)、及び結晶粒と仮基板との接合力(仮基板の粘度、支持フレームの硬度等)等を含むが、捕捉面パターンの形状、密度、大きさ、浅深等の何れの条件も異なる状況に応じて調整されてよく、例えば、小さい結晶粒には小さく、浅いパターンを使用すればよいが、大きい結晶粒には大きく或いは深いパターンを使用すればよく、或いは、捕捉装置120の捕捉力が小さく(例えば、粘度が低い)、仮基板が粘っこく或いは支持フレームが硬い場合、捕捉面110aには密集で深いパターンを使用する必要があるかもしれない。結晶粒を転送用の基板に置く前(捕捉パターンが形成される前)に、上記パラメータを考慮するだけで、最高の捕捉面パターンを設計することができる。
【0034】
図8の工程において、捕捉装置120によって既に捕捉された発光ダイオード(100a-c)を最終の基板105に転送して電気的接続させる。
【0035】
本発明の発光ダイオードは、捕捉層として適当な材質を選用することにより、転送時の捕捉面として、パターン化された外面を形成することができるだけではなく、レーザーアブレーションプロセスの犠牲層として利用することもでき、発光ダイオード構造が少ない層数、及び低コストで高い転送効率を達成できるようにすることができる。捕捉面が適当な規則的なパターンを有するので、チップと仮基板との間の接合力を打ち消すように捕捉面と捕捉装置との間の接合力を強化し、捕捉失敗の確率を低下させると共に、捕捉時の安定度を改善し、結晶粒転送の歩留まりを向上させることができる。
【0036】
本発明は、実施形態で前述の通りに開示されたが、それらに限定されなく、当業者であれば、本発明の精神や範囲から逸脱しない限り、多様の変更や修飾を加えてもよく、従って、本発明の保護範囲は、後の特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0037】
添付の符号についての説明は、本発明の上記及び他の目的、特徴、メリットと実施例をより分かりやすくするためのものである。
100、100a、100b、100c 発光ダイオード
101 透光性基板
101a パターン化された表面
102、103、105 基板
104 第1型半導体層
106 能動層
108 第2型半導体層
108a 粗面化された上面
110 捕捉層
110a 捕捉面
110b 透光性接着層
120 捕捉装置
171 第1の接触パッド
172 第2の接触パッド
181 第1の半田付け金属層
182 第2の半田付け金属層
190 絶縁層
200 レーザー光
T1、T2 厚さ