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特許7208983長さ調節可能な関節型スタビライザ・アーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】長さ調節可能な関節型スタビライザ・アーム
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/50 20160101AFI20230112BHJP
【FI】
A61B90/50
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020518067
(86)(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018052842
(87)【国際公開番号】W WO2019067529
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】62/565,342
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500204326
【氏名又は名称】テルモ カーディオバスキュラー システムズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ツボウチ,タケシ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06102853(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0158542(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0010629(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011114633(DE,A1)
【文献】特開2017-176561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0100346(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0099081(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0229271(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタビライザ・アームであって、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の関節リンクと、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の長さ調節可能リンクと、
前記長さ調節可能リンクのうちの近位リンクと前記関節リンクのうちの遠位リンクとの間で前記中心通路を通って延在するテンションケーブルと、
基部部材であって、前記基部部材からの前記アームの所望の延在長さに対応する長さ調節可能リンクを捕捉し、且つ支持固定具に取り付けられるように構成される、基部部材と、
捕捉された前記長さ調節可能リンク同士を選択的に離間させるように格納位置と延出位置の間で移動可能であり、それによって前記テンションケーブルの張力および前記スタビライザ・アームの剛性を調節する、制御機構と
を備え、
前記長さ調節可能リンクが対向する側面を有し、それぞれの長さ調節可能リンクが、前記制御機構と係合するように構成された位置合わせノッチを側面に有するスタビライザ・アーム。
【請求項2】
前記基部部材が、前記長さ調節可能リンクのうちの2つの長さ調節可能リンクの少なくとも一部を長手方向に受け入れるスロットを含み、それにより、前記2つの長さ調節可能リンクの前記位置合わせノッチが、前記スロットの内部で前記制御機構に係合する、請求項に記載のスタビライザ・アーム。
【請求項3】
前記制御機構が、前記位置合わせノッチに捕捉される可動ピンを備える、請求項に記載のスタビライザ・アーム。
【請求項4】
前記制御機構が、前記位置合わせノッチ間の長手方向の離間距離を調節するためのレバーをさらに備える、請求項に記載のスタビライザ・アーム。
【請求項5】
前記レバーは、さらに、前記スロットへの前記可動ピンの貫入を制御し、それにより、前記長さ調節可能リンクが前記スロットの中に保持される、請求項に記載のスタビライザ・アーム。
【請求項6】
前記長さ調節可能リンクが、それぞれ、隣接する長さ調節可能リンクのアーチ状端部と入れ子に配置されるアーチ状端部を含む、請求項1に記載のスタビライザ・アーム。
【請求項7】
スタビライザ・アームであって、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の関節リンクと、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の長さ調節可能リンクと、
前記長さ調節可能リンクのうちの近位リンクと前記関節リンクのうちの遠位リンクとの間で前記中心通路を通って延在するテンションケーブルと、
基部部材であって、前記基部部材からの前記アームの所望の延在長さに対応する長さ調節可能リンクを捕捉し、且つ支持固定具に取り付けられるように構成される、基部部材と、
捕捉された前記長さ調節可能リンク同士を選択的に離間させるように格納位置と延出位置の間で移動可能であり、それによって前記テンションケーブルの張力および前記スタビライザ・アームの剛性を調節する、制御機構と
を備え、
前記長さ調節可能リンクが、それぞれ、隣接する長さ調節可能リンクのアーチ状端部と入れ子に配置されるアーチ状端部を含み、
前記長さ調節可能リンクの互いに隣り合ったアーチ状端部が、互いに噛み合う歯を有する、スタビライザ・アーム。
【請求項8】
スタビライザ・アームであって、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の関節リンクと、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の長さ調節可能リンクと、
前記長さ調節可能リンクのうちの近位リンクと前記関節リンクのうちの遠位リンクとの間で前記中心通路を通って延在するテンションケーブルと、
基部部材であって、前記基部部材からの前記アームの所望の延在長さに対応する長さ調節可能リンクを捕捉し、且つ支持固定具に取り付けられるように構成される、基部部材と、
捕捉された前記長さ調節可能リンク同士を選択的に離間させるように格納位置と延出位置の間で移動可能であり、それによって前記テンションケーブルの張力および前記スタビライザ・アームの剛性を調節する、制御機構と
を備え、
前記長さ調節可能リンクが、それぞれ、隣接する長さ調節可能リンクのアーチ状端部と入れ子に配置されるアーチ状端部を含み、
互いに隣り合ったアーチ状端部の各対が、さねはぎ式の連結部を含む、スタビライザ・アーム。
【請求項9】
スタビライザ・アームであって、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の関節リンクと、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の長さ調節可能リンクと、
前記長さ調節可能リンクのうちの近位リンクと前記関節リンクのうちの遠位リンクとの間で前記中心通路を通って延在するテンションケーブルと、
基部部材であって、前記基部部材からの前記アームの所望の延在長さに対応する長さ調節可能リンクを捕捉し、且つ支持固定具に取り付けられるように構成される、基部部材と、
捕捉された前記長さ調節可能リンク同士を選択的に離間させるように格納位置と延出位置の間で移動可能であり、それによって前記テンションケーブルの張力および前記スタビライザ・アームの剛性を調節する、制御機構と
を備え、
前記長さ調節可能リンクが、前記テンションケーブルを固定するように構成されたアンカーセグメントを含む、スタビライザ・アーム。
【請求項10】
前記関節リンクが、それぞれ、隣接する関節リンクと係合するための半球形の形状を有する、請求項1に記載のスタビライザ・アーム。
【請求項11】
前記関節リンクのうちの前記遠位リンクに取り付けられ、手術用リトラクタ装置に取り付けられるように構成されたクイック連結継手を有する端部シャフトをさらに備える、請求項1に記載のスタビライザ・アーム。
【請求項12】
スタビライザ・アームであって、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の関節リンクと、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の長さ調節可能リンクと、
前記長さ調節可能リンクのうちの近位リンクと前記関節リンクのうちの遠位リンクとの間で前記中心通路を通って延在するテンションケーブルと、
基部部材であって、前記基部部材からの前記アームの所望の延在長さに対応する長さ調節可能リンクを捕捉し、且つ支持固定具に取り付けられるように構成される、基部部材と、
捕捉された前記長さ調節可能リンク同士を選択的に離間させるように格納位置と延出位置の間で移動可能であり、それによって前記テンションケーブルの張力および前記スタビライザ・アームの剛性を調節する、制御機構と
を備え、
前記長さ調節可能リンクが、複数の狭窄領域を画定する交互に配置されたボールセグメント、伸縮セグメント、およびスペーサを備え、前記制御機構が、選択された狭窄領域を把持して前記テンションケーブルに選択的に張力を加えるための展開可能なフォーク状クランプを備える、スタビライザ・アーム。
【請求項13】
スタビライザ・アームであって、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の関節リンクと、
中心通路をそれぞれ有する連続する複数の長さ調節可能リンクと、
前記長さ調節可能リンクのうちの近位リンクと前記関節リンクのうちの遠位リンクとの間で前記中心通路を通って延在するテンションケーブルと、
基部部材であって、前記基部部材からの前記アームの所望の延在長さに対応する長さ調節可能リンクを捕捉し、且つ支持固定具に取り付けられるように構成される、基部部材と、
捕捉された前記長さ調節可能リンク同士を選択的に離間させるように格納位置と延出位置の間で移動可能であり、それによって前記テンションケーブルの張力および前記スタビライザ・アームの剛性を調節する、制御機構と
を備え、
前記制御機構が、前記テンションケーブルに予張力を印加するばねを含む、スタビライザ・アーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術手技中に組織を固定するための再使用可能なフレキシブルアームに関する。詳細には、本発明では、所望の曲率に形状を合致させるためのフレキシブル状態と、所望の位置を保持するための剛性状態との両方が可能な細長いアームが提供されることに加えて、その基部から延在するアームに、調節可能な長さがさらに与えられる。
【背景技術】
【0002】
スタビライザ・アームは、遠位端部のクイック連結部と近位端部の取り付け用クランプとの間の種々の中間リンクからなり、標準的な胸骨切開リトラクタ、または他の胸部アクセス装置に取り付けられる。クイック連結部は、手術部位の組織を処置(たとえばリトラクトおよび固定)するために、使い捨ての装置および/または再使用可能な装置に容易に取り付けることができる。知られているスタビライザ・アームの一例が、Ann Arbor、MichiganのTerumo Cardiovascular Systems Corporationによって販売されているHercules(商標)Stabilizing Armとして市販されている。
【0003】
手術部位の周りの作業空間は混み合ってくる場合があるので、スタビライザ・アームは低背であることが望ましく、また種々の起伏のある経路を辿るように容易に調節され、次いで、準備された後は所望の形状を固く保持する機能を提供することが望ましい。知られているスタビライザ・アームの一例が、Michigan、Ann ArborのTerumo Cardiovascular Systems Corporationによって販売されているHercules(商標)Stabilizing Armとして市販されている。このスタビライザはロック可能な関節カラムを含み、中心テンションケーブルが一連のリンクに通される。(たとえばハンドルを回転させることによって)ケーブルが張られると、各リンクは互いの方に動いて、一連の玉継手を介して互いに噛み合う。中心ケーブルが張られると、カラムは剛性になる。(たとえばハンドルを逆回転させることによって)張力をゆるめると、カラムはフレキシブル状態へと戻る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弛緩状態では、カラムを所望の構成に調節するときに所定の位置にゆるくとどめるのに十分な張力が保持され得る。玉継手は概して半球形であり、それにより、広い範囲の横方向の調節角度を利用することができる。しかし、スタビライザ・アームの全長は簡単に調節することができなかったので、所望の構成を得るための自由度はいくらか制限されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様では、スタビライザ・アームは、中心通路をそれぞれ有する連続する複数の関節リンクと、中心通路をそれぞれ有する連続する複数の長さ調節可能リンクとを有する。テンションケーブルは、長さ調節可能リンクのうちの近位リンクと関節リンクのうちの遠位リンクとの間で中心通路を通って延在する。基部部材は、基部部材からのアームの所望の延在長さに対応する、隣り合った2つの長さ調節可能リンクを捕捉する。基部部材は、支持固定具に取り付けられるように構成される。制御機構は、捕捉された2つの長さ調節可能リンクを選択的に離間させるように格納位置と延出位置の間で移動可能であり、それにより、テンションケーブルの張力およびスタビライザ・アームの剛性を調節する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】直線的な構成の従来技術のスタビライザ・アームの斜視図である。
図2】湾曲した構成の従来技術のスタビライザ・アームの斜視図である。
図3】本発明によるスタビライザ・アームの第1の実施形態の斜視図である。
図4図3のスタビライザ・アームの近位部の分解図である。
図5図3のスタビライザ・アームの1対の長さ調節可能リンクの斜視図である。
図6図3のスタビライザ・アームの1対の長さ調節可能リンクの斜視図である。
図7】1対の長さ調節可能リンクがテンションケーブルに張力を印加する方式で展開された、図4の近位部の斜視図である。
図8図3のスタビライザ・アームの移行リンクの分解図である。
図9図3のスタビライザ・アームの近位端部の断面図である。
図10図3のスタビライザ・アームの基部部材の斜視図である。
図11図3のスタビライザ・アームの基部部材の上面図である。
図12】本発明の制御機構の第1の実施形態の断面図である。
図13】本発明の制御機構の第2の実施形態の断面図である。
図14】本発明のスタビライザ・アームの代替実施形態の斜視図である。
図15図14のスタビライザ・アームの各部分の分解斜視図である。
図16図14のスタビライザ・アームの各部分の分解斜視図である。
図17図14のスタビライザ・アームの各部分の分解斜視図である。
図18図14のスタビライザ・アームのリンクの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1には、ハンドル11、基部12、関節部分13、およびクイック連結取付部14を備える、知られているスタビライジング・アーム10が示してある。基部12のクランプ組立体15は、たとえば胸骨リトラクタの固定具にアーム10を取り付けることができるように、バタフライハンドル16によって制御される。
【0008】
テンション(換言すれば、張力)ケーブルが、スタビライジング・アームの近位端部から(たとえば基部またはハンドルから)遠位端部(たとえばクイック連結取付部、または調節可能リンク機構の最後に固定されたリンク)へと延在する。中実の(solid)撚られたケーブル、または繊維樹脂を使用することができる。図1の例では、ハンドル11の回転に応じて、内部機構によりケーブルの張力が調節される。関節部分13は入れ子になった半球形の複数のリンクを有し、これらのリンクは、互いの内部で回転して、部分13が延在する方向に曲がることができる。ケーブルが十分に緩んでいるとリンクは摺動可能であるが、ケーブルが引っ張られるとリンクは互いに結合し、部分13は所望の軌道を維持する。図2にはスタビライザ・アーム17の別の例が示してあり、このスタビライザ・アーム17は、テンションケーブルを引っ張られることによって湾曲形態にロック(換言すれば、固定)された関節カラム18を有する。
【0009】
図3には、スタビライザ・アーム・システム20が関節アーム部21と長さ調節可能アーム部22とを有する、本発明の第1の実施形態が示してある。部分21の個々のリンクまたはセグメントは半球形であり、任意の所望の方向に曲がる。部分22の個々のリンクまたはセグメント23は平坦で平行な面を有し、単一平面内において関節式に連結するように、さねはぎ式に互いに嵌合する。加えて、各平坦面は、基部部材24の取り付け用スロット内の調節可能ロッキング要素と協働する把持要素を有する。テンションケーブル(図示せず)は、(たとえばリトラクションツールを受けるためのクイック連結機構を保持する)端部シャフト25と近位アンカーセグメント26との間のリンクを通って内部を延在する。以下により詳細に説明されるように、基部部材24のレバー27を使用して、ケーブルの張力を印加または解放することができる。移行リンク32は、長さ調節可能部22のリンク23のうちの最も遠位なリンクを関節部21の第1のリンク31に接合するように構成される(図4および図8を参照)。
【0010】
基部部材24は取付構造体28に取り付けられており、この取付構造体28は、当技術分野で知られている胸骨リトラクタのフレームに取り付けられるように構成される。図4の部分分解図に示されるように、基部部材24は、隣り合った2つのリンク23を把持するように構成された取り付け用上部スロット30を有する。取り付け用構成要素28Aおよび28Bは、ロッキングレバー(図示せず)を使用して、従来の方式で胸骨リトラクタのフレームに取り付けられる。アダプタ要素28Cは、構成要素28Aと基部部材24の下部表面との間に取り付けられる。
【0011】
図5および図6には、リンク23がより詳細に示してある。各リンク23の左側面35および右側面36は、凹みまたは位置合わせノッチ37および38をそれぞれ有し、これらは、基部部材24のスロット30へと選択的に突出する、対になる要素によって把持されるように構成される。各リンク23の遠位端部は湾曲した舌部40を有し、この舌部40は、隣り合ったリンク23の近位端部の対合する溝41に受けられるように、遠位方向に延在する。舌部40および溝41の両側面のアーチ状表面には、互いに隣り合ったリンク23を定位置に固定する助けとなる、互いに噛み合う歯42および43が設けられる。各リンク23の舌部40および本体は、テンションケーブルを受けるための内部ボア44を有する。
【0012】
図7には、テンションケーブルの一方の端部を覆うようにクランプ(換言すれば、締付固定)され、また近位アンカーセグメント26の内部に取り付けられるばねキャップ45が示される。長さ調節は、レバー27を適切に位置決めすることによって基部部材24の中の内部ロッキングピンを固定解除することによって行われ、その結果、リンク23が解放され、リンク23は、隣り合った所望の1対のリンク23(すなわち、基部部材24からアームの遠位端部までの選択された全長に対応する1対のリンク23)がロッキングピンに位置合わせされるまで、スロット30の内部で長手方向に摺動することができる。ロッキングピンが互いに隣り合ったリンク23の凹み38に位置合わせされた状態でレバー27が適当な方向に回転すると、ロッキングピンは長手方向に離れるように開く。この長手方向の離間はリンク23に伝達され、それにより、この1対のリンクは、矢印46で示されるように長手方向に離れるように動く。離間によりテンションケーブルの張力が強まり、それにより、すべての他のリンクが、互いに固く結合するのに十分な力でその隣り合ったリンクに押し付けられる。ロッキングピンのこの動作により、スタビライザ・アームが同時にスロット30内で定位置にロックされる。
【0013】
図9の断面図には、近位アンカーセグメント26のソケットの内部に摺動可能に取り付けられたばねキャップ45が示してある。テンションケーブル50は端部から端部までのボア44を通過しており、また圧着リテーナ51によってキャップ45に接合される近位端部を有する。キャップ45の内部にはばね52が設けられて、ケーブル50に予張力を印加するために一方の端部ではキャップ45の近位端部に圧接(bear against)し、セグメント26のソケット底壁53に圧接する。予張力は、レバー27を使用して最大限の張力を印加する前にスタビライザ・アームを所望の形状(曲率および長さ)に調節する助けとなるよう、すべてのリンクを互いにゆるく保持するように構成される。形状を調節するために必要に応じて予張力に手で打ち勝つことができるように、ばね力によってキャップ45と壁53の間に間隙54が作り出される。
【0014】
図10および図11には、スロット30の一方の側のロッキングピン60および61と、スロット30の他方の側のロッキングピン62および63とが示してある。ピン60および61は、それぞれ内部トンネル(換言すれば、通路)64および72の内部で長手方向に摺動可能である。図12は、内部空洞66に設けられた楕円形カム65を示す、基部部材24の側壁の断面図である。カム65は、レバー27によって回転駆動される。カム65はロッキングピン62および63に圧接し、ロッキングピン62および63は、空洞66から延在する各トンネル67および68の内部で摺動可能である。ピン62とピン63が互いに最も近づいたときにピン62および63の外側端部が壁の中へと格納されるように(それによってリンク23がスロット30を通って自由に摺動することが可能になるように)、トンネル67および68の底部には傾斜が付けられてもよい。カム65がレバー27によって回転されると、ピンはトンネル67および68に沿って離れるように開いて、捕捉された各リンクを離間させる。
【0015】
図13には、シャフト75およびギアセット76を使用してレバー27から基部部材24の離れた方の側へと運動を伝達し、ロッキングピン60および61を駆動させる楕円形カム77へと回転を伝達するための一実施形態が示してある。カム77に対してピン60および61を付勢するために、ばね78および79がトンネル64および72に追加される。
【0016】
図14には、関節部81および長さ調節可能部82を有するスタビライザ・アーム・システム80の別の実施形態が示してある。部分82は、間隔を空けられた複数の狭窄領域83を有し、そこで、部分82を、レバー86の制御下にある基部部材85のフォーク状クランプ84によって掴むことができる。内部テンションケーブルは、近位端部ではアンカーセグメント88に保持されたキャップ87に取り付けられ、遠位端部では端部シャフト89に取り付けられる。端部シャフト89は、バルブ・レーキ(valve rake)、または他のアクセサリ91を保持するためのクイック連結部90を有する。
【0017】
フォーククランプ84は、ある機構(図示せず)により、レバー86の制御下で軸方向に展開可能(expandable)である。部分82は、一連のボールセグメント92、伸縮セグメント93、およびスペーサ94からなる(これらはすべて、テンションケーブルを受け入れるための連続する中心ボアを画定する)。伸縮セグメント93は、ボールセグメント92を受けるのに十分な大きさの直径をもつ凹面カップ部をそれぞれ有する。各カップ部は内側穴を有し、隣り合ったスペーサ94の中心ボアに摺動可能に受け入れられる、中空の円筒形シャフトまたは管へと延びる。スペーサ94も同様に、隣り合ったボールセグメント92を受けるための凹面カップを有する。狭窄領域83のうちの任意の1つにおいてフォーククランプ84を軸方向に展開させることにより、図18に示す間隙95が開き、それによってテンションケーブルに張力が印加される。端部キャップ87はアンカーセグメント88の端面凹部に摺動可能に受けられる。キャップ87とセグメント88との間の凹部の別の間隙96には、キャップ87に固く取り付けられたケーブル(図示せず)に予張力を与えるために、ばねまたは他の圧縮要素(図示せず)が提供されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18