(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-11
(45)【発行日】2023-01-19
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィにおける虹彩縁検出
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2020528946
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 IB2018059410
(87)【国際公開番号】W WO2019106565
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-10
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フーカン レン
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド アル-カイシ
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05644642(US,A)
【文献】特開2014-147780(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0128731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像において虹彩縁を検出するための方法であって、
前記目の走査から取得されるOCTデータを取得することであって、前記OCTデータが、複数のAラインを含み、前記Aラインの幾つかが、前記目の
虹彩及び水晶体を通過し、前記Aラインの幾つかが、前記水晶体を通過するが前記虹彩は通過しない、取得することと、
隣接するAラインを横切って延びる第1の界面を検出することであって、前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前面又は後面のいずれかに対応すると仮定される、検出することと、
第1のメトリックが、前記第1の界面に関連するOCT信号強度を反映するように、前記検出された第1の界面の近くの1つ又は複数のAライン画素から導き出された前記第1のメトリックを前記隣接するAラインのそれぞれのために決定することと、
第2のメトリックが、前記検出された第1の界面の後ろのポイントにおけるOCT信号減衰を反映するように、前記第1のメトリックを導き出すために用いられる1つ又は複数のAライン画素よりも、前記検出された第1の界面から更に離れた前記1つ又は複数のAライン画素から導き出された前記第2のメトリックを前記隣接するAラインのそれぞれのために決定することと、
前記第1及び第2のメトリックに基づいて、前記隣接するAラインのそれぞれのために減衰パラメータを計算することと、
前記減衰パラメータを閾値と比較することによって、前記Aラインが前記虹彩を通過するかどうかを前記隣接するAラインのそれぞれのために決定することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記前面に対応すると仮定され、前記第1のメトリックが、前記検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素でAライン画素値を選択することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記前面に対応すると仮定され、前記第1のメトリックが、前記検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記後面に対応すると仮定され、前記第1のメトリックが、前記検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素におけるAライン画素値を選択することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記後面に対応すると仮定され、前記第1のメトリックが、前記検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のメトリックが、前記検出された第1の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記前面に対応すると仮定され、前記方法が、前記隣接するAラインを横切って延びる第2の界面を検出することを更に含み、前記検出された第2の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記後面に対応すると仮定され、前記第1のメトリックが、前記検出された第1及び第2の界面間のAライン画素用にAライン画素値の中央値、平均値又は最大値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のメトリックが、前記検出された第2の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために決定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記隣接するAラインのそれぞれのために前記減衰パラメータを計算することが、
前記第1及び第2のメトリック間の差を計算することであって、前記減衰パラメータが、前記計算された差に基づくことと、
前記第1及び第2のメトリックの比率を計算することであって、前記減衰パラメータが、前記計算された比率に基づくことと、
の一つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記減衰パラメータを計算することが、前記計算された差又は計算された比率を平滑化することを含み、
前記減衰パラメータが、前記平滑化される計算された差又は平滑化される計算された比率に基づく、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記減衰パラメータが、前記計算された差又は計算された比率に曲線を適合させることによって取得される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記Aラインが前記虹彩を通過するかどうかを各Aライン用に前記決定することに基づいて、前記OCTデータの視覚表現を表示することであって、前記視覚表現が、前記虹彩縁の指標を含むことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像機器であって、
目の走査から取得されるOCTデータを取得するように構成された通信インターフェースであって、前記OCTデータが、複数のAラインを含み、前記Aラインの幾つかが、前記目の虹彩及び水晶体を通過し、前記Aラインの幾つかが、前記水晶体を通過するが前記虹彩は通過しない通信インターフェースと、
前記通信インターフェースに動作可能に結合された処理回路であって、
隣接するAラインを横切って延びる第1の界面を検出し、前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前面又は後面のいずれかに対応すると仮定されるように、
第1のメトリックが、前記第1の界面に関連するOCT信号強度を反映するように、前記検出された第1の界面の近くの1つ又は複数のAライン画素から導き出された前記第1のメトリックを前記隣接するAラインのそれぞれのために決定するように、
第2のメトリックが、前記検出された第1の界面の後ろのポイントにおけるOCT信号減衰を反映するように、前記第1のメトリックを導き出すために用いられる1つ又は複数のAライン画素よりも、前記検出された第1の界面から更に離れた前記1つ又は複数のAライン画素から導き出された前記第2のメトリックを前記隣接するAラインのそれぞれのために決定するように、
前記第1及び第2のメトリックに基づいて、前記隣接するAラインそれぞれのために減衰パラメータを計算するように、且つ
前記減衰パラメータを閾値と比較することによって、前記Aラインが前記虹彩を通過するかどうかを前記隣接するAラインのそれぞれのために決定するように、
構成された処理回路と、
を含むOCT撮像機器。
【請求項14】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記前面に対応すると仮定され、前記処理回路が、前記検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素でAライン画素値を選択することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記第1のメトリックを決定するように構成される、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【請求項15】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前面に対応すると仮定され、前記処理回路が、前記検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記第1のメトリックを決定するように構成される、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【請求項16】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の後面に対応すると仮定され、前記処理回路が、前記検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素におけるAライン画素値を選択することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記第1のメトリックを決定するように構成される、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【請求項17】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記後面に対応すると仮定され、前記処理回路が、前記検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記第1のメトリックを決定するように構成される、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【請求項18】
前記処理回路が、前記検出された第1の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記第2のメトリックを決定するように構成される、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【請求項19】
前記検出された第1の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記前面に対応すると仮定され、前記処理回路が、前記隣接するAラインを横切って延びる第2の界面を検出するように更に構成され、前記検出された第2の界面の少なくとも一部が、前記虹彩の前記後面に対応すると仮定され、前記処理回路が、前記検出された第1及び第2の界面間のAライン画素用にAライン画素値の中央値、平均値又は最大値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記第1のメトリックを決定するように構成される、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【請求項20】
前記処理回路が、前記検出された第2の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記第2のメトリックを決定するように構成される、請求項19に記載のOCT撮像機器。
【請求項21】
前記処理回路が、
前記第1及び第2のメトリック間の差と、
前記第1及び第2のメトリックの比率と、
の1つに基づいて、前記隣接するAラインのそれぞれのために前記減衰パラメータを計算するように構成される、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【請求項22】
前記処理回路が、前記計算された差又は計算された比率を平滑化するように、且つ前記平滑化される計算された差又は平滑化される計算された比率に基づいて、前記減衰パラメータを計算するように構成される、請求項21に記載のOCT撮像機器。
【請求項23】
前記処理回路が、前記計算された差又は前記計算された比率に曲線を適合させることによって前記減衰パラメータを取得するように構成される、請求項21に記載のOCT撮像機器。
【請求項24】
ディスプレイであって、前記処理回路が、前記Aラインが前記虹彩を通過するかどうかを各Aライン用に前記決定することに基づいて、前記OCTデータの視覚表現を表示するために前記ディスプレイを用いるか、又は前記OCTデータの視覚表現を前記ディスプレイに表示させるように構成され、前記視覚表現が、
虹彩縁の指標を含むディスプレイを更に含む、請求項13に記載のOCT撮像機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される実施形態は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムを用いて、虹彩の特徴を検出するための装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術、角膜内インレー、レーザ角膜切削形成術(LASIK)、及びレーザ屈折矯正角膜切除術(PRK)などの現在の眼科屈折手術方法は、最適な屈折補正を処方するために、眼測定データに依存する。歴史的には、眼科手術処置は、目における部分を撮像するために、超音波生物測定器具を用いた。幾つかの場合に、これらの生物測定器具は、目のいわゆるAスキャンを生成した。即ち、目の光学軸と平行か又は小さな角度だけを作る、目の光学軸と典型的には整列された撮像軸に沿った全ての界面からの音響エコー信号を生成した。他の器具は、生物測定器具のヘッド又は先端が、走査線に沿って走査されたときに連続的に取られたAスキャンの集まりを実質的に組み立てるいわゆるBスキャンを生成した。この走査線は、典型的には、目の光学軸の側方にある。次に、これらの超音波A又はBスキャンは、眼軸長、目の前部深度、又は角膜曲率半径などの生物測定データを測定し決定するために用いられた。
【0003】
幾つかの手術処置において、第2の別個のケラトメータが、角膜の屈折特性及びデータを測定するために用いられた。次に、超音波測定及び屈折データは、処方される且つ後続の白内障の超音波水晶体乳化吸引術の手術中に挿入される最適な眼内レンズ(IOL)の特性を計算するために、半経験的な処方で組み合わされる。
【0004】
より最近では、超音波生物測定装置が、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の原理に基づいて構築される光学撮像及び生物測定器具に急速に取って代わられた。OCTは、人間の網膜、角膜又は白内障のマイクロメートル規模の高分解能断面撮像を可能にする技法である。OCT技術は、今や臨床診療において一般的に用いられ、かかるOCT器具は、今や全てのIOL処方事例の80~90%で用いられている。数ある理由の中で、OCT器具の成功は、撮像の非接触性及び超音波バイオメータの精度より高い精度ゆえである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの最近の進歩を用いさえ、相当な更なる成長及び発展が、生物測定器具及び撮像器具の機能性及び性能のために必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
虹彩検出は、虹彩及び前部水晶体を区別するために虹彩縁を検出することを含むが、OCT画像データにおいてOCT信号強度を検査することによって以前は行われた。正常な目において、虹彩のOCT信号は、そのまわりの他の組織の信号より強いことが多い。しかしながら、過熟白内障などの病的な目において、水晶体のOCT信号は、同様に強くなる可能性がある。従って、OCT信号強度に基づいた虹彩検出は、様々な白内障状態が目に起こる臨床の場ではそれほど堅牢ではない。本明細書で開示される技法は、虹彩と水晶体との間の固有の物理的特性差を利用するためにOCT測定を用い、従って臨床の場において虹彩縁の堅牢な検出を提供することができる。
【0007】
以下で詳細に説明される幾つかの実施形態によれば、Aラインは、目のOCT走査から取得され、Aラインの幾つかは、虹彩及び水晶体を通過し、Aラインの幾つかは、水晶体を通過するが虹彩は通過しない。界面が、Aラインから検出される。この界面の少なくとも幾らかは、虹彩の前部又は後部のいずれかに対応すると仮定される。各Aライン用に、第1のメトリックが、界面に関連するOCT信号強度を反映するように、第1のメトリックが、検出された第1の界面の近くの画素から導き出され、第2のメトリックが、検出された界面より下のOCT信号減衰を反映するように、第2のメトリックが、界面から更に離れた画素から導き出される。減衰パラメータが、第1及び第2のメトリックに基づいて、各Aライン用に計算され、虹彩縁は、減衰パラメータに基づいて、各Aラインが虹彩を通過するかどうかを決定することによって検出される。
【0008】
特に、現在開示される技法の実施形態は、目の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像において虹彩縁を検出するための方法を含み、方法は、目の走査から取得されるOCTデータを取得することを含み、OCTデータは、複数のAラインを含み、Aラインの幾つかは、目の虹彩及び水晶体を通過し、Aラインの幾つかは、水晶体を通過するが虹彩は通過しない。方法は、隣接するAラインを横切って延びる第1の界面を検出することであって、検出された第1の界面の少なくとも一部が、虹彩の前面又は後面のいずれかに対応すると仮定されることと、第1のメトリックが、第1の界面に関連するOCT信号強度を反映するように、検出された第1の界面の近くの1つ又は複数のAライン画素から導き出された第1のメトリックを隣接するAラインのそれぞれのために決定することと、を更に含む。
【0009】
方法は、第2のメトリックが、検出された第1の界面の後ろのポイントにおけるOCT信号減衰を反映するように、第1のメトリックを導き出すために用いられる1つ又は複数のAライン画素よりも、検出された第1の界面から更に離れた1つ又は複数のAライン画素から導き出された第2のメトリックを隣接するAラインのそれぞれのために決定することと、第1及び第2のメトリックに基づいて、隣接するAラインのそれぞれのために減衰パラメータを計算することと、を更に含む。最後に、方法は、減衰パラメータを閾値と比較することによって、Aラインが虹彩を通過するかどうかを隣接するAラインのそれぞれのために決定することを含む。幾つかの実施形態において、Aラインが虹彩を通過するかどうかを各Aライン用に決定することに基づいて、OCTデータの視覚表現が表示され、視覚表現は、虹彩縁の指標を含む。
【0010】
また、以下で詳細に説明されるのは、上記で要約された方法又はその変形を実行するように構成されたOCT撮像機器の実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムを示す図である。
【
図3】虹彩検出用の例示的な方法を示すプロセスフロー図である。
【
図5】
図4のOCT画像において界面を検出した結果を示す。
【
図6】
図4のOCT画像に基づいて、例示的な第1の信号メトリックを示す。
【
図7】
図4のOCT画像に基づいて、例示的な第2の信号メトリックを示す。
【
図8】
図5及び6における第1及び第2の信号メトリックに基づいて、減衰パラメータの例示的なグラフを示す。
【
図9】
図8の減衰パラメータを閾値と比較することによって取得された例示的な虹彩位置マスクを示す。
【
図10】
図4からのOCT画像データに重ねられたセグメント化の結果を示す。
【
図12】虹彩検出用の例示的な方法を示す別のプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明において、或る実施形態を説明する特定の詳細が明らかにされる。しかしながら、開示される実施形態が、これらの特定の詳細の幾つか又は全てがなくても実施され得ることが、当業者には明らかになろう。提示される特定の実施形態は、限定ではなく実例であるように意図されている。当業者は、本明細書では特に説明されていないが、この開示の範囲及び趣旨内にある他の材料を現実化し得る。
【0013】
現在開示される技法及び機器の実施形態は、顕微鏡搭載及び顕微鏡統合両方の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムで用いられてもよい。
図1は、顕微鏡統合OCTシステム100の例を示し、且つOCTの基本原理を示すために提示される。本明細書で説明される技法を実行するように構成されたOCT設備が、産業において既に周知の様々な方法で、
図1に示されている例から変化し得ることが認識されよう。
【0014】
システム100は、目10における撮像領域の視覚画像を提供するように構成された目の視覚化システム110と、撮像領域のOCT画像を生成するように構成された光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像システム120と、撮像領域の屈折マッピングを生成するように構成された屈折計130と、OCT画像及び屈折マッピングに基づいて、目の屈折特性を決定するように構成された分析器140と、を含む。OCT撮像システム120、屈折計130、及び分析器/コントローラ140が、目の視覚化システム110に統合され得ることが認識されよう。
【0015】
撮像領域は、手術処置の対象など、目10の一部又は領域とすることができる。
図2は、
図1に示されているよりも詳細に目10の特徴を示す断面図である。角膜処置において、撮像領域は、角膜12の一部とすることができる。白内障手術において、撮像領域は、目の嚢(又は生来の水晶体14を囲む嚢バッグ)及び水晶体14とすることができる。撮像領域はまた、前眼房20、角膜12、水晶体14、及び虹彩18を含んでもよい。代替として、撮像領域は、角膜12、水晶体14、虹彩18、及び網膜16を含む目全体をカバーしてもよい。網膜処置において、撮像領域は、網膜16の領域とすることができる。上記の撮像領域のどんな組み合わせも、同様に撮像領域とすることができる。
【0016】
目の視覚化システム110は、顕微鏡112を含むことができる。幾つかの実施形態において、目の顕微鏡112は、細隙灯を含むことができる。顕微鏡112は、光学顕微鏡、手術用顕微鏡、ビデオ顕微鏡、又はそれらの組み合わせとすることができる。
図1の実施形態において、目の視覚化システム110(太い実線で示されている)は、手術用顕微鏡112を含み、手術用顕微鏡112は、今度は、対物レンズ113、光学部品115、及び双眼鏡又は接眼鏡117を含む。目の視覚化システム110はまた、ビデオ顕微鏡のカメラ118を含むことができる。
【0017】
システム100は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像システム120を更に含む。OCT撮像システム120は、撮像領域のOCT画像を生成することができる。OCT撮像システムは、撮像領域のAスキャン又はBスキャンを生成するように構成することができる。OCT画像又は画像情報は、目の生物測定又は屈折特性を決定するために、例えば、出力された「屈折出力」信号と組み合わせて、分析器140によって使用できる「OCT出力」信号で出力することができる。
【0018】
OCT撮像システム120は、500~2,000nmの波長範囲で、幾つかの実施形態では900~1,400nmの範囲で動作するOCTレーザを含むことができる。OCT撮像システム120は、時間領域、周波数領域、スペクトル領域、掃引周波数、又はフーリエ領域OCTシステム120とすることができる。
【0019】
様々な実施形態において、OCT撮像システム120の一部は、顕微鏡に統合することができ、その一部は、別個のコンソールに設置することができる。幾つかの実施形態において、顕微鏡に統合されるOCT部分は、OCTレーザなどのOCT光源だけを含むことができる。目から返されたOCTレーザ又は撮像光は、ファイバに供給し、且つOCT撮像システム120の第2の部分、即ち顕微鏡外のOCT干渉計に送ることができる。OCT干渉計は、幾つかの実施形態において、別個のコンソールに位置することができ、別個のコンソールには、適切なエレクトロニクスがまた、OCTの干渉信号を処理するために位置する。
【0020】
OCTレーザは、角膜頂点と水晶体頂点との間の距離など、前眼房の範囲より長いコヒーレンス長を有してもよい。この距離は、ほとんどの患者において約6mmであり、従って、かかる実施形態は、4~10mm範囲におけるコヒーレンス長を有することができる。別の実施形態は、30~50mmなど、眼軸長全体をカバーするコヒーレンス長を有することができる。更に別の実施形態は、10~30mm範囲などの中間コヒーレンス長を有することができ、最後に幾つかの実施形態は、50mmより長いコヒーレンス長を有することができる。幾つかの掃引周波数レーザは、これらのコヒーレンス長範囲にアプローチしている。幾つかのフーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザ、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)ベース、ポリゴンベース、又はMEMSベースの掃引レーザは、既に、これらの範囲におけるコヒーレンス長を備えたレーザビームを放出することができる。
【0021】
システム100として示された例は、撮像領域の屈折マッピングを生成するために、屈折計130を更に含む。屈折計130は、レーザ光線トレーサ、シャックハルトマン、タルボモアレ、又は別の屈折計を含む広く用いられるタイプのいずれかであってもよい。屈折計130は、波面分析器、収差検出器、又は収差計を含むことができる。幾つかの参考文献は、これらの用語を実質的に交換可能又は同義的に用いている。屈折計130の動作範囲は、有水晶体眼及び無水晶体眼、即ち生来の水晶体のある目及び生来の水晶体のない目の両方をカバーすることができる。
【0022】
幾つかのシステムにおいて、OCT撮像システム120及び屈折計130は、顕微鏡112又は細隙灯の主な光路への光結合を提供するために、ビームスプリッタ152cを含むことができる顕微鏡インターフェース150を介して統合することができる。ミラー154-1は、屈折計130の光を光路に結合することができ、ミラー154-2は、OCT120の光を光路に結合することができる。顕微鏡インターフェース150、そのビームスプリッタ152c、並びにミラー154-1及び154-2は、OCT撮像システム120及び屈折計130を目の視覚化システム110と統合することができる。
【0023】
OCT撮像システム120が、900~1,400nmの近赤外線(IR)範囲で動作し、且つ屈折計が、700~900nmの範囲で動作する幾つかの実施形態において、ビームスプリッタ152cは、高効率及び低ノイズ動作用に400nm~700nmの可視範囲で100%近くの透過性になり、700~1,400nmの範囲の近IR範囲で100%近くの反射性になることができる。同様に、ミラー154-1が、光を屈折計130に方向転換するシステムにおいて、ミラー154-1は、700~900nmの近IRの範囲で100%近くの反射性になることができ、ミラー154-2は、900~1,400nmの近IRの範囲で100%近くの屈折性になることができ、OCT撮像システム120に方向転換する。ここで、「100%近く」は、幾つかの実施形態において50~100%の範囲における値を指し、又は別の実施形態において80~100%の範囲における値を指すことができる。幾つかの実施形態において、ビームスプリッタ152cは、700~1,400nmの範囲における波長用に50~100%の範囲における反射率を有し、且つ400~700nmの範囲における波長用に0~50%の範囲における反射率を有することができる。
【0024】
図1は、システム100が、ビームスプリッタ152cに加えて、第2のビームスプリッタ152bを含み得ることを示す。ビームスプリッタ152cは、対物レンズ113と、統合されたOCT120/屈折計130集合との間で光を導く。ビームスプリッタ152bは、ディスプレイ160と双眼鏡117との間で光を導くことができる。第3のビームスプリッタ152aは、カメラ118に光を導くことができる。
【0025】
分析器又はコントローラ140は、受信されたOCT画像及び屈折情報に基づいて、様々な統合生物測定分析を実行することができる。分析は、光線追跡ソフトウェア及びコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを含む、種々様々な周知の光学ソフトウェアシステム及び製品を利用することができる。統合生物測定の結果は、(1)目の部分における光パワーの値、及び適切なIOL用の対応する提案又は処方されたジオプトリと、(2)角膜の乱視の値及び方位、並びにこの乱視を補償するトーリックIOLの提案又は処方されたトーリックパラメータと、(3)とりわけ、この乱視を補正する1つ又は複数の減張切開の提案又は処方された位置及び長さとすることができる。
【0026】
分析器140は、この統合生物測定の結果をディスプレイ160に出力することができ、その結果、ディスプレイ160は、これらの結果を外科医用に表示することができる。ディスプレイ160は、目の視覚化システム110に関連する電子ビデオディスプレイ又はコンピュータ化されたディスプレイとすることができる。別の実施形態において、ディスプレイ160は、顕微鏡112の外側に装着されるような、顕微鏡112のすぐ近くのディスプレイとすることができる。最後に、幾つかの実施形態において、ディスプレイ160は、顕微鏡112の光路に表示光を投影するマイクロディスプレイ又はヘッドアップディスプレイとすることができる。投影は、ミラー157を介して主な光路に結合することができる。別の実施形態において、全ヘッドアップディスプレイ160は、顕微鏡112内に位置するか、又は顕微鏡112のポートと統合することができる。
【0027】
解剖学的に、虹彩18は、水晶体14及び/又は水晶体14を囲む水晶体嚢に接しているか又はそのすぐ近くに存在し、そのことは、水晶体情報だけがユーザにとって興味深い場合に、難題をもたらす可能性がある。例えば、カスタマイズされた目のモデルを作る場合に、前部水晶体の形状を含むことは、非常に重要である。しかしながら、虹彩18が、水晶体表面と密に接触している状態では、前部虹彩及び前部水晶体の混合物が、前部水晶体として誤って解釈される可能性があり、次に、それは、目のモデルの能力を害する可能性がある。従って、水晶体情報を正確に抽出するために、虹彩を検出するべきである。
【0028】
虹彩検出は、虹彩18の縁を検出することを含むが、OCT信号強度を検査することによって主として行われた。正常な目において、虹彩18のOCT信号は、虹彩のまわりの他の組織の信号より強いことが多い。しかしながら、過熟白内障などの病的な目において、水晶体14のOCT信号は、同様に強くなり得る。従って、OCT信号強度に基づいた虹彩検出は、様々な白内障状態が目に発生する臨床の場では十分に堅牢ではない。OCT信号強度と組み合わせた虹彩18の厚さもまた、虹彩検出用に使用されてもよい。しかしながら、瞳のサイズに依存して、虹彩18の厚さもまた変化する。また、虹彩18の厚さは、人から人へと実質的に変化する。
【0029】
従って、虹彩検出用の以前の方法は、堅牢な検出を提供しない。本明細書で開示される技法は、虹彩18と水晶体14との間の固有の物理的特性の差を利用するためにOCT測定を用い、従って臨床の場において虹彩縁の堅牢な検出結果を提供することができる。
【0030】
図3は、現在開示される技法による、目10のOCT撮像において虹彩縁を検出するための例示的な方法を示す流れ図である。最初に、ブロック310に示されているように、OCT画像が、虹彩検出用に受信される。これは、目10の走査から取得されるOCTデータを取得することを含み、OCTデータは、複数のAラインを含み、Aラインの幾つかは、目10の虹彩18及び水晶体14を通過し、且つAラインの幾つかは、水晶体14を通過するが虹彩18を通過しない。
【0031】
次に、ブロック320に示されているように、少なくとも第1の界面が検出され、この第1の界面は、隣接するAラインを横切って延びる。この検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面又は虹彩の後面に対応すると仮定されるが、しかしその幾つかの部分は、代わりに水晶体に対応してもよい。以下で更に詳細に論じられるように、幾つかの実施形態において、多数の界面が、方法のこの段階で検出されてもよい。例えば、2つの界面が検出され得、そのうち、第1の界面の少なくとも一部は、虹彩18の前面であり、第2の界面の少なくとも一部は、虹彩18の後面である。より一般的には、多数の界面が検出され得、多数の界面の少なくとも1つにおける少なくとも一部は、虹彩の前面又は虹彩の後面に対応する。
【0032】
ブロック330に示されているように、方法は、眼組織による減衰の前又はその減衰中であるAラインにおけるポイントに対応する第1の信号の決定を幾つかの隣接するAラインのそれぞれのために進める。これは、例えば、第1のメトリックが、第1の界面に関連するOCT信号強度を反映するように、検出された第1の界面の近くの1つ又は複数のAライン画素から第1のメトリック、例えば平均強度を決定することを含んでもよい。
【0033】
次に、ブロック340に示されているように、第2の信号が、幾つかのAラインそれぞれのために決定され、第2の信号は、第1の信号の減衰結果に対応する。より具体的には、これは、第2のメトリックが、検出された第1の界面の後ろのポイントにおけるOCT信号減衰を反映するように、第1のメトリックを導き出すために用いられる1つ又は複数のAライン画素よりも、検出された第1の界面から更に離れた1つ又は複数のAライン画素から導き出された第2のメトリックを隣接するAラインのそれぞれのために決定することを含んでもよい。
【0034】
ブロック350に示されているように、方法は、第1及び第2の信号に基づいて、少なくとも1つのAラインの減衰特性を示す少なくとも1つのインジケータを導き出すことを幾つかのAラインのそれぞれのために進める。より具体的には、これは、上記で論じられた第1及び第2のメトリックに基づいて、隣接するAラインのそれぞれのために減衰パラメータを計算することを含んでもよい。
【0035】
次に、この導き出されたインジケータは、ブロック360に示されているように、幾つかのAラインのそれぞれのために、虹彩が検出されるかどうかを決定するように閾値と比較されてもよい。換言すれば、方法は、上記で論じられた減衰パラメータを閾値と比較することによって、Aラインが虹彩を通過するかどうかを隣接するAラインのそれぞれのために決定することを含んでもよい。どのAラインが、虹彩(及び水晶体)を通過するか、並びにどのAラインが、水晶体を通過するが虹彩は通過しないかを観察することによって、虹彩縁が検出され得ることが認識されよう。
【0036】
少なくとも1つのインジケータが、閾値より大きい場合に、対応するAラインが、虹彩を通過したと見なされるように、導き出された減衰インジケータが選択され得ることが理解されよう。少なくとも1つのインジケータが、閾値以下である場合に、それが虹彩を示すように、少なくとも1つのインジケータを選択することもまた可能である。用いられる閾値が、固定値に制限されないことも更に理解されるべきである。閾値は、相異なるAライン又は相異なるOCT画像間で適応させることができる。
【0037】
図4~10は、
図3に示された、且つ上記で論じられた方法の例示的な使用を示す。
図4は、左から右に指し示された多くのAラインを含む例示的なOCT画像を示し、Aラインは、画像の上端から底部に延びる。ライン走査、ラスタ走査、円形走査、螺旋走査、リサージュ走査、フラワースキャンなど、いずれかのOCT走査パターンに関して本明細書で説明される技法は、注目に値する。
図11は、
図4のOCT画像を取得するために用いられる走査パターンを示す。走査は、走査パターンの一ポイントで開始し、且つ同じポイントに戻るまで、パターンの各花弁を通過する。
【0038】
図4において、角膜からの高強度反射は、画像の上端で見ることができる。その下(その後部)では、虹彩及び水晶体に対応する反射データを見ることができる。上記で論じられたように、難問は、水晶体の形状が正確に決定され得るように、虹彩縁がどこにあるかを決定することである。
【0039】
図5は、
図4における例示的なOCT画像に基づいて界面を検出する結果を示す。この具体例において、界面A及び界面Bとして図で識別された2つの界面が検出された。界面Aの部分は、虹彩の前面に対応し、一方で他の部分は、水晶体を横切って延びる。同様に、界面Bの部分は、虹彩の後面に対応し、一方で他の部分は、水晶体を横切って、例えば水晶体嚢の内部に沿って延びる。上記で論じられたように、
図3のブロック330に関連して、1つ(例えば界面Aだけ若しくは界面Bだけ)又は複数の界面が、分析のこのステップで検出され得る。
【0040】
図6は、
図4及び5におけるAラインのそれぞれのための第1の信号メトリックのグラフを示す。この第1のメトリックは、第1の界面に関連するOCT信号強度を反映する。この例において、第1の信号メトリックは、検出された第1の界面(界面A)と第2の界面(界面B)との間の平均OCT強度である。他の例において、第1の信号のメトリックは、第1の界面より下の或る数の画素(例えば2つの画素、5つの画素、10の画素)におけるOCT強度とすることができる。更に別の例において、第1の信号のメトリックは、第2の界面より上の或る数の画素(例えば2つの画素、5つの画素、10の画素)におけるOCT強度とすることができる。更に別の例において、第1の信号は、第1の界面と第2の界面との間の最大OCT強度メトリックとすることができる。
【0041】
図7は、第1の信号の減衰結果を表す第2の信号メトリックのグラフを示す。従って、第2のメトリックは、検出された第1の界面の後ろのポイントにおけるOCT信号減衰を反映する。この具体例において、第2の信号は、第2の界面(界面B)より下の平均OCT強度である。
【0042】
決定された第1及び第2のメトリックに基づいて、興味のあるAラインに沿った減衰特性が導き出され得る。換言すれば、減衰パラメータは、第1及び第2のメトリックに基づいて、隣接するAラインのそれぞれのために計算することができる。
図8は、各Aライン用の例示的な減衰パラメータのグラフを示す。この例において、減衰パラメータは、第1の信号メトリックと第2の信号メトリックとの間の比率として計算される。他のパラメータもまた、第1の信号メトリックと第2の信号メトリックとの間の差など、組織の減衰特徴を表すために用いることができる。Aラインのそれぞれのための減衰パラメータ値はまた、例えば、第1及び第2の信号メトリックに適合する曲線によって決定されてもよい。
【0043】
ひとたび減衰インジケータが取得されると、虹彩位置は、導き出された少なくとも1つのインジケータを閾値と比較することによって検出することができる。この比較の結果は、
図9に示されているように、虹彩位置マスクを生成するために用いることができ、虹彩位置マスクは、虹彩縁を正確に明らかにする。この具体例において、5の閾値は、水晶体から虹彩を区別するために用いられる。一定の又は適応性の他の適切な閾値もまた、虹彩を検出するために用いることができる。
【0044】
図10は、
図9からのマスクに基づいて、虹彩検出と組み合わされた最終的なセグメント化の結果を示す。虹彩が、正確に検出されるので、セグメント化された界面は、
図5に示され、界面Bに存在したように、虹彩の前面及び水晶体前面の混合物ではなく、水晶体前面の真のジオメトリを表す。
【0045】
上記で提供された詳細な説明及び例を考慮すれば、
図12に示されたプロセスフローが、本明細書で開示される技法に従って、目のOCT撮像において虹彩縁を検出するための例示的な方法を表すことが認識されよう。この方法は、
図3に示された方法におおむね対応する。
【0046】
ブロック1210に示されているように、図示の方法は、目の走査から取得されるOCTデータを取得することを含み、OCTデータは、複数のAラインを含み、Aラインの幾つかは、目の虹彩及び水晶体を通過し、Aラインの幾つかは、水晶体を通過するが虹彩は通過しない。ブロック1220に示されているように、方法は、隣接するAラインを横切って延びる第1の界面を検出することを更に含み、界面の少なくとも一部は、虹彩の前面又は後面のいずれかに対応すると仮定される。
【0047】
ブロック1230に示されているように、方法は、第1のメトリックが、第1の界面に関連するOCT信号強度を反映するように、検出された第1の界面の近くの1つ又は複数のAライン画素から導き出された第1のメトリックを隣接するAラインのそれぞれのために決定することを更に含む。幾つかの実施形態又は事例において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面に対応すると仮定され、第1のメトリックは、検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素でAライン画素値を選択することによって、隣接するAラインのそれぞれのために決定される。別の実施形態又は事例において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面に対応すると仮定され、第1のメトリックは、検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために決定される。更に別の実施形態又は事例において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の後面に対応すると仮定され、第1のメトリックは、検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素におけるAライン画素値を選択することによって、隣接するAラインのそれぞれのために決定される。更に別の実施形態又は事例において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の後面に対応すると仮定され、第1のメトリックは、検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために決定される。更に別の実施形態又は事例において、第1のメトリックは、検出された第1の界面と第2の検出された界面との間の1つ又は複数の画素値に基づいて決定される。第1の界面に関連するOCT信号強度を反映する第1のメトリックを決定するためのこれらのアプローチの他の変形が可能である。
【0048】
ブロック1240に示されているように、方法は、第2のメトリックが、検出された第1の界面の後ろのポイントにおけるOCT信号減衰を反映するように、第1のメトリックを導き出すために用いられる1つ又は複数のAライン画素よりも、検出された第1の界面から更に離れた1つ又は複数のAライン画素から導き出された第2のメトリックを隣接するAラインのそれぞれのために決定することを更に含む。幾つかの実施形態において、例えば、第2のメトリックは、検出された第1の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために決定される。
【0049】
幾つかの実施形態において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面に対応すると仮定され、方法は、隣接するAラインを横切って延びる第2の界面を検出することを更に含み、検出された第2の界面の少なくとも一部は、虹彩の後面に対応すると仮定される。これは、
図12においてブロック1225に示され、ブロック1225は、それが、図示された方法の全ての事例又は実施形態において存在する必要があるわけではないことを示すために、破線の輪郭線で示されている。これらの実施形態の幾つかにおいて、第1のメトリックは、検出された第1及び第2の界面間のAライン画素用にAライン画素値の中央値、平均値又は最大値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために(ブロック1230に示されているように)決定されてもよい。これらの実施形態の幾つかにおいて、第2のメトリックは、検出された第2の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために(ブロック1240に示されているように)決定されてもよい。
【0050】
ブロック1250及び1260に示されているように、図示の方法は、第1及び第2のメトリックに基づいて、隣接するAラインのそれぞれのために減衰パラメータを計算することと、減衰パラメータを閾値と比較することによって、Aラインが虹彩を通過するかどうかを隣接するAラインのそれぞれのために決定することと、を更に含む。隣接するAラインのそれぞれのために減衰パラメータを計算することは、例えば、第1及び第2のメトリック間の差を計算することであって、減衰パラメータが、計算された差に基づくこと、又は第1及び第2のメトリック間の比率を計算することであって、減衰パラメータが、計算された比率に基づくことを含んでもよい。幾つかの実施形態において、減衰パラメータを計算することは、減衰パラメータが、平滑化される計算された差又は平滑化される計算された比率に基づくように、これらの計算された差又は計算された比率を平滑化することを含んでもよい。幾つかの実施形態において、減衰パラメータは、計算された差又は計算された比率に曲線を適合させることによって取得されてもよい。
【0051】
幾つかの実施形態において、方法は、Aラインが虹彩を通過するかどうかを各Aライン用に決定することに基づいて、OCTデータの視覚表現を表示することであって、視覚表現が虹彩縁の指標を含むことを更に含む。これは、
図12においてブロック1270に示されている。
【0052】
本明細書で説明される技法は、OCT撮像機器から、例えば
図1に示された機器のような機器から取得されたOCT画像を用いて実行されてもよい。これらの技法は、本明細書で説明されるOCT撮像及び虹彩検出技法を統合する撮像システムを生成するために、OCT撮像機器自体に統合されてもよい。
【0053】
従って、本発明の幾つかの実施形態は、OCT画像処理機器を含み、OCT画像処理機器は、目の走査から取得されるOCTデータを取得するための通信インターフェースと、通信インターフェースに動作可能に結合されて、本明細書で説明される技法の1つ又は複数を実行するように構成された処理回路と、を含む。このOCT画像処理機器は、幾つかの実施形態において、
図1に描写された分析器/コントローラ140に対応してもよい。
【0054】
これらの様々な実施形態において、OCT画像処理機器によって取得されたOCTデータは、複数のAラインを含み、Aラインの幾つかは、目の虹彩及び水晶体を通過し、Aラインの幾つかは、水晶体を通過するが虹彩は通過しない。処理回路は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどと、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどによる実行用のプログラムコード(プログラムコードは、本明細書で説明される全て又は技法を実行するためのコンピュータプログラム命令を含む)を格納する関連メモリと、を含んでもよく、且つ同様に又は代わりに、本明細書で説明される技法のいずれかにおける全て又は部分を実行するように構成された他のデジタル論理を含んでもよい。それによって、処理回路は、隣接するAラインを横切って延びる第1の界面を検出するように構成され、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面又は後面のいずれかに対応すると仮定され、且つ第1のメトリックが、第1の界面に関連するOCT信号強度を反映するように、検出された第1の界面の近くの1つ又は複数のAライン画素から導き出された第1のメトリックを隣接するAラインのそれぞれのために決定する。処理回路は、第2のメトリックが、検出された第1の界面の後ろのポイントにおけるOCT信号減衰を反映するように、且つ第1及び第2のメトリックに基づいて、隣接するAラインそれぞれのために減衰パラメータを計算するように、第1のメトリックを導き出すために用いられる1つ又は複数のAライン画素よりも、検出された第1の画素から更に離れた1つ又は複数のAライン画素から第2のメトリックを隣接するAラインのそれぞれのために決定するように更に構成される。処理回路は、減衰パラメータを閾値と比較することによって、Aラインが虹彩を通過するかどうかを隣接するAラインのそれぞれのために決定するように更に構成される。
【0055】
幾つかの実施形態において、OCT画像処理機器は、ビデオディスプレイ、例えば
図1に示されたディスプレイ160を更に含むか、又はそれと関連付けられ、処理回路は、Aラインが虹彩を通過するかどうかを各Aライン用に決定することに基づいて、OCTデータの視覚表現(視覚表現は、虹彩縁の指標を含む)を表示するためにディスプレイを用いるか、又はOCTデータの視覚表現をディスプレイに表示させるように更に構成される。
【0056】
上記で説明されたOCT画像処理機器は、様々な実施形態において、上記で説明された技法の変形の1つ又は幾つかを実行するように構成されてもよい。従って、OCT画像処理機器の幾つかの実施形態において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面に対応すると仮定され、処理回路は、検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素でAライン画素値を選択することによって、隣接するAラインのそれぞれのために第1のメトリックを決定するように構成される。別の実施形態において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面に対応すると仮定され、処理回路は、検出された第1の界面より下の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために第1のメトリックを決定するように構成される。更に別の実施形態において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の後面に対応すると仮定され、処理回路は、検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素におけるAライン画素値を選択することによって、隣接するAラインのそれぞれのために第1のメトリックを決定するように構成される。更に別の実施形態において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の後面に対応すると仮定され、処理回路は、検出された第1の界面より上の所定数のAライン画素で始まるAライン画素の範囲用に平均Aライン画素値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために第1のメトリックを決定するように構成される。
【0057】
幾つかの実施形態において、処理回路は、検出された第1の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために第2のメトリックを決定するように構成される。幾つかの実施形態において、検出された第1の界面の少なくとも一部は、虹彩の前面に対応すると仮定され、処理回路は、隣接するAラインを横切って延びる第2の界面を検出するように構成され、検出された第2の界面の少なくとも一部は、虹彩の後面に対応すると仮定される。これらの実施形態の幾つかにおいて、処理回路は、検出された第1及び第2の界面間のAライン画素用にAライン画素値の中央値、平均値又は最大値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために第1のメトリックを決定するように構成される。これらの後半の実施形態の幾つかにおいて、処理回路は、検出された第2の界面の後ろのAライン画素の範囲用にAライン画素の中央値又は平均値を計算することによって、隣接するAラインのそれぞれのために第2のメトリックを決定するように構成される。
【0058】
上記で説明された実施形態の幾つかにおいて、処理回路は、第1及び第2のメトリック間の差並びに第1及び第2のメトリックの比率における1つに基づいて、隣接するAラインのそれぞれのために減衰パラメータを計算するように構成される。幾つかの実施形態において、処理回路は、計算された差又は計算された比率を平滑化するように、且つ平滑化される計算された差又は平滑化される計算された比率に基づいて、減衰パラメータを計算するように構成される。幾つかの実施形態において、減衰パラメータは、計算された差又は計算された比率に曲線を適合させることによって取得される。
【0059】
上記で説明された特定の実施形態は、本発明を例示するが、制限はしない。上記で説明され且つ以下で請求されるように、本発明の原理に従って、多数の修正及び変形が可能であることもまた理解されたい。